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少女「愛してるって言って」少年「………」
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1 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 00:43:42.42 ID:QekJgiX40
SS初投稿です。
所謂「プーチンPシリーズ」を台本形式のSSにしたものです。原作がなかなか難解なのですが、ストーリーが非常に好きなので、思い切ってSSにしてみました。解釈を少し変えたり脚色したりしてます。
全4部です。
また、「ボーカロイド」要素が少々出てくるため、苦手な方は非推奨かもです。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1559663022
2 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 00:47:28.20 ID:QekJgiX40
ーーーーー
「??ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」
「??いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」
「??♪、〜〜♪」
「??何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」
「??いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」
「??そしたらさ、君は??」
ーーーーー
「……く…………て!」
少年(……ん)
「…やく………ってば!」
少年(なんだ……夢…?)
「早く起きなさい!」ピシッ
少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」
少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」
少年「……俺たちしかいないじゃん」
少女「みんな帰ったか部活よ」
少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」
少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」
少年「おいおい…」
少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」
少年「は?」
少女「あ?」
少年「……なんでもない」
少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」
少年「はいはいどうも」
少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)
3 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 00:48:21.48 ID:QekJgiX40
ーーーーー
「??ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」
「??いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」
「??♪、〜〜♪」
「??何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」
「??いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」
「??そしたらさ、君は??」
ーーーーー
「……く…………て!」
少年(……ん)
「…やく………ってば!」
少年(なんだ……夢…?)
「早く起きなさい!」ピシッ
少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」
少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」
少年「……俺たちしかいないじゃん」
少女「みんな帰ったか部活よ」
少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」
少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」
少年「おいおい…」
少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」
少年「は?」
少女「あ?」
少年「……なんでもない」
少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」
少年「はいはいどうも」
少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)
4 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 00:50:38.90 ID:QekJgiX40
下校中ーーー
少女「??それでさ、今度の春休みにおじいちゃんのところに帰らない?」
少年「お前、ほんとあの人のこと好きなー」
少女「当然でしょ?というかあんたは何も感じてないの?私たちを大事に育ててくれて、今こっちの学校に行けてるのだっておじいちゃんのおかげなんだから」
少年「いやまあ、ありがたいとは思ってるけどさ……よく覚えてないんだって」
少年(親に捨てられ、身寄りのない俺たちを拾って世話してくれたのが、少女の言うおじいちゃん……R国のお偉いさんらしい。らしいっていうのは、全部少女から聞かされたことだからだ。俺自身は昔のことをほとんど覚えてない。今俺たちは同じ寮に住んで同じ学校に通ってるけど、そう取り計らってくれたのもその人なのだそうだ。……作り話かよ)
少女「じゃあ、私たちが一緒に闘ってたあの日々も?」
少年「……ばったばったとなぎ倒していったってやつか?」
少女「そうそう!なんだ覚えてるじゃない」
少年「それはお前に何度も聞かされたからな。悪いけど俺の記憶の中にはございませんってやつだ」
少女「もう、信じらんない!二人であんなにいっぱいやっつけたじゃない!そんなにどうでもいいことだったわけ?」
少年「そう言われてもなぁ」
少女「あーあ、昔のあんたは頼もしかったのになー。今じゃこんなになっちゃって」
少年「ったく、また始まったよ……」
少年(大体闘うってなんだよ。格ゲーの話かっての)
少女「はぁ……まあいいわ。それで、おじいちゃんのとこに帰る日だけど、休みの半ばくらいでいい?」
少年「え?俺はまだ行くとは言って」
少女「行くわよね」ズイッ
少年「いやだから」
少女「行 く わ よ ね」ズズイッ
少年「……はい」
少女「うんうん♪休みの半ばに行くんだから、それまでにはさっさと春の課題終わらせとかないとだめよ。あと??」
少年(……ばっくれてやろーっと。後が怖いけど)
少年「……ん?」
女「??。??、???♪」
モブA「??!」
モブB「??、??。」
5 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 00:58:20.01 ID:QekJgiX40
ダッシュ記号って表示されないんですね…
仕切り直して最初から投下します。
6 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:01:16.07 ID:QekJgiX40
ーーーーー
「──ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」
「──いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」
「──♪、〜〜♪」
「──何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」
「──いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」
「──そしたらさ、君は──」
ーーーーー
「……く…………て!」
少年(……ん)
「…やく………ってば!」
少年(なんだ……夢…?)
