【鬼滅ss】鬼退治の幕間

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45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/18(火) 15:15:10.07 ID:hmhzTh0aO
しのぶと義勇

1人だけならしのぶ
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/18(火) 17:13:27.12 ID:yR7JbxaC0
※今更で恐縮ですが、アニメ・コミックス派の方は念のためネタバレ注意。

身内の酒柱から柱合会議の招集があったため、
しばし出かけて参ります。

>>45把握です。一応この話を書いたら一旦〆で。
それまでスレはお好きなようにお使いください。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/18(火) 23:30:21.47 ID:yR7JbxaC0


とある峠の茶屋にて。

天気は快晴、新緑は眩し。

幸せは日向に転がっている、と悠々と語る朗らかな陽気。

そんな気候と裏腹に、むすりとした仏頂面の青年が野点傘の下にいる。

彼の者の名は富岡義勇。

表情筋の動かし方を忘れているかの如く、眉一つぴくりともさせずに

一人静かにお茶を啜っていた。

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/18(火) 23:37:36.19 ID:yR7JbxaC0

彼がここで茶を一服しているのには理由があった。

任務と見回りの双方を兼ねてこの地へ来たのはいいが、

どうやら自分より先に着いていた柱が一足早く解決してくれていたようだ。

自身の仕事が済んでいるのなら、もうこの地に用はないと

踵を返してさっそく次の任務先へ向かおうとしたところ、

件の人物から「お茶の一杯くらいは労いとして付き合うべきだ」と諭され、今に至る。

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/18(火) 23:44:37.06 ID:yR7JbxaC0


ずず、と玄米茶を一啜り。深みのあって美味しいものだ。

それにしても予定の時間より半刻は経過しているのに、彼女は未だ来る気配がない。

もう半刻待ってみても来ないなら、さっさと先に行ってしまおうか。

そんな事を考えていたら、茶屋の前に人影が一つ。


「すいません、お館様への報告書をまとめあげるのに手間取っていました」


彼女の名前は、胡蝶しのぶ。

鬼殺隊を統括する“柱”の一人。

自身も水柱と謳われているが、実力不足の身にはいかんせん肩書が重すぎるので、

そう言われるとつい苦い気持ちが芽生えてしまう。

遅い、と一言告げると、笑顔を崩さぬまま彼女は

「淑女を急かすのは男(おのこ)として如何なものでしょうね」と返してくる。

言葉を戻すのも億劫だったので、そうか、と残して再び茶を啜る。

 
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/18(火) 23:49:06.60 ID:yR7JbxaC0

ふと空を見上げると、鎹烏が飛んできた。

新しい任務依頼の追記だろうか。

そう思いながらも義勇は烏から文を受け取り、

二つ折りにされていた紙をおもむろに開いてみる。

宛先を見ると、達筆ながらに見慣れた字が書かれていた。

どうやら師である鱗滝左近次からのようだ。

内容は、なんという事のない手紙。

父が息子を案じるような、優しい内容だった。

 
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/18(火) 23:56:10.89 ID:yR7JbxaC0
 
 
そのまま読み終えようとすると、追伸の一行が目に飛び込む。


<他の柱とはうまくやれているか?
 義勇、お前と仲の良い子が見つかっていたら儂は嬉しい>


義勇は思わず渋い顔をしてしまう。

この感情は羞恥に近い。未だこの年齢になっても師匠に心配をかけているのか、と。

遠目から義勇を見ていたしのぶは、

珍しい表情をする義勇が何を読んでいるのか気になり、

気配を消しつつ後ろから手紙をふと覗き込んでみた。

全文は読めないが、追記の部分だけは読みとれる。

そこだけ読めたら十分だった。

ブッフォッッッ、と思わず吹き出してしまうのを堪える事は、今の彼女には不可避だった。

 
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/18(火) 23:59:12.91 ID:yR7JbxaC0


後頭部に霧状の唾が飛び散った義勇は、不快そうに後ろにいるしのぶを振り返る。

むすっとした仏頂面に磨きがかかっていて、中々の迫力だ。

だが、そんなことを意にも介さず、しのぶは義勇から少し離れた席に座り、言葉を紡ぐ。


「勝手に覗いちゃってすみません。
 でも駄目ですよ、お師匠様に嫌われてる事を心配されちゃうのは」

「再三言うが、俺は別に嫌われていない」

「あらあらそうですか、そうですか。自覚が無いのは素敵なことです」


たった二言三言なのに、かなりの毒気を纏っている。

義勇はげんなりしながらも、しのぶの眼をじとりと見つめた。

そして告げる。


「お前とは、割とうまくやってると思っている」


しのぶは、その言葉に驚いてしまった。

本当に仲良くやれていると思っているとは正気なのか、という考えと。

何故だか分からないが言われて悪い気がしない、という感情の二つが芽生えた。

 
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/19(水) 00:03:24.65 ID:pPrQcDNK0


