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【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】
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111 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:54:02.51 ID:xIUq6BSMO
キーボ「………」
アンジー「んー? どうしちゃったー、キーボ?」
真宮寺「……もし、何か不具合が起きたのなら、浦原さんに修理を頼んでーーー」
キーボ「ーーー食える」
アンジー「……んんー、?」
キーボ「食えますよ……! 食えますよ、入間さん……!」
真宮寺「……キーボ君?」
112 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:55:35.39 ID:xIUq6BSMO
キーボ「ふはははははははははははははは!!!」
キーボ「食える、食える、食える、食えますよ!!!」
キーボ「これが、甘味か!!」パクパク
キーボ「これが、辛味か!!」ガツガツ
キーボ「これが、旨味か!!!」
113 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:57:11.41 ID:xIUq6BSMO
キーボ「そして、これが、旨味の染み渡る感覚……!」モグモグ
キーボ「ああ、思っていた以上に……」
キーボ「……素晴らしいーーー」
アンジー「ーーー静かにして、キーボ」
真宮寺「流石に叫ばれるのは、ちょっとネ」
キーボ「……すみません」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
114 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:59:47.64 ID:xIUq6BSMO
空鶴「……食い終わったな、テメエら! それならーーー」
岩鷲「ーーーごちそうさまでした!」
アンジー「神ったごちそう、ありがとー! にゃはははー!」
真宮寺「ごちそうさま、だヨ」
キーボ「……ごちそうさまでした!」
空鶴「ーーーよし! あとは身体休めて明日に備えな! そんで、みっちり働いて貰うからな!」
115 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:02:05.62 ID:xIUq6BSMO
真宮寺「ククク……どうだい? 初めて食事を摂ったことに対する気持ちは?」
キーボ「………」
真宮寺「食事の終わった今なら、多少は声を張り上げても許されると思うヨ?」
アンジー「そうだねー。それに美兎が言うには、その機械で食べるとお口の中にご飯がぜんぜん残んないんだってー! 口の中が錆びるとか、それで異臭が発生するとか、気にしなくて良いんだってー!」
キーボ「………」
アンジー「だから、今なら口を大きく開けて元気な声出しても、大丈夫なんだよー!」
116 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:04:25.75 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……冷静になってみると居た堪れなくなるので、声のボリュームは上げませんがーーー食事を摂ったことへの気持ちについては答えます」
アンジー「……どんな気持ちー?」
キーボ「……嬉しいに決まってるじゃないですか。初めての食事ですよ?」
キーボ「……どうも、ありがとうございました。コガネヒコさん……シロガネヒコさん」
金彦「……こちらこそ、味わって頂き光栄の極みです」
銀彦「それと、お礼の言葉は彼女の方にもお願いします」
キーボ「……そうですね」
キーボ「この美味しいという感覚……それをボクに味わって貰うため、入間さんはこの発明品を作ってくれたーーー」
キーボ「ーーー次にあなたに会った時には、必ずお礼を言わせて頂きます、入間さん!」
117 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:06:09.00 ID:xIUq6BSMO
金彦「……ふふふ、それでは、我々はこれで」
銀彦「仕事がまだ残っておりますゆえ、申し訳ありませんが、この場を離れさせて頂きます」
キーボ「いえ、こちらこそ、お忙しい中、引き止めてしまって申し訳ありません」
キーボ「これからも、よろしくお願いします! コガネヒコさん!シロガネヒコさん!」
金彦「……ええ!」
銀彦「こちらからも、よろしくお願いします、キーボ殿!」
118 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:09:51.97 ID:xIUq6BSMO
スタスタ……
真宮寺「……礼儀正しいんだネ、君って」
キーボ「……相手は知り合ったばかりで、さらには立派な社会人の方々でもあります」
キーボ「だとすれば、親しい関係になるプログラムではなく、礼儀を尽くすプログラムに切り替えるのは当然でしょう」
アンジー「……うんうん、ここで、そういうこと言っちゃうところ、キーボらしいねー」
真宮寺「……まさかとは思うけど、君は自分から行動するのを怠けて、そのプログラムに任せて機械的かつ自動的に礼義正しく振る舞っていたのかい?」
キーボ「そんなことしませんよ! 礼儀のプログラムも親しい関係になるプログラムも、あくまでも参考にしただけで、ボクはボク自身の意志によるマニュアル操作で動いています! 怠けてなんていません!」
真宮寺「……そう、それなら良かったヨ」
アンジー「そうだねー! そこでサボってたら、きっと神さまも罰を当ててたよー!」
119 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:16:44.17 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「ーーーしかし、入間さんも、よくこんな、すごい発明ができましたね」
真宮寺「? まァ、確かに、すごい発明ではあるけど……」
アンジー「でもでもー、美兎ならこのくらい普通にできるんじゃないのー?」
キーボ「いや、入間さんがすごいことはボクも同感ですがーーー死後の世界でも生前と同じように発明できたことに驚いたんです」
キーボ「いくら、入間さんでも、自分の研究教室も無しに、ここまでの発明ができるとは思えません」
キーボ「……いったい、どうやって発明をーーー」
真宮寺「あァ……その説明は簡単だヨ」
キーボ「?」
真宮寺「さっきの人……浦原さんから、器具や機材を貸して貰ったんだヨ」
120 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:19:46.65 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「浦原さんに、ですか?」
アンジー「そうだよー、喜助が美兎にサービスしてくれたのだー!」
キーボ「………」
真宮寺「……浦原さんは、入間さんに興味を持っていてネ」
真宮寺「自分の目の前で、入間さんの才能を確認させて貰う代わりに、霊的科学に関する知識を教え、器具や機材を貸して……つまりは、ほぼ無償で提供してあげたのサ」
真宮寺「そうして提供された知識……並びに器具や機材を用いて誕生した発明の一つが、【エレキイーター】なんだヨ」
121 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:23:13.88 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「……発明の、一つ?」
キーボ「まさか、他にも発明があるんですか?」
真宮寺「そうだネ。たとえば、装着するだけで、片手の指の動きだけでメールを打てるようにするバングルがあるヨ」
キーボ「……なっ、!?」
真宮寺「バングルから読み取られた片手の動きでメールが作成され、その内容は脳内に転送され、内容を確認してからは伝令神機に転送後、そこからメール送信ができる」
真宮寺「これは、視覚や聴覚を阻害しないから、慣れてしまえば歩いている時に息をするようにメールの送信が可能となる」
キーボ「そんなものまで……って、まさか、それはーーー」
真宮寺「そう、僕が気づかれることなく、空鶴さん達と浦原さんにキーボ君のことを伝えることができたのは、その方法を使ったからなんだヨ」
キーボ「……なるほど、入間さんの発明品ならば納得です」
アンジー「………」
122 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:27:15.25 ID:Pk9jS6GpO
真宮寺「……他にも、君の身体を自動で洗浄する【ロボットウォッシャー】、自動でメンテナンスを行う【ロボットメンテ】にーーー」
真宮寺「ーーー最近発明したものの中には、霊力ある存在を感知する装置、【パワーセンサー】があるヨ」
キーボ「……【パワーセンサー】……」
真宮寺「……それは、モノパッドを小さくしたような形状をしていてネ。霊力ある存在が比較的近くにいれば、反応して振動しーーー」
真宮寺「ーーー霊力ある存在を示す印が、液晶画面の細かな地図の中に、映し出されるようになっている」
キーボ「!?」
真宮寺「……僕らはその装置を使って、君に霊力があることを確認したのサ」
