【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.2

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27 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:06:32.11 ID:XP/zMJPIO




瀬川「じゃあ、結局脱出に関するものも……」

瀬川「この学園に関わるものも無かったんだ」

私の一言にデイビット君が頷き、他の皆は押し黙る

ダンスホールが二階のほとんどの面積を占めているせいで、見た目よりも実りの無い結果になったんだ

ガッカリとした雰囲気が流れ始める。陰陽寺さんに至っては既に食堂から出ていった

月神「……仕方無いわ。でも、諦める事はしない」

月神「私達は私達で過ごしていくしかないわ。今日は取り合えずここまでにしましょう」

賛成、と月神さんの提案に乗るように、各々好きに動き始める

何人かは陰陽寺さんみたいに食堂の外に出ていったけど、まだ残っている人も多い

私も暇だし、せっかくだから誰かと話してみよっか

28 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:07:45.56 ID:XP/zMJPIO





月乃「……千早希、前に座っていい?」

瀬川「えっ?あ、うん。いいよ」

動く前に月乃さんが話しかけてきた。すとんと私の前に座ると、コップを一つ差し出してくる

月乃「……ココア、飲む?朝日が作っていたから貰ってきた」

瀬川「あ、どうも……」

ココアを喉に流し込む……うん、美味しい

瀬川「そう言えばさ、月乃さんって朝日君……お兄さんの事はどう思っているの?」

月乃「恥」

即答された。実の兄妹なのにこの塩対応は清々しさすら感じられる

月乃「……兄さん、昔はあんなじゃ無かったのに」

瀬川「あ、そうなの?昔から女装していたイメージがあったんだけど……」

瀬川「そうだ。どうして朝日君が女装してるか月乃さんは知ってる?」

月乃「………………」

瀬川「………………」

月乃「……お花摘みに行ってくる」

瀬川「あっ!?ちょ、逃げる気!?」

言うが早いか。月乃さんは普段のぼんやりした態度とは裏腹に、機敏に食堂から去っていく

まあ、『実の兄が男の娘だけど質問ある?』なんて普通は言えないし、教えてくれないよね……

なら朝日君の方に……は、止めておこうかな

29 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:08:58.53 ID:XP/zMJPIO




デイビット「でハ、宜しく頼むヨ。スグル氏」

スグル「はい。わかりました」

……? デイビット君とスグル君。比較的珍しい組み合わせの二人が話している

相性は悪い訳じゃないけど、こうして向かい合って話しているのを見ると不思議な気分になる

スグル「あ、瀬川さん。どうしたんですか?」

瀬川「いや、二人が話してるのって珍しいから気になってさ」

スグル「そうですか?デイビットさんは頼りになるので、懇意にさせて貰っています」

……そうなんだ。確かに、デイビット君はこの中で一番冷静な考えの人だし、頼りになるのはわかる

でも、なんだろう。この胸のモヤモヤは……嫉妬。じゃないとは思いたい

デイビット「フム、丁度良イ。瀬川女史もご一緒に如何かネ?」

デイビット「無論。無理ニ、とは言わないガ」

瀬川「んー……わかった。いいよ」

唐突なお誘いだけど……今は暇だし、乗ってみよう

返事を聞いて満足したのか、デイビット君は深く頷き、スグル君と一緒に歩いていった……

30 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:10:30.37 ID:XP/zMJPIO

瀬川「……ここって」

私達は黙って歩く。学園内から外に出て、寄宿棟へ進んでいく

デイビット君が止まった場所。そこはもう誰も使わない……いいや、使わなくなった部屋だった

デイビット「吊井座氏の個室ダ。本来ならば天地女史の弔いも行いたい所だガ」

デイビット「余り大々的に行うト、周囲に弔いの強要をさせている様に思われる故」

瀬川「だからひっそりとやろうって事ね」

確かに皆の目の前で葬式なんてやられたら、気分を害する人が出てもおかしくない

スグル君が言葉を静かに紡ぎ始める。デイビット君は沈んでいく様に、ゆっくりとその目を閉じた

瀬川「…………」

私は目を閉じていない。スグル君は背中を向けているし、デイビット君は私が見えていない

スグル君の話す祝詞は穏やかだ。だけど、その中に二人への思いが籠められている事がよくわかる

その姿は、まるで救世主だ。迷った魂に道を標し、正しい世界へ導いていく……

そんな妄想を繰り広げていると、スグル君が言葉を止める。私は、慌てて両目を閉じて指を組んだ

31 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:11:08.10 ID:XP/zMJPIO


スグル「―――――……終わりました。目を開けていいですよ」

デイビット「感謝、感謝。よもやスグル氏がこの様な事に詳しいとはネ」

瀬川「えっ?そうなの?」

スグル「はい。本当になんとなくですけど……」

スグル「死者の弔いや普段の生活……僕は、何らかの宗教を信仰していた様な気がするんです」

宗教。色んなヤバイ事をする人達のイメージが強い私にとって、スグル君は真逆の存在だ

私と友達になったのも勧誘する為……?スグル君とはちょっとだけ距離をおいておこう

スグル「……? 瀬川さん、何か?」

瀬川「べ、別に〜?」

デイビット「ハ、ハ、ハ。宗教と一言で纏めてモ、実際には様々な宗派が存在するものダ」

デイビット「スグル氏が、真に宗教関係者だからとして怯える必要は無いだろうヨ」

瀬川「肝に命じておきま〜す……」

そんな考えを見透かされていたのか、デイビット君に釘をさされた。本当に油断も隙もない……

デイビット「……スグル氏、協力感謝すル。然シ、葬儀等本来ならしなくても良いものダ」

デイビット「ワタシモ、もう二度とワタシの力を必要としない事を祈っているヨ」

服を翻しながら、デイビット君は外に出ていく。どこか決意の様な発言を残して

……学級裁判は起きない方がいい。それは皆もそう思って当然だと思うけど、でも……

…………私は?自分の本心と向き合う勇気は、まだ私には無いみたいだ

32 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:12:07.07 ID:XP/zMJPIO




「……えっと、今日の夜はお魚がいいかな」

「味噌が余ってるし、鯖の味噌煮とか……?」

瀬川「……ん?」

少し小腹が空いたから食堂に来たら、誰かがまだ奥にいたみたい

瀬川「もしもーし、誰かいるのー?」

臓腑屋「にゃあ!?せせせ、瀬川殿ぉ!?」

瀬川「あれ?臓腑屋さんだけ?」

臓腑屋「にゃあ……そうでござる。致し方ない。実は拙者……」

瀬川「おかしいなぁ、空耳かな?ごめんね」

臓腑屋「話を聞くでござる!それは紛れもなく拙者でござるから!」

臓腑屋「拙者は、一人の時や通学の場合は普通の口調なのでござる!これはあくまで条件反射なのでござるからな!?」

瀬川「へぇー……じゃあキャラ作ってるって事?」

臓腑屋「い、意識している訳ではないでござるが、そう言われると否定できないでござる……」

がっくりと肩を落としてシュンとする

そのわざとらしい忍者キャラが作ってるのはわかってたけど、そんなにがっくりする事かな……?

因みに、余談だけど……今晩の晩御飯は私の大好きなハンバーグに決まったみたい。やったね!

……不正は無かった。いいね?

33 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:40:22.82 ID:OcgGkYvEO





『えっと、ゴメンなさい……許して……』

『ふうん……。――はそれで許されると思ってるの?そんなんじゃ甘いよ』

『だからいつまで経っても私以外に友達が出来ないんだよ?……ほら、もっと誠意を見せて』

『ご、ゴメンなさ……』

『謝る位ならもっと私の言うこと聞いてよ。ほら、頭しっかり下げて』



……暗闇の中に響く幼い二人の少女の声。頭を踏まれて呻くのは、過去の私だ

私はずっと、『友達』に囚われている。呪縛の様に縛られているのが、今の私だ

……悪いのは私だから。だから、あの子は私を虐めるんだ。あの子は悪くない。あの子は友達だから

私は独りぼっちなんかじゃない。そう自分に強く言い聞かせる。無様な姿が、解けない様に

そうだ。ずっと気にしてなかったし、特に困る事も無かったから忘れていた

あの子の、友達の名前はなんて言ったんだっけ……

34 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:41:22.49 ID:OcgGkYvEO





御影「サッカーやろうぜ!」

朝。そろそろ皆も立ち直りかけたかなという微妙な時期に、その発言は撃ち込まれた

御影「サッカーやろうぜ!」

月神「えっと、御影君。それは……」

瀬川「スグル君、ちょっと醤油取ってくれない?」

スグル「あ、はい。これですね」

駆村「この味噌汁……いい味だな。具はなんだ?」

朝日「えっとねぇ今日のお味噌汁の中はぁ、玉ねぎと油揚げと、後は……たあっぷりの愛情だよぉ♪」

臓腑屋「最後のは必要でござったか……?」

御影「聞けよ!無視するなよ!」

飛田「しかし毎日朝は和食ではつまらんッ!食卓の色味が薄すぎるッ!」

デイビット「フム、偶には欧州風の朝食でも如何かネ。と提案してみよウ」

月乃「……本格的なブレックファスト。興味が無い事もない」

御影「ちょっとー!ねえ!ボクの声が聞こえてないの!?おーい!!」

古河「じゃかあしいわボケカス!オマエのどうでもいい話なんて聞きたかないわ!」ドスッ

御影「そんな〜〜〜!!……あ痛ぁっ!?」

うろちょろと目の前を右往左往する御影君。ウザイを通り越して鬱陶しい

我慢の限界が来たのか、古河さんからの強烈な蹴りが御影君に炸裂する

古河さんのヤクザキックをモロに受けた御影君は、よろよろと呻き、バタリと床に手をついた

35 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:42:25.84 ID:OcgGkYvEO


御影「うぅ……何でさ、何で蹴るのさ……」

古河「さっきからチョロチョロウザイねん!なんでいきなりサッカーなん!?」

御影「……だって、だってさ。ボク達はずっとここに閉じ込められて、満足に動けないじゃないか」

臓腑屋「そうでござるな……幾ら広いとはいえ、根本的には閉鎖空間でござる」

朝日「ずうっと壁に囲まれてるとぉ……苦しくなっちゃうよねぇ」

御影「それに、皆最近怖いよ!なんだか無理して笑顔作ってるみたいでさ……」

月神「それは……」

デイビット「否定は出来ないナ」

御影「だから、皆で楽しく運動すればきっと気分も晴れるって思ってたのに……」

竹田「なんでえ。坊主にしちゃまともな意見じゃあねえの」

古河「せやったんか……スマン御影。ウチが……」

御影「そうだよ……ボクはちゃんと皆の事を考えているんだからね!」





御影「決して、女子達の体操服が見たいワケじゃないんだからね!」

古河「いや絶対にそれが目的やろッ!」スパーン

御影「いってええええええ!?!?」

最後の最後でボロが出た……真剣に聞いていた皆も呆れ顔だ

二度目の制裁を受けて、御影君のライフはもうゼロだよ……合掌

36 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:43:19.35 ID:OcgGkYvEO

月乃「……珍しく、真面目な事を言うと思ったら」

スグル「やっぱり、下らない考えでしたね……」

御影「ちょっと!?スグル君はボクを何だと……ぐふぅ!?」ドスッ

古河「ちっと黙ってろやボケカス。オマエはもう一生口開くなや」

臓腑屋「厳しすぎるのではござらんか!?もう少し位は温情を……」

古河「なら臓腑屋は明日から体操服で過ごそか?」

臓腑屋「御影殿は調子に乗りすぎでござる!今回ばかりは厳しい処遇を求めるのでござる!」

瀬川「汚い……さすが忍者汚い」

飛田「まぁまぁ落ち着きたまえ!良いではないか、体操着!オレは大歓迎するぞ?」

古河「ウチらが嫌なんや!何で好き好んで体操服なんざ着なアカンねん!」

デイビット「ワタシは構わんガ、月神女史はどうお考えかネ?」

月神「私?そうね……」

月神「私は、御影君に賛成かしら」

古河「せやせや!こんなん反対に……なぁ!?」

37 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:44:57.60 ID:OcgGkYvEO

瀬川「……もしかして、体操服着たかったり?」

月神「そうじゃないわ。皆で集まって運動すれば、きっと気分も晴れるはずよ」

月神「普段より運動不足になっている部分も否めないし……いいアイデアだと思うわ」

御影「でしょ!?」

コスプレ願望でもあるのかなって思ったら、割りと納得できるアイデアだった

うんうんと御影君も便乗してるけど、さっきのは絶対に出任せだよね?

駆村「でも、何でサッカーなんだ?」

御影「ボクが出来るからね!」

瀬川「あ、基準はそこなんだね……」

月乃「……私は、バスケットボールやバレーボールの方がいい」

御影「はぁ〜?そんな背の高い奴が有利になる競技だとボクが活躍できないじゃんか!」

古河「チビやもんな!」

御影「言っておくけど、皆がデカ過ぎるだけでボクの身長は平均だからね!?」

古河「でもこん中ならチビやろ?」

御影「そうだけど!そうだけどさ!?」

デイビット「ならバ、他にスポーツの提案のある者はいないのかネ」

38 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:45:34.90 ID:OcgGkYvEO

朝日「はぁい。ドッジボールなんてどうかなぁ?」

朝日「ルールも簡単だしぃ、運動の苦手な人も一緒に楽しめると思うんだけどぉ……」

デイビット「ドッジボール……フム、悪くないアイデアだとワタシは思うガ」

飛田「いいじゃあないか!外野に行けば無様に動き回る事もないだろう?」

スグル「そうですね。全員に活躍の場があり得るのはいいと思います」

月乃「……認めたくないけど、悪くない」

臓腑屋「頑なに認めてあげないのでござるな……」

月神「私も、朝日君の提案はいいと思うわ。他の皆はどうかしら?」

古河「まあ……ええんとちゃう?どうせやるならおもろい方がええもんな!」

御影「やったぜ!それじゃあ早速着替えてきて!」

竹田「あ?今からなのか?坊主はともかく嬢ちゃん達にも準備が必要だろうよ」

月神「一度試しに着てみないと困るわね。いざ着てみたら不都合があると困るもの」

臓腑屋「であれば、明日の昼はどうでござろうか。食前の運動は健康に良いでござる!」

御影「ならそうしようよ!ボクはいいと思うな!」

駆村「ったく……調子のいいやつめ」



こうして、とんとん拍子で明日の昼に急遽ドッジボール大会を行う事になるのであった

……そう言えば、何だかいつもより騒がしくない気がしたけれど……気のせいだよね?

