【ミリマス】百合子「早く迎えに来て どこなの王子様」 育「ここだよ!」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:22:04.21 ID:QqXdnLz80
百合子「……ムニャ……ここは……? あれ?」

ジャラジャラ

百合子「!? 私、足枷で拘束されてる……そしてこの場所はどう考えてもファンタジーにありがちな地下牢……一体どうして?」

百合子「それにこの服装……淡い水色のドレス。綺麗な宝石がちりばめられたティアラにイヤリングに指輪……はっ! つまりこれって」


百合子「今の私は――囚われの姫君!!!」


怪人兵「おい人質! やかましいぞ!!」

百合子「ひぃ! 人の体に豚の顔面をした醜いモンスター兵士! やっぱり私の予想は当たってたのね」

怪人兵「開口一番ひとの容姿をナチュラルに貶すな! 俺こう見えてもうちの種族内では雰囲気イケメンで通ってるんだが!?」

百合子「そんなの知りませんよー!」

怪人兵「くそ……ボスからは生け捕りにしておけと言われているが、少し黙ってもらうくらいなら構わねえよな?」

百合子「い、いや……誰か、助けて……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1562512923
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:22:55.15 ID:QqXdnLz80
ブォォーーッ ブォォーーッ

号令〈全兵に次ぐ! 緊急事態発生! 東門より侵入者! 既に三番隊が陥落!〉

怪人兵「な、なんだと!?」

百合子「これはもしや!」

号令〈なんとしてでもヤツを止めろ! 地下牢への進入を許すな!〉

百合子「間違いない。誰かが私を助けに来てくれたのね!」

怪人兵「おいどうなってやがる」

怪人兵後輩A「いえ、俺にも何がなんだかさっぱりで…」

怪人兵後輩B「今情報が入りました! 侵入者は一名。武器は不明。馬を連れて移動しているとのことです」

百合子「馬……やはり囚われの姫君を救い出すといえば、白馬の王子様が定番!」

怪人兵「何言ってんだこいつ。まあいい。馬に乗っているなら、来るとしたら地上からだな。ここにある武器はお前たちにすべて托す。入り口を集中的に固めておけ!」

怪人兵後輩A・B「わかりました!」ダッ

怪人兵後輩C・D「エッサホイサ」ガラガラ

百合子「えっ、待ってどこからこんな大量の武器が……」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:24:03.12 ID:QqXdnLz80
怪人兵「さてそういうわけだ。残念だが正義のヒーローがここに辿り着くことはない」

百合子「そ、そんな……」

怪人兵「観念するんだな。ガハハハハ――グハァッ!?」

百合子「!?」

?「観念するのはお前だ」


怪人兵後輩A「侵入者だ! 下にいるぞ! 先輩がやられた!!」

怪人兵後輩B「おのれー! 覚悟しろ!」

?「何人来ようがかまわないよ。ぼくはただ、守りたい人を守る……それだけだ」


翻るマント。軽やかな身のこなし。そして何より、迷いのない紅色の瞳は彼の曇りのない心を表していて――。


怪人兵後輩C「ギャアッ」

怪人兵後輩D「は、速い……ゴフッ」

そう。彼は、私の運命の人。あの紅く燃える瞳の持ち主は、太陽の国の王子。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:24:40.59 ID:QqXdnLz80
怪人兵後輩A「ヤツの武器はダガーナイフだ! 距離を取れ。銃で仕留めるぞ!」