123 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:30:59.48 ID:Pk9jS6GpO
アンジー「………」
キーボ「……ん? ちょっと待ってください。それって、もしかして今日、キミ達がボクと再会した時にーーー」
真宮寺「ーーーそうだネ。だいたい、君が察している通りだヨ」
真宮寺「僕らは今日、君に再会する直前の時、【パワーセンサー】で反応を確認した」
真宮寺「突如、流魂街の、あの場所に現れた、君の霊力反応を、ネ」
キーボ「………」
真宮寺「……普段は服の中にしまっている “ それ ” で、君に霊力が宿っていることを確認したのサ」
キーボ「……なるほど」
124 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:34:01.45 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「……しかし、そのようなものまで発明するとはーーー」
アンジー「………」
キーボ「ーーー流石としか言いようがありませんね」
125 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:36:15.95 ID:Pk9jS6GpO
真宮寺(……本当に、彼女には恐れ入るヨ)
真宮寺(今の忙しい中、必死に時間をやりくりして、霊力ある存在を感知する装置を発明するなんてネ)
真宮寺(……僕達が持っている伝令神機にも似たような機能はあるけれどーーー)
真宮寺(ーーーあれで反応するのは、悪霊だけだからネ。他の魂魄……ましてやロボットの霊力感知なんてできるはずがない)
真宮寺(……他の発明と言い、ここに来るかどうかもわからないキーボ君がために、ここまでするとはネ……)
真宮寺(入間さん、彼女は、本当にーーーー)
126 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:37:20.83 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「ーーーまた、それとは別に、驚きましたよ」
アンジー「………」
キーボ「まさか、ボクに、霊力などというものが宿っているとは……」
真宮寺「……どういう理由かまでは、わからないけどネ」
127 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:39:14.05 ID:Pk9jS6GpO
キーボ(……なぜ、霊力などというものがボクに、ひいては赤松さん達に宿っているのか大変気になるところですがーーー)
キーボ(ーーーここで思考を重ねたところで、おそらく結論は出ないでしょう)
キーボ(そういったことに時間を費やすくらいならば、そうーーー)
キーボ(ーーー赤松さん達の現状、それに加えてこの死後の世界のことを、もっと深く知るべきでしょう)
キーボ(その内容次第では、ボクがこの死後の世界でどう行動するべきかも変わってくるでしょうから)
キーボ(……これからしばらくは、情報収集に集中した方が良さそうですね)
キーボ(そうなると、まず聞くべきはーーーー)
128 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:40:37.44 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「ーーーこれまでの話を振り返ると、赤松さん達は現在、セイレイテイという場所に住んでいて、忙しいんですよね?」
真宮寺「……まァ、そうだネ」
アンジー「………」
キーボ「……赤松さん達は、具体的に、いま何をしているのでしょうか?」
129 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:41:49.75 ID:Pk9jS6GpO
真宮寺「………」
アンジー「………」
キーボ「………?」
キーボ「真宮寺クン? アンジーさん? どうかしたんですかーーー」
真宮寺「ーーー赤松さん達は、目指すもののために、日夜努力しているのサ」
130 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:44:19.28 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「……目指すもの、ですか?」
真宮寺「そうだネ。それぞれ目指すものがある」
真宮寺「それを、この世界での生活基盤にして生きていくために、今を懸命に頑張っているんだ」
アンジー「………」
キーボ「……なんなんですか? 赤松さん達が目指すものって」
真宮寺「……本来ならば、そう簡単に話すようなことでもないけどーーー」
キーボ「………」
真宮寺「ーーー赤松さん達は、【もし仲間が来たら】【無用な心配をかけることのないよう】【自分達のことについて話してくれて構わない】って言ってたからネ」
真宮寺「だから、今回は特例で話すことにするヨ」
キーボ「……わかりました。ぜひ、お願いします」
131 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:45:53.80 ID:Pk9jS6GpO
真宮寺「……ただ、その話は、僕が空鶴さんから貸して貰ってる、あの部屋で行うとするヨ」
真宮寺「いつまでも、食事場で話すわけにはいかないからネ」
キーボ「……そうですね。それでは移動するとしましょう」
アンジー「………」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
132 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:06:17.51 ID:Pk9jS6GpO
ー志波家の屋敷・真宮寺の部屋ー
真宮寺「ーーー部屋に戻ったし、さっそく、みんなについて順番に説明するネ」
キーボ「はい、お願いします」
アンジー「………」
真宮寺「まず……茶柱さん、東条さん、ゴン太君、入間さん、百田君の五人についてだけどーーー」
真宮寺「ーーー彼女達は、死神を目指しているヨ」
キーボ「……そうですか、死神にーーーー」
133 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:08:31.79 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「ーーーって、死神!?」
アンジー「……んー? どうした、キーボ?」
アンジー「ここは死後の世界だよー?」
アンジー「しにがみがいても、おかしくはーーー」
キーボ「そういうことじゃありませんよ!?」
キーボ「確かに、ここは死後の世界! 死神がいてもおかしくはないでしょう!」
キーボ「ですが、死神って言ったら、生きている人を無理やりあの世に連れて行く恐ろしい存在じゃないですか!?」
アンジー「……あー、なるほどねー」
キーボ「なぜ、彼女達はそんな存在になろうとするんです!? というか、人が死神になれるんですか!!?」
真宮寺「……そうだネ。まずはそこから説明しないとネ」
134 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:12:44.73 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「? どういうことですか?」
真宮寺「キーボ君、この世界の死神とは、君が想像しているようなものじゃあないんだヨ」
キーボ「???」
真宮寺「……この尸魂界における死神とは、尸魂界、ひいては現世を護るための存在ーーー」
真宮寺「ーーーいわゆる、世界の管理者なんだヨ」
キーボ「管理者……」
真宮寺「この世界が一つの国だとするならば、死神は兵士に該当するネ」
キーボ「………」
真宮寺「人をあの世に連れて行くというのも間違いではないけれどーーー」
真宮寺「ーーーそれは、何らかの理由で魂魄に不具合を起こし、現世に残ってしまった魂を昇華……わかりやすく言い換えれば、成仏させるということなんだ」
真宮寺「あの世に連れて行くのは、あくまでも、既に肉体が死んでいる人の魂魄だけサ」
真宮寺「だから、生きている人を殺して、無理やりあの世に連れて行くだとかーーー間違ってもそんな存在ではないヨ」
135 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:17:12.99 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーーですが、茶柱さん達は、あくまでも人であって、妖怪などではありませんよね?」
アンジー「………」
キーボ「それが、死神になれるんですか?」
真宮寺「おそらく君は、死神とは……大鎌を手にした黒装束の骸骨であると、想像していると思うけどーーー」
キーボ「? 違うんですか?」
真宮寺「ーーー違うんだヨ」
136 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:19:38.97 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「確かに、死覇装(しはくしょう)と呼ばれる黒い和服は着ているけれどーーー大鎌を手にしているとは限らないし、骸骨でもない」
真宮寺「なぜなら、この、尸魂界における死神とは、人の魂魄が進化した存在を指すのだから」
キーボ「進化?」
