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千歌「ポケットモンスターAqours!」 Part2
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2 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:01:31.54 ID:XqTkDbxP0
■Chapter070 『聖良の野望』
──中層船尾。梨子たち。
千歌「──わわ!? なんか揺れてる!?」
曜「すごい揺れだね……なんか起きてるのかな……?」
艦内の揺れに驚く二人を尻目に、
「ヨノワー……」
梨子「…………」
私は気絶して転がるヨノワールに視線を向ける。
すると、
「ヨマワーー……」「ワルワルーーー……」
戦闘直前から、ヨノワールの近くをふよふよと浮いていたヨマワルたちが掻き消えて行く。
恐らく、親玉が倒されて逃げて行ったのだろう。
曜「ヨマワルたちが……」
梨子「たぶん……ヨノワールがゴーストポケモン騒動のボスだったんだと思う」
千歌「! それじゃあ……!」
梨子「うん。たぶん、地方内のゴーストポケモンたちが旗本を失った状態になったから、直に沈静化すると思う」
曜「それなら、街に安全が戻るのも時間の問題だね……!」
千歌「よかったぁ……」
梨子「……うん」
肯定の意こそ示すものの……安心する二人とは逆に、私は少し難しい顔をする。
千歌「梨子ちゃん?」
曜「まだ、何か気になるの……?」
梨子「……真姫さんが言ってたこと、覚えてる?」
千歌「真姫さんが言ってたこと……? なんだっけ……?」
曜「もしかして……ゴーストポケモンの大量発生の理由がわかってないって言ってたやつ?」
梨子「うん」
私は曜ちゃんの言葉に頷く。
梨子「原因は絶てたとは思う……だけど、理由はまだわかってない」
千歌「理由……かぁ」
せいぜい、この飛空挺で皆が戦ってきたポケモンは全て、聖良さんとやらの計画に加担したポケモンだった。
梨子「私が倒したスリーパーはグレイブ団を操るために配置されたポケモンだった」
曜「ブルンゲルはルビィちゃんを攫う役割があったし、ドヒドイデはサニーゴを食べて珊瑚集めをしてたんだもんね。……結果として集めた珊瑚は使われなかったみたいだけど」
千歌「オンバーンも同じかな……。メテノから“ほしのかけら”を集めるために居た」
3 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:03:51.13 ID:XqTkDbxP0
他にもバリヤードは艦首の部屋への入口を塞ぐという、かなり明瞭な理由を持ち合わせていた。
だけど……。
梨子「このヨノワールは……なんで、ゴーストポケモンを呼び寄せていたんだろう……」
千歌「……地方全体を混乱させるため?」
曜「確かにジムリーダーたちはそれで街から足止めを食らってるわけだし……一応理には適ってるのかな……?」
梨子「まあ……それはそうだね」
……やっぱり、それが理由なのかな……。
ゴーストタイプのポケモンが大量発生したら確かにイメージ的にも危機として認識されやすくはあるだろうし……。
でも……なにか釈然としない。
再び考え込みそうになったとき──
千歌「──あっ!!!?」
千歌ちゃんが大きな声をあげた。
曜「千歌ちゃん!? どうしたの……?」
千歌「私、善子ちゃんのところに戻らなきゃ……!!」
そう言って、部屋を飛び出そうとした、瞬間──
『その必要はないわ』
図鑑から、音声が聞こえてくる。
この声は……善子ちゃんだ。
千歌「! 善子ちゃん!」
善子『オンバーンなら、私が撃退したわ──』
* * *
善子「──オンバーンなら、私が撃退したわ」
千歌『ホントに!?』
天から、ガラス片や瓦礫が落ちてくる中、私は通話に応じる。
「ゲコガァ!!!」
ゲッコウガが絶えず、切り払ってくれているから、問題はないのだが。
戦闘を終え、アブソルは通常の姿に戻っていた。
どうやら、メガシンカは戦闘が終わると自動的に解除されるらしい。
実戦で使っていく最強戦力である以上、ちゃんとメガシンカを把握してかないとね……。
そんなことを考えながら、アブソルをボールに戻して、会話の続きに戻る。
善子「ええ。だから、これからずら丸の加勢に──」
『みんなぁーっ!!!』
4 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:05:09.85 ID:XqTkDbxP0
……っと、噂をすればね。
図鑑の通話音声から、ずら丸の声が割り込んでくる。
花丸『ルビィちゃんの救出!! 成功したずらー!!』
善子「!」
ずら丸の勝利報告と、ほぼ時を同じくして、
──pipipipipipi!!!!!!
と、図鑑が共鳴音を発し始める。
花丸『ずら!? ま、また鳴り始めたずら!?』
共鳴音は3つの図鑑が正しい所有者の手元にある場合しか鳴らない。
──と言うことは、
『──みんな!!』
通話の先から聞き覚えのある声。
曜『その声……!!』
千歌『ルビィちゃん……っ!!』
善子「……全く、心配掛けさせんじゃないわよ、リトルデーモン」
ルビィ『花丸ちゃんからいろいろ聞いたよ。みんな、ありがとう……』
ルビィは通話の向こうでお礼を述べてくる。
千歌『もう! 何、水臭いこと言ってるの!』
曜『そうだよ! 私たち、学校の先輩なんだから!』
善子「……ま、まあ、リトルデーモンの危機に堕天使が手助けをしないわけにもいかないし」
ルビィ『えへへ……ありがと、千歌ちゃん、曜ちゃん、ヨハネちゃん。……それと、梨子さん』
梨子『! あ、その、いえ……! ルビィちゃん……? が無事でよかったよ』
ルビィ『はい……! 見ず知らずのルビィのために……ありがとうございます……!』
……言われてみれば、梨子とルビィって、これが初対面なのね。
いや、通話越しだから、まだ対面してないけど。
なんてことを考えていたら、
──ガタンッ!! と床が再び大きく傾く。
善子「わたたっ!?」
千歌『うわっ!? また、傾いた!?』
向こうも同じようだ。つまり、艦そのものがバランスを崩しているという証左。
花丸『あ、そうだったずら! ルビィちゃんの脱出の際に、制御室を壊しちゃったから、皆急いで脱出して欲しいずら……!!』
梨子『やっぱり……そういうことになってたんだね』
善子「そういうことは先に言いなさい!!」
私は上を見上げる。
5 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:06:19.46 ID:XqTkDbxP0
天頂はオンバーンが吹き飛ばしてしまったため、視界の先には空が見える。
生憎、勝利にはやや相応しくない曇天だが……。
善子「私はこのまま、上から脱出するわ!」
千歌『じ、じゃあ、私たちは最初に入ってきた入口に戻って……!!』
梨子『い、急いで艦首の方に戻らないと……!!』
曜『あ、それなら、私が来た方に外に繋がる口があるよ!』
千歌『曜ちゃん、それホント!?』
曜『うん。ドヒドイデを倒した後、“ロッククライム”してるカイリキーに運んでもらう形で、壁とか天井を壊しながら、登ってきてたんだけど……その途中で、一度外に通じる外壁を間違えて壊しちゃって……危うく落ちかけたんだよね』
……曜から全然連絡がなかったと思ったら、そんなことになってたのね。
善子「……とにかく! 脱出経路があるなら、外で合流しましょう!」
千歌・梨子・曜『『『了解!』』』
通話を切り、ゲッコウガをボールに戻す。
善子「ドンカラス、まだ一仕事お願いね!」
「カァーーーー!!!!!」
──堕天使は黒翼を開き、ガラス片の舞う天頂へ向かって飛び出したのだった。
* * *
──クロサワの祠。鞠莉、ダイヤ、果南。
鞠莉「Oh...」
目の前では、圧倒的な存在感を示しているディアルガ。
そして、
「バァァァァーーールッ!!!!!!!!」
怒り狂ったように、パルキアが暴れ始める。
パルキアが腕を乱暴に振るうと──
果南「鞠莉ッ!!! 危ないっ!!!」
鞠莉「!?」
果南が飛びついてくる、
押し倒される、形で退けたその場所は──
鞠莉「……!!」
空間が切除され、地面から壁に向かって、巨大な爪で引っかいたような跡が出来上がっていた。
鞠莉「ご、ごめん、ありがとう果南……!!」
6 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:08:07.79 ID:XqTkDbxP0
私はすぐさま、視線を前方の敵へと戻す。
「ディァァァ──」
鞠莉・果南「「!!」」
今度はディアルガが、僅かに開いた口に青白いエネルギーを収束している姿。
ダイヤ「ハガネール!!! メガシンカですわ!!!」
「ンネェェーーーーールッ!!!!!!」
ダイヤの声と共に、光り輝くハガネールが地中から飛び出し、ディアルガの身体に巻き付いていく。
ダイヤ「“たたきつける”!!」
「ンネェーーーーーールッッッ!!!!!!!」
メガハガネールが引き摺り落とすように、ディアルガを押し倒すと、
「ディア──ガァァァァァ!!!!!」
ディアルガの顔が、その拍子に上の方を向き、収束したエネルギーは天井に向かって暴発する。
ダイヤ「鞠莉さんっ!! 果南さんっ!! 伏せてくださいっ!!」
果南「!! 鞠莉っ!!」
鞠莉「!」
ダイヤの大声を聞いて、果南が再びわたしに覆いかぶさってくる。
──────。
天井に向かって一閃する青白い光は、聞いたこともない、形容するのも難しい、不可思議な轟音を響かせながら、天井を貫く。
空気が軋み、岩石が消滅し、その衝撃が地面を転がるわたしたちの元まで届いてくる。
これが、時空すらも歪めると言われるディアルガの最強の一撃──“ときのほうこう”……!!
ディアルガからのエネルギー放射が止まると──
攻撃を受けた天井の岩肌は、まるで最初からそういう形だったかのように刳り貫かれ、その穴の遠くには小さく空が見えていた。
果南「じ、冗談みたいな威力……!!」
ダイヤ「鞠莉さん!! 果南さん!!」
鞠莉・果南「「!!」」
再びダイヤの声に視線を戻すと、
「バァァァーーーール!!!!!!」
パルキアが暴れたまま、乱暴に尻尾を振るい、その衝撃波が迫っているところだった。
鞠莉「っ!! スターブライト号!!」
「ヒヒィーーーンッ!!!!!!!」
咄嗟に、ギャロップのスターブライト号を繰り出し、果南の手を引き、半ば無理矢理、騎乗して走り出す。
果南「っ!!」
間一髪で、“アクアテール”の衝撃波から、逃れるが……。
7 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:10:04.29 ID:XqTkDbxP0
鞠莉「伝説ポケモン二匹相手……っ……」
果南「さすがに私たちでも荷が重いね……!!」
唯一の救いは、野生に還ったパルキアは暴れているだけで、わたしたちを積極的に狙っているわけじゃないというところだろうか。
鞠莉「こんなことなら、さっさとスナッチするべきだった……!!」
スナッチマシーン自体、まともにチューンする暇もなかったから、どれくらいまともに動くかの問題もあって、出来れば使いたくなかったと言うのが、甘い考えだった。
果南「いや、結果としては、使わなくてよかったと思う」
鞠莉「……今、慰めなんか……!!」
果南「どっちにしろ、ディアルガの召喚は誰にも防げなかった。それに、マスターボールは一個しかないんでしょ?」
鞠莉「それは……そうだけど……っ!!」
果南「スナッチの対象がディアルガに移っただけだよ。パルキアは野生に還ったんだったら、普通に捕獲出来る。まだ失敗だって、嘆くほどじゃない」
鞠莉「果南……うん」
後悔している場合じゃない。
こうなったら、ディアルガをスナッチマシーンで捕獲し、パルキアを通常の捕獲で無力化する必要がある。
鞠莉「果南の言う通り、マスターボールは1個しかない。出来る限り、スナッチマシーンでディアルガに対して使用したいことを考えると、パルキアは通常のボールで捕獲するしかない」
果南「なら、パルキアは極力弱らせる必要があるね」
この状況で、出来るのか……?
わたしは思案しながら、スターブライト号を操りながら、二匹のポケモンの標的にされないように、大回りでダイヤの居る元へと走る。
ダイヤ「お二人とも……!! 無事ですか!?」
辿り着くと、ダイヤはメガハガネールへの指示のためか、ディアルガの方を向いたまま、声だけで安否の確認を求めてくる。
鞠莉「ええ、お陰様で!」
果南「それより、また聖良の様子、またおかしくない……?」
果南に言われて、聖良の方に視線を配ると、
彼女はわたしたちにも、ディアルガやパルキアからも背を向けた状態で、
祠に向かって──
聖良「──さぁ、どうですか!? ディアルガもパルキアもこの手に御した私を放っておいていいんですか!?」
そう叫んでいた。
鞠莉「……あれは、なにしてるの……?」
ダイヤ「わかりません……ですが、何かを企んでいるのは、確実ですわ……!」
果南「なら……先に潰すしかない……!! ラグラージ!!」
「ラァグ!!!!!」
そう言って、果南が再びメガラグラージに飛び乗って、飛び出す。
果南「“アクアジェット”!!」
「ラァグッ!!!!」
8 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:11:50.30 ID:XqTkDbxP0
水流を身に纏い、ラグラージが加速する。
メガハガネールに組伏されたディアルガと暴れるパルキアの間を縫うように通りぬけ、聖良の元へ一直線に近付き、
聖良「──さぁ……!!」
依然、背を向け、祠に向かって声を張り上げる聖良に向かって、
果南「“アームハンマー”!!!」
「ラァグッ!!!!!!」
拳を振り下ろした──が、
その拳は聖良に届くすんでのところで、突然現われた分厚い氷の壁に遮られる。
「────シャラシャラ」
大きな雪の結晶のようなポケモンが、ラグラージの攻撃を防いでいた。
果南「フリージオ……!?」
聖良「……邪魔しないで貰えますか?」
その氷の壁はそのまま、防いだラグラージの拳を巻き込んで大きく氷結結晶化していく。
鞠莉「果南っ!!」
「ヒヒィンッ!!!!!」
わたしはスターブライト号の横腹を足で打ち、走り出す。
「バァァァーーールッ!!!!!!!」
幸いパルキアは、わたしたちとは全然違う方向を向いて、攻撃の構えを──
鞠莉「……え!?」
ダイヤ「!!? パルキアが攻撃しとうとしてるのは、入江の壁ですわ!!」
鞠莉「穴を開けて、外に逃げようとしてる……!?」
「バァァァーーーールッ!!!!!!!」
パルキアが腕を振るうと、岩肌が豆腐でも切るかのように、切り裂かれ、
その隙間から外の光が差し込んでくる。
鞠莉「不味い……!! スターブライト号!! “ほのおのうず”!!」
「ヒヒィィーーーンッ!!!!!!!!」
どうにか拘束しようと、技を放つが──
次の瞬間、今度は祠の方から、
──巨大な影が飛び出してきた。
果南「!?」
鞠莉「今度は何!?」
巨大な影──それは比喩ではなく、まさしく巨大な影の塊だった。
次から次へと起こる事態に、この場に居る人間は誰も頭が追いつかない。
9 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:13:21.68 ID:XqTkDbxP0
聖良「……やっと、来ましたか」
聖良を除いて──。
「──────」
果南「……な、に……これ……?」
まさにそれは巨大な影だった。
異様な雰囲気の影。
存在を感じないのに、圧倒的な存在感を示し、
啼いてもいないのに、その啼き声からは全身に重低音をぶつけられたような音圧を感じる。
ダイヤ「なん、ですか……あれは……?」
鞠莉「ま……さか……!?」
この異様なポケモンに対して、研究者の自分は、僅かながらだが、心当たりがあった。
鞠莉「──ギラティナ……」
影はどんどん大きくなっていく。
鞠莉「!! マフォクシー!! “かえんほうしゃ”!!」
──私は咄嗟に叫ぶ。
「マフォッ!!!!」
ラグラージを捕まえている、フリージオ向かって、後方からマフォクシーが火炎を吹き付けるが、
「────シャラン」
フリージオの分厚い氷は、マフォクシーの炎でもなかなか溶けない。
鞠莉「果南ッ!! 逃げてッ!!!!!」
果南「……っ!!」
私は叫ぶ。
直後、今度は、そんなわたしの背後から、通り過ぎるように、紫色の飛行体が、聖良の元へと飛んで行く。
鞠莉「……!?」
理亞「ねえさま!!」
ダイヤ「……! あれは……理亞さん……!?」
理亞はラグラージを凍らされ身動きが取れない果南を一瞥してから、
理亞「ねえさま……ごめんなさい、飛空挺。堕とされた……」
悔しそうに顔を歪めながら、謝罪をする。
聖良「理亞……大丈夫ですよ。計画は順調に進んでいます。見てください」
10 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:15:09.60 ID:XqTkDbxP0
聖良はそう言いながら、目の前の影に向き直った。
聖良「この──ギラティナが……私たちを連れて行ってくれますよ」
聖良の言葉と共に、影は更に大きくなり、彼女たちを呑み込んで行く。
──もちろん、近くに居た果南ごと。
鞠莉「果南ッ!!!!!!」
わたしは叫んで、スターブライト号と共に飛び出す。
果南「ッ……!! ラグラージ!! “じならし”!!」
「ラァグッ!!!!!」
鞠莉「!?」
だが、ラグラージの“じならし”で動きを止められる。
鞠莉「果南!?」
果南「鞠莉ッ!! 来ちゃダメ!!」
鞠莉「果南ッ!!!! 自分だけ犠牲になんて、許さないわよ……ッ!!!!」
叫ぶ。
果南「違う、そうじゃないッ!!」
鞠莉「ッ!?」
果南「もし鞠莉まで、いなくなったら、ディアルガとパルキアはどうすんの!? ダイヤ一人で相手するなんて無理でしょ!!?」
鞠莉「!!」
果南の言葉にハッとする。まだ戦闘は終わっていないんだ。
果南「私は絶対戻ってくるから!!! 鞠莉はダイヤと一緒にディアルガとパルキアを止め────」
言葉ごと喰い尽くすように、影は果南と聖良と理亞を飲み込んで……。
──消えてしまった。
鞠莉「!! 果南…………!!」
そこに残っていたのは、立派な装飾の祠だけだった。
「ディアガァァァァ──」
「ンネェーーール!!?」
ダイヤ「……っ!! ハガネール……っ!!」
“ときのほうこう”の反動で僅かに大人しくなっていた、ディアルガが再びパワーを取り戻し始めたのか、メガハガネールの拘束を振りほどく。
「バァァァァーーール!!!!!!!」
パルキアは、自ら作った切れ目から、外に向かって乱暴に前進をしている。
鞠莉「…………何よ、どいつもこいつも」
果南も果南だ。いつも自分のことなんて顧みずに、わたしの気持ちなんて考えずに、一人で戦いに行ってしまうのだ。
11 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:16:56.24 ID:XqTkDbxP0
鞠莉「……いいじゃない。やってやろうじゃない……!!」
わたしはボールを放る。
「マフォッ」「サナッ」「──ウィー、ピコピコ」「──ブブブ」「ヒヒィーン!!!!!」
鞠莉「マフォクシー、サーナイト、ポリゴンZ、ビークイン、スターブライト号……!! やるわよ!!」
ありったけの手持ちを繰り出して。わたしは体勢を立て直したディアルガに向き直る。
ダイヤ「鞠莉さん……!!」
ダイヤがこちらに駆け寄ってくる。
鞠莉「ディアルガを最速で捕まえて……パルキアも追っかけて捕まえて……!! 果南を助けに行く……!!」
「ディアガァァァァァァ!!!!!!!」
わたしは手持ちとともに、ディアルガに向かって──飛び出した。
* * *
──飛空挺、脱出口。千歌たち。
曜ちゃんの案内で飛空挺の外へ飛び出す、私たち。
千歌「ムクホーク!!」
「ピィィィーーーー!!!!!!」
梨子「ピジョット!!」
「ピジョットォォォ!!!!!!」
千歌「曜ちゃん! 乗って!!」
曜「うん!!」
曜ちゃんを乗せて、ムクホークと一緒に飛び立つ。
──そこは見慣れた海の上空。
千歌「ここ……スルガ海!!?」
曜「……うん、すぐ近くにアワシマも見える……!!」
気付けば飛空挺は随分とクロサワの入江に近付いていたようだった。
そんな私たちの上に、ポツポツと──
梨子「……雨」
雨が降って来る。
──ポツポツと降って来た雨は、冗談のように、一気に雨足を強め。
千歌「わわ!? す、すごい雨……!?」
雲の中で雷がゴロゴロと音を立て始める。
12 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:18:56.06 ID:XqTkDbxP0
善子「──千歌っ!!!」
そこへ声を掛けながら飛んでくる善子ちゃん。
善子「リリーも、曜も!! あれ見て!!」
善子ちゃんが入江の方を指差す──そこには。
大きな白い体躯に、肩関節に見えるのは大きな宝玉。
あのポケモンは──
千歌「パルキア……!?」
曜「あ、あれが……」
梨子「パルキア……!」
善子「ま、鞠莉たちが捕獲したやつ……よね……?」
善子ちゃんが顔を引き攣らせて、そう言う。
「バァァァァッァーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
千歌「わぁーーーっ!!?」
曜「お、怒ってる……!?」
梨子「まさか、捕獲出来てない……!?」
善子「まあ……そうじゃないかとは思ってたわよ……!!」
パルキアは前進を初め、入江から海へと歩を進める。
善子「こっち来るわよ!! どうする!?」
梨子「ど、どうするって……!」
千歌「……私たちで止めよう……!」
善子「!? 千歌!? 本気!?」
曜「鞠莉さんたちがパルキアを追ってきてないってことは……追えない事情があるんだよね」
追えない事情……鞠莉さんたちの手が回らない何かが起きてる……。
だったら……ううん、だからこそ、
千歌「今あれを止められるのは私たちしかいない……!!」
曜「やるしかない……ってことだよね……!!」
梨子「千歌ちゃん……!! 行こう……!!」
善子「……あーもう、わかったわよっ!! 地獄の果てまで付き合ってあげるわよっ!?」
「ロトッ!? ホントに行くロト!?」
善子「ロトム、あんたは私のバッグにでも隠れてなさい!!」
「り、了解ロト……ッ」
「バァァッァーーーーーール!!!!!!!!!!」
千歌「皆、行くよーーーーっ!!!!」
私たち4人はパルキアに向かって、飛び出した。
13 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:19:38.98 ID:XqTkDbxP0
* * *
──1番道路。
海未「──飛空挺が……」
見据える先、上空では、飛空挺が煙を上げて、墜落しそうになっている。
それも、こちら1番道路に向かって。
絵里「ふふ、千歌ちゃんたち、やり遂げたみたいね」
海未「……当然です」
敵旗艦を航行不能に追い込んだ。恐らく、ルビィの救出は成功したと判断していいでしょう。
絵里「じゃあ、ここからは私たちの仕事ね」
海未「ええ、お願いします。絵里」
こちらに向かって墜落してくる、巨大な飛空挺。
あんなものが地面に直撃したら、大きな被害になる。
だから、こうして待機していたのだ。
絵里「行くわよ! キュウコン!!」
「コーーーンッ!!!!!!」
海未「エルレイド」
「エルレッ!!!!」
14 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:20:09.32 ID:XqTkDbxP0
──迫る飛空挺。
絵里「…………」
絵里が静かに前に躍り出る。
眼前の飛空挺に向かって──
絵里「──“ぜったいれいど”」
──飛空挺は、凍り付いて、止まった。
そして、その背後から、凍らせきれなかった大きめの瓦礫が飛んでくる。
海未「……“いあいぎり”!!」
「エルッ」
その瓦礫を微塵に切り裂く。
絵里「……さすがね」
海未「絵里も、お見事です」
讃えあうが、その背後からは、まだ細々とした瓦礫が降って来ている。
海未「……骨が折れそうですね」
エルレイドと共に再び構える。
海未「この先……一片たりとも、通しませんよ」
「エルレ!!!」
私の言葉と共に、エルレイドが刃を振るった──。
15 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:21:48.96 ID:XqTkDbxP0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かこんでいます
でんげんを きらないでください...
