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【ミリマス】育「王子様になれたら」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 22:08:41.76 ID:qjfQMCET0
プロデューサー(以下、P)「うーん、どうしたものか……」
小鳥「お疲れ様ですPさん。どうかされたんですか?」
P「あ、音無さんお疲れ様です。いえ今度まつりと育が出演することになったCMのことで、ちょっとね」
小鳥「あら、美咲ちゃんから聞きましたよ。若い女性向けの整髪スプレーのCMだそうですね。主演はまつりちゃん。まさにターゲット層にピッタリですよね」
小鳥「しかもお姫様に扮したまつりちゃんがスプレーで素敵に変身して、育ちゃん扮する王子様と白馬で月夜に飛び出す――可愛くてロマンチックなCMに仕上がりそうです」
P「はい。音無さんのおっしゃるとおり先方のコンセプトがしっかりしていてやり甲斐のある仕事になりそうなんですが、追加の注文が来まして」
P「商品の公式サイトでスペシャルショートムービーが観られる仕様になるらしく、そこに二人がCMの配役そのままで出演することになったんです」
小鳥「まあ!」
P「さしあたってどんなストーリーにしたいか、出演する二人からも意見が欲しいそうです」
小鳥「二人の意見をストーリーに取り入れるってことですね」
P「そういうことです。ただ、育の方がそれで煮詰まっちゃったようで……張り切ってくれてはいるんですが」
小鳥「それはちょっと心配ですね」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1562418521
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 22:09:42.40 ID:qjfQMCET0
――劇場、控え室
歩「真、ちょうど良いところに! ちょっと助けてくれないかな。アタシらもうヘトヘトでさ」
真「歩、ジュリア。どうしたんだい?」
ジュリア「それが、今朝からずっと育に密着取材されてるっていうか、観察されてるっていうか……」
歩「とにかくアタシらにはもう手に負えないんだよ。時間空いてるなら、少しだけ育に付き合ってもらえないかな」
真「育が二人をこんなに困らせちゃうなんて、珍しいな……わかった。ちょっと行ってくるよ。レッスンルームでいいんだよね?」
ジュリア「ああ。頼む」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 22:10:28.45 ID:qjfQMCET0
育「うーん……ダンスでエスコートするけど、ちょっぴりドジな王子様……。楽器の演奏でお姫様をとりこにするけど、はずかしがり屋な王子様……」
真「やあ育、何やら頑張ってるみたいだね」
育「あっ真さん! えっと……わたしね、こんどまつりさんといっしょに出るショートドラマで、王子様の役をやるんだけど…」
真「なるほど、育が王子様――」
育「それでどんな王子様になりたいか、わたしが自分で決めることになったんだ。もちろんまつりさんがお姫様役だよ」
真「面白そうな企画だね。役のイメージはもう決まってる感じかな?」
育「うん。わたし、まつりさんみたいなすてきなお姫様をエスコートできる立派な王子様になりたい!」
育「だからね、劇場のみんなのかっこいいところをたくさん観察して研究してるんだけど……」
真(なるほど。さっき歩やジュリアたちが言ってたのはそういうことか)
真「育、ボクに手伝えることがあればなんでも言ってね。力になるよ。なんたってボク、王子様役なら何度も経験してきたからね。ちょっと複雑だけど…」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 22:10:59.13 ID:qjfQMCET0
育「真さん、いいの? ありがとう!」
真「へへっ。任せてよ」
育「それじゃあ、真さんが今までにやったかっこいい人の演技、わたしに全部教えて!」
真「ええっ、全部って。それはさすがに無茶じゃないかな」
育「おねがい真さん。わたしがなりたい王子様は、まつりさんをぶとう会にむかえにいけるくらいすごい王子様なの」
真「まつりに相応しい王子か……なるほど。詳しく聞かせて」
育「うん。まつりさんは、だれもが認めるお姫様。そんなまつりさんと尊敬し合える王子様にならなきゃいけないんだから、なんでもできなくっちゃ」
育「ダンスでも、歌でも、演奏でも……まつりさんを夢中にさせられる人こそが、まつりさんの王子様だと思うから」
