少女「愛してるって言って」少年「………」

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2 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 00:47:28.20 ID:QekJgiX40
ーーーーー


「??ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」

「??いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」

「??♪、〜〜♪」

「??何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」

「??いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」

「??そしたらさ、君は??」







ーーーーー

「……く…………て!」

少年(……ん)

「…やく………ってば!」

少年(なんだ……夢…?)

「早く起きなさい!」ピシッ

少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」

少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」

少年「……俺たちしかいないじゃん」

少女「みんな帰ったか部活よ」

少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」

少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」

少年「おいおい…」

少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」

少年「は?」

少女「あ?」

少年「……なんでもない」

少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」

少年「はいはいどうも」

少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)
3 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 00:48:21.48 ID:QekJgiX40
ーーーーー


「??ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」

「??いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」

「??♪、〜〜♪」

「??何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」

「??いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」

「??そしたらさ、君は??」







ーーーーー

「……く…………て!」

少年(……ん)

「…やく………ってば!」

少年(なんだ……夢…?)

「早く起きなさい!」ピシッ

少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」

少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」

少年「……俺たちしかいないじゃん」

少女「みんな帰ったか部活よ」

少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」

少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」

少年「おいおい…」

少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」

少年「は?」

少女「あ?」

少年「……なんでもない」

少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」

少年「はいはいどうも」

少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)
4 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 00:50:38.90 ID:QekJgiX40
下校中ーーー

少女「??それでさ、今度の春休みにおじいちゃんのところに帰らない?」

少年「お前、ほんとあの人のこと好きなー」

少女「当然でしょ?というかあんたは何も感じてないの?私たちを大事に育ててくれて、今こっちの学校に行けてるのだっておじいちゃんのおかげなんだから」

少年「いやまあ、ありがたいとは思ってるけどさ……よく覚えてないんだって」

少年(親に捨てられ、身寄りのない俺たちを拾って世話してくれたのが、少女の言うおじいちゃん……R国のお偉いさんらしい。らしいっていうのは、全部少女から聞かされたことだからだ。俺自身は昔のことをほとんど覚えてない。今俺たちは同じ寮に住んで同じ学校に通ってるけど、そう取り計らってくれたのもその人なのだそうだ。……作り話かよ)

少女「じゃあ、私たちが一緒に闘ってたあの日々も?」

少年「……ばったばったとなぎ倒していったってやつか?」

少女「そうそう!なんだ覚えてるじゃない」

少年「それはお前に何度も聞かされたからな。悪いけど俺の記憶の中にはございませんってやつだ」

少女「もう、信じらんない!二人であんなにいっぱいやっつけたじゃない!そんなにどうでもいいことだったわけ?」

少年「そう言われてもなぁ」

少女「あーあ、昔のあんたは頼もしかったのになー。今じゃこんなになっちゃって」

少年「ったく、また始まったよ……」

少年(大体闘うってなんだよ。格ゲーの話かっての)

少女「はぁ……まあいいわ。それで、おじいちゃんのとこに帰る日だけど、休みの半ばくらいでいい?」

少年「え?俺はまだ行くとは言って」

少女「行くわよね」ズイッ

少年「いやだから」

少女「行 く わ よ ね」ズズイッ

少年「……はい」

少女「うんうん♪休みの半ばに行くんだから、それまでにはさっさと春の課題終わらせとかないとだめよ。あと??」

少年(……ばっくれてやろーっと。後が怖いけど)

少年「……ん?」



女「??。??、???♪」

モブA「??!」

モブB「??、??。」
5 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 00:58:20.01 ID:QekJgiX40
ダッシュ記号って表示されないんですね…

仕切り直して最初から投下します。
6 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:01:16.07 ID:QekJgiX40
ーーーーー





「──ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」

「──いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」

「──♪、〜〜♪」

「──何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」

「──いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」

「──そしたらさ、君は──」







ーーーーー

「……く…………て!」

少年(……ん)

「…やく………ってば!」

少年(なんだ……夢…?)

「早く起きなさい!」ピシッ

少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」

少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」

少年「……俺たちしかいないじゃん」

少女「みんな帰ったか部活よ」

少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」

少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」

少年「おいおい…」

少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」

少年「は?」

少女「あ?」

少年「……なんでもない」

少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」

少年「はいはいどうも」

少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)

7 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:04:40.60 ID:QekJgiX40
下校中ーーー

少女「──それでさ、今度の春休みにおじいちゃんのところに帰らない?」

少年「お前、ほんとあの人のこと好きなー」

少女「当然でしょ?というかあんたは何も感じてないの?私たちを大事に育ててくれて、今こっちの学校に行けてるのだっておじいちゃんのおかげなんだから」

少年「いやまあ、ありがたいとは思ってるけどさ……よく覚えてないんだって」

少年(親に捨てられ、身寄りのない俺たちを拾って世話してくれたのが、少女の言うおじいちゃん……R国のお偉いさんらしい。らしいっていうのは、全部少女から聞かされたことだからだ。俺自身は昔のことをほとんど覚えてない。今俺たちは同じ寮に住んで同じ学校に通ってるけど、そう取り計らってくれたのもその人なのだそうだ。……作り話かよ)

少女「じゃあ、私たちが一緒に闘ってたあの日々も?」

少年「……ばったばったとなぎ倒していったってやつか?」

少女「そうそう!なんだ覚えてるじゃない」

少年「それはお前に何度も聞かされたからな。悪いけど俺の記憶の中にはございませんってやつだ」

少女「もう、信じらんない!二人であんなにいっぱいやっつけたじゃない!そんなにどうでもいいことだったわけ?」

少年「そう言われてもなぁ」

少女「あーあ、昔のあんたは頼もしかったのになー。今じゃこんなになっちゃって」

少年「ったく、また始まったよ……」

少年(大体闘うってなんだよ。格ゲーの話かっての)

少女「はぁ……まあいいわ。それで、おじいちゃんのとこに帰る日だけど、休みの半ばくらいでいい?」

少年「え?俺はまだ行くとは言って」

少女「行くわよね」ズイッ

少年「いやだから」

少女「行 く わ よ ね」ズズイッ

少年「……はい」

少女「うんうん♪休みの半ばに行くんだから、それまでにはさっさと春の課題終わらせとかないとだめよ。あと──」

少年(……ばっくれてやろーっと。後が怖いけど)

少年「……ん?」



女「──。──、───♪」

モブA「──!」

モブB「──、──」


8 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:07:44.96 ID:QekJgiX40
少女「なに?どうしたの?……ってあいつか」

少年「女ちゃん、やっぱいいなぁ…」ニヘラ

少女「あれのどこがいいのよ。いっつも仮面みたいな笑顔貼っつけてるだけじゃない」

少年「分かってないなー、あれはファンに向ける営業スマイルってやつだって。アイドルって大変なんだ。気を許せる相手が側についててあげないと……それが俺だったりしたら……えへへー」

少女「呆れた。重症ねこれは……さっさと帰るわよ」

少年「あーいっそ告白したら付き合ってくれないかなぁ」

少女「なに?彼女が欲しいの?……じゃあほら、ここにいるじゃない。ずーっとあんたと一緒に居た適任者が♪」

少年「え?誰?」

少女「♪」ニコッ

少年「……お前が?」

少女「そそ♪こんなヘタレでも幼馴染としてのよしみってのがあるから──」



少年「いやーないない。冗談にしてももっと面白いこと言えって(笑)」



少女「…………は?」

9 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:09:31.94 ID:QekJgiX40
少年「何かあるとすぐ手出してくるし、しかもとんでもなく痛いし、そんなのと付き合ったら命がいくつあっても足りないだろ」

少女「…………」

少年「あと可愛げがない!お前せっかく顔はいいんだから、そのがさつなとこ直せばかなりましになると思うんだけどなー」

少女「…………」

少年「この際だから女ちゃんを見習ってみるとかどうだ?お前も一応アイドルやってんだし、女ちゃんの良さが分かると思うぜ」

少女「っ……」

少年「そうだなー女ちゃんくらいおしとやかになれたら、俺の相手としてやぶさかでも──」

少女「ふんっ!」バキッ!

少年「がふっ……」

少女「さいってい。ずっとそこで寝てなさいよ」スタスタ...

少年「……あご、蹴るのは、やめろって……」ガク





モブA「なになに〜あの子達どうしたのかしら」

モブB「別れ話でもしてたんじゃないの?」

モブA「あの男子浮気したのかな?」

モブB「さぁ……でもありえるわね。あの子ちょっとかわいいし」

モブA「……モブBってああいう子がタイプ?」

モブB「え、あ、いやいや別にそういうんじゃ……ね、女ちゃんは何だと思う?」

女「……」

モブA「女?」

女「…え?あぁいや、あの子、私の熱烈なファンなの」

モブB「あの子も?もしかしてこの前教室に押し掛けてきたストーカー集団の中に…?」

女「いーえ。でも付きまとってくるって意味ではおんなじかなー。ま、いつも返り討ちにしてるんだけどね♪」

モブA「毎度のことだけど、容赦ないわねー」

女「当然!この私よ?そこらへんの人が釣り合うわけないでしょ?」

モブA「はいはい」

モブB「……じゃああの子もらっちゃおっかな」ボソッ

モブA「…モブB、あんた……」

モブB「え、聞こえてた!?」

モブA「人の好みに口出しするつもりはないから心配しないで」ニヤニヤ

モブB「……わ、忘れて!」ガバッ

モブA「わっ、危なっ!」ヒョイッ

モブB「んー!」

モブA「ちょ、やめなさいって!」

女(………)




10 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:11:34.20 ID:QekJgiX40
自室ーーー

少女「………」スッ

少女「………」カチッ

少女「……んっ……」

少女(……いつから、こうなっちゃったんだろ)

少女(こんなはずじゃなかったんだけどな……)

少女(でもあのバカ……私の気も知らないで…!)



ーーーーー

少年「──なぁ少女、次は向こうの奴ら蹴散らしに行こうぜ!」

少年「──あぁ?怪我?こんなの大したことねぇよ。んなことよりほら、頼んだぜ」

少年「──俺の背中任せられるの、お前だけだからな!」

ーーーーー



少女(この夢みたいに、あの頃の少年が帰ってきてくれればな……)

少女(第一、なんであの頃のこと覚えてないのよ!もう!)