怪人兵後輩B「了解だz――」

?「……」ブンッ

怪人兵後輩B「な、ナイフを投げやが――グエッ」ドサッ

怪人兵後輩A「おのれよくも相棒を……だがこれでお前のナイフは一丁だけ。勝負あったな。くらえっ」ジャカッ

?「後ろだ」

怪人兵後輩A「えっ?」

ペガサス「ヒヒーン!」ドンッ

怪人兵後輩A「ギャアッ! こんなでかいヤツいつの間に」

?「呆れたね。リリー姫を捕らえておきながら、ぼくのことを調べておかなかったなんて」

怪人兵後輩A「!? ってことはお前はまさか……嘘だろ、こんなちっこいガキが!?」

?「ムッ……これを期に覚えておいてね。ぼくは子どもあつかいされるのが何よりもきらいなんだ」ザシュッ

怪人兵後輩A「ガハッ…」ドサッ
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:25:08.56 ID:QqXdnLz80
?「ふう。さて、牢のかぎはこれかな」

ガチャッ

百合子「あっ、あなたは……」

育「待たせたね、リリー。むかえに来たよ」


幼き王子の手を取る私は、風の国の王女リリー姫。そして彼は太陽の国のエリック王子。

運命に導かれた二人の物語の幕が、今まさに上がろうとしていた。


百合子(えっ、何このモノローグ。それよりなんで育ちゃんが王子様なの? 一体どうなっちゃってるのー!?)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:25:35.96 ID:QqXdnLz80
プロデューサー(以下、P)「……」

杏奈「……」

P「……なんじゃこりゃ」

杏奈「……このゲームは、百合子さんの頭の中の世界……なら……仕方ない、と思う……」

P「なあ劇場……確認だけど、俺たちがこのゲームをクリアしない限り百合子は目覚めず、同じ地方公演に出演する他の7人もゲームの世界に囚われたまま――なんだな?」

亜利沙(劇場の魂)「ええ。そうなるわ」

P「しかし『ジャングル☆パーティー』のときに開いた次元の狭間への扉が閉じきってなかったのはそっちの落ち度だろう。どうにかならないのか」

亜利沙(劇場の魂)「それに関しては謝るわ。けれど開いていた次元の狭間に迷い込んだ百合子ちゃんが、まさか妄想だけで新世界を構築できるとは思わなかった」

P「それが想定外なら、対処のしようもないってことか」

亜利沙(劇場の魂)「面目ないわ。私にできるのは、こちらとあちらの世界をゲームを通じて繋ぐことだけ」

P「まあ創造主が百合子なら、ストーリーが無事エンディングを迎えれば満足して目覚めてくれるだろうけど…」

P「いくら杏奈とはいえ、この説明書も攻略マニュアルもないゲームをクリアできるのか」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:26:21.70 ID:QqXdnLz80
杏奈「大丈夫……。ゲームシステムは、百合子さんが好きなRPGとあまり変わらないから……問題は、ストーリーの展開の仕方……」

P「百合子がかんがえたさいきょうのゲーム、だからな。一筋縄ではいかなさそうだ。それより、なんで主人公が育なんだ?」

杏奈「……グラフィックの感じが、育ちゃんがモーションアクターをしてるゲームに、似てるから……そのイメージが、反映されたのかも……」

P「そういうことか……後は初期武器がダガーナイフだったり、トゥインクルリズムと共通してる要素もありそうだな」

杏奈「戦闘システムは、さっきの序章で覚えた……あとは、敵キャラのレベルや弱点に合わせてアイテムを集めないと……」

P「状況から考えると残機とかなさそうだし、ゲーム内で死ぬと現実でも死んだ扱いになる的なことになりかねんからな。なにせ百合子が考えたゲームだし」

杏奈「シビアな立ち回りになりそう、だけど……みんなを助けるためだから、がんばり……ます……!」

P「頼んだぞ、杏奈……!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:26:52.06 ID:QqXdnLz80
百合子「間一髪だったね」

育「うん。敵の追っ手もまさか空に逃げられるとは思いもしなかっただろうね。この子のおかげだよ」

ペガサス「ヒヒーン!」

百合子「ねぇ、育ちゃ――エリックは敵の目をかい潜るために地下水路から回り込んで牢に侵入したんだよね。そのときこの子はどうしてたの?」

育「もう。忘れたのかい? この子はジュエルアニマル。ふだんは宝石の姿でぼくの胸元にいるんだ」

百合子「あ……そ、そうだったね」

育「それよりリリー、ほんとうに君が無事でよかった。ぼくと君の国が突然の動乱におそわれて以来、ずっと心配だった。君が怪人にさらわれたと聞いたときは、生きた心地がしなかったよ」