39 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:46:20.04 ID:OcgGkYvEO






照星「…………」

陰陽寺「おい。何処にいく」

照星「え?あ、その……ちょっとしたウォーミングアップっすよー!」

照星「皆で運動するなんて楽しみっす!自分も負けてらんないっすからね!」

陰陽寺「そうか。好きにしろ」

照星「……止めないんすね、陰陽寺先輩は」

陰陽寺「知らない、興味もない。そもそも、お前に聞く気もないだろうが」

照星「……そうっすね。それじゃ、また」





月神「……あら?照星さんは?」

デイビット「さっきまでそこにいたガ?」

月神「そう、ありがとう。…………」

40 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:46:47.79 ID:OcgGkYvEO
本日ここまで
41 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:04:08.23 ID:q5NqIFBWO





古河「ったく。月神は御影に甘いんと違うか?」

月神「そうかしら……。でも、皆の親交を深める事にはうってつけだと思うわ」

月乃「……皆でワイワイするのは楽しい。わかる」

瀬川「いや、わかるじゃなくてさ?ちょーっと聞きたい事があるんだけど」

古河「ん?どうかしたん?」

瀬川「えーっと、何で皆は私の部屋にたむろしているのかなって」

食後、古河さんに部屋で待っていろと指示されてからはや数分。気がつけば照星さんと陰陽寺さん以外の女子がここに集っていた

勿論、別に来て困る理由はあんまり無いけど…私はこんな事になるなんて、聞いてない!

古河「アハハ!ええやんええやんそんくらい!」

瀬川「嫌だよ!良くないよ!人権とプライバシーの侵害だよ!?」

臓腑屋「瀬川殿、お気を確かに!」

月乃「……落ち着いて。マシュマロ食べる?」

瀬川「あ、うん……。って勝手にお菓子を持ち込まないでよ!?」

古河「細かいなぁ。疲れるで?」

瀬川「もう現在進行系で疲れてるよ……」

ケラケラと笑う古河さんに殺意を覚えながら腰をかける。やけにずっしりとした感覚が、全身にのし掛かってきた

42 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:05:04.74 ID:q5NqIFBWO

瀬川「……で、何で来たの…………?」

臓腑屋「にゃあ。明日にドッジボール大会をやるのは瀬川殿も知っているでござるな」

月神「激しく動くだろうから普段着ではやれないのだけど……」

月乃「……体操服がどんなものかも知らない。一度誰かが着てみてから私達も着る」

瀬川「だから、試しに私に着せてみようって?」

古河「せやな。理解が早くて助かるわ!」

瀬川「……なんで私?」

古河「一番着慣れてそうやからな。コスプレイヤーなんていかがわしい服着てナンボやろ?」

いったい古河さんはコスプレイヤーを何だと思っているんだろう。酷い偏見だ

そもそも、いかがわしい服なんて着た覚えが……

瀬川「…………あー、うん。ワカリマシタ」

古河「せやろ?あんなキラキラフリフリしたん着とるんやし、ワケないやろ!」

脳内に浮かび上がるキラキラフリフリとした衣装。本当になんでああなったのか、私にもわかんない

瀬川「別にいかがわしくないよ……元ネタは」

月神「私も着るから……ね?瀬川さん」

瀬川「はーい。わかりましたよーっと……」

肩にぽんと掛けられた手が、ずっしりとした重みになって身体にのし掛かる

もう既に無駄な抵抗は出来そうにない。観念して体操服を手にとって、浴場へと歩いていった

43 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:05:55.21 ID:q5NqIFBWO





瀬川『うぅ……これなんか……』

月神『そ、そうね……これは、ちょっと……』

古河「お?終わったんか?はよ出てこんかーい!」

臓腑屋「瀬川殿ー月神殿ー、人生には諦めも肝心なのでござるよー」

月乃「……大丈夫。笑い者にはしないから」

瀬川『その微妙な優しさが怖いんだってー……!』

外からはお気楽そうな三人の声が。他人事だと思って調子のいい……!

月神『瀬川さん、もう……』

瀬川『わかったよ……!ええい!』

ガチャッ

瀬川「はい!着てきました!どう!?」

月神「へ……変じゃ、ないかしら」

臓腑屋「お、おおう……これはなんと言えばよいのでござろうか……」

瀬川「素直な感想をお願いしまーす……」

古河「感想も何も際ど過ぎやろ!?脚とかヘソとか丸見えやんけ!!」

月乃「……いかがわしいお店みたいな雰囲気」

臓腑屋「これは流石に男子の皆には見せられないでござるな……先に確認しておいて正解でござる」

月神「そ、そうね……私もこれはちょっと……」

頬を赤く染め、もじもじと恥じらう月神さん。胸の部分に書かれた名前が、動きに合わせて控えめに歪んでいく

これ、プレイはプレイでも別の意味じゃ……こんなモノを女子に配布するモノクマは、ちょっとマトモな頭をしていないと思う

……コロシアイをさせてあいて、何を言っているんだって話だけどね

44 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:07:34.82 ID:q5NqIFBWO

瀬川「それじゃ、もう着替えてくるね……」

月乃「……待った。千早希の胸の名前、どうして塗り潰してあるの?」

瀬川「えっ……と、何だか本当にアレっぽくなるから……この話止めよ?」

月乃「……そう?なら聞かない事にする」

臓腑屋「瀬川殿が着ると、本当にコスプレ用に見えてくるのが不思議でござるな……」

瀬川「と言うかそうだからね……皆、これ着る?」

古河「着るワケあらへんやろ。ジャージで充分や」

月神「これは流石にダメね……」

結局、私と月神さんだけが恥ずかしい目にあっただけだった。ちぇっ

月乃「……夕と魔矢にも伝えておいて。明日は体操服じゃなくてジャージを着てきて」

臓腑屋「では、その様に。尤も、照星殿はともかく陰陽寺殿は来ないと思うでござるが……」

瀬川「そう言えば照星さんって今日来なかったね。こういうの、呼んでなくても来そうだけど」

月神「それが……今日は身体を動かしたいからって断られたの」

古河「アイツは少しくらい動いてた方がええわ。ちっとは大人しくなるやろ!」

瀬川「まあ、それもそうだよね。私からも少し言ってしておいたし」

……昨日、私は照星さんを元気つけたんだし、照星さんは大丈夫なはずだ

彼女に向けた言葉。思い返すと恥ずかしいけど、私なりにいい話を言えたはずだ

だから……きっと、もう立ち直ってるはずだから

45 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:09:13.11 ID:q5NqIFBWO

月神「ふふっ。瀬川さんは優しいのね」

瀬川「……そんな事無いよ。普通だよ」

月神「普通じゃないわ。誰かの事を気にかけて行動出来る人は、案外少ないもの」

月神「貴女の優しさは、皆の事が大好きだから誰かの為に動く事が出来るのだから……」


……痛い、痛い、イタい。月神さんの暖かくて綺麗な言葉が、身体と心を抉っていく


古河「ほぇー、月神は瀬川を評価しとるんやな。ウチは自分勝手な奴やと思っとったわ」

臓腑屋「本人の目の前でござるよ!?いや陰口よりはマシかもしれないでござるが……」

瀬川「別にいいよ……自覚はあるからさ」

月神「瀬川さんはそんなに悪い人じゃないわ。皆の事を真剣に考えられる、優しい人よ」


……違う。私は、そんなに良い人間じゃないんだよ

照星さんを励ませば私に感謝してくれるから。皆が私を頼ってくれるようになってくれると思ったから

前に陰陽寺さんが私を偽善者って言っていたけど、私はそれに反論出来なかった

他でもない私が、そう思っていたんだから



瀬川「と、とにかくもういいでしょ!?」

月乃「……まだお菓子が残っている。待っていて」

もぐもぐとお菓子を頬張りながら答えられる。その姿からは私の苦悩を理解出来そうな素振りも無い

全てのお菓子を皆で食べ終えた後、誰からともなく解散していった

46 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:10:42.61 ID:q5NqIFBWO




瀬川「はぁ、お腹減った……」

あの後、ほとんどのお菓子は月乃さんのお腹の中に入っていった

私が口をつけたのはほんの数個だけ。それだけだと小腹満たしにもなりはしない

照星「……あっ。先、輩」

瀬川「どうも。今は休憩中かな?」

食堂でお昼を取ろうとしたら、ぼんやりと座っていた照星さんと目があう

額に汗を垂らしながら水を眺めていた照星さん。私を見て少し驚いた様な表情を見せた

照星「そうっすね、絶賛お休み中っす!先輩もお隣どうっすか〜?」

ぺしぺしと隣の席を叩いて座ったらと聞いてくる。この調子ならもう大丈夫だよね

瀬川「うん、ありがたく座らせて貰おうかな。何かあるか見てくるね」

照星「あざーっす!それじゃあゆっくり待ってるっすね」

47 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:11:49.46 ID:q5NqIFBWO

瀬川「……無い」

迂闊だった……普段料理を作ってくれる臓腑屋さんが、何か作っているでしょと思っていた

よく考えたら、その臓腑屋さんは私の部屋でお菓子を食べていたんだ。当然料理なんて作ってない……

かといってこのまま引き下がるのは私の面子に関わるし……よし!手早く作っちゃおう!

瀬川「何がいいかな……卵焼きとか?」

卵を溶いて丸めればいいんでしょ?それ位誰だって出来る。私にだって出来るはずだよ

瀬川「どれだけ使えばいいんだろ……?取り合えず十個位割ればいっか」

それだけ割るとなるとお皿じゃダメだよね。もっと大きなお皿……ラーメン丼を使えばいいかな?

瀬川「んしょっと。でもこれフライパンで引っくり返せる?無理でしょ……」

目の前のタプタプになった卵を溶いたの。料理した事ないけど、これはちょっと無理ってわかる……

瀬川「もっとおっきなフライパン使わないとダメっぽいなぁ……あ!あれ使お!」

壁にかかっていた大きなフライパン。これならなんとかなるかな……

瀬川「よし!やるぞ!」

気合も充分あるし、これは成功フラグだよね!まずは火をつけて……

瀬川「……あれ?つかない?ガスの元栓どこ?」

48 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:13:46.59 ID:q5NqIFBWO


スグル「……ふぁ、もうお昼ですね」

御影「う〜漫画一気読みしたから目が疲れた……」

御影「……あれ?なんか食堂が騒がしくない?」

スグル「そうですね。何が……」





瀬川「う゛わぁぁぁあ!う゛わぁぁぁぁん!!」

月神「な、泣かないで、瀬川さん!大丈夫よ!」

臓腑屋「にゃああ!?これ卵でござるか!?何で床に落ちているのでござるか!?」

瀬川「卵を引っくり返せそうとして……でも落としちゃって……」

駆村「中華鍋で卵焼きが出来るわけないだろ!」

朝日「えっとぉ、ところで調味料とか入れたぁ?」

瀬川「いるの……?」

駆村「いるに決まっているだろ!?」

瀬川「わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

月神「駆村君……!」

駆村「わ、悪い……」

竹田「おうおう。地獄絵図だなこりゃあ……」

デイビット「皿やフォークが散乱しているナ。どれだけの事をすればこうなるやラ」





御影「………………」

スグル「………………」

照星「……先輩、スグルん。何してるんすか」

御影「あ、照星さん。ちょっと運動したい気分だからボク達走ってくるね」

スグル「ごめんなさい……」

照星「……自分、なんかよくわかんねーっす」

49 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/14(日) 22:15:04.69 ID:q5NqIFBWO
本日ここまで
50 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:21:00.96 ID:JP0g5fzsO




