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遊勝「紹介しよう、デニス。超高校級のマジシャンの夢野秘密子さんだ」
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44 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/01(水) 23:49:45.90 ID:s4M4lUIQO
デニス「ーーー参考までに聞かせて貰いたいんだけど、キミは、何故そこまで先生のデュエルを目の敵にするんだい?」
夢野「!」
デニス「いや、ボクとしても、先生のデュエルが全ての人に受けるだなんて思ってはいないよ?」
デニス「でもね、先生が開催したデュエルショーは、観客からとても喜ばれていたはずだよ」
夢野「……っ、」
デニス「キミも、先生が開催したデュエルショーを見たんだろう?」
デニス「観客が歓声を上げているところだって見たはずだ」
デニス「だったら、それで良いとは思えない?」
45 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/01(水) 23:51:56.89 ID:s4M4lUIQO
夢野「ーーー観客が喜んでいれば、それで良いのか?」
デニス「……」
夢野「デュエルはマジカルショーと同じじゃ! 一人回しでも無い限りは、必ず二人以上で行うものじゃ!」
夢野「……じゃからこそ、ウチは、どっちも笑顔になれるようなデュエルが良い」
夢野「じゃが、榊遊勝のデュエルは、デュエル相手を利用して、自分だけが輝いて笑顔になろうとするデュエルに見えるわい」
夢野「……そう、あやつのデュエルは、相手の思考を読むだけでなく、読んだ思考を相手や観客に推理として得意げに披露するものじゃ」
夢野(ウチの知り合いにも推理が得意な者はおるが、だからといってあんなデュエルはせんぞ……)
夢野「……榊遊勝のデュエル、ウチには、あやつが相手を利用して自分だけが輝いて笑顔になるためのものに見えて仕方がないんじゃ」
夢野「……はっきり言って、気に入らんわい」
46 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/01(水) 23:55:00.98 ID:s4M4lUIQO
デニス「……キミは、ずいぶんと甘いことを言うんだね」
夢野「……なんじゃと?」
デニス「デュエルは勝負事だよ? 楽しいのは、勝った方だけ」
夢野「なっーーー」
デニス「これは、元々は、ボクの友人のセリフだ」
デニス「……いや、彼の方もボクのことを友人と思っているかはわからないんだけどーーーここではひとまず置いておくね」
デニス「ともかく、その友人が言った、さっきのセリフは、この世の真理が詰まっていると思っている」
47 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/01(水) 23:56:45.19 ID:s4M4lUIQO
夢野「……真理じゃと?」
デニス「違うかい?」
デニス「先生がどんなデュエルをしようと、それが勝負事である以上は、勝者と敗者が生まれることに変わりは無いだろう?」
夢野「それはそうじゃが……」
デニス「いや、仮に勝負事で無かったとしても、同じこと」
デニス「人は物事に対し、優劣をつけたがる生き物だからね」
デニス「勝負事でないショーであっても、そこに二人の人間がいれば、どちらが優れているかを決めたがる」
夢野「!」
デニス「それは、観客はもちろん、ショーを行っている本人たちも例外じゃない」
デニス「勝ち組と負け組に線引きしようとする」
デニス「その上で、勝ち組になれてこそ、楽しいと思える」
デニス「それこそが、真理」
デニス「故に、ボクには、キミの発言は、甘い香りがしてならないよ」
48 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/01(水) 23:58:48.59 ID:s4M4lUIQO
夢野「……じゃ、じゃが、それでもーーー」
デニス「それに、キミのその甘さがそこまで必要だとも思えないね」
夢野「……な、なんじゃと!?」
デニス「先生のデュエルショーなら、負けたとしても、その人やそのファンは深く傷付いているわけじゃないからね」
デニス「事実として、先生とのデュエルでは、負けた側もそのファンも、笑顔になっているケースが多いはずだ。先生のファンや中立の観客と同様にね」
夢野「!」
デニス「キミも先生のデュエルショーを見たんだろう?」
デニス「だったら、知ってるよね? そのことも」
夢野「………」
デニス「先生が笑顔にするのは、先生のファンや中立の観客だけじゃない。倒した相手とそのファンでさえ、笑顔にしてみせる」
デニス「先生の相棒である、スカイマジシャンと共にね」
デニス「キミにとって気に入らないデュエルをしようとも、大概のケースで笑顔にしてみせる。それが先生なんだよ」
49 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 00:00:59.71 ID:Ewmwd3cpO
夢野「……ウチは、榊遊勝と出会った先週の土曜日、一度だけあやつとデュエルして負けたことがあるが、笑顔になったりはせんかったぞ」
夢野「無論、その翌日の日曜日も、お主があやつに負けたところも何回か見たが、ウチは全く笑顔になんぞなれんかったわい……」
夢野「……お主とて、あやつに負けたあと、まったく笑顔にならんかったではないか」
デニス「大概のケースで、って言ったでしょ? 先生だって全能の神さまじゃない。相手によっては、笑顔に出来ないことだってある」
デニス「キミのような、甘すぎる考え方を持つ者ならば、特にね」
夢野「っ、」
デニス「……まあ、ボクとしても、なんで先生のあのデュエルで、大概のケースで負けた側やそのファンも笑顔になるのか、計りかねているところがあるけどーーー」
デニス「ーーー先生は、デュエルがものすごく強いからね」
夢野「……?」
デニス「故に、先生は、異常なまでの発言力を持っている」
デニス「……その上で、『笑顔になって欲しい』と言えばーーー」
デニス「ーーー先生の望み通り、笑顔にならざるを得ないのかもしれないね」
50 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 00:03:38.80 ID:Ewmwd3cpO
夢野「……どういうことじゃ?」
デニス「良いかい? まず、前提条件として、デュエルの強さと発言力は比例するんだ」
夢野「んあ……確かに、デュエルが強いと就職に有利という話は良く聞くのう……」
デニス「そして、先生は、デュエルがものすごく強い。故に、先生は、異常なまでの発言力を持っている」
デニス「その上で、『笑顔になって欲しい』と、人間的な感情から見て正しいとされることを言えば、先生はそれを体現する善人となる」
デニス「先生の言葉は、人間的な感情から見て受け入れなければならない、絶対の善人の言葉となるんだ」
夢野「んあ……!?」
デニス「そうした言葉は、逆らいづらい言葉だ」
デニス「善人の言葉に逆らうのは難しい」
デニス「それに逆らえば、自分が、自分自身の心や周囲から見て、悪人であるかのように映ってしまうんだからね」
デニス「誰だって、悪人になんて、なりたくない」
デニス「故に、先生の言葉を、受け入れなければならない、空気が発生する」
デニス(……そうなれば、よほど譲れないもののある人間か、あるいは壊れてしまった人間でも無い限りは、そうした空気に従うだろう)
デニス「だからこそ、先生に負けた側やそのファンも、笑顔になっていたんじゃないかな?」
夢野「ーーーんあ!?」
デニス(……仮に、ユーリが先生と同じような言動を取っていればーーー)
デニス(ーーーもしかしたら、ユーリも、先生のようにーーーー)
51 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 00:05:57.33 ID:Ewmwd3cpO
デニス「ーーーまあ、実情はどうあれ、先生のデュエルでは負けた側やそのファンも笑顔になっていることは事実」
デニス「それを考えれば、キミのその甘さがそこまで必要だとは思えないとボクはーーー」
夢野「ふざけるでない!」
デニス「!」
夢野「……どうしてじゃ!? どうして、そんなことを涼しげに言えるのじゃ!? どうして、そんな風に甘さを切って捨てられるのじゃ!?」
夢野「確かに、もし本当にお主が言った通りならば、榊遊勝のあのデュエルでも一応は笑顔になれるのじゃろう!」
夢野「じゃが、その笑顔は、デュエルの強さ、そして人間的感情を盾にした同調圧力で! 強制されたものに過ぎないではないか!」
夢野「そんな笑顔は仮面と同じじゃ! 外側は笑顔になっても内側は断じて笑顔にならん! それでは、必ず、不満が残る!」
夢野「その不満が、何かのはずみで爆発でもすれば、笑顔は消え失せるぞ!」
52 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 00:08:40.57 ID:Ewmwd3cpO
デニス「……断っておくけど、さっきの話はあくまでボクの勝手な想像であって、実際に先生がどんな人心掌握術を用いて負けた側やそのファンを笑顔にしているかは知らないよ」
デニス「先生が人を笑顔にするメカニズム、それを解き明かすには、もっと先生を理解してみないことにはーーー」
夢野「だとしてもじゃ!」
デニス「!」
夢野「さっきの話が勘違いで、本当は真っ当な方法で笑顔にしているとしても! 『甘さなど必要ではない』と言えてしまうことに疑問は無いのか!?」
デニス「……どういうことかな?」
夢野「良いか!? 真っ当な方法にせよ同調圧力にせよ、全ての者が榊遊勝のデュエルで笑顔になれるわけではないはずじゃ!」
夢野「あやつのあのデュエルで、心の底から笑顔になれるとは限らないはずじゃ!」
デニス「まあ、それはそうだろうけどさ……」
夢野「ならば、ウチは、榊遊勝のやり方では心の底から笑顔になれん者を、笑顔に出来るようなショーが……デュエルがしたい!」
夢野「それをするために必要なものが、お主がさっき、『必要だとは思えない』と切って捨てた、甘さではないのか!?」
夢野「……少なくとも、転子たちは、ウチの友達は、ウチの甘さが必要だと、そう言ってくれたんじゃ!」
デニス「………」
夢野「ーーーもう、ええわい! 不愉快じゃ! 今日はもう帰る!」
デニス「あっ、ちょっと……」
夢野「ふん!」スタスタ
バタンッ!
