【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.2

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120 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:21:25.06 ID:W3JrOh+uO

瀬川「え〜……じゃあ竹田さんはどう思う?」

竹田「さあな……ただ今回の犯人はやべえぞ。相当なバケモンだなこりゃあ」

ん? バケモン? いつでもポケットにモンスターじゃなくて?

瀬川「それってどういう意味? もしかして超能力とか言っちゃったり?」

竹田「そこまでトンチキな事は言わねえよ。こっち来て見てみろ嬢ちゃん」

竹田「デイビットの坊主に刺さったこの凶器、美術室の彫刻刀じゃあねえのか?」

言われてみると、その刃物の柄は凶器の類いというよりも工具の様な印象を受ける

それに彫刻刀……版画に使う様な長いものなら心臓に突き刺せば殺す事が出来るかも

瀬川「あ……言われてみればそうかも……」

竹田「幾ら長いったって彫刻刀は人を刺す道具じゃねえ。要するに殺しには向いてねえんだよ」

竹田「そんな刃物を心臓に一撃で。尚且即死させるなんて素人には無理なのさ」

瀬川「へぇ〜、なら私には出来ないのかな?」

竹田「普通にやればな。だがよ、強い力を加えれば何とかってトコだな」

例えばトンカチみたいによ。とカンカンと釘を打つジェスチャーをする竹田さん

よくわからないけど……普通に刺すだけじゃ無理って事だけはわかったかな

……なら、犯人はいったいどうやって?



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【竹田の証言】
 彫刻刀等の小さな刃物で、心臓部に刺して殺すには通常のやり方では不可能
 強い力を加えればあるいは……?

121 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:22:25.45 ID:W3JrOh+uO

……なんだかよくわからなくなってきた

兎に角、犯人はデイビット君に近づいて背中に刃物を刺したのは間違いないんだ

ならばその方法さえ逆算出来れば……!

瀬川「ちょっと皆ー! 手の空いてる人いるー?」

スグル「あ、はい。なんですか?」

月神「どうかした? 瀬川さん」

瀬川「ねえねえ! 少し”だるまさんがころんだ”をしようよ!」

照星「……は?」

スグル「い、今から……ですか?」

竹田「オイオイ現実逃避は止めておけ。嬢ちゃん」

……しまった。わかりやすい言い方にしたけど、これだと私がおかしくなったみたいじゃん!

瀬川「そうじゃなくて……ただ、ホールの外側から犯人が来るのはどのくらいかかるのかなって思ったからさ」

瀬川「少し、実験に付き合ってくれないかな?」

陰陽寺「必要ない。時間の無駄だ」

即答。そして即刀を抜いて私に向ける。斬りかかるつもりは無さそうなのが、少し私に余裕を持たせた

瀬川「どうして? そんなのやってみないとわからないじゃん!」

陰陽寺「言って理解出来ない奴に説明する必要は無い。したいなら勝手にしろ」

瀬川「……むっかーっ!」

わざわざ冷たい返しをしてくるのが頭に来る。いいもん、そんな事言うなら勝手にしてやるんだから!

122 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:23:46.06 ID:W3JrOh+uO

瀬川「それじゃあ、私が後ろを向くからスグル君は外から来てね」

瀬川「それで、私が気づいたら振り向くからその時点でスグル君は止まってね!」

スグル「わかりました!」

簡単に事件の再現をしつつ状況を探る。周りの視線はこの際気にしない事にしようっと

目を瞑って後ろを向く、事件当時、デイビット君は恐らくこういう体勢になっていたはず……

程無くして、大きく反響する足跡が聴こえた。これは間違いなくスグル君の足音……!

瀬川「そこだぁっ! ……って、アレ?」

確かにそこにスグル君はいた。ただ、いたのは入口から数歩進んだだけの場所……

あれだけ遠くにいたら、殺すどころか触れる事すら不可能だ

月神「ダンスホールはよく響くものね。少し歩いただけでもあんなに音が鳴るもの」

照星「自分でも無理っすよ。多分臓腑屋先輩や駆村先輩、陰陽寺先輩でも無理なんじゃないっすか?」

瀬川「そっかぁ……」

陰陽寺「そんな事にも気づかなかったのか。だから現実と空想の判別が出来ないんだ」

瀬川「むっかーっ!」

そういう事言う!? ただ私は可能性を考えているだけなのに!

陰陽寺さんに詰め寄ると、彼女は少しも身動ぎせずに視線を私から離さない

その態度に、カチンときた。思いっきり胸ぐらを掴んで……気づいた

123 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:24:45.77 ID:W3JrOh+uO

瀬川「……あれ? なんでデイビット君はこんな所で殺されたの?」

そうだ。よく考えてみれば不自然なんだ。ホールで殺されたとしたら、こんな真ん中まで来て犯人に気づかなかった事になる

なら、もしかして死体を引っ張ってきた。とか……

瀬川「陰陽寺さん。デイビット君を引っ張れる?」

陰陽寺「やる意味が無い」

照星「やってみなきゃわかんないっすよ!」

陰陽寺さんの代わりにデイビット君の向きを変えてくれた照星さん。でも、照星さんでも少し辛そうだ

照星「んー死体を引き摺った後は無さそうっすね」

瀬川「なら、やっぱりここで……?」

だとしたらどうしてデイビット君は……あれ? 何か下にモノが落ちている。引っ張った事で出てきたんだ

瀬川「ちょっと……これって、手鏡?」

月神「それは……もしかしたら飛田君の物じゃないかしら?」

瀬川「何で飛田君の物がこんな所に……」

これは、もしかしたらとんでもない証拠になるかもしれない。後で本人に確認を取っておこう

……だけど、考えれば考える程、この事件は不可解な事ばっかり出てくるなぁ……


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【だるまさんがころんだ】
 瀬川とスグルで行った実験。どの程度の位置で外からの人間が判断出来るか試していた
 結論として、音が反響するので入口付近で気づく事が出来る

【死体の違和感】
 デイビットの死体はホールの真ん中に倒れていた
 死体を外部から引き摺った後は無いようだが……

124 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:25:59.42 ID:W3JrOh+uO





……現場で出来る事は粗方済ませた。そろそろ別の場所を捜査しよう

そこでやって来たのは美術室。今回の凶器として使われた彫刻刀があった場所だ

瀬川「ええと……彫刻刀はどこかなっと……」

駆村「何か探し物か? 瀬川」

御影「良ければ手伝ってあげてもいいよ!」

瀬川「あ、二人ともいたんだ」

奥から現れたのは、少し珍しい組み合わせの駆村君と御影君

そう言えば、この二人は夜に食堂に残っていた中の一人だったんだっけ?

殺されたデイビット君もあの中にいたんだし、話を聞いておくべきだよね……

瀬川「ねえ。それは後にするから事件が起きる前の事を教えてほしいんだけど……」

御影「えぇ!? ボク達疑われているの!?」

駆村「仕方が無いか……確かに、俺達はデイビットと接触するチャンスが幾らでもあったしな」

二人の顔には、困惑と納得が色濃く出ている。御影君はあわあわと動揺し、駆村君はため息をついた

やがて、駆村君は覚悟を決めたのか―――昨晩の事を語り始めた

125 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:27:01.14 ID:W3JrOh+uO

駆村「夜時間が始まった頃……俺達は普通に飲み食いしていたんだ」

御影「そうそう! 美味しかったよね〜」

駆村「元々は秘密を打ち明け合う事が目的だったんだが、流石にいきなりはな……」

うんうんと適当に相づちを打ちながら考える。どうすればあの不可解に答えをつけれらるのかを

料理に毒は入っていなかったと思うしなぁ……もう少し話を聞いてみよう

駆村「それで、少し経った後……飛田が来たんだ」

瀬川「飛田君が?」

御影「そうなんだよね〜、いきなりオレの鏡はどこだなんて言ってきてさぁ!」

駆村「まあ、俺達は知らない。明日にでも探したらどうだと答えたら直ぐに戻っていったけどな」

鏡……月神さんの言うように、アレは多分飛田君のモノで間違いなさそうだね

御影「で、その後少し経った頃だっけ? デイビットクンがどっか行っちゃったの!」

瀬川「え? 飛田君の後に?」

駆村「まあ偶々だとは思うぞ? 急に姿が見えなくなったんだ」

駆村「それで、皆で探してみたんだ。それで二階のダンスホールで……」

そこで、駆村君は首を横に振る。何があったかは見当がつくから、聞く気にならなかった

126 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:27:46.42 ID:W3JrOh+uO

瀬川「……因みに、メンバーは?」

御影「ええっと、デイビットクン以外はね……」

御影「ボクと駆村クン、竹田さんに古河さん。後はスグルクンに月神さんに、照星さんだよ!」

……デイビット君を含めると合計8人。私達の中の過半数は残った事になるね

瀬川「ふぅん……なら、皆は誰が誰に投票したかは知っているの?」

駆村「……俺は教えてある。それは月神じゃない」

駆村「正直、必要になるまで黙っていて貰っていていいか? あまり大っぴらに話す事でも無いしな」

瀬川「うん。わかったよ」

駆村君は言ってあるんだ……でもそれを私に言うって事は証拠にはならなさそうかな

駆村「これも言っておくが、流石に、全員がずっと食堂にいたかは自信がないな……」

駆村「これが、あの朝まで語ろう会の全てだな」

御影「あれ!? そんな名前だったっけ!?」

頭の中で出来事を整理していく。アニメをコマ回しするように、丁寧に

まず夜時間が始まった頃……10時位に二組に別れた

そして、それから少し経って飛田君が食堂に来た。直ぐに帰ったみたいだけどね

その後、デイビット君がいなくなった……

ほとんどの人は食堂にいたけど、ずっと居たかどうかは断言出来ない。と


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【朝まで語ろう会】
 夜10時頃、食堂に数名集まっていた
 少し経った頃、飛田が食堂に来たが直ぐに帰った
 そして、その少し後にデイビットはいなくなったようだ
 参加していたメンバーは御影、駆村、古河、スグル、竹田、月神、照星

127 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:28:51.01 ID:W3JrOh+uO

瀬川「じゃあ、全員でデイビット君を探したんだ」

御影「いや? ボクと古河さんは一階にいたよ!」

瀬川「そうなの? 全員で探した方が早く見つかると思うんだけど」

駆村「全員で行くと入れ違いになるかもしれない。だから俺達は三組に別れていたんだ」

あーそっか。全員がいきなりいなくなると、流石にデイビット君も困惑するだろうしね

そうならない様に何人かは一階で待っていたんだ。合理的……

駆村「まず、竹田さんと月神が食堂に残ったんだ」

駆村「そして、一階を御影と古河が……」

駆村「二階を俺とスグル、照星で探したんだ」

ダンスホールがあったのは二階だから……駆村君とスグル君と照星さんが第一発見者になるね

瀬川「……あれ? 三人とも犯人見なかったの?」

御影「ボクら全員見てないよ! だってアナウンス鳴ってから初めて二階に上がったんだし!」

駆村「その事については俺達も見ていない。一階に いた全員が集まった後、他の生徒も来たんだ」



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【三組のアリバイ】
 デイビットが居なくなった際、食堂にいた生徒は三組になり探していた
 竹田と月神は食堂に残り、古河と御影は一階を。駆村とスグルと照星が二階を探し、三人が死体を発見した
 尚、三組の誰も他の生徒とは会っていないと言う

128 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:29:29.50 ID:W3JrOh+uO

駆村「話し込んで悪いな……瀬川は何の用だ?」

瀬川「そうそう。実はね……」

ようやく私のターンが回ってきた。せっかくだし、二人にも本題を手伝って貰おう

『凶器は、もしかしたら美術室にある彫刻刀かもしれないから確認しに来たんだ』

そう言うと、二人は面食らった様に驚いて……

御影「えぇ!? それは本当かい!?」

駆村「何かの間違いじゃないのか? あんな小さな刃物で人を殺せるのか?」

瀬川「だからそれを確認しに来たんだってば……」

駆村「わかった! そう言う事なら俺達も手伝う。御影もそれでいいよな?」

御影「えぇー面倒臭いなぁ……睨まないでよ!」

瀬川「ありがとう!」

二人は快く引き受けてくれた。御影君は少し脅しも入れたけどね

兎に角ここの捜査を始めよう。人手もあるから直ぐに終わりそうかな……?

129 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:30:46.18 ID:W3JrOh+uO

駆村「取り合えず、それらしい物を集めたぞ」

ガチャガチャと音を立てながら、箱に無造作に放り込まれた彫刻刀の群れがいきり立つ

その中の一つに、紛れもなくデイビット君に突き刺さったソレはあった

特徴的な柄の彫刻刀を手に取る。刃先は結構長くてちょっとしたナイフみたい

だけど、やっぱり彫刻刀は彫刻刀。これで殺そうとなるとかなり心許ないよね……

駆村「本当にこれなのか? 俺には凶器には見えないが……」

眺めてみると、本当にこれで人を殺せるのか疑問に思う。持ち運びは簡単そうなんだけどな……

御影「見てみて! こんなん見つけたんだけど!」

瀬川「……ナニコレ?」

御影君が取り出してきたのはポケットにギリギリ入る様な箱だった。中には工具らしきものが入れられているのが確認できる

ニッパーにハンマーにカッターにドライバー。凶器のオンパレードみたいなラインナップだけど……

御影「工具セットだってさ! 日曜大工とかに使えそうだよね! きっと犯人はコレを使ってデイビットクンを……」

駆村「これは……一つしかなかったのか?」

瀬川「それに、なんだか封も開いてないように見えるけど……」

御影「え……あ、うん。ソウダネ……」

……一つしか無い上に未開封。これは事件とは関係無さそうだね


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【彫刻刀】
 凶器となった刃物。美術室のモノで間違い無い

【工具セット】
 様々な工具が閉まってある。未開封で一つ限り

130 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:31:24.87 ID:W3JrOh+uO




美術室の捜査もこんな所かな。後は……

瀬川「ねえ、飛田君がどこにいるか知らない?」

駆村「飛田? 知らないな……」

御影「あ、ボク見たよ! 多分更衣室じゃない?」

瀬川「更衣室?」

更衣室って、確かダンスホールの隣にある部屋だよね……何でそこに?

御影「さぁ? 流石にそこまでは知らないけど」

瀬川「……まぁいいや。ありがと、二人とも」

瀬川「それじゃあ、私は更衣室に行ってくるね。後はヨロシク!」

そうと決まったら善は急げ。また何処かへ雲隠れされる前に行かないとね!