少女(……あいつ、危ないことして稼いでるっていう噂聞いたけど、本当なのかしら)

少女(どこまで落ちぶれれば気が済むのよ、あのバカは)

少女(……私もひとのこと言えないか……)



ピリリリッ ピリリリッ



少女「」ビクッ

少女「……電話?」

少女(……あいつから……)

11 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:13:56.41 ID:QekJgiX40
少女「………」ピッ

少女「………はい」

少年『あ……少女か?……その……』

少女「なに?用がないなら切るわよ」

少年『いや待って待って!……そのさ、悪かったよ』

少女「……何が?」

少年『さっきのことだよ。別に俺は、少女をバカにするとか、そういうつもりで言ったんじゃなくてさ──』

少女「そんな言い訳はいいわよ。女より劣るカスって言いたいんでしょ?」

少年『そんなこと言ってないだろ』

少女「いいって。夢の中のあんたに慰めてもらってるから」

少年『夢?……少女、もしかしてアレ使ってるのか?』

少女「そうよ。あんたも使えば?念願の女とよろしくできるんじゃない?」

少年『………とにかく、機嫌直してくれよ』

少女「………」

少年『なぁ、俺にできることなら何でもするからさ』

少女「……じ……て…」ボソッ

少年『え?』

少女「……私の前で女の話しないで」

少年『……分かった』

少女「ほんとに?」

少年『あぁ』

少女「……次はないからね」

少年『分かってるって』

少女「おじいちゃんにあんた消してもらうから」

少年『こえーよ!……つーかお前もうすぐ収録の時間じゃないの?』

少女「忘れてるわけじゃないわよ。今行くところ。そういうあんたもでしょ?」

12 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:14:56.65 ID:QekJgiX40
少年『いや、俺は……いいよ今日は』

少女「はぁ?またサボる気?この前も行くって言っておきながら結局来なかったって聞いたけど!」

少年『それはその……』

少女「いつもいつも何してるの?……危ない商売ってやつ?」

少年『!?は、え!?なんでそれを……別になんでもいいだろ』

少女「あんたね……噂になってんのよ」

少年『どうせ根拠も何もないただの噂だろ』

少女「あとスリ癖」

少年『っ……』

少女「前に見たわ。あんたがまたスッてるの。ねぇ、あんた本当にこのままじゃ退学になるわよ?」

少年『大丈夫だって言ってるだろ。最低限のことはやってるし。……明日の昼から、時間空いてるよな?宿題教えてもらいに行くからよろしく。じゃ』

少女「あ、ちょっと!まだ話は──切りやがったあのバカ」

少女(……もうちょっと時間あるわよね)

少女「………」カチッ

少女「……っ」

少女(はー……)

少女(少年……なんでよ……)

少女(私はただあんたと……)

少女(………)



少女「……ひとりにしないでよ」



13 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:16:21.48 ID:QekJgiX40
ーーーーー

少年「──よろしく。じゃ」ピッ

少年「……ふぅ」

少年(少女のやつ、最近どんどん口うるさくなってきてる気がする)

少年(別に俺がどこで何をしてようが勝手だろ)

少年「……行くか」スタスタ

少年「………」プルルル

少年「あ、もしもし。うん、遅くなって悪い。今から向かうから。え?遅刻分引くって…勘弁してくれよ。ただでさえ金がないのに──」


14 : ◆YBa9bwlj/c :2019/06/05(水) 01:17:54.48 ID:QekJgiX40
スタジオーーー

少女「〜〜♪〜〜〜♪」

「はーい、OKでーす!お疲れさまでしたー!」

少女「ありがとうございました」



少女「──ふぅ」

少女(結局、あいつは来てないみたいね)

少女「何やってんだか全く……」

少女「……あ、これ、新しく出た雑誌」

少女「………」パラパラ

少女「やっぱりみんなかわいいわねー。私も頑張ってればそのうちこんな風に……うげ」

雑誌『今人気絶頂中!女さん特集!』

少女「女の記事……」

少女「………」

少女(悔しいけど、いい歌うたうのよね、こいつ)

少女(この女がいる限り、私は一番になれない気がしてくる……あいつの中でも)

少女(……嫌いだわ)



ピリリリッ ピリリリッ



少女(なに?また少年?)

少女「……!」

15 : ◆XU7PmpcuUo [saga]:2019/06/05(水) 01:19:27.36 ID:QekJgiX40
少女「………………」ピッ

『あー、やっと出てくれたね』

少女「なんで今掛けてくるのよ。いつも明日くらいにかけてくるじゃない。まだ楽屋なんだけど」

『それはね、君の悲しそうな心の声が聞こえたからさ〜』

少女「……つまんない冗談はいいわ。で、何の用なのよ、売人さん」

売人『えー?僕からの用件なんて分かってるでしょうに』

少女「……どれくらい買える?」

売人『一週間分くらいかな。また用意しておいたから、明日の朝、いつものところでいいかい?』

少女「明日の朝?ちょっと急すぎない?」

売人『おや、先約でも入っていたかい?』

少女「別にないけど……」

売人『いやー最近注文が多くてねー、本当は明後日に君に渡そうと思ってたんだけど、その日は大口のお客さんが入っちゃってさ』

少女「あっそ」

売人『連れないねー相変わらず』

少女「どうでもいい。明日受け取りに行くから、切るわ──」

売人『君もよく知ってる人だと思うんだけどな〜』

少女「!」

少女(……まさか)

少女「……あっそ」

売人『ほーんと、愛想ないよね君。アイドルやってるんでしょ?もっとリップサービスとかさ、練習した方がいいよ?』

少女「余計なお世話よ。もう用はないでしょ?切るから」ピッ

少女「………はぁ」

少女(分かってる。分かってるわ、このままじゃダメってことくらい)

少女(……少年……)

少女「……おじいちゃん、私……どうすればいいのかな」


16 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:22:37.66 ID:QekJgiX40
翌日ーーー



ガチャッ

少年「よーっす」

少女「あんたね、お邪魔しますくらい言いなさいよ」

少年「いいだろ別に、俺たちの仲なんだし」

少女「……どんな仲よ?」

少年「なんつーか……腐れ縁?」

少女「……」ゲシッ

少年「いって!蹴るなよ」

少女「ふん」





ーーーーー



少年「………」

少女「………」カキカキ

少年「………」

少女「………」カキカキ

少年「なぁ」

少女「なに?」

少年「なんで隣?」

少女「?」

少年「いやそんな首傾げられても」

少女「あ、そこの問題間違ってるわよ。そこはこっちの式を使って、こう解かないと」

少年「ほんとだ、サンキュ。…ってそうじゃなくて」

少年「なんで俺の隣に座るんだよ?狭いだろ。そっち座んないの?」

少女「別に狭くないけど」

少年「えぇ…?そうか?でも明らかに……」

少女「……」ジッ

少年「……あー、まぁ、こっちの方が教わりやすいからいいけど」

少女「でしょ?あと、そっちの問題も違うわよ」

少年「どれだ?」

少女「これよ」グイッ

少年「ちょっ」

17 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:23:59.49 ID:QekJgiX40
少女「最低限のことはやってるって言っておきながらこの様なわけ?」

少年「いやだから、こうやって課題くらいはやってるじゃん。つーか近いから…!」

少年(……こいつ、いい匂いすんな)

少女「私が言わなきゃやらないじゃない」

少年「う……まぁそのことについては感謝してるよ……」

少女「………」

少年「……あのさ、そろそろ離れてくれないと課題が──」

少女「明日」

少年「進まな……え?」

少女「買いに行くんでしょ、アレ」

少年「……それも噂になってんのか?」

少女「違うわよ」

少年「買うけどさ、何?別にわざわざお前の許可が要るわけでもないだろ?」

少女「そんなに大量に必要なの?」

少年「どこまで筒抜けなんだよ……」

少女「それと昨日、やっぱり来なかったし」

少年「またその話か?説教するなら俺は帰るぞ」

少女「ねぇなんで」

少年「ん?」

少女「あんたはさ、何がしたいの」

少年「何って……」

少女「学校も、収録もサボる。アレを使う頻度も増えてる。挙句に危ない商売に手を出すって……」

少年「あー、帰っていいか俺」

少女「あんた女のこと好きなんでしょ?今のままじゃ絶対振り向いてなんかくれないわよ」

少年「おいおい、その話はしないんじゃなかったのか……いいんだよ、もう。お前に言われなくても分かってる。女ちゃんと俺じゃ釣り合わないなんてことくらい」

少女「少年……」

18 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:25:24.08 ID:QekJgiX40
少年「だから!夢ん中でくらい女ちゃんとデートしに行くんだよ!……本当はさぁ、本物の女ちゃんと行きたいけど、はぁ……」

少女「………」

少年「笑うか?……でもお前だって似たようなことしてるだろ?なんかさ、もういいんだよどうでも。なんか俺、女ちゃんに避けられてるみたいだし。学校とかつまんねーし。……どうせならさ、お前のよく言ってるR国でずっと闘ってた方が楽しかったのかもな」

少女「………」

少年「そうだ!いっそのことお前に養ってもらうってのはどうだ?ぶっちゃけ今とあんまり変わらないだろうし、家事くらいはできるぜ、俺」

少女「──なんで」

少年「なに?」

少女「なんでそんなにバカなわけ!?情けない!ほんっとうに!もう見てて悲しくなってくるわ!このナメクジ!ヘタレ!今のあんたは道端の石ころ以下よ!」

少年「は?え?なんだよ……そんなに怒ることか?」

少女「もういい──」





少女「私が何とかしてやるわ!」





少女「だから──」

少女(諦めないで…)

少年「……え、養ってくれるのか!?」

少女「違うわよばか」

少年「じゃあもしかして……女ちゃんのこと手伝ってくれるの?」

少女「そんなわけないでしょ」ゲシッ

少年「痛いって!」

少女「決めたの。あんた本当にダメ人間になってるから。私が更生させてあげる」

少年「更生って」

少女「なによ。文句ある?」

少年「むしろ文句しかないんだが……」

少女「うるさいわね。あんたに拒否権はないから」

少年「うげぇ……」

少年(こうなったらこいつ面倒くさいんだよなー……)

19 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:27:05.53 ID:QekJgiX40
少女「とりあえず来週の金曜日、楽しみにしてなさい」

少年「金曜日?何かあったっけ?……あ」

少年(2/14……バレンタイン……?)

少女「ふふん。更生プログラムの第一歩よ♪」ニコッ

少年「っ……」ドキッ

少女「ほら、ぼさっとしてないでさっさと課題進めちゃうわよ」

少年「あ、あぁ」

少年(まさか、な)

少女「………」カキカキ

少女(そう、私が何とかしないと……)

少女(少年を──)





少女(──初期化するしかない)


20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/05(水) 01:27:54.12 ID:QekJgiX40
2/14ーーー



少女「ふぁーあ……」

少女(眠い……結局昨日は徹夜しちゃったし)

少女(まあでも、おかげでできたから良かった)

ガラガラッ

少女「おはよー」

「おはよー」

「何か少女眠そうじゃない?」

少女「ちょっと夜更かししちゃって」

「へぇー」

「なになに?ひょっとして、チョコ?」

少女「そんなとこ」

「本命君でもいるの!?」

「何よそれー!教えなさいよ!」キャッキャ

少女「あはは…そんなんじゃないって」

少女(あいつは……)チラ

少年「………」ソワソワ

少女(ぷっ……なによあの間抜け面。笑えるわ)

少女(……期待してるのかな)

少女(ふふ、楽しみにしてることね)


21 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:29:12.57 ID:QekJgiX40
少年「………」

少年(少女のやつ……)

少年「………」チラ

少女「……?」チラ

少年「──!」ドキッ

少年(まさか、本当に俺に……?)

少年(バレンタイン、か……)

少年(………)

少年(……女ちゃん、渡しに来たりしてくれないかなぁ)





ーーーーー



キーンコーンカーンコーン

少年「………」ズーン

少年(……結局誰も来なかった)

少女「なーに辛気臭い顔してんのよ」

少年「……ほっとけ」

少女「ね、ちょっと付き合ってくれない?」

少年「え?それって……」

少女「屋上に」

少年「……おう」


22 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:30:43.10 ID:QekJgiX40
屋上ーーー



ヒュオー

少女「んー…!」

少女「さすがに屋上の風は冷たいわねー」

少年「………」

少女「さて、と」

少女「ねぇ少年」

少年「う、うん、何?」

少女「……今日、どうせ一個ももらえてないんでしょ?」

少年「なっ……なんだよ関係ないだろ」

少女「関係あるわよ……さすがにもう分かってると思うけど、はい」スッ

少年「……チョコか?」

少女「そう」

少年「どういう風の吹き回しだ?」

少女「なによ。素直に受け取りなさいよ」

少年「………」スッ

少女「言っとくけど、あんただけだから。渡したの」

少年「そうなのか?……まぁお前こういうことする女子力なさそうだもんな」

少女「一言余計!……それで、今食べて感想聞かせてほしいんだけど」

少年「ここでか?」

少女「うん」

少年「でも帰ってからでも……」

23 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:32:21.09 ID:QekJgiX40
少女「……」ジッ

少年「……分かったよ」

(包み紙を解く)

少年「お、おぉ……」

少女「………」

少年「……いやあのさ」

少女「………」

少年「なんか点滅してるんだけど、このチョコ」

少女「そうね」

少年「そうね、じゃないよ!?え、これ食うの?ってか食べていいものなのか?」

少女「ちょっと体にいいもの使っただけよ。まずくはないから安心しなさい」

少年「えぇー…ほんとかよ……」

少年「……悪い、実は俺今日昼食い過ぎちゃって、腹いっぱいなんだよね。帰ってから食べるから感想は明日でも」

少女「……」ギロッ

少年「ひっ……分かった分かった!食べるから…」

少年(……にしても、どう作ったらこうなるんだよ。変な匂いがするわけじゃないけど……不気味過ぎるだろ)

24 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:33:52.33 ID:QekJgiX40
少年「………」

少女「………」

少年「すまん!やっぱ無理っ!」ダッ!