飛田「……何かね?このエイリアンの卵は?」

瀬川「私の作ったのでーす……ごめんなさーい……」

飛田「ハハハハハ!中々愛嬌のあるフォルムじゃないか。そう思うだろう?」

古河「コイツホンマ首へし折れんかな」

臓腑屋「古河殿は容赦無いでござるな……」

飛田「ところで、このオブジェは何故食堂に置いてあるのかな?」

駆村「言っておくが卵焼きだからな。それ」

朝日「味の全く無い、ただ焼いただけのパサパサな卵の塊だけどねぇ……あぅ」

月乃「……次に余計な事を言ったら二度と味を感じられなくなる位辛い物を食べさせる」

瀬川「いいんだよー……事実だしー……」

和やかな夕食の中、阿鼻叫喚を生み出しているのは私の力作こと卵焼き

努力の甲斐も虚しく、ボロカスに叩かれた私の卵焼き……もといエイリアンの卵

もしゃもしゃと月乃さんが処理する姿を見ると申し訳無い気分になる。けど私は食べたくない

月神「そ、それじゃあ明日はドッジボール大会だし早めに終わらせましょう?」

御影「そうだね!それじゃあいただきまー……」


…………ザザッ



51 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:23:50.75 ID:JP0g5fzsO



〜〜〜♪



ハルカ『良い子の皆ー!ココロオドルTVの時間だよー!』

ハルカ『皆、久しぶり!元気にしていたかな?』

ヨウ『俺達は人知れずネタ切れとの戦いに明け暮れていたぞ。連休?そんなもんあるか!』

ハルカ『そんな私達がどうしてTVに出ているのかは聞かないでね。大人の事情ってやつだから』

ヨウ『クソッタレ。アニメーターは賃金が安いと聞くが、それに動かされる俺達は更に薄給だ』

ヨウ『俺達の一月の給料は、丁度牛丼並盛一杯分位だ。ここテストに出るぞ』

ハルカ『聞きたくなかったそんな話……』

ハルカ『まあそんな話はおいておいて、皆、明日はドッジボール大会なんだってね!』

ヨウ『小学校の頃よくやったな。顔に延々と当てられ続けてサンドバッグになった奴もいたアレだ』

ハルカ『はい顔面セーフ!これは負けてはいられないと、私達も新たなミッションを作ってきたよ!』

ヨウ『ミッションといっても、今回はアンケート形式だ。各々の電子生徒手帳に送っておいたぞ』

ハルカ『これで皆の仲も深まる事間違いなし!』

ハルカ『それじゃあ皆で仲良くね!今回もいつもの合言葉で終わらせるよ!』



ハルカ『鮮やかな!』

『遥かな明日を!』『見届けよう!』

ハルカ『バイバーイ!もひとつバイバーイ!』


……………………

…………

……



52 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:24:58.48 ID:JP0g5fzsO






古河「……な、なんやこれ!?」

最初に声を挙げたのは古河さんだった。持った生徒手帳から目を離さず、大きく目を見開いている

照星「これ、って……!」

駆村「なんだこれは……!?こんな事を答えろって言うのか!?」

月乃「……悪趣味な」

御影「こんなの答えられないって!絶対!」

口々に飛び交うのは文句と悪態。言葉は違えど、内容は概ね似たようなもので

デイビット「ほウ。これハ……」

陰陽寺「騒がしいと思って来てみたが、成る程な。そういう事か」

ふらりと表れた陰陽寺さんが毒づく。でもその言葉を咎める人は誰もいない

何人かはアンケートの狙い。アニメの作成者であるモノクマの意図に気づいたみたい

それもそうだ。だってアンケートにはたった一行。こう書かれている


53 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:26:01.81 ID:JP0g5fzsO





『貴方の嫌いな人を教えてください』





54 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:27:17.86 ID:JP0g5fzsO

モノクマ「わんばんこ〜。アンケート答えてる?」

月神「モノクマ!これはどういうつもりなの!?」

モノクマ「どう言う津守……?津守って誰の事?」

臓腑屋「知らないでござるよ!?」

古河「こんなんがアンケートやと!?ふざけんのも大概にせえや!」

竹田「なんだこの内容は?こんなん誰が素直に答えると思うよ、なぁ?」

スグル「真面目に答える必要性を感じません。誰か適当な人に票を集中させれば問題は無いはずです」

月神「そうね……皆、私に投票して。それで平和に解決するはずよ」

モノクマ「……本当に?本当に解決するのかな?」

瀬川「な、なんで?別に本人がいいって言うなら大丈夫なんじゃないの?」

モノクマ「当の月神さんは誰に投票するの?他の人がちゃんと月神さんに投票するって断言出来る?」

瀬川「それは……」

モノクマに問われて言葉に詰まる。全員がちゃんと投票するとは限らないんだ

それに、月神さん本人は誰に投票するのか……彼女に嫌われている。影でどんな風に思われているのか

他人の本音なんて絶対にわかりっこない。例えば、誰かが、誰かを憎んでいたとしても……

モノクマ「選挙というのは公正でなくてはならないのです。オマエラ、清き一票でお願いします!」

モノクマの発破で投票が行われていく。私も、名簿にある名前一覧から一人を選んで、タップした

55 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:28:22.63 ID:JP0g5fzsO

モノクマ「うぷぷ。これで全員の投票が終わったみたいだね、ありがとうございました!」

……投票は案外速かった。それは、月神さんの言う通りに、素直に彼女に投票したからなのか

モノクマ「いやぁ、これはこれは驚いたよ。なんせ票がビックリする程バラけてたからね!」

御影「ちょっと!?何でわざわざ票がバラけけた事を言うんだよ!?」

モノクマ「別にいいじゃん。単純に驚いただけだしさ。それとも言ったら困る事あるの?」

飛田「貴様。もしかしてとは思うが、梓の言う事を無視した訳ではあるまいな?」

御影「まままっさかぁ!そんな訳ないじゃん!?」

……明らかに怪しい。御影君は嘘がつけないんなら素直に黙っていればいいのにね

現に……皆の口数は、わざとらしい程に減っているんだもん

モノクマ「えー、アンケートにお答えいただき誠にありがとうございます。この結果は真摯に受けとめ今後に役立てていきたいと思います」

古河「嘘つけやぁ!!!」

モノクマ「そして、今回アンケートにご協力していただいたオマエラに、ささやかながらオマケを用意しておきました!」

スグル「理屈がよくわかりませんが……」

竹田「ああ。保険会社のアンケートに答えてやったら飴ちゃんくれるみたいなモンだろ?」

スグル「そ、そうなんですか。知らなかった……」

合点がいった様子のスグル君。でも少し世間知らずだと思うんだ

周りも微妙に呆れているしそれを見ているモノクマもクツクツと笑っているし……

……笑っている?


56 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:29:53.18 ID:JP0g5fzsO

モノクマ「それではオマエラ、電子生徒手帳をご確認くださーい!」

瀬川「えっ? ……あっ!」

モノクマが言うや否や、皆の電子生徒手帳には新着の履歴が表示される

待ってましたと言わんばかりの速度だったから、私の反応は一瞬遅れて……

だから、かな? 手帳に映し出された文章が、やけにくっきりと目に焼き付いたんだ









『―― ――は、  “オンミョウジ マヤ” さんに投票しました』

『“超高校級のヒーロー”陰陽寺 魔矢は、対戦相手に選手生命を断つ程の暴行を加えた事で、高校剣道会から追放されている』






57 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:30:42.86 ID:JP0g5fzsO

御影「う……うわああああ!?何だよコレ!?」

照星「これ、って……! 何でなんすか!? 何で自分が……!? むぐっ!?」

月乃「……しっ。今は言ったらダメ」

月神「どうしたの!?モノクマ、皆に何を……!」

モノクマ「うぷぷ。特になーんにも? ボクはただ教えてあげただけだよ」




モノクマ「『嫌いな相手として投票した人の、周りに知られたくない秘密』をね……!」




臓腑屋「何てものを教えたのでござるか……!?」

飛田「あが、あがががががが……ガッデム!!」

陰陽寺「嫌いな相手の秘密か。下らないマネを」

吐き捨てる様に呟く陰陽寺さん……私が投票した人

これを世間に公表したら、まず間違いなく彼女は破滅する……少なくとも、今後超高校級のヒーローを名乗る事は出来なくなる

その事実を理解した瞬間、背筋が凍り付く。もし、もしも誰かが私に投票していたら……?

そして、その秘密が仮に“ずっと隠してきた、私にとって極めて致命的”なものだとしたら……

瀬川「……っ!」

脳裏に浮かぶビジョンに目眩がする。今まで被ってきた仮面を、無理矢理に剥がされた様な感覚が


58 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:31:47.91 ID:JP0g5fzsO

モノクマ「いやぁボクって優しいね!いじめっ子に報復の言い分をあげたんだからさ」

モノクマ「ん……? あっ! しまった! ボクとした事が、投票されなかった生徒の事を全く考えていなかったよ……」

モノクマ「世の中は今男女平等ブームだしね。何せ男の子だってプリキュアになれるし!」

朝日「えへへ、そうだよぉ。オトコノコだってぇ、いくらでも可愛くなれるもんねぇ」

月乃「は?」

駆村「気持ちはわかるが落ち着け……! 朝日も余計な事は言うな……!」

モノクマ「という訳で……明日から四日後、全員の秘密を公衆の面前でバラ撒きたいと思いまーす!」

古河「はああああああああああああ!?!?!?」

モノクマ「いやあワクワクするね!それとも気になるあの子やイラつくアイツに影でこっそり噂されててドキドキする?」

瀬川「そんな事思える訳ないでしょ!?個人情報とプライバシーの概念が無いの!?」

モノクマ「まあボクも鬼じゃないからね。オマエラが誠意を見せてくれたら取り止めてあげなくもなくなくないよ?」

月神「誠意、って……」

陰陽寺「どうせ殺し合いだろう。わざわざ聞く必要も無いがな」

モノクマ「イグザクトリィ!ご近所のクラス会で噂されたくないならコロシアイするんだね!」

御影「案外範囲が狭かった!」

モノクマ「そんじゃアデュー! 精々こっ恥ずかしい秘密で強請られないように気を付けるんだね!」


59 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:36:19.84 ID:JP0g5fzsO





瀬川「……大丈夫だよ。きっと!」








……嘘だ。言葉とは裏腹に、心の中は焼けつく様な焦燥感と、凍てつく程の殺意に満ちていた


誰かが冷酷な悪意を隠しているなら、私だって全力で対抗してみせる


もしも秘密が“あの事”なら、私はそれを死守しなくちゃいけない……。例え、何を犠牲にしてでも


例え、この場にいる全員を、闇の中に葬ってでも





60 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/21(日) 22:40:24.44 ID:JP0g5fzsO
※ミス
>>58>>59の間にこれが入ります





……モノクマは去っていった。軽やかな足取りで、重苦しい動機を残して

嫌いな相手の知られたくない秘密。それは、相手にとってはこれ以上ない悪夢になる

そして、自分にも……致死のダメージが与えられる恐怖がつきまとう諸刃の凶器

御影「だ……誰だよ! ボクに投票した奴は誰なんだよ!」

月神「大丈夫よ、御影君。きっと皆は私に投票しているはずだから……」

飛田「そんな事は無いだろう!何故ならオレはレディに投票なぞ出来ないから、適当に投票したのだからなッ!」

古河「オマエそんな事滅茶苦茶な事したんか!?誰に投票したんか言うてみろや!」

デイビット「止めた方がいイ。飛田氏にとってモ、月神女史にとっても不利益な結果となル」

スグル「こんなの……どうしようもない、です……」

誰かの秘密を握りながら、誰かに秘密を握られる。しかも、自分の秘密を握っているのは悪意を秘めた人かもしれない

個人情報の流出がどれだけおぞましい事態かは理解しているつもりだ。それこそ、私の身に深く染み付く程に

月神「どうすれば……。このままじゃ、皆バラバラになっちゃう……!」


61 : ◆nV158uMR4EBZ :2019/04/21(日) 22:41:16.43 ID:JP0g5fzsO
本日ここまで
62 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 22:57:52.93 ID:PGk4e/k4O





突然だけど、私は夜が好きだ

暗い位の闇の中。一人で物思いに耽る時だけは、他の誰でもない”私”でいられるから

……ただ、そのせいであまり眠れなくなる時もあるんだけれどね

「……ふぁあぁ。もう朝だ……」

欠伸を噛み殺して頭を振る。少しだけクラクラするけど、動く分には問題はなさそう

昨日は誰も、何も言わずに帰っていった。皆の後ろ姿から、全員が強い警戒心を抱いていた事は明白だ

……もう一度生徒手帳を確認してみる。そこにあるのは紛れもなく陰陽寺魔矢さんの秘密……

勿論、これがただの嘘の可能性もあるけど……確認の為には本人に聞かなくちゃダメだもん



『ねぇ!私、陰陽寺さんが嫌いだから投票したんだけど、対戦相手ボコッて殺したって本当?』



……ないない。そんな事を聞いた日には間違いなく私が再起不能になる。見てわかる様な明らかな地雷を踏みたくないし

グルグルグルグル思考は回る。とめどなく溢れる思考が、お腹に強い違和感を……

……? お腹? そういえば……

「……夕食食べ損ねてた……」

エイリアンだの何だの言われてたから、食べるのが申し訳なくて口をつけてなかった

食堂に行くのは怖いけど……どの道何か食べないと頭だって動かせない

とにかく今はご飯が食べたい。重たい足をなんとか動かして、食堂に向かった

63 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 22:58:51.52 ID:PGk4e/k4O





陰陽寺「………………」

御影「………………」

デイビット「おヤ、瀬川女史。ご機嫌よウ」

瀬川「アッ、おはようございまーす……」

入りにくい空気の中、気配を消していたのにデイビット君に見破られる

鋭く、ギロッと皆から睨まれた……様な気がした

ピリピリとした空気は、きっと気のせいじゃない。全員の放つ殺気が、食堂に張り巡らされていた

大なり小なり……隠す気のあるなしに関係なく、ね

スグル「あ、あの、瀬川さん」

スグル「その、えっと……誰に投票しましたか?」

不安げに訪ねられて、思案を重ねる。ここでなんて答えるかで、私の道は少し変わる気がする……

瀬川「……月神さんだよ。本人が言ってたしね」

スグル「そうですか。……良かった」

良かった。その言葉には、どんな意味があるの?

真意を問うその前に、一筋に放たれた言葉が、張り詰めた空間を引き裂いていった

64 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 22:59:28.05 ID:PGk4e/k4O

月神「……皆! 私の話を聞いてほしいの」

月神「動機で誰に投票したとか、誰の秘密を見たとか……そんな事は聞かないわ」

月神「ずっとここに閉じ込められて、互いに不安や不満もあると思う。それは否定したらいけないの」

月神「でも、どうしても我慢できないなら……今日のドッジボールで、精一杯ぶつけてほしい」

月神「ネガティブな気持ちも、我慢できないイライラも! ボールに乗せて伝えてほしいの!」


響かせる様に私達に届く、月神さんの切なる想い

ヒリついた空気が和らいでいく。マイナスに満ちた雰囲気が、一気にプラスに切り替わる

彼女の声には、心には。それだけの大きな力が秘められているから


古河「……しゃ! ウジウジしとるのはウチらしくないわな! 御影、ブチのめしたるわ!」

御影「えっ!? ボクだけ!? 何でさ!?」

臓腑屋「にゃっ! うるさいでござるよ!?」

駆村「そうやって騒がしい方が安心するよ……」

お通夜ムードからバースデイに。皆の雰囲気を一言で変えた、月神さんのその言の葉に、どれだけの力があるんだろう?