駆村「あ、おい! 後は。って……」

御影「あーっ!? ここ、こんなにグチャグチャになってる!?」

駆村「まさかあいつ一人でこんなに……? 瀬川には整理整頓の概念はないのか……?」

御影「……ねえ、これボク達で片さないとダメ?」

駆村「だよな……全く、アイツは……本当に……」

御影・駆村「「はぁ……」」

131 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:32:24.67 ID:W3JrOh+uO





古河「おっ、瀬川やん。どないしたん?」

瀬川「古河さん! 飛田君見た!?」

臓腑屋「飛田殿でござるか? それなら先程……」

瀬川「えっ……もういないの……?」

嘘でしょ? まさかまたすれ違ったんじゃ……

飛田「ハハハハハ! オレに会いたかったかね!」

臓腑屋「来たばかりでござるよ!」

瀬川「脅かさないでよ!」

……全く笑えない。心臓は未だにうるさく、バクバクと声高に鳴っている

いきなり出てきた飛田君を軽く睨んで、聞きたい事を突きだした

瀬川「ねえ飛田君。もしかして探し物とか……」

飛田「そう! そうなのだ! オレの手鏡がどこにも無いのだぁああ!!」

古河「うっさ! 何処に忘れたねん!」

飛田「今朝、食堂で髪を整えたのを最後に何処かへ雲隠れしてしまったのだ! くぅううう!!」

瀬川「食堂……? 臓腑屋さん。見た?」

臓腑屋「いや、拙者は全く見てないでござる」

食堂には私達がいたけど、そんなもの私は見ていない。月神さんもそんな事は言ってなかったし……

飛田「学園内のどこにも無かった! 夜に食堂にいた連中も知らないという! 何処だ! 何処に消えてしまったんだああああああ!!」

古河「わーったわーった! 見つけたら教えたるからちっと黙ってくれや!」

……本当にうるさい。実は持ってまーすって言いたいけど、今は我慢、我慢……


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【飛田の手鏡】
 デイビットの下に落ちていた。飛田の私物
 食堂に置き忘れたらしいが、瀬川は見ていない

132 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:33:03.79 ID:W3JrOh+uO


無くなった鏡をデイビット君が持っていた……これはどういう事なんだろう

犯人が持っていたの奪った? それともデイビット君が持っていたの?

どちらにしても、何か違和感が……

臓腑屋「いやはや、まさか鏡であれだけ騒いでいたとは思わないでござる」

臓腑屋「瀬川殿も食堂にいたでござるな。拾っていたりしていないでござるな?」

瀬川「…………え? う、うん! モチロン!」

実は持ってまーす。なんて言える訳ない。でも深く突っ込まれると私が持っている事がバレる……

とにかく、ここは誤魔化すしかない。何とか適当に言い訳しないと……!

瀬川「あ、私更衣室の捜査しないと! じゃ!」

臓腑屋「あ、ちょっ!? 瀬川殿ーーー!?!?」

かなり苦しいけど戦略的撤退だからセーフ! 少し更衣室で休んでよっと

古河「……幾らなんでも唐突すぎひんか?」

臓腑屋「にゃあ……」

133 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:33:45.38 ID:W3JrOh+uO





瀬川「はぁ……何とか撒いた……」

自分でも唐突で適当な言い訳だとは思う。せっかくだし適当に捜査しようかな……

瀬川「でも事件とは関係な……あれ?」

更衣室の窓際の壁、少し凹んでる? 普通にモノをぶつけたり、蹴った程度でつく傷には見えない

瀬川「んー……けど争いがあった風には見えないんだけどなぁ」

更衣室の中は綺麗そのもの。血痕はおろか塵芥すら落ちていない

まるでさっき掃除をしたかの様に、辺り一面がピカピカに輝いている

……? 前に来たときここまで綺麗だったっけ……?

瀬川「……少し調べてみよっと」

微かな違和感。それに引かれる様にロッカーの中を調べてみる

……結論から言うと、証拠になりそうな物は見つからなかった。……一つを除いて

瀬川「ジャージ? ってこれ血がついてる!?」

血の付着したジャージ。間違いなくデイビット君を殺した際に着ていたものだろう

それが女子の更衣室にあった……という事は、犯人は女子……?

でも、それだと竹田さんの証言とは矛盾が起きる。これはどういう事なんだろう……



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【更衣室の壁の傷】
 更衣室の窓際に、何かをぶつけた様な傷があった
 普通に蹴飛ばしただけではつかないが……

【綺麗な更衣室】
 事件後、更衣室が不自然に掃除されていた

【ジャージ】
 全校生徒に配られたジャージ。女子更衣室のロッカーに隠されていた
 血が付着している

134 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:34:28.71 ID:W3JrOh+uO

瀬川「何だろう、この感じ……」

何かがおかしい、妙な感覚。まるで間違った数式を無理に進めていく様な……

瀬川「もう少し細かく捜査して……」

月乃「……いた」

瀬川「うわぁああああ!?!?」

気配を消して、スッと現れた月乃さん。私は窓辺にいたから、驚いた勢いで前のめりになって……

瀬川「…………ふぇ?」

月乃「……………………あ」

一瞬、私の世界から足場が消えた。そして、急速に降りかかる重力が下へ下へと私を落とす

もしかしなくても、これって飛び降りじ……

瀬川「お、おおお落ちるうううううう!?!?」

月乃「……騒がないで」ガシッ

間一髪。宙ぶらりんの姿勢で止まる。腰を掴んでいる月乃さんの腕がやけに頼もしい

と言うか、今のこの危機的状況は月乃さんのせいでもあるんだけどね……

月乃「……高校生にもなって水玉はどうかと思う」

瀬川「うるさいな! 早く助けてよ!」

物理的に頭に血が上ってクラクラする。何で私がこんな目に……

朦朧とする意識で確認する。真横にあるホールからは心配してくれたのか、何人かが顔を出して此方を見てくれていた

『嬢ちゃーん。自殺するのは止めてくれよー』

瀬川「違うからー……」

引き上げられながら返答する。顔を向けると壁際の辺りに不自然な染みを発見した

手を伸ばして触ろうとしても、意外と離れてるから届かない……

月乃「……? まだ引き上げない?」

瀬川「ゴメン今すぐ引き上げて。死ぬ死ぬ……!」

135 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:35:09.69 ID:W3JrOh+uO

瀬川「死ぬかと思った……」

月乃「……面目ない」

朝日「あはは。月乃ちゃんと瀬川さんってぇ、仲がいいんだねぇ」

九死に一生を得た私を見ながらケラケラと笑う朝日君。こんな目に合わせた張本人である月乃さんと瓜二つな分、イライラが溜まっていく……

瀬川「で? 何か用? それとも私を突き落としに来ただけだったりする?」

朝日「あは。そんなに怒っているとシワが出来ちゃうよぉ? 深呼吸。深呼吸〜」

殴りたい。寧ろ殴らせて

月乃「……そいつは後で私が殴っておく。今はそんな事をしている場合じゃない」

朝日「殴っちゃダメだよぉ。えっとねぇ、スッゴく重要な証拠を見つけたんだぁ」

瀬川「凄く重要な証拠……?」

のほほんとした口調からは想像がつかない程あっさりと話す朝日君。表情を変えないまま取り出したのは、二つの生徒手帳だった

瀬川「……それが証拠? 二人の生徒手帳じゃん」

月乃「……違う。私達のはこっち」

べしっと朝日君を叩くと、二つの電子生徒手帳が零れ落ちる。ドロップアイテムかな?

月乃「……重要なのは、この二つの内の片方が故障している事。多分、これは……」

朝日「天地さんとぉ、吊井座君のものだと思うんだあ。壊れているのは吊井座君のぉ……あぅ」

また月乃さんに殴られた……でも、朝日君の言おうとした事はだいたいわかった

壊れた生徒手帳が吊井座君のものなら、無事な方の生徒手帳は天地さんのもの……

それなら、男子でも女子の更衣室に入れる……

136 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:36:32.70 ID:W3JrOh+uO

手に取った無傷の生徒手帳を眺めながら思案する。犯人がこれを知っていたら……

瀬川「あれ? でも他の人の生徒手帳って使えないんじゃ……」

朝日「えっとねぇ、それってぇ校則の事を言っているのぉ?」

それ以外に何があるのか。私の生徒手帳にだって、手帳の貸し借りについての校則は載っている



『他者の生徒手帳を使用した場合、生徒手帳の持ち主を罰します』



月乃「……よく見てほしい。校則には、”生徒手帳の持ち主を罰します”」

朝日「でもでもぉ、この生徒手帳は天地さんと吊井座君のものだからねぇ。誰も罰せないよぅ」

瀬川「あーなるほどなるほど。死んだ人のものを使う分には校則違反にならないと……」

瀬川「……トンチかい!」

思わず声を出して叫ぶ。抜け穴とか裏道とかそんなチャチなモンじゃない。もっと下らないものの片鱗を味わった……

瀬川「はぁ、はぁ……因みにだけどこの事を知っているのって……」

月乃「……手帳の事なら全員に話した。校則の事は話してない」


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【壁のシミ】
 ダンスホールと更衣室を繋ぐ壁に、不自然な染みがあった
 何でつけられた染みなのかは不明

【二つの生徒手帳】
 朝日と月乃が見つけてきた生徒手帳。片方は起動が不可能となっている
 故障していない方は、天地のものと推測される

【校則の抜け穴】
 校則では『他者の生徒手帳を使用した場合、生徒手帳の持ち主を罰する』となっている
 つまり、死んだ生徒の生徒手帳を使用しても問題ないという事になる
137 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:37:24.12 ID:W3JrOh+uO


キーンコーンカーンコーン!


モノクマ『えー、オホン! 本日は晴れやかにして良きお日柄となるでしょう』

モノクマ『ここでオマエラに問題です。ズバリ今日という日はオマエラの命日になるでしょうか!』

モノクマ『その答えは……是非とも学級裁判で答えてください! 学級裁判、始まるよー!』

月乃「……始まるみたい」

今日がお前の命日ね……少なくとも、今回のクロにとってはそうなるだろう

それとも私達の命日になるのかな? クロの考えたトリックを見破れなければ……だけど

デイビット君を狙った理由。それはきっと、前回の学級裁判で活躍した彼を消せば有利になる為……

何処まで考えても自分の為に殺したとしか思えない残忍で凶悪な犯人。そんな奴は死んじゃったとしても文句は言えないよね?

朝日「それじゃあ行こっかぁ〜」

瀬川「うん!」

朝日「……瀬川さん。元気あるんだねぇ」

瀬川「えっ、何か問題でもある?」

朝日「ううん。何でもないよぅ」

言われてみれば確かに心のどこかで、弾ける様な、心地のよいワクワクとした感情が疼いている

それは、学級裁判が楽しいから……? 別に、誰かを糾弾して自分の正しさを証明する事に快感を覚えているワケではないはずだから

瀬川「……じゃ! 行こっか!」

これだと私が悪役みたい。それは違うよ。と証明しにいこう

あの肌のヒリつく感覚を、焼けつく程の心の鼓動を思い出していた

138 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:38:25.89 ID:W3JrOh+uO





スグル「瀬川さん。自殺しようとしたって……」

瀬川「だから違うんだってばー……」

月乃「……本当に申し訳ない」

古河「ところで、何で駆村と御影はそんなホコリっぽいねん」

月神「本当……どうしたの? 何かあった?」

駆村・御影「「……………………」」

瀬川「本当に申し訳ありませんでした……」

ジロッと二人から睨まれる。怪訝そうな雰囲気で、もの凄く肩身が狭い……

陰陽寺「来るぞ」

短くそう呟いた陰陽寺さん。その言葉が終わるや否や、花園の中からエレベーターがせり出してくる

……これ、毎回やるの? 予算かかってそうだなぁなんて関係ない事を考えてみる

そんな妄想を振り払う。裁判へ向かう為に皆と前へ進む……はずだった

瀬川「……あれ? なんで皆来ないの?」

臓腑屋「にゃ……眠いでござる。頭がフラフラするでござる……」

スグル「事件が起きたのが夜で、夜通し捜査でしたからね……」

竹田「俺も年でキツいな。くそっあと十年若けりゃ何とかなったんだけどよぉ」

……よく見てみると、皆は目を擦ったり欠伸を噛み殺したり。眠気と必死に戦っている

これじゃあ、クロの前に睡魔にやられちゃう……

139 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:39:12.22 ID:W3JrOh+uO

瀬川「でも、私は何ともないよ?」

朝日「瀬川さんはぁ、ぐうっすり眠っていたからだと思うなぁ〜」

瀬川「そうだった……」

月神「困ったわね。モノクマは仮眠なんて認めないでしょうし……」

照星「あ! 先輩、すぐに戻るんでちょっと待ってて欲しいっす!」

胸を張りながら、照星さんは走り去っていく。本当にすぐに戻ってきた照星さんの手には、大きな箱が握られていた

瀬川「それ何?」

照星「コーヒーっす! 眠気覚ましにお一つどうっすか?」

真っ黒な缶を持ちながらニコニコと笑う照星さん。その手にある缶。私には見覚えがあった

スグル「それ、吊井座さんの……」

照星「……お守りも兼ねてるんすよ。何だか、先輩が力を貸してくれる気がするんっす」

照星「だから! 絶対に自分は負けらんないっす。クロを絶対に見つけてみせるっす!」

照星「……何で殺したのか、知りたいっすから」

俯きながら答える照星さん。その瞳に宿る光の意味は、私にはわからなかった

一人、また一人と缶コーヒーを飲んでいく。かなり苦いのか、皆は一様に顔をしかめて苦い顔をする


因みに私は飲んでいない。ブラックコーヒーは嫌いだし、別に眠くないし

全員が飲み終わると、誰ともなくエレベーターに進んでいく。……それぞれの思いを乗せながら

140 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:39:49.80 ID:W3JrOh+uO






……沈黙。この空間にあるのはそれだけだ

これに乗るのは二回目なのに、この肌にまとわりつく重苦しい空気には慣れそうにない

まるで焼き直しの様な似た光景。きっと変わる事は無いんだろう

……私達が、コロシアイを止めない限りは



前回の学級裁判のMVPと言っても過言じゃない、デイビット・クルーガー君

彼の『自分の才能を使わなくてもいい』という願いは、彼の死を以て叶えられたんだ

そして、デイビット君を殺した人。もうやらないと誓ったハズの約束を破った人

誰かが生き残る為に誰かを殺し、私達が生き残る為に誰かを殺す。まるで永遠に続く輪廻転生だ



……それを、ここで断ち切る。断ち切らないといけないんだ

それが、例え絶対確約出来ない誓いだとしても


141 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/01(土) 23:40:22.55 ID:W3JrOh+uO
本日ここまで
142 : ◆nV158uMR4EBZ [sage]:2019/06/11(火) 23:05:27.66 ID:xxXytD7BO