育「すぐに助けに行こうと城を出ようとしたけど、家臣たちに反対されて…。しかたないよね。ぼくだってなぞの勢力に命を狙われてるんだもの」

育「だけど君のピンチに、ぼくだけが安全な場所にかくまわれてるなんて、ぜったいいやだった。それに国が大変なときにみんなのために行動できなきゃ王子じゃないと思ったし」

育「お父様たちだって、きっとわかってくれると思う。これからの道のりは大変だけど、心配しないで。ぼくがそばにいるから」

百合子「うん……ありがとう……」

百合子(エリック王子は、私のことをこんなに大切に思ってくれてるんだ。胸がきゅんとする言葉だけど、姿形が育ちゃんだから、なんだか変な感じ)

百合子(だけど……確かにこの子は育ちゃんなんだな。育ちゃんが私の王子様だったら、きっとこんな感じだと思うから)

百合子(だって本当なら私があなたを守らなきゃいけないくらいなのに、立派な大人の男性が恋人にかけるような言葉を迷いなく言うんだもの)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:27:20.83 ID:QqXdnLz80
百合子(……それにしても、今夜の夢はやけにストーリーが凝ってるなぁ。普段見る夢なんて、もっと支離滅裂なはずなのに)

育「リリー、何か考えごとかい?」

百合子「ううん。何でもないの。それより見てよ。私たち今、雲と並んでるんだよ? とってもロマンチックだと思わない?」

育「うん……そうだね。君の国の町や野山がこんなに広々と見わたせるなんて、こうでもしなきゃ見られない光景だよね」

百合子「これから二人で広い世界を冒険できるなんて、なんだかわくわくするね」

育「気楽だなぁ。ぼくらは敵に命を狙われてるんだから、もっとまじめに考えてくれないと」

百合子「そ、そうだったね」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:27:48.68 ID:QqXdnLz80
育「……おっと、さっそく追っ手のお出ましだね」

傭兵モンスター「ヒャッハー! 標的発見、撃ち落としてやるぜ!」

育「ふり切るよ。ぼくにしっかりつかまってて!」

百合子「えっ、うん!」ギュッ

ダダダダダ…

傭兵モンスター「ちっ、ちょこまかと……こっちもフルスロットルでいくぜ!」ブォーン

育「うぅ、今の装備じゃ攻撃手段がない。このままじゃ……」

百合子(どうすればいい? 私にできることなんて……!)

百合子(そうだ。今の私は風の国の王女! きっとエリック王子のように最初から使える魔法か何かがあるはず!)
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:28:33.20 ID:QqXdnLz80
P「まずいな。杏奈の避けゲー技術でダメージは回避できてるが、これじゃあ埒が明かない」

杏奈「Pさん……2Pコントローラーを取って……。リリー姫にも何か初期技があるはずだから」

P「わ、わかった! えっと……“かぜおこし”と“つつく”って書いてあるぞ」

杏奈「装備と戦闘用道具は?」

P「装備は最初のドレスのままだから実質ゼロで何も付け加えられない。道具は……回復用の薬草が一つあるな」

杏奈「その薬草は、絶対使わないで……杏奈の予想だと、このイベントの直後に必要になるから……無いと、詰むかも……」

P「わかった。なら技の選択だな。どっちを使う?」

杏奈「うん……とりあえず――」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:29:05.33 ID:QqXdnLz80
百合子「大丈夫。私が戦う!」

育「リリー!?」

傭兵モンスター「なんだなんだ? お姫様のお出ましか?」

百合子「果てしなき天空よ、我は風の国の王女……海原を荒らし大地を靡かすその大いなる力を、我に授けたまえ!」

傭兵モンスター「大仰な詠唱!? ま、まさか」

百合子「――かぜおこし!!!」

ヒュン…

傭兵モンスター「えぇ……」

百合子「あ、あれ?」

傭兵モンスター「舐めてんじゃねェ!」ダァン!