【スルガ海】【クロサワの入江】
口================= 口
||. |⊂⊃ _回../||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||. ⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : ||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : ||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: ||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o●| | | ||
||. / | | | ||
||./ ●回/ ||
口=================口
16 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/11(土) 14:22:34.27 ID:XqTkDbxP0
主人公 千歌
手持ち バクフーン♂ Lv.53 特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
ルカリオ♂ Lv.52 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
バッジ 7個 図鑑 見つけた数:146匹 捕まえた数:13匹
主人公 梨子
手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
チェリム♀ Lv.46 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
ピジョット♀ Lv.46 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
バッジ 5個 図鑑 見つけた数:121匹 捕まえた数:13匹
主人公 曜
手持ち カメックス♀ Lv.50 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
ホエルオー♀ Lv.41 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
バッジ 2個 図鑑 見つけた数:149匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:48pt
主人公 善子
手持ち ゲッコウガ♂ Lv.48 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
ドンカラス♀ Lv.54 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
アブソル♂ Lv.55 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
バッジ 1個 図鑑 見つけた数:126匹 捕まえた数:52匹
主人公 鞠莉
手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり
ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい
ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
?????? ?? 特性:????? 性格:???? 個性:??????
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:468匹 捕まえた数:311匹
主人公 ダイヤ
手持ち ジャローダ♀ Lv.69 特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん
ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい
ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん
アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:267匹 捕まえた数:113匹
千歌と 梨子と 曜と 善子と 鞠莉と ダイヤは
レポートを しっかり かきのこした!
...To be continued.
17 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:07:30.75 ID:DoNfZkVt0
■Chapter071 『決戦のスルガ海!』
──スルガ海、上空。
私たち4人はパルキアに向かって、一気に下降する。
「バァァーーーール!!!!!!!!!」
動く影に気付いたのか、パルキアが顔をあげて、こちらを見てくる。
善子「梨子! お願い!」
梨子「ピジョット!! メガシンカ!!」
「ピジョットォ!!!!!!!」
梨子ちゃんのメガブレスレットが光り、それに呼応するようにピジョットが七色の光に包まれる。
「ピジョットォォォーーーーーー!!!!!!!!」
ピジョットの立派な冠羽が更に長く立派に成長し、羽がより鮮やかで美しく棚引く。
梨子「ピジョット!! “ぼうふう”!!」
「ピジョットォォォーーーーー!!!!!!!」
「バァァーーー!!!!!!」
メガシンカのパワーを載せた強力な“ぼうふう”でパルキアを牽制する。
その隙に私たちは、一気に海上まで急降下。
曜「千歌ちゃん、善子ちゃん、先に行くよ!」
曜ちゃんが真っ先に飛び出す。
曜「行け!! ホエルオー!!」
海上に向かって放たれたボールからは──
「ボォォォォォォオォォォォォォ!!!!!!!!!」
巨大なホエルオーが現われる。
そのホエルオーの上に、私と善子ちゃんは曜ちゃんを追いかけて降り立つ。
「バァァァァァァ!!!!!!!」
千歌・善子「「!」」
大きな雄叫びがあがる。
善子ちゃんと同時にパルキアの方を見ると、“ぼうふう”の中でもがきながらも、腕を振りぬこうとしている姿が目に入ってくる。
不味い──“あくうせつだん”だ……!!
善子「アブソル!!」
「ソルッ!!!!」
善子「メガシンカ!!」
善子ちゃんはホエルオーの上でアブソルを繰り出すと同時に、メガシンカ。
18 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:10:54.29 ID:DoNfZkVt0
善子「“かまいたち”!!」
「ソォーーール!!!!!!」
七色の光の中から、アブソルが空気の刃をパルキアの腕に向かって飛ばす。
その刃は上から下に向かって振りぬこうとしていた、パルキアの腕を弾いて、技をキャンセルさせる。
善子「“あくうせつだん”を撃たせたらアウトよ!! 全員、パルキアの動きに注意しなさい!!」
「バァァァーーール……!!!!!」
そんな善子ちゃんの方向にパルキアは顔を向けて、直後口に水の塊が収束されていく。
善子「い゛っ!? こっち狙うんじゃないわよっ!?」
曜「カメックス!! メガシンカ!!」
「ガメェーーーー!!!!!!!」
二人に続くように、曜ちゃんが海上に繰り出したカメックスをメガシンカさせ──
曜「“ハイドロポンプ”!!!」
「ガメェーーーーーッ!!!!!!」
「バァーーーール!!!!!!!!」
パルキアとカメックスの“ハイドロポンプ”同士がぶつかり合う。
カメックスの三門の“ハイドロポンプ”を受けた、パルキアの攻撃は僅かに逸れて、ホエルオーの横辺りに着弾。
海上に大きな波を立てる。
曜「メガカメックスの攻撃で、逸らすのがやっとだよ……!! すごい火力……!!」
善子「逸らせただけで、十分よ!! とにかく一発でも食らったらアウトな威力なんだから!!」
「バァァァァ!!!!!!!!」
パルキアが再び雄叫びをあげると、パルキアの周囲に無数の宝石のような輝きのエネルギー体が浮かび上がる。
善子「! “パワージェム”が来るわよ!!」
千歌「行くよ!! ルカリオ!!」
「グゥァ!!!!!」
私はルカリオを繰り出し、髪留めに触れながら、叫ぶ──。
千歌「メガシンカ!!!」
メガバレッタから七色の光が溢れ出し、それに呼応するようにルカリオがメガシンカする──!!
「グゥゥォァアア!!!!!!!!」
気合いの雄叫びをあげながら、姿を変えたルカリオは、手足や体毛が一段階逞しくなった形で周囲に波導のエネルギーを散らす。
千歌「“はどうだん”!!」
「グゥゥゥォァァァ!!!!!!!!!」
メガシンカによってより強い波導をコントロールできるようになったルカリオから、複数の“はどうだん”が同時に発射され、空中で“パワージェム”と打ち合う。
千歌「よっし……!!」
善子「アブソル!! “サイコカッター”!!」
「ソォル!!!!!」
19 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:12:55.25 ID:DoNfZkVt0
その隙にアブソルが攻撃を撃ち込む。
……だけど、
──ッチと音を立てて、アブソルの攻撃はパルキアに届く前に消え去ってしまう。
どうやら、パルキアの周囲にある水色のオーラみたいなものに掻き消されてしまったらしい。
善子「あれ、もしかして“アクアリング”!? そういう技じゃないでしょ!!」
それと同時に、海上にいくつもの水柱があがる。
曜「海中から攻撃!? 海底火山の噴火っぽいよ、あれ!?」
「ボォォォォォオォォォォォォオ」
どうにかホエルオーへの直撃はないものの、辺りにいくつもの水柱があがる。
曜「もしかして、“だいちのちから”!? エネルギーが海底から噴き出してきてる……!!」
千歌「こ、このままじゃホエルオーに攻撃が当たっちゃう……!!」
大きな体のホエルオーだ。このままじゃ、被弾するのも時間の問題。
梨子「──“エアスラッシュ”!!」
「ピジョットォォォォ!!!!!!!」
すると上空から、梨子ちゃんとピジョットの攻撃がパルキアの頭部を掠める、
「バァァァァァ!!!!!!!!」
梨子「防御してても、“とぎすます”で精度を高めた攻撃なら防ぎきれないよね!!」
私たちが打ち合いをしている間、梨子ちゃんは次の攻撃の準備をしていたようだった。
“とぎすます”は一旦集中することによって、次の攻撃が必ず急所に当たるようになる技だ。
お陰で、“だいちのちから”はストップしたけど──
「バァァァル……!!!!!!」
パルキアが梨子ちゃんとピジョットの方に視線を向ける。
梨子「っ!!」
善子「バカッ!? リリー!! 一人で注意引いたら、狙い撃ちされるでしょ!!?」
「バァァァァーーーール!!!!!!!!!」
パルキアが再び腕を、上から下に向かって薙ごうとする。
次は上空の梨子ちゃんとピジョットに狙いを定めて──
善子「アブソル!! “かまいたち”!!」
「ソォォル!!!!!!」
最初同様アブソルがパルキアの腕に向かって攻撃を放つ。
高威力の空刃は、再びパルキアの腕を弾いて技を不発させたが、
──弾かれた腕とは、逆の腕も動いていた。
20 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:16:34.27 ID:DoNfZkVt0
善子「!?」
千歌「!! 梨子ちゃん!? 逃げてっ!!!」
「バァァァーーール!!!!!!!!」
パルキアから今度こそ、上空に向かって“あくうせつだん”が放たれる。
梨子「っ!! “オウムがえし”!!」
「ピジョットォォォ!!!!!!!」
梨子ちゃんが指示を出すと、ピジョットからも空間を引き裂く刃が放たれ、攻撃がぶつかり合うが──
善子「ただ、コピーするだけじゃ張り合うのは無理よっ!!! リリーッ!!!」
善子ちゃんの言う通り、ピジョットがコピーして撃った“あくうせつだん”は一瞬で掻き消され、
梨子「避けてぇっ!!!!」
「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」
梨子ちゃんの指示で全身全霊の回避行動に移ったピジョットは、身を捻りながら、ギリギリで直撃を避け……“あくうせつだん”はどうにか翼を掠めるまでに至った。
いや──あんなのは、もはや掠めたとは言えない。
空間が一瞬で引き裂かれ、爆縮した空気が弾けて、轟音を鳴らす。
梨子「っ!!!!!!」
「ピジョットォォォォォォ!!!?!!?」
その衝撃は近くを掠めただけで、ピジョットを吹き飛ばす威力となる。
その先、遠方の天空で分厚い雨雲すら引き裂いて、それによって出来た割れ目から、遥か遠方で滝のように太陽の光が海上に向かって差し込んで来る。
曜「む、無茶苦茶すぎる!?」
そしてピジョットが吹き飛ばされた影響で、梨子ちゃんが空中に投げ出されてしまう。
梨子「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?」
千歌「梨子ちゃんっ!!!」
曜「ホエルオー!! 梨子ちゃんの着地地点へどうにか先回りして……!!」
「ボォォォォォオオオオォォォォォ!!!!!!!」
ホエルオーが全身を躍動させながら、泳ぎ始める。
梨子「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
千歌「しいたけっ!!」
「ワフッ!!!!」
梨子ちゃんが落ちてくる地点を見極めて──
千歌「“コットンガード”!!!」
「ワフッ!!!!!!」
しいたけが一気に体毛を増やして膨らんでいく。
辺りに振っている豪雨の所為で、毛がすぐに縮んでしまいがちだが──
千歌「しいたけっ!!! 頑張って!!!!」
「ワフッ!!!!!!」
21 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:17:46.16 ID:DoNfZkVt0
しいたけは、どんどん膨らんで行き、
──ボスンッ
と、そこに梨子ちゃんが落下する。
千歌「梨子ちゃん!?」
梨子「っ゛……!」
千歌「大丈夫!? どこか傷むの!?」
梨子「……う、うぅん……びっくりしただけ……ありがと、千歌ちゃん……しいたけちゃん……」
どうやら、無事のようだ。
千歌「しいたけが居てよかった……」
安心したと同時にあることを思い出す──
千歌「……あっ」
しいたけは犬ポケモンだ……。
梨子「?」
千歌「り、梨子ちゃん、ご、ごめん!?」
梨子「え?」
千歌「え?」
梨子ちゃんから、当惑の声があがる。
どうやら気付いてない……?
千歌「い、いや気付いてないならいいのっ!!」
梨子「え? う、うん?」
善子「──あんたたち何遊んでんのよ!!」
善子ちゃんから、怒声が飛んでくる。
視線を戻すと、善子ちゃんは絶えずパルキアの攻撃を邪魔してくれている真っ最中だった。
梨子「そうだ、ピジョットは!?」
梨子ちゃんが焦り気味に立ち上がる。
曜「大丈夫!! 落下地点にラプラスに向かって貰ったから!!」
そう言いながら、曜ちゃんが指差すと、
「キュゥゥゥゥーーーー」
背中にピジョットを乗っけたラプラスが声をあげた。
梨子「ほ……ありがとう、曜ちゃん……!」
曜「ヨーソロー!! 気にしないで!!」
どうにか梨子ちゃんとピジョットの無事を確認したところで、私は再びパルキアに視線を戻す。
22 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:18:42.82 ID:DoNfZkVt0
「バァァァーーーッル!!!!!!!!」
パルキアは雄叫びをあげながら、着水している部分から大きな波を発生させる。
善子「あれもしかして、“みずのはどう”!? 波動っつーより津波じゃない!?」
曜「カメックス!! こっちも“みずのはどう”!!」
「ガメェーーーッ!!!!!!!」
カメックスも“みずのはどう”のエネルギーを出して、相殺しようとするが──
善子「い、威力が違いすぎる……!!」
一瞬でカメックスの攻撃ごと飲み込んで、ホエルオーごと高波に襲われる。
千歌「わわっ!?」
梨子「っ……!!」
曜「みんな、どうにか耐えて……っ!!」
「ボォォォォォオオォォォォォ!!!!!!!!!」
全員どうにか身を伏せて、ホエルオーから振り落とされないようにするが、
……したが──。
千歌「……あ」
荒れ狂う高波の間から、一瞬だけ見えたのは──
こちらに向かって尻尾を振り下ろしてくる、パルキアの姿。
善子「“ドラゴンテール”!?」
──ダメだ。これじゃ全員やられる。
止めるしかない──!!
千歌「ルカリオォ!!!!」
「グゥゥォァ!!!!!!」
ルカリオの名を呼びながら、一歩前に出る。
曜「千歌ちゃん!?」
梨子「ダメ、危ない!? さがって!?」
攻撃を受け止め、弾き飛ばす。
攻撃の軌道を、攻撃の呼吸を、読みきれ──!!
振り下ろされる尻尾に向かって、
真っ直ぐ指差す。
千歌「そこだ!! “はっけい”!!」
「グゥゥォォッ!!!!!!!」
「バァァァァァーーーーアル!!!!!!」
23 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:19:46.17 ID:DoNfZkVt0
ルカリオの掌が、襲い掛かってくる、パルキアの尻尾とぶつかった、瞬間。
──轟音を立てながら、パルキアの尻尾を弾き飛ばす。
成功した。攻撃を弾いた、
弾いた……けど、
曜「千歌ちゃん!?」
梨子「千歌ちゃんっ!!!」
善子「千歌っ!!!!」
二匹の攻撃のインパクトの瞬間にすぐ近くに居た私は……弾ける二匹の攻撃の衝撃を受けて──
千歌「っ……!!」
吹き飛ばされていた──。
宙を浮いた体を制御する方法なんて、もちろんあるわけなくて、
私はそのまま、荒れ狂う海へと放り投げられるだけだった。
* * *
24 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:21:13.28 ID:DoNfZkVt0
曜「千歌ちゃんっ!!!!!」
曜がホエルオーの上から海へと飛び降りようとする、
善子「待ちなさいっ!!! 曜っ!!!!」
それを咄嗟に羽交い絞めにする。
善子「こんな状況で海に飛び込むなんて、自殺行為よ!!?!?」
曜「でもっ!!!! 千歌ちゃんがっ!!!!!」
善子「あんたが飛び込むなっ!!! せめて、みずポケモンに任せなさいっ!?」
曜「っ!!!」
曜はハッとした表情をして、ボールを放る。
曜「タマンタ、お願いっ!!! 千歌ちゃんをっ!!!!!」
「タマッ!!!!!」
梨子「ネオラントッ!!! タマンタと一緒に千歌ちゃんを探してっ!!!」
「ネオーーッ」
二匹のみずポケモンが荒海の中を潜っていく。
ただ、この度重なる伝説ポケモンの攻撃で狂った異様な海模様。正直一瞬でどこまで流されたかすら検討が付かない。
タマンタとネオラントのスピード追いつけるのかは甚だ疑問だ……。
曜「千歌ちゃん……っ……。千歌ちゃん……っ!!」
祈るように、千歌の名前を呼び続ける曜を見て、そんなことは言えなかったが……。
どちらにしろ、不味い。
千歌を失って士気が一気にガタガタになった。
特に曜の動揺が酷く、まともにポケモンの戦闘指示に戻れる状況だとは思えない。
カメックスとルカリオは独自の判断で、攻撃をしてはいるものの、どうしてもトレーナーの指示がないとピンポイントな相殺の質は落ちる。
梨子「チェリムッ!! “ウェザーボール”!!!」
「チェリリーッ」
リリーも戦ってはいるが、ピジョットを失った彼女は遠距離攻撃の手段がほとんどない。
もはや、まともに撃ちあう戦力は、私とアブソルだけ……。
不味い。不味い。不味い。
このままじゃ直に全員やられる。
どうにか……どうにかしないと……!!
25 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:22:15.58 ID:DoNfZkVt0
* * *
──荒れ狂う海流の中で、身体が引き千切られそうだった。
すぐ傍で攻撃が弾けたせいなのか、それとも人間はこういう海流の中にいるとこうなるのか……どっちかわからなかったけど、身体は全く言うこと利かず、もがくことすらままならなかった。
……私……このまま、死ぬのかな……。
せめて……腰に付けたままのバクフーンとムクホークとルガルガンだけでも助かれば──。
なんて、考えていると、腰の三つのボールがカタカタ震えてるのだけはなんとなくわかった。
……ありがと、バクフーン、ムクホーク、ルガルガン。
私を助けるために、外に出せって言ってるんだよね。
でも、キミたち泳げないでしょ?
大丈夫……ボールの中に居れば、きっと死んだりしない。
戦いが終わったあとに、誰かが見つけて助けてくれるよ。
……だから、死ぬのは……私だけ……。
──もう自分が上に流されてるのか、下に流されてるのか。上下左右、前後ろすらも全くわからない。
……ああ、こんなことなら……。
泳げるポケモン──捕まえておくんだったな……。
……私の意識が、ぶくぶくと……海に沈んで行く、中で。
「──ゼル……!!!」
聞き覚えのある鳴き声がしたと、思った──。
* * *
26 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:24:36.71 ID:DoNfZkVt0
曜「千歌ちゃん……」
あれから何分経った……?
