【ガルパン】みほ「私は、あなたたちに救われたから」

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603 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/06(金) 23:43:25.58 ID:cUtDLTap0

「……元気そうで良かったわ」

カチューシャ「……」

しほ「……ごめんなさい。こんなこと言われたって嫌味にしか聞こえないわよね」

カチューシャ「あ……ち、違っ」


向き直って申し訳なさそうに頭を下げてくるしほに、カチューシャは慌てて訂正する。

それをどう捉えたのか、しほは静かにカチューシャの隣へ腰を下ろした。


「……」

「……」


沈黙が二人を包み込む。

モニターでは山頂へ陣取った大洗チームを黒森峰の戦車隊が取り囲む映像が映し出されている。

そんな中、最初に口を開いたのはしほだった。

しほ「……今も悔やんでいるのですか」

カチューシャ「……」

『何を』とは聞かれなかった。

そんな事、しほもカチューシャもわかっているから。

だからカチューシャは無言を返答とする。

しほ「……そうですか」
604 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/06(金) 23:45:35.69 ID:cUtDLTap0
浮かび上がりそうになる感情を必死で抑えているような声でしほは当り障りのない返事をした。

それをどう思ったのだろうか。

カチューシャがぐっとスカートの裾を握り、震える声を絞り出す。

カチューシャ「……忘れられるわけ、ないじゃないですか。私は……私は、」

そっと、しほの手がカチューシャの肩に置かれた。

そして、ゆっくりと首を振る。


しほ「……あなたは悪くない。私は以前そう言いました」

カチューシャ「私は……そんな風に思えなかった……今も」


それは、今も昔も変わらぬしほの結論なのだろう。

だから、カチューシャの結論も変わらない。

もしもしほが『あなたが悪い』、と。そう言ってくれる人だったならば、カチューシャは今こんなにも苦しんでいないのだから。

その答えをしほは理解したのだろう、目を細め空を見上げる。
605 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/06(金) 23:46:31.93 ID:cUtDLTap0

しほ「……そう、ね。そうだと思っていました」

カチューシャ「どれだけ庇われても、どれだけ私が悪くない理由を並べられても、私が……エリカの命を奪った事には変わりない。それを……私が否定できるわけ、無いじゃないですかっ」

しほ「……ええ。きっと、そうだと思っていました」


しほが体ごとカチューシャに向き直る。

真っ直ぐにカチューシャの碧眼を見つめて、深く頭を下げた。


しほ「……あなたを、守ってあげられなくて。あなたの苦しみに、寄り添ってあげられなくて、ごめんなさい」

カチューシャ「――――今更ッ!!」


その怒声は周囲の歓声に掻き消された。

モニターの向こうでは高所で守りを固め、着実に自分たちの戦力を削っていく大洗にしびれを切らしたのか、ヤークトパンターが大洗の陣地に向かって突き進んでいた。


カチューシャ「私がどんな気持ちだったかなんて、あなたに理解が出来るわけないっ!?私がッ、私がどれだけっ……私を、恨んだかなんてっ……」

しほ「……その通りです。それでも……ごめんなさい」


再び、深く頭を下げる。

カチューシャはこらえ切れなくなり、立ち上がりその小さな体を限界まで使って自身の怒りを露わにする。

606 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/06(金) 23:47:26.66 ID:cUtDLTap0

カチューシャ「大人はっ、あなたたちはっ……事態を収められれば、忘れ去られれば良いと思ってたんでしょうけどっ……それこそっ、私には関係なくてっ……そんな事でッ」

しほ「……はい。それを否定することは出来ません」

カチューシャ「っ……」

しほ「私たちは、あの時エリカさんの犠牲による影響をいかに小さくするかだけを考えました。あなた達に世間やメディアの矛先が向かなかったのもその結果にすぎません」


淡々と、原稿を読み上げるかのようにしほは答えていく。


しほ「それらは全て戦車道という競技の存続のためです」

カチューシャ「……なら、もういいじゃないですか。戦車道はこうやって今日も大盛況ですよ。私なんか、放っておいて理事長(そっち)に集中していればいいじゃないですか」


今更謝罪されたところで後悔の日々は消えてなくならない。

失われた命は戻ってこない。

犯した罪は消えない。

何も変わらないのなら、どうしようもないのなら。

もう放っておいて欲しい。

カチューシャはそう望む。


しほ「それはできません」


しかし、その望みは毅然と拒否された。

607 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/06(金) 23:48:54.24 ID:cUtDLTap0

