【シャニマス】チョコしてもいいですか

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:01:31.00 ID:ERzHuNUU0
【シャニマス】普通の私は憧れの先に憧れる
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1553871319/

【シャニマス】私の輝きは智代子いろ
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1554823249/

第三作目。地の文多め。
それでもいい方、是非読んでいってください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1558702890
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:03:09.98 ID:ERzHuNUU0
 恋の感情というものを、私は味わったことがなかった。どんな味がするんだろう、と疑問に思うことはあるけど私は分かろうとしなかった。

 私の持っている恋の知識は、少女漫画。

 可愛い女の子が自分を守ってくれるカッコいい男の子と出会って、波乱があったりすれ違いがあったり、その果てに付き合ってキス……とかをしちゃう。

 漫画だから都合が良くなってしまうのは分かっているけど、不思議とときめいてしまう。

 そういうものだと解釈している。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:04:08.09 ID:ERzHuNUU0
 少女漫画で得る浅い知識で満足している私は恋に臆病なのかもしれない。

 今までにも何回か告白されたことがある。

 中学、高校で告白された。

 でも普通の私のどこがいいんだろうって、告白されて思った。

 もしかして都合がいいと思われているのかもしれない。

 私を好き、という感情じゃなく私だからOKしてくれると思われているかもしれない。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:05:20.02 ID:ERzHuNUU0
 だから、味が分からない。

 妄想だけど、あま〜いチョコの味をしているといいな。だけど、それを味わう勇気はまだ生まれてこない。

 久しぶりに恋の感情を味わってみたいな、と思ったのは感じたのはアイドルになってから、かな。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:05:48.14 ID:ERzHuNUU0
◆◆◆

「智代子」

 厳しいダンスレッスンの休憩中、私の呼ぶ声が聞こえた。

「最近調子がいいらしいじゃないか。スタッフさんの評判も良いって聞くよ」

 プロデューサーさん。

 私を見つけてくれた人。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:06:35.14 ID:ERzHuNUU0
「プロデューサーさん」

「最近レッスンの様子見に行けなくてごめんな。仕事も1人で行かせちゃってるし」

 プロデューサーさんは私に向かって近づいてくる。

 あ、そういえば私、今汗かいてる。何故だろう、今までは汗かいている姿を見られても恥ずかしくなかったのに、次第に羞恥心を育まれている。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:07:01.84 ID:ERzHuNUU0
「ぷ、プロデューサーさん! ちょっと待ってください汗を拭くので!」

 少し慌てて私は彼が接近するのを止める。そして自分のカバンの中からチョコ色のタオルを取り出して汗を拭く。

「ん? ああ、別に気にしないのに」

 ああもう! 私が気にするんです!

 心の中で彼に向かって叫ぶ。言葉にはできなかったけど。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:07:51.49 ID:ERzHuNUU0
 放クラの仲間に汗まみれの姿を見られてもそんなに気にしないというか、恥ずかしくも何ともないのに、なぜプロデューサーさんだけは見られたくないと意識しちゃうんだろう。

 不思議でたまらない。

 ちょっと口の中が甘くなった。まるでチョコの匂いを嗅いで、その甘い匂いが口の中で広がっていくような、不思議な甘さ。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:08:19.48 ID:ERzHuNUU0
「ああ、そうだ。汗を拭きながらでもいいから聞いてくれるか? 智代子に仕事の話が入ってるんだ」

「え! 私にですか?」

「そう。でも少し悩んでるんだよ。そこで少し智代子と相談できたらな、と思って来たんだ。レッスン後で疲れてると思うけど時間取れるか?」

 仕事の話……かぁ。何だかんだ私のお仕事も増えてきている。これもプロデューサーさんが営業を続けてきてくれたおかげだろう。

 アイドルという特殊なお仕事を、私はちゃんとやれている。前までは絶対に自信がなくて、勝手に落ち込んでいた。

 これもプロデューサーさんが背中をずっと押してくれたから。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:08:52.72 ID:ERzHuNUU0
 でも、今まではお仕事に関して相談したい、だなんてなかったのに、急にどうしたんだろう。私はお仕事を選別する立場じゃないからどんなお仕事でも受けたい、とは思っているけどなぁ。

「えっと……相談しなきゃならないほどのお仕事って何でしょうか?」

「さっき企画の打ち合わせしてたんだよ。でも智代子が少し嫌がるかなって思ったからさ」

「そんなに危険なんですか? 例えば……バ、バンジージャンプとか、虫を食べるとか!?」

「バッカ言え。大切なアイドルにそんなことさせないさ」

 むぅ……。恥ずかしいことを何の気もなしに言えるんだからずるいなぁ。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:09:34.21 ID:ERzHuNUU0
「企画内容としては『アイドルが恋を語る』というアイドル雑誌のコラムがあるんだ。それを智代子に書いてくれないか、というのが出版社から来たんだよ」

