【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.2

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1 : ◆nV158uMR4EBZ [!orz]:2019/03/25(月) 21:43:52.28 ID:Ef2ohd7zO
【諸注意】
・何番煎じかもわからないオリロンパスレです
・以下の作品のリメイクとなっております。一部に軽い設定の変更が有ります
『元スレ』
【二次創作】安価で進めるオリロンパ リミックス
 https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1532086400/

・エタらない事を重視するため、展開等が速いかもしれません
・キャラクターは以下のスレから拝借しましたが、一部に才能や氏名の変更があります
※エタロンパのキャラを書き留めるスレ
 https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/17143/1499596380/l30

『プロローグ〜一章まで』
【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】
 https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1541335141/



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1553517832
2 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:45:47.93 ID:Ef2ohd7zO

【彩海学園  生徒名簿】
【女子】
※身長や胸囲はフィーリングなのでおかしい部分は目を瞑ってください


【名前】瀬川 千早希(セガワ チサキ)
【才能】超高校級のコスプレイヤー
【身長】167cm
【胸囲】87cm
【好きなもの】クレープ
【嫌いなもの】カメラ

【名前】天地 りぼん(アマチ −−)
【才能】超高校級の家庭教師
【身長】154cm
【胸囲】64cm
【好きなもの】プラネタリウム
【嫌いなもの】宝くじ

【名前】御伽 月乃(オトギ ツキノ)
【才能】超高校級の童話作家
【身長】165cm
【胸囲】95cm
【好きなもの】雲
【嫌いなもの】尖ったもの

【名前】陰陽寺 魔矢(オンミョウジ マヤ)
【才能】超高校級のヒーロー
【身長】160cm
【胸囲】71cm
【好きなもの】竹刀
【嫌いなもの】ハムスター

3 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:47:12.79 ID:Ef2ohd7zO

【名前】古河 ゆめみ(コガ −−)
【才能】超高校級のスタイリスト
【身長】170cm
【胸囲】84cm
【好きなもの】流行りもの
【嫌いなもの】水たまり

【名前】臓腑屋 凛々(ゾウフヤ リリ)
【才能】超高校級の家事代行
【身長】163cm
【胸囲】74cm
【好きなもの】干したての布団
【嫌いなもの】火事

【名前】月神 梓(ツキガミ アズサ)
【才能】超高校級のアイドル
【身長】168cm
【胸囲】82cm
【好きなもの】ぬいぐるみ
【嫌いなもの】パクチー

【名前】照星 夕(テルホシ ユウ)
【才能】超高校級の柔道家
【身長】158cm
【胸囲】92cm
【好きなもの】マット運動
【嫌いなもの】避難訓練

4 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:48:23.19 ID:Ef2ohd7zO

【男子】



【名前】御伽 朝日(オトギ アサヒ)
【才能】超高校級のショコラティエ
【身長】170cm
【胸囲】76cm
【好きなもの】ハートマーク
【嫌いなもの】猫

【名前】駆村 沖人(カケムラ オキト)
【才能】超高校級の地域振興委員
【身長】187cm
【好きなもの】時雄島
【嫌いなもの】嵐

【名前】神威 スグル(カムイ −−)
【才能】超高校級の???
【身長】160cm
【好きなもの】マカロン
【嫌いなもの】抹茶ラテ

【名前】竹田 紅重(タケダ ベニシゲ)
【才能】超高校級の玩具屋
【身長】196cm
【好きなもの】狩猟
【嫌いなもの】ハイテクノロジー

5 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:49:53.49 ID:Ef2ohd7zO

【名前】吊井座 小牧(ツルイザ コマキ)
【才能】超高校級のイラストレーター
【身長】176cm
【好きなもの】日陰
【嫌いなもの】〆切間近

【名前】デイビット・クルーガー
【才能】超高校級のプロファイラー
【身長】184cm
【好きなもの】統計学
【嫌いなもの】イエダニ

【名前】飛田 弾(トビタ ハズム)
【才能】超高校級のダンサー
【身長】190cm
【好きなもの】美しいもの
【嫌いなもの】もんじゃ焼き

【名前】御影 直斗(ミカゲ ナオト)
【才能】超高校級の幸運
【身長】168cm
【好きなもの】醤油ラーメン
【嫌いなもの】ピーマン

6 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:50:48.48 ID:Ef2ohd7zO




……小さな頃、一度だけパパとママに叱られた事がある


あれは……そう。確か、小学生の時。まだ善悪の分別のつかない頃


ずっとお家に帰らない両親が恋しくて、二人が大切にしていた絵画を破いた事があった


最初はこれでパパとママに会えるって思っていたんだけど……結局、二人は戻ってこなかった


帰ってきたのはそれから一ヶ月が経った頃……二人は家政婦さんから事情を聞いたみたいで、私を呼び出すと、大声で怒鳴り付けたんだ


『どうしてこんな事をしたんだ』『貴女をこんな悪い子に育てた覚えはない』『お前がそんな事をするなんて』……


何を言っていたかはあんまり覚えていない。けど、その後パパは私を抱き締めて、こう言ったんだ


『もう、こんな事はしないでくれ』。それが、私とパパの最初で最後の約束だった


怒られた事は悲しかった。けど、それよりももっと大きな事実が、私の心を支配していたんだ




……『約束を破れば、私に構ってくれる』って

7 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:52:07.35 ID:Ef2ohd7zO


それからしばらく経って……私が小学生に上がった頃


私の大好きな友達に、『私のお家に遊びにおいでよ』って誘われた


勿論、最初は行くつもりだったけど……ふと頭の裏を過ったのは、幼い頃の、苦い思い出


……好奇心が沸いたんだ。もし、ここで友達との約束を破ったら、友達は私にどうするんだろう?