「早く起きなさい!」ピシッ
少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」
少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」
少年「……俺たちしかいないじゃん」
少女「みんな帰ったか部活よ」
少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」
少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」
少年「おいおい…」
少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」
少年「は?」
少女「あ?」
少年「……なんでもない」
少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」
少年「はいはいどうも」
少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)
7 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:04:40.60 ID:QekJgiX40
下校中ーーー
少女「──それでさ、今度の春休みにおじいちゃんのところに帰らない?」
少年「お前、ほんとあの人のこと好きなー」
少女「当然でしょ?というかあんたは何も感じてないの?私たちを大事に育ててくれて、今こっちの学校に行けてるのだっておじいちゃんのおかげなんだから」
少年「いやまあ、ありがたいとは思ってるけどさ……よく覚えてないんだって」
少年(親に捨てられ、身寄りのない俺たちを拾って世話してくれたのが、少女の言うおじいちゃん……R国のお偉いさんらしい。らしいっていうのは、全部少女から聞かされたことだからだ。俺自身は昔のことをほとんど覚えてない。今俺たちは同じ寮に住んで同じ学校に通ってるけど、そう取り計らってくれたのもその人なのだそうだ。……作り話かよ)
少女「じゃあ、私たちが一緒に闘ってたあの日々も?」
少年「……ばったばったとなぎ倒していったってやつか?」
少女「そうそう!なんだ覚えてるじゃない」
少年「それはお前に何度も聞かされたからな。悪いけど俺の記憶の中にはございませんってやつだ」
少女「もう、信じらんない!二人であんなにいっぱいやっつけたじゃない!そんなにどうでもいいことだったわけ?」
少年「そう言われてもなぁ」
少女「あーあ、昔のあんたは頼もしかったのになー。今じゃこんなになっちゃって」
少年「ったく、また始まったよ……」
少年(大体闘うってなんだよ。格ゲーの話かっての)
少女「はぁ……まあいいわ。それで、おじいちゃんのとこに帰る日だけど、休みの半ばくらいでいい?」
少年「え?俺はまだ行くとは言って」
少女「行くわよね」ズイッ
少年「いやだから」
少女「行 く わ よ ね」ズズイッ
少年「……はい」
少女「うんうん♪休みの半ばに行くんだから、それまでにはさっさと春の課題終わらせとかないとだめよ。あと──」
少年(……ばっくれてやろーっと。後が怖いけど)
少年「……ん?」
女「──。──、───♪」
モブA「──!」
モブB「──、──」
8 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:07:44.96 ID:QekJgiX40
少女「なに?どうしたの?……ってあいつか」
少年「女ちゃん、やっぱいいなぁ…」ニヘラ
少女「あれのどこがいいのよ。いっつも仮面みたいな笑顔貼っつけてるだけじゃない」
少年「分かってないなー、あれはファンに向ける営業スマイルってやつだって。アイドルって大変なんだ。気を許せる相手が側についててあげないと……それが俺だったりしたら……えへへー」
少女「呆れた。重症ねこれは……さっさと帰るわよ」
少年「あーいっそ告白したら付き合ってくれないかなぁ」
少女「なに?彼女が欲しいの?……じゃあほら、ここにいるじゃない。ずーっとあんたと一緒に居た適任者が♪」
少年「え?誰?」
少女「♪」ニコッ
少年「……お前が?」
少女「そそ♪こんなヘタレでも幼馴染としてのよしみってのがあるから──」
少年「いやーないない。冗談にしてももっと面白いこと言えって(笑)」
少女「…………は?」
9 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:09:31.94 ID:QekJgiX40
少年「何かあるとすぐ手出してくるし、しかもとんでもなく痛いし、そんなのと付き合ったら命がいくつあっても足りないだろ」
少女「…………」
少年「あと可愛げがない!お前せっかく顔はいいんだから、そのがさつなとこ直せばかなりましになると思うんだけどなー」
少女「…………」
少年「この際だから女ちゃんを見習ってみるとかどうだ?お前も一応アイドルやってんだし、女ちゃんの良さが分かると思うぜ」
少女「っ……」
少年「そうだなー女ちゃんくらいおしとやかになれたら、俺の相手としてやぶさかでも──」
少女「ふんっ!」バキッ!
少年「がふっ……」
少女「さいってい。ずっとそこで寝てなさいよ」スタスタ...
少年「……あご、蹴るのは、やめろって……」ガク
モブA「なになに〜あの子達どうしたのかしら」
モブB「別れ話でもしてたんじゃないの?」
モブA「あの男子浮気したのかな?」
モブB「さぁ……でもありえるわね。あの子ちょっとかわいいし」
モブA「……モブBってああいう子がタイプ?」
モブB「え、あ、いやいや別にそういうんじゃ……ね、女ちゃんは何だと思う?」
女「……」
モブA「女?」
女「…え?あぁいや、あの子、私の熱烈なファンなの」
モブB「あの子も?もしかしてこの前教室に押し掛けてきたストーカー集団の中に…?」
女「いーえ。でも付きまとってくるって意味ではおんなじかなー。ま、いつも返り討ちにしてるんだけどね♪」
モブA「毎度のことだけど、容赦ないわねー」
女「当然!この私よ?そこらへんの人が釣り合うわけないでしょ?」
モブA「はいはい」
モブB「……じゃああの子もらっちゃおっかな」ボソッ
モブA「…モブB、あんた……」
モブB「え、聞こえてた!?」
モブA「人の好みに口出しするつもりはないから心配しないで」ニヤニヤ
モブB「……わ、忘れて!」ガバッ
モブA「わっ、危なっ!」ヒョイッ
モブB「んー!」
モブA「ちょ、やめなさいって!」
女(………)
10 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:11:34.20 ID:QekJgiX40
自室ーーー
少女「………」スッ
少女「………」カチッ
少女「……んっ……」
少女(……いつから、こうなっちゃったんだろ)
少女(こんなはずじゃなかったんだけどな……)
少女(でもあのバカ……私の気も知らないで…!)
