千歌「ポケットモンスターAqours!」 Part2

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

281 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/15(水) 15:59:55.49 ID:YHpk3Rh50

 「〜〜〜〜♩」「〜〜♬」「〜〜♫」


参加者も会場中も、みんな声をあわせて、心を一つにして、大合唱をしていた。


曜「みんな……ありがとう……」
 「キュウ〜〜〜〜♪」


ラプラスが歌いながら、私に頬ずりをしてくる。


曜「……うん!! みんなーーーー!!! 最後まで、めいっぱいーーーー!! おっきな声でーーーーー!!! 歌おうーーーーーー!!!!!」


──名前も知らない人やポケモンが、集まったこの場所で、ただ歌を、踊りを通して、心を一つにする。

──噫、なんて……なんて、幸せなことなんだろう。

私は、皆と一緒に大合唱をしながら、

幸せを噛み締めながら、

ただ、笑顔で歌い続ける──





    *    *    *


282 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/15(水) 16:01:02.48 ID:YHpk3Rh50


──カランカラン。

ドアを押し開けると、小気味の良いベルの音が自分の来店を知らせる。


 「いらっしゃいませ」


わたしはそのまま、奥に歩いて──カウンター席に腰を降ろす。


ことり「──こんばんは」

マスター「ことりさん……お久しぶりです」

ことり「お久しぶりです♪ ちょっと今日は酔いたい気分なんで……強めのカクテル作ってもらっていいですか?」

マスター「珍しいですね……畏まりました」


マスターにお願いをしてから、横を見ると──


あんじゅ「……ことりがここに来るなんて珍しいわね」


あんじゅちゃんが赤ワインを嗜んでいた。


ことり「そうだねぇ……前に一緒に飲んだのって、結構前かもね。あんじゅちゃんも今日はカクテルじゃないの珍しいね?」

あんじゅ「酔いたい気分だったのよ」

ことり「ふふ……そっか。志満ちゃんは?」

あんじゅ「あー……志満なら、そこ」

ことり「……そこ?」


言われて、あんじゅちゃんの向こう側を見ると、


志満「……うー……」


机に突っ伏している、志満ちゃんの姿があった。


ことり「気付かなかった……」

あんじゅ「ま、もう潰れてテーブルと同化してるからね。しょうがないわ」

ことり「あはは……」

マスター「──どうぞ」


そんな話をしていたら、マスターが出来上がったカクテルを出してくれる。


ことり「あ。ありがとうございます〜」


カクテルグラスを持って、あんじゅちゃんの方に差し出す。


あんじゅ「……飲みかけだけど?」

ことり「まあ……細かいことは、今日はもういいかなって」

あんじゅ「……それもそうね」

ことり・あんじゅ「「乾杯」」
283 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/15(水) 16:01:54.38 ID:YHpk3Rh50

二人でグラスを──チンとぶつける。

カクテルを煽ると、アルコールは感じるのに、とにかく飲みやすい。

これは本当にすぐ酔ってしまいそうだ。


あんじゅ「……それで?」

ことり「ん?」

あんじゅ「……新生クイーン様はどうしたの?」

ことり「ああ、うん」


──新生クイーン。

今宵誕生した、この地方の頂点のコーディネーター。


ことり「結果を友達に伝えるために、飛んで行っちゃったよ」

あんじゅ「クイーンになったって言うのに呑気なものね……全く、あの子には驚かされてばっかりよ」

ことり「そうだねぇ……」

あんじゅ「お客さんも巻き込んで皆で歌うなんて……あの大舞台でとんでもないことしてくれちゃって」

ことり「ふふ……わたしもびっくりしちゃった」


──でも。


ことり「楽しかったね……」

あんじゅ「……ええ」

ことり「あれが、曜ちゃんが見たかった景色だったんだね」

あんじゅ「そうね。……ことり」

ことり「ん?」

あんじゅ「コンテストは……まだまだ、進化出来るのね」

ことり「うん。会場に居るみんなが笑顔になれる……そんな舞台が作れると思う」

あんじゅ「……まだまだ、お互いやれることがありそうね」

ことり「ふふ……そうだね。今日は朝まで、コンテストの未来について、語り合おっか♪」

あんじゅ「ええ、そうしましょうか」

志満「ぐぅ……」





    *    *    *


284 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/15(水) 16:02:22.35 ID:YHpk3Rh50


──14番水道上空。

呼び出したキャモメたちに揺られながら空を飛んでいる。


曜「優勝……か」


グランドフェスティバルは終わった。

──私とラプラスの優勝と言う形で。
285 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/15(水) 16:02:52.12 ID:YHpk3Rh50

──最終結果
 《   ポケモン    一次審査 | 二次審査
   【 ビビヨン 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ ¹
              ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ²
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ³
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁴
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡                                     ⁵
                                                           ⁶〕

   【チルタリス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ ¹
              ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ²
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ³
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁴
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡     ⁵
                                                           ⁶〕
286 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/15(水) 16:03:49.24 ID:YHpk3Rh50

   【ギガイアス】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ ¹
              ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ²
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ³
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁴
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡                  ⁵
                                                           ⁶〕

  ✿【 ラプラス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ ¹
              ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ²
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ³
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁴
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁵
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡                        ⁶〕 》
287 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/15(水) 16:06:49.57 ID:YHpk3Rh50

しかし、今日から晴れて、コンテストクイーンと言われても……。


曜「なんか実感沸かないなぁ……」


気持ちがふわふわとしていて落ち着かなくて……。

でも、この結果を一番大切な友達に直接伝えたくて、飛び出してきてしまった。


曜「……ま、実感なんて、そのうちついてくるか!」


そんなことよりも。

私はボールを手に取る。


曜「皆……ここまで、ついてきてくれてありがとう」


そして、愛おしい気持ちで相棒たちのボールを撫でながら、


曜「皆が居たから……私、ここまで走ってこれたよ」


ホエルオー、ダダリン、カイリキー、タマンタ、カメックス……そして、ラプラス。


曜「それと……これからもよろしくね、皆」


私の言葉に応えるように、ボールたちがカタカタと揺れた。


曜「ふふ……」


その答えが幸せで、笑みが零れた。


曜「それにしても、素敵な景色だったなぁ……」


皆の笑顔が溢れるステージで──私は……ついに、コンテストの頂点に立った。

最高のステージで……。

さて、次はどんなステージにしようかな? どんな気持ちを届けようかな?

そんなことを考え、胸に抱きながら……私はこれからも羽ばたき続けるんだ──


288 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/15(水) 16:07:58.15 ID:YHpk3Rh50


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【14番水道】
 口================= 口
  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    ●  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口

 主人公 曜 ✿
 手持ち カメックス♀ Lv.53 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.42 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:166匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt


 曜は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.



289 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:32:58.13 ID:E6ygtKl90

■Chapter084 『決戦! クロユリジム!』 【SIDE Chika】





千歌「──ふぅ、ようやく辿り着いたね!」

善子「ええ」


クリスタルレイクを東に抜けて──16番道路を途中で北上し、18番道路を行った先にある街。


千歌「クロユリシティ……!」

善子「……じゃ、私はそろそろ」

千歌「あれ? 善子ちゃんは街には入らないの?」

善子「別に私はこの街に用事とかないし……ってか、この街ジムしかないでしょ?」


言われて、街の方を見てみると、民家こそぽつぽつあるけど、確かに施設らしい施設はポケモンセンター、フレンドリィショップ……そして、ポケモンジムくらいしか見当たらない。


善子「私は千歌が途中まで一緒に行こうって言うから、図鑑埋めのついでについて来てただけよ」

千歌「そっかぁ……じゃあ、ここでお別れだね」

善子「ま……最後に一緒に過ごすのも悪くなかったわ」

千歌「……最後?」


私は首を傾げる。


善子「ここ1ヶ月くらいで地方は一通り回れたからね。私の旅はここで一旦終わりかなって」

千歌「そうなんだ……」

善子「何、暗い顔してんのよ」

千歌「いや、同じ図鑑所有者としてちょっと寂しいなって思って……」

善子「はぁ……別に地方から出ていくわけでもないし。いつでも会えるわよ」

千歌「……うん、それもそうだね。それじゃ──」


私は手を差し出す。


善子「……ん」


善子ちゃんはその手を見て、恥ずかしそうに頬を掻く。


千歌「握手」

善子「わ、わかってるわよ」


善子ちゃんは赤くなりながら、やや乱暴に私の手を握る。


千歌「ふふ……」


最後までちょっぴり恥ずかしがりやで、ぶっきらぼうな善子ちゃんに笑ってしまう。
290 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:33:42.71 ID:E6ygtKl90

善子「何笑ってんのよ!」

千歌「なんでもなーい」

善子「もう……何よ……」

千歌「ごめんごめん。……チカね、善子ちゃんが同じ図鑑所有者でよかったって思う」

善子「……褒めても何も出ないわよ」

千歌「そんなんじゃないよ。ホントにそう思ってる」

善子「…………ふーん」


善子ちゃんは目を逸らしながら、


善子「……ありがと。……私も……同じようなこと、思ってるわよ」


そう言ってくれた。


千歌「えへへ、うん!」


私ははにかんで頷いた。


善子「……千歌」

千歌「ん?」

善子「ここまで来たら……ジム制覇、ちゃんとしなさいよね。あんたはこの堕天使ヨハネを倒したトレーナーなんだから」

千歌「……うん!」


291 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:39:55.49 ID:E6ygtKl90


    *    *    *





──善子ちゃんからの激励を受け、その後私は……。

辿り着きました。


千歌「……ここが」


最後のジム──クロユリジムに。

私はドアの扉に手を掛けて、


千歌「たのもぉーーー!!!!」


声を張り上げながら、押し開ける。

ジムの奥には、赤紫のロングヘアーに、泣きボクロの印象的な女性が一人。目を瞑って、立っていた。


 「……ようこそ」


彼女は私が来たことに気付いたのか、目を開いて、そう言う。


千歌「ジム戦に来ました!! ウラノホシタウンの千歌です!!」

英玲奈「私は英玲奈。クロユリジムのジムリーダーだ。……とは言っても、ここまで来てバトルする以外に特に喋ることもないだろう」


そう言って英玲奈さんは、バトルスペースに歩いてくる。


英玲奈「バトルスペースに付くといい」

千歌「は、はい!!」


今までのジム戦の中で最もスムーズかもしれない。

すごく助かるけど……。


英玲奈「使用ポケモン5体。シンプルに相手のポケモンを全て戦闘不能にした方が勝ちだ。構わないかい?」

千歌「はい! よろしくお願いします!」

英玲奈「クロユリジム・ジムリーダー『壮烈たるキラーホーネット』 英玲奈。さあ、楽しい戦いにしようじゃないか」


二つのボールがフィールドに放られる。最後のジム戦、開始だ──





    *    *    *


292 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:41:06.10 ID:E6ygtKl90


千歌「行くよ、バクフーン!!」
 「バクフーー!!!!!」


こっちの一番手は、いつもの先発バクフーン。


英玲奈「行くぞ、ペンドラー!!」
 「ペンドォォォォ!!!!!!」


英玲奈さんの一匹目は毒々しい色の虫ポケモン、ペンドラー。

 『ペンドラー メガムカデポケモン 高さ:2.5m 重さ:200.5kg
  素早い 動きで 敵を 追い詰め 首のツメで 挟み込み
  身動きを とれなくしてから 猛毒を 与え 攻撃する。
  とても 攻撃的な 性格で とどめを 刺すまで 容赦しない。』


英玲奈「ペンドラー、“ハードローラー”!」
 「ペンドラァァ!!!!!」


バトル開幕と同時にペンドラーは身体を丸め、猛スピードで転がってくる。

直線的な攻撃──受けて立つ!!


千歌「“かえんぐるま”!!」
 「バクフーンッ!!!!!!」


こちらも回転しながら飛び出す。

二匹の回転突進が正面からぶつかって、お互いが弾かれる。

威力は同等……!!


英玲奈「“どくばり”!!」
 「ドラァーー!!!!!!」


弾かれた先で、体勢を立て直したペンドラーが即座に“どくばり”を飛ばしてくる。


千歌「“やきつくす”!!」
 「バクフーーンッ!!!!!」


すかさず、それを迎撃。


 「ドラァーーー!!!!!!」

千歌「!?」


だが、ペンドラーは迎撃の隙を突いて、火炎を迂回しながら猛スピードで距離を詰めてくる。


千歌「は、速い!?」

英玲奈「“ポイズンテール”!!」

 「ペンドラァァーーー!!!!!!」

 「バクフッ!!!!」


巨大な尻尾を横薙ぎに叩き付けられ、バクフーンが吹っ飛ばされた。


千歌「バクフーン!! 大丈夫!?」
 「バクフー!!!」


バクフーンはどうにか受身を取りながら、体勢を整える──が、
293 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:42:53.07 ID:E6ygtKl90

 「ドラァァ!!!!!」

千歌「っ!!」


ペンドラーは既に次の攻撃の為に距離を詰め終えていた。


英玲奈「“メガホーン”!!」

 「ドラァァァァ!!!!!!」

 「バクフゥッ!!!!!」


そのまま、頭の角で突き飛ばされ、バクフーンは地面を転がる。


千歌「バ、バクフーン!! 一旦距離を──」

英玲奈「“メガホーン”!!」

 「ペンドラァァァ!!!!!!!」

千歌「!!」


体勢を立て直す暇もなく、


 「バクフーーッ!!!?」


バクフーンに再び“メガホーン”が炸裂する。

──相手が速すぎる……!!

いや、というより……。


千歌「“かそく”してる!?」

英玲奈「……気付いたか、だが気付いても、もうこの速さには追いつけないだろう」


猛スピードでペンドラーが更なる追撃を迫ってくる。

どんどん“かそく”しているせいでもう手が付けられない。

……でも、


千歌「動きは読める!! バクフーン!!」
 「バクフッ!!!!」


逆に速すぎて曲がれないはずだ、


千歌「“ほのおのちかい”!!」
 「バクフーー!!!!!!」


バクフーンが地面を叩くと、目の前に火柱が発生する。

真正面から猛スピード突っ込んでくるなら、壁を作ってしまえばいい、


英玲奈「良い判断だ……だが」

 「ペンドラァァァァ!!!!!!」

千歌「……!!」


ペンドラーは雄叫びをあげながら、火柱の直前で直角に曲がって進路を逸らす。


英玲奈「速くなっても、回避くらい出来る」

千歌「……っ!!」
294 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:46:23.19 ID:E6ygtKl90

“ほのおのちかい”を避けて、コの字を描きながら、バクフーンの側面に迫るペンドラー。


英玲奈「終わりだ!! “すてみタックル”!!」

 「ペンドラァァァァァァ!!!!!!!!」


更にスピードを上げ、最後の一撃を叩き込みに来る、ペンドラー。


千歌「──足元!!」
 「バクフッ!!!!!」

英玲奈「!?」


私の指示で、バクフーンが前傾姿勢になる、

──最初から、炎の壁で倒すつもりだったわけじゃない。

一瞬、判断の時間を稼ぎたかっただけだ。


 「ドラァァァァ!!!!!!!」


迫るペンドラーに対して、掬い上げるように、前足を刺し込み、


千歌「“カウンター”!!!」
 「バクフッ!!!!!!」


ペンドラーを背後に向かって放り投げた。


英玲奈「何……!? ペンドラー!」

 「ドラァァァ!!!?」


とてつもないスピードのまま、背後に放り投げられたペンドラーは、

──ズドォン!! と大きな音を上げて、ジムの壁に激突した。


 「ド、ラァァ……」


ペンドラー、戦闘不能だ。


千歌「よしっ! ナイス、バクフーン!!」
 「フーンッ!!!」

英玲奈「……ふむ。ここまで勝ち抜いてきたトレーナーと言うだけはあるようだな。戻れ、ペンドラー」


英玲奈さんはペンドラーをボールに戻す。


英玲奈「次だ、行くぞ! オニシズクモ!」
 「シズ、ク」


二匹目はオニシズクモ。


 『オニシズクモ すいほうポケモン 高さ:1.8m 重さ:82.0kg
  普段は 水の中で 過ごす。 見かけに よらず 面倒見が
  良く 弱く 小さな 仲間を 見つけると 水泡の 中に 入れて
  守る。 水の 中でしか 呼吸できないので 水泡を 被っている。』


頭に大きな水の塊を被っているクモのようなポケモンだ。


英玲奈「オニシズクモ! “かみつく”だ!」
 「シズ、クモ」
295 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:48:09.23 ID:E6ygtKl90

指示を受けたオニシズクモが口を開けて、バクフーンに向かって前進してくるが、

さっきのペンドラーとは打って変わって、動きが遅い。


千歌「バクフーン!! “かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーーッ!!!!!!!」


そこにすかさず攻撃を叩き込む。

動きの鈍いオニシズクモは一瞬で“かえんほうしゃ”に飲み込まれる。


千歌「……」


いや、いくらなんでもあっけなさすぎる。

警戒してよく見てみると──


 「シズ、クモ」

千歌「!?」


オニシズクモは“かえんほうしゃ”の中を全く怯まずに前進し続けている。


千歌「バクフーン!! 一旦後退!!」
 「バクッ!!!」


攻撃の手を止め、バクフーンは立ち上がり後ろに向かってステップを踏む。


英玲奈「“とびかかる”!!」
 「シズ…」


が、オニシズクモは今度は地面を踏み切って、跳び込んできた。


千歌「わ!? と、跳ぶの!? “だいもんじ”!!」
 「バックフーーーン!!!!!!!」


背中から爆炎を立てながら、バクフーンが最大級の火炎攻撃で迎撃する。

──が、


 「シズ、」


オニシズクモはまるで意に介さず、炎の中を一直線に突っ込んでくる。


千歌「炎が効いてない……!?」
 「バックフーーーーンッ!!!!!!」


バクフーンは雄叫びをあげながら、火力を増すが、

オニシズクモはその火力に押し負けることなく、どんどんこちらに接近してくる。


千歌「ま、まずい……!?」


もう離脱出来る距離感じゃない。


英玲奈「オニシズクモ!!」
 「シズ…」


炎を掻き分けながら、跳び込んで来たオニシズクモが至近距離で頭を振るう。


英玲奈「“アクアブレイク”!!」
 「クモ、」
296 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:50:05.16 ID:E6ygtKl90

攻撃はバクフーンに直撃すると共に、一気に水のエネルギーを膨らませ──


千歌「だわぁっ!!?」


とてつもない衝撃波になって、爆発する。


 「バクフッ!!!?」


バクフーンはその攻撃力で、バトルスペースから吹き飛ばされ、トレーナースペースにいた私のすぐ脇をすり抜け、ジムの背後まで吹っ飛ばされてしまった。


千歌「!! バクフーン!!」
 「バ、バクフー……」

千歌「……! 戻って、バクフーン」


戦闘不能だ。バクフーンをボールに戻す。

どう見ても、ただの頭突きだったのに……なんて威力だろう。


英玲奈「……オニシズクモの特性は“すいほう”。炎から受けるダメージを減らし、水の威力を倍増させる」

千歌「……っく……」


私の手持ちにはみずタイプに有利なポケモンが居ない。

……なら、


千歌「目には目をだよね! 水には水で! フローゼル!!」
 「ゼルルルッ!!!!!!」


フローゼルを繰り出す。


千歌「“ハイドロポンプ”!!!」
 「ゼーーールゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」


バクフーンを倒したばかりで、まだ距離の取れていないオニシズクモに向かって、フローゼルから強力な水流が放たれる。


英玲奈「“アクアブレイク”!!」

 「シズ、クモ」


だが、オニシズクモが再び水泡を被った頭を振るうと、


千歌「う、うそ!?」


大きな衝撃と共に、“ハイドロポンプ”を頭突きで消し飛ばす。


英玲奈「“とびかかる”!!」
 「シズ、ク」

千歌「……っ! “こうそくいどう”!!」
 「ゼルゥーー!!!!!」


跳びかかって来るオニシズクモの下をすり抜けるように、フローゼルがダッシュする。

さっきのペンドラーとは打って変わって、動きは遅いのに、こちらの攻撃がうまく通らない。


 「シズ、ク」


オニシズクモはフィールド中央に躍り出たフローゼルの方向へ、のそのそと振り返り、
297 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:51:46.14 ID:E6ygtKl90

英玲奈「“アクアブレイク”!!」

千歌「!?」

 「シズ、クモ」


その場で水泡を被った頭を地面に叩き付ける。

水泡から一気にエネルギーがあふれ出し、見た目からは想像の出来ないようなとてつもない衝撃波が放射状に広がり、ジム内の床ごと、巻き込んで──


 「ゼルゥッ!!!」


フローゼルを吹き飛ばした。


千歌「む、むちゃくちゃすぎる!?」


本当に冗談みたいな破壊力だ。

あんな破壊力の技、至近距離で食らったら、みずタイプのフローゼルでもひとたまりもない。


 「ゼ、ゼルゥッ!!!!!」


吹っ飛ばされながらも、どうにか体勢を立て直すフローゼルに向かって。


 「シズ、クモ」


オニシズクモが前進していく。

──どうする……?

動きは遅いが、火力が大きすぎて、避けることもままならない。

かといって、近接戦闘なんてもってのほかだ。


千歌「あの“すいほう”……厄介すぎる」


オニシズクモは頭に被った“すいほう”を自在に操って、攻防をこなしている。

あれがある限り、こちらは手も足も出ない。

……いや、


千歌「なら……“すいほう”を壊せばいいんじゃ」


フィールド中央で迫ってくるオニシズクモと対峙したままのフローゼルと目が逢う。


 「ゼルッ」


フローゼルは私の目を見ただけで、意を汲んでくれたのか、尻尾のスクリューを高速回転させ始める。


千歌「! わかった、やろう!!」

 「ゼルッ!!!!」


フローゼルは私の手持ちの中では、付き合いが一番短い。

海未師匠との修行にも参加してない分、必殺の一撃が使えるかの不安はあったが──


 「ゼルルルルッ!!!!!」


フローゼルの周囲で空気が渦巻く。
298 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:54:02.41 ID:E6ygtKl90

千歌「フローゼル!! キミのやる気を尊重するよ!」

 「ゼルルッ!!!!!」

千歌「……ふぅー……」


集中、位置関係を把握しろ。

オニシズクモは私とフローゼルに挟まれた立ち位置のまま、私に背を向けて、フローゼルにゆっくり迫っている。


英玲奈「……何かしようとしているな」


英玲奈さんが私たちの様子に何かを感づいたようだ。


英玲奈「だが、させんぞ……! オニシズクモ!! “アクアブレイク”!!」

 「シズク、モ」


オニシズクモが水泡を地面に向かって振り下ろす。

その瞬間、攻撃に移行しようとして、水泡内の水が一瞬だけ外に向かって溢れ出す──


千歌「──そこ!!! “かまいたち”!!」

 「ゼーールゥッ!!!!!!」


フローゼルの周囲の空気が刃となって飛び出した。


英玲奈「……!」


その刃はオニシズクモの“すいほう”の中に飛び込み、


 「シズ…」


水泡で守られていたオニシズクモの頭部を直接切り裂く。


 「シズ、ズ」

千歌「効いてる……!!」


やっぱり読みは外れてなかった。

攻撃の瞬間、あの水泡は外に向かってエネルギーを放出する。

その一瞬だけは、水泡の膜を通りぬけやすくなるんだ……!


英玲奈「なるほど、考えたな。だが」

 「シズ、クモ……」

英玲奈「威力不足だ」

 「クモ」


オニシズクモはそのまま、頭を振るって、


 「ゼルッ!!!」


“アクアブレイク”を地面に打ち付け、先ほど同様フィールドごと、フローゼルを吹き飛ばす。


千歌「……!!」

 「ゼルッ!!!!」
299 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:55:04.49 ID:E6ygtKl90

吹き飛ばされたフローゼルは地面に叩き付けられ、


 「ゼ、ゼル……!!!!」


もはや満身創痍だ。


英玲奈「……さあ、トドメだ、オニシズクモ!!」

 「ク、モ」


オニシズクモが再び、頭を揺らす──が、


 「ク、モモ」


オニシズクモの動きが止まった。


英玲奈「……!? どうした、オニシズクモ!?」

千歌「……ふっふっふ、さっきの“かまいたち”、ただ攻撃するためだけの技じゃないんですよ!」

英玲奈「なに……?」


気付けば、オニシズクモの“すいほう”の中に──


英玲奈「……気泡……まさか!?」

千歌「そう!! フローゼルがオニシズクモの“すいほう”の中に飛び込ませたのは──空気の渦です!!」


渦巻いた空気をそのまま、オニシズクモの“すいほう”に飛び込ませ、その暴れる空気は──


 「シズ、クゥゥモ」


オニシズクモの“すいほう”を内側から、破く……!!


英玲奈「!! オニシズクモ!!」

 「シズ、ク……」


内側から無理矢理“すいほう”の膜を破いた結果、針を刺された風船のように形を維持できず割れてしまう。

“すいほう”を失ったオニシズクモは、


 「シ、ズ……ク」


“すいほう”がなくなって呼吸が出来なくなったのが、その場に引っくり返ってしまった。


英玲奈「……戻れ」

千歌「……よし!!」

 「ゼルゥ……!!!」


二匹目、オニシズクモを突破。


英玲奈「……クワガノン!!」
 「クワガーーー」


英玲奈さんが次のボールを放る。


千歌「フローゼル!! 一旦戻っておいで!!」

 「ゼルッ」
300 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:56:08.28 ID:E6ygtKl90

息を切らしたフローゼルが、私の方へと走り出す。

だが、英玲奈さんはそれを許さない。


英玲奈「“エレキネット”!!」
 「クワガーーー」


クワガノンから、電撃を帯びたネットが発射され──


 「ゼ、ゼルゥッ!!!?」


上空で広がって、逃げるフローゼルを捉える。


千歌「フローゼル!! 尻尾のスクリューで吹っ飛ばして!!」

 「ゼ、ゼルゥゥゥゥ!!!!!」


電撃を食らいながらも、どうにか気合いで尻尾を振り回すが──


英玲奈「逃がすか……! クワガノン!」
 「クワガーーー」


クワガノンの突き出された顎の間にバチバチと火花が爆ぜ、エネルギーがチャージされていく。


英玲奈「“でんじほう”!!」
 「クワガーーー!!!!!!」


チャージされたエネルギーは電撃弾となって、ネットの中でもがく、フローゼルに向かって発射された。


 「ゼルゥゥゥゥゥ!!!!!?」

千歌「!! フローゼル!!」


強力な“でんじほう”を食らった、フローゼルは──


 「ゼ、ル……」


健闘虚しく戦闘不能だ。


千歌「……よく頑張ったね、フローゼル。ボールに戻って、休んで」


私はフローゼルをボールに戻した。

次のポケモンを繰り出す前に図鑑を開く。


 『クワガノン くわがたポケモン 高さ:1.5m 重さ:45.0kg
  腹部に 発電器官を 持ち 大アゴに エネルギーを 集め
  凄まじい 電気を 放つ。 アクロバティックな 飛行で 敵を
  撹乱しながら 放つ 電撃ビームは とりポケモンも 圧倒する。』


千歌「クワガノン……でんきタイプのポケモン」


英玲奈さんはここまでの手持ちを見る限り、どうやらむしタイプのジムリーダーのようだ。

だけど、むしタイプでありながらも、バクフーンにはみずタイプ、フローゼルにはでんきタイプと、もう一個のタイプで確実に弱点を突いてきている。

一匹一匹が純粋に強いだけじゃなく、手堅い指示と戦略で戦うトレーナーのようだ。

……さて、でんきタイプを無効化出来るじめんタイプの手持ちは持っていない。

なら、
301 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:57:06.10 ID:E6ygtKl90

千歌「ここからは切り札で圧倒する……!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオを繰り出す。そして、頭の右側で自分の髪を留めている“メガバレッタ”に触れる。


千歌「メガシンカ!!」
 「──グゥォ……!!!」


メガバレッタと共にルカリオが光り輝き、メガルカリオに姿を変える。


英玲奈「メガシンカ……!! いいだろう、クワガノン!! “かみなり”だ!!」
 「クワガーーー……」


クワガノンのアゴがバチバチとスパークすると、それに反応するかのようにジムの天井に稲光が走る。

──雷の予兆。


千歌「ルカリオ!」
 「グゥァッ!!!!!」


ルカリオは“ボーンラッシュ”の要領で作り出した、骨状に固めた波導を、

床に突き刺す、

次の瞬間──落ちてきた、雷は、


英玲奈「! なるほど……よく考えている」


──その骨に向かって落ちてくる。


英玲奈「即席の避雷針というわけか! クワガノン、“アクロバット”!!」
 「クワガーーー!!!!!」


今度はクワガノンが高速で飛び周り撹乱するような動きで近付いてくる。


千歌「ルカリオ、落ち着いて」
 「グゥォ」

千歌「落ち着いて……狙いを定めて──」
 「グゥァ」

千歌「“はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!」

 「クワガッ」


“はどうだん”は飛び回るクワガノンをしっかり捉え、迎撃する。


英玲奈「っく……“でんじほう”!!」
 「クワガーーー!!!!!」


再び撃ち出される強力な“でんじほう”


 「グゥァッ!!!!」


ルカリオは先ほど突きたて、避雷針にした骨を引き抜いて、そのまま上に振り抜く形で──

──バチン! “でんじほう”を上に向かって弾き飛ばす。


英玲奈「“ハサミギロチン”!!」
 「クワガーーーー!!!!!!」
302 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:58:25.75 ID:E6ygtKl90

一撃必殺のアゴを構え、飛び出してくる。

──落ち着いて。

攻撃の軌道を読め──


 「クワガーーー!!!!!」

千歌「ルカリオ!! そこ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


開かれたハサミの丁度真ん中──


千歌「“はっけい”!!」
 「グゥォッ」


ルカリオの突き出した腕にぶつかると同時に、クワガノンはハサミを閉じ──る暇もなく、


 「ガーーーーッ!!!!!!」


波導のパワーによって、後ろの方に吹っ飛ばされたのだった。


英玲奈「クワガノン!」
 「クワ、ガーー……」


吹っ飛ばされ、ジムの壁に激突したクワガノン。戦闘不能だ。


英玲奈「……強力だな、メガシンカのパワーは」

千歌「私の自慢の手持ちです!」

英玲奈「……そうか、なら止むを得ない。だが、負けるつもりはない、行くぞシュバルゴ!!」
 「シュバーールゴッ!!!!!」


英玲奈さんの4匹目はシュバルゴ。

 『シュバルゴ きへいポケモン 高さ:1.0m 重さ:33.0kg
  高速で 飛び周り 鋭い 槍で 相手を 突く。 不利な
  相手にも 勇敢に 立ち向かう。 チョボマキから 奪った
  殻で 出来た 鋼鉄の よろいが 全身を ガードする。』


 「シュバルッ!!!!」


シュバルゴは図鑑通り、高速で飛びながら、ルカリオに迫ってくる。


英玲奈「“ダブルニードル”!!」
 「シュバルッ!!!!!」


シュバルゴは両手の槍を突き出しての刺突攻撃。


千歌「ルカリオ! 受け止めて!」
 「グゥォッ!!!!!」


それを真正面から、両の手で受け止める。

二本の槍はルカリオを刺すか刺されるかの競り合いになる。


 「シュバァァルッ!!!!!」


シュバルゴが気合いとパワーで一気に槍を前に突き出すが──


千歌「“アイアンヘッド”!!」
 「グゥォッ!!!!」
303 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 12:59:32.85 ID:E6ygtKl90

ルカリオは組み合った状態のまま、頭を使って、シュバルゴに頭突きをかます。


 「シュバッ……!!!」


相手が一瞬怯んだところに、


千歌「“ブレイズキック”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


炎の蹴撃を踵落としの要領で振り下ろす。


英玲奈「“てっぺき”!!」

 「シュバルッ!!!!」


シュバルゴは咄嗟に身体をちぢこませ、鎧で攻撃をガードする。

──ガインッ!! と硬いガードで弾かれ、ルカリオの脚が浮く。

その隙にすかさず、


英玲奈「“ドリルライナー”!!」

 「シュバッ!!!!!」


回転させた一槍がルカリオを襲う。

体勢を崩したルカリオは回避が出来ない。


千歌「ルカリオ!! 掴め!!」
 「グゥォッ!!!!!」

英玲奈「なに!?」


回転しながら、突き出される槍を──無理矢理グリップする。

その勢いでルカリオの身体が回転槍に合わせて、振り回されるが──


 「グゥォッ!!!!!!!!!」


丁度一回転して、自分の足が地面を向くタイミングで無理矢理着地し、震脚しながら、地面を踏みしめる。

無理矢理槍を握力で止めたことによって回転したままの槍を持ったシュバルゴは──


 「シュ、シュバアアア」


今度は彼自身がその回転によって、槍以外の部分が振り回されることになる。


千歌「上に向かって、投げ飛ばせ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


“かいりき”を使って、シュバルゴを無理矢理中空に放り投げる。


 「シュ、シュバァァァ」

英玲奈「シュバルゴ!! 落ち着け!!」


回転によって目を回し、更に空中に放り投げられ、体勢を整える余裕がないシュバルゴに向かって──


千歌「“スカイアッパー”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオが狙いを定めて飛び出し──鎧と鎧の間にアッパーを叩き込んだ。
304 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 13:01:11.55 ID:E6ygtKl90