ペガサス「!! ヒヒーン!」

育「まずい、ペガサスの羽根が!」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:29:31.67 ID:QqXdnLz80
P「まずいぞ。案の定効いてないし、近距離からの狙撃でペガサスに大ダメージが入った。このままだと墜落するぞ!」

杏奈「墜落よりも前に……敵に追いつかれて、撃たれてゲームオーバーだよ」

P「一体どうしたら……ん? なんかBGMが変わったぞ。この曲は――」

杏奈「……『ロケットスター☆』……!」



翼「ちょっとお兄さーん、可愛い子いじめるなんてサイテー。そんなことしてたら女の子にモテませんよー?」

百合子(えっ、なんで翼がこんなところに? なんで背中に羽根が生えてるの――って、私の夢なんだからそりゃそうか)

傭兵モンスター「は? なんだお前。俺は今仕事中なんだ。後にしてくれ」

翼「そっか。お仕事なら仕方ないですね。でも可愛い子をいじめるのが仕事だなんてダサくないですか? お兄さん自身そんな風に思うことありません?」

傭兵モンスター「テメェ、馬鹿にしてるのか!?」ジャカッ

百合子「あっ、危ない!」

翼「そんな悪いお兄さんには、お仕置きですよー☆」ブン! スパッ

傭兵モンスター「ギャアアアアア! なんだその剣は!? くそっ覚えてやがれぇ……!」ヒュゥゥゥ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:30:00.04 ID:QqXdnLz80
翼「あーあ、落ちちゃった。大丈夫かなぁ」

育「助かりました、お嬢さん。なんとお礼すればいいか……ありがとうございます」

百合子「翼――じゃなくて、あなたとってもお強いんですね!」

翼「えへへ。ありがとうございまーす。私、面白いものを探して世界を旅してるんだけど、この辺りはなんかつまんないなーと思ってて」

百合子「は、はぁ……」

翼「そうだ! また危ない目に遭ったら大変だから……はいこの剣、二人にあげちゃいまーす」

育「えっ、いいんですか?」

翼「大丈夫ですよー。こう見えて私、とっても強いんだから。じゃあねー」

百合子「ちょ……ありがとうー! また会いましょうねー!」

育「良い旅をー!」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:31:01.54 ID:QqXdnLz80
P「聖剣サンシャインリズム――これこんな序盤に簡単に手に入って良いアイテムなの?」

P「名前的にも性能的にも太陽の国の王家に代々伝わってないとおかしい感じでしょ。翼は一体何者なの?」

杏奈「そんなの……百合子さんに訊いてよ……」

亜利沙(劇場の魂)「ムービーパートが始まったわ。傷ついたペガサスを薬草で治療するみたいね」

杏奈「降り立った町は……ピスケスタウン……宿屋さんと、道具屋さんがあるみたい……」

P「二人の回復は宿屋でできるとして、道具も補充しておかないとな。夜が明けたら道具屋に寄ってみよう」

------

可憐「い、いらっしゃいませ……」

育「こんにちは、旅の者です。お嬢さん、少しばかり店内を見せてもらってもよろしいですか?」

可憐「どうぞ。あ、あの……何かお探しのアイテムがあればお申し付けくださいね」

百合子「ご丁寧にありがとうございます。そうですね。回復用の薬や、魔除けの衣装とか……」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:31:36.18 ID:QqXdnLz80
可憐「衣装はそちらにいくつか揃えてありますよ。あと、おすすめは……このアロマなんてどうでしょう。種類別で様々な効能があるんですよ」