どれだけの才能があれば……いいんだろう?


65 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:00:09.22 ID:PGk4e/k4O

竹田「ま、話はまとまったんじゃあねえのか?」

竹田「ビビる事なんかねえ。楽しめる時は存分に楽しめばいいってコトよ」

パンパンと手を叩き、竹田さんが話を纏める。既に全員はやる気みたいだし、辞める人もいなくなった

照星「…そう言えば、陰陽寺先輩はやるんすか?」

陰陽寺「やらない。する必要も無いからな」

朝日「この雰囲気でも断っちゃうんだねぇ……」

いや、一名いた。空気も考えも読めない人が

竹田「おいおい陰陽寺の嬢ちゃん。若いのにノリが悪いんじゃねえの?」

竹田「命短しなんとやらだ。肩肘張った生き方は嬢ちゃんには合わねえよ」

陰陽寺「知るか。僕はもう戻る」

竹田「でもなぁ〜、万一何かあった時に一番頼れるのは嬢ちゃんなんだけどなぁ〜」

陰陽寺「頼りにする様な奴はない。僕には何の関係もないからな」

竹田「厳しいねえ。まっ、気軽に来な。坊主共も嬢ちゃんを今更省く事はないだろうからな」

立ち去ろうとした一瞬。ふいっと振り向いた陰陽寺さん

でも、直ぐに前を向くと……そのまま廊下へ消えていった


66 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:01:03.28 ID:PGk4e/k4O







飛田「フッハハハハ! 楽しみだなぁ諸君!」

御影「勿論さ! だって女の子達の体操服姿が拝められるんだもんね!」

月神「ああ、女子は全員ジャージでお願いね?」

御影「そんな〜〜〜〜〜!!!」

駆村「そうだ。陰陽寺が入らないなら誰か一人余りになるな……」

竹田「その心配は要らねえ。俺はやらないからな」

朝日「どうしてですかぁ?」

竹田「派手に動いて腰をやっちまうのは、な?」


……こうして、最後にに一悶着あったけれど無事に朝を終わらせる事ができた

でも、まだ少し余裕があるかな……お昼になるまで誰かと話してよう


67 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:01:59.54 ID:PGk4e/k4O





御影「あ、ちょっと瀬川さん!」

瀬川「何?」

御影「瀬川さんってコスプレイヤーでしょ? ならせめて瀬川さんだけでも体操服着てくれない?」

瀬川「お断りします」

したごころをきみに。残念だけど、私はコスプレをそういう目的でするつもりはありません

御影「ちぇっ。まあいいや! 今日のドッジボール楽しみだよね!」

御影「月神さんは投票とか気にするなって言ってたけど……ま、まあ? ボクに投票する人なんていないし!」

投票かぁ。確かに御影君の秘密はどうって事なさそうだもんね

……私は気にしてる。少なくとも、バラされる秘密次第では、私は……

瀬川「……そうそう。御影君って誰に入れたの?」

御影「いやそれはちょっと……そう言う瀬川さんはどうなのさ!?」

瀬川「ちょっと言いたくないかなー……」

流石に易々とは教えてくれないかぁ……でもあの反応を見るに、月神さん以外に投票したと思ったんだけどなぁ

瀬川「教えてよー。ダメ?」

御影「ダメだから! ……ああ、でも」




68 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:02:59.14 ID:PGk4e/k4O











御影「それ相応の誠意と真心を見せてくれるならいいよ!」

瀬川「ん? 今見せてくれるって言ったよね?」


69 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:05:01.14 ID:PGk4e/k4O

瀬川「ふぅん。ならさぁ……」

ムギュッ

御影「ちょ、え…ええええええ!?!?!?」

瀬川「…教えて欲しいな。み、か、げ、く、ん?」



ぐいっと体を近づける。不審そうな表情を見せる彼に両手を伸ばして……抱きしめた

互いに抱き合う様な体勢に移る。まるで、愛し合う恋人の様な甘い姿……

尤も私にそんな感情は無いし……私の目的は御影君から情報を引き出す事なんだけどね

呆気にとられるその合間に、耳元に言葉を流し込んでいく。かかった獲物を絡めとる蜘蛛のように



御影「あ、あの、瀬川さん? えーっと、柔らかくて大きいものが当たってるんだけど」

瀬川「あててるんだよ?」



腕にぎゅうっと力を込める。御影君の身体が、私の肢体に、全身に、蝕まれる様に沈んでいく

神経がぴりぴりと焼き付く感覚。きっと、私の顔は今真っ赤っかに染まっているんだろう

ここまでしたんだ。絶対に話して貰うんだから……



70 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:06:12.01 ID:PGk4e/k4O

瀬川「……ねえ。まだダメかな?」

御影「い、いや? えっと、その、あー……」

御影「ぼぼぼボク達ってまだそんな合って間もないし? まだそんな親密な関係には……」

うーんこの。少し引っ付いただけで好意があるって勘違いするんだから。オタクって怖いなー

あんまし長くやると、今後の生活に悪影響を及ぼさないとも言えなくなるし……ぱぱっと終わらせよう

瀬川「ね? 私にこっそり教えてよ。絶対に、絶対秘密にするから……」

御影「う、うう……わ、わかったよ! はい!」

もぞもぞと腕を動かし始める御影君。それを察した私はクールに腕を外していった

御影「ほら! これがボクのやつ! 古河さんには本当に黙っててよね!?」

電子手帳を動かして、秘密の書かれたページを見せてくれた。誰のモノかは……言った通りだね





『御影 直斗さんは、 "コガ ユメミ" さんに投票しました』

『"超高校級のスタイリスト"古河 ゆめみは、中学時代の素行が悪く、喫煙、飲酒経験がある』



71 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:07:20.28 ID:PGk4e/k4O

瀬川「うわぁ、これは……」

御影「要するに元ヤンって事だろ? まっイメージ通りだけどさ!」

元ヤンっていうか……これもう暴走族の人じゃん……

やたら気が強いし、直ぐに手が出るとは思ってたけど、これはちょっと衝撃が強いかな……

瀬川「これは確かに知られたくない秘密だね……」

御影「ね、ねえ? 本当に黙っててよ? ボクまだ死にたくないしさ」

瀬川「うん、約束するよ」

まっ、口約束には何の制約も無いんだけどね! 万が一何かあった時の為にとっておこっと

瀬川「でも、どうして古河さんに要れたの? 別に月神さんでも良かったのに」

御影「だってさぁ! いっつもボクの事馬鹿にしてくるじゃん!? ムカついてるんだよね!」

要するに、ただの私怨だね……

瀬川「もしかしたら気になってるのかもよ? ほら好きな子程イジメたくなるって言うし」

御影「えっそうなの!? いやあボクって今モテ期なのかなぁ!? 辛いなぁ〜!」

単純過ぎる……まあ、古河さんに向けていれば私に来る事はないよね

御影「なんでこんなにツイてるんだろ? あっ! ボクって超高校級の幸運だったもんね〜!」

ケタケタと笑う御影君を遠巻きに眺めながら、冷ややかな笑顔をプレゼントする

……まあ、暇潰しにはなった……よね……うん……



72 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:08:33.41 ID:PGk4e/k4O





「……遂に、この時間が来たみたいだね」

ポンポンとジャージを叩き、袖を通す。思った以上に、滑らかに入っていった

「もう、皆待ってるかな……?」

ドクドクと心臓が早鐘を打つ。緊張は想像以上に私を蝕んでいたみたいだ

「よし……頑張るぞ!」

目を閉じて、鏡に向かって喝をいれる。目を開けた時に見えたのは、自信に満ち溢れた、いつもの顔だ

さあ、行こうか……!



暴力と理不尽と圧倒的力の差が乱舞する、ドッジボール大会へ……!

73 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/28(日) 23:09:06.37 ID:PGk4e/k4O
本日はここまで
74 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 22:54:09.90 ID:ERyPquDVO





瀬川「……全員、来てたみたいだね」

体育館に集まった、十四人のクラスメイト達

全員が……。いや、竹田さんと陰陽寺さんだけは普段着だけど……ジャージに着替え、待っていた

談笑したり、準備運動したりと思い思いに過ごしているように見えるけど……

瞳の奥は戦意に燃えている。そう。これは誰を攻撃して誰を守るか。好き嫌いがハッキリと解る戦争だ

勝ち負けだけじゃない……ここで、皆が皆の事をどう思っているかが決まるんだ




スグル「瀬川さん……何を言ってるんでしょう?」

古河「放っとけや。そんなん気にするより、そろそろ始まるんとちゃうか?」


75 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 22:54:54.66 ID:ERyPquDVO

月神「……今日は集まってくれて、ありがとう」

月神「それじゃあ、始めに……御影君。お願いね」

彼女の指示で御影君が前に出る。心なしか……なんて思わなくても、その顔からは興奮が溢れていた

御影「え〜、今日はボクの尽力で……」

古河「調子のんなや! 殆ど月神のお陰やろ!」

御影「なんだよ! アルコール中毒のニコチン中毒の癖に!」

あっ。自分から言っちゃった……

駆村「ん? 何の事だ? 古河」

デイビット「フム、タバコと酒に心当たりハ?」

古河「な、なんでその事……。 ……御影! オマエウチに投票したやろ!?」

御影「えっ何でその事を……瀬川さぁん!!」

瀬川「話を振らないでよー!!」

唐突な飛び火に動揺を隠せない。私まで命の危機に晒されるなんてまっぴらなのに!

古河「ははーん……理解したわ。表に出ろや」

瀬川「してないから! て言うか、もう隠す気全然無いでしょ!?」

指をポキポキと鳴らしながらにじりよってくる古河さん。私達はその圧倒的迫力に震えるしか出来ない

眼前に満面の笑みの古河さんが近づいてくる。そのまま腕を振り上げて、殴ろうとした瞬間……

月神「ストップ! ここで喧嘩は良くないわ。続きは……ね?」

月神さんが制止してくれた。安堵の視線を彼女に向けると、可愛らしいウインクで返答してくれる

……いちいち可愛い人だ。本当に


76 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 22:56:21.01 ID:ERyPquDVO

御影「た、助かった……」

古河「チッ月神が言うんなら今は見逃したる……」

古河「まっここは正攻法で、ドッジボールでボコればいいだけの話やしな?」

瀬川「ひえっ……」

……残念だけど、驚異はまだ去ってないみたいだ。古河さんの満面の笑顔が、今は凄く不気味に見えた

スグル「だ、大丈夫ですよ。古河さんと同じチームになれれば……」

瀬川「その手があった! ……で、どうやって二つのチームを決めるの?」

竹田「ジャンケンでいいだろ。偶数だしよ」

駆村「ただ、照星や臓腑屋が同じチームだと力量差がありすぎるからその二人は別れてくれるな?」

照星「了解っす」

臓腑屋「承知したでござる!」

照星さんがこくんと頷き、臓腑屋さんが勢いよく返事する。それにうんうんと男子が納得してるけど、恥ずかしくは無いのかな……

何気無いジャンケンだけど、これで古河さんと同じチームになれるか……身の安全が決められる……!

御影「ボクは幸運なんだ……誰が何と言おうと超高校級の幸運なんだ……!」

月神「それじゃあ……、ジャンケン、ぽん!」

皆が一斉に手を出す。私の運命を決める一手を……


77 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 22:57:00.73 ID:ERyPquDVO




……で、チームが決まったんだけど

瀬川「ちょっとねえ御影君!? なんで私と同じ手を出したの!?」

御影「瀬川さんがどの手を出すかなんてわかるわけないじゃんか!?」

最悪だ……よりにもよって御影君と同じで古河さんと離れるなんて……

朝日「あは。よろしくねぇ〜皆ぁ〜」

デイビット「フム、宜しく頼もウ」

照星「よろしくっす! やるっすよー!」

飛田「フン……オレを動かすにはレディが足りなさ過ぎる。つまらんな……」

御影「あーあ。せっかく瀬川さんと照星さんが同じチームなんだから体操服着てほしかったなぁ」

瀬川「どういう意味で言ってるのかな?」

セクハラかな? だからコスプレはそういうのじゃないって言ってるのに……

朝日「えっとぉ、実は女の子じゃないけれど……」

朝日「私じゃ……ダメ。かなぁ?」バッ

瀬川「うわぁ!? 朝日君なんでそんな短いの着てるの!?」

朝日「えへへぇ。実は下に着てきたんだぁ」

瀬川「そういう意味で聞いたんじゃないけど!?」

デイビット「ハ。朝日氏は平常運転だナ。慣れぬ事だがワタシも楽しもウ」

飛田「よし! やる気と元気が沸いてきたぞッ!」

御影「えぇ……」



78 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 22:58:02.40 ID:ERyPquDVO




月神「さあ、皆の準備はいいかしら?」

月神「私達は今からチームよ。よろしくね!」

古河「なーんか、作為的なモンを感じるわ……」

月乃「……同感」

スグル「あはは……お手柔らかにお願いします」

古河「せやな! こうしてなったんも何かの縁や。絶対に勝ってやるで!」

駆村「あんまり闘争心を高められても、相手が困るがな……」

臓腑屋「にゃあ、喧嘩が起きないか……拙者も心配でござるよ」

スグル「大丈夫ですよ……二人とも、しっかり場は弁えられる方ですし」

スグル「……あれ? 朝日さん、下にブルマを着ていたんですね」

月乃「……あいつ。後で締め上げる」

古河「おーおー鼻の下伸ばしとる……アイツら女の見た目しとったら何でもええんやなぁ」

駆村「……本当か?」

スグル「……た、多分」




竹田「おーい。話し合いはそろそろいいか?」

竹田「いい加減に始めちまうぜ。全員コートの中に入っちまいな!」

79 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 23:00:05.38 ID:ERyPquDVO

月神「……皆! よろしくお願いします!」

瀬川「お、お願いしまーす!」

竹田「うし。んじゃ早速始めるか。ボールはまたジャンケンでいいよな?」

御影「ちょっと待った! ボクらの方が弱いんだからせめて先攻くらい譲ってよ!」

朝日「そうだよぉ。私はあんまり運動出来ないからちょっとだけハンデが欲しいなぁ」

月乃「両腕へし折ってやろうか?」

古河「ここで目ぇ潰せばええで?」

臓腑屋「スプラッター!? 親睦が目的なのでござるから暴力暴言はダメでござるよ!?」

飛田「梓ァ! どうか、どうかオレにボールを渡してはくれないだろうか!?」

飛田「オレにはわかる……その美しい瞳の奥、懊能を秘めたその憂いを断ち切る為にも!!!」

月神「え、ええっと……皆、いいかしら……?」

駆村「俺はいいぞ。平等は大切だしな」

スグル「ボクも……ボールどうぞ」

照星「あ、どうもっす」

……ゴネ得って単語がちらつくけど。ボールは私達が奪取した。これならなんとか戦える……!