カチューシャ「……なんで」

しほ「まだ、やるべきことがあるから」

カチューシャ「やるべき、こと」

しほ「本当はもっと早くやらねばならない事だったのに、私が未熟で、臆病だったから。こんなにも先延ばしにしてしまった」

カチューシャ「……遅いですよ。もう、あなたに出来る事なんかありませんよ」

しほ「……」


ああそうだ。もう遅いのだ。

何をしたことろで失われた命は戻ってこない。

今更謝罪されたところで、自己満足以外の何物でもない。


カチューシャ「私はもう、立ち上がってます。悔やんだし、泣いたし、今でも眠れない夜があります」


カチューシャがどれだけの後悔を重ねたのか、しほは知らない。


カチューシャ「それでも、立ってます。自分の足で、私は立ち上がりました。自分の足で、ここまで来ました」


カチューシャがどれほどの覚悟で立ち上がったのか、しほは知らない。


カチューシャ「だから、あなたの謝罪なんていりません。そんなもの貰ったって、私の足跡を汚すものにしかなりません」


カチューシャがどれだけ泣いてきたのか、しほは知らない。

ならば、その歩みを否定する権利なんて存在しない。

慰めや同情なんて何の意味も持たない。

だから、カチューシャはしほの謝罪を拒絶する。
608 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/06(金) 23:53:23.04 ID:cUtDLTap0
しほ「……あなたは、とても強いのですね」

カチューシャ「そうじゃなきゃ、生きていけなかったんです」


諦めと後悔と決意の混ざった答え。

その言葉を絞り出すのにいったいどれほどの苦難を味わったのだろうか。

それを理解できるのはきっとカチューシャだけなのだろう。

だから、しほはもう何も言わなかった。


カチューシャは立ち上がり、モニターの向こう、戦場を指さす。


カチューシャ「……あそこで戦っているのはあなたの娘達です」

しほ「……ええ」

カチューシャ「私が壊してしまった、あなたの娘達です」

しほ「それを支えられなかったのも、未然に防げなかったのも私です」

カチューシャ「なら、何をしにここに来たんですか。何もしてこなかったあなたが、今更何をしにここに来たんですか。あなたのやるべきことってなんなんですか」


しほが、カチューシャを見つめる。

刃のように、鋼のように。

そして、


しほ「見届ける」


引き金を引くように告げる。


しほ「あの子たちの決着を見届けるために。それがどんな結末になろうとも、今度こそ逃げずに受け止めるために。あなたが、そうしているように」


彼女もまた、迷って、悔やんで、それでも歩んできたのだと、カチューシャは信じる事にした。


609 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/06(金) 23:57:43.06 ID:cUtDLTap0
ごめんなさいエタってました。
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 00:14:52.34 ID:rz+Jjs5A0
乙です
待ってました
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 00:14:55.83 ID:QAGeBusA0
お待ちしておりました。嬉しい限りでございます
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 01:14:40.01 ID:ocELaoL8o
おー!お待ちしてました!
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 10:56:28.33 ID:GEbUjwR60
復活おめでとう!続きの執筆ありがとう!
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 11:02:01.40 ID:oqv1ejKc0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 13:31:01.45 ID:6BBAxmU0O
行きとったんかワレェ!
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 21:16:10.85 ID:yWAMdQE20
待ってた待ってた
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 21:48:26.81 ID:2kt8AUeOo
お帰り待ってた
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/08(日) 22:45:14.97 ID:xEW0M4EG0
待ってたあああ
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/11(水) 02:16:08.16 ID:W50e37Ve0
復帰してるうううううう!!!!!
もうダメだと思いつつもタブを閉じないままにしておいてよかった……お待ちしておりました!!
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/11(水) 17:24:42.63 ID:EdO+BZXMO
マジか、、、マジか!!
エタリ復帰を初めて見た!
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/11(水) 19:53:28.63 ID:C0Hpy0Ppo
マジか…マジか!?
頑張ってくれぇぇ!!
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/12(木) 22:53:44.20 ID:OYtrU29n0
遅かったじゃないか...
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/13(金) 00:24:40.39 ID:RIDyi7ng0
更新ありがとうございます。
乙でした
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/13(金) 11:29:11.98 ID:dnQ9sM2h0
黙れ 俺は待……
待ちきったぞ! 俺の勝ちだ!