デニス「……」
53 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 00:10:51.79 ID:Ewmwd3cpO
……
デニス「」ゴクゴク
デニス「……うん、落ち着きたい時は、ミルクティーが一番だ」
デニス「良かったら、夢野さんもーーーって夢野さんは、今いないんだった……」
デニス「……怒らせちゃったみたいだからね」
デニス「まさか、あんなに怒るとは、夢にも思わなかったよ」
デニス「まあ、『今日はもう帰る』と言っているところから見て、明日また来てくれるとは思うけど……」
デニス「はあ……」
54 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 00:16:44.82 ID:Ewmwd3cpO
デニス(……本当、なんで、ボク、あんなこと言っちゃったのかな?)
デニス(主義主張のぶつけ合いなんて、アークエリアプロジェクトが実行される以上は、どうせ無意味なんだ)
デニス(プロフェッサーの意思の元、全てが一つに統一される。ボクや夢野さんの、個人の意思なんて何の意味も無い)
デニス(それを考えれば、夢野さんの言葉は、適当に受け流していれば良かった)
デニス(これまで通り、嫌なことは忘れて、この夢のような世界で楽しくデュエルや大道芸をしていれば良かったんだ)
デニス(……アカデミアは実力主義。勝ち負けを気にしなくて良いデュエルなんか、まずあり得ない。デュエルディスクに自動記録される勝率が、大体のケースでそのまま待遇に反映される)
デニス(しかも、アカデミアのデュエリストは、エクシーズモンスターであるトラピーズマジシャンを召喚すると、ボクらを侮蔑の目で見てくる……ユーリを除いてね)
デニス(そんな現実とは異なる、この夢の世界で……楽しくデュエルや大道芸をしていれば良かったんだよ)
デニス(……ボクにはどうせ、そうすることしか出来ないんだから)
デニス(そんなボクが、主義主張をぶつけたところで、無意味な面倒ごとにしかならない)
デニス(なのに、どうしてボクは、夢野さんの言葉に、あんなコトダマをぶつけたりなんかーーー)
ピピピンッ……ピピピンッ……
デニス(? このデュエルディスクの着信音……ユーリから……?)ピッ
デニス(ーーー!?)
デニス(こ、これは……!?)
55 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 00:17:16.56 ID:Ewmwd3cpO
今日はここまで
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/02(木) 00:41:17.91 ID:2ejIORu7o
おつー
57 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:35:06.61 ID:DVv3+eZ6O
投下します。
58 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:36:00.96 ID:DVv3+eZ6O
ーエクシーズ次元・公園ー
夢野「……」
アカデミアA(ーーーおい、見ろよ! あの、ベンチに座ってる奴!)
アカデミアB(ああ……間違いないな)
アカデミアC(超高校級のマジシャンの夢野秘密子だ)
アカデミアA(こんな通りがかりの場所でお目にかかれるとはな。探したりとか準備する手間が省けてラッキーだぜ! さっそく誘拐してドクトルの所に連れてくぞ! 幸い他に人もいないしよ!)
アカデミアB(……いや、しかし、本当に夢野秘密子を誘拐して大丈夫なのか?)
アカデミアA(ああっ!? 何言ってんだお前!? まさか、俺たちが夢野秘密子を誘拐する理由を忘れたってんじゃないだろうな!?)
アカデミアA(ーーーいいか? ドクトルは夢野秘密子をモルモットに欲しがっていた!)
アカデミアA(ドクトルが言うには、超高校級というステータスを持てるくらいのハイスペックな脳を持ち、なおかつ未成熟な肉体を持つ娘であればあるほど、虫の寄生研究を進めるのに最適とかほざいていたがーーーそれはどうでも良い!)
アカデミアA(大切なのは、ドクトルは夢野秘密子をモルモットに欲しがっていたってことだ!)
アカデミアA(それでドクトルは、夢野秘密子を誘拐して連れて来るよう、俺たちに依頼した! 大量の報酬を約束し、次元転送装置までくれた上でな!)
アカデミアA(だからこそ、俺たちは報酬のために、夢野秘密子を誘拐することにした! そういう理由だったろーが!)
59 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:40:38.22 ID:DVv3+eZ6O
アカデミアB(……それはわかっているが、だからと言って、今それをしていいのか?)
アカデミアC(ああ、融合次元の本国が言うには、まだ超高校級に手を出して良い段階じゃないって話だ)
アカデミアB(その通りだ。なのに、ここで個人的な理由で勝手に誘拐なんてしたことがバレたら、融合次元の本国から何と言われるかーーー)
アカデミアA(はっ、一匹ハンティングしたくらいでそんな大ごとにはならねーよ! それに、夢野秘密子は、戦闘スキルを一切持ってねーって話だ! 絶好のカモだぜ!)
アカデミアC(だが……)
アカデミアA(今さら怖気付いてるんじゃねーよ、お前ら! それに、ここで誘拐しておけば、楽に大量の報酬をゲット出来るんだぜ?)
アカデミアB(まあ、確かにあの額は魅力的ではあるな……)
アカデミアC(あれだけの金があれば、三等分しても十分過ぎる釣りが出る。レアカードも買い放題……!)
アカデミアA(おうともよ! 強いレアカードさえあれば、戦争が始まった時、俺たちが生き残る確率も高くなる!)
アカデミアA(そして、俺たちの本来のデッキをまともに強化出来るようなカードは融合次元にしか無い!)
アカデミアA(だったら、ここでサクッと誘拐して、ドクトルから報酬を貰って、融合次元でレアカードを買いまくるしかねえだろ!)
60 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:43:31.81 ID:DVv3+eZ6O
アカデミアB(……それを考えるとなぁ)
アカデミアC(命あっての物種だしな……)
アカデミアB(やるしかーーー)
アカデミアC(ーーー無いか)
アカデミアA(よしっ、そうと決まれば、ハンティングのはじまりだ! まずはファンのフリして自然に路地裏まで連れて込んでーーーー)ヒソヒソ
………
61 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:47:28.02 ID:DVv3+eZ6O
……
アカデミアA「ーーーあれ? そこにおわすは、ひょっとして、超高校級のマジシャンの夢野秘密子さんじゃありませんか?」スタスタ
夢野「ウチは魔法使いじゃ……って、なんじゃ、お主ら?」
アカデミアB「ああ、僕たちは怪しいものじゃありません」
アカデミアC「ええ、純粋に、あなたのファンなんですよ」
夢野「ファン……じゃと?」
アカデミアA「こんな所でお目にかかれるなんて、光栄だなあ。これも、きっと何かの縁、良かったらお茶でもしませんか? 向こうに良い喫茶店があるんですよ」
夢野「……んあ?」キョトン
アカデミアB「もちろん、勘定は俺たちが払いますよ」
アカデミアC「行きません? 喫茶店」
夢野「……んあー、悪いが、知らない人についていくわけにはいかんのでな」
アカデミアB「ええっ、そんな行きましょうよ!」
アカデミアC「そうですよ、ファンのせっかくの気持ちを何だと思っているんですか?」
夢野「……そんなようなことを言うファンとやらに、ロクな奴はおらん」
夢野「付いて行ってやるわけにはいかんわい」
62 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:49:09.62 ID:DVv3+eZ6O
アカデミアA(……チッ)
アカデミアA(万が一ここに目撃者がいた場合を考えて、そいつが夢野秘密子を助けに来ないよう、なるべく穏便に路地裏まで連れて行きたかったがーーーこうなっては仕方ない)
アカデミアA(ここは無理やりにでもーーーー)
63 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:51:23.73 ID:DVv3+eZ6O
アカデミアA(ーーーおい! 強硬手段に移るぞ! 腹パンは俺がやる!)ヒソヒソ
アカデミアB(……りょーかい)ヒソヒソ
アカデミアC(これなら打ち合わせの必要無かったな)ヒソヒソ
アカデミアA(やかましい! とにかくやるぞ!)ヒソヒソ
夢野「……もう関わるでない。それに、ウチは、今日疲れてーーー」
アカデミアB「まあまあ! そう言わずに!」ガシッ
夢野「……んあ!? 何をする!?」
アカデミアC「疲れてるんでしょう? だったら、公園よりも喫茶店で休んだ方が良いですよ」ガシッ
アカデミアA「そこ(路地裏)を通ってすぐのところですんで!」
夢野「や、やめい! 離さんかい! お主ら!」ジタバタ
アカデミアA(よし、このまま腹パンして気絶させてから路地裏まで連れ込んで次元転送装置でーーーー)
デニス「ーーーそこまでだよ」
64 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:55:06.86 ID:DVv3+eZ6O
夢野「んあ……!? デニス!?」
アカデミアA(……なんだ、こいつ?)
アカデミアB(夢野秘密子の知り合いか?)
アカデミアC(面倒だな……)
夢野「デ、デニス……どうして、ここにーーー」
デニス「キミを探していたらーーーキミの叫び声が聞こえてね」
夢野「!」
65 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:57:39.57 ID:DVv3+eZ6O
デニス(……本当はボクのデュエルディスクには、アカデミア製のディスクを感知する特別な機能があって、この場所に三人分の反応があったからなんだけどね)
デニス(それが物の見事に、夢野さん、キミを狙っている連中だったってわけだ)
デニス(……ドクトルがユーリにとっちめられたあと、こいつらに通信して誘拐を取りやめるよう言うか、通信機能を介して次元転送装置を遠隔操作してこいつらを強制送還してくれれば、ボクもこんな綱渡りな手を取らずに済んだのにーーー)
デニス(ーーー通信傍受を恐れて、こいつらのディスクの、通信機能を封じたとか、参るよ。本当……)
デニス(ボクらのディスクの通信機能には、次元技術が組み込まれているんだから、通信の傍受なんて、まず不可能なのに……)
デニス(ドクトル、キミはどこまで用心深いんだーーーー)
66 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 20:59:50.89 ID:DVv3+eZ6O
アカデミアC「ーーー夢野秘密子さんとどういう関係かは知らないが、見ての通り、こっちは取り込み中だ。今日は出直してくれ」
デニス「……悪いことは言わない。早く夢野さんを解放することだ」
アカデミアA「……」
夢野「デニス……」
デニス「ここで、超高校級である夢野秘密子さんを無理やり連れて行くのは、不味いはずだよ?」
アカデミアB(? 何を言っている?)
