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【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】後編
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264 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 20:12:32.13 ID:BzfACOqA0
御影「えっ……」
握り締めていた兄さんの杖。
そこから何か、音がして……
御影「……何、これ」
見てみたら、杖の持ち手部分が空洞になってて……中に一枚紙が入ってた。
御影「……」カサッ
【もし俺が死んだ時のために、ここに遺言を残しておく】
御影「……!」
兄さんの、遺言状……?
【もしコロシアイが起きたら、俺は死ぬと思う。だってコロシアイが起きるなら、俺以上に狙いやすいやついないからな】
【実のところ、死ぬ事はあまり怖くないんだ。
元々塔和シティで死ぬと思ってたところを生き残ったからかもな】
【ただ、1つ】
【心残りがあるとするなら、それは……】
【牡丹、お前の事だよ】
御影「っ!」
【お前に何があったかは、わからない。だけどきっとお前は昔の優しい牡丹のままだ】
【だからもし俺がお前を庇って死んだ時、自分のせいだって責めてそうなんだよ……当たってるか?】
【もしそうなら、それは違ってるぞ牡丹】
【お前を守れたなら俺は後悔しない。お前がこの先も生きていけるなら、それ以上の報酬なんてない】
【だから牡丹】
【もしお前がこの先絶望しそうになった時のために……この言葉を、遺しておくな】
265 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 20:20:13.84 ID:BzfACOqA0
【負けないでくれ牡丹】
【俺にとってお前は】
【希望、そのものなんだから】
266 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 20:33:40.29 ID:BzfACOqA0
御影「…………」
【ああ、でも生きてる内にこれ見られたら恥ずかしいな!?】
【牡丹、もし俺が生きてる内にこれ読んだなら……なかった事にしといてくれ!】
御影「…………」
私馬鹿だ。
何が、だめなんだろう。
何が、わかってたんだろう。
兄さんがなんで私を守ってくれたのか。
怜那がなんで私に打ち明けてくれたのか。
そんな事も、きちんと考えなかったのに!
「……」
古黄泉「ハハハハハハッ!」
私の人生に希望なんてない?
なんでそんな事……
「……」ダンッ!
古黄泉「……んっ?」
こんな奴に決められないといけないの!!
「……私は選ばない」
古黄泉「……はあ?」
「あんたみたいな奴の決めた選択肢なんか選ばない!」
「過去に希望があったか!今に希望があるか!未来に希望が待ってるか!」
「それは私が、私自身が決める!」
「あんたが何を言おうと……」
「私はもう、私自身に絶望しない!」
だって私は……!
赤穂牡丹「赤穂牡丹を、希望と言ってくれる人がいるんだから!!」
赤穂政城の、私の大好きなヒーローの妹なんだ!
267 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 20:38:55.78 ID:BzfACOqA0
古黄泉「何を言ってやがる……頭おかしくなったか?」
牡丹「……」
古黄泉「まあいいさ、勝手に拒否してろ。他の連中は……」
牡丹「無駄だよ」
古黄泉「あ?」
牡丹「あんたは、ここにいる誰1人絶望なんてさせられない」
牡丹「それを今、証明してあげるよ」
古黄泉「……ほざくなよ御影!お前に何が出来る!?」
古黄泉「今まで誰かに守られるだけだったお前がぁ!!」
牡丹「……」
そうだよ。
私は今まで守られてばかりだった。
だけど、そんな私がこうして立ち直れたのに。
みんなが、立ち直れないわけがない!!
268 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 20:55:53.65 ID:BzfACOqA0
【ノンストップ議論開始!】
・コトダマ
【真実の追求】
【可能の追求】
【正義の追求】
【未来の追求】
牡丹「あんたには私達を絶望なんてさせられない!」
牡丹「それを今証明してあげるよ!古黄泉幽星!」
古黄泉「出来るものか!お前なんかに!」
古黄泉「この絶望を晴らす事なんてなぁ!」
津浦「【あの人が、共犯者だったかもしれない】……ワタシは……」
道掛「【俺には何も出来ねえのかよ】……!」
佐場木「【……遠見、俺は】」
兵頭「【私には、未来なんて】……」
269 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 21:13:57.05 ID:BzfACOqA0
【あの人が、共犯者だったかもしれない】←【真実の追求】
牡丹「立ち止まらないでよ……!」
牡丹「津浦!顔を上げて!」
津浦「し、しかしMr.古黄泉の言葉が、正しければ……」
牡丹「そんなの本当かわからない!さっきのこいつの言葉を思い出しなよ!」
※※
古黄泉『もちろんだ!この島は設計士グレゴリー・アストラル三世の最高傑作だからな!』
古黄泉『ククッ、最もその使われ方は当初とはだいぶ違うが』
※※
牡丹「あいつははっきり言った!使われ方が当初とは違うって!」
津浦「……!」
牡丹「だったら本当にグレゴリーが共犯者だったのか……それだってわからない!」
牡丹「それにまだ、グレゴリーの名前だって知らないんだよ?」
牡丹「真実を、あいつの事を追い求めよう……津浦!」
津浦「……」
津浦「そう、でした」
津浦「ワタシは……こんなところで、立ち止まっている暇はなかったんでした」
津浦「ありがとうございます、Ms.赤穂」
津浦「ワタシはあの人の事を知りたい……だから!」
津浦「あなたの本当か嘘かもわからない言葉に、傾ける耳はありません!Mr.古黄泉!」
古黄泉「なっ……!?」
270 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 21:15:47.93 ID:BzfACOqA0
【ノンストップ議論開始!】
・コトダマ
【可能の追求】
【正義の追求】
【未来の追求】
牡丹「あんたには私達を絶望なんてさせられない!」
牡丹「それを今証明してあげるよ!古黄泉幽星!」
古黄泉「く、糞……!出来るはずがない!お前なんかに!」
古黄泉「この絶望を、晴らす事なんて!」
津浦「ワタシは迷いません!あの人を知るためにも!」
道掛「【俺には何も出来ねえのかよ】……!」
佐場木「【……遠見、俺は】」
兵頭「【私には、未来なんて】……」
271 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 21:27:42.51 ID:BzfACOqA0
【俺には何も出来ねえのかよ】←【可能の追求】
牡丹「そんな事ない!」
牡丹「道掛……」
道掛「情けねえよ、牡丹ちゃん……俺、こんな時どうすりゃいいのか、わかんねえ!」
牡丹「……ありがとう」
道掛「へっ……?」
牡丹「ずっと、言えてなかったよね」
牡丹「道掛なんでしょ?苗木に襲われた時私を助けてくれたの」
道掛「あっ、それは……」
牡丹「思い返したらさ、私道掛にたくさん助けられてたんだよね」
道掛「……」
牡丹「だから、道掛は何も出来ないなんて事ないよ」
牡丹「少なくとも私に、とってはね」
道掛「…………はっ、あはははははっ!」
道掛「やっぱり俺馬鹿だわ!今の言葉だけで頭ん中スッキリだ!」
道掛「おい古黄泉この野郎!俺は決めたぞ!」
道掛「てめえなんかに牡丹ちゃんも他のやつらも触らせねえ!」
道掛「惚れた女の子も!ここまで一緒に来た仲間も見捨てねえ!」
道掛「そして今思い出したぞ!」
道掛「カモノハシじゃねえ!カモフラージュだってなぁ!!」
古黄泉「馬鹿はこれだから、たちが悪い……!」
272 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 21:31:02.24 ID:BzfACOqA0
【ノンストップ議論開始!】
・コトダマ
【正義の追求】
【未来の追求】
牡丹「あんたには私達を絶望なんてさせられない!」
牡丹「それを今証明してあげるよ!古黄泉幽星!」
古黄泉「なんだよ、これは……!で、出来るはずがない!」
古黄泉「この絶望を、晴らすなんて……!」
津浦「ワタシは迷いません!あの人を知るためにも!」
道掛「出来る事なんか考える前にやる!俺は馬鹿だからなぁ!」
佐場木「【……遠見、俺は】」
兵頭「【私には、未来なんて】……」
273 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 21:42:16.90 ID:BzfACOqA0
【遠見、俺は……】←【正義の追求】
牡丹「胸を張りなよ!」
牡丹「佐場木、いつものあんたらしくないよ……あんなやつ、あんたの嫌いなタイプでしょ」
佐場木「……遠見の時、前回の裁判、俺は結局間違えていた」
佐場木「苗木を懐に入れ、好き勝手させたのも俺だ」
牡丹「それは……」
佐場木「だが」
牡丹「えっ」
佐場木「そんな俺をあいつは赦した。本末転倒だと説教された」
佐場木「そして俺はまだ……あいつとの約束を果たしていない!」
佐場木「正義の追求は俺の人生をかけて行う事だ!常に悩み、苦しみ、そして判決を下すのが俺の仕事!」
佐場木「こんなところで足踏みなどしていられるか……失せろ犯罪者」
佐場木「貴様には有罪を叩きつけてやる!古黄泉幽星!!」
牡丹「なんだ……大丈夫だったんじゃん」
古黄泉「どう、なっている……!?」
274 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 21:44:49.29 ID:BzfACOqA0
【ノンストップ議論開始!】
・コトダマ
【未来の追求】
牡丹「あんたには私達を絶望なんてさせられない!」
牡丹「それを今証明してあげるよ!古黄泉幽星!」
古黄泉「ば、馬鹿な馬鹿な馬鹿な……!」
古黄泉「なんで絶望しない、なんでそんな……!」
津浦「ワタシは迷いません!あの人を知るためにも!」
道掛「出来る事なんか考える前にやる!俺は馬鹿だからなぁ!」
佐場木「貴様に心配される謂れはない!地獄へ落ちろ、犯罪者!!」
兵頭「【私には、未来なんて】……」
275 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 22:02:50.32 ID:BzfACOqA0