少女「あ!待ちなさい!」ダッ

少年「いや無理だって!なんだよこれ!宇宙人の食べ物かよ!?」

少女「人の好意は素直に受け取りなさいよ!」

少年「どう見ても好意的じゃねーだろ!」

少年(とりあえずこの場は逃げないと…!)

ガチャガチャ

少年「──!?」

少年(ドアが開かない…!?)

少年「な、なんで鍵かかってんだよ!」

少年(まぁいい、早く開けないと…!)カチッ

ポンポン

少年「………」オソルオソル

少女「少年♪」

少年「あ、あはは……」

少女「鍵かけといてよかった♪」

少年(鍵かけたのお前かよ!!)

少女「……で、食べてくれるわよね?」ニコッ

少年「………はい」

少年「………」





チョコ『チカチカ』





少年(今日が命日かもな……)

25 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:34:45.80 ID:QekJgiX40
少年(……ええい、ままよ!)パク

少年「……お」

少女「どう?」

少年「なんだ、意外とおいしいぞ」

少女「意外とってなによ」

少年「いやこんな見た目なら警戒するだろ普通」

少年「でも……」パク

少年「……うん、うまいよ」

少女「そう?……良かった」

少女「食べてくれて」ボソッ

少年「ん?何か言ったか?」

少女「べっつにー」

少年「ふーん。それよりさ、これってどうやったらこんな見た目に──ぐっ」ドクンッ

少年(な……なんだこの感覚……)

少年「あ……ぐ……」

少女「………」

少年(意識が……)

少年「お前……やっぱり、何かいれたろ……」ガクッ

少女「………」

少女「……ごめんね」

少女(でも、こうするしかない。私とあんたが変わるためには)

少女(……ひとまず、第一段階はクリアってとこね)


26 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:35:51.44 ID:QekJgiX40
寮ーーー



少年「………」

少年「………はっ」

少年(ここは……俺の部屋……?)

少年「死んで……ない?」

少女「生きてるわよ」

少年「うわっ!」

少女「なにそのリアクション。失礼ね」

少年「あ、少女お前…あれに何入れたんだよ!」

少女「だから言ったじゃない。体にいいものだって。……良薬は口に苦しって言うでしょ?」

少年「苦しどころじゃなかった気がするんだが」

少女「今だって身体に変なところはないはずだけど」

少年「ん?」

少年(言われてみれば……別にどこかおかしくなってるわけでもない)

少年「……だからってよ、人が気絶するようなもん食わせるか?」

少女「それは……悪かったわよ。あんなに効き目があると思わなかったから」

少年「そ、そうか……」

少年(やけに素直だな)

少女「あとその、あのチョコ」

少年「ん?もう食わないからな!?」



少女「──本命だから」




27 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:38:54.59 ID:QekJgiX40
少年「……え」

少女「だから、その……返事」

少年「………」ポカン

少女「聞かせてよ、返事」

少年(……な、なんだこれ)

少年「……あ、そっか。さてはどっきりだろ。おいおい趣味悪いなぁこんなことまでして──」

少女「言っとくけど」ギロッ

少年「!?」

少女「はぐらかしたら……容赦しないから」ナイフチラッ

少年(ナイフ…!?何するつもりだよおい…!)

少女「……あんたが私にどんな印象を持ってるのかは分かってるつもり」

少年「………」

少女「女のことが好きなのも知ってる……でも」

少女「私のことも少しは見てよ……」

少年「少女……」

少年(………)

少年「……別に、お前のこと見てないわけじゃない」

少女「え…?」

少年「お前が誰よりも俺の心配してくれてることくらい分かってるよ」

少女「それは……だって私がいないと何もできないじゃないの」

少年「そんな赤ちゃんじゃないんだから……」

少女「………」

少年「いいよ」





少年「付き合おう、俺たち」




28 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:39:58.76 ID:QekJgiX40
少女「!……なんて…?」

少年「聞こえなかった?付き合おうって言ったんだけど」

少女「〜〜!」バッ

少年「おっと!……なんだよいきなり」

少女「……」ギュー

少年「……」ナデナデ

少女「ん……」

少年(こいつも、こうしてればかわいいのにな……)

少年「なぁ」

少女「……なに?」

少年「これも更生プログラムの一環ってやつか?」

少女「ばーか……違うわよ……これは私の気持ち」

少女「……少年」

少年「ん?」

少女「ありがと」

少年「……おう」

少年(どうしたんだろうな、ほんと。こんなしおらしい少女、初めて見るな……)

少年(……む)

少年「……あのさ、そろそろこの姿勢辛いんだけど」

少女「……もうちょっと我慢して」ギュー

少年「はいはい」




29 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:42:11.76 ID:QekJgiX40
月曜日ーーー



少年「………」

少女「♪」

少年「あのさ、ちょっと近くないですか」

少女「そう?」

少年「少し歩きにくいんだが…」

少女「そんなことないけど?」

少年「俺がだよ!」





「ねー、やっぱりあの二人……」ヒソヒソ

「うんうん、私も……」ヒソヒソ





少年「めちゃくちゃ見られてる気がする…」

少女「いいじゃない。勝手にさせとけば」

少年「うー……」

少年(………)

少年「……少女、お前本当なんかあったのか?」

少女「なにが?」

少年「いや、何か……お前のキャラそんなんだっけ?」

少女「はぁ…デリカシーないところは相変わらずね」

少女「言ったでしょ?私が何とかしてやるって」

少年「えぇ?や、やっぱり更生プログラムとやらの……?」

少女「ねーそんなことよりさ、今日の放課後付き合いなさい」

少年「怪しげな洗脳施設に!?」

少女「何言ってんの。普通にデー──」ガララ





「あー!」

「少女あんた…!」




30 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:43:08.04 ID:QekJgiX40
少年「な、なんだ?」

「なーんだ、やっとくっついたのあんたら?」

「やっぱり先週のあれだよね!?やるねぇ少女!」

少女「ふふふ…まぁね」

「少年君…だっけ?」

少年「は、はい。なんでしょう…?」

「少女になんて言われたの?」

「私も気になる!」

少女「はいはいそこまで。あんたら早く座りなさいよ。もう先生来るわよ?」

「えぇー」

「それくらい教えてくれてもいいじゃん……放課後、楽しみにしててよ」キラン

少女「残念でしたー。放課後はもう先約があるから、ね、少年?」

少年「ん、あぁ…」

「なによそれー!」

「ずるい!」




31 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:44:56.18 ID:QekJgiX40
放課後 自室ーーー

少女「──あー、楽しかった」

少女(あいつと出かけることなんて今まで何度もあったけど、今日のは…デート…)

少女「ん〜〜!」ムフフ

少女「………」

少女(……でも、あいつの目……)

少女(分かる、あれは私を見てない)

少女「………」スッ

少女「……!」

少女(だめ、だめよ。もうこんなのには頼らない)

少女(欲しい未来は…自分で切り拓く)

少女(そうね──)





32 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:48:56.21 ID:QekJgiX40
ーーーーー



少年「──あー、疲れた」

少年(何だったんだ、あいつのはしゃぎよう。まさか隣町まで行かされるとは…)

少年「………」

少年(少女、か……)

少年(悪くない、かもな)

少年「あーー!でもなぁーー!」

少年(女ちゃん……やっぱ諦めきれねーよなぁ)

少年「はー……」

少年「………」スッ

少年「………」カチッ

少年「っ……」

少年(女ちゃん……)

少年「………」

少年(……よし決めた!)

少年「まずは…少女」

少年(あいつを落としてやる!少女で練習して、最終的には女ちゃんと……にへへ)

少年(そうだな──)




33 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:50:11.08 ID:QekJgiX40





少女(??桜が咲く頃くらいまでにはね)

少年(??桜が咲く頃くらいまでにはな)




34 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:51:26.61 ID:QekJgiX40
>>33 訂正





少女(──桜が咲く頃くらいまでにはね)

少年(──桜が咲く頃くらいまでにはな)



35 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:53:10.85 ID:QekJgiX40
3月ーーー



ザッザッザッ

少女「綺麗に咲いてるわねー」

少女(ここら辺じゃ一番大きい桜の木…)

少女(心なしか輝いてすら見えるわ)

少女(うん、まるで……)





ーーーーー

女『〜〜♪』

ーーーーー





少女「……チッ」

少女(嫌なもの思い出しちゃったわ)

少女(私だって本気出せば……というか今の事務所やる気無さ過ぎなのよ!結局前収録した歌も使ってくれなかったし)

少女(……やっとこの日が来たのね)

少女(まずは)

プルルル プルルル

少女「………」

少女「……早く出なさいよ」




36 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:54:21.83 ID:QekJgiX40
ーーーーー



ピリリリッ ピリリリッ

少年「んー?」

少年「少女からか」

少年「………」ピッ

少年「──もしもし」

少女『少年、あんた今日暇よね。私のとこに来て』

少年「確かに暇だけどさ。なんだ?デートか?」

少女『っ…そ、そうよ』

少年「……」ニヤ

少年「少女さ〜、あんな大胆に告っといてデートって単語にまだ慣れてないのか〜?」

少女『なっ!そんなんじゃないわよ!』

少年「お前にそんな女の子らしいとこがあったなんてなぁ」

少女『蹴るわよ』

少年「おーこわ。で、お前の部屋に行けばいいのか?」

少女『いえ、桜の下で待ってるわ。この町で一番大きいやつ。分かるでしょ?』

少年「あーあれか。分かった今から行くわ」

少女『うん、待ってる』

少年「……乙女少女」

少女『あんたねぇ〜!』

少年「あーイソガナイトナー」ピッ

少年「……」

少年(順調……でいいんだよな)

少年「花見デートってやつかなぁ」

少年(なんだかんだ、あれ以来変なもの食わせたりしてきたりとかなかったし、もういけるんじゃないか?少女のやつ)

少年(これが女ちゃんなら言うことなしなんだけどなぁ……まぁでもこれはこれで……)

少年「……」ニヤニヤ




37 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 01:58:47.17 ID:QekJgiX40
ーーーーー



少女(──とか思ってるんでしょうね)

少女(あのバカ面みてたら何考えてるかなんて分かるわ。ほんと単純なんだから)

少女(ふん…あんな女の代わりになるほど私は安くないわ)

少女「……あ、この辺ならいいかしらね」ザクッ





「タイムカプセルでも埋まってるのかい?」





少女「……やーっと来たの?遅刻するなんてらしくないじゃない」

売人「手厳しいねぇ。でも君が急に呼び出すからじゃないか。僕だって暇じゃないんだからさ」

少女「どうせアレを売り歩いてるだけでしょ」

売人「ひどい勘違いだよそれ。銀行がお金の出し入れしかしてないって言ってるようなもんさ。分かるかい?彼らが裏で色んな仕事してるように僕も──」

少女「はいはい、分かったから」

売人「本当にぃー?……それで、僕は何で呼ばれたのかな?アレはこの前たくさん買ってくれたから足りなくなってることなんてないはずだけど。やっぱりそのシャベルで何か掘り出すのかな?お宝?タイムカプセル?それとも埋める方かい?」

少女「残念ながらほとんどはずれ」

売人「えぇー……ん?でもほとんどってことは」

少女「そうよ。ここに埋めに来たの」





少女「──あんたをね」スチャ




38 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 02:01:11.80 ID:QekJgiX40
売人「………おいおい、穏やかじゃないね。なんだいその銃は。おしゃれなら似合ってないよ?」

