一花「BE MY BABY」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:20:04.96 ID:mo/WQEjv0
風太郎「CM? へえ、どんなCMなんだ?」

一花「結構がっつり聞いてくるね、フータロー君……一応まだ公には出せないやつだから、絶対秘密にしてくれるって言うなら、特別に教えてあげてもいいよ」

風太郎「そうか。じゃあ無理に聞く必要もないな」

一花「ちょっ! そこは押してでも聞くところじゃない!?」

風太郎「いや、そこまで興味ない」

一花「相変わらずデリカシーがないっていうか、乙女心のなんたるかがわかってませんなー」

風太郎「悪かったな、デリカシーのない男で。そんなことより、さっさと勉強始めるぞ。今は少しでも時間が惜しい」

一花「ああもう、わかったってば! 教えるから! タダで教えるからもうちょっと食いついてよ! コミュニケーションとろうよ!」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:21:54.01 ID:mo/WQEjv0
風太郎「しょうがねえな。そこまで言うなら聞いてやらないでもない」

一花「いいようにもてあそばれてる気がするなー。ま、いいか…実は今度、シャンプーの新作が出るんだけど、そのCMに出演することが決まってさ。結構大きな仕事だからきちんと練習しておこうかと思って、歌いながらステップしてたわけ」

風太郎「シャンプーのCMで歌とステップ? イロモノ系…とかじゃないよな」

一花「変なのではないよ。最近では珍しいタイプだとは思うけど。『いち髪』って名前のシャンプーだから、私の名前とかけてるのかも」

風太郎「ああ、一花だけに……」

一花「ちょっとオヤジギャグっぽいよね」

風太郎「まあな。で、CMの内容は?」

一花「ふふっ、気になってきた?」


風太郎「……少し」

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:23:32.99 ID:mo/WQEjv0
一花「素直なフータロー君に免じて、教えてあげましょう。BE MY BABYの曲に合わせて私がノリノリでステップ踏んで踊ります! それだけ!」


風太郎「それだけ!?」

一花「うん。それだけ」


風太郎「はあ…期待した分、なんかすげえ損した気分だ」

一花「ひど!? セリフが少ない分、演技力もかなり試されるんだよ!」

風太郎「……まあ、言われてみればそうだな。ものの数十秒にかかってる金額だってバカにできないだろうし、適当なものを企業側が許すはずもないか」

一花「そうそう! こういう演技力が試される仕事って、結構燃えてくるんだよね」

風太郎「お前にはうってつけの仕事ってわけだな」

一花「それ、褒めてるのか貶してるのかビミョーにわかりにくいんだけど」

風太郎「まさか。褒めてるさ、それも掛け値なしで」

一花「っ!? えっ、ホント!?」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:24:44.87 ID:mo/WQEjv0
風太郎「ああ。俺には演技のなんたるかなんてこれぽっちもわからないが、どういう女優が人から求められるのかぐらいは想像がつく」

一花「ほうほう」

風太郎「容姿やキャラクターは当然重要だろうが、なによりもまず──上手な嘘がつける女優は食いっぱぐれることはない……違うか?」

一花「間違ってはない、と思う。もちろん例外はあるだろうけど……それにしても…へえ、フータロー君も演技に関して思うところがあるんだ。それって、私が演技の世界に入ったから?」

風太郎「……まあ、多少は影響あるだろ」

一花「あらー、照れてる? 顔真っ赤だよ、フータロー君」

風太郎「うるせえ。人をおちょくってる暇があるなら、練習の一つでもしろよ」

一花「はーい! じゃあ、まずは先生のお手本を見せてほしいでーす!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:26:32.31 ID:mo/WQEjv0
風太郎「誰が先生だ! いつ俺がお前の教師になった──いや、教師ではあるか」

一花「ふふふふふっ。照れ屋さんな先生もかわいいですなあ」

風太郎「くそっ…! ほらっ、台本寄こせ! 一回だけ付き合ってやるから、それが終わったら勉強に移るからな」



カチッ(ボイスレコーダーのスイッチを入れる音)



一花「わかってるよ。もしかすると、フータロー君の演技を見るのはこれが初めてかも……最初の演技だからとか気にしないで、自分の気持ちを嘘偽りなく真っ直ぐぶつけて」

風太郎「ああ。本気のやつ見せてやるから覚悟しとけ」


一花「……うん。どんなの見せてくれるか楽しみだよ」(愉悦)




風太郎「もう離さない〜、君が〜全てさ〜、ビーマイベイベー、ビーマイベイベー」




(デッデッデッデッデッ)


カチッ(テープを止める音)
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:27:47.85 ID:mo/WQEjv0
風太郎「ん? 今なんか変な音がしなかったか?」

