選択肢は深海棲艦と艦娘。

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32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/14(日) 22:49:58.60 ID:wzxbJCTE0



 それから更に2週間が過ぎた。



 あの後寄せ書きを見た加賀は、なんと素直に自分の非を認めて謝ってくれた。
 すぐに返して貰おうかと思って手を伸ばしたが、彼女は「全部読ませて」と言って離さなかった。



 でもそれを読んでいる時の加賀は、なんだかとても優しい顔をしていたと思う。



 この鎮守府に来て、こんな温かな感情を見せる艦娘を見るのは初めてで、思わずこっちまで顔が綻んだ程だ。



 ただ、やっぱりあの一文にも目を止めてしまった訳で……


 
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/14(日) 22:51:12.01 ID:wzxbJCTE0
>>32

2週間→1週間
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/14(日) 22:59:39.14 ID:ya5bYEeOO



 ただ、やっぱりあの一文にも目を止めてしまった訳で……



「見せるのを躊躇った理由というのは、これ?」

「ああ、そうだよ。正直どうすりゃ良いのか分からん」

「しゃんとなさい。貴方提督でしょう?」

「そうだな。でも実際、俺の料理をみんなが食べてくれるかどうか……」



 例えば俺が集合をかけたって、集まってくれる艦娘達は真面目な朝潮と、他は本当に運の領域に入っている。



 しかし情けなく項垂れる俺を、加賀は叱る事はなかった。それどころか、ワザとらしく咳払いを一つした後


 
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/14(日) 23:23:48.54 ID:ya5bYEeOO



「貴方は提督、そして私は艦娘。なら、分かるでしょう?」

「…………ぇ?」


 突然の言葉に、思わず変な声が出てしまった。
 俺が提督で、加賀が艦娘。それをこのタイミングで切り出すというのは……好意的に解釈しても良いのだろうか?



 不安そうにする俺を見て、加賀は小さく笑い



「任せなさい」

「ーーーー!!」



 今まで誰も自分を提督として接してくれなかったのに、命令には従ってくれなかったのに。



 その言葉が頼もしすぎて、嬉しすぎて、これには少しうるっと来てしまった…


 
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/14(日) 23:25:42.49 ID:ya5bYEeOO

今日はおそらくここまで。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/14(日) 23:26:06.44 ID:/Pss9X93o
おつつ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 10:22:17.28 ID:isLHZ8eA0



 そんなことがあって今日、加賀は18時に食堂へ来るよう俺に言ってきた。



「まだ10時だよなぁ……」



 正直何が起きるのか気が気でない為、俺は先程から何度も時刻を確認している。



 流石に今まで暴力を振るってくるような奴はいなかったが、もしかしたら提督リンチパーティみたいなことが起こるかもしれない。駄目だ、そう思うとまた一気にナイーブな気持ちになってきた。


 
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 10:25:17.54 ID:isLHZ8eA0




 執務室の扉を開け、廊下に出る。
 実はこの鎮守府、執務室よりも廊下や他の部屋の方がよっぽど綺麗だったりするのだ。



 そう、なぜならここには優秀なお掃除トリオがいるのだから。



「何見てんのよクソ提督」


 そしてこの精神状態で、最も会いたくない曙(お掃除リーダー)に出会ってしまった。



 割烹着に身を包んだ彼女は、俺と会話すると大体3秒に1回程のペースで舌打ちをしてくる。


 
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 10:32:48.72 ID:isLHZ8eA0



「曙、おはよう」

「ふん、気安く話しかけんなクソ提督」



 いや、話しかけてきたのお前やろて……



「司令官、おはようございます」

「ああ、朝潮。おはよう」



 同じく掃除トリオである朝潮が、きっちりと敬礼を決めてくれる。
 これに関しては非常にありがたいとは思う。彼女は命令に反抗したりしないし、時間もキッチリ守ってくれる。
 しかし朝潮は……


 
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 10:41:33.15 ID:isLHZ8eA0




「…………」



 このように、事務的な会話以外全くしてこないのだ。さらに、俺から仕事に関係の無い話題を振っても、一言二言、当たり障りのない非常に淡白な返答が返ってくるだけである。


 その癖、曙や潮とは仲が良く、普通に話していたりするのをよく見かける。




 やはり、彼女の様な人当たりの良い艦娘でも、ブラック鎮守府での経験が相当尾を引いている様だ。



「ところでその……潮は?」

「何言ってんの? 潮があんたの部屋の近くに来る訳ないでしょ」

「ですよねー」


 
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 10:47:03.04 ID:isLHZ8eA0



 そう、この2ヶ月間、最も遭遇率の少ない艦娘こそが潮であった。
 彼女は俺を見ると酷く怯え、すぐに何処かへ行ってしまう。



 何でもブラック鎮守府では、年季の入った提督の愛玩動物≠ニ、呼ばれていたらしい。
 正直、想像するだけでも鳥肌が立ってしまう。



「もし潮に手を出したら、あんたの事殺すわよ」

「いいえ。私が殺して、その後私も死にます」

「いやいや、曙も朝潮も物騒な話すんな。そんな事しないから落ち着け」



ーーこいつら怖すぎだろ。朝潮に至っては目がマジなんだけど……


 
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 10:54:44.74 ID:isLHZ8eA0



「ふん、どうだか。どうせあんたも潮の事をいやらしい目で見るんでしょ」

「だから見ないって!」

「根拠は?」

「は、根拠?」



 どうしてここまで曙が潮に拘るかを俺は知っている。
 ブラック鎮守府でも、提督は曙の扱いに困っていて、まるで腫れ物の様だったと聞いた。



 当時曙と潮は同じ鎮守府に所属していて、潮が泣きながら嫌がっているのを、曙は何度も止めていたらしい。


 
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 11:01:29.17 ID:isLHZ8eA0



 しかし提督の手によって曙は地下室に閉じ込められ、拷問の様な事もされたと聞く。
 ようやく悪事を暴かれた提督が辞任に追い込まれ、彼女が地下牢から解放された時、その第一声は喜びでも悲しみでも、自分の事でもなく、「守ってあげられなくてごめんね」という、潮への謝罪だったと聞いた。



 その話を聞いた時、胸が痛くなったのを覚えている。



 だから出来ればずっと気を張っている曙を、少しでも安心させてやりたいと思った。



 俺が潮に変な気を起こさない根拠に、完璧な回答。曙が俺と潮に気を使わなくて良くなる様な、最善の一手。



それは……


 
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 11:07:54.41 ID:isLHZ8eA0



「俺は貧乳が好きだからだっ!!!!」(ドンッ!!)



 高らかに、胸を張って宣言した。本当は巨乳の方が好きだけど、その差は微々たるものだ。
 つまり貧乳も好きな訳で、これは嘘をついてる事にはならない。



 だがこれを聞いた彼女達は勘違いするだろう、あ、潮はノーマークなんだ……と。



 これで曙も安心出来るはず。まさに完璧な回答だったな。



ーーって、え、あれ?


 
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 11:14:16.62 ID:isLHZ8eA0



 俺の発言を聞いた曙と朝潮は、数瞬硬直した後、自分自信を抱き締める様にして、俺から数歩遠ざかった。



「……ねぇ朝潮、明日からここ掃除するの辞めようか。キモいし」

「そ、そうね」

「えぇ……」



 どうやら上手く行く事ばかりではなかったらしい。



 何故かは分からんが、好感度が下がった気がする……


 
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 12:04:19.46 ID:K8U3C3Tko
これはバッドコミュニケーションですわ
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