【私には、未来なんて】←【未来の追求】
牡丹「負けないで、千……!」
牡丹「千!」
兵頭「牡丹さん……」
牡丹「私との約束、忘れてないよね?」
兵頭「約束……」
牡丹「もう前の裁判みたいに、自分の命を粗末にしないで」
兵頭「ですが、私は……牡丹さんだって」
牡丹「私は、千に側にいてほしい」
兵頭「……!」
牡丹「未来がどうなるかなんて、誰にもわからないよ」
牡丹「だからみんな頑張って、いい未来にしようとする」
牡丹「だから一緒にさ、いい未来を目指そうよ千」
牡丹「私達、友達なんだから」
兵頭「……」
兵頭「諦めて、いました」
兵頭「選挙だって、皆さん諦めていた人なんていなかったのに」
兵頭「どんな強大な相手でも、諦めずに戦い抜く……今も選挙も同じ事」
兵頭「だったら私は……より良い未来を追求します!」
兵頭「牡丹さんと一緒に!」
牡丹「……うん!」
古黄泉「なんで……なんでだ!?」
276 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 22:09:11.79 ID:BzfACOqA0
牡丹「……あんたには私達を絶望なんてさせられない」
牡丹「それが証明されたよ!古黄泉幽星!」
古黄泉「馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!」
古黄泉「なんでそんな希望に満ちた目をしている!なんで絶望が晴れている!」
津浦「【死】か【絶望】……どういたしますか?」
道掛「んなもん決まってるぜ!どっちも選ばないってな!」
佐場木「はっ、犯罪者らしい手口だったが……」
兵頭「ふふっ、正解なんて最初から決まっていましたね」
古黄泉「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!」
古黄泉「オレの思い通りになんでならないんだよ!!」
古黄泉「この、雑魚共がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
277 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 22:13:23.61 ID:BzfACOqA0
【パニックトークアクション開始!】
古黄泉「絶望しろ!絶望しろ!絶望しろ!絶望しろ!絶望しろ!」
古黄泉「お前達に私、オレの計画が……」
古黄泉「認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない!!」
古黄泉【お前達に、希望などあるはずがねえんだよぉ!!】
望
希 追求
の
278 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 22:21:30.02 ID:BzfACOqA0
【希望の追求】
牡丹「これで終わりだよ!」
牡丹「あんたの負けだよ古黄泉幽星!もう私達を絶望なんてさせられない!」
牡丹「希望は私達が自分で追求する!あんたが何を言ったってね!」
古黄泉「あり得ない、お前達なんかに、お前達ごときに……」
牡丹「だから【死】も【絶望】も……私達は選ばない!」
牡丹「それが私達の答えだよ!」
津浦「はい!」
道掛「おう、もちろんだ!」
佐場木「他の選択肢など必要ない……ある意味では貴様の言う通りだったな」
兵頭「これで、終わりですね……!」
古黄泉「ち、ちくしょうが……!」
古黄泉「どいつもこいつも……オレに逆らいやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
喚く古黄泉を無視して私達は投票画面をそのままにする。
そこから誰も投票しないまま。
最後の学級裁判は、終わった。
279 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 22:22:18.09 ID:BzfACOqA0
【学級裁判閉廷!】
280 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/21(木) 22:23:20.61 ID:BzfACOqA0
今回はここまで。
次回第6章完結。
それではまた……
281 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 21:08:50.76 ID:Q/SOe8FA0
佐場木「終わったな」
津浦「そうですね……長い1日でした」
投票ゼロって表示された画面を見て大きく息を吐く。
コロシアイは……終わったんだ。
古黄泉「なんでだ……オレの計画は完璧だったはずだ……」
私達の選択が信じられないのか、古黄泉はガタガタ震えてる。
古黄泉「あり得ない!このオレの、2代目【超高校級の絶望】になる男の計画が……!」
牡丹「……あんたは【超高校級の絶望】にはなれないよ」
古黄泉「なんだと……」
牡丹「ううん、あんたは何にもなれてない」
牡丹「このスクラップブック……それまで小さな記事での扱いだったグレゴリーが有名になったのは4年前……もう1人のあいつがグレゴリーになってから」
牡丹「それにこの島もあいつが設計したなら……あんたは何を設計したの?」
古黄泉「……!」
牡丹「絶望としてだって、あんたは江ノ島盾子に従ってたけど……絶望になりきれてない」
牡丹「今のその反応がそれを物語ってる」
古黄泉「やめろ……」
牡丹「その後あんたは絶望教に逃げ込んで、コロシアイを計画していた苗木に便乗して……」
古黄泉「やめろ……!」
牡丹「あんた、1人で何かをした事あるの?」
牡丹「【設計士】としても、【絶望】としても、クロとしても、黒幕としてもあんたは失敗してる!」
牡丹「この選択肢だってそうしないと、負けるのがわかりきってたからでしょ!」
牡丹「あんたは……希望でも絶望でもない」
牡丹「ただの中途半端なだけの人間なんだよ!古黄泉!」
古黄泉「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
282 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 21:17:34.76 ID:Q/SOe8FA0
古黄泉「くそが……好き勝手言いやがって!」
古黄泉「だけど投票しなかった以上覚悟できてんだろうな……!」
佐場木「道掛!」
道掛「おう!」
佐場木と道掛が私達を庇うように前に立つ。
古黄泉はそんな私達を馬鹿にしたように笑いながら、今までおしおきに使ったスイッチを取り出した。
古黄泉「庇ったところで無駄だ!お前らは全員ここで処刑されて死ぬ!」
津浦「……!」
兵頭「絶体絶命の状況ですね……」
道掛「だとしても、おとなしく処刑なんかされてやるかよ!」
佐場木「最後まで抵抗はするぞ」
古黄泉「それでは!投票放棄したお前らに!スペシャルなおしおきを用意しました!」
牡丹「……」
考えるんだ……この状況をどうにかする方法。
最後まで諦めずに、戦うんだ……!
古黄泉「それでは張り切ってまいりましょう!おしおきターイ――」
283 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 21:18:28.06 ID:Q/SOe8FA0
ドォンッ!!
284 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 21:27:12.04 ID:Q/SOe8FA0
古黄泉がスイッチを押す直前、大きな揺れが裁判場を揺らす。
古黄泉「なっ」
道掛「隙ありだこの野郎!」
それに気を取られた古黄泉の顔を、道掛が思いっきり殴り飛ばした。
古黄泉「ぎっ!?」
飛んだ拍子にスイッチと薬瓶が床に落ちる。
それを佐場木と千が急いで回収した。
古黄泉「は……がっ、なんだ、何が起き……」
古黄泉がスイッチを入れたのか、モニターに海が映る。
海にはモーターボートがあって、その上には1人の男が立っていた。
古黄泉「誰だ……」
『……』
古黄泉「お前誰だぁ!?」
『……自分か?自分は』
切原『未来機関第17支部所属、切原生人だ』
285 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 21:39:55.22 ID:Q/SOe8FA0
牡丹「切原って、確か遠見が言ってた……」
佐場木「あいつの所属していた部隊の、隊長か」
姫埜『あっ、いたわよ!』
歌恋『生人さん!やっと追い付きました……!』
当麻『切原!1人で動くんじゃねえ!』
切原『……お前に言われるとはな』
兵頭「あれは未来機関……」
道掛「助けが来たのか!」
古黄泉「な、なんでだ!この島はステルスと光学迷彩を駆使した要塞だぞ!」
古黄泉「どうやってここを突き止めた!?」
当麻『てめえが古黄泉幽星か……ここの場所を教えてくれた奴がいたんだよ』
古黄泉「……まさかあの狂人!?」
姫埜『確かに【超高校級の狂人】からもメールが届いたわ。だけどそれより早く連絡が来ていたのよ』
古黄泉「ふざけるな!あいつじゃないなら他に誰がいるっていうんだ!」
歌恋『如月怜那さん、という方です』
牡丹「怜那が……?」
切原『いきなり送られてきた救助を求める通信。しかし未来機関に如月怜那という人間はいなかった……故に確認に手間取った』
津浦「Ms.如月は工作員……表向きにはいない事になっていたのでしょう」
当麻『そこに【超高校級の狂人】を名乗る奴からだめ押しみてえに同じ情報が来た……だから俺様達が来たんだよ』
古黄泉「な、な……」
286 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 22:01:02.27 ID:Q/SOe8FA0
牡丹「……如月兄妹は、勝った」
兵頭「えっ?」
牡丹「千を助けた人が言ってた言葉……あれってこういう事だったんだ!」
切原『今からそちらに侵入する』
姫埜『待っててね、もうすぐ救助するから!』
歌恋『それと古黄泉さん、あなたも確保します……!』
当麻『とにかく動くなよ!いいな!』
モニターに映ったボートがこっちに向かってくる。
私達、助かったんだ……!
佐場木「救助が来るか……道掛、古黄泉を拘束するぞ」
道掛「わかったぜ!おとなしくしろよ古黄泉!」
古黄泉「…………」
津浦「っ、Mr.道掛!Mr.古黄泉から離れてください!」
道掛「はっ!?」
古黄泉「おせえよ!」
古黄泉が懐から取り出したボタンを押す。
その瞬間、裁判場の天井が爆発した。
道掛「うおっ!?」
牡丹「大丈夫!?」
古黄泉「ハハハハハッ!オレは捕まらねえ!またいつかお前らを殺しに来てやるよ!じゃあな未来機関!」
瓦礫の向こうにいる古黄泉は笑って、扉に走っていく……あいつまさか!