 「シュ、バアアッ!!!!!」


攻撃がクリーンヒットしたシュバルゴは、回転しながら吹っ飛び、

──ズシン、と重鈍な音を立てながら、地面に墜落した。


英玲奈「……戻れ、シュバルゴ」

千歌「よっし!! ルカリオ!! 二匹抜き!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオがクワガノンとシュバルゴを続けて倒したことによって、英玲奈さんの手持ちは残り一匹。


英玲奈「ふふ……君は強いトレーナーだな」


英玲奈さんは負けているのに何故だか楽しそうに笑う。


千歌「え? い、いやそれほどでも……」

英玲奈「なら……私も切り札を使わせてもらおう」

千歌「! 切り札……!」


英玲奈さんがボールを放る。


英玲奈「行くぞ、スピアー!!」
 「ブブブーン」

千歌「スピアー!?」


出てきた、英玲奈さん最後のポケモンはスピアー。

スピアーなら知っている。1番道路でもビードルの巣の近くだと稀に見るポケモンだ。


英玲奈「メガシンカだ!!」
 「ブブブーンッ」

千歌「!!」


英玲奈さんの腕にあるメガブレスレットが光り輝く。

そして、それに呼応するようにスピアーが光に包まれる。

光が晴れると──


 「ブブブーーンッ」


スピアーがメガシンカした姿。

丸っこい身体がスマートになり、硬く鋭いフォルムへと変貌し、

3本だった毒針は5本になる。


 『メガスピアー どくばちポケモン 高さ:1.4m 重さ:40.5kg
  メガシンカに よって 両手と お尻にあった 3本の 毒針が
  5本に なり さらに 強力な 毒素を 出すように なった。
  凶暴性が 更に 増し 相手が 動かなくなるまで 刺しまくる。』


千歌「メガシンカ……!!」

英玲奈「スピアー!! “ミサイルばり”!!」
 「ブブブーンッ」


スピアーがお尻と、真ん中の2本の腕──計3つの針先を撃ち出して飛ばしてくる。
305 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 13:02:25.15 ID:E6ygtKl90

千歌「ルカリオ!! 迎撃!!」
 「グゥォ!!!」


再び骨型波導の得物を手に持って、迎え撃つ。


千歌「“ボーンラッシュ”!!」
 「グォッ!!!!」


武器をブンブンと回転させ、飛んで来る針を撃ち落と──


 「グォァッ!!?」

千歌「!?」


──そうと思い、“ミサイルばり”を得物で弾いた瞬間、

思い描いていたような反射にならず、逆にその攻撃の威力に押され、得物を弾かれる。


千歌「ま、まずっ──!?」


そこに向かって、後続の針がルカリオに襲い掛かってくる。


 「グゥォッ!!!?」

千歌「ル、ルカリオ!!」


避けきれずに“ミサイルばり”が直撃し、吹っ飛ばされるルカリオに向かって、


 「ブブブーンッ」


スピアーが猛スピードで迫る。


 「グゥォッ!!!」


床を転がりながらも咄嗟に受身を取って、体勢を整える。


 「ブブーーーーンッ」


迫るスピアー。

逃げ場はない。


千歌「迎え撃て!! “はっけい”!!」
 「グゥォッ!!!!!」

英玲奈「“とどめばり”!!」
 「ブーーーーンッ」


スピアーがお尻の針を突き出してくる。

ルカリオは波導を腕に集中させ、構える。

──二匹の攻撃が交差した。

二匹がすれ違い、スピアーはルカリオの背後に飛び立ちながら、サマーソルトして英玲奈さんの前方辺りに戻って行く。

一方──


 「グゥ…ォ…」


ルカリオは膝から崩れ落ちた。


千歌「……ルカリオ!!」
306 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 13:04:05.31 ID:E6ygtKl90

咄嗟の指示でうまく相手の急所が見抜けなかった。

結果、逆に急所を晒し、スピアーに一方的に撃ち負けてしまったようだった。


千歌「……ごめんね、ルカリオ……私の判断ミスだ。戻って休んで」


ルカリオをボールに戻す。


英玲奈「……ルカリオが切り札だと言っていたな。切り札不在で私のスピアーを倒せるかな?」

千歌「……行くよ!! ムクホーク!!」
 「ピィィィィ!!!!!!」


ムクホークが私の元から飛び出す。


千歌「“すてみタックル”!!」
 「ピィィィ!!!!!!」


いつも通りムクホークが猛スピードで飛び出す。


英玲奈「スピアー!! “どくづき”!!」
 「ブブーーーンッ!!!!」


前方に突き出されるスピアーの毒針。

一直線に、ムクホークのクチバシとスピアーの毒針がぶつかり合い。

直後──ヒュン、と私のすぐ横を猛スピードで何かが通り過ぎた。


千歌「……え?」


目を見開く。

驚いたまま、振り返ると、


 「ピ、ピィィィ……」


ムクホークが倒れていた。


千歌「……え……え……?」


パワーが自慢のムクホークが、吹っ飛ばされていた。


千歌「完全に力負けした……? しかも、一撃で……?」


一瞬にして数の有利を詰められてしまった。


英玲奈「先ほどルカリオを倒した“とどめばり”という技を覚えているか?」

千歌「“とどめばり”……」

英玲奈「あの技は、相手にトドメをさせたとき、使ったポケモンの攻撃力を爆発的に上昇させる技だ」

千歌「……!」


ただでさえ、想像の何倍も上を行く攻撃力だったのに、それが更に上昇してしまったということだ。

だから、ムクホークのパワーでも歯が立たなかった。


英玲奈「……さあ、次が最後のポケモンだな」

千歌「……」
307 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 13:05:18.10 ID:E6ygtKl90

最後の最後で絶望的なパワーの差を見せ付けられる。

どうする……?

そのとき、

──カタカタと、腰のボールが震える。


千歌「……ルガルガン」


ルガルガンのボールだった。

戦いに出せと言っているのかもしれない。


千歌「……わかった、ルガルガン!! お願い!!」


私はルガルガンを繰り出す。

ボールから飛び出した、ルガルガンは──


 「……」


落ち着いていた。


千歌「ルガルガン……?」


戦闘に出ることを自ら望んでいたことから、勝手に戦意が高揚しているものだと思い込んでいたけど、


 「ワォン」

千歌「……」


ルガルガンは小さく鳴き声をあげながら、こちらに流し目を配らせてくる。

まるで、私に向かって「落ち着け」とでも言わんばかりに、


千歌「……そうだね。焦っても仕方ないもんね」


私は呼吸を落ち着けるために、


千歌「……すぅー…………はぁー…………」


いつものように深呼吸をする。

酸素が全身に巡ってきて、なんだか視界も思考も少しだけ、すっきりしてくる。

──相手の攻撃は猛スピードから繰り出される針による刺突攻撃。

避けるのは実際問題難しい。

なら受け止めるしかない。


英玲奈「……落ち着いているところ、悪いが、攻撃させて貰うぞ……!! “ミサイルばり”!!」
 「ブブブブーンッ!!!!!」


再び、“ミサイルばり”が飛んで来る。

私は目をしっかり開き、

真っ直ぐ指を指す。


千歌「……一発たりとも針を通さない」


飛んで来る針の先端に向かって──
308 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 13:06:10.56 ID:E6ygtKl90

千歌「“ストーンエッジ”!!」
 「ワゥッ!!!!」


ルガルガンが脚を踏み鳴らすと、フィールド上に鋭い岩が飛び出す。

その鋭い岩の頂点は──


英玲奈「……な!?」


“ミサイルばり”の頂点と完璧に頂点同士をぶつけ合い、威力を完璧に殺してみせる。

更に続け様に飛んで来る“ミサイルばり”に対しても、

同様に頂点を完璧にあわせて──


千歌「……これなら、いける!!」

英玲奈「完璧に見切ったということか……!! 面白い……!!」


“ミサイルばり”が通用しないとわかった瞬間、スピアーが突っ込んでくる。


英玲奈「“ダブルニードル”!!」
 「ブブブーンッ!!!!!」


スピアーは今度は両の腕の針で攻撃をしてくる。

……が、


千歌「ルガルガン……」
 「ワォンッ」


ルガルガンは自分の頭頂にある、長く鋭い岩のタテガミを構えて、

──コーンッ!!


英玲奈「……!!」


先ほど同様、完璧に真正面から頂点同士をぶつけると、小気味の良い音がフィールド上に響き渡る。

この音が、無駄なく刺突の威力を相殺できた証拠だ。


英玲奈「まだだ!!」


“ダブルニードル”の二撃目──

──コーンッ!!


千歌「……ふぅー……」


もっとだ──もっと集中しろ。

ルガルガンと息を合わせて、

相手の攻撃の軌道を見切れ、

一発でも食らったらダメなら、一発も食らわなければいいだけだ。


英玲奈「……そんなピンポイントな技が何度も続くわけないだろう……!! “みだれづき”!!」
 「ブブブブーンッ!!!!!」
309 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 13:07:42.50 ID:E6ygtKl90

スピアーが4本の腕を使って連続で突いてくる。

──そのとき、何故だか。

クリアな思考の中で、これからスピアーが攻撃してくる軌道が『わかる気がした』。

──コンッ、コンッ、コンッ、コーンッ!!!


英玲奈「な……!!」


──あぁ、この感じ、思い出した。

パルキアの攻撃を切り裂いたときと同じ感覚だ。

自分の集中が最大限まで高められて、

ポケモンと意識が同調している感じがする。

今なら──


千歌「……失敗する気がしない」

英玲奈「“ダブルニードル”!!」
 「ブーーーンッ!!!!!」


──コーンッ!! コーンッ!!

次の攻撃も綺麗に相殺し、


英玲奈「“とどめばり”!!!」
 「ブーーンッ!!!!!」


咄嗟に飛び出てきた、お尻の針に──


 「ワォン」


ルガルガンが綺麗に、一直線に、岩のタテガミをぶつけると、

──ピシリ、

スピアーのお尻の針にヒビが入る。

そして、そのまま──


 「ブゥ……ンッ……」


針の先から、身体の芯まで一直線に伝わる衝撃を全身に受けたスピアーは……静かに崩れ落ちた。


千歌「…………」

英玲奈「……なん……だと……」

千歌「……勝った」


勝利したという達成感か、安心したのか、急に足腰から力が抜けて、その場にへたり込む。


 「ワォン」


そんな私の元にルガルガンが駆け寄ってくる。


千歌「あはは、大丈夫だよ、ルガルガン。ちょっと安心したら、力が抜けちゃっただけだから……」
 「ワォン」


ルガルガンが身を寄せてくる。私は労うようにルガルガンを撫でてあげる。


英玲奈「……一つ聞きたい」
310 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 13:09:13.85 ID:E6ygtKl90

バトルフィールドを挟んで向かい側から、英玲奈さんがスピアーをボールに戻しながら訊ねて来る。


千歌「?」

英玲奈「どうして、キミは……あんなリスクのある技を何度も決められると思ったんだ? 本当に一発でも攻撃が通れば、こちらの勝ちは揺るぎなかった……」

千歌「どうして……か」

英玲奈「普通だったら……いかに選択肢を拡げて、どう対抗するかを考えるものだと思うのだが……」

千歌「……うーん」


そう言われて悩む。


千歌「……なんか、出来る気がしたから……?」


悩んだ末、私の中で出た結論はそれだった。

私の回答を聞いた英玲奈さんが、


英玲奈「……ふ──ふははははっ!! そうか、出来る気がしたのなら仕方ないな!」


頭に手を当てながら、可笑しそうに笑う。


英玲奈「キミは私が思った以上に強いトレーナーだったようだ」


英玲奈さんはそう言って、私の方に歩いてくる。

そして、上着のポケットから──ソレを取り出して、


英玲奈「千歌。キミをクロユリジム公認トレーナーとして、この──」


へたり込んだままの私の前で膝を折って、手渡してくれる。


英玲奈「──“スティングバッジ”を進呈しよう」

千歌「……はい!」


ハチの針を象ったような意匠のバッジを手渡される。


千歌「……これで、8つ目……!」


ついに、8つ目のバッジを手に入れた。


英玲奈「バッジを全てそろえたトレーナーとしての実力を認め、今後全てのポケモンがキミの言うことを聴くだろう。更に、その実力を認め、ここから東にあるウテナシティ、ポケモンリーグへの挑戦権が与えられる」

千歌「ポケモンリーグ……!」

英玲奈「ウテナシティは18番道路を戻り、16番道路を東に、そこから繋がる17番水道を北上した先、チャンピオンロードを言われる山道を抜けた先だ」

千歌「はい……!!」


ついに師匠が待つ、ポケモンリーグへと行くことが出来る……!


英玲奈「ポケモンリーグで四天王たちと……存分に覇を競うと良い」

千歌「はい!」


こうして、私はついに──オトノキ地方全てのポケモンジムを制覇し、全てのジムバッジを揃え……次の目的地、チャンピオンロードへと赴くのでした。



311 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/16(木) 13:10:13.67 ID:E6ygtKl90


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【クロユリシティ】
 口================= 口
  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    ●     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.58  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.52 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.57 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.56 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.61 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.54 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:169匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.



312 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:28:30.78 ID:dd6+2abs0

■Chapter085 『決戦! ライバル!』 【SIDE Chika】





──17番水道を北上していると……その先に見えてくる。


千歌「山……あれが、チャンピオンロード……!」
 「ゼル」


フローゼルの“なみのり”で移動しながら、やっと次なる目的地に辿り着く。

岸に着いた私はフローゼルをボールに戻しながら、思わず見上げてしまう。


千歌「おっきな山……!」


チャンピオンロードはポケモンリーグに挑むトレーナーたちの最後の壁として立ちはだかる険しい山だと聞いた。

確かに最後の壁と言うのに相応しい迫力がある。


千歌「……よし」


私は一人意気込んで、その山に向かって歩き出した。





    *    *    *





しばらく歩くと、大きな山の麓にぽっかりと大きな口が開けているのが見えてきた。

あの洞窟から入って、山道を抜けていくようだ。

山道らしく砂利の増えてきた道を踏みしめていると──


──pipipipipipipipi!!!!!


千歌「わ!? な、なに!?」


聞き覚えのある大きな音がポケットから聞こえてくる。

これって、確か……。


千歌「図鑑の共鳴音……?」


言いながら図鑑を取り出すと、確かにけたたましい音をあげて鳴っている。


千歌「……図鑑が共鳴音を鳴らしてる……ってことは……!」


私は自然と駆け足になる。

だんだんと近付いてくる洞窟の入口の前には──人影が二つ。


梨子「……やっときたね」

曜「千歌ちゃん、久しぶり!」

千歌「梨子ちゃん! 曜ちゃん!」
313 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:30:06.75 ID:dd6+2abs0

他の誰でもない。

私と一緒に図鑑と最初のポケモンを貰った、梨子ちゃんと曜ちゃんの姿だった。


千歌「二人ともどうしてここに!?」

梨子「ふふ、千歌ちゃんが来るのを待ってたんだよね」

曜「うん!」

千歌「私を……?」


首を傾げていてると、


曜「千歌ちゃん……これ見て!」


曜ちゃんがバッグの中から──荘厳な雰囲気のあるリボンを取り出した。


千歌「なんか……すごいリボン……」

梨子「そのリボン、コンテストで優勝してもらえるリボンなんだって」

千歌「コンテスト……優勝……ものすごいリボン……まさか……!」

曜「うん!」


曜ちゃんが嬉しそうに頷く。


曜「私……グランドフェスティバルで優勝したんだよ!」


グランドフェスティバル……確か、一番優れたコーディネーターを決める大会のことだ。前に志満姉がそんなことを言っていた気がする。

つまり──


千歌「曜ちゃん……この地方で一番になっちゃったってこと!?」

曜「えへへ……そうであります! オトノキ地方のコンテストクイーンです!」

千歌「すごい!! ホントにすごいよ、曜ちゃん!!!」


驚きの声をあげながら、思わずぴょんぴょん跳ねてしまう。


曜「うん!! えへへ、千歌ちゃんに早く報告がしたくて……チャンピオンロードの入口で待ってたら来ると思ってたから。……そしたら、梨子ちゃんも居てね」

梨子「──私と同じこと考えてたみたいで、曜ちゃんと二人で千歌ちゃんのこと待ってたの」

千歌「そっかぁ……ここまで来たってことは、梨子ちゃんも……」

梨子「……うん!」


梨子ちゃんはバッグから、バッジケースを取り出し、開いて見せてくれる。

──そこには、輝く8つのバッジ。


梨子「ポケモンジム。全部制覇してきたよ」

千歌「そっか……!!」


……あれ、でも……。
314 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:33:00.86 ID:dd6+2abs0

千歌「……? じゃあ、どうしてここで待ってたの? チャンピオンロードを越えないといけないのに……」

梨子「んっとね……それなんだけど」

千歌「?」

梨子「このチャンピオンロードを越えた先には、最後の街ウテナシティがあるって言うのは知ってるよね」

千歌「うん。そこにポケモンリーグがあるんだよね」

梨子「そうだね。そこで四天王と戦って……勝ち抜いたらチャンピオンになれる。……でも、私思ったの」

千歌「?」

梨子「チャンピオンになれるのって……一人だよね」

千歌「……まあ……そうなのかな……?」


チャンピオンってくらいだし……一人しかいない気がする。


梨子「それってつまり……私が先に四天王に挑戦して、仮に勝ち抜けたとしても、すぐに千歌ちゃんも挑戦に来るってことでしょ?」

千歌「……確かに」


お互い四天王に勝てるかはともかく、確かに最終的に行き着くのはチャンピオンの椅子だ。


梨子「だからさ……どうせなら、先にやっちゃってもいいかなって」

千歌「先に……?」

梨子「千歌ちゃんと私……どっちが強いかを」

千歌「……!」


……つまり……。


梨子「勝った方が四天王に挑戦する。……どうかな?」

千歌「……ふふ」

梨子「千歌ちゃん?」

千歌「チャンピオンってことは、この地方で一番強いトレーナーってことだもんね! ここで梨子ちゃんに負けるようじゃ、チャンピオンは名乗れないもん! いいよ! その話乗った!!」

梨子「ふふ、千歌ちゃんならそう言ってくれると思った」

千歌「でも、私。強いよ?」

梨子「あら? 1番道路で私にコテンパンにされたのは誰だったかしら?」

千歌「ふふ……あのときがもう随分昔な気がするね」

梨子「……そうだね」

千歌「……自分で言うのもなんだけど、あのときからは考えられないくらい強くなったよ」

梨子「うん。私も強くなった」


二人で自然とボールを腰から外して、お互いに突きつけるようなポーズを取る。


千歌「今回は負けないよ」
梨子「今回も負けないわ」


ここまで、一緒に旅に出て、ときに競い合い、ときに手を取り合い、一緒に戦った梨子ちゃん──ライバルとの最終戦。


曜「それじゃ、二人の最終戦はこの曜ちゃんが立会人になるよ!」

千歌「うん!」

梨子「お願いね」

曜「ルールはお互い手持ち6匹を自由に使って戦うフリーバトル! そして、バトルフィールドは──」
315 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:34:34.11 ID:dd6+2abs0

曜ちゃんが目の前に拡がる、大きな山を示すように、バッと両手を広げる。


曜「このチャンピオンロード全域!」


戦いのステージはこの険しい山道と洞窟、全てだ。


曜「なんでもありのフリーバトル!! 最後に立っていた方が勝ち!! それでいい?」

梨子「ええ、問題ないわ」

千歌「それが一番シンプルだもんね!」

曜「何かあっても私が介抱してあげるから、二人とも全力で戦って大丈夫だからね!」


立会人がいるお陰で本気でぶつかり合える。


曜「ふふ♪ こうして千歌ちゃんと梨子ちゃんが戦って、私が立会人して……なんか、本当に1番道路のときみたいだね」

千歌「あはは、そうかも」

梨子「ふふ、そうだね」


なんだか、なつかしくて三人で顔を見合わせて笑ってしまう。


千歌「梨子ちゃん」

梨子「ん?」

千歌「ホンキで行くよ」

梨子「ええ、もちろん!」

曜「二人とも準備はいい!?」

千歌「うん!」

梨子「ええ!」


改めて、二人でボールを構える。


曜「それじゃ行くよーーー!!! レディーーーーGO!!!!」


曜ちゃんの掛け声と共に──二つのボールが放られた。





    *    *    *


316 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:35:52.77 ID:dd6+2abs0


千歌「しいたけ!!」
 「ワォンッ!!!!」

梨子「メブキジカ!!」
 「ブルルッ!!!!!」


お互い最初の一匹目はしいたけとメブキジカ。


梨子「メブキジカ!! “メガホーン”!!」
 「ブルルッ!!!!!」


先手はメブキジカ。ツノを前に突き出して突進してくる。


千歌「しいたけ!! “ずつき”!!!」
 「ワォンッ!!!!!」


真っ向から打ち合う……!!

しいたけも頭を下げて、前傾で突進する。

──ガスン!!

しいたけの頭と、メブキジカのツノが衝突し、競り合う。


 「ブルル……ッ!!!!!」

 「ワォンッ……!!!!」


梨子「メブキジカ! “タネばくだん”!!」

千歌「!」

 「ブルルッ!!!!!」


組み合った状態のまま、メブキジカが強引に頭を振るうと、ツノからタネが飛び散る。

──ボンボンボンッ!!! と周囲に飛び散ったタネが爆発を起こす。


 「ワゥッ!!!!」


爆発に怯むしいたけに、


 「ブルルッ」


メブキジカはステップを踏むように、背を向ける。


梨子「“とびげり”!!」

千歌「“コットンガード”!!」
 「ワッフッ!!!!!」


後方を強靭な脚力で蹴り上げてくるキック攻撃を、

──ボフンッ

体毛を膨張させて受け止める。


千歌「“かみつく”!!」
 「ワゥッ!!!!」

 「ブルルッ!!!?」


むしろ、そのまま受け止めた脚に噛み付いて反撃する。
317 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:38:54.23 ID:dd6+2abs0

梨子「焦らないで! “ふみつけ”!」
 「ブルルッ!!!!!」


メブキジカは噛み付かれたのとは逆の脚で、しいたけを足蹴にする。


 「ワゥッ」


それに怯み、しいたけが後方に押しのけられる。

次の瞬間、メブキジカが再び後ろ足で蹴り上げようとしてきて、


千歌「! しいたけ! また来るよ!」
 「ワッフッ!!!!」


すかさず“かみつく”の体勢。

だが、


 「ブルル」


メブキジカはあげようとしていた脚を下ろし、


千歌「!?」


そのまま、身を翻しながら、ツノを使ってしいたけの横っ面を引っぱたく。


 「ワッフッ!!!?」
千歌「くっ!? “だましうち”!?」


軽くノックバックをしつつ、地面を踏ん張るしいたけに、


 「ブルルッ!!!!」


再び、ツノを突き立ててメブキジカが突進してくる。


梨子「“ウッドホーン”!!」
 「ブルルッ!!!」


──ガスンッ と音を立て、再びメブキジカのツノが突き刺さる。

そのまま体勢を崩した、しいたけにツノを突きたてながら押さえつけてくる。


 「ワゥッ……!!!!!」

千歌「しいたけ!! 頑張って!!」
 「ワゥゥゥ……!!!」


どうにか根性で足腰にパワーを込めながら、少しずつ立ち上がるが、


 「ワッフッ……ッ」


しいたけの脚がガクリと落ちる。


千歌「しいたけ!!」

梨子「ふふ……“ウッドホーン”が効いてるね」

千歌「……っ HPを吸収されてる……っ!」

梨子「まるで、最初のバトルの再現ね……でも、今はこれだけじゃ終わらないわ!! “ギガドレイン”!!」
 「ブルルッ!!!!!」
318 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:40:50.44 ID:dd6+2abs0

更に身動きが取れない状態から畳み掛けるように、メブキジカはしいたけからエネルギーを吸収する。


 「ワ、ワゥ……」

千歌「しいたけ……!!」

梨子「さぁ、どうする、千歌ちゃん!?」

千歌「く、くそぉ……打つ手が……」


押さえつけられている上にHPを吸われ続けているせいで反撃が出来ない──


千歌「──なーんちゃって!」

 「……ブルルッ……」
梨子「!?」


メブキジカの膝が急にガクリと落ちる。


梨子「メブキジカ!?」

千歌「しいたけ!! “アイアンテール”!!」
 「ワゥッ……!!!!!」

 「ブルルッ……!!!」


しいたけは思いっきり全身を使って身体を回転させ、尻尾を振るい、今度こそメブキジカを追い払う。


梨子「い、いったい何を……!!」
 「ブルル……ッ」


苦しげな表情をするメブキジカを見て、


梨子「……これは……どく状態……?……まさか、“どくどく”……!!」

千歌「ふふん、正解っ!」


一瞬で見抜いてくるのはさすがだけど、こっちも組み合う形での吸収技に対してなら、とっくに対策が出来てるもんね!

ただ──


 「ワ、ッフ……!!!」


もう随分ダメージを負ってしまった。

そしてそれは、


 「ブルル……!!」


メブキジカも同様。


梨子「“もうどく”のダメージが大きい……」


お互いだらだら戦える状態じゃなくなってきたようだ、

なら……!!


千歌「しいたけ!!」
 「ワゥッ……!!!!」

梨子「メブキジカ!!」
 「ブルル……ッ!!!!!」


どうやら梨子ちゃんも同じ考えのようだ、
319 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:43:09.69 ID:dd6+2abs0

千歌・梨子「「“とっしん”!!!」」
 「ワゥッ!!!!!」 「ブルルッ!!!!!」


二匹が同時に走り出す。

小細工なしのただの“とっしん”だ。

──ドズン!!!

と鈍い音を立て、


 「ワゥッ……!!!」

 「ブルルッ……!!!!」


二匹がお互いの攻撃によって、同時に吹っ飛ぶ。


千歌「しいたけ!!」

梨子「メブキジカ!!」


梨子ちゃんともども、吹っ飛んだ自分の手持ちに駆け寄ると、


 「ワゥ……」

 「ブルル……」


二匹は今度こそ体力を使い果たし、気絶してしまった。


曜「しいたけ、メブキジカ戦闘不能!」


すかさず曜ちゃんがジャッジをする。


梨子「最初は相討ち……!」

千歌「……次!! 行くよ、ルガルガン!!」
 「ワォーーーンッ!!!!!!」

梨子「!!」


私はしいたけをボールに戻し、すかさずルガルガンを繰り出す。


千歌「“ドリルライナー”!!!」
 「ワォォンッ!!!!!!」


ルガルガンが身を捩りながら回転し、突撃する。


梨子「ムーランド!! “かたきうち”!!」
 「ヴォッフッ!!!!!」


飛んで来るルガルガンを、繰り出されたムーランドが前足で弾き飛ばす。


 「ワォンッ!!!!!」


弾き飛ばされ、進路をずらされたルガルガンは地面に爪を立てて勢いを殺しながら、ムーランドの向こう側で体勢を整える。


千歌「! そのムーランド、もしかして!」

梨子「ふふ、うん。ドッグランで千歌ちゃんと出会ったときに私を守ってくれてたムーランドよ」

千歌「じゃあ、梨子ちゃん……犬を克服出来たんだね……!」

梨子「うん、お陰様で。だから、ルガルガンも遠慮しなくて大丈夫だからね!」

 「ワォーンッ」
320 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:44:24.31 ID:dd6+2abs0

さて、二匹目はどうやらドッグラン出身の同郷対決のようだ。

ルガルガンVSムーランド。


 「ヴォッフ……」


ムーランドは毅然とした態度でどっしりと構えている。


千歌「…………」
 「ワォン」


ルガルガンも戦意は十分だが……。


梨子「……来ないなら、こっちから行くよ!! ムーランド!! “こおりのキバ”!!」
 「ヴォッフッ!!!!!」


ムーランドが飛び出してくる。

キバに冷気を帯びさせ、


 「ヴォッフッ!!!!!」


そのままルガルガンに噛み付こうと大きく口を開く。

勢いを載せて突っ込んでくるムーランドに向かって──


梨子「──“カウンター”するつもりだよね」

千歌「!?」


──バレてる!?


梨子「ムーランド!! 地面!!」
 「ヴォッフッ!!!!」


ムーランドはルガルガンに攻撃せず、地面にキバを立てる。

キバを立てた地面に冷気が伝播し、

──バキバキバキ!! と音を立てながら、氷柱が地面から飛び出しながらルガルガンに迫る。


 「ワ、ワォンッ!!!?」


完全に“カウンター”の体勢を取っていたルガルガンは予想外の攻撃に完全に面食らっていた。


 「ワゥッ!!!?」


避ける余裕もなく、突き出る氷柱に突き飛ばされ、宙を浮いたところにすかさず、


梨子「“アイアンヘッド”!!!」
 「ヴォッフッ!!!!!!」


ムーランドの鋼鉄の頭突きが炸裂する。


 「ギャウッ!!!」

千歌「!! ルガルガン!!」


完璧に攻撃が直撃したルガルガンは一直線に洞窟の入口の方に吹っ飛んでいく。


千歌「っく……!!」
321 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:45:33.20 ID:dd6+2abs0

私は慌てて、ルガルガンを追いかけるために、洞窟の方へと走り出す。


梨子「ムーランド! 追うよ!」
 「ヴォッフッ!!!!」

曜「バトルフィールドは洞窟の中に……! カイリキー、サポートして!」
 「リキーッ!!!!」





    *    *    *





──洞窟内。

吹っ飛ばされたとは言え、あくまで一直線だ。

すぐにルガルガンを見つけた私は──


千歌「ルガルガン! 奥まで走るよ!」
 「ワォンッ!!!」


ルガルガンと一緒に洞窟内部へと走り出す。


梨子「千歌ちゃん!!? どこまでいくつもり!!?」


洞窟の入口の方から、梨子ちゃんの声が反響して届いてくる。


千歌「バトルフィールドはチャンピオンロード全体だよっ!!」


後方に向かってそう言葉を返す。


梨子「……ルガルガンの得意な岩場に誘い込もうとしても、乗らないわよ!! “ハイパーボイス”!!」
 「ヴォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「だわっ!!!?」
 「ワォッ!!!!!?」


雄叫びのような、爆音が洞窟内を反響しながら、強力な衝撃波となって飛んで来る。

それはまるで後ろから吹く強烈な追い風のように、私たちを更に奥へと吹っ飛ばす。


千歌「……つつっ」


洞窟内の岩肌の上でどうにか受身を取りながら体勢を整え、

入口の方に向かって、


千歌「反撃!! “ストーンエッジ”!!」
 「ワォンッ!!!!!!」


反撃の岩を飛ばす。


梨子「っく……!!」


洞窟内、視界の悪い場所からの攻撃だからか、命中精度が悪い。

梨子ちゃんやムーランドの足元辺りに鋭い岩は落ちてしまうが、
322 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:48:22.24 ID:dd6+2abs0

梨子「“ハイパーボイス”!!」
 「ヴォォォォォォォォ!!!!!!!!!」

千歌「ルガルガン!」
 「ワォンッ!!!!」


ルガルガンが足を打ち鳴らすと、地面から岩が迫り出してきて、ルガルガンの前方に壁を作る。


梨子「! 岩の盾ってわけね……」


岩場はさっき梨子ちゃんが言ったとおりルガルガンの主戦場だ。

ここなら防御に使える岩が大量にある。

更に……!