育「すごい。回復や魔除けはもちろん、味方の能力を上げたり、敵の能力を下げたりできるんですね」

可憐「じ、実はそれ、私が調合した手作りのアロマで……」

百合子「わあ、さすが可憐さ――じゃなくて、道具屋さんは素敵な技術をお持ちなんですね」

可憐「えへへ……ありがとうございます」

育「おすすめとあれば買わない理由はありません。ぜひ各種1つずつください」

可憐「は、はい。ありがとうございます。他に何かご注文はありますか」

百合子「そうですね、強力な武器などあれば嬉しいです」

可憐「でしたら取って置きのものがありますよ。こちらのサーベルです。その名も“聖刀ブルームーンハーモニー”」

百合子「とっても強そうだけど、今の所持金じゃ買えないね」

育「そうだね。とりあえず必要な装備を買いそろえたら、いったんおいとましようか。お金が貯まったら、また来ますね」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:32:04.58 ID:QqXdnLz80
P「聖刀ブルームーンハーモニー――これもなんで普通にお店に売ってるんだよ。めちゃ高額だけど、この先の洞窟を周回すればすぐ買えそうだぞ」

杏奈「でも……王子の剣も姫のサーベルも、専用の必殺技があるみたい……たぶん、それを習得しないと、ラスボスは倒せないと思う……」

P「だな。確かに言われてみればどっちのグループの全体曲も必殺技名っぽいし」

亜利沙(劇場の魂)「ストーリーをある程度進めれば技を習得するためのイベントが始まるかもしれないわね」

P「今はその点を頭の片隅に入れておこう。おっと、次のイベントのフラグが立ってるようだぞ」

杏奈「洞窟の先にある町で……嗅ぐと人が次々に犬に変わってしまう謎のガスが発生して、封鎖されてるみたい……」

P「またヤバそうな設定が出てきたけど、とりあえず行ってみよう。今買った魔除けのスカーフを装備すれば町に入れそうだ」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:32:55.24 ID:QqXdnLz80
犬A「わんわん!」

犬B「くぅーん……くぅーん……」

百合子「なんてこと……本当に町から人が消えて、代わりに犬で溢れかえってる。みんな元は人間だったのね」

育「わが国もお世話になっているハコーの町が、まさかこんな危機にひんしていたとは……」

百合子「ええ。この町の近くの鉱山で採れる鉄鉱石の質は我が国の誇りの一つだったから……」

育「採掘と製鉄・鉄工の各事業で国内外にその名を知られ、多くの人々に仕事をあたえ生活を豊かにしてきた盟主キャロル氏のおひざ元だからね」

百合子「町にはキャロル氏が営む各社で働く人たちが大勢住んでる。その人たちがみんな犬にされてしまったなら、我が国どころか世界中が大打撃を受けてしまう」

育「気になるのはピスケスタウンで耳にしたうわさだ。キャロル氏が行方不明らしいと……彼も町にいたなら犬にされてしまったはず。どこにいるんだろう」

百合子「とにかくまずはキャロル氏の邸宅を調べてみましょう。町一番の大豪邸は……ここね」

育「待って。中に誰かいるみたいだ」


星梨花「えへへ。お腹がすいたんですか? じゃあみんな、おやつの時間にしましょうね」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:33:56.40 ID:QqXdnLz80
育「女の子だ。犬たちと遊んでいるみたいだけど……彼女は、彼らが元人間だったって知らないのかな」