アカデミアC(ハートランド警察でも呼ぶつもりか? だが、俺たちには次元転送装置がーーーー)
67 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 21:04:58.35 ID:DVv3+eZ6O
アカデミアA(ーーーくっ、邪魔が入るとはな。しかし、どうする?)
アカデミアA(このまま夢野秘密子を次元転送装置で連れて行くわけにはいかねえ。アカデミアで脳波登録をした人間以外の人間を次元転送装置で連れて行く場合、腹パンして気絶させるなどして意識を失わせる必要がある)
アカデミアA(連れて行く対象が覚醒状態にある場合、その脳波の影響で次元転送装置を誤作動させる危険性が大だからな)
アカデミアA(そうなりゃ、かなりの確率で俺たち全員が、次元の藻屑と化す)
アカデミアA(……なら、今すぐ夢野秘密子を腹パンして気絶させて次元転送装置でーーー)
アカデミアA(ーーーいや、ダメだ! こいつの目の前でそんなことをしたら、無理やりにでも俺たちから夢野秘密子を引き離そうと動く可能性が高い)
アカデミアA(そうなったら、夢野秘密子を気絶させることに成功したとしても、こいつの戦闘スキル次第では、次元転送装置を使用する際こいつと戦闘になって、次元移動に巻き込む危険がある)
アカデミアA(脳波登録していないこいつを巻き込めば次元の藻屑と化しかねない。そいつはゴメンだ)
アカデミアA(……腹立たしいが、ここは出直してーーーー)
68 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 21:06:49.18 ID:DVv3+eZ6O
アカデミアA「ーーーチッ、帰るぞ、お前ら!」
夢野「!」
アカデミアB「えっ、」
アカデミアC「おい、良いのかよ?」
アカデミアA「こうなっては仕方が無いだろ! 行くぞ!」
アカデミアB(はあー、無駄骨かー……)ササッ
アカデミアC(だが、無理して次元の藻屑になるよりマシか……)ササッ
夢野「んあ……!?」ドサッ
タッタッタッ……
69 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 21:11:36.25 ID:DVv3+eZ6O
デニス(ーーーよし、これで、あいつらは、夢野さんの元を去った)
デニス(しばらくすれば、あいつらはアカデミアから応援にやって来た連中に捕縛されて、アカデミアに強制送還され、ユーリの手でカード化されるだろう)
デニス(……ユーリはドクトルもカード化したいだろうけど、それは無理だろうなあ)
デニス(プロフェッサーが言うにはドクトルの研究は非常に有用とのことだ。おそらくは、プロフェッサーが厳重注意をするだけで処分は終わる。ユーリによるカード化が認められることは無いだろう)
デニス(……アカデミアに有用とされた者は、一度やらかしたくらいじゃ、カード化されないからね。まあ、それでも二度三度やらかしたら、ほぼ確実にカード化されるだろうけど)
デニス(……せっかく、ユーリがドクトルの挙動を怪しんで疑って、ドクトルを尋問してさっきの連中のことを聞き出して、それをボクに連絡してくれたってのに)
デニス(本当、ムカつくったらないよーーー)
夢野「んああ……」フルフル
デニス「ーーー大丈夫かい、夢野さん? 怪我はないかい?」タッタッタッ
夢野「んあ? あ、ああ……ウチは平気じゃ」
デニス「……とりあえず、先生の家屋まで送るよ。また似たような手合いがやってきたら困るからね」
夢野「んあ……」コクン
70 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 21:12:40.89 ID:DVv3+eZ6O
今はここまで。
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/02(木) 22:07:33.78 ID:2ejIORu7o
乙
72 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 22:53:14.02 ID:DVv3+eZ6O
投下します。
73 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 22:54:28.46 ID:DVv3+eZ6O
ーエクシーズ次元の家屋ー
夢野「」ゴクゴク
デニス「ミルクティーはどうだい? 夢野さん」
夢野「んあ……あたたかいわい」
デニス「落ち着いた?」
夢野「……すっかりの」
デニス「そう、それは良かったよ」
夢野「ーーーあー、その、なんじゃ……」
デニス「……」
夢野「……さっきは、助けてくれて、ありがとの、デニス」
74 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 22:55:57.59 ID:DVv3+eZ6O
デニス「……ごめんね、夢野さん」
夢野「……んあ? 何でお主が謝るのじゃ?」
デニス「だってこうなったのは、元はといえば、ボクがキミの甘さを切って捨てるようなことを言ったからだよ?」
夢野「!」
デニス「もし、ボクがキミの甘さを尊重していれば、さっきのようなことにはならなかったかもしれない」
夢野「それはーーー」
デニス「……それに、甘さを切り捨てるだなんて、よくよく考えれば、不快な発言だったと思う。キミが怒って出て行ってしまうのも無理は無い」
デニス「だから、キミの甘さを切って捨てるようなことを言って、本当に悪かったよ」
夢野「……」
75 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 22:57:55.53 ID:DVv3+eZ6O
デニス「……キミの言う通りだ。甘さとは、そう簡単に切って捨てて良いものじゃない」
夢野「!」
デニス「甘さとは、言い換えれば、理想なんだ。優しさなんだよ」
デニス「そして、理想のデュエルやショーとは、二人のうちどちらが勝っても負けても、その二人とそれぞれのファンが心の底から笑顔になれるような、優しいもののことを言う」
デニス「そうしたデュエルやショーは、きっと素晴らしい」
デニス「それを考えれば、理想と優しさ……甘さを、簡単に切り捨てて良いはずがなかった」
デニス「ごめんね、夢野さん。ボクが短慮だった」
夢野「デニス、お主……」
デニス「ーーーだけどね、これだけは理解して欲しい」
76 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:02:31.59 ID:DVv3+eZ6O
夢野「?」
デニス「夢野さん、キミの掲げる甘さは、負けた側の立たされている状況によっては、通用しないんだよ」
夢野「……どういうことじゃ?」
デニス「例えば、一度の敗北が人生を奪うような状況だったらどうかな?」
夢野「なっーーー」
デニス「それこそ、百年前に起きた希望と絶望の戦い……その中で行われたようなコロシアイゲームで負けて、江ノ島盾子によるオシオキを受けるような状況だったらどうかな?」
夢野「!?」
デニス「……あるいは、デュエルに負けたら魔法の力でカードに封印されるーーーそうでなくとも、全財産…自由や権利といったものまで失われるような状況ならばどうかな?」
デニス「そんな状況で、負けた側やそのファンは笑顔になれるかな?」
77 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:05:44.55 ID:DVv3+eZ6O
夢野「ーーーそ、そんなの極論じゃ!」
デニス「……まあ、そんな状況は、キミからしてみれば現実味は無いかもしれないね」
デニス「だけど、それなら……負けた側の心が弱かった場合はどうかな?」
夢野「!?」
デニス「負けた側が精神的に追い詰められていて心が弱り、自分のファンの存在すら満足に認識出来ない状況にある」
デニス「そう、自分にもファン……味方がいることを認識出来ない状況にある」
デニス「そうした状況で、負けた側やそのファンが笑顔になれるだろうか?」
夢野「……」
デニス「……ボクには、笑顔になれるとは、とても思えない」
デニス「負けた側の心が弱ければ、その人もそのファンも笑顔にはなれないんだ」
夢野「っ、」
78 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:13:17.57 ID:DVv3+eZ6O
デニス「夢野さん、キミは、自分や誰かがデュエル……あるいはショーで負かした心の弱い人やそのファンを、笑顔に出来る自信があるのかい?」
夢野「っ、それは……」
デニス「そう、簡単にはいかないはずだよ」
デニス「笑顔になって貰うためには、相手の気持ちを理解し、誰もが楽しめる納得のいくデュエルやショーを……あるいは慰めをしなくてはならないんだ」
デニス「それをして、はじめて負けた側やそのファンも笑顔になれる」
デニス「そう、笑顔にするためは、まずは相手の心を理解しようとしなければならないんだ」
デニス「だけど、それはとても難しい行為だ」
デニス「ボクたちは、エスパーじゃないんだから」
デニス「……夢野さん、もしかしたらキミもそれを薄々わかっているんじゃないかな?」
夢野「!?」
デニス「だからこそ、キミは、ボクが先生に負けた際、ボクに慰めの言葉をかけたりしなかったんじゃないかな?」
夢野「っ、!」
79 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:16:41.88 ID:DVv3+eZ6O
デニス「……相手の心を理解することは、とても難しい」
デニス「相手の心を理解しないままでは、その相手に対して、どうすればいいかもわからない」
デニス「その相手のためにどんな理想を実現すべきか想像することも出来ない。その相手のためにどんな風に優しくしてあげれば良いかもわからない」
デニス「どう、慰めて良いのかも、わからない」
夢野「……」
デニス「それでは、どんな理想と優しさ……甘さを掲げたところで空回りして、逆に相手の心に余計な負荷をかけてしまうだけで終わりかねない」
夢野「っ、」
デニス「そうやって、余計な負荷をかけてしまうくらいなら、最初から、理想と優しさ……甘さなんて要らない」
デニス「……甘さは、時に、心を蝕む毒となるんだ」
デニス「ボクは、そう思った」
デニス「だから、キミの掲げる甘さは、負けた側の立たされている状況次第では通用しないんだ」
デニス「そのことは、理解して欲しい」
夢野「……」
デニス「……その上で、聞かせて貰うよ、夢野さん」
デニス「この話を聞いても、甘さを抱き続けるべきだと思うかい?」
80 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:18:43.74 ID:DVv3+eZ6O
夢野「………」
夢野「………………」
夢野「………………………」