ーーーーー
少年「──なぁ少女、次は向こうの奴ら蹴散らしに行こうぜ!」
少年「──あぁ?怪我?こんなの大したことねぇよ。んなことよりほら、頼んだぜ」
少年「──俺の背中任せられるの、お前だけだからな!」
ーーーーー
少女(この夢みたいに、あの頃の少年が帰ってきてくれればな……)
少女(第一、なんであの頃のこと覚えてないのよ!もう!)
少女(……あいつ、危ないことして稼いでるっていう噂聞いたけど、本当なのかしら)
少女(どこまで落ちぶれれば気が済むのよ、あのバカは)
少女(……私もひとのこと言えないか……)
ピリリリッ ピリリリッ
少女「」ビクッ
少女「……電話?」
少女(……あいつから……)
11 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:13:56.41 ID:QekJgiX40
少女「………」ピッ
少女「………はい」
少年『あ……少女か?……その……』
少女「なに?用がないなら切るわよ」
少年『いや待って待って!……そのさ、悪かったよ』
少女「……何が?」
少年『さっきのことだよ。別に俺は、少女をバカにするとか、そういうつもりで言ったんじゃなくてさ──』
少女「そんな言い訳はいいわよ。女より劣るカスって言いたいんでしょ?」
少年『そんなこと言ってないだろ』
少女「いいって。夢の中のあんたに慰めてもらってるから」
少年『夢?……少女、もしかしてアレ使ってるのか?』
少女「そうよ。あんたも使えば?念願の女とよろしくできるんじゃない?」
少年『………とにかく、機嫌直してくれよ』
少女「………」
少年『なぁ、俺にできることなら何でもするからさ』
少女「……じ……て…」ボソッ
少年『え?』
少女「……私の前で女の話しないで」
少年『……分かった』
少女「ほんとに?」
少年『あぁ』
少女「……次はないからね」
少年『分かってるって』
少女「おじいちゃんにあんた消してもらうから」
少年『こえーよ!……つーかお前もうすぐ収録の時間じゃないの?』
少女「忘れてるわけじゃないわよ。今行くところ。そういうあんたもでしょ?」
12 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:14:56.65 ID:QekJgiX40
少年『いや、俺は……いいよ今日は』
少女「はぁ?またサボる気?この前も行くって言っておきながら結局来なかったって聞いたけど!」
少年『それはその……』
少女「いつもいつも何してるの?……危ない商売ってやつ?」
少年『!?は、え!?なんでそれを……別になんでもいいだろ』
少女「あんたね……噂になってんのよ」
少年『どうせ根拠も何もないただの噂だろ』
少女「あとスリ癖」
少年『っ……』
少女「前に見たわ。あんたがまたスッてるの。ねぇ、あんた本当にこのままじゃ退学になるわよ?」
少年『大丈夫だって言ってるだろ。最低限のことはやってるし。……明日の昼から、時間空いてるよな?宿題教えてもらいに行くからよろしく。じゃ』
少女「あ、ちょっと!まだ話は──切りやがったあのバカ」
少女(……もうちょっと時間あるわよね)
少女「………」カチッ
少女「……っ」
少女(はー……)
少女(少年……なんでよ……)
少女(私はただあんたと……)
少女(………)
少女「……ひとりにしないでよ」
13 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:16:21.48 ID:QekJgiX40
ーーーーー
少年「──よろしく。じゃ」ピッ
少年「……ふぅ」
少年(少女のやつ、最近どんどん口うるさくなってきてる気がする)
少年(別に俺がどこで何をしてようが勝手だろ)
少年「……行くか」スタスタ
少年「………」プルルル
少年「あ、もしもし。うん、遅くなって悪い。今から向かうから。え?遅刻分引くって…勘弁してくれよ。ただでさえ金がないのに──」
14 :
◆YBa9bwlj/c
:2019/06/05(水) 01:17:54.48 ID:QekJgiX40
スタジオーーー
少女「〜〜♪〜〜〜♪」
「はーい、OKでーす!お疲れさまでしたー!」
少女「ありがとうございました」
少女「──ふぅ」
少女(結局、あいつは来てないみたいね)
少女「何やってんだか全く……」
少女「……あ、これ、新しく出た雑誌」
少女「………」パラパラ
少女「やっぱりみんなかわいいわねー。私も頑張ってればそのうちこんな風に……うげ」
雑誌『今人気絶頂中!女さん特集!』
少女「女の記事……」
少女「………」
少女(悔しいけど、いい歌うたうのよね、こいつ)
少女(この女がいる限り、私は一番になれない気がしてくる……あいつの中でも)
少女(……嫌いだわ)
ピリリリッ ピリリリッ
少女(なに?また少年?)