真宮寺「そう、進化」
アンジー「………」
真宮寺「人の魂魄は、 “ 真央霊術院 ” ……死神の学校に入学して六年かけることで、死神の魂魄へと、進化を遂げることができる」
真宮寺「基本的に、ネ」
真宮寺「故に、人の魂魄である茶柱さん達も、死神になることは可能だしーーー」
真宮寺「ーーー元が人である以上、人と変わらない姿をしているってわけだヨ」
キーボ「………」
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/09/17(火) 13:22:20.55 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「キーボ君にもわかりやすく言うならーーー尸魂界における死神とは、バージョンアップした人の魂魄なのサ」
キーボ「……人のバージョンアップって、サイボーグか何かですか?」
真宮寺「……サイボーグというよりも、エスパーと呼んだ方が、僕としては適切だと思うネ」
キーボ「……エスパー?」
真宮寺「人から死神への昇華、それは人の魂魄が持つ霊能力、すなわち超能力を鍛えた末に起こる進化現象だ」
真宮寺「たとえば、霊能力を鍛えると、自らの霊力を消費することで、霊術……と呼ばれる超常能力を、扱えるようになる……」
キーボ「!」
真宮寺「……他にも【パワーセンサー】のようなものがなくとも、身体の感覚だけで、周囲に霊力ある魂魄がいるか感知することが可能になるしーーー」
真宮寺「ーーーその相手の霊力の “ 質 ” を感じ取り、相手が死神かそれとも別の存在か、細かく区別することも可能となる」
真宮寺「……それこそ、その霊力ある魂魄がどこの誰か? 個人レベルで区別することだって可能となるのサ」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「……ならば、それはサイボーグというよりもエスパーと言った方が近い」
真宮寺「僕はそう思うヨ」
138 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:23:54.54 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーーなるほど、勉強になります」
真宮寺「……僕の説明が役に立ったようで何よりだヨ」
アンジー「………」
キーボ「……しかし、なぜ茶柱さん達は死神になろうとしているのでしょうか?」
139 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:25:16.19 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「ーーーそうだネ。それについても詳しく説明するヨ」
キーボ「お願いします」
アンジー「………」
真宮寺「……まずは、茶柱さん、東条さん、ゴン太くんの三人について説明させて貰うネ」
キーボ「………」
真宮寺「茶柱さん達三人が死神になろうとしている理由ーーーそれは、恐怖で心の弱った人達を助けたいと思ったからサ」
140 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:27:17.27 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「恐怖、ですか?」
真宮寺「……そう、恐怖」
真宮寺「死神の仕事には、悪霊との戦いも含まれているからネ」
キーボ「………」
真宮寺「……魂魄は、何の処置もされないまま現世に残り続けてしまうと……どういうわけか悪霊に変化することがある」
真宮寺「また、そうして悪霊に変わった魂魄は、なぜか怪物のような姿となり強大な霊力に目覚め、強力な……霊術を扱えることもある」
真宮寺「そうした相手との戦いには、死の危険がつきまとうし、現実として殉職率も高い」
真宮寺「故に、恐怖に呑まれてしまう死神は、決して少なくないんだ」
アンジー「………」
141 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:28:58.53 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……死神って、真宮寺クンが言うには、死者の魂が進化した存在ですよね? 既に死んでいる人が死ぬとはどういうことなのでしょうか?」
真宮寺「……確かにおかしな話に感じるかもしれないけど、死者でも死ぬことはあるんだヨ」
真宮寺「そして、死者が死ぬということは、生身の肉体ではなく魂魄の死を意味している」
真宮寺「魂魄が死すれば、転生することも不可能だ」
アンジー「………」
142 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:31:31.79 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……これが、動植物の魂魄なら、話は別なんだけどネ」
真宮寺「それなら、死んだ動植物の魂魄を食べるなりーーーもしくは、死んだ魂魄を取り込ませる……霊術の使用が許される」
真宮寺「そうして魂魄を、深く大きく、人体に取り込ませることが可能となる」
真宮寺「そういった風に、動植物の魂魄を、自分の魂魄が有するエネルギーなどに溶かして、混ぜ合わせることでーーー」
真宮寺「ーーーその人が転生する際、その人が体内に取り込んだ動植物も一緒に転生させることもできる」
アンジー「………」
真宮寺「……だけど、倫理上、人を動植物と同じように扱うわけにはいかないからネ」
真宮寺「故に、この尸魂界では、人の魂魄が転生する前に死んだ場合、基本的に火葬される決まりとなっている」
真宮寺「そうして、焼かれ、骨と灰だけが残りーーーそれ以外は空気と溶け合い、風に吹かれることになる」
キーボ「………」
143 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:34:07.50 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……そういった死を、死神達は恐れている」
真宮寺「自分達が、骨と灰を残して……風に吹かれるだけの存在になることを恐れている」
真宮寺「絶望的な “ 死 ” を……終わりを迎えることを、とても恐れているんだ」
真宮寺「故に、その恐怖でおかしくなることだってあるし、時に間違いを犯してしまう人だっている」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「それは、覆しようのない、確かな事実なのサ」
144 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:37:01.73 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……だからこそ、茶柱さん達は、誰よりも “ 死 ” を恐れる死神達のために、自分達も死神になろうとしているんだヨ」
キーボ「それは、茶柱さん達も、悪霊と戦う……ということですか?」
真宮寺「それも視野に入れているという話だけどーーー第一志望は死神を救護する部隊に入ることみたいだネ」
キーボ「救護部隊、ですか」
真宮寺「そうだネ。さっき述べた通り、死神と言っても決して不死ではない」
真宮寺「故に、死なせないよう、壊さないよう……霊術や話術で心身ともに支え、全身全霊を込めて救護する部隊も存在する」
真宮寺「そこを、茶柱さん達は第一志望として、入ろうとしているのサ」
キーボ「………」
真宮寺「茶柱さん達……彼女ら三人は、生前の時点で高い戦闘能力を有していた」
真宮寺「それに加えて霊力を持ち、恐怖から人を守ることの大切さを知っている人達でもある」
真宮寺「そんな自分達だからこそ、自分達も死神となり、他の死神達の気持ちと向き合って理解して、支えることも、できるはずだと……」
真宮寺「……そう、信じてーーーー」
145 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:39:10.97 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……茶柱さんらしいですね。生前も死後も、前向きに真っ直ぐ生きているなんて」
キーボ「彼女が死神になれば、影響されて元気になる人も、きっと多く現れることでしょうね」
真宮寺「……そうだネ。その通りだと思うヨ」
キーボ「………」
真宮寺「実際、東条さんも、ゴン太君も……茶柱さんに影響されて元気になった結果、同じ道を選んだわけだからネ」
アンジー「………」
146 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:40:53.22 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……やはり、そうだったんですか」
真宮寺「……そうだネ。君が察している通りだヨ」
真宮寺「東条さんも、ゴン太君も、茶柱さんに影響されて元気になった結果、自分達も同じ道を歩むことに決めたんだ」
キーボ「………」
真宮寺「……だけど、それは決して流されたわけじゃない」
真宮寺「東条さん達が、熟慮の末に、決めたことだ」
真宮寺「それは、わかって欲しい」
147 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:42:44.47 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーーわかってますよ」
