【ガルパン】みほ「私は、あなたたちに救われたから」

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669 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/07/11(土) 04:02:05.80 ID:qIHGvXuA0
その朗報にみほは一瞬喜びそうになるも、すぐさま表情を引き締める。

喜ぶのは後だ、今はまだやらなきゃいけない事があるのだから。

返事をしないみほに沙織たちもまだ緊張を途切れさせてはいけないと理解したのか、車内に沈黙が戻る。

すると、ざばざばと装甲を打っていた水の音と揺れが消え、代わりに履帯が大地を掴む硬質な振動に切り替わるのを感じた。川を越えたのだ。

そしてだんだんと砲撃の音が小さくなっていき、砲撃が止んだ。

黒森峰の射程から逃れる事が出来たのだ。


沙織「……大丈夫だよね?」


沙織が恐る恐る尋ねてくる。


みほ「……はい。少なくとも向こうの砲撃はもうこちらには届きません」


そう言った途端、沙織たちが同時に溜息を吐いた。


沙織「よかったぁー……」

麻子「とりあえず一安心ってことか」

華「ええ、未だわたくしたちは一人も欠けていません。みほさん、流石です」

優花里「西住殿!見事な判断でした!」


緊張の反動か和やかな空気が広がる。

けれどもみほは浮かない表情のままだ。

それでも優花里たちの言葉に応えようと無理やり笑顔を作る。


みほ「…………うん、ありがとう」

沙織「……みほ」

みほ「……大丈夫です。私は、大丈夫だから」


沙織が心配そうにみほの名前を呼ぶ。

返ってくるのはとても大丈夫なようには聞こえない儚く、弱々しい声。

そんな様子を大丈夫だなんて思えるわけが無い。

沙織たちは再び口を閉ざす。


みほ「……ごめんなさい、エリカさん」


小さく呟いたみほの声は、履帯の音にかき消された。

670 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/07/11(土) 04:05:26.83 ID:qIHGvXuA0
久しぶりの更新です。

地の文の書き方の基本みたいなのまるで知らないのでこれでいいのか?って常に考えながら恐る恐るやってます。
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 08:31:47.99 ID:voc2Zmtv0
乙、待ってたよありがとう
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 09:39:12.30 ID:x16etePw0
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 11:25:28.31 ID:GrNMzU98O
おつおつ!待ってました!
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 12:34:51.13 ID:vg79ybHy0
乙乙
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/13(月) 23:56:11.82 ID:jdIhhYXy0
乙です
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/14(火) 22:30:19.59 ID:I2b7wZaY0
やはり見捨てられなかったか。それでこそミポリンやで。
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/16(木) 04:10:25.13 ID:lPfiE0nJ0
待っておりました。そしてこれからものんびり待っています。
みぽりんの気迫に圧倒された
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/17(金) 01:53:22.70 ID:kRayMQ1x0
>>1−シャ
好きに書け好きに 待っているよ
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/08/01(土) 16:43:36.90 ID:xBuZ3ADp0
2017年末発のssをまとめから発掘したら
まだ続いていたとは思わなかった
>>1ーシャ次いつか分からんけど楽しみにしとる
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/06(木) 00:03:26.95 ID:FwagiKE60
これだけ続きが気になるSS初めてかも
>>1−シャのんびり待ってます
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/09(日) 19:30:06.01 ID:g9R884ya0
俺も救われたかったんだ……
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/15(土) 18:03:29.66 ID:RqwvhhzP0
待っています
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/08/20(木) 00:02:46.45 ID:cR+ikSx+0
復活してたんか。待ってるよ。
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/07(月) 15:22:58.39 ID:NlWrGAsN0
頑張れみほ。応援してます。
685 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:15:47.70 ID:HiwPP3jx0