少女「……!」
15 :
◆XU7PmpcuUo
[saga]:2019/06/05(水) 01:19:27.36 ID:QekJgiX40
少女「………………」ピッ
『あー、やっと出てくれたね』
少女「なんで今掛けてくるのよ。いつも明日くらいにかけてくるじゃない。まだ楽屋なんだけど」
『それはね、君の悲しそうな心の声が聞こえたからさ〜』
少女「……つまんない冗談はいいわ。で、何の用なのよ、売人さん」
売人『えー?僕からの用件なんて分かってるでしょうに』
少女「……どれくらい買える?」
売人『一週間分くらいかな。また用意しておいたから、明日の朝、いつものところでいいかい?』
少女「明日の朝?ちょっと急すぎない?」
売人『おや、先約でも入っていたかい?』
少女「別にないけど……」
売人『いやー最近注文が多くてねー、本当は明後日に君に渡そうと思ってたんだけど、その日は大口のお客さんが入っちゃってさ』
少女「あっそ」
売人『連れないねー相変わらず』
少女「どうでもいい。明日受け取りに行くから、切るわ──」
売人『君もよく知ってる人だと思うんだけどな〜』
少女「!」
少女(……まさか)
少女「……あっそ」
売人『ほーんと、愛想ないよね君。アイドルやってるんでしょ?もっとリップサービスとかさ、練習した方がいいよ?』
少女「余計なお世話よ。もう用はないでしょ?切るから」ピッ
少女「………はぁ」
少女(分かってる。分かってるわ、このままじゃダメってことくらい)
少女(……少年……)
少女「……おじいちゃん、私……どうすればいいのかな」
16 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:22:37.66 ID:QekJgiX40
翌日ーーー
ガチャッ
少年「よーっす」
少女「あんたね、お邪魔しますくらい言いなさいよ」
少年「いいだろ別に、俺たちの仲なんだし」
少女「……どんな仲よ?」
少年「なんつーか……腐れ縁?」
少女「……」ゲシッ
少年「いって!蹴るなよ」
少女「ふん」
ーーーーー
少年「………」
少女「………」カキカキ
少年「………」
少女「………」カキカキ
少年「なぁ」
少女「なに?」
少年「なんで隣?」
少女「?」
少年「いやそんな首傾げられても」
少女「あ、そこの問題間違ってるわよ。そこはこっちの式を使って、こう解かないと」
少年「ほんとだ、サンキュ。…ってそうじゃなくて」
少年「なんで俺の隣に座るんだよ?狭いだろ。そっち座んないの?」
少女「別に狭くないけど」
少年「えぇ…?そうか?でも明らかに……」
少女「……」ジッ
少年「……あー、まぁ、こっちの方が教わりやすいからいいけど」
少女「でしょ?あと、そっちの問題も違うわよ」
少年「どれだ?」
少女「これよ」グイッ
少年「ちょっ」
17 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:23:59.49 ID:QekJgiX40
少女「最低限のことはやってるって言っておきながらこの様なわけ?」
少年「いやだから、こうやって課題くらいはやってるじゃん。つーか近いから…!」
少年(……こいつ、いい匂いすんな)
少女「私が言わなきゃやらないじゃない」
少年「う……まぁそのことについては感謝してるよ……」
少女「………」
少年「……あのさ、そろそろ離れてくれないと課題が──」
少女「明日」
少年「進まな……え?」
少女「買いに行くんでしょ、アレ」
少年「……それも噂になってんのか?」
少女「違うわよ」
少年「買うけどさ、何?別にわざわざお前の許可が要るわけでもないだろ?」
少女「そんなに大量に必要なの?」
少年「どこまで筒抜けなんだよ……」
少女「それと昨日、やっぱり来なかったし」
少年「またその話か?説教するなら俺は帰るぞ」
少女「ねぇなんで」
少年「ん?」
少女「あんたはさ、何がしたいの」
少年「何って……」
少女「学校も、収録もサボる。アレを使う頻度も増えてる。挙句に危ない商売に手を出すって……」
少年「あー、帰っていいか俺」
少女「あんた女のこと好きなんでしょ?今のままじゃ絶対振り向いてなんかくれないわよ」
少年「おいおい、その話はしないんじゃなかったのか……いいんだよ、もう。お前に言われなくても分かってる。女ちゃんと俺じゃ釣り合わないなんてことくらい」
少女「少年……」
18 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:25:24.08 ID:QekJgiX40
少年「だから!夢ん中でくらい女ちゃんとデートしに行くんだよ!……本当はさぁ、本物の女ちゃんと行きたいけど、はぁ……」
少女「………」
少年「笑うか?……でもお前だって似たようなことしてるだろ?なんかさ、もういいんだよどうでも。なんか俺、女ちゃんに避けられてるみたいだし。学校とかつまんねーし。……どうせならさ、お前のよく言ってるR国でずっと闘ってた方が楽しかったのかもな」
少女「………」
少年「そうだ!いっそのことお前に養ってもらうってのはどうだ?ぶっちゃけ今とあんまり変わらないだろうし、家事くらいはできるぜ、俺」
少女「──なんで」
少年「なに?」
少女「なんでそんなにバカなわけ!?情けない!ほんっとうに!もう見てて悲しくなってくるわ!このナメクジ!ヘタレ!今のあんたは道端の石ころ以下よ!」
少年「は?え?なんだよ……そんなに怒ることか?」
少女「もういい──」
少女「私が何とかしてやるわ!」
少女「だから──」
少女(諦めないで…)
少年「……え、養ってくれるのか!?」
少女「違うわよばか」
少年「じゃあもしかして……女ちゃんのこと手伝ってくれるの?」
少女「そんなわけないでしょ」ゲシッ
少年「痛いって!」
少女「決めたの。あんた本当にダメ人間になってるから。私が更生させてあげる」
少年「更生って」
少女「なによ。文句ある?」
少年「むしろ文句しかないんだが……」
少女「うるさいわね。あんたに拒否権はないから」
少年「うげぇ……」
少年(こうなったらこいつ面倒くさいんだよなー……)
19 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:27:05.53 ID:QekJgiX40
少女「とりあえず来週の金曜日、楽しみにしてなさい」
少年「金曜日?何かあったっけ?……あ」
少年(2/14……バレンタイン……?)