少女「お生憎さま。本物よ」

少女「……あんた、何者なの?」

少女「突然この町にやってきて、怪しげなもの売りつけて」

売人「怪しげとは失礼だね。君だって使ってたじゃないか」

少女「もうやめたわ」

売人「……は?」

少女「ダメなのよ。あんなものに頼ってちゃ……私たちはどんどん落ちていくだけ」

売人「………」

少女「アレ、少年にも売りつけてたわよね」

売人「……それが?」

少女「んーん、もういいの。あの子にも金輪際使わせないから」

少女「ねぇ、教えなさい。アレは一体何?何のために私たちに使わせてたの?」

売人「………」

売人「何のためとは…なんだい?まるで僕が悪者みたいに言ってくれるね?いつも説明してる通りさ、あのメモリースティックは、君たちが見たいと思ったものを見せてくれるプログラムだって。せっかく辛そうな君たちに夢を見せてあげたのに、恩を仇で返すような人なのかな、君は」

売人「まぁ……ちょーっと法の抜け道を利用してるのは否めないけどね、ククク」

少女「………」

売人「それに、君に僕を責める資格はないだろう?アレを使った時点で立派な共犯者なんだ。いつも使ってたんだろう……そうだね、その右耳のヘッドホンかな?そこからロードさせてさ」

少女「…!」

売人「いやーでも参ったねー。そっかそっかもう使ってくれないんだ?困ったなー」

少女「……なんなのよ」

少女「あんたのせいでしょうが!」

少女「あんたのせいで、あいつは、私のことなんて見てくれなくなって…!」

少女「私も……こんな……」

売人「──見苦しいね。責任転嫁はやめてくれよ」

少女「っ!」


39 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 02:03:36.42 ID:QekJgiX40
売人「僕がいなかったらむしろ、君たちの関係はもっと早く壊れていたんじゃないのかい?それが分かってたから、君はこれに手を出したし、彼が使うのも止めなかった……違うかな?」

少女「………」

売人「なのにこの期に及んで僕を悪者扱いするなんて……感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはないと思うんだけどねぇ」

少女「……て」

売人「君の意志が弱かったから、こんなことになったんだろう。最近は少しましになってきたみたいだけど、ちょっと遅かったみたいだね。もっと早く君が彼に向き合っていれば結末は違ったろうに…本当に君はかわいそうな──」

少女「やめて!!!!」

売人「!」

少女「分かってんのよ!そんなこと!あんたに言われなくても!」

少女「だから──私は変わるの」

少女「あいつもね」

少女「ひとから見せられる夢なんてごめんよ」

売人「……ふーん、それで僕を、ね」

売人「所詮こうなる運命か」ボソッ

少女「──消えて」チャキッ

売人「ふー…分かった」

売人「……って言えるほど僕も優しくはないんでね!」バサッ

チャキッ

少女「なっ!」

少女(拳銃!?)

売人「少し計画とは違うけど、ここで…!」





タァンッ!





少女「………」

少女「………」ヨロッ



ドサッ


40 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 02:04:52.67 ID:QekJgiX40
売人「………ふぅ」

売人「まったく、ここまでのじゃじゃ馬ちゃんだったなんて」

売人「あーあ、服に土が付いちゃってる。これ高いのに」バサバサ

売人「ま、結果オーライかな」

売人(この子が油断してるときでよかった。本気だされたらさすがに僕もどうなってたか…)

売人「回収しちゃいますかね。派手に撃っちゃったけど、メインプログラムは壊れてないでしょ」

ザッザッ

少女「………」

売人「これでようやく僕の目的も果せるかな」

少女「………」スッ

売人「長かったなーあのときから??!?」

少女「??じゃあね、お間抜けさん」スチャ





ダダダダッ!





売人「ぐ……あ……なんで……」

少女「ふん、油断なんてしてないわ。こんなの昔に比べればなんてことないのよ。私を甘く見ないでよね」

売人「ふ……ふふ……そうかい、ほんと……とんでも、ない……」ドサッ

少女「………」

少女(あとは……)

少女(少年)



ザクッザクッ




41 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 02:08:47.03 ID:QekJgiX40
>>40 訂正



売人「………ふぅ」

売人「まったく、ここまでのじゃじゃ馬ちゃんだったなんて」

売人「あーあ、服に土が付いちゃってる。これ高いのに」バサバサ

売人「ま、結果オーライかな」

売人(この子が油断してるときでよかった。本気だされたらさすがに僕もどうなってたか…)

売人「回収しちゃいますかね。派手に撃っちゃったけど、メインプログラムは壊れてないでしょ」

ザッザッ

少女「………」

売人「これでようやく僕の目的も果せるかな」

少女「………」スッ

売人「長かったなーあのときから──!?」

少女「──じゃあね、お間抜けさん」スチャ





ダダダダッ!





売人「ぐ……あ……なんで……」

少女「ふん、油断なんてしてないわ。こんなの昔に比べればなんてことないのよ。私を甘く見ないでよね」

売人「ふ……ふふ……そうかい、ほんと……とんでも、ない……」ドサッ

少女「………」

少女(あとは……)

少女(少年)



ザクッザクッ




42 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 02:12:03.14 ID:QekJgiX40
ーーーーー



少年「えーっと、確かこの辺のはずだけど」

少年「……お、あったあった」

少年「しっかしほんと綺麗だなーこれ」

少年「俺の門出を祝ってくれてるみたい……うへへ」

少女「なーにが門出なのよ」ヌッ

少年「うおっ!びっくりさせんなよ」

少女「ま、この桜が綺麗なのは同感だけどね」

少年「だよなー」

少女「えぇ」

少年「………」

少女「………」

少年「……で、どっか行くのか?」

少女「いーえ。あのね、少年」

少年「?」

少女「今日はね、大事な話があるの」

少年「話…?」

少女「そ」

少年(それって…)

少年「……そこのスコップと関係ある話か?」

少女「シャベルは関係ない。…見たいの?見たいなら見せてあげるけど。新品だから綺麗よ」

少年「別に見たくはないが……何か埋めてたのか?」

少女「まぁ…ちょっとゴミを、ね」

少年「ふーん」


43 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 02:12:53.95 ID:QekJgiX40
少女「ね、少年こっち向いて?」

少年「ん…って近くないかお前!?」

少女「うるさい。……目、瞑って」

少年「え、な、なんで?」

少女「いいから」

少年「……」ギュ

少年(な、なんだなんだ!?や、やっぱりあれか?あれなのか!?)

少年(こんな桜の木の下で…ま、まだ心の準備が……)

少女「………」

少年(……なんか近づいてきてる気がする……い、息遣いが……!)

少女「………」

少年「………」ドキドキ





少女「──ごめんね」





少年「え?何が──」

ドゴォッ!

少年「がっ……」

少女「」サッ

ビシッ

少年「っ──」ドサッ

少女「………」

少年「」

少女「……よいしょっと」

少年「」

少女「こいつ……意外と軽いわね」




44 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:20:30.06 ID:QekJgiX40
ーーーーー





「??いやっ!なんで、やだよ…!」



「??あたしを……ひとりにしないで……!」





ーーーーー
45 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:25:52.27 ID:QekJgiX40
ーーーーー





少年(……………)

少年(………)

少年「………う」ノソ

少年(………どこだ、ここ)

少女「目、覚めた?」

少年「…?」

少女「なに?私の顔になんか付いてる?」

少年「いえ、その……」





少年「どちら様でしょうか」





少女「──っ」

少女「……記憶喪失かしら?」

少年「え?」

少女「覚えてないの?私よ、少女よ。あんたとはそうね…腐れ縁ってやつ」

少年「はぁ…」

少女「……本当に覚えてないの?下らない冗談のつもりなら……」ナイフチラッ

少年「!?」

少年「い、いえ!ほんと分かんないです!あなたのことも!…自分のことも……」

少女「……そう」

少年(なんておっかない子だ……!)

46 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:27:06.72 ID:QekJgiX40
少女「あんた、道端で倒れてたのよ。頭でも打ったんじゃないの?」

少年「助けてくれたんですか?」

少女「ここまで運んだだけだけどね」

少年「それは、ありがとうございます」

少女「いいのいいの。…ところで、ここがどこだか分かる?」

少年「いえ……」

少女「ここは私の部屋よ。そんで、この隣はあんたの部屋。ここは私たちが暮らしてる寮ね」

少年「寮……」

少女「ね、何か覚えてることはないの?」

少年「それが、全然なんです……自分の歳くらいなら分かるんですけど」

少女「…そこまではさすがに、ね」ボソッ

少年「え?なんですか?」

少女「何でもないわ。でもそっか、そのうち思い出してくれるといいけど、それまでは大変ね。右も左も分からないんじゃ……明日も学校あるのに」

少年「そ、そんなぁ〜」

少女「安心して」

少年「えぇ…?」グスッ





少女「──私が何とかしてあげる!」





少年「なんとか、ですかぁ?」

少女「そうよ。あんたが思い出すまで、色々教えてあげる。ここでの生活の仕方、歯磨きの仕方、前蹴り、切り裂き……全部ね!ふふ」

少年「ほ、ほんとですか!?」

少年(なんか変なの聞こえたけど)

少女「えぇ」

少年「あ、ありがとうございます!本当に!」

少女「いいのよ。私が好きでやってるんだから」

少年「好きで、ですか?」

少女「そうよ」ニコッ

少年「……っ」ドキッ

少女「そういえば、あんたの名前、まだ教えてなかったわね」

少女「あんたは、少年」

少女「で、私は少女」





少女「──改めて、これからよろしくね」



47 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:42:03.05 ID:02nqp4d5O
数日後ーーーーー



少女「少年ー!できたー?」

少年「もう少しー!」





ーーーーー

少年「はい、おまち」ゴトッ

少女「うむ」

少女「……」パク

少年「どう、かな」

少女「……んー、まだまだね。こんな味じゃまだ外に出せないわよ!」

少年「出す気ないから!」

少年「……というかさ、これって意味あるの?」

少女「んー?」モグモグ

少年「いや確かに料理って大切だと思うけどさ、もっとこう、生活に必要なことってあるような……」

少女「なに?不満?」

少年「そんなことは…」

少女「毎日世話してあげてるんだから、私としてはもっと色々してくれてもいいと思ってるんだけど。恩返しとしてね」

少年「……こんなに図々しく要求するものじゃないと思うなぁ」ボソッ

少女「なにか言った?」

少年「なんでもないです」
48 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:43:46.91 ID:02nqp4d5O
少女「……ん、そうね。そろそろ次のステップに進んでもいいかもね」

少年「次…!それは何をするの!?」ワクワク

少女「買い物よ」

少年「………」

少女「なによ」

少年「いや、別に」

少女「記憶失くしてから行ったことないでしょ?」

少年「それはそうだけどさー……学校は行ってるし、大差ないんじゃないかなぁ」

少女「つべこべ言わずに行く!ほら、これ買い物リストね。あとついでに甘納豆切らしちゃったから買ってきてね」

少年「自分が楽したいだけだよね!?」

少女「うん」

少年「認めた!?」

少女「もう、いちいちうるさいわよ。……ちゃんと買ってこれたらご褒美あげるから」

少年「え、ご褒美って…?」

少女「内緒」

少女「で、行くの?行かないの?」

少年「……行ってきます」

少女「よろしい」

ガチャッ

少女「甘納豆忘れないでねー♪」

49 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:44:38.27 ID:02nqp4d5O
少女(………)

少女「………」

少女「……………」

少女「……………ふ、ふふふ」

少女「やった…!やったやった!!」

少女(成功した……!)

少女(少年を初期化してから数日、様子を見てたけど、不審な様子は特にない。売人も葬って、アレも全部捨てたし……全部私の思い通りに進んでる!)

