【ミリマス】百合子「早く迎えに来て どこなの王子様」 育「ここだよ!」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:22:04.21 ID:QqXdnLz80
百合子「……ムニャ……ここは……? あれ?」

ジャラジャラ

百合子「!? 私、足枷で拘束されてる……そしてこの場所はどう考えてもファンタジーにありがちな地下牢……一体どうして?」

百合子「それにこの服装……淡い水色のドレス。綺麗な宝石がちりばめられたティアラにイヤリングに指輪……はっ! つまりこれって」


百合子「今の私は――囚われの姫君!!!」


怪人兵「おい人質! やかましいぞ!!」

百合子「ひぃ! 人の体に豚の顔面をした醜いモンスター兵士! やっぱり私の予想は当たってたのね」

怪人兵「開口一番ひとの容姿をナチュラルに貶すな! 俺こう見えてもうちの種族内では雰囲気イケメンで通ってるんだが!?」

百合子「そんなの知りませんよー!」

怪人兵「くそ……ボスからは生け捕りにしておけと言われているが、少し黙ってもらうくらいなら構わねえよな?」

百合子「い、いや……誰か、助けて……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1562512923
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:22:55.15 ID:QqXdnLz80
ブォォーーッ ブォォーーッ

号令〈全兵に次ぐ! 緊急事態発生! 東門より侵入者! 既に三番隊が陥落!〉

怪人兵「な、なんだと!?」

百合子「これはもしや!」

号令〈なんとしてでもヤツを止めろ! 地下牢への進入を許すな!〉

百合子「間違いない。誰かが私を助けに来てくれたのね!」

怪人兵「おいどうなってやがる」

怪人兵後輩A「いえ、俺にも何がなんだかさっぱりで…」

怪人兵後輩B「今情報が入りました! 侵入者は一名。武器は不明。馬を連れて移動しているとのことです」

百合子「馬……やはり囚われの姫君を救い出すといえば、白馬の王子様が定番!」

怪人兵「何言ってんだこいつ。まあいい。馬に乗っているなら、来るとしたら地上からだな。ここにある武器はお前たちにすべて托す。入り口を集中的に固めておけ!」

怪人兵後輩A・B「わかりました!」ダッ

怪人兵後輩C・D「エッサホイサ」ガラガラ

百合子「えっ、待ってどこからこんな大量の武器が……」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:24:03.12 ID:QqXdnLz80
怪人兵「さてそういうわけだ。残念だが正義のヒーローがここに辿り着くことはない」

百合子「そ、そんな……」

怪人兵「観念するんだな。ガハハハハ――グハァッ!?」

百合子「!?」

?「観念するのはお前だ」


怪人兵後輩A「侵入者だ! 下にいるぞ! 先輩がやられた!!」

怪人兵後輩B「おのれー! 覚悟しろ!」

?「何人来ようがかまわないよ。ぼくはただ、守りたい人を守る……それだけだ」


翻るマント。軽やかな身のこなし。そして何より、迷いのない紅色の瞳は彼の曇りのない心を表していて――。


怪人兵後輩C「ギャアッ」

怪人兵後輩D「は、速い……ゴフッ」

そう。彼は、私の運命の人。あの紅く燃える瞳の持ち主は、太陽の国の王子。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:24:40.59 ID:QqXdnLz80
怪人兵後輩A「ヤツの武器はダガーナイフだ! 距離を取れ。銃で仕留めるぞ!」

怪人兵後輩B「了解だz――」

?「……」ブンッ

怪人兵後輩B「な、ナイフを投げやが――グエッ」ドサッ

怪人兵後輩A「おのれよくも相棒を……だがこれでお前のナイフは一丁だけ。勝負あったな。くらえっ」ジャカッ

?「後ろだ」

怪人兵後輩A「えっ?」

ペガサス「ヒヒーン!」ドンッ

怪人兵後輩A「ギャアッ! こんなでかいヤツいつの間に」

?「呆れたね。リリー姫を捕らえておきながら、ぼくのことを調べておかなかったなんて」

怪人兵後輩A「!? ってことはお前はまさか……嘘だろ、こんなちっこいガキが!?」

?「ムッ……これを期に覚えておいてね。ぼくは子どもあつかいされるのが何よりもきらいなんだ」ザシュッ

怪人兵後輩A「ガハッ…」ドサッ
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:25:08.56 ID:QqXdnLz80
?「ふう。さて、牢のかぎはこれかな」

ガチャッ

百合子「あっ、あなたは……」

育「待たせたね、リリー。むかえに来たよ」


幼き王子の手を取る私は、風の国の王女リリー姫。そして彼は太陽の国のエリック王子。

運命に導かれた二人の物語の幕が、今まさに上がろうとしていた。


百合子(えっ、何このモノローグ。それよりなんで育ちゃんが王子様なの? 一体どうなっちゃってるのー!?)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:25:35.96 ID:QqXdnLz80
プロデューサー(以下、P)「……」