百合子「あれは星梨花ちゃ――じゃなくてキャロル氏のご令嬢のセリーナちゃん! 私も何度か王宮のパーティーで会ったことがあるわ(という謎の記憶がある…)」

育「なら、とりあえず一度彼女と会って話をしてみよう。何か手がかりがつかめるかもしれない」

-----

P「なるほど。町の有力者の娘……星梨花はこのポジションでの登場か。外気に触れない頑強な室内で暮らしていたから、町民で唯一呪縛ガスを受けずに済んだ、と……」

杏奈「一緒にいた犬たちは……セリーナの家の使用人たちだったみたい……」

P「そしてセリーナは父親の居場所を知らないどころか、土地勘さえろくにないという有様だ。まあ王族や権力者のパーティーくらいでしか外出しないなら当然だよな」

杏奈「屋敷をしらべてみたら……一応、いくつか手がかりっぽい情報が見つかった……」

P「掘り尽くされて閉山となった町外れの鉱山……ダンジョンっぽいし、まあボスがいるのはここだろうな」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:34:35.46 ID:QqXdnLz80
星梨花父「お、お願いだ……こんな姿ならいっそのこと、完全に犬にしてくれ…」

魔女「だからさっきから言ってるじゃない。このカメラの前で、私に跪いて犬のように靴を舐めてくれれば、その望みを叶えてあげるって」

星梨花父「え、映像を撮ってどうするつもりなんだ? 個人の趣味で完結するようなものでもなかろう!?」

魔女「当然よ。この映像を世界中にばらまいて、あんたの名声を地に落とすのが目的なんだから」

星梨花父「くっ……やはりか。なら私はこの姿でいくら辱められようとも、君の要求を呑むことはできない」

魔女「いいのかしら? 私に刃向かって。自分さえ助かれば、かわいい娘がどんな目に遭ってもいいってことね?」

星梨花父「なっ、娘に何をする気だ!」

魔女「私の呪術で犬にされた人間は、私の言うことならなんでも聞くのよ。そして町に人間はもうあんたの娘だけ。これが何を意味するか説明しなくてもわかるわよね?」

星梨花父「む……わ、わんわん」

魔女「アハハハ! そうよ、最初からそうしておけばいいのよ。国内随一の権力者も、私にかかれば所詮こんなものよね!」

星梨花父「クゥーン、クゥーン」スリスリ

魔女「これでこの国の格差社会にもメスが入り、私は見事クライアントの要望に応えてがっぽり儲かるという寸法。すべてが完璧だわ」

育「それはどうかな?」

魔女「何っ!?」

百合子「その人を離して、今すぐみんなを元の姿に戻しなさい!」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:35:23.43 ID:QqXdnLz80
P「よし。最初のボス戦だ。武器もあるし、ここまで経験値もしっかり積んだけど、なんとかなりそうか?」

杏奈「Pさん……ちょっと、黙ってて……」カチャカチャ

P(杏奈、目がマジだ……!)

杏奈「みんなの命運が……杏奈に、かかってる……星梨花ちゃんのお父さんまで捕まってて、責任重大……だから…」

P「ああ。それは本当に恐ろしいことだよ。彼に何かあれば、こっちの世界の経済で動乱が起きかねないからな」

杏奈「正直、手が震えるけど……育ちゃん王子と、百合子姫がいるから、きっと大丈夫。……育ちゃん、杏奈に……力を貸して……!」

カチャカチャカチャ…ターンッ!

魔女『ギャアーーーッ!』

亜利沙(劇場の魂)「すごい、変化技を多用するいやらしいボスキャラをいとも簡単に…」

杏奈「百合子さんは……ゲームでこういう戦法のボスに、苦戦しがちだから……敵はきっと百合子さんが嫌がる動きばかりすると思って……それを踏まえて、戦った……」

P「杏奈らしい見事な視点だな。アイテムを使うタイミングも絶妙だった。何はともあれこれでボスは倒せたな。キャロル氏からお礼にジュエルアニマルが贈られたようだぞ」

杏奈「ジュエルアニマルは、マーナガルム……狼だね……」

亜利沙(劇場の魂)「ただ杏奈ちゃんがエリック王子でボスを瞬殺したことで、リリー姫にあまり経験値が入らなかったわね」

P「まあ王子がかっこよく活躍したし、百合子的には万々歳なんじゃないか?」

亜利沙(劇場の魂)「だといいけど……」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:35:56.58 ID:QqXdnLz80
星梨花「パパを助けてくれて、ありがとうございました。二人の活躍、とってもかっこよかったです!」