5分くらい……10分は経ってない思うけど、激しい戦闘のせいで正確な時間の感覚を失っていた。
曜ちゃんの表情はどんどん絶望の色に染まっていく。
「バァァァーーーールッ!!!!!!!」
善子「アブソルッ!!!! “かまいたち”っ!!!!!」
「ソォォルッ!!!!!!!」
曜「千歌……ちゃん……」
絶望に染まった声をあげ続ける曜ちゃん。
善子「……いい加減にしなさい……っ!!」
その胸倉に、善子ちゃんが掴み掛かる。
梨子「善子ちゃん!?」
善子「いつまで、そうしてるの!? さっさと割り切って戦いなさいっ!!!」
曜「で、も……千歌ちゃん、が……っ……」
曜ちゃんは泣いていた。
彼女は海に詳しいと聞いた。海難事故についても人より詳しいのかもしれない。
もしかしたら……頭の何処かで、もう千歌ちゃんの安否が絶望的なのがわかってしまっているのかもしれない。
善子「泣きたいのは私だって同じよ……っ……!! 千歌は私にとっても……っ……!!」
善子ちゃんが言葉を詰まらせながら、曜ちゃんに向かって声をあげる。
ポロポロと涙を流しながら。
曜「善子……ちゃん……」
善子「でも、こんなところで私たちが黙ってやられること、千歌が望むわけないでしょっ!!!」
曜「……っ!」
善子「千歌が身を賭して残してくれたチャンスなのよっ!! 私たちは負けちゃダメなのっ!! お願い、だから……!!」
梨子「……善子ちゃん……」
きっと、善子ちゃんの心も、限界なんだ。
曜「……ごめん、戦う」
その様子を見て思うことがあったのか。曜ちゃんはよろよろと立ち上がる。
曜「ふー……カメックス……!! “ハイドロポンプ”……ッ!!」
「ガメェーーー!!!!!!!」
善子「……アブソル!! “かまいたち”……!!」
「ソォルッ!!!!!」
少しだけ立ち直ってくれたのか、曜ちゃんが加勢してくれるお陰で、多少攻撃が捌かれ始める。
曜「……ぅ……っ……ぐっ……っ……」
善子「……っ……」
27 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:26:07.72 ID:DoNfZkVt0
曜ちゃんはその間、何度も何度も涙を拭っている。
善子ちゃんもきっとわかってはいるんだろう。親友が目の前で居なくなって。それでも戦えなんて言うのがどれだけ酷なことなのかくらい。
善子「でも……戦うって自分たちで決めたんだから……やらなきゃ……っ」
善子ちゃんが自身を鼓舞するために、声をあげた、
私は……。
──手を握った。
善子「……っ……?」
梨子「…………」
善子「リリー……?」
逆の手で曜ちゃんとも。
曜「梨子ちゃん……?」
梨子「大丈夫だよ」
曜・善子「「え……?」」
力強く、言う。
梨子「千歌ちゃんは……大丈夫」
自信有り気に、確信めいて。
梨子「千歌ちゃんは、こんなことじゃやられない。負けないし。諦めないし。挫けない」
曜「梨子……ちゃん……」
善子「…………」
梨子「無鉄砲で、いい加減で、無計画で、猪突猛進で、何にも考えてない……だけど……!!」
私は前を見据えて、
梨子「私たちが泣いてたら……すっとんで来て助けてくれる……それが、千歌ちゃんでしょ?」
曜「…………うん……っ!!」
善子「…………ええ、その通りよ……っ!!」
二人が私の言葉に頷く。
「バァァァアァァァァァ!!!!!!!!」
パルキアが腕を振り上げた。私は──
梨子「──千歌ちゃーーーーーんっ!!!!」
叫んだ。
瞬間。
──水を巻き込んで二本の竜巻が海から巻き上がる。
「バァァァルッ!!?」
28 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:27:42.29 ID:DoNfZkVt0
急なことにパルキアが攻撃を中断する。
曜「これは、“うずしお”……!!」
そして、二本の“うずしお”の中央から──
「ゼルルルルルッ!!!!!!!!!」
オレンジ色のポケモンの影、そしてその体に掴まるように、一緒に飛び出してきたのは、
善子「……バカ、心配させないでよ……っ」
梨子「……ね、言ったでしょ?」
曜「……よかった…………っ」
紛れもなく、どうしようもないくらい、
千歌「ごめん、みんなっ!!」
千歌ちゃんだった。
* * *
千歌「いっけぇーーーー!!!」
“アクアジェット”の勢いで海中から飛び出して、肉薄する。
「バァアァァァルッ!!!!!!!」
改めて、近付くと、めちゃくちゃ大きい。
けど……仲間が居るから、怖くない!!
千歌「“アクアブレイク”!!!」
「ゼルルルッ!!!!!!!!」
全身のみずエネルギーを込めて──フローゼルが、突進をかます。
「バアアァァァァァッ!!!!!!!!」
頭部への急な突撃に、パルキアが仰け反った。
その反動を利用して、フローゼルに掴まったまま再び海上へと戻る。
「ゼルッ!!!!!!」
フローゼルが尻尾のスクリューを全力で回転させ、パルキアの付近から全速力で離脱する。
荒れた海でも、すごいスピードで泳ぐ、フローゼル。
千歌「キミ……!! コメコで会ったブイゼル君だよね!?」
「ゼルルルッ!!!!!」
フローゼルは頷く。
29 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:28:33.25 ID:DoNfZkVt0
千歌「来てくれたんだね……っ!!」
「ゼルッ!!!!」
あの後、どう過ごしていたのか、とか。
二匹の子供は元気か、とか。
聞きたいことはいろいろあるけど、
千歌「……戦いが終わったら、いろいろ教えてね……!!」
「ゼルルルッ!!!!!!!」
* * *
梨子「メガニウム、“つるのムチ”」
「ガニュッ」
メガニウムに引き上げてもらう形で、私はホエルオーの上に戻る。
千歌「ありがと、メガニウム」
「ガニュッ」
メガニウムにお礼を言っていると、間髪居れず。
曜「千歌ちゃん!!!」
千歌「わっ!?」
曜ちゃんが抱きついてくる。
千歌「曜ちゃん……苦しいって……」
曜「よかった……ほんっとうに……よかった……」
曜ちゃんは心底安心したように声をあげる。
善子「千歌」
善子ちゃんが前衛で攻撃を捌きながら、声を掛けてくる。
千歌「ん」
善子「……戻ってきてくれて、ありがと」
千歌「うん」
善子ちゃんは言葉少なめに、それだけ言うと、
善子「アブソル!! 行くわよ!!」
「ソォルッ!!!!」
再び攻撃を再開する。
30 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:30:12.93 ID:DoNfZkVt0
梨子「千歌ちゃん」
千歌「……梨子ちゃん」
梨子「……信じてたよ」
千歌「……うん!」
私は前に歩み出て、
千歌「……最初はね、ホント絶望的な力の差だなって思ってた。でもね」
振り返る。
千歌「あのときのブイゼルが──フローゼルが来てくれた。皆が信じてくれた。……私が旅して、歩んできた道は繋がってたんだって、実感した。……そんな皆が傍に居てくれる。なんか、それだけで不思議と……勇気が湧いて来る……!!」
胸の内から、ふつふつと力が漲ってくる。
「グゥォッ!!!!!」
それに呼応するように、メガルカリオの全身から波導のオーラが溢れ出す。
千歌「なんかチカ、今ね……負ける気がしない……!!」
「グゥォッ!!!!!」
「バァァァァァァーーーーールッ!!!!!!!!!!!」
パルキアが雄叫びをあげ、腕を振り上げる。
善子ちゃんとアブソルが、何度目かわからない攻撃姿勢に移る。
善子「アブソル!! “かまいたち”……!!」
「ソルッ……!!!」
だが、攻撃が出ない。
善子「……っ!! パワーポイントが……!!」
もうPPが限界のようだ。
ずっと、善子ちゃんとアブソルが攻撃を防いでくれてたんだもんね。
千歌「大丈夫。後は私に任せて」
善子「……千歌……!?」
31 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:30:58.42 ID:DoNfZkVt0
善子ちゃんの前に、ルカリオと共に歩み出る。
「バアァァァァーーーールッ!!!!!!!!!」
パルキアの腕が袈裟懸けに振り下ろされる。
腕から発される“あくうせつだん”の衝撃波が空間を裂きながら、飛んでくる。
でも、不思議と──怖くはなかった。
千歌「波導の力を斬撃に──」
「グォッ!!!!」
息を吸う。
必殺の呼吸。
千歌「──……“いあいぎり”!!」
「グォァッ!!!!!!!」
一閃。
斜めに薙いだ衝撃波はそのまま真っ二つに割れて、ホエルオーの両サイドで波飛沫をあげる
私たちは“あくせつだん”の斬撃を──逆に切り裂いた。
曜「うそ……」
善子「え、すご……」
梨子「千歌ちゃん……!!」
三者三様、声があがる。
千歌「さぁ……反撃開始だよ……!!」
私はパルキアを見据えて、そう言うのだった。
32 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 00:32:11.12 ID:DoNfZkVt0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かこんでいます
でんげんを きらないでください...
【スルガ海】
口================= 口
||. |⊂⊃ _回../||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||. ⊂⊃ | ○ |‥・ ||
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||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o●| | | ||
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||./ o回/ ||
口=================口
主人公 千歌
手持ち バクフーン♂ Lv.53 特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
ルカリオ♂ Lv.54 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
フローゼル♀ Lv.47 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
バッジ 7個 図鑑 見つけた数:150匹 捕まえた数:14匹
主人公 梨子
手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
チェリム♀ Lv.47 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
ピジョット♀ Lv.47 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
バッジ 5個 図鑑 見つけた数:126匹 捕まえた数:13匹
主人公 曜
手持ち カメックス♀ Lv.51 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
ホエルオー♀ Lv.44 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
バッジ 2個 図鑑 見つけた数:153匹 捕まえた数:22匹 コンテストポイント:48pt
主人公 善子
手持ち ゲッコウガ♂ Lv.48 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
ドンカラス♀ Lv.54 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
アブソル♂ Lv.56 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
バッジ 1個 図鑑 見つけた数:135匹 捕まえた数:52匹
千歌と 梨子と 曜と 善子は
レポートを しっかり かきのこした!
...To be continued.
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/12(日) 00:36:58.45 ID:adCmP41J0
乙
相変わらずポケスペ張りに命がけな世界
34 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 05:50:20.56 ID:DoNfZkVt0
■Chapter072 『決戦! ディアルガ!』 【SIDE Dia】
──クロサワの祠。ダイヤと鞠莉。
聖良さんたちが消えた祠で、わたくしたちはディアルガと対峙する。
わたくしは距離が離れてしまった鞠莉さんの元へ駆け寄り、
ダイヤ「鞠莉さん……!!」
声を掛けるが、
鞠莉「…………」
鞠莉さんからは返事がない。
ダイヤ「ま、鞠莉さん……?」
鞠莉「……ダイヤ、ちょっとの間、下がってて」
ダイヤ「……え?」
鞠莉「たぶん、巻き込むから」
ダイヤ「……!」
わたくしは、すぐにハンドシグナルでハガネールに一旦引くように合図を出す。
「ンネェールッ!!!!!」
ハガネールは“あなをほる”ですぐさま地面に退避する。
「ディアガァァァーーー!!!!!!!」
鞠莉「…………」
ディアルガと対峙し、右手に付けたミラクルシューターを調整している。
実のところ、鞠莉さんは基本的にバトルを好まない。
普段から朗らかな気性だし、荒事を好む性格ではないのだ。
実力はありながらも、バトル関係の職には就かず、博士になったのはそれが理由の一つです。
ただ……彼女は怒ると、それが一変する。
鞠莉「……ポリゴンZ、“ロックオン”!! サーナイト!! “ハイパーボイス”!!」
「──ウィーカタカタ」「サーーーーーナァーーーーー!!!!!!!!」
ポリゴンZが標的を定め、その横でサーナイトが爆音を発する。
「ディアガァァァァーーーーーーー!!!!!!!!!」
ディアルガも対抗するように“ハイパーボイス”を発する。
二匹の音攻撃が拮抗する中、
鞠莉「ポリゴンZ!! “はかいこうせん”!!」
「ウィーーーーカタカタカタ!!!!!!!!」
開いたディアルガの口内に向かって、ピンポイントで超火力の“はかいこうせん”で狙撃する。
35 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 05:51:58.38 ID:DoNfZkVt0
「ディガァァァァァー!!!!!?」
ディアルガが後ろに仰け反った、瞬間。
鞠莉「スターブライト号! “ほのおのうず”!!」
「ヒヒィーンッ!!!!!!!」
ギャロップが炎の渦で動きをホールド、倒れることすら許さない。
「ガァァァァァァーーーー!!!!!!!!!」
だが、ディアルガは怯みきらず、口を開いたまま、応戦してくる。
発射されるドラゴンエネルギーの奔流──“りゅうのはどう”です。
ですが、鞠莉さんは迫る“りゅうのはどう”全く動揺することなく、ミラクルシューターからエネルギーアイテムをビークインに射出する。
鞠莉「SPガード6!! ビークイン! “ぼうぎょしれい”!!」
「ブブブブブッ!!!!!!!」
ビークインが鳴き声をあげると同時に大量のミツハニーが彼女の下腹部から飛び出して、防御壁を成す。
“りゅうのはどう”がそこに直撃するが……。
「ブブブブッ」 「ハニー」「ハニー」「ハニーハニー」
ビークインもミツハニーもまるでダメージを負っていない。
……詳しくないのですが、確かミラクルシューターのSPガード6は使ったポケモンの特防を即座に6段階上昇させるアイテムだったはず……。
鞠莉さん曰く4倍硬くなるとか。
鞠莉「サーナイト!! “かなしばり”!!」
「サーナッ!!!!」
「ディアアガァァァァァー!!!!!!!!」
サーナイトの念動力によって、その場に釘付けにされ、ディアルガは大声で鳴き声を上げるが、
鞠莉「マフォクシー!! “オーバーヒート”!!」
「マフォ!!!!!」
炎熱エネルギーを容赦なくぶつける。
「ディアガァァァァァァーーーーー!!!!!!!!!」
攻撃の被弾の衝撃か、ディアルガが再び口を開いて“ハイパーボイス”撃とうとした瞬間。
鞠莉「サーナイト、“ふういん”」
「サナ」
「ディ、ガ────」
ディアルガの攻撃を無理矢理封じる。そして再びシューターからエネルギーアイテムを射出。
鞠莉「フラットコール!」
“オーバーヒート”によって赤熱していた、マフォクシーから熱が引いていく。
確かフラットコールは、自分の下がった能力変化を元に戻すミラクルシューター専用のアイテムだ。
鞠莉「マフォクシー……!!」
「マフォク……ッ」
36 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 05:55:46.03 ID:DoNfZkVt0
マフォクシーの炎の木の棒が、より一層強い炎を宿す。
大技の兆候……!!
鞠莉「“ブラストバーン”!!!!」
「マフォーーーーーーーーッ!!!!!」
先ほどの“オーバーヒート”が比較にならないレベルの炎熱が、一気に発射される。
「ディガァァァァァァーーーーー!!!!!!!!」
ディアルガは爆熱に焼かれ、そのまま700kg近くある巨体が炎の勢いだけで聖域内の内壁まで吹き飛ばされる。
……いや、それどころじゃない。そのまま壁にぶち当たっても、攻撃は終わらず、ディアルガを焼き続ける。
鞠莉「…………」
相手は伝説のポケモンとは言え、全く容赦がない。
彼女は怒らせると、範囲攻撃や相手の動きを制限する技を徹底的に使用し、相手には攻撃の隙を与えず、一気に叩き潰す。
故に一緒に戦うと巻き添えを食らうため、こういうとき、わたくしや果南さんは一歩引くのです。
鞠莉さんの猛攻にディアルガは相当なダメージを負ったようですが……。
「ディガァアァァァァァァァ!!!!!!!!」
炎に焼かれながらも、こちらに顔を向けて、口にエネルギーを収束している。
鞠莉「……」
ダイヤ「鞠莉さんっ!!」
ディアルガが攻撃を発射しようとした瞬間、
「ディガッ!!!?」
ディアルガの頭部を上下に何かの力が急激に挟み込み、口を閉じさせた。
ダイヤ「!?」
そして、そのエネルギーが無理矢理閉じられたディアルガの口内で爆発する。
「ディガァァァァアァァァ!!!!!!!!」
今の技は……まさか、
鞠莉「最初にサーナイトとマフォクシーが“みらいよち”を撃ってた。サーナイトが下から、マフォクシーが上からね」
相手が大技を撃つ瞬間を予測して、すでに攻撃を仕掛けていたらしい。
「ディガァァァ……」
鞠莉「さぁ……これで、終わりよ……!!」
弱るディアルガに、最後の攻撃を放とうとした──瞬間。
「──ディガァァァァ!!!!!」
鞠莉「な……!?」
ダイヤ「!?」
37 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 05:58:37.32 ID:DoNfZkVt0
先ほどまで壁の付近にいたはずのディアルガが──鞠莉さんの目の前に立っていた。
まるで接近するのに掛かった時間だけを早送りでスキップでもしたかのように。
ディアルガは鞠莉さんに向かって、脚を振り下ろしてくる。
鞠莉「っ……!?」
ダイヤ「ハガネールッ!!!」
わたくしは咄嗟に叫ぶ、
「ンネェーール!!!!!!」
ハガネールが地面から飛び出し、再びディアルガを巻きついて、拘束をする。
ダイヤ「鞠莉さん!! こっちですわ!!」
鞠莉「!」
その隙に鞠莉さんの手を引いて、聖域の外の横道に逃げ込む。
鞠莉「……」
ダイヤ「どうやら、一筋縄ではいかないようですわね……」
鞠莉「早く……倒さないといけないのに……」
鞠莉さんはイラついた口振りで言うが、
ダイヤ「負けてしまっては元も子もありませんわ! 落ち着いてくださいませ」
わたくしは鞠莉さんは嗜める。
鞠莉「……わかってる」
どうにも頭に血が昇ると、鞠莉さんは感情的になってしまう。
そこはわたくしが御さないと……。それこそ、鞠莉さんの身に何かあったら、後で果南さんに何を言われるか、わかったものではないですし。
ダイヤ「あれは……この場に召喚されたときも使っていた技ですわよね……?」
鞠莉「……たぶん、時間跳躍してるんだわ」
ダイヤ「時間……跳躍……?」
鞠莉「これを見て」
そう言って鞠莉さんが図鑑を開く。
『ディアルガ じかんポケモン 高さ:5.4m 重さ:683.0kg
時間の 流れを 自在に 操ることで 過去や 未来へ
移動する ことが 出来る。 ディアルガの 心臓が
動くと 時間は 流れていくと 言われ 信仰されている。』
ダイヤ「まさか……本当に時間を操っている……?」
鞠莉「シンオウ地方では時間の神なんて言われてるくらいだしね……」
成程どうして……。パルキアが空間を引き裂くほどの、とんでもポケモンであるのと同様。
それに並び立つとされるディアルガも、相当不可思議な技を扱えるようだ。
ですが……。
38 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:02:29.97 ID:DoNfZkVt0
ダイヤ「……もし、自由に時間が操れるなら、勝ち目がないのではありませんか?」
鞠莉「……いや、本当に自由に操れるなら、もっとやりようがあるでしょ」
──やりよう。
つまり、本当に時間操作が出来るなら、もっと一方的な展開で、わたくしたちを倒すことが出来るという意味でしょう。
鞠莉「仮説の域は出ないけど……ディアルガ自身の心臓の鼓動でスピードが関係してるんじゃないかしら」
ダイヤ「鼓動のスピード……?」
鞠莉「図鑑の説明が正しいなら、ディアルガの心臓は時間の流れと結びついている……。速い鼓動なら時間は早回しに、遅い鼓動なら時間は遅くなるんじゃないか……そう思わない?」
ダイヤ「……成程」
鞠莉「心臓の鼓動を無理矢理筋肉で制御するとなれば、ディアルガ自身も相当身体に負荷がかかる。これなら、何度も時間跳躍を使ってこないことも説明が付く」
二人でディアルガの能力について考察をしていると、
「ンネェーーーール!!!!!!?」
ハガネールがこちらに向かって、吹き飛ばされてくる。
拘束ももう限界だったようだ。
ダイヤ「ハガネール! 戻ってください!」
ハガネールをボールに戻す最中、
「ディアガァァァァァ!!!!!!!!」
ディアルガが声をあげてこちらに迫ってくる。
鞠莉さんと二人で入江内へと走り出す。
鞠莉「これも仮説だけど……たぶん連発が出来ないこととか考えると、それ相応のタイミングがあるんだと思う」
ダイヤ「タイミングですか?」
走りながら、鞠莉さんが続きを話し始める。
鞠莉「最初の位置関係を元に戻したのは、寝起きでまだ心拍数が極端に低かったから出来た、とか。さっき一気に近付いてきたのは、炎で焼かれて熱で心拍数があがったから……って言えばそれっぽいかしら」
ダイヤ「……確かに、それっぽくはありますわね」
ですが……運動をすれば、普通の生き物は心拍数が上がる。
その理屈だと、攻撃をすればするほど、相手は加速していくことになる。
鞠莉「だから、いい按配で捕獲するしかない……!」
ダイヤ「……ですわね」
幸い、ダメージの回復などをしているわけではなさそうですし。
ダメージは既に鞠莉さんが相当食らわせている。
鞠莉「こっちにはマスターボールがある……確実に当てられるタイミングさえ来れば、捕獲は出来る。……ただ、ネックなのはスナッチだネ」
ダイヤ「時間が掛かるのですか?」
鞠莉「普通に投げるのに比べると、スナッチマシーンからエネルギーを送る時間があるから……持って、狙い定めて、そこからエネルギーを充填して投げるまでに5秒くらい掛かるわ」
ダイヤ「5秒……」
39 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:04:09.39 ID:DoNfZkVt0
普通なら、長いと言う程長くはないですが……。
鞠莉「それに加えて、近くに他のポケモンが居ないことが条件になる……狙いを定めないとスナッチが上手く成功しない」
ダイヤ「時間を跳躍できるポケモン相手に5秒掛かるのは……相性が悪いですわね」
そうなると不意を付くしか方法はない。
鞠莉「…………」
ダイヤ「鞠莉さん?」
鞠莉「……ん、ああ、ごめん。ちょっと考え事してた」
ダイヤ「……?」
鞠莉「それより、ダイヤ。いい作戦を思いついたわ」
ダイヤ「本当ですか?」
鞠莉「ただ、ちょっと準備に時間がかかるから……しばらく、一人で時間稼ぎとか出来る?」
ダイヤ「承知しましたわ」
鞠莉「……じゃあ、ちょっとお願いね!!」
そう言って、鞠莉さんは分かれ道のところで、わたくしとは別の道へと走っていく。
ダイヤ「そうと決まれば、わたくしはしっかりひきつけないとなりませんね……!!」
足を止め、背後を振り返る。
「ディガァァァァーーーーーー!!!!!!!!」
ディアルガは身体のサイズ的に通れないような狭い入江内の通路を無理矢理壊しながら、こちらを追ってきている。
止まったわたくしを見て、口にエネルギーの収束を始める。
チャージを見る限り、真っ赤なエネルギー弾。
ですが……。
ダイヤ「防御はわたくしの専売特許ですわ!! ボルツ!!」
「メレ……」
わたくしはメレシーのボルツを繰り出す。
ダイヤ「“ひかりのかべ”!!」
「メレッ!!!!」
「ディガアアァァァーーー!!!!!!!」
ディアルガの口から撃ちだされる球状のエネルギー弾。
サイズが大きいですが、恐らく“はどうだん”。
ボルツが作り出した、エネルギーを弾く“ひかりのかべ”にぶつかり、“はどうだん”が音を立てて火花を散らす。
ダイヤ「……っ!! さすがにすごい火力ですわね……!!」
「メレッ」
普通の“はどうだん”程度なら、余裕で掻き消せているはずなのに……!!