キーボ「東条さんも、ゴン太クンも、それぞれ懸命に、必死になって考え抜こうとする人です」
キーボ「そうした上で、茶柱さんと、そして多くの死神達と協力しあいながら、人を恐怖から守ることに決めたーーー」
キーボ「ーーー少なくとも、ボクはそう思っています」
真宮寺「……そうーーー」
アンジー「………」
148 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:44:00.61 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「ーーー以上が、茶柱さん達が死神を目指す主な理由だネーーー」
キーボ「………」
真宮寺「ーーーそして、次は、入間さんと百田君が死神を目指す理由について、説明させて貰うヨ」
キーボ「……お願いします」
149 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:46:25.27 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「それで、入間さん達が死神を目指す理由だけどーーーそれは、尸魂界の科学者となるためだヨ」
キーボ「……科学者? なぜ、科学者になるために死神になる必要があるんですか?」
真宮寺「それは、尸魂界の科学は、基本的に死神が発展させているからだネ」
真宮寺「……霊術を扱える死神でないと、物理的に不可能な実験もあるからサ」
150 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:48:07.07 ID:Vk1V6IAHO
キーボ(なるほど、そういうことでしたか……)
キーボ(……だとすれば、浦原さんも、おそらくは死神でーーー)
真宮寺「……霊術を用いた実験ーーーそうした研究を行う代表的な場所が、瀞霊廷の “ 技術開発局 ” であり、死神しか局員になることを許されない」
アンジー「………」
真宮寺「だから、入間さん達は、科学者になるため、死神を目指すことにしたのサ」
151 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:49:13.38 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……入間さんらしいですね。死後の世界でも研究に打ち込むだなんて」
真宮寺「………」
キーボ「研究のためなら、死神という未知数の存在にだってなれる……」
キーボ「流石は入間さんです」
152 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:50:23.64 ID:Vk1V6IAHO
アンジー「……まあ、美兎は、今まで……霊術のこととか知らなかったからねー」
アンジー「 “ そういう意味での遅れを取り戻すためには、やっぱり自分も、しにがみにならないとー ” って、思ったのかもしれないよー」
キーボ「確かに……入間さんは、科学者としての自分に誇りを持っている人ですからね」
キーボ「それを考えれば、知識面での遅れは、取り戻したくて仕方がないことなのかもしれません」
真宮寺「………」
153 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:51:44.30 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……しかし、入間さんだけでなくーーー百田クンまで科学者を目指すとは驚きでした」
真宮寺「………」
アンジー「………」
キーボ「いったい、百田クンに何があったのでしょうか?」
154 :
◆02/1zAmSVg
[saga ]:2019/09/17(火) 13:53:08.42 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……百田君には、新たな夢ができたのサ」
キーボ「新たな夢……?」
真宮寺「……それを達成するためには、科学者となる必要がある」
真宮寺「だから、死神となり、科学者を目指すことにしたんだヨ」
アンジー「………」
155 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:54:48.19 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……なんなんですか? その、百田クンの新たな夢って?」
真宮寺「……百田君は、行ってみたいんだヨ」
アンジー「………」
キーボ「……行ってみたいって、どこにーーー」
真宮寺「……尸魂界の空の上に、だヨ」
156 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:56:59.65 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーー空の上って……もしかして宇宙のことですか?」
真宮寺「……この死後の世界に、宇宙があるとは限らないヨ」
キーボ「……そうなんですか?」
真宮寺「少なくとも、尸魂界が宇宙進出していることを示す文献は見当たらなかったネ」
キーボ「………」
真宮寺「だけど、尸魂界の遥か上空には、 “ 霊王宮 ” なるものが存在しているということは知った」
キーボ「……レイオウキュウ……?」
真宮寺「そこは、死神の王である “ 霊王 ” ……様とその血族であるとされる王族ーーー」
真宮寺「ーーーひいてはその守護者…… “ 零番隊 ” と呼ばれる死神達が暮らす場所なのサ」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「しかも、霊王宮には、尸魂界、並びに現世が始まった根源があるとされている」
157 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:00:54.24 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「根源、ですか」
真宮寺「そう、根源」
真宮寺「それこそが、霊王様」
真宮寺「……霊王様は、全ての世界の始まりであり楔であり、遥か過去から現在に至るまで、尸魂界と現世を支え続けている存在とされている」
真宮寺「その霊王様を守護する場所が、霊王宮でもある」
真宮寺「そうした未知の場所に対し、百田君は、強く興味を惹かれたようでネ」
真宮寺「霊王宮がどういった場所なのか、霊王様がどういった存在なのか、世界を支えているとはどういうことなのか、それを知りたくてたまらないと、自分の直感が訴えかけて来たそうだヨ」
キーボ「………」
158 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:11:59.22 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「ーーーあァ、断っておくけど、百田君は宇宙に行くことを諦めているわけじゃないからネ?」
キーボ「……そうなんですか?」
真宮寺「そうなんだヨ」
真宮寺「……もっとも、現世の宇宙には行けないだろうけどネ。現在のあそこは、現世で生きている人間が管理運営すべき場所とされているから……」
キーボ「………」
真宮寺「……故に、百田君が行くとすれば、尸魂界の宇宙ということになる。あるかはわからないけどサ」
真宮寺「だから、百田君は、尸魂界の宇宙に行けるようになるために、霊王宮に行こうとしている……」
真宮寺「……そう、百田君が霊王宮に行こうとするのは、この尸魂界に宇宙が存在するか否か、霊王宮でロケットを発射するなどして確認するためでもあるんだヨ」
159 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:15:39.41 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……? いや、レイオウキュウという場所に行かずとも、入間さんに超高性能な天体望遠鏡を作って貰えば、宇宙があるかどうかわかるのでは?」
真宮寺「……残念ながら、現在の霊王宮は、厳重に守護されていてネ。絶対にそこに入れないように、尸魂界の遥か上空には、七十二層以上もの透明な障壁が際限なく広がっているらしいんだ」
キーボ「なっーーー!?」
真宮寺「その透明な障壁が、霊王宮より上の場所から降り注ぐ光の流れを、歪ませてしまう」
真宮寺「だから、どんなに高性能な望遠鏡を使ったとしても、地上から離れ過ぎている場所を細かに見ることはできないんだヨ」
キーボ「空に障壁って……そんなものがーーー」
真宮寺「ーーーその障壁のせいで、夜空や星の光のようなものを地上から見ることはできても、望遠鏡などで細かに見ることは不可能」
真宮寺「なお、障壁は、尸魂界の遥か上空に際限なく広がっているため、地上のどこにいようと、望遠鏡などで宇宙の存在を確かめることはできない」
真宮寺「それに加えて、障壁は非常に頑強で破壊はまず不可能だし……可能だったとしても霊王宮を守る障壁を勝手に破壊なんてすれば、死罪になりかねない」
真宮寺「故に、尸魂界に宇宙が存在するか否かを地上から確かめることはできないのサ」
キーボ「………」