少女「ふふん。更生プログラムの第一歩よ♪」ニコッ
少年「っ……」ドキッ
少女「ほら、ぼさっとしてないでさっさと課題進めちゃうわよ」
少年「あ、あぁ」
少年(まさか、な)
少女「………」カキカキ
少女(そう、私が何とかしないと……)
少女(少年を──)
少女(──初期化するしかない)
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/06/05(水) 01:27:54.12 ID:QekJgiX40
2/14ーーー
少女「ふぁーあ……」
少女(眠い……結局昨日は徹夜しちゃったし)
少女(まあでも、おかげでできたから良かった)
ガラガラッ
少女「おはよー」
「おはよー」
「何か少女眠そうじゃない?」
少女「ちょっと夜更かししちゃって」
「へぇー」
「なになに?ひょっとして、チョコ?」
少女「そんなとこ」
「本命君でもいるの!?」
「何よそれー!教えなさいよ!」キャッキャ
少女「あはは…そんなんじゃないって」
少女(あいつは……)チラ
少年「………」ソワソワ
少女(ぷっ……なによあの間抜け面。笑えるわ)
少女(……期待してるのかな)
少女(ふふ、楽しみにしてることね)
21 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:29:12.57 ID:QekJgiX40
少年「………」
少年(少女のやつ……)
少年「………」チラ
少女「……?」チラ
少年「──!」ドキッ
少年(まさか、本当に俺に……?)
少年(バレンタイン、か……)
少年(………)
少年(……女ちゃん、渡しに来たりしてくれないかなぁ)
ーーーーー
キーンコーンカーンコーン
少年「………」ズーン
少年(……結局誰も来なかった)
少女「なーに辛気臭い顔してんのよ」
少年「……ほっとけ」
少女「ね、ちょっと付き合ってくれない?」
少年「え?それって……」
少女「屋上に」
少年「……おう」
22 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:30:43.10 ID:QekJgiX40
屋上ーーー
ヒュオー
少女「んー…!」
少女「さすがに屋上の風は冷たいわねー」
少年「………」
少女「さて、と」
少女「ねぇ少年」
少年「う、うん、何?」
少女「……今日、どうせ一個ももらえてないんでしょ?」
少年「なっ……なんだよ関係ないだろ」
少女「関係あるわよ……さすがにもう分かってると思うけど、はい」スッ
少年「……チョコか?」
少女「そう」
少年「どういう風の吹き回しだ?」
少女「なによ。素直に受け取りなさいよ」
少年「………」スッ
少女「言っとくけど、あんただけだから。渡したの」
少年「そうなのか?……まぁお前こういうことする女子力なさそうだもんな」
少女「一言余計!……それで、今食べて感想聞かせてほしいんだけど」
少年「ここでか?」
少女「うん」
少年「でも帰ってからでも……」
23 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:32:21.09 ID:QekJgiX40
少女「……」ジッ
少年「……分かったよ」
(包み紙を解く)
少年「お、おぉ……」
少女「………」
少年「……いやあのさ」
少女「………」
少年「なんか点滅してるんだけど、このチョコ」
少女「そうね」
少年「そうね、じゃないよ!?え、これ食うの?ってか食べていいものなのか?」
少女「ちょっと体にいいもの使っただけよ。まずくはないから安心しなさい」
少年「えぇー…ほんとかよ……」
少年「……悪い、実は俺今日昼食い過ぎちゃって、腹いっぱいなんだよね。帰ってから食べるから感想は明日でも」
少女「……」ギロッ
少年「ひっ……分かった分かった!食べるから…」
少年(……にしても、どう作ったらこうなるんだよ。変な匂いがするわけじゃないけど……不気味過ぎるだろ)
24 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:33:52.33 ID:QekJgiX40
少年「………」
少女「………」
少年「すまん!やっぱ無理っ!」ダッ!
少女「あ!待ちなさい!」ダッ
少年「いや無理だって!なんだよこれ!宇宙人の食べ物かよ!?」
少女「人の好意は素直に受け取りなさいよ!」
少年「どう見ても好意的じゃねーだろ!」
少年(とりあえずこの場は逃げないと…!)
ガチャガチャ
少年「──!?」
少年(ドアが開かない…!?)