「ディガァァァァァァ!!!!!!!」
ディアルガはその後ろから、“はどうだん”ごと踏み潰す勢いで、前脚を降らせてくる。
40 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:06:25.62 ID:DoNfZkVt0
ダイヤ「“リフレクター”!!!」
「メレッ!!!」
今度は物理攻撃を弾く障壁を作り出す。
ディアルガの脚は壁で止まっていた“はどうだん”を踏み砕き破裂させ、“リフレクター”によって、止まる。
──だが、そのまま、何度もガンガンと前脚を叩き付けてくる。
ダイヤ「これは、“じだんだ”ですか……!?」
爪を立てながら、何度も“リフレクター”に脚を叩き付けている。
さすがに、これ以上の定点防御は持たないかもしれない。
そう思いボルツを引かせようとしたとき。
ダイヤ「……!!」
ディアルガの背後に鞠莉さんの姿を認める。
あの人……いい方法があるって言いながら、こっそり後ろから忍び寄る方法を取ったのですか……。
まあ、しかし。単純ながら悪い方法ではありません。
この入り組んだ入江の中でなら、その効果は何倍にも膨れ上がる。
ディアルガの背後の鞠莉さんが左手にボールを構えた。
──その瞬間。
ディアルガが尻尾を振るって──鞠莉さんの左肩より先を吹き飛ばした。
ダイヤ「……え?」
“リフレクター”の先で、鞠莉さんが左肩から大量の血液を噴き出して倒れる。
ダイヤ「……は……?」
「ディガ……」
ディアルガは一瞬、背後の鞠莉さんを一瞥したが、
「ディガァァァァッッ!!!!!!!」
背後の鞠莉さんが動かないことを認識すると、再び“リフレクター”を破壊しようと前脚を撃ちつけ始める。
ダイヤ「え……っと……な、何かの冗談……ですわよね……」
ディアルガの四本の足の隙間から見切れているのは、肩から先を吹きとばされ、大量出血しながら倒れている幼馴染の姿。
ダイヤ「鞠莉さん……嘘……ですわよね……?」
わたくしは思わずヘタリ込む。
助けにいかないと。
頭の中でそんなワードが浮かんでくる。
ただ、頭に行動が浮かんでは来るものの、何が起きたかを頭が受け入れてくれない。
そんなわたくしの動揺を知ってか知らずか、ディアルガの攻撃はどんどん激しくなっていく。
いや……。
「ディガァァァァァァ!!!!!!! ディガァァァァァァ!!!!!!!」
41 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:09:50.12 ID:DoNfZkVt0
ディアルガは意識的に、より一層強く攻撃を叩き付けてきている。
恐らく、わたくしが混乱し、戦闘に支障を来たす状態に陥っていることが、本能的にわかっているのだ。
ダイヤ「あ、はは……」
自分一人なら、何も怖くなかった。
程度の問題はあれど、多少の命の危険くらい、旅をしている間に何度か経験もした。
ですが……友人が目の前であんなことになる姿を見ることになるとは思わなかった。
情けない話ですが、腰が抜けて立てなかった。
ディアルガが怖くて……ではありません。
鞠莉さんがどうなったか、を考えるのが怖くて……動けなくなった。
「ディガァァァァッ!!!!!!! ディガァァァァァァッ!!!!!!!!」
度重なる強力な攻撃で“リフレクター”にヒビが入る。
──ピシッ
音が鳴る。
光景がスローモーションになる。
ゆっくりとディアルガの前脚がわたくしに向かって降って来る。
人間、死に直面すると、脳内の細胞が活性化し、情報処理が加速して、光景がスローモーションに見えると言うのは……本当だったのですわね。
などと、考えていたら。
──パシュンッ。
ディアルガはそんな間抜けな音と共に、後ろの方に引っ張られ。
──カツーン……。
ボールのようなものに吸い込まれてしまった。
……いや、というか……。
ダイヤ「マスター……ボール……?」
わたくしはポカーンとする。
「いやーダイヤが迫真の演技してくれたお陰で助かったよ〜」
そのボールを拾い上げながら、いつも通りの気の抜けるような声で喋っているのは──
ダイヤ「鞠莉……さん……?」
鞠莉「ん、わたしだヨ♪」
ダイヤ「い、生きているのですわよね……そ、そうだ腕は!? 肩から先が……!?」
鞠莉「ああ、これね」
鞠莉さんは、破れた上着の袖を見せてくる。
さっきわたくしが視認したのと同じ位置から先がなくなっていた。
ついでに言うなら、切られた袖口が真っ赤に染まっている。
42 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:11:22.76 ID:DoNfZkVt0
ダイヤ「え、ある……? さっき、切れて……飛んで……え……?」
鞠莉「あ、えーっと。探してるのはこれかしら?」
ダイヤ「……コレ?」
そうして、差し出して来たモノは。
ダイヤ「──ピギャッ!?!?」
腕だった。
切り飛ばされたはずの鞠莉さん腕。
ダイヤ「は……? は……??」
鞠莉「実はね、コレ……うぅん、この子はね」
鞠莉さんがこの子と言うと、
腕が溶けるように変形していき──薄紫の不定形のモノになる。
ダイヤ「まさか……メタモン……?」
「メタァ…」
鞠莉「Yes! 最初から、スナッチマシーンの隙を稼ぐために、不意を突く作戦をいくつか練ってたのよ。だから、左腕は最初から上着の内側に隠して、左肩より先をメタモンに“へんしん”してもらってたのよ」
ダイヤ「じゃあ……あの血は……?」
鞠莉「あれは血糊よ。リアリティがないと意味がないからネ!」
ダイヤ「……そう」
鞠莉「…………あ、あれ? ……てっきり、『なんで先に言わないのですか!?』とか怒られると思ってたんだけど……?」
ダイヤ「……ぅ……っ……ぐす……っ……」
鞠莉「!? ダ、ダイヤ……!?」
ダイヤ「……ぅ……っ……ま、まりさんが……しんで、しまったのかと……おもって……わ、わたくし……っ……」
鞠莉「……!? ご、ごめん!!? い、生きてるから!! ほら、I'm fine!! すごい元気〜!!? 死んだりなんてしないから!? ね!?」
ダイヤ「わ、たくし……っ……ひっく……っ……ほんとに……どうしたら、って……おもって……っ……」
鞠莉「ダイヤ!? ホ、ホントにゴメン!!? ほ、ほら敵を騙すにはまず味方から的な!? いや、だから、ホント、ゴメン泣きやんで!?」
ダイヤ「まりさぁん……っ……」
鞠莉「……あ、ぅ……よしよし……もういなくなったりしないから……」
ダイヤ「ぅ……ぅ……ぐす……っ……」
鞠莉さんの無事に感極まって泣き出すわたくしを見て、
「メレ…」
ボルツが呆れたように一鳴きしたのでした。
* * *
43 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:12:41.79 ID:DoNfZkVt0
──スルガ海。
「バァァァァァル!!!!!!!!」
飛んでくる、“あくうせつだん”。
千歌「──……そこっ!!」
「グゥゥァ!!!!!!!!!」
再び、ルカリオが斬撃を切り裂く。
コツがわかってきた。それに加えて、今はすごく気分が高揚している。まるで失敗する気がしない。
ただ──かなりの集中力が居る防御戦法だから、さすがに攻撃しながらは出来ない。
曜「カメックス!! “ハイドロポンプ”!!」
「ガメェーーーー!!!!!」
梨子「チェリム!! “ウェザーボール”!!」
「チェリリッ!!!!!」
善子「ゲッコウガ!! “みずしゅりけん”!!」
「ゲコガァッ!!!!!」
皆も攻撃を続けてはいるけど、ほとんどが“アクアリング”に掻き消されて、ほとんどダメージになっていない。
善子「く……もうこっちにまともに通る技が残ってない……!」
梨子「いくら千歌ちゃんが、攻撃を防いでくれるって言っても、このままじゃ……」
曜「ジリ貧……」
PPにも限界がある。
……どうにか、パルキアに通る攻撃が使えるポケモンが居れば……。
* * *
──スルガ海、上空。
花丸「千歌ちゃんたち……苦戦してるずら……」
ルビィ「…………」
ルビィたちは上空から、千歌ちゃんたちの戦闘を見守っていました。
花丸「マルの手持ちも、もうほとんど戦闘出来る状態じゃないし……ルビィちゃんの手持ちも伝説のポケモンを倒せるようなパワーは……」
ルビィ「…………」
花丸「ルビィちゃん……?」
ルビィ「ねえ、花丸ちゃん」
花丸「な、なんずら?」
ルビィ「……ルビィ、また巫女の力を使ってたんだよね」
巫女の力……宝石を輝かせる力。
44 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:15:19.45 ID:DoNfZkVt0
花丸「う、うん……辺りの氷とかを全部溶かしてた……」
ルビィ「……そっか」
花丸「…………ルビィちゃん、まさか」
ルビィ「……この力で……パルキアを、倒せないかな」
花丸「ダ、ダメずら!!」
花丸ちゃんはルビィの肩を掴む。
花丸「あれだけ、苦しい思いしたのに……その力を自分から使おうだなんて……!!」
花丸ちゃんはそう言うけど……。
ルビィ「ずっとね……考えてたんだ」
花丸「……?」
ルビィ「どうして、ルビィにこんな力があるのかなって……」
花丸「そ、それは、巫女の力を受け継いだからで……」
ルビィ「うぅん、そういう話じゃなくてね」
ルビィは静かに首を振る。
ルビィ「夢の中だったからね……おぼろげだったけど……ドクン、ドクンって誰かの熱が流れ込んでくるようで」
花丸「誰か……?」
ルビィ「あの力が、熱が流れ込んでくるとき……それって、どんなときだったかなって」
思い出す。
小さい頃、クロサワの入江でのときも、クリフでの理亞ちゃんとの戦いのときも、そして、飛空挺で無理矢理使わされたときも……。
ルビィ「ルビィね……守りたいって想ってたんだ」
花丸「守り……たい……」
ルビィ「……うん。悲しいときとか、怒ったときに、出てきちゃってたけど……それでも、この気持ちの真ん中にあったのは──いっつも、守りたいって想いだった。願いだった」
ときにメレシーたちを守りたかった。お姉ちゃんの誇りを守りたかった。……そして、夢の中でコランを──ずっと一緒に育ってきた、大切な家族を守りたかった。
花丸「……ルビィちゃん」
ルビィ「……そして、今、ルビィはまた守りたいって想ってる……皆を守りたい、助けたい」
花丸「…………」
ルビィ「ルビィのことを助けてくれた皆を……守りたい」
ルビィを想って、助けてくれる、皆を──。
そう願った瞬間。
「──ピピ、ピピィ」
ずっと、眠ったまま、動かなかったコランが、鳴き声をあげる。
花丸「……!」
真っ赤な光を輝かせながら。
45 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:17:40.12 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「きっと……コランが今まで眠っていたのは──ルビィが自分の守りたいって気持ちにちゃんと気付けてなかったから。でも、今はちゃんとわかるよ」
「ピピピィ」
ルビィ「……皆のことを守りたい。ルビィを大事に想ってくれる皆を守りたい。そんな皆が生きる、この世界をルビィは守りたい」
「ピピピピピィ!!!!!!!」
閃光はどんどん大きくなっていく。
そして──ドクン、ドクンと体の中に熱い鼓動を感じる。
花丸「……ルビィちゃん……」
ルビィ「花丸ちゃん……だから……だからね──!」
花丸「──強くなったね……」
花丸ちゃんは、優しい声で、そう言った。
ルビィ「花丸ちゃん……」
花丸「マルはいつでも、ルビィちゃんの味方だよ……ルビィちゃんがしたいことは、全力で応援する」
ルビィ「うん……」
花丸「だから……お願い、皆を守って」
ルビィ「……うん!」
ルビィは力強く頷く。
花丸「ルビィちゃん」
マルちゃんは、いつでもルビィの背中を押してくれる。
花丸「いってらっしゃい」
ルビィ「いってきます……!!」
ルビィはコランを抱えたまま、パルキアと戦う皆の許へ向かって──飛び降りた。
* * *
46 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:18:29.89 ID:DoNfZkVt0
千歌「──……“いあいぎり”っ!!!!」
「グゥォ!!!!!」
千歌「はぁ……!! はぁ……!!」
──突然、息が切れてきて、膝が落ちる。
曜「千歌ちゃん……!!」
千歌「ご、ごめ……ちょっと、立ちくらみ……」
立とうとするが、膝が笑っている。
千歌「あ、あれ……??」
梨子「ずっと集中してたから……」
善子「もう、限界か……」
千歌「た、戦えるよ……!!」
曜「千歌ちゃん……」
曜ちゃんに支えられながら、パルキアに視線を戻すと──。
千歌「え……あれ……?」
何かが空から降りてきていることに気付く。
梨子「え?」
曜「……あれって」
善子「……なんでここに……?」
三人も気付いたようで、
空から降りてきているのは、よく見知った人。
千歌「ルビィ……ちゃん……?」
* * *
47 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:21:11.82 ID:DoNfZkVt0
──ドクン、ドクン。
コランの光を通じて、熱が流れ込んでくる。
ただ、今までのような理不尽に身を焦がす熱というわけではなく。
何処か……懐かしくて、温かい感じがする。
ルビィ「そっか……キミはずっと、わたしのこと……見守ってくれてたんだね」
あの焼けるような熱も、わたしを守るため。
ずっと、わたしを守るために──ココに居てくれたんだね。
ルビィ「……でも、もう守られてるだけじゃないから」
「ピピピピ!!!」
コランを抱きしめる。
ルビィ「今度はわたしと一緒に……守ろう……皆を──!!!」
真っ赤な光りが一気に膨れ上がり──。
光から、生まれるように、真っ赤な体躯が──。
「バァァアァァァァァルッ!!!!!!!!!」
目の前には、パルキアが雄叫びをあげている。
──ルビィが、その熱と共に海上に降り立つと、海が音を立てて蒸発すると共に、
さっきまで空を覆っていた雲が掻き消え、“ひでり”によって太陽が顔を出す。
ルビィ「──……それがキミの本当の姿なんだね」
「グラグラルゥ……」
ルビィ「うん……!! 行こう──グラードン!!」
「グラァァァアァーーーー!!!!!!!!」
パルキアに対抗するように
──グラードンが、雄叫びをあげた。
48 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:22:09.01 ID:DoNfZkVt0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かこんでいます
でんげんを きらないでください...
【スルガ海】【クロサワの入江】
口================= 口
||. |⊂⊃ _回../||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||. ⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : ||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : ||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: ||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o●| | | ||
||. / | | | ||
||./ ●回/ ||
口=================口
49 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 06:25:01.89 ID:DoNfZkVt0
主人公 千歌
手持ち バクフーン♂ Lv.53 特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
ルカリオ♂ Lv.57 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
フローゼル♀ Lv.47 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
バッジ 7個 図鑑 見つけた数:151匹 捕まえた数:14匹
主人公 梨子
手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
チェリム♀ Lv.48 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
ピジョット♀ Lv.47 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
バッジ 5個 図鑑 見つけた数:128匹 捕まえた数:13匹
主人公 曜
手持ち カメックス♀ Lv.52 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
ホエルオー♀ Lv.44 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
バッジ 2個 図鑑 見つけた数:155匹 捕まえた数:22匹 コンテストポイント:48pt
主人公 善子
手持ち ゲッコウガ♂ Lv.49 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
ドンカラス♀ Lv.54 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
アブソル♂ Lv.56 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
バッジ 1個 図鑑 見つけた数:136匹 捕まえた数:50匹
主人公 花丸
手持ち ドダイトス♂ Lv.43 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
カビゴン♂ Lv.40 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
デンリュウ♂ Lv.34 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
キマワリ♂ Lv.33 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
イノムー♂ Lv.40 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
バッジ 1個 図鑑 見つけた数:110匹 捕まえた数:40匹
主人公 ルビィ
手持ち アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
メレシー Lv.45 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
グラードン Lv.75 特性:ひでり 性格:すなお 個性:こうきしんがつよい
バッジ 0個 図鑑 見つけた数:95匹 捕まえた数:9匹
主人公 鞠莉
手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり
ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい
ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
メタモン Lv.61 特性:かわりもの 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:468匹 捕まえた数:311匹
主人公 ダイヤ
手持ち ジャローダ♀ Lv.69 特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん
ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい
ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん
アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:267匹 捕まえた数:113匹
千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸と ルビィと 鞠莉と ダイヤは
レポートを しっかり かきのこした!
...To be continued.
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/12(日) 12:00:48.39 ID:mpD9yav90
まさかのコランがグラードンという胸熱展開
続き楽しみにしてます
51 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 12:54:20.59 ID:DoNfZkVt0
■Chapter073 『クロサワの巫女・ルビィ』 【SIDE Ruby】
ルビィ「グラードン!!」
「グラルゥゥッ!!!!!」
「バァァァーーール!!!!!!!」
二匹の伝説のポケモンが対峙する。
「バァァァァ……ッ!!!!!!!!」
パルキアが口元に水のエネルギーの収束を始めたところに、
ルビィ「グラードン!! “だいもんじ”!!」
「グラァァァーーー!!!!!!」
対抗するように、こちらも炎熱攻撃を放つ。
「バァァァァーーーール!!!!!!!!」
ワンテンポ遅れて収束を終えたパルキアから、“ハイドロポンプ”が発射され、炎と水がぶつかり合う。
二匹の攻撃は真正面からぶつかり、“ハイドロポンプ”は一瞬にして、“だいもんじ”によって蒸発していく。
“ひでり”による、ほのお技の威力の上昇によって、みずタイプの技にも全く押し負けない。
ルビィ「いけぇっ!!」
「グラァッ!!!!!!」
大の字をした、巨大な炎が、太い水の柱を掻き消して、パルキアに襲い掛かる。
「バァァァァッ!!!!!!!」
炎の直撃を受け、パルキアが叫ぶ。
そこに間髪居れず、背後から
何発かのエネルギーの弾がわたしたちを避けるように迂回しながら飛んできて、パルキアに立て続けに炸裂する。
「バァァァァアァルッ!!!!!!!!」
──千歌ちゃんのメガルカリオの援護攻撃だ……!
“はどうだん”の直撃によって、パルキアが体勢を崩したところに、
「グラグルゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」
グラードンは重量級の体を躍動させて接近する。
そのまま救い上げるように、パルキアの胴体に拳を突き出す。
ルビィ「“ほのおのパンチ”!!!」
「グラァァァ!!!!!!!」
腕を振るって、直撃させた炎の拳が、パルキアが更に後方に突き飛ばす。
「バアァァァァルッ!!!!!?」
52 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 12:56:05.48 ID:DoNfZkVt0
* * *
曜「ルビィちゃん……すごい……!!」
曜ちゃんが驚きの声をあげる。
梨子「あれも……伝説のポケモン……」
私は梨子ちゃんの言葉を聞きながら、図鑑を開いた。
『グラードン たいりくポケモン 高さ:3.5m 重さ:950.0kg
雨雲を 吹き払い 光と 熱で 水を 蒸発させる 力を 持つ
ポケモン。 洪水に 苦しむ 人々を 救った。 地底の マグマの
中で 眠っていて 起きると 火山が 噴火すると 言われている。』
千歌「グラードン……!!」
ルビィちゃんとグラードンは、その重量級のパワーと炎熱で、パルキアを圧倒していく。
善子「……勝てる、勝てるわよ……!!」
善子ちゃんが歓喜の声をあげたのとほぼ同時に、私のポケギアが鳴り出す。
鞠莉『──千歌!! 聴こえる!?』
千歌「! 鞠莉さんっ!!?」
電話の相手は鞠莉さんだった。
鞠莉『もしかして、パルキアと戦ってる!?』
千歌「は、はい!!」
鞠莉『そのパルキアはもう野生よ!! 弱らせて捕まえられる!?』
千歌「! やってみます!!」
私は顔をあげると善子ちゃんと目が合う。
善子「今飛べるのは、私と千歌だけだからね。行くわよ……!!」
千歌「うんっ!」
私と善子ちゃんはそれぞれムクホークとドンカラスを繰り出して、決着のために空へと飛び出した。
* * *
「──ルビィちゃーん!!」
ルビィ「!」
背後から声がして振り返ると、そこには空を飛んでこっちに向かってくる、千歌ちゃんと善子ちゃんの姿。
53 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 12:57:55.29 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「千歌ちゃん! 善子ちゃん!」
千歌「あのパルキア、今から捕獲するよ!!」
善子「私が注意を引く!! ルビィ、その隙に動きを止められる!?」
ルビィ「わかった! やってみる!!」
善子「うまいことやりなさいよ……!! ドンカラス!! 行くわよ!!」
「カァーーーーー!!!!!!」
善子ちゃんがドンカラスと一緒に飛び出す。
パルキアはグラードンの攻撃を食らって崩した体勢を持ち直そうとしている真っ最中だ。
その上から、
善子「ドンカラス!! “ちょうはつ”!!」
「カァ!!!カァッ!!!!!!」
自分の方へ、攻撃してくるように促す。
「バァァァァーーーー!!!!!!!」
上空のドンカラス向かって、パルキアが“ハイドロポンプ”を発射するが、
ドンカラスは踊るように、攻撃を掻い潜る。
善子「そんな余裕のない攻撃当たらないわよ!!」
「カァカァーーーー!!!!!」
注意の逸れたパルキアに完全に隙が出来た……!!