160 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:18:24.23 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「宇宙が存在するか否かどうかを確かめるには、霊王宮の死神に障壁を突破するための……霊術を使って貰い、その力で霊王宮に行かせて貰うしか方法はない」
真宮寺「そうして、霊王宮に行かせて貰い、そこでロケットを発射するなどして確かめるしかない」
真宮寺「……現世において、宇宙飛行士になるためには、そのための試験に合格して宇宙開発局のロケットに乗せて貰う必要があるように」
真宮寺「霊王宮に行くには、霊王宮の死神に障壁を突破するための……霊術を使って貰い、その力で霊王宮に行かせて貰うしか方法はないんだ」
真宮寺「そうした理由もあって、百田君は、まずは自分も死神となって、技術開発局で科学者としての腕を磨き、霊王宮の守護を任される立場を得ようとしているんだヨ」
キーボ「………」
アンジー「………」
161 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:20:28.27 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……奇妙ですね。なぜ、王様やその場所の守護を任されることと、科学者になることがイコールで結ばれるのでしょうか?」
真宮寺「その答えは簡単だヨ」
真宮寺「霊王宮を守護する立場を得るためには、尸魂界全体にとって “ 歴史そのものとなるほどの価値ある何か ” を発明し、霊王様に認められる必要があるからサ」
キーボ「発明、ですか」
真宮寺「そう、発明。入間さんの得意分野だネ」
アンジー「………」
真宮寺「……だけど、発明を成し遂げるには科学者として、相応の知識と実力を身につけなければならない」
真宮寺「そのために百田君は、努力して科学者になろうとしているんだヨ」
162 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:24:37.63 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……そうだったんですか」
アンジー「………」
キーボ「死後の世界でも、夢を叶えようとするだなんてーーー流石は百田クンですね」
真宮寺「……そうだネ。僕もそう思うヨ」
キーボ「……百田クンも、入間さんも、きっとそれぞれの長所をもって、ソウル・ソサエティの名だたる科学者にーーー」
真宮寺「ーーーそれは、まだちょっとわからないけどネ」
163 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:26:46.50 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーーどういうことですか、真宮寺クン?」
真宮寺「………」
キーボ「キミは、百田クンの心の強さを、入間さんの才能のすごさを、信じていないのですか?」
真宮寺「……いや、彼らならば、実力的には信じることはできるヨ」
キーボ「だったら、どうして、二人の未来を疑うようなことを言ったんですか?」
真宮寺「……それは、技術開発局という場所と、百田君や入間さんの性質が合致しているようには思えないからだヨ」
キーボ「性質?」
真宮寺「まァ、正確には、性質というよりも、性格的な相性の問題になるネ……」
真宮寺「……それも、技術開発局の、現局長との、ネ」
164 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:28:17.89 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……?」
真宮寺「……その人と直接話したわけじゃないから断定するようなことは言いたくないのだけれどーーー」
真宮寺「ーーーただ、もし、技術開発局の現局長が、多数が証言する通りの人物だった場合ーーー」
真宮寺「ーーーその人の元で、百田君と入間さんがやっていけるとは、とても思えないネ」
165 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:29:49.00 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……ちょっと待ってください。入間さんならまだしも、百田クンとまで相性が悪いんですか?」
真宮寺「そうだネ。それも致命的なまでに」
キーボ「致命的なまでに百田クンと相性が悪いだなんて、そんなーーー」
真宮寺「百田君のような人だからこそ、だヨ」
真宮寺「……もし、技術開発局の現局長が、多数が証言する通りの人物だった場合、その人の元で百田君がやっていけるはずがない」
真宮寺「僕はそう信じているヨ」
キーボ「………」
アンジー「………」
166 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:35:22.44 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……その現在の局長って、どのような人なんですか? ものすごく気になるんですが……」
真宮寺「それは、言えないかな……」
キーボ「どうして、言えないんですか?」
真宮寺「さっきも言った通り、僕はその人と直接話すことができたわけじゃあない。だから、僕の口から断定するような……偏った認識を植えつけるようなことは、なるべく言いたくないんだヨ」
キーボ「………」
真宮寺「僕は、今を生きる特定の誰かを、デリケートな部分まで評する場合、可能な限りその人と直接話をした上で行いたい」
真宮寺「……そうでないと失礼な気がするんだ。たとえ、相手がどういう人であったとしても」
真宮寺「だから、僕の口から言うことは、とてもじゃないけどできないんだヨ」
キーボ「……そうですか。それなら仕方がないですね」
アンジー「………」
167 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:37:29.19 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「しかし、そうなると、入間さんも百田クンも、技術開発局に入るのは難しそうですね」
真宮寺「……そうだネ。しかも、技術開発局は、瀞霊廷における最先端技術の集まる場所」
真宮寺「そこに行かずして科学者として研究を行うのは、難しいと言わざるを得ないヨ」
キーボ「……他に、研究機関はないんですか?」
真宮寺「……他にあるとすれば、貴族が抱える独自の研究機関になるだろうネ」
キーボ「……貴族?」
真宮寺「……実は尸魂界には、王族だけでなく貴族も存在していてネ。充分な財源を確保できる裕福な家であれば、そこで独自の研究機関を抱えていることはある」
真宮寺「そこでなら、技術開発局のそれには及ばないまでもーーー科学者として研究を行うことはできるはずだヨ」
キーボ「なるほど……」
アンジー「………」
真宮寺「まァ、都合よく貴族の研究機関に勤められるとは限らないけれどーーー入間さんほどの才能や百田君ほどの心の強さがあれば、可能性は高いと思うヨ」
真宮寺「人事としても、あれほどの人材を遊ばせておくのは、避けたいことだろうからネ」
真宮寺「おそらくは、信頼できる貴族が抱える研究機関の元に、配属されるんじゃないかと思うヨ」
真宮寺「……もっとも、技術開発局ではない場所で、どこまで科学者として大成できるかはわからないけどネ」
168 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:38:29.67 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……いや、入間さんなら、持ち前の才能でどうにかできるかもしれないけど、この場合は貴族の元で働くことになるわけだからネ」
真宮寺「どんなに才能があったとしても、あの言動の根本を改めないと、最悪、不敬罪で処断されかねない」
真宮寺「それらを考慮するとーーー」
キーボ「ーーー大丈夫ですよ、入間さんと百田クンならば」
真宮寺「………」
アンジー「………」
169 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:39:42.18 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……入間さんと百田クンなら、きっと上手くやっていけます」
キーボ「あの学園での経験が記憶に残っているのであれば、それと向き合い、己の糧にできる」
キーボ「お互いに必要なところを学び合って補い、支え合うことだってできる」
キーボ「……大変なこともあるかもしれませんがーーーそれでも、今の入間さん達ならば上手くやっていける」
キーボ「ボクは、そう、信じたいです」
170 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:41:11.82 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……そうだネ」
真宮寺「実際、君の言う通り、入間さんと百田君は、今でもお互いに学び合っている」
キーボ「!」
真宮寺「百田君は、 “ 常識の範囲内で ” 可能な限り入間さんと一緒にいるようにして、彼女を通して発想力を学んでいる」
真宮寺「入間さんも百田君を “ 信頼して ” 、彼が自分と一緒にいることを許し、その上で百田君からコミュニケーション能力や精神論を教わっている」