少女(なによ、今まで悩んでた自分を叩きに行きたいわね。私がちょっと本気を出せばこんな簡単に未来を変えられるのに)

少女(少年、最近ちょっと生意気になってきたけど、それはいいわ。また昔みたいな少年になってくれるかな〜。それとも、今度は私好みに育てるっていうのもアリね……)ニヤニヤ

少女「あっー!もう幸せ!」

少女(おじいちゃん、私頑張ったよ…!ちょっと遠回りになっちゃったけど、自分の力でやり遂げたから…!)

少女(また、褒めてくれるかな…)




50 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:47:28.84 ID:02nqp4d5O
ーーーーー



少年「……」テクテク

少年(………)

少年(……うーん)

少年「なーんかなぁ」

少年(何か忘れてる気がするんだよね)

少年(といっても記憶喪失なんだから、色んな事忘れてるんだけど……そうじゃなくて、もっとこう…別の何か……)

少年「なんだろうなぁ」

少年(このモヤっとした気分)

少年(最近ずっとそうだ…)

少年「んー、分からん!」





「お悩みかな?少年君」





少年「うぇ!?」

少年(聞かれてた!?…恥ずかしい……)

少年「……あれ、お兄さん、今僕の名前…」

「あれ?違ったかい?」

少年「いえ、合ってる…らしいですけど」

「…?」

少年「あの、もしかしてお兄さんも僕のこと知ってる人ですか?」

「なに…?」

少年「すみません、僕、頭打った拍子に記憶喪失になっちゃったみたいで…何も覚えてないんです…」

少年「もし僕の知り合いさんでしたら、どなたか教えてくれませんか?」

「!!」

「……へぇー、そうなんだ」

少年「はい……今、少女って人のところで色々教えてもらってるんです」

「少女……」

「……少年君」

少年「はい」

「君と会うのは少し久しぶりになるかな。君は僕のことを──」





売人「──売人って、呼んでたよ」




51 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:48:42.98 ID:02nqp4d5O
少年「売人さんでしたか。それで、もしよろしければ、僕とどんな関係だったか教えてもらっても…?」

売人「そんな大層なものじゃないよ。ちょっとした知り合いさ。……そう、僕が君の悩みを少し聞いてあげてた、くらいかな」

少年「そうなんですか!」

少年(確かに、見るからに普通じゃなさそうな恰好してるし……悩み解決のスペシャリスト、とか?そういう専門の人なのかな)

売人「……君、今失礼なこと考えてないかい?」

少年「と、とんでもない!」

少年(なんで僕の知り合いは皆考えてることが分かるんだよぉ…!)

売人「ま、いいけど」

少年「うぅ……何かごめんなさい」

売人「……さっき」

少年「はい?」

売人「分からないって叫んでたよね。悩み?」

少年「まぁ、そうですね……何かモヤモヤした気分がとれなくて……記憶喪失だけが原因じゃないと思うんです。でも、何が原因か分からなくて……ってこんな話じゃ漠然とし過ぎてますよね」

売人「………」

少年「あ!僕今おつかいの最中なんです。話聞いてくれてありがとうございます、売人さん。また相談に乗ってもらうことあるかもなので、そのときはお願いし──」

売人「──教えてあげよっか」

少年「──ます……え?」

売人「君が今何で悩んでるのか、全部」

少年「……知って、るんですか?僕が何で記憶喪失になったのかも…?」

売人「もちろん」

売人「……だって君は」





売人「記憶喪失なんかじゃないからね」ニヤ




52 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:50:39.34 ID:02nqp4d5O
ーーーーー



少女(でもこうしてあいつの帰りを待つっていうのは初めてかもね。いっつもフラフラしてたから)

少女(……ご褒美、なんて。つい言っちゃったけど、どうしようかしら)

少女(最近調子に乗ってきてるし、塩入れた紅茶でも飲ませようかな)

少女(ふふ…どんな反応してくれるかなー♪)

ピンポーン

少女「あらあら、おはやいのね。もう帰ってきたの?」

少女「はいはーい、今開けるわー」

カチッ

ガチャッ

少年「………」

少女「待ってたわよ♪甘納豆もちゃんと買ってきたでしょうね?」

少年「………」

少女「少年…?」

少女(手ぶら?)

少女「あんた何も買ってきてないの?あれだけ平気だなんだって言ってた癖に」

少年「………」

少女「しょうがないわねー。今度は一緒に行こうか。それならさすがに──」

少年「聞いたよ」

少女「え、何?」

少年「全部、聞いた」

少女「何をよ」

少年「……返してよ、僕の記憶」

少女(──!!)

少女「……なに、言ってんの」

少年「………」

少女「あんた、疲れてるだけ──」

少女(待って……今『聞いた』って…)

少女「少年、あんた、誰に……」





売人「──僕だよ」スチャ




53 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:53:07.61 ID:02nqp4d5O
少女「っ!?」

少女(な……)

少女(こいつ……!)

売人「なんでって顔してるね」

売人「ダメだよ?敵を倒すときは、跡形もなく消さなくちゃ。それが君の仕事だったんだろう?」

少女「……えぇ、そうね。まさか生きてたなんて。しつこい男は嫌いなんだけど」

売人「おやおや、この状況でまだ強がっていられるんだねぇ?」
チャキッ

少女(チッ……まずったわね。迂闊に鍵開けるんじゃなかった……あれはこの寮のセキュリティも兼ねてるのに)

売人「………」

少女「………」

少年「………」キョロキョロ

少年(……!見つけた、あのかばんだ)

少年(あそこに僕の…バックアップが…)

少年「──」ダッ!

少女「少年!?」

売人「よそ見してていいのかな!」

タァンッ

少女「きゃっ!?」

売人(外した…!化け物じみた反射神経だね…!)

売人(今度こそ!)

タァンッ

54 : ◆bWFnkQX8pw2l [saga]:2019/06/05(水) 07:54:31.40 ID:02nqp4d5O
少女「ぐぅ…!」

売人(よし!)

少年「ど、どいて!!」ドン

売人「おぉっと!?」

少年「」タッタッタッ…

売人「なんてそそっかしい子だ…」

ビー! ビー!

売人「……ん?」クルッ





少女「フーッ!!フーッ!!」





売人「な、なんだいこれは…!」

売人(部屋が……)





『WARNING!!WARNING!!』

『緊急削除プログラム起動』

『対象オブジェクト解析完了』

『実行シマス』





少女「わたシの前カラ……」

少女「──消エロ!!」





売人(これは……本当にまずいねぇ…!)




55 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:55:25.21 ID:02nqp4d5O
ーーーーー



少年「はぁ……はぁ……」タッタッタッ

少年「はぁ……はぁ……」タッ…

少年「はぁ……ゲホッゲホッ」

少年(盗んで、きちゃった……少女のかばん……)

少年「………」

ジー ガサゴソ

少年「……あった」

少年「僕の、バックアップディスク…」

少年(やっぱり、あの売人さんが言ってたことは本当だったんだ…)

少年(少女……なんでだよ……君は、僕を消して、何も知らない僕を見て楽しんでたの…?)

少年「いや、まだ、分からない」

少年(そうしなくちゃいけない理由があったのかもしれない)

少年(すべては、これを読み込めば分かる)

少年「………」カシャッ

スッ… ジジジ…





少年(………???!)




56 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:56:21.88 ID:02nqp4d5O
ーーーーー



少女「はぁ、はぁ…」

少女(くそ……仕留め損なった…)

少女「ぐっ……」

少女(まずいわね……中心部に近いところを撃たれたわ…)

少女(コアプログラム…異常なし、ブローカー…異常なし、カーネルアクセス…問題なし)

少女(一応、致命傷は免れたみたいだけど……)

少女「………」

少女(このままじゃ、あいつを仕留めるなんて到底無理ね……)

少女「………」

少女(しょうがない)

少女「………」サッ

ピッ ピッ ピッ

プルルル プルルル

少女「──もしもし、私だけど」




57 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:57:16.86 ID:02nqp4d5O
ーーーーー



少年「───………」

少年「………」

少年「………」カシャッ

スッ

少年「……思い、出した」

少年(全部……思い出した)

少年「……く、くくく」

少年(少女……あいっかわらず詰めが甘いなぁ)

少年(俺を初期化して、思い通りにさせようって…?)

少年(君がそうやって俺の気持ちを無視するのは本当に変わらないね!)

少年「………」

少年(……そう、昔から、変わってない)

少年「あぁ……でも……」

少年「騙されたフリして、R国に帰ろうかな……」ツー...





ポタッ




58 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 07:59:25.96 ID:02nqp4d5O
ーーーーー



売人「まさか……あそこまでとはね……」

売人(ちょっと計算外、かな)

売人(また計画の練り直しかなー…)

ウーン

ピーポー ピーポー

売人「……?」

売人(なんだ…?やけに騒がしいが…)

ピーポー ピーポー

売人(……まさか!?)

ズザー!

「そこのお前、武器を捨てて手を挙げなさい!」

カチャッ カチャッ スチャッ

売人「……あらー……」

ゴトッ ガシャン

売人「………」スッ

「それでいい、怪しい素振りを見せるなよ?」

売人「………」チラッ



少女「……」ニヤ



売人(あの女……!)

「今からお前の身柄を拘束する。大人しくついてこい」

売人「はーい……」

売人「……なんて、ね!!」バヒュン!

「うわっ!?」

「うぉ!まぶし!?」

少女「っ!」

「……」

「……あ、いない!」

少女「捕まえて!まだそう遠くには行ってないでしょ!」

「は、はい!」

「行くぞ!付いてこい!」

少女(……頼んだわよ。あのふざけた野郎を…!)

「……さて、少女さん、でしたかな」

少女「………」

「君の実行履歴から、どうも違法なアクセスが検出されたんだが──」

少女「分かってる。付いてけばいいんでしょ?」

少女「──その前に、もう一人、呼んでいいかしら」




59 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 08:00:49.04 ID:02nqp4d5O
ーーーーー



ガタンゴトン ガタンゴトン



『S駅〜、S駅〜』

『ご乗車ありがとうございます』



少女「次のやつに乗るからね」

少年「………」

少女「聞いてる?」

少年「ん?あぁ…」

少女「もう!しっかりしてよ!」

少年「んー」

少女「いきなり呼びつけちゃって悪かったわよ…」

少女「でも、あんなに長く取り調べしなくてもいいと思わない?むしろ私たちは被害者なのにぃ……」

少女「あいつもまだ捕まってないみたいだし…」ボソッ

少年「?」

少女「……ねぇ、本当に今日のこと何も覚えてないの?」

少年「……あぁ。気づいたらあんなとこにいた。少女から電話なかったら俺から交番行ってたかもな」

少女「ふぅん…」

少女「あんたさ、その口調……」

少年「」ビクッ

少年「な、なんだ?」

少女「……んーん、そっちの方が似合ってるわ」

少年「そうか…」

少女「うん」

60 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 08:02:28.54 ID:02nqp4d5O
少年「………」

少女「………」





巨大モニター「女『〜〜♪』」





少年(あ……女ちゃん……)

少女「……?」チラッ

少女「」ピキッ

少女「……ねー」

少年(殺気!?)

少女「少年は、ああいう子が好みなの…??」ユラァ

少年「あ、ああいう子って……?」

少女「今、見てたわよね?」ギロッ

少年「っ!?見てました、はい!」

少女「へぇー…」

少女「…そういうフラフラする癖全然抜けてないのね…」ボソッ

少年「いや、でもあれだよ!?たまたま目に入っただけっていうか……そんなんで切れられてもさぁ!?」

少女「……いいこと教えてあげる」

少年「な、なに…?」

少女「女の子はね……そういう嘘には敏感なの♪」ナイフチラチラ

少年(ひー!)

少年(チラッってレベルじゃねー!隠す気ゼロじゃねーか!)

少年「──あ!電車来たぜ!乗ろう乗ろう!」

少女「ちょっと!まだ話は──帰ったら詳しく聞かせてもらうから…!」

少女(……あいつが捕まってないのはシャクだけど…まぁ)

少女「……」チラッ



「……」グッb



少女(保護観察の人も付いてくれてるし、簡単には手出しできないでしょ)

少女(しばらくはまた、少年と一緒に……♪)





.........