大洗の車両は車列を保ったまま目的地へと向かって行く。

後方に敵の姿は見えない。

しかし、市街地も未だ見えない。

レオポンさんチームの機転で途中にあった橋を落とした事で、ただでさえ速度に難がある黒森峰は更に遠回りをする羽目になっただろう。

こちらにやってくるにはまだ時間がかかるはずだ。

だからといって楽観出来るような状況ではない。

時間を稼いだと言っても、先ほどウサギさんチームの救出に時間を使った事で実際どれだけの猶予が残っているのかわからない。

その焦りがみほに苛立ちを起こさせる。

けれどもそれを表に出すことはせず、努めて冷静に。

隊長である自分が取り乱すのが何よりものロスなのだという事はみほが一番分かっていた。

深呼吸し、呼吸のリズムを戻す。

『常に冷静たれ』。それは指揮官に求められる必須の能力だ。

そう自分に言い聞かせ放熱をし、今一度現状把握のために地図を眺めていた時、アヒルさんチームからの無線が届いた。


典子『こちらアヒルさんチーム!流石に相手も挑発に乗らなくなってきたので戻っているところです!!そちらはどうですか!?』


無線から聞こえる典子の声に、沙織は地図を見ながら答える。


沙織「んーっと……まだ市街地にはたどり着いてないです」

典子『ええっ!?大丈夫なんですか!?』
686 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:16:38.31 ID:HiwPP3jx0
心配の声をあげる典子に沙織は曖昧な表情を浮かべ、


沙織「とりあえず今は大丈夫だけど……とにかくアヒルさんチームは早く戻ってきて」

典子『りょ、了解です!』


沙織の様子に現状は決していい方向に進んでいるわけではないと理解したのだろう。

典子はすぐさま無線を切った。

沙織は小さくため息を吐くと、キューボラから周囲を見渡すみほを見上げ、尋ねる。


沙織「みほ、もう少し速度上げる?」

みほ「……いえ、これ以上は隊列が乱れます。このままの速度で行きましょう」


みほがそう返すと沙織は小さく「わかった」と返し、そのまま地図へと視線を戻した。

その時、


優季『あ、そのぉ……あんこうチームさぁん?』


無線から甘ったるい声が流れてきた。

それがウサギさんチームの優季の声だとわかると、沙織はすぐさま応答する。


沙織「優季ちゃん?どうしたの?」

優季『えっとぉ……梓ちゃんが隊長に言いたい事があるらしいんですけどぉ』

みほ「え……どうしたの?」
687 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:17:15.70 ID:HiwPP3jx0
優季の歯切れの悪い様子にみほが問いかける。

それに返事は返ってこなかった。

聞こえなかったのかと思いみほがもう一度問いかけようとした時、震えるような声が無線から聞こえてきた。


梓『なんで……なんで助けたんですか』


それは、梓の声だった。

その声には、所々泣いているかのような小さな嗚咽が混じっている。


梓『私たち助けたせいでせっかくのショートカットが無意味になったじゃないですかっ……時間が無いのになに私たちに余計な時間使ってるんですかっ!?』


梓が叫ぶ。

みほはどうすればいいのかわからず、ただその怒声を受け止めるばかりになる。


梓『何なんですかあなたはっ!?私の事騙してたくせに、裏切った癖にっ……良い人ぶらないでよっ!?』

あや『ちょっと梓今そんな事で喧嘩してる場合じゃ……』


泣き叫ぶようにまくし立てる梓をあやが宥める声が聞こえてくる。


優季『あ……』


その時、優季が何かに気づいたかのような声を漏らした。


優季『ごめーん間違えてたぁ。これ、あんこうチームだけじゃなくて全車に繋がってるぅ』

あや『うっそ不味くない?』
688 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:18:18.53 ID:HiwPP3jx0
優季とあやのやり取りを聞いた沙織は、小さく「うわほんとだ」と呟く。

無線が全車両に繋がってると言う事は、先ほどからの梓の激昂も伝わっているという事で、

他の車両からの通信が無いのは恐らく彼女たちは唖然としているからであって、

その事に気づいていないのであろう梓は、みほへその怒りをぶちまけ続けている。


梓『同情なんてされたくなかったっ!!足手まといになるぐらいだったら見捨てて欲しかったッ!!それで勝てるのならッそれが一番だったッ!!なのにッ!!』

「………………ッチ」


小さく、舌を弾く音が聞こえた。

沙織たちは最初、誰が舌打ちをしたのかわからなかった。

いや、優花里はわかってはいた。

今、目の前でみほが忌々し気に舌を打ったのを見ていたのだから。

しかし、みほが舌打ちをしたのだと理解するのに間が開いてしまった。

そうこうしているうちにみほがブツブツと何かを言い出した。


みほ「……るっさい」

優花里「西住殿?」


かつて、誰かはみほの事をこう評した『臆病』、『傲慢』、『他人の顔色を窺ってばかり』、『変なところで我を通してくる』。

それらを総合して――――『めんどくさい子』だと。

幼い頃のみほは感情に素直な子供だった。

良く笑い、良く泣き、良く怒る。その旺盛な感情は今もみほの中に残っている。ただ、その発露を極めて小さくするようになったが。

笑う事も泣くことも、何よりも怒る事を、出来るだけ内に溜め込もうとしてきた。

それはつまりストレスをため込みやすいという事で、プラウダ戦以降みほはひたすらそれをため込み続けていて、

先ほどの川での一件は過去のフラッシュバックと現在の決断を伴うとてもストレスフルな状況で、
689 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:18:56.32 ID:HiwPP3jx0
みほ「……なのさ、どいつもこいつも」