少年「な、なんで鍵かかってんだよ!」
少年(まぁいい、早く開けないと…!)カチッ
ポンポン
少年「………」オソルオソル
少女「少年♪」
少年「あ、あはは……」
少女「鍵かけといてよかった♪」
少年(鍵かけたのお前かよ!!)
少女「……で、食べてくれるわよね?」ニコッ
少年「………はい」
少年「………」
チョコ『チカチカ』
少年(今日が命日かもな……)
25 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:34:45.80 ID:QekJgiX40
少年(……ええい、ままよ!)パク
少年「……お」
少女「どう?」
少年「なんだ、意外とおいしいぞ」
少女「意外とってなによ」
少年「いやこんな見た目なら警戒するだろ普通」
少年「でも……」パク
少年「……うん、うまいよ」
少女「そう?……良かった」
少女「食べてくれて」ボソッ
少年「ん?何か言ったか?」
少女「べっつにー」
少年「ふーん。それよりさ、これってどうやったらこんな見た目に──ぐっ」ドクンッ
少年(な……なんだこの感覚……)
少年「あ……ぐ……」
少女「………」
少年(意識が……)
少年「お前……やっぱり、何かいれたろ……」ガクッ
少女「………」
少女「……ごめんね」
少女(でも、こうするしかない。私とあんたが変わるためには)
少女(……ひとまず、第一段階はクリアってとこね)
26 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:35:51.44 ID:QekJgiX40
寮ーーー
少年「………」
少年「………はっ」
少年(ここは……俺の部屋……?)
少年「死んで……ない?」
少女「生きてるわよ」
少年「うわっ!」
少女「なにそのリアクション。失礼ね」
少年「あ、少女お前…あれに何入れたんだよ!」
少女「だから言ったじゃない。体にいいものだって。……良薬は口に苦しって言うでしょ?」
少年「苦しどころじゃなかった気がするんだが」
少女「今だって身体に変なところはないはずだけど」
少年「ん?」
少年(言われてみれば……別にどこかおかしくなってるわけでもない)
少年「……だからってよ、人が気絶するようなもん食わせるか?」
少女「それは……悪かったわよ。あんなに効き目があると思わなかったから」
少年「そ、そうか……」
少年(やけに素直だな)
少女「あとその、あのチョコ」
少年「ん?もう食わないからな!?」
少女「──本命だから」
27 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:38:54.59 ID:QekJgiX40
少年「……え」
少女「だから、その……返事」
少年「………」ポカン
少女「聞かせてよ、返事」
少年(……な、なんだこれ)
少年「……あ、そっか。さてはどっきりだろ。おいおい趣味悪いなぁこんなことまでして──」
少女「言っとくけど」ギロッ
少年「!?」
少女「はぐらかしたら……容赦しないから」ナイフチラッ
少年(ナイフ…!?何するつもりだよおい…!)
少女「……あんたが私にどんな印象を持ってるのかは分かってるつもり」
少年「………」
少女「女のことが好きなのも知ってる……でも」
少女「私のことも少しは見てよ……」
少年「少女……」
少年(………)
少年「……別に、お前のこと見てないわけじゃない」
少女「え…?」
少年「お前が誰よりも俺の心配してくれてることくらい分かってるよ」
少女「それは……だって私がいないと何もできないじゃないの」
少年「そんな赤ちゃんじゃないんだから……」
少女「………」
少年「いいよ」
少年「付き合おう、俺たち」
28 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:39:58.76 ID:QekJgiX40
少女「!……なんて…?」
少年「聞こえなかった?付き合おうって言ったんだけど」
少女「〜〜!」バッ
少年「おっと!……なんだよいきなり」
少女「……」ギュー
少年「……」ナデナデ
少女「ん……」
少年(こいつも、こうしてればかわいいのにな……)
少年「なぁ」
少女「……なに?」
少年「これも更生プログラムの一環ってやつか?」
少女「ばーか……違うわよ……これは私の気持ち」
少女「……少年」
少年「ん?」
少女「ありがと」
少年「……おう」
少年(どうしたんだろうな、ほんと。こんなしおらしい少女、初めて見るな……)
少年(……む)
少年「……あのさ、そろそろこの姿勢辛いんだけど」
少女「……もうちょっと我慢して」ギュー
少年「はいはい」
29 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:42:11.76 ID:QekJgiX40
月曜日ーーー
少年「………」
少女「♪」
少年「あのさ、ちょっと近くないですか」
少女「そう?」
少年「少し歩きにくいんだが…」
少女「そんなことないけど?」
少年「俺がだよ!」
「ねー、やっぱりあの二人……」ヒソヒソ
「うんうん、私も……」ヒソヒソ
少年「めちゃくちゃ見られてる気がする…」
少女「いいじゃない。勝手にさせとけば」
少年「うー……」
少年(………)
少年「……少女、お前本当なんかあったのか?」
少女「なにが?」
少年「いや、何か……お前のキャラそんなんだっけ?」
少女「はぁ…デリカシーないところは相変わらずね」
少女「言ったでしょ?私が何とかしてやるって」
少年「えぇ?や、やっぱり更生プログラムとやらの……?」