「グラグルゥゥゥゥ……!!!!!!」
グラードンが唸ると、辺りに地鳴りが発生する。
ルビィ「グラードン!! “だんがいのつるぎ”!!!」
「グルグラアァァァァァ!!!!!!!!!!!」
グラードンの雄叫びと共に、海底から幾数本もの断崖の柱がパルキアの腕や足の間に割り込むように突き出してきて、動きを止める。
「バアァァァァァァ!!!!!!!!」
千歌「今だ……!!」
「ピィィィィィィ!!!!!!!」
ムクホークと一緒に飛び出した、千歌ちゃんが、
千歌「いっけぇ!! モンスターボール!!」
ボールを放る。
そのボールは一直線にパルキアの方に飛んでいく、が。
「バアァァァァァッ!!!!!!!!」
パルキアは最後の力を振り絞って、モンスターボールを“ずつき”で弾く。
千歌「……!!」
弾き飛ばされたボールは放物線を描いて宙を舞う。
──そのボールの軌道を追う影。
54 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 12:58:53.44 ID:DoNfZkVt0
「ピピピピピィィィ!!!!!!!!」
それは、真っ赤の宝石を光らせながら飛び出したコラン。
ルビィ「コランッ!!! いけぇーーーっ!!!!」
「ピピピィィ!!!!!!!」
コランは宙に浮くボールに渾身の“たいあたり”をかまして、
それに弾かれたボールが、再びパルキアの額を捉え、
──ぶつかった。
「バァァァァァ──」
雄叫びごと、掻き消されるようにパルキアはモンスターボールに吸い込まれ。
突き出した“だんがいのつるぎ”の上に落ちて、揺れる。
── 一揺れ。
──二揺れ。
──三回、揺れて……。
──……ボールは大人しくなった。
善子「はぁ……はぁ……」
千歌「……はぁ……はぁ……」
二人は息を切らせながら、
ルビィの元へと飛んできて、
ルビィ「千歌ちゃん! 善子ちゃん!」
ルビィの立っている、グラードンの頭の上に降り立って、
千歌「ルビィちゃん!」
善子「ルビィ!」
そのまま、二人して抱きしめてくる。
千歌「やった!! やったよ、私たち……!!」
善子「……ホント、お手柄……!!」
ルビィ「うん……!!」
さっきまでの荒れ模様が嘘のように、雨雲は消え去り、快晴の陽光が差し込む中、
千歌「──私たちの……!! 勝ちだーー!!!!!」
千歌ちゃんの勝ち鬨と共に、伝説のポケモンとの死闘は終わりを迎えたのでした。
55 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:04:25.86 ID:DoNfZkVt0
* * *
花丸「ルビィちゃーん!!」
ルビィ「! 花丸ちゃーん!」
上空から、花丸ちゃんがフワライドに乗って降下してくる。
一方で手を振るルビィちゃんの足元では……。
「グラルゥ……zzz」
先ほどの大立ち回りが嘘のように、グラードンは身を縮こませて眠り始めていた。
善子「……こいつは突然暴れだしたりは……しないわよね」
おっかなびっくり足元で寝ているグラードンに手を触れる善子ちゃん。
ルビィ「大丈夫だと思う。ホントはずっとルビィと一緒に居た子だし……」
善子「ずっと一緒に居た……?」
ルビィ「うん……ずーっと、ルビィの中で……ルビィのこと守ってくれてたんだよ」
善子「……なんかよくわかんないけど……堕天使っぽくていいわね、それ」
ルビィ「とりあえず、疲れて眠っちゃったからボールに入れてあげようかな……」
ルビィちゃんは花丸ちゃんの手を借りて、フワライドに足場を移しながら、黄緑色のフレンドボールを取り出した。
それを見て、私と善子ちゃんも再び自分の鳥ポケモンたちに掴まって、飛翔する。
ルビィ「ありがとう、グラードン……ゆっくり休んでね」
そう言ってルビィちゃんがボールを押し当てると、グラードンはそのままボールに吸い込まれていった。
曜「千歌ちゃーん!! みんなー!!」
下から声がする。曜ちゃんの声だ。
目を配らせると、ホエルオーがゆっくりとこっちに向かって泳いできていた。
全員でゆっくりとホエルオーの方へと飛んで行く……っと、その前に……。
私はグラードンが隆起させた、“だんがいのつるぎ”の方へと飛んでいき、
──その上で静かになった、パルキアのボールを手に取り、
千歌「もう、あんな風に暴れちゃダメだよ?」
そう言葉を掛けてから、ボールをポケットに入れた。
改めて、私も皆と合流するためにホエルオーの方へ、ゆっくりと降りていく。
ホエルオーの上では、先に合流したルビィちゃんが梨子ちゃんと話しているところだった。
56 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:05:51.09 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「えっと……梨子さん、初めまして……?」
梨子「は、初めまして……! 梨子です……!」
ルビィ「あ、ルビィです……!」
善子「いや、今更なにやってんのよ……」
梨子「い、いや……だって……」
千歌「ふふ……」
なんだか、気の抜けるやり取りに笑ってしまう。
千歌「梨子ちゃん! ルビィちゃん!」
梨子「千歌ちゃん……?」
ルビィ「千歌ちゃん……」
二人の手を取って、無理矢理握らせる。
千歌「はい、握手! もう、ここまで来たら初対面でも仲間でしょ?」
梨子「……ふふ、なにそれ」
ルビィ「あはは、千歌ちゃんらしいかも」
二人も笑い出す。
曜「とりあえず、この後は……?」
善子「そうね……一旦、入江の方に向かうのがいいんじゃないかしら?」
曜「了解! ホエルオー、全速前進!」
「ボォォォォォーーー」
6人のトレーナーを背に乗せたホエルオーがゆっくりと入江に向かって泳ぎだす。
ルビィ「ねえ、みんな」
梨子ちゃんとのやり取りを追えたルビィちゃんが、私たち全員の前に躍り出る。
ルビィ「千歌ちゃん、梨子ちゃん、曜ちゃん、善子ちゃん……そして、花丸ちゃん」
ルビィちゃんは一人一人の名前を呼びながら、背筋を伸ばして、
ルビィ「改めて……ルビィを助けに来てくれて、ありがとう……」
頭を下げた。
曜「ピンチのときはいつでも呼んでって言ったからね! 当然だよ!」
千歌「あはは、私たちにとっては可愛い後輩だもんね」
善子「ま……最終的に助けられたのは私たちだったけどね。……あとヨハネだからね?」
梨子「ホントにね。ルビィちゃんが居なかったらどうなってたか……むしろ、こちらこそありがとうだよ」
花丸「……皆無事で、なによりずら」
ルビィちゃんの感謝の言葉にそれぞれが言葉を返す。
57 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:07:33.27 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「えへへ……うん!」
ルビィちゃんは満点の笑顔で頷くのでした。
* * *
──さて、あのあと私たちは、入江のパルキアが出てきたところにホエルオーを着けて上陸していた。
千歌「……こんな入口、確かなかったよね」
曜「うん……パルキアが空けたってことだよね」
そこには、穴……というか、超巨大な爪痕のような割れ目があった。
硬い岩盤をこんな風にしてしまうなんて……改めて、自分たちが戦っていた相手の強大さを実感する。
そんなことを考えながら難しい顔をしていると、
その方向から、走ってくる黒髪の女性の姿。
ダイヤ「ルビィーーー!!!!」
ダイヤさんだ。
ルビィ「!! お姉ちゃん……!!」
ルビィちゃんも走り出し、二人は抱擁を交わす。
ダイヤ「ルビィ……よかった……」
ルビィ「お姉ちゃん……心配掛けて、ごめんなさい……」
ダイヤ「いえ……いいのです。こうして元気に帰って来てくれたなら……」
二人は声を掛け合って、より強く抱きしめあう。
善子「姉妹、感動の再会ね」
花丸「善子ちゃん、茶化さないずら」
善子ちゃんが肩を竦めて言いながら、それを花丸ちゃんが嗜める。
鞠莉「……ま、泣き出さないだけマシよ」
その様子を見ながら、鞠莉さんも顔を出す。
鞠莉「……まさか、ガチ泣きされるとは思わなかったわ」
ダイヤ「……っ/// あ、あれは、貴方が作戦を説明していなかったのが悪いのでしょう!?」
ダイヤさんが何故か頬を紅くする。
鞠莉「はいはいよしよし……もうどこにもいかないからねー」
ダイヤ「鞠莉さんっ!!」
鞠莉さんとダイヤさんはいつもの調子だけど……。
58 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:08:44.80 ID:DoNfZkVt0
千歌「……果南ちゃんは?」
私は辺りをキョロキョロと見回す。
鞠莉「……っと、そうだ。遊んでる場合じゃない」
ダイヤ「……全く」
鞠莉「皆、付いてきて」
鞠莉さんに促され、私たちは入江の中へと歩を進める。
* * *
入江の中に入ると、中は戦闘の後であちこちが凹んだり、崩れたりしていた。
ただ、そんな痛ましい状況に負けないような荘厳な存在感を放っている物体に目を引かれる。
梨子「あれは……祠、ですか?」
皆の視線の先にあるのは、たくさんの宝石を装飾された、絢爛豪華な祠の姿。
ルビィ「お姉ちゃん……いいの……?」
ダイヤ「……状況が状況ですから。──……ここは、クロサワ家に伝わる、ディアンシー様を祀っている祠ですわ」
千歌「ディアンシー……」
曜「ディアンシー……って、確か……」
花丸「ウラノホシの御伽噺に出てくる、メレシーの女王様のことずら」
また、ディアンシーの名前が出てきた。
善子「んで、それとここにいない果南と何が関係してるのよ? まさか、この祠の先に居るとか言わないでしょうね」
鞠莉「Yes. 善子、その通りよ」
善子「……はぁ?」
梨子「どういうことですか……?」
皆で祠に目を配るけど……とてつもなく豪華と言うことを除けば、特に変なところはなく、奥に空間がありそうとかそういう感じはしない。
ダイヤ「正確には、果南さんはここから……違う世界に連れて行かれてしまった。と言ったところでしょうか」
千歌「違う世界……?」
鞠莉「どうして、聖良がパルキアとディアルガを呼び出したのか……その理由がやっと判明した」
そう言って、鞠莉さんは自身の赤い図鑑を開いて私たちに見せてくる。
そこには──見たことのないポケモンのデータが表示されていた。
『ギラティナ はんこつポケモン 高さ:4.5m 重さ:750.0kg
常識の 通用しない この世の 裏側にあると 言われる
破れた世界に 生息する。 鏡面から 静かに 現実世界を
見守っていて 時折 古い 墓場などに その姿を 現す。』
59 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:10:15.71 ID:DoNfZkVt0
千歌「このポケモンは……?」
鞠莉「……ギラティナって言う、ポケモン」
曜「ギラティナ……知ってる?」
梨子「うぅん……初めて聞いた名前かな」
善子「右に同じ。……まさか、この私が名前すら聞いたこともないなんて」
花丸「……マルもちょっと心当たりがないずら」
ルビィ「え? 花丸ちゃんも……?」
ダイヤ「無理もありません。わたくしも初めて聞いた名前だったので……」
鞠莉「知らなくて当然かしらね……。文献すら僅かにしか残ってないポケモンだもの。……ディアルガは時間の神、パルキアは空間の神。この二匹が時間と空間を司って世界を作ったとするなら、ギラティナはそれを裏側から支えているポケモンよ」
善子「裏側……まさか、アナザーディメンジョン!!」
花丸「別次元ってこと……?」
鞠莉「ええ、平たく言うとそうなるかしら」
善子「……え、マジで!?」
期せずして正解を言い当ててしまい、逆に動揺する善子ちゃんを傍目に、鞠莉さんは話を続ける。
鞠莉「ギラティナは表の世界のバランスが崩れないように、裏側から世界を見守っているポケモンなの。基本的には表には出てこないんだけど……稀にゴーストエネルギーの集まる墓場に姿を見せることがある他、世界の形が歪みそうなところに現われてそれを防ぐと言われてる」
曜「世界の歪みそうなところ……?」
鞠莉「今回みたいに、ディアルガとパルキアが同時に出現したら、周囲の時間と空間が大きく乱れる……だから、それを操る聖良を止めるために現われた」
千歌「もしかして……果南ちゃんは……」
ダイヤ「ええ……ギラティナが聖良さんを連れ去るのに巻き込まれて……」
鞠莉「ただ……聖良の様子を見てた限り、彼女の狙いはむしろギラティナだった」
梨子「……! だからか……!」
梨子ちゃんは何かに納得したように声をあげる。
善子「? 何が?」
梨子「地方中にゴーストポケモンが大量発生してた理由だよ。ゴーストエネルギーの集まる墓場に姿を見せるって、言ってましたよね」
鞠莉「ええ」
梨子「それって、少しでもギラティナが現われやすい環境を地方中に作るためだったんじゃ……!!」
鞠莉「たぶん、その通りよ」
千歌「だから、聖良さんはヨノワールを使って、地方中にゴーストポケモンを……」
やっと話が繋がってきた。
ダイヤ「聖良さんは……最初から、ギラティナと共に裏側の世界──“やぶれた世界”に行くことが目的だった……と言うことですわね」
花丸「うーんでも……そこに行って何をするつもりずら……?」
鞠莉「そこなのよね……。途方もない計画だとは思うけど……そこまでして、何がしたいのか……」
その場に居る全員が首を傾げる。── 一人を除いて。
ルビィ「──ディアンシー……」
ルビィちゃんが呟いた。
60 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:13:30.29 ID:DoNfZkVt0
ダイヤ「ルビィ……?」
ルビィ「……理亞ちゃんはディアンシー様を探してるって言ってた」
千歌「! 確か、聖良さんも女王様を探してるって言ってた」
聖良・理亞姉妹が一緒に行動していたのはもう周知の事実だ。なら、この一致は、彼女たちの共通の目的と行動理念を示している。
ルビィ「理亞ちゃんたちは……その裏の世界にディアンシー様を探しに行ったんじゃ……!!」
鞠莉「……確かに、あえてこの祠に裏側の世界への入口を作るために、ここでディアルガとパルキアを揃える必要があったって言うなら……辻褄が合う。一番ディアンシーに近いのはどう考えてもこの祠がある場所だものね」
ルビィ「それだけじゃない……たぶん、その──“やぶれた世界”にディアンシー様が居るって、確信があったんだと思う」
鞠莉「どういうこと?」
ルビィ「その“やぶれた世界”って、表の世界を見守るためにあるんですよね?」
鞠莉「ええ、資料は少ないけど……伝承の通りならそうなるわね」
ルビィ「理亞ちゃん……小さい頃、グレイブマウンテンでディアンシー様に会ったことがあるって言ってたから……」
善子「グレイブマウンテン……あそこって昔から、厳しい自然のせいで人やポケモンの亡骸が多かったのよね」
花丸「……ずら! そっか、もともとあの辺りにはお墓に近いエネルギーが充満してて……!!」
梨子「ギラティナによって表と裏が繋がり安い環境だった……?」
ダイヤ「確かにもしディアンシー様がギラティナ同様、“やぶれた世界”から表の世界を見守っていると言うのが確信を持てる事実であるなら……グレイブマウンテンでディアンシー様が現われたのは、“やぶれた世界”を通ってと言うことに違いないとは思いますが……」
千歌「……そういえば!」
ダイヤ「千歌さん?」
千歌「ダイヤさん! この前、話してくれたメレシーのお話の中で……ディアンシー様が『せかいの うらがわへと そのすがたを かくしてしまいました。』って出てこなかった……!?」
ダイヤ「……! まさか、その“世界の裏側”と言うのが……!!」
鞠莉「……“やぶれた世界”のこと……!?」
完全に話が繋がった。
ルビィ「たぶん、間違いないと思う」
つまり、聖良さんはディアンシーに会うためだけに、この計画を……。
いや、でも、これでやっとわかった。
千歌「あのときの言葉は……やっぱり嘘じゃなかったんだ」
あのとき、ダリアシティで聖良さんが言っていたことを思い出す。
聖良『──この宝石はディアンシーがまた会うために残してくれたもの……なんだと思って、ここまで研究を続けてきたので』
曜「じゃあ、果南ちゃんはそれに巻き込まれて……!!」
善子「……ちょっと待って」
結論が出て、方向性が決まりつつある場に善子ちゃんが口を挟む。
善子「聖良たちの目的はわかった。ここまでやってきたことの理由も説明が付いた。果南の居場所もわかった。……それはいいとして、どうやってその“やぶれた世界”に行くの?」
千歌「あ……」
言われてみればそうだった。
61 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:16:07.08 ID:DoNfZkVt0
善子「また、ディアルガとパルキアを暴れさせて、ギラティナを無理矢理引きずり出すの? 私はまたあんなのと戦うのは嫌というか……たぶん、無理よ。今回は勝てたけど、次勝てる保証なんてどこにもない」
鞠莉「……それについてなんだけど。ダイヤ」
ダイヤ「はい」
ダイヤさんは鞠莉さんに促されて、祠の観音開きに手を掛け、
それを開け放つと──
祠の中、ディアンシーを模った像の前の空間に、
なにやら不思議な穴のようなものが空いていた。
千歌「これって……」
ダイヤ「……当たり前ですが、もともとこんなものはありませんでした。恐らく、ここにギラティナが現われた際に繋がった空間移動の穴の名残ですわ」
鞠莉「恐らくこの先が“やぶれた世界”よ」
梨子「……でも、この穴」
梨子ちゃんが眉を顰める。
それもそのはず、この穴は拳大くらいの大きさしかない。
曜「人が通るのは……どう考えても無理だよね」
善子「……なんか質量とか無視して、吸い込まれる類のワームホールとかってことは」
鞠莉「確認したわ」
善子「したの!?」
鞠莉さんがその穴に指を入れる。
その指は確かに空間内に存在していたけど、善子ちゃんの言うみたいに吸い込まれるようなことはない。
鞠莉「ちゃんと、くぐれないとダメ」
千歌「じ、じゃあ……」
ここまで来てまさかの手詰まり。
鞠莉「……いや、まだ方法はある。千歌、パルキアを捕獲したボール持ってる?」
千歌「え、は、はい……!」
私はポケットから先ほど捕獲したパルキアの入ったボールを鞠莉さんに手渡す。
善子「ま、まさか!? さっき言ったみたいに暴れさせるんじゃ……!?」
鞠莉「違うわ」
善子「……っほ」
鞠莉「ディアルガ、パルキア、ギラティナは3匹がそれぞれお互いと干渉しあいながら、バランスを保っている……ギラティナが異次元空間を行き来して、ディアルガとパルキアを止めに来るようにね」
ダイヤ「それなら……逆にギラティナが暴走した際にそのバランスを正すのはディアルガとパルキアのはず。それなら、ディアルガとパルキアの力を借りればギラティナの居場所に干渉が出来るのではないか……とは考えられませんか?」
梨子「なるほど……!」
鞠莉「……ディアルガとパルキアは、時空間を操ることが出来る。空間の歪で出来た、“やぶれた世界”への入口を拡げるくらいなら、きっと出来ると思う」
そう言って鞠莉さんは、バッグから真っ白な宝玉──“しらたま”を取り出す。
62 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:18:32.87 ID:DoNfZkVt0
鞠莉「そして、パルキアへ直接指令を送れるアイテムもある」
ダイヤ「……ディアルガに対応する、“こんごうだま”が手元にないのは痛いですが……どうにか──」
鞠莉「いや、あるヨ」
ダイヤ「え?」
そう言って鞠莉さんは、バッグからもう一個宝玉を──“こんごうだま”を取り出した。
ダイヤ「い、いつの間に!?」
鞠莉「ふふん♪ 聖良たちが消える直前、聖良たちの方にマフォクシーが攻撃したでしょ?」
ダイヤ「……ラグラージを凍らせていた、フリージオへの攻撃のことですわね」
鞠莉「……さて、マフォクシーの特性はなんでしょう?」
ダイヤ「……! “マジシャン”ですか! 攻撃の際に、相手の道具を奪う特性……!」
鞠莉「Exactly! その通りでーす!」
曜「……えーと、つまり……」
善子「“やぶれた世界”に行くための準備は出来てる……ってことじゃない……!!」
梨子「……でも、問題は……」
花丸「誰が行くか、ずらね」
ダイヤ「もちろんわたくしたちが……と言いたいところなのですが」
鞠莉「……少なくとも二人は、ここでディアルガとパルキアに指示を出しながら、“やぶれた世界”への出入り口を拡げる役割がある」
ダイヤ「“しらたま”と“こんごうだま”を使って、直接指示を出すのですが……これはまだ、わたくしたちには未知の道具です。正常に操るには出来るだけ実力のある人間の方がいいでしょうし、体にどんな影響があるかもわからない。ですから、これはわたくしと鞠莉さんが担当します」
となると……突入するのは、私たち6人の中から──
ルビィ「ルビィが行く」
真っ先に名乗りをあげたのは、ルビィちゃんだった。
善子「は!? ルビィ、あんたホンキ!?」
ルビィ「うん。これがディアンシー様を廻る問題なら、クロサワの巫女であるルビィには、見届ける義務があると思う」
ルビィちゃんは力強い瞳でそう言う。
ダイヤ「ルビィ……」
ルビィ「それに理亞ちゃんのことも放っておけない……こんなやり方でディアンシー様に会っちゃ……ダメだよ」
ダイヤ「…………。……まさか、ルビィが自分から言い出すなんて……成長しましたわね」
ルビィ「……お姉ちゃん」
ダイヤ「……わかりました。ルビィ、お願いしますわ。あとは──」
千歌「──私も行きます」
私はそう言って一歩前に出る。
ルビィ「千歌ちゃん……!」
ダイヤ「理由は……セキレイシティで言っていたことですわね」
千歌「はい」
セキレイシティで言ったこと──
63 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:21:03.96 ID:DoNfZkVt0
千歌『──私、あの人の夢の話を聞いたんです。真っ直ぐな夢を、想いを、気持ちを……もしかしたら全部嘘だったのかもしれないけど……でも、私はそれが全部嘘だったとは思えない。聖良さんは、大きな力を手に入れて、それを見失ってるんじゃないかって……』
千歌「私が聞いた聖良さんの夢は純粋で……素敵だなって思った。それを達成するために頑張ってるのはすごいと思う。だけど……こんなやり方は間違ってる。私はそれを言いに行かなくちゃ……!!」
そして止めないと。
ダイヤ「……わかりました。それでは突入はルビィと千歌さんのお二人で──」
曜「ま、待って!」
ダイヤさんの決定に曜ちゃんが割り込む。
曜「別に人数の制限とかないよね!? だったら、私も行く……!! 千歌ちゃんやルビィちゃんは行かせて、自分は待ってるなんてできないよ!!」
善子「曜」
曜「何……!?」
善子ちゃんは何を思ったのか、しゃがみこんで──曜ちゃんの脚を指で軽く突っつく。
曜「──っ゛!?」
すると曜ちゃんは声にならない声をあげながら、善子ちゃん同様にしゃがみこんでしまった。
千歌「曜ちゃん!?」
善子「あんた、立ってるのもやっとでしょ」
曜「っ゛……よ、善子ちゃん、いつから、気付いて……」
善子「あれね……メガシンカ。素人が一日に2回も3回もやっていいもんじゃないみたいね。曜、あんた飛空挺の中でもメガシンカ使ったでしょ?」
曜「つ、使った……けど……」
そう言って善子ちゃんはそのまま尻餅をつく。
善子「私と曜は今日だけで2回メガシンカを使ってる。……あれ、トレーナーにも大きな負担がかかるみたいでね、そのせいで全身が酷くだるいのよ。立ってるのがやっと。正直、これ以上戦闘に出るのは無理よ」
曜「ぅ……」
善子「だから、私はパス。曜も、わかった?」
曜「……」
項垂れる曜ちゃん。私はそんな曜ちゃんの前にしゃがみ込み、手を握って、
千歌「曜ちゃん……大丈夫、絶対戻ってくるから」
そう誓う。
曜「千歌ちゃん……約束だよ……?」
千歌「うんっ! 指切りでもする?」
曜「……うぅん。千歌ちゃんは約束破ったりしないから……ここで待ってる」
千歌「……うん、ありがと、曜ちゃん」
私は曜ちゃんにお礼を述べる。
64 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:22:10.91 ID:DoNfZkVt0
花丸「マ、マルは……」
鞠莉「図鑑で確認したんだけど……あなたはもう手持ちが全滅しかけてるでしょ?」
花丸「え!? 戦闘不能はカビゴンだけじゃ……」
鞠莉「いいえ、ドダイトス、カビゴン、キマワリ、イノムーは戦闘不能状態よ」
花丸「え……制御室では皆戦えてたのに……」
ルビィ「きっと……花丸ちゃんの気持ちに応えて、最後の力を振り絞ってくれたんじゃないかな……」
花丸「……そっか」
花丸ちゃんも参戦は無理だろうという判断。
梨子「……あとは私かな」
千歌「梨子ちゃんは……怪我の治療をした方がいいと思う」
梨子「……バレてた?」
千歌「なんとなく……」
上手に隠してはいたと思うけど……。パルキアとの戦いで空から落ちてきたとき、痛みに耐えながら、胸部の下の辺りを庇うような動きをしていた気がしていた。
鞠莉「梨子、怪我してるの?」
梨子「飛空挺で、ヨノワールから直接殴られたときに……」
鞠莉「ちょっと、ごめん」
鞠莉さんが梨子ちゃんのシャツを捲る。
梨子「!? ま、鞠莉さん!?///」
そして、そのまま梨子ちゃんが痛むと言う場所に触れる。
梨子「い、いたっ……!!」
鞠莉「……確かに、詳しく検査しないとだけど……肋骨に軽くヒビが入ってるかもしれないわね」
梨子「まあ、動けないほどじゃないですけど……」
鞠莉「ダメ。軽く見ると、大きな怪我の原因になる。あなたはここで休憩ね」
梨子「……はぁい」
……これで、決戦の地に赴く人間は決まった。
善子「ルビィ」
ルビィ「?」
善子「グラードンは連れて行くの?」
ルビィ「……うぅん。眠っちゃってるし、さっきみたいにちゃんと戦えるかわかんないから置いていくつもり」
善子「……そ。なら、手持ちの空いた部分に連れて行きなさい」
善子ちゃんはそう言って、ダークボールをルビィちゃんに手渡す。
65 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:23:02.42 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「このボール……ドンカラスの……?」
善子「飛行要員は居た方がいいでしょ?」
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「可愛いリトルデーモンに……我が黒翼を貸し与えるのも悪くない。あと、ヨハネだからね」
ルビィ「うん……! ありがとう、ヨハネちゃん!」
* * *
……さて。
ダイヤ「二人とも準備はいいですか?」
千歌・ルビィ「「はい!!」」
鞠莉「果南と一緒に、絶対に帰って来るのよ」
千歌・ルビィ「「はい!!」」
ダイヤ「……それでは鞠莉さん。始めますわよ」
鞠莉「OK.」
二人は祠の両脇に立ち、
ダイヤ「出てきなさい、ディアルガ!」
鞠莉「頼むわよ、パルキア!」
二匹の伝説のポケモンを繰り出す。
「ディアガァ」「バァァル」
そして、それぞれ“こんごうだま”と“しらたま”を握り締めて。
ダイヤ・鞠莉「「────」」
瞑想する。
「ディアガ」「バル」
二匹の巨体が、祠の方を向くと──
千歌「穴が……!!」
ルビィ「拡がってく……!!」
穴はどんどん拡大し、直に人が通れるほどの大きさになる。
私は──ルビィちゃんの手を握って。
千歌「──行こう……! ルビィちゃん!」
ルビィ「……うん!」
ルビィちゃんと共に──“やぶれた世界”に向かって、飛び込んだのだった。
66 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:24:44.19 ID:DoNfZkVt0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かこんでいます
でんげんを きらないでください...