「富岡さん、そういう風に空気読めないから嫌われるんですよ」


だから別に嫌われていない。

そう言おうと思ったが、水掛け論になるので

義勇は首を振りつつ、茶を啜るがてらに言葉を飲み込んだ。

ふとしのぶの方を改めて見ると、少しうつむいている。

ぱさりと垂れた前髪で表情が読めないが、まぁ特に読む必要もないだろう。

よいしょっと、と言いながら、腰を浮かせてしのぶは義勇の座る席に少し近づく。

また何か言われるのだろうかと内心身構えていると、

ふと鼻腔を何某かの香りがくすぐってきた。

この香りは、藤の花。

鬼を殺す甘い毒の香。


この匂いは少しだけ好ましい。

 
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/19(水) 00:05:31.07 ID:pPrQcDNK0

 
「お前には鬼も寄り付かないな」


何とはなしにそう告げると、表情は笑顔を崩していないが

彼女の左こめかみには青筋がピクピクと蠢いている。


「鬼“も”ですか。富岡さん。急に喧嘩をふられても困るんですが」

「いや喧嘩を売ったつもりは毛頭ないのだが」

「投げ売り特価で売ってましたよ富岡さん。
 こういう機微にお気づきにならない辺り、まぁ色々とお察しできますね」

「いや、すまない。お前から少し強い藤の花の香りがするものだから……」


それを聞いたしのぶの顔が、ほんの少しだけ曇った。

 
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/19(水) 00:07:01.15 ID:pPrQcDNK0

その表情から覗かせるものは、一体何なのか。

何となく、哀愁と決意によく似ていた。

またしても言葉を間違えてしまったのか、と義勇は内心狼狽してしまう。

もう喋らないで黙って茶を飲んで、さっさとここを出てしまおうかと考えていると

けろりとした顔でしのぶは言う。


「まぁ最近は新しい毒を試したりしているから、その名残でしょうね。
 純度の高い藤の花の毒が出来上がると、必然的に私の技量向上にもなりますし」

「そんなものか」

「そんなものです」

 
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/19(水) 00:10:01.39 ID:pPrQcDNK0
 
 
そして義勇は再び茶を啜る。湯呑にはもう二割も残っていない。

これでようやく席を立てると思っているところに

お待たせしました、と店員から

しのぶの分のお茶と茶請けの団子が野点傘の席に届いた。


「あ、店員さん。この人の分のお茶もおかわりで。
 あと代金は彼と一緒にしておいてください」


店員はすかさず、畏まりましたと言葉を残して店内に戻っていく。


「おい、おい」

「いいじゃないですか。私たち、仲がいいんでしょう?
 たまにはゆっくりお話でもしてみましょう」

「……」

 
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/19(水) 00:12:35.66 ID:pPrQcDNK0


「それにですね、その……」

「なんだ、急に言いよどんで」

「花の香りがする淑やかな女子に、
 お団子代を立て替えない男はいないって知ってましたか?」

「いや知らん、初耳だ。
 それに俺は茶しか飲んでないから店員が来たら別払いにするぞ」


しのぶは笑顔を引っ込めて、大きくため息をつく。

全集中・鈍感男への苛立ち呼吸。


「富岡さん、そういうところですよ……」


色んな感情を込めて、そう告げるのが精一杯だった。




【大正コソコソ噂話】

義勇さんは、鱗滝さんへ返事をする際に

「蟲柱とは仲が良い」という言葉を少し間違えて

「蟲柱とは良い仲」と送ってしまったそうで。

鬼殺隊では一時期、水柱と蟲柱の夫婦(めおと)が誕生すると騒然になった。

しのぶさんは、「そんな事ありませんよ」と

ひきつった笑顔の額に無数の青筋を立てながら否定して回るのに奔走したとか。

 
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/19(水) 00:13:37.59 ID:pPrQcDNK0
これにて閉幕。またいつか。
鬼滅ssがもっと増えますように。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/19(水) 00:17:15.53 ID:pPrQcDNK0
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音楽や本、創作や日々の雑多に使っております。次作などはこちらで呟き。
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60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/19(水) 00:20:34.72 ID:FfDRx9uo0

色々ありがとうございました
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/19(水) 00:31:24.81 ID:RDAvJsPM0
乙の呼吸。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/24(月) 15:52:00.23 ID:L79kwJuKO

雰囲気がとても好き
また書いてほしい
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/24(月) 21:56:18.86 ID:KHxnw+6N0
何これ?
エロパロssなん?
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/25(火) 09:15:44.15 ID:5rIa9+7KO
しのぶさん……
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