61 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 08:03:14.81 ID:02nqp4d5O
ここまでで第1部は終了です。

第2部も随時投下していきます。
62 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:11:22.21 ID:02nqp4d5O
第2部投下します。
63 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:14:22.54 ID:02nqp4d5O


ーーーーー



ザワザワ



「おはよー」

「おはよ!久しぶりー!…あれ?ちょっと太った?」

「あー!気にしてるのに!」



ガヤガヤ



「なぁ、実は大事な話があるんだ…」

「なんだ…?」ゴクリ

「俺は……」

「宿題を全くやってない!」

「なにぃっ!?……なんてな、そんなの俺もだ!」

「だよなぁ!わっはっは!」



ワイワイ



「…あ、おいあれ」

「ん?おぉ…本当に来てるなんて」

「あの噂は本当だったんだな」





女「……」スタスタ





「あぁ…本物は一段とかわいいなぁ」

「…お前、話しかけて来いよっ」

「え、えぇ!?それとこれとは話が別というか…!」

「何言ってんだよいっつも写真集見てニヤニヤ──」

「ちょっとぉ!聞こえちゃうから!!」





女「……」チラッ

女「♪」フリフリ




64 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:17:42.30 ID:02nqp4d5O


「「………」」ポカン

「「」」ハッ!

「お、おい、今俺に手振ってくれたぞ…」

「バカか!俺に決まってる!」

「勘違いしちまったのはかわいそうだがあれは絶対俺に──」

「いやそっちこそ、───!」





女(男ってほんと単純ね)フッ





タッタッタッ

「あの、女さん!」

女「んー?」

「ずっと前から好きでした!ぼ、僕と付き合ってください!」





「おぉ…!」

「あいつ勇者か…」





女「…あれ?あなたこの前の…」

「お、覚えててくれたんで──」

女「なーんてね」

「え」

女「ごめん、興味ないの♪じゃあねー」

「」





「あぁ…!」

「骨は拾ってやる…」





女「……」スタスタ

女「……」スタ...

女(……ツイてないわ、ほんと)

女(またここで1年過ごすなんて…)

女「はぁ…」...スタスタ




65 : ◆HFDjdCXF6. [saga]:2019/06/05(水) 12:19:21.75 ID:02nqp4d5O





「ちょっと!ねぇ、待ってってば!」





女「」ピタッ

女(この声…)

タッタッタッ...

少年「はぁ、はぁ、女ちゃん!」

女「……」

少年「お、おはよう!学校来てるの珍しいね。今日始業式だから?」

タッタッタッ

少女「待てって言ってんでしょ…!もう、なんでよりによってこいつが…」チッ

少年「なんで喧嘩腰なんだよ…。なんかごめんね、騒々しくて」

少女「あんただって人のこと言えないでしょ。……少年さ、こいつと会ったことあったっけ?」

少年「あ、いやー…この間俺をパシらせただろ?そのときに偶然会ってさ…ね、女ちゃん?」ウィンクパチッ

女「はぁ?」

少年「ねっ?」パチッパチッ

女(……)チラッ

少女「…?」

女(……)ニヤリ

女「そうね〜、あのときはまさか無理矢理あんなことされるとは思わなかったなー。…忘れられない日になっちゃった…」

少女「はぁ!?」

少年「ちょ、ええ!?」

女「…あはは!そんなわけないじゃない。何もないから安心していいわよ〜」ニヤニヤ

少女「……」ジロッ

少年「……でも俺的にはそんな展開も…」ボソッ

少女「」ゲシッ

少年「痛い!」


66 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:20:34.77 ID:02nqp4d5O



少年「…あれ、でも女ちゃんってもう高校生じゃないっけ?」

女「うっ」

少女「え?あんた知らないの?」

少年「なにを?」

少女「こいつ留年(ダブ)ったのよ」

少年「えぇ!?……あ、出席日数不足だよね?あれだけ人気があったら学校ほとんど来れないし、仕方ないよっ」

少女「そうかしら?普通その辺は考えて活動するもんでしょ。…成績も相当ひどかったみたいだし、本当はテスト全部白紙で出したとかじゃないの?いっそのこと頭空っぽアイドルとして売り出したら?義務教育で留年っていい宣伝文句じゃない(笑)」

女「」イラッ

少年「お、おい…」

女「──そういえば」

女「少し前くらいかしらね、この学校の生徒が警察に補導されたらしいわよ?…あー怖い、暴力振るうようなお猿さんがこの学校にいるのよきっと。自分に人気がないからやつあたりでもしたのかしら(笑)」

少女「」イラッ

女「犯罪に比べれば、私なんて遥かにマシだと思わない?少年?」

少年「お、俺!?いやそれはまぁ……何とも言えないといいますかその……」

少女「………雌豚」ボソッ

女「…あぁ?」

少女「なにか?」

女「なんでもないけど……猿」ボソッ

少女「は?」

女「なぁに?」

少女「…別に」

女「………」ゴゴゴゴ

少女「………」ゴゴゴゴ

少年(こ、こいつらこんなに仲悪かったか…!?)

少年(あ、そうか、これが)

少年「…同族嫌悪」ボソッ

女・少女「「何か言った??」」

少年「いや!何も…!」


67 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:22:19.07 ID:02nqp4d5O

少女「……チッ」

少女「少年、私先行ってるから」

少年「おう…」

スタスタ

女「………」

少年「………」

女「……ほんと、失礼な子」

少年「あの、ごめん」

女「君が謝る必要はないでしょ。…それより、さっきのお芝居は何なのよ?」

少年「お芝居?」

女「私、最近君と会った覚えないけど?」

少年「あーそれはその、色々ありまして……はは」

女「色々ねぇ…」

女(………)

女「まぁいいわ。じゃ」

スタスタ

少年「あ、うん」

少年(……聞かないのかな)

少年「……やべ、遅刻しちゃう」




68 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:23:30.15 ID:02nqp4d5O



放課後ーーー



少女「………」スタスタ

少年「………」スタスタ

少女「………」スタスタ

少年(少女、今日ずっとこんな感じだったな…ろくに話しかけてこなかったし)

少年(……考えてみればなんであんなに女ちゃんのこと毛嫌いしてるんだろ)

少年(昔、何かあったのか?)

少年「……あ」

少年(女ちゃんだ……ん?)





女「………」スタスタ





少年(あれ、メイクしてるのか…?)

少年(めっちゃかわいい……)

少年「………」

少年(いいよなぁ……あんな風に自由に生きられたらなぁ……)

少女「………」ジトー

少年「………」ボー

少女「……少年」

少年「………」ボー

少女「少年」

少年「………」ボー

少女「はぁ……」

グイッ

少年「……いてて!」

少女「いつまで見てるのよ。帰るわよ」

少年「分かったから、引っ張るなって…!」

少女(………)




69 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:25:02.63 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



女(この後は……収録活動、ライブ…また収録)

女「始業早々無茶な予定組んでくれるわね…」

女(移動中にメイクする時間くらい確保しときなさいよ、もう)

女「……」

女(また始まるのね)

女(……お決まりの毎日が)

女(でももう慣れたわ……あの子たちのお守りも……)

女「……ねぇ、これでいいのよね……?」

女(……ふぅ)

女(行こ)





ポンッ!





女「わっ!」

女(何っ?花…?)





「どうも〜」ニュッ





女(──この人…!?)

「ごめんごめん、驚かせちゃったよね」

女「………」

「君が女ちゃんだよね?いやーひと目見てみたいと思ってたんだよね。やっぱり、綺麗だね!」

女「………」ピッピッピッ

「突然ごめんね。僕は怪しいものじゃない。通りすがりの──」

女「もしもし、警さ──」

「人の話は最後まで聞くもんだよ!?」

女「…何か用、不審者さん?私としては世の平和のために捕まってくれた方が嬉しいんだけど♪」

「君の学校には怖い娘しかいないのかな…」ボソッ

「……僕はね──」





「──君に笑顔を持ってきたのさ」




70 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:27:39.09 ID:02nqp4d5O

女「……………私、急いでるので」サッ

「連れないな〜」

「……これなーんだ?」

女「もうしつこい──え、あれ?」

女「私のかばん…いつの間に…」

「よーく見ててよ?今からこのバッグが……」

スッ...

「ほら、2つになったよ!」

女「え……」

「しかもなんとこのバッグ……」

カチャ ゴソゴソ

「中にまたバッグがあるんだよ。この中にも……」

ゴソゴソ

「ほらまた!」

ゴソゴソ

「どんどん出てくるよー」

ゴソゴソ

ゴソゴソ

ゴソゴソ

「……これで全部!」

女「」キョトン

「これだけあれば新しく買う必要はないね!さて、ここで問題。君のバッグはどれでしょう?」

女「……それだけど?」ユビサシ

「大正解!!」パチパチ

「ということで、これ全部君にあげちゃいます」ドッサリ

女「ちょ、ちょっと!そんなに持ち切れるわけ…!」

ドサッ

女「もう……何なのあなた」

「フ……名乗る程大した名じゃないが、誰かがこう呼ぶ──」

女「…ラフ・メイカー?」

「その通り!」


71 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:30:55.71 ID:02nqp4d5O
女「………」

女「……クスッ」

「お……」

女「古くない?色々と…ふふ」

「手厳しいねぇ。生憎トレンドってものが分からなくてさ」

女「もう…このかばん全部あなたが持ち帰ってよ?私のはこれ1つで十分だから」

「だよねぇ……うん、思った通り」

女「なにが?」

「君、その笑顔の方が似合ってるよ」

女「───っ」

女「……クサ過ぎよ。私を口説くにはまだまだね」

「あれ?ダメだった?…悔しいなぁ」

女「ふふふ……でも、及第点」

女「ねぇ、あなた明日もここに来る?」

「待ち合わせなら手慣れたものさ」

女「じゃあ同じ時間にここで」

女「えっと……ラフ・メイカーさん?」

「あぁ、僕のことは──」





売人「売人、って呼んでくれればいいよ」





売人「けど嬉しいね。僕も、君と色々話してみたいと思ってたからさ」

売人(……あの子たちのこととか、ね)




72 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:32:17.57 ID:02nqp4d5O



自室ーーー



少女「んーー!」ジタバタ

少女「あー腹立つ!」ボスッ

少女(やっとおさらばできると思ったのになんでまだ私たちの周りにいるのよあの豚!わざとやってるんじゃないでしょうね!嫌がらせなの!?)

少女(少年も少年よ!なんで鼻の下伸ばしてすり寄ってくのよ!)





ーーーーー

少年「──付き合おう、俺たち」

ーーーーー





少女「ん〜〜!」バタバタ

少女(あんなこと言ってた癖に…言ってた癖にぃ…!)

ドカッ!

少女「ふぅ…ふぅ…」

少女(………また、勝てないのかな、私……)

少女(前と同じように……)

少女「──ううん、嫌よ、絶対嫌!」

少女(私が勝つのよ!自分の力で!)

少女「………」

少女「……よし、決めた」




73 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:34:25.72 ID:02nqp4d5O



それから数日ーーー



少年「……」スタスタ

少年(最近どうも…)

少年(少女のやつがやたらベタベタしてくる……)

少年(前からいつも付きまとってくるとは思ってたけど、最近のは輪をかけてひどくなってる)

少年「と思えば今日は一人でさっさと学校行っちまうしなぁ」

少年(あいつが何考えてるのか分かんないのなんて、昔からか)

少年(……いや、そんなこと──)





ーーーーー

「──ずっとこうしてられればいいのにな」

「──君もそう思わない?」

ーーーーー





少年「………」ギリッ...