【クロサワの入江】
口================= 口
||. |⊂⊃ _回../||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||. ⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : ||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : ||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: ||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o‥| | | ||
||. / | | | ||
||./ ●回/ ||
口=================口
67 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 13:25:30.36 ID:DoNfZkVt0
主人公 千歌
手持ち バクフーン♂ Lv.53 特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
ルカリオ♂ Lv.58 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
フローゼル♀ Lv.47 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
バッジ 7個 図鑑 見つけた数:152匹 捕まえた数:15匹
主人公 梨子
手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
チェリム♀ Lv.48 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
ピジョット♀ Lv.47 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
バッジ 5個 図鑑 見つけた数:129匹 捕まえた数:13匹
主人公 曜
手持ち カメックス♀ Lv.52 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
ホエルオー♀ Lv.44 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
バッジ 2個 図鑑 見つけた数:156匹 捕まえた数:22匹 コンテストポイント:48pt
主人公 善子
手持ち ゲッコウガ♂ Lv.49 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
アブソル♂ Lv.56 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
グラードン Lv.75 特性:ひでり 性格:すなお 個性:こうきしんがつよい
バッジ 1個 図鑑 見つけた数:137匹 捕まえた数:53匹
主人公 花丸
手持ち ドダイトス♂ Lv.43 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
カビゴン♂ Lv.40 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
デンリュウ♂ Lv.34 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
キマワリ♂ Lv.33 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
イノムー♂ Lv.40 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
バッジ 1個 図鑑 見つけた数:111匹 捕まえた数:40匹
主人公 ルビィ
手持ち アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
メレシー Lv.51 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
ドンカラス♀ Lv.55 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
バッジ 0個 図鑑 見つけた数:96匹 捕まえた数:10匹
主人公 鞠莉
手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり
ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい
ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
メタモン Lv.61 特性:かわりもの 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
パルキア Lv.75 特性:テレパシー 性格:せっかち 個性:ちのけがおおい
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:468匹 捕まえた数:312匹
主人公 ダイヤ
手持ち ジャローダ♀ Lv.69 特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん
ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい
ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん
アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき
ディアルガ Lv.75 特性:テレパシー 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:267匹 捕まえた数:114匹
千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸と ルビィと 鞠莉と ダイヤは
レポートを しっかり かきのこした!
...To be continued.
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/12(日) 13:28:34.25 ID:adCmP41J0
乙
アイドルキャラでもポケモン世界に放り込まれれば出血や骨折に晒されるのか・・・
69 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:29:55.48 ID:DoNfZkVt0
■Chapter074 『やぶれた世界』 【SIDE Chika】
──昔々、ウラノホシにはメレシーというポケモンが棲んでいました。
メレシーは身体に宝石を持っている、それはそれは美しいポケモンで
人々は、そんなメレシーたちを大切に想いながら、仲良く暮らしていました。
そんなメレシーの中でも、一際美しいメレシーが居ました。
ピンク色のダイヤモンドを持ったメレシーで、その美しさに誰もが目を奪われました。
名をディアンシー。どんなメレシーよりも美しく、清いメレシーでした。
最も美しいメレシーの仲間・ディアンシーは、メレシーたちからも、人間からも、尊敬される存在でした。
いつしかディアンシーは、メレシーの女王と呼ばれるようになりました。
そんな女王様は少しだけ特別な力を持っていました。
女王様の光は怪我を治し、心を癒やしてくれる。
そんな女王様を人々は大層大事に扱っていました。
人々は女王様にお供えをして、そのお礼に女王様は人々に多くの癒やしと、輝きを与えました。
南の端に、色とりどりの宝石の洞窟を
東の海に、煌く珊瑚の楽園を
西の草原に、太陽と月の輝きを
北の山に、ダイヤモンドの儚さを
真ん中に、水晶の湖を
そして、聳える大樹に、光の果実を
世界は女王様と共に大きく発展し、より大きな輝きを得ていきました。
70 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:30:44.10 ID:DoNfZkVt0
女王様の輝きの力で、大きく成長した居心地の良い大樹は、何時しか龍が棲み付き
その龍が大きな啼き声と、音で、人々とポケモンを見守っていたため、この一帯は“オトノキ”と呼ばれるようになりました。
平和な平和な地方でした。
発展し、より広く、多くの場所に人間が住む場所を移し、大きく広がっていきました。
それは本当に広く
……女王様の癒やしの光が届かない場所までも、広く拡がっていきました。
ですが、あるとき、光の届かない場所で、人々は気付いてしまいました。
あの光の美しさに。あの光の温かさに。あの光の尊さに。
次第に光の届かない場所の人々は、光を奪い合うようになりました。
絶えず争いが起きました。
そして、ついに光の源である、メレシーたちとその女王様を独り占めにしようとする人間が現われたのです。
女王様はその人間の穢れた心に、酷く哀しみを覚え。
世界の裏側へと、その姿を隠してしまいました。
女王様が身を隠すと、輝きはどんどんと小さくなっていき
こうして何時しか、世界から、美しい宝石の輝きが失われたのでした……。
姿を隠した女王様は、今でもこっそりと地方を見守っています。
女王様は直接、姿を現すことは滅多になくなりましたが
信頼出来るメレシーと、選ばれた巫女の前だけは
自分の気持ちを伝えに現われることがあるそうです──。
* * *
71 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:32:42.90 ID:DoNfZkVt0
千歌「──ん……」
──何か夢のようなものを見ていた気がする。
クロサワの祠から、開けてもらったホールを潜り抜けて、この場に辿り着くまで、
一瞬──永遠のような夢の中で……何かお話を聞いていた気がする。
──私は目を開いた。
千歌「──ここが……」
ルビィ「……やぶれた世界」
ルビィちゃんと二人で辺りを見回す。
そこは異様と言う他ない空間だった。
地面は浮き、その下には空が見える。
壁は床で、床は天井、天井は床になっている。
滝は下から上に落ちていて、見えない足場が見える。
自分でも何を言っているかわからないけど、“そう”なのだ。
ただ、それがおかしいものだとは何故か感じない。
この世界ではそれが常識だと言うことが感覚的にわかる。そんな世界。
ルビィ「千歌ちゃん」
千歌「……うん、進もう」
私たちはこの不思議な空間を進んでいく……。
* * *
──やぶれた世界、奥部。
「──ギシャラーーーーー」
見たこともないポケモンが周囲の足場の周りを高速で飛んでいる。
そのポケモンに向かって、
聖良「プテラ!! “ストーンエッジ”!!」
「プテァァァ!!!!!!」
聖良が攻撃を撃っている。
果南「聖良っ!! これ以上、そのポケモンを狙わないでよ!!」
聖良「そういうわけには行きません。この世界の掌握はギラティナあってこそなんですから」
さっきからギラティナと呼ばれたポケモンを追い回している。
私はそんな聖良を壁を走りながら追いかけている。
聖良「巻き込んでしまったのは謝りますが、果南さんこそ邪魔をしないで貰えませんか?」
72 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:35:17.45 ID:DoNfZkVt0
聖良が空から私を見上げながら、話しかけてくる。
果南「でも、ギラティナ嫌がってるじゃん!!」
嫌がってるし、攻撃をされて混乱している。
あちこちを無茶苦茶に飛び回り、ギラティナが啼き声をあげるたびに、
足場が出たり消えたり、重力が上下反転したりしている。
ギラティナがこの世界の掌握の鍵と言うのはどうやら事実らしいけど、正直あんな風に追い回していい存在だとは思えない。
まさに人の手に負えるようなポケモンじゃない。
果南「く……せめて、飛べるポケモンは連れてくるべきだった……!!」
鞠莉の言う通り、スワンナを連れてくるべきだったかもしれない。
とは言っても、飛行するにもどこからどこが地面で、どこからどこが空なのかよくわからない空間でうまく飛行出来るのかはわからないけど……。
聖良は器用にも、この理不尽な空間の癖を即座に暴き、うまく飛行している。
クロサワの入江では、ほとんどパルキアとディアルガの指示に時間を割いていて、まともなバトルにはならなかったが、彼女は頭も良く、相当な実力者なんだろう。
このままじゃ、追いつけない。
果南「くっそ……!!」
私は一旦足を止めて、考える。
果南「……ん?」
そこで気付く。猛スピードでギラティナを追って遠ざかっている聖良と、あまり距離が離れていかない。
果南「……なるほど」
ここではどうやら速い≠速いのようだ。
果南「ヤドラン!」
「ヤド……?」
私はヤドランを繰り出す。
距離が変わらないなら、遅いヤドランを使っても変わらない。
果南「ヤドラン! “サイコショック”!!」
「ヤード……」
ヤドランが念動力で作り出したブロックを聖良に向かって飛ばす。
──が、
理亞「チリーン!! “サイコショック”!!」
「チリリィーーン!!!!」
果南「!」
理亞が浮いてる足場の影から飛び出して、私の攻撃と相殺させてくる。
理亞「ねえさまの邪魔をするな……!!」
果南「く……」
73 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:36:50.41 ID:DoNfZkVt0
さすがにこのルール無用の空間で、聖良を追いながら、理亞を捌くのはキツイ。
私は周囲を見回しながら、どうにか策がないか考える。
この空間に連れてこられて、結構な時間、聖良を追っていたため、随分と下に登って来てしまった。
そのため、入口はすぐ近くにある。
果南「……ぐ、ああ、もう!! 頭の中がごちゃごちゃになる!?」
常識が摩り替わっているのか、考えていることと、見ていることと、認識していることがうまく噛み合わない。
こういう小難しい状況は本当に苦手だ。
そんな中──
「果南ちゃーん!!」
千歌の声がする。
果南「……え!? 千歌!?」
驚いて、声のする方を見ると──いや居ないし。
たぶん、こういうときは……と思って逆を見ると、
千歌「果南ちゃーん!!」
ルビィ「果南ちゃん!!」
千歌とルビィちゃんがこちらに向かって、遠ざかって……ああもうどっちだ。
理亞「! まさか、ここまで追ってきた……!?」
* * *
千歌「果南ちゃーん!!!」
声を張り上げて呼ぶほどに果南ちゃんは何故か、私たちが来る方向とは逆を向いている。
それは置いておいて、かなり下に登ったところに見える果南ちゃんとの間には理亞ちゃんの姿。
私とルビィちゃんは、壁を走って下に登っているんだけど……。
果南ちゃんとの距離感が全然詰まらないし、
位置関係上、果南ちゃんの間に居るはずの理亞ちゃんだけが何故かどんどん近付いてくる。
千歌「も、もうー!!! どうなってんのこれー!!!」
私が叫びをあげると、
ルビィ「ごめん千歌ちゃん! 先に行くね!!」
ルビィちゃんが前に飛び出す。
千歌「うぇ!?」
ルビィ「たぶんこの辺りは左に進むと果南ちゃんの方に前進するみたいだよ!!」
74 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:38:01.80 ID:DoNfZkVt0
どうやら、ルビィちゃんは先にコツを掴んだらしい。
言われたとおり、左に向かって走ってみる。
千歌「おぉ、ホントだ!! 果南ちゃんがどんどん近付いてくる!!」
とにかく、この調子で果南ちゃんと合流しよう……!!
* * *
ルビィ「理亞ちゃん!!」
理亞「っ!! ルビィ……!!」
理亞ちゃんと視線が交錯する。
ルビィ「コラン!! “ムーンフォース”!!」
「ピピピピ」
理亞「チリーン!! “じんつうりき”!!」
「チリーッ!!!!」
コランの撃った光が、“じんつうりき”で捻じ曲げられ掻き消える。
でも、ルビィはそんなのおかまいなしに、掻き消えた光を突き抜けながら、理亞ちゃんに向かって突進する。
理亞「!?」
そのまま、タックルするような形で理亞ちゃんを巻き込み、足場の外に飛び出した。
千歌「ルビィちゃん!?」
背後から千歌ちゃんの驚くような声が聞こえる。
が、私たちは重力に引っ張られ、上の方へと落ちていく。
理亞「は、はなせ!!」
ルビィ「千歌ちゃーーーーーん!! 果南ちゃーーーーーーん!!」
二人に聞こえるように、大きな声で叫ぶ。
ルビィ「理亞ちゃんはルビィがどうにかするからーーーーー!! 二人は聖良さんをーーーーーーー!!」
千歌「! わかったーーーーー!!!!」
──そのまま一気に急上昇して、上に向かって落ちていく。
空中に浮かぶ足場を5個ほど通り過ぎたところで、
理亞「放せって言ってんでしょ……ッ!!」
理亞ちゃんに思いっ切り蹴飛ばされて、一人で空中に投げ出される。
理亞「クロバットッ!!!」
「クロバッ!!!!」
理亞ちゃんの肩を掴み紫の翼を広げるクロバット、
75 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:40:34.07 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「ドンカラス!!」
「カァーーーー!!!!!!」
ルビィもドンカラスを繰り出す。ドンカラスは、その脚でルビィの小さな肩を鷲掴みにし、黒い翼で空を舞う。
理亞「ルビィ……ッ!!!! お前はどこまで私の邪魔を……!!!」
ルビィ「理亞ちゃんがこんなことをやめてくれるまでだよ!!!」
理亞「……上等ッ!! 今度こそ、完膚なきまでに叩きのめすッ!!!」
ルビィ「今度はルビィが勝つよ!!!」
──理亞ちゃんとの最終戦。その火蓋が切って落とされる。
ルビィ「コランッ!! “パワージェム”!!」
「ピピピピ!!!!!」
下降するルビィたちに追いついたコランが、エネルギーの篭もった宝石を飛ばす。
理亞「……!!」
理亞ちゃんはボールを放り、
「ゴォーーーーリ!!!!!!!」
“パワージェム”は飛び出したオニゴーリの眼前に作られた氷に壁にぶつかって止められる。
そして理亞ちゃんは間髪居れず、ルビィたちが飛んでいるすぐ近くにある横壁に、次のボールを放る。
「グマァァッ!!!!!!!」
理亞「リングマッ!!!! ぶっ潰せ!!!」
リングマが大きな腕を振りかぶる。
ルビィ「コラン!! “てっぺき”!!!」
「ピピピピッ!!!!!」
──ガインッ!!!
ルビィの間にコランが割り込むように飛んできて、リングマの拳を防ぐ。
だが、完璧に防ぎきれず、強烈な拳によってコランは空中をノックバックする。
理亞「チリーンッ!!! “テレキネシス”!!!」
「チリリーンッ!!!!」
「ピピピッ!?!?」
ルビィ「……!!」
そこに、コランが浮力を無理矢理与えられて、下に向かって吹っ飛んでいく。
ルビィ「コラン!! “じゅうりょく”!!」
「ピピピィ!!!!!」
理亞「!?」
「クロバッ!!?」
すぐに“じゅうりょく”で“テレキネシス”を無効化すると同時に、
空中に居た、ドンカラス、コラン、クロバット、チリーン、オニゴーリが“じゅうりょく”の影響で一気に上の床に向かって加速する。
理亞「オニゴーリッ!!!!! メガシンカ!!!!」
「ゴォォォォォーーーーリ!!!!!!!!」
76 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:43:59.48 ID:DoNfZkVt0
理亞ちゃんのメガブレスレットに呼応して、オニゴーリが光り、メガオニゴーリへと姿を変える。
強力な冷気を使って、自身の身体から氷柱を伸ばして、自分たちが落ちそうになっていた上方の床、リングマの立っている壁、そして下方の天井の三点に突き立ててその場に留まる。
一方ルビィは、“じゅうりょく”の言うがまま上方の床に向かって落ちていく。
ルビィ「アチャモッ!!!」
「チャモォ!!!!!!」
ルビィ「“ブレイククロー”!!!」
ルビィは咄嗟にアチャモを繰り出して、オニゴーリが作り出した氷の柱に向かって爪を立てさせ、そのままアチャモの体に掴まる。アチャモは爪を引っ掛けて、落下速度を減速させる。
そして、続け様にボールから、
「クーーーーマーーー!!!!!」
ヌイコグマを出して、今度はヌイコグマに掴まって、
ルビィ「ヌイコグマさん!!! “メガトンキック”!!!」
「クーーーーマーーー!!!!!!」
思いっ切り前脚を氷柱にぶち当て、その反動でヌイコグマと一緒に、リングマの居る方の壁に飛ぶ。
すると、重力圏が上方の床から、横方向の壁に切り替わり、壁側に引っ張られる。
「グマァァッ!!!!!!!」
もちろん、そこにはリングマが待ち構えている。
「クーーーマーーーー!!!!!!」
「グマァァァッ!!!!!!」
両者は同時に拳を構える。
ルビィ・理亞「「“アームハンマー”!!!!」」
「クーーーーマーーーーー!!!!!!」「グゥゥゥゥマァァァァァ!!!!!!!!」
二匹の拳がぶつかり合う。
リングマの方が単純なパワーは上だけど……こっちは“じゅうりょく”の力を借りて振り下ろされた拳だ。
二匹の攻撃がほぼ同程度で相殺し、弾ける。
ルビィはその反動の勢いを借りて、リングマから距離を取りながら横壁に着地し、手持ちの状況を確認する。
上方床、コランが“じゅうりょく”で落ちながら。
「チリリィーンッ!!!!!」「ピピピピッ!!!!!」
チリーンの“しめつける”に身を捻りながら応戦している。
ルビィの居る横壁では、
「グマァァッ!!!!!!」「クーーーマーーーッ!!!!!!!」
再び、ヌイコグマとリングマが組み合う。ドンカラスは横壁に降りてきたルビィの肩を掴んだままだ。
──空間中央、理亞ちゃんはオニゴーリの作り出した氷に掴まって、氷柱に爪を引っ掛けているアチャモに向かって攻撃を放つ。
理亞「“こごえるかぜ”!!!」
ルビィ「アチャモ!! “ねっぷう”!!!!」
「ゴォォォーーーーーリ!!!!!!!」「チャモォォォーーーーー!!!!!!」
77 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:46:22.92 ID:DoNfZkVt0
二匹の風がぶつかり合う。
理亞「マニューラァッ!!!!!」
「マニュッ!!!!!」
ただ、アチャモは単身。この期を逃すまいと、マニューラが飛び出す。
ルビィ「ゴマゾウさんっ!!!!」
「パォォォ!!!!!」
ルビィの元からはゴマゾウが“ころがる”状態で氷柱を猛スピードで駆け上がりながら飛び出す。
理亞「邪魔だぁッ!!! オニゴーリ!! “ぜったいれいど”!!!」
そんなゴマゾウに向かって放たれる、“ぜったいれいど”。
アチャモにはマニューラが迫る。
ルビィ「みんなッ!!!!」
ルビィは叫ぶ。自分たちの手持ちに向かって、
ルビィ「ルビィはここで、理亞ちゃんを止める……ッ!!!! 絶対にッ!!!! だから──だから、力を貸してぇーーー……ッ!!!!!!」
「クーマー──」「パォォォ──」「チャモォ──」
理亞「……!?」
ルビィの叫びに呼応するようにキテルグマ、ゴマゾウ、アチャモが光り輝く──これは、
理亞「このタイミングで三匹同時進化!?」
「──クマァーーーーーーッ!!!!!!!」「──パァオォォォォォ!!!!!!!!!」「──シャモォッ!!!!!!!」
ルビィ「キテルグマッ!!!! “ぶんまわす”!!!」
「クマァッ!!!!!!!」
「グマァッ!!!?」
進化してパワーアップしたキテルグマが、組み合ったままだったリングマを持ち上げ“ぶんまわす”……!!