待ってたよ>>1ーシャ
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/15(日) 21:17:00.31 ID:g5aByBAS0
久々に見たらSSがあったんで荒らしかなと思ったら本人でワロタww
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/15(日) 21:19:51.17 ID:zXZlDWhVO
まだだ、まだなりすましの可能性は捨てきれない
不安だからはやく続きを投稿したくえれえ
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/16(月) 10:26:29.82 ID:vHz/uC1h0
待ってたぞ!
あんたの書くカチューシャが見たかったんだ!
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/16(月) 11:15:36.95 ID:+ddbFMf90
待ってた!続きは今週末か、来月かな
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/17(火) 22:29:12.30 ID:/ef+AZSCO
病気か怪我だった?大丈夫なのか?
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/19(木) 13:35:59.59 ID:BqBlMnC9O
おかえりなさい!待ってました!
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/24(火) 08:11:21.45 ID:aEoDJ1PnO
半年待ったかいがあった!!!
よくぞ戻ってきてくれた!!!!
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/30(月) 22:33:45.23 ID:ZbGt0ET30
やったぜ
633 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/31(火) 02:10:40.57 ID:mtBwRMLC0





煙幕に紛れ逃走していく大洗の車両たち。

それを、小梅は見送っていく。

もちろん追撃はするが、黒森峰の戦車は足回りにおいては大洗の戦車たちよりも劣ってしまう。

故に、撃破を狙うのではなく相手を見失わないようにすることを第一に指示を飛ばす。

既に先ほどの高台での戦闘で3本、黒森峰の白旗が上がった。


戦車道が復活したばかりで、車両の種類も数も整っていない学校に。黒森峰が痛手を負った。

信じられない事態だ。

目と耳を疑う隊員もいるだろう。

だけど、小梅は疑わない。

彼女なら、西住みほなら。

この程度造作も無いだろう。


被害を受けたのは、自分たちが彼女より劣っていたから。

そう断じ、小梅は深呼吸をする。

たとえみほがどれだけ強く強かで、強大であっても、勝つと決めたのだ。

勝って、彼女を救うと誓ったのだ。
634 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/31(火) 02:11:15.21 ID:mtBwRMLC0
小梅「……隊長、申し訳ありません。包囲突破されました」

まほ『そうか』

無線から返ってきたのは何の感情も籠っていない、あっさりとした返答。

小梅は意識せず眉をひそめてしまう。


小梅「……大洗は恐らく市街地へと向かっています」

まほ『だろうな』

小梅「……我々はこのまま大洗を追撃するでよろしいでしょうか」

まほ『好きにしろ』

小梅「……隊長」

まほ『なんだ』

小梅「あなたは、どこにいるんですか」


それは当然の疑問だった。

本来指揮を執るべき隊長の西住まほは、今ここにいない。

試合開始から今に至るまで黒森峰を指揮しているのは副隊長である赤星小梅だ。

635 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/31(火) 02:11:59.84 ID:mtBwRMLC0

小梅「主力の一部を引き連れ、前線での指揮権を私に委譲し、いったいどこで何をやっているんですかっ……」

まほ『大洗の、あいつの考えなんて決まっている。そのためにどこに向かっているかもわかっている。だから、先回りして市街地にいる』

小梅「そんな手間を割く必要があるんですか」


まほの口から語られた説明を、小梅は信じていない。

それは、まほの実力や直感を疑っているからではない。

むしろ逆だった。


小梅「あなたの指揮する黒森峰なら、そんな小細工を弄さずとも、大洗をすぐさま叩き潰せるたんじゃないのですか」


西住まほの実力を疑う者など黒森峰に、高校戦車道の選手にはいない。

だというのに、今のまほが取ろうとしてる策は迂遠で、湾曲で、まだるっこしいものだ。

自分ではなく、まほが指揮をしていれば。

今頃試合は終わっていたのでは。

小梅はそう思わずにはいられない。
636 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/31(火) 02:12:34.31 ID:mtBwRMLC0