千歌「“ストーンエッジ”!!」
 「ワォンッ!!!!!!」

梨子「っ!!」
 「ヴォッフッ!!!」


今度の岩はムーランドを掠める。

いくら命中率が悪くても、何度も打てば攻撃は当たる。


梨子「っく……地の利を取られてる」

千歌「さあ、梨子ちゃん!! 奥まで来ないと、そのうち直撃するよ!!」

梨子「……仕方ない。……その挑発、乗ってあげるわ!! ムーランド!!」
 「ヴォッフッ!!!!!」


ムーランドと一緒に洞窟内部へと走りこんでくる。


梨子「タダで、有利な場所に飛び込むつもりはないけどね!! “ギガインパクト”!!」
 「ヴォッフッ!!!!!!!!!」


ムーランドは最上級のパワーで周囲の岩を割り砕きながら、迫ってくる。


梨子「早く出てこないと、そこらへんの岩ごと粉砕しちゃうわよ!?」

千歌「言われなくても、出てくるよ!!」
 「ワォンッ!!!!!」

千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォンッ!!!!!!」


私の指示でルガルガンが飛び出す。

ただし、ムーランドの方ではない。


梨子「!? な、何!?」


ルガルガンは猛スピードで洞窟内の天井付近を跳ね回る。

その際に鋭い岩のタテガミで周囲の岩壁を割り砕きながら──


千歌「曜ちゃん!! 巻き込むかもしれないから、注意してね!!」

曜「ヨーソロー!!! 心配ご無用!!」
 「リキーーー!!!!!」


砕かれた大量の岩は、次なる攻撃となって爆走するムーランドに向かって降り注ぐ。
323 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:50:45.33 ID:dd6+2abs0

千歌「“いわなだれ”!!」

梨子「!!」


──ガラガラガラッと音を立てながら、大量の岩が降り注いでくる。


 「ヴォォォッフ!!!!!!」


ムーランドは依然、爆走を続けているが、

落ちてくる岩がぶつかる度に速度が落ちている。

でも──


千歌「今更止まれないよね!!」

梨子「……っ」


“ギガインパクト”で突っ込むしかなかったとは言え、技を引っ込めれば反動で動けなくなる。

なら、この瞬間はまたとない好機だ。


 「ワォンッ!!!!!」


天井から地上を走るムーランドに向かって、“アクセルロック”の勢いでルガルガンが飛び掛かる。


 「ヴォッフッ!!!!!!」


背中から、降って来る高速の一撃。

もちろん、避けることが出来るはずもなく、ムーランドの背中に直撃する。


千歌「よっし、そのまま──」

梨子「ムーランドッ!!!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!」


梨子ちゃんが叫んだ瞬間。

ムーランドは身を捩り、勢いを殺さぬまま、強引にルガルガンに前足を引っ掛け、


千歌「なっ!!?」

 「ワォンッ!!!!?」


ルガルガンを無理矢理地面に引き摺り落とす。

二匹は猛スピードで移動したまま、組み合いになったため、もつれ合ったまま、洞窟内を転がっていく。

それと同時に、洞窟内の奥の方でやや視界が開けた広場のような場所が見えてくる。二匹が転がって行くその空間の先に見えるのは……。


千歌「水……!?」


巨大な水溜り。


梨子「! 湖!!」


そこに広がっているのは、巨大な洞窟湖。

洞窟湖の奥の方では、この巨大な水溜りに上流から水を供給している源である滝まで見える。
324 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:51:45.35 ID:dd6+2abs0

千歌「って、やば!?」

梨子「ムーランド!! そのまま、湖までもつれ込んで!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!」

千歌「ルガルガンは水は苦手なんだって!!! ブレーキ!! ブレーーキ!!!!!」

 「ワォーーーーーンッ!!!!!!!」


ルガルガンは“かたいツメ”を地面に立てながら、ブレーキを掛ける。

──が、間に合わない。

二匹はそのまま、湖へと投げ出される。


千歌「くっそぉっ!!!」


私は二匹を追って、そのまま湖へと身を投げる。


梨子「千歌ちゃん!?」


梨子ちゃんはそんな私の姿を見て、驚いた顔をしていたが──

──ザブンッ!! と音を立てて、湖に潜る。

水中で目を開けると……。


 「ワ、ワォゥ……ッ」

 「ヴォッフッ!!!!」


水中でもなお組み合ったままの二匹。

ただ、ムーランドはやや余裕がある。

一方ルガルガンはジタバタともがきながら、今にも水底に引きずり込まれそうだった。

私は次なるボールを放る──


 「ゼルルル!!!!!!」


飛び出した、フローゼルにハンドシグナルでムーランドを指差して指示を出す。


 「ゼルッ!!!!!」


簡易的な指示を受けてフローゼルが飛び出す──“アクアジェット”!


 「ゼルルルッ!!!!!!!」

 「ヴォフッ!!!?」


水の中でルガルガンを引きずり込もうとしている、ムーランドに突進し引き剥がす。

その隙に、私は溺れかけのルガルガンをボールに戻してから、水上に顔を出す。


千歌「──ぷはっ!!」


水面に顔を出すと──


梨子「──ピジョット!! “エアスラッシュ”!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!!!」

千歌「!?」
325 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:52:57.61 ID:dd6+2abs0

背面上方から声が飛んで来る。

反射で咄嗟に後ろに向かってボールを放る。


千歌「ムクホーク!! “オウムがえし”!!」
 「ピィィィィ!!!!!!!」


飛び出したムクホークは即“エアスラッシュ”を真似て使用し、二匹の攻撃が空中でぶつかり合う。


千歌「……っ!!」


その隙に梨子ちゃんの声がした方に振り向くと──

ピジョットの脚に掴まって、湖の上を飛んでいる。

戦いの舞台は水中・空中戦に突入する。

── 一方で、


 「ゼルルルッ!!!!!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!」


フローゼルがムーランドに噛み付きながら、滝つぼに向かってムーランドを引っ張っているところだった。


梨子「ムーランド!!? 今行くよ!!」
 「ピジョッ!!!!!」


梨子ちゃんが、ピジョットと一緒に滝つぼの方へ飛び出し──


梨子「フローゼルをどうにかしないと……!! ネオラント、お願い!!」
 「ネォ〜〜」


滝の方向に向かって、ネオラントを繰り出す。


千歌「ムクホーク! 私たちも追うよ!」
 「ピィィッ!!!!!」


水面近くまで寄ってきてくれたムクホークの脚を掴んで飛び出す。


曜「ラプラス! 滝の方まで距離を取りながら進むよ!」
 「キュゥ〜〜〜」


背後では審判の曜ちゃんが追ってきている。

その周囲には、


 「タマ〜〜」


タマンタも従えて、もし私たちが溺れたりしたらいつでも助けてくれる準備が整っているようだった。

お陰で全力で戦える……!


梨子「ネオラント! “シグナルビーム”!!」

 「ネォォ〜〜〜」


ネオラントがムーランドを引っ張って移動するフローゼルに向かって、ビームを放ってくる。


 「ゼルッ!!!?」


迫る極彩色のビームに気付いたフローゼルが声をあげる。
326 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:54:25.75 ID:dd6+2abs0

千歌「フローゼル!! ムーランドは無理して追い詰めなくていい!! 迎撃優先!! “スピードスター”!!」

 「ゼルッ!!!!!」


フローゼルは指示を受け、ムーランドを放し、後方に迫る“シグナルビーム”に向かって“スピードスター”を放つ。

両者の攻撃が相殺する中、


 「ヴォッフッ!!!!!」


フローゼルから解放されて、自由になったムーランドが犬掻きで泳ぎながら、フローゼルへと攻撃を仕掛けてくる。


千歌「フローゼル! 後ろ! “スイープビンタ”!!」

 「ゼルルッ!!!!!」

 「ヴォッフッ!!!?」


フローゼルは背後から跳びかかって来るムーランドの方は振り向かず、尻尾を高速回転させて、迎撃する。

──よし、どうにか前後から迫る相手をうまくいなせてる。

あとは上空のピジョット……!

視線をフローゼルから外し、辺りを見回すが、


千歌「あ、あれ!? 梨子ちゃんは!?」


梨子ちゃんの姿が見当たらない。


 「ピィィィィ!!!!!!!!」


そんな私を見かねてか、ムクホークが鳴き声をあげる。

釣られて、ムクホークの方を見ると──ムクホークの真上から影が迫ってきていた。


千歌「!! 上っ!!?」

梨子「“つばめがえし”!!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!!!!」


梨子ちゃんとピジョットは私がフローゼルの指示に集中してる間にサマーソルトして、直上からの攻撃態勢に移っていた。

そのまま、ムクホークの背中に向かって翼を垂直に立て、


 「ピィィィィッ!!!!!!」


翼で攻撃を仕掛けてくる。

真上からの攻撃にムクホークは一瞬体勢を崩すが──

ムクホークはすぐさま、背面飛びに移行し、猛禽の爪を伸ばす。


梨子「!?」


梨子ちゃんが驚いた表情をする。何故なら、

──ムクホークが伸ばしてきた脚には今さっきまで私が捕まっていたはずだからだ。


梨子「まさか、飛び降りたの!?」

千歌「ムクホーク!!!! “インファイト”!!!」


空中を落下しながら、ムクホークに指示を出す。
327 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:55:43.76 ID:dd6+2abs0

 「ピィィィィィ!!!!!!!!!!」

 「ピ、ピジョォォォォ!!!!!!」


そのまま、猛禽の脚でピジョットの首に掴みかかる。

そして、私は──ザブン!! と再び水中に落下し、


 「──ゼルッ!!!!」


すぐさま、下からフローゼルが私の身体を持ち上げる。


梨子「く……!!」

千歌「ムクホーク!! そのまま、湖まで引き摺り落としちゃえ!!」

 「ピィィィィ!!!!!!!!」


空中戦は梨子ちゃんを運んでいる分、空中制御が利かないピジョットが不利な状態のまま、湖面に向かって墜落してくる。


千歌「行ける……!!」


そう思った矢先、


 「ネォォッ!!!!」

千歌「!?」


突然、目の前に飛び出してきた、ネオラントが激しく閃光した。


千歌「い゛っ!!!」


至近距離で強烈な発光に目を焼かれ、変な声が漏れる。


千歌「フ、“フラッシュ”……っ」


完全に予想外の方向から攻撃に全く対応が出来なかった。

無理矢理、目を開けるが──

視界がぼやけて、うまく見えない。


 「ピィィィィ!!!!?」

千歌「!? ム、ムクホーク!? どうしたの!?」


上空からムクホークの鳴き声。声がする方に顔を向けはするものの、目を潰されてしまって、何が起こってるのかがわからない。

──いや……ぼやける視界の中で、僅かに七色に光る眩い輝きが見て取れた。


千歌「……!! メガシンカ……!!」


あの輝きは、梨子ちゃんのメガブレスレットと反応して、姿を変えたメガピジョットのものだ……!!


梨子「ピジョット!! “ぼうふう”!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」

 「ピィィィィィィィ!!!!?」

千歌「……っ!!」
328 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:57:37.58 ID:dd6+2abs0

激しく空気が渦巻き、強風が吹き荒ぶ音。

そして、その音に飲み込まれるように微かにムクホークの悲鳴のような鳴き声が聞こえてくる。

せっかく、ムクホークを身軽にして有利を取ろうと思ったのに、逆に私の視界を潰され、その隙にメガシンカのパワーで圧倒されてしまった。

──だが、迷ってる暇はない。


 「ヴォッフッ!!!!!」


水音と共に、背後からムーランドの鳴き声。


千歌「フローゼル!!」
 「ゼルッ!!!!!」


フローゼルに合図を送って、一旦水中に潜る。

……まずは相手の数を減らすのが優先だ。

フローゼルは全身にみずタイプのエネルギーを集束させて──水面に顔を出すムーランドに向かって、水中から一直線に飛び出す。


 「ゼルゥッ!!!!!!」

 「ヴォッフッ!!!!?」


強力な突進攻撃を食らった、ムーランドは水上に打ち上げられる。


千歌「決まった!! “アクアブレイク”!!」
 「ゼルルッ!!!!」


うまく見えては居ないけど、手応えがあった。

数テンポおいて、──ザブン! ザブン! と二回着水音がする。

……2回?


曜「ムーランド、ムクホーク、戦闘不能!」

千歌「……!」


さっき“ぼうふう”に巻き込まれたムクホークは健闘虚しくココでリタイアと言うことのようだ。


梨子「ムーランド!」

曜「二匹は私が回収しておくから、二人はバトルを続行して!」

 「キュゥ〜〜〜」


ラプラスの鳴き声がする。曜ちゃんがしっかり救出をしてくれるらしいので、悪い視界のままムクホークを探してボールに戻さなくていいのは正直助かる。

──が、


 「ゼルルッ!!!!」

千歌「え、何!? フローゼ──わぷっ!?」
329 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 00:59:24.03 ID:dd6+2abs0

フローゼルが急に水中に潜る。フローゼルに掴まったままの私も当然水中に潜ることになる。

ただ、ここまで急な行動。

恐らく、上空からメガピジョットの攻撃が飛んできたと考えて間違いないだろう。

その証拠に音が聞こえ辛い水の中だと言うのに、

──ズドン。ズドン。と何かが強く水面を叩くような音が聞こえてくる。

恐らく、ピジョットの“エアカッター”や“エアスラッシュ”をこっちに向かって飛ばしてきているんだろう。

水中ならどうにか攻撃は届かないが──

でも、ここにはネオラントが居る。

このまま、立ち往生してるのは危険だ。

──なら、


千歌「……!!」


私は滝の音が聞こえる方向を指差す。


 「ゼルッ!!!!」


フローゼルは意図を汲んでくれたのか、そのまま高速で泳ぎだす。

全速前進をしながら、少しずつ水面に近付き。


千歌「──……ぷはっ!!」


私は再び水上に顔を出す。


千歌「滝まで一直線!!! 進めーーー!!!」
 「ゼルルルッ!!!!!」

梨子「逃がさない!! ピジョット!! “たつまき”!!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」


ピジョットが羽ばたくと、周囲の風は渦を撒き、水を巻き上げる“たつまき”に成長する。


 「ゼルッ!!!!」


体感でわかる。巻き上げられる水の流れのせいで、滝壺に向かって一直線に泳ぐフローゼルのスピードが殺されている。

そして、徐々に戻ってきた視界に飛び込んでくるのは──

巨大な“たつまき”。


梨子「これで私の勝ちだよ!! 千歌ちゃん!!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!!!!」


上空から飛んで来る、梨子ちゃんの勝利宣言。

絶体絶命。……でも!!


千歌「まだまだぁ!! フローゼル!! “うずしお”!!」
 「ゼルゥッ!!!!!」


フローゼルが尻尾のスクリューを高速回転させ、水を巻き上げながら“うずしお”を発生させる。


梨子「相殺する気!? でも、それじゃ威力が足りないよ!!」


そう言う梨子ちゃん。

確かに真っ向からぶつけるだけじゃ、威力は足りないかもしれない、でも、
330 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:02:45.75 ID:dd6+2abs0

千歌「“たつまき”と逆回転だったら!?」

梨子「……!?」


二つの渦はぶつかり合う寸でのところで、お互い急激に進路を逸れて直進し、壁にぶつかって消滅した。


千歌「よし……!!」
 「ゼルッ!!!!!」


再び、フローゼルが全速力で、滝壺に向かって飛び出す。

そして、そのまま滝にぶつかる様に直進し──

そこから、直角に上昇する……!


千歌「“たきのぼり”!!!」
 「ゼルゥッ!!!!!」


フローゼルに掴まったまま、滝を上昇する。

そんな私の視界に再び飛び込んでくるのは、


 「ネォ〜〜〜〜」


水面から“とびはねる”で上昇中の私たちに迫ってくるネオラントの姿。


梨子「ネオラント!! “フラッシュ”!!」

 「ネォォ〜〜〜〜」


中空に居るまま、再び激しく閃光するネオラント。

私は──


千歌「──二度も同じ技は通用しないよ!!」

梨子「……っく」


もちろん、目を瞑って、閃光に目を潰されるのを防ぐ。


梨子「ピジョット!! “エアスラッシュ”!!」
 「ピジョォォォォ!!!!!!」


飛んで来る、ピジョットの攻撃に、私は腰からボールを放つ。

フローゼルに掴まったまま──


 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオを繰り出し、メガバレッタに触れる。


千歌「ルカリオ!! 行くよ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


私は目を瞑ったままだったけど、ルカリオを通して、周囲の波導エネルギーが伝わってくる。

鋭敏になった全身の神経によって、迫る空気の刃が感じ取れる。
331 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:04:51.73 ID:dd6+2abs0

千歌「“いあいぎり”!!」
 「グゥォッ!!!!!」

梨子「!!」

千歌「パルキアの攻撃に比べたら、これくらいの攻撃、打ち消すのは簡単だよ!!」

梨子「く……!!」


目を瞑っているお陰で神経が研ぎ澄まされているのも、技の精度にいい影響を及ぼしている。

このまま、一気に上まで──

そう思って、再び目を開く、


 「ネォォ!!!!」


すると、すぐ下方から、ネオラントが急激に迫ってくる。


千歌「!?」


ネオラントの“たきのぼり”は、私とルカリオを運んでいるせいで、速度が低下しているフローゼルに追いついてきている。


梨子「“アクアテール”!!」

 「ネォォォ!!!!!」


ネオラントは滝を登りながら、無理矢理身を捻って、下から尻尾をたたきつけてきた。

荷物を大量に運びながらの“たきのぼり”で余裕のないフローゼルは回避なんて出来るはずもなく。


 「ゼ、ゼルッ!!!?」


下からの強烈な尻尾による殴打が直撃し、


千歌「だわぁっ!!!?」
 「グゥォッ!!!!?」


掴まったままの私とルカリオ共々、滝の外に吹っ飛ばされる。

そして、すぐに浮遊感に襲われる。

──落ちる……!!

そこからは反射だった。

フローゼルをすぐさまボールに戻し、


千歌「ルカリオ!! 跳べぇっ!!!」


私はルカリオにしがみ付いたまま、そう叫んだ。


 「グゥォッ!!!!」


ルカリオは──


 「ネォォッ!!!!!?」


滝を登っている、ネオラントを無理矢理踏みつけて、


梨子「う、嘘!?」


その反動で一気に跳躍した。
332 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:05:52.76 ID:dd6+2abs0

──ダン!!!

着地の音が洞窟内に響き渡る。


千歌「はぁ……はぁ……た、助かった……」
 「グゥォッ」


私は逆さまの視界のまま、下方を飛んでいる梨子ちゃんたちを見つめる。

──そう、一気に跳躍したルカリオは、波導の力により上昇させたパワーで、無理矢理爪を立て、天井に着地したのだ。


梨子「ネオラントは!!?」


一方梨子ちゃんはこっちではなく、滝の方に視線を向けている。


曜「大丈夫だよー!! 戦闘不能だけど、カメックスが救出したからー!!」
 「ガーーメッ!!!!」


眼下ではカメックスとラプラスが私たちのポケモンを運びながら、“たきのぼり”をしているところだった。


千歌「……ふぅ」


とりあえず、一息。


千歌「……とりあえず、フローゼルもムクホークも戦闘不能……水上戦はもう出来ない……! 一旦水のない場所まで距離を取るよ!」
 「グゥォッ!!!」

千歌「“しんそく”!!」


ルカリオに掴まったまま、洞窟を出口に向かって先行する。





    *    *    *





千歌「よし……ここまで来れば大丈夫! ありがと、ルカリオ」
 「グゥォッ」


私はしがみ付いていた、ルカリオから離れ、洞窟内を走りだす。

戦闘しながらかなり進んできたせいか、視界の先の方に僅かに光が見えている。


千歌「出口が近い……」


ルカリオと併走しながら、呟いていると、

──背後から風を切る音が聞こえてくる。


千歌「! ……来たよ!」
 「グゥォッ!!!!」


もう周囲に湖はない。

安定した地形で迎え撃つ……!!


 「ピジョットォォォォォォォ!!!!!」
梨子「“ブレイブバード”!!」
333 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:08:06.32 ID:dd6+2abs0

空を切りながら飛んでいるピジョットが一気に加速する。

その際、梨子ちゃんはピジョットの脚から手を放して、


梨子「……やぁ!!」


声をあげながら、受身を取って地面に着地する。

ここからはメガシンカポケモン同士の真っ向勝負だ。


千歌「受けて立つ!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」

 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」


突撃してくる、ピジョットの嘴を──


 「グゥォォォォォッ!!!!!!」

梨子「!? 受け止めた!?」


真剣白刃取りでもするかのように、両手で挟み込み、受け止める。

ただ、勢いを完全に殺しきることは出来ず、ピジョットと共に後方に後ずさっていく。


千歌「ルカリオ!! “ともえなげ”!!」
 「グゥォッ!!!!」

 「ピジョッ!!!?」


その勢いを利用したまま、後方に投げ飛ばす。


梨子「“オウムがえし”っ!!!」

 「ピジョォォォッ!!!!!!」


だが、ピジョットは投げ飛ばされる瞬間に、無理矢理嘴でルカリオの手に噛み付き、


 「グォッ!!!?」

千歌「!!?」


こちらも勢いを利用して、逆にルカリオを天井に向かって投げ飛ばす。

──ダン!! と再び天井に着地したルカリオは、

間髪いれずにピジョットに向かって飛び出す。

だが、梨子ちゃんとピジョットの判断も早かった。


梨子「“ぼうふう”!!!!」

 「ピジョォォォォォ!!!!!!!」


すぐさま地上で体勢を立て直し、“ぼうふう”を起こす。


 「グゥォッ!!!!?」


ルカリオは“ぼうふう”に飲み込まれ、地上に辿り着くことなく吹き飛ばされる。


梨子「はぁ……!! はぁ……!!」
334 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:09:52.36 ID:dd6+2abs0

度重なる、激しい攻防に梨子ちゃんが息を切らせる。

ピジョットの“ぼうふう”は渦を巻き、再び大きな“たつまき”となって、天井に向かって巻き上がる。


梨子「ここまで、やれば……ルカリオ……でも……!!」

千歌「まだだぁ!!」

梨子「!!」


土煙を巻き上げる薄茶色の“たつまき”の中から青白い光が漏れ出てくる。


千歌「ルカリオ!! “たつまき”に逆らわなくていい!! その動きに波導を合わせるんだ!!」

 「グゥゥゥゥゥオッ!!!!!!!!!」


私の言葉と共に、“ぼうふう”から生み出された“たつまき”は──波導の嵐となって、一気に膨張する。


梨子「!? きゃ、きゃああああああああ!!!!?」

千歌「だわあああああああぁぁっ!!!?」


辺りを巻き込み、膨れ上がった波導の嵐に巻き込まれ、梨子ちゃん共々吹っ飛ばされる。


千歌「……いたた」


あまりの衝撃に地面を転がるハメになった。

だが、すぐにハッとなって顔をあげる。


千歌「ルカリオは!?」


あげた視線の先では、


 「グゥ……ォ」

 「ピ、ピジョ……」


巨大な波導の嵐に巻き込まれ戦闘不能になったピジョットと、

直撃した“ぼうふう”の威力を殺しきれず、戦闘不能になったルカリオの姿があった。


梨子「ピ、ピジョット……!」

千歌「相討ち……!」


数テンポ遅れて──


曜「ル、ルカリオ……!! ピジョット……!! せ、戦闘不能……!! ふ、二人とも……は、はやすぎ……」


曜ちゃんが息を切らせながら追いついてくる。


千歌「戻れ、ルカリオ」

梨子「戻って、ピジョット」


二人して、メガシンカできるエースをボールに戻す。

さて……私の残る手持ちは一体のみ、
335 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:10:46.37 ID:dd6+2abs0

千歌「……行くよ!! バクフーン!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!」


一方、梨子ちゃんは、


梨子「メガニウム! チェリム! 行くよ!!」
 「ガニュゥーーー」「チェリリッ」


メガニウムとチェリムの二匹。


梨子「チェリム! “グラスフィールド”!!」
 「チェリ」


周囲に草が生い茂る。

チェリムはサポート重視のポケモンだ、放っておくのは不味い。


千歌「バクフーン! “かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーーーー!!!!!!」


吐き出される火炎。相手が二匹残ってるのは痛手だが、幸い相性はいい。

──だが、


梨子「チェリム!! “ころがる”!!」
 「チェリ」

千歌「うぇ!?」


チェリムは予想の反して突っ込んできた。

炎に全身を炙られながらも、猛スピードの“ころがる”によって強引に炎を突っ切ってくる。

完全に意表を突かれた私は完全に動揺してしまい、


 「バクフッ!!!?」


指示が間に合わず、バクフーンに“ころがる”が直撃してしまう。

猛スピードの突撃に、派手に後ろに吹っ飛ばされ地面を転がる。


千歌「バ、バクフーン!!」

梨子「メガニウム!!!」

千歌「!!」


そこに更に追撃を仕掛けようと、走りこんでくるメガニウム。

全身を使って、シンプルな突撃。


梨子「“おんがえし”!!!」

 「ガッニュゥゥゥ!!!!!!!」

 「バクフーーーッ!!!!!?」


シンプルだけど、とてつもない威力の突進攻撃。


千歌「バ、バクフーンッ!!?」


苛烈な突進により、一気に洞窟の外まで吹っ飛ばされる。


千歌「く、くそぉ……!!」
336 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:13:30.38 ID:dd6+2abs0

急いでそれを追いかけ、私も外へ向かって走り出す。

視界が開け、晴天の空の下に飛び出した。

そして、背後からも足音。

梨子ちゃんたちも外に出てくる。

すかさず、


梨子「チェリム!! “にほんばれ”!!」
 「チェリリーーーー!!!!!!!」


チェリムが天候を快晴にする。

それと共にチェリムの“フラワーギフト”が花開き、花びらが舞い狂う。


梨子「メガニウム!!! “はなふぶき”!!!」
 「ガニュゥゥゥゥゥーーー!!!!!!!」


迫る、花びらたち。


千歌「……バクフーン!!!」
 「バクフーーーー!!!!!!!」


私がバクフーンの元に辿り着いたと同時に発した呼びかけに反応するように、バクフーンが起き上がりながら、一気に熱波を発する。


梨子「……!?」


背中の炎をメラメラと滾らせ、飛んで来る花びらたちを近付く傍から、焼き尽くしていく。


千歌「天候が晴れになって有利になるのは梨子ちゃんだけじゃないよ!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!!!」


快晴の日差しはバクフーンの炎の威力も向上させる。

バクフーンはそのまま、口に火炎を溢れさせ──


千歌「“やきつくす”!!!」
 「バクフーーーーーッ!!!!!!!!」


苛烈な勢いの炎を吐き出す。


梨子「チェリム!! “フラワーガード”!!」
 「チェリリッ!!!!!」


舞い踊る花びらたちがチェリムたちを守ろうと寄って来るが──


 「チェ、チェリーーー」


その花びらたちを意にも介せず、火炎の勢いは止まらない。


梨子「……っ!!」

 「……チェリーーー!!!!」

梨子「!? チェリム!?」


そのとき、突然チェリムが炎に向かって飛び出した。梨子ちゃんの驚き様からして、恐らく独断。

大量の花びらを舞い狂わせながらの死に物狂いの突撃──“はなびらのまい”だ……!!

その甲斐あってか、バクフーンの火炎は、大量の花びらと──チェリムを焼き尽くすだけに至り。
337 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:14:59.56 ID:dd6+2abs0

 「チェ、チェリ……」

 「ガ、ガニュゥ!!」


メガニウムは巻き込まれずに済む。


梨子「チェリム……」

曜「チェリム! 戦闘不能!!」

梨子「……ありがとう、戻って」


梨子ちゃんは身を賭して仲間を守ったチェリムを労いながらボールに戻す。


千歌「これでお互い残ってるのは……!!」

梨子「一匹ずつ……!」

 「バクフーーーーッ──!!!!!!!」


再びバクフーンが背中の炎を滾らせながら、攻撃態勢に移る。

晴れが後押ししてくれる中、全てを焼き尽くす業炎──“れんごく”を撃つ体勢だ。


梨子「……千歌ちゃん」

千歌「?」

梨子「グレイブ団騒動のあと、私は千歌ちゃんより早く旅に戻ったでしょ」

千歌「うん」

梨子「先に旅に戻った私は……今日、この日のために……技を覚えてきた」

千歌「……技……?」

梨子「千歌ちゃんの“いあいぎり”みたいなのとは違うけど……! 私なりに、メガニウムと一緒に習得した、最強の技、見せるね──」
 「ガニュゥッ……!!!!」


梨子ちゃんが言うと、メガニウムから気迫があふれ出てくる。


千歌「……!」


何か仕掛けてくる。

でも……。


千歌「全部炎で吹き飛ばす!! バクフーン!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!」

千歌「“れんごく”!!!」
 「バクフーーーーーンッ!!!!!!!」


灼熱の業炎がバクフーンから、噴き出す。

周囲の生い茂る草木を軽く撫でるだけで消し炭にする、最大級の火力。

──対するメガニウム。


梨子「行くよ、メガニウム!! 究極技!!」
 「ガニュゥッ!!!!!!!!」

梨子「“ハードプラント”!!!」
 「ガッニュゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!」


メガニウムが雄叫びをあげると──


千歌「なっ!?」
338 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:16:45.90 ID:dd6+2abs0

巨大な樹木やとてつもない太さの蔦やら、巨大な花やらが、とてつもない勢いで地面から飛び出してくる。

その植物たちは、全てを焼き尽くすはずの業炎もものともせず迫ってくる。


千歌「“れんごく”が押し負けてる!?」

梨子「これが、私たちがこの旅で習得した、最強の技!! 千歌ちゃん……勝負よ!!!」


炎すらも飲み込みながら急激に成長し、襲い掛かってくる巨大な植物たちは、


 「バクフッ……!!!!!」


一瞬でバクフーンと私の周囲を取り囲む。


千歌「っく!? “だいもんじ”!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!」


大の字に広がる業火の炎を至近距離でぶつけるが……。


千歌「う、うそ!? 全く、焼ききれない!?」


今も尚どんどんとその幹を太く大きく成長させていく目の前の植物は、相性なんておかまいなしにどんどん迫ってくる。

太い幹の所為で、炎はぶつかった傍から分散して掻き消されてしまう。


梨子「くさタイプの究極奥義だよ!! 簡単に焼き尽くされたりしない!!」

千歌「く……!!」


──どうする!?

炎で攻撃しても、植物が壁のようになって、防がれてしまう。


千歌「……いや!! 幹の外だからだ!! “ほのおのパンチ”!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!!!」


迫ってくる、樹木にバクフーンが炎拳を突き立てる。拳はすぐに成長する植物たちに飲み込まれるが──


千歌「爆ぜろーーーー!!!!!!」
 「バクフーーーーッ!!!!!!!!!!」


突き立てた拳の爆炎を植物の内部で一気に膨張させる。

すると──

大きな幹は内側から膨張し、爆炎を噴き出しながら粉砕される。


梨子「!!?」


それによって、出来た穴の向こうで梨子ちゃんが驚いている顔が見える。

そんな穴も、次から次へと地面から飛び出してくる、大自然の力によって塞がされて行くが──


千歌「ぶっといのを吹っ飛ばせたなら……OK!!」
 「バクフーーーーーッ!!!!!!!!」


バクフーンの口元に火炎がメラメラと漏れ出す。

炎はただ吹きつけるだけじゃ、簡単に広がって、掻き消される。

……なら、


千歌「一点を貫くように……炎熱でぶち抜く……!!!」
339 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:17:52.12 ID:dd6+2abs0

もう大量の蔦や草で埋まり、向こう側が見えなくなってしまったが……植物の壁の中では、確実に弱くなっているその部位に向かって──


千歌「“かえんほうしゃ”!!!!!!」
 「バクフーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの雄叫びとともに──直進する爆熱が飛び出した。

爆熱は目の前の植物の壁を一気になぎ払い──


梨子「……!! まだ!!!」
 「ガニュゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」


その進路を防ぐように、伸びてくる草木を蔦を樹木を焼ききりながら──


千歌「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」

梨子「……!!」


 「──ガニュゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!?」


“ハードプラント”の先、大技の反動で動くことの出来ない、メガニウムに、

──直撃した。


千歌「……はぁ……!! ……はぁ……!!」


焼け焦げる、植物の壁の向こう側で、


 「ガ…ニュゥ…」


メガニウムがゆっくりと崩れ落ちる姿が見えた。





    *    *    *


340 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:19:00.71 ID:dd6+2abs0


曜「……メガニウム戦闘不能。これによって、梨子ちゃんの手持ちは全員戦闘不能。よって──」


ジャッジが下される。


曜「千歌ちゃんの勝利!!」

千歌「……勝ったぁ……!!!」
 「バクフーーーーーンッ!!!!!!!!」


思わず拳を握り締める。


梨子「あはは……負けちゃった」


梨子ちゃんはそう言ってヘタリ込む。


梨子「自慢の技だったんだけどなぁ」

千歌「……正直、ヤバイと思ったよ」

梨子「土壇場で攻略法を思いついたの?」

千歌「うん。いくら外側が丈夫で炎すら通さなかったとしても、根本的には植物だから……内側からの爆炎には耐えられないかなって」

梨子「……あはは、やっぱり千歌ちゃんには敵わないなぁ」


梨子ちゃんは苦笑する。


梨子「……でも、千歌ちゃんとのバトル……楽しかったよ」

千歌「えへへ……私も、梨子ちゃんとのバトル。最高に楽しかった」

梨子「なんか……負けたけど、すっきりしちゃった……」

曜「二人とも全力で戦ったからかな」

梨子「ふふ、そうかも」


地面にペタンと座ったまま笑う梨子ちゃんに近付いて。


千歌「梨子ちゃん」


手を差し伸べる。


梨子「……うん」


梨子ちゃんがその手を取る。

私が引っ張りあげるようにして、梨子ちゃんが立ち上がる。

そして──ぎゅっと、硬い握手。
341 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:19:42.89 ID:dd6+2abs0

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「ん?」

梨子「あなたがライバルで、友達で……本当によかった」

千歌「……えへへ! 私も! 梨子ちゃんがライバルで、友達で、本当によかった!」

曜「え、ずるい! 私は!?」

梨子「もちろん、曜ちゃんもだよ!」

千歌「うん!」


笑い合いながら、三人で抱き合う。


梨子「……千歌ちゃん、ポケモンリーグ、頑張ってね」

曜「ここまで来たら、チャンピオンだよ!」

千歌「……うん! 任せて!! 私、絶対四天王を全員突破して、チャンピオンになってくるから!!」

梨子・曜「「うん!」」


照りつける快晴の下で、抱き合いながら笑う、三人のトレーナー。

一緒の研究所から、一緒に始まった私たちの戦いはこれにて決着。

最高のライバルで有り、最高の友と言える関係になった梨子ちゃんとの戦いに制した私は──いよいよ、ポケモンリーグへと進んでいきます。


342 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 01:21:40.51 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【チャンピオンロード】
 口================= 口
  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂●|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.61  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.55 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.58 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.57 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.62 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.57 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:169匹 捕まえた数:15匹

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.61 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.54 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.58 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.51 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.56 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ムーランド♂ Lv.53 特性:きもったま 性格:ゆうかん 個性:しんぼうづよい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:146匹 捕まえた数:14匹

 主人公 曜 ✿
 手持ち カメックス♀ Lv.53 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.42 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:166匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt


 千歌と 梨子と 曜は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.