少女「ねーそんなことよりさ、今日の放課後付き合いなさい」
少年「怪しげな洗脳施設に!?」
少女「何言ってんの。普通にデー──」ガララ
「あー!」
「少女あんた…!」
30 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:43:08.04 ID:QekJgiX40
少年「な、なんだ?」
「なーんだ、やっとくっついたのあんたら?」
「やっぱり先週のあれだよね!?やるねぇ少女!」
少女「ふふふ…まぁね」
「少年君…だっけ?」
少年「は、はい。なんでしょう…?」
「少女になんて言われたの?」
「私も気になる!」
少女「はいはいそこまで。あんたら早く座りなさいよ。もう先生来るわよ?」
「えぇー」
「それくらい教えてくれてもいいじゃん……放課後、楽しみにしててよ」キラン
少女「残念でしたー。放課後はもう先約があるから、ね、少年?」
少年「ん、あぁ…」
「なによそれー!」
「ずるい!」
31 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:44:56.18 ID:QekJgiX40
放課後 自室ーーー
少女「──あー、楽しかった」
少女(あいつと出かけることなんて今まで何度もあったけど、今日のは…デート…)
少女「ん〜〜!」ムフフ
少女「………」
少女(……でも、あいつの目……)
少女(分かる、あれは私を見てない)
少女「………」スッ
少女「……!」
少女(だめ、だめよ。もうこんなのには頼らない)
少女(欲しい未来は…自分で切り拓く)
少女(そうね──)
32 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:48:56.21 ID:QekJgiX40
ーーーーー
少年「──あー、疲れた」
少年(何だったんだ、あいつのはしゃぎよう。まさか隣町まで行かされるとは…)
少年「………」
少年(少女、か……)
少年(悪くない、かもな)
少年「あーー!でもなぁーー!」
少年(女ちゃん……やっぱ諦めきれねーよなぁ)
少年「はー……」
少年「………」スッ
少年「………」カチッ
少年「っ……」
少年(女ちゃん……)
少年「………」
少年(……よし決めた!)
少年「まずは…少女」
少年(あいつを落としてやる!少女で練習して、最終的には女ちゃんと……にへへ)
少年(そうだな──)
33 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:50:11.08 ID:QekJgiX40
少女(??桜が咲く頃くらいまでにはね)
少年(??桜が咲く頃くらいまでにはな)
34 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:51:26.61 ID:QekJgiX40
>>33
訂正
少女(──桜が咲く頃くらいまでにはね)
少年(──桜が咲く頃くらいまでにはな)
35 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:53:10.85 ID:QekJgiX40
3月ーーー
ザッザッザッ
少女「綺麗に咲いてるわねー」
少女(ここら辺じゃ一番大きい桜の木…)
少女(心なしか輝いてすら見えるわ)
少女(うん、まるで……)
ーーーーー
女『〜〜♪』
ーーーーー
少女「……チッ」
少女(嫌なもの思い出しちゃったわ)
少女(私だって本気出せば……というか今の事務所やる気無さ過ぎなのよ!結局前収録した歌も使ってくれなかったし)
少女(……やっとこの日が来たのね)
少女(まずは)
プルルル プルルル
少女「………」
少女「……早く出なさいよ」
36 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:54:21.83 ID:QekJgiX40
ーーーーー
ピリリリッ ピリリリッ
少年「んー?」
少年「少女からか」
少年「………」ピッ
少年「──もしもし」
少女『少年、あんた今日暇よね。私のとこに来て』
少年「確かに暇だけどさ。なんだ?デートか?」
少女『っ…そ、そうよ』
少年「……」ニヤ
少年「少女さ〜、あんな大胆に告っといてデートって単語にまだ慣れてないのか〜?」
少女『なっ!そんなんじゃないわよ!』
少年「お前にそんな女の子らしいとこがあったなんてなぁ」
少女『蹴るわよ』
少年「おーこわ。で、お前の部屋に行けばいいのか?」
少女『いえ、桜の下で待ってるわ。この町で一番大きいやつ。分かるでしょ?』
少年「あーあれか。分かった今から行くわ」
少女『うん、待ってる』
少年「……乙女少女」
少女『あんたねぇ〜!』
少年「あーイソガナイトナー」ピッ
少年「……」
少年(順調……でいいんだよな)
少年「花見デートってやつかなぁ」
少年(なんだかんだ、あれ以来変なもの食わせたりしてきたりとかなかったし、もういけるんじゃないか?少女のやつ)
少年(これが女ちゃんなら言うことなしなんだけどなぁ……まぁでもこれはこれで……)
少年「……」ニヤニヤ
37 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 01:58:47.17 ID:QekJgiX40
ーーーーー
少女(──とか思ってるんでしょうね)
少女(あのバカ面みてたら何考えてるかなんて分かるわ。ほんと単純なんだから)
少女(ふん…あんな女の代わりになるほど私は安くないわ)
少女「……あ、この辺ならいいかしらね」ザクッ