華「みほさん?」


それらをなんとか乗り越えて先へ行こうとしたところで投げつけられた梓の怒りに、諭す言葉を考える余裕すら無くなっていて、


みほ「私が、私がいったいどんな思いでっ……」

麻子「西住さん?」


元をたどれば全部自分が悪いとかそういう自罰的な思考で無理やり抑え込んでいたあれこれにもついに限界が来て、


みほ「そんなの、そんなのっ……」

沙織「……みほ?」


つまるところ、


みほ「あああああああああああああもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!うるさいんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


みほはキレた。

690 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:19:24.12 ID:HiwPP3jx0
みほ「何が見捨てて欲しかっただよ何が裏切った癖にだよ何がそれが勝利のためだっただよっ!?」


突然の隊長の狂乱に驚いたのは梓だけではない。

無線は全車輌に繋がっている。

なので、大洗の全員がみほの変貌に声を失った。


みほ「私だって見捨てたかったよ!?何が悲しくて迫りくるパンターや重戦車たちを前にM3リー助けるのに時間かけなきゃいけないの!?こっちは一分一秒ですら惜しいのに!!」


あんまりにも無体な事を怒りのままに吐き捨てる。


みほ「パンターの一両、いやシャーマンでもいいからあったら見捨ててさっさと行ってたよ!?」


あの決断が間違いだったとかそういう事ではなく、出来なかったんだからしょうがないだろと、みほは頭の中に渦巻く感情のまま怒声を吐き出していく。

文字通り噴火した怒りの方向性など定まっているわけがなく、みほの矛先はふらふらと次の標的へと向く。


みほ「だいたいっ!!生徒会がもうちょっと頑張ってたらこんな苦労しなくて良かったんだよっ!!なんで一回戦の車両数制限にすら届いてない状況で決勝になんか出てるの!?意味わかんないっ!!」

杏『うぇぇ今そこ責めるぅ……?』


突然の流れ弾に杏がひきつった声をだすもみほはそんな事気にするかと言葉の砲弾を撃ち込み続ける。


みほ「なんなの!?戦車道やるってのにまともに動く戦車すらなかったのホントなんなのっ!?思い付きで物事進めんのもいい加減にしてよバカっ!!」

691 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:19:51.09 ID:HiwPP3jx0

思えば最初からダメだったのだ。

どの時点で廃校が決まっていたかは知らないしいつ戦車道でそれを阻止しようと決めたかも知らないが、あんな強引な勧誘するよりもまともな戦車の一両、

いや二両でも見せてくれれば少しは快く頷いたかもしれないのに。

あの時のみほからすれば戦車道を再開できるのは渡りに船だったのにただただ『お前の態度が気に食わない』の一点で一回断ったのだから。

それでも色んなものを飲み込んで生徒会の要望を受けてみればあったのはボロボロの戦車のみで、次の日までに他の戦車探せなんて言われたのだから。あの時ばかりはみほはみほの意志でキレていた。

そうやって思い返せば出てくる出てくる燻っていた怒りの火種が。


みほ「ここまでこれたのは運が良かっただけなんだよ相手が油断してくれたからなんだよみんなみんな私たちが勝てるような相手じゃなかったんだよっ!!?」

桃『お、おい西住ちょっと落ち着いて……』

みほ「桃ちゃんは黙っててバカっ!!次余計な口挟んだらバカちゃんって呼ぶからっ!!梓さんっ!!」

梓『はいっ!?』


突然話から外れ、また突然戻ってきたからか、梓は驚いた声を上げる。


みほ「私があなた達が可哀想だから助けた?『同情なんてしないで』!?何言ってるの自惚れないでよ!?私たちそんな仲良くないでしょ!?だって私はついこの間まであなた達を騙してたんだから!!」
692 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:20:21.10 ID:HiwPP3jx0
そう、騙してた。

