吉田春「便器の子?」水谷雫「ハル……あんたどんな耳をしてるの」

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10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/09/01(日) 22:38:14.77 ID:zHu/paS2O
「ハル……起きて」
「んあ? もう朝か?」
「まだ昼間。映画終わったよ」
「便器は? 出てきたか?」
「便器は出てこなかった」
「なんだよ、畜生」

(本当に便器が出ると思っていたとは)

映画が終わり、雫は吉田春を起こした。
どうやら彼はずっと便器の登場を待ち望んでいたようで、そしてついに待ち切れず寝てしまったらしい。なんとも吉田春らしいなと思った。

「ハルくん寝ちゃってたんですか?」
「隣の水谷さんに失礼だろ」
「ミッティに嫌われちゃいますよ〜!」

春が寝ていたことに気づいた夏目さんとササヤンくんに咎められると、彼は素直に謝罪した。

「悪い、雫。いびきうるさくなかったか?」
「全然平気。むしろ感謝してる。ありがとう」

そう雫が返すと、夏目さんとササヤンくんが意外そうに目を丸くして、首を傾げていた。

「そうだ! 名古屋は無事か!?」
「ハル、その前に」
「なんだよ、雫! 俺は名古屋が心配で……」
「先にトイレに行ったら?」
「トイレ? なんで?」
「便器、見たかったんでしょ?」

めずらしく雫が冗談めかしてそう言うと、彼はまた子供みたいに無邪気に笑ってこう返した。

「おう! ポップコーンひねり出してくる!」
「フハッ!」
「ちょっ……ミッティ!?」
「水谷さんが下ネタで笑うなんて珍しいね」

雫は笑った。
心の底から嗤った。
素直に感情を表に出し。
盛大に高らかに哄笑した。

「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

(もう誰にもドライアイスなんて呼ばせない)

名作と呼ばれる映画のラストは賛否の分かれる作品が数多く存在しており、だからこそそれぞれの楽しみ方が見つかるのではないかと思う。
常識やマナーに囚われることなく、素直になることが何よりも重要なのだと雫は結論付けた。


【便器の子】


FIN
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