そんな無邪気な好奇心に負けて、私は、もう一度約束を破った




翌日、学校で何気無く話しかけてみた。友達からの返事は無くて、顔はこっちを向いていなかった


一瞬でわかった。私は無視されている。友達の視界から、世界から私は殺されている……


好奇心が罪悪感に変わったのはすぐだった。ごめんなさい。許してください。もうしないから。お願いだから


思い付く限りの謝罪と懇願。頭が壊れるかと思う程頭を下げ続けて、その子はゆっくりとこう言った


『もう友達との約束を破らないって、誓える?』。私はこの時、ようやく自分のした事の重さに気づいたんだ



約束を破る事はいけない事。それも、友達との約束を破った人には罰を与えないといけない事

私は、心に硬く誓った。もう約束は破らないって

友達との約束は、絶対に叶えないとダメなんだって……


8 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:52:35.31 ID:Ef2ohd7zO







【Chapter2】
  もうやらないと誓ったのさ







9 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:53:03.84 ID:Ef2ohd7zO





……嫌な夢を見た。よりにもよって、辛い事があった日に限って悪夢を見る

目を閉じると、瞼の裏に昨日の出来事がスクリーンの様に映し出される

殺人事件、学級裁判、オシオキという名の処刑……

その果てに、天地さんと吊井座君。二人もの命が、たった一日で何処かへ消えてしまったんだ

……どうせなら、私もここから消えてしまいたい。一刻も早く、私のモラトリアムに浸りたい

けど、ここから帰ろうとした二人は……もう、戻れない所まで行ってしまったんだ

「はぁ……行くしかないかぁ」

進むも退くも最悪なら、進んだ方がいいと思う。流石に今のタイミングで逃げるのはイメージが悪い

……皆の様子も、一応見ておきたいしね

「……よし!行くぞ!」

鏡の中の私に渇を入れる。思ったよりも、鏡の中の作り笑顔は大丈夫そうだった

10 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:53:33.86 ID:Ef2ohd7zO



スグル「あ、瀬川さん……」

月神「……おはよう。瀬川さん」

瀬川「うっ……お、おはよ」

入った瞬間に、重苦しい雰囲気が歓迎してくる

どんよりとした顔つきに淀んだ目。生気の無い顔の集団は、ゾンビゲームを連想させる

まるで、お葬式をした直後に怪獣が襲来してきたかと思わせる様な……そんな諦めと絶望の混じった顔

モノクマ「うわぁ、オマエラ酷い顔してるね!何か変な夢でも見てた?」

瀬川「げっ」

うん。もしかしなくても、お葬式の後に怪獣が出てきたね……全ての元凶が

スグル「モノクマ……!」

古河「モノクマァ!おどれよくもウチらの前に出てこれたなぁ!?えぇ!?」

モノクマ「まあまあカッカしないでよ、閣下!」

竹田「それは駄洒落か?」

モノクマ「今回はコロシアイをしてくれたオマエラに、いいお知らせを持ってきたんだよ」

御影「いい知らせ……?もしかして脱出の手がかりとか!?」

臓腑屋「絶対に違うでござる!」

月乃「……わざわざ教えに来るとは思えない」

モノクマ「まあ見てみればわかるよ!という訳で、パパッと再生スタート!」

11 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:54:12.12 ID:Ef2ohd7zO



〜〜〜♪



ハルカ『良い子のみんなー!ココロオドルTVの時間だよー!』

ハルカ『うぅっ!やっと終わったんだね……!あの学級裁判が!』

ヨウ『悲しんでいるのか?殊勝な心掛けだな』

ハルカ『いなくなっちゃった人達には悪いけど、今生きている人達にはいいお知らせがあるよ!』

ヨウ『切り替えが早すぎるだろ。せめてもう少し悲しげな態度を取れなかったのか』

ハルカ『皆にはここで共同生活を送って貰っているけど、この学園には色々と足りてないものがあるんだよね』

ヨウ『そうだな。主に娯楽方面での不足ぶりは見るに堪えない』

ハルカ『そこで私は考えました。この学園に足りないものはなんなのか!』

ヨウ『おっ?それで何が足りないんだ?』

ハルカ『それはズバリ!運動です!』

ハルカ『なので、皆には体操着のプレゼントを上げちゃいまーす!勿論女の子はブルマだよ!』

ヨウ『……………………』

ハルカ『どしたの?まるで養鶏場の卵を見るような目をしているけど』

ヨウ『いや、お前の下心丸出しのプレゼントに少し気分が悪くなってな』

ハルカ『や、やだなー……純粋な好意デスヨ?』

ハルカ『そもそもブルマに下心のあるヨウ君の方が不純だよ!ちゃんとジャージも用意してるし!』