343 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 13:52:38.97 ID:dd6+2abs0

■Chapter086 『決戦! 四天王! @』





千歌「──……さて」
 「バクフ」


チャンピオンロードを抜け、梨子ちゃん、曜ちゃんと別れて、歩くこと数十分。


千歌「ついに……辿り着いたね」
 「バクフー」


旅の終着点。


千歌「ウテナシティ、ポケモンリーグ……!」


ウテナシティ自体は正直、街と言えるのか怪しいほど、建物が少なく、ここまでにあったのはポケモンセンターだけだった。

ポケモンセンターで回復を済ませ、その先にある大きな建物──ポケモンリーグまで一直線に歩いてきた。

ポケモンリーグの建物は建物と言うよりは、山の中にくりぬかれて出来ているような形をしていた。

大きなモンスターボールを模した意匠の入口以外は岩石に覆われ、その先には山肌が続いている。

更にその山のずーっと先に、高い塔のようなものが見える。

その様相をぼけーっと眺めているわけだけど……。


千歌「……って、ここで立ち往生してても仕方ないよね」
 「バクフ」

千歌「行こう……!」
 「バク」


バクフーンを一旦ボールに戻し、建物に入ろうとすると……。

その入口に黒い衣装に身を包んだ、ショートボブのベージュの髪の女性が立っていた。恐らくポケモンリーグの門番だろう。

彼女は私の姿を認めると、


門番「ここはポケモンリーグです。これより先はオトノキ地方の全てのジムバッジを揃えた人しか通る資格がありません」


そう告げてくる。

私はごそごそとバッグの中からバッジケースを取り出して、開いてみせる。


門番「……“コメットバッジ”、“ファームバッジ”、“スマイルバッジ”、“ハミングバッジ”、“クラウンバッジ”、“ジュエリーバッジ”、“フォーチュンバッジ”、“スティングバッジ”……。確かに。オトノキ地方のジムバッジ全てを揃えていますね」

千歌「はい」

門番「……ポケモンリーグは待ち構える四天王全員に勝つか負けるまで外に出ることは出来ません。それをわかった上で、この先に進みますか?」

千歌「はい!」

門番「……わかりました。では、通ってください。……御武運を」


ペコリと頭を下げる女性の横をすり抜けて建物の中に足を踏み入れると、

──ゴゴゴ……。

と、音を立てて背後の扉が硬く閉ざされた。


千歌「……ここが、ポケモンリーグ……」


辺りを見回すと、球形に繰り抜かれた空間の中央に真円の足場。

更にその足場の丁度真ん中にエレベーターのようなものが存在し、さらに円状の足場の上半分からは熊手のように橋が伸びていて、それぞれその先に扉が見える。
344 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 13:53:41.95 ID:dd6+2abs0

千歌「……このエレベーターは」


まず中央のエレベーターに近付いてみるが……全く反応はない。


千歌「……エレベーターは動かないみたい……。となると……」


私の視線は四つの扉の方に向く。


千歌「……あの先にそれぞれ四天王がいるってことかな……」


特に順番の指定とかはないようだ。

よく見てみると、扉の上になにやらマークがある。

左から順にピンク色をした光が羽を広げたようなマーク、水色の氷の結晶のようなマーク、黒色の竜のようなマーク、そして白色の刃のようなマークだ。


千歌「……って言っても何も情報もないし……全員に勝たなくちゃいけないんだもんね。左から順番に進もう」


私はまずは一番左の扉から入ることにする。

──扉の前に辿り着いて。


千歌「……よし、行こう……!」


扉を押し開けた──。





    *    *    *


345 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 13:56:32.62 ID:dd6+2abs0


──扉の向こうにはポケモンジムでも見慣れたバトルスペースが拡がっていた。

ただ、その内装は非常にファンシーでピンク色が溢れている。

私はゆっくりと奥へと歩を進めると──奥に人影があった。


 「……やっと来たみたいね」

千歌「……え」


私に声を掛けてくるその人には……見覚えがあった。


千歌「にこさん……?」

にこ「ええ、久しぶりね、千歌」

千歌「?? どうして、にこさんがここに?? ここ、ポケモンリーグですよ?」

にこ「……あー、えーとね」

千歌「??? ここって四天王しか居ないんですよね??」

にこ「そうよ。つまり、そういうことよ」

千歌「……? どゆこと?」

にこ「……はぁ、あんたホントおばかなんだから……」

千歌「え、ご、ごめんなさい……」

にこ「わたしがその四天王の一人よ」

千歌「……え?」


一瞬ポカーンとしてから、


千歌「え!?」


驚く。


にこ「だから、ちゃんと勉強しておきなさいって言ったじゃないの……まあ、ここまで辿り着けたわけだし、別にいいけど。とにもかくにも、ここまで来たらやることは一つ、バトルのみよ」


にこさんはそう言って、6つのボールを放る。


 「クチ」「マリ」「フィー」「キッスゥ」「ミミッキュ」「クレフィー」

にこ「じゃあ、バトルルールの説明をするわね。確認するけど、この部屋が最初の挑戦?」

千歌「は、はい!」

にこ「わかった。最初に説明しておくと、このバトルルールは四天王全員で共通ルールだから忘れないようにしなさいよ」

千歌「はーい」

にこ「ここポケモンリーグでのルールは最初に6匹を見せ合って、そのあとにお互い3匹選出ポケモンを決めてから戦うわ。つまり使用ポケモンは3体。3体全てが先に戦闘不能になった方が負けよ。一度3匹のポケモンを決めたら戦闘中選ばなかった3匹と入れ替えることは出来ない。だけど、その3匹の中でだったら、一匹ずつ出しても、同時に出しても、いつ交換しても構わないわ」


まずお互い6匹を見せ合うってことは、こっちも全部手持ちを出さないといけないだろう。

私は6個のボールからポケモンを出す。


 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」


にこ「バクフーン、トリミアン、ムクホーク、ルガルガン、ルカリオ、フローゼルね。ちなみに、にこの手持ちはクチート、マリルリ、ニンフィア、トゲキッス、ミミッキュ、クレッフィの6匹よ」

千歌「はい! わかりました!」

にこ「じゃあ、全員ボールに戻してから……トレーナースペースに後ろの方に台座があるでしょ」
346 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 13:57:47.90 ID:dd6+2abs0

言われて見てみると、確かにトレーナースペースの後ろの方に台座がある。

そこには丸い3つの窪み。


千歌「ここに選んだ3匹のボールを置くんですね」

にこ「そういうこと。ルールは把握できたかしら」

千歌「はい!」

にこ「それじゃ相手に見えないように3匹選んで。選出できたら、言って頂戴」

千歌「わかりました!」


バトルスペース内のトレーナースペースに入り、にこさんに背を向けて台座を見る。

──3匹か……。

にこさんにはダリアシティでお世話になったから、そのときの手持ちは見られているし、バトルも見られてるから戦略が筒抜けな可能性が高い。

……となると、あのときまだ手持ちにいなかったルカリオとフローゼル、それと……。


千歌「うん、この3匹にしよう」


三つのボールをセットして振り返る。


にこ「準備は出来たかしら」

千歌「はい!」

にこ「それじゃ……始めましょうか」


にこさんが一歩前に歩み出る。


にこ「──四天王『大銀河宇宙No.1! フェアリーアイドル』 にこ! さぁ、ショータイムの始まりよ!!」


お互いの一匹目のボールがフィールド舞う──バトルスタート……!!





    *    *    *


347 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 14:02:15.15 ID:dd6+2abs0


千歌「行くよ!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!」

にこ「行くわよ! ニンフィア!!」
 「フィーー!!!」


にこさんの一匹目はニンフィア。


にこ「“ハイパーボイス”!!」
 「フィイィィィィィーーーーーーー!!!!!!!!!!」

千歌「わわぁ!!!?」
 「グゥォ!?」


開始早々、いきなりの大技が飛び出す。


千歌「ぐ、うるさ……」


耳がキーンとする。


千歌「ルカリオ、大丈夫……!?」
 「グ、グゥォッ!!!!!」


とりあえず、問題なさそうだ。

だけど、この狭い空間でこの技を連発させるのは不味い……!

速攻勝負するしかない……!


千歌「“バレットパンチ”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


踏み込み飛び出す、神速の弾丸拳。

ニンフィアは避ける暇すらなく拳が直撃する。


 「フィーーーッ!!!!?」


幸いニンフィアは火力はあるものの動きが速いわけではなさそうだ。

“バレットパンチ”が炸裂して軽く後ろに吹き飛ぶ、


千歌「畳み掛けろ!! “コメットパンチ”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


飛び出し、流星拳を叩き込もうとした瞬間、


にこ「マリルリ!!」

千歌「!」


にこさんが追加でボールを放って、マリルリを繰り出す。


 「マリーー」


──ガシッと、マリルリはルカリオの拳を真正面から、受け止める。


千歌「え!?」


そして、そのままルカリオの拳を掴んで、
348 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 14:05:13.54 ID:dd6+2abs0

 「グ、グゥォ!!!?」


持ち上げる。

可愛らしい見た目に反してなんというパワーだろう、


千歌「ま、まずい!! フローゼル!!」
 「ゼルルッ!!!!!」


私もすかさず二匹目を繰り出し、


千歌「“みずのはどう”!!!」
 「ゼルーーーーー!!!!!!」


後方からルカリオの援護をする。


 「マリ!!」


前方からの水波攻撃に気付いたマリルリは、


 「マリッ!!!!」


飛んで来る“みずのはどう”に向かって、ルカリオを投げつけてくる。


千歌「っく……! ルカリオ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


こっちに向かって吹っ飛ばされているルカリオは宙にいるまま、波動を操作し、

器用に自分には攻撃が当たらないように捻じ曲げる。


にこ「! ちゃんと、考えてるじゃない!」


“みずのはどう”なら波動攻撃だから、いざというときにルカリオも攻撃を操作できる。

こういう連携技は積極的に使っていかないと、

何せ──メガシンカは当分使えないからだ。

四天王は4人全員を勝ち抜かないといけないと門番の人は言っていた。

ただ、メガシンカは連発すると身体への負担が大きい。

それを考えるとメガシンカはもっと後に温存したい。

そんなことを考えていたら、


にこ「ニンフィア! まとめて吹っ飛ばすわよ!!」
 「フィーー!!!」


再びニンフィアが前に出てくる。

“ハイパーボイス”はダメだ!


千歌「フローゼル! “いちゃもん”!!」
 「ゼル、ゼルッル!!!!」


フローゼルがニンフィアに“いちゃもん”を付ける。

“いちゃもん”を受けたポケモンは同じ技が連発できなくなる。


にこ「封じてきた……! “ムーンフォース”!!」
 「フィーーー!!!!!!」
349 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 14:06:30.96 ID:dd6+2abs0

“ハイパーボイス”を封じられた瞬間、にこさんは咄嗟に技を変えてくる。

月のエネルギーを攻撃に変えたフェアリー技が飛んで来る。

エネルギー技なら撃ち合える……!!


千歌「ルカリオ! “ラスターカノン”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは対抗する形ではがねのエネルギーを集束して、発射する。

フィールド中央で二匹の攻撃がぶつかり合い──相殺する。

でも、これでまたニンフィアは“ハイパーボイス”が使える状態になってしまった。

とにかく、まずはニンフィアだ……!!


千歌「ルカリオ!! “しんそく”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


床を蹴って、ルカリオが飛び出す。


にこ「マリルリ!!」
 「マリッ」


再びフィジカル担当なのか、マリルリが前に出てくる。

こうしてニンフィアを守りながら、範囲攻撃で制圧するのが、にこさんの戦い方なんだろう。


千歌「なら……!! ルガルガン、行くよ!!」
 「ワォーーーンッ!!!!!」

にこ「! あのときのルガルガンね……!!」


私はルガルガンを繰り出す。


千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォンッ!!!!」


ルガルガンは天井や壁を跳ね回りながら、軌道の読めない高速軌道で接近する。


にこ「速い……厄介ね」


 「グゥォッ!!!!!」「ワォーーーーンッ!!!!!!」

二匹のポケモンが軌道の読みにくい高速技で翻弄する。


にこ「なら……マリルリ、“ばかぢから”!!」
 「マリッ!!!!!」


マリルリが突然地面を殴りつける、

すると、


千歌「わわ!?」


建物がぐらぐらと揺れる。

それによって、


 「グォッ!?」 「ワゥッ!!!」


床や壁や天井を蹴って加速していた二匹の動きが一瞬鈍る。
350 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 14:08:08.56 ID:dd6+2abs0

にこ「確かに速いけど……少し鈍らせれば十分目で追えるわよ!!」

千歌「……っ!」


にこさんの対応が早い。

完全に見切られる可能性が高いが、一旦引く……?

いや、引いても“ハイパーボイス”が飛んで来るだけだ。


千歌「突っ込め!!」

 「グゥォッ!!!!」「ワォンッ!!!!!」


スピードダウンは痛いが、誤差だ。

そう自分に言い聞かせ二匹を突撃させる。


にこ「マリルリ!! “はたきおとす”!!」
 「マリッ!!!!」

 「グゥォッ!!!!?」

千歌「!? ルカリオ!!?」


マリルリに狙いを定めて飛び出したルカリオが綺麗に迎撃され、床に叩き落とされる。

──でも……!!

本当の狙いは、


千歌「行けぇ!! ルガルガン!!」

 「ワォーーーーンッ!!!!!」


ルガルガンでマリルリの後ろに隠れているニンフィアを攻撃すること……!

変則的な軌道で、マリルリを周り込むように突っ込んでいく。

ニンフィアを射程に捉えた……そのとき、

──ヌッと黒くて凶悪そうな、口が現われた。


千歌「!!!?」

にこ「“ふいうち”!!」
 「クチーーーッ!!!!!!」

 「ギャウッ!!!!?」


ルガルガンがその大きな口に食べられた。


千歌「ル、ルガルガン!!?」


その大きな口は──


 「クチーーー」

千歌「クチート……!!」


クチートの大アゴのようなツノだった。

 『クチート あざむきポケモン 高さ:0.6m 重さ:11.5kg
  大人しそうな 顔に 油断を していると 突然 振り向き
  バクリと 噛み付かれる。 鋼の 顎は ツノが 変形した
  ものだ。 噛み付くと 絶対に 放さないので 注意。』
351 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 14:10:55.71 ID:dd6+2abs0

にこ「ルカリオはマリルリが……ルガルガンはクチートが押さえたわ」

千歌「……っ」

にこ「じゃあ、今度こそニンフィア……!!」
 「フィァァ……!!!」


ニンフィアが息を吸う。“ハイパーボイス”の予兆。


千歌「──……それを待ってたんです!!」

にこ「……は?」


言葉と共に──ヒュン! と音がする。


にこ「!? な、なんの音……!?」


にこさんがキョロキョロと周囲を見回す。


にこ「……何もない……? こけおどしとは小細工使ってくれるじゃない!! ニンフィア、決めてやりなさい!! “ハイパーボイス”!!!」
 「…………」

にこ「……ニンフィア?」
 「フィ……ア……」


ニンフィアが突然、パタリと倒れる。


にこ「ニンフィア!?」


にこさんが傍らのニンフィアを見ると──ニンフィアは攻撃を受けて、戦闘不能になっていた。


にこ「攻撃!? いつのまに……!?」

千歌「確かに、ルカリオもルガルガンも速いけど……もっと速い攻撃があったとしたら? それこそ、“ハイパーボイス”みたいに!」

にこ「もっと、速い……空気の振動……まさか!?」

千歌「そうです! 空気です!!」
 「ゼルルルッ!!!!!!」


フローゼルが尻尾を高速回転させながら、声をあげる。

ニンフィアを攻撃したのは他でもない。──“かまいたち”だ。

音波で攻撃する、ということは攻撃の瞬間口を大きく開かないといけない。

口の中なんて、どう考えても急所でしかない。

固定砲台のように、大技を繰り出すニンフィアの急所に攻撃を叩き込むこと、フローゼルはずっとソレを狙っていたのだ。


千歌「“かまいたち”!!」
 「ゼルッ!!!!!」


再度、フローゼルから空気の刃が飛び出し、


 「マリッ!!!?」


今度はマリルリを切り裂く。


にこ「っく……!! “アクアジェット”!!」
 「マ、マリッ!!!!」


距離を詰めるために飛び出そうとしてくるマリルリ──
352 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 14:13:38.83 ID:dd6+2abs0

 「マリッ!!?」


──がつんのめった。


にこ「!?」

 「グゥォッ!!!!」


先ほどマリルリに叩き落とされたルカリオが、足を掴んだのだ、


千歌「そのまま、上にぶんなげろ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオがマリルリを真上に放り投げる、


 「マリィーー!!!?」


……更に──ギャギャギャッ!!! と金属を擦るような、嫌な音がフィールド上に響き渡る。


にこ「こ、今度は何よ!?」


にこさんが音のする方を振り返ると、


 「ク、クチーーー!!!!?」
にこ「!!?」


クチートの大アゴに噛み付かれたルガルガンが、アゴの中で高速回転を始めていた。


千歌「“ドリルライナー”!!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!」


無理矢理身を捩りながら、鋼のアゴを内側から──ぶち壊した。


 「ク、クチィィィ!!!!!?」


クチートの上顎をぶっ壊し、そのままの勢いで、空中にいるマリルリに向かって、


千歌「“アイアンヘッド”!!!」

 「ワォーーーーンッ!!!!!!」

 「マリィッ!!!!!?」


回転も加わった、鋼鉄の頭突きを炸裂させた。

玉突きのように吹っ飛ばされたマリルリは、その弾力のある身体で、室内の壁、床、天井を何度も跳ね回ったあと──


 「マ、マリ……」


気絶した。


千歌「よっし……!!」

 「ク、クチィ……」


残るはクチートだけだけど……。
353 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 14:15:26.08 ID:dd6+2abs0

にこ「……正確には、戦闘不能じゃないけど……上顎を吹っ飛ばされてるし、とてもじゃないけど、戦闘続行は出来ないわね。マリルリ、クチート、ニンフィア。わたしの手持ちは全て戦闘不能よ」

千歌「……じゃあ!!」

にこ「ええ、千歌。あなたの勝ちよ」

千歌「ぅやったーー!! ルガルガン! ルカリオ! フローゼル! 皆よくやったよー!!!」
 「ワォーンッ」「グォ」「ゼルーー」


3匹を抱き寄せる。


にこ「……まさかストレート負けするとはね……。ホントに強くなってここまで辿り着いたのね」

千歌「えへへ……」

にこ「……負けたのは悔しいけど……ま、最後にちゃんと戦うことが出来てよかったわ」


──と、にこさんが意味深なことを言う。


千歌「最後……? どういうことですか?」

にこ「あー……えっとね、わたし……近いうちに四天王をやめようと思ってるの」

千歌「……え!? なんでですか!?」


確かに今回のバトルの結果は私が3匹を残してのストレート勝ちだったとは言え、にこさんは紛れもない実力者なのには変わりないはず……。


にこ「あーいや、強さの問題じゃなくてね。グレイブ団の異変の間、結局わたしはダリアシティに付きっ切りで他の四天王みたいに地方全体の警護の仕事が出来なかったのよ。それで思ったのよ、まだダリアのジムをこころとここあに任せるのは早かったかなって……」

千歌「そ、そうですか……?」


こころちゃんとここあちゃんも相当手強かった記憶があるんだけど……。


にこ「強さよりも……単純に経験がね。ゴーストポケモンの撃退こそ問題なかったものの、街の人の避難誘導とかは、お世辞にもうまく出来てたとは言いがたかったのよ」

千歌「……なるほど」


確かにあの二人はかなり騒がしかったし、そういう誘導指示とかはうまく出来なさそうかも。


にこ「だから、にこがダリアのジムリーダーに戻って……その後どうするかをもう少し慎重に考えようと思ってね」

千歌「戻って……ってことは、にこさん昔はジムリーダーだったんですね」

にこ「ええ。後任は任せてくれって二人が言うから、ダリアのジムリーダーから、四天王に昇格したんだけどね。でも、やっぱり街の皆をちゃんと守れてこそだもの……」

千歌「そっか……」


ジムリーダーは街の人たちを守る役割もあるから、そういうことなら仕方ないのか……。


にこ「……ま、二人がもっと成長して大人になったら戻ってくるかもしれないから」


そう言いながら、にこさんは肩を竦める。


にこ「なにはともあれ……四天王一人目突破よ」

千歌「! はい!!」

にこ「にこの後ろにワープ装置がある。そこから、最初の広場に戻れるわ。次の部屋も頑張りなさいよ」

千歌「はい!!」


にこさんからの激励を受けて──私は次なる四天王との戦いに挑みます。


354 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 14:16:06.68 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
 口================= 口
  ||.  |⊂⊃                 _●../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.61  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.55 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.58 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:173匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.



355 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:38:05.37 ID:dd6+2abs0

■Chapter087 『決戦! 四天王! A』





千歌「──……よっ、と」


にこさんの部屋を突破し、ワープ装置で中央の広間に戻ってくる。


千歌「……お」


すると、にこさんの部屋に続く橋がぼんやりと光っているのが目に入る。

恐らく突破した証なんだろう。

その光はさっきまで居た部屋の方から中央のエレベーターへと伸びている。


千歌「この光が全部集まると、エレベーターが動くってことだね」


そしたら私は晴れてチャンピオンに……でも、


千歌「この上……何があるんだろう……?」


……まあ、いっか。

どちらにしろ、この先に進むには勝つしかないんだ。


千歌「よし、次の部屋に進むぞ」


私は左から2番目の部屋に向かって歩を進める──





    *    *    *





──二つ目の部屋に入って、まず思ったことは……。


千歌「さ、さっむ……っ!!」


とにかく寒かった。


 「あら? お客さんなんて、久しぶりね」

千歌「!」


凍えていたら奥から声を掛けられる。

そこに居たのは金髪で長身の女性。
356 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:39:05.18 ID:dd6+2abs0

絵里「こんにちは、私は絵里よ。こうして会って話すのは初めましてね、千歌ちゃん」

千歌「は、はじめまして! ……って、なんで私のこと知ってるの?」

絵里「あなたのことは、海未からよく話を聞かされてるからね……海未には会った?」

千歌「い、いえ、まだです」

絵里「そう……それじゃ残念ね」

千歌「え?」

絵里「あなたは海未に会うことなく、このポケモンリーグを去ることになるみたいだから……」

千歌「……!」

絵里「……なんてね」


絵里さんはいたずらっぽく舌を出す。


千歌「私は負けるつもりはありません!!」

絵里「ふふ、気合い十分ね……。それじゃ、皆出てきて」


絵里さんが6つのボールを放る。


 「シア…」「バニバニ〜」「ジュラルー」「コーーン」「ドパン!!」「ジュゴ〜ン」


絵里「私の手持ちはグレイシア、バイバニラ、ルージュラ、キュウコン、サンドパン、ジュゴンよ」

千歌「皆、出てきて!」
 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」

絵里「千歌ちゃんの手持ちはその6匹ね」

千歌「はい!」

絵里「それじゃ……お互い選出に入りましょうか」
357 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:40:24.43 ID:dd6+2abs0

絵里さんはそう言ってポケモンをボールに戻す。

私も皆をボールに戻して、選出に入る。

見た感じ、絵里さんの手持ちはこおりタイプばかりだった。

道理で部屋も寒いわけだ。

ここはいわば敵地、きっとこのフィールドはそれぞれの四天王が戦いやすいようにチューンナップされているんだろう。


千歌「さて……今回はどうしようかな」


とりあえず、相手がこおりタイプなら……。

バクフーンを外す理由はない。後は同じようにこおりタイプに強いルガルガンと……。


千歌「へ、へっくち!!」


うぅ……寒い。

……暖かそうな子がいい。たぶん。


千歌「よし……この3匹で」

絵里「準備は出来たかしら?」

千歌「はい!」


ボールをセットし終えて絵里さんの方に向き直る。


絵里「それじゃ、始めましょうか。四天王『凍てつくアクアブルースノウ』 絵里。全力でぶつかり合いましょう!!」


お互いのボールが放たれる……バトル開始だ──





    *    *    *


358 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:42:23.75 ID:dd6+2abs0


千歌「行くよ! バクフーン!!」
 「バクフーーーンッ!!!!!」

絵里「キュウコン! サンドパン! GO!!」
 「コーーンッ!!!」「ドパンッ!!!!」


アローラキュウコンの特性“ゆきふらし”によって、フィールド内に“あられ”が降り始める。

そして、その中を──


 「ドパンッ!!!!!」


真っ白なアローラサンドパンが飛び出してくる。


千歌「は、速い!?」

絵里「“メタルクロー”!!」

 「ドパンッ!!!!!」


普通のサンドパンよりも発達している巨大な爪がバクフーンに切りかかる。


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バクフッ!!!!」


技を受けるために、炎を纏った拳を前に突き出す。

──ガイン、という硬いものを弾く音と共に、


 「ドパンッ!!!!?」


サンドパンの爪が炎拳に弾き飛ばされ、その衝撃で一瞬無防備な状態になる。


千歌「“かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーーーー!!!!!!」


すかさず、追撃。

この至近距離で、こおりタイプのサンドパンが“かえんほうしゃ”を受けたら大ダメージは間違いないだろう。

──が、


 「ドパンッ!!!!」


サンドパンがキラキラと輝くオーラのようなものを纏って、炎の中から飛び出してくる。


千歌「っ!?」

絵里「“きりさく”!!」

 「ドパンッ!!!!!!」


そのまま、バクフーンを切り裂く。


 「バクフッ……!!!!」


今度は完全に不意を突かれてしまったせいで、攻撃が直撃し、バクフーンが後ろに仰け反る。

だが、サンドパンの攻撃はそれだけでは終わらない。


絵里「“じしん”!!」

 「ドパンッ!!!!!!」
359 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:43:28.00 ID:dd6+2abs0

サンドパンは床に爪を突きたて、そのまま床ごとぐらぐらと揺する。


 「バ、バクフーー」
千歌「バクフーン、落ち着いて!!」


大きな揺れに動揺を見せるバクフーン。

私は揺れる足元に視線を落とし、転ばないようにしていると、


絵里「ふふ、足元ばっかり見てちゃダメよ」


絵里さんが意味深なことを言う。

直後──バキ、バキリ、と何かが砕けるような嫌な音が頭上から聞こえてくる。


千歌「……な、何!?」


咄嗟に天井を見上げると──いつの間にか天井に出来ていた大きなつららが、落っこちてきていた。

“つららおとし”だ……!!


千歌「“ふんか”!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!!!!」


咄嗟に頭上に向かっての爆炎でつららを溶かす。

だが、炎を防御に使ってしまったために、前方からの攻撃に無防備に──


絵里「サンドパン! “アクアテール”!!」
 「ドパンッ!!!!!!」


サンドパンが身を捻って、みずタイプの尻尾攻撃を繰り出してくる。

避けきれない。


千歌「っく!!」


私はバクフーンとサンドパンの間に向かってボールを投げる。


 「ワッフッ!!!!」
千歌「しいたけ!! “コットンガード”!!」


飛び出した、しいたけが毛皮を膨らませ──ボフっと音を立てながら、サンドパンの尻尾を受け止める。


 「ド、ドパン……!!」


攻撃を受け止められ、焦ったサンドパンに向かって、


千歌「“ずつき”!!」
 「ワッフッ!!!!」


頭突いて反撃。

だが、


絵里「サンドパン!! “いかりのまえば”!!」

 「ドパンッ!!!!」

 「ワゥッ!!!?」
360 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:45:14.01 ID:dd6+2abs0

サンドパンは、まるで怯まず反撃してくる。

いくら、効果がいまひとつなんだとしても、ダメージが薄すぎる。

恐らく原因は──サンドパンの周りにあるキラキラと光るオーラのせいだ。

そして、それを使ってるのはさっきから攻撃してこない、後ろのポケモン。


千歌「キュウコンの技……!!」


思い至ってキュウコンの方を見ると、キュウコンの居る場所の上の方にはオーロラが広がっていた。


千歌「“オーロラベール”……!!」


確か、輝くベールで味方の防御と特防を一気に上げる技だ。


絵里「……ふふ」


絵里さんが不敵に笑う。

キュウコンを放っておくと攻撃がうまく通らない……!

サンドパンは前衛で食い止めている、なら今のうちに……!


千歌「ルガルガン!! お願い!!」
 「ワォーーンッ!!!!!」


ボールから繰り出したルガルガンが床を蹴って飛び出す。

ルガルガンはそのまま、壁を蹴って一気にキュウコンに肉薄する。


千歌「“アクセルロッ──」


 「──ドパンッ!!!!!!」

 「ギャゥッ!!!?」

千歌「んなっ!!?」


先ほどまで、しいたけと組み合っていたはずのサンドパンがルガルガンに追いつき、ぶっとい爪でルガルガンを押さえつけていた。


絵里「ふふふ、驚いてるわね」

千歌「……!」

絵里「サンドパンの特性は“ゆきかき”。あられが降るフィールドでは、素早さが倍増するわ」


つまり……そのスピードによって追いつかれたと言うことだ。


絵里「それに……キュウコンも攻撃は出来るわよ! “ふぶき”!」
 「コーーーンッ!!!!」


キュウコンの方から強烈な冷風が飛んで来る。


 「ワ、ワゥ…!!」


その冷気によって、パキパキとしいたけの足元が凍り始める。


千歌「っく……!! バクフーン、“ねっぷう”!!」
 「バクフーーー!!!!!」


対抗するように、“ねっぷう”を撃つ。

どうにか相性のお陰で攻撃は拮抗しているが──
361 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:46:29.44 ID:dd6+2abs0

絵里「行くわよ、グレイシア!!」
 「シア」

絵里「“ふぶき”!!」
 「シアアーーーー!!!!!」


繰り出された3匹目、グレイシアからの追加の“ふぶき”で一気に劣勢になる。


千歌「ぐ……!!」


前衛では、


 「ワゥッ!!!!」

 「ドパンッ!!!!」


どうにか、爪を引き剥がし、自身のタテガミの岩でルガルガンがサンドパンと撃ちあっているが、

後衛同士の戦いは完全にパワー負けしている。


 「バ、バクフーー……!!!」

千歌「! バクフーン!!」


完全に“ねっぷう”が押し負け、“ふぶき”によってバクフーンも凍り始める。

いや、それだけじゃない──。


千歌「……っ」


自分自身の吐く息が白い。

気付けば私の足元も凍り始めている。

肺に刺さる冷たい空気と、凍て付く寒さが集中力をどんどん奪っていく。


千歌「……ぐっ……しっかりしろ!!」


頭を振りながら、自分を鼓舞する。


絵里「……こおりタイプの真髄は場の支配」

千歌「……っ……?」

絵里「寒さは相手の思考能力を奪い、全てを雪と氷に閉ざしていくわ。もうここは私たちが完全に場を支配している」

千歌「……ぐ……」


だんだん足に力が入らなくなり、床に片膝をついてしまう。

床はもう雪だらけで、ついた膝が冷たい。


 「ワ、ワゥ……!!!」

 「バクッフゥ……!!!」


二匹にもどんどん雪が降り積もり姿が見えなくなっていく。

指示を──出さなきゃ。

頭ではそう思ってるはずなのに、


千歌「は……はっ……」
362 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:47:56.85 ID:dd6+2abs0

もう、寒すぎて舌がロクに回らない。

手足が悴み、寒さがもはや痛い。


 「ギャゥッ!!!?」


──ルガルガンの悲鳴が聞こえる。

指示を全く出してあげられなかった所為で、ついにサンドパンに撃ち負けてしまったんだろう。


絵里「……雪に閉ざされて眠るといいわ。大丈夫、勝負がついたらちゃんと助けてあげるから」


千歌「ぐ……ぅ……」


もう……ホントに……ダメ、だ……。

何故だか、だんだんと眠くなってくる。

寒いと眠くなるってのは、どうやら本当らしい。

そんなどうでもいいことを考えながら──私の意識は落ちて行った。





    *    *    *





 「ワフ」


──声がする。


 「ワゥ、ワフ」


──昔から知ってる聞きなれた鳴き声。

その鳴き声はどんどん近付いてきて、


 「ワゥ」


その鳴き声がすぐ傍で聞こえるようになったとき、全身が暖かいものに包まれる。

──知ってる。この感覚。


千歌「しい……たけ……」
 「ワゥ」


しいたけの暖かい“ファーコート”。


 「ワゥ…」
千歌「えへへ……相変わらず、しいたけは暖かいね……」
 「クゥーン…」


辺りは室内だと言うのに、強烈な“ふぶき”のせいで完全にホワイトアウトしていた。

これが四天王絵里さんの実力……。

こんな圧倒的なフィールド支配力……勝ち目があるんだろうか。

そんなことを考えていると、


 「ワォン」
千歌「わっ」
363 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:49:22.84 ID:dd6+2abs0