まほ『万全を期するのは当然だ。最初から全力を見せてはいざという時の柔軟性が失われてしまう』

小梅「……本当ですか」

まほ『ああ。私の言葉が信じられないか?』

小梅「……」


その沈黙が小梅の答えを雄弁に語る。

根深い不信が、そこにあった。

まほが『面倒だ』という感情を一切隠さず溜息を吐く。


まほ『……そうか。なら、私からも一つ言わせてもらおうか――――お前じゃ勝てないのか?』

小梅「っ……!?」

まほ『残った戦力でも十分叩けるだろ。あんな烏合の衆。それとも、お前の一年間の努力じゃ足りなかったか?』

637 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/31(火) 02:13:21.33 ID:mtBwRMLC0

嘲笑混じりの指摘は小梅にとって痛恨だった。

小梅のこの一年間、死に物狂いで努力してきた。

それは全て、『彼女』のためだ。

それをまほも理解しているはず。

その上で、嘲笑う。


まほ『いいさ。そこまで不安なら戻って私が指揮してやろう。可愛い後輩が怯えているんだからな』


優しさを装う気なんて欠片も無い。

そんな助力を受け入れられるほど、小梅のプライドは安くはなかった。


小梅「……結構です。ここは、私がなんとかします」

まほ『ああ、そう言ってくれると思っていたよ副隊長』


悔しさに歯を食いしばる音が聞こえたのか無線の向こうからくぐもった笑いが聞こえてくる。


まほ『くくっ……安心しろ。別に負けるつもりは無い。ただ、私は私で準備があるだけだ。お前はただ、お前の思う通りに行動すればいい。いざという時のフォローは私がするさ。
   
   これも、未来の隊長であるお前に必要な勉強だ。頑張ってくれ』

小梅「……了解です」


返答を待たず無線を切り、ハッチを閉めずにそのまま腰を下ろす。

638 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/31(火) 02:14:00.73 ID:mtBwRMLC0
小梅「……状況は」


ギリギリ聞こえるぐらいの声。

無線手は即座に答える。


「依然こちらは追撃のため大洗を追っていますが、八九式の妨害により手間取っているようです」


小梅は地図を開き大洗の針路を読む。

目的地は市街地だろう。

ならば、


小梅「川がありますね」

「はい。大洗の針路だと橋を渡るには遠回りする必要があります。追撃部隊の一部を橋へと直行させれば渡る前に叩けます」

小梅「……なら、橋を使わずそのまま川を渡りますね」

「え?」


無線手はどういうことなのか視線で尋ねる。


小梅「ここは演習場として作られたフィールドです。川の深さも大洗の戦車ならギリギリ通過できる深さでしょう。そして、こちらの重戦車では川を渡ることができない。なら、あの人はそうします」


そして無線手だけではなく乗員全員に告げる。


小梅「あの人は、西住みほは黒森峰の事を私たち以上に。私たちの隊長と同じぐらい知っています。そのことを忘れないでください」

「は、はいっ!」


乗員は皆息を呑み、調子の外れた返事を返す。

伝えるべきことは伝えたと判断した小梅は座ったままじっと目を閉じ、手を握り合わせる。


小梅「……大丈夫。私ならできます。私が、ちゃんと救ってみせますから」
639 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/31(火) 02:14:31.44 ID:mtBwRMLC0

自らを鼓舞する呟き。

そこに開いたハッチから陽光が注ぐ。

祈るように手を合わせるその姿は、関係ない人が見れば神々しさを覚えたのかもしれない。

しかし、乗員たちの視界に映るその光景は、



小梅「だから、安心してください」



掴めるわけの無い光を必死で握りしめようとしているように見えた。


640 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/03/31(火) 02:15:48.64 ID:mtBwRMLC0
たぶん今後は不定期かつ月に1、2回の投稿になると思います。