竹田「決まったな? んじゃ坊主共、思いっきり遊んできな!」

竹田さんの一声で皆の表情が真剣になる。色んな意味で絶対に負けられない戦いが始まるんだ……!

80 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 23:00:51.51 ID:ERyPquDVO

瀬川「で、ボールはこっちが貰えたけど……誰から狙っていくの?」

御影「古河さん! って言いたいんだけど、正直当てたら当てたで後が怖いんだよね……」

それは私も思う。今の古河さんは怒っている。彼女を下手に刺激したら、ろくな目に合いそうにない

御影「駆村クンや臓腑屋さんを狙っても取られるだろうしなぁ……動きがトロそうな月乃さんやスグルクンから潰していこうか!」

弱い人から順に潰していく。うん。作戦……もといバトロワの定石としては妥当な所だね! 戦わなければ生き残れない!

デイビット「どうやラ、決まった様だナ?」

朝日「御影くぅん。誰を狙うか決めたのぉ?」

御影「うん! えーっと今ボクに近いのは……月乃さんの方だね!」

朝日「月乃ちゃん? それは止めた方がぁ……」

御影「ゴメンね月乃さん! これも勝負だから!」

月乃「…………はっ!」パシッ

御影「片手で取られた!?」

月乃「っ!」

飛田「ゴハァ!?」

御影「飛田クンが一撃でやられたー!?」

瀬川「恐ろしく速い球……私よく見てなかった……」



竹田「飛田の坊主アウトー。外野に行ってくれや」

飛田「オレの出番……これだけ、なの、か……ガク」

月乃「……先制点、貰った。ぶい」

81 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 23:04:13.48 ID:ERyPquDVO

朝日「月乃ちゃんはねぇ、バスケで地区優勝になるくらい球技が得意なんだぁ〜」

御影「それ先に言ってよ! どうするのこれ!?」

瀬川「取り合えずボールは返ってきたし……照星さん。誰を狙えばいいと思う?」

照星「え? あー……そうっすね、月神先輩でいいんじゃないっすか?」

瀬川「月神さんかぁ……」

デイビット「ワタシモ、彼女が妥当な所ではあると感じていル。余り情けはかけないようニ」

確かに、向こうは全体的に運動が出来そうな面子とはいえ月神さんは下の部類……

私もそれなりに出来る自信はあるし……よし! 月神さんを仕留めよう!

瀬川「わかった! ……えいっ!」

月神「きゃっ!?」バシッ

瀬川「やった!?」

臓腑屋「……とう! 間に合ったでござる!」ザッ

スグル「な、何が起きたんですか……?」

デイビット「臓腑屋がボールを取ったのダ。月神に当り弾かれたボールをネ……!」

臓腑屋「ギリギリでござった……床に着く前に拙者が取った故、これはセーフでいいでござるか?」

竹田「そうだな。まあギリセーフって事でいいか」

瀬川「そんなのアリなの!? ローカルルール持ち出すのは反則でしょ!?」

竹田「悪いな。俺のシマじゃ俺がルールだ」

古河「大人げないわ……」

竹田「大人げあるヤツがおもちゃ売れるか? そう言う事だぜ。嬢ちゃん」

82 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 23:05:07.83 ID:ERyPquDVO


…………その後は、ただの一方的な蹂躙劇だった






古河「御影ェ! これで終いや!」

御影「うわぁあああああああ!?!?」バシィッンッ

竹田「御影の坊主、アウトー」

御影「あ、頭が……割れる……割れてない……?」

スグル「凄い音でしたよ、大丈夫でしょうか……」

古河「顔面はセーフなんやったっけ?」

竹田「アウトだな」






実力差とか運の良さとか全く関係ない……最初から土俵にすら挙がれていなかった事を思い知らされた





駆村「悪いな瀬川! 当てさせてもらう!」

瀬川「きゃっ! あっ、はいガードベント」グイッ

朝日「えっ何の……あうっ」バシッ

月神「瀬川さん……今のは流石に危険行為じゃないかしら?」

瀬川「近くにいた朝日君が悪いんだよ……」

竹田「どうすっかな……おい月乃の嬢ちゃん。どうすりゃあいいと思うよ?」

月乃「……両成敗」

竹田「それはちょっと可哀想だなぁ……よし、瀬川の嬢ちゃん。コートから出な」

瀬川「そんなぁ……まあ私は痛い目に合ってないからいいんだけどさ」

臓腑屋「審議の結果、瀬川殿は今日一日ご飯抜きでござる」

瀬川「そんなーーーっ!?」




83 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 23:06:05.69 ID:ERyPquDVO




朝日「ええっとどうしよぉ、もう少なく……あぅ」

朝日「うぅ〜転んじゃったぁ。靴紐もほどけちゃったし結び直さないとぉ……」

臓腑屋「隙あり! とりゃあっ!」ビュンッ

朝日「きゅうっ」

瀬川「待ってよ! 下を向いてる時に狙うのは卑怯だって!」

竹田「まあ反応出来てねえとはいえ別に反則じゃあねえしなあ。朝日の坊主、アウトー」








デイビット「フーム……ここからどう動くべきカ」

デイビット「数的不利、実力の不足。これらを補うにはどうするべきカ……」ベシツ

竹田「坊主ー、もう当たってんぞー」

デイビット「……これはこれハ。ワタシに球技は向かない様だナ」






……この間数分。私達は秒殺という言葉すら生温い速度で殲滅されていったんだ

瀬川「うわっ……私達、弱すぎ……?」

御影「というか向こうが強いんだって……何でジャンケンで決めちゃったのさ……」

飛田「オレの……活躍……何処に……」

デイビット「相手が悪すぎたナ。残念、無念」

朝日「皆にはぁ、後でチョコボールあげるねぇ」

瀬川「私のお昼と夜のご飯、チョコだけ……?」

今日のご飯事情を考えると憂鬱な気分になる。そろそろ終わらないかな……

瀬川「……そう言えば、まだ照星さんが残ってたっけ?」

コートの中では、照星さんと相手の皆が死闘を繰り広げていた

全員からの猛攻を、紙一重で避け続けている……

84 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 23:07:06.73 ID:ERyPquDVO

照星「ふーっ、ふーっ……」

駆村「流石だな……俺達のボールが当たらない……」

臓腑屋「まるで獣でござるな……動きの一つ一つが俊敏で柔軟でござる」

古河「ああもうチマチマ避けおって……!」

月乃「……でも、避けているだけじゃ私達には勝てない。攻め続けていけば……」

確かに照星さんは避けているだけだ。このままだとジリ貧になるし……

瀬川「照星さーん! 反撃してー!」

朝日「頑張ってぇ、照星さぁ〜ん」

御影「こっから逆転だ! ボク達の力、思い知らせてやる!」

照星「……っ! わかったっすよ!」

駆村「その意気だ! やれ、スグル!」

スグル「はい! ……えいっ!」ヒュンツ

向こうもやる気を出してきたみたい。でも、ボールを投げたのはスグル君だ

スグル君程度なら、照星さんは余裕で取れる―――



85 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 23:07:46.86 ID:ERyPquDVO

照星「………………」バシィンッ

瀬川「え?」

駆村「は?」

月乃「……あれ」

竹田「……おぉ?」

照星「………………あ」

照星さんは構えて、ボールを受け止め……なかった

わざと弾いたと言うよりも反応出来なかった。不意をつかれた様な反応だった

テンテンと転がるボールが、虚しくコートの中を転がっている。私達の心境を表すみたいに行き場なく

照星「え、あ……当たっちゃったっすね! 自分の負けっすよ!」

照星「アハハハ! いやースグルん凄いっすよ!」

スグル「え? そ、そうですか?」

竹田「……まあ不正は無かったしなぁ。今回は月神の嬢ちゃんチームの勝ちだな」

月神「…………そうね」



こうして、ドッジボール大会は呆気なく終了した

何処か消化不良な、煮え切らない空気を残しながら


86 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/04(土) 23:08:42.88 ID:ERyPquDVO









「……照星さん。まだ、きっと…………」

87 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:28:18.89 ID:YA2rLe63O





……あの後、皆で昼食を軽く食べた

私はさっきの危険行為のペナルティとして、水しか飲めなかったけどね!

取り合えずの間はしのげるから、外に出て少し散歩しようと歩いていると……

臓腑屋「んしょ、んしょっと……」

瀬川「臓腑屋さん。何を運んでいるの?」

臓腑屋「洗濯でござるよ。ジャージが汗で濡れていたでござるからな」

見ると、臓腑屋さんの手にはカゴが。その中には数人分のジャージが入っていた

カゴの中にはロープも入っていて、端にはフックが取り付けられている

臓腑屋「この洗濯ロープは引っかけるだけで取り付けが可能なタイプなのでござる。物干し竿とは違い場所も取らないのでござる!」

瀬川「ふーん。これどこにあったの? 倉庫?」

臓腑屋「更衣室でござる。恐らく、運動終わりに衣類を干す目的でござろうな」

更衣室かあ。確かに、部屋干しにはこっちの方が向いているかもね

臓腑屋「時に瀬川殿。実は洗濯物の量が予想よりも多いのでござる。出来ればお力添えを依頼したいのでござるが……」

瀬川「えー……いいや。面倒だしお腹減ってるし」

臓腑屋「夕食は拙者が口添えして差し上げなくもないでござるが」

瀬川「喜んでお手伝いさせていただきまーす!」

88 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:29:30.88 ID:YA2rLe63O

瀬川「臓腑屋さーん。これはここに干せばいい?」

臓腑屋「そうでござる! なるべく日の当たる様に干すのでござるよ」

瀬川「うえぇ。面倒くさい……」

何で私はこんな事を……でも、夜ご飯の為にはやらないと……

そういえば、私はやった事無いんだけど……アルバイトって、こんな気持ちでやるのかな?