佐場木「ちっ、逃げる気か!」
道掛「追いかけるか!?」
兵頭「駄目です!完全に分断されて……それにここも崩れます!」
牡丹「とにかく、外に出よう!」
私達も急いで裁判場の出口、エスカレーターに向かう。
その後ろで裁判場はまた爆発して……崩れていった。
287 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 22:14:11.72 ID:Q/SOe8FA0
佐場木「急げ!ここももたない!」
津浦「は、はい……!」
道掛「くそ、最後まであの野郎は変な事しやがって!」
牡丹「はぁ、はぁ……」
走っていくみんなを必死に追いかける。
こんな走った事ないから、胸が痛くなってきた……
兵頭「牡丹さん、大丈夫ですか?」
牡丹「はぁ、はぁ……」
千の言葉にも上手く言葉を返せない。
それでも大丈夫だって伝えるために、手を上げようとして。
私のいた場所が、崩れた。
牡丹「えっ……」
身体が浮く。
引っ張られるように、下に落ちていく。
兵頭「牡丹さん!!」
千が伸ばした手に私も手を伸ばすけど、その手は空を切って。
私は、手を伸ばしたままの格好で……暗闇に落ちていった。
兵頭「牡丹さーーーーーんっ!!」
288 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 22:39:32.82 ID:Q/SOe8FA0
※※
古黄泉「糞、あの女、絶対に殺してやる……」
古黄泉幽星は逃亡用の通路を走りながら自分の計画を狂わせた女への憎悪をたぎらせていた。
古黄泉「御影、牡丹……!」
赤穂政城の妹、ただ病気を抱える事しか出来ない役立たず。
そんな女に、中途半端と評された事は古黄泉のプライドをズタズタに引き裂いていたのだ。
古黄泉「とにかく、まずは脱出して……絶望教に合流だ」
手元には自分が拾ってやった人形に作らせた設計図が大量にある。
これに手を加えれば、また誰かを絶望させる処刑装置に出来るだろう。
古黄泉「オレはまだこれからだ……必ず江ノ島様の後継者として」
「うぷぷぷぷ」
古黄泉「!?」
いきなりの笑い声に足を止める。
古黄泉の視線の先……そこで笑っていたのは。
古黄泉「モノクマ……」
モノクマ「やあやあ古黄泉クン!随分無様な姿だね!」
古黄泉「なんだお前……またあの狂人が操ってんのか?」
モノクマ「あらら、忘れちゃったの古黄泉クン?」
モノクマ「キミのパートナーをさ!」
古黄泉「……お前か」
絶望教で共に仕事してきたもう1人の協力者。
モノクマを操るのがそいつだと気付いた古黄泉は警戒を解く。
古黄泉「お前が来たなら話は早い。本部に戻ると教祖に」
モノクマ「ああ、それなんだけど教祖様からキミに伝言だよ」
古黄泉「伝言?」
289 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 22:40:37.18 ID:Q/SOe8FA0
モノクマ「――古黄泉幽星なんて人間は絶望教にいない」
古黄泉「…………は?」
290 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 22:52:53.59 ID:Q/SOe8FA0
モノクマ「絶望教とキミは無関係!それが教祖様からキミへの伝言だよ!」
古黄泉「な、何を言ってやがる!!オレが今までどれだけ協力したと」
モノクマ「協力ぅ?じゃあ聞くけどさ」
モノクマ「キミ何をしたの?」
古黄泉「何って、お前……」
モノクマ「だってキミが持ってきた設計図ってみんなグレゴリークンの設計図に手を加えたものでしょ?」
モノクマ「しかも加えた部分はどこもかしこも凡庸もいいとこ!はっきり言って誰でも考えつくよあんなの」
古黄泉「なっ……」
モノクマ「それでも野望に燃えてるから今回のコロシアイを見てたのにさ……」
モノクマ「キミ、グレゴリークンのおしおきでわざと機械を崩したでしょ?」
古黄泉「……!」
モノクマ「くだらないよね。自分の処刑装置まで一流のものを設計しちゃう彼に嫉妬しておしおきぶち壊すなんて」
古黄泉「だ、黙れ……!」
モノクマ「後苗木クンの邪魔も随分してくれたよねぇ?キミが邪魔しなければ彼の全滅って願いは達成されてただろうに」
古黄泉「黙れって言ってるだろうがぁ!」
モノクマ「黙るのはお前だよ古黄泉幽星」
古黄泉「……!」
モノクマ「本当に何一つ満足に出来やしない!挙げ句の果てに逃げてまたこっちにすり寄ろうなんていい迷惑だよ!」
古黄泉「オ、オレは……」
モノクマ「だからね古黄泉クン」
291 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 22:54:42.80 ID:Q/SOe8FA0
モノクマ「最期ぐらい、きちんと処刑されてね!」
292 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 23:05:09.80 ID:Q/SOe8FA0
古黄泉「は、あ……!?」
モノクマ「キミは負けたんだ!黒幕として潔くおしおきを受けるのが筋ってものだよ!」
古黄泉「ま、待て」
モノクマ「それでは!今回は超高校級の……あー、設計士でも絶望でもないしなぁ」
モノクマ「よし!【超高校級の雑魚】の古黄泉幽星クンにふさわしいおしおきを用意しました!」
古黄泉「や、やめろ……嫌だ、死にたくない……!」
モノクマ「それでは張り切ってまいりましょう!」
古黄泉「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
モノクマ「おしおきターイム!」
ピコンッ
古黄泉「がはっ!!」
大量の槍が古黄泉の身体を貫く。
しかしその槍は全て……
モノクマ「あらら、全部急所外してるよ。こんなとこまで中途半端なんだねぇ」
古黄泉「い、痛い、痛い……」
モノクマ「せっかく死の絶望を味わえるんだから喜びなよ……キミは絶望なんでしょ?」
古黄泉「た、助けて、誰か、助けて……」
モノクマ「……はぁ」
モノクマ「せいぜい失血死するまでの短い時間を過ごしなよ」
モノクマ「じゃあね、【超高校級の雑魚】古黄泉幽星クン」
古黄泉「あ、が……」
モノクマも消えて暗い通路に血を流す古黄泉だけが残される。
古黄泉「誰か、助け、て……」
失血死するまでの短いようで長い時間……古黄泉は本当の【絶望】を、味わう事になるのだった。
293 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 23:33:27.01 ID:Q/SOe8FA0
【???】
牡丹「んっ……」
あれ、ここは……
牡丹「私確か……逃げる途中で、落ちて……」
でもまるで怪我は、してない……
牡丹「というかここどこ?」
映画館のように、見えるんだけど。
「牡丹」
牡丹「えっ……」
もう聞けないはずの声、それが聞こえて振り向く。
そこには……
赤穂「……」
兄さんが……いた。
牡丹「兄、さん……」
赤穂「ああ、俺だ。髪切ったんだな、よく似合ってるぞ牡丹」
牡丹「……兄さん!」
立ったままの兄さんに抱きつく。
兄さんはちょっと驚いた顔をしてたけど、すぐに私の頭を撫でてくれた。
赤穂「よく頑張ったな……きちんと見てたぞ」
牡丹「うんっ……うんっ……」
赤穂「……」
牡丹「兄さん、私、私ね……兄さんと話したい事がたくさんある」
赤穂「ああ」
牡丹「兄さんとしたかった事も、たくさんある」
赤穂「ああ」
牡丹「……でも、私」
赤穂「……わかってるよ」
牡丹「……」
赤穂「牡丹はまだ生きないと駄目だ。ここは夢かもしれない、死んだ人間の来る場所かもしれない……どちらにしても、牡丹のいるべき場所じゃない」
牡丹「……」
赤穂「待ってる人が、いるんだろ?」
牡丹「……うん」
赤穂「じゃあ、行かないとな」
牡丹「うんっ……」
赤穂「……幸せにな」
牡丹「……うんっ、私、幸せになって……頑張って、生きていくよ……!」
その言葉を待っていたかのように、景色がぼやけていく。
最後に見た兄さんの顔は……
とてもいい、笑顔だった。
294 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 23:46:03.83 ID:Q/SOe8FA0
兵頭「牡丹さん!」
牡丹「……せ、ん?」
津浦「よかった、目を覚ましました!」
道掛「牡丹ちゃん、大丈夫か!怪我してないか!?」
佐場木「落ち着け道掛」
牡丹「私、助かったんだ……どうして……」
兵頭「……これを」
牡丹「あっ、これ……」
兄さんの、杖……なんで折れて……
津浦「多分落ちた時、この杖が引っ掛かって真っ直ぐ落ちるのを防いだんです」
兵頭「私達が見つけた時……この杖が支えになって、瓦礫から牡丹さんを守っていました」
道掛「それで、牡丹ちゃんを安全なところに引っ張り出したんだよ。そしたら……」
佐場木「その杖は折れた。まるで、お前が助かるのを待っていたかのようにな」
牡丹「……」
兄さんの杖が……
牡丹「うっ、ふっ……うううっ……」
兄さんは、最後の最後まで……私を、助けてくれたんだ。
それを理解した私は、泣いた。
みんなに慰められながら、人目なんて気にしないで泣き続けた。
それが、このコロシアイの最後。
長い長い1日の……終わりだった。
295 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 23:49:22.08 ID:Q/SOe8FA0
CHAPT.6【かくして英雄の遺志は希望を救済す】END
生き残りメンバー5人
296 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/22(金) 23:50:10.82 ID:Q/SOe8FA0
今回はここまで。
次回エピローグです。
それでは。
297 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 18:41:55.28 ID:EMP1iceA0
……それから、ほんの少しだけ時は流れて。
298 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 18:57:41.87 ID:EMP1iceA0
道掛「牡丹ちゃん、好きだ!付き合ってくれ!」
牡丹「……えっと、まだ友達でいよう?」
道掛「ぐはぁ!?」
津浦「これで20連敗ですか……Mr.道掛もなかなかタフですね」
兵頭「その気になればストーカーとして罪に問えるのでは?そこのところどうなんです佐場木さん」
佐場木「赤穂次第だろう」
道掛「お前ら!さっきから聞こえてんぞ!?」
牡丹「あはは」
未来機関に助け出された私達はカウンセリングも兼ねて救助してくれた第17支部に籍を置く事になった。
千は最初いていいのかって悩んでたけど、私達の必死の説得と……ここにいる兄さんの同期生の人に何か言われて、残るって決めてくれた。
千にその事を聞いてみたら何でもその先輩は、絶対許されない事をしたのにまだここにいられるって言ってた。
詳しい内容は教えてくれなかったけど……きっとそれは私が知る必要は、ないんだと思う。
299 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 19:23:53.25 ID:EMP1iceA0
和水「随分と賑やかだね」
兵頭「和水さん」
道掛「和水先輩!俺またフラれましたぁ!」
和水「セラピー前に心に新しい傷を負うのはどうかと思うよ道掛クン……」
牡丹「あれ、もうそんな時間?」
佐場木「コロシアイの時とは、やはり時間の感覚が違ってくるな」
和水「いい傾向だね。日々が早く感じるのはそれだけ充実しているという事だよ」
津浦「そんなものなのですか?」
和水「1日1時間1分1秒がまるで永遠のように感じる……」
牡丹「あっ……」
兵頭「……」
津浦「……!」
道掛「うっ」
佐場木「……」
和水「キミ達もコロシアイでそんな地獄のような時間を味わったはず。それと今を比べれば……やはりね」
牡丹「……」
【キミ達も】……その言葉の意味を私達は聞かなかった。
和水「さぁ、今日のセラピーを始めようか」
和水先輩の表情だけでわかったから……多分この人は、私達みたいに誰かを……
300 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 20:01:46.54 ID:EMP1iceA0
牡丹「……迷っちゃった」
セラピーとカウンセリングを終わらせて、トイレに行ったら迷うなんて……
牡丹「昔の私なら、もっと警戒して進んでたんだろうけど……」
それだけ私も変わったって事かな……
牡丹「えっと……」
とりあえず誰かに会えるかもしれないから手当たり次第部屋に入る事にした。
そして入った最初の部屋……そこはどこか雰囲気が違う部屋。
たくさんのコードが繋がったカプセルに1人の男の人が眠ってる。
そしてそのそばに、未来機関の制服を着た1人の女の人が座ってた。
「……あれ?」
牡丹「あっ」
「どうしたの?何か、用かな?」