完結はさせるのでよろしくお願いします。
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/31(火) 13:16:30.71 ID:LNYHW/LJO
>>1ーシャ
無理せずゆっくりやってくれ
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/31(火) 14:59:40.57 ID:CsqPR7Dy0

無理ないペースで頑張って
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/31(火) 18:48:05.79 ID:VEnXlgZr0
更新ありがとう
完結頑張れ
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/01(水) 11:13:06.92 ID:7aT+aClL0
更新ありがとう
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/04(土) 21:57:00.86 ID:vs6ub86t0

のんびり待ってるよー
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/05(日) 22:49:26.29 ID:IFf9iW7L0

無理の無い範囲でよろしくお願いします
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/07(火) 09:20:29.00 ID:4fZQB203O
復活...だと...奇跡だ...
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/01(金) 02:05:11.05 ID:jXiKil660
久しぶりに来たら復活してる!
やっべぇ、すっごい嬉しいわ
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/01(金) 18:53:29.09 ID:XfzpQfMH0
毎日見てるわ
更新待っとるで
650 :♯uriyo00 [saga]:2020/05/04(月) 01:53:29.30 ID:QcFhl9eh0



後方に舞う土煙が見えなくなったのを確認して沙織が安堵の溜息を吐く。


沙織「なんとか撒けたっぽいね」

みほ「はい。今のうちに距離を稼ぎましょう」


みほの指示を受け沙織は地図を開いて針路を確認する。


沙織「えっと――――この先に川があるね。でも橋は遠回りしないと……」

みほ「橋は使いません」

沙織「え?」

みほ「このまま進んで川を渡ります」

沙織「大丈夫なの?」


戦車というのは当然のことながら陸路を走るもので、この鉄の塊で川を渡るという事が沙織にはどうにも想像できなかった。

優花里も同じく驚いているのを見て、沙織はますます信じられなくなる。

しかし、みほはそんな彼女たちの動揺に揺らがず、淡々と説明をする。


みほ「はい。黒森峰の重戦車ではこの川は渡れません。今まで稼いだ距離と、川を避けて回り道する時間を合わせれば黒森峰が私たちに追いつくのにはだいぶ時間がかかるはずです」


沙織が聞きたいのは自分たちの戦車が川を渡れるのかという事であって、黒森峰の戦車が渡れるかという事では無かったのだが、

少なくともこの場において最も戦車の事を知っているみほがそう言うのであればと、ひとまず沙織は納得することにした。


沙織「なら、みんなにもそう伝えるね。あ、アヒルさんチームはどうしよう?」

みほ「このまま攪乱をしてもらいつつタイミングを見て合流してもらいます」

沙織「了解」


沙織は手早く無線を繋ぎ各車に通達をする。

川を渡るという事に多少なりとも動揺の声は上がったが、それでも隊長であるみほの指示ならば大丈夫だと皆が納得した。
651 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/05/04(月) 01:55:23.77 ID:QcFhl9eh0
隊列を乱さず進んでいくと、目の前に川が見えてきた。

地図の上で見るものよりも実際の川幅は随分と大きく見え、沙織は先ほど飲み込んだ不安がまた首をもたげるのを感じる。

しかし、それを声に出すのは堪え、指示のため無線機を取った。


沙織「それじゃあみんな、さっき言った通りお願い」

『了解』


沙織の無線を受け、各車両がそれぞれのポジションに付く。

車体の軽い戦車が流されないように最重量のポルシェティーガーを上流に重さ順に横並びになり、浸水しないようハッチを閉め、川へと前進を始めた。


652 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/05/04(月) 01:56:29.53 ID:QcFhl9eh0
沙織「大丈夫かなぁ……」