しいたけが身を寄せながら、頬を舐めてくる。


千歌「…………いや、まだだよね」
 「ワゥ」


バトルは3匹の手持ちが完全に戦闘不能になるまで続く。

まだこうして“ふぶき”が止んでいないのは、絵里さんもまだ戦闘が完全に終わってるとは思っていない証拠だ。


千歌「……最後まで、戦う……私が諦めちゃダメだよね」
 「ワッフ」


暖かい、しいたけが傍に居てくれるお陰なのか、だんだん頭が働くようになってきた。

……とは言ったものの、どうするか。

ルガルガンは恐らく既に戦闘不能だ。

バクフーンも雪に埋もれて、こおりづけ状態。

まともに動けるのは、しいたけのみだ。


千歌「……そういえば、しいたけ」
 「ワゥ?」

千歌「しいたけだけ……まだ、やってないよね」
 「ワゥ」

千歌「必殺技」
 「ワフ」

千歌「海未師匠は……のんびりやさんのしいたけには、向いてないって言ってたけどさ」
 「ワォ」

千歌「……やってみない?」
 「ワン」


しいたけが立ち上がる。


千歌「うん、ありがと。しいたけ」
 「ワッフ」


私もゆっくりと立ち上がる。

真っ白な視界。辺りは“ふぶき”による風の音しかしない。

寒くて、冷たくて、前も見えず、何もわからなくて怖い。

でも……。


千歌「私には……しいたけがいる」
 「ワォン」


誰よりも心強い、ちっちゃい頃から私を守って、そばに居てくれた、しいたけが──。

──集中しろ。

吹き荒ぶ風の中だけど、耳を研ぎ澄まして、音を聞け。

きっと来る筈だ──

 ──ザッ

雪を掻きながら、トドメを刺しに──

 ──ザッザッ


 「──ドパンッ!!!!!」

千歌「──そこだ!!!! “かたきうち”!!!」
 「ワォンッ!!!!!」
364 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:51:49.59 ID:dd6+2abs0

飛び掛ってきた、サンドパンのボディに向かって──


 「ドパンッ!!!?」


しいたけが思いっ切り“ずつき”を叩き込む。

反撃されると思っていなかったのか、自分の飛び掛かる速度を逆に利用された一撃に、サンドパンは大きなダメージを負って雪の上を転がる。

そのまま、転がったサンドパンが何かにぶつかる。


千歌「……!!」


恐らくそのぶつかったのは、


千歌「バクフーン!! “かえんぐるま”!!」
 「──バ、ックフゥゥゥ……!!!!!!!」


バクフーンだ。


 「ド、ドパァァァンッ!!!!!?」


一気に加熱し、バクフーンは自分の身に火炎を纏って、サンドパンを巻き込みながら、氷を溶かして復活する。


千歌「バクフーン!!! ありったけの炎で!!! やるよ!!!」
 「バクフゥーーーーー!!!!!!」

千歌「“ふんえん”!!!」
 「バクフゥゥーーーーー!!!!!!!」


バクフーンの全身から、超高温の噴煙が噴き出す。

この技は味方を巻き込むから使うのを躊躇していたが、もうここまで来たら関係ない。

全身の炎熱エネルギーを一気に放出して、周囲の雪や氷を溶かしていく。


千歌「ここで炎を使い切るつもりで!!!! 一気に燃え上がれぇ!!!!」
 「バックフゥゥゥゥゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!」

千歌「“もえつきる”!!!」


バクフーンを中心に、なにもかも顧みずに発する超高熱が、周囲の“ふぶき”を一気に吹き飛ばす。


絵里「……なっ!!?」


晴れた先で絵里さんが驚いた表情をしていた。

急な超熱波がフィールド全体を一気に覆い尽くす。


絵里「ぐっ!!!? なんて、熱量!!?」
 「コーンッ!!!!!」

千歌「一気に全部焼き尽くせ!!!」
 「バクフゥゥゥゥーーーー!!!!!!!!!!!!」


爆炎が絵里さんたちに向かって拡がっていく。


絵里「!! キュウコン!! “ぜったいれいど”!!」
 「コーーーーーンッ!!!!!!」


キュウコンが全てを凍て付かせる冷気を放つが──

バクフーンの全てを掛けた爆熱はそれを上回り。


 「コ、コーーーンッ!!!!!?」
365 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:53:25.69 ID:dd6+2abs0

キュウコンを飲み込む。


絵里「キュウコン!!?」

千歌「いっけぇぇーーーーー!!!!!」


膨れ上がった爆炎が全てを飲み込んでいく。

……爆炎が晴れた先で、


 「コ、コーーン……」


煤まみれになったキュウコンが倒れていた。


千歌「……はぁ……はぁ……よしっ!!」


キュウコンを押し切った。


絵里「く……!!」


だが、


 「バ、クフ……」


バクフーンは──ぷすぷすと音を立てて、背中から煙を立てている。

全ての炎を出し切ってしまったせいで、もう炎が出せなくなってしまった。


絵里「……まさか、あそこからキュウコンを倒すなんて思ってなかったわ……。でも」
 「シア……!!!」

絵里「まだ、私にはグレイシアが残ってる……炎が使えなくなったバクフーンに、負けるなんてことはさすがにないわ」

千歌「…………」

絵里「……終わりよ、グレイシア、“れいとうビー──」


グレイシアが“れいとうビーム”を撃とうとした瞬間──


 「ワォッ!!!!」

絵里「!?」


グレイシアの足元から飛び出す真っ白な影、

絵里さんが目を見開いた。


絵里「──“あなをほる”!!!?」

千歌「しいたけ!!! “ギガインパクト”!!!!」

 「ワォンッ!!!!!!」


穴から飛び出した、しいたけが、グレイシアを真下から最大の攻撃力で突き飛ばした。


 「シアァァ!!!!?」


とてつもない勢いで全身をぶつけられたグレイシアは、そのまま天井に身体を打ち付け、


 「……シ、ア……」


──ドサッと音を立てながら、床に落下したのだった。
366 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:54:28.17 ID:dd6+2abs0

絵里「……うそ」

千歌「……か……勝った……」


私は気が抜けて、思わず尻餅をついてしまう。

そこに──


 「ワフッ」


しいたけが駆け寄り、飛び掛かってくる。


千歌「うわわっ!!? しいたけ!?」
 「ワゥ、ワォンッ」

千歌「あ、あははっ! もうくすぐったいっ!」


しいたけは勝てたことがよほど嬉しかったのか、私の頬を舐めながら、全力でじゃれ付いてくる。

そんな私たちの元に、


絵里「……まさか、あそこから負けると思わなかったわ」


絵里さんが歩み寄ってくる。


千歌「あはは……正直、私もあそこから勝てるとは思ってませんでした……」


絵里さんの言葉に苦笑する。


千歌「でも……」

絵里「でも?」

千歌「皆を信じて最後まで戦ったから……勝てました」

絵里「……そう」


絵里さんは私の言葉を聞いて、肩を竦める。


絵里「その硬い絆に負けてしまったと言うなら……仕方ないのかもしれないわね」


そう言って苦笑する。


千歌「えへへ……ずっと一緒にいた子だから」

絵里「その仲間との絆と……諦めない強さ……海未が認めた理由がわかった気がするわ。おめでとう、千歌ちゃん、四天王二人目突破よ」

千歌「……はい!!」


かなりの苦戦を強いられたけど、どうにか強敵、絵里さんとのバトルを制し──私は三人目の四天王の間へと進みます。


367 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 15:55:05.91 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
 口================= 口
  ||.  |⊂⊃                 _●../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.62  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.59 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.58 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:179匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.



368 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:20:49.42 ID:dd6+2abs0

■Chapter088 『決戦! 四天王! B』





千歌「──……ここが3つ目の部屋」


左から3つ目の部屋の中に入ると、なんだか随分と天井の高いフィールドがあった。

しかも中央のバトルステージは両側を橋に吊るされているような状態で、その下は大きな穴のようになっていて、底が見えなかった。


千歌「た、高い……」

 「いらっしゃい、挑戦者さん」

千歌「!」


室内の私が入ってきたのとは反対側から声が掛けられる。

栗色のショートヘアー、前髪はおでこを出しているのが特徴的な、綺麗な顔立ちの女性だった。


ツバサ「初めまして、私はツバサよ」


そう言ってツバサさんは6つのボールを放る。


 「マンダァ」「リュー」「サザンドーラ」「ヌメルゥ」「ジャランラ」「ガブ…」

ツバサ「もちろん、バトルをしに来たのよね」

千歌「はい!」


私も6匹のポケモンを出して見せる。


ツバサ「ここまで来たらやることは一つだものね。私の手持ちはボーマンダ、カイリュー、サザンドラ、ガブリアス、ヌメルゴン、ジャラランガの6匹よ」


全部ドラゴンタイプ……どうやらドラゴン使いのようだ。


ツバサ「さ……選出して、始めましょうか」


そう言ってツバサさんは選出準備に入る。


千歌「……」


このバトルへの移行がやたらスムーズな感じ……どこかで見たことがあるようなと思ったけど、英玲奈さんだ。

ここまで来たらやることは一つ──って物言いもなんか似てる気がする……まあ、それはいいとして、選出しないと。


千歌「……さて、と」
369 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:22:17.82 ID:dd6+2abs0

回復したとは言え、ルガルガンは一度休憩させてあげたい。だから、今回はお休み。

どちらにしろこの部屋の構造だと、壁や床、天井を跳ね回る戦い方が得意なルガルガンだと戦い辛いしね……。

バクフーンも炎が戻るまでもう少し時間が掛かりそうだし、今回は控えに回ってもらおう。

そうなると候補は4匹……。

この広くて高いこのバトルフィールド……どう考えても、飛行しながら戦うことを考えての構造だと思う。

ムクホークはいた方がいい。

同じ理由で、高所で自由が効くのは──ルカリオかな。

波導を使えばちょっとの間、壁にも貼り付けるし。

残るは……フローゼルか、しいたけか……。

どっちも飛ぶのは無理だけど……。

悩んだ末に──しいたけを選択する。

続投にはなってしまうけど、ここぞと言うとき頼りになるのは、なんだかんだで付き合いの長い、しいたけだしね。


千歌「……選出できました!」

ツバサ「そう、それじゃ始めましょう。四天王『飛翔する竜翼』 ツバサ。お互い全力で楽しみましょう」


──お互いのボールがフィールドを舞う。バトルスタート……!





    *    *    *


370 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:23:09.74 ID:dd6+2abs0


ツバサ「サザンドラ!!」
 「サザンドーラ!!!!!」

千歌「ムクホーク、行くよ!!」
 「ピィィィィ!!!!!!」


ムクホークが開幕と同時に飛び出す。


千歌「“すてみタックル”!!」
 「ピィィィィ!!!!!!!!!!」


一気に加速して、最高速に達し、サザンドラに向かって飛び込んでいく。


ツバサ「“りゅうのはどう”!!」
 「サザン、ドーーラッ!!!!!!」


サザンドラは一直線に向かってくるムクホークに向かって、ドラゴンエネルギーを渦巻かせながら放ってくる。

──ただ、ムクホークの戦い方に小細工は存在しない。

そのまま、“りゅうのはどう”に突っ込み──


 「ピィィィィィィ!!!!!!!!!」


ダメージを受けながらも、その中を突っ切って、サザンドラに肉薄する。


 「サザンッドラーー!!!!!」

ツバサ「……!」


そのまま、突撃し、サザンドラを後方に突き飛ばす。


ツバサ「そういう“すてみ”な戦い方、嫌いじゃないわ! “かえんほうしゃ”!!」

 「サザンッ!!!!」


サザンドラの三つの首が同時に炎を放射する。


千歌「“ブレイブバード”!!」

 「ピィィィィ!!!!!!!」


でも、そんなの構いなしに再び突撃する。

メラメラと音を立てながら燃え盛る炎の中を突き抜けるように、


 「ピイィィィィィィ!!!!!!!」


再びサザンドラに肉薄し、クチバシを突き立てる。


 「サザンッ!!!!!」


そして、密着した距離のまま、一気に攻撃を畳み掛ける。


千歌「“インファイト”!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!!!」


そのまま、全身の膂力で無理矢理サザンドラを殴りつけ──


 「サザンッ……!!!!」
371 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:25:25.64 ID:dd6+2abs0

強引にぶっ飛ばし、サザンドラを壁に叩き付ける。


 「サ、サザン……」


壁に叩き付けられ、大ダメージを受けたサザンドラはヘロヘロと落下していく。


ツバサ「戻って、サザンドラ! いくわよ、ボーマンダ!」
 「マンダァ!!!!!」


早い試合展開。サザンドラを戦闘不能にし、次に出てきたのはボーマンダ。

そして、それと同時にツバサさんの首もとのネックレスが光る。


ツバサ「メガシンカ!!」

千歌「……!!」


──メガシンカを使ってきた。

光に包まれたボーマンダは──前足が極端に短くなる代わりに、立派な翼が更に巨大化する。


ツバサ「“すてみタックル”!!」
 「マンダァァッ!!!!!」


一気に最高速になって、ムクホークの方に飛び出すメガボーマンダ。


千歌「! 速い!!」

 「ピィィッ!!!!」


“すてみ”で戦った分手負いのムクホークは回避もままならず、


 「ピィィィィ!!!!!?」


“すてみタックル”が直撃し、今度は逆にこっちが壁に叩きつけられてしまった。


 「ピ、ピィィィ……」

千歌「戻って、ムクホーク!! ルカリオ、行くよ!!」
 「グゥォッ!!!!」


まずはお互いパワーファイトで一匹ずつ戦闘不能だ。

私は二匹目、ルカリオを繰り出す。


千歌「“はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは空中を飛んでいるボーマンダに向かって、波導を球状に集束して発射する。


 「マンダァァーー!!!!!」


フィールド内を高速で飛行しながら、ボーマンダは避けようとするが──。

“はどうだん”は相手の波導を感知して追いかける技だ。

フィールド上空を旋回しながら飛び回るボーマンダをしつこく追尾する。

動きを制限したところで……。
372 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:26:34.53 ID:dd6+2abs0

千歌「追撃するよ!! “きあいだ──」

ツバサ「ガブリアス!! “ダブルチョップ”!!」

千歌「!!」

 「ガァーーーブッ!!!!!」


いつのまにか、繰り出されたガブリアスがルカリオに向かってチョップを振り下ろしてくる。


 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは咄嗟にお馴染みの骨状の武器を作り出して、ガブリアスのチョップを受け止める。


ツバサ「“アイアンヘッド”!!」

 「ガァブッ!!!!」


畳み掛けるように、繰り出される鋼鉄の頭突き。


千歌「“あくのはどう”!!」
 「グゥーーォッ!!!!!」


両手が塞がった状態のルカリオはその場で、ガブリアスの頭部目掛けて波導エネルギーを発射する。


 「グワブッ!!!!」


顔面に波導を食らって怯んだところに、


千歌「“ボーンラッシュ”!!!」

 「グゥォッ!!!!!」


得物を振り回して、ガブリアスに攻撃、


 「ガ、ガブッ!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!! “ドラゴンダイブ”!!」

 「マンダァッ!!!!!」

千歌「くっ!?」


だが、自由にはさせてもらえない。

空中を旋回していた、ボーマンダが“はどうだん”に追われたまま、高速で落下してくる。


千歌「ルカリオ!! “みきり”!!」

 「グゥォッ!!!!」


攻撃が当たる直前で飛び退き、ボーマンダの攻撃を回避、


 「マンダァッ……!!!」


ボーマンダはフィールドを凹ませながらも、攻撃が外れたことを理解すると、速度を保ったまま、再び上空へと高速で離脱していく。

このままじゃ、“はどうだん”は当たりそうもない。

──なら、

ボーマンダを追いかけて、フィールド上に降りてきた“はどうだん”を、


 「グゥォッ!!!!」
373 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:28:10.18 ID:dd6+2abs0

ルカリオの波導を操る力で持って、


千歌「標的を変える──!!」


 「ガァブッ!!!!?」

ツバサ「!! ガブリアス!!」


急激に進行方向を変えられ、ガブリアスは咄嗟に対応しきれず“はどうだん”が炸裂する。


千歌「“インファイト”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


畳み掛けるように、ルカリオが全力の“インファイト”を仕掛ける。


 「ガァブッ!!!!!!」


ガブリアスは咄嗟にガード姿勢を取る、そこに向かって、


 「グゥゥゥォァァァッ!!!!!!」


拳を、蹴りを、頭を、ありとあらゆる部位を使いながらルカリオが猛攻を仕掛ける。

ガブリアスは防戦一方でどんどん体力を削られていく──ように見えたが、


ツバサ「ガブリアス!! “げきりん”!!」

 「ンガアアアアアアアアアブッ!!!!!!!!!!!!!」

千歌「!?」


突然ブチギレるように、とんでもない雄叫びを上げ、それに呼応するように、ガブリアスを中心にフィールド上がひび割れる。

そのまま、ガブリアスが乱暴に腕を振るうと──

──バキ、メキ!! と音を立てながら衝撃波が発生し、


 「グゥゥォッ!!!!?」


ルカリオを吹っ飛ばす。

そして、ルカリオが吹き飛んだあと、余った破壊のエネルギーが更にフィールドに大きなヒビを入れる。


千歌「ぐ……凄い破壊力……!?」


組み合ったルカリオを強引にパワーだけで引き剥がし、

更に余ったエネルギーはフィールドすらも、めちゃくちゃに割り砕いている。


 「ガァァァブッ!!!!!!」


暴れたままのガブリアスが吹っ飛んだルカリオを追いかけて、飛び出してくる。

肉薄のために踏み切った足元すらも、ガブリアスの破壊的なパワーで──メキ、バキバキ!! と音を立てながら、ヒビ割れ、軋み、凹む。

デタラメなパワーだが──


千歌「怒りに任せた直線的な攻撃──見切れる!!」

 「グゥォッ!!!!」
374 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:30:12.59 ID:dd6+2abs0

ルカリオが飛び出してきたガブリアスに向かって手を翳す。

──必殺の一撃。


千歌「──そこ!! “はっけい”!!」

 「グゥゥォッ!!!!」


飛び込んできたガブリアスの胸部に向かって、波導のエネルギーを直接ぶつける。


 「グワァァァァァブッ!!!!!!!!」


“はっけい”が直撃した、ガブリアスが悲鳴をあげて、崩れ落ち──


 「ガァァァァァブッ!!!!!!!!」

千歌「!!!?」


──ていなかった。


 「ガァァッァブッ!!!!!!」

 「グゥワッ!!!?」


ガブリアスは無理矢理、ルカリオに噛み付き、


 「グゥォッ!!!!?」

千歌「ルカリオっ!!!」


噛み付いたまま、首を縦に振るって、ルカリオを地面に叩き付ける。


 「グゥワッ!!!!!」


叩き付けられ、浮いたルカリオに向かって、


 「ガァァァブッ!!!!!」


乱暴に尻尾を横薙ぎにし、フィールドの外側まで吹っ飛ばす。


 「グ、グォッ!!!!!」


ルカリオは、大きなダメージを負ったものの──ダンッ!! と大きな音を立てながら、どうにか波導を使って壁に着地する。


 「ガァァァァァブッ!!!!!!!!」


怒り狂ったガブリアスは、そのまま、ルカリオに向かって飛び出す──


千歌「! ルカリオ! そこで待ってれば、ガブリアスは勝手に落ちるよ!!」

 「グゥォッ!!」
375 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:32:55.84 ID:dd6+2abs0

ルカリオはフィールドの外──つまり、ルカリオに向かって突っ込んでいけば奈落の底に落ちるだけだ。

──と、思ったら、


 「ガァァアァブッ!!!!!!!」


ガブリアスは手足を折畳み、


千歌「い゛っ!!?」


そのまま、飛び出した。


ツバサ「残念、ガブリアスは飛べるわよ」

千歌「き、聞いてない!!」

ツバサ「言ってないもの」


そのまま、音速を超えるスピードでガブリアスがルカリオに迫る。


千歌「“しんそく”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


壁を蹴って、ルカリオが飛び出す。


 「ガァァァァブッ!!!!!!!」


直後、ルカリオが数瞬前に居た場所にガブリアスが突き刺さる。

それと同時に──バキバキッ、メキッ!! っとヤバイ音が響き渡る。

とつもないパワーで突き刺さったガブリアスを中心に、内壁がへしゃげて、一気にヒビが入っていく。


千歌「あ、当たってたらやばかった……!!」


ルカリオは“しんそく”で移動しながら壁を走る。

そこに向かって、


 「マンダァッ!!!!!」

千歌「!」


ガブリアスの“げきりん”に巻き込まれないように距離を取っていたボーマンダがここぞとばかりに襲い掛かってくる。


ツバサ「“ドラゴンクロー”!!」

 「マンダァッ!!!!!」


ボーマンダの爪が迫る。


千歌「ルカリオ!! 骨!!」

 「グゥォッ!!!!」


私の指示で、再び作り出した得物で爪を受け止める。


ツバサ「その悪い足場で戦えるかしら!!」
376 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:35:30.94 ID:dd6+2abs0

ツバサさんの言う通り、ルカリオが立っているのは壁だ。

空中を自在に飛べるボーマンダと打ち合うのは分が悪い。

だから、


千歌「骨!! 突き刺せ!!」

 「グゥォッ!!!!!」

ツバサ「!?」


爪を受け止めた骨が急にたわんで、その両端がボーマンダの腕に突き刺さる。


 「マ、マンダァッ!!!!!」


驚いて、飛び退くボーマンダ。

骨はあくまで波導のエネルギーだ。

硬化できるなら、軟化も出来る。

硬い先端だけ残して、得物を柔らかくし、攻撃をいなしながら、先端を突き刺した。

自前の武器だからこそ出来る芸当だ。

──だが、


 「ガァァァァッァブッ!!!!!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!!?」

千歌「ルカリオ!!?」


そんなことを考えてる場合じゃなかった。

壁を抉り壊しながら、ガブリアスが壁に張り付くルカリオに、ジェット機のような速度でぶつかってくる。

猛スピードで突っ込まれたルカリオは──


 「グ、グォ……」


吹っ飛ばされ、呻き声をあげる。

二匹のドラゴンポケモンとずっと戦闘していたのだ、もう限界だ。


千歌「戻れ!! ルカリオ!!」


私はルカリオをボールに戻す。


 「ガァァァァァァブッ!!!!!!」


怒り狂うガブリアスはボールに戻ったルカリオを追いかけて、壁から飛んで来る。

ただ、何度も言うようにガブリアスは怒りに任せて直線的に突っ込んでくる。

軌道もタイミングも見切れる。


千歌「しいたけ──」
 「ワフッ」


繰り出した最後の手持ち、しいたけと共に迫るガブリアスの軌道を見切って、


千歌「“かたきうち”!!」
 「ワフッ!!!!」


ガブリアスを打ち上げるように、前傾姿勢から、後頭部による“ずつき”を下から上に向かって叩き付けた。
377 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:37:49.49 ID:dd6+2abs0

 「ガァァァァァブッ!!!!!!!」


音速で飛びながら、掬い上げられるように打ち上げられたガブリアスは──

──ドゴンッ!! と大きな音を立てながら、背後の壁面に激突し、


 「ガ、ァ、ブ……」


ついに気絶して、やっと大人しくなった。


千歌「や、やっと倒せた……」
 「ワフッ」

ツバサ「戻りなさい、ガブリアス」


残るはお互いトリミアンのしいたけとメガボーマンダ。


ツバサ「ボーマンダ!! “すてみタックル”!!」

 「マンダァッ!!!!!!!」


ボーマンダが飛び出す。


千歌「しいたけ! “コットンガード”!!」
 「ワフッ!!!!」


しいたけの得意技、“コットンガード”でしいたけが一気にもふもふと膨張していく。

──ドガスンッ と音を立てながら、ボーマンダが激突してくる。


 「ワ、ワォッ!!!!!」


強烈な突進に無傷まではいかないものの──しっかりと受け止める。


 「ワンッ!!!!」


頭を振るって、ボーマンダを追い払う。


ツバサ「! ボーマンダの攻撃を真っ向から受け止めるなんて、とてつもない防御力ね……」

千歌「それがしいたけの自慢なんで!」

ツバサ「でも、受け止めるだけじゃ、勝てないんじゃない?」


確かに、攻撃を受けるだけじゃ、ダメージは与えられない。でも……。


千歌「そうでもないですよ!」

ツバサ「……? 何言って……」


ツバサさんが訝しげに顔を顰めていると、


 「マン、ダ……ァッ……」

ツバサ「!? ボーマンダ!?」


ボーマンダは苦しげな表情をしている。


ツバサ「何!? こ、これは……どく状態!? いつの間に……!?」

千歌「さっき、攻撃を突き刺したときに……毒を注入しました!」

ツバサ「突き刺した……? ……ルカリオの骨か……!!」
378 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:39:07.67 ID:dd6+2abs0

──そう、ルカリオはただ怯ませるためだけに骨の形を変えて突き刺したわけじゃない。

あの骨を刺したのは、“どくどく”を決めるためだ。


千歌「そして、しいたけの防御力でボーマンダが力尽きるまで凌ぎきれば、私たちの勝ち!!」
 「ワォンッ!!!!!」

ツバサ「……なるほど。なら、もう残された選択肢はシンプルね!!」

 「マンダ……ァッ!!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!! “げきりん”!!!」

 「マンダアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!!」


ボーマンダが怒りのエネルギーを解放して突っ込んでくる。


千歌「“コットンガード”!!!」
 「ワッフゥッ!!!!!!」


さらにしいたけがもこもこと毛皮を増やして、防御を増す。

そこにボーマンダが突っ込んできて、爪や、尻尾、翼に、頭とあらゆる部位でめちゃくちゃに攻撃を仕掛けてくる。


 「ワッフッ!!!!!!」

 「マンダ、アァァァァアァァ!!!!!!!!!!!!」

ツバサ「攻撃を受けきれずトリミアンが倒れるのが先か!! もうどくが回ってボーマンダが力尽きるのが先か!!! 勝負!!」


盾と矛が全力でぶつかり合う。

メガシンカのパワーを載せた攻撃が、何度もしいたけに叩き付けられる。


 「ワッフッ……!!!!」


いくら防御が高いとは言え、至近距離で全力の攻撃を叩き込まれ続けるのは、さすがにかなりのダメージを貰う。


千歌「しいたけ!! 頑張って!!」
 「ワォーーンッ!!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!!! 怒りのパワーを全力でぶつけなさい!!」

 「マンダアァァァアァァァァァッッ!!!!!!!!!!!」


もうここまで来たら、本当に攻撃と防御の力比べ。


 「ワフッ!!!!!」

 「マンダアァァァァッ!!!!!!!!!」


防御を続けるしいたけ、暴れるボーマンダ、

不意に、

──ガスン、


 「キャゥンッ!!!!!?」


その内の一発が偶然、しいたけの急所を捉えてしまった。


千歌「しいたけ!!?」


しいたけの体が揺れる。
379 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:39:54.53 ID:dd6+2abs0

千歌「──頑張れっ!!!! しいたけっ!!!!!」
 「ワ、ォンッ!!!!!!!!!!!」


しいたけが私の声に呼応するように、気合いを込めて、地面を踏みしめる。


 「マンダ、アァァァァァッ!!!!!!!!!」


激しい攻撃は尚も続くが──次第に、


 「マンダ、ァァッ……!!!!!」


ボーマンダの雄叫びは力を失っていき、


 「マン、ダァァッ……!!」


そして、


 「マン、ダ…………」


毒によって、力尽きたのだった。


ツバサ「……よく頑張ったわ、戻って、ボーマンダ」


ツバサさんがボーマンダをボールに戻した。


千歌「しいたけ!!」


バトルが終わり、しいたけに駆け寄ると、


 「ワフ……」


しいたけは私の頬の頬をペロっと舐めたあと、


 「ワゥ……ッ」


ドサっとフィールドに崩れ落ちた。


千歌「……! ……しいたけ、ありがとう……よく頑張ったね……」
 「クゥーン……」


満身創痍の相棒を抱きしめる。


ツバサ「……本当にギリギリの戦いだったようね」


そう言いながら、ツバサさんがこちらに向かって歩いてきていた。
380 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:40:32.79 ID:dd6+2abs0

千歌「はい……どっちが先に倒れてもおかしくなかった……」

ツバサ「……でも、一瞬でも長くフィールドに立っていた方が勝者。トリミアン──しいたけちゃんって言うのかしら? その子のガッツの勝利よ」

千歌「……はい!」

ツバサ「これで、四天王は何人目?」

千歌「えっと、ツバサさんで三人目です」

ツバサ「そう……じゃ、次が最後ね」

千歌「……最後──」


つまり、残るは……。


千歌「海未師匠……」

ツバサ「海未さんは強いわよ」

千歌「はい……知ってます」


他でもない、私を鍛えてくれた人。

海未師匠が居なかったら、ここまでは確実にたどり着けていなかった。

私にとっての恩師。

そんな海未師匠との約束──『ポケモンリーグで待っています』

やっとその約束が果たせる。


ツバサ「検討を祈るわ」

千歌「……はい……!!」


私は三人目の四天王を突破し──最後の戦いへと望みます……。


381 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:41:23.90 ID:dd6+2abs0
>>380 訂正

千歌「はい……どっちが先に倒れてもおかしくなかった……」

ツバサ「……でも、一瞬でも長くフィールドに立っていた方が勝者。トリミアン──しいたけちゃんって言うのかしら? その子のガッツの勝利よ」

千歌「……はい!」

ツバサ「これで、四天王は何人目?」

千歌「えっと、ツバサさんで三人目です」

ツバサ「そう……じゃ、次が最後ね」

千歌「……最後──」


つまり、残るは……。


千歌「海未師匠……」

ツバサ「海未さんは強いわよ」

千歌「はい……知ってます」


他でもない、私を鍛えてくれた人。

海未師匠が居なかったら、ここまでは確実にたどり着けていなかった。

私にとっての恩師。

そんな海未師匠との約束──『ポケモンリーグで待っています』

やっとその約束が果たせる。


ツバサ「検討を祈るわ」

千歌「……はい……!!」


私は三人目の四天王を突破し──最後の戦いへと臨みます……。


382 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 17:41:57.63 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
 口================= 口
  ||.  |⊂⊃                 _●../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.62  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.62 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.60 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.65 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:185匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.



383 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:39:43.15 ID:dd6+2abs0

■Chapter089 『決戦! 四天王! C』





──四つ目の部屋、入口に刃のマークがあった部屋。

踏み入れた部屋の奥では、


海未「────」


海未師匠が正座をして待っていた。


千歌「……」


私がバトルスペースにつくと、


海未「……来ましたか」


海未師匠はゆっくりと目を開ける。


千歌「師匠……」

海未「よくここまで辿り着きましたね、千歌。流石、私の弟子です」


海未師匠はすっと立ち上がり、ボールを放る。


 「ケンキ」「エルレ」「ストライ」「クワ」「──ギル」「──ムシャ」

海未「……今さら言葉は必要ありません」

千歌「……はい!」


私も手持ちを出す。
384 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:40:44.79 ID:dd6+2abs0

 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」

海未「私の手持ちは見ての通り、ダイケンキ、エルレイド、ストライク、カモネギ、ニダンギル、グソクムシャの6匹ですが……」


海未師匠はそのうち三匹をボールに戻す。


千歌「……!」

海未「ここまで来て、手持ちを隠すような小細工をするつもりはありません。私はダイケンキ、ストライク、エルレイドの三匹で戦います」


手の内を包み隠さず、予め選出を私に教えてくる。……海未師匠らしい。


千歌「ムクホーク、フローゼル、しいたけ。戻れ」


私も3匹をボールに戻し。


千歌「私はバクフーン、ルガルガン、ルカリオの三匹で戦います!」

海未「……わかりました。他に何かありますか?」

千歌「海未師匠」

海未「なんですか」

千歌「……今日ここで、師匠を越えます」

海未「……いいでしょう。なら見せてください、貴方の実力を。四天王『剣心』 海未。いざ、尋常に……」


 「バクフー」

 「ケンキ」


お互い最初の手持ち、バクフーンとダイケンキが前に出る。──最後の戦いが、始まった。





    *    *    *


385 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:42:02.26 ID:dd6+2abs0


海未「ダイケンキ!」
 「ケンキ!!!」


海未師匠の一匹目ダイケンキは前足の鎧から刀を取り出す。

 『ダイケンキ かんろくポケモン 高さ:1.4m 重さ:94.6kg
  前足の 鎧の 一部が 大きな 剣に なっている。
  アシガタナと 呼ばれる 剣を 振るい 相手を 倒す。
  一睨みで 敵を 黙らせ 吼える だけで 敵を 圧倒する。』

どうやら、アシガタナと呼ばれる武器らしい。


千歌「バクフーン、行くよ!」
 「バクフーー!!!!」


バクフーンの背中に炎が滾り、攻撃の態勢に入る。

──が、


 「ケンキ!!!!」


ダイケンキは一瞬でバクフーンに肉薄してくる。


海未「“シェルブレード”!!」

 「ケンキッ!!!!!」


アシガタナを振るって、斬りつけて来る。


千歌「“ブレイククロー”!!」
 「バクッ!!!」


その刀を、バクフーンが鋭い爪で受けるように切り裂くと──

刀は中腹から綺麗に折れてしまう。


海未「……!」

 「ケンキッ」


ダイケンキはすぐさまバクフーンから距離を取り、最初に取り出したのとは逆の脚から、もう一本のアシガタナを取り出す。


海未「“ブレイククロー”……炎熱の攻撃力を載せて、切断能力を向上させていますね」


師匠は切断され床に落ちたアシガタナを見てすぐさま分析をする。


海未「一筋縄ではいかなさそうですね……!! “れんぞくぎり”!!」

 「ケンキッ!!!!」


再びアシガタナを構え、ダイケンキが飛び出してくる。


千歌「もう一回!! “ブレイククロー”!!」
 「バクフーーー!!!!!」


再び、炎熱を爪に宿しながら、鋭い爪でアシガタナを受ける。

ぶつかる爪と刀、再び炎熱がアシガタナを──


海未「すぐに引いて、返しなさい!!」

 「ケンキッ!!!!」
386 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:44:08.73 ID:dd6+2abs0

攻撃が交わる瞬間、炎熱で焼ききれる前にダイケンキは刀を引き、


 「バクッ!!!?」


そして、目にも止まらぬスピードでバクフーンの籠手に当たる部分を上から叩く。


千歌「っ!! 速い……!!」


籠手を撃たれ、僅かに姿勢の崩れたバクフーンの喉元に──


 「ケンキッ!!!!」


ダイケンキのアシガタナが横薙ぎに一閃。


 「バクフッ!!!!!」


だが、バクフーンもただでは食らわない。

無理矢理、上半身を仰け反らせることによって、攻撃はバクフーンの首の皮一枚のところを薙ぐだけに終わる。


 「ケンキッ!!!!」


しかし、ダイケンキの“れんぞくぎり”は終わらない。横薙ぎに抜けた一閃がすぐに切り返して戻ってくる。


千歌「“ねっぷう”!!」
 「バクフッ!!!!」

 「ケンキッ!!!」


だが、それが届く前にバクフーン体毛が爆発し、激しい“ねっぷう”を生み出す。

爆風を目の前で受け、ダイケンキが怯んだところに──


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バクフーーー!!!!」


炎を纏った拳を打つ。

その拳は──

──ガキンッ!