「タイムカプセルでも埋まってるのかい?」
少女「……やーっと来たの?遅刻するなんてらしくないじゃない」
売人「手厳しいねぇ。でも君が急に呼び出すからじゃないか。僕だって暇じゃないんだからさ」
少女「どうせアレを売り歩いてるだけでしょ」
売人「ひどい勘違いだよそれ。銀行がお金の出し入れしかしてないって言ってるようなもんさ。分かるかい?彼らが裏で色んな仕事してるように僕も──」
少女「はいはい、分かったから」
売人「本当にぃー?……それで、僕は何で呼ばれたのかな?アレはこの前たくさん買ってくれたから足りなくなってることなんてないはずだけど。やっぱりそのシャベルで何か掘り出すのかな?お宝?タイムカプセル?それとも埋める方かい?」
少女「残念ながらほとんどはずれ」
売人「えぇー……ん?でもほとんどってことは」
少女「そうよ。ここに埋めに来たの」
少女「──あんたをね」スチャ
38 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 02:01:11.80 ID:QekJgiX40
売人「………おいおい、穏やかじゃないね。なんだいその銃は。おしゃれなら似合ってないよ?」
少女「お生憎さま。本物よ」
少女「……あんた、何者なの?」
少女「突然この町にやってきて、怪しげなもの売りつけて」
売人「怪しげとは失礼だね。君だって使ってたじゃないか」
少女「もうやめたわ」
売人「……は?」
少女「ダメなのよ。あんなものに頼ってちゃ……私たちはどんどん落ちていくだけ」
売人「………」
少女「アレ、少年にも売りつけてたわよね」
売人「……それが?」
少女「んーん、もういいの。あの子にも金輪際使わせないから」
少女「ねぇ、教えなさい。アレは一体何?何のために私たちに使わせてたの?」
売人「………」
売人「何のためとは…なんだい?まるで僕が悪者みたいに言ってくれるね?いつも説明してる通りさ、あのメモリースティックは、君たちが見たいと思ったものを見せてくれるプログラムだって。せっかく辛そうな君たちに夢を見せてあげたのに、恩を仇で返すような人なのかな、君は」
売人「まぁ……ちょーっと法の抜け道を利用してるのは否めないけどね、ククク」
少女「………」
売人「それに、君に僕を責める資格はないだろう?アレを使った時点で立派な共犯者なんだ。いつも使ってたんだろう……そうだね、その右耳のヘッドホンかな?そこからロードさせてさ」
少女「…!」
売人「いやーでも参ったねー。そっかそっかもう使ってくれないんだ?困ったなー」
少女「……なんなのよ」
少女「あんたのせいでしょうが!」
少女「あんたのせいで、あいつは、私のことなんて見てくれなくなって…!」
少女「私も……こんな……」
売人「──見苦しいね。責任転嫁はやめてくれよ」
少女「っ!」
39 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 02:03:36.42 ID:QekJgiX40
売人「僕がいなかったらむしろ、君たちの関係はもっと早く壊れていたんじゃないのかい?それが分かってたから、君はこれに手を出したし、彼が使うのも止めなかった……違うかな?」
少女「………」
売人「なのにこの期に及んで僕を悪者扱いするなんて……感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはないと思うんだけどねぇ」
少女「……て」
売人「君の意志が弱かったから、こんなことになったんだろう。最近は少しましになってきたみたいだけど、ちょっと遅かったみたいだね。もっと早く君が彼に向き合っていれば結末は違ったろうに…本当に君はかわいそうな──」
少女「やめて!!!!」
売人「!」
少女「分かってんのよ!そんなこと!あんたに言われなくても!」
少女「だから──私は変わるの」
少女「あいつもね」
少女「ひとから見せられる夢なんてごめんよ」
売人「……ふーん、それで僕を、ね」
売人「所詮こうなる運命か」ボソッ
少女「──消えて」チャキッ
売人「ふー…分かった」
売人「……って言えるほど僕も優しくはないんでね!」バサッ
チャキッ
少女「なっ!」
少女(拳銃!?)
売人「少し計画とは違うけど、ここで…!」
タァンッ!
少女「………」
少女「………」ヨロッ
ドサッ
40 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/06/05(水) 02:04:52.67 ID:QekJgiX40
売人「………ふぅ」
売人「まったく、ここまでのじゃじゃ馬ちゃんだったなんて」
売人「あーあ、服に土が付いちゃってる。これ高いのに」バサバサ
売人「ま、結果オーライかな」
売人(この子が油断してるときでよかった。本気だされたらさすがに僕もどうなってたか…)
売人「回収しちゃいますかね。派手に撃っちゃったけど、メインプログラムは壊れてないでしょ」
ザッザッ
少女「………」
売人「これでようやく僕の目的も果せるかな」
少女「………」スッ
売人「長かったなーあのときから??!?」
少女「??じゃあね、お間抜けさん」スチャ
ダダダダッ!
売人「ぐ……あ……なんで……」
少女「ふん、油断なんてしてないわ。こんなの昔に比べればなんてことないのよ。私を甘く見ないでよね」
売人「ふ……ふふ……そうかい、ほんと……とんでも、ない……」ドサッ
少女「………」
少女(あとは……)
少女(少年)
ザクッザクッ
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