杏奈「……」

P「……なんじゃこりゃ」

杏奈「……このゲームは、百合子さんの頭の中の世界……なら……仕方ない、と思う……」

P「なあ劇場……確認だけど、俺たちがこのゲームをクリアしない限り百合子は目覚めず、同じ地方公演に出演する他の7人もゲームの世界に囚われたまま――なんだな?」

亜利沙(劇場の魂)「ええ。そうなるわ」

P「しかし『ジャングル☆パーティー』のときに開いた次元の狭間への扉が閉じきってなかったのはそっちの落ち度だろう。どうにかならないのか」

亜利沙(劇場の魂)「それに関しては謝るわ。けれど開いていた次元の狭間に迷い込んだ百合子ちゃんが、まさか妄想だけで新世界を構築できるとは思わなかった」

P「それが想定外なら、対処のしようもないってことか」

亜利沙(劇場の魂)「面目ないわ。私にできるのは、こちらとあちらの世界をゲームを通じて繋ぐことだけ」

P「まあ創造主が百合子なら、ストーリーが無事エンディングを迎えれば満足して目覚めてくれるだろうけど…」

P「いくら杏奈とはいえ、この説明書も攻略マニュアルもないゲームをクリアできるのか」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:26:21.70 ID:QqXdnLz80
杏奈「大丈夫……。ゲームシステムは、百合子さんが好きなRPGとあまり変わらないから……問題は、ストーリーの展開の仕方……」

P「百合子がかんがえたさいきょうのゲーム、だからな。一筋縄ではいかなさそうだ。それより、なんで主人公が育なんだ?」

杏奈「……グラフィックの感じが、育ちゃんがモーションアクターをしてるゲームに、似てるから……そのイメージが、反映されたのかも……」

P「そういうことか……後は初期武器がダガーナイフだったり、トゥインクルリズムと共通してる要素もありそうだな」

杏奈「戦闘システムは、さっきの序章で覚えた……あとは、敵キャラのレベルや弱点に合わせてアイテムを集めないと……」

P「状況から考えると残機とかなさそうだし、ゲーム内で死ぬと現実でも死んだ扱いになる的なことになりかねんからな。なにせ百合子が考えたゲームだし」

杏奈「シビアな立ち回りになりそう、だけど……みんなを助けるためだから、がんばり……ます……!」

P「頼んだぞ、杏奈……!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:26:52.06 ID:QqXdnLz80
百合子「間一髪だったね」

育「うん。敵の追っ手もまさか空に逃げられるとは思いもしなかっただろうね。この子のおかげだよ」

ペガサス「ヒヒーン!」

百合子「ねぇ、育ちゃ――エリックは敵の目をかい潜るために地下水路から回り込んで牢に侵入したんだよね。そのときこの子はどうしてたの?」

育「もう。忘れたのかい? この子はジュエルアニマル。ふだんは宝石の姿でぼくの胸元にいるんだ」

百合子「あ……そ、そうだったね」

育「それよりリリー、ほんとうに君が無事でよかった。ぼくと君の国が突然の動乱におそわれて以来、ずっと心配だった。君が怪人にさらわれたと聞いたときは、生きた心地がしなかったよ」

育「すぐに助けに行こうと城を出ようとしたけど、家臣たちに反対されて…。しかたないよね。ぼくだってなぞの勢力に命を狙われてるんだもの」

育「だけど君のピンチに、ぼくだけが安全な場所にかくまわれてるなんて、ぜったいいやだった。それに国が大変なときにみんなのために行動できなきゃ王子じゃないと思ったし」

育「お父様たちだって、きっとわかってくれると思う。これからの道のりは大変だけど、心配しないで。ぼくがそばにいるから」

百合子「うん……ありがとう……」

百合子(エリック王子は、私のことをこんなに大切に思ってくれてるんだ。胸がきゅんとする言葉だけど、姿形が育ちゃんだから、なんだか変な感じ)

百合子(だけど……確かにこの子は育ちゃんなんだな。育ちゃんが私の王子様だったら、きっとこんな感じだと思うから)

百合子(だって本当なら私があなたを守らなきゃいけないくらいなのに、立派な大人の男性が恋人にかけるような言葉を迷いなく言うんだもの)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:27:20.83 ID:QqXdnLz80
百合子(……それにしても、今夜の夢はやけにストーリーが凝ってるなぁ。普段見る夢なんて、もっと支離滅裂なはずなのに)

育「リリー、何か考えごとかい?」

百合子「ううん。何でもないの。それより見てよ。私たち今、雲と並んでるんだよ? とってもロマンチックだと思わない?」

育「うん……そうだね。君の国の町や野山がこんなに広々と見わたせるなんて、こうでもしなきゃ見られない光景だよね」

百合子「これから二人で広い世界を冒険できるなんて、なんだかわくわくするね」

育「気楽だなぁ。ぼくらは敵に命を狙われてるんだから、もっとまじめに考えてくれないと」

百合子「そ、そうだったね」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:27:48.68 ID:QqXdnLz80
育「……おっと、さっそく追っ手のお出ましだね」

傭兵モンスター「ヒャッハー! 標的発見、撃ち落としてやるぜ!」

育「ふり切るよ。ぼくにしっかりつかまってて!」

百合子「えっ、うん!」ギュッ

ダダダダダ…

傭兵モンスター「ちっ、ちょこまかと……こっちもフルスロットルでいくぜ!」ブォーン

育「うぅ、今の装備じゃ攻撃手段がない。このままじゃ……」

百合子(どうすればいい? 私にできることなんて……!)