一方、ゴマゾウに迫っていた“ぜったいれいど”──だが、
「パァァォォォォォォ!!!!!!!!」
その冷気を無視するように、ゴマゾウが進化した姿──ドンファンがオニゴーリに迫る。
理亞「!? しまった!? “がんじょう”!?」
「ゴォォーーリッ!!!?」
進化して、一撃必殺を無効にする特性を得たドンファンが、オニゴーリに“ころがる”を直撃させる。
と、同時に──
「マニュ!!!!!」
迫るマニューラを、
「シャーモッ!!!!!」
78 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:48:14.92 ID:DoNfZkVt0
ワカシャモが壁に引っ掛けるのを進化して得た前爪に切り替え、蹴りをかます。
「マニュッ!!!!!!」
マニューラは長い鉤爪でガードをするが──
素早い蹴撃が更にもう一発……!!
「マニュッ!!!?」
マニューラを蹴飛ばす。──“にどげり”だ。
理亞「ッ!!!! オニゴーリ!!!!」
「ゴォォォオオーーーーリ!!!!!!」
ルビィ「!!」
“ころがる”を直撃させた、ドンファン。だが、オニゴーリはどうやら、大きな顎で噛み付いて、受け止めたようだった。
理亞「“こおりのキバ”!!! そのまま、凍らせろ!!!」
「パ、パォォォ!!!!!」
ルビィ「ワカシャモ!!!!!」
「シャモッ!!!!!」
マニューラの迎撃に成功した、ワカシャモが爪を引っ掛けながら氷柱を登り、オニゴーリに向かって飛び出す。
「シャモッ──」
そして、その最中、再び光に包まれる──
理亞「……!? 二段階連続進化……!?」
ルビィ「──バシャーモッ!!!!!」
「──バ、シャァーーーーモ!!!!!!!!」
ルビィ「“ブレイズキック”!!!!!」
炎の蹴撃が、オニゴーリ蹴っ飛ばす。
「ゴォォォオォォーリ!!?!?」
「シャーモッ!!!!!」
強烈な攻撃の衝撃に、オニゴーリが噛み付いていた顎が開き、ドンファンが解放される。
「パァァァォッ!!!!!」
理亞「……ッ!!!!」
更に“ブレイズキック”で怯んだオニゴーリに向かって、
「クーーーーマッ!!!!!!!!」
「グマァッ!!?」
キテルグマがぶん回していた、リングマをぶん投げた。
理亞「……!!!!?」
「パァァォッ!!!!」「シャーモッ!!!!」
79 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:49:28.63 ID:DoNfZkVt0
ドンファンとバシャーモは即座に離脱し、氷柱に体を押し当て減速しながら、上方の床に向かって滑り降りていく。
「グマァッ!!!?」
リングマが氷柱に直撃し、氷柱が砕け散る。
これで、リングマと、オニゴーリを同時に──
理亞「……この程度でやられるわけない」
ルビィ「……!!」
そう言う理亞ちゃんの傍らでは、
「ゴォォーーーリ……!!!」
オニゴーリ冷気で一瞬で作り上げた、巨大な氷の手で、リングマをキャッチしていた。
「グマッ……」
リングマは戦闘不能に出来たけど、オニゴーリはまだ顕在……!!
そのタイミングで、体がフッと軽くなる。
“じゅうりょく”が切れたんだ……!!
ルビィ「キテルグマ!! 戻って!!」
「クマッ──」
キテルグマをボールに戻して、
「カァカァッ!!!!!」
ドンカラスと一緒に再び飛び立つ。
「ピピピピィ!!!!!」「チリリィーーーンッ!!!!!」
上方の床で、攻防を続けるコランとチリーン。二匹が“じゅうりょく”から逃れてしまう前に──
ルビィ「コラン!! “だいちのちから”!!」
「ピピピピピィ!!!!!!」
コランを中心に上方の床から、大地のエネルギーが沸きあがり、
「チリリッ!!?」
チリーンを打ち上げる。
理亞「チリーンッ!!? っ……!! ……行け、カブトプスッ!!!」
「カブトッ!!!!」
チリーンを戦闘不能にしたら、間髪居れずカブトプスが氷柱を蹴って、下から上の床に向かって降って来る。
「マニュッ!!!!!」
体勢を立て直したマニューラもそれに続くように飛び出す。
ルビィは、全速力で手持ちたちが居る上の床に一気に降りて行き、
その最中で声を張り上げて、指示を出す。
80 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:50:29.12 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「バシャーモッ!!! 氷柱を根元から蹴り砕いて!!!」
理亞「……!!」
「シャーーーモッ!!!!!」
バシャーモの脚に炎が宿る、
そのまま、軸足を使って、体を回転させながら、氷柱の根元に“ブレイズキック”を炸裂させる──。
──バキバキバギギッ!!!! と、派手な音を立てて、氷柱が傾きはじめる。
理亞「オニゴーリッ!! “ころがる”!!!」
「ゴォォォーーーーリ!!!!!!」
オニゴーリが傾く氷柱を転がりながら、猛スピードで上に向かって下り始める。
理亞ちゃんはクロバットでその後を追いながら、
理亞「マニューラッ!!!!
「マニュッ!!!!!」
上の床に向かって、氷柱を走り下っていたマニューラに指示を出す。
理亞「ルビィとドンカラスを狙え!!」
「マニュッ!!!!!!」
ルビィ「!!」
上の床に向かって絶賛下降中だった、ルビィとドンカラスの方に向かって、マニューラが飛び掛ってくる。
ルビィ「……きっと、そうくると思ってたよ!!」
理亞「!?」
ルビィが構えたボールから、飛び出すのは──
「アブリリリリッ!!!!!!」
巨大な“かふんだんご”を抱えたままボールから飛び出したアブリボンの姿。
理亞「“かふんだんご”!? ボールの中に居る間に作ってた……!?」
「アブリッ!!!!!」
こっちに飛び掛ってくる最中で、もう空中での制御が利かないマニューラに向かって、特大の“かふんだんご”を投げつける。
「マニュッ!!!?」
空中でマニューラに炸裂し、爆発する。
そして、追い討ちを掛けるように、
ルビィ「“マジカルシャイン”!!!」
「アブリリリリッ!!!!!!!」
アブリボンから発せられた閃光がマニューラを焼く。
「マニュゥッ……!!!!」
マニューラを撃ち落し、すぐに視線は上方の床、ドンファンへ、
「カーーーブッ!!!!!!」
81 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:51:59.35 ID:DoNfZkVt0
鎌を振りかぶって、ドンファンに向かって飛び降りてくるカブトプス。
ルビィ「ドンファン!! “みだれづき”!!」
「パァァオォォォォ!!!!!!」
ドンファンが牙を振るって、鎌と撃ちあう。
理亞「“アクアブレイク”ッ!!!」
だが、カブトプスの全身を水のエネルギーが滾って、
「パァァォッ!!!?」
そのまま撃ち合っていた、ドンファンを火力で打ち負かし、怯ませる。
「──シャモッ」
──だが、怯んだドンファンを飛び越えるようにして、横薙ぎに突き出されるバシャーモの膝……!!
ルビィ「“とびひざけり”!!!」
「カブッ!!!!?」
強烈な蹴りが、カブトプスの頭部にクリーンヒットし、何十メートルも吹っ飛ばす。
理亞「──うぁぁぁぁぁぁ……ッ!!!!!!」
ルビィ「!!」
カブトプスが戦闘不能になる最中、ルビィに向かって理亞ちゃんが雄叫びをあげながら降って来る。
理亞「クロバットッ!!! “クロスポイズン”ッ!!!!」
「クロバァッ!!!!!!!」
「カァッ!!!!!?」
ルビィ「っ!!!!」
ルビィの肩を掴んでいた、ドンカラスに不意の“クロスポイズン”が直撃する。
「カァカァ!!!?!?」
ドンカラスはルビィを掴んだまま、回転して上の床に向かって墜落する。
ルビィ「っ゛……!!!」
そのまま、ドンカラスと共に床に身体を打ち付ける。
──でも、まだだ……!!
痛がってる場合じゃない。すぐさま、起き上がって状況を確認する。
「カァ……ッ」
“クロスポイズン”の直撃を食らったドンカラス。アブリボンの特性“スイートベール”のお陰でどく状態にはならなかったが、ダメージが大きい。
82 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:53:16.92 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「アブリボン!! “かふんだんご”!!」
「アブリリリッ!!!!!」
吹っ飛ばされたルビィたちを追いかけるように下降してきた、アブリボンが仲間用に作った“かぶんだんご”でドンカラスを回復させ、それを確認してからドンカラスをすぐにボールに戻す。
ドンカラスが動けなくなったら、ルビィの一切の飛行手段が絶たれてしまう。それは回避しなくちゃいけない。
──が、これは悪手だった。
理亞「全て……凍り付け……!!! オニゴーリ!!! “はかいこうせん”!!!!!」
「ゴォォォォォォリィィィィィィ!!!!!!!!!!!」
ルビィ「!?」
回復の隙に、上空から、メガオニゴーリが“フリーズスキン”によって強化した、全てを凍らせる破壊の閃光を発射する。
──防御……!? 間に合わない……!!
ルビィは弾けるように飛び出して、バシャーモの元へ──
理亞「……あああぁあぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」
理亞ちゃんの気合いの咆哮と共に、“はかいこうせん”が着弾し、辺りが一気に凍りつく。
ルビィ「──……!!!」
──野太い大出力の“はかいこうせん”は着弾と共に、床の上を一気に拡がり、一面を一瞬で氷の世界に閉じ込めた。
「シャーモッ……!!!」
全身から炎を発する、バシャーモを除く、全てを……。
──ガァァァァンッ!!!!!
大きな音を立てて、
「ゴォォォォォォリ!!!!!!!!」
オニゴーリが自ら作り上げた氷の世界の床に着地する。
ルビィ「はぁ……はぁ……っ……」
理亞「はぁ……はぁ……っ……」
オニゴーリのすぐ後ろで、理亞ちゃんがクロバットをボールに戻し、飛び降りて、ルビィと同じように息を切らせている。
理亞「……はぁ……っ……はぁ……。……やる……じゃない……っ……」
ルビィ「は……はぁ……っ……、理亞ちゃんも……っ……!!」
理亞「……ふふ……生意気……!!」
理亞ちゃんはそう言って、何故だか笑う。
お互いの全てを懸けた、最後の戦いなのに。
ルビィ「……ふふ……」
──そこで気付いた。ルビィも笑っていた。
理亞「……最後は、私が……勝つ……!! ねえさまのために……私は……!!!」
「ゴォォォォォォォ──!!!!!」
理亞ちゃんの気合いと共に、オニゴーリが一段と強力な冷気のオーラを放ち始める。
83 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:54:40.50 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「理亞ちゃんは……!!! わたしが勝って、わたしが止める……っ!!!!」
「バ、シャァァァァァーーーーモッ!!!!!!!!」
バシャーモも同様に、燃え盛る炎熱を発する。
──恐らく次が最後の攻撃になる。そんな予感がした。
ルビィ「お姉ちゃん……!! 力を貸して──!!」
ルビィはポケットから──旅立ちのあの日に、お姉ちゃんから貰った“ほのおのジュエル”を取り出して、傍らのバシャーモに投げ渡す。
「バ、シャモォッ!!!!!!」
ジュエルを受け取った、バシャーモをそれを拳に握り込み、割り砕く。
輝石が砕け、散った輝きが──そのまま、バシャーモの炎のオーラを爆発的に増強させ、脚にとてつもない大きさの炎を宿す。
ルビィ「──これで、最後だよ……!!」
理亞「……決めようじゃない……どっちが正しいか……!!」
ルビィ「お互い譲れないから……!!!」
理亞「……戦って決めるしか……ないっ!!!! 最後に立ってた方が……正義だ!!!!」
ルビィ「バシャーモッ!!!!!!」
理亞「オニゴーリッ!!!!!」
お互いの声と共に、
「バ、シャァァァァーーーーーモッ!!!!!!!!」
「ゴォォォォォーーーリッ!!!!!!!!!!!」
更に一段階、強化された炎のオーラと氷のオーラが──ぶつかり合う……!!
理亞「オニゴーリッ!!!!!! “ふぶき”ッ!!!!!!!」
「ゴオオオォオォォォォォォォォーーーーーーーーリィィィッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
オニゴーリから最大級の冷気が放たれる。
それを迎え撃つように、
ルビィ「バシャーモッ!!!!! “ブレイズキック”ッ!!!!!!!」
「バ、シャァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーモッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
バシャーモが爆炎を宿した、左脚を薙ぐ。
理亞「凍り付けえぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!!」
ルビィ「いっけぇぇーーーーーッ!!!!!!!!!!」
巨大な寒波が、迫る。
それを爆熱と爆炎が、迎え撃つ。
──灼熱と吹雪がぶつかり合い。爆ぜる。
お互いの攻撃が鍔競り合う。
「バシャッ……ッ!!!!!」
だが、ある一瞬を境に、バシャーモの炎が僅かに翳りを見せる。
──火力が足りない。
84 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:55:24.36 ID:DoNfZkVt0
理亞「!! 私の、私たちの……勝ちだぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」
「ゴォォォォォォォーーーーーーリッ!!!!!!!!!!!!!」
理亞ちゃんの気合いの雄叫びと共に、炎を掻き消して迫り来る“ふぶき”。
ルビィ「バシャーモッ!!!!!!!」
「バシャモッ!!!!!!!」
左脚の炎は押し負けて掻き消された、
──だから、
理亞「……なっ!?」
バシャーモは先ほどまで使っていた左脚で思いっ切り大地を踏みしめ、
「バ、シャァァァーーーーーモ!!!!!!!!!!」
それを軸足にして。さっきとは“逆の脚”で
──本当の本当に、ありったけ、全ての炎熱エネルギーを載せた──“右脚”の業炎で、
ルビィ「……いっけぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!」
「バッシャアァァァァァァァァァーーーーーーモォッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
オニゴーリの冷気を──押し返す。
理亞「……くそ……っ」
爆炎はそのまま、理亞ちゃんとオニゴーリを飲み込んで──
理亞「……私は……こんなところで……っ……!!!!」
全てを、ありったけの焦熱と共に……蹴り飛ばした……──!!
85 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:55:51.58 ID:DoNfZkVt0
* * *
聖良「りあ、なにかほしいものはない?」
理亞「……ない」
聖良「……なにも?」
理亞「……ねぇさまがいればいい……ほかはなにもいらない」
聖良「…………」
理亞「ねぇさまいがいは……みんな、いなくなっちゃうし……なくなっちゃうから……」
聖良「りあ……」
理亞「……でも」
聖良「……?」
理亞「……もし……ずっと、そばにいてくれるなら……あったかいひかりがほしい」
聖良「……え……?」
理亞「……わたしは……また──」
………………
…………
……
* * *
86 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:56:43.12 ID:DoNfZkVt0
──なんだか……懐かしい夢を見た気がした。
理亞「──ねぇ……さま……」
目を開く──ぼんやりとする視界の先で、
ルビィ「理亞ちゃん……おはよう」
ルビィの顔があった。
理亞「…………」
私は、ルビィの膝の上で、目を覚ました。
そして──理解する。
理亞「……負けた」
辺りはバシャーモの炎熱によって、氷の結晶、一欠片すらも残さず溶かし尽くされたようだった。
理亞「……ルビィ」
ルビィ「ん?」
理亞「……あんた……なんでそんなに強くなってんのよ……」
ルビィ「……理亞ちゃんが居たからだよ」
理亞「……なにそれ」
ルビィ「ルビィの旅は……理亞ちゃんとの出会いから、始まって……理亞ちゃんを追いかけて、理亞ちゃんに負けないように、理亞ちゃんに想いを示すために……強くなって、ここまで来たんだよ」
理亞「…………」
ルビィ「ルビィ……そんなに強かった?」
理亞「……強かったわよ……バカじゃないの」
ルビィ「ふふ、そっか」
ルビィは微笑む。
ルビィ「……ねぇ、理亞ちゃん」
理亞「……なに」
ルビィ「ルビィが勝ったから……ルビィの言うこと聞いてくれる?」
理亞「…………そういう話だったから」
ルビィ「うん……ありがと。じゃあ……教えて」
ルビィは一呼吸置いて、問うてきた。
ルビィ「理亞ちゃん……本当はどうしたかった?」
理亞「……え?」
ルビィ「こういうやり方で……よかった?」
理亞「…………私は」
──私は、
87 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:57:29.13 ID:DoNfZkVt0
──なんだか……懐かしい夢を見た気がした。
理亞「──ねぇ……さま……」
目を開く──ぼんやりとする視界の先で、
ルビィ「理亞ちゃん……おはよう」
ルビィの顔があった。
理亞「…………」
私は、ルビィの膝の上で、目を覚ました。
そして──理解する。
理亞「……負けた」
辺りはバシャーモの炎熱によって、氷の結晶、一欠片すらも残さず溶かし尽くされたようだった。
理亞「……ルビィ」
ルビィ「ん?」
理亞「……あんた……なんでそんなに強くなってんのよ……」
ルビィ「……理亞ちゃんが居たからだよ」
理亞「……なにそれ」
ルビィ「ルビィの旅は……理亞ちゃんとの出会いから、始まって……理亞ちゃんを追いかけて、理亞ちゃんに負けないように、理亞ちゃんに想いを示すために……強くなって、ここまで来たんだよ」
理亞「…………」
ルビィ「ルビィ……そんなに強かった?」
理亞「……強かったわよ……バカじゃないの」
ルビィ「ふふ、そっか」
ルビィは微笑む。
ルビィ「……ねぇ、理亞ちゃん」
理亞「……なに」
ルビィ「ルビィが勝ったから……ルビィの言うこと聞いてくれる?」
理亞「…………そういう話だったから」
ルビィ「うん……ありがと。じゃあ……教えて」
ルビィは一呼吸置いて、問うてきた。
ルビィ「理亞ちゃん……本当はどうしたかった?」
理亞「……え?」
ルビィ「こういうやり方で……よかった?」
理亞「…………私は」
──私は、
88 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:58:45.33 ID:DoNfZkVt0
理亞「…………私は……もっと、皆が笑える方法で……ディアンシーに会いに来たかった」
ルビィ「……うん」
理亞「……でも、ねえさまが……私を抱えて、背負って、育ててくれた、ねえさまが……望んだから……私は……」
ルビィ「…………」
理亞「…………クリフでルビィから訊かれたこと」
ルビィ「……?」
理亞「どうしてあのとき、ルビィを入江に攫ったのか……ってこと」
ルビィ「……ぁ、うん」
理亞「あのとき……本当は、あの場で……ルビィに、ディアンシーに引き合わせて欲しかった……」
ルビィ「!」
理亞「そうしたら……こんな形にはならなかったのかな……って」
ルビィ「……」
理亞「ねぇ、ルビィ」
ルビィ「……なぁに?」
理亞「あのとき、頼んでたら……ディアンシーに会わせてくれた……?」
ルビィ「……うぅん。断ってたよ」
理亞「……そっか」
ルビィ「……うん。ルビィは──クロサワの巫女だから」
理亞「どっちにしろ……私はこうするしかなかったんだ」
ルビィ「……かもしれないね」
理亞「でも……もう、これで、全部終わり……私は負けたから……っ……」
自然と、涙が溢れてきた。
どこで間違えたのか。
いや……最初から、間違っていたのかもしれない。
ディアンシーに命を救われた、あの日、あのときから……。
そして、終わった……。
でも、ルビィは──
89 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 17:59:21.56 ID:DoNfZkVt0
ルビィ「──終わりじゃないよ」
そう、言った。
理亞「……え?」
ルビィ「これからまた……頑張って、ディアンシー様に認めてもらえるように努力すればいい」
理亞「……ルビィ」
ルビィ「ルビィも協力する。……もちろん、簡単に引き合わせてはあげられないけど……私は──」
理亞「──クロサワの巫女だから?」
ルビィ「ふふ……うん」
理亞「……そっか」
全身から力が抜ける。なんだか、疲れてしまった。
帰ったら、恐らく檻の中だと思う。
これだけのことをしたのだから。
でも……いつになるかわからないけど……全てを償って、精算したら、また一からやり直すのも──何故だか、悪くないんじゃないかと、そう思った。
理亞「いつか……」
ルビィ「うん」
理亞「いつか……クロサワの巫女に……認めて貰えるようになって……ディアンシーと会う……それで、いいのかな」
ルビィ「うん……待ってるよ。理亞ちゃん」
理亞「……ありがと。……ルビィ──」
こうして私とルビィの長い長い戦いは……ようやく決着したのだった。
90 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 18:01:04.59 ID:DoNfZkVt0
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かこんでいます
でんげんを きらないでください...