【Chapter2 もうやらないと誓ったのさ】
【コトダマ一覧】



【モノクマファイル2】>>118

【ダンスホールの鎧兜】>>119

【竹田の証言】>>120

【だるまさんがころんだ】>>123

【死体の違和感】>>123

【朝まで語ろう会】>>126

【三組のアリバイ】>>127

【彫刻刀】>>129

【工具セット】>>129

【飛田の手鏡】>>131

【更衣室の壁の傷】>>133

【綺麗な更衣室】>>133

【ジャージ】>>133

【壁のシミ】>>136

【二つの生徒手帳】>>136

【校則の抜け穴】>>136

143 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:32:19.32 ID:kh5viBv9O









【 学 級 裁 判  開 廷 ! 】








144 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:34:09.19 ID:kh5viBv9O





ハルカ『では! まずは学級裁判のルール説明から始めまーす!』

瀬川「あ、またそれやるんだね……」

ハルカ『いわゆるお約束ってヤツだからね! よい子はテレビから離れて見てね!』

ヨウ『無駄話は止めろ。学級裁判では犯人は誰かを議論し、その結果はオマエラの投票により決定されるんだ』

ハルカ『正しいクロを指摘できれば、クロだけがオシオキ!けど間違ったクロを指摘しちゃうと……』

ヨウ『クロ以外の全員がオシオキされ、クロにはこの彩海学園の卒業権利が与えられるな』

モノクマ「……Zzz。はっ、寝てた。ゴメンゴメン、オマエラと同じでこっちも一睡もしてないからね」

モノクマ「だからと言って学級裁判では居眠り禁止です! もし寝ている人がいたら水をたっぷりいれたバケツを両手に持って裁判して貰います!」

臓腑屋「地味に嫌でござるっ!?」

モノクマ「アハハハハ! そんじゃボクは仮眠を取るので、オマエラはその間頑張ってね〜!」

モノクマ「……Zzz」

飛田「寝たのか? これは本当に寝たのかッ!?」

目を瞑って、普段ふんぞり返っている座席の手すりに頭を乗せる。電車で居眠りする様な姿勢で微睡んでいるモノクマ

その姿に若干の殺意を覚えながら、周囲を見渡す。私の隣に置かれている天地さんの遺影……そして、既に居なくなった人の分

吊井座君とデイビット君の顔に、バッテンの書かれた遺影が掛けられていた

145 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:37:29.54 ID:kh5viBv9O

月乃「……本当に悪趣味。ここに来る度に向き合わなくちゃならないなんて」

照星「自分はもうここには来ないって思ってたんっすけど……」

竹田「しゃあねえだろ? 起きちまったモンはどうも出来ねえ。覆水は盆に返らねえのさ」

月神「そうね。どうしてクロがデイビット君を殺したのか……私達には、それを知る必要があるわ」

瀬川「あれ? 前までは犯人なんていないってスタンスだったじゃん。どういう風の吹き回し?」

スグル「瀬川さん。そんな言い方は……」

月神「……自分でも驚いているの。一度学級裁判をやっただけで、私はここまで冷酷になれるのって」

月神「それが良い事なのかはわからないけど、私はデイビット君も……吊井座君も信じている」

月神「勿論、それはクロだって同じよ? だから、私は……信じる議論をしたいの」

濁りの無い澄んだ瞳。満月の様に、微かな光を湛えながら彼女はそう宣言した

浄化される。と言うのはこういう時の事を言うんだろうな。……まるで、私が悪い人みたいだけど

瀬川「……わかった。それじゃ、早速始めようか」

御影「は、始めようって言ってもさぁ……ボク達、何から話し合えばいいの?」

古河「今更何言うてんねん……前回みたいにすれば大丈夫やろ!」

朝日「でもでもぉ、前まではデイビット君が仕切ってくれてたけど、もう……」

朝日君が口をつぐむ。今まで……と言っても二回目だけど……デイビット君は既に殺されている

既に指針は壊れている。どう進むかすら、私達は手探りの状態なんだ

146 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:39:42.94 ID:kh5viBv9O


臓腑屋「では、不承ながら拙者から切り出させて貰うでござる」

臓腑屋「デイビット殿が学園で殺されたのならば、やはり食堂に残っていた御仁が怪しいのでは?」

未だ舵取りの出来てない裁判。そこに臓腑屋さんが一石を投じた

臓腑屋さんが言う人。食堂に残っていた人達は、皆わかっていたのか『そりゃそうだ』とでも言いたげな表情をしていた

駆村「だよな……俺達が疑われるのは予想してた」

古河「せ、せやけど! ウチらはデイビットがいなくなるまではずっとおった! ホンマや!」

陰陽寺「それを証明出来るモノはあるのか」

瀬川「先に言っておくけど、なんとなくで全員いたとは言わないでね? 人の記憶だけだと、どうしても限界があるからさ」

古河「わーっとるわ! いちいちウザいねん!」

古河「そう言うお前らはどうなん!? お前らかてアリバイはあらへんやろ!」

月乃「……それを言われると、どうしようもない」

うーん。このままだと水掛け論にしかならないね

その気になれば相手が根負けするまで叩けるけど、それは最早議論じゃなくてレスバトルだ

何について、どう話し合えばいいのか。議題は早速大きな問題に直面していた

147 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:42:22.86 ID:kh5viBv9O


スグル「あの、提案なんですけど……」

スグル「僕達の事よりも、まずはデイビットさんの事を話し合いませんか?」

月乃「……確かに、このまま私達のアリバイを話し合っていてもラチが明かない」

御影「デイビットクンを追っていけば犯人にも辿り着けるかもしれないしね!」

月神「なら、そこから話し合っていきましょう。私から昨夜の事を話していくわね……」

ゆっくりと、なるべく全員に行き届く様に月神さんが語り始める。少しずつ、丁寧に織り込む様に

肝心の内容については……前に駆村君の言っていた事と変わりはなかった

朝日「そうなんだぁ、途中で飛田くんがぁ……」

古河「正味、普通に怪しいんやけどどうなん?」

飛田「待てぃ! オレは本当に少ししかいなかったしすぐに戻ったぞ!?」

さて、これからはこれを踏まえて議論を進めていかないといけない。

ゆらゆら揺らめく微睡みの様にふわふわと、籠の中の小鳥の様に小刻みに

ゆっくりと、学級裁判は廻っていく……

148 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:44:46.00 ID:kh5viBv9O

【ノンストップ議論  開始!】

『コトダマ』
【モノクマファイル2】
【ダンスホールの鎧兜】
【死体の違和感】



古河「正味な話、ウチは飛田が怪しいと思うわ」

古河「最初から参加せえへんかったクセに、《いきなり食堂に来るなんて怪しい》やん?」

御影「ボクもそう思うな!」

飛田「黙れ御影ッ! オレの心象が悪くなるッ!」

竹田「おーい坊主共、喧嘩は後にしてくれや」

月乃「……でも、犯人の可能性は高い」

月乃「……予めデイビットを呼び出しておいて、自分は身を隠せば……」

月乃「……例えば、あそこにある【鎧は身を隠すのに最適】だと思う」

飛田「クッ……可憐なる乙女からの疑い、必ず晴らしてみせようぞ!!」

臓腑屋「おなご限定でいいのでござるか!?」

149 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:45:42.36 ID:kh5viBv9O

【鎧は身を隠すのに最適】←【ダンスホールの鎧兜】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「う〜ん。月乃さん。鎧に隠れるのは無理だと思うよ?」

月乃「……何故? ダンスホールで隠れられる場所は限られてくる」

月乃「……全身を覆う上、数もある。一度着てしまえば気付かれにくくなるはず……」

瀬川「うん。それなんだけどね? あれ、実はもの凄く重いからまともには着れないんだよ」

竹田「そうなんだよなぁ月乃の嬢ちゃん。ありゃもう鈍器だぜ」

駆村「鈍器……? そんなに重いんですか?」

竹田「応ともさ。俺が思いっきしブン回したら人が何人かはフッ飛ばせるくらいには」

照星「むむむ、なら自分も無理っぽいっすね……」

がっくしと重く肩を落とす。この中で随一のパワータイプである照星さんでも無理そうだ……

月乃「……結構、イケると思ったけど」

朝日「私でも片手で持てたんだもんねぇ〜」

……ん?

竹田「オイオイ、持てたのか?アレを片手で?」

朝日「うふふ。おかしいかなぁ〜?」

御影「ボク、朝日クンと月乃さんにケンカ売るのはや〜めよ……」

月神「人は見かけによらないわね……」

出来るんだ……この双子、何食べたらそんな腕力がつくんだろう……?

150 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:48:08.02 ID:kh5viBv9O

飛田「フッハハハ! ではオレの無実が決まった所で議論を再開しようじゃあないか」

古河「は? まだ最有力容疑者候補なんやけど」

臓腑屋「そうでござるな。いきなり食堂に来てすぐに立ち去るなんて怪しいでござるよ」

駆村「最初からいなかったのに途中から来た理由がわからないからな……」

飛田「……………………」

どうやら、まだ飛田君は容疑者として色濃く見られているみたい。自分でも予想外なのか、某海賊漫画のカミナリ様みたいな顔をしている

飛田「ま、ままま待ちたまえ。オレには理由があるからこそ食堂に向かったのだよ」

御影「デイビットクンを殺す準備!?」

飛田「黙れ小僧ッッッ!!!」

月神「お、落ち着いて……デイビット君。その理由を話して貰えるかしら」

飛田「フフフ。それはだね、探し物を捜索していたのだよ。レディ」

朝日「探し物ぉ? それってなぁにぃ?」

飛田「……手鏡さ。オレの前髪を直すのに愛用していた、フランスで一目惚れした……」

照星「今なんでちょっと言い淀んだんすかね……」

月乃「……どういう風に接すればいいのか考えたんだと思う。私にも覚えがある」

一人で合点がいったのか、頷いている月乃さん。鏡なんてどこで買っても同じだと思うけどね……

でも、黙っていても議論が進まない。ここは本人に返却しておいておこうっと

151 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:49:54.05 ID:kh5viBv9O

【飛田の手鏡】



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「ああ飛田君。実はその鏡……」

飛田「おお……! これだとも! ようやく我が手に戻ってきた……!」

手渡しで持っていた鏡を飛田君に返却する。慈しむように受け取った飛田君は優雅に一礼してくれた

飛田「おお……この手触り、光沢、曲線美。全てが懐かしく愛おしい……」

古河「ウッザ……」

飛田「ところでこの手鏡はどこにあったのかね?」

瀬川「デイビット君の死体の下だよ」

飛田「そうかそうか。デイビットの死体の下……」

飛田「………………………………」

瀬川「………………………………」

竹田「おっ、親父ギャグか?」


「「「………………………………………………………………」」」


飛田「死体の下あああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」

御影「滅茶苦茶重要な証拠じゃん! やっぱり飛田クンがクロなんでしょ!?」

朝日「これはちょっと、擁護出来ないかなぁ……」

飛田「嘘だろう? これはちょっとブラックな軽いジョークなのだろう!?」

照星「あ、自分は何か引っ張ってたの見たっすよ」

飛田「あああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」

先程の優雅はどこへやら。白目を剥いて泡を吹く飛田君へは同情を禁じ得ない

でも、このまま飛田君が犯人の流れでいくのは本意じゃない。気になる所は指摘していこう

152 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:52:10.45 ID:kh5viBv9O

【ノンストップ議論  開始!】
『コトダマ』

【彫刻刀】
【飛田の手鏡】
【竹田の証言】



飛田「ああああああああああああ!!!」

御影「これもう【飛田君がクロ】でしょ!?」

月神「飛田君、せめて何か証言して……!」

飛田「ああああああああああああああああああああああああ!!!!」

駆村「と、飛田がクロなら、食堂には《デイビットを呼びに来た》のか?」

臓腑屋「そして、どさくさ紛れに【凶器の包丁を盗み出し】たのでござるな……」

月乃「……後は適当に切り上げて、【ダンスホールで殺せばいい】」

飛田「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

古河「あーーーーー!! 頭おかしなるわ!!」

スグル「む、矛盾は無さそうですけれど……」

153 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:53:51.60 ID:kh5viBv9O


【凶器の包丁を盗み出し】←【彫刻刀】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「臓腑屋さん。実はデイビット君を殺した凶器は包丁じゃないんだよ」

臓腑屋「にゃ? 前回と同様に、凶器となったのは包丁ではないのでござるか?」

月神「流石に、そんなにすぐに凶器として使わせる程管理は甘くないわ……」

月乃「……なら、疑問がある。デイビットを殺した凶器はなんだったの?」

瀬川「美術室にある彫刻刀だよ。丁度同じ柄のものがあったんだ」

古河「ちょ、彫刻刀やと? そないなモンで人を殺せるんか?」

照星「そう言われるとそうっすね。ちょっと無理がある気がするっす!」

裁判場がざわついていく。そりゃ彫刻刀と言われてそれが凶器だと思う方が不自然だ

駆村「なら、飛田は食堂に寄った後わざわざ美術室で彫刻刀を持っていったのか?」

臓腑屋「いや、逆に予め彫刻刀を用意していたのではないでござろうか……」

飛田「おい待てぃっ! オレを犯人だという前提で進めるんじゃあないッ!」

瀬川「じゃ、次はどうやってデイビット君を殺したのか考えてみようか」

飛田「待てえええええええええええええ!!!!」

154 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:56:04.20 ID:kh5viBv9O

【ノンストップ議論  開始!】
『コトダマ』
【死体の違和感】
【竹田の証言】
【だるまさんがころんだ】



御影「え〜それじゃあどうやって殺したのか……」

御影「議論するって事でいいんだよね?」

飛田「勝手に話を進めるなぁーーーッ」

月神「まず、デイビット君はダンスホールに向かったのよね?」

竹田「そりゃあ間違いねえだろう。死体もホールのド真ん中にあったしな」

照星「本当にそうっすかね〜?」

月乃「……どういう事?」

照星「もしかしたら《別の場所で殺されて》……」

照星「【運ばれて来た】のもあると思うっす!」

駆村「それなら、わざわざダンスホールまで【呼び出す必要もない】しな」

朝日「なら、本当はどこで殺されたのかなぁ?」

御影「どうなのさ飛田クン!」

飛田「知るかァアアアアアアアアア!!!」

155 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 20:58:06.53 ID:kh5viBv9O

【運ばれて来た】←【死体の違和感】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「ちょっと待ってよ……他の場所で殺された可能性は無いんじゃないかな?」

照星「えっどうしてなんっすか?」

これはとぼけているの。それとも本当に覚えていないの? 普段がマイペースな照星さんだから考えが読めない……

瀬川「どうしてって、照星さんも試したでしょ?」

瀬川「デイビット君の死体には引きずった様な跡は無かったし……それに、照星さんも重そうにしてたじゃん」

照星「あっ……そうだったっす……」

しょぼんと肩を落としてガッカリアピール。これはどっちなんだろう……?