81 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:21:45.48 ID:DVv3+eZ6O
デニス「……まあ、答えられないよね。普通は」
夢野「……」
デニス「そうだよ、こんなこと、すぐに答えの出せる問題じゃあ無い」
デニス「問題と真面目に向かい合っているのならば、当然だ」
デニス「ただ、もし、少しでも甘さを抱き続けたいのならばーーー」
デニス「ーーーこれからもデュエルに励むと良い」
82 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:27:21.48 ID:DVv3+eZ6O
夢野「……?」
デニス「元々は先生が言っていたことだけどーーーデュエルとは、デュエリスト同士のコミュニケーションなんだ」
デニス「相手のデュエルのデータを取るなりして、相手の気持ちを理解しようとするからこそ、強くなれるし相手に勝つことも出来る」
デニス「故に、デュエルに強くなればなるほど、デュエルにおける相手の気持ちが理解出来るようになる」
夢野「……」
デニス「そして、これは、デュエル以外でも応用が利く」
夢野「!?」
デニス「デュエルに励むことは、それ自体が相手を理解する力を養うことに繋がるんだ」
デニス「理解する力を養った上で、相手を理解しようとすれば、その通りに相手を理解することが出来る」
デニス「その相手のために、どんな理想を想い描き、どんな風に優しくすべきかもわかる」
デニス「慰め方だってわかるようになる」
デニス「そうすれば、相手の心に余計な負荷をかけずに済むため、キミの抱く甘さを切り捨てる必要は無くなる」
夢野「……!」
デニス「その甘さのままに、お互い楽しくデュエルをして、ショーをして、相手やそのファンを笑顔に出来るはずだ」
デニス「ボクは、そういう風にも、思っているよ」
夢野「デニス……」
83 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:29:09.43 ID:DVv3+eZ6O
デニス「……だから夢野さん、これからもデュエルに励もう」
デニス「励めば、より人の心を理解出来るようになるかもしれない」
デニス「理解した上で、その人にとって必要なことを考え実行することで、お互いに楽しい気持ちになれるかもしれない」
デニス「そうすれば、相手がどんな状況に立たされていたとしても、笑顔に出来るかもしれないんだ。夢野さん」
夢野「……」
84 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:31:57.78 ID:DVv3+eZ6O
デニス(……そうだよ、夢野さんーーー)
夢野「……」
デニス(ーーーキミのような人ならば……キミのような人になれさえすれば、もしかしたら実現出来るかもしれない)
デニス(そう、超高校級の肩書きを持てるほどにまで、己の魔法(エンタメ)を磨き上げることの出来る、強い心を持つキミならーーー)
デニス(ーーーそれほどの人間ならば……それほどの人間になれさえすればーーー)
デニス(ーーーたとえ、相手がどんな人間でも、その心を理解出来るかもしれないんだ)
デニス(そうして、その人に何が必要なのか、考え抜いて実行し、お互いに楽しい気持ちにだってなれる)
デニス(その時、ようやく産まれるんだ)
デニス(魔法のように甘い、本当のーーーー)
85 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:33:14.54 ID:DVv3+eZ6O
デニス(ーーー笑顔をーーーー)
86 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:34:40.80 ID:DVv3+eZ6O
夢野「……そうじゃな、デニス。お主の言う通りじゃ」
夢野「まずはデュエルに励んでみるわい」
デニス「夢野さん……」
夢野「……甘さを抱き続けるかべきか、そうでないかーーー」
夢野「ーーー答えを出すのは、それからじゃ」
デニス「………」
夢野「……明日からは、榊遊勝とも、本格的にデュエルしてみるかのう」
デニス「!」
夢野「あやつは強い。あやつとデュエルすれば良い経験になるじゃろう。理解力も上がるはずじゃ」
夢野「それに明日は、土曜日。あやつとデュエル出来る日じゃからな」
87 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:38:56.16 ID:DVv3+eZ6O
デニス「……良いのかい? 先生はキミにとって苦手な人だったはずだよ」
夢野「確かに、苦手のままじゃ……」
デニス「……」
夢野「……じゃが、それは、今の話じゃ」
デニス「!」
夢野「お主が言ったんじゃぞ、デニス」
夢野「デュエルに励めば、相手の気持ちを理解出来るようになると」
夢野「それは、榊遊勝も例外では無いはずじゃ」
デニス「……!」
夢野「ーーーそうやってデュエルをし続けて、デュエルに強くなって理解力を養えば、あやつがなんであんなデュエルをしているか、理解出来るようになるかもしれん」
夢野「……理解さえ出来れば、あやつとの接し方も見えてくるじゃろう」
夢野「榊遊勝が苦手で無くなるかもしれん」
デニス「夢野さん……」
88 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:41:52.36 ID:DVv3+eZ6O
夢野「……まさか、中学生のお主に、人生の先輩であるウチが、デュエルだけでなく人との関わり方まで教えられるとはのう」
夢野「ウチもまだまだじゃわい」
デニス「……ああ、そういえば、超高校級って、高校生だけの肩書きだったね」
夢野「……デニス、お主まさかウチが高校生であることを忘れておったのではあるまいな?」
デニス「いやいや、忘れてなんかないよー、アハハー」ジーッ
夢野「んあ……!? よさんか! 背が高いからって、上から見下ろすでない! 」
デニス「……フフッ、じゃあ、夢野さんがボクに収縮魔法をかけてくれるかい?」
夢野「んあ!? い、いまはマナが切れておっての……」
デニス「じゃあ、それが溜まるまで、こうしているとするよ!」
夢野「んあ……!? ち、調子に乗るでないぞ、デニス! ウチはまだまだこれからなんじゃ! これから、大人のレディーになるんじゃー!!」ウガーッ
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜
〜〜
89 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:43:41.36 ID:DVv3+eZ6O
〜2年前・エクシーズ次元の家屋〜
王馬「ーーーにしし! 悪いねー! 悪の総統であるオレのために、わざわざ時間作って貰っちゃってさー! 嘘だけど!」
遊勝「……いや、構わないよ」
遊勝「それよりも、王馬くん、キミは先ほど、私に確認したいことがあると言った」
遊勝「そして、その内容は、私のデュエルショーに関することだとか」
王馬「……」
遊勝「さあ、王馬くん、何か私に確認したいことがあるのであれば、何でも聞いてみると良い」
遊勝「私はそれに答えてみせよう」
90 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:45:11.30 ID:DVv3+eZ6O
王馬「ーーーじゃあ、確認させて貰うけどさ……」
遊勝「……」
王馬「おじさんの、あのデュエルーーー」
王馬「ーーーあれ、わざとだよね?」
91 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:46:41.58 ID:DVv3+eZ6O
遊勝「? どういう意味かね?」
王馬「いや、おじさんのデュエル幾らか見たけどさ。あれはすごいよ」
王馬「相手の思考を読むだけじゃなくて、読んだ思考を推理として相手や観客に披露する」
王馬「そうやって、デュエル相手を、晒し者に、見世物しているんだ」
遊勝「……」
王馬「あんなデュエルをされたら、やられた側は恥ずかしくて仕方が無いし、そのファンも決して良い気持ちはしないだろうね」
王馬「……あーあ、せめて、おじさんがヒール役だったらなー」
王馬「それなら、やられた側やそのファンだって、デュエルや応援を通じて、自分たちの抱える不満をおじさんにぶつけて発散出来るのに」
王馬「その行為を、他の大勢の観客から応援されて、たくさんの観客を味方につけたデュエルが出来るのに」
王馬「そんな歓声の中で、打倒おじさんを掲げることが出来るのに」
92 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:48:59.72 ID:DVv3+eZ6O
王馬「だけど、おじさんは、自分が絶対の善人であるという姿勢を崩さない」
王馬「それじゃあ、不満を抱えても、おじさんにぶつけて発散出来ない」
王馬「絶対の善人であるおじさんに、不満をぶつけてしまったら、自分が悪人であるかのように映ってしまうんだからさー」
王馬「それじゃあ、おじさんとデュエルする人やそのファンは、他の観客を味方につけることが出来ないし、打倒おじさんを掲げることも出来ない」
王馬「それで負けた後は、おじさんの言葉通りに、笑顔にさせられる」
遊勝「……」
王馬「つまらなくて、笑えない」
王馬「それが、オレから見た、おじさんのデュエルだよ」
93 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:52:37.35 ID:DVv3+eZ6O
遊勝「ーーーキミは、私のデュエルで笑顔にならなかったようだね」
遊勝「笑顔にならない者がいる以上、私もまだまだ未熟だったようだ。これからも精進しなくてはーーー」
王馬「嘘つくなよ」
遊勝「……」
王馬「オレ……他人の嘘が嫌いなんだよね」
遊勝「……私の言っていることが、嘘だと?」
王馬「オレって嘘つきだからさ……わかっちゃうんだよね、他人のつく嘘が」
遊勝「ほう……?」
王馬「……おじさんがあんなデュエルをしているのは、未熟だからなんかじゃない」
王馬「さっきオレが言ったように、わざとあんなデュエルをしているんだ」
94 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:54:04.19 ID:DVv3+eZ6O
王馬「そう、榊遊勝、あんたはーーー」
遊勝「……」
王馬「ーーーこうやって今みたいに、自分に反感を向けさせたいがために、わざとあんなデュエルをしているんだ」
95 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/02(木) 23:54:39.97 ID:DVv3+eZ6O
今日はここまで。
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/03(金) 00:12:24.11 ID:qvGcPwTMo
!?