デイビット「………………」

臓腑屋「おや、あれはデイビット殿? ……どうかしたのでござるか?」

瀬川「デイビット君!? 何故見てるんです!?」

デイビット「いヤ、何……少シ、瀬川女史の尽力に感心していただけダ」

瀬川「見てるだけなら手伝ってよ〜……」

デイビット「そうだナ。女性にのみ働かせるのは紳士精神に欠ける行イ。ワタシも手伝おウ」

臓腑屋「忝ない……では、デイビット殿はそちらを頼むでござる!」

人が増えた事で、私の負担も更に減る。みるみる内に洗濯物はロープに吊るされていった

瀬川「ふぅ……何だかスッキリした……」

臓腑屋「心の洗濯という言葉もあるでござる。瀬川殿もこまめに掃除を行ってみては?」

なんだか引っ掛かる言い方だね……まるで私が掃除出来ないみたいな……

私だって掃除機くらいは使えるし……多分

デイビット「瀬川女史、ご苦労。ディナーを抜かれているのニ、素晴らしい精神ダ」

臓腑屋「にゃあ、それは実は……むぐぅ」

瀬川「シーっ」

89 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:30:08.24 ID:YA2rLe63O

デイビット「ハ、ハハ! いやはヤ、瀬川女史の献身には恐れ入ル」

デイビット「月神女史も言っていたヨ。彼女は皆の事がとても大切なんダ。とネ」

瀬川「……そ、そうなんだ! 嬉しいなー!」

褒められて、思わず嬉しがる反応をする。でも、嬉しいならチクリと胸を刺すこの感覚はなんだろう

臓腑屋「後は拙者が入れておくでござる。瀬川殿にデイビット殿、お力添え感謝するでござる!」

瀬川「あ、そう? じゃあね」

用事が無いならいる意味も無い。さっさと帰って横になっていよっと

デイビット「ム……ワタシは残ろウ。臓腑屋女史にのみやらせるのは心苦しい故ニ」

臓腑屋「そうでござるか? ならば是非……!」

……でも、デイビット君は残るみたい。それは私への嫌味……じゃないと信じたい

幾ら洞察力に優れた彼でも、人の心全てを見透せる程の力は無いはずだから

私の秘密までわかっているはずは無いから……私に投票していないという前提だけど

……ダメだ。胸の奥から考えちゃいけない事ばかりが溢れてくる。自分の冷酷さに怖気が走る

なにより怖いのは、それが『誰かを殺してはいけない』という事じゃなかった事……







『殺せばすぐに皆にバレる』と思った事だった

90 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:31:09.71 ID:YA2rLe63O





瀬川「……はぁ」

駆村「ど、どうした? 何かあったのか?」

瀬川「ううん。別に」

この悩みは、誰かに打ち明ける事はしたくない。今までだって秘密を話すなんてしたことないのに

竹田「お? 嬢ちゃんメシにありつけてるじゃねえか。誰か横流ししたのか?」

駆村「自分で作ったとは思わないんだな……」

月神「……瀬川さん。大丈夫? もし、何か不安があるなら相談に乗るわよ」

瀬川「だーい丈夫だって! ゴメンゴメン。少し疲れちゃっただけだからさ」

臓腑屋「にゃ、その節はどうも……」

瀬川「だから心配しないでよ。私は平気だからさ」

月神「……わかったわ。でも辛くなったらいつでも相談してね?」

瀬川「うん!」

いつもの笑顔の仮面を被る。その裏に隠している心を見せないように、深く。深く

だから、かな。誰かの顔がよく見えなくて、いつも顔色を窺うクセがついたのは




飛田「オレが……出落ち……何故なのだ……」

スグル「まだ気にしていたんですか……」

91 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:33:44.48 ID:YA2rLe63O

御影「アイタタタ……なんか、さっきから身体が痛むんだけど……」

古河「単なる筋肉痛やろ? ウチがぶつけたボールで痛いって言うとるワケやないよな?」

御影「言ってないよ!? だからもう関節技極めるのは止めてって痛ああああ!?!?」

月乃「……絶対にそれが原因だと思う」

臓腑屋「にゃ、筋肉痛ならばこの豚のしょうが焼きは如何でござろうか。豚肉は疲労回復に良い……」

御影「わー美味しそう! いただきまーす!」

臓腑屋「せめて解説を聞いてほしいのでござる!」

御影「うわっ、ホントだ! なんだか疲れがとれた気がするよ!」

古河「効果が出るの速すぎやろ!」

デイビット「十中八九、プラシーボ効果だろうヨ」

スグル「プラシーボ効果……ですか?」

デイビット「ウム。偽薬効果とも呼ブ、人間の思い込みの力ガ……」

スグル「あ、あの! その話はまた今度に……!」



……皆は、秘密にどう向き合っているんだろう

こうしてゆっくりしている間にもリミットは迫ってきているのに、皆はそれを気にしていない

もしかしたら、気にしているのは私だけ。皆の秘密は大したことなかったりして?

なんて、モヤモヤした気分を遺したまま今日という日は終わる。明日へ不安を送りながら……

92 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:34:24.66 ID:YA2rLe63O




月神「ごめんなさい。いきなり夜に、こんな場所に呼び出してしまって……」

月神「……照星さん」

照星「どーも。自分はそんな気にしてないっすよ」

照星「それはいいんすけど、どうしたんすか? 急に体育館に連れてきて……」

照星「もしかして……デートっすか!? アイドルの先輩となんて、なんだか照れるっすね〜!」

月神「…………照星さん。気づいてる? 今の貴女、とても酷い顔をしているわ」

照星「いやーそれほどでも……。……え?」

月神「泣きそうなのに、無理に笑ってる。苦しそうで、とっても辛そうで……」


月神「酷く、歪な顔をしているの」


照星「……っ、な……なんなんすかいきなり!? 何の根拠があってそんな……!」

月神「ごめんなさい。でも、言わせてほしかった。黙っていられなかったの」

月神「根拠は……特にないわ。だけど、これでも私は“超高校級のアイドル”なの」

月神「その評価が正しいかはわからないから、私はそれに答え続ける……だから、わかるの」

月神「貴女の表情が、その仕草が、紛れもない作り物だと言う事が!」

照星「………〜〜〜〜〜っ!」

93 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:34:59.26 ID:YA2rLe63O

照星「……だったらなんなんすか? それで何か問題でもあるんすか!?」

月神「問題がどうこうの話じゃないわ。私が気になったから指摘した。それだけよ」

照星「そんなの関係ねーじゃないっすか! 先輩にとやかく言われたくねーっすよ!」

月神「関係無いわけない!」

照星「!?」

月神「私が照星さんをどうこう言う権利が無い事はわかっている。そんな権利、誰にもないから……」

月神「だから私は指摘するだけよ。照星さんは何かをずっと気にしている様に思えたもの」

月神「学級裁判の事。天地さんと吊井座君の事を」

照星「………………先輩っ!!」ドンッ!

月神「ぐっ……!」

照星「そんな知った風に言わねーでくれねーっすか!? 自分がどう考えてようと自分の勝手じゃねーっすか!」

照星「そうっすよ……ずっとずっと考えたっす。自分がわかんなくなるくらい、ずっと……」

照星「でもどうしたらいいのかわかんなくって、頭の中がぐちゃぐちゃになって……自分でも訳わからなくなったっす」

照星「何がよくって何がダメなのか……もう、どうすればいいのかわかんないっすよ……!」

月神「う、くっ………」

照星「天地先輩はどうして殺そうとしたんすか、吊井座先輩はどうして殺したんすか……」

照星「先輩を止められなかった、信じられなかった自分が一番悪いんすか……!?」

94 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:35:54.34 ID:YA2rLe63O


月神「く………照星、さん………」

照星「どうなんすか……どうなんすか!?」

月神「う………わ、わた、しは………」

月神「わ、たしは……照星さんのその質問には、答えられないわ……」

月神「二人の本心がわからない以上、どれだけ考えても自己満足にしかならないから……」

照星「なら! 自分はどうすれば……!」

月神「だけど、ね? そうやって貴女がずっと二人の事を忘れないで、想っている事が……」

月神「きっと、二人を救ってくれているはずなの」

照星「救うって……それも結局自己満足じゃ……!」

月神「そうかもしれない。けれど、誰からも覚えて貰えなくなって、忘れられたらその人は永遠に救われない……許されない」

月神「それって、とても哀しくって、残酷な事だと思うから……」

月神「少なくとも私は……貴女の気持ちは、想いは間違っていないと思っているわ」

照星「………あ」パッ

月神「ぐっ!」ドサッ

95 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:36:43.23 ID:YA2rLe63O

月神「けほっ、こほっ……大丈夫? 照星さん」

照星「あ、えっと……自分こそごめんなさい、月神先輩に八つ当たりして……」

照星「でも、ありがとうございます。自分のモヤモヤが、なんだか晴れた気がしたっすよ」

照星「正直、まだどうすればいいのなわかんねーっすけど……悩むのはヤメっす!」

照星「二人を絶対に忘れない! そんで皆と一緒にここから出る! それが目標になったっす!」

月神「照星さん!」



「おいおい。なんだぁ? どうやら俺の出番は必要無さそうじゃあねえの」

照星「うぇっ!? この声は……!」

竹田「悪いな嬢ちゃん、覗いてたぜ。まっ、出歯亀するつもりは無かったんだけどよ」

月神「竹田さん……どうしてここに?」

竹田「なんだか剣呑な雰囲気の嬢ちゃんらが、夜中にこそこそ動いているじゃねえか」

竹田「当然信じてはいたぜ? だけどよぉ、万一何かあったら責任が持てないだろ?」

照星「要するに、監視って事っすか?」

竹田「言い方がアレだがそうなるな。いざって時には何とかするつもりだったから許してくれや」

96 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:37:31.60 ID:YA2rLe63O

竹田「それによぉ、嬢ちゃんらを見てっと姪っ子を思い出すんだわ」

月神「姪……ですか?」

竹田「おうよ。ま、最後に会ったのは姪が赤ん坊の頃なんだけどな」

竹田「今頃は嬢ちゃんらと同い年くらいのはずなんだよなぁ。何してんだろうなぁ……」

照星「お姉さんがいるんすか?」

竹田「月神の嬢ちゃんとは違って、お転婆で怒ると怖い女だけどな。鬼だぜあれは」

竹田「……ま! オッサンの独り言はどうでもいいだろ。早く寝ないと肌に悪いんじゃあねえの?」

照星「わっ、本当っす! もう深夜になっちゃってるっすよー!」

月神「そうね、そろそろお暇しましょうか」

竹田「よし、帰るぜ。ボディーガードにはなってやるからよ……」






陰陽寺「……戻るか」




瀬川「むにゃむにゃ……私は魔法少女なんだぁ……Zzz」



97 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/12(日) 21:38:16.98 ID:YA2rLe63O
本日ここまで
次の更新で死体発見までいく予定です
98 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:32:00.60 ID:w4J4NWnCO





「ふぁああ……よく寝たぁ」

なんだか不思議な夢を見ていた気がする。ふわっとした様な、きらっとした様な……

でも、その内容は既に頭の中から消えていた。所詮夢なんてそんなもんだよね

どれだけ楽しくて気持ちのいい夢でも、醒めてしまえば水の泡。泡沫の夢なんてよく言ったものだ

……でも、もしもその泡が割れなかったら? ううん。ぱちんと割れるその一瞬が、とても遅く……考えるのも嫌になるくらい遅くなったら……

それは、永遠に……無限に夢を見続けているって、呼べるんじゃないかな?

……なんて、ね。どれだけ頑丈な泡だって話だよ

「………頭痛い」

寝起きはいっつも頭が安定しない。だから、いつもどうでもいい事が頭をぐるぐる回るんだ

……回りすぎて、酔ってきたし

コップに水を注いで、それを一気に飲み干す。頭の中は、少しだけ冴えた様な気がした

99 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:33:00.27 ID:w4J4NWnCO




瀬川「………」

竹田「ん? どうした嬢ちゃん、座らねえのか?」

瀬川「あっ、ごめんなさーい」

食堂に入った瞬間、一瞬だけ肌が裂かれる様な錯覚に陥った

……この感覚は気のせいなんかじゃない。巧妙に隠している様で、その実見せびらかす様なこの殺気は

モノクマ「ねえねえ。オマエラ呑気にしてるけど、タイムリミットあるの忘れてない?」

モノクマ「明日の朝に知られたくない秘密をバラすからね。ついでに誰に投票したのかも!」

御影「うぐっ……」

モノクマ「泣いても笑っても今日が期限だよ。後で後悔しても知らないからね〜……」

瀬川「……『後』で『後悔』って、意味が重複していない?」

モノクマ「むっ、揚げ足を取るんじゃありません。重複ではなく強調です。大事な事だから二回言うのです!」

月神「……もし、ここで私が自分の秘密を皆に話したらどうなるの?」

モノクマ「関係無いよ。あくまでも人気投票のオマケで教えただけだしね」

デイビット「つまリ、コロシアイが起きない場合は問答無用で秘密を開示するト」

モノクマ「そういう事だよ! 数少ない残り時間、有意義に過ごしてくださーい!」

古河「あっ、おい待てぇや! ……いってもうた」

朝日「そう言えばぁ、モノクマってぇ、どこから出てきているんだろうねぇ?」

月乃「……大人の事情に突っ込むと、馬に蹴られて死ぬから止めて」

100 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:33:56.34 ID:w4J4NWnCO

竹田「マジな話、どうするよ? 俺は別に今更探られようが痛くもなんともねえけどよ」

駆村「あの、竹田さんは社長……なんですよね?」

照星「……だったら、せめて自分達だけでも秘密を共有するのはどうっすか?」

瀬川「と、言うと?」

照星「ここで誰が誰に投票したのか言ってみるんすよ。そうすれば誰が自分に……」

陰陽寺「そんな事をして何の意味がある。一人で勝手にやっていろ」

瀬川「陰陽寺さん、言い方ってものが……」

照星「いいんすよ。確かにそうっすからね……だから勝手にやらせて貰うっす!」

……照星さんはあっけらかんと笑っている。にかっとした顔からは、吹っ切れた事をありありと見せていた

最初はどうなる事かと思ったけどこれなら安心……

照星「つー訳で、さーせん! 瀬川先輩!」

瀬川「あ゛?」

……出来なかった。今なんて?

瀬川「ちょっと待って。今なんて?」

照星「いやー、適当に投票したら瀬川先輩に投票しちゃって……さーせん!」

さーせん! じゃないよ、なにしてくれてるの!?

瀬川「……因みに、私の秘密って」

照星「これっす。……なんかバグってるっすけど」

ポチポチと手帳を弄って手渡される。震える手を気取られない様に受け取って中身を覗くと……




『照星 夕は■■ ■■さんに投票しました』

『”超高校級のコスプレイヤー”■■ ■■は、親しい友人がいない』





101 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:35:27.28 ID:w4J4NWnCO

瀬川「………………………はぁ」

照星「ど、どうっすか? もしかしてあんまり知られたくない秘密だったり……」

瀬川「ううん。大丈夫……ありがとね」

……良かったぁ! あの事じゃなかったんだ……!