朝日「ええっとぉ、ならデイビット君はぁ、ダンスホールまで行ったのぉ?」

臓腑屋「にゃ、それは何故でござるか? あれほど聡明なデイビット殿なら、迂闊に呼び出しに応じるとは思えないでござるよ」

確かに、数日前に事件が起きたのにホイホイ着いていくなんて、幾らなんでも学習能力が無さすぎる

臓腑屋「拙者としては、本当にダンスホールで殺害されたのかも疑問でござる。跡があったのを見落としただけでは?」

瀬川「それは違う! ……と思うよ」

スグル「そこは断言してほしかったですね……」

156 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:00:37.19 ID:kh5viBv9O


飛田「んっ? ならば、犯人はどこでどうデイビットを殺したのかね」

自らの疑いが晴れたとみたのか、いきなり核心をつく様な事を話し出した飛田君

だけども、どのみちいつかは話し合う必要のある議題でもある。ここは臆さず切り込んでいこう

瀬川「えーっとね。デイビット君の心臓を一撃で、しかも一瞬でぶっ刺して殺したんだよ」

臓腑屋「いや殺し方を聞いているワケではないのでござるよ!?」

陰陽寺「……一撃で、一瞬か」

スグル「? どうかしましたか、陰陽寺さん」

小声で、繰り返す様に反復する陰陽寺さん。少し考えた素振りを見せると、私に視線を向け直す

静かに。深く差し込む様に疑問を口にする。

陰陽寺「それは本当の事なのか。奴は確かに心臓を一撃で刺され、殺されたのか」

月乃「……そこ、気になる所?」

古河「まあ陰陽寺やしな……で? それってホンマなんか?」

陰陽寺さんに影響される様に、皆の視線が集中する

この場で、今最も発言力があるのは私だ。その実感が身体の先から先まで快感が走る

さあ言ってやるんだ。その証拠は―――!

157 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:02:42.41 ID:kh5viBv9O

【モノクマファイル2】



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「モノクマファイルをよく読めばわかる事なんだよ。デイビット君が一撃で殺されたのは……」

瀬川「それじゃあ皆、お手元の電子生徒手帳を開いてみて?」

御影「なんで教師風?」

語り聞かせる様に推理を披露する。私の説明を受けて、手持ちの電子生徒手帳を起動し始めた

こめかみ辺りに手を置き、くいっと上げる動作をする。メガネを直す時によくするあのポーズだ

……私、視力は両方2.5だけど



瀬川「えー、まず注目するのはここの部分だね」つ



→身体には外傷は無く、また、薬物及び薬品を接種した形跡は無い←



瀬川「この部分から、デイビット君は誰かと争ったり薬で動きを封じられた訳じゃない事がわかるね」

スグル「あの、そのフリップどこから……」

瀬川「そこ突っ込むの? 馬に蹴られて死ぬよ?」

月神「スグル君。今は黙って聞きましょう……」

158 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:04:58.17 ID:kh5viBv9O


駆村「待ってくれ。確かに書いてあるが……」

駆村「それだけで、一撃死したと言えるのか?」

瀬川「いい質問ですね!」

古河「池○彰!?」

瀬川「では、ここで前回のモノクマファイルを確認してみましょう……モノクマー!」

モノクマ「出番だぞオマエラ! 給料払ってんだからとっとと働けよ!」

ハルカ『はーい! では画面に注目して下さーい』

駆村「たらい回しにされてるじゃないか!」




→身体中に軽い打撲痕が確認でき、右手の指の関節に骨折が見られる←




瀬川「これは天地さんが、犯人との争いがあった事を証明する部分だよ」

月神「この部分で、吊井座君が犯人だという証拠が出てきたのよね……」

瀬川「そうそう。今回のデイビット君にはそうとは書かれていない……争っていなかったんだ」

瀬川「つまり、デイビット君は争う間もなく殺されたって事なんだよ!」

私が一息で説明を終えると、おお。と歓声が上がる

ふふん、と得意げに鼻を鳴らしてみる。私の推理に感心している事は明らかだった

159 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:06:50.17 ID:kh5viBv9O

瀬川「……で、これで何がわかるのかな?」

余韻に浸る間も与えられず、すかさず陰陽寺さんに問いかける

目を閉じ、静かに顔を上げる。私の推理を咀嚼したのか、その顔には仄かに自信が浮かんでいる様にも見えた

陰陽寺「今の推理を聞いて、多少は当時の状況を推察する事が出来た。考えられる可能性は……二つ」

指を突き付けて自説を説いていく。……恐らく、この中に潜んでいるだろう犯人に向けて

陰陽寺「まずはパーティーに出ていた連中があいつと共にダンスホールまで行き、殺した可能性」

竹田「おうおう俺達が疑われるのか? 俺達は会場にずっといたんだぜ?」

陰陽寺「黙っていろ。話は最後まで聞け」

竹田「はいよ。怖い怖い」

憎まれ口にも涼しい顔。陰陽寺さんは構わず推理を進めていく……

陰陽寺「もう一つはデイビットを誘い出し、不意を突いて殺す方法。この方法は会合に参加しなかった奴にしか出来ない」

視線を再び全員に向ける。その意味は絶対に……

朝日「……それってぇ、参加していない私達が犯人だって事だよねぇ」

陰陽寺「それ以外にどう読み取れる?」

飛田「そ、そもそもッ、パーティーに参加した連中は誰なのかね!?」

臓腑屋「一度、誰が参加していたのか確認をすべきだと思うでござる」

パーティーに参加していたのか人達……それはあの人達だよね

160 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:08:42.24 ID:kh5viBv9O

【朝まで語ろう会】



瀬川「これだね!」解!

瀬川「ええっと、朝まで語ろう会にいたのは……」

瀬川「スグル君に駆村君、御影君に竹田さん……」

瀬川「月神さんに古河さん。照星さんだね」

月神「ええ。それで間違いないはずよ」

御影「いや、そうなんだけどさ……その朝までってどういう……」

古河「せやな! あの朝まで語ろう会はその面子でやっとったんや!」

竹田「俺も記憶には自信はねぇが、朝まで語ろう会には今嬢ちゃんが言ってたのが来てたぜ」

御影「あれ!? 気にしてるのボクだけ!?」

今言った7人、そして被害者のデイビット君。合計8人があの夜に集まっていた事になる

あんな事があったのにまだ集まろうとするのは、人がいいのか悪いのか……

月乃「……なら、そうじゃない人。つまりは私達が容疑者という事になる」

駆村「じゃあ、逆に俺達は容疑から外れたって事でいいのか?」

瀬川「そうはならないでしょ……なら次は殺害状況から議論してみたら?」

私の一言で議論は廻る。次の議題は……状況だ

161 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:10:29.75 ID:kh5viBv9O

【ノンストップ議論  開始!】
『コトダマ』
【工具セット】
【竹田の証言】
【彫刻刀】
【ダンスホールの鎧兜】
【だるまさんがころんだ】



月乃「……デイビットが殺された状況は、二つ」

臓腑屋「共に行って殺害したか、誘きだして殺害したか。でござるな!」

御影「でも、ボクらには【アリバイがある】よ!」

駆村「逆に、朝まで語ろう会に来ていなかった連中なら《誘いだせた》んじゃないのか?」

朝日「えっとぉ……誘ったってどうやってぇ?」

竹田「【手紙】とか【約束】とか色々あんだろ?」

照星「誘い出す方法は幾らでもあるっすけど、肝心のデイビット先輩はどう殺すんすか?」

月神「【先にホールにいた】ら呼び出されていた事もあって警戒するはずよ」

臓腑屋「では、ホールにやって来たデイビット殿の背後から……」

臓腑屋「【不意を突いて殺した】のでは……?」

古河「それや! それなら殺せるやん!」

臓腑屋「発言が怖いでござるよ……」

162 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:11:24.85 ID:kh5viBv9O

【不意を突いて殺した】←【だるまさんがころんだ】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「不意討ちで殺すのは無理だよ……絶対にね」

臓腑屋「やけに自信満々でござるな。して、何故にそう思うのでござるか?」

瀬川「まず、デイビット君の死体の位置を思い出して欲しいんだけどさ……」

スグル「死体の位置……確か、ホールのほぼ真ん中でしたよね」

飛田「遮蔽物も何もない更の地だ! これでは不意討ち出来ないではないかッ!」

古河「せやろか? 後ろからササッと駆け寄って、刺せばええんとちゃう?」

陰陽寺「不可能だ。それで殺されるのは余程の間抜けだけだろう」

古河「デイビットがそうかもしれへんやろ!」

臓腑屋「そんなワケないでござるよ!?」

瀬川「うん。その可能性も考えて、私はスグル君とだ……」

駆村「だ?」

瀬川「……コホン。とにかく死体の位置から入り口まで、どこで気がつくか実験したんだ」

危ない危ない。また引かれる所だったよ……

瀬川「結果から言うと、あのホールは音がよく響くんだ。だから入り口に入ってきた時点でデイビット君は気づくはず……」


           反

臓腑屋「助けと書いて且つ力!」

    論

 !

163 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:12:48.59 ID:kh5viBv9O


臓腑屋「音で気付く……誠にそうでござろうか」

臓腑屋「否! 音等幾らでも誤魔化しの効くもので不可能と決めつけるのは早計にござる!」

瀬川「ふーん。抜き足差し足が得意な臓腑屋さんが言うと説得力あるね」

臓腑屋「偏見にござるよ!? とにかく、瀬川殿の推理では納得しきれないでござる!」

……どうしても認めてはくれないみたいだね。私の信用の無さに泣きそうだ

それなら、他の人の話す言葉ならどうかな……?



【反論ショーダウン  開始】
『コトノハ』
【モノクマファイル2】
【竹田の証言】
【死体の違和感】


臓腑屋「デイビット殿が気づいていなかった可能性もあるのでござる」

臓腑屋「例えば別のものに注意を払っていた場合、抵抗出来なかった場合……」

臓腑屋「様々な可能性が考えられる以上、結論を下すのは早計と言わざるをえないでござるよ」


瀬川「ならその可能性を言ってみてよ。臓腑屋さんがわかっているならね」


臓腑屋「そ、それを言われると痛いでござる……」

臓腑屋「し、しかし! 【他の手段が考えられないワケではない】のは確かでござるし……」

臓腑屋「不意をつけば【弱くとも可能】なのは紛れもない事実!」

臓腑屋「他の可能性を模索するのも悪くないのではござらんか?」

164 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:14:09.02 ID:kh5viBv9O

【弱くとも可能】←【竹田の証言】



瀬川「その反論、打ち切っちゃうね!」論破!

瀬川「犯人は力が無い? その可能性は低いよ」

瀬川「寧ろ、相当なパワーがあった……私達はそう思うけどね」

月乃「……達?」

竹田「応とも。俺も瀬川の嬢ちゃんと同意見だぜ」

臓腑屋「竹田殿!? 正気でござるか!?」

瀬川「どういう意味!?」

なんで私を信用すると正気を疑われないといけないの!? そんなに嘘つきじゃないでしょ!?

竹田「あー…説明させて貰うとだな。デイビットの坊主の背中に刺さった刃物。ありゃ力を相当に入れなきゃ深く刺さんねえんだよ」

竹田「彫刻刀だぞ? それを不意討ちでぶちこむのは陰陽寺の嬢ちゃんでも無理だろう」

瀬川「陰陽寺さーん。舐められてるけどいいの?」

陰陽寺「不可能なものは不可能だ。僕でもな」

瀬川「……案外物分かりがいいね」

臓腑屋「にゃあぁ……な、ならば他の面々はどうなのでござる!?」

照星「流石に自分でも無理っすよー!」

駆村「俺もだ。そもそも、人力のみで刃物を深く体に突き刺すなんて可能なのか?」

ぽつり。と疑問が投げ掛けられる。波紋の様に広がったそれは、私達の思考を奪っていく

駆村君の疑問は尤もなもの。その証拠に、裁判場はしんとした空気に包まれ始めていた

165 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:15:37.72 ID:kh5viBv9O

竹田「……ま、方法が無いわけでもねえがな」

完全に包まれる直前に、竹田さんが話を切り出す。言い出しっぺの責任感からか、既に用意していたんだろう

竹田「トンカチか何かで釘を打つ。この要領でやれば誰でも出来るは……」

陰陽寺「無理だな。奴は即死している、悠長に凶器を叩いている程の余裕と理由があるなら別だがな」

竹田「……ずなんだけどよぉ」

用意していた答えは陰陽寺さんに切り捨てられる。頭をポリポリと掻きながら、苦笑いを浮かべていた

朝日「ねぇねぇ、今思い付いたんだけどねぇ。刃物を勢い良く突き刺したらどうかなぁ?」

朝日「こうやってぇ……んっ、身体を押し付けるみたいにどすってすればイけると思うなぁ」

瀬川「ああ、アゾット剣!」

スグル「なんですかそれ……?」

陰陽寺「デイビットが凶器を持った相手に背中を向けたのか。わざわざ殺してくれと頼む様な事だ」

朝日「ダメかぁ……」

竹田さんとは対称的に、えへへと笑う朝日君。隣の月乃さんの凄まじい視線は見なかった事にしよう



照星「……あれ? じゃあ犯人はどうやって殺したんすか?」

166 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:18:17.57 ID:kh5viBv9O

月神「……どういう事? 照星さん」

照星「だって、先輩は背中を一撃で殺されたんっすよね……?」

照星「近づく事も出来ないなら、即死させる事も無理じゃないっすか!」

スグル「…………あっ!?」

飛田「た、確かにそうだッ。不可能ではないか!」

……そう。今までの議論でわかった事は、『犯人はどうやってもデイビット君を殺せない』という事実

不自然、不可解、不可思議。殺害現場の奇妙な状況が……造り上げた犯人が、私達を混迷へ導いていた

御影「部屋に入ると気づかれるし、近付いても一撃で殺さないとダメなんだろ!? 無理だよ!」

月乃「……密室殺人。かなり変則的だけれど」

竹田「開いているのに密室ねぇ……随分とトンチが効いているじゃねえの」

臓腑屋「言っている場合でござるかっ!?」

犯人へ近付いているのか、離れているのか。視界が朦朧と霞んでいく

視界の隅でクツクツと笑う竹田さん。そして、彼を諌める臓腑屋さんがやけに際立って見えた

まだ私達は、事件の本質も見えていないのかもしれない。犯人の足跡すら、全く掴めていない……

瀬川「……上等!」

口の中で、噛み潰す様に小さく呟く。難易度は高ければ高いほど、攻略し甲斐があるってものだ

裏で嘲っている犯人を……完膚無きまでに叩き潰してやるんだから!