ハルカ『ってもうこんな時間じゃん!さっさと合言葉言って切り上げないと!』


『『鮮やかな!!』』

ハルカ『遥かな明日を!』ヨウ『見届けよう!』

ハルカ『バイバーイ!アンドバイバーイ!』

12 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:54:48.47 ID:Ef2ohd7zO



モノクマ「という訳なんだけど」

御影「いやどういう訳なんだよ!?」

臓腑屋「そもそも、今頃体育着など渡されてどうすれば良いのでござるか……」

飛田「いや……これはもしかしたら革命かもしれぬ……!」

飛田「ここには麗しきレディが居るのに、肝心の衣服が少なすぎる!少しでも潤いを増すべきだッ!」

御影「それに賛成だよ!」

古河「反対や!そもそもオマエ真っ先に伸びとった癖に何で乗り気なん!?」

飛田「フゥ!何故か今朝から身体が軽くてね!」

月神「ああ、すぐに気絶していた分深く休めていたのね……」

駆村「誰か飛田を止めてくれ……」

モノクマ「ああそれと、こっちの方はどうでもいいんだけどさ……」

モノクマ「彩海学園の二階にも行ける様にしといたから新しい施設を確認してね」

朝日「そっちの方が重要だと思うんだけどなぁ」

モノクマ「それじゃあ良い学園生活を!オマエラの健闘を祈る!うぷぷぷぷっ!」

言いたい事だけ言いました。と言わんばかりの速さでまくしたて、その速さのまま去っていく

後に残された気まずい沈黙。取り合えず何か声をかけようとして……口を閉じた

今はまだ、動くタイミングじゃない。その時になるまで行動するのは止めておこう

13 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:55:19.98 ID:Ef2ohd7zO


照星「……しゃ!行くっすよ!先輩!」

そして、時は動き出す。照星さんの底抜けに明るい声で

照星「新しい場所が出来たなら、そこに何か手がかりがあるかもしれないっすよね?」

照星「だったら、ここでモタモタしてる暇は無いっす!行動あるのみっすよ!」

デイビット「フム。一理あル。でハ、各々探索を進メ、昼頃に集まり情報を纏めるのは如何かネ?」

月神「そうね。なら皆、これから学園の二階の探索をしましょうか」

竹田「だけどよぉ、二階に行く階段も無えのにどうやって行きゃあいいんだ?」

月乃「……梯子?」

スグル「梯子で移動する学校なんて聞いた事ありませんね……」

竹田「なら俺は無理だな。……冗談だっての」

陰陽寺「僕は行く。行きたい奴だけ来い」

照星「あっ!待って欲しいっすよー!」

こうして二階への探索が決まった。意気揚々と足取り軽く、重い何かを振り払う様に




御影「あ、照星さん。糸屑ついてるよ!」

照星「……っ!?」

照星「……ど、どーもっす!先輩!」

御影「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃんか!?」

14 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:57:23.09 ID:Ef2ohd7zO



瀬川「ええと、階段は……あったあった」

学園を徘徊する事数分あまり。二階へ続くであろう階段を発見する事に成功した

ここまで、他の人とは会っていない。皆はもう二階へ上がっていったのかな……

スグル「あ、瀬川さん!今から探索ですか?」

瀬川「うん、そうだよ。スグル君も今からかな?」

スグル「はい!ちょっと気になる事があったので、確認しに行ったら遅れちゃって……」

瀬川「……気になる事?」

気になる事。スグル君の何気無いその一言が、今の私の気になる事だ

思わず彼を問い質してみる。彼は直ぐに顔を伏せ、少し悲しげに語ってくれた

スグル「……天地さんの、死体です。いつの間にか無くなっていました」

スグル「恐らく、学級裁判の最中に片付けられたのだと思いますけど……」

……私達に弔う資格はない。って事かな、そうだ、彼女には別れの言葉も掛けられなかったっけ

進んだ足跡は消す事は出来ない。例え道を違えたとわかっていたとしても

瀬川「……行こっか。早く先に、さ」

スグル「え?あの、瀬川さん……?」

だったら、もう後戻りはしない。溢した水が還らないなら、潔く捨ててしまえばいい

瀬川「皆が上で待ってるよ。私達も早く行こ!」

見据えるのは未来だけ!……今、目の前にあるのは真っ暗な道だけなんだけどね


15 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:58:12.95 ID:Ef2ohd7zO





カンカンカンと階段を上がると、目の前には酷く簡素な通路が広がっている

モニターの張り巡らされた一階と比べると、何処と無く殺風景な印象だ

もう、何でモニターがあんなにあったのか。それを疑問に思わなくなる位には馴染んできたのかな?