97 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:27:45.21 ID:jIICUgapO
投下します。
98 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:29:39.66 ID:jIICUgapO
遊勝「……言っていることの意味がわからないな」
王馬「……」
遊勝「なぜ、そんなことをする必要がある?」
遊勝「そんなことをしたところで、こうやって今みたいにキミのような人物に嫌われるだけだ」
遊勝「そんなことをするメリットがあるとも思えないがーーー」
王馬「あるよ、メリット」
遊勝「……」
王馬「……そう、『人類を革新させる』というーーー」
王馬「ーーーとびきりのメリットがね」
99 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:30:53.32 ID:jIICUgapO
遊勝「……はっ、?」
100 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:31:54.74 ID:jIICUgapO
遊勝「ーーー何だって?」
王馬「……」
遊勝「人類の、革新?」
王馬「……」
遊勝「王馬くん、キミは突然何を言い出すんだ?」
101 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:35:01.28 ID:jIICUgapO
王馬「……おじさんだって、本当はムカついてるんじゃないの?」
遊勝「……」
王馬「おじさんの、あんなデュエルを見て、笑顔になっている奴らがムカつく」
王馬「あんな風に、人を晒し者にして見世物にして恥をかかせるデュエルを見て、笑顔になっている観客がムカつく」
王馬「そうやって、恥をかかされた側……負けた側やそのファンの気持ちを無視して、勝ったあんたを讃える観客がムカつく」
王馬「おじさんの『笑顔になって欲しい』という言葉に屈して、負けた側やそのファンが自分の気持ちに嘘をついて、笑顔になることがムカつく」
王馬「デュエルする相手も、そのファンも、その他の観客やファンも、みんなムカつく」
王馬「そんな人類を革新させないといけないと思っている」
王馬「そうだよね? 榊遊勝」
102 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:37:28.37 ID:jIICUgapO
遊勝「……仮に、キミの言う通り、私が怒っていたとしよう」
遊勝「しかし、怒っているというだけで、人類を革新しようなどと大それたことを考えるものかね?」
王馬「……まー、確かに、怒っているだけじゃ、人類を革新しようだなんて考えないだろうね!」
王馬「どんなロマンチストでも、人類を革新するだなんてこと、未来を憂いでもしないと考えたりはしないよー!」
遊勝「……私が未来を憂いているとでも言うのかね?」
王馬「実際、そうでしょ?」
遊勝「……」
103 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:40:02.35 ID:jIICUgapO
王馬「少なくとも、オレは、このデュエル社会の未来がとってもこわいよー」
王馬「このデュエル社会では、おじさんのあんなデュエルで負けた側とそのファンを笑顔に出来る」
王馬「そんな社会がこわくてたまらないね!」
遊勝「……」
王馬「……あんな洗脳染みた現象が成立するのは、おじさんが強いデュエリストだからだ」
王馬「強いデュエリストは相応の発言力を持つ」
王馬「その発言力を持った状態で、おじさんは『笑顔になって欲しい』とか、人間的感情から見て正しいことを言っている」
王馬「故に、おじさんはそれを体現する絶対の善人となり、その言葉に逆らえない空気が生まれ、不満を抑え込んで……自分の気持ちに嘘をついて、笑顔にならざるを得ない」
王馬「デュエル社会……デュエルの強さが人の魅力とされる社会だからこそ、無理やり人を笑顔に出来てしまうんだよ」
遊勝「……」
104 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:42:27.50 ID:jIICUgapO
王馬「そんな中、もし、おじさんよりも遥かに強いデュエリストが現れたらどうなるだろうね?」
遊勝「!」
王馬「おじさんよりも遥かに強いデュエリストということは、それこそ神さまレベルの発言力を持つということになる」
王馬「それで、そいつが『楽しいデュエルをしよう』とか人間的感情から見て正しいことを言えば、そいつはそれを体現する正義の使徒になる」
王馬「そうなれば、そいつの言うことやることを誰も否定出来なくなる。そいつが、おじさんが今やってるようなデュエルをしたとしても、おじさんよりもずっと上手く不満を抑えつけられるかもしれない」
王馬「オレみたいに、反感を向けてくる奴すら現れなくなるかもしれない」
王馬「むしろ、憧れて同じようなデュエルをする奴が大量に出てくるかもしれない」
王馬「そんな感じで、誰にも否定されず肯定しかされないことで、自分が絶対正義だと錯覚し、観客ウケのためならどんな過激なパフォーマンスだって許されると考え、実行するかもしれない」
王馬「……極論、衝撃増幅装置とかで大怪我を負わせるようなデュエルをするようになるかもしれない」
王馬「そして、そのデュエルを、社会は受け入れる」
王馬「正義の使徒のやることだから問題は無いと、社会全体が受け入れてしまうんだ」
105 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:45:28.09 ID:jIICUgapO
遊勝「……そんなこと、あるわけがーーー」
王馬「ありえなくない話だと思うよ? 人は珍しい物が大好きだからね!」
王馬「事実として、おじさんのエンタメデュエル……珍しいタイプのデュエルは人々に受け入れられている」
王馬「それと同じように、衝撃増幅装置とかで大怪我を負わせるデュエルも、珍しいタイプのデュエルとして受け入れられるんじゃないかな?」
遊勝「……」
王馬「もちろん、いくら珍しくても、そんな非人道的なデュエルをすれば、嫌悪感の方が強いし、何より衝撃増幅装置は違法アイテムだ」
王馬「それらを考えれば、普通は受け入れられないだろうけどーーー」
王馬「ーーーそういうデュエルをしている奴の発言力が高く、正義の使徒として認知され、やることが全肯定される状況にあるのなら話は別だ」
王馬「そんな状況にあれば、人々の嫌悪感は麻痺して、違法アイテムを使っていることも気にならなくなるかもしれない」
王馬「ただ、珍しいタイプのデュエルをやっているという事実だけが残る」
王馬「その珍しさに人々は歓喜し、当たり前のこととして社会全体が受け入れてしまう」
王馬「ありえなくない話だと思うよ?」
遊勝「……」
106 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:47:59.99 ID:jIICUgapO
王馬「デュエルの力は本当にすごい」
王馬「デュエルが強ければ強いほど、発言力が増す」
王馬「『楽しいデュエルをしよう』とか、人間的感情から見て正しいことを言えば、それを体現する正義の使徒となり、その人物の言葉と行動に逆らえない空気が発生する」
王馬「そこで、その空気を発生させた人物がデュエルで誰かを可哀想な目にあわせても、当たり前のように受け入れられることになる」
王馬「デュエルが強く発言力が高ければ、どんな過激なパフォーマンスでも受け入れられるんだ」
王馬「例えそれが、衝撃増幅装置とかで、大怪我を負わせるデュエルであろうとも」
王馬「珍しいタイプのデュエルとして、当たり前のように受け入れられるようになる」
王馬「そうなれば、憧れて同じようなデュエルをする奴だって出てくるだろうし、それも受け入れられるかもしれない」
107 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:50:10.77 ID:jIICUgapO
王馬「……だけど、過激なパフォーマンスを誰もがやってしまえば、いずれそれが完全に当たり前の社会へと変わる」
王馬「そんな社会で生きていれば、人々はその狂気に呑まれて心の在り様だって変わる」
王馬「心の在り様が変わってしまえば、先人の築き上げた倫理や道徳とかも歪んだ形に変貌していくことになる」
王馬「変貌の仕方次第では、デュエルに負けたら処刑される殺人ショーが法律で認められるようになってしまうかもしれない」
遊勝「……」
王馬「おじさんは、そんな未来が来ることを憂いている」
王馬「だからこそ、人類の革新が必要になるんだよ」
108 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:51:57.38 ID:jIICUgapO
遊勝「……私が人類を革新させるメリット……動機についてはなんとなくわかったがーーーそれで?」
王馬「……」
遊勝「それでどうして、私のあのデュエルが、人類の革新と結びつくんだ?」
王馬「……おじさんがあんなデュエルをし続ける限り、必ずオレみたいな奴に反感を向けられることになるからだ」
王馬「反感を向けてくるそいつによって、おじさんが倒され、おじさんのデュエルは社会全体で否定されることになるからだ」
遊勝「……」
王馬「そう、おじさんがあんなデュエルをし続ける限り、おじさんのデュエルを否定しにかかる奴が絶対に現れる」
王馬「おじさんの人に恥をかかせるようなデュエルをやめさせるために、自分を鍛え上げておじさんをデュエルで打ち倒して、自分がおじさんよりも強いことを社会全体に見せつけようとするだろう」
王馬「デュエルの強い人間には発言力があるんだから」
遊勝「……」
109 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:54:37.54 ID:jIICUgapO
王馬「おじさんをデュエルで倒せば、自分の発言力は跳ね上がる」
王馬「負けたおじさんよりも、高い発言力が手に入る」
王馬「その発言力をもって、おじさんのデュエルを言葉で否定しようとするだろう」
王馬「そうなれば、人々は、より高い発言力を持った者の言葉に倣い、相手に恥をかかせるデュエル……つまりは相手を無駄に可哀想な目にあわせるデュエルが間違っていると認識するようになる」
王馬「その認識のもと、人々はおじさんのデュエルビデオなどを見て、おじさんのデュエルを反面教師にする」
王馬「相手を無駄に可哀想な目にあわせるデュエルをしないようになる」