一花「君がそこまで言うなら仕方ないよね。私はもちろんオッケーだから…それじゃ、これから末永くよろしくお願いします」

風太郎「……はあ? お前一体なに言って──」


一花「はい。これなーんだ?」

風太郎「ボイスレコーダー」

一花「今、フータロー君はなんて言ってたっけ?」

風太郎「ビーマイベイベー」

一花「だよね。だから、私はオッケーしたんだよ」


風太郎「すまん。ちょっと意味がわからない」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:29:07.39 ID:mo/WQEjv0
一花「ええー、フータロー君って頭良いんじゃなかったっけ? これぐらいの英語はすぐ理解してくれないと困るよ」

風太郎「違う! 俺が言いたいのはそういうことでは──」


一花「違わないよ」


風太郎「……っ!!??」

一花「フータロー君は『俺の彼女になってくれ』って言ったでしょ。だから私はイエスと答えた。そこにおかしなところはないよ」

風太郎「いや、今のは演技指導の一環として言っただけであって、本気で告白したわけじゃない!」

一花「はい」カチッ


『自分の気持ちを嘘偽りなく真っ直ぐぶつけて』

『ああ。本気のやつ見せてやるから覚悟しとけ』

『……うん。どんなの見せてくれるか楽しみだよ』

『もう離さない〜、君が〜全てさ〜、ビーマイベイベー、ビーマイベイベー』




風太郎「」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:31:20.69 ID:mo/WQEjv0
一花「最高の、告白だったよ」(うっとり顔)

風太郎「いやそれはおかしい」

一花「おかしい? 証拠はここ。言質はとったし、あとは実際にカップルらしいことするだけなんだけど……とりあえず──する?」

風太郎「ナニをするつもりなのかは知らないが、俺は絶対認めないぞ!」

一花「ナニってそれは──女の子にそういうこと言わせようとするのは、お姉さんちょっと大人げないと思うな……もしかしてそういうプレイ好き?」

風太郎「黙れ。いいからレコーダーをこっちに寄こせ」


一花「うわお、こわーい。でもダメだぞ。フータロー君は今まで思わせぶりなこと言って、私のことずっと困らせてきたんだから。これはその仕返し…みんなに優しくする癖に、誰かの一番になることもなくフラフラしてたら、恨まれたりもするでしょ。私はね、フータロー君のそういうとこがずっと大好きで、ずっと憎かった。どうしてこの人は私のモノにならないんだろう──これだけアピールしてるのに、なんで振り向いてくれないんだろう。そんなことを四六時中考えてた。仕事のときも、学校のときも、勉強のときも、姉妹みんなで過ごしているときも、ずっとずっとずっとずっと、君のことを考えてた」



風太郎「」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:33:01.18 ID:mo/WQEjv0
一花「君の特別になりたい。君の一番になりたい。どうすれば君の心を掴めるんだろうって考えて…考えて考えて考えた末の結論が、これ。君が異性との色恋に関して受け身だって気がついてからは、早かったよ。いわゆる既成事実ってやつだけど、引っ付いてしまえば君はきっと離れない。離れられない。責任感が人一倍強いから、誰かと結ばれてしまえば最後、籠の中の鳥みたいに静かで大人しくしてくれる。君を求める女はいっぱいいるだろうし、そちらに目移りしちゃうときもあると思う。でも、罪悪感が枷になって行動には移せない。誰かを裏切る悪い自分を、君はきっと許すことができない」

風太郎「お、お前……」(驚愕)

一花「だから、無理やりにでも引っ付いた方が早いって気づいたんだ。これからは君の髪も、肌も、瞳も、爪も、唇も、全部全部全部全部、私のモノ。もう離さない。誰にも渡さない。絶対に五等分になんかしない」

風太郎「ヒッ…ヒィィェェァァ…」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:34:30.32 ID:mo/WQEjv0
一花「ある人がね、私にこう言ってくれたんだ。『我慢せずにしたいことしてほしい』ってさ。あのとき、自分を縛る鎖から解放された気がした──私は私のままでいいんだって、そう思えた」

風太郎「あ、開かない──なんで、入るときは鍵開けたままにしていたのに──誰か! 誰か助けてくれ! 誰かー!!」ガンガンッ!!



一花「これからはずっと一緒だよ、フータロー君」




風太郎「ぎゃあああああああぁぁぁぁ!!!!」

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/04(日) 17:35:30.31 ID:mo/WQEjv0
〈数年後〉


一花「そうやって、ママはパパと結ばれたんだよ」

??「へえ、すごーい。じゃあ私もパパに同じことするー」

一花「ダーメ。パパはママのものだから、するなら他の人にしなさい」

??「ええー!? けちー」


風太郎「血は争えないな…」ブルブルブルッ





good end.
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/04(日) 17:36:35.79 ID:mo/WQEjv0
いち髪で、いこう。
一花お姉さんは周りを気にせず物語をかき回してる方が、いきいきしてると思います。
依頼出してきます。ありがとうございました。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/04(日) 22:52:20.29 ID:WqbmxIV1O

もっと一花で書いて
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 03:25:07.07 ID:3OGoCF73o
この路線で良かったと思うだけどなあ…
なりふり構わないってお姉ちゃん大好き
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