スグル「地図によると、二階は大きなフロアが一つと、小さなフロアが三つで構築されている様です」

スグル「近くにあるのは大きなフロアですね。どうしますか?」

瀬川「どうするも何も……行くしかないよ」

わざわざ遠い所から潰していく必要もない。近くにあるなら、そこに向かうしか道はない

瀬川「さ、行こっか。私に付いてきてね」

スグル「あっ……!?」

くい、とスグル君の小さな手を引く。男の子とはいえ未だ完成には至らない白い手が、私の手の中で少しだけ跳ねた

白い頬を微かに赤らめる。初々しくて純朴なその姿に、とくんと胸が高鳴った気がした

小さな男の子相手にこの感情は……多分、気のせいだ。と思いたい


16 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:59:01.56 ID:Ef2ohd7zO





月神「……あら、二人とも。一緒だったの?」

綺麗だ。……勘違いしないで欲しいけど、別に月神さんにそう思ったわけじゃない

扉を開くと、シャンデリアの眩しい光が目を包む。傍らには、剣、槍、斧。各々の武器で武装した鎧が佇んでいる

鈍く重厚に輝く鎧。シャンデリアの優美な光に当てられて、幻想的な風景を造り出していた

瀬川「ここは……?」

飛田「ダンスホール!即ちオレのオンステージ!」

スグル「わっ!?」

飛田「ここはオレの一人舞台!誰の追随も許さぬ美の極致!とくと見てくれ……オレの勇姿を!!!」

朝日「あ、スグルくぅん。ここはねぇ、来賓をおもてなしする為の部屋なんだってねぇ」

瀬川「あぁ、映画とかでよくあるアレね……」

朝日君の説明で合点が行く。途端に頭の中で、正装の紳士と婦人がくるくると踊り始めた

手を取り合って輪になって。二人は比翼の連理の様に、繋いだ身体は広がっていく

二人の歩はカツカツと音を立てながら、新しい足跡を床に刻んで……

臓腑屋「……瀬川殿?瀬川殿ー!?」

瀬川「ハッ、またボーッとしてた……」

朝日「大丈夫ぅ?チョコはねぇ、頭の栄養にぴったりなんだよぉ?」

可愛くラッピングされたチョコを丁重に断る。頭に栄養が足りてない程バカじゃない

残念。と少しだけ困った様な表情を見せる朝日君。チョコをぱくりと頬張って、甘ぁいと満足げに微笑んでいた

17 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 21:59:59.97 ID:Ef2ohd7zO

瀬川「こほん!ところで、この剣とかって本物?」

咳払いをして空気をリセット。まずは気になる事を聞いてみようか

壁に佇む鎧。その手にある銀色の煌めきは、確かに本物の刃物だと理解できるけど……でも、確認するに越した事はない

駆村「ああ……デイビットと陰陽寺に確認させた。殺傷力は充分ある」

瀬川「え!?それじゃあ危ないじゃん!」

駆村「と言っても、結構重たいぞ?スグル、持ってみるか?」

スグル「はい!……わわっ、これ凄く重たい……!」

駆村君がゆっくりと引き抜かれた剣を手渡す。渡されたスグル君は、あっちこっちへよろよろ動く

そんな挙動を少し続けたスグル君は、もう疲れたのか、剣を下げて息を切らしていた

スグル「はぁ、はぁ……」

瀬川「お疲れさまー……そんなに重いの?」

駆村「俺も重く感じるが……軟弱過ぎないか?」

スグル君こら剣を受けとると、軽々とした動きで剣を納め直す。さすがは農筋……

瀬川「剣は無理そうだけど他の凶器はどうなの?ハンマーとか短剣とかあるけど」

月神「それに関しても二人に意見を貰っているわ」

月神「ハンマーは重くて振り回しにくいし……短剣はよほど深く突き刺さないといけないみたい」

月神「でも、危険な事は危険だから……皆も充分に注意してほしいとの事よ」

朝日「危ないから隠しちゃおっかって話もあったんだけどぉ、そうしてもモノクマに直されたら意味が無いって話になったんだぁ」

……要するに、危ないから気を付けてね。って事か

対処出来ないなら放置する。合理的だけど、寂しい解答だ……なんちゃって

18 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 22:01:14.28 ID:Ef2ohd7zO

瀬川「スグル君、他に気になる事は無いかな?」

スグル「あ、なら……あの窓開けてみませんか?」

彼が指を差したのは、ステンドガラスの嵌められた窓。中央にサッシが入った変わった形だ

開いてみると、内側に向けてガラスが動く。キラキラとガラスを通して変化した光が、顔をくすぐった

瀬川「わ……凄い!花畑が一望出来るよ!」

スグル「こんなに色とりどりの花が咲いてたんですね。普段の目線だと気づかなかった……」



「瀬川さーん!スグルクーン!!」



瀬川「……あれ?誰の声?」

何処からか私達を呼ぶ声がする。その声は外から。いいや、隣から聞こえていたようで……

御影「おーい!こっちこっちー!」

身を乗り出す様な体勢の御影君が目に入る、手を振って存在感を精一杯にアピールしていた

スグル「御影さん!?何処にいるんですか?」

御影「更衣室だよ!隣にあるから来てみなって!」

瀬川「更衣室か……行ってみよっか」

スグル「はい!待っててください、御影さん!」


19 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 22:01:58.21 ID:Ef2ohd7zO





御影「あっ!二人とも!こっちこっち!」

御影「ここが更衣室だよ!赤い扉が女子で青い扉が男子なんだってさ」

ここだよ。と御影君が指差した先にあったのは、赤と青の二つの扉

年期の入った重苦しそうな見た目だけど、よく見てみたらパネルの様なものがついている……

御影「電子ロックなんだって。電子生徒手帳をかざせば開くんだって」

御影「男子は男子の、女子は女子の生徒手帳じゃないと開かないから気をつけてってさ!」

瀬川「ふーん……なら、御影君が私の生徒手帳を使えば女子の更衣室に入れたりする?」

御影「そうそう。ボクもそう考えて古河さんに借りようとしたんだよ?でもそれがさぁ……」



古河『オマエ絶対覗くつもりやろ!貸さへんわ!』

モノクマ『そうそう!他の人の生徒手帳を使う事は禁止!校則にも追加しておくからね!』

御影『そんな〜〜〜!』



御影「だってさ。残念だよね……」

スグル「残念でもなんでもなく、当然な気が……」

全くもってその通りだ。うんうんと頷きながら生徒手帳を確認する

校則の欄に新着がある。そこには確かに、『他者の電子生徒手帳を使用した場合、生徒手帳の持ち主を罰します』と書かれていた

20 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 22:02:58.26 ID:Ef2ohd7zO