真「そっか……うん。育らしい、気持ちのこもった良い目標だと思う」
育「ほんと? それじゃあ――」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 22:11:28.90 ID:qjfQMCET0
真「大丈夫。ボクが教えなくったって育はもうじゅうぶん王子様になれてるんじゃないかな」
育「えっ、どうして?」
真「だって、まつりに相応しい王子様になりたいって、一生懸命色んなことを考えて頑張れてるじゃないか。それが育の良いところだってボクは思うな」
育「でも、わたし歩さんやジュリアさんみたいに、まつりさんをかっこよくエスコートできたことなんてないよ」
真「まつりの王子様になりたいって、真剣な気持ちを持てたなら、それだけで育は立派な王子様だ。きっとまつりだってそう思うはずだよ」
育「だけど……」
真「だってボクも、こんな風に自分のことを真剣に考えてくれる王子様が迎えに来てくれたら、とっても嬉しいから。正直ちょっとまつりに妬けちゃってるよ」
育「?」
真「もしボクがお姫様なら、今のありのままの育が演じる王子様に迎えに来てほしい。だから今の育にボクから教えられることは何もないよ」
育「でも、わたしわかんないよ。どうして今のわたしがまつりさんにふさわしい王子様だっていえるの?」
真「それはぜひまつり本人に聞いてみたらいいよ。頑張ってね、育」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 22:12:05.75 ID:qjfQMCET0
〜〜回想〜〜
ジュリア「お前ら、今日はあたしら二人で最高のハーモニーを奏でてやるから覚悟しろよな! いくぜマツ!」ジャカジャーン
まつり「はいほー!」
歩「ここからはアタシらのダンスバトルをたっぷり楽しんでいってくれよ! まずはアタシから――お次はまつりだ!」
まつり「姫のわんだほー!なステップから、目を離しちゃダメなのですよ♪」
〜〜〜〜〜〜
育(……真さんが言ってることって、どういうことなんだろう)
育(前に歩さんやジュリアさんとペアのステージに出たときのまつりさん、とってもきらきらしてて、幸せそうだった。まるで王子様と過ごすお姫様みたいに…)
育(二人みたいにエスコートできたら、わたしもまつりさんをきらきらにできるのになって思って、いっぱい研究して練習してみたけど……)
育(やっぱり、今のわたしじゃ歩さんみたいにはおどれないし、歌も演奏もジュリアさんみたいにはできない)
育(こんなんじゃ王子様じゃなくて、王子様のかっこうをしたわたしにしかなれない。そんな演技でお姫様のまつりさんのとなりに立ちたくない!)
育(本当にまつりさんと直接お話すれば、わかるのかな。真さんが今のわたしを立派な王子様だと思う理由が…)
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 22:12:45.37 ID:qjfQMCET0
まつり「はいほー! 育ちゃん、ドラマのプラン作りは順調なのです?」
育「ううん。ぜんぜん。真さんから王子様の演技を教わりたかったんだけど、育はもうじゅうぶん立派な王子様だよって言われちゃって」
まつり「ふむふむ」
育「けど、わたしには真さんがそう言う理由がわからなくて…」
育「ねぇまつりさん。わたし、まつりさんにふさわしい王子様になりたい。だけど今のままじゃ、まつりさんのすてきなところをぜんぜん伝えられないと思う」
育「たとえば真さんが王子様になった方が、きっとまつりさんをもっとすてきなお姫様にできるはずだよ。真さんはかっこいいし、演技の経験もいっぱいあるし…」
育「わたしはそういう、まつりさんの王子様としてだれもが納得してくれるようなかっこいい王子様になりたいのに…」
まつり「なるほど。育ちゃんは今回の王子様役に、本当に真剣に取り組んでくれているのですね」
育「当たり前だよ。だって責任重大だもん。まつりさんの王子様になるんだよ? こんな大事ですてきな役、ぜったい成功させたいもん」
まつり「育ちゃん、まつりの王子様になるなら、一つだけ覚えておいてほしいことがあるのです。それさえわかれば、育ちゃんはたちまち素敵な王子様なのです」
育「ほんと? それってどんなこと? 教えてまつりさん」
まつり「育ちゃんがまつりに相応しい王子様になりたいと思ってくれているのと同じように、まつりも育ちゃん王子に相応しいお姫様になりたいのですよ?」
育「……どういうこと?」
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