牡丹「え、えっと、私迷っちゃって」
「……あっ、そっか。あなたがこの前保護されたっていう子だね?」
牡丹「……」
「待っててね、今連絡するから」
牡丹「あ、あの」
「んっ?」
牡丹「その人は……」
「……」
聞いちゃ、いけなかったのかもしれない。
女の人が黙ってしまって、私がそう思った……次の瞬間。
「私の、とてもとても大切な人だよ」
そんな、幸せそうな声が聞こえてきた。
牡丹「……」
「今は、ちょっと色々あって寝てるんだけど……いつ目を覚ますかわからないから私がこうしてそばにいるの」
牡丹「……」
「……あっ、連絡しないとね」
牡丹「きっと」
「えっ?」
牡丹「きっと、起きますよ」
それは、私が言うべき事じゃないかもしれない。
だけどこの人を見てると……そう言いたくなった。
「……ありがとう」
301 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 20:35:36.36 ID:EMP1iceA0
牡丹「……」
この支部の人達も、色々あるみたいだね……
兵頭「牡丹さん」
牡丹「千」
兵頭「隣いいですか?」
牡丹「うん、もちろん」
千が私の隣に座る。
こんな風になるなんて、1ヶ月前は考えられなかったな。
兵頭「牡丹さんは、これからどうします?」
牡丹「これから?」
兵頭「今はこうして、ここの皆さんのお世話になっていますが……いつまでもというわけにはいかないでしょう?」
牡丹「……そうだね。古黄泉の事もあるし」
古黄泉が殺されていたって聞いたのは、私達が保護された3日後の事だった。
犯人は不明。
でも私達は……絶望教の仕業だと思ってる。
兵頭「絶望教も今はおとなしくしていますが……」
牡丹「……千、私ね」
牡丹「――第20支部の支部長になるよ」
兵頭「支部長、ですか?」
牡丹「きっとあのままなら兄さんがなってたはずの支部長」
牡丹「私はその立場になって……戦う」
兵頭「牡丹さん……」
牡丹「兄さんと約束したんだ。幸せになるって」
そのためにも、絶望教をそのままになんて出来ない。
牡丹「……千は、どうする?」
兵頭「……」
牡丹「出来れば私は……」
兵頭「そんなの、決まってるじゃないですか」
302 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 20:57:37.91 ID:EMP1iceA0
「ついていくぜ!」
「ワタシ達も、一緒に行きます」
「奴らを相手にするなら俺達にも声をかけろ」
303 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 21:06:00.85 ID:EMP1iceA0
牡丹「みんな……」
道掛「牡丹ちゃんを守るのが俺のしたい事だしな!」
津浦「あの人を利用した人の仲間なら……ワタシの敵ですから」
佐場木「いずれ地獄に叩き落とさねばならん相手だ。付き合おう」
牡丹「……」
兵頭「私もですよ、牡丹さん」
牡丹「……」
兵頭「私は未来を追い求めると決めました。あなたも幸せを追い求めるために戦うなら、お付き合いしますよ」
牡丹「……あ、ありがとう、みんな」
道掛「よっしゃあ!頑張ろうぜ、死んだ奴らの分もな!」
津浦「Mr.道掛はまずMs.赤穂相手の連敗を何とかしなくてはいけませんね」
道掛「うぐっ」
佐場木「……【まだ】の意味に気付けない内は無理だろうがな」
牡丹「佐場木!」
兵頭「ふふっ」
304 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 21:14:23.07 ID:EMP1iceA0
私は未来に向かって歩いていく。
未来に希望があるか。
怜那が信頼してくれた事に応えられるか。
兄さんとの約束を果たせるか。
みんなの死を、無駄にしないよう生きていけるか。
まだ何もわからないけど。
私はそれを探して、追って、求め続ける。
それが私の一生をかけた探求、追求(クエスト)。
赤穂牡丹の生きる道なんだ。
だから兄さん、見守ってて。
今度会いに行く時は……きっと。
笑って、胸を張って、会いに行くから。
……さぁ、今日も始めよう。
305 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 21:15:52.37 ID:EMP1iceA0
――幸せを追い求めるための戦いを!
306 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 21:17:56.61 ID:EMP1iceA0
エピローグ【新しき英雄の産声】END
307 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 21:22:33.26 ID:EMP1iceA0
【???】
「絶望は滅びない、絶望は何度でも産み落とされる」
「今最後のピースは揃った」
「これより計画の始動を宣言する」
「……最後のコロシアイの、始まりだ」
308 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 21:24:25.40 ID:EMP1iceA0
NEXTSTAGE
【ダンガンロンパ・ラストバレット】
To be continued...
309 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 21:25:47.88 ID:EMP1iceA0
【英雄の杖】を手に入れました!
310 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/23(土) 21:27:45.26 ID:EMP1iceA0
これにてダンガンロンパ・クエストを完結とさせていただきます。
長い道のりでしたが、何とか完結出来たのは皆様のおかげです……
現在進行中の洋館ロンパ、そして次回作にてまたお会いしましょう。
ありがとうございました!
311 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/26(火) 20:57:58.92 ID:Y3ni9E7A0
【第4の学級裁判後】
赤穂「あああああああっ!!」
如月「……!?」
赤穂さんが御影さんに飛び込んで、持っていた杖で突き飛ばす……
それと同時に、床が動いたのを僕は考えるより先に理解しました。
だから、僕は対応出来た。
この後起こる惨劇を、止められた。
如月「……!」
それなのに、僕の脚は動かなかった。
動かなければ、どうなるか理解していたはずなのに。
そして。
そして……
その日、僕の正義は。
死にました。
312 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/26(火) 21:00:08.82 ID:Y3ni9E7A0
EXTRACHAPT【彼が最期に成した正義】
313 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/26(火) 21:11:08.13 ID:Y3ni9E7A0
【如月のコテージ】
如月「……」
赤穂さんが死んだ。
僕がモノクマを破壊した事による連帯責任。
その標的となった御影さんを庇って、殺された。
如月「……」
僕は、赤穂さんを助けられなかった。
違う、僕は……赤穂さんを、見殺しにしたんです。
如月「嫉妬……」
羨ましかった。
御影さんは僕の妹と、怜那と同じ体質で、それなのに彼女は生きていて。
赤穂さんもそんな彼女を大切にしていて、2人は本当に……仲睦まじくて。
如月「……」
モノクマの言うように、死ねばいいなんて思っていない。
だって、僕は誰よりもその痛みを知っていたはずだ。
だから、僕は……
如月「……はは」
僕は……誰に、何を言い訳してるんでしょう?
何を言おうが、僕が赤穂さんを見捨てたのは事実。
僕はもう……正義を語れるような存在ではない。
如月「……」
発電所で拾ってからずっと持っていた怜那のバッジを机の上に置く。
これを持つ資格なんて、僕にはないのだから。
314 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/26(火) 21:50:37.81 ID:Y3ni9E7A0
如月「……」
僕は許されない事をした。
その償いはしなければならない。
如月「そのために僕が出来る事は……やはり、黒幕を殺す事でしょうか」
思わず自嘲の笑みが浮かぶ。
殺す事しか浮かばない……こうして正義のためという芯すらなくなった僕のなんと醜い事か。
如月「モノクマ」
しかしそれも受け入れましょう。
僕は殺人鬼如月怜輝。
なら、それらしくやるだけです。
モノクマ「ハイハイ、なんでしょうか殺人鬼の如月クン!」
如月「コロシアイをします。その代わり僕の提案を聞いてください」
モノクマ「コロシアイをやるのは歓迎だけど提案って?」
如月「僕達の中に黒幕がいると苗木さんは言いました。その黒幕を当てるヒントをください」
モノクマ「えー?コロシアイするならそんなの必要なくない?」
如月「必要なんですよ」
如月「なぜなら僕が殺すのは黒幕ですから」
モノクマ「……あのさ如月クン?」
如月「はい」
モノクマ「そんな提案ボクが受け入れると思う?」
如月「ダメですか?」
モノクマ「ダメに決まってんでしょうが!全く、変な事でボクを」
如月「待ってください」
逃げようとするモノクマの頭を掴みます。
逃げられるわけにはいきませんからね。
モノクマ「ちょっと!ボクへの暴力は」
如月「暴力など振るっていませんよ?ただ話を聞いてもらいたいだけです」
モノクマ「だからダメ!」
なかなか折れませんね……いいでしょう。
長期戦は覚悟の上でしたから。
315 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/26(火) 22:20:01.90 ID:Y3ni9E7A0
【2日後】
如月「僕が外せばあなたの見たい絶望的な展開が見られます。あなたにとっても悪い提案ではないでしょう」
モノクマ「あー!もうわかったよ!やればいいんでしょ、やれば!」
如月「ありがとうございます」
モノクマ「全くまさか2日ぶっ続けで話す事になるとは思わなかったよ……!」
如月「僕は慣れていますから」
モノクマ「こっちはいい迷惑だよ!とにかく、細かいルールは後で伝えるから!せいぜいコロシアイを盛り上げてよね!」
如月「……」
消えたモノクマの寝言を無視して、これからを考えます。
やはりまずは皆さんに話をする必要があるでしょうね。
反応と……他にも確かめたい事がありますから。
如月「…………」
歩道からホテルの方に目を向けます。
……次が最後の殺人になる。
願わくは、その死が2人で済めばいいですね。
黒幕と、僕。
死ぬのは2人で、充分です。
316 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 09:15:58.88 ID:TmOf/wcA0
ホテルに皆さん集まっているようなので、モノクマとの交渉結果を伝えに行きます。
如月「しかし随分と縛ってきましたね……」
あれから現れたモノクマはいくつかのルールを決めました。
1つ、この黒幕当てゲームは僕のみが行う事。
1つ、僕が得た情報を他の皆さんに伝えてはならない。
1つ、殺せるのは1人まで、外した場合おしおきは抵抗しない。
どのみち皆さんを巻き込みたくはないので……たいした障害にはなりませんが。
兵頭「しかし如月さんが赤穂さんを見殺しにしたというのは、モノクマが勝手に言った事です」
道掛「そりゃ、そうなんだけどさ……」
ホテルに近付いてきたところで皆さんの話し声が聞こえてきます。
如月「……」
兵頭「内通者に関しても嘘をついた相手です。信用するに値しないのでは?」
津浦「そう言われると……」
兵頭さん……あなたは優しい人ですね。
以前あなたに自分を殺してほしいと頼まれた時も思いましたが……そんな風に考えられるあなたなら、きっと乗り越えられますよ。
僕とは、違ってね。
如月「それは違いますよ……」
317 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 09:27:07.86 ID:TmOf/wcA0
いきなり僕が現れた事に驚いたのか、皆さんの目が見開かれています。
……これではまだわかりませんね。
御影「っ!?」
佐場木「如月……貴様、今までどこにいた」
如月「モノクマと、少し交渉を」
道掛「こ、交渉?」
兵頭「それより如月さん、今の違うとはいったい」
兵頭さんの声は震えています……無理もないですか。
自分が擁護した相手がそれをこれから否定しようとしているのだから。
如月「赤穂さんの事です」
津浦「えっ……」
如月「モノクマの言う通り、僕は妹が生きて仲睦まじくしている赤穂さんに嫉妬していました」
もし赤穂さんにこの気持ちを吐き出していたら、あの結末は防げたのでしょうか?