古河「……で、スグルとどっか行ったんか?」

瀬川「まあ、色々あったけどそういう事だね」

臓腑屋「どういう事なのでござるか……」

今、私達は更衣室で雑談をしている。部屋の中は、更衣室というよりちょっとしたトレーニング施設だ

ダンベルにランニングマシン。それに、握力を計るアレも備わっている。箱には粉末状のスポーツドリンクまで用意されているなんて……

臓腑屋「駆村殿も喜んでいたでござるよ。それと陰陽寺殿も意外と興味があったみたいでござるな!」

瀬川「そりゃあ、これだけ充実してたら運動する人にとっては嬉しいよね!」

あの二人は如何にもな体育会系だし嬉しがる気持ちもわからなくもない

……でも、一番こういう施設を好みそうな人の名前は、全く出てこなかった

瀬川「ところで照星さんは?こういうの好きそうなイメージがあるけれど……」

古河「それなんやけどな、『今は少しそんな気分やない』いうて別のトコにいってもうた」

瀬川「……へぇ」

そんな気分じゃない、か。空々しい言い訳としては及第点といった所かな

普段の頭が空っぽの様な行動ばかりの彼女にも、何か思うところがあるのかもね

……せっかくだし、会いにいってみようかな?

瀬川「ふぅん……照星さんって、今どこなの?」

臓腑屋「にゃあう。恐らく……美術室でござるな」


21 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 22:03:37.08 ID:Ef2ohd7zO





瀬川「えっと、確かこっちだったっけ……?」

竹田「ん…?よう、嬢ちゃん。どうかしたのか?」

……余談だけど、この彩海学園は割りと入り組んだ通路をしている

モニターまみれの通路だった一階と違ってさっぱりとした二階だけど……それでも初めて通る路は混乱する。……しない?

だから、まごついていると誰かに捕まる訳で……

瀬川「あ、竹田さん……ちょっと色々あってー……」

竹田「丁度いいか。どうせ今暇してんだろ?ちっと付き合ってくれや」

瀬川「……………………」

竹田「おいおい、そんなセクハラ親父を見るような目で見ないでくれよ?」

がっははは!と破顔しながら大声をあげる

豪快に笑い飛ばしているけど、今の発言はセクハラ親父以外の何物でもないよ

ひとしきり笑い飛ばした後、私に向き直る。その顔は、さっきの豪放なものではなくて……

竹田「……ここだけの話だけどよ。照星の嬢ちゃんの状態があまり良くねえんだわ」

瀬川「?どゆこと?」

竹田「ずっと上の空でろくに反応しねえ。俺も何とかしてやりてえのは山々だけどよ」

竹田「俺よりも同性の瀬川の嬢ちゃんのが話しやすいだろ?頼まれてくれよ。若いんだしよ」

そっか……やっぱり、彼女は……

瀬川「わかった。それじゃあ行こっか」

竹田「あいよ。そんじゃあ着いてきな」

22 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 22:06:13.24 ID:Ef2ohd7zO





竹田「着いたぜ、嬢ちゃん……デイビットの坊主、後は頼むぜ」

デイビット「承っタ。でハ、瀬川女史は此方ニ」

瀬川「ちょ、ちょっと待って?少し質問させて?何でこんなに慎重なの?」

着くや否や、竹田さんとデイビット君の刑事ドラマで見たようなやり取りが襲う

まるで魔法の白い粉を取り扱う様な……いや、今の照星さんが危険なのはわかるけど!

デイビット「照星女史。現在、彼女の状態は極めて不安ダ」

デイビット「感情を取り繕うという事ハ、その深層を他者に覚られる事を恐れる故の傾向であるからニ」

竹田「下手に気を使うと逆効果ってこった。だからこうして秘密にしてんのさ」

瀬川「……取り扱い注意って事だね」

二人の言葉に気を引き締める。これからの対応次第で、私の好感度が左右される気がするから

照星さんを何とかする。私にしか出来ない事だから頑張らないとね!

瀬川「それじゃ、行ってきまーす!」

手を軽く振ってドアを開く。私が活躍するいいチャンスなんだから……!