千歌「!」

 「ケンキッ」


ダイケンキの前足の鎧に防がれる。


海未「“メガホーン”!!」

 「ケンキッ!!!!」


そして、鋭いツノをバクフーンの鳩尾辺りに向かって、突き立ててくる。


千歌「……掴めっ!!」
 「バクフッ!!!」


バクフーンは身を引きながら、そのツノを両手で掴む。
387 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:48:02.79 ID:dd6+2abs0

海未「……そうこなくては!! “ハイドロポンプ”!!」

千歌「!」

 「ケンキィッ!!!!」

 「バクフッ!!!!」


ツノを掴んで無理矢理止めたところに、至近距離から“ハイドロポンプ”。

バクフーンは攻撃が直撃し、フィールドの後方まで一気に吹っ飛ばされる。


海未「畳み掛けなさい!! “アクアテール”!!」

 「ケンキッ!!!」


吹っ飛んだバクフーンに飛び掛かるように、追撃を仕掛けてくる。


千歌「バクフーン!! 走って!!」

 「バクフッ!!!!!」


バクフーンはすぐに起き上がり、私の背後を迂回しながら走り出す。

バクフーンが飛び出したすぐ後に──

──ビシャンッ! と音を立ててダイケンキの縦薙ぎ尻尾が床を打つ。


海未「“アクアジェット”!!」

 「ケンキッ!!!!」


海未師匠は攻撃を外しても冷静に追撃の手を打ってくる。


千歌「こっちも加速!! “ニトロチャージ”!!」

 「バクフーー!!!!」


二匹が走り回る中、考える。

ダイケンキは武器であるアシガタナと、自身の持っている鎧で攻撃を防ぐ、攻防のバランスが両立したポケモン。

それに加え単純にみずタイプであることも考えるとバクフーンの攻撃は遠距離でも近距離でも対応されてしまう。

じゃあ、どうするか……。


 「バクフッ!!!!」

 「ケンキッ!!!」


思案しながら、フィールドを駆ける二匹を目で追う。

その際──最初に斬り裂いたアシガタナが目に入る。

……相手が丈夫な鎧を持っていても、バクフーンの炎熱をしっかり伝えれば、攻撃は通る。

──梨子ちゃんとの戦いのときもそうだったけど、炎と言うのは分厚い壁などには正直あまり強くない。

炎が散ってしまうからだ。

対象全体を飲み込むほどの火力があれば別だけど、炎は壁に当たるとすぐに直進能力を失ってしまう。

普通の物理的な攻撃と違って、炎そのものに重さがあるわけじゃないからだと思う。

ただ……そんな炎でもって、梨子ちゃんとの勝負には勝利した。

そして、そこから一つのアイディアを思いつく。


千歌「……やってみる価値はある」

 「バクッ!!!」
388 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:51:01.89 ID:dd6+2abs0

いいタイミングでバクフーンが私の元に戻ってくる。


千歌「バクフーン!! やるよ!!」
 「バクッ!!!」


──集中。


千歌「……ふぅー……」


──拡がらないように──

── 一点に向かって──

──炎を通す──

イメージは──


千歌「……針のように──」
 「バクフ……ッ!!!!」

 「ケンキッ!!!!!」

海未「“メガホーン”!!」


ダイケンキが“アクアジェット”のスピードを載せたまま、ツノを突き立ててくる。

そのツノの頂点に向かって──指差した。


千歌「──“ひのこ”!!」
 「──バク!!!」


限界まで細く、集束した炎が飛び出し──


海未「……!」


ダイケンキのツノの先から、貝殻の兜を貫き進み──

──ボンッ!!!! と音を立てて、ダイケンキの鎧の内側で爆発した。


 「ケ、ンキッ……」


急に頭部に──しかも、兜の内側に爆発を食らったダイケンキは、白目を向いて、その場で気絶した。


海未「……あえて大きな火力の技ではなく、技の威力を絞って、一点を貫く精度を上げた……ということですね」


海未師匠はダイケンキをボールに戻しながらそう言う。


海未「行きなさい!! ストライク!!」
 「ストライーク!!!!」


前に出てきた二匹目、ストライクは、その場で“きあいだめ”を始める。


千歌「バクフーン!! もう一発……“ひのこ”!!」
 「──バクッ!!!!」


バクフーンが先ほど同様、鋭く“ひのこ”を放つ──が、


海未「──二度も通用すると思ってるんですか?」
 「ストライ──」


ストライクが構え、
389 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:51:47.78 ID:dd6+2abs0

海未「“しんくうは”!!」
 「ライクッ!!!!!」


真空を切り裂く衝撃波が、真っ向から“ひのこ”を掻き消し──


 「バクッ!!!!」
千歌「!」


そのまま、バクフーンもろとも、切り裂いた。


千歌「バクフーン!!」
 「バ、ク……」


バクフーンが倒れる。

今度は海未師匠の一撃必殺が決まる。


千歌「……戻れ、バクフーン」


私はバクフーンをボールに戻す。


千歌「ルガルガン!!」
 「ワォーーーンッ!!!!」


ルガルガンが雄叫びをあげながら飛び出す。


千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォーーーンッ!!!!!」


ルガルガンは一気に加速し、壁や天井を跳ね回りながらストライクに迫る。

だが、海未師匠は猛スピードのルガルガンなど、大した問題だと思っていないのか、


海未「…………」


目を瞑っている。


 「ワォーーーンッ!!!!」


今まさにルガルガンが、ストライクに飛びかかろうと言う瞬間──


海未「──そこです、“かまいたち”!!」
 「ストライクッ!!!!」


── 一閃。


 「ギャウッ!!!」


空気の刃がルガルガンを捉え、切り裂いた。


千歌「……!! ルガルガン、大丈夫!?」

 「ワ、ワォンッ!!!」


どうにか耐えたようだ。

やっぱり海未師匠相手にただ速いだけじゃ、通用しない。

一点、正確に、相手の弱点をぶち抜く──。
390 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:53:14.88 ID:dd6+2abs0

千歌「“ドリルライナー”!!」

 「ワォンッ!!!!」


ルガルガンが回転を始める。

回転したまま、自身の鋭いタテガミの岩で──打ち抜く。これしかない。


海未「……シンプルですね、いいでしょう。受けて立ちますよ。ストライク!!」
 「ストライクッ!!!!」


真っ向から飛んで来るルガルガン、構えるストライク。


 「ワォォーーンッ!!!!」

海未「──“つばめがえし”!!!」
 「ストライクッ!!!!!」


二匹の攻撃が交差する。

結果──


 「ワォ……ン」


ルガルガンが静かに崩れ落ちた。


千歌「……くっ」


技の精度が足りなかった。


海未「……いえ、お見事です」

千歌「え?」

 「ストライ……」


数テンポ遅れて、ストライクも崩れ落ちる。


千歌「……!」

海未「相討ちですね」


これでお互い残るは一匹。


 「グゥォッ」

 「エルレ」


ルカリオとエルレイドが前に出る。


海未「……千歌」

千歌「なんですか」

海未「本当によくここまで辿り着きました。私は貴方がここまで辿り着き、今──師である私を越えようと全力で戦ってくれていることが何よりも嬉しいんです」

千歌「……」

海未「……ですので、私は師として……千歌、貴方の越えるべき壁として、エルレイドと共に私の磨き上げた心と、技と、体の全てをぶつけようと想います」
391 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:54:10.77 ID:dd6+2abs0

その言葉と共に、海未師匠が取り出したペンダントが七色に光る。

あれは──


千歌「キーストーン……!!」


──メガペンダントだ。

そして、呼応するようにエルレイドが光る。

大きな腕の刃がより一層大きく鋭くなる。


 「エルレ……!!!」

海未「さあ、来なさい!! 千歌!!」

千歌「はい!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」

千歌「メガシンカ!!」
 「グゥゥゥォッ!!!!!!!」


ルカリオが七色の光に包まれ、メガシンカする。

師匠と全力で戦うために──


海未「一撃です」

千歌「!」

海未「私は……次の一撃で貴方たちを仕留めるつもりで攻撃します。千歌、貴方もそのつもりで来なさい」

千歌「……はい!!」

 「グゥォッ……!!」

 「エルレ……」


二匹が構える。
392 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:55:18.92 ID:dd6+2abs0

海未「──……すぅー……」

千歌「──……ふぅー……」


トレーナーの私たちも呼吸を整え、集中。メガストーンを通して、ポケモンと意識を同調させる。


海未「──剣心一如……剣即ち、其れ心也」
 「エルレ」

千歌「行くよ、ルカリオ!! 波導の力を斬撃に!!」
 「グゥォッ!!!」


二匹が腕を引き、そして──斬る。


千歌・海未「「──“いあいぎり”!!!!」」
 「グゥォッ!!!!!!」 「エルレィッ!!!!!!!」


二匹の剣が── 一閃した。


千歌「…………」

海未「…………」


それは一瞬のことだった。

お互いの全力の斬撃がぶつかり合い──


 「グ……」


ルカリオが先に膝をつく。


海未「……勝負、ありましたね」


海未師匠が肩を竦めて、こちらに歩き出す。


海未「千歌──」

千歌「……」

海未「──貴方の勝ちです」

 「エル……レ……」


そして、ルカリオが膝をついてから数刻遅れて──エルレイドが崩れ落ちた。


千歌「……ありがとうございました!!!」


私は、ただここまで育ててくれた師匠に、万感の感謝を込めて──頭を下げるのだった。 





    *    *    *


393 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:56:20.80 ID:dd6+2abs0


海未「おめでとうございます、千歌。これで貴方は四天王を全員倒したことになります」

千歌「は、はい……えへへ、なんか実感沸かないな……」

海未「実感、ですか?」

千歌「だって、その……私、これでオトノキ地方のチャンピオンになったってことですよね……!?」


最強の四人のトレーナー、四天王を全て倒したと言うことはそういうことだろう。


海未「……ああ、そのことなんですが」

千歌「ふぇ?」

海未「まだ、貴方は戦わなくてはいけない相手が一人残っています」

千歌「え? どゆこと?」

海未「……現チャンピオンです」

千歌「……はっ」


そう言われて、梨子ちゃんが話していたことを思い出す。


 梨子『チャンピオンになれるのって……一人だよね』


だから、先に梨子ちゃんと決着を付けたわけだが、

最強の称号と言うのは、そのときの一番強い人、比較級で『最も』『強い』で『最強』なのだ。


千歌「すでにチャンピオンがいるのは、どう考えても当たり前……!!」

海未「広間に戻ると、中央にエレベーターがありましたよね」

千歌「あ、はい」

海未「四天王を全て倒した今、そのエレベーターで上の階へ昇れます。そこからチャンピオンの間に続く場所に行くことが出来ます」

千歌「わかりました。……ところで」

海未「なんですか?」

千歌「この地方で一番強いトレーナーって……」


誰なんだろうか……?


海未「……行けばわかりますよ」

千歌「……ま、それもそっか」

海未「千歌」

千歌「?」

海未「貴方は私の自慢の弟子です。次会うときは是非、新しいチャンピオンとして、会えることを祈っていますよ」

千歌「……! ……はい!!」





    *    *    *


394 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:57:44.86 ID:dd6+2abs0


中央広間に戻ってくると、


千歌「……あ」


それぞれの通路から光が伸び、中央のエレベーターへと集まっていた。


千歌「…………」


私がエレベーターの前に近付くと、

──ウイーンと無機質な音と共にエレベーターのドアが開く。

乗れということだろう。

私がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり、勝手に上昇が始まる。

これから向かうんだ──チャンピオンのところに。


千歌「……っと、今のうちにポケモンたちの回復をしておかないと」


私はリュックから“きずぐすり”やら“げんきのかけら”やらを取り出して、ポケモンたちの治療を始める。


千歌「せっかくだから……最後にリュックの中の整理もしておこうかな……」


ごそごそリュックを漁りながら中身を確認していると──


千歌「ん……?」


なにやら赤い宝石のようなものを見つける。


千歌「……………………。…………なんだっけ、これ……?」


しばらく頭を捻って──


千歌「……あ、思い出した。旅立ちのとき、ダイヤさんから貰ったやつだ。えーと、確か……“ほのおのジュエル”だったっけ……? ほのおタイプの技を一回だけ強化してくれるってやつ」


すっかり存在を忘れていた。


千歌「今考えてみれば、使いどころが結構あった気がする……」


しかし、


千歌「今更使うタイミングあるかな……んー……」


バクフーンはここまでの戦いで炎の強化の仕方をいろいろと習得して来た。今更一発だけ威力が欲しいってタイミングがピンポイントに来るだろうか。

少し迷ったけど、


千歌「……まあ、なんかしら使えるかもしれないから、一応持っておこ」


私はとりあえずそのジュエルを上着のポケットに捩じ込んだ。

……間もなく、エレベーターは最上階へと辿り着く──





    *    *    *


395 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 18:59:58.02 ID:dd6+2abs0


エレベーターから出た先は、屋外だった。

ポケモンリーグの建物の遥か上、山から伸びた塔のような場所。


千歌「たっか……」


背後に目をやると、雲の向こうの眼下に小さくチャンピオンロードの山が見える。

そして、前方に視線を戻すと──

更に高いところへ続く階段が伸びている。


千歌「まだ昇るのか……」


私は階段を進んでいく。

その間はただひたすら階段で、他には特に何もない。

ただ、強いて言うなら周りに柵があるけど。

逆に言うなら柵しかない。

柵の向こうには空があって、そこからずーーっと下にポケモンリーグの建物が中にあった山肌が見える。

たぶん……と言うか確実に落ちたら死ぬな。

大人しく真っ直ぐ登ろう……。

しばらく階段を登っていると──大きな広場のような場所に出た。


千歌「うわ……何ここ」


そこは、庭園のような場所だった。

草木が生い茂り、奥の方には大きめの池があるし……しかもその池には滝まである。

滝を伝って上の方を見上げると、上にはまた少し小さめの庭園のような場所があるようだ。

そこにある池から水が落ちてきてるらしい。

そして──


千歌「……!」


そんな庭園の池のほとりに人影を見つける。
396 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 19:01:56.96 ID:dd6+2abs0

その人は、風に紺碧の髪を靡かせて、私を見つけると、優しく笑う。

──この笑顔は知っている。小さい頃からいっつも、私の傍で笑って見守ってくれていた存在。


千歌「──……果南ちゃん」

果南「や、千歌。よく来たね」


果南ちゃんは腰に手を当てて、にこにこしている。


果南「ここにお客さんが来るのは本当に久しぶりだよ。……それが、まさか千歌だなんて」


間違いない、つまり、


千歌「果南ちゃんが……チャンピオン……!」

果南「うん、そうだよ」

千歌「強いトレーナーなんだってことは、なんとなくわかってたけど……チャンピオンだったんだ」

果南「ま、わざわざ自分がチャンピオンだとか言わないからね……。それはそうと千歌」

千歌「なぁに?」

果南「……旅はどうだった?」

千歌「どう……。うーん……いろんなことがあった」

果南「例えば?」

千歌「楽しいこと、悲しいこと、大変なこと、怒ったり、泣いたり、笑ったり!」

果南「あはは、全然具体的に例えられてないね」

千歌「だって、一言じゃ言い表せないくらいいろんなことがあったんだもん……それと」

果南「……それと?」

千歌「……たくさんの人たち──友達、ライバル。そして、ポケモンたち──仲間たちと出会った」

果南「ふふ、そっか」

千歌「皆といろんな景色を見て、一緒に過ごして、一緒に笑って、一緒に戦って── 一緒に強くなってきた」

果南「…………」

千歌「旅に出て……本当によかった」

果南「そっかそっか。……ここはその旅の終着点」

千歌「……うん」

果南「千歌が見たもの、知ったもの、感じたもの──そして、ここまで辿り着いたその強さを、今ここで見せてよ」


果南ちゃんがボールを構える。


果南「難しいことは何一つない。ホンキで戦って、最後に立ってた方が、この地方のチャンピオンだよ」

千歌「……うん!」


私もボールを構えた。


果南「オトノキ地方『チャンピオン』 果南。千歌、全力でおいで! 私も全身全霊で戦うからさ……!!」

千歌「うん!!」


二つのボールが中を舞う。私の旅の終着点。本当の本当に最後のバトル──開始だ……!!


397 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 19:02:31.53 ID:dd6+2abs0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【チャンピオンの間】
 口================= 口
  ||.  |⊂⊃                 _●../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.65  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.62 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.60 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.61 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.67 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:190匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.



398 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:08:40.38 ID:dd6+2abs0

■Chapter090 『最終決戦! チャンピオン・果南!!』





千歌「行くよ!! しいたけ!!」
 「ワンッ!!!」

果南「ニョロボン! 頼むよ!」
 「ニョロッ!!!!」


果南ちゃんのニョロボンが一気に飛び出して、拳を引く。


果南「“ばくれつパンチ”!!!」

 「ニョロボッ!!!!!」

千歌「“コットンガード”!!!」
 「ワッフッ!!!!!!」


──ガスン!! 強力な拳撃を自慢の毛皮で受け止める。


果南「しいたけ、久しぶりだね!! しばらく見ないうちに随分成長したみたいだね!」

 「ニョロォッ!!!!」


続け様に逆の手を使って、ニョロボンが拳を穿つ。

──ガスン!!


 「ワ、ワフッ」


二撃目、一瞬しいたけが怯む。


果南「二発じゃ足りない? じゃ、もう一発!!!」

 「ニョ、ロォッ!!!!!」


──ドガスン!!!!!

更に攻撃は止まず連続で最大級の攻撃がしいたけを襲う。


 「ワフッ!!!」


でも、


千歌「しいたけの防御は簡単には崩れないよ!!」


ここまででもずっとお世話になってきた私のパーティの最強の盾だ。

真っ向勝負で攻撃を受けることに関しては負けるつもりはない。


果南「──みたいだね!!」

 「ニョロッ!!!!」


四撃目──と、思ったらニョロボンは今度は拳ではなく、しいたけに掴みかかってくる。


千歌「!?」
 「ワ、ワォッ!!!?」


そして、ニョロボンはしいたけを掴んだまま、後ろ向きに転がり始めた。
399 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:10:03.24 ID:dd6+2abs0

果南「“じごくぐるま”から──」

 「ワ、ワォォ!!!?」

千歌「しいたけっ!?」


ニョロボンはしいたけを掴んで“じごくぐるま”で巻き込み、更に、


果南「“ともえなげ”!!」

 「ニョロボンッ!!!!!」


そのまま、投げ技に派生。しいたけは後方の池に投げ飛ばされる。


 「ワ、ワゥーンッ!!!!!!」


しいたけが鳴き声をあげながら──ザブーン! と大きな水しぶきをあげる。


果南「ニョロボン!! 一気に決めるよ!!」

 「ボンッ!!!!」


ニョロボンは受身を取りながら、素早い動作で体勢を立て直し、池に向かって走り出す。


千歌「ま、まずい!!」


いくら、しいたけの防御が自慢といっても、水中でニョロボンと肉弾戦をするのは、どう考えても無理だ。


果南「ニョロボン!! “ばくれつパンチ”!!」

 「ニョロォッ!!!!!!」


またしても繰り出される“ばくれつパンチ”。


 「ワ、ワゥッ!!!!」


強烈な拳が水面に顔を出したまま無防備な、しいたけに襲い掛かる。

私は咄嗟に池向かってボールを投げた。


 「ボンッ!!!!!!」


強烈な拳が、池を打ち、しいたけが着水したときよりも大きな水しぶきがあがる。

──が、


果南「! 居ない!!」


拳を穿った先にしいたけの姿はなかった。


千歌「フローゼル!!」
 「ゼルルルルルッ!!!!!!」

 「ワ、ワフッ」


ボールから飛び出した、フローゼルが間一髪のところでしいたけを救出したのだ。


 「ワゥ!!!」


フローゼルの力を借りて、しいたけが岸に上がる、
400 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:12:39.62 ID:dd6+2abs0

フローゼルも池から飛び出し、岸からあがった瞬間、


 「ボンボンボンッ!!!!!!」


ニョロボンがクロールをしながらとてつもない勢いで二匹に迫る。


千歌「! フローゼル!! “れいとうビーム”!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


咄嗟にニョロボンが泳ぐ池に向かって、“れいとうビーム”を放つ。

冷凍光線は一気に池を凍結し──


 「ボン……ッ!!!!」


泳ぐニョロボンごと、こおりづけにするが──


果南「“ばかぢから”!!!」

 「ボォォンッ!!!!!」


果南ちゃんが指示を出すと、ニョロボンの全身の氷にヒビが入り、


千歌「う、うそっ!!?」


それどころか、

──バキバキバキ!!! と大きな音を立てながら、池に張った分厚い氷がニョロボンを中心にヒビが入り、割れ砕ける。


果南「氷なんて、誰でも気合いで砕けるよ!!」

千歌「そんなの果南ちゃんだけだよっ!!?」


なんて力任せな戦い方だ。

今まで戦ったどんなトレーナーよりもパワーに特化した強引な戦法だ。


千歌「っく!! フローゼル!! “ハイドロポンプ”!!」

 「ゼルゥゥゥーーーー!!!!!」


水中のニョロボンに向かって、激流による攻撃で牽制するが、


果南「ヌオー!!」

 「ヌオーー」


その二匹に間に放たれる、果南ちゃんの二番手、ヌオーが“ハイドロポンプ”を真っ向から防ぐ壁になる。

しかも──


 「ヌオーー♪」

千歌「き、効いてない!? というか、吸収してる!?」


“ハイドロポンプ”はヌオーに当たった傍から、どんどんとヌオーの肌に吸収されていく。


果南「ヌオーの特性“ちょすい”は水を一切通さず吸収するよ!」

千歌「……っ」


そして、ヌオーのフォローで自由になったニョロボンが、
401 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:13:46.34 ID:dd6+2abs0

 「ニョロォッ……!!!!!」

千歌「う、うそぉ!!?」


先ほど割り砕いた、馬鹿でかい池の氷を担ぎ、


果南「“なげつける”!!!」

 「ボンッ!!!!!!」

 「ワォッ!!!?」 「ゼルゥッ!!!!?」


岸に居る二匹に向かって投げつけてくる。


千歌「そ、それ防ぐのは無理!! ルガルガン!!」
 「ワォーーンッ!!!!」


私はルガルガンを繰り出す。ルガルガンは飛び出すと同時に身を捻って、回転して飛び出す。


千歌「“ドリルライナー”!!!」

 「ワォォーーーーンッ!!!!!!」


そのまま、落ちてくる巨大な氷塊に向かって突撃し、

──ギャギャギャギャッ!!! と大きな音を立てながら、空中で掘削する。

一気に氷塊の内部までドリルで穿ち、


 「ワォーーンッ!!!!!!」


──内側から粉砕する。


千歌「……よし!!」

果南「さすがだね! ニョロボン、“しんくうは”!!」

 「ボンッ!!!」


ニョロボンが水面に顔を出したまま、ルガルガンに向かって“しんくうは”を放ってくる。


千歌「っ!! “アクセルロック”!!」

 「ワォンッ!!!!!」


ルガルガンは砕けて舞い散る空中の氷の欠片を足場にし、

ピンボールのように跳ね回りながら、直進してくる“しんくうは”をギリギリで回避する。


千歌「ぶ、ぶな……っ!!」

果南「回避もさすが!! でも遅い!!」

 「ボンッ!!!!」

千歌「!?」


回避に集中していた、その隙に池から飛び出してきたニョロボンが、気付けばフローゼルの目の前に走りこんできていた。


果南「“ばくれつパンチ”!!」

 「ニョロォッ!!!!!」


再び繰り出される、激烈な拳、
402 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:15:32.62 ID:dd6+2abs0

千歌「しいたけっ!!!」

 「ワォッ!!!!!」


私の咄嗟の声に反応した、しいたけが“コットンガード”を使いながら、再び攻撃を受け止めに前に出る。

──ドガスンッ!!!! と言う鈍い音と共に攻撃を受け止めるが──


 「ゥワゥッ……!!!!」

千歌「……!!」


しいたけが苦しげ表情を歪める。

昏倒まではいかなかったが、一度水に落とされたせいで、毛皮の膨張が弱く、ダメージを貰ってしまった。

そして、再び怯んだ隙に、


 「ボンッ!!!!!」


ニョロボンは素早く、しいたけに掴みかかる。


 「ワゥッ!!!?」

千歌「しいたけっ!!?」

果南「“ちきゅうなげ”っ!!!」

 「ボォンッ!!!!!」

 「ワォォォォン──」


ニョロボンはそのまま、真上に向かって、しいたけを投げ飛ばす。


千歌「ぐっ……!! “ソニックブーム”!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


だけど、私が思考を止めている暇はない。

前方のニョロボンに向かって、フローゼルが音速の衝撃波を放つ。


 「ボンッ!!!!!」


さすがに、攻撃に次ぐ攻撃の姿勢を取っていたニョロボンは対応しきれず、怯む。

そして次の指示は空中のルガルガンから──


千歌「ルガルガン!! そのスピードまま、ヌオーに突っ込め!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!」


ルガルガンが“アクセルロック”のスピードを維持したまま、岸辺でぼんやりとしているヌオーに向かって飛び出した。

まずは一匹だけでも……!!


果南「ヌオーは別にボーっとしてるわけじゃないよ!!」

千歌「っ!?」


この行動は読まれてた……!?


 「ヌ、オーー」


ヌオーが気の抜けるような声を出しながら、ルガルガンの方を見て、拳を引く。
403 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:16:28.90 ID:dd6+2abs0

千歌「!? や、やば!!?」


でも、もうルガルガンは止まれない。

一直線に突っ込むルガルガン、その鼻先に、


 「ヌオーーー」


ヌオーの腕が突き出てくる。


果南「“カウンター”!!!」

 「ヌオー」

 「ギャゥッ!!!!!?」


ルガルガンは悲鳴をあげながら、打ち返された。

自分のスピードが速すぎた故に、顔面に食らった拳のダメージが大きすぎる。

そして、それとほぼ時を同じくして──

──ズドンと大きな音を立てながら、


 「ワ、ワゥンッ……!!!!!!」


高く高く投げ飛ばされていた、しいたけが落下してくる。


千歌「しいたけ!! ルガルガン!!」

果南「ニョロボン!!」

 「ボンッ!!!!!」

千歌「!!」


ただ、果南ちゃんは畳み掛けるような展開の中、全く休む暇を与えてはくれない。

ニョロボンが再び拳を引く。

──“ばくれつパンチ”だ……!!

しいたけが投げ飛ばされ、狙われるのは当然目の前のフローゼル。


千歌「伏せて!!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


咄嗟に叫ぶ回避の択。


 「ボンッ!!!!!」


拳が風を切りながら──奇跡的にフローゼルの頭上に抜けて行く。


千歌「!! や、やった!!!」


──が、


 「ボンッ!!!!」

千歌「!?」
404 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:18:44.51 ID:dd6+2abs0

ニョロボンはそのまま拳の軌道を強引に捻じ曲げて、打ち下ろしてくる。

──ダメだ、避けきれない……!!

そう思った瞬間、


 「ワォォォーーーーンッ……!!!!!」

果南「……!」


満身創痍のルガルガン飛び出してきて、


千歌「!!」

 「ギャゥンッ!!!!!」


フローゼルの代わりに拳にぶつかり吹き飛ばされる。


千歌「“アクアジェット”ォ!!!!」

 「ゼルルルゥッ!!!!!!」


その一瞬出来た隙に、前傾姿勢のフローゼルが一気に加速してニョロボンの足腰に向かって、至近距離から突撃する。


 「ボンッ!!!!?」

果南「しまった!? ニョロボン!!」


その進路は──


 「ワゥッ!!!!」


さっき落下してきた、しいたけのいる方だ……!!