167 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/06/23(日) 21:20:07.80 ID:kh5viBv9O






【 学 級 裁 判  中 断 】







168 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:31:39.95 ID:B0eBlC/WO




〜〜〜♪


ハルカ『良い子の皆ー! 学級裁判エンジョイしてるかな?』

ヨウ『俺達か? 久々に羽を伸ばせたよ。デスクの前でな!』

ハルカ『ところで、画面の前の皆はもう学級裁判の犯人ってわかるかな?』

ハルカ『ここで唐突に、犯人当てクイズをしたいと思いまーす!』

ハルカ『”こいつだ!”って思う人をレスして、どしどし書き込んでね!』

ヨウ『まあ書き込めないんだけどな! 因みにこのやりとりに特に意味は無いぞ』

ハルカ『こういうメタっぽいのがそれっぽいんじゃないの? ……え、違う?』

ヨウ『試行錯誤を繰り返しているはこっちもあっちもどっちも同じだ。よろしくな!』


〜〜〜

169 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:32:17.33 ID:B0eBlC/WO



【 学 級 裁 判  再 開 】




月神「…………………………」

スグル「…………………………」

モノクマ「あのー、もう五分経ったんですけど? 早く議論してちょーだいな」

飛田「うるさいッ! 今考えている最中だッ!」

モノクマ「そうそう。下手な考え休むに似たりって言葉があってね」

飛田「余計な事を言うなッ! 思考がこんがらがるだろうッ!」

臓腑屋「飛田殿、気を確かに……」

……現在、議論は絶賛停滞中。いいアイデアも突破口も見つからず、全員が口をつぐんでいた

モノクマも言うように、この時間は裁判の中で一番無駄な使い方をしている。けどそう簡単には裁判を動かす事は出来ない

……適当に嘘でもつく? でも、前は確信があって嘘をついたけど……今はそんなに自信がないもん

御影「……あ、あのさ? ボクすこーしだけ思ったんだけど……」

月神「どうかしたの? 御影君」

御影「本当に、本当の本当にこの中に犯人っているのかな……?」

170 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:32:57.45 ID:B0eBlC/WO


月乃「……どういう意味?」

御影「だって、おかしいじゃん! デイビットクンは無抵抗で殺された事になるんだよ?」

御影「流石にモノクマには抵抗出来ないだろうし、デイビットクンは……」

瀬川「あのさあ……今頃になって、そんな白ける事言わないでよ」

御影「モノクマに……えっ?」

瀬川「前回も結局、吊井座君が犯人だったじゃん。この中に間違いなくいるよ」

瀬川「息を潜めながら、今の私達をほくそ笑んでる犯人が……ね」

御影「うっ……」

モノクマ「そうそう、彼女の言う通り。デイビットクンを殺した犯人は間違いなくこの中だよ」

駆村「そうか……出来れば違って欲しかった……」

月神「……瀬川さん。貴女は私達を、仲間を……」

瀬川「何か言った?」

冷たく。出来るだけ感情を消して、月神さんを睨み付ける。……この期に及んで、何言っているんだか

ここに犯人がいないなら、学級裁判自体が起こらない。そんな初歩の初歩を忘れるなんて、平和ボケもいいところだ

月神さんも私の呆れが伝わったのか、何でもないわと目を伏せて、口を閉じた

瀬川「で、何から議論しよっか。このままだと本当に休み時間と変わらないよ?」

171 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:34:08.54 ID:B0eBlC/WO

陰陽寺「話す事は決まっている」

凛。涼やかな鈴の音が響く様に、怖いほど涼しい声の陰陽寺さんが発言する

瀬川「……へえ? 言ってごらんよ、陰陽寺さん」

陰陽寺「犯人だ。どれだけ不可解な事実が起きていようが、クロだけは間違いなく真相を知っている」

瀬川「いやそんな当たり前の事を言われても……」

スグル「あっ……もしかして、アリバイですか?」

照星「アリバイっすか? でも自分達も他の人達もアリバイは不透明っす、昨今の政治みたいに!」

竹田「耳が痛えなあ……」

陰陽寺「誰が僕達のアリバイを話すと言った。デイビットのアリバイの方から洗い出していく」

陰陽寺「犯人と同様に、デイビットも真実を知っている可能性がある。なにせ当事者なんだからな」

朝日「確かにそうかもしれないけどぉ……でも、デイビットくんは死んじゃったよぅ」

月乃「……! ……そうじゃない。デイビットの行動の足跡を辿れば、何処かで犯人と巡り会う」

朝日「そっかぁ。デイビットくんと犯人は会っているはずだもん。月乃ちゃんすごぉい」

月乃「……私じゃなくて、魔矢の考えた事」

……そっか。犯人に固執し過ぎてて、被害者のデイビット君を蔑ろに考えていたんだ

やっぱり、裁判に必要なのは柔軟な思考力だ。それを議論で養っていかないと……!

172 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:34:47.05 ID:B0eBlC/WO


【ノンストップ議論  開始!】

『コトダマ』
【死体の違和感】
【彫刻刀】
【三組のアリバイ】


御影「デイビッドクンのアリバイかぁ……」

朝日「パーティーにいた人ならぁ、【何処に居たかわかる】んじゃないかなぁ……?」

古河「アホ! そんなよう見とらんわ!」

臓腑屋「開き直りでござるかっ!?」

飛田「しかし犯人もデイビットといたのかね? ならば【他にも抜け出した】奴がいたのでは?」

スグル「《パーティーで抜け出した人はいない》と思います……」

月乃「……それを確認できる証拠は」

竹田「別に【メモ取ってたワケでもねえ】しなあ。断言は出来ねえな」

御影「……本当にこれで犯人がわかるの?」

173 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:35:35.81 ID:B0eBlC/WO


《パーティーから抜け出した人はいない》←【三組のアリバイ】



瀬川「その意見、フォローするね!」同意!

瀬川「うん、私もスグル君と同じ意見だよ」

瀬川「だって、パーティーの途中で抜け出したのはデイビット君だけだからね」

スグル「ほ、本当にそうですか……?」

古河「ちょい待ち! 瀬川はパーティーに来とらんやろ。なんでそんな事言えんねん!」

臓腑屋「確かに疑問でござるな。瀬川殿があの場にいない限りはわからぬのでは?」

瀬川「そうでもないよ。だって皆が教えてくれたんだもん」

月神「皆が……?」

瀬川「えっと、確かデイビット君がいなくなった後に、皆で探す為に何人かで別れたんだよね?」

竹田「応。そのくれえなら俺でも答えられるぜ」

ふんふんと頭を左右に振り、竹田さんが話し始める

肝心の内容は……私が聞いた話と同じだったので、ここでは割愛しちゃおっと

竹田「……ま。これがそん時の状況だな。これで何かわかんのか?」

瀬川「うん。これで、朝まで語ろう会にいた人にはアリバイがある事がね」

174 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:36:18.31 ID:B0eBlC/WO


瀬川「デイビット君がいなくなって、皆で行動していたなら……」

瀬川「他に抜け出した人はいない事になるよね?」

駆村「確かにそうなるが……途中で抜け出て、探す前に戻ってきた可能性もあるぞ?」

陰陽寺「その可能性は無い。一階から二階まで駆け上がり、デイビットを刺し殺す。それも、相当な力を使ってだ」

陰陽寺「その後に、誰にも気付かれずに混ざる事等無理だ。全員の目が節穴ならその限りじゃないが」

古河「流石にそこまではアホちゃう……はずや!」

月神「古河さん。もっと自分に自信を持って!」

御影「じゃあ、パーティー……じゃなかった。朝まで語ろう会にいたボク達は無罪なんだね!? やったー!」

スグル「あの、その朝まで語ろう会……って何の事ですか?」

御影「あれぇ!? ボクだけじゃ無かったの!?」

……これで、朝までなんとか会にいた人達にはアリバイが出来た事になる

皮肉な事に、皆を疑って離れた人より、皆を信じた人の方が断然有利になったんだ

信じる者は救われる……なんて、そこまで信心深くは無いけれどね

古河「なら、逆に出とらんかったのはどいつや?」

月神「確か最初の方に話していたわね……おさらいの意味も含めて、振り返ってみましょう」

175 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:37:04.65 ID:B0eBlC/WO

瀬川「そうだね。それじゃあスグル君、言って」

スグル「ええと、瀬川さんに朝日さんと月乃さん。飛田さんに……」

スグル「臓腑屋さん。それに陰陽寺さんですね」

瀬川「正解。よく覚える事が出来ました」

古河「オマエはいったいスグルの何なんや……」

御影「でも、これで候補はかなり絞られたね!」

御影「飛田クンか朝日クン! それか陰陽寺さんが殺した犯人だ!」

竹田「ま、妥当なトコだな。嬢ちゃん達じゃあ深く刺す事は出来ねえだろう」

朝日「陰陽寺さんも女の子だよぉ?」

御影「陰陽寺さんは別だよ。ボクより強いじゃん」

瀬川「男子でしょ? もっと頑張ってほら……」

情けない御影君は置いておいて、容疑者はほとんど決まってきた。三人の中に犯人がいる……

瀬川「……あれ? でも駆村君と御影君、こんな事言ってなかったっけ?」



御影「ボクら全員見てないよ! だってアナウンス鳴ってから初めて二階に上がったんだし!」


駆村「その事については俺達も見ていない。一階に いた全員が集まった後、他の生徒も来たんだ」



176 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:37:48.65 ID:B0eBlC/WO

月神「犯人を、見ていない……?」

御影「あーっ!? そうだった! ボク達犯人見てないじゃん!」

駆村「そんな筈は……いや、でも……?」

古河「そんなん見逃したんとちゃうか?」

御影「そんな訳ないだろ! 節穴じゃあるまいし」

月乃「……じゃあ、御影が見逃したという事で話を進めていく?」

御影「何でだよ!?」

犯人を見逃した……その可能を否定しきれないのが辛い所だ。別に皆を信用してない訳じゃないよ?

駆村「俺達は、確かにデイビットを探す時にくまなく探したはずだ……」

照星「でも、自分達は誰とも会ってないっすよ! 本当っす!」

竹田「疑う訳じゃねえが、間違いねえんだよな?」

御影「も、もしかして……幽霊……とか……?」

月乃「……そんな事」

陰陽寺「人を殺すのはいつでも人だ」

御影「…………は?」

陰陽寺「下らない空想は考えるな、時間の無駄だ。死にたくなければ事実だけを組み立てろ」

御影「えっ? あ……ど、どうかした?」

月神「うふふっ、陰陽寺さんなりに御影君を励ましているのよ」

控えめな笑みを浮かべながら、ちらっと月神さんが陰陽寺さんを見やる

その視線を受けた彼女は、恥ずかしいのかふいっと顔を微かに反らした

人を殺すのは人。その人がこの中にいる以上、少しも油断は出来ないんだ……!

177 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:38:58.71 ID:B0eBlC/WO

【ノンストップ議論  開始!】

『コトダマ』
【彫刻刀】
【綺麗な更衣室】
【だるまさんがころんだ】
【工具セット】



御影「ボク達が犯人を見逃したって言うの!?」

月神「流石に、そんな事は無いと思うけれど……」

朝日「でもでもぉ、皆は犯人を見ていないんだよねぇ?」

駆村「確かに見てないが……デイビットを探す時、念入りに見て回ったはずだ!」

照星「そうっすよ! ちゃんと【先輩が行きそうな所は全て見た】っす!」

陰陽寺「《見ていない場所にいた》んだろう」

スグル「そんな場所は【無かったと思います】」

飛田「フンッ、どうせ《寝惚けていた》から見逃したんだろうッ」

臓腑屋「先に言っておくでござるが、【隠し扉や隠し部屋は無い】でござるからな!」


178 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:39:44.98 ID:B0eBlC/WO


《見ていない場所にいた》←【綺麗な更衣室】



瀬川「その意見、フォローするね!」同意!

瀬川「うん……私も、全員が見ていない場所に犯人が隠れていたんだと思う」

スグル「瀬川さんまで……」

予想外の言葉だったのか、うるうると潤ませた瞳で困惑した表情を浮かべる

その表情が見たかった……違う違う。ここはびしっと頼りになる所を見せなきゃね

瀬川「三人共、ちゃんとデイビット君がいそうな所をしっかりと探したんだよね?」

駆村「ああ。間違いなくデイビットが行きそうな所は探し回ったが……」

瀬川「なら、照星さん。”女子更衣室”は調べた?」

スグル「女子更衣室ですか……?」

照星「アハハ、何言ってるんすか! デイビット先輩は男の人っす。そんな所調べても……」

照星「……あっ!?」

合点がいったとばかりに目が見開かれる。虚を突かれたのが丸わかりだ

そもそも違和感があったんだ。あの更衣室はやけに綺麗になっていたけれど……

瀬川「照星さんが唯一探していない場所……女子更衣室に犯人がいたとしか思えないよ」

臓腑屋「し、しかし……更衣室でござるか? 何故そんな所に……」

瀬川「それはわからないけれど……犯人が更衣室にいた証拠があるんだよ」

犯人が更衣室にいたと考えられるモノ。それは……

179 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:40:25.66 ID:B0eBlC/WO


【ジャージ】



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「更衣室に置いていたジャージだよ。血がついているオマケ付きでね」

竹田「血がついている……? 犯人がそれを着て、デイビットの坊主を刺したんだろうな」

月神「瀬川さん、そのジャージのサイズは? どのくらいの大きさなのかしら……?」

瀬川「私の目算だけど……古河さんくらいかな?」

古河「それホンマかいな? もし違うたらエライ事になるで」

瀬川「ふふん。私を誰だと思ってるの? こう見えても、私は超高校級のコスプレイヤーなんだよ」

月乃「……どこからどう見てもそう思う」

瀬川「服のサイズくらい見ただけでもわかるよ。何ならここで着てあげようか?」

飛田・御影「「是非!」」

古河「………………………………」

挑発的な言葉と視線。そして服に手をかけて、チラチラと上着を捲る仕草を繰り返す

男子からは声が、女子からは怒気がわっと上がる。私もここで喧嘩はしたくは無いから止めとこう

……久々に、皆に注目されて気持ちよかったなんて思ってないんだからねっ

臓腑屋「全く瀬川殿は……にゃ? ならば、候補はかなり絞られるのでは?」

飛田「犯人はデイビットを一撃で殺せる力の持ち主であり、更にパーティーに出ていない奴だッ」

スグル「そして、女子……」

これらの全ての条件を満たす人……それは、あの人だけだ

でも、彼女が……? まあいいや。とにかくその人を指摘しよう


【全ての条件を満たす生徒は?】

180 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:41:08.76 ID:B0eBlC/WO

【陰陽寺 魔矢(オンミョウジ マヤ)】



瀬川「貴女しか……いないよ!」解!

瀬川「女子でパーティーに出ていない。尚且つデイビット君を殺せる力がある人物……」

瀬川「全部の条件に合うのは……陰陽寺さんだね」

陰陽寺「………………」

……静かだ。誰も、私の言葉に異論を出してこない

しいんという音が聞こえそうな程に、今、裁判場は静まり帰っている

どうして誰も口を開かないのか? ……それは、私に名指しされた陰陽寺さんの気迫が原因だろう

場の全てを黙らせるだけの気迫が、彼女にはあった

御影「……ほ、ホントに?」

駆村「じょ……条件を満たすのは、陰陽寺だけだ」

古河「ホンマかいな……!? 陰陽寺やぞ!?」

瀬川「だからこそ、とも言えるよね。自分なら疑われないって思ったからこそ、犯行に踏み切ったって考えられるし」

全員からの疑念の視線を一身に浴びても、尚微動だに動かない陰陽寺さん

まるで、鋭い茨の檻……素手で触れるとズタズタに傷がつく様な鋭利な彼女。そんな彼女に、月神さんが一歩踏み込んだ

月神「陰陽寺さん。どうなの……?」

月神「私には、貴女が人を傷つけるとはとても思えないの……!」

震えを隠しきれていない声で、陰陽寺さんへ問う。その中に籠められた想いに、向けられた彼女は……

陰陽寺「……僕は」


181 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:41:41.64 ID:B0eBlC/WO

陰陽寺「誓って、殺しだけはしていない」

月神「陰陽寺さん……!」

毅然と、無実を主張した。その瞳に宿る光は強く、自分の信じる正義を讃えている

御影「してないって言ってもさあ……陰陽寺さんにしか出来ないんだよ?」

陰陽寺「していないものはしていない。自身の無実は、僕が証明して見せる」

月乃「……どうやって?」

陰陽寺「現場は音の響くダンスホール。そして使用された凶器は美術室の彫刻刀だ」

陰陽寺「そして、デイビットは無抵抗だった。心臓を一撃で突き刺して殺している」

瀬川「うんそうだね。で、それがどうかした?」

陰陽寺「僕にはその芸当が出来る。それを否定する事はしない」

瀬川「なら、犯人は陰陽寺さ……」

陰陽寺「僕は犯人じゃない」

静かに、だけども激しく反論してきた。ここを切り抜けないと私は、一生陰陽寺さんに勝てない……!