竹田「…………本当に嬢ちゃんで大丈夫かぁ?」

デイビット「ム、何か言ったかネ?」

竹田「何でもねえよ。……ふぁあ〜あ、運動したら眠くなっちまったなぁ」

23 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/25(月) 22:06:39.92 ID:Ef2ohd7zO
本日はここまでで
24 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:02:29.20 ID:XP/zMJPIO





照星「……………………」

……いた。美術室の椅子の上、ぽかんとした表情で絵を見詰めている

何を考えているかは読み取れない。そもそも、何も考えていないのかもしれない

瀬川「……照星さーん。今、大丈夫?」

慎重に、慎重に……むやみやたらに刺激しない様にそっと話しかける

ぽん、と肩に手を置くと、ビクン!と身体を震わせながら振り向いた

照星「ひゃあ!?せ、先輩!近くに居るなら言って欲しいっすよー!」

瀬川「言ったんだけど……」

これは中々重症だ。それを、本人が自覚していなさそうなのが更にマズイ

流石に面と向かってそんな事は言えない。照星さんと喧嘩になったらまず間違いなく殺される

照星さんにぶつける言葉を選択する。……よし

瀬川「照星さん……少しいいかな」

照星「な、なんっすか?顔怖いっすよ……?」

深呼吸して息を整える。人格を切り替えて、





瀬川「いつまで、そうやって情けない態度をとっているつもりなのかな?」

25 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:03:34.42 ID:XP/zMJPIO

照星「え、先輩……?」

瀬川「照星さんが悲しむ気持ちもわかるよ。けど、それだけじゃダメなんだ」

瀬川「辛い事も飲み込んで、前に向かって進まないと死んだ二人も浮かばれないよ」

瀬川「だから、元気だして!いつもの明るい照星さんに戻ってよ。……ね!」

照星「先輩…………」

考えた末の結果は、熱血先輩系ムーブメント

取り合えずキツめに説教してみた。体育会系っぽい照星さんには受けると思うけど……

照星「……そう、っすね!くよくよしてるのは自分らしくねーっす!」

照星「もう……戻るっす!お先、失礼します!」

にこっと笑って顔を上げる。その姿は紛れもなく、あの頭に栄養がいってなさそうな能天気な顔だ

照星さんはトタトタと走り去っていく。うんうん、どうやら上手くいったみたいだね

瀬川「……いいこと言ったなぁ。えへへ」

自画自賛もそこそこに、周りの様子を確認してみる

美術室。という通り、周りには色々な美術に関するモノが置いてある

石膏像は今にも動き出しそうな迫力でこっちをガン見しているし、風景画からは風がそよいできそう

きっと、これを作った人、描いた人は、よっぽど虚構の世界が好きなんだろう。そんな気がする

照星さんがここにいたのは、死んだ二人の事を考えていたからだろう。目を瞑ると、未だに声が脳内に反響する……

26 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:05:12.52 ID:XP/zMJPIO





天地「わー絵の具に石膏像!なっつかしー!」

瀬川「吊井座君的にはどう?お眼鏡に適うかな?」

吊井座「ま、まあいいんじゃねえの?お、俺もたまにはここで描いてみるか……」

照星「吊井座先輩、絵を描くんすか!?」

瀬川「忘れてない?イラストレーターだからね?」

照星「冗談っすよ!にっひひひ♪」





……もしかした、こんなやり取りをしていたのかもと思いを馳せる

もう絶対に有り得ない、有り得る訳がない未来だけど、だからこそ綺麗だと思うんだ

手に入らないからこその美しい毎日。今の理不尽な生活では、きっと手から零れる煌めき

そんな時に溢れる感情を、人は尊いと言うんだ

瀬川「……あれ?」

風景画を眺めていたら、急に強いデジャヴに襲われた。ここの絵はどれも始めて見るはずなのに

……忘れているだけ?まさかね

古河「瀬川ァ!そっちはもうええかー?」

古河「そろそろ集まって報告せなアカンねん、はよ食堂に来てなー」

瀬川「あ、はーい」

古河さんに催促されるがままに美術室から立ち去る

チラッと振り返って絵を見たら、絵の真ん中に亀裂が走っている様に見えた

27 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:06:32.11 ID:XP/zMJPIO




瀬川「じゃあ、結局脱出に関するものも……」

瀬川「この学園に関わるものも無かったんだ」

私の一言にデイビット君が頷き、他の皆は押し黙る

ダンスホールが二階のほとんどの面積を占めているせいで、見た目よりも実りの無い結果になったんだ

ガッカリとした雰囲気が流れ始める。陰陽寺さんに至っては既に食堂から出ていった

月神「……仕方無いわ。でも、諦める事はしない」

月神「私達は私達で過ごしていくしかないわ。今日は取り合えずここまでにしましょう」

賛成、と月神さんの提案に乗るように、各々好きに動き始める

何人かは陰陽寺さんみたいに食堂の外に出ていったけど、まだ残っている人も多い

私も暇だし、せっかくだから誰かと話してみよっか

28 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:07:45.56 ID:XP/zMJPIO





月乃「……千早希、前に座っていい?」

瀬川「えっ?あ、うん。いいよ」

動く前に月乃さんが話しかけてきた。すとんと私の前に座ると、コップを一つ差し出してくる

月乃「……ココア、飲む?朝日が作っていたから貰ってきた」

瀬川「あ、どうも……」

ココアを喉に流し込む……うん、美味しい

瀬川「そう言えばさ、月乃さんって朝日君……お兄さんの事はどう思っているの?」