王馬「そんなデュエルが絶対に許されることの無い、新たな社会が誕生するんだ」
遊勝「……」
王馬「そんな社会であれば、おじさんよりも遥かに強い奴が現れても、そいつは、相手を無駄に可哀想な目にあわせるデュエルを自分からやらなくなるかもしれない」
王馬「やったとしても、同じ社会に住む人々が止めてくれるようになるかもしれない」
王馬「デュエルの力によって生じる発言力に抗い、間違ったデュエルを否定してくれるかもしれない」
王馬「おじさんは、そうした人類の革新をしようとしている」
王馬「そのために、あんなデュエルをして自分に反感を向けさせて、倒されようとしている」
王馬「そうでしょ? おじさん?」
110 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:56:26.43 ID:jIICUgapO
遊勝「……キミの言うことには、疑問が3つある」
王馬「あっ、やっぱり?」
遊勝「……疑問だらけだ」
遊勝「まず一つ目の疑問だがーーーなぜ、そんな回りくどいことをする必要がある?」
遊勝「人類の革新とやらをさせたいなら、嫌われるようなデュエルをする必要は無い」
遊勝「普通に、理想的なデュエルを行い、それを手本として世界中の人々に示せば良い」
王馬「……」
遊勝「デュエルの強い人間には、発言力があるのだろう?」
遊勝「ならば、発言力がある状態で、理想的なデュエルを行い、その通りのデュエルを皆もやるように言えば良い」
遊勝「そうすれば、世界中の人々は、その理想的なデュエルに倣うはずだ」
遊勝「自らもそのデュエルと同じようなデュエルを行い、人に恥をかかせる……無駄に可哀想な目にあわせるデュエルとやらをしなくなるはずだ」
遊勝「理想的なデュエルならば大多数に受け入れられるだろうし、不満もそんなにはあるまい」
遊勝「そうやって理想的なデュエルの手本を示すやり方でも、充分に人類を革新出来るのではないかね?」
111 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 20:58:09.28 ID:jIICUgapO
王馬「……それじゃあ、ダメなんだよ」
王馬「それじゃあ、誰もが、おじさんの猿真似をするばかりになる」
王馬「人々のデュエルに、独自性が失われていってしまう」
遊勝「……」
王馬「おじさんは、そんなことを望んではいない」
王馬「人それぞれ、自分に合ったデュエルを見つけ、その通りのデュエルをして欲しい」
王馬「そう思っているから、おじさんは、『どんなデュエルをすれば良いか』じゃなくて、『どんなデュエルをしてはいけないか』を示そうとしているんだ」
王馬「だからこそ、自分の人生を賭けて、長きに渡り間違ったデュエルを人々に見せつけ、その上で自分のデュエルを否定して貰う必要があるんだ」
王馬「そうやって、理想的なデュエルを明確に定義しなければ、人々のデュエルから、独自性が失われることは無いからね」
112 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 21:00:22.34 ID:jIICUgapO
遊勝「……一つ目の疑問については解消された。答えてくれてありがとう、王馬くん」
王馬「どういたしまして! 嘘の答えだけど!」
遊勝「……ならば、二つ目の疑問についても答えて貰いたい」
王馬「うん、いいよ! これも嘘だけど!」
遊勝「ーーー仮に私が人類の革新とやらを目的にしているというのなら、なぜ早く名声を得ようとしない?」
王馬「……」
遊勝「キミの言う人類の革新をするためには、私は世界的に有名……プロデュエリストになる必要があるはずだ」
遊勝「世界的に有名な舞台で否定されなければ、世界中の人々の記憶に残らないだろうからね。それでは、人類単位での革新が出来ない」
遊勝「そして、私がものすごく強いというのなら、プロデュエリストになれない理由は無い」
遊勝「なのに、なぜプロデュエリストになっていないのかな?」
113 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 21:01:56.15 ID:jIICUgapO
王馬「あー、それは、おじさんが後ろ暗い立場の人間だからだよー」
遊勝「……どういう意味かね?」
王馬「おじさん、まともな戸籍持って無いでしょ?」
遊勝「!」
王馬「おじさんの実力なら簡単にプロ試験に合格にしてプロになれるはずだ」
王馬「なのに、おじさんはプロになっていない」
王馬「それは、おじさんがまともな戸籍を持っていないからだよ」
遊勝「……」
114 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 21:04:26.39 ID:jIICUgapO
王馬「それがどうしてかは知らないよ」
王馬「犯罪者のデュエリストが整形手術をして別人になりすましているのか、あるいはマッドな科学者によって製造されたデュエルロボだからなのか、あるいはデュエルモンスターズのカードに宿る精霊だったりするのか、あるいはもっと変わった事情を持つ何かだからなのかは、知らない」
王馬「……まあ、どんな事情にせよ、まともな戸籍を持っていない今の段階で有名になると、いろいろ身辺調査をされて、面倒なことになるかもしれない」
王馬「だから、やらない。違う?」
遊勝「……」
王馬「もっとも、これは今の段階の話だろうけどね」
王馬「Dr.フェイカー……だよね?」
王馬「おじさんの知り合いの、あの資産家の力で、どーにかこーにか、面倒なことにならない程度の戸籍を手に入れようとしているんでしょ?」
王馬「そうしてから、プロデュエリストになって、人類の革新をするつもりなんだよね?」
115 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 21:08:35.23 ID:jIICUgapO
遊勝「……三つ目の疑問に移るが、人類の革新とやらがしたいのならば、私が名声を得てすぐにでも、公の場で衝撃増幅装置を使用し、デュエル相手に大怪我を負わせれば済む話だと思うがね?」
王馬「……」
遊勝「キミの話によれば、私に敗北したデュエリストとそのファンは、私の発言力に屈し自分の気持ちに嘘をついて不満を抑え、無理やり笑顔になっているようじゃないか?」
遊勝「そんな笑顔は仮面と同じだ。何かのはずみで不満が爆発すれば、笑顔は消え失せる」
遊勝「故に、私が違法アイテムである衝撃増幅装置を用いて相手のデュエリストに大怪我を負わせれば、そのデュエリストとそのファンの不満は爆発し、笑顔は消え失せることになる」
遊勝「無論、私がもっと強ければその発言力を盾に、より上手く不満を抑え込ませ、衝撃増幅装置の使用を正当化出来るかもしれない」
遊勝「だが、私程度の強さと発言力ではそこまでのことは出来まい。問題なく不満は爆発し、笑顔は消え失せることになるだろう」
遊勝「他の大勢の者たちも、衝撃増幅装置を用いた私のデュエルに強い嫌悪感を抱き、受け入れることはあるまい」
遊勝「そうなれば、世界中の人々は、私を否定するようになり、私やそのデュエルを……無駄に可哀想な目にあわせるデュエルとやらを反面教師にしてくれるはずだ」
遊勝「だが、キミの話によれば、デュエルで私を倒しに来る者を待つことになる」
遊勝「なぜ、そんなことをする必要がーーー」
王馬「あんたが理解者を欲しているからだよ」
遊勝「!」
116 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 21:10:39.47 ID:jIICUgapO
王馬「……デュエルは、相手を理解しようとするコミュニケーションでもある」
王馬「つまり、デュエルする相手に対し、憧れみたいな感情に呑まれて盲目的になってしまえば、それはもう『デュエル』とは呼ばない」
遊勝「……!」
王馬「だからこそ、あんたは、本当の『デュエル』を……理解されることを望んでいる」
王馬「そうした目的もあって、あんたに憧れとは程遠い気持ち……反感を持ち、『デュエル』で倒しにくる者を待っている」
王馬「いや、ひょっとしたら、それが本当の目的で、人類の革新とかは後付けの目的でしか無かったりして!」
遊勝「……」
王馬「そこのところ、どうなの? 寂しがり屋のエンタメおじさん?」
117 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 21:11:37.71 ID:jIICUgapO
遊勝「…………」
118 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 21:12:53.14 ID:jIICUgapO
王馬「……おじさんの疑問には3つとも答えてあげたけど、おじさんとしては、どう思う?」
遊勝「……」
王馬「おじさんが人類の革新を大義に、わざとあんなデュエルをして、自分に反感を向けさせようとしているという話」
王馬「そのオレにとっての嘘っぱちは、おじさんにとって真実ってことで良いのかな?」
遊勝「……」
王馬「……ねえ、答えてよ?」
王馬「お・じ・さ・ん?」
119 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 21:13:23.92 ID:jIICUgapO
今はここまで。
120 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:28:32.86 ID:jIICUgapO
投下します。
121 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:29:56.88 ID:jIICUgapO
遊勝「ーーー嘘か、真実か、それを決めるのは、キミだ。私ではないよ」
王馬「……」
遊勝「それに、キミのその豊かな想像が、私にとって嘘か真実であるかなど、キミならば私の反応だけでわかるだろう?」
王馬「えー? 普通にわかんないけど? だってオレ、エスパーじゃないしー?」
遊勝「故に、キミはもう、確認を終えた。これ以上、私に確認したいことも無いだろう」
王馬「そ、そんな……! 子供の言葉を無視するだなんて……あんまりだあああああ!!」ウワアアーンッ
遊勝「そして、今度は私から確認させて貰いたい」
遊勝「キミは私をどうするつもりなのかな?」
王馬「……」
122 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:31:54.94 ID:jIICUgapO
遊勝「おそらく、キミは、先ほど述べた豊かな想像が真実であると仮定していると思う」
遊勝「そして、キミは、ひょっとしたら私のことが、とても気に入らないんじゃないかな?」