【やぶれた世界】
口================= 口
||. |⊂⊃ _回../||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||. ⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : ||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : ||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: ||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o‥| | | ||
||. / | | | ||
||./ o回/ ||
口=================口
主人公 ルビィ
手持ち バシャーモ♂ Lv.50 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
メレシー Lv.53 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
アブリボン♀ Lv.39 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
キテルグマ♀ Lv.46 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
ドンファン♂ Lv.45 特性:がんじょう 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
ドンカラス♀ Lv.56 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
バッジ 0個 図鑑 見つけた数:104匹 捕まえた数:14匹
主人公 千歌
手持ち バクフーン♂ Lv.53 特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
ルカリオ♂ Lv.58 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
フローゼル♀ Lv.47 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
バッジ 7個 図鑑 見つけた数:155匹 捕まえた数:15匹
主人公 果南
手持ち ラグラージ♂ Lv.75 特性:しめりけ 性格:やんちゃ 個性:ちからがじまん
ニョロボン♂ Lv.71 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
ギャラドス♀ Lv.74 特性:じしんかじょう 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
?????? ?? 特性:????? 性格:???? 個性:??????
キングドラ♂ Lv.71 特性:スナイパー 性格:ひかえめ 個性:ぬけめがない
ヤドラン♂ Lv.73 特性:マイペース 性格:ひかえめ 個性:ひるねをよくする
バッジ 8個 図鑑 見つけた数:281匹 捕まえた数:137匹
ルビィと 千歌と 果南は
レポートを しっかり かきのこした!
...To be continued.
91 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:23:17.61 ID:DoNfZkVt0
■Chapter075 『オトノキと音ノ木』
──コメコシティ。
花陽「フシギバナ!! “ねむりごな”」
「バナァ」
「サマヨー…」「ゴースゴス…zzz」
フシギバナの攻撃で、辺りのゴーストポケモンが眠っていく。
花陽「……これで、あらかた大人しくさせられたかな……?」
眠ったポケモンたちを一旦捕獲しようと、歩を進めた瞬間──。
「カゲボー」「ジュペッ!!!」
花陽「!?」
眠ったポケモンたちの影に隠れていた、カゲボウズとジュペッタが飛び掛ってくる。
花陽「しまっ……!? “ふみん”の子が紛れて──!?」
慌てて身を引くが、間に合わない……!!
自分の顔を庇うように腕をあげ防御の姿勢を取ったが──
「ブイブイッーーー!!!!!」「ゼリュリュリュリューーーッ!!!」
「カゲボーッ!?」「ジュペッ!!!」
近くの小川の方から飛んできた“みずでっぽう”によって、カゲボウズたちは吹き飛ばされた。
攻撃が飛んできた方向に目を配ると──
花陽「! あなたたちは……!」
「ブイブイ」「ゼリュゥ」
いつぞやのブイゼルの子供。
……いや、あのときよりも一回りも二回りも大きくなっていて、独り立ちの頃を迎えた姿をしていた。
花陽「ありがとう……お陰で助かりました……」
「ゼリュ」「ブブイ」
もう少し周りに気を配りながら、慎重にやる必要がある……そう自分に言い聞かせながら、
花陽「……他の町は大丈夫かな……」
わたしは不安を隠せずに居た。
どうか、みんな無事で居てくれればいいんだけど……。
そのとき、
92 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:24:25.97 ID:DoNfZkVt0
「──────キリュリリュリシィィッ────!!!!」
花陽「……? 何……?」
遠くから、何かが聞こえてきた。
* * *
──ダリアシティ。
「プワーー」「プワワー」「プゥワー」
街中のあちこちをフワンテが飛び回っている。
ここあ「ピクシー!」
こころ「プクリン!」
双子姉妹が息を合わせて戦う後ろから、更に
にこ「トゲキッス!」
にこ・ここあ・こころ「「「“マジカルシャイン”!!」」」
「キッスッ」「ピクシィ!!!」「プクリンッ!!!」
妖精の光で、追い払う。
ここあ「にこにーが居ると、戦いやすいー!」
こころ「やすいー!」
他の仲間の勧めで、私はダリアの防衛に参加していた。
あまりの数の多さに手間取りはしたものの……。
にこ「……だいぶ、数も減ってきたわね……」
あともう一息でどうにか事態も終息しそうだ……。
「────────キリュリリュリシィィッ────!!!!!!」
にこ「!? な、なに、この音……? ……啼き声?」
* * *
──ヒナギクシティ。
希「“サイコキネシス”!!」
「フーーーッ!!!!!」
「ゲ、ゲンガ…」「ランプゥ……」
93 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:26:01.44 ID:DoNfZkVt0
フーディンの“サイコキネシス”で襲ってくるゴーストポケモンたちを大人しくさせる。
辺りを見回すと、あちこちでトレーナーたちが応戦している。
まとまりのない町やけど、逆に言うなら先鋭的な人の多いこの町は、こういう事態には強いということなのかもしれんね……。
希「……さて、あともう一踏ん張り……? ……何?」
急に第六感が、今までになかった大きな存在の気配を告げてくる。
それから数秒後に──
「──────────キリュリリュリシィィッ──」
遠方から啼き声が響いてくる。
希「これは……」
* * *
──ローズシティ。
真姫「海未、ローズの方は粗方片付いたわ。あとは住人の避難誘導と、安全確認くらいよ」
海未『そうですか、ありがとうございます。真姫』
真姫「ついでに……クロユリの方も概ね片付いたらしいわ」
海未『はい、こちらでも報告は貰っています。ですが、真姫、くれぐれも最後まで気を抜かないで下さいね』
真姫「ええ、了解」
私は報告を済ませ、ポケギアの通話を終える。
真姫「……それはそうと──」
「────キリュリリュリシィィッ──!!!!!」
南から響いてくる、大きな啼き声。
真姫「これは……何……?」
* * *
──ホシゾラシティ。
「──キリュリリュリシィィッ──!!!!!!」
町中に響き渡る、巨大な啼き声。
それは北の音ノ木の方から響いてくる。
でも……
94 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:27:21.67 ID:DoNfZkVt0
凛「龍の咆哮……? でも、いつもと全然音が違う……これって……」
──prrrrrr!!!!!
突然鳴り出すポケギアに出る。
天文所職員『所長! 聴こえてますか!?』
凛「……うん、麓のホシゾラシティでも聴こえてるよ」
しかもその天を劈く音は、どんどんと降りてきている気がする。
天文所職員『音が大きくなるに連れて、反応も大きくなっているんですが……!!』
凛「反応……? なんの反応?」
天文所職員『巨大なドラゴンポケモンのエネルギー反応です……!!』
凛「……!? ……まさか、この音……そのポケモンの啼き声なの……?」
* * *
──セキレイシティ東、9番道路上空。
カイリューに乗ったまま、フソウ〜セキレイのルートの巡回をしていた私──ツバサは、
「────キリュリリュリシィィッ──!!!!!」
突然天から降って来た、この啼き声を聴いて、海未さんに連絡を飛ばしていた。
ツバサ「海未さん……この音、そっちでも聴こえてる?」
海未『はい。恐らく、地方中に響いています』
ツバサ「……これ、何? 音ノ木のメテノの爆発──『龍の咆哮』とは全然音が違う……聞いたこともないような音なんだけど」
海未『……私は、これと同じ音──いえ声を、昔聞いたことがあります』
ツバサ「……! 本当!?」
海未『……はい。これは、恐らく──』
海未さんが正体を言おうとした、そのときだった。
私の背後から、大きなドラゴンのようなポケモンが通り過ぎて──
ツバサ「!?」
そのまま、音ノ木の方へ向かっていく。
そのポケモンの背中には、自分と同じくらいの年頃の女性の後姿。
そして彼女を載せているオレンジの体躯のポケモンは──。
ツバサ「……リザードン!? まさか……!!」
私はカイリューに指示を出し、猛スピードで発進する。
95 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:30:05.01 ID:DoNfZkVt0
* * *
──セキレイシティ。
「──キリュリリュリシィィッ──!!!!!」
ことり「この……啼き声……!!」
この声は……聴いたことがある。
ツバサ「──ことりさん……!!」
ことり「! ツバサさん!」
音を聴いて、立ち尽くしていた私の元にツバサさんがカイリューに乗ったまま、降り立つ。
ことり「あ、あのね……!! この啼き声は──」
ツバサ「それよりも、ことりさん!! あれ……!!」
ツバサさんが音ノ木の方を指差す。
釣られるように視線を泳がせて、
ことり「え……? ……え!?」
戸惑いの声は、すぐに驚きの声に変わった。
ことり「あのリザードン……!! まさか……!!?」
ツバサ「ことりさん、行って。セキレイの街は私が引き受ける」
ことり「! い、いやでも……!!」
ツバサ「今会わなくちゃ、次いつ会えるかわからない、だから行って」
ことり「……! わかった! ありがとう、ツバサさん!!」
「チルゥッ!!!!」
わたしはチルタリスに飛び乗って、音ノ木へ向かって飛び出した。
* * *
──1番道路。
ことり『海未ちゃん!!』
海未「……ことり?」
先ほどから、ひっきりなしに掛かってくる、異常事態を共有するために鳴っているポケギアを取ると、今度は焦り気味に叫ぶことりだった。
ことり『この音……!! わたしたちが小さい頃に音ノ木に登って聴いた声と同じ啼き声だよね……!!?』
海未「ええ、間違いありません」
幼い時分に、二人の幼馴染と登った、龍の住まう樹の守り神の声。
96 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:31:49.58 ID:DoNfZkVt0
海未「龍神様──レックウザの啼き声です」
ことり『それとね!! 今、音ノ木の上空に向かって、リザードンが飛んでいったの!!』
海未「!? それは本当ですか!?」
ことり『うん……!! 今向かってる……!! 海未ちゃんも来て!!』
海未「……で、ですが」
私には全体指揮の役割がある。
ここで、私情を挟んで、飛び出すわけには──
と、思った矢先。ポケギアを隣の人物に引っ手繰られた。
絵里「ことり? 話は聞いたわ。海未もすぐに向かうから」
海未「え、絵里!?」
絵里「行きなさい、海未。残りの指揮は私が引き継ぐから」
海未「で、ですが……!!」
絵里「……こんなときしか、顔出さないんだから、あの子は」
海未「……絵里」
絵里「幼馴染なんでしょ? 心配掛けられてばっかなんだから、たまには説教の一つでもかましてやりなさい」
絵里はそう言いながら、通話を終えたポケギアを再び私に向かって投げ渡してくる。
海未「……恩に着ます。カモネギ、飛びますよ!!」
「カァモッ!!!!」
私はカモネギに掴まって、飛び出した。
* * *
1番道路から全速力で飛び立ち、音ノ木付近で垂直に上昇をしている、ことりとチルタリスを見つける。
海未「ことり!!」
ことり「! 海未ちゃん!!」
そのまま、横に並ぶ形で上昇して行く。
そして、その遥か上方に、人を乗せたオレンジ色の影──
海未「リザードン……!!」
ことり「うん!! ──穂乃果ちゃんが……穂乃果ちゃんが戻ってきてくれた……!!」
海未「全く、絵里の言う通りですね……こんなときしか、顔を見せないんですから。たまには文句の一つでも言わないと、こちらの気が済みません」
ことり「……えへへ、そうだね」
文句をつけることに対して同意している割に、ことりは嬉しそうに頷く。
海未「行きますよ、ことり!! 穂乃果のところへ!!」
ことり「うんっ!!」
97 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:32:55.71 ID:DoNfZkVt0
* * *
──音ノ木。頂上。
ここに来るのは何年振りだろう。
子供の頃に来た以来だ。
そして──
「──キリュリシィィッ!!!!!」
穂乃果「キミに逢うのも……久しぶりかな?」
幼い頃、この音ノ木の頂上から、海未ちゃんと、ことりちゃんと一緒に、更に天の高いところを泳ぐレックウザを見た。
「──キリュリリュリシィィッ──!!!!!」
レックウザは私たちに向かって、大きな啼き声を出して威嚇し──
「キリュリシィィッ!!!!!!!」
そのまま、口から空気の砲弾を吐き出してくる。
穂乃果「! リザードン!」
「ザードッ!!!!!!!!」
咄嗟にリザードンの火球で、攻撃を相殺、
穂乃果「待って! レックウザ! 私たちは戦いに来たわけじゃ……!!」
私は説得の言葉を投げかけるが、
「キリュリリュリシィィィィィッ!!!!!!!!!」
制止の声は虚しく、レックウザは再び開いた口に“りゅうのはどう”の集束を始める。
「ピッカッ!!!」
相手の闘気に反応したのか、一緒に乗っていたピカチュウがリザードンの頭部の辺りまで、その身を乗り出す。
「キリュリシィィィィッ!!!!!!!!」
「ピカッ!!!!!!!」
レックウザから放たれた“りゅうのはどう”とピカチュウの“エレキボール”が衝突して弾ける。
二つの攻撃が再び相殺し合う。レックウザは間髪居れず、身を捩って、
「キリュリシィィィィ!!!!!!!」
こちらに向かって、飛び出してくる。
穂乃果「……!」
避ける……? でも敵対行動をしたいわけじゃないし……。
私の悩みを意にも介せず、突っ込んでくるレックウザ。
98 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:33:50.80 ID:DoNfZkVt0
穂乃果「……いや、受け止めよう!! リザードン!!」
「リザァーーッ!!!!!!」
突っ込んでくるレックウザを真っ向から掴まえるため、リザードンが両腕を開いた……が、そのとき──。
「“フェザーダンス”!!」
「チルゥゥッ!!!!!!」
大量の綿羽が飛んできて、
「キリュシィィッ!!!!!!!」
レックウザの動きを鈍らせ怯ませる。
今の聞き覚えのある声は……もしかして……!
穂乃果「ことりちゃん!?」
ことり「穂乃果ちゃん……!!」
振り向いたときには、ことりちゃんはチルタリスから飛び出して、リザードンの上に居る私に抱きつこうとしているところだった。
穂乃果「わわっ!? ことりちゃん!?」
私はどうにか受け止める。
穂乃果「危ないよ、ことりちゃん!?」
ことり「穂乃果ちゃん……ずっと、会いたかったよぉ……」
ことりちゃんと再会の抱擁を交わす中、
「キリュリリュリシィィィィィ!!!!!!!!」
“フェザーダンス”で怯んでいたレックウザが、再びこちらに向かって飛び出そうとしていた。
穂乃果「わ!? やばい……!!」
「ストライク!!!」
「ストラィッ!!!!!!」
穂乃果「!」
再び、聞き覚えのある声。
突っ込んでくるレックウザの斜め下から、
海未「“いあいぎり”!!!」
「ストライクッ!!!!!!」
海未ちゃんのストライクが飛び出してきて、袈裟薙ぎに切り裂いてレックウザを迎撃する。
穂乃果「海未ちゃん!!」
海未「穂乃果!! 何ぼーっとしているんですか!!」
穂乃果「い、いやだってことりちゃんが……」
ことり「穂乃果ちゃぁん……」
海未「貴方が何年も顔を見せないからでしょう!! 穂乃果が悪いです!!」
穂乃果「ええ、理不尽……!!」
99 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:35:13.70 ID:DoNfZkVt0
海未ちゃんがカモネギに掴まったまま、私を詰問してくるが、
「キリュリリュリシィィィィ!!!!!!!!!」
再び、威嚇の声をあげる、レックウザ。
海未「……言いたいことは山ほどありますが、今は先にレックウザですね。ことり!」
ことり「あ、うん……」
ことりちゃんは名残惜しそうに私から離れると、そのままチルタリスに飛び移る。
穂乃果「レックウザ、興奮してるだけだと思うんだけど……!!」
海未「わかっています! 龍神様は地方の危機に、姿を現したんですよね!?」
ことり「レックウザさん!! 異変はわたしたちが解決します……!! だから──」
ことりちゃんが説得の言葉を投げかけるが──
「キリュリリュリシィィィィィ!!!!!!!!」
再び大きな咆哮をあげて威嚇し、
「キリュリシィィィィ!!!!!!!」
周囲に二つほど巨大な“たつまき”を発生させる。
ことり「……っ!!」
海未「……話が通じる状態ではなさそうですね」
「キリュリシィィィィ!!!!!!!」
レックウザが再び声をあげると、発生した“たつまき”はレックウザの意に従うかのように、こちらに向かって飛び掛かってくる。
海未「穂乃果っ!! 片方は任せますよ!!」
穂乃果「わかった!!」
そういった直後、海未ちゃんは目を瞑り──
海未「……そこです、ストライク。“いあいぎり”!」
「ストラィッ!!!!!」
ストライクの一薙ぎと共に、“たつまき”が一つ掻き消える。
穂乃果「よし……私たちも!! リザードン!! “かえんほうしゃ”!!」
「リザァーーーードッ!!!!!!!!」
リザードンが口からありったけの炎を放射し、その火力だけで、無理矢理“たつまき”を吹き飛ばす。
海未「……相変わらずでたらめな戦い方ですね」
穂乃果「え? 海未ちゃんの方がとんでも技だと思うんだけど……」
海未「とにかく火力で押し切る穂乃果の戦い方は合理的ではありません!」
穂乃果「そんなこと言われても……」
海未「全く……これで本当に強いんですから、困ったものです……」
困られても困るんだけど……。
100 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:36:32.65 ID:DoNfZkVt0
「キリュリリュリシィィィィ!!!!!!!」
レックウザは已然、威嚇の声をあげ続けるけど……。
穂乃果「あんまり、突っ込んでこないね……」
ことり「うん……驚かして追い払おうとしてる感じかも」
海未「……試しているんではないでしょうか」
穂乃果「試してる……?」
海未「今の私たちが……龍神様の力を借りずとも、この危機を振り払えるだけの力を持っているのかを、です」
「キリュリシィィィィ……!!!!」
海未ちゃんの言葉にレックウザが唸り声をあげる。
穂乃果「……そういうことなら、遠慮なく……!! ピカチュウ!!」
「ピカッ!!!!」
リザードンの頭の上に立つ、ピカチュウのほっぺの周りにパチパチと火花が走り、
それに呼応するように、周囲の雲が──ゴロゴロと、音を立て始める。
「ピカッ!!!!!」
ピカチュウが鳴き声と共に、周囲の雲から一気に雷撃が光る。
穂乃果「ピカチュウ!! “かみなり”」
「ピッカァーーーーッ!!!!!!!!!」
周囲一帯を巻き込む、強力な雷撃が、
「キリュリシィィ!!!!!!!」
レックウザを巻き込みながら、周囲に雷鳴と稲光を轟かせる。
「キリュリィ……!!!!!!」
雷撃に撃たれながらも、レックウザが反撃の意を示す。
周囲の空気を掌握し、そのままこちらに向かって、
「キリュリリュリシィィィィ!!!!!!!!!」
分厚い空気の壁をこちらに向かって飛ばしてくる。
──だが、
その空気の壁は私たちの前方で二つにわかれて、避けるように掻き消える。
「ティニ……!!!!!」
私のポケモンの炎熱エネルギーによって……!!
穂乃果「ビクティニ!! “かえんだん”!!」
「ティニィッ!!!!!!!」
ビクティニが作り出した巨大な火炎の弾が、レックウザに向かって飛び出す。
「キリュリリュリシィィィィ!!!!!!!!!」
101 :
◆tdNJrUZxQg
[saga]:2019/05/12(日) 22:44:29.36 ID:DoNfZkVt0
迎え撃つレックウザ、
“ハイパーボイス”の強力な音圧によって、“かえんだん”を揺らす。
その攻撃によって、“かえんだん”は徐々に小さくなり──最後は掻き消えてしまった、が。
「ティニィィィィ!!!!!!!!」
その影から、額に灼熱の炎を灯した、ビクティニが飛び出す。
穂乃果「“Vジェネレート”!!!」
「ティニィィ!!!!!!!」
最大火力まで宿った炎と共に、ビクティニがレックウザに突進攻撃をぶちかます。
「キリュリィッ!!!!!!!!!」
「ティニィッ!!!!!!!!!」
攻撃のインパクトと共に、炎熱エネルギーが解き放たれ──
周囲が閃光に包まれ、そのまま巨大な爆炎が巻き起こる。
さらに──
「ピカピカピカァーーー!!!!!!!!」
ピカチュウが全身に電撃を纏い、まるで自身が稲妻になったかのように辺りを高速で移動する。
電撃エネルギーを自身に集中させて放つ、ピカチュウの最強技──“ボルテッカー”。
「ピカァァァァーーーー!!!!!!!!」
そして、その電撃を更に集束させ、拳にのみ載せる、ピカチュウと一緒に編み出したオリジナルの必殺技──
穂乃果「ピカチュウ!! “ボルテッ拳”!!!!」
「ピッカァァァァァーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!」
「キリュリリュリシィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!」
飛び出したピカチュウの拳がレックウザに炸裂する。
インパクトと同時に、膨れ上がる雷のエネルギーが空気を轟かせ、至近距離でいくつもの雷鳴が響き渡る。
「キリュリィッ!!!!!!!!」
レックウザはその反動で、音ノ木の頂きに向かって、叩き落された。
「キリュリィ……ッ!!!!!!」
レックウザが墜落して、音ノ木の巨大な幹を揺らす。
レックウザはすぐに身を起こして、こっちを見上げていたけど……。
「キリュリィ……」
先ほどのような威圧感のあるような声とは違った啼き声をあげた後、
「──────キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」
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