月乃「恥」

即答された。実の兄妹なのにこの塩対応は清々しさすら感じられる

月乃「……兄さん、昔はあんなじゃ無かったのに」

瀬川「あ、そうなの?昔から女装していたイメージがあったんだけど……」

瀬川「そうだ。どうして朝日君が女装してるか月乃さんは知ってる?」

月乃「………………」

瀬川「………………」

月乃「……お花摘みに行ってくる」

瀬川「あっ!?ちょ、逃げる気!?」

言うが早いか。月乃さんは普段のぼんやりした態度とは裏腹に、機敏に食堂から去っていく

まあ、『実の兄が男の娘だけど質問ある?』なんて普通は言えないし、教えてくれないよね……

なら朝日君の方に……は、止めておこうかな

29 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:08:58.53 ID:XP/zMJPIO




デイビット「でハ、宜しく頼むヨ。スグル氏」

スグル「はい。わかりました」

……? デイビット君とスグル君。比較的珍しい組み合わせの二人が話している

相性は悪い訳じゃないけど、こうして向かい合って話しているのを見ると不思議な気分になる

スグル「あ、瀬川さん。どうしたんですか?」

瀬川「いや、二人が話してるのって珍しいから気になってさ」

スグル「そうですか?デイビットさんは頼りになるので、懇意にさせて貰っています」

……そうなんだ。確かに、デイビット君はこの中で一番冷静な考えの人だし、頼りになるのはわかる

でも、なんだろう。この胸のモヤモヤは……嫉妬。じゃないとは思いたい

デイビット「フム、丁度良イ。瀬川女史もご一緒に如何かネ?」

デイビット「無論。無理ニ、とは言わないガ」

瀬川「んー……わかった。いいよ」

唐突なお誘いだけど……今は暇だし、乗ってみよう

返事を聞いて満足したのか、デイビット君は深く頷き、スグル君と一緒に歩いていった……

30 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:10:30.37 ID:XP/zMJPIO

瀬川「……ここって」

私達は黙って歩く。学園内から外に出て、寄宿棟へ進んでいく

デイビット君が止まった場所。そこはもう誰も使わない……いいや、使わなくなった部屋だった

デイビット「吊井座氏の個室ダ。本来ならば天地女史の弔いも行いたい所だガ」

デイビット「余り大々的に行うト、周囲に弔いの強要をさせている様に思われる故」

瀬川「だからひっそりとやろうって事ね」

確かに皆の目の前で葬式なんてやられたら、気分を害する人が出てもおかしくない

スグル君が言葉を静かに紡ぎ始める。デイビット君は沈んでいく様に、ゆっくりとその目を閉じた

瀬川「…………」

私は目を閉じていない。スグル君は背中を向けているし、デイビット君は私が見えていない

スグル君の話す祝詞は穏やかだ。だけど、その中に二人への思いが籠められている事がよくわかる

その姿は、まるで救世主だ。迷った魂に道を標し、正しい世界へ導いていく……

そんな妄想を繰り広げていると、スグル君が言葉を止める。私は、慌てて両目を閉じて指を組んだ

31 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:11:08.10 ID:XP/zMJPIO


スグル「―――――……終わりました。目を開けていいですよ」

デイビット「感謝、感謝。よもやスグル氏がこの様な事に詳しいとはネ」

瀬川「えっ?そうなの?」

スグル「はい。本当になんとなくですけど……」

スグル「死者の弔いや普段の生活……僕は、何らかの宗教を信仰していた様な気がするんです」

宗教。色んなヤバイ事をする人達のイメージが強い私にとって、スグル君は真逆の存在だ

私と友達になったのも勧誘する為……?スグル君とはちょっとだけ距離をおいておこう

スグル「……? 瀬川さん、何か?」

瀬川「べ、別に〜?」

デイビット「ハ、ハ、ハ。宗教と一言で纏めてモ、実際には様々な宗派が存在するものダ」

デイビット「スグル氏が、真に宗教関係者だからとして怯える必要は無いだろうヨ」

瀬川「肝に命じておきま〜す……」

そんな考えを見透かされていたのか、デイビット君に釘をさされた。本当に油断も隙もない……

デイビット「……スグル氏、協力感謝すル。然シ、葬儀等本来ならしなくても良いものダ」

デイビット「ワタシモ、もう二度とワタシの力を必要としない事を祈っているヨ」

服を翻しながら、デイビット君は外に出ていく。どこか決意の様な発言を残して

……学級裁判は起きない方がいい。それは皆もそう思って当然だと思うけど、でも……

…………私は?自分の本心と向き合う勇気は、まだ私には無いみたいだ

32 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/03/31(日) 22:12:07.07 ID:XP/zMJPIO




「……えっと、今日の夜はお魚がいいかな」

「味噌が余ってるし、鯖の味噌煮とか……?」

瀬川「……ん?」

少し小腹が空いたから食堂に来たら、誰かがまだ奥にいたみたい

瀬川「もしもーし、誰かいるのー?」

臓腑屋「にゃあ!?せせせ、瀬川殿ぉ!?」

瀬川「あれ?臓腑屋さんだけ?」

臓腑屋「にゃあ……そうでござる。致し方ない。実は拙者……」

瀬川「おかしいなぁ、空耳かな?ごめんね」

臓腑屋「話を聞くでござる!それは紛れもなく拙者でござるから!」

臓腑屋「拙者は、一人の時や通学の場合は普通の口調なのでござる!これはあくまで条件反射なのでござるからな!?」

瀬川「へぇー……じゃあキャラ作ってるって事?」

臓腑屋「い、意識している訳ではないでござるが、そう言われると否定できないでござる……」

がっくりと肩を落としてシュンとする

そのわざとらしい忍者キャラが作ってるのはわかってたけど、そんなにがっくりする事かな……?