少年(……やめやめ)

少年「とっとと行くか。遅れたら何言われるか分かんねぇし」




74 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:35:40.81 ID:02nqp4d5O



教室ーーー



ガララ

少年「うっす」

「よ」

「おはよ、少年君」

少年「おう」

少年(少女は……)

少女「………」チラッ

少女「…♪」

少年(なんだあれ……やけに機嫌いいな)ガタ

少年(今日って何かあったか…?)スッ

少年「ん?」

少年(机の中に……)

ガサッ

少年(手紙?)クルッ

少年(……少女からだ)

少年「………」チラッ

少女「………」

少年「………」

少年(いたずら…?)

ガサゴソ

少年(どれどれ…)





少年(…………これは…………)




75 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:36:46.65 ID:02nqp4d5O



放課後ーーー



少女「──」タッタッタッ

少女(あーもう!慣れないメイクなんてしたから時間かかっちゃった!)

少女(…もうあいつ来てるかしら)

タッタッタッ

少女「……この辺よね」





少女(──校舎裏)





少女「はー…はー…」

少女「あいつは…まだみたいね……」

少女(ちょっと遅いけど、まぁ丁度良かったわ)

ゴソゴソ

少女「さぁて」テカガミトリダシ

少女「………」カミイジリ

少女「………」メ パチパチ

少女(……うん、我ながらかわいいわね)

少女(アイドルメイクなんて初めてしたけど、なるほどね……あいつがアイドルに恋する気持ち、理解できるわ)

少女(髪だって…癪だけどあの女を参考にしてみたし、自分の顔見ても私じゃないみたい)

少女(……ふふ、あいつの驚く顔が想像できるわ。どんなリアクションしてくれるのか今から楽しみねー……いい?女だけがアイドルじゃないのよ!)

少女(別に女を超えようだなんて思わない。ただ私は……あいつの中でだけ輝いてればいい)

少女(前はあいつからだったけど、今度は私から…)

少女(…手でも繋いでやろうかしら。……恋人繋ぎ、とか)

少女「……」ニヤニヤ

少女(あー!待ち遠しい!)

少女(告白って、こんなに緊張して、こんなに胸が締め付けられるのね…!)




76 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:37:53.69 ID:02nqp4d5O



数分後ーーー

少女「………」ドキドキ





さらに数分後ーーー

少女「………」ドキドキ





さらに数十分後ーーー

少女「………」

少女(……まだ来ない)

少女「何してるのよ……」

少女(ひとりは……いや……)




77 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:39:27.56 ID:02nqp4d5O



数分後ーーー



少女「………」

ザッザッザッ

少女「!」

少年「………」

少女「遅い!大事な話だって手紙に書いたわよね?」

少年「………」

少女「今日だけ許してあげるけど、次は刺すから♪」ニコッ

少年「………」

少女「…さてと、本題に入ろっか」

少年「………」

少女「……」スー ハー

少女「少年」





少女「──私と付き合ってくれませんか」





少年「………」

少女「………」ドキドキ

少年「………」

少女「………」ドキドキ

少年「………」

少女「………」ドキドキ

少年「………」

少女「……答えは?」ドキドキ

少年「………」

少女「はやく……じらさないでよ……」ドキドキ


78 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:41:31.40 ID:02nqp4d5O

少年「………こっち、来てくれ」

少女「え…!」ドキッ!



ザッザッザッ



ごつい男「………」

少女「……?誰?」

少年「俺の……」

少年「──彼氏」

少女「………………………はぁ?」

少女「………全然面白くないんだけど」

少年「…嘘じゃないよ」

少女「なんなの?あんたバカなの!?」

少女「あぁ大バカだったわね!でもここまでのバカだとは思わなかったわ!!」

少年「………」

少女「こんなときにふざけるなんて信じらんない!言うに事欠いて彼氏とか──」

少年「そういうわけだから」

少年「……悪い──」





少年「──お前とは付き合えない」





少女「──」

少年「………」

少女「なに……それ……」

少年「………」

少女(……そこまでするほど……嫌なの……??)

少女(だって……前は…………)

少女「……なによそれぇ!!!!」グワッ!

少年「少女!?」





『CAUTION!!CAUTION!!』





少年(や、やばい…!)ダッ

少女「───」ジャキ





ズガガガガッ!!



79 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:43:57.86 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



少女「………」

少女「……………」

少女「…………………」



ザッザッザッ...



女「………」

少女「………」

女「………」

少女「………」

女「………」チラッ





(地面に転がる服だったもの)






女「……馬鹿ね、かける言葉もないわ」

少女「………何で居るのよ」

女「元気付けに来てあげたのよ。どう、嬉しい?」

少女「…不快、早く消えなさいよ」

女「可愛げがないわね。……良かったの?あの子の恋人だったんでしょ、それ」





(服だったもの)





少女「そんなわけないでしょ」

少女「ハッ、男に負けるなんてね」

少女「あのバカ………」

女「………」



80 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:45:30.62 ID:02nqp4d5O

女「……ほら、いる?」スッ

少女「………」チラッ

少女「いい」

女「そ。美味しいのに」

少女「………」

女「………」

女「……私ね、今付き合ってる人がいるの」

少女「………」

女「彼、優しいのよ。初めてちゃんと私のことを見てくれる人に出会えたの。どこかのヘタレとは大違い」

少女「………」

女「見る目がないのね、お馬鹿さん」

少女「………」

女「後の祭りってやつね。こんなことする前に、話聞いてあげればよかったのに。……後悔してるんでしょ?フ、笑えるわ」

女「…いつまでそうやってうじうじしてるつもりよ」

少女「………」

女(壁にでも話しかけてるみたい。いつもならむかつくくらい言い返してくるくせに)

少女「………」

女(……でも、そうね)

女(恋してるときのあなたは)





ーーーーー

少女「──♪」

少年「──!──…」

ーーーーー





女(──少しだけ、輝いてた)


81 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:46:36.55 ID:02nqp4d5O

少女「………」





少女「……夢をね、見たの」





女「夢?」

少女「えぇ」

女「なんの話?」

少女「………」

女「……?」

少女「……こうやって、何もかも壊す、夢」

女「………」

少女「私が私じゃなくなって、頭が真っ白になって……気が付いたときは周りは皆壊れてたの」

少女「……私が、壊したのよ。私の敵を全部…」

少女「ううん、多分これは、夢じゃない」

少女(きっと、昔の記憶……)

少女「嫌な記憶……」

少女(あの頃の……)

少女(あの頃、何があったんだっけ)

少女(……少年と出会って、一緒に闘って……おじいちゃんに褒めてもらって……それから……)





少女「──ラジオ…?」




82 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:48:01.13 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



少年「はぁ…!はぁ…!」

少年(こんなとこまで逃げてきちゃったけど……追ってきてないか)

少年「あの男は……」

少年(少女に消されちまったか?……ちくしょう……)

少年「ふぅー……」ゴロン

少年(………)

少年「いっ」ピリッ

少年「あいつ、見境なく撃ってきやがって…」

少年(幸い掠めただけか)

少年(少女……)

少年「………」

少年「……………」グッ...

少年「………くっそ!」

ダンッ!

少年「なんだよ、あいつ!なんなんだよあの格好は!」

少年「女に勝てないからって今度は女の真似事か?そんなんで俺が振り向くとでも思ってんのか??」

少年「なめんなっ!」

ダンッ!!

少年「自分を捨ててんじゃねーよ!俺は」

少年「──昔のお前が好きなんだよぉ…!」

少年「」ゼェゼェ...


83 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:49:41.49 ID:02nqp4d5O

少年「……」

少年「………」

少年(……今のお前にとって俺は一体何なんだ…?)

少年(恋人?都合のいいからかい相手?それとも…ただの腐れ縁か?)

少年(俺にとって今のお前は……そのどれでもない)

少年(少女のことは好きだ。…好きだったさ)

少年(でもダメなんだ…あのときのことが、頭から離れない…!)





少年(──あの寒い日)





ーーーーー

「──くそっ、離せこいつ!」

「──離せって言ってんだよ!!」

タァンッ!

ーーーーー





少年(──子供に撃たれて、消えてく意識の中で聞いたのは)





ーーーーー

「──いやっ!なんで、やだよ…!」

「──いやぁああああああああああ!!!!」

ズガンッ!ズガガガガッ!

......

ーーーーー





少年(──君の銃の音と……悲鳴)





少年「………あぁ………」

少年「全部……俺のせいだ……」ツー...

少年(ごめんなさい……)ポロポロ

少年(少女……)ポロポロ




84 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:50:54.61 ID:02nqp4d5O





...トサッ



少年「…?」

少年「これ……」





売人「それは、今の君に必要なものさ」





少年「……お前」

売人「そう睨まないでくれ。何もするつもりはないさ。君にお礼を言いに来ただけだよ」

少年「礼?」

売人「おかげで面白いものが見れたからねぇ。……びっくりしたよ?まさか君がゲイだったなんて」

少年「…見てたのかよ」

売人「あんな面白いイベント、見逃す手はないからね。それにしてもやっぱり、あの子おっかないねぇ」ククッ

売人「……けど、それ以上にかわいそうな子だ。何せ一度実ったはずの恋だったんだから」

少年「っ……」

売人「君も、残酷なことをしたもんだ。彼女をまた『ひとり』にするなんて」

少年「」ブンッ!

売人「おっと!」サッ

少年「」シュッ

売人「よっ」パシッ

売人「…安静にしてなくちゃ、傷が開くよ?」

少年「お前にっ」

売人「……」

少年「お前に、何が分かるんだよ…」

売人「……」

少年「くそ………」ポロポロ

売人「……ほら」スッ

少年「……」ポロポロ

売人「要らないかな?」

少年「………」スッ

少年「………」

少年(少女……)

少年「………」カチッ

少年「っ……」

少年(せめて、夢の中だけでも──)




85 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:52:00.48 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



少年「………んぁ?」

少年「…もう帰ってきちゃったのか」

少年(できることならずっとあの夢の中で過ごしたかった…)

売人「何言ってるんだい?随分長い時間経ってるよ?」

少年「ま、まだいたのかよ……」

売人「大事な用を忘れていたからね」

少年「……やっぱり俺に何かするつもりか?」

売人「違うって言ってるでしょうに。それだよ」ユビサシ

少年「…さっきお前が投げたやつか」

売人「そう」

少年「このメモリースティックがなんだ?いつもお前が売ってるやつじゃないな」

売人「これに入っていたんだよ」ヒョイッ

少年「おっと…」ガシ

少年「これ…俺が盗ってったかばんか」

売人「不用心だよ?外に置きっぱなしになってたんだから」

少年「追われてる身の癖によく見つけられたな…」

売人「……君は気付いてないようだけど、そのバッグはあの子のものじゃない」

少年「…そうなのか?」

売人「そうさ。そして、そのメモリは」


86 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:53:17.49 ID:02nqp4d5O





売人「──あの子の本当の記憶」





少年「──!」

売人「今の君に一番必要なもの、だろう?」

少年「………」

売人「……ねぇ、全てを思い出した君にとって、この世界はどう見える?」

売人「あの子が守ろうとしてるこの世界は、君にはとても辛いんじゃないかい?」

少年「………」

売人「だったら……終わりにしてあげればいいのさ、君の手で」

少年「え…」

売人「簡単さ、あの子の記憶を戻してやるんだよ」

売人「本当の記憶を取り戻したあの子の精神は君と同じように崩壊する。彼女はこの世界に絶望し──」

少年「──すべてを、消す……」

売人「…そういうことだね」

少年「………」

少年(……これを使えば)

少年(もう一度、昔の君に会える……)ドクン

売人「………」




87 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 12:53:56.70 ID:02nqp4d5O
続きは夜に投下します。

見てる人がいるか分かりませんが…
88 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 19:47:40.60 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



少女「………」パカ

少女「………」ポチポチ

「ねー、最近少年君来ないね」

「それ私も思ってた。こんなに長く休んだことなかったよね」

少女「………」ポチ…

「あいつ、ついにやらかしちゃったんじゃないのか?」

「前からやばい噂たってたもんなー」

「あんな噂本当に信じてるの?」

「アホね」

少女「………」

「なんだよ、ちょっとしたユーモアじゃねーか…」

「はいはい」

「ね、少女は何か知らない?」

少女「え?さぁ…どうせどっかでサボってるのよ」

「えーそうかなー……少女は寂しくないの?」

「このごろずっと一緒に居たもんね少女たち」

少女「たまには一人の時間もないとね。あいつが寂しくなったら戻ってくるでしょ」

「……たまにはってことは、本当に四六時中一緒に居るんだ?」

「ひゅー、お熱いねぇ」ニヤニヤ

少女「な、そういうことじゃないわよっ」

「うんうん、分かるよー。つい本当の気持ちが出ちゃったんだよね」

「少女って本当は少年君のこと大好きだもんね〜」

少女「怒るわよ」ガタッ

「きゃー」ササッ

「退散退散」ササッ

少女「まったく……」

少女「………」ポチポチ

少女(………)





[送信済みメール]
送信日時:3日前
━━━━━━━━━━━━━━
to:少年
sub:
━━━━━━━━━━━━━━
あんたどこにいるの?