キーボ「………」
真宮寺「……過去と向き合い、己の糧としている」
真宮寺「お互いに必要なところを学び合って補い、支え合っているんだ」
真宮寺「これからも、そう在り続けることを望むヨ」
キーボ「……そうですね」
アンジー「………」
171 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:42:18.82 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「ーーーとりあえずとして、以上が百田君達が死神を目指す主な理由だネーーー」
キーボ「………」
真宮寺「ーーー何か質問はあるかい?」
172 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:43:56.65 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……それでは、二つ、良いですか?」
真宮寺「何かな?」
キーボ「……まず一つ目の質問ですが、死神になろうとしているみなさんは、もう死神学校に入学しているのですか?」
真宮寺「……いや、それはまだだヨ」
真宮寺「みんなも熟慮の末に死神になる道を選んだからネ」
アンジー「………」
真宮寺「死神の学校に入学する手続きをしたのも比較的最近の話だから。まだ入学はできておらず、死神になるための勉強と生活のためのアルバイトを重ねているのが現状だヨ」
キーボ「……わかりました。ありがとうございます」
キーボ「……それでは、二つ目の質問ですがーーー」
キーボ「ーーーと、その前に確認しておきますが、真宮寺クンの話によると、死神はこの世界の管理者側に位置する存在ですよね?」
真宮寺「……そうだけど?」
キーボ「ーーーわかりました。それでは二つ目の質問に移ります」
真宮寺「………」
キーボ「……キミの話の通り、六年かけて死神になれば、現世に関する詳しい情報を得ることは可能なのでしょうか?」
173 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:45:11.39 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……普通に可能だと思うヨ?」
キーボ「!」
真宮寺「どうしてそんなことを聞くんだい?」
キーボ「……いえ、単純に気になっただけです」
アンジー「………」
真宮寺「……まァ、詳しい情報を得るとしても、条件はあるだろうけどネ」
キーボ「条件、ですか?」
真宮寺「そうだネ。たとえば情報の伝達制限などが挙げられるネ」
174 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:46:38.05 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「貴族や死神は、現世の情報を得たとしても、それが尸魂界に混乱を引き起こすような内容である場合、その詳細を民間人に伝えることを禁止されている立場にある」
真宮寺「基本的に、ネ」
真宮寺「なお、これは、何らかの理由で貴族や死神を辞めた場合でも同じだ」
真宮寺「故に、何でも伝えられるわけではないんだヨ」
キーボ「……伝える相手が、一人だけでも、ですか?」
真宮寺「……一人だけでも、間違いなく問題になるヨ」
真宮寺「一人だけだろうと、ルールを破ることを許してしまえば、それが前例となってしまう」
真宮寺「そして、一度ルール破りを許すという前例を作ってしまったが最後、何度も繰り返されかねない。そうなれば、社会全体に致命的な破綻を引き起こす可能性だって生じてくる」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「だから、よほど特別な理由がない限りは、一人たりとも認められないだろうネ」
キーボ「……なるほど、よくわかりました」
175 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 14:47:35.16 ID:Vk1V6IAHO
キーボ(……浦原さんから、いろいろと聞くのは、難しそうですね……)
真宮寺「……さて、そろそろ赤松さん達についての説明に移っても良いかな?」
キーボ「……お願いします」
アンジー「………」
176 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:01:35.93 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「ーーーそれじゃあ、最後に赤松さん、天海君、星君、王馬君の四人について説明するヨ」
キーボ「……赤松さん達は死神になるわけではないんですよね? 何を目指しているのでしょうか?」
真宮寺「……赤松さん達は、芸人を目指しているのサ」
キーボ「芸人……ひょっとして、音楽芸人でしょうか?」
177 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:02:34.06 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……その通りだヨ、キーボ君」
キーボ「………」
真宮寺「赤松さん達は音楽芸人を目指している」
178 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:04:02.18 ID:Vk1V6IAHO
アンジー「ーーー楓はねー、美兎が作ったピアノを弾いてるんだー!」
キーボ「……そうなんですか?」
アンジー「そうなんだよー!」
アンジー「その間に、小吉たちが踊ったり回ったり、いろいろ楽しいショーを見せてくれたりもー!」
真宮寺「……夜長さんの言う通りだヨ」
真宮寺「赤松さん達は、そういったことをして、生計を立てられるようになることを目指しているのサ」
179 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:06:09.69 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ピアノで、ショー、ですか……」
キーボ「……一応確認しておきますが、この死後の世界において、ピアノとはどのくらい一般的なものなのでしょうか?」
真宮寺「……少なくとも、死神達にとっては、そこまで一般的なものではないネ」
キーボ「……確かに、この死後の世界の文化は、平安から江戸時代のそれに近いようですからね」
キーボ「逆にピアノが大流行りしているという方が驚きです」
アンジー「……でもでもー、それでも楓はーーー」
キーボ「ーーーわかっていますよ」
アンジー「……本当にー?」
キーボ「ええ、わかっています」
キーボ「演奏するのは、あの赤松さんですよ?」
キーボ「彼女なら、多少の文化の違いくらい、ものともしない……」
キーボ「『想い』のこもった演奏を、人々の心に届けようとしている。そうでしょう?」
アンジー「……にゃはははー! 大アタリだねー、キーボ!」
真宮寺「……まったくもって、その通りと言わざるを得ないネ」
180 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:07:33.97 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーーただ、それでも気になるところはありますけどね」
真宮寺「……それは、ひょっとして、赤松さんが王馬君と一緒に芸人となったことを気にしているのかな?」
キーボ「ええ、その通りです」
アンジー「………」
キーボ「一緒に芸人になれるということは、今の王馬クンは無害なんでしょうけどーーー」
キーボ「ーーーどうすれば、王馬クンが無害になれるのか、少しイメージしづらいです」
キーボ「いったい王馬クンに、何があったというのでしょうか?」
181 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:10:17.51 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……まァ、赤松さん達と仲良くなったとでも言っておくヨ」
キーボ「仲良く、ですか」
真宮寺「……もっとも、王馬君に、はじめはそんなつもりはなかったらしい」
アンジー「だから、最初はひとりで、どこか違うところに行こうとしてたんだってー」
キーボ「一人で……」
真宮寺「……もちろん、王馬君としては、みんなの気持ちを考えて、一人になろうとしたんだろうけどサ」
真宮寺「それに赤松さん達が気づいて、必死に引き止めたんだヨ」
真宮寺「……赤松さんは、今度こそ、みんなで友達になることを、望んでいたから………」
キーボ「………」
真宮寺「……僕はその引き止めた現場を見たわけではないのだけれどーーー赤松さん達は王馬君と向き合って、根気よく説得したようでネ」
アンジー「最後は、すごく仲良しになって、一緒に芸人になることに決めたんだってー!」
真宮寺「……ただし、王馬君が何を仕出かすかわからないということで、天海君と星君も、王馬君の監視という名目で一緒に芸人になることにはなったんだけどネ」
キーボ「なるほど……そういった事情が……」
182 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:12:05.83 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「ーーー以上で、みんなについての話を終えさせて貰うヨ」