沙織の呟きを肯定するかのように車体が大きく揺れる。

水の抵抗は強く、それが沙織の不安をさらに掻き立てる。

ぞわぞわとした感覚が背筋を撫で、車体が横滑りするたびにビクリと跳ねた。

そんな沙織を見て、麻子がポツリと呟く。


麻子「大丈夫だ。ちゃんと進んでいる」


自分が不安を表に出していた事に気づき、沙織は慌てて表情を引き締める。

―――麻子に気を遣わせるようじゃダメだよね。

一番注意を払っているのは操縦手である麻子であり、今の自分はただ座っているだけなのだから。

そう思い、沙織は一度深呼吸をする。

そして、落ち着いて車内に響く振動、音に耳を傾けると、履帯がしっかりと川底を掴み少しづつ進んでいる感覚を捉えた。


――これなら大丈夫かな。


沙織が小さく安堵の溜息を吐く。

ゆっくりとだが、確実に戦車は前進している。

アヒルさんチームの攪乱はしっかりと効果が出ているようで、砲弾が飛んでくるような様子は無い。

この調子なら、黒森峰に追いつかれる前に川を渡り切れるだろう。

そう思っていた時、無線から悲鳴のような声が聞こえてきた。


優季『桂利奈ちゃんやっぱり無理っぽいっ!?』

653 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/05/04(月) 01:57:10.87 ID:QcFhl9eh0

その声はウサギさんチームの無線手、宇津木優季のものだ。

沙織は何事かと思い聞き返すも、無線の向こうでは優季と桂利奈の声がカンカンと響くばかりで一向に要領を得ない。

なので沙織はみほへと無線を回す。

みほは突然の事に首をかしげるが、沙織の様子に何事かが起きたのだと判断し、落ち着いた声で無線の向こうへと語り掛ける。


みほ「ウサギさんチーム何かありましたか?」

優季『ごめんなさーい!!なんか、エンジンが……』


無線に応える優季の隣からガチャガチャの何かを動かす音と、『動かないよー!!』っと叫ぶ桂利奈の声が同時に届く。

沙織は慌ててハッチから外に顔を出し、後方を見る。

そこには川の中ほどで停止しているM3リーがいた。


沙織「ちょっ!?大丈夫っ!!?」

みほ「落ち着いて。ギアを上げてみてください」


慌てる沙織に対して冷静に対応策を伝えるみほ。

しかし、無線の向こうの雰囲気は一向に良くならない。


桂利奈『ダメ!!どうしよう!?』

優季『私に言われてもー……』


やがて大きな音と共に、ウサギさんチームの車内からエンジン音が消えた。

654 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/05/04(月) 01:58:02.47 ID:QcFhl9eh0
みほ「ウサギさん?大丈夫ですかっ!?」


ここに来ていよいよみほの顔に焦りが浮かんでくる。

レオポンさんチームからも助言をもらい、桂利奈はなんとかエンジンの再始動を図ったが―――M3リーの沈黙は解けなかった。


沙織「マズイまずいよどうしようっ!?みほっ!?」


隊列から取り残され川の中で立ち往生するM3を見て沙織が叫ぶ。

みほは、そんな沙織に返事を返さず、口元を押さえぶつぶつと何かを呟いている。


みほ「どうする……?なんとか再始動を……でも、故障だったらウサギさんチームじゃどうしようも……なら一端バック……無理だ。なら、なら……」


みほの表情がどんどんと苦悶に歪んでいく。

汗が額を流れ、しかし肌からはどんどん色が失せていく。


そんなみほの様子に、沙織はもちろん優花里も、華も麻子も絶句してしまう。

そんな時、無線から落ち着いた声が響いてきた。


梓『……隊長』

みほ「梓さん……?」


その声は、梓のものだった。


梓『エンジンの再始動は難しそうです。アヒルさんチームが時間を稼いでいるとはいえ、ここで時間を失う訳にはいきません』


そこまで聞いて、沙織は梓が何を言いたいのか理解した。

それはみほも同じなのだろう、その瞳が大きく開き、今度こそ色が消え去る。


梓『だから、私たちはここまでです。見捨てて、先に進んでください』


梓の声が孕んでいたのは、落ち着きではなく諦めだった。


655 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2020/05/04(月) 01:58:57.99 ID:QcFhl9eh0
ここまでです。