━━━━━━━━━━━━━━




89 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 19:49:16.71 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



ガヤガヤ

少年「………」



ジジッ チュイーン

ザザッ

『最近ますます世間を騒がせている──』

ジジッ

少年(電波が悪いな…)

チュイーン

ザザッ

『──続いては、今話題のアイドル、女が歌う、"またあえたら"』

少年(……この曲)

『〜〜〜♪』

少年(…懐かしいな。あの頃よく君と一緒に聴いた歌だ)





ーーーーー

「──〜〜〜♪」

ーーーーー





少年(………)

少年(なんで気付かなかったんだろうな。あの時盗んだはずの君のかばん、君はずっと持っていたのに…)

少年(詰めが甘いのは俺の方だ)

少年(これが、君のかばんだったなら、こんな記憶なんて……)

少年(………)

少年(……書き換えられる前の記憶)

少年(俺は──)





少年(──人間ですらなかったんだ)




90 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 19:57:25.68 ID:02nqp4d5O



ー回想ー

ーーー

ーー







(おいっ!!)ガシャガシャッ

(このくさりをはずせっ!!)ガシャガシャッ

(おれはあのこのもとへいくんだっ!!)ガシャンッ!

「──うるさい、静かにしろ。飯ならそこにあるだろ」

(……こいつが、おれのじゃまをしてる??)

「ウー……」グルル…

「……チッ、ムカつくやつだ」

(がきのあいてをしてるひまはねーんだよっ!!)ガシャッ!ガシャッ!

「少しは大人しくしてろ!」ダンッ!

(こんなくさり……!)

「──」ガジッ

グググッ...





ブチンッ!





「な、こいつっ」

「……」

(あのくびまき…)

「」ガバッ

「うぉ!」

バサッ

「……!?僕のスカーフをっ!」

「………」

ダッ!

「待てこのっ!」ダッ!




91 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 19:59:50.57 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



スタッスタッスタッ

(おってきてる…?)

スタッスタッスタッ

(でもだれもおいつけやしない!)

(いまのおれはかげだってふませずにはしれるんだ!)

スタッスタッスタッ

(…あぁきょうもさむい)

スタッスタッスタッ

(はやくきみのあたたかいてでなでてほしいな)

スタッスタッスタッ...

(…きみのにおいがちかくなってきた)





ーーーーー

「──君、ひとり?」

ーーーーー





(きみとであっておれのせかいはかわった)





ーーーーー

「──ふぅ……」ザッザッ

「──わんっ!」

「──!もしかしてずっと待ってたの…?」

ーーーーー





(このつめたいせかいできみだけがあたたかった)





ーーーーー

「──もう…こんなに冷えちゃって…」ナデナデ

「──…でも、ありがと」

ーーーーー





(はじめてひとがこいしくなったんだ)


92 : ◆YBa9bwlj/c :2019/06/05(水) 20:03:14.70 ID:02nqp4d5O

...スタッスタッスタッ

(はらもへってきた…)

(きみのくれるごはんがたべたい)

(ぴろしきとかいうのもうまかった)

スタッスタッスタッ

(まだかな)

スタッスタッスタッ

(…このくびまき、これをもってるのはつよいことのあかしだってきみはおしえてくれたね)

(どうかな?いまのおれはこいつをぬすめるほどのちからがあるんだ!きみといっしょにたたかうことだってできるだろうさ!)

(だから、ほめてくれよ!)

スタッスタッスタッ

「……!」

(きみがみえる…!)

「……わんっ!!」





「!」

「──え、うそ…!」





(おどろいてるのかな)

(でもそんなきみもすきだ)

(いまいくからっ!)

スタッスタッスタッ!





──パァンッ




93 : ◆bWFnkQX8pw2l [saga]:2019/06/05(水) 20:06:00.65 ID:02nqp4d5O



「!?」ピタッ

(……)クルッ

「はぁ…はぁ…やっと追いついた、このクソ犬が…!」

(さっきのがき…!)

「やっぱり断っとくんだった…!」

「おら、返せ!」

グイッ

「……!」

グイッ!

「ウー…!」ググ…

「なんだ、その目……そんなに僕が憎いのか…?」

「グルルル…!」グググ…

「っ…!あぁ!」

バッ!

「くそっ、離せこいつ!」

「ガウッ!!」

「──離せって言ってんだよ!!」スチャッ





タァンッ!







ーー

ーーー

ーーーー




94 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 20:07:48.90 ID:02nqp4d5O



少年(──俺が利口にしてたなら、君も死なずに済んでたのにな)

少年「………」スッ

少年「………」ポチポチ

少年「………」




[受信メール]
━━━━━━━━━━━━━━
未開封 1件
━━━━━━━━━━━━━━




少年「………」

少年「………」ポチポチ

少年(……今日も"盗み"の依頼はないか)

少年(割のいい稼ぎだったんだが……)

少年「……ふー……」

少年(もう金もない)




少年「………」グッ...




少年(やる、か)

少年(もう俺にはこれしかない)

少年「……」ガサゴソ

少年「……」スッ

少年(……君に全てを見せる)

少年(君が"少女"じゃない頃の君の記憶)

少年(…昔の君に会いたいんだ)

少年(一瞬だけでいい……その後は、二人でここから消えよう?君だってこんな嘘の世界で生きていたくないよね?)

少年(……でも、君は今を楽しんでる)

少年(この世界を)

少年(今年は生徒会長を目指すとか言ってたっけ)

少年「……ハッ」

少年(野良犬の俺には眩しいよ。君はどんどん俺から離れていく…)

少年(それでも……俺は会いたい……!)

少年(…自分勝手でごめん)

少年「………」ガサゴソ

少年「……最後の1本……」

少年「………」




カチッ



95 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 20:12:25.11 ID:02nqp4d5O



自室ーーー



少女「………」

少女「………」

少女「………」

少女「ん」ゴロン

少女「……………」スッ





[メール]
━━━━━━━━━━━━━━
新着メッセージはありません
━━━━━━━━━━━━━━





少女「………」

少女「………」トサッ



少女「………」



少女「……………」



少女「…………………」





ピリリリッ ピリリリッ





少女「!」バッ

少女「ぁ…!」

ピッ

少女「もしもし!あんた今どこにいんのよ!?寮にも帰ってこないで──」

少女「──はぁ?そんなとこで油売ってるの?…とにかく早く戻ってきて。あんたがいないと……」

少女「……え?伝えたいこと?そんなの今言えば──あ、ちょっと!!」プツッ ツーツー

少女「………」





バッ

ドタドタドタ...

ガチャン




96 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 20:18:09.74 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



タッタッタッ

少女「……」キョロキョロ

少女「……!」

タッタッタッ...

少女「少年!」





少年「!」





少女「……」スタスタ

少年「……」

少女「……」

少年「……」





...タッタッタッ





ヒシッ





少女(──え!?なに!?抱き着かれてる…!?)


97 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 20:19:17.82 ID:02nqp4d5O



少年「」ギュー

少女「」

少年「………君はほんと、かわいい」

少年「でもね、前の君は今以上さ」

少年「…俺がもっと強ければ、きっとここでもうまくやれたろうね」

少女「」

少女「」ハッ!

少女「突然何よっ、切れるよ!?」

少女「伝えたいことってこれっ?」

少女「というかあんた中学サボり過ぎ!」

少女「女みたいに留年(ダブ)っても──」

少年「……」スッ

少女「──なによその手…いやらしいわよ……」

少年「……」ソー...

少女「ちょっと少年、聞いてる…?」

少年「……」ピト

少女「ね、ねぇ……人が見てる……」





──カチッ





少女「────!!!」





少女(──────)




98 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 20:20:27.98 ID:02nqp4d5O



ー過去ー

ーーー

ーー







少女「………」テクテク

少女「………」テクテク

コンコン

「なんだ?」

少女「おじいちゃん、あたし。今戻った」

「おぉそうか。入りなさい」

ガチャ

「どうだったんだい?」

少女「もちろん、全員片づけてきたわよ」

「ほぉ。あれほどの人数をか」

少女「戦闘慣れしてない素人の集団よ?あくびしたら終わってたわ」

「うむうむ。やっぱりお前が一番優秀だよ」

少女「……次の仕事も期待しててね」

「あぁ」

少女「じゃ」





ガチャ バタン




99 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 20:22:22.45 ID:02nqp4d5O


ーーーーー



ガヤガヤ

「──ねぇ聞いた?あの子が一人でA国軍の別動隊に向かったって」

「あぁ、知ってる。その任務元々俺も行くはずだったからな」

「なんで行かなかったの?」

「あいつが断ったんだ。ひとりで十分なんだとよ」

「は?でもそんなの大統領が黙ってないでしょ。勝手に作戦変更なんて」

「あいつは大統領のお気に入りだからな。多少のわがままは通っちゃうんだろ」

「……ほんと、いけ好かないやつ」

「まったくだ。ま、さすがに今回ばかりは生きて帰ってこれないんじゃないか?戦争で数の差を舐めてるやつは、痛い目を見る」

「同感だわ」





「──いや、あいつは帰ってくるよ」





「……同胞、なんでそう言える?」

同胞「なんでって、そんなの分かるだろう。その別動隊はただの捨て駒らしいじゃないか。あいつがそんな雑魚共にやられるわけない」

「お前はいつもあいつのこと過大評価してるけどよ、いくら相手が弱いからって囲まれたらおしまいだぜ?」

同胞「そんなヘマするようなやつじゃないからな。お前らと違って」

「な、なんだと──!」





少女「……」スタスタ





「うわ……」

「あいつ……」

同胞「………」





少女「……」スタスタ

スタスタッ…





「……」

「……」

同胞「……ほらな」

「チッ……」

「……死神」


100 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 20:23:30.44 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



少女「………」スタスタ

ヒソヒソ

少女「………」スタスタ

ヒソヒソ

少女「……」ジロッ

ササッ

少女(…ふん)

少女「………」

少女「………」スタスタ

少女「……?」

少女(……雪の中に何か…)





犬「………」グッタリ





少女(……死んでる?)

少女「……」

ソー…

犬「……」ピクッ

少女「…!」

少女(そうだ、確か携帯食が…)ゴソゴソ





(缶詰)





少女「………」

少女「……」ナイフトリダシ

ガキンッ!

ギリギリ...

少女「…ほら、食べる?」

犬「!」

犬「……」クンクン

犬「」ハグハグ!

少女「そんなにがっつかなくても全部あげるから」





101 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2019/06/05(水) 20:24:15.18 ID:02nqp4d5O



ーーーーー



犬「」チロチロ ペロリ

少女「おいしかった?」

犬「わんっ」

少女(…この子、何も着けてない)

少女「……君、ひとり?」

犬「ハ、ハ、ハッ」シッポフリフリ

少女「そっか。私とおんなじだね」




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