キーボ「ありがとうございます。真宮寺クン、アンジーさんも……」
アンジー「………」
真宮寺「ククク……何かわからないところがあれば、いつでも聞いてくれて構わないヨ?」
183 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:13:22.95 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……それでは、一つ、良いですか?」
真宮寺「うん、何かな?」
キーボ「なぜ、キミ達は、赤松さん達のようにセイレイテイに住まないのでしょうか?」
真宮寺「………」
アンジー「…………」
キーボ「赤松さん達に霊力があったことから考えて、キミ達にも霊力があると考えるのが自然です」
キーボ「なのに、どうして、キミ達は赤松さん達のようにセイレイテイに住まないのでしょうか?」
キーボ「……キミ達は、ボクのように、存在自体がイレギュラーというわけでもないのですから」
キーボ「ならば、霊力さえあれば、問題なく住めるはずですがーーーー」
184 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:14:26.76 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「………」
アンジー「………」
185 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:16:23.62 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……? 二人とも、どうかされたんですかーーー」
アンジー「さあねー? アンジーはよくわからないやー! にゃはははー!」
キーボ「……わからない?」
真宮寺「……アー、とりあえず、僕については答えるヨ」
キーボ「真宮寺クン……?」
真宮寺「君の言う通り、僕は霊力を持っている。だけど、瀞霊廷には住めない」
キーボ「……え?」
アンジー「………」
キーボ「それは、どういうーーー」
真宮寺「近いうちに、消えるからサ」
186 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:17:30.75 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「消える……?」
真宮寺「……僕の霊力は、赤松さん達のそれと違って、期間限定のものなんだヨ」
真宮寺「だから、瀞霊廷に住むことはできないんだ」
キーボ「……期間限定って、どういうことなんですか?」
真宮寺「……詳しいメカニズムは知らない」
アンジー「………」
真宮寺「ただ、魂魄が酷く損壊すると、少しずつ霊力が消えていくこともあるようでネ」
187 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:18:42.22 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「魂魄が、損壊……?」
真宮寺「………」
キーボ「…………」
キーボ「………っ、!!!」
188 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:19:58.60 ID:Vk1V6IAHO
キーボ(ーーーそんな、まさかーーー)
真宮寺「………」
キーボ(ーーー “ あれ ” は、悪意による合成映像ではーーー)
真宮寺「ーーーとにかく、僕の霊力は期間限定のもの」
真宮寺「その消えていく『力』は、何をどうしようと、まず取り戻すこと叶わない」
真宮寺「消えていく速度も徐々に上がり続けーーーいずれは、跡形もなく消え失せるだろう」
キーボ「………」
真宮寺「……瀞霊廷への居住申請が通るはずがないんだヨ」
189 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:21:28.21 ID:Vk1V6IAHO
アンジー「……だからねー、アンジーは、是清もここに住めるよう、空鶴たちにお願いしたんだー」
キーボ「……アンジー、さん、が?」
アンジー「そうだよー、空鶴たちは優しくてねー。行くアテのないアンジーに、この家の掃除をお手伝いする仕事を紹介してくれたんだー」
アンジー「しかも、空鶴たちは、アンジーに仕事を紹介してくれたあと、もう一人募集してたからねー」
アンジー「それで、アンジーが、 “ 是清も ” ってお願いしたら、叶えてくれたのー!」
アンジー「……空鶴たちには感謝しかないよー、にゃはははー!」
キーボ「………」
190 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:22:40.86 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……なぜ、ですか?」
アンジー「………」
キーボ「なぜ、アンジーさんは、自分からーーーー」
191 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:24:22.34 ID:Vk1V6IAHO
アンジー「……あー、キーボ、ちょっとアンジーの部屋に来てくれるー?」
キーボ「えっ……?」
真宮寺「………」
アンジー「来てー?」
キーボ「いや、しかしーーー」
アンジー「いいから、来てー?」
キーボ「……はい」
192 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:25:35.29 ID:Vk1V6IAHO
アンジー「……ごめんね、是清、ちょっと、キーボとふたりで話してくるから、男のお風呂にでも入っといてー」
真宮寺「……わかったヨ、夜長さん」
真宮寺「今のうちに入浴させて貰うとするヨ……」
キーボ「………」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
193 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:00:38.85 ID:o4EGf6bhO
スタスタ……
アンジー「とうちゃーく!」バタンッ
キーボ「……こちらがアンジーさんのお部屋ですか」
アンジー「………」ガチャリ
キーボ「ーーー思っていたよりも、さっぱりしているんですね」
ガラーン……
キーボ「アンジーさんの作品らしきものも見当たりませんしーーー」
アンジー「………」
キーボ「ーーー少し、意外でした」
194 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:02:22.26 ID:o4EGf6bhO
アンジー「……キレイに使わないと空鶴に怒られちゃうからねー」
キーボ「……あー、そういうことでしたか」
アンジー「ーーーって、そんなことよりも、さっきの質問の続きだけど……一応その先を聞かせてくれるー?」
195 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:03:39.85 ID:o4EGf6bhO
キーボ「……わかりました。続きを言わせて頂きます」
キーボ「なぜ、アンジーさんは、真宮寺クンと一緒に住まわせて貰うよう、お願いしたんですか?」
アンジー「………」
キーボ「……淋しさを埋めるためだとしても、それならこの家には、ガンジュ…クン達がいるじゃないですか」
キーボ「あの人達と一緒にいるだけでも、淋しさは吹き飛ぶんじゃないですか?」
196 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:05:14.90 ID:o4EGf6bhO
アンジー「……うんうん、それには島から見える海よりも深いものがあってねー」
アンジー「それを話すと、どうしても是清のことまで話すことになるんだよー。そうしないと意味が通じないからねー」
キーボ「………」
アンジー「まー、是清に聞けば、答えてくれるだろうけど……あの話を是清の口から言うのは、是清としても辛いだろうからねー」
アンジー「だから、今回だけ特別に、アンジーの口から、是清と居候する理由を話すことにするよー」
キーボ「……わかりました。お願いします」
197 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:06:17.89 ID:o4EGf6bhO
アンジー「……それで、アンジーが是清と一緒に住むことを頼んだ理由だけどーーー」
キーボ「………」
アンジー「ーーー “ もう意味はない ” からだねー」
198 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:09:23.60 ID:o4EGf6bhO
キーボ「ーーー “ もう意味はない ” ことは知っています」
キーボ「ここは死後の世界ですし……何より真宮寺クン自身が、 “ あの人 ” に縋ることをやめたようですからね」
キーボ「だとしたら、真宮寺クンが奇怪な行為に手を染める “ 意味はない ” 、故に今の真宮寺クンは無害ーーー」
キーボ「ーーーそう、仰りたいのでしょう?」
アンジー「……うんうん、その通りだよー、キーボ!」
キーボ「確かに、それならば、一緒にいてあげても構わないと、思えることもあるのかもしれませんがーーー」
キーボ「ーーーだからといって、信じられるんですか?」