人一人の人生をそっくり奪って、騙って、それに憧れた人を裏切ったのだ。

そんな冷血で残酷で、最低な人間が。騙した人間に同情なんてするわけない。

そんな情があるのならばそもそもあんなことしないのだから。


みほ「あなたの事なんて何も知らない!!好きな食べ物なんてしらないし趣味も何もしらないよっ!!誕生日ぐらいは知ってるけどさっ!!」

梓『逆になんでそれ知ってるんですか』

みほ「うるさいっ!!とにかくっ!!あなたに同情してあげる理由なんてこれっぽっっっちもないんだよっ!!バーカ!バーカ!!」


みほを見て冷静さを取り戻した梓のツッコミにみほは逆ギレで返す。

ちなみに理由は生徒会から渡された履修者名簿を暗記しているからである。

こうなるともう怒りの矛先とかそんな話ではなく、全方位への砲撃が開始される。


みほ「ああもうっ!この際だから言っちゃうけどねっ!?ここにいるみんなは戦車道初めてまだ半年にも満たなくてっ!!練習だって初心者に合わせた軽めのものでっ!!

   廃校がかかってようやく勝利への執念だけはそれなりのものを手に入れてっ!!

   でも全然足りないのっ!!技術も戦車も何もかもっ!!それで優勝したいとか戦車道舐めるなっ!!?」


みほは怒りのまま上半身を車外に出し、バンバンと車体を叩きながら叫び倒す。
693 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:21:06.95 ID:HiwPP3jx0
みほ「私だってっ!?一年近いブランクがあって、感覚だって今でも取り戻せただなんて言えなくて!!怖いんだよっ!!自信なんてないよ!?勝てるなんて言えないよっ!!?」


あの事故以来大洗に転校するまでずっとみほは引きこもりのような生活を送り、運動はもちろんまともに食事すら摂らないような生活が数か月に渡った。

そんな生活の果てにやつれ切った体をなんとか健康一歩、いや二歩手前程度にまで戻すことは出来たものの、

戦車道の方は聖グロを始めとした強敵たちとの実戦を経てもまだ戻ったとはいえず、それは全国大会当初からのみほの懸念であった。


みほ「なのに好き勝手言ってええええええええええええええええ!!人の気持ちも知らないでえええええええええええええええええええっ!!」


全ては自分のためだった。

大洗を利用して、無為な行いで自分の心を守ろうとしただけだった。

それはそれとして戦力としては未熟な大洗を勝たせるために苦悩したのも事実だった。


みほ「戦車道はお金がかかるのっ!!黒森峰だってそのあたり苦労してたのにっ!!大洗の人たちも廃校かかってんのに決勝に行ってようやく義援金出してきてさあああああああああああああああ!!

   もっと早く出してよ!?学園長もさらっと車買い替えてるしみんなバーカっ!!」

梓『っ……もうっさっきから何なんですか!?何が言いたいんですかっ!?』


西住みほの独演会にいい加減しびれを切らした梓が再び声を荒げる。

しかし、それを上からねじ伏せるようにみほの絶叫が響き渡った。


みほ「私が、善意で行動したとでも思ってるのっ!?同情したから助けたと思ってるの!?そんなわけないでしょ!?だって、だって私は――――それで大事な人を失ったんだよッ!!?」
694 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:21:46.14 ID:HiwPP3jx0
脳裏をよぎるのはあの瞬間。

繋いだ手をいともたやすく振りほどかれた時。

記憶に焼き付いた、彼女の笑顔。


みほ「私はッ!?助けたかったッ!!勝利なんか要らなかったッ!!」


彼女を助けられればそれで良かった。

敗北の屈辱も、戦犯の汚名も全て笑って受け入れられた。


みほ「あの時、あの濁流の中で私は選んだッ!!勝利なんかよりも、大事なものを選ぶってッ!!」


勝利よりも大切なものがあったから。

たとえ、彼女の意志に背くとしても、彼女を助けたかった。


みほ「そのためなら命だって失ってよかったッ!?なのに、なのにっ……私は勝利も、大切な人の命も失ったッ……!!」


伸ばした手は何も掴めず、掌に残ったのは虚ろだけで。


みほ「あの人を救えればそれで良かったのに。あの人を救うためなら死んだって良かったのにッ……」


沢山の人の努力を否定して、大切な人の想いを無視して、


みほ「なのにッ……私は、エリカさんを救えなかったッ……あの人が望んだ、勝利さえ捨てたのにッ……!」


残ったのは全てを失った自分だけで、叶うならばそれさえも捨て去りたいのに、


みほ「なのにッ……私は今も、のうのうと生きているっ……」
695 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:22:19.35 ID:HiwPP3jx0
無様を晒し、沢山の人を裏切り、それでも生きている。