百合子(そうだ。今の私は風の国の王女! きっとエリック王子のように最初から使える魔法か何かがあるはず!)
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:28:33.20 ID:QqXdnLz80
P「まずいな。杏奈の避けゲー技術でダメージは回避できてるが、これじゃあ埒が明かない」

杏奈「Pさん……2Pコントローラーを取って……。リリー姫にも何か初期技があるはずだから」

P「わ、わかった! えっと……“かぜおこし”と“つつく”って書いてあるぞ」

杏奈「装備と戦闘用道具は?」

P「装備は最初のドレスのままだから実質ゼロで何も付け加えられない。道具は……回復用の薬草が一つあるな」

杏奈「その薬草は、絶対使わないで……杏奈の予想だと、このイベントの直後に必要になるから……無いと、詰むかも……」

P「わかった。なら技の選択だな。どっちを使う?」

杏奈「うん……とりあえず――」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:29:05.33 ID:QqXdnLz80
百合子「大丈夫。私が戦う!」

育「リリー!?」

傭兵モンスター「なんだなんだ? お姫様のお出ましか?」

百合子「果てしなき天空よ、我は風の国の王女……海原を荒らし大地を靡かすその大いなる力を、我に授けたまえ!」

傭兵モンスター「大仰な詠唱!? ま、まさか」

百合子「――かぜおこし!!!」

ヒュン…

傭兵モンスター「えぇ……」

百合子「あ、あれ?」

傭兵モンスター「舐めてんじゃねェ!」ダァン!

ペガサス「!! ヒヒーン!」

育「まずい、ペガサスの羽根が!」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:29:31.67 ID:QqXdnLz80
P「まずいぞ。案の定効いてないし、近距離からの狙撃でペガサスに大ダメージが入った。このままだと墜落するぞ!」

杏奈「墜落よりも前に……敵に追いつかれて、撃たれてゲームオーバーだよ」

P「一体どうしたら……ん? なんかBGMが変わったぞ。この曲は――」

杏奈「……『ロケットスター☆』……!」



翼「ちょっとお兄さーん、可愛い子いじめるなんてサイテー。そんなことしてたら女の子にモテませんよー?」

百合子(えっ、なんで翼がこんなところに? なんで背中に羽根が生えてるの――って、私の夢なんだからそりゃそうか)

傭兵モンスター「は? なんだお前。俺は今仕事中なんだ。後にしてくれ」

翼「そっか。お仕事なら仕方ないですね。でも可愛い子をいじめるのが仕事だなんてダサくないですか? お兄さん自身そんな風に思うことありません?」

傭兵モンスター「テメェ、馬鹿にしてるのか!?」ジャカッ

百合子「あっ、危ない!」

翼「そんな悪いお兄さんには、お仕置きですよー☆」ブン! スパッ

傭兵モンスター「ギャアアアアア! なんだその剣は!? くそっ覚えてやがれぇ……!」ヒュゥゥゥ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:30:00.04 ID:QqXdnLz80
翼「あーあ、落ちちゃった。大丈夫かなぁ」

育「助かりました、お嬢さん。なんとお礼すればいいか……ありがとうございます」

百合子「翼――じゃなくて、あなたとってもお強いんですね!」

翼「えへへ。ありがとうございまーす。私、面白いものを探して世界を旅してるんだけど、この辺りはなんかつまんないなーと思ってて」

百合子「は、はぁ……」

翼「そうだ! また危ない目に遭ったら大変だから……はいこの剣、二人にあげちゃいまーす」

育「えっ、いいんですか?」

翼「大丈夫ですよー。こう見えて私、とっても強いんだから。じゃあねー」

百合子「ちょ……ありがとうー! また会いましょうねー!」

育「良い旅をー!」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/08(月) 00:31:01.54 ID:QqXdnLz80
P「聖剣サンシャインリズム――これこんな序盤に簡単に手に入って良いアイテムなの?」

P「名前的にも性能的にも太陽の国の王家に代々伝わってないとおかしい感じでしょ。翼は一体何者なの?」

杏奈「そんなの……百合子さんに訊いてよ……」

亜利沙(劇場の魂)「ムービーパートが始まったわ。傷ついたペガサスを薬草で治療するみたいね」

杏奈「降り立った町は……ピスケスタウン……宿屋さんと、道具屋さんがあるみたい……」

P「二人の回復は宿屋でできるとして、道具も補充しておかないとな。夜が明けたら道具屋に寄ってみよう」

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可憐「い、いらっしゃいませ……」

育「こんにちは、旅の者です。お嬢さん、少しばかり店内を見せてもらってもよろしいですか?」

可憐「どうぞ。あ、あの……何かお探しのアイテムがあればお申し付けくださいね」

百合子「ご丁寧にありがとうございます。そうですね。回復用の薬や、魔除けの衣装とか……」
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