不安の塊が一気に解れていく。心に残っていた最悪の想像が、音も立てずに消えていった

この程度ならなんて事もない。今夜は安心して過ごせそうだ

古河「照星……よし! 御影、ちっと手帳出し」

御影「いや何がよしなの!? 何でボク限定!?」

古河「ええから貸せや。今の見たやろ?」

月神「強要は良くないわよ、古河さん。……でも、秘密を打ち明けた方がいいのも確かね」

デイビット「ハ。ならばワタシから提案があル。今宵はグラス片手に語り明かそうではないカ」

竹田「おっ飲みニケーションってやつか? 坊主も日本の常識を随分知っているじゃねえか」

朝日「常識……なのかなぁ……?」

飛田「断る! 夜はしっかりと睡眠を取らねば肌の潤いに影響が出るのだ!」

臓腑屋「にゃあ。流石に全員は無理なのでは……」

竹田「んだよ。若いのにちっとノリが悪いんじゃあねえの? 参加してくれよ。若いんだしよ」

臓腑屋「パワハラでござるか!?」

102 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:36:13.72 ID:w4J4NWnCO

御影「うーん……ボクはいくよ! 暇だし!」

古河「せやな、ウチも出るわ」

御影「あっ……やっぱボク止めよっかな……」

スグル「僕も行きますから……」

デイビット「ワタシも全員が参加するとは思っていなイ。各自、好きに集って貰いたいナ」

瀬川「うーん。でも正直気乗りはしないかな……」

飛田君じゃないけど、私は夜は寝ていたい派。深夜アニメは録画で見る派だし

臓腑屋「時にデイビット殿、それは夜通しやる予定なのでござろうか?」

デイビット「その予定だナ。無論、途中退席は認めるつもりだガ」

臓腑屋「そうなると、つまむものも必要になるのでは? 拙者が幾つか作るでござるよ」

月神「なら、私も手伝うわ。腕によりをかけて作るわね!」

飛田「うむ! ならばオレも出ようではないか!」

月乃「……変わり身が早すぎる」

何だかよくわからないけど、とにかく今夜はパーティーをするみたい

……皆ってパーティー好きだよね。これがあの噂のパリピってやつかあ……

そんなこんなで朝が終わった。私はどうしていよっかな……

103 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:37:03.08 ID:w4J4NWnCO





瀬川「あ、お皿どうぞ」

月神「うふふっ、ありがとう」

……暇だし、料理の手伝いをする事にした

と言ってもまだ作り始める訳じゃない。今は仕込みの段階っていうやつだ

月神「臓腑屋さん。何を作ろっか?」

臓腑屋「そうでござるな……夜食として出す故、なるべく軽いものにするでござる」

月神「そうね。なら……」

うんうん。と頷きながらトマトをかじる。酸っぱい野菜特有の青臭さが、今だけは受け入れられた

瀬川「……そう言えばさ、トマトって野菜じゃん」

臓腑屋「どっ、どうしたのでござるか? 急に」

瀬川「でもさあ、最近はフルーツトマトって品種も売られる様になってきたよね」

月神「え、ええ……確かにそうね」

瀬川「で、気になったんだけど……フルーツトマトは野菜なの? それとも果物?」

臓腑屋「にゃ!? そんな事をいきなり言われても困るのでござるよ!?」

月神「どうしていきなりそんな事を……?」

……正直な所、前に見てた特撮で大真面目に話してたなあって思い出しただけなんだけど

まあ、そんなに真剣に考える事は無いよね

瀬川「ごめんごめん。ちょっと気になって……」

月神「トマトは野菜なのよね……なら、フルーツトマトも野菜なのかしら……」

臓腑屋「いやいや、名前にフルーツと付けられているのなら果物なのではないのでござろうか」

……まあ、楽しんでくれたなら何より。かな


104 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:38:05.28 ID:w4J4NWnCO




朝日「あは。スグルくぅん。もう夜だねぇ」

スグル「あれ……? まだお昼頃だと思ってたんですけど……」

竹田「おいおい。爺さんじゃあねえんだぞ? しゃきっとしな。坊主」

スグル「そうですか……? そう……なのかな……」

あっという間に夜になった。なんだか大人の事情的なものも感じるけど……

デイビット「でハ、此より夜会を始めたいと思ウ。参加を希望する者は手を挙げてほしイ」

ゆっくりとデイビット君が切り出してくる。その手を挙げたのは、思ったよりも少なかった

デイビット「……これだけかネ」

スグル「し、仕方無いですよ。動機が動機ですし」

古河「ウチらはともかく、殆どはバラされたない秘密なのかもしれんしな……」

やっぱり、秘密を明かすのは勇気のいる事だ。ましてや他人の、嫌いな人の秘密なら尚更

デイビット「……仕方あるまイ。でハ、今夜は共に語り明かそウ。ゆっくりと、ネ」

臓腑屋「では、それ以外はもう休まれた方が宜しいと思うでござる。色々と考えてしまう故……」

瀬川「そうだね……ふぁああ、眠いや……」

臓腑屋「瀬川殿は寝過ぎではござらんか……?」

月乃「……送っていく。千早希は私に捕まって」

難しい事を考えていたら、眠くなってきちゃった。もう頭を動かすのも億劫になっている

引きずられる様に食堂を退室する。……何処からか強い視線を感じたような気がした

105 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:38:49.69 ID:w4J4NWnCO





月乃「……はい。ここが部屋。もう少し」

瀬川「ふぁああ〜……ありがとぉ、月乃しゃん……」

月乃「……緊張感が無い。秘密、バラされても問題の無いものだった?」

瀬川「ふぇ? ああ、うん……私は大丈夫……」

月乃「……”私は”?」

瀬川「え? あ、いや……言葉の綾だよ、うん」

危ない危ないうっかりしてた……ポロッと陰陽寺さんの秘密をバラす所だったよ……

瀬川「そう言う月乃さんはどうなの? 誰の秘密を持っているの?」

月乃「…………………………」

月乃「…………………………秘密」

瀬川「あ、そう……」

まあ、教えてくれるとは思ってなかったけどね……

ふふふとミステリアスに笑う月乃さん。その顔つきは普段の姿とは違う妖艶さを醸していた

……お兄さんに似ているね。なんて、色々な意味で言うべきじゃないよね。うん

瀬川「……うゅ。それじゃあおやすみぃ〜……」

月乃「……お休み。せめて良い夢を見てね」

良い夢を……ね。そんなつもりは無いと思うけど、それは秘密を明かす事から逃げた皮肉にも聞こえた

でも、もうそんな事はどうでもいい。部屋に入った私は着替える事も忘れてベッドに倒れ込んだ……

106 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:39:47.67 ID:w4J4NWnCO








……ーンポーン、ピーンポーン

「……ぅゆ?」

何だろう……。今の……

ピーンポーン! ピーンポーン!

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!

「う……うわぁああああああ!?!?」

本当に何なの!? 物凄い勢いでチャイム鳴ってるし、扉はひっきりなしにノックされてるし……!

まさか……誰かが私を殺しに……!? どうしよう。今の私は丸腰だし……

……いや、一つだけある。だけど正直やりたくない

でも、さっきからうるさく聞こえるノックを無視して眠れる程鈍感じゃないし……目も冴えちゃったし

やるしかない……かな!

107 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:40:35.72 ID:w4J4NWnCO





スグル「ど、どうしましょう……。瀬川さん出てきませんよ……!?」

駆村「クソ! こんな時に何をして……!」

スグル「あの……本当に部屋にいるんですか?」

スグル「ここまで鳴らしても出ないなんて、もしかして別の場所にいるのかも……」

駆村「最後に見たのは月乃だったな。まさかとは思うが、瀬川も……」

ガチャッ

「待たせたね! さあ、かかってきなさい!」

……なんだ、スグル君と駆村君か。こんな夜更けにデートのお誘いかな?

スグル「あ! 瀬川……さ……」

瀬川「ふふん。どう? 今の私に何をしようとしても無駄なんだからね、スグル君」

スグル「いや、あの……えっと、もしかして聴こえてなかったんですか?」

駆村「お前……! こんな非常事態にいったい何をしているんだ!?」

うるさいなぁさっきから……ていうか、まだ夜中の一時だよ?

いきなり押し掛けてきて、いったい何にキレているんだか……

瀬川「さっきから何の話をしてるの? 聴こえていなかったって何の事?」


108 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:41:37.57 ID:w4J4NWnCO









スグル「……死体発見アナウンスです。ダンスホールで死体が見つかりました」









109 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:42:24.59 ID:w4J4NWnCO






……聞き返す事も、着替える事も忘れて、一心不乱に学園を駆け上がる


寝起きの身体にムチを打って、必死に頭と足を無理矢理に動かして突き進む


死体が発見された……そんな事、私は絶対に信じたくはないけれど


瀬川「はぁ、はぁ……どういう事!?」

月神「瀬川さん!? どこにいたの!?」

陰陽寺「またその格好か、随分と余裕があるな」

瀬川「これについては後で説明するから……そこ、どいて!」




人を掻き分けてホールの中を覗きこむ。そこにあるモノは、私の想像とは違っていた


ホールの中央には人がうつ伏せに倒れていた。最初に見た時は、死体とは全く思えなかった


でも、明らかに何処かに違和感がある。その正体は背中に深々と突き刺さる何かの柄だ


遠目から見ても、深く刺さっていると認識出来る刃物……それは、まるで墓標の様に静かに佇んでいる


―――ふと、彼の言っていた事を思い出した。確かあれは、探索を終えたあの日のお昼に言っていた……




110 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:44:00.38 ID:w4J4NWnCO













『ワタシモ、もう二度とワタシの力を必要としない事を祈っているヨ』





瀬川「デイビット、君……」


ホールに静かに横たわり、ぴくりとも動かない超高校級のプロファイラー。デイビット・クルーガー君

彼がどうして死んでしまったのか? ……それは、今の私には全然わからない

けど、私にはハッキリとわかる事がある

デイビット君の祈りは、叶ったんだ……考えうる限り、最悪の形で



111 : ◆nV158uMR4EBZ [!red_res saga]:2019/05/19(日) 22:45:55.41 ID:w4J4NWnCO









【Chapter2】
  もうやらないと誓ったのさ 非日常編









112 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/05/19(日) 22:47:16.87 ID:w4J4NWnCO
本日ここまで。次回は捜査編です
何かあればどうぞ
113 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:15:27.14 ID:W3JrOh+uO



〜〜〜♪



ハルカ『良い子の皆ー! ココロオドルTVの時間だよー!』

ハルカ『とうとう死体発見……ってあれー!? 何で皆いないのー!?!?』

ヨウ『二階にはモニターが無いからな。ダンスホールや美術室にでかでかとモニターを置けるか?』

ハルカ『そんな所拘らないでよ! もっとこう、ご都合主義全開でいこうよ!』

ヨウ『一番のご都合主義は俺達の存在だけどな。元はテコ入れ用キャラなのに今ではテレビの中だ』

ハルカ『私達だって、本当はねぇ……』

ヨウ『っと、愚痴はここまでだ。さっさと進めるとしようじゃないか』

ハルカ『と、言うわけでバイバーイ! 学級裁判で私と握手!』

ヨウ『なるべくならしたくないんだがな』




114 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:16:40.22 ID:W3JrOh+uO





……少し、状況を整理しよう

ホールの中では、倒れているデイビット君

その背中に突き刺さっている刃物は彼の命を奪った物だと主張している

その凶器は、真上にあるシャンデリアの華やかな光に当てられて幻想的な輝きを放っていた

一歩。私がデイビット君に近づこうとすると、後ろからぐいと強い力で引き戻される

私を掴んでいたのは陰陽寺さん。私の代わりに前に進んでいって……

御影「お、陰陽寺さーん……もしかして、まだ……」

陰陽寺「死んでいる。もう無駄だ」

月神「……っ! そんな……っ!」

冷酷な宣言が告げられる。既に死んでいるから何をしても……祈っても無駄なんだと

朝日「でもぉ、どうしてホールにいるのぉ? 確かデイビット君は食堂にいたんじゃないのかなぁ?」

飛田「そ、そんな事はともかくだ……ッ」

飛田「し……死んだとはどういう事だッ、何故こうなってしまったのだ!?」

モノクマ「どうもこうもないよ。起きちゃったんだよ……殺、人、事、件!!」



115 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:17:19.98 ID:W3JrOh+uO

モノクマ「うぷぷぷ……やっぱり発破をかけたのが効いたのかな?」

モノクマ「でもリミットギリギリになって行動するのは遅すぎるよね。夏休みの宿題は最終日まで放っておくタイプと見た!」

ねちっこく、うぷうぷと笑いながら歩いてくるモノクマ。その足音すら苛立ちの原因になる程嫌らしい

全員からの敵意のこもった視線を一身に浴びても、その姿からは余裕が溢れていた

照星「なんなんっすかモノクマ……いったい何しにきたんすか!」

駆村「俺達をおちょくりに来たのか!?」

モノクマ「まっさかぁ! ボクはいつでも金と権力と生徒の味方だよ?」

竹田「前の二つで台無しになってねえか?」

モノクマ「今回もモノクマファイルを用意させていただきました。存分に推理に使ってちょーだい!」

スグル「……どうして、モノクマは僕達にヒントになるような情報を渡すんですか?」

言われてみると、確かにモノクマは私達にも公平になる様に情報を与えている。まるでどちらにも争う事を望む様に

モノクマ「あんまりクロのワンサイドゲームになるとツマラナイからね。33−4位ボロカスに負けてるとやる気も無くなるでしょ?」

古河「なんでや! 阪神関係ないやろ!?」

要するに、私達に真面目に学級裁判をして欲しいって事なのかな……でもそれはどうして……?