それらは全て、彼女が最期に望んだからで。

だけど、『西住みほ』である事に耐えられなくて、

『逸見エリカ』を騙る事でようやく生きてきた。


みほ「エリカさんは、私の全てだった!!あの人がいたから、私は生まれて来て良かったって思えたっ!!なのに、出会ったばかりのあなた達に同情なんてするわけないでしょっ!?」

梓『なら……なんで、何で私たちを助けたんですかっ!?』


当然の疑問。

そこまで言うのならば、なぜみほは自分たちを助けたのか。


みほ「そんなのッ!!」


それを、愚問と吐き捨てるようにみほは答える。


みほ「あなた達を勝たせたいからに決まってるでしょッ!?」


涙交じりの声が、履帯の音に吸い込まれていく。

それでも、みほの声は確かに皆へと届いていた。


みほ「あなた達は、私を受け入れてくれたからッ!!」


それは、ずっと伝えたかった言葉。

みほが、自分を受け入れてくれた皆に伝えたかった想い。

荒々しくて、乱雑で、とてもそうは聞こえないだろうが、

その言葉に込められた意味は、感謝だった。


みほ「出会ったばかりなのに、嘘つきでどうしようもなくて救えない私に、それでも賭けてくれたからッ!!だからッ―――私も、あなた達に賭けたッ!!」

696 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:22:56.46 ID:HiwPP3jx0
大洗の皆のために勝ちたい。

救えない自分を救おうと手を伸ばしてくれた。

その手を取る事は出来なかったけど、それでも嬉しかった。

空っぽの自分がその恩義に報いるには、勝つしかないと思った。

たとえ、彼女たちを切り捨てる事になっても。

だけど、


みほ「どっちでも良かったッ!!あなた達を見捨てたって、助けたってどっちにしてもマイナスだったッ!!それでもッ、私はあなた達を選んじゃったんだよッ!!」


可能性が同じなら、50:50なら、信じたい人たちを信じたかった。


みほ「あなた達を見捨てて勝つ可能性よりも、助けて勝つ可能性に賭けたくなったんだよッ!!」


もしかしたらそれは早計だったのかもしれない。

もっといい選択肢があったのかもしれない。

でも、時は巻き戻せない。失ったものは取り戻せない。それは、みほが一番よく知っている。

選んだ選択肢を今更放り投げるなんて真似、出来ない。

だから、


みほ「必要なんだよあなた達がっ!!私はもう選んだんだよッ!!どんなに弱くたって、未熟だって、ムカついたって、あなた達がいないともう勝てないのっ!!

   私が、みんなを勝たせるためにはっ!!あなた達が必要なのっ!!」

697 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:23:40.10 ID:HiwPP3jx0
選んだのだ。

選ばれたのだ。

それならもう、やるしかないのだ。


みほ「助けられた事が悔しいのなら、納得できないのなら、自分たちで納得できるよう頑張ってよ!?私に、あなた達を助けて良かったって思わせてよ!?」


逆切れだろうがなんだろうが、もう、尽くすしか無いのだから。

みほも、梓も、皆も。

勝ちたいのは皆同じなのだから。


みほ「文句があるなら行動で示してっ!!以上っ!!バーカッ!!」


そう吐き捨て、仕舞いの合図とばかりに力強く装甲に拳を打ち付けると、みほは一方的に無線を切った。
698 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:25:38.74 ID:HiwPP3jx0
お久しぶりですねごめんなさい……