いや……そんなもしもに意味はありません。
六山「……認めるの?赤穂くんを見殺しにしたって」
如月「…………」
御影「何とか、言いなよ……」
僕が犯した罪、もしも殺人の手段に見殺しがあるなら既にクロとして裁かれなければならないほどの大罪。
如月「……はい。僕は赤穂さんを、見殺しにしました」
もうそれは取り消せないんですから。
御影「っ!!」
御影さんの瞳が困惑から憎悪の色に染まります。
えぇ、あなたには憎む資格がある、僕を殺す資格がある。
しかし……それだけはさせてあげられません。
なぜなら――
318 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 09:28:24.75 ID:TmOf/wcA0
パンッ……!
319 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 09:39:09.56 ID:TmOf/wcA0
御影「……えっ?」
御影さんに殴られるのは想定していました。
御影さんに罵倒されるのは想定していました。
六山「……」
だからこそ、僕は……あまりに想定外だった彼女の手を避けられませんでした。
なぜですか?
六山「な、なんで、そんな……!」ポロポロ
なぜ、あなたが泣いているんですか?
如月「六山さん……?」
六山「それだけは、その口からそんな言葉だけは聞きたくなかったよ……!」
津浦「Ms.六山!?」
道掛「百夏ちゃん!?」
を泣いて走り去っていく六山さんの姿。
あり得ないのに、その背中に怜那の姿が被ります。
兵頭「……追いかけ、ます」
佐場木「……任せる」
兵頭「如月さん……」
如月「……」
兵頭「私も、聞きたくなかった……否定して、ほしかったです」
覚悟していたはずなのに。
六山さんの事でそれが剥がれたのか、兵頭さんに何も言えません。
結局僕は……
佐場木「……如月、モノクマとの交渉とはなんだ」
如月「……」
佐場木さんの言葉に我に返ります。
佐場木「それを言いに来たんだろう……さっさと話せ」
ありがとうございます、佐場木さん。
危うく目的を忘れてしまうところでした。
如月「……数日内に」
320 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 09:51:34.25 ID:TmOf/wcA0
如月「僕は、このコロシアイ研修旅行の黒幕を殺します」
321 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 10:14:27.77 ID:TmOf/wcA0
佐場木「……貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか?」
如月「あの学級裁判から2日……僕はずっとモノクマと話していました」
経緯を話しながら、僕は皆さんを観察します。
如月「そしてそれはようやく実を結んだ」
如月「モノクマを操る黒幕……それを探しだして殺せるかというゲームを行うと宣言させたんです」
御影「モノクマがそんな……」
モノクマ「うぷぷ、呼んだ?」
道掛「うおっ、出やがった!?」
モノクマ「いやー、如月クンたら本当にしつこくてね!この2日間全く眠れなかったよ!」
確かめる、確かめる。
皆さんの行動を、皆さんの様子を。
津浦「し、しかし黒幕を殺すゲームなんて……あなたは本当にそれを受け入れたんですか?」
モノクマ「如月クンがしっかり特定出来るならそれはそれでありかなって思ってさ!」
思ってもいない事を。
あなたが渡すだろうヒントに真実などないのでしょう?
佐場木「……誰が黒幕かはっきりさせられるというのか」
如月「はい。ヒントはあったので」
正確には、今得ている最中ですが。
道掛「ヒントって黒幕のか!?なんだよそれは!」
如月「すみません、それは話せないんです」
得たヒントを話すのは禁止されていますし、何より……モノクマに悟られるわけにはいきません。
モノクマ「これはあくまでボクと如月クンのゲームだからね!」
御影「何よそれ……!」
モノクマ「うぷぷ、じゃあ如月クン頑張ってね!」
如月「……皆さん、安心してください。僕はこのコロシアイを必ず終わらせます」
モノクマは消え、僕は皆さんに背を向けます。
今この瞬間、僕は確信しました。
322 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 10:16:17.51 ID:TmOf/wcA0
如月「それが僕の、最期の仕事ですから」
僕以外の6人。
――その中に、黒幕はいないと。
323 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 10:34:09.29 ID:TmOf/wcA0
如月「……」
今回、黒幕はおそらくアルターエゴを使用していません。
もしもモノクマがアルターエゴならばあの苗木さんが僕達の中の誰と共犯になる必要性がない。
才能を憎む、皆殺しを画策していた彼が例外を作るとは考えられません。
利用するだけ利用してというケースなら今まで通りにやればいいので、やはり共犯者など必要ない。
それに皆殺し防止のルールだって、苗木さんの意思をくんだアルターエゴなら作らないでしょう。
如月「……」
おそらく彼がもう1人の黒幕の存在を明かしたのは、その黒幕をも殺すため。
僕達に疑心暗鬼を生み出すと同時に、共犯者のアルターエゴという逃げ道を封じ、最終的に1人でも多くの超高校級を抹殺する。
あらゆる悪を見てきた僕だからこそ、ナワキセイという人間ならそれぐらいはやるという確信がありました。
だから僕は皆さんを観察した。
モノクマを拘束して眠らせないようにした上で。
脳を弄って徹夜が苦にならない僕と違って皆さんにはあれはキツかったはず。
事実モノクマは何度も沈黙しそうになっていました……その度に僕が起こしましたが。
そして、あの中に……徹夜させられただろうそんな人間はいなかった。
つまり黒幕は……生き残り以外の中にいる。
それが僕の出した結論でした。
324 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 11:19:01.65 ID:TmOf/wcA0
【スプリングアイランド・死体置き場】
如月「……」
【黒幕は絶望教の男女の協力者の1人である】
モノクマからもらったヒントという建前の誘導に僕は改めて相手が当てさせる気などないと理解します。
しかしおかげで生き残りに黒幕はいないという考えが正しいと思えるわけですが。
如月「……」
生き残りにいない以上考えられる可能性は2つ。
第3者か、死を偽装した人間がいるか。
死の偽装、これに関しては殺された静音さん、四方院さん、鞍馬さん、ジェニーさん、土橋さんは除外していいでしょう。
つまり黒幕は第3者、映像越しにしか死を確認出来なかったクロの薄井さん、グレゴリーさん、苗木さん、遠見さんに絞られるという事。
如月「……ふむ」
わざわざ男女の1人と書いたのは苗木さんが絶望教の協力者と誤認させ、黒幕を女子と思わせたいからでしょうか?
そうだとするなら、遠見さんも除外してよさそうですね。
如月「……さて」
そろそろ皆さんの様子を見に行きましょう。
出来るだけ固まってもらえると、助かるのですが……
325 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 11:30:43.34 ID:TmOf/wcA0
【サマーアイランド・歩道】
如月「……」
歩きながらも黒幕に関する推理はやめません。
そしてちょうど先ほどの考えも合わせて苗木さんを候補から除外したところで。
皆さんがやって来ました。
如月「お疲れ様です」
兵頭「……どうして、ここに?」
如月「具体的には話せませんが、報告ぐらいはしておくべきかと思いまして」
それと、皆さんが無事かの確認も……
津浦「報告……?」
如月「黒幕を3人にまで絞り込みました」
第3者、薄井さん、グレゴリーさん。
この中の誰かが黒幕と見ていいでしょうから。
御影「……!」
如月「佐場木さんと道掛さんにも伝えておいていただけますか?」
御影「待ちなよ!いったいどうやってそんな!」
如月「それは言えないんです。モノクマとの契約なので」
兵頭「またそんな……!」
六山「……させない」
去ろうとした僕の足を力強い言葉が止めます。
振り返って見た六山さんの瞳には、並々ならぬ決意の光が宿っていました。
御影「えっ、六山?」
六山「絶対にさせないよ。もう人なんて殺させない」
如月「……相手は黒幕ですよ?」
わかりません。
なぜ彼女はここまで僕を止めようとしているのか。
六山「それでも!わたしは絶対許さないから……!」
如月「……そうですか」
なぜか居心地が悪くて、僕はそれだけ言って走りました。
まるで……怜那に責められているような。
そんな、気がしました。
326 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 13:47:50.39 ID:TmOf/wcA0
【スプリングアイランド・死体置き場】
如月「……」
【女子の1人は偽名である】
露骨ですね。
翌日に追加としてもらったヒントに僕は心の中でそう吐き捨てます。
やはり推理はこの路線で正しいようですね。
如月「候補は3人……ここからどう絞るか」
薄井さん、グレゴリーさん、そして第3者。
如月「……」
薄井さんは、除外していいかもしれません。
サイキッカーである彼なら処刑の偽装も容易いかもしれませんが……あの時僕は彼の腕を間違いなく砕きました。
あの怪我のままモノクマの操作は難しいでしょうし……モノクマは最初とまるで変わらないように見えましたから。
如月「そうなると……」
黒幕は、グレゴリーさんか第3者。
ここの設備を設計したのがグレゴリーさんなら色々と説明がつきますし、何より彼は仮面を着けて素顔は津浦さんの一件でしか見せた事がない。
彼がそもそも本当にグレゴリーさんなのか……それに誰も答えが出せない。
如月「……」
しかし、これが真実なら……津浦さんにはあまりにも惨い結末になってしまいますね。
如月「……また1日が終わりますか」
皆さんの様子を見に行きましょう。
327 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 14:08:52.31 ID:TmOf/wcA0
如月「佐場木さんや道掛さんは見回りですか……」
おそらく僕を警戒しての事でしょう……皆さんは僕が生き残りの中に黒幕がいると思って行動していると考えているでしょうから。
如月「……」
騙している事に思うところはあります。
しかし全ては黒幕を殺すため。
皆さんには、あと少し我慢してもらいましょう。
女子の皆さんは図書館でしたね……そちらに向かうとしましょうか。
【サマーアイランド・図書館前】
僕が着いたのと同時に、御影さんが図書館から出てきます。
御影「……どうせいるんでしょ。出てきたら?」
彼女はしばらく電子手帳を見ていると……そう声をかけてきます。
どうやら僕を呼んでいるようなので、素直に姿を見せました。
御影「如月」
御影「黒幕は私だよ」
如月「……」
突然の告白。
僕はそれを聞いて、悲しくなりました。
彼女は自分の命を懸けて僕を止めようとしている。
気づいてますか?ご自身の身体が震えている事に。
それでもあなたは嘘をついた。
如月「あなたは優しい人ですね」
ありがとうございます御影さん。
やはり僕は黒幕を殺さないといけないと深く心に刻みました。
お兄さんを見殺しにした僕があなたに出来る償いは。
生かして帰す以外に、ない。
328 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 15:03:03.80 ID:TmOf/wcA0
【スプリングアイランド・死体置き場】
如月「……」
【黒幕はモノクマを全員の目の前で操縦している】
如月「つまりいつもゲーム機を触っている六山さん……」
それが黒幕の導きたい結論ですか。
如月「……ふむ」
黒幕はなぜ六山さんを殺したいんでしょうか。
彼女が偽名ならそこにヒントが?