王馬「……」
遊勝「ならば、どうするというのだね?」
遊勝「悪の総統らしく、私を始末するのかな?」
遊勝「だが、こうしてキミと接触した後に、私に何かあれば、キミが疑われることになる」
遊勝「キミも気づいているとは思うが、さっきまでの会話は通信でDr.フェイカーの方まで流しているからね」
王馬「……」
遊勝「故に、Dr.フェイカーは、私とキミが接触したことを知っている。その後に、私に何かあれば、当然のごとくキミが疑われることになる」
遊勝「そう、Dr.フェイカー、戸籍の偽造さえも可能と目されるほどの資産家に、疑われることになるんだ」
遊勝「王馬くん、それでも、私を始末するつもりーーー」
王馬「バッカじゃないの、あんた?」
遊勝「……」
123 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:37:23.79 ID:jIICUgapO
王馬「……そもそも、あんたを始末するつもりなら、こんな風に接触したりはしないからねー?」
遊勝「……ほう?」
王馬「悪・即・斬! 目で見て気に入らないものは、速攻で排除!」
王馬「悪の総統らしく、裏からサクッとやっちゃえばOKってわけだ!」
王馬「それをしない時点で、あんたを始末するつもりなんて無いに決まってるじゃん! 嘘だけど!」
王馬「なのに、そんな風に身構えるなんて、おじさんも案外抜けてるんだねー!」
遊勝「……ならば、どうする?」
遊勝「私を始末しないというのならば、何をーーー」
王馬「おい、デュエルしろよ」
遊勝「!」
王馬「……デュエリストには、デュエルで引導を渡す」
王馬「それがオレの美学なんだ! 嘘だけど!」
124 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:39:13.65 ID:jIICUgapO
遊勝「……なるほど、キミは今すぐに『デュエル』して、私が再起不能になるまで、精神的に徹底的に打ちのめすつもりなんだね?」
王馬「……まあ、確かにデュエルは挑むけどさーーー」
王馬「ーーーだけど、それはまだ先の話だよ。今の段階で、そんなことするわけないじゃん」
遊勝「? 王馬くん、もしかして、キミは、今ここに自分のデッキを持って来ていないのかな?」
王馬「……それも理由の一つではあるけどさ」
王馬「そもそも、オレ、本業デュエリストじゃないし、まだ高校生にもなっていない子供なんだよ?」
王馬「それに対して、あんたはプロデュエリスト養成学校であるクローバー校の教師。しかも、デュエルの強さによる発言力で、負けた側の不満を抑えつけて笑顔に出来るくらいには、デュエルが強いおっさんだ」
王馬「そんな相手に、今の段階で、デュエルを挑むとか本気で思っているの?」
125 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:41:05.66 ID:jIICUgapO
遊勝「……キミも案外臆病なようだ。クローバー校の生徒たちは何度負けようと、私に勝つために何度もデュエルを挑み続けているというのに」
王馬「いや、オレは、当たり前の選択をしているだけだよ?」
王馬「おじさんの生徒たちはどうなのか知らないけど、オレはデュエリストであると同時に、悪の組織の総統でもあるんだよ?」
王馬「部下の気持ちを背負っている、責任ある立場なんだよ?」
王馬「……その責任ある立場の人間が、何の準備もせず、強大な相手に立ち向かうわけないじゃん」
王馬「それで敗北……いわゆる大失敗をしたら、オレは、オレに気持ちをくれた部下を侮辱することになるんだからさー」
遊勝「……」
王馬「……あんたのような存在に負けたとなれば、尚更だ」
王馬「その事実を隠し通すにしても、全ての部下に隠し通せるわけじゃない」
王馬「オレと共にデュエルを行う方の部下……オレのデッキのカードたちには、どうやったって隠し通せっこないんだから」
王馬「その上で、おじさんに今すぐ立ち向かう?」
王馬「無責任にも程があるだろ、そんなの」
126 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:43:11.49 ID:jIICUgapO
遊勝(……理屈はわかるがーーーそれでも、キミのその考え方は、いささか潔癖過ぎると私は思うがね)
127 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:46:54.00 ID:jIICUgapO
王馬「……2年だ」
遊勝「!」
王馬「あと2年でオレは、もっともっと強くなる」
王馬「その時に、おじさんにデュエルを挑むとするよ。嘘だけど!」
遊勝「……なるほど、2年か」
遊勝「王馬くん、もしかしてキミは、私が2年かけて充分な戸籍を用意し、プロデュエリストとなる準備を終えると思っているのかな?」
遊勝「そうしてプロとして有名になれた私に『デュエル』を挑み、公共の電波で世界放映される中、私のデュエルを否定しこき下ろし、間違ったデュエルとして世界に晒すつもりなのかな?」
王馬「……あははー! 何言ってんの、おじさん! そんなつまらなくて笑えないことするわけないじゃん!」
遊勝「……」
王馬「……2年後、おじさんがプロになっているかは知らないけど、オレはおじさんとつまらなくなくて笑えるデュエルをする」
王馬「そう、誰もが笑えるデュエルをする」
王馬「観客も、オレも、あんたでさえもだ」
王馬「そんなデュエルをされたが最後、おじさんは感動のあまり、もうあんなつまらなくて笑えないデュエルは出来なくなるだろうねー! 嘘だけど!」
128 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:48:51.99 ID:jIICUgapO
遊勝「……良いのかい? それでは世界中の人たちに対し、私やそのデュエルが間違ったものであると示すことが出来ない」
遊勝「人類の革新とやらが、実現出来なくなってしまうよ?」
王馬「そもそも、そんなことやっちゃダメなんだよ」
遊勝「……」
王馬「……あんたやそのデュエルが間違ったものであると世界中の人たちに向けて証明する」
王馬「それは、世界中の人たちに対し、無理やり試練を押し付けるも同然だ」
129 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:50:27.57 ID:jIICUgapO
遊勝「試練、か」
王馬「そう、試練」
王馬「あんたのやろうとしていることは、今まで自分たちに笑顔をもたらしてきたあんたやそのデュエルを、間違ったものであると認めることが出来るかどうかを試す試練でもあるんだ」
遊勝「……」
王馬「だけど、どんな試練も、無理やり押し付けられるべきものじゃない。自分から望んで取り組むべきものなんだよ」
王馬「どんな試練も、無理やり押し付けられたら、それについていけない奴が壊れることになる」
王馬「……例えば、あんたを心の底から信じているピュアな人たちがいたとして、そいつらがあんたやそのデュエルを間違ったものと認められると思う?」
遊勝「……」
王馬「認められるわけが無い」
王馬「あんたやそのデュエルが間違ったものであると世界中の人たちに示したりすれば、あんたを心の底から信じているピュアな人たちが壊れるだけだ」
王馬「そんな、つまらなくて笑えない真似、出来るわけないでしょ?」
遊勝「……」
130 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:52:26.45 ID:jIICUgapO
王馬「それに、おじさんの望み通り、人類を革新出来るとは限らないしーーー革新出来たとしても、長くは保たない」
王馬「時間が経てば経つほど、人はおじさんやそのデュエルについて、忘れるだろうしーーー」
王馬「ーーーそれで、革新出来た世代の人間がいなくなった時、つまりは百年後には完全に元通りだ」
王馬「もし、百年後も革新を維持出来たとしても、それは実体験の伴わない盲目的なものに変貌してるだろうねー」
王馬「そんな革新、いつ崩れ去っても、おかしくない」
遊勝「……」
王馬「しかも、おじさんの革新は、あくまでデュエルスタイルが間違った方向にいかないようにするものだ」
王馬「それ以外でのデュエルの悪用を防ぐことは出来ない」
王馬「例えば、おじさんよりも遥かに強いデュエリストが、デュエルの力による発言力で支持率を集めて政治家になって、無茶苦茶な法律を押し通すだとかそういう問題には対処出来ない」
遊勝「……」
王馬「おじさんのやることは、根本的な解決にはならないんだ。いや、おじさんはそれしか出来ないから、そうするしか無いんだろうけどさ」
王馬「そんな、つまらなくて笑えないことに、協力する気は無いよ」
王馬「……そんなことをするくらいなら、つまらなくないことを考えて、笑えることをした方がよっぽど楽しい」
王馬「少なくとも、オレは、そう思うよ! 嘘だけど!」
131 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:57:02.67 ID:jIICUgapO
遊勝「……なるほどね」
遊勝「まあ、人類の革新についてはさておき……王馬くん、キミとの『デュエル』は中々に楽しめそうだ」
王馬「えっ、オレ? デュエルするのは千年マフラーに宿った闇王馬だけど?」
遊勝「……騙されたと思って2年、キミを待ってみるのも悪くは無いかもしれないね」
王馬「……うんうん! それこそ、騙されることの醍醐味って奴だよー! おじさん、わかってるー!」
遊勝「ははっ、私もそう思うよ」
遊勝「2年後にまた会おう、王馬くん」
王馬「えーっ、ムリだよ! だって、全部、嘘だから!」
遊勝「……」ニコッ
〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜
〜〜
132 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 22:59:36.54 ID:jIICUgapO
ー現代・2年後のエクシーズ次元の家屋ー
遊勝(……3ヶ月だ)
遊勝(あと3ヶ月で、キミと約束した、2年目に到達するよ、王馬くん)
遊勝(私は、 “ キミには ” 逃げも隠れもしない)
遊勝(キミは、私と『デュエル』するに足る、掛け替えの無い存在なのだから)
遊勝(……あれほどまでに悪意ある想像を私にぶつけてくれたのは、キミがはじめてなんだ、王馬くん)
遊勝(もはや私の記憶でしか証明する術は無いがーーー私が前に住んでいた世界に、キミほどの人間はいなかった)
遊勝(……『デュエル』とは、心理戦だ)