ようやっと3話の公開時期が決まったようなのでだいぶテンションが上がっています。

あとパンツァーコンサートのジャケット絵のエリカさんが聖母の微笑みすぎてこれだけで短編一本書けそうですね。

次回は出来るだけ早めに出せるよう頑張るので……

ていうか3話が公開されるまでにはこっちを完結させたい……
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 07:24:36.24 ID:fscyRhxn0
お待ちしてました。乙です。残り楽しみにしてます
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 07:26:42.21 ID:oc52N0ZD0
最終章が終わるまでに完結させてくれればそれでいいよ
というかエリカ短編めちゃくちゃ読みたいから、こっち一旦休憩してくれても…
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 19:57:35.82 ID:F544j6cr0
乙です。
1年半おきの最終章を待てるガルパンおじさん達の忍耐力ならいくらでも待てる。
そもそもテレビシリーズでも3ヵ月空いてたしな
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 22:15:21.53 ID:HRK0EymR0
待ってましたぁ!お疲れ様です。みほの咆哮に心揺さぶられた
最終章完結は早くても4年後くらい…かなぁ…
のんびりと続きを待ってます
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/24(木) 21:00:24.96 ID:g03MewmxO
乙乙
テンション上がってきたなら良かった
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/10/01(木) 00:05:29.96 ID:FCAoCdhG0
更新されててウレシイ…ウレシイ…
(完結まで)ゆっくりでいいよ〜
気楽に待ってます!
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 01:51:47.58 ID:MTQoz6oBo
こんなみほあずもなんかいいな…
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 22:05:07.31 ID:rb/KKdbd0
更新されてたぁ
今回すっごい良いな
この話ならではって感じで好き
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 00:21:23.17 ID:WdrdBsy4O
今月更新できるかな
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/10/28(水) 19:28:49.13 ID:AaXiSxpH0
待ってるでー
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/10/29(木) 02:54:32.64 ID:UZc7Ax0+0
みほ「私たちの戦いはここからです!」







710 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2020/10/29(木) 03:07:23.15 ID:afBoP3h30
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/29(木) 18:03:51.08 ID:1J2NfejX0
どこにでもアホが沸くなぁ…

のんびり待ってます。
712 :sage :2020/11/01(日) 00:38:15.69 ID:QmIrModJ0
またエタりそうなペースだな
もう上の私たちの戦いは〜で終わったら?
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 10:48:15.87 ID:m1TOR1WL0
別にやってることは原作なぞってるだけだし…
エリカからミホに戻れば、そりゃセリフが違うだけになるし
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/01(日) 16:12:17.60 ID:WFvlJUb80
原作だってここで3ヵ月空いただろ。原作再現だ

あとsageろ。荒らしでさえsageてんだぞ
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/11/01(日) 18:36:05.62 ID:LE90+px40
ww
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/03(火) 18:14:22.48 ID:FgdwHA9X0
最終章のペースに比べりゃ全然短いし…
続きをのんびり待ってればいいのさ
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/11/06(金) 22:13:29.96 ID:e3TPc3Xq0
お前らがあんまり書き込みすぎると作者が書き込むためのレス数が減るからほどほどにな。
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/22(火) 21:58:31.15 ID:UYzhSJ++0
時々観に来て読み返したりしてる
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 10:09:12.45 ID:qr960eBK0
去年9月が最終更新か
あきらめ時か
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/17(水) 06:24:21.75 ID:POvgtWg50
たまーに観に来てはいるのだが、うむ…
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/03/21(日) 21:32:53.24 ID:i2urJ2hq0
面白かったです!

722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/03/31(水) 22:49:19.94 ID:AMvyRhmO0
第3話放映されたから更新されたかなと思ったけど、まだか。
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/04/20(火) 03:50:47.81 ID:NLK/jbJK0
ふと思い出した 待ってるぜ
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 15:01:28.71 ID:Mz+A8NYxO
まだ終わっていなかったとは…
逆に考えよう、現行に追いつけたと…
作者さん、いつでも待ってますよ
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/16(木) 23:25:50.21 ID:rWG2bM6p0
保守
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/09(土) 00:44:40.21 ID:2S1ZdMYM0
保守
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/02/07(月) 23:09:54.97 ID:59cDvrhd0
保守
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/11(金) 23:15:25.33 ID:T5ZmqCvOO
SS速報避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/21(日) 01:32:38.48 ID:pCULhpUE0
ふと思い出したがまだだったか・・
最終章でエリカが活躍したら戻ってきてくれるかな
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/27(木) 03:07:02.79 ID:gj+INNPs0
保守
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/05/30(火) 04:34:39.77 ID:CpOy2zwU0
保守
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/10/17(火) 22:16:33.05 ID:pLKdoLC20
[sage]
保守
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/11/07(火) 21:11:14.29 ID:ie3CrIh50
4話見てきたので保守
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/21(土) 15:44:43.31 ID:+8UPFaP20
保守
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