116 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:18:20.96 ID:W3JrOh+uO

朝日「つまらないってぇ……」

臓腑屋「ゲーム感覚でござるか……」

微妙な空気が流れていく。形容しがたい脱力感が、重たく身体にのしかかる

それを壊したのは……少しだけ、意外な人物だ

月乃「……渡した相手はともかく、モノクマファイルは絶対に必要」

月乃「……学級裁判を生き残らないと、私達も死んでしまう」

月乃「……そうなると、殺されたデイビットも浮かばれない。……やるしか、ない」

静かに。けれども強い決意を秘めた声色で月乃さんが前を……モノクマを見据える

ぽつぽつと呟くその言葉からは、普段の大人しげな態度と変わらないのに……不思議と力強く聞こえた

月神「……そうね。やりましょう!」

モノクマ「うんうんヤる気に満ちているね。どうせならその豊満なバストで悩殺しちゃえば?」

月乃「殺すぞ」

モノクマ「あ〜ららら……それじゃオマエラ、捜査頑張ってちょ!」

睨み殺すと言わんばかりにモノクマを射竦める。さしものモノクマもこれにはタジタジだ

転がり逃げる様にホールから去っていく。残された私達も、もう進まないといけない……

もうやらないと誓ったはずの……学級裁判の為に……

117 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:18:58.95 ID:W3JrOh+uO

【捜査 開始】



月神「……まずは、現場の保全係を決めましょう」

未だ動揺が色濃く残る中、リーダーである月神さんが進んで仕切り始める

前まではデイビット君が仕切っていたけど、当の彼は被害者……私達でなんとかしないとダメなんだ

月神「まずは……陰陽寺さん。頼めるかしら?」

陰陽寺「………………」

古河「返事したりや……わからんやろ……」

月神「大丈夫よ。わかるから……それと、後の一人は誰もいないなら私が……」

照星「あ! なら自分がやるっすよ!」

月神「……いいの? 照星さん」

照星「正直、自分は推理出来ねーっすからこれくらいは役に立ちたいんすよ」

照星「……コロシアイを防ぐのは無理でも、自分には勝てないって証明するのは出来るっすから!」

自信ありげに笑った彼女は、グッと掌を握り両手を曲げる。俗に言うファイティングポーズだ

今の照星さん相手に敵う人はいない。そう感じる程に気迫とやる気に満ちている

……まあ、照星さんがクロじゃなかったら。の場合だけどね

118 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:19:40.86 ID:W3JrOh+uO

月神「決める事は決めたわね……なら、一度ここでモノクマファイルの確認をしておきましょう」




【モノクマファイル2】
 被害者はデイビット・クルーガー
 死体発見場所は二階ダンスホールエリア
 死因は心臓部を刺傷した事によるショック死
 死亡推定時刻は夜11半頃
 身体には外傷は無く、また、薬物及び薬品を接種した形跡は無い




駆村「天地の時よりも詳しくないか?」

月乃「……検死が出来たのはデイビットだけ。私達が大幅にピンチになる」

竹田「その分向こう側で補ったって事か。感謝すべきじゃねえけどな」

臓腑屋「全くでござるな……」

デイビット君の死因はショック死……確か天地さんは失血死だったから、同じ刺殺でも違うみたい

私には細かい事はわからないけど……誰か詳しい人とかいるのかな……?



GET:コトダマを入手しました
【モノクマファイル2】
 被害者はデイビット・クルーガー
 死体発見場所は二階ダンスホールエリア
 死因は心臓部を刺傷した事によるショック死
 死亡推定時刻は夜11半頃
 身体には外傷は無く、また、薬物及び薬品を接種した形跡は無い

119 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:20:16.51 ID:W3JrOh+uO


瀬川「う〜ん、凶器は背中に刺さってるよね」

それなら、デイビット君は犯人に対して背中を向けていた事になる。天地さんは揉み合いの末で刺されたから、お腹に刺されたんだし

瀬川「となると、犯人は隠れていてデイビット君を刺したのかな?」

ダンスホールにはお誂え向きに、鎧兜が陳列されてある。この中に隠れればもしかして……

竹田「あー、悪いとは思うけどよ。鎧兜の中に隠れるのは無理だと思うぜ」

瀬川「うわぁ!? 心を読まれた!?」

竹田「鎧ってのは見た目よりも重いモンだ。それこそ戦争に使われた防具なんだからな」

竹田「そんなモン着ていざ殺すとなってみろ。重さで脱げなくなるから難儀しちまうだろ?」

瀬川「あ、ホントだ……」

鎧を一つ手に取ると、それだけでずっしりとした質感が手に伝わってくる

これを何とかして着た後、咄嗟に脱いでデイビット君を刺すのは、私でも少し厳しいかな……

竹田「俺から言わせてみりゃあ、ブッ刺すよりも鎧でブン殴った方が速く片付くと思うがね」



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【ダンスホールの鎧兜】
 鎧兜はとても重い。これを脱いで犯行に及ぶのは難しいと思われる

120 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:21:25.06 ID:W3JrOh+uO

瀬川「え〜……じゃあ竹田さんはどう思う?」

竹田「さあな……ただ今回の犯人はやべえぞ。相当なバケモンだなこりゃあ」

ん? バケモン? いつでもポケットにモンスターじゃなくて?

瀬川「それってどういう意味? もしかして超能力とか言っちゃったり?」

竹田「そこまでトンチキな事は言わねえよ。こっち来て見てみろ嬢ちゃん」

竹田「デイビットの坊主に刺さったこの凶器、美術室の彫刻刀じゃあねえのか?」

言われてみると、その刃物の柄は凶器の類いというよりも工具の様な印象を受ける

それに彫刻刀……版画に使う様な長いものなら心臓に突き刺せば殺す事が出来るかも

瀬川「あ……言われてみればそうかも……」

竹田「幾ら長いったって彫刻刀は人を刺す道具じゃねえ。要するに殺しには向いてねえんだよ」

竹田「そんな刃物を心臓に一撃で。尚且即死させるなんて素人には無理なのさ」

瀬川「へぇ〜、なら私には出来ないのかな?」

竹田「普通にやればな。だがよ、強い力を加えれば何とかってトコだな」

例えばトンカチみたいによ。とカンカンと釘を打つジェスチャーをする竹田さん

よくわからないけど……普通に刺すだけじゃ無理って事だけはわかったかな

……なら、犯人はいったいどうやって?



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【竹田の証言】
 彫刻刀等の小さな刃物で、心臓部に刺して殺すには通常のやり方では不可能
 強い力を加えればあるいは……?

121 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:22:25.45 ID:W3JrOh+uO

……なんだかよくわからなくなってきた

兎に角、犯人はデイビット君に近づいて背中に刃物を刺したのは間違いないんだ

ならばその方法さえ逆算出来れば……!

瀬川「ちょっと皆ー! 手の空いてる人いるー?」

スグル「あ、はい。なんですか?」

月神「どうかした? 瀬川さん」

瀬川「ねえねえ! 少し”だるまさんがころんだ”をしようよ!」

照星「……は?」

スグル「い、今から……ですか?」

竹田「オイオイ現実逃避は止めておけ。嬢ちゃん」

……しまった。わかりやすい言い方にしたけど、これだと私がおかしくなったみたいじゃん!

瀬川「そうじゃなくて……ただ、ホールの外側から犯人が来るのはどのくらいかかるのかなって思ったからさ」

瀬川「少し、実験に付き合ってくれないかな?」

陰陽寺「必要ない。時間の無駄だ」

即答。そして即刀を抜いて私に向ける。斬りかかるつもりは無さそうなのが、少し私に余裕を持たせた

瀬川「どうして? そんなのやってみないとわからないじゃん!」

陰陽寺「言って理解出来ない奴に説明する必要は無い。したいなら勝手にしろ」

瀬川「……むっかーっ!」

わざわざ冷たい返しをしてくるのが頭に来る。いいもん、そんな事言うなら勝手にしてやるんだから!

122 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:23:46.06 ID:W3JrOh+uO

瀬川「それじゃあ、私が後ろを向くからスグル君は外から来てね」

瀬川「それで、私が気づいたら振り向くからその時点でスグル君は止まってね!」

スグル「わかりました!」

簡単に事件の再現をしつつ状況を探る。周りの視線はこの際気にしない事にしようっと

目を瞑って後ろを向く、事件当時、デイビット君は恐らくこういう体勢になっていたはず……

程無くして、大きく反響する足跡が聴こえた。これは間違いなくスグル君の足音……!

瀬川「そこだぁっ! ……って、アレ?」

確かにそこにスグル君はいた。ただ、いたのは入口から数歩進んだだけの場所……

あれだけ遠くにいたら、殺すどころか触れる事すら不可能だ

月神「ダンスホールはよく響くものね。少し歩いただけでもあんなに音が鳴るもの」

照星「自分でも無理っすよ。多分臓腑屋先輩や駆村先輩、陰陽寺先輩でも無理なんじゃないっすか?」

瀬川「そっかぁ……」

陰陽寺「そんな事にも気づかなかったのか。だから現実と空想の判別が出来ないんだ」

瀬川「むっかーっ!」

そういう事言う!? ただ私は可能性を考えているだけなのに!

陰陽寺さんに詰め寄ると、彼女は少しも身動ぎせずに視線を私から離さない

その態度に、カチンときた。思いっきり胸ぐらを掴んで……気づいた

123 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:24:45.77 ID:W3JrOh+uO

瀬川「……あれ? なんでデイビット君はこんな所で殺されたの?」

そうだ。よく考えてみれば不自然なんだ。ホールで殺されたとしたら、こんな真ん中まで来て犯人に気づかなかった事になる

なら、もしかして死体を引っ張ってきた。とか……

瀬川「陰陽寺さん。デイビット君を引っ張れる?」

陰陽寺「やる意味が無い」

照星「やってみなきゃわかんないっすよ!」

陰陽寺さんの代わりにデイビット君の向きを変えてくれた照星さん。でも、照星さんでも少し辛そうだ

照星「んー死体を引き摺った後は無さそうっすね」

瀬川「なら、やっぱりここで……?」

だとしたらどうしてデイビット君は……あれ? 何か下にモノが落ちている。引っ張った事で出てきたんだ

瀬川「ちょっと……これって、手鏡?」

月神「それは……もしかしたら飛田君の物じゃないかしら?」

瀬川「何で飛田君の物がこんな所に……」

これは、もしかしたらとんでもない証拠になるかもしれない。後で本人に確認を取っておこう

……だけど、考えれば考える程、この事件は不可解な事ばっかり出てくるなぁ……


GET:コトダマを入手しました
【だるまさんがころんだ】
 瀬川とスグルで行った実験。どの程度の位置で外からの人間が判断出来るか試していた
 結論として、音が反響するので入口付近で気づく事が出来る

【死体の違和感】
 デイビットの死体はホールの真ん中に倒れていた
 死体を外部から引き摺った後は無いようだが……

124 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:25:59.42 ID:W3JrOh+uO





……現場で出来る事は粗方済ませた。そろそろ別の場所を捜査しよう

そこでやって来たのは美術室。今回の凶器として使われた彫刻刀があった場所だ

瀬川「ええと……彫刻刀はどこかなっと……」

駆村「何か探し物か? 瀬川」

御影「良ければ手伝ってあげてもいいよ!」

瀬川「あ、二人ともいたんだ」

奥から現れたのは、少し珍しい組み合わせの駆村君と御影君

そう言えば、この二人は夜に食堂に残っていた中の一人だったんだっけ?

殺されたデイビット君もあの中にいたんだし、話を聞いておくべきだよね……

瀬川「ねえ。それは後にするから事件が起きる前の事を教えてほしいんだけど……」

御影「えぇ!? ボク達疑われているの!?」

駆村「仕方が無いか……確かに、俺達はデイビットと接触するチャンスが幾らでもあったしな」

二人の顔には、困惑と納得が色濃く出ている。御影君はあわあわと動揺し、駆村君はため息をついた

やがて、駆村君は覚悟を決めたのか―――昨晩の事を語り始めた

125 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:27:01.14 ID:W3JrOh+uO

駆村「夜時間が始まった頃……俺達は普通に飲み食いしていたんだ」

御影「そうそう! 美味しかったよね〜」

駆村「元々は秘密を打ち明け合う事が目的だったんだが、流石にいきなりはな……」

うんうんと適当に相づちを打ちながら考える。どうすればあの不可解に答えをつけれらるのかを

料理に毒は入っていなかったと思うしなぁ……もう少し話を聞いてみよう

駆村「それで、少し経った後……飛田が来たんだ」

瀬川「飛田君が?」

御影「そうなんだよね〜、いきなりオレの鏡はどこだなんて言ってきてさぁ!」

駆村「まあ、俺達は知らない。明日にでも探したらどうだと答えたら直ぐに戻っていったけどな」

鏡……月神さんの言うように、アレは多分飛田君のモノで間違いなさそうだね

御影「で、その後少し経った頃だっけ? デイビットクンがどっか行っちゃったの!」

瀬川「え? 飛田君の後に?」

駆村「まあ偶々だとは思うぞ? 急に姿が見えなくなったんだ」

駆村「それで、皆で探してみたんだ。それで二階のダンスホールで……」

そこで、駆村君は首を横に振る。何があったかは見当がつくから、聞く気にならなかった

126 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:27:46.42 ID:W3JrOh+uO

瀬川「……因みに、メンバーは?」

御影「ええっと、デイビットクン以外はね……」

御影「ボクと駆村クン、竹田さんに古河さん。後はスグルクンに月神さんに、照星さんだよ!」

……デイビット君を含めると合計8人。私達の中の過半数は残った事になるね

瀬川「ふぅん……なら、皆は誰が誰に投票したかは知っているの?」

駆村「……俺は教えてある。それは月神じゃない」

駆村「正直、必要になるまで黙っていて貰っていていいか? あまり大っぴらに話す事でも無いしな」

瀬川「うん。わかったよ」

駆村君は言ってあるんだ……でもそれを私に言うって事は証拠にはならなさそうかな

駆村「これも言っておくが、流石に、全員がずっと食堂にいたかは自信がないな……」

駆村「これが、あの朝まで語ろう会の全てだな」

御影「あれ!? そんな名前だったっけ!?」

頭の中で出来事を整理していく。アニメをコマ回しするように、丁寧に

まず夜時間が始まった頃……10時位に二組に別れた

そして、それから少し経って飛田君が食堂に来た。直ぐに帰ったみたいだけどね

その後、デイビット君がいなくなった……

ほとんどの人は食堂にいたけど、ずっと居たかどうかは断言出来ない。と


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【朝まで語ろう会】
 夜10時頃、食堂に数名集まっていた
 少し経った頃、飛田が食堂に来たが直ぐに帰った
 そして、その少し後にデイビットはいなくなったようだ
 参加していたメンバーは御影、駆村、古河、スグル、竹田、月神、照星

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