キーボ「あの、真宮寺クンのことを」
アンジー「………」
キーボ「……ひょっとしたら、かつて自分の中にいた “ あの人 ” が幻だった事実にーーー真宮寺クンは耐えられなくなるかもしれません……」
アンジー「………」
キーボ「……それで、狂乱の果てに、また同じことをーーーー」
199 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:10:55.01 ID:o4EGf6bhO
アンジー「……それはないよ」
キーボ「……なぜ、そう言いきれるんですか?」
アンジー「だって、今の是清はーーーー」
アンジー「ーーー本当の “ あの人 ” のーーー」
アンジー「ーーーそして、みんなの『想い』のために、生きているから」
200 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:12:30.11 ID:o4EGf6bhO
キーボ「……本当の、 “ あの人 ” ?」
アンジー「是清はねー、聞いたんだー」
アンジー「しにがみ、から、 “ あの人 ” の伝言を」
キーボ「………」
アンジー「伝言の内容はねー、是清はー、【是清自身とその友達を大切にして欲しい】って話だったみたいだねー」
キーボ「真宮寺クン、自身の……?」
アンジー「そう、 “ あの人 ” は、それを、是清がこの死後の世界に来たら伝えるよう、しにがみに頼んだんだってー」
201 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:14:44.85 ID:o4EGf6bhO
アンジー「ーーーしにがみが言うには、 “ あの人 ” はどういうわけか、現世で生きていた時のことについて、ほとんど話さなかったみたいでねー」
アンジー「だけど、それでも、是清に言葉を送ることを選んだってー。それも、自分のことじゃなくてー、是清やその友達のことを大切にして欲しい、って、内容の言葉を」
キーボ「………」
アンジー「しかも、しにがみは、 “ あの人 ” は是清が言ってたような人じゃないって、根気よく是清に話したみたいだねー」
アンジー「……だからかなー」
アンジー「是清は、 “ あの人 ” からの伝言を受けてからいろいろ考えてー……人の心を、人の『想い』を、本当の意味で大切にする生き方をするって決めたんだってー」
キーボ「………」
アンジー「……本気の本気で、そう決めたみたいなんだ」
アンジー「だから、もう是清は、大丈夫なんだよー」
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/09/18(水) 13:18:54.19 ID:bBDOsleWO
キーボ「ーーーですが、それは、よく知らない人からの情報ですよね? 真宮寺クンがそういった情報を信じたんですか?」
アンジー「……そうだねー、信じたんだねー」
キーボ「なぜ、信じたのでしょうか?」
アンジー「それはねー、是清が人を観察し続けてきたからなんだってー」
キーボ「……観察ですか」
アンジー「うん、是清は人を観察し続けてきた」
アンジー「だから、長く話しているとー、その人が誰をどう大切に想っているかがわかるみたいー」
アンジー「実際に、しにがみは、 “ あの人 ” はもちろん、伝言の相手の是清のことも、大切に想ってたんだってー」
アンジー「その気持ちが、是清にも伝わったみたいだねー」
203 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:21:03.82 ID:bBDOsleWO
キーボ「……大切って、その死神の人と “ あの人 ” は、いったいどんな関係だったんですか?」
アンジー「先生とー、教え子だねー」
キーボ「………」
アンジー「しにがみは先生でー、 “ あの人 ” は、見習いのしにがみだったんだってー」
キーボ「死神の……見習い?」
アンジー「……なんでもねー? しにがみ学校の生徒は、しにがみとしての『すごい才能』があれば、しにがみの見習いになることがあるんだってー」
アンジー「実際に、 “ あの人 ” は、しにがみとして、『すごい才能』があったみたいー」
アンジー「だから、 “ あの人 ” は、見習いのしにがみでーーー」
アンジー「ーーーその見習いを育てる先生が、是清と話をした、しにがみだったんだってー」
204 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:24:15.03 ID:bBDOsleWO
キーボ「……ちょっと待ってください。 “ あの人 ” は見習いの死神だったんですか?」
アンジー「んー? そう言ってるけどー?」
キーボ「だったら、どうして正式に死神となる前に生まれ変わったんですか?」
キーボ「真宮寺クンが言うにはとっくに生まれ変わったってーーー」
アンジー「ーーーそうしないと、いけない事情があったからだよー」
キーボ「……事情?」
アンジー「……なんでもねー? “ あの人 ” は、虚(ホロウ)……しにがみが言う悪い幽霊の名前なんだけど、その悪い幽霊に襲われて死にかけたみたいなんだよー」
アンジー「それで、なんとか、命は繋げたけど、代わりに魂がすごく傷ついたみたいでねー?」
アンジー「……そのせいで霊力を失ってー、しかも是清と違って、すぐに、ぜんぶ失ってー.……」
アンジー「……瀞霊廷に住む資格を失った後、生まれ変わることになったんだってー」
キーボ「………」
205 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:27:33.03 ID:bBDOsleWO
アンジー「…… “ あの人 ” は、瀞霊廷に住んでいた。だから、住めない人から、差別されやすかったみたいー」
キーボ「差別……」
アンジー「しかも、 “ あの人 ” は、すごい美人さんだったみたいでねー? そういうことを理由に襲われたりすることを、ものすごい、こわがったらしいんだー」
アンジー「……それで、瀞霊廷の外に住むんじゃなくて、すぐに生まれ変わることにしたんだってー」
キーボ「………」
206 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:30:24.41 ID:bBDOsleWO
アンジー「……あー、話を戻すけどー、ふたりはすごく仲の良い見習いと先生だったみたいでねー?」
アンジー「だから、しにがみの先生は、 “ あの人 ” を大切に想ってたしー、伝言相手の是清のことも、大切に想ってたみたいだねー」
アンジー「その気持ちが、是清にも伝わったみたいなんだよー」
キーボ「………」
アンジー「……それで、是清は、しにがみの伝言を信じて、いろいろと考えて考えてーーー」
アンジー「ーーー最後には、【もう人の心を、想いを踏みにじりたくない】って考えるようになって、これまでとは違う生き方を選んだんだー」
キーボ「………」
207 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:32:20.49 ID:bBDOsleWO
アンジー「……それから、是清は、やらなきゃいけないことを考えた」
アンジー「 “ あの人 ” だけじゃない、みんなの心を、想いを、どう大切にすべきか考えた」
アンジー「それで、是清は、アンジーに、みんなに、頭を下げた」
アンジー「いっぱい、いっぱい、頭を下げたんだよ」
キーボ「………」
アンジー「アンジーはねー? そんな是清なら、信じられると思ったんだー」
アンジー「そんな是清と一緒にいれば、それだけ淋しくなくなるって」
アンジー「そう、思ったんだー」
アンジー「だから、一緒に住むことを、空鶴たちにお願いしたんだよー」
208 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:33:56.39 ID:bBDOsleWO
アンジー「……それから、是清は、アンジーが退屈しないように、この家や図書館から借りた本を読んでくれたりーーー」
アンジー「ーーー難しい本で勉強して、アンジーにいろいろ面白い話してくれるようになったんだー」
キーボ「………」
アンジー「……今では、そういう意味でも、一緒にいたいって思える」
アンジー「……この気持ち、そんなにダメかな?」
209 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:34:53.85 ID:bBDOsleWO
キーボ「………」
キーボ「…………」
キーボ「………………」
210 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:38:21.49 ID:bBDOsleWO
キーボ「……それが、アンジーさんの望みならば、誰かが無理に止めるようなことではありませんよ」
アンジー「………」
キーボ「実際に、百田クン達からも止められていないのでしょう?」
アンジー「……うん、解斗たちは、止めなかった」
キーボ「………」
アンジー「……もちろん、最初は止めようとはしたけど、アンジーが良いならって、認めてくれたんだー」
キーボ「……それに加えて、ここの家主のクウカクさん達が、アンジーさん達を任せられる、信頼できる人だった」
キーボ「だからこそ、今の状況が成立している」
キーボ「きっと、そういうことなんでしょう……」
アンジー「………」
キーボ「……ならば、ボクも、アンジーさんの意志を尊重しますよ」
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