遊勝(相手の思考や行動を先読み……すなわち相手を理解しようとする力が必要になる)
遊勝(それに必要なものが、想像力であり、悪意でもあるのだ)
遊勝(王馬くん、私は、キミとの『デュエル』が楽しみで仕方が無い)
遊勝(準備が出来次第いつでも来ると良い)
遊勝(私はいつだって受けて立とう)
133 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:02:28.78 ID:jIICUgapO
遊勝(しかし、試練は自ら望んで取り組むもの、か……)
遊勝(……実に、その通りだと思うよ、王馬くん)
遊勝(ただ、私が定義する『自ら望んで取り組む』とは、自分の責任で行うことを意味するのだがね)
遊勝(故に、その結果、自分が破滅しようと、その時の自分がそれまでの人間だったというだけの話なのだよ、王馬くん)
遊勝(……自分の責任で何かを行えば、それは自分のせいになる)
遊勝(自分の責任で行ったことの結果は、自分で受け止めなくてはならないからだ)
遊勝(つまり、自分の意思(責任)で誰かを信頼すれば、その誰かが間違いを犯したとしても、その結果を自分で受け止めなくてはならない)
遊勝(それこそが、『自ら望んで取り組む』ということの意味なのだ)
遊勝(ならば、その結果、自分が破滅しようと、その時の自分がそれまでの人間だったというだけの話なのだよ)
134 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:05:01.52 ID:jIICUgapO
遊勝(……例えば、王馬くんが間違いを犯し、その結果、私が『デュエル』で笑顔になることが出来なくなったというのなら構わない)
遊勝(もちろん、笑顔になることが出来なければ私は悲しいし、壊れてしまいそうな気持ちにもなるだろう)
遊勝(だが、構いはしない)
遊勝(何故ならその悲劇は、間違いを犯す人間を信頼し、間違いを犯さないよう正してあげることすら出来なかったことが原因だからだ。つまりは、当時の自分の責任でもあるのだ)
遊勝(そう、相手の本質を理解しきれず正してあげること叶わず、ただ信頼してしまった、当時の自分の責任なのだ)
遊勝(いや、むしろ自分の責任であるが故に、それだけ強く、己の中に歴史として刻み込み、教訓とすることも出来る)
遊勝(人はその教訓を胸に、これからは間違えないよう、理解力を高めようとする)
遊勝(その理解力をもって、これから自分が信じるべき人間を考え抜き、その人間たちを支え、真実(まこと)の信頼関係を築いて、笑顔になる道を目指すことも出来る)
遊勝(……振り子と同じだ。大きく振れば、それだけ大きく戻る)
遊勝(つまり、自分の意思(責任)で誰かを信頼すれば、結果的に裏切られても、それを教訓に理解力を高め、新たな信頼関係と笑顔を築きあげることも出来るということだ)
遊勝(それだけの、リターンを手に出来るかもしれない)
遊勝(故に、もし、王馬くんが間違いを犯し、その結果、私が『デュエル』で笑顔になることが出来なくなったというのなら、まったく構わない)
135 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:08:17.51 ID:jIICUgapO
遊勝(……だからこそ、零王。キミによる一方的な侵略戦争の結果、『デュエル』で笑顔になることが出来なくなるなど、あってはならなかった)
遊勝(その戦争で、『デュエル』で笑顔になることが出来なくなるのが、私だけならば構わない)
遊勝(その悲劇は、キミが戦争を引き起こすような人間であると長いこと理解しきれず、親友としてキミを正すことも出来なかった私自身の責任だからだ。戦争を止められなかった当時の自分がそれまでの人間だったということなのだ)
遊勝(……だが、王馬くんには、エクシーズ次元で産まれた人たちには、何の責任も無い)
遊勝(王馬くんを含むエクシーズ次元で産まれた全ての人たちは、零王、キミとは何の関係も無い人間だからだ)
遊勝(なのに、零王、キミによる一方的な侵略戦争によって、王馬くんが……エクシーズ次元で産まれた全ての人たちが、『デュエル』で笑顔になる未来を奪われるかもしれないだと……!)
遊勝(……ふざけているにも程がある)
遊勝(その悲劇は、エクシーズ次元の人間の責任などでは断じて無い)
遊勝(エクシーズ次元の人間は、零王、キミをまったく知らないのだ。知らない人間を理解しようとすることなど出来るはずが無い。理解しようの無い相手を理解出来かったとして、誰がそれを責められよう)
遊勝(エクシーズ次元の人間に、責任があるはずが無いのだ)
遊勝(自分の責任でも無いことを己が歴史に刻んだとして、どうやって己が教訓とすれば良い?)
遊勝(そう、自分に責任が無いことでは、人はその分だけ教訓を……リターンを得ることが出来ない。自分では無い、誰かのせいにすることしか出来ないからだ)
遊勝(そうした理由もあって、零王。キミによる一方的な侵略戦争の結果、『デュエル』による笑顔が奪われてしまうことなど、あってはならなかった)
136 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:10:50.37 ID:jIICUgapO
遊勝(だから、私は、あの日、一刻も早くキミを止めようとした)
遊勝(戦争はいつ起きるかわからない。一刻も早く止めなくてはならなかった)
遊勝(それ故に、ストロング石島とのチャンピオン決定戦の日、未完成の次元転送装置を半ば強引に使用し、融合次元まで向かうことを決意した)
遊勝(失敗すれば、次元の藻屑となるかもしれないと理解しながら)
遊勝(成功しても、融合次元の敵として処刑されるかもしれないと理解しながら)
遊勝(生命が助かったとしても、二度と元いた世界に戻れず、家族・後輩・生徒・ファン……私が大切に想う全ての人たちの信頼を裏切り、繋がりを失うことになるかもしれないと理解しながら)
遊勝(そんな恐怖と絶望に直面し、壊れそうになりながら)
遊勝(それでも尚、一刻も早くキミを止めるために、未完成の装置を半ば強引に使用したのだ)
137 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:14:49.22 ID:jIICUgapO
遊勝(……泣きたい時は笑え。縮こまってちゃ、何も変わらない。成し遂げたいことがあるなら、勇気をもってまっすぐ前に出ろ)
遊勝(そう、どんなに可能性の小さなことであっても、恐怖を乗り越え勇気をもって実行すれば、一刻も早く戦争を止められるかもしれなかった)
遊勝(そうして、戦争を回避して、平和を守れたかもしれなかったのだ)
遊勝(故に、私は、自分の気持ち……恐怖と絶望に嘘をついた)
遊勝(……上手く行かなくても構わないと、すべては自分の責任なのだから構わないと、正論をもって自分の気持ちに嘘をついたのだ)
遊勝(そうすることで、その嘘の正論はやがて真実に変わり、心の底から構わないと思えるようになった)
遊勝(私は若い時からずっと、そうやって目の前の恐怖と絶望を乗り越えて来た。ならば、同じように乗り越えられない理由は無い)
遊勝(そうして、恐怖と絶望を乗り越えた後は、真実(まこと)の勇気と希望を手にして、まっすぐ前に出た)
遊勝(自分の気持ち……恐怖と絶望に嘘をついて、真実(まこと)の勇気と希望を手にしたこそ、あの日、一刻も早くキミを止めようとすることが出来たのだ)
138 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:17:28.03 ID:jIICUgapO
遊勝(……もっとも、結果的に融合次元に行くことが叶わず、家族たちの信頼を裏切り、失うことになったのだがーーー構わない)
遊勝(己が天運を過信し、焦って早まったことをしてしまった、当時の自分の責任でもあるのだから)
遊勝(ならば、これからは、それを教訓にして生きるだけのこと)
遊勝(私の天運……身の程は理解した。もはや焦っても意味は無いだろう)
遊勝(ここで得た新しい生徒たちに、デュエルと笑顔の素晴らしさを教え続けるとするよ、零王)
139 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:19:07.51 ID:jIICUgapO
遊勝(……零王、私はキミが踏みとどまってくれることを心から願う)
遊勝(キミも私と同じ、心を持つ人間のはずだ。ならばわかるはずだ)
遊勝(キミによる一方的な侵略戦争の結果、『デュエル』による笑顔が奪われてしまう)
遊勝(王馬くんの、エクシーズ次元の人たちの、『デュエル』による笑顔が奪われてしまう)
遊勝(自分の責任でも無いのに、奪われてしまう)
遊勝(それがどれだけ理不尽なことか、わかるはずなんだ)
遊勝(だから、頼む、零王。戦争なんてしてくれるな)
遊勝(踏みとどまるべきだ)
遊勝(……心を持つ、同じ人間として、どうかこの気持ちを裏切らないでくれ、零王……!)
ガチャッ…
夢野「……おはようじゃな、榊遊勝」
140 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:20:38.23 ID:jIICUgapO
遊勝「ーーーああ、夢野さんか。おはよう」ニコッ
デニス「good morning ! 先生、ボクもいることを忘れないでくださいよ?」
遊勝「もちろんだ。おはよう、デニス」
夢野「榊遊勝、デニスから連絡を受けているとは思うが、今日からウチはーーー」
遊勝「わかっているよ。キミは私と『デュエル』がしたいのだろう?」
夢野「んあ……そうじゃな」
遊勝「構わないよ。私はキミたちが『デュエル』しようとする意思ある限り、逃げも隠れもしない」
デニス(先生と夢野さんのデュエル……ワクワクが止まらない!)
遊勝「……さあ、楽しい『デュエル』をしよう! 夢野さん!」
夢野「んあ……!」
141 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:22:06.18 ID:jIICUgapO
「「デュエル!!」」
142 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/05/03(金) 23:22:34.91 ID:jIICUgapO
今日はここまで。
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/04(土) 09:57:04.15 ID:YrGmVImNo
なんか気楽に読んでたけど凄いテーマのssだな
乙
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