しいたけが吼えながら走り出す。

フローゼルの“アクアジェット”によって、押されているニョロボンと挟み撃ちにするように、


千歌「しいたけ!! “ギガインパクト”!!!」

 「ワォォォーーーンッ!!!!!!!」

 「ボォォーーーンッ!!!!!!?」


ニョロボンの背中に向かって、最大級の破壊力をもって突進する。

その衝撃でニョロボンは派手に吹き飛んだ。


千歌「よ、よし……っ……まず、一匹……!!」


三匹掛かりでどうにかニョロボンを突破する。

だが、安心している暇は全くなかった。


果南「ヌオー!! “じならし”!!」

 「ヌオーーー」

千歌「だわぁっ!!?」

 「ワゥッ!!!?」 「ゼルッ……!!!」


ニョロボンを予想外の展開で討ち取られたと言うのに、果南ちゃんは全く動揺を見せずに次の手を打つ。

ヌオーがぐらぐらと地面を揺らし、私ともども咄嗟に対応出来ずに体勢を崩してしまう。
405 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:20:56.69 ID:dd6+2abs0

果南「“どろばくだん”!!」

 「ヌオーー」


ヌオーが、転んだ しいたけに向かって、泥で出来た巨大な爆弾を投げつける。

もちろん、体勢を崩した回避なんて出来るはずもなく。


 「ワッフッ……!!!!!?」


“どろばくだん”が、しいたけに直撃する。


千歌「しいたけっ!!」

 「ワ、ワゥ……」


しいたけ、戦闘不能だ。


 「ゼ、ゼルッ!!!」


だが、しいたけが狙われたお陰でフローゼルは立ち上がれた。


千歌「フローゼル!!」

 「ゼルッ!!!!!」


フローゼルは再び加速し、


 「ヌオーーー?」


ヌオーの横をすり抜け、


千歌「“たきのぼり”!!」

 「ゼルッ!!!!!!」


池に向かって落ちてきていた滝を伝って、上昇していく。


果南「へー、ここで逃げるんだ!」

千歌「……ぐ」


果南ちゃんが挑発してくるけど、我慢だ。

真っ向からのパワー比べじゃ勝ち目がない。

なら展開を有利に運ばせるために、一度高所を取る。

そして、更に、


千歌「行くよ!! ムクホーク!!」
 「ピィィィィ!!!!!!」


ムクホークが、ボールから飛び出し、脚を掴んだ私もろとも空に羽ばたく。

──果南ちゃんは飛べる手持ちを持っていない。

なら、高いところまで飛び立って、攻撃が届かない場所まで逃げてしまえばこっちが圧倒的に有利だ。


果南「なるほどね!!」
406 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:24:24.57 ID:dd6+2abs0

果南ちゃんは私の作戦の意図を汲んだのか、すぐさまボールを放る。

新手のようだが、構うもんか、


千歌「ムクホーク全力離脱──」


一気に上昇しようとした瞬間──


 「ピィィィィ!!!!!!?」

千歌「!!!?」


ムクホークが何かの攻撃を食らって、


千歌「わぁぁぁっ!!!!?」


脚を掴んだままの私もろとも、吹っ飛ばされる。

回る視界の中、攻撃の飛んできた方向を、どうにか確認すると、


 「グドラ……!!」

千歌「キングドラ!!!?」

果南「キングドラ!! もう一発、“ハイドロポンプ”!!」

 「グドラッ!!!!!」

千歌「っ……!! “オウムがえし”!!!」

 「ピ、ピィィィィィ!!!!!!」


飛んで来る、“ハイドロポンプ”を強引に真似て返す──が、

ムクホークから飛び出した水砲はキングドラのものに簡単に掻き消され、そのまま“ハイドロポンプ”が迫ってくる。

相殺するには威力が全然足りない。


千歌「くっそ……!!!」


私は咄嗟に、ムクホークから手を放し、受身を取りながら地面に着地する。

身軽になった、ムクホークが“こうそくいどう”で急上昇し、

キングドラの攻撃は今度はどうにか掠る程度で済んだ。


果南「そう易々と、空に逃がすと思う?」

千歌「ぐ……!!」


その口振りから、やはり果南ちゃんは空までは追って来れないようだが、空に逃がさないように対策を打ってくる。一筋縄では行かない。

さらに気付くと、


 「ヌオーー」
407 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:26:02.42 ID:dd6+2abs0

ゆっくりではあるが、ヌオーが“たきのぼり”でフローゼルを追いかけ始めている。

もしこのままの状態で上側のフロアにヌオーが辿り着いてしまえば、お互いフローゼルにもヌオーにも指示が出来ない状態になってしまう。

五分の状態になれば、結局パワー負けすることが目に見えている。

だが、もうフローゼルは指示が届かない場所まで上昇してしまっている。

かえって、逃がしたことが仇になった。

気付いて、引き返してくれればいいけど……。いくらなんでも、それは都合が良すぎる。

とにかく……。

空中を旋回する、ムクホークに視線を戻す。


 「ピィィィィ!!!!!!」


高速で飛び周りながら指示を待つムクホーク。

高速軌道で回避体勢の今、どうにか次の作戦を考えなくちゃ──


 「──ピィィィィ!!!!!!?」

千歌「え!?」


ムクホークの悲鳴があがる。

原因は──見ていたからわかる。


 「グドラッ……!!!!」


キングドラによる狙撃だ。


千歌「ムクホークッ!!」

 「ピ、ピィィィィ!!!!!!!」


ダメージは負ったものの、どうにか無事で安堵する。

だが……。


千歌「あの動き回ってる、ムクホークを狙い撃ちしたの!!? 下から!!?」

果南「キングドラは“スナイパー”だよ。あれで回避してるつもりなの?」


果南ちゃんが得意気に言う。


 「グドラ……!!!」


キングドラが再び狙いを定めてくる。

──もうダメだ、考えてる暇がない。


千歌「“すてみタックル”!!!」

 「ピィィィィ!!!!!!!!!!」


避けられないなら、“すてみ”で戦う他ない。

ムクホークが十八番の突進攻撃で、空から一直線にキングドラに向かって急降下する。


果南「“ハイドロポンプ”!!!」

 「グドラァーーー!!!!!!!」
408 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:28:22.95 ID:dd6+2abs0

撃ち出される、水砲。

そこに向かって一直線に、


千歌「突っ込めぇぇ!!!!」

 「ピィィィィィ!!!!!」


ムクホークは錐揉み回転しながら、“ハイドロポンプ”に突っ込み、

──撃ち出された激流の中を強引に突き抜け、一直線にキングドラに向かって落ちていく。


果南「うわっ、脳筋!?」

千歌「果南ちゃんに言われたくないよ!?」

 「ピィィィィ!!!!!!」

 「グ、ドラッ!!!!!!」


そのまま、“すてみタックル”が水面のキングドラに直撃する。

だが、威力をかなり“ハイドロポンプ”に殺されていたのか、全然致命傷になっていない。

もちろん、それは織り込み済みだ。

目的はあくまで肉薄。


 「ピィィィィ!!!!!!!」

 「グドラッ!!!?」


ムクホークは猛禽の爪を食い込ませながら、キングドラを掴み、持ち上げる。


果南「!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!!!!!!」


甲高い鳴き声をあげて、気合いを入れながら、力強く羽ばたき、キングドラごと、一気に上空まで上昇していく。


果南「!? ま、まさか!!?」


天高くまで昇ったムクホークは、傍を落ちている滝よりも更に高高度で上昇したのち、

サマーソルトをして、地面に向かって急降下を始める。

重力のパワーを借りた、“すてみ”の一撃、


千歌「“いのちがけ”!!!!」

 「ピィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」


──ズドォォンッ!!!!! とド派手な音を立てて、ムクホークがキングドラもろとも、地面に落ちてくる。


果南「!! キングドラ!!」


その衝撃に、地面に亀裂が入り、砕けた地面が砂煙となって巻き上がる。

それが晴れると──


 「グ、ドラ……」

 「ピィィ……」


ムクホークとキングドラは気絶していた。

出来ればこのタイミングで道連れ技で自分の手持ちを減らしたくなかったけど……一方的にやられるよりは何倍もマシだ。
409 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:29:27.92 ID:dd6+2abs0

果南「……っく、戻れ」

千歌「戻って、ムクホーク!」


お互いポケモンをボールに戻し、次の手持ちを繰り出す。


千歌「行くよ、ルカリオ!」
 「グゥオッ!!!!」

果南「ヤドラン!」
 「ヤド」


こちらの5匹目ルカリオと果南ちゃんの4匹目ヤドランが対峙する。


果南「ヤドラン! “サイコキネシス”!」
 「ヤドー」


ヤドランが念動力を放ってくる。

自由を奪われるとめんどくさいこと、この上ない。


千歌「ルカリオ! “しんそく”!!」
 「グゥォッ!!!!」


ルカリオは狙いを定められないように、一気に加速する。

そのお陰か、


 「ヤドーーヤドーー」


動きの鈍いヤドランは追いつけていない。


果南「……なら、“サイコショック”!!」
 「ヤドー」

千歌「“サイコショック”でも同じだよ!!」


狙いを定められないなら、当たらない。

──と、思った矢先。

──ガンッ!!!


 「グゥォッ!!!!?」

千歌「んなっ!?」


ルカリオが壁にぶつかった。

今の今までそこに壁なんてなかった……つまり、


千歌「“サイコショック”を設置した!?」


“サイコショック”は念動力を実体化させてぶつけて攻撃する技だ。

確かにこういう使い方をすれば、狙いが定められなくても当てられる。

“しんそく”で壁に激突し、怯んだところを、


果南「今度こそ捕まえた!!」
 「ヤド」

 「グゥォッ!!!!」


“サイコキネシス”で捕縛される。
410 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:31:27.71 ID:dd6+2abs0

千歌「ルカリオッ!!」


そのまま、サイコキネシスによって、ルカリオは空中を振り回される。


 「グ、グゥォッ!!!!!!」


そして、そのまま、水辺の辺りに思いっきり墜落させられる。


 「グ、ォ……!!!!」

千歌「ルカリオ!!! 大丈夫!!!?」


私はすぐさま、ルカリオに駆け寄る。


 「グ、グォッ!!!!」


どうにか無事のようだ。


果南「“サイコショック”!!」
 「ヤド」

千歌「!」


今度こそ、念波が私たちの周囲に具現化し、四方八方から、飛び掛ってくる。

回避──無理。

一瞬で判断を下し、決断。

やるしかない。


千歌「ふぅーーー……!!!」


呼吸を整え、ルカリオの波導と意識を同調させる。


千歌「撃ち抜け!!! “バレットパンチ”!!!」
 「グゥォッ!!!!!!」


──ダン、ダン、ダンッ!!!! と銃声のような音を響かせながら、弾丸拳が周囲の実体化した“サイコショック”を撃ち抜いていく。


果南「!! やるね、千歌!!」

千歌「……どういたし、まして……っ……!!」


集中して迎撃したため、軽く息を切らせながら、返事を返す。

そして、ルカリオは攻撃を退けた直後に、後方の池に片足をつけて、


千歌「“みずのはどう”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


水を操り、一気に波立たせる。

それをヤドランに向かって飛ばすが──


果南「そんな技じゃ効かないよ!! “ドわすれ”!」
 「ヤド……」


ヤドランは更に気の抜けるような顔をする。
411 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:33:07.17 ID:dd6+2abs0

果南「“ドわすれ”は痛みすら忘れる技。そんな攻撃じゃダメージにならないよ」

千歌「……ぐ、“はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!」


ルカリオから放たれた“はどうだん”が直撃するが、


 「ヤドォ……」
果南「無駄だって!」


ヤドランにはほとんどダメージがない。


果南「ま……“ドわすれ”はその分動きが更に鈍くなっちゃうのは玉に瑕だけど……」

千歌「……へー」

果南「……? 千歌、なに笑ってんの?」

千歌「……ふふん、いいこと聞いたと思って」

果南「……。千歌がそういう顔するときって大体ロクでもないこと考えてるんだよね。ヤドラン!! ルカリオが何かしてくるよ!!」
 「ヤァン……?」

果南「“ドわすれ”はもういいから!」


果南ちゃんはルカリオと私の動きをじっと見つめて確認する。


果南「……何してくるつもり? 千歌……!!」


──ヒュルルルルルルル。


果南「……? え、何この音?」


漫画にでも出てくるような、何かが落ちてくるような音があたりに響く。

その間も果南ちゃんは、私たちから目を離さない。


果南「何が落ちて…………──落ちてきてる!!!?」


果南ちゃんがハッとした顔で上を見上げた瞬間、


──ゴツンッ!!!

 「ヌオッ!!!!!」

 「ヤドッ!!!!!?」


頭上から落ちてきたヌオーの頭が、ヤドランの頭に直撃した。

二匹はそのまま、バタリと昏倒した。


千歌「ナイス!! フローゼル!!」

 「ゼ、ゼルゥッ!!!!!」


息も絶え絶え、ボロボロな状態のフローゼルが滝を降りながら、私に返事をしてくる。
412 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:36:23.95 ID:dd6+2abs0

果南「な……まさか、上からヌオーをヤドランの頭上に狙って堕とした……!?」

千歌「“かまいたち”で吹っ飛ばしてね!! フローゼルがまだ負けてなくて助かったよ!!」

果南「んなバカな!? トレーナーからの指示もなしにそんなこと出来るわけ……!!」

千歌「指示、してたよ」

果南「…………? ……まさか、さっきの“みずのはどう”……!!」

千歌「ニシシ、正解っ!」


そう、さっきの“みずのはどう”は攻撃のために使ったわけじゃない。

ルカリオの波導で作り出したシグナルを、池から滝を通じて、離れたフローゼルに指示を送るためだ。

もちろん、難しい指示は出来ないから、あくまで地上のヤドランの位置をなんとなく伝えて、ヌオーをそこに堕とす様に指示しただけだけど。


果南「……く、くく」

千歌「……?」

果南「まさか、こんな戦法使ってくると思ってなかったよ!! 面白くなってきたじゃん!!」


果南ちゃんは楽しそうに笑って、ヌオーとヤドランをボールに戻しながら、


果南「行くよ!! ギャラドス!!」
 「ギシャァァァァァ!!!!!!!!」


5匹目、ギャラドスを繰り出す。


果南「“ぼうふう”!!!」
 「ギシャァァァァァ!!!!!!!!!!!」


ギャラドスが雄叫びをあげると、突然周囲に“ぼうふう”が発生する。


千歌「ぐ……!!」


その“ぼうふう”は“たつまき”を巻き起こしながら、こちらに迫ってくる。


千歌「フローゼル!! “うずしお”!!」
 「ゼルッ!!!!!」


梨子ちゃんと戦ったときに使ったのと同様に、背後の水を巻き上げ、“うずしお”で相殺を狙う。

──が、


 「ギシャァァァァッァァ!!!!!!!」

千歌「いっ!!!?」


そんなことお構い無しに、“ぼうふう”と“うずしお”の向こう側から、巨大な尻尾が降って来た。


果南「“ドラゴンテール”!!!」

 「グゥォッ!!!?」 「ゼルッ!!!!」


二匹が尻尾の衝撃に吹き飛ばされる。

そのダメージで満身創痍だったフローゼルは、


 「ゼ、ゼル……」


さすがに倒れてしまう。
413 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:38:06.63 ID:dd6+2abs0

千歌「く……!! 戻れ、フローゼル!!」


ルカリオは……!?


 「グゥォッ!!!!」


まだ、立っている。

そんなルカリオに向かって、


 「ギシャァァァァァ!!!!!!!」

千歌「!!」


ギャラドスが頭から突っ込んでくる。


果南「“かみつく”!!!」


突っ込んでくるギャラドスの頭には果南ちゃんが掴まっていて、すぐ傍で指示を出している。


 「グゥォッ!!!!!」


突進の勢いを載せたまま、ルカリオがギャラドスの大口に飲み込まれる。


千歌「ルカリオッ!!!」

 「グ、グォォォッ!!!」


だが、ルカリオは辛うじて、ギャラドスの大口の間で、両手両脚を上下に突っ張って耐えていた。


千歌「セ、セーフ!!」

果南「ギャラドス!! “かみくだく”!!!」
 「ギシャァァァッ!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!」


ギャラドスが顎に力を入れて、閉じようとする。


千歌「ルカリオ!! “かいりき”!!」

 「グゥゥォッ!!!!!」


動き回るギャラドスを走って追いかけながら指示を出す。

が、閉じる力とそれを開く力では圧倒的に抉じ開けるほうが不利だ。

“かいりき”のパワーでも押し負け始め、徐々に口がしまっていく。


千歌「ルカリオ!! メガシンカ!!」


メガバレッタが光り輝き、


 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオがメガルカリオへとメガシンカする。

一気にパワーを上昇させた、ルカリオが閉じられそうになるギャラドスの大口を押し上げる。


 「ギシャァァァァァァッ!!!!!!!!!!」
414 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:39:42.00 ID:dd6+2abs0

雄叫びをあげながら、地面を這いずるように高速で移動する、ギャラドス。

ルカリオは一瞬片足だけ浮かしてから、ギャラドスが擦る地面に震脚をする。

そして、そのまま力を込めて──


千歌「“ともえなげ”!!」

 「グゥゥォァァァッ!!!!!!!!!」

果南「んなぁっ!!?」
 「ギシャァァァァァァ!!!!!!!!」


ギャラドスを下から掬い上げるように、後方に向かって投げ飛ばす。

──ズズン!! とギャラドスの巨体が地面を転がった。

その際にギャラドスに掴まっていた果南ちゃんも投げ出され、地面を転がる。


果南「いてて……」

 「ギシャァァァァァ!!!!!!」

千歌「よっし、ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオが地を蹴って飛び出す。


果南「!」


果南ちゃんは身を起こしていた最中だったため、指示が遅れる。

その隙に、ギャラドスの下顎から、上に向かってのアッパーカット。


千歌「“スカイアッパー”!!」

 「グゥォッ!!!!!」

 「ギシャァァァァァッ!!!!!?!?」


ギャラドスが大きく仰け反る。

地面に着地したルカリオは更に追撃のために、地を蹴り──


果南「──“げきりん”!!!」

 「ギャシャァァァァアァァァァァァァァアァッァァァァッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


──飛び出したルカリオを、ギャラドスが強引に身を捩り、体をぶつけて、


 「グゥォァッ!!!!!?」

千歌「ルカリオッ!!?」


ルカリオは地面に叩き付ける。

すぐに受身を取るが、


 「ギシャァァァァァァアァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!」


怒り狂ったギャラドスは、回転しながら、頭からルカリオの方に突っ込んでくる。


千歌「“しんそく”!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!!」
415 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:41:20.21 ID:dd6+2abs0

間一髪のところでルカリオはその場を離脱する。

──バガンッ!!! とド派手な音を立てて、ギャラドスが突っ込んだ地面は、


千歌「ひ、ひぇ!!?」


とてつもない威力の頭突きによって、綺麗な縦穴が完成する。


 「ギャシャァァァァァアァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!」


怒り狂うギャラドスは、すぐさまルカリオを追って飛び出す。


千歌「く……あれヤバイ!! 当たったら終わりだ……!!」


私もルカリオを追って走りだす。

その横で私と同じように果南ちゃんが併走してくる。


果南「ギャラドスーーー!!! “アクアテール”!!!!」

 「ギャシャァァァァァァァーーーー!!!!!!!!!!!」


ギャラドスが、大きな尻尾で広範囲を薙ぐ。


千歌「!? ルカリオ!! ジャンプ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオはどうにかジャンプをして回避するが、


千歌「指示聞こえてるの!!? あれで!!?」

果南「ま、大雑把な指示しか出来ないけどね」


果南ちゃんが得意気に笑いながら、鼻を鳴らす。

ただ怒り狂って暴れてるだけなら、どうにか怒りが収まるまで逃げ回ればいいと思ってたけど……。

大雑把でも、指示を聞けるなら話は別だ。

どこかで何かしらの攻撃が当たってしまう可能性が高い。

となると──


千歌「殴り勝つしかない!!! ルカリオ!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!!」


逃げ回るルカリオが、地面を踏みしめ、再び跳躍する。

身を捻りながら、背後に迫るギャラドスに膝を突き出す──


千歌「“とびひざげり”!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!」


思いっきり振るった膝蹴りが、ギャラドスの眉間に直撃する。


 「ギシャァァァァァァッ!!!!!!!!!!」


ギャラドスは耳を劈くような鳴き声をあげる──が、

怯んでない。
416 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:43:26.67 ID:dd6+2abs0

 「ギシャァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!」


そのまま、中空のルカリオに向かって、“ずつき”を繰り出す。


 「グゥォッ!!!!!!?」

千歌「ルカリオ!!!?」


ルカリオが“ずつき”によって地面に叩き落される。


 「グ、グォ……!!!!」


どうにか受身を取って、素早く立ち上がるが、もう限界が近い。

そんなルカリオに向かって、


 「ギシャァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!」


ギャラドスは“げきりん”が落ちついてきたのか、身を引きながら狙いを定める。


千歌「……!! 仕留めるつもりだ!!」


私は全身に思いっ切り力を込め、全身の筋肉をフルパワーで稼動させて、ルカリオの元まで全力疾走する。


果南「ギャラドス!!!」


果南ちゃんが指示を出そうとする。


千歌「──ルカリオ!!!」


私はルカリオの元に滑り込みギリギリで辿り着く。


千歌「やるよ!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!」

果南「“ギガインパクト”!!!!!」

 「ギャシャアァァァァァァァァッァァ!!!!!!!!!!!!!!!」


上から降って来る破壊の一撃、それに対抗するのは、もちろん──

私とルカリオの必殺技。


千歌「──“はっけい”!!!!!!」
 「グゥゥォッ!!!!!!!!!!!!」


両手をギャラドスの眉間にあわせ、突き出す。

インパクトの瞬間──ズ、ドンッ!!!! 大きな音を立てて、二匹の攻撃がぶつかる。

上から落ちてくるのがあまりの破壊力だったせいか、

受け止めているルカリオの足元が──ミシミシと音を立てて砕け始める。


千歌「ま、け、る、かぁぁ!!!!!」
 「グゥゥゥォァァァァァッ!!!!!!!!!!!!」


強大なパワーが拮抗し、辺りに衝撃波を発生させながら、ぶつかり合う。
417 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:45:06.59 ID:dd6+2abs0

果南「ギャラドス!!! ぶっつぶせぇぇ!!!!!!」

 「ギシャアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「ルカリオォ!!!!!」
 「グゥゥゥゥォッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


二匹の雄叫びがあがる。

死力を尽くした最大級の攻撃のぶつかり合い。


 「グ、ゥッ!!!!!!!!」


ルカリオが苦悶の表情を浮かべる。


千歌「大丈夫ッ!!!!」
 「!!!!」


私はルカリオの腕に手を添える。


千歌「集中して!!! 私たちなら絶対出来る!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!!!!」


その瞬間、ルカリオの波導が一気に膨れ上がり──


千歌「いっけぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!」

 「──ギャシャァァァッァァァ!!!!!!!!!!!!」


轟音を轟かせながら、ギャラドスの頭が跳ね上がった。


果南「!! ギャラドス!!!」

 「ギャ、シャ、ァァァァァァ……」


そのまま、ギャラドスは後方に仰け反るようにして──ぶっ倒れたのだった。


千歌「は……はぁ……はっ……はぁ……っ……!!!」


どうにか、打ち勝てた。


千歌「ル、ルカリオ……やった、ね……!! ……ルカリオ……?」
 「…………」

千歌「……ルカリオっ……!!」


ルカリオは全てのパワーを出し切ってしまったのか、立ったまま気絶していた。


千歌「……ありがとう、よく頑張ったね」


労いの言葉と共に、ルカリオをボールに戻す。


果南「……まさか、ここまで追い詰められるか」


果南ちゃんもギャラドスをボールに戻しながら、そう言う。
418 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:47:04.81 ID:dd6+2abs0

私は立ち上がり、最後のボールを構える。

果南ちゃんも同様にボールを構え──


果南「お互い残るポケモンは最後の一体」

千歌「……うん」

果南「千歌の最後の手持ちはバクフーンだよね」

千歌「そうだよ。果南ちゃんは?」

果南「ラグラージだよ。……なんの因果かね、お互い最後は最初に貰ったポケモンで決着をつけることになるみたいだね」
 「ラグッ……!!!!!」


ラグラージがボールから飛び出す。

──最初に貰ったポケモン、と言うことは果南ちゃんはミズゴロウを貰って旅に出たということだろう。


千歌「バクフーン、行くよ!」
 「バクフーーー!!!!!」


私もバクフーンを繰り出す。


果南「千歌……これが本当に最後だ」

千歌「うん」

果南「一切の手加減なしの全力のぶつかり合い……!!」


果南ちゃんが左耳に掛かってた髪を手でかきあげると──そこには、貝殻の装飾のされたピアスがしてあった。

そして、その貝殻ピアスの内側に留められている珠が──七色に光る。

キーストーン。メガピアスが光っている。


果南「ラグラージ!! メガシンカ!!!」
 「ラァァァーーーグ!!!!!!!!」


ラグラージが光に包まれ──


 「──ラグゥッ!!!!!」


元から逞しかった身体は更に筋骨隆々となり、その中でも腕がより一層発達して、巨大になる。


果南「……さあ、全力で掛かってきな!!! 千歌!!!」

千歌「……行くよ!!! バクフーン!!!」
 「バクフーーーー!!!!!!!!!」


本当に本当の最後の一騎打ちの火蓋が──切って落とされた。





    *    *    *


419 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:48:26.06 ID:dd6+2abs0


千歌「バクフーン──」


集中する。

炎を一点に集中して打ち出す、この技。


千歌「“ひのこ”!!」
 「バクフッ!!!!!!」


集束された炎が一直線に飛んでいく。


果南「打ち返せ!!!」
 「ラァグッ!!!!!!」


ラグラージは拳を真っ直ぐ叩き込み──


千歌「いっ!!!?」


完璧に“ひのこ”を打ち返してくる。


千歌「わわわっ!!?」
 「バクッ!!!!」


私は咄嗟にバクフーンの身体に掴まり、直後バクフーンが走り出す。

──ドンッ!!!

私たちが今さっきいた場所に跳ね返ってきた“ひのこ”が炸裂し、爆ぜる。


千歌「な、なんで打ち返せるの!?」

果南「ラグラージはパワーがあるからね!!」

千歌「それだけで出来るわけないでしょ!!?」


たぶん、果南ちゃんはデタラメに攻撃を撃ってるだけじゃなく、あらゆる攻撃の精度がいいんだ。

高速・超威力の拳を振るいながら、“ひのこ”を芯で捉え、エネルギーのロスなく打ち返している。

ここまで必殺技を使い続けてきてわかったことだけど、完璧に攻撃が当たると、飛んで来た攻撃そのもののパワーを減衰させることなく綺麗に跳ね返すことも出来そうだとは思っていた。

それをいとも簡単やってくるとは思わなかったけど、


千歌「打ち返してくるんだったら、“ひのこ”で戦うのは向いてない……なら、“だいもんじ”!!!」
 「バクフーーーーッ!!!!!!!!」


私を乗せて駆けながら、バクフーンが大の字の業炎を噴き出す。


果南「ラグラージ!! 構わず、ぶん殴れ!!」
 「ラァァーーーグッ!!!!!!!」


ラグラージが力任せに拳を振るうと、“だいもんじ”すらも一発で掻き消されてしまう。

そして、そこからの反撃、


果南「思いっきり、振りかぶれ!!!」
 「ラァァァーーーァグッ!!!!!!!!」


ラグラージが空を拳で殴ると──


 「バクッ!!!!!?」
千歌「うぇぇ!!?」
420 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:50:56.15 ID:dd6+2abs0

バクフーンの身体が拳圧を受けて、後ずさる。


千歌「力任せすぎるでしょ!?」


メガシンカしてるとは言え、いくらなんでもパワーがデタラメすぎる。

恐らく遠距離で戦うのは無理だ。

……いや、ラグラージはどう見ても近距離タイプのポケモンだけど。

ただ、とてつもないパワー差があっても、近付けば近付くほど相手の呼吸も読みやすくなる。

私に勝機があるとしたら、そこの読み合いしかない。


千歌「バクフーン!! “ニトロチャージ”!!」
 「バクフッ!!!!!」


バクフーンは肉薄するために、一気に加速する。

“ニトロチャージ”は走り回りながら全身の筋肉を発熱させ、速度を向上させる技だから、掴まったままでは多少熱いが、今バクフーンから離れるわけにはいかない。


果南「!! 真っ向から来るんだね!! いいよ、来なっ!!」
 「ラァーーーグッ!!!!!」


向かってくるバクフーンに対して、ラグラージが大きな腕を引く。

またあの力任せの豪腕で殴り飛ばすつもりだろう。

──集中。

呼吸を整えながら、ラグラージをよく観察する。

恐らく威力を殺しきるには、あの拳の中心に向かって、こちらも大きな火力を叩き込む必要がある。

ただ、あれだけの火力をバクフーンの筋力だけで張り合うのは不可能だ。

だけど……一つ試してみたいことがある。

バクフーンの特徴の一つとも言えることが、技に応用出来るかもしれない。


千歌「ぶっつけ本番だけど……やるよ!!」
 「バクフッ!!!!!」

果南「ぶん殴れ!!!」
 「ラァァァーーーグ!!!!!!!」


ラグラージの拳が迫ってくる。

──あの拳の中心を完璧に狙え!!


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バァァーーークッ!!!!!!」


バクフーンがスピードを載せたまま拳を突き出す。

その拳はラグラージの拳とインパクトする瞬間に、

──ボォンッ!!!! と大きな音を立てて爆ぜる。


果南「!?」
 「ラグッ!!?」

千歌「!! 出来た!!」
421 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:52:29.84 ID:dd6+2abs0

ラグラージの腕を爆発する拳で弾き飛ばす。

──バクフーンの特徴……それは爆発する体毛だ。

これは火力の調整にも使っているし、バクフーンの戦いにはそもそも密接な要素だ。

もし、この爆発を一点に集中できたら……?

そう、


千歌「近接攻撃で火力が出せる!!」
 「バァァーーーークッ!!!!!」


バクフーンが続け様に拳を振るう。


果南「なるほどね!! 次から次へと、よく考えるね!!」
 「ラァァァーーーグッ!!!!」


ラグラージも再び拳で空を穿つ。

──ボゥンッ!!!

また、爆発する拳と相殺し合う。

二匹が超火力の拳を打ち付けあう。


千歌「──そこ!!」


──ボゥンッ!!!


千歌「──そこだっ!!」


──ボゥンッ!!!!


連続で攻撃の芯を見抜かないといけないのに果南ちゃんは何度も攻撃を連打してくるため、まったく休む暇がない。


果南「いいね、そういう風に新しい可能性を考えるの!!」

千歌「はぁ……!! はぁ……!!!」

果南「私も昔、チャンピオンと戦ったとき、誰も使ったことないような、見たことも聞いたこともない技でやられたこと、思い出すよ!!」

千歌「ぐ……っ!!! ──そこぉっ!!!」


──ボゥンッ!!


果南「結局一度も勝つことが出来ないまま、あの人はチャンピオン辞めてどっかに行っちゃったけどさっ!! でも、お陰で私も、あの人と同じように自分たちだけの技を……見つけたんだ!!」

千歌「自分たちだけの……!!! 技……!!?」


今、打ち合うのでも精一杯なのに、まだ上があるの……!?

一瞬ラグラージの攻撃が止み、


 「バクッ!!!!!!」


──ボゥンッ!!!!


バクフーンの爆炎拳が突き刺さる──が、


 「ラァァァァグッ!!!!!!!」


ラグラージは──ズン!! と、震脚しながら攻撃を堪える。

と、同時に──
422 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/17(金) 23:56:38.46 ID:dd6+2abs0

果南「全部のみずのエネルギーを──拳に集めろ!!!」


どんどん、みずのエネルギーがラグラージの拳に集束していくのが目に見えてわかる。


千歌「……!!」


──あ、ヤバイ。

脳が警鐘を鳴らし始める。

この技はヤバイ。

直感でわかった。


果南「──ぶっとばせぇぇぇぇ!!!!!! “アクアハンマー”!!!!!!!」
 「ラァァァァァァァァァグッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」



──…………。

…………。


千歌「…………?」


気付いたときには、空が見えた。


千歌「な、にが……」


全身が痛い。

どうにか身を起こすと、


 「バ、ク……ッ」


バクフーンが倒れている。

バトルフィールドの奥の方で戦っていたはずなのに──私たちはフィールドの入口辺りに居た。


千歌「吹っ飛ば……された……っ」


遠くに居るラグラージに目をやると、


 「ラ、グ……ラグゥ……!!!!」


息を切らしたラグラージ、そしてそのラグラージの前方は爆弾でも落ちてきたのかとでも言わんばかりに、ラグラージの拳が炸裂した場所を中心に半球状に床が抉り取られている。


千歌「何、その……威力……っ」


ラグラージへの反動も大きいようだが、本当にとんでもない威力の技だった。


果南「ピカチュウの“ボルテッカー”を拳だけに集めて放つ技“ボルテッ拳”……それを参考にして作った技。本来“アクアテール”で使うエネルギーを“アームハンマー”に集束して、ね。……私たちだけのこの技に付けた名前は──“アクアハンマー”」


──のしのしと前方からラグラージが歩いてくる。


千歌「っ゛……バクフーン……っ!! 立てる……っ……?」
 「バ、クフーーーンッ……!!!!!」


バクフーンが力を振り絞り立ち上がる。
423 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:00:06.73 ID:x2+V1vVn0

千歌「……行くよ……!!」
 「バクッ!!!!!!」


──私はバクフーンと一緒に走り出す。


果南「! まだ動けるのか……!!」
 「ラァァーーグッ」

果南「“アクアハンマー”は自分への反動もでかいから何発も連発出来ないし、チャージも必要だから無防備になる……一発で仕留めたかったんだけど」

千歌「“かえんほうしゃ”ァ!!!」
 「バクフーーーーッ!!!!!!」


バクフーンから噴き出す火炎。

だが、


 「ラグッ!!!!!」


またラグラージが拳で掻き消す。


千歌「っく……!!」

果南「……こうなったら、動き封じてもう一回やるしかないよね!!」

千歌「!?」

果南「“じしん”!!!」
 「ラァァーーーーグッ!!!!!!!!」


ラグラージが両の拳を思いっきり地面に叩き付け、床を粉砕しながら、大地を大きく揺する。


千歌「ぐっ!!?」
 「バクフッ!!!」


バクフーンともどもバランスを崩す、そこに向かって更に──


果南「“いわなだれ”!!!」
 「ラァァァーーーーグッ!!!!!!!」


粉砕した床を構成する岩石が雪崩れのように襲ってくる。


千歌「……!!!」


もうすでに満身創痍の私たちは避けることもままならず──

“いわなだれ”に飲み込まれる。


千歌「──ぐ……」
 「バク、フーーーンッ……!!!!!」


気付くと、

バクフーンが私の上に覆いかぶさるようにして、岩から庇ってくれていた。


千歌「バク、フーン……あり、がと……」
 「バク……」


周囲は岩に飲まれ、ほとんど身動きが取れない。

岩がない部分は天に一箇所だけ小さく見える穴だけだ。


果南「──千歌、生きてる?」
424 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:01:00.34 ID:x2+V1vVn0

そこを通して外から、果南ちゃんの声が聞こえてる。


千歌「どうにか……ね……っ」

果南「……まだやる?」

千歌「もちろん……っ……!!」

果南「そ。……それ聞いて安心した……!!」
 「ラァァーーーグッ!!!!!!!」


ラグラージの鳴き声、そして穴の先から、ラグラージの大きな拳が再びみずエネルギーを充填している姿が見える。


果南「ラグラージ……行くよ!!!!」
 「ラァァァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!」


──“アクアハンマー”が来る……!!


