シャニP「邪視?」冬優子「……」

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33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/07/26(金) 17:51:56.05 ID:XLNzjGnq0

ヤツが腰を落とし、四つんばいになり、足を照らす懐中電灯の明かりの位置に、顔を持ってきた。直視してしまった。

昼間と同じ感情が襲ってきた。死にたい死にたい死にたい……。こんな顔を見るくらいなら、死んだ方がマシだ。

視界の端で冬優子が持っていたペットボトルを落として、号泣している。俺も思わずライトを落としてしまう。足元に転がったそれがヤツの体を照らす。意味の分からないおぞましい歌を歌いながら、四つんばいで、生まれたての子馬の様な動きで近づいてくる。右手には錆びた鎌。舌でも噛んで死のうか、と思ったその時。

俺の携帯が鳴った。

一瞬、混濁していた意識がフッと引き上げられる。ポケットから携帯を取り出し、見る。

『杜野凛世』の名前があった。鳴り続けている着信音とともに、次第に意識が明瞭になっていく。



「いやああああああああああ!!」



叫び声sww我に返った。ヤツが冬優子の方に向かっていた。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/26(金) 17:55:20.17 ID:XLNzjGnq0
>>33 すみません誤字がありました

叫び声sww→叫び声で
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/26(金) 17:56:30.98 ID:XLNzjGnq0

身体の底から、力が湧いてきた。ヤツの注意を向けようと出せる限りの大声を出して、地面に落ちた懐中電灯を取り上げ、冬優子の落としたペットボトルを手に取った。

「冬優子! 目を瞑ってろ! 絶対に目を開けるなよ!」

ペットボトルの蓋を開けて、入っている小便をまき散らすように滅茶苦茶に振り回す。馬の嘶きの様な悲鳴が微かに聞こえる。あっという間に重さがなくなっていく。

薄く目を開けて、冬優子が持っていたもう一本のペットボトルを探り当てる。振り回す。悲鳴は聞こえるけれど、まだ確実にそこにいる。中身が空になる。

「プロデューサーさん……!」

俺の右隣から、あさひの絞り出すような、掠れた声が聞こえてきた。同時に、脇腹に何かがぶつかる感覚。ペットボトルであるのはすぐに分かった。

「直接口に含んで……そっちの方が効率が……!」

考えている暇はなかった。ヤツの顔を照らし、視線の外で位置を見る。

拾い上げたペットボトルのに口を付け、小便を口に含み、ライトでヤツの顔を照らしたまま、しゃがんでヤツの顔にしょんべんを吹きかける瞬間、目を瞑る。霧の様に吹く。

さらに口に含み、吹く。吹く。ヤツの目に。目に。

さっきのとはまた一段と高い、ヤツの悲鳴が聞こえる。だが、まだそこにいる。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/26(金) 17:57:58.31 ID:XLNzjGnq0

呼吸がドンドン加速していって、頭がクラクラする。このままでは過呼吸になってしまいそうだった。

「あさひも目を瞑れ! 絶対見るなよ!」

あさひからの返事を待たず、俺は最終手段に出た。ズボンも下着も脱ぎ、自分の股間をライトで照らしたのだ。

恐らく、視界に入ったのだろう。言葉は分からないが、凄まじい呪詛の様な恨みの言葉が聞こえてくる。それでも、視界の端でゆっくりとヤツは近づいてきていた。

絶望感が全身を覆いつくす。

迫りくる死の気配に、フッと力が抜けてその場にへたり込んだ。

その時だった。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/26(金) 17:59:19.12 ID:XLNzjGnq0

「あっ…………」

ぐにゅっとした、柔らかな感覚。俺の左手が、何かを押し込んだ。

「あっ、あっ……………………」

力の抜けたような、冬優子の声。同時に、何かが滴り落ちるような微かな音が聞こえてくる。同時に、じわりとした湿り気が左手に染み出した。

直感か、あるいは天啓だったのか。俺は音の発生源に顔を近づけていた。躊躇ってはいられない。目当てのものだとわかって、思い切り顔を埋めて吸い上げる。生暖かく、心なしか濃く感じる味。ヤツの悲鳴が、一段と大きくなる。動きが止まった。