如月「……少し外に出て考えてみますか」
【中央の島】
佐場木「ぐっ、っ……!」
道掛「佐場木!!」
如月「だから無駄だと言ったんです……」
まいりました。
まさか佐場木さんと道掛さんに見つかってしまうとは……
御影「な、何があったの!」
御影さんまで……これは早めに退散した方がよさそうだ。
如月「佐場木さんが僕を拘束するとおっしゃるので……抵抗させていただきました」
今捕まるわけには……いきませんからね。
如月「佐場木さん……僕はあなたを殺したくありません。退いてください」
佐場木「貴様が黒幕を殺さないというなら聞いてやる……!」
如月「そうですか」
佐場木「っ!」
最大限手加減をしながら佐場木さんを気絶させます。
まさに逃げる犯罪者の姿……ですね。
道掛「佐場木ぃ!!」
如月「気絶させただけです……目覚めたら謝罪を」
御影「待って!私達も黒幕のヒントを見つけたよ!」
如月「……」
御影さんが言うには、黒幕が絶望教の協力者で男女2人という事がわかったと。
如月「――まだそこまで、ですか」
御影さん、それは違いますよ……
御影「えっ……」
如月「……」
御影「待って!ねぇ、待ってよ如月!」
時間の猶予はありません。
いつまた黒幕が動くかわからないのだから。
あそこまで露骨な誘導……黒幕は、近々動くはず。
それだけは、阻止しなければ……
329 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 17:27:08.82 ID:TmOf/wcA0
【オータムアイランド】
如月「……」
どうやら皆さんは病院に集まったようですね。
それがいい、集まれば黒幕も手出しがしにくい……僕が動かない理由にもなります。
如月「……」
津浦さんや兵頭さん、道掛さんが病院に出入りするのが見えます。
おそらく佐場木さんの看病を行っているのでしょうね。
如月「……」
今日も、何事もなく……
如月「……?」
おかしい。
六山さんと御影さんが……出てこない。
六山さんはともかく、御影さんがここまで出てこないのは……
如月「まさか」
2人は、あの場にいない?
如月「……しまった!」
あの誘導から近々動くのは推測していましたが、まさかこれほど早く動くとは!
病院から離れて図書館に向かいます。
急がなければ、黒幕なら御影さんと六山さんを同時に殺害できる機会を見逃すはずがない!
【サマーアイランド・図書館】
如月「……!」
御影「すぅ、すぅ……」
御影さんは……無事ですか。
思い過ごし、だったのでしょうか……
如月「なっ」
しかし安堵しかけた心は壁を見てすぐに否定されます。
【正義の裁きを執行する】
僕を連想させるとしか思えない文章。
そこから黒幕が何をするつもりか容易に想像出来ました。
如月「……六山さん!」
彼女が、危険だ……!
330 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 17:46:33.17 ID:TmOf/wcA0
【スプリングアイランド・桜の大樹】
如月「……!」
いた。
桜の花びらの中で見えたのは、腕と首を掴まれた六山さん。
そして見た覚えのある仮面とマント。
如月「はああああっ!」
叫びと共に間に割って入ります。
そして六山さんを掴んだ腕を――
如月「……!」
今の一撃で腕を折るつもりでしたが、避けられた?
六山「げほっ、こほっ!」
如月「無事ですか六山さん」
六山「お……如月、くん」
「ほう、英雄の登場とはまるで絵物語のようだな?」
この口調……やはり。
如月「グレゴリーさん。あなたが黒幕でしたか」
グレゴリー「フハッ!肯定しよう紅纏いし狂戦士!我こそがこの絶望演舞の担い手にして支配者よ!」
如月「自分で動くとは、それだけ追い詰められているという事ですか?」
グレゴリー「なに、ちょっとした児戯に過ぎん。我としては紅纏いし狂戦士がこの場に召喚された事はむしろ愉快だ」
如月「……津浦さんには悲しい結果となりましたか」
目の前にいる仲間、いえ、裁くべき悪を見据えます。
六山「待って如月くん……!その人はわたし達の知るグレゴリーくんじゃない!」
331 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 18:06:56.58 ID:TmOf/wcA0
如月「……どういう事でしょう」
「なんだよ。さっさとネタバレするなよ、萎えるな」
如月「……あなたは何者ですか」
古黄泉「私は古黄泉幽星。まあこのコロシアイの黒幕で本物のグレゴリー・アストラル三世だ」
如月「……」
本物のグレゴリーさん?
そもそもなぜ六山さんはそれを知っているのか。
色々聞きたい事はありますが……わかる事は1つ。
如月「あなたは裁くべき、悪。それさえわかれば充分です」
古黄泉「はあ、これだから殺人鬼は……六山はどう思う?」
六山「うるさい……!」
古黄泉「あっ、そう。まあ元々殺すつもりだったし……早いか遅いかの違いか!」
如月「……!」
六山さんを突き飛ばして古黄泉さんの拳を受け止めます。
その一撃は、まるで……
如月「これはまさか鞍馬さんの……!」
古黄泉「その通りだ!身体強化薬があればお前とだってやりあえる!あの無能の鞍馬すらあんな風になったんだからな!」
六山「っ、鞍馬くんを馬鹿にしないで……!」
古黄泉「本当の事を言われて怒るなよ!アハハハッ!」
如月「……鞍馬さんに才能はなくとも」
如月「あなたにだけは無能と言われたくないでしょうね」
古黄泉「あ?」
如月「こうして対峙してわかりました」
如月「あなたは悪として、苗木さんにはるかに劣ります」
腹立たしい、という気持ちは初めてでした。
こんな小者に、何人殺された?
こんな小者に……土橋さん、遠見さん、そして。
赤穂さんは……!
如月「来なさい……無能」
古黄泉「てめえ!!」
332 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/11/27(水) 19:16:52.74 ID:TmOf/wcA0
一旦ここまでで。
333 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 19:34:01.38 ID:0WliKnZA0
単調、単純、短絡的。
古黄泉幽星という男の攻撃を捌きながら僕はそう結論づけます。
向こうに身体強化薬がなければ即座に決着がつくだろう相手。
今まで数多く裁いてきた悪の中でも下から数えた方が早い男。
古黄泉「ちっ、ちょこまかと!」
如月「……」
しかしだからこそ身体強化薬の効果は凄まじいの一言でした。
元々鍛えていたらしい鞍馬さんがあれだけの力を持つのは理解できますが、まさか僕がここまで決めきれないとは……
古黄泉「っと!」
六山「……!」
如月「っ!」
六山さんの存在がこの状況をさらに膠着させています。
古黄泉幽星は少しでも六山さんが動けば即座に彼女を殺そうと動き。
僕は彼女への攻撃を無理にでも防がなければならない。
これが殺す戦いばかりしてきた僕への、報いという事なのかもしれません。
しかし、そうだとしても。
僕は……!
334 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 19:36:04.01 ID:0WliKnZA0
古黄泉「うおっ!?」
古黄泉幽星が桜の花びらに足をとられたのか体勢を崩します。
それはやってきた好機……見逃すわけにはいきません。
如月「これで……」
古黄泉「終わりだなぁ!」
六山「如月くん!」
如月「!?」
六山さんの声に、無意識に身体が動きます。
その次の瞬間、僕のいた場所を赤穂さんを殺したあの槍が貫きました。
これが古黄泉幽星の……
古黄泉「ハハハッ!」
六山「あっ!?」
如月「……!」
体勢を立て直したその刹那で、状況は動きました。
六山さんが古黄泉幽星に捕まるという、最悪の形で。
335 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 19:51:29.73 ID:0WliKnZA0
古黄泉「ハハハハッ!やっと止まりやがったな殺人鬼!」
六山「放して……!」
古黄泉「お前もさっきからコソコソと何かしようとしてたな……未来機関に連絡でもするつもりだったか?ハハハハッ!残念だったなぁ!」
如月「……彼女を放しなさい」
古黄泉「あ?それが人にものを頼む態度か?ヒーローの風上にもおけないなぁ!」
六山「っ……!」
腕を折ろうとしているのか、六山さんが痛みを堪えるような声を漏らします。
……この手の、人間が要求しているのはきっと。
如月「六山さんを……放して、ください」
僕が頭を下げた事がそんなに嬉しいのか、古黄泉幽星は高笑いをしています。
頭などいくらでも下げます……少しでもこの状況を打開しなければいけないのだから。
古黄泉「よーし、次は自分でその腕、折ってもらおうか」
六山「!?」
人質を得た途端にこれですか……どこまでも、矮小な悪だ。
如月「……」
そんな悪から彼女を守りきれなかった僕も……とてもヒーローなどと言えない、ですね。
336 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 19:52:28.29 ID:0WliKnZA0
バキッ
337 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 20:30:44.83 ID:0WliKnZA0
如月「っ……!」
古黄泉「ハ、ハハハッ!本当に折りやがった!やっぱり頭のイカれた殺人鬼はやる事が違うなぁ!」
六山「っ、っ……」
垂れ下がった僕の左腕を見た六山さんが泣きそうに顔を歪めます。
そんな顔をしないでください……僕は大丈夫ですから。
古黄泉「ハハッ、じゃあ次は片足を折れよ!しなかったらどうなるかわかるよなぁ!」
如月「……」
その後も、古黄泉幽星の言うがままに僕は自分を傷つけます。
古黄泉幽星……そんなに愉快ですか。
愉快でしょうね、あなたは僕をいつも周りに危害を加えるという形で抑えてきた。
その枷がなくなったと勘違いした僕のせいで赤穂さんは殺され、今も六山さんが危険な状態。
僕自身も、僕を嘲笑いたいぐらいです。
六山「……」パクパク
如月「……?」
六山さんが、何かを言っている?