因みに、余談だけど……今晩の晩御飯は私の大好きなハンバーグに決まったみたい。やったね!

……不正は無かった。いいね?

33 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:40:22.82 ID:OcgGkYvEO





『えっと、ゴメンなさい……許して……』

『ふうん……。――はそれで許されると思ってるの?そんなんじゃ甘いよ』

『だからいつまで経っても私以外に友達が出来ないんだよ?……ほら、もっと誠意を見せて』

『ご、ゴメンなさ……』

『謝る位ならもっと私の言うこと聞いてよ。ほら、頭しっかり下げて』



……暗闇の中に響く幼い二人の少女の声。頭を踏まれて呻くのは、過去の私だ

私はずっと、『友達』に囚われている。呪縛の様に縛られているのが、今の私だ

……悪いのは私だから。だから、あの子は私を虐めるんだ。あの子は悪くない。あの子は友達だから

私は独りぼっちなんかじゃない。そう自分に強く言い聞かせる。無様な姿が、解けない様に

そうだ。ずっと気にしてなかったし、特に困る事も無かったから忘れていた

あの子の、友達の名前はなんて言ったんだっけ……

34 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:41:22.49 ID:OcgGkYvEO





御影「サッカーやろうぜ!」

朝。そろそろ皆も立ち直りかけたかなという微妙な時期に、その発言は撃ち込まれた

御影「サッカーやろうぜ!」

月神「えっと、御影君。それは……」

瀬川「スグル君、ちょっと醤油取ってくれない?」

スグル「あ、はい。これですね」

駆村「この味噌汁……いい味だな。具はなんだ?」

朝日「えっとねぇ今日のお味噌汁の中はぁ、玉ねぎと油揚げと、後は……たあっぷりの愛情だよぉ♪」

臓腑屋「最後のは必要でござったか……?」

御影「聞けよ!無視するなよ!」

飛田「しかし毎日朝は和食ではつまらんッ!食卓の色味が薄すぎるッ!」

デイビット「フム、偶には欧州風の朝食でも如何かネ。と提案してみよウ」

月乃「……本格的なブレックファスト。興味が無い事もない」

御影「ちょっとー!ねえ!ボクの声が聞こえてないの!?おーい!!」

古河「じゃかあしいわボケカス!オマエのどうでもいい話なんて聞きたかないわ!」ドスッ

御影「そんな〜〜〜!!……あ痛ぁっ!?」

うろちょろと目の前を右往左往する御影君。ウザイを通り越して鬱陶しい

我慢の限界が来たのか、古河さんからの強烈な蹴りが御影君に炸裂する

古河さんのヤクザキックをモロに受けた御影君は、よろよろと呻き、バタリと床に手をついた

35 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:42:25.84 ID:OcgGkYvEO


御影「うぅ……何でさ、何で蹴るのさ……」

古河「さっきからチョロチョロウザイねん!なんでいきなりサッカーなん!?」

御影「……だって、だってさ。ボク達はずっとここに閉じ込められて、満足に動けないじゃないか」

臓腑屋「そうでござるな……幾ら広いとはいえ、根本的には閉鎖空間でござる」

朝日「ずうっと壁に囲まれてるとぉ……苦しくなっちゃうよねぇ」

御影「それに、皆最近怖いよ!なんだか無理して笑顔作ってるみたいでさ……」

月神「それは……」

デイビット「否定は出来ないナ」

御影「だから、皆で楽しく運動すればきっと気分も晴れるって思ってたのに……」

竹田「なんでえ。坊主にしちゃまともな意見じゃあねえの」

古河「せやったんか……スマン御影。ウチが……」

御影「そうだよ……ボクはちゃんと皆の事を考えているんだからね!」





御影「決して、女子達の体操服が見たいワケじゃないんだからね!」

古河「いや絶対にそれが目的やろッ!」スパーン

御影「いってええええええ!?!?」

最後の最後でボロが出た……真剣に聞いていた皆も呆れ顔だ

二度目の制裁を受けて、御影君のライフはもうゼロだよ……合掌

36 : ◆nV158uMR4EBZ [saga]:2019/04/09(火) 22:43:19.35 ID:OcgGkYvEO

月乃「……珍しく、真面目な事を言うと思ったら」

スグル「やっぱり、下らない考えでしたね……」

御影「ちょっと!?スグル君はボクを何だと……ぐふぅ!?」ドスッ

古河「ちっと黙ってろやボケカス。オマエはもう一生口開くなや」

臓腑屋「厳しすぎるのではござらんか!?もう少し位は温情を……」

古河「なら臓腑屋は明日から体操服で過ごそか?」

臓腑屋「御影殿は調子に乗りすぎでござる!今回ばかりは厳しい処遇を求めるのでござる!」

瀬川「汚い……さすが忍者汚い」

飛田「まぁまぁ落ち着きたまえ!良いではないか、体操着!オレは大歓迎するぞ?」

古河「ウチらが嫌なんや!何で好き好んで体操服なんざ着なアカンねん!」

デイビット「ワタシは構わんガ、月神女史はどうお考えかネ?」

月神「私?そうね……」

月神「私は、御影君に賛成かしら」

古河「せやせや!こんなん反対に……なぁ!?」

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