         反

陰陽寺「僕は僕だけの正義を信じる」

   論

 !


182 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:42:18.02 ID:B0eBlC/WO


【反論ショーダウン  開始】

『コトノハ』
【工具セット】
【壁のシミ】
【竹田の証言】
【更衣室の壁の傷】
【ジャージ】



陰陽寺「僕が犯人だという根拠は理解した」

陰陽寺「だけど、それだけで犯人扱いされる訳にはいかない」

陰陽寺「僕が犯人で無い以上、何処かに見落としがあるはずだ」

陰陽寺「誰も議論していない部分に、な」


瀬川「誰も議論していない部分……って、何処?」


陰陽寺「彫刻刀を力強く刺すならば、【道具を使えば】誰にでも出来る」

陰陽寺「【工具セットのハンマーを】使って叩けば深く突き刺す事が可能だ」

陰陽寺「彫刻刀と【同じ場所にあった】のだから、犯人が知っていてもおかしくは無い」

183 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:44:26.77 ID:B0eBlC/WO

【工具セットのハンマーを】←【工具セット】



瀬川「その反論、打ち切っちゃうよ!」論破!

瀬川「工具セットは未開封の状態だったんだ。犯人が中の道具を使える訳ないじゃん!」

御影「そうだよ! ボクも確認したからね!」

月乃「……本当に未開封だったの?」

古河「一気に不安になってもうた……」

駆村「俺も確認したから安心してくれ。御影の言う事は間違ってないぞ」

竹田「なら決まりだな。犯人は工具セットを使ってない。もしくは知らなかったんだろうよ」

瀬川「工具セットのハンマーを使ってない以上、彫刻刀を突き刺すのは犯人の力で行ったはずだよ」

瀬川「それともダンスホールの鎧をハンマー代わりにしたって言ってみる? あんな重くて取り扱いの悪いもの。とても使えないと思うけどね!」


        反

陰陽寺「背水死中に活路を見出だす」

   論

 !


184 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:45:07.72 ID:B0eBlC/WO

陰陽寺「まだだ。僕はまだ諦めていない」

陰陽寺「お前の推理が本当に正しいか、僕が試してやる」

瀬川「お、往生際悪っ……!」

陰陽寺「何とでも言え。活路に光明がある限り、僕は折れる訳にはいかない……!」


【反論ショーダウン  続行】
『コトノハ』
【工具セット】(済)
【壁のシミ】
【竹田の証言】
【更衣室の壁の傷】
【ジャージ】


陰陽寺「そもそもの推理が狂っているんだ」

陰陽寺「ジャージが落ちていたから更衣室にいた。確かに理に適った推理ではある」

陰陽寺「だが、それはあくまでも物質的な証拠のみで構成されている推理だ」

陰陽寺「【ジャージ以外に証拠は無い】。ならば、根本から推理が間違っている可能性もある」

陰陽寺「僕は犯人じゃない……それを認める訳にはいかない……!」

185 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:45:39.89 ID:B0eBlC/WO

【ジャージ以外に証拠は無い】←【更衣室の壁の傷】



瀬川「その反論も停止しちゃうよ!」論破!

瀬川「更衣室のはジャージだけじゃないんだよ。壁に傷がついていたんだもん」

瀬川「月乃さん、見てない? ほら、窓の下についてた傷だよ」

月乃「……ああ、確かにあった」

瀬川「ふぅ……どう? これでもまだ犯人は更衣室に行ってないって言い切れる?」

陰陽寺「……………………」

目を閉じ、観念した様に俯く陰陽寺さん。その姿は負けを認めたと言わずともわかる

……やった。総ての反論を切り倒して、とうとうあの陰陽寺さんを倒す事に成功したんだ

まるでロールプレイングゲームを成し遂げたかの様な高揚感。魔王を討ち滅ぼした勇者を讃える声が無いのは残念だけど……

月神「でも、どうして更衣室の壁に傷が? 犯人はただ隠れていただけでしょう?」

瀬川「まあまあそんなのどうでもいいじゃん。犯人は陰陽寺さんで決まって……」



朝日「うぅん。本当にそうなのかなぁ?」

186 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:46:12.13 ID:B0eBlC/WO


瀬川「……は?」

朝日「えっとねぇ、オトコノコでも女子の更衣室に入る事は出来るんだぁ」

スグル「それは朝日さんだけですよ……」

月乃「……そうでもない。死んだ二人の電子生徒手帳を使えば可能」

竹田「あ? 二人ってえと、天地の嬢ちゃんと吊井座の坊主の事か?」

照星「電子生徒手帳……!? 二人の!?」

飛田「そ、それがあればレディの更衣室に入れるのかね!?」

臓腑屋「下心! 下心が出てるでござるよ!」

朝日「一つだけ動かない手帳があるけどぉ、これは吊井座くんの物だと思うんだよぅ」

月乃「……だから、犯人も生徒手帳を使えば男子でも女子の更衣室に入れるはず」

月神「なら、女子の陰陽寺さんだけが犯人とは言い切れない……!」

瀬川「えぇ……」

冗談じゃない……せっかく陰陽寺さんが犯人なのに余計なケチは付けたくないよ……

ここで要らない議論をするのは嫌だ。なら、”嘘”で終わらせちゃおう……!

187 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:46:46.64 ID:B0eBlC/WO

【ノンストップ議論(嘘)  開始】

『コトダマ』
【校則の抜け穴】
【だるまさんがころんだ】
【二人の電子生徒手帳】
【工具セット】



朝日「二人の電子生徒手帳を使えばねぇ……」

朝日「オトコノコでも、女の子の更衣室に入れちゃうんだよぉ?」

月神「なら、陰陽寺さんだけが犯行が可能だったとは言えないわね……」

御影「じゃあ、犯人は《飛田クンか朝日クン》?」

飛田「オレをさも犯人かの様に言うなッ!」

古河「せやけど、ホンマにそれ天地のなんか?」

月乃「……流石に試してはいないけれど」

月乃「……でも、吊井座の最期は【爆死だった】」

月乃「……これが【りぼんの生徒手帳】である可能性は、極めて高いと思う」

188 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:47:16.45 ID:B0eBlC/WO

【りぼんの生徒手帳】←【二人【吊井座の電子生徒手帳】




瀬川「これで嘘つきを暴くよ……!」偽証!

瀬川「それは違うよ……だってそれ、天地さんじゃなくて吊井座君の生徒手帳手帳だもん」

月乃「……は?」

月神「瀬川さん。何を言っているの……?」

嘘だ。そう月神さんの目が訴えている。お前は何を言っているのか。と

陰陽寺さんがクロなのは判りきった事。なら、それを補強する様な証言をすれば……

瀬川「実はさ、私、前に天地さんの生徒手帳を水没させちゃってたんだよね」

瀬川「本人は気にしてないって言ってたけど、多分故障してたんじゃないかなあ……」

駆村「待て! そんな話、天地からは一度も聞いた事が無いぞ!」

瀬川「さあ? それは私も知らないよ」

朝日「でもぉ、あんなオシオキされれば電子生徒手帳だってえ……」

瀬川「あの時、電子生徒手帳を持っていなかった。あるいは回収されてたかもしれないじゃん」

瀬川「何にせよ、あれが天地さんのものだって証明は不可能だよね?」

御影「え? 起動して確かめればよくない?」

月乃「……いや、起動する事は出来る。けど確認には指紋認証が必要」

竹田「流石に死体をここに持ってねえだろうしな」

瀬川「それに、まだ電子生徒手帳が使われていない根拠があるんだ……」

犯人が生徒手帳を使っていない根拠。それは……


1:月乃が電子生徒手帳を持っている事
2:犯人が電子生徒手帳を持っている事
3:電子生徒手帳が乾電池で動いている事

189 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:48:00.70 ID:B0eBlC/WO

1:月乃が電子生徒手帳を持っている事



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「月乃さんが、死んだ二人の電子生徒手帳を持っていた事。これがその証拠だよ」

瀬川「だって、もし犯人が使ったなら、当然、今は犯人が持っているはずだよね」

飛田「おい待てッ! ならば電子生徒手帳を持っていた朝日が犯人なのではないかね!?」

朝日「違うよぅ。だって手帳は月乃ちゃんが持ってきたんだもん」

月乃「……因みに、一階の教室の教卓にあった」

古河「御影ェ! そこお前の担当やろ、何身逃がしてんねん!」

御影「あれ……? おかしいな。そんなの無かったけど……見逃してたかな……?」

まあ、この際場所は何処でもいいんだけどね。重要なのは陰陽寺さんがクロって事実だけなんだから!

瀬川「……で、どう? 陰陽寺さん。犯行が完璧に暴かれた気分は」

竹田「おいおい……マジなのか? 俺には陰陽寺の嬢ちゃんがクロには見えねえ」

陰陽寺「……僕は、犯人じゃない」

月神「陰陽寺さん……」

スグル「本当ですか? 僕も陰陽寺さんは……!」

瀬川「真実は時に残酷なものなんだよ。モノクマ、投票タイムお願い」

モノクマ「あ、もういい? それじゃあオマエラ、お手元のボタンで投票してくださーい!」

190 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:48:42.75 ID:B0eBlC/WO


ハルカ『はーい! それでは、全員の投票が終わりましたー!』



駆村「これで、終わりなんだな……」

臓腑屋「デイビット殿……無念でござろう」

投票先は迷わず陰陽寺さん。あの無愛想な顔に一泡吹かせられた事で、胸は清々しい気分でいっぱいだ

陰陽寺「……僕は」



ヨウ『それでは、オマエラの投票結果は正解なのか、果たして不正解なのか!』



飛田「くううっ、また、あのオシオキを見る羽目になるとはッ!」

古河「なんでや……なんで腐ってもヒーローのクセに殺したんや!」

月乃「……本当に、残念」

皆も、最早疑う余地は無いと言わんばかりに陰陽寺さんを睨み付ける。彼女の普段の鋭い眼光も、今は可愛らしく怯えている

陰陽寺「僕は、僕は!」

陰陽寺「犯人じゃ、ない……!」

瀬川「……あれ?」

最期。陰陽寺さんが精一杯の力で叫ぶ

絶叫が脳裏にこびりつく。私には、その言葉がどうしても嘘には聞こえなくて……




モノクマ『それでは、今回の投票の結果を発表しまーす!』



191 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:49:35.69 ID:B0eBlC/WO








【投票結果】
 陰陽寺 魔矢:13票
 無投票:1票








192 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:50:19.36 ID:B0eBlC/WO

モノクマ「うぷぷっ、それでは結果を発表します」

モノクマ「今回、デイビット・クルーガークンを殺したのは陰陽寺魔矢さん……」



モノクマ「……では、ありません! 残念!」



瀬川「………………………………は?」

モノクマは、今、何て言った?

クロ、じゃない? 本当の犯人は、陰陽寺さんじゃない……?

そんな、嘘だ、間違いなんてない。だって、議論でおかしな部分は無かったのに……

思考が追い付かない。どこで間違えたのか、どこで道を踏み外したのか……

月神「モノクマ。今、なんて……」

モノクマ「言葉通りの意味だよ。今回のクロは陰陽寺さんじゃないんだってば」

飛田「な、何をバカな事をッ! これまでの議論は間違いなかったはず……」

モノクマ「間違っていたんだよ。とにかく今回のクロには、約束通り卒業の権利を与えます」

約束通り……なら、私達は、これから……!

モノクマ「そ、し、て! 間違えたダメダメなオマエラには約束通り……!」

瀬川「ま、待ってよ……! 一回だけ、一回だけ間違えただけじゃん……!」

モノクマ「吊井座クンだってちゃんとオシオキしたでしょ。ワガママ言わないの!」




モノクマ「それでは張り切って参りましょう! 空前絶後、超絶怒濤の…………」

モノクマ「オシオキターーァイム!!!」




193 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:51:09.17 ID:B0eBlC/WO

瀬川「…………………………あ」


フラフラ、クラクラ、ユラユラ、キラキラ


視界が歪んで煌めいて。世界が崩れて薄れていく




まるで悪い夢の中。早く醒めたい。けど赦されない

この深淵の様な感情を形容するとしたら……




――――『絶望』。これが、私の夢のおしまい……


194 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/08(月) 20:51:53.79 ID:B0eBlC/WO







………………………………………………………………







195 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:09:58.94 ID:mkp4fcdrO






………………。

……………………静かだ

あれから、何の音も聴こえない。視界全てが真っ黒に染まって、何もない零に還っていく


既に感覚は無くなっている。いや、私には最初からそんなものは無かったんだっけ……?