口いっぱいに頬張ったそれを、動きの止まったヤツの目に向かって思い切り吹きかけた。ヤツは、今までのしぶとさが嘘のようにくるっと背中を向けて。ゆっくりゆっくりと移動を始めた。

ライトで背中を照らす。退散する時までも、不気味な歌を歌い、体をくねらせ、ヤツはゆっくりゆっくりと移動していた。

俺とあさひは、ヤツが見えなくなるまでじっとライトで背中を照らし、いつ振り返るか分からない恐怖に耐えながら見つめていた。

永遠とも思える苦痛と恐怖の時間が過ぎ、やがてヤツの姿は闇に消えた。

俺とあさひはしゃくりあげながら泣き出した冬優子を立たせ、そのまま人形の手足を動かすようにして俺の背中に乗せた。

ロッジに戻るまで何も会話を交わさず、黙々と歩いた。

「――皆!! 無事で…………冬優子ちゃん? 冬優子ちゃん大丈夫!? …………あ」

生きてはいたが、大丈夫ではなかった。ストレイライトでは、この日のことを語るのはぶっちぎりのタブーとなった。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/26(金) 18:00:21.91 ID:XLNzjGnq0



「なるほど……それは……」

「冬優子ちゃん、大変だったんですね。……あっ、プロデューサーさんも……!」

半分以上は俺のせいで冬優子に癒えぬ心の傷をつけてしまった「邪視」の騒動から少しして、俺は凛世と霧子だけには事のあらましを伝えていた。

「でも、どうして邪視は逃げて行ったんだろう。別に、最後の……だって、量は多くなかったはずなんだけど」

「それは……」

霧子は苦笑い、凛世は困り顔で応じる。なんとなく、予想はつくんだけど。

「……プロデューサーさん。わたし、邪視さんは不浄なものを嫌うって、言いましたよね。あの……それには、性行為も含まれるんです。だから、その……」

「プロデューサーさまが……最後に行った行為は……それに近しい行為に……酷似しております……」

「な、なるほどね」

色々合わさって威力数倍だったのね。確かに、その時ちんこ出してたし、そうみられても不思議ではないよな。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/26(金) 18:01:18.38 ID:XLNzjGnq0

「えっと、話を戻しますね。邪視っていうのは、世界の広範囲に分布する民間伝承、迷信の一つなんです。悪意を持って相手を睨みつける事によって、対象となった被害者に呪いを掛ける事が出来る、なんて言われています」

「邪視の力によっては……人が病気になり……衰弱していき……ついには死に至る事さえあると聞きます……」

相変わらず、そういう分野に関してのこの二人はとても頼りになる。今回も二人がいなかったらどうなっていたことか。

「……あれ? そういえば、凛世は霧子から俺たちの話を聞いてたんだよな」

夢の方は偶然の可能性が高いけれど、電話は流石にタイミングが良すぎる。着信音で意識が落ち着くのは、染みついた習慣を感じて笑うしかないんだけど、あれに助けられたのは紛れもない事実だ。

違和感を感じる程度の沈黙があった。二人だけに通じる、アイコンタクトのようなものもあったかもしれない。

「プロデューサーさまのことを想えば……不可能など……ございません……」

そう言って、凛世は小さく微笑んだ。


おわり
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/26(金) 18:03:35.76 ID:XLNzjGnq0
原作

洒落怖 「邪視」 
https://irasutoyan.com/2017/02/14/%E9%82%AA%E8%A6%96/

読んでいただいてありがとうございました
ロッジに詳しくないので、細かい間違いは目を瞑っていただけると助かります。というか、設定ボロボロですね。すみません。
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