六山「……」パクパク
如月「……!」
六山さん、あなたは。
古黄泉「ハハハッ!じゃあ次は……!?」
片足だけで跳ねるように古黄泉幽星に向かいます。
古黄泉「なっ、お前!?こっちには人質が」
如月「覚悟の上です……僕も、彼女も!」
六山「……」コクッ
【ここで如月くんが殺されたら、わたしも彼に殺される】
【わたしは……こんな奴に殺されたくない】
【わたしだって、死ぬ覚悟は出来てるから】
【だから2人で、彼を……】
この状況を生んだのは僕の責任。
彼女を殺す事などしたくはない。
しかしこのままではただこの男に殺されるだけ。
だから僕は。
僕は……
古黄泉「や、やめろ、来るな!」
如月「――六山さん、すみません」
六山「わたしも、ごめんね」
交わす言葉はそれだけ。
僕はそのまま、右手で彼女もろとも、古黄泉幽星を――
338 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 20:31:57.12 ID:0WliKnZA0
古黄泉「妹をその手で殺す気か!?」
339 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 20:35:44.67 ID:0WliKnZA0
如月「は」
古黄泉幽星の言葉に、全ての時が、止まりました。
妹?
誰が?
六山さんが、妹?
如月「怜、那?」
「ぁ……」
その名前への反応。
彼女の揺れた瞳。
その全てで、僕が彼女が何者かを、ようやく理解したその時――
340 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 20:37:19.92 ID:0WliKnZA0
怜那の胸から、腕が生えて、僕の右手を、掴んで。
古黄泉「捕まーえたぁ!」
バキッ
341 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 20:52:34.49 ID:0WliKnZA0
如月「っ!」
崩れ落ちる怜那を、まともに動かない身体で受け止めます。
怜那「……」
胸から流れ出す血、それだけでもう手遅れだとわかってしまう。
如月「怜那……なんで、なんで……!」
なんで、生きているのか。
なんで、言ってくれなかったのか。
なんで、なんで、なんで、なんで……
僕の頭を疑問がぐるぐると回って、何も言葉にならなくて。
怜那「……ぉ、兄ちゃ……」
如月「っ!」
怜那が僕のジャケットに何かを忍ばせます。
これは、ゲーム機?
怜那「つうし……ぁ、……し……たす、け……よべ……」
如月「……」
これは通信機?
後少しで助けを呼べる?
怜那「……あの時助けてくれて、ありがとう、お兄ちゃん」
それは、もう虫の息だった怜那が言えるはずもないはっきりした言葉。
だけど確かにそう、言って、怜那は……
古黄泉「ハハハッ!感動の再会即終了!最高に絶望的だなぁ!」
如月「……」
怜那……
わかっています。
僕のやるべき事……
古黄泉「がっ!?」
如月「……」
古黄泉幽星を残った右足で蹴り飛ばし、飛んできた電子手帳を踵で砕きます。
古黄泉「てめえ、まだ!」
まだ気付かせるな、怜那の遺したこれを。
この通信機が、助けを呼ぶまで……守りきる。
それが殺してばかりだった僕の。
最期の、仕事です。
342 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 21:07:05.91 ID:0WliKnZA0
あれから、どれだけ経ったのか。
もうそれがわからなくなってきた頃。
古黄泉「はぁ、はぁ……この野郎……手こずらせやがって……!」
如月「……」
右足も折られた僕は、幹に寄りかかっていました。
古黄泉「ハハッ!だけどこれで終わりだ……最期の言葉くらいなら聞いてやるぞ」
如月「……」
最期の言葉ですか。
こんな男に言う事なんて……ああ、1つありました。
如月「お前は負けますよ。せいぜい幻の勝利に酔ってなさい……雑魚が」
古黄泉「てめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
バキッ!
首を、折りましたか。
本当に、短絡的な……
古黄泉「はぁ、はぁ……!」
でも、いいでしょう。
僕の役目は果たしました。
先ほど聞こえた微かな音……怜那の思いが届いた証。
それさえわかれば、もう充分です。
如月「……」
妹が生きていた事にも気付けず、正義を気取って殺戮を繰り返し、憧れてくれた彼をくだらない嫉妬で見殺しにして、あの子をまた守れなかった愚かな男。
如月「……」
あの電子手帳、この通信……
皆さんの脱出のために、少しぐらいは……役に、立てたでしょうか。
怜那……
馬鹿な、兄で……すみませんでした。
だけど。
身勝手な話ですが。
343 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 21:12:18.90 ID:0WliKnZA0
――あの時、あなたを守れて、よかった。
心臓を貫かれる直前、僕はそんな事を考えて……本当に自分はどうしようもないなと自嘲の笑みを、浮かべて――
END
344 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/01(日) 21:16:49.48 ID:0WliKnZA0
この時如月が時間を稼いだ事で古黄泉は怜那の血の処理、現場の偽装に追われ花びらに埋もれた電子手帳の回収や如月のジャケットにあった通信機は回収したもののしっかり確認する事が出来ませんでした。
345 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 21:30:25.09 ID:gUDYCGQA0
【過去・孤児院】
怜那「お兄ちゃん!」
如月「どうしました怜那?」
怜那「どうしました?じゃないよ!またヒーローごっこして怪我したって聞いたよ!」
如月「……そうは言いますがね、僕はヒーローとして当たり前の」
怜那「妹を泣かせるお兄ちゃんなんかヒーローじゃないもん!」
如月「うっ……そう言われると、何も言えませんね」
怜那「うー!」
如月「わかりました……今度プリンを買ってあげますから」
怜那「ほんと!?やったー!さすがヒーロー!」
如月「……」
怜那「あっ、そういえばお兄ちゃん。まだあのヒーローの言葉遣い真似してるの?」
如月「慣れてしまいまして。小学生らしくないのは理解してますよ」
怜那「うーん、でもお兄ちゃん。テレビのヒーローと同じ言葉遣いしてもヒーローにはなれないよ?」
如月「……キツい事を言いますね」
怜那「本当の事だもーん……けほっ、こほっ!」
如月「怜那!?」
怜那「もう焦りすぎだよー。わたしが咳するなんていつもの事なのに……えっと、薬は……」
如月「……いつか必ず、僕が病気を治しますから」
怜那「……へっ?」
如月「必ず助けますから……僕はヒーローですからね」
怜那「……ほんと?」
如月「はい……ああ、そうです。怜那にこれをあげましょう」
怜那「これお兄ちゃんが大事にしてるバッジ……」
如月「約束の証です。僕は何があっても、怜那のヒーローであり続ける」
怜那「……うん!」
346 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 21:31:51.31 ID:gUDYCGQA0
わたしは、こんな日々が……ずっと続くと思ってた。
優しいお兄ちゃんや、孤児院のみんなと一緒に過ごしながら大人になるのかな、なんて思ってた。
347 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 21:32:40.08 ID:gUDYCGQA0
だけど、わたしのそんな未来の光景は。
あの日、全部壊された。
348 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 21:38:31.89 ID:gUDYCGQA0
【???】
怜那「……」
痛い、痛いよ……
なんで、こんな事に、なっちゃったのかな……
いきなり連れてこられて、怖い人に、身体、切られて……
もう、何も見えない……聞こえない……
わたし、死んじゃうのかな……
怜那「ゃ、だ……ょ……」
お兄ちゃん、助けて……
お兄ちゃ……ん……
「うっ、またあのマッド人を切り刻んだな……」
「んー?こいつまだ……」
「そういえば、あっちに……」
「…………」
「ああ、駄目だ」
「【こんな状態から人は助かるのか?】」
佐木原「確かめたくて仕方がない……!」
349 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 21:46:37.89 ID:gUDYCGQA0
【???】
「……っ、うっ」
佐木原「おー、目を覚ましたか」
「えっ……だ、れ……」
佐木原「俺が誰かなんてどうでもいいだろ?それより新しい身体はどうだ?」
「新しい……身体……?」
男の人が、わたしに鏡を見せる。
「……えっ?」
だけどそこに写ってたのは、わたしの顔じゃない。
佐木原「脳移植した。お前あのままだと死んでたからな」
「……」
佐木原「あのマッドがあんな綺麗な身体残してたのは俺も驚いたけどな……まあ、おかげでお前は助かったわけだ」
この人が、何を言ってるのかは……よくわかんなかったけど。
「……」ポロポロ
生きてる。
それがただ嬉しくて……わたしは、おもいっきり、泣いちゃって。
その日わたし如月怜那は死んで。
その日わたし如月怜那は生まれ変わったんだ。
350 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 22:03:08.25 ID:gUDYCGQA0
【孤児院】
怜那「……」
帰ってきたけど……でも、よく考えたら……
わたし、今までのわたしじゃないんだ……
怜那「どう、しよう……」
神乃木「……あの、どちら様でしょうか?」
怜那「きゃっ」
美魅お姉ちゃん……お兄ちゃんより年下なのに孤児院のまとめ役をしてるお姉ちゃん。
わたしもたくさん遊んでもらって……そんなお姉ちゃんに誰?って聞かれて……すごく、泣きたくなった。
神乃木「えっと……うちの子の、お友達ですか?」
怜那「ぐすっ……え、えっと、お兄ちゃ……如月……くん……います、か」
神乃木「……如月、くん」
お兄ちゃんを呼んで、とにかく話そう。
そう思ってたわたしは……
神乃木「如月くんは……もういません」
怜那「えっ」
神乃木「この前、妹さんが亡くなって……そのまま、いなくなってしまいました」
う、そ……
怜那「……!」
神乃木「あっ!待っ……」
わたしはもう聞きたくなくて、美魅お姉ちゃんから逃げた。
お兄ちゃんがもういない。
みんなはわたしが死んじゃったって思ってる。
怜那「ぐすっ……うええええんっ!」
これから、どうすればいいのかわからない。
わたしは、ひとりぼっちになっちゃったんだ……
351 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 22:27:00.04 ID:gUDYCGQA0
【公園】
逃げたわたしは……でもどこにも行き先がなくて、公園のブランコに乗って泣いていた。
怜那「ぐすっ……」
わたし、どうしたらいいのかな……
お兄ちゃんはいない……わたしの居場所もない……ううん、それ以前に。
怜那「怖い、怖いよぉ……」
人が、怖い。
わたしはまだ小学生だけど……神父様がわたしをあの怖い人に売ったんだって事はわかってた。
あんなに優しい神父様がそうだったのに、他の人がどうかなんてわからない。
怜那「うっ、うっ、ぐすっ」