 「バクフ」


バクフーンが小さく鳴いて、私の方を見る。


千歌「大丈夫……」


私は傍らのバクフーンを撫でた。


千歌「……私は最後まで、諦めない」


勝負が完全に決着する、その瞬間まで。


 「バクッ」


バクフーンが頷く。


千歌「いつだって……二人で励ましあって……最後まで戦ってきたもんね……」
 「バクッ!!!!」


バクフーンの背中から爆炎が噴き出す。


千歌「懐かしいね、この状況……まるで、キミがヒノアラシだったとき、初めてクロサワの入江で出会ったときみたいだね……」
 「バクフッ!!!!!!」


あのときは私は外にいたけど、


千歌「今は……一番そばで一緒に戦ってるね……」
 「バクフッ!!!!!!!!!!」


背中の炎が一気に火力を増す。


千歌「──私のことは気にしなくていいっ!!!!! 全力の炎でぶっ飛ばせ!!!!!!」
 「──バクフーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

果南「ラグラージ!!!! “アクアハンマー”!!!!!」
 「ラァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!!」

千歌「バクフーン!!!!!! “ふんか”!!!!!」
 「バクフゥゥゥゥゥゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!」


上から迫る、水撃の拳と、下から噴き出す、業火の炎がぶつかり合う。
425 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:02:52.94 ID:x2+V1vVn0

千歌「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
 「バクフーーーーーーンッ!!!!!!!!!」

果南「押し潰せぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
 「ラァァァァァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!」


二匹の全力がぶつかり合い、衝突するエネルギーが競り合いながら一気に膨張する。

──だが、

優勢なのは──


 「ラァァァァァァァァアァァーーーーーーグッ!!!!!!!!!!」


──ラグラージだった。


千歌「……!!!!」


弾ける、みずのエネルギーが上から私たちを押し潰す。


千歌「──……がっ……!!!」
 「バ、ク……!!!!!」

果南「これで……終わりだぁぁぁぁぁ……!!!!!」
 「ラァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!!」


──エネルギーが膨れ上がる。……強烈な衝撃を直上から受けて、意識が飛びそうになる。


千歌「…………ぅっ…………」

果南「はぁ……はぁ……!!!」


私たちの動きを封じるために使った、“いわなだれ”の岩もほとんどが吹き飛んでしまう。

私たちが押しのけることすら出来なかった、あの岩たちが消し飛ぶほどの威力を叩きつけられた。


千歌「…………ぐ……」

果南「千歌……終わり、だね……っ」


メガシンカの同期のせいか、大技を使ったラグラージと同じように息を切らせる果南ちゃん。


果南「ホントに……強く……なった、ね……っ……うかうか、してたら……すぐに、追い抜かされ──」

 「バク、フ……」

果南「……! なんで……」

千歌「…………は、……ぁ……っ」
 「バ、ク……」

果南「なんでまだ立てるのさ……」

千歌「…………相棒が、まだ……立ってる、から……」
 「バク、フーーーーン……!!!!」

果南「もう、動けないでしょ」

千歌「……そんなの……知ら、ない……」

果南「わからずや……千歌のそういうところ、昔っから──大好きだよ」

千歌「……ふふ」


ラグラージの拳に再びエネルギーが集まっていく。


果南「……ラグラージ!!!!!」
 「ラァァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!」
426 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:03:58.71 ID:x2+V1vVn0

ラグラージの拳が──向かってくる。

もう身体がロクに動かない。バクフーンも同じだよね。

でも──


千歌「諦めたりなんか──するもんか……!!!」
 「バク、フーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの背中に炎が滾る。


千歌「──“かえんほうしゃ”!!!!!」
 「バクフーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!」


至近距離、迫る拳に向かって、バクフーンの“かえんほうしゃ”が噴き出される。


 「ラァァァグッ!!!!!!!!!!!!!」
果南「これで、本当に終わりだよ……!!! 千歌ァッ……!!!!」

千歌「ま、だ、だァぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
 「バァァァクゥゥゥゥ、フゥゥゥゥッゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの雄叫びとともに、火力が倍──いや3倍、4倍、いやもっともっと大きな火力になる。


果南「ぐっ!!? 火事場の馬鹿力!? でも、それだけで私たちの“アクアハンマー”は越えられない!!!!」
 「ラァァァァァァアァァァァグゥゥゥゥッ!!!!!!!!!!!」


炎がどんどん押されて行く。


千歌「もっとぉ!!!!! もっとだぁぁぁぁ!!!!!!」
 「バァァァァァァクフゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


もっとだ、もっと火力を増すんだ、

──そのとき。

ポケットが熱くなる。


千歌「──“ほのおのジュエル”……!」


これは、ポケモンが使うものだった気がするけど……何故か、ジュエルは私に反応して、赤く、熱く──光っていた。


果南「!? な、なにっ!!?」

千歌「…………」
427 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:05:22.50 ID:x2+V1vVn0

ジュエルを握り締める。

──ドクン。

ジュエルから、エネルギーが溢れてくる、そして、それが傍らのバクフーンに拡がって行く。

その中で、ふと──新しい技が見えた気がした。


千歌「バクフーン……」
 「──バクッ」

千歌「一緒に戦おう──最後まで……!!!!」
 「バクフーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの背中の炎が──さらに激しく、燃え上がる。


果南「くっ……!!!? ラグラージ!!!!!!」
 「ラァァァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「果南ちゃんっ!!!!!! ラグラージッ!!!!!!」

果南「!!!」

千歌「これが、私と、バクフーンの!!!!!! 全身全霊、全力の炎だよ……っ!!!!!!!」
 「バァァァァァァァァーーーーーーーーーー」


バクフーンの噴き出す炎が更に勢いを増して、どんどん、どんどんどんどん膨張していく。

バクフーンとの絆が生み出した──最強の炎が、


千歌「────“ダイナミックフルフレイム”!!!!!!!!!!!!」
 「バァァァァク、フゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


膨れ上がった炎は、どんどん膨張し──


果南「……マジか」


全てを飲み込み──周囲全てを灼熱の爆炎と共に──吹き飛ばした──





    *    *    *


428 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:06:52.45 ID:x2+V1vVn0


果南「…………」


果南ちゃんが大の字になって横たわっている。


千歌「………………ぅ……」


もう私も立っていることは出来なかった、ふらふらとよろけて、倒れそうになる。


 「バク」

千歌「……!」


そこをバクフーンに支えられる。


千歌「ありがと、バクフーン……」
 「バク」

果南「…………最後の最後で……Z技……使うなんて……」

千歌「……? ……Z技……?」

果南「……さっきの技……そういう名前なの。本来、Zクリスタル……ってのが、ないと……使えないはず、なんだけど……ね」

千歌「そう、なんだ……なんで、使えたんだろ……」

果南「さあね……ポケモンとの絆と、Zパワーリングって言う……強化アイテムで、使うらしいけど……土壇場で似たような、条件が、揃ったのかもね……」


辺りを見回す。

──Z技によって、庭園はもはや見る影もなく、丸焦げになっていた。

……いや、私たちが使った技だけど。

そして、その中で、


 「ラ、グ…………」


ラグラージが戦闘不能になって横たわっていた。


果南「…………ははは」


果南ちゃんが突然笑い出す。
429 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:08:59.65 ID:x2+V1vVn0

千歌「……果南ちゃん?」

果南「ホント……ポケモンとトレーナーの可能性は、面白いね……っ」


果南ちゃんはそう言いながら、本当に可笑しそうに笑う。


果南「こんな戦いになるなんて……考えてもみなかった。……最後の最後で、ポケモンの新しい可能性を……見れた気がするよ」


そう言いながら、果南ちゃんは──


果南「い、つつ……っ」


起き上がろうとする。


千歌「か、果南ちゃん……!?」

果南「……千歌……っ」


果南ちゃんがよろよろと歩いてきて、

今にも倒れそうな足取りのまま私たちに近付いて──手を差し出してきた。


千歌「……!」

果南「本当に……本当に楽しい、最高のバトルだったよ……!!」

千歌「……うんっ!!」


私は、果南ちゃんの手を、握った。

もうお互い、まともに動くこともままならないはずだったのに、

その握手だけは──お互いの健闘を心の底から讃えあう、この握手は、

お互いとても力強い握手だったと言うことを、私は一生忘れることはないと想う……。



430 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:13:17.19 ID:x2+V1vVn0

■FINAL Chapter 『でんどういり』





あのあと、ボロボロになった私たちは、戦闘後しばらくしてからチャンピオンの間に上って来た海未師匠の応急処置を受けて、やっとまともに動ける状態になりました。

それが、あの戦闘から半日経ってからのこと──


海未「本当に……ボロボロですね」


もはや元の原型がなくなってしまったフィールドを見て、海未師匠が肩を竦める。


果南「全くね……ま、私にはもう関係ないし」

海未「……淡白な物言いですね」

果南「“チャンピオンの間”は……もう新チャンピオンのものだからね」

千歌「え……いらない……」

果南「まあまあ、そう言わないの」


果南ちゃんはそう言いながらケラケラ笑う。


千歌「いやでも……もうただの瓦礫の山だし……」

果南「千歌がやったんじゃん」

千歌「いや、そうだけどさ……」

果南「それより、行こうか」

千歌「? 行く? どこに?」

果南「あそこ」


果南ちゃんが指差す先──ここチャンピオンの間の最奥から、更に上に続く階段。


果南「……あの先に、殿堂入りの間がある」

千歌「殿堂入りの間……」

果南「あそこで、千歌と、一緒に戦い抜いたポケモンたちを永遠に記録する」

千歌「!! ……うん……!」


私は殿堂入りの間に向かって、足を踏み出そうとしたとき、海未師匠がその場に棒立ちなのに気付き、


千歌「海未師匠は……?」


思わず訊ねてしまう。


海未「“殿堂入りの間”は歴代チャンピオンしか足を踏み入れることは出来ません。ここで待っていますよ」

千歌「そっか……行って来ます」


私はそう行って、階段を歩き出す。
431 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:13:46.28 ID:x2+V1vVn0

果南「……海未」

海未「? なんですか?」

果南「長い間、世話になったね」

海未「……世話した覚えはありませんよ」

果南「……言われてみれば、世話された覚えもないや」

海未「よく言いますね」

果南「お互いね」





    *    *    *


432 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:14:30.53 ID:x2+V1vVn0


──殿堂入りの間。

そこはだだっ広い空間の中央に──大きな装置が置いてあるだけの部屋だった。


果南「千歌、そこに手持ちのボールをはめてあげて。一匹ずつ登録するからさ」

千歌「……うん!」


一匹ずつ、ここまで戦ったポケモンたちを──登録していく。


    *    *    *
433 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:17:05.13 ID:x2+V1vVn0


 『No.157 バクフーン♂/バクフーン
  :Lv.75 特性:もうか  おや:千歌
  おくびょうな 性格。
  Lv.5のとき クロサワの入江で 出会った。』


────
──

 『──ごめんね……。研究所にいたのに、突然こんなところ連れてこられて……初めて見る野生ポケモンに追いかけられて、怖かったよね……』
  『ヒノ…』

 『震えてたね……すっごい怖い思いしたんだよね……。ごめんね。もう少し早くチカたちが研究所に来てれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに』
  『…………』

 『……でも、もう大丈夫だから……今助けるから……!! ──私はキミのパートナーだから……!!』
  『ヒノ…!』



 『……こうさ──』
  『──ヒノオオオオオオ!!!!!』

 『!? あ、あっつ!!? ヒ、ヒノアラシ……?』
  『ヒノッ!!!』

 『──そうだよね……。……私、言ったもんね──一緒に強くなろうって……!!』
  『ヒノッ!!!』

 『──負けるもんかっ!!!!』
  『ヒッノォ!!────マグッ!!!』

 『ありったけの!!!!! “ひのこ”を!!!!!!』
  『マグゥゥゥッ!!!!!』

 『やきつくせえええええ!!!!!!』
  『マグウウウゥゥゥゥゥ!!!!!!』



  『マグゥ──バグフー…!!』

 『進化した……!! やったー!! バクフーン!!』
  『バクフーン!!!』



──
────


バクフーン。

ヒノアラシのとき、クロサワの入江で出会って、ずっとここまで旅をしてきた最初のパートナー。その炎でいつでも私の行く道を照らしてくれる最高のパートナー。




    *    *    *

434 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:18:00.88 ID:x2+V1vVn0



 『No.676 しいたけ ♀/トリミアン
  :Lv.68 特性:ファーコート おや:美渡
  のうてんきな 性格
  ウラノホシタウンで タマゴから うまれたようだ。』


────
──

  『ワンッワォゥ!!』
 『わわ!? なんだ、しいたけか……』



 『しい……たけ……』
  『ワゥ』

  『ワゥ…』
 『えへへ……相変わらず、しいたけは暖かいね……』
  『クゥーン…』



 真っ白な視界。辺りは“ふぶき”による風の音しかしない。寒くて、冷たくて、前も見えず、何もわからなくて怖い。でも……。

 『私には……しいたけがいる』
  『ワォン』

 誰よりも心強い、ちっちゃい頃から私を守って、そばに居てくれた、しいたけが──。



──
────


しいたけ。

昔から、私の傍に居て、一緒に育ってきたポケモン。最後の最後までここぞというときに頼りになる子だった。




    *    *    *

435 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:18:45.18 ID:x2+V1vVn0



 『No.398 ムクホーク♂/ムクホーク
  :Lv.65 特性:すてみ おや:千歌
  いじっぱりな 性格
  Lv.10のとき 2番道路で 出会った。』


────
──

  『ピィィィィィ!!!!!!』

 『……よし、決めた……!』

 『キミは絶対、チカが捕獲するんだから!』

  『ピィィィィィィ!!!!!!』



  『ピィ…』

 『ムックル? 寒いの……?? ど、どうしよ……!!』
  『ピ、ピィィィィ──』

 『…………あ。…………進化した……!!』
  『ピィーー』

 『えへへ! ムクバードーっ!』
  『ピピィ!』



  『ピィィイイイイイイイ!!!!!!!!!』

 『ムクホークー!! 調子どうー!?』
  『ピィイイイイイイイ!!!!!!!!』



──
────


ムクホーク。

ムックルのときに初めて自分の手で捕獲したポケモン。私の旅の切り込み隊長を努め、私の翼となってくれた。




    *    *    *

436 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:19:27.55 ID:x2+V1vVn0



 『No.745 ルガルガン♂/ルガルガン(たそがれのすがた)
  :Lv.66 特性:かたいつめ おや:千歌
  わんぱくな 性格
  Lv.26のとき 4番道路で 出会った。』


────
──


  『ワンッ ワン』

 『──待て』
  『ワンッ』

 『お手』
  『ワン』

 『よしよし、いい子だね。食べていいよー』
  『ワンッ ワンッ』



  『クゥーン』
 『イワンコ……』

  『クゥン?』
『一緒に来る?』

  『クゥーン』
  『あはは、そればっか……。君はホントにマイペースだね……。……明日は良い天気になりそうだね……』

 『イワンコ、夕日好きなの?』
  『…』

 『夕日、綺麗だね』
  『…』



  『ふふ……』

  『ワンッワンッ!!!!』

 『──私たちはもう、キミの仲間だよね……っ!!! イワンコッ!!!!!』

  『ワンッ──ワォオーーーーーーン』

 『“アクセルロック”!!!』
  『ワォーーーーン!!!!!!』



──
────


ルガルガン。

最初はルガルガンの群れから追い出されたイワンコだった。進化先の姿がわからない子を引き取って、一緒に戦い、今の姿になって、ここまで前線で戦い続けてくれた。




    *    *    *

437 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:20:23.98 ID:x2+V1vVn0



 『No.448 ルカリオ♂/ルカリオ
  :Lv.73 特性:せいぎのこころ おや:千歌
  ようきな 性格
  セキレイシティで タマゴから うまれた。』


────
──



──パキ、パキパキ。

 『ん──』
  『リュオ…』

 『か、かわいい……!』
  『リュォ…?』

 『リオル……かわいい』
  『リュオ』

 『! チカが“おや”だってわかるんだね』
  『リュォ』

 『リオル、よろしくね』
  『リュオ』



 『リオル!! 避けて!!』
  『リオ…』

 『リオル!!』
  『リオ…──』

 『な……』
  『──フー…』

 『進化……した……?』



 『皆が信じてくれた。……私が旅して、歩んできた道は繋がってたんだって、実感した。……そんな皆が傍に居てくれる。なんか、それだけで不思議と……勇気が湧いて来る』
  『グゥォッ!!!!!』

 『なんかチカ、今ね……負ける気がしない……!!』
  『グゥォッ!!!!!』

 『波導の力を斬撃に──』
  『グォッ!!!!』

 『──……“いあいぎり”!!』
  『グォァッ!!!!!!!』



──
────


ルカリオ。

メガシンカを一緒に経験し、ずっとエースとして頑張ってくれた相棒。ルカリオと切り開いた道は数知れない。きっとこれからも私の力になってくれることだろう。




    *    *    *

438 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:21:19.50 ID:x2+V1vVn0



 『No.419 フローゼル♀/フローゼル
  :Lv.66 特性:すいすい おや:千歌
  ゆうかんな 性格
  Lv.47のとき スルガ海で 出会った。』


────
──



『そこに、キミの大切なモノがあるんだよね……!! でも、周りをただ攻撃するだけじゃ、ダメなんだよ……っ!』
 『ゼル…!!』

『ここに暮らしてる、いろんな人たちと、ポケモンたちと、助け合って一緒に守ろう……?』
 『ゼル…』

『怖く……ないから……ね?』
 『ゼル…』

『大丈夫……キミの大切なモノはきっと、チカにとっても大切なモノだから……』
 『ゼル…』



 ……私……このまま、死ぬのかな……。──もう自分が上に流されてるのか、下に流されてるのか。上下左右、前後ろすらも全くわからない。

 ……ああ、こんなことなら……。泳げるポケモン──捕まえておくんだったな……。……私の意識が、ぶくぶくと……海に沈んで行く、中で。

  『──ゼル……!!!』

 聞き覚えのある鳴き声がしたと、思った──。



 『キミ……!! コメコで会ったブイゼル君だよね!?』
  『ゼルルルッ!!!!!』

 『来てくれたんだね……っ!!』
  『ゼルッ!!!!』



──
────


フローゼル。

絶対絶命だったときに、コメコシティで知り合ったブイゼルが、進化して駆けつけてくれた。その後は一緒に道中を共にし、私が海を渡るときにその力を貸してくれた。


    *    *    *

439 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:22:26.82 ID:x2+V1vVn0


千歌「バクフーン……。しいたけ……。ムクホーク……。ルガルガン……。ルカリオ……。フローゼル……。皆、ありがとう……。皆が居てくれたから、私……ここまで来られたよ……!」

果南「……そして、最後に」

千歌「……?」

果南「千歌も登録しないと」

千歌「わ、私……?」

果南「そうだよ。そのポケモンたちと一緒にここまで歩んできたのは、紛れもなく千歌なんだから」

千歌「……うん、わかった」


 『 千歌
   でんどういり おめでとう! 』


千歌「……えへへ」

果南「……さて、じゃあ帰りますか」

千歌「ん、帰る?」

果南「ウラノホシにね。報告することいっぱいあるだろうしさ」

千歌「……うん、そうだね! 皆! 出ておいで!!」
 「バクフッ!!!!」「ワン、ワォゥ!!!」「ピィィ、ピィィィィィ!!!!!!!」「ワォォーーーーンッ!!!!!!」「グゥォッ」「ゼルルッ!!」

千歌「皆! ウラノホシタウンまで競争だよ!!」

 「バクッ!!!!!」

 「ワンワゥッ!!!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!」

 「ゼルゥッ!!!!!!!」


一人と六匹で同時に駆け出す。


果南「って、走って帰るつもりなの!? ……まあ、いいけどさ」

千歌「さあ、みんな!!! 一緒に行こうーーーー!!!!!」


私たちは──どこまでも駆けて行く。

一緒に──どこまでも一緒に……。


440 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:23:39.12 ID:x2+V1vVn0


>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ウラノホシタウン】
 口================= 口
  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o●/         ||
 口=================口

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.75  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.68 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.65 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.66 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.73 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.66 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:192匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!


441 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:24:05.90 ID:x2+V1vVn0


    *    *    *





──
────
──────
────────





    *    *    *


442 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:25:49.84 ID:x2+V1vVn0


──全ての戦いを終え、それなりに時間が経ちました。

あの後、皆がどうなったのか……少しだけ話しておこうかな。

──まず梨子ちゃんの話。


梨子「お母さーん?」

梨子母「なにー??」

梨子「私のイーゼルどこあるか知ってるー?」

梨子母「イーゼル……なんでそんなもの失くすのよ……」

梨子「あはは……あっちこっちで絵描いてたから……」

梨子母「全く……私は知らないわ。ポケモンたちにでも探してもらいなさい。あ、メガニウムとチェリムは夕飯のお手伝いしてくれてるから、他の子に頼んでね」

梨子「……はーい」
 「ヴォッフ」

梨子「あ、ムーランド、もしかしてどこにあるか知ってるの?」
 「ヴォッフ」

梨子「ち、ちょっと待ってよー! 今いくから、服引っ張らないでってー……!!」


梨子ちゃんは旅が全て終わった後、タマムシシティに戻って行きました。

今でも頻繁に連絡を取り合っていて、最近はよく絵を描いたり、曲を作ったりしてるって言ってたかな。

なんか、いんすぴれーしょんが止め処なく溢れてきてしょうがないんだってさ。

──これは余談だけど、梨子ちゃんがこの旅で見て、感じた、想いや景色をまとめた一連の芸術群……タイトル『星』という作品たちは、後に芸術界で大きな反響を呼ぶことになるんだけど……それはまた別のお話──


 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.62 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.56 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.59 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.52 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.56 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ムーランド♂ Lv.55 特性:きもったま 性格:ゆうかん 個性:しんぼうづよい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:163匹 捕まえた数:14匹



    *    *    *
443 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:30:07.35 ID:x2+V1vVn0


──次は曜ちゃん。


亜里沙「宇宙みたいなイメージにしたいんですけど……」

曜「宇宙……もうちょっと具体的なイメージとかは?」

亜里沙「えっと、キラキラでビカビカーって感じで……」

曜「……よし、一旦絵に描いてみようか!?」

ことり「曜ちゃーん?」

曜「あ、ことりさん!」

ことり「この間の新作衣装のことについてなんだけど……あれ、亜里沙ちゃん」

亜里沙「こんにちは! ことりさん!」

ことり「……もしかして、お客さんとして来てるのかな?」

曜「うん、そうなんだ! 新作衣装については、あとで確認しにいくね!」

ことり「うん、よろしくね」


亜里沙「……それにしても、曜さんってホントすごいですね」

曜「え? 何が?」

亜里沙「だって、コンテストクイーンになったのに、いろんなコーディネーターさんの話を聞いて衣装作りのお手伝いしてくれてて……」

曜「……まあ、それが私の夢だからね」

亜里沙「夢……ですか?」

曜「うん! 皆が想い想いの衣装とポケモンたちで、最高のコンテストライブを作り続ける──それが私の夢だよ!!」


曜ちゃんはコンテストクイーンの座についた後、コンテスト運営委員会の役員に就任しました。

特にコンテストライブにおける衣装制作や一次審査の見直しについては、今でも頻繁に意見を出し、委員会内外問わず、多くのコーディネーターから一目置かれているそうです。

加えて最近はいろんなコーディネーターさんに衣装アイディアを出す、衣装デザイナーもやりながら、理想のコンテストを目指して日々邁進中。

旅の後はウラノホシからお引越しして、最近はセキレイシティを本拠地に活動を頑張っているみたいです。


 主人公 曜 ✿
 手持ち カメックス♀ Lv.54 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.43 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:170匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt



    *    *    *
444 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:33:31.80 ID:x2+V1vVn0


──ルビィちゃん。


ルビィ「えっと……最近の採掘計画だと……」
 「ピピピ」

ルビィ「って、わぁ!? コラン、なんでジュース零してるの!?」
 「ピピピピ」

ルビィ「ピピピじゃないよ! って、あああーーー!!! 資料が、大切な資料がぁーーー!!!」
 「ピピピピピピ」

ルビィ「もうーーー!!! コランーーーー!!!!」
 「ピピピピピピーーーーー」

ルビィ「逃げないでよぉぉーーーー!!!」

ダイヤ「全く……騒がしいですわよ、ルビィ」

ルビィ「お、お姉ちゃーん……コランが資料にジュース零しちゃったぁ……」

ダイヤ「……はぁ……そんなことだろうと思って、控えを取っておきましたわ」

ルビィ「ホントに!? お姉ちゃん、ありがとう!!」


ダイヤ「全く……先が思いやられますわね……あれで本当に巫女なんて務まるのかしら……?」
 「メレ…」

ダイヤ「ボルツ……見守れって?」
 「メレ…」

ダイヤ「……はいはい、気長に見守るつもりですわよ……」
 「メレ……」


ルビィちゃんは事件後長くなっていた睡眠時間も、今ではすっかり健康なときと同じような状態に戻り、元気に過ごしてるみたい。

今はクロサワの巫女を継ぐ為に日夜勉強に励んでいるそうです。

ただ、ダイヤさん曰く、おっちょこちょいなところは旅立つ前に戻ってしまったなんて言っていて、お姉さん視点からだと相変わらず心配事が絶えないとかなんとか……。

ルビィちゃんのグラードンは今でも眠ったままで、普段はオハラ研究所にいるそうです。

空いた手持ちにはダイヤさんとお揃いの新しいポケモンを捕まえたって言ってたけど……まあ、これは余談だから、いつか別の機会に話そうかな。


 主人公 ルビィ
 手持ち バシャーモ♂ Lv.51 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
      メレシー Lv.53 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
      アブリボン♀ Lv.40 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
      キテルグマ♀ Lv.47 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      ドンファン♂ Lv.45 特性:がんじょう 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
      オドリドリ♀ Lv.35 特性:おどりこ 性格:いじっぱり 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:141匹 捕まえた数:15匹



    *    *    *
445 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:35:15.28 ID:x2+V1vVn0


──次に花丸ちゃん。


鞠莉「花丸ーいるー?」

花丸「なんずら?」

鞠莉「この間、研究発表会があったじゃない……」

花丸「ずら? 一昨日の?」

鞠莉「そうそれ……あのときの研究資料どこやったか知らない?」

花丸「また、失くしたずら!?」

鞠莉「いやー……なんか寝ておきたらどっかいっちゃって……」

花丸「そんなわけないずら!! ちゃんと探してください!!」

鞠莉「……ぅ……そんなに怒らなくても……」

花丸「あの研究は未来に繋がってく研究なんずらよ!!? もっとあの研究の重要さをちゃんと理解してください!!」

鞠莉「s...sorry...それはそうと花丸」

花丸「なんずらか!?」

鞠莉「頼まれてた、論文と書物が取り寄せられたわ」

花丸「……ホントずら!!? 超貴重な文献なのに……」

鞠莉「部屋に置いておくから、好きなときに読むといいわ」

花丸「はい!!! わかりました!!」


花丸ちゃんは鞠莉さんの助手になりました。

日々研究のお手伝いで忙しいみたいだけど……鞠莉さん曰く、最近お小言を言うことが増えてきたことがちょっと不満だとかなんとか……。

近いうちにダリア大学への入学も視野に入れて、推薦入学ための研究実績? みたいなもののために、毎日奮闘してるとか。


 主人公 花丸
 手持ち ドダイトス♂ Lv.45 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
       カビゴン♂ Lv.43 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
      デンリュウ♂ Lv.41 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
      キマワリ♂ Lv.40 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
      フワライド♂ Lv.41 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
      イノムー♂ Lv.42 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:189匹 捕まえた数:78匹



    *    *    *
446 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:36:29.91 ID:x2+V1vVn0


──そして、善子ちゃん。


鞠莉「──そういえば……善子はどこ行ったの?」

花丸「え? 善子ちゃんなら、博士に頼まれごとをされたって言ってさっき出て行きましたけど……」

鞠莉「頼まれごと……? そんなの、してないわよ」

花丸「…………善子ちゃん、まさか」

鞠莉「……あの子はまたサボりなの!? ちょっと捕まえてくるわ!!」

花丸「いってらっしゃーい」


善子「……全く、鞠莉はこの堕天使ヨハネのことコキ使いすぎなのよ。今月だけでどれだけポケモン捕獲したと思ってるのよ」
 「そうロト。週休は8日制希望ロト」

善子「アンタは何しれっとついてきてんのよ……」

鞠莉「待ちなさい!! 善子ーーー!!! って、ロトムもいるの!!?」

 「ロトッ!!?」
善子「げっ!? もう、気付かれた!!? ドンカラス、逃げるわよ!!!」
 「カァーーーーー!!!!!!」

 「よ、善子ちゃん、待ってロトーーー」

鞠莉「待ちなさいっ!! 善子ーーーー!!!!! ロトムーー!!!!」

善子「あーーーもう!!! だから、わたしは!!!!! 善子じゃなくて、ヨハネだってばーーーーーー!!!!!!!」


善子ちゃんも成り行きで鞠莉さんの助手になったとか。

ただ、鞠莉さんとは意見が食い違うことも少なくなくて、よくケンカしていると言うのは花丸ちゃんの談。

まあでも……たまに会うとすごい生き生きしてる気はするかな。なんだかんだで鞠莉さんの助手をやってるのは好きみたい。


 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.56 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ドンカラス♀ Lv.58 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
      ムウマージ♀ Lv.55 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.53 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.52 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:193匹 捕まえた数:100匹



    *    *    *
447 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:39:56.08 ID:x2+V1vVn0


そして──私、千歌の話。


千歌「音ノ木……やっぱり、めちゃくちゃ高いな……。風つよ……」
 「バクフッ」

千歌「頂上……初めて来たかも」
 「バク」

千歌「!! ……うわぁーーー!! すごい景色っ!! 雲の下にアキハラタウンやセキレイシティがあんなにちっちゃくみえる……!!」

 「ここからの景色、絶景だよねー」

千歌「!」

 「あ、ごめんごめん。そんなに警戒しないで〜……私も景色眺めてるだけだから」

千歌「あ、はい」

 「でも、すごいね。一人でここまで登って来るなんて……もしかして、腕利きのトレーナーさんなのかな?」

千歌「腕利き……えへへ、まあそれほどでも……。……あなたはいつもここに?」

 「うぅん、今日はたまたまかな。たまには故郷を見に戻るのもいいかなって」

千歌「そうなんですか」

 「うん」

千歌「ところで」

 「ん?」

千歌「あなたもポケモントレーナーですよね?」

 「…………ふふ、そういうことかー」

千歌「ポケモントレーナー同士、目が逢ったら……!!」

 「戦うのが礼儀だもんね!! いいよ!」

千歌「えへへ! 全力で行きますよ! 出番だよ、バクフーン!!」
 「バクフーーー!!!!!!」

 「私も負けるつもりないよっ!! 行くよ、リザードン!!」
  「リザァーーーー!!!!!!」


今日もこの地方のどこかで、ポケモントレーナーとして、

いろいろな人と、ポケモンと、出会い──そして戦い、競い合っています。

貴方もポケモンが大好きな人なら──もしかしたら、どこかで出会って戦うことになるかもしれないね……!

その日を楽しみにしてるよ。いつの日か全力で戦おうね!! いつの日か……──


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.81  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.75 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.69 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.72 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.80 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.71 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:200匹 捕まえた数:15匹





    *    *    *
448 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:40:31.63 ID:x2+V1vVn0





──ポケットモンスター、縮めてポケモン。

動物図鑑には載っていない、不思議な不思議な生き物。

その姿は海に、山に、森に、川に、草原に、街に、ありとあらゆるところに生息し、その数は100...200...300...400...いや、それ以上いると言われている。

これはそんな世界で生きる、少女たちとポケモンたちの……出会いと絆の物語──





<THE END>

449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 00:40:59.44 ID:S8QGpOZgO
乙でした!!!
450 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2019/05/18(土) 00:41:29.58 ID:x2+V1vVn0
終わりです。お目汚し失礼しました。


長い作品でしたが、お付き合い有難う御座いました。

少しでもポケモンの世界で千歌たちと一緒に旅をしている気分を感じて頂けていればと想います。


……最後に。

ちょっとした余興として、

千歌の手持ち6匹。バクフーン、しいたけ、ムクホーク、ルガルガン、ルカリオ、フローゼルの6匹でレートに潜ってみました。

そのときそれぞれの子をちゃんと活躍させてあげられた回を何戦か、バトルビデオとしてあげておきますので、ポケモンUSUMを御持ちで興味のある方は見て頂ければ嬉しく思います。

パーティメンバーPGLリンク (QRコードもあります。ご自由にお使いください。)
https://3ds.pokemon-gl.com/rentalteam/usum/BT-4859-9000

 バクフーン
 【XP5G-WWWW-WWX6-PMTU】

 しいたけ
 【J5DW-WWWW-WWX6-PMXC】

 ムクホーク
 【55NW-WWWW-WWX6-PUAN】

 ルガルガン
 【3E7G-WWWW-WWX6-PM28】

 ルカリオ
 【LJ9W-WWWW-WWX6-PLQZ】

 フローゼル
 【KNCG-WWWW-WWX6-PU86】


最後に改めて、ここまで読んで頂き有難う御座いました。

また書きたくなったら来ます。

よしなに。


過去作

善子「一週間の命」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495318007/

千歌「――私はある日、恋をした。」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491711229/

ダイヤ「もう一人の妹?」 ルビィ「もう一人のお姉ちゃん?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490808858/
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 00:44:08.81 ID:6SieaQCc0


聖雪エピローグはご想像にお任せしますって所かな
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 01:07:41.75 ID:bPt+LEf10
乙でした
ここ最近の楽しみだったので終わるのが少し寂しい反面、すっきり終わってくれて嬉しいです
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 14:02:45.11 ID:ghGxCN++o


毎回更新楽しみにしてたからさみしい
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/19(日) 04:27:52.60 ID:N6iQ83Aho
レックウザはなんだったんだ
まああそこなかったらハノケチェン空気過ぎたか
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/20(月) 02:36:02.64 ID:P60mWB4KO
面白かったです
ありがとうございました
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/22(水) 22:59:10.31 ID:NOwFtYkT0

チャンピオンを辞めた果南ちゃんはどこに…
穂乃果を探しに旅に出たのかな?
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/25(土) 20:38:57.62 ID:VhX0yA/VO
ほんと乙でした
メガニウムのおんがえしで、やつあたり使ってたチコリータ思い出して泣きそうになりました
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/31(金) 23:15:03.36 ID:pGMoPvTE0
投稿お疲れ様です。
ラブライブ もポケモンも好きなので、
とても楽しませて頂きました。
また、過去作の「一週間の命」は今でも鮮明に覚えていて、
この作者さんだったのかと衝撃を受けました。
次回作も期待しております。
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2019/06/18(火) 23:31:04.55 ID:F6nKHpREO
加藤純一(うんこちゃん)Youtubelive
ポケットモンスタープラチナVer普通にやる。2日目

https://www.youtube.com/watch?v=Ihy7geOMt1A
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2022/05/09(月) 19:15:46.53 ID:xtt5fe3fo
『モンスターファーム2(Switch)』#2
〜ぽんいちリベンジ編〜
(18:59〜放送開始)

https://youtu.be/TJ7DcdINfM4
895.92 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)