育「いえ。そんなこと……でもうれしいな。ありがとうございます」

百合子「あなたもお父様も、町の人たちもみんな無事で、本当に良かったです」

星梨花「いつかわたしも、二人みたいにこの広い世界を旅してみたいな」

育「ええ。そうなるように、必ず世界に平和をもたらしてみせます。どうか見守っていてください」

星梨花「まあ。王子様、とっても素敵! 悪い魔女のことも、すぐにやっつけちゃったってパパから聞きました。お強いんですね」

百合子「……」



育「良かったね。これでハコーの町も元通りだ」

百合子「うん。そうだね。私はあんまり、力になれなかったけど」

育「そんなことないよ。君がそばにいてくれるから、ぼくはがんばれるんだよ」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:36:28.04 ID:QqXdnLz80
――ピスケスタウン、宿屋


百合子(はぁ。ダメだな……私、いつもこうだ。同年代の子たちとユニットを組めば、ダンスで足を引っ張ってばかりで……)

百合子(年長者として年下のメンバーのお姉さん役にならなきゃいけないのに、その役割をちゃんとこなせたことなんて、きっと一度も……)

百合子(乙女ストームのときだって、瑞希さんに頼りっぱなしだった。未来も翼も、ウィルゴの静香も……私のことなんてきっと同年代の友達くらいにしか思ってないはず)

育「リリー……? どうしたの。もしかして、泣いてるの?」

百合子「ううん、違うの。これは――」

育「だいじょうぶだよ。ぼくがそばにいるから。君が泣きたくなったなら、いつだってだきしめてあげる」

百合子「エリック……」

育「ねぇリリー、ぼくは君の太陽でありたい。そう呼ぶに値する男になりたい。君の涙がそこにあるのなら、その心の空を暖め照らしたいんだ」

百合子「ふふっ。ありがとう」

百合子(もう。育ちゃんったら、王子様になってもやっぱりおませなんだから。でも本当に元気が出たよ。ありがとう、エリック王子)

育「む……ぼくは真剣なんだよ。うそをついているように見えるなら、もっとぼくをよく見て。ほら――」

百合子「ちょっ、そんなに見つめたら――」

育「?」

百合子「な、なんでもない/// わ、私疲れちゃったから先に休むね。おやすみなさい、エリック」

育「うん。おやすみ、リリー。良い夢を……」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:36:59.52 ID:QqXdnLz80
P「……」

杏奈「……」

P「このストーリーってさ……多分、百合子の深層心理が反映されてるんだよな」

杏奈「そう……だと思う……」

P「つまり百合子の中では、育はキザな台詞言う背伸びした王子みたいな印象に映ってるってことなんだな…」

杏奈「でも、杏奈は……あながち間違ってないと……思い、ます」

P「うん。確かに育のあの芯の強さというか、気高さみたいなものをこう解釈するのは全然間違ってないと思う」

P「ただな……この台詞回しは、なんというか……やっぱり暴走してるときの百合子を感じざるを得ないというか」

杏奈「そっと、して……あげよう……?」

P「だな……体力も回復できたし、次のイベントまで進めようか」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:37:53.63 ID:QqXdnLz80
――しばらく後


杏奈「――快調に、4つめのダンジョンの竹林まで来たけど……隠密スキルの高い追っ手に、囲まれちゃった……」

亜利沙(劇場の魂)「しかしダンジョンを越えようとする度に追っ手がやってくるとは。敵はよほど二人のことが気に入らないみたいね」

P「確かに少し妙だな。そういえばハコーの町にいた魔女が、格差社会がどうとか言ってたな」

杏奈「ムービーが始まった……敵に囲まれた二人を、忍者が華麗に助けてくれたみたい……」

P「ああ、このアクションの見栄えを意識しての竹林だったんだな。で、忍者の正体は……エミリーじゃないか!」
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