せっかく生きてるのに、わたし……何も出来ない。
怜那「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ……」
このままずっと泣いて、お兄ちゃんを呼んで……そうするしかないと思ってた。
「だ、大丈夫……?」
だけどそんなわたしに声をかけてくれた人がいた。
怜那「えっ……だ、誰……?」
それはわたしと同じくらいの男の子。
「あっ、えっと、僕は……」
352 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 22:28:49.89 ID:gUDYCGQA0
それがわたしと彼……
鞍馬「鞍馬……鞍馬類だよ」
鞍馬くんとの、出会いだった。
353 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/02(月) 22:30:50.87 ID:gUDYCGQA0
今回はここまで。
明日洋館を更新したいと思います。
354 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/03(火) 23:06:57.64 ID:CRC9dxcA0
申し訳ありません、洋館更新を明日に延期します。
355 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/15(日) 07:00:14.36 ID:L5McoDSA0
【鞍馬の家】
鞍馬「ほら、入って」
怜那「う、うん……」
鞍馬くんに連れられるまま、わたしは彼の家に招かれる事になった。
大人は怖いけど、同い年くらいの鞍馬くんならあんな事にはならないよね……
怜那「えっと、1人なの?パパやママは?」
鞍馬「2人共仕事が忙しいからほとんど帰ってこないんだ」
怜那「そうなんだ……」
だからちょっと大人びてるのかな……
ジュース持ってくるねと鞍馬くんは部屋から出ていって、わたしは1人部屋に取り残される。
怜那「ついてきちゃったけど……これからどうしよう」
わたしを知ってる人なんてどこにもいない。
ううん、お兄ちゃんならきっと話せばわかってくれる。
でも、お兄ちゃんがどこにいるか全然わからない。
怜那「うっ、ぐすっ」
鞍馬「また泣いてる」
怜那「あっ……」
鞍馬「とりあえず、ジュースでも飲んで。そのままじゃ干からびちゃうよ」
怜那「うん……」
あっ、美味しい……
鞍馬「えっと、それで……なんで泣いてたの?僕でよかったら、話聞くよ?」
怜那「……」
言っていいのかな……でも、聞いてくれるっていうなら……
その時のわたしは心細くて、誰でもいいからこの不安を吐き出したくて。
だからわたしは全部話した……本当に全部を。
356 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/15(日) 07:14:43.89 ID:L5McoDSA0
鞍馬「……本当に?」
怜那「……」
信じてくれるわけない。
そんな事わかってた。
体の事、死にかけた事、それを助けてもらった事、居場所がなくなった事。
もしわたしが聞いたら、お兄ちゃんが好きなヒーローの話かな?って思うもん……
鞍馬「そっか……じゃあ今怜那ちゃんは帰る家がないんだ」
怜那「……うん」
鞍馬「……よし!じゃあここにいなよ!」
怜那「……へっ?」
鞍馬「空き部屋ならいっぱいあるし、さっきも言ったけど父さんも母さんも滅多に帰ってこないから」
怜那「で、でも迷惑だよ」
鞍馬「迷惑って誰に?僕がいいって言ってるのに」
それはそうかもしれないけど……
鞍馬「それに……僕も1人だから、少し気持ちはわかるんだ」
怜那「えっ……」
鞍馬「僕、学校行ってないんだ。無駄だから必要ないって言われてて……だから友達もいない」
怜那「……」
鞍馬「怜那ちゃんがここにいてくれると、僕も寂しくないし……男なのに情けないけど」
今のわたしは1人。
今の鞍馬くんも1人。
だから、きっとおかしな事だったのかもしれないけど。
怜那「……ありがとう」
この選択だけが、わたし達の救いだった。
357 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/15(日) 07:38:54.80 ID:L5McoDSA0
その日から、わたしと鞍馬くんの生活は始まった。
それでわかったのは、鞍馬くんはすごく頭がいいって事。
鞍馬が学校に行かなくなった理由もそれが関係してるみたい。
怜那「この本何……?」
鞍馬「とある学者の論文をまとめた物だよ。読んでみる?」
怜那「これなんて書いてあるの……」
それと、鞍馬くんのパパママは本当に帰ってこない。
半年に1回、どちらかが帰ってくればいい方で……わたしが鉢合わせた時も特に気にしてなかった。
わたしは助かったけど……鞍馬くんは辛そうで。
そんな彼を見てわたしが頑張らないと!と思って料理を作ろうとしてみたりもしたんだけど。
鞍馬「……」
怜那「もう料理なんかしない……」
そんな日々を過ごしながら、何年か経って……わたしはある日その記事を見つけた。
358 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/15(日) 07:48:54.96 ID:L5McoDSA0
【犯罪組織壊滅!お手柄高校生は【超高校級のヒーロー】!】
怜那「これ……お兄ちゃん……」
本当にヒーローになったんだ……すごいよお兄ちゃん。
鞍馬「会いに行く?」
怜那「……ううん」
お兄ちゃんはお兄ちゃんの人生を歩んでる。
だったら死んじゃったわたしが会いに行っても……きっと邪魔になるだけだよね。
怜那「類くんを1人にも出来ないし」
鞍馬「それ、怜那には言われたくないよ」
だけどわたしは、1つだけ気になり事があった。
それはインタビューを受けるお兄ちゃんの写真。
……お兄ちゃんの笑顔って、こんなだったっけ。
359 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/19(木) 22:51:04.44 ID:/4KRl62A0
類くんとの日々は幸せな時間だった。
だけどわたしはよく知ってる。
幸せな時間の終わりはいつも突然だって。
怜那「る、類くん」
鞍馬「はぁ、はぁ……」
【人類史上最大最悪の絶望的事件】。
後にそう呼ばれるこの事件が、わたし達の日常を……跡形もなく消し去った。
鞍馬「っ、なんで……!」
怜那「……」
この事件は文字通り人類史上最大最悪で……
鞍馬「僕は、こんな……」
同時に、類くんにとっても絶望的な出来事だった。
類くんは天才、いわゆる神童って呼ばれる人で。
でもその力は……この狂った世界ではなんの意味もなかった。
鞍馬「……」
怜那「……」
そして、わたしは……この状況を生き延びるためなのかな……
まるで昔見た映画のスパイみたいに立ち回れた。
360 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/19(木) 22:52:12.20 ID:/4KRl62A0
鞍馬「……」フラッ
怜那「類くん、どこに行くの?」
鞍馬「……どこに行けば、いいんだろう」
怜那「……」
鞍馬「僕は、何も知らない。外に出る必要なんてほとんどなかった」
鞍馬「だけど世界がこうなって……僕は、ただの大海を知らない蛙でしかないとわかって」
鞍馬「怜那……僕は、どうしたらいいんだろうね」
怜那「……わからない、よ。わたしだって、似たようなものだから」
鞍馬「……」
怜那「でも、それなら探せばいいんだよ!」
鞍馬「探、す?」
怜那「どこに行くか、何をすればいいのか……いくらでも探せるよ」
怜那「わたし達は、生きてるんだから!」
鞍馬「……!」
怜那「そうだ、これあげる!」
鞍馬「これは、バッジ?」
怜那「わたしの大切な物なの。わたしはたくさん心の支えにしてきたから……類くんにも、効果があるといいんだけど」
鞍馬「……ありがとう、怜那」
361 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/19(木) 23:01:40.53 ID:/4KRl62A0
それからわたし達は、2人である組織に保護された。
未来機関。
この絶望的な世界で戦う組織……わたしは工作員の才能があるらしくて、訓練を受ける事になって。
怜那「はぁ……疲れたよ」
鞍馬「怜那」
怜那「類くん!お仕事終わったの?」
鞍馬「一応任された分は……才能がない僕が頼まれる仕事なんて微々たるものだけど」
類くんは、才能がないって言われたらしい。
正直、あの類くんに才能がないなんて未だに信じられない気持ちでいっぱいだけど……
怜那「そんな事言わないでよ。わたしは類くんがいるから頑張れるのに」
鞍馬「……ごめん」
そのせいなのか、類くんはわたしと話す時ぎこちなくなる事が増えてる。
こんな風に気まずくなりたくなんてないのに……
鞍馬「……」
怜那「……」
鞍馬「じゃあ、僕は行くから」
怜那「……うん」
こんなはずじゃ、なかったのにな……
362 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/20(金) 06:45:55.65 ID:PTW+dPwA0
怜那「……類くん!」
その日、訓練を兼ねた任務から帰ってきたわたしは類くんの部屋に飛び込んだ。
類くんが、未来機関の開発した新薬の実験台になったって聞かされたから。
しかもそれが薬剤師の忌村支部長が作った物ならともかく、別のルートで作られた物だって言うから……余計に胸騒ぎがした。
鞍馬「……」
部屋にいた類くんがわたしに向ける視線は、すごく空虚なもので。
なんで、そんな目でわたしを見るの……?
怜那「じ、実験台になったって本当に?なんで、そんな」
鞍馬「そんなの決まっているでしょう」
怜那「…………えっ」
だ、れ……?
鞍馬「僕は希望を求めている。そのために実験台に志願したんです」
あなたは、誰?
鞍馬「それと僕は第1支部に転属になります。二度とあなたと会う事はないでしょう」
鞍馬「さようなら【如月さん】」
怜那「……ぁ」
後からその薬は脳の活性化の代わりに人格に影響を与える物だからと、忌村支部長が作るのを許さなかった失敗作な事。
人格を戻す方法は、ない事を知った。
なんで類くんがそんな薬を飲んだのかもわからないまま。
類くんは、わたしの前から姿を消した。
363 :
◆DXWxLR/SkYo1
[saga]:2019/12/20(金) 09:40:46.00 ID:PTW+dPwA0
六山「……」
類くんがわたしの前からいなくなって1年……任務のために新しい支部の初期メンバーに選ばれたわたしは支部に向かう船に乗っていた。
【絶望の残党】……それが新しい支部の初期メンバーの中にいるって情報。
牽制も兼ねたこの六山百夏って名前に反応する人はいなかったけど……まだ油断は出来ないね。
六山「……」チラッ
だけど驚いたのは……
如月「……」
鞍馬「……」
お兄ちゃんと類くん。
わたしにとって忘れられない2人がここにいた事。
もちろん任務の前に調べたからいるのは知ってたけど……
如月「どうしました六山さん?僕の顔に何かついてるでしょうか」
六山「ううん、なんでもないよ」
お兄ちゃんは結局あの話し方のままなんだ。
グレゴリーくんもそうだけどなんだか芝居がかってるというか……そういえば。
グレゴリーくんは二人一役らしいけどもう1人はどこにいるのかな……
そんな疑問が頭に浮かぶのと同時に……
「うぷぷぷぷ……呑気だねオマエラ」
悪夢はまた唐突に、始まった。
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