暗いドロドロとした澱の中、とろとろになった身体と思考を固めていく


虚空に浮くような不思議な感覚。これは夢? それとも現実? 哲学の様な問いが頭を廻る


ふと、中学生の時に知った蝶の変態を思い出した。幼虫は蛹の中で全てを融かし、成虫としてのカラダを創り直す……


脆弱で矮小な檻の中、必死に明日を夢見る虫けら。それが、何故か私と重なって見えて……



それを否定したくなって、ほんの少しだけ上に手を伸ばした

196 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:10:45.71 ID:mkp4fcdrO




瀬川「……んっ、ふぁあ。あれ……」

瀬川「ここって……学級裁判場……?」

長い夢でも見ていた様に、頭が現実への処理に追い付けない

目の前に広がるのは裁判場。最初に来た時とは若干違うけど……まあ、概ね記憶通りだ

そして、周りには変わらない三つの遺影。後は……

スグル「あ……瀬川さん。大丈夫ですか?」

古河「ええ度胸しとるなぁ……裁判中に居眠り決め込むヤツ、オマエ以外におらんわ!」

照星「やっぱりコーヒー飲んどいた方が良かったんじゃないっすか? にひひっ!」

変わらない皆。さっきまでの地獄絵図とはかけ離れた様子は、まるで今までの議論が無かった事になっているみたい

瀬川「えーっと、今どこまで議論したっけ?」

古河「は? どこまでも何ももう投票タイムやろ」

駆村「瀬川が言ったんじゃないか。デイビットを殺したのは陰陽寺だと」

陰陽寺「僕は犯人じゃない」

御影「いい加減見苦しいぞ! もう証拠は上がってるんだよ!」

臓腑屋「にゃあ。拙者は正直な所、これ以上議論の余地は無いと思うのでござる」

飛田「その通りッ。ぐぐぐ、隠れてはいるが可愛い顔立ちをしていると睨んでいたものを……」

どうやら、議論そのものは実際にあったみたいだ。でも、その結末。陰陽寺さんに投票したという未来だけが無くなっている

そして、恐らくはその先の未来は……

197 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:11:27.68 ID:mkp4fcdrO

竹田「で、マジな話どうすんだ? もう嬢ちゃんに投票しちまうのか?」

朝日「そうだねぇ。私も、もう何処にも議論する所は無いと思うなぁ」

月神「でも、あの陰陽寺さんよ? 彼女が人を殺すなんて……」

飛田「現実とはかくも残酷なものさ。千早希もそう言っていただろう?」

瀬川「えっ? あ、うん」

スグル「僕も正直、陰陽寺さんがこんな事をするとは思えませんけど……」

月乃「……二人が言っているのは印象に過ぎない。魔矢が二人が思う程高潔な人間では無かっただけ」

御影「そうだそうだ! ボクを馬鹿にした事、まだ忘れてないんだからな!」

古河「ちっさいな! まあ、ウチもクロは陰陽寺や思うわ。てかそれ以外考えられへん!」

陰陽寺「僕は犯人じゃない」

御影「犯人じゃない犯人じゃないってさっきからそれしか言えないのかよ! もう諦めろってば!」

陰陽寺「なら何て言えばいい。僕は本当に犯人じゃない。デイビットを殺していない」

臓腑屋「にゃあぅ、その曲がらぬ意思は評価するでござるが……」

……誰が何をどう言おうと、自分の主張を曲げない陰陽寺さん。けれど、全員の意見も一致している

正直、私は陰陽寺さんが嫌いだ。無愛想だし、ツンケンしてるし、血が通っているのかもわからないし

198 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:12:07.95 ID:mkp4fcdrO


…………けど





陰陽寺「僕は、僕は!」

陰陽寺「犯人じゃ、ない……!」





頭の中で響く声。目の裏に焼き付くあの表情

それは嘘には見えなくて。それが皆に伝えないと、私達は、最低最悪の未来に辿り着いちゃう……!


瀬川「……ま、待って!」

竹田「どうかしたのか? 瀬川の嬢ちゃん」

瀬川「あ、あの……その、言いにくいんだけど……」

御影「言いにくいんだけど?」



瀬川「…………もう一回、議論をやり直さない?」

「「「「「…………は?」」」」」

199 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:13:57.03 ID:mkp4fcdrO

古河「……寝ぼけとるんか?」

瀬川「寝ぼけてないよ! ただ、本当に陰陽寺さんが犯人なのかなーって……」

御影「いやいやいや!? 犯人だって言ったのは、他でもない瀬川さんじゃんか!」

瀬川「そうなんだけどさ。何だか急にそう思えなくなったっていうか……」

駆村「大丈夫か? 裁判で疲れるんじゃないか?」

朝日「えへへぇ。瀬川さんはぁ、早く寝た方がいいんじゃないかなぁ」

ダメだ……完全に呆れられている。そりゃ私だってにわかには信じられないよ

どうすれば皆を議論に呼び込める? 証拠も証言も使えるモノは全て使いきった。後は……

瀬川「……まだ、言ってない事があるんだ」

月乃「……は?」

瀬川「まだ皆には話してない事があるんだ。それがもしかしたら陰陽寺さんの無実を……」

古河「オマエまたそれか! この際だからハッキリ言うたるけど、瀬川は嘘ばっかで信用出来へん!」

竹田「確かになあ、前回も吊井座の坊主を釣り出す為とはいえ平気でホラ吹いたのはヤバいだろ」

駆村「そもそも自分で犯人だと追い詰めたのに、次は犯人じゃないって……矛盾してないか?」

陰陽寺「……何のつもりだ。何が目的だ」

瀬川「何が目的。って……」

とうとう陰陽寺さんにすら不審がられてしまった。最早私の言葉は、どれだけ真実を伝えても聞き入れてはくれないだろう

……なら、答えは1つ

200 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:14:40.52 ID:mkp4fcdrO

瀬川「目的……? あはは。教えてほしい?」

瀬川「それはね……陰陽寺さんを困らせる為だよ」

今までの議論に縛られるなら、その思い込みを解き放てばいい


スグル「………………? え……っ?」


瀬川「皆も思ってると思うんだけど、陰陽寺さんって無愛想だし協調性は無いし扱いにくいし……」

瀬川「正直、苦手だよね……」

今までの議論が正しいと思うなら、全部違っていたと思わせればいい


駆村「さっきから瀬川は……何が言いたいんだ?」

照星「陰陽寺先輩の事と学級裁判に何か関係があるんすか?」


これから皆には……信じてもらう必要がある

"今までの議論は全部無駄だった"って事に……!


瀬川「関係あるに決まってるじゃん。だって、それが目的だったんだから!」

瀬川「幾ら陰陽寺さんでも、皆に疑われて責められれば少しは身の振り方を反省するでしょ?」

瀬川「あはははっ! 全てはこの為、陰陽寺さんを痛い目に合わせる事だったんだよ」


例え……私の事をどう思われようと。でも、そんな事は今更だよね?

だって、ずっと私は、嘘で繕ってきたカラダの心を纏ってきたんだから……

201 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:15:28.91 ID:mkp4fcdrO

御影「えーっと……ボク何言ってるかわかんないんだけど……」

朝日「瀬川さんが、何もしてない陰陽寺さんを犯人にしていたのぉ……?」

竹田「つー事はよ、瀬川の嬢ちゃんは私怨で陰陽寺の嬢ちゃんが疑われる様にしてたんだな?」

月神「酷い……! 陰陽寺さんがどれだけ傷ついたか、考えられない訳じゃないでしょう!?」

月神「陰陽寺さんだけじゃない。ここにいる皆の命を巻き込んでまで、憂さ晴らしするなんて……!」

瀬川「…………………………」



……恐い。初めて彼女に抱いた感覚。隣にいる月神さんは今、本気で私に怒っている

陰陽寺さんが嫌いな事は事実だし、陥れる為に嘘をついたのも本当だ

だからこそ、月神さんの気迫が恐ろしい。この裁判を切り抜けたとしても、私の事を、きっと……



瀬川「……私の事を許せないならそれでもいいよ。けど、これだけは聞いてほしいんだ」

瀬川「もう一度議論をしよう。私だけじゃない、皆の命がかかった本当の学級裁判を!」

でも、立ち止まれない、止まっちゃいけない。この未来が嘘で導かれたものなら、変えられるはずだ

最悪の未来を、もう一度嘘で変える為に……!

202 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:16:15.15 ID:mkp4fcdrO

【ノンストップ議論(嘘)  開始】
『コトダマ』
【竹田の証言】
【だるまさんがころんだ】
【工具セット】
【三組のアリバイ】



御影「議論するって言ってもさぁ……」

御影「どう考えても《陰陽寺さんがクロ》にしか見えないんだけど!?」

月乃「……証拠は、全て【正しいと思う】」

古河「陰陽寺しか【デイビットを殺せへん】やろうしなあ……」

朝日「朝まで語ろう会にもいなかったからぁ、【アリバイも無い】もんねぇ」

臓腑屋「女子である故に、【女子更衣室に入れるのも陰陽寺殿のみ】でござるな!」

竹田「決めつけるわけじゃあねえが、役満だろう」

駆村「それでも、ここから陰陽寺の無実が証明できるとは思えないが……」

月神「瀬川さん……どういうつもりなの……?」

203 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:16:59.78 ID:mkp4fcdrO

【アリバイも無い】←【三【三組以外のアリバイ】



瀬川「これで世界をひっくり返すよ!」偽証!

瀬川「それは違うよ……アリバイがあるのは陰陽寺さんだって同じなんだよ」

朝日「ふえぇ……そうなのぉ?」


嘘、本当はそんなの知るわけがない。だけどさっきは無理矢理証拠を造り上げたんだから同じ様に……

この嘘で真実を曲げる……世界を造り上げる……!


瀬川「私、寄宿棟に戻った時に少しだけ外の空気を浴びてたんだ」

瀬川「それで、10時30分位かな……部屋に戻って寝たんだ。誰にも合わずにね」

陰陽寺「それがどうかしたのか」

瀬川「別に? それだけの話だけど」

古河「はぁ!? なんやそれ!?」

飛田「MA☆TE! オレはその位の時刻に、食堂に探しにいったんだぞ!?」

瀬川「そうなの? 私全然気がつかなかったー」

臓腑屋「凄い棒読みでござるよ!?」

瀬川「まあぶっちゃけ嘘なんだけどね。皆さん」

スグル「嘘なんですか!?」

……よし。重要な証言は引き出せた。これ以上つく必要の無い嘘は捨てちゃおう

後はコレをぶつけるだけ……さあ、今だ―――!

瀬川「飛田君。その位の時間に食堂に行ったんだよね? それに間違いは無いかな」

飛田「当然! オレの美しさに賭けてもいい!」


瀬川「なら、その時に陰陽寺さんとすれ違ってたりする?」

204 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:17:43.64 ID:mkp4fcdrO

飛田「フッ……何を聞くかと思えば……」

飛田「オレは誰とも会っていない! 断言する!」

瀬川「……ふ、ふふふっ! あははははは!!!」

瀬川「ありがとう飛田君! これで、私の思う様に議論を進める事が出来るよ!」

飛田「どういたしましてレディー!」

月神「……瀬川さん。どういう事なのかしら?」

堂々とした答え。それは、今の私の求めていたモノだった


瀬川「飛田君は学園にいた。それなのに陰陽寺さんんに会っていない……これって変だよね?」

瀬川「陰陽寺さんだって学園にいたんだ。それなのに二人が会ってないなんておかしいよ!」

臓腑屋「にゃ、そうでござろうか? 陰陽寺殿は前もって更衣室に隠れておけばよいでござろう」

スグル「デイビットさんが本当に来るかわからないのにですか? 当然、呼び出されたなら時間の指定はしていたはずですけど……」

竹田「幾ら隣同士とはいえ、女子更衣室からはダンスホールの様子はわからねえ。最悪デイビットの坊主がバックレる場合もあるしな」

照星「言われてみればヘンっすね。なんだか行き当たりばったりな気も……」

陰陽寺「犯人は緻密な計画を立てていたはずだ」

陰陽寺「わざわざ犯行の行い辛いダンスホールまで呼び寄せ、女子更衣室に身を隠す。犯行が露見した場合の保険すらかかっている」

陰陽寺「狡猾で残忍な犯人のトリックが、まだ隠されているはずだ」

陰陽寺さんが今とばかりに切り込んでいく。それは否定するだけの少女ではなく、ヒーローとして……

205 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:18:40.03 ID:mkp4fcdrO

御影「だ、だけどさ! だからって陰陽寺さんが犯人じゃないとは言えないよ!」

古河「せやせや! 陰陽寺しか出来ひんから、今の今まで疑われとったんやろ!」

臓腑屋「正直な所、陰陽寺殿では無いとはにわかには信じがたい話でござるよ」

議論を修正する事は出来た……でも、ダメだ。まだ大部分は陰陽寺さんを疑っている

陰陽寺さんが犯人なのか。確かに疑問を持つ人はいるけど、それが裁判に与える影響は微々たるもの

どうすれば裁判の流れを逆転出来る? 私だけの力じゃ、もう不可能だし……

……こうなったら、背に腹は変えられない。かな

瀬川「月神さん。貴女はどう思う? 陰陽寺さんは犯人だと思ってる……?」

私を睨み付けてきた月神さん。私の事が憎いであろう月神さんに問いかける

さっきまでの怒りは鳴りを潜め、目を閉じる。月神さんは少し思案し……答えた

月神「私は……陰陽寺さんを信じる。犯人じゃないと思うわ」

月神「根拠は無いけど、それでも……信じたい」

瀬川「……月神さんは、私と同じ意見みたいだね」

照星「自分も……信じてみるっす! 陰陽寺先輩が本当に犯人か、もっと考えてみたいっすから!」

スグル「僕もです……彼女があんな残酷な事をするとは、とても思えません……!」

私の言葉に呼応するかの様に、照星さんとスグル君が同調する。数は揃った。これで皆と戦える……!


ハルカ『はいどうもー! 皆さんお馴染み変形裁判場の出番かな?』

ヨウ『それでは張り切って頑張ってくれ。スイッチオン!』

206 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:19:34.04 ID:mkp4fcdrO

裁判席が空中に浮かぶ。もう二度目だけど、この高揚感と浮遊感はまだ慣れない

隣には陰陽寺さん。月神さん。スグル君。照星さんが並んでいる。対するは御影君を筆頭に陰陽寺さんが犯人だと主張する……



飛田「待てッ! スグル貴様、オレを差し置いてレディに囲まれるとはいい度胸だなッ!?」

スグル「えぇ……?」

飛田「オレもそちらに行くッ異論は認めんッ!」

「「「えぇ……?」」」


……飛び入り参加の飛田君も含めて、私達は大分賑やかになった。役に立つかは別として

とにかく、この議論を制した者がこの最近を制するんだ。負けるわけにはいかないよ!

207 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:20:39.01 ID:mkp4fcdrO

駆村「そもそも陰陽寺を見ていないのは、飛田が見逃しただけじゃないのか?」
飛田「見逃すなどあり得ん! オレの嗅覚に賭けてもいい!」
臓腑屋「先んじて女子更衣室にいただけでは?」
瀬川「更衣室にずっと隠れていたら、肝心の犯行が狂う可能性もあるんだよ?」


事件を再確認し構成し直す。そうしていると、ふと脳裏にある疑問と可能性が過る

それはかなり現実味に欠ける可能性。でも……今はこれに懸けてみる……!


瀬川「それに、犯行を終えて外に出た時に、探しに来た人と鉢合わせになる……」

瀬川「そうなったら犯行の全部が駄目になる……そのリスクを背負いながら実行したの?」

月神「確かにそうね……不自然だと思うわ」

朝日「ならぁ、犯人はどうやったのぉ?」

古河「あのダンスホールは一歩でも歩くと音が響くんやろ? なら迂闊に動けへんやん!」

瀬川「あるんだよ。誰も想像しないような、秘密の通路がね……!」

月乃「……秘密の通路? ホグワーツ?」

あ、ノッてくれるんだ……それはそれとして、この推理を裁判場にぶつける!

瀬川「ダンスホールの外だよ。そこから犯人は出入りしたんだ」

御影「あのさぁ……さっき瀬川さんも自分でいったでしょ? 外から入ると音でバレるって!」

竹田「謎かけか? 昔っから頭固えからそういうの苦手なんだよな」

瀬川「そんな難しくないよ……本当に、本当に単純な答えだったんだ」

瀬川「犯人が移動経路にしたのは……”ダンスホールの窓”だったんだよ!」

……ここからが、本当の議論。スクラムの様に一列に並び、意見をぶつけ合う戦場になる

高速の議論、一瞬たりとも見逃せない。皆もついてこれるなら―――!