「雑誌のコラムを私が書くんですか?」

「うん、そうなんだけどな。アイドルが恋を語るっていうのもなぁ……と思ってね。あとさ」

 少し躊躇って彼は口を開く。

「出版社の方がな、やたら『普通』という言葉を使ってくるんだよ。世間が親近感を覚えるアイドルの園田智代子さんに、女子高生目線で書いてほしいってな」

「でも、あんだけ悩んでた智代子にとって『普通』って言葉は嫌なんじゃないかって。俺もさ、少しカチンとしちゃって。どうするか保留にしてきちゃった。今までは智代子の一面を磨くために一つ返事で受けてきたけどさ」

「そ、そうだったんですか……」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:10:06.68 ID:ERzHuNUU0
 私は普通という自覚はある。けど、それをお仕事関係の人たちに言われるのは……やっぱり深く刺さっちゃうなぁ。

「んで、どうする? 受けなくてもいい。君の判断に任せたい」

 どうしようかな。でもプロデューサーさんがせっかく見つけてくれたお仕事だから……。

 でも、世間が私に対して親近感を覚えてくれていることに少し感動している。

 世間が私を認知して、そんな風に思ってくれているんだ。

「私、やってみたいです」

「……ん、分かった」

 プロデューサーさんは私の目を見て軽く頷いた。何か圧倒された様子に見えた。

 私の目は一体どんな目だったのだろう。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:10:44.85 ID:ERzHuNUU0
「一応さ、聞いてみていい?」

「はい! 私は確かに普通だと思ってます。けど私のことを認知してくれて、親近感を覚えてくれて。それの期待に応えたいなって思ったんです」

 私がこの企画を聞いて思ったことをスラスラと述べると、納得したようにプロデューサーさんは頷いた。

「そうか。智代子がそう思うならいい」

 じゃあこれ企画書だから目を通しておいてくれ、とプロデューサーさんから書類を渡された。

「コラムは『恋』に関することを自分の解釈で書くんだ。智代子自身が、将来どんな人と結婚したいか、どんな恋愛をしたいか……とか。アイドルらしく、書いてみてくれ。そして出版社やファンのみんなを驚かせよう。『一味ちがうぞ』って思わせてやるんだ」

「はいっ! ……えっ、あっそっか」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:11:31.29 ID:ERzHuNUU0
 私、恋なんて分からないよ。


 自分の勢いよく飛び出した言葉と裏腹に、少しだけ自信がなくなっていくのが分かった。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:13:16.61 ID:ERzHuNUU0
◆◆◆

「あ〜〜もぉ〜どうしよ〜〜!」

 したことのないことは、書けないなぁ。

 でも理想を書けばいいんだ。そうだ、そうだよね。

 理想かぁ……。少女漫画のような恋がしたい、なんて。

 でも、そんなの現実ではありえないから書きたくないなぁ。あ、でもそれがアイドルらしい『恋』なのかなぁ。

 一文を書く前から悩んじゃってる。

 私は何を書きたいんだろう。恋なのは分かってる、それを素直に書けばいいのも分かっている。

「……分からないなぁ」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:13:53.19 ID:ERzHuNUU0
 その疑問が何なのかも分からない。

 天井を仰いだ。頭がすっきりさせたくても、できなかった。

「プロデューサーさんはどんな恋をしてきたんだろう」

 ボソッと呟く。何故か自分のプロデューサーさんのことを考えてしまっていた。関係ないのに、ファンが欲しいのは私の『恋』なのに。

 そして胸が熱くなる。鼓動が震えている。

 これは何だろう。

 これは私の直感に過ぎない。この不思議な感覚はそのままにしておくべきだと思った。

 これは表に出せない感情、な気がする。だからこの気持ちを押し[ピーーー]しかないのかな。

「明日、みんなに聞いてみよ」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:14:30.04 ID:ERzHuNUU0
 『恋』は、私だけには解決できない課題だと思った。だから明日はユニットのみんなに聞いてみよう。

 うん、それがいい。私だけじゃ分からないもん。私だけでコラムを書いてくれなんて言われてないもん。

 あっ、そうだ。

『恋は甘いものだと思う。チョコレートのように甘いもの。だけど、本当かどうか分からない。私は知らないから』

 最初の一文はこうしよう。

 きっと甘いものだ。きっとチョコレートだ。

 その期待を込めて、ユニットのみんなと答えを探そう!
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/24(金) 22:15:16.38 ID:ERzHuNUU0
◆◆◆

「夏葉ちゃん!」

「あら智代子、おはよう。朝から元気ね」

 事務所に行ったら、ソファーに夏葉ちゃんが雑誌を読みながら座っていた。よおし、ちょうどいいから聞いてみよう。

「うん、おはよっ! あの〜夏葉ちゃん……質問があるんだけど……答えてくれる?」

「いいわよ。私に答えられないものはないわよ!」

 自信満々に答えてくれる。これは、期待できそう!

「ありがとう! あのねあのね。夏葉ちゃんは……恋って分かる?」

「前言撤回するわ。私にも答えられないものがあるのよ」

「だ、だよねー」
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