208 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:22:03.96 ID:mkp4fcdrO

古河「ダンスホールの窓て……無理やろ!」

瀬川「無理じゃないよ。足場さえ確保すれば移動に使える通路になる」

駆村「その肝心の足場はどこにも無いだろう!」

瀬川「ある。更衣室に置いてある洗濯ロープ。それを張れば人が乗っても大丈夫!」

瀬川「ロープの端はフック状になっているから、窓のサッシに引っ掛ければ取れないし……」

瀬川「いざ外す時も、逆側から引っ張れば簡単に取れるはずだよ」

竹田「無茶じゃねえか? ロープはどう引っ掛けんだよ。重りがねえと難しいぜ」

スグル「鎧は……使えませんもんね。あの場に全て揃っていましたし……」

竹田「絶対無理とは言わねえ。けどよ、あると無いとじゃ安定感が断然違うぜ」

月乃「……犯人も、そうそう試行する時間は無い」

陰陽寺「握力測定器だ。片側の持ち手にロープを巻き付ければ、簡易的な分銅になる」

陰陽寺「鎖鎌の要領だ。握力測定器を巻いた方は重く、放り投げても軌道は安定する」

陰陽寺「試行回数も最低限に抑えられ、どちらも元は更衣室に置いてあるものだ」

スグル「そうか。一連の工作を終えて片付けても怪しまれない……犯人にとっては一石二鳥の隠れ場所だったんだ」

月神「あっ……もしかして、あの更衣室の壁の傷。握力測定器がぶつかった痕じゃないかしら?」

月神「犯人も命中率を少しでも上げる為に、力一杯投げたはず……だから、壁に奇妙な痕がついたの」

月神さんの一言で議論が収縮する気配を感じ取る。結論は出た。私の推理は正しいと……!

瀬川「これが私達の答えだよ!」全論破!!!

209 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:23:39.27 ID:mkp4fcdrO

瀬川「……犯人は窓を使って経路を確保したんだ」

瀬川「これなら、誰にも見られずにダンスホールと更衣室を行き来出来るよ!」

照星「確かにそうかもしれないっすね……」

朝日「でも、どうやってぇ? ロープが切れないって言ってもぉ怖いよぅ」

飛田「不可能でも無いだろう。オレ程並外れた優れたバランス感覚があれば!」

月乃「……なら、やっぱり飛田が犯人?」

飛田「これは自慢であって自白では無いッ!」

御影「この状況でそれを自慢するの!?」

確かにそうだ。私だって、ロープの上を歩けなんて言われたら罰ゲームとしか思わない

いったい犯人はどうしたの? どうやってロープの上を、安全に渡る事が出来たの……?




1:下にマットを敷いていた
2:安全ロープを用意していた
3:何も用意してなかった

210 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:24:24.55 ID:mkp4fcdrO

1:下にマットを敷いていた


瀬川「下にマットを敷いたんじゃない? 落ちても平気なら思いきって動けるし」

駆村「そのマットはどこにあるんだ? まさか体育館から持ち出した訳でも無いだろ」

照星「そもそも、それだともう一回下に降りないとダメじゃないっすか。犯人は更衣室に隠れていたんじゃないっすか?」

うーん、どうやらこれは違うみたい。なら……



2:安全ロープを用意していた



瀬川「安全ロープを巻いていたんだよ。これなら体が固定されるから落ちないでしょ?」

瀬川「洗濯ロープも一本だけじゃないし、何なら倉庫からロープくらい幾らでも……」

竹田「無難っちゃ無難だが、そのロープはどこに巻いてあるんだ? 更衣室から延びきった状態で殺すのは無理だろう」

月神「安全ロープですものね。同じ様に張ったら無意味になるでしょうし……」

スグル「うー……安全ロープは違うと思います……」

これも違うの……!? なら犯人は何を用意して、窓の外を伝ったって言うの……!?

何もせずに渡れる訳がない。それじゃまるで……

瀬川「…………………………あれ?」

211 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:27:18.86 ID:mkp4fcdrO




引っ掛かったのは、ただ一つの単語だった


頭の中で浮かんだその単語は、まるで炭酸の様に私の中で弾けて回る


パチパチ、パチパチと脳細胞が開いて繋がる。脳内シナプスが限界まで駆け巡る


そして、鮮明に浮かび上がるのは……犯人の正体


それを示す前に、この疑問の答えを打ち出さないといけない。これが私の答え……


この裁判の真実を……!

212 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:28:14.12 ID:mkp4fcdrO

3:何も用意してなかった



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「犯人は何も用意してなかったんだ。だって、犯人には道具なんて無くても……」

瀬川「自信があったからね。自分なら絶対に、失敗する訳が無いってね!」

月神「えっ……じ、自信があった?」

竹田「がっははは! こりゃ一本盗られたな。瀬川の嬢ちゃんはトンチが上手えや」

私の渾身の答えを豪快に笑い飛ばす竹田さん。それ以外の反応は、冷えきったというのも憚られる様な絶対零度

スグル「瀬川さん。冗談はよしてください……」

瀬川「冗談じゃないって! 犯人はロープの上を、壁伝いに歩いたんだよ」

瀬川「そうじゃなきゃ、物証が何一つ無い事に説明がつかないでしょ?」

御影「……ぷっ! あはははは! 瀬川さん、幾らなんでもそりゃ無いよー!」

御影「大体壁伝いにロープを歩くって何さ! そんなのまるで……」

御影「…………え?」

古河「は? どないしたん。なんなんそのえ?は」

御影「えっ、えっ? 嘘でしょ? え?」

月乃「……まさか」

はっと月乃さんが何かに気づいた様な表情になる。その視線は、ある人に向けられていた

向けられている人は……何を考えているか。閉じた目の奥の感情は、まだわからない

だから、ここに引きずり出す。私を一度殺した罰。ここで叩きつけてやる……!

瀬川「……犯人、見つけたよ!」



【この事件の真犯人は?】

213 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:30:57.32 ID:mkp4fcdrO

【臓腑屋 凛々(ゾウフヤ リリ)】




瀬川「御影君は、こう言いたかったんじゃない?」

瀬川「《まるで忍者みたいだ》ってさ」

御影「え……あ、うん……」

確認の為に、御影君に聞いてみる。若干の怯えと、困惑を含みながら答えてくれた

それに応じる様に、月乃さんも頷く。彼女は御影君とは違って、ある種の確信を持っていた

竹田「ちょいと待て……忍者だと?」

古河「忍者言うたら……そんなん……!」

瀬川「女子更衣室に入れるのは当然女子。そして、陰陽寺さん同様アリバイは無い……」

瀬川「それに、ロープの上を何も用意せずに歩ける人なんて貴女しかいないんだよ」

瀬川「貴女も犯行は可能なんだ。臓腑屋さん」

瀬川「貴女が、デイビット君を殺した犯人だよね」

臓腑屋「……………………」

214 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:31:58.07 ID:mkp4fcdrO

臓腑屋「……瀬川殿は勘違いしているでござる」

瀬川「へぇ、勘違い?」

臓腑屋「まず、犯人がロープを使って移動した等、現実的に考えてあり得ないでござる!」

瀬川「でも、女子更衣室とダンスホールの間の壁には変なシミがついてたんだよ?」

瀬川「犯人が着ていたジャージにも血痕がついていたんだ。あれは犯人が壁伝いに進んだ……」

臓腑屋「見違えただけでは? まさか、触って確認した訳ではないでござろう」

そう来るか。確かにあれは血痕だけど、それを見たのは私だけだし……

臓腑屋「やはり、犯人は陰陽寺殿しかいないでござろう。全ての条件を満たすのがその証拠!」

臓腑屋「な、に、よ、り! 拙者は忍者では無いのでござるからな!」

胸を張って、自分の意見を主張する。そこからは、犯人だという後ろめたさも弱気も感じない

だけど、臓腑屋さんの主張……陰陽寺さんがクロというのは間違っている。それは身に染みて理解した

臓腑屋さんの主張、どこから崩す……?

215 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:32:53.18 ID:mkp4fcdrO

照星「臓腑屋先輩がクロ……? でも……」

月神「信じられない……あんなに皆に尽くしてきた臓腑屋さんが犯人なんて!」

瀬川「そんな事言ってたらキリがないじゃん。私は臓腑屋さんがクロだと思ってるから!」

スグル「ですが、本当に臓腑屋さんがロープの上を歩けるのかどうか……」

臓腑屋「よくよく考えるのでござる。拙者はあくまでも家事代行の身。そんなイメージだけで……」

陰陽寺「出来るだろう」

臓腑屋「出来る訳が……にゃ!?」

陰陽寺「お前はあの時、僕を担ぎながら体育館の梁に登った。一人でロープを渡るなんて簡単だろう」

瀬川「あの時……?」

不意に出てきた言葉で記憶を手繰る。あの時って、もしかして……




陰陽寺「……………………ふん」

臓腑屋「あ、危ない所でござった……!」

御影「え!? 陰陽寺さんと臓腑屋さん!? どこ!?」

臓腑屋「ここにござる!とうっ!」





瀬川「……あ、本当だ! 出来るじゃん!」

臓腑屋「にゃ、にゃあぁああ……!」

さっと顔が青ざめる。まさか、そんな昔の事を出させるとは夢にも思わなかったんだろう

まさか、陰陽寺さんに救われるとは思わなかったけど……これならいける気がする!

216 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:33:43.78 ID:mkp4fcdrO

【ノンストップ議論  開始】

『コトダマ』
【ダンスホールの鎧兜】
【飛田の手鏡】
【校則の抜け穴】
【二つの電子生徒手帳】
【工具セット】



月神「臓腑屋さんが、クロ……?」

臓腑屋「待つでござる! 瀬川殿の罠でござる!」

駆村「臓腑屋なら、【ロープの上を渡れる】……」

スグル「女子更衣室に入るのも【問題ない】です」

臓腑屋「違うのでござる! こんなの、有り得る訳が無いのでござる!」

古河「陰陽寺に出来る事は、ほとんど臓腑屋も出来るんやな……」

朝日「本当にぃ……臓腑屋さんがぁ……?」

臓腑屋「そん、な……そんな訳、無いでござる!」

臓腑屋「拙者に出来ない事はあれど、【陰陽寺殿が出来ない事は無い】でござろう!?」

臓腑屋「惑わされてはダメでござる! もう一度、冷静になって考え直すべきなのでござるよ!」

217 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:34:21.59 ID:mkp4fcdrO

【陰陽寺殿に出来ない事は無い】←【飛田の手鏡】



瀬川「その矛盾! ツマラナイよ!」論破!

瀬川「それは違うよ! 臓腑屋さんにしか出来ない事、本当はあるはずだよね?」

臓腑屋「そんな事……!」

瀬川「ずっと不自然に思ってたんだ。そもそも何でデイビット君が飛田君の手鏡を持っていたのか」

瀬川「どうしてあの日、飛田君が何処を探しても鏡が見つからなかったのか」

瀬川「どうして事件が起きたあの時、デイビット君が鏡を抱えて死んでいたのか!」

一つ一つ丁寧に疑問を提起していく。あの時感じた違和感を、皆にも伝えていく様に

対する臓腑屋さんは、疑問を挙げられる度、顔は青く染まって二つの目は見開かれ、焦点がズレていく

その反応に、確信に近い手応えを感じる。後はこれで、確かめるだけ……!

瀬川「その答えはただ一つ……臓腑屋さん。貴方は飛田君の手鏡を盗んだんだ!」

飛田「ぬ……盗んだだとぉおおぉお!?!?!?」

瀬川「飛田君はあの時食堂で置き忘れたって言ってたけど、本当はその時臓腑屋さんが盗ってたんじゃない?」

月乃「……だから、何処にも見つからなかった」

瀬川「私と月神さんも食堂にいたけど、月神さんにはアリバイがあるし、私は寝ていたし……」

駆村「それ自慢げに言う事じゃないからな」

瀬川「どうしてデイビット君の下敷きになっていたかまではわからないけど……」

瀬川「臓腑屋さん。貴女しかいないんだ。飛田君の鏡を盗めたのは!」

218 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:35:01.16 ID:mkp4fcdrO

臓腑屋「何を……何を、馬鹿な事を!」

臓腑屋「そんな物、飛田殿が違う所で落としただけの事! デイビット殿はそれを偶然拾っただけ!」

瀬川「それって都合が良すぎない? 偶然拾って、偶然現場に落っこちてたの?」

臓腑屋「それは……!」

瀬川「臓腑屋さん。反論はある? 無いならもう、投票タイムにしちゃうけど」

古河「ちっと強引過ぎひんか? もうちっと反論を聞いてから決めーや」

朝日「陰陽寺さんが犯人じゃないってぇ、決まった訳でもないもんねぇ」

それはもう決まってるんだよ。なんて言えないからここは我慢……

臓腑屋「……瀬川殿の推理は滅茶苦茶でござる」

臓腑屋「窓にロープを張り、そこから経由して移動した。一見矛盾の無い推理でござるが……」

臓腑屋「仮に、デイビット殿を殺害し終えた後、窓枠まで歩けば結局音が響く……無意味でござろう」

照星「あっ……確かにそうっす! 自分達、そんな音は聞いていないっすよ!」

臓腑屋「そうでござろう。万歩譲って瀬川殿の推理が正しいとしても、この様に大きな穴がある!」

臓腑屋「その様ないい加減な推理で拙者を陥れよう等言語道断! 許される事では無いのでござる!」

臓腑屋「先に言っておくでござるが、忍び足にも限度があるでござるからな!」

強気な態度はバレないという自信の裏打ちなのか、臓腑屋さんはさっきとはうって変わってビシリと指を私に突き付ける

音の響くダンスホール。そこから音を立てずに移動するには……

考えろ……常識を捨ててでも、解き明かすんだ……!

219 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/07/13(土) 20:35:40.81 ID:mkp4fcdrO

【ブレインドライブ  START】



1:【犯人は、殺し終わった後どうした?】

A.食堂に向かった
B.更衣室に向かった
C.ダンスホールに残った


解:B.更衣室に向かった
瀬川「これだよ!」解!


犯人は更衣室に向かったはず……皆はデイビット君を探しているんだから、入れない女子更衣室は探さないんだ

次は、どうやって女子更衣室まで行ったのか……


2:【どうやって更衣室まで向かった?】

A.隠し扉を使った
B.廊下を歩いて扉から入った
C.ロープを張って足場にした


解:C.ロープを張って足場にした
瀬川「これだよ!」解!


廊下を歩くと、探しに来ていた皆と鉢合わせになる可能性が高い……隠し扉? そんなの考えるだけ無駄でしょ

残っているのは、窓の外……窓のサッシにロープを張って、そこを伝って足場にしたんだ

これが最後……犯人は、あの状況でどうやって窓に辿り着けたのか……


3:【犯人は窓までどうやって移動した?】

A.歩いて移動した
B.ロープに飛び移った
C.\フロート/

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