外出できないのに相変わらず筆は遅々ですが、なんとか進めていきます。
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 07:47:54.90 ID:B8og/nc6o
乙乙
酉割れしてるので変えた方がいいですよ
657 : ◆H9H0Q4zLDSTW [sage saga]:2020/05/04(月) 10:53:13.57 ID:QcFhl9eh0
>>656
なのでこれからはこれで行くのでお願いします
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 12:00:17.60 ID:ge8Clmd/0
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 18:50:52.72 ID:i7uRa/YW0
>>1ーシャ
くれぐれもコロナには気を付けてくれ

さて一つのターニングポイントだが……
白みほははたして跳べるのか
660 : ◆eltIyP8eDQ [sage]:2020/05/04(月) 22:17:36.90 ID:OK5TQDls0
てst
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/06(水) 08:59:48.66 ID:ZVNvJ2940
>>1ーシャ
くれぐれもコロナには気を付けてくれ

さて一つのターニングポイントだが……
白みほははたして跳べるのか
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/09(土) 05:52:42.00 ID:gGCQpb8L0
乙です
更新のんびり待ってまする
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/09(土) 05:53:30.63 ID:gGCQpb8L0
乙です
更新のんびり待ってまする
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/05(日) 18:53:07.88 ID:LwlVQDVSO
おっっっっっっせぇなマジ
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/07(火) 12:44:26.04 ID:YT2eU4mp0
そりゃあ君の早漏と比べりゃなんだって遅く感じるだろうさ
666 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/07/11(土) 04:00:13.02 ID:qIHGvXuA0




みほの中で様々な思考が廻る。

川の流れは確かにM3リーを揺らしている。けれど、『あの時』と比べればずっと穏やかだ。

ウサギさんチームの誰一人として怪我をしているわけではない。

今ならまだ落ち着いて、冷静に避難すれば大丈夫だ。

ここでウサギさんチームの戦力を失う事は痛い。

痛いが、救助のためにせっかく稼いだ時間を使っては元も子もない。

ならば、答えは一つだ。『このまま進む』。

道半ばで諦める梓たちの痛みは相当なものだろう。

だけど、彼女たちのためにチーム全体を危険に晒すなんて真似はみほには出来ない。

みほたちの目的は『想い出』ではなく『勝利』なのだから。


『勝つためには、非情な決断を下す時がある。あなたはいつか、その立場になるのよ』


いつか、誰かから聞いた言葉が脳裏に蘇る。

冷たい言葉だ。

だけど、意味のある言葉だった。

そして今、その言葉通りの立場にみほは立たされている。

だから、みほは決断する。

それはきっと、『彼女』が望んだ選択。

きっと、『彼女』が喜んでくれる選択。

だからみほはその決断を、皆へと伝えようと口を開く。


みほ「……ウサギさんチームはここで」


だけど、
667 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/07/11(土) 04:01:02.54 ID:qIHGvXuA0
みほ「……………………」

沙織「みほ……?」


突然押し黙ったみほに沙織たちはもちろんのこと、無線の向こうからも疑問符が浮かんでくる。

優花里がみほの肩を揺らしどうしたのか問いかけるが返事は返ってこない。

何事かと車内に不穏な空気が漂ってきた時、みほの表情が今にも泣き出しそうに歪んでいく。


みほ「やっぱりっ…、やっぱり私はっ…!貴女にはっ……」


ガリガリと頭を掻きむしり、歯を食いしばる。

そのあまりの剣幕に、止めようとした優花里もひるんでしまう。


みほ「どうしてっ……!なんでっ……!だけど、だけどッ!!?」


ならばと、沙織が意を決して声をかけようとした瞬間、


みほ「っ……私はっ、それでもッ!!?」


悲痛な叫びと共に、みほはキューポラから外へと出た。


みほ「各車リーダー上に出て手伝ってっ!!レオポンさんチームは牽引用ワイヤーとロープを用意してくださいッ!!」


砲塔に仁王立ちし、何やら叫ぶみほの様子に隊員たちは何事かと呆気にとられる。

しかし、みほの剣幕はそんな空白を許さない。


みほ「急いでッ!!時間がないッ!!私一人じゃ無理なのッ!!」


その言葉に慌ててリーダーたちが外へと出てくる。


桃「おい西住っいったい……うわぁっ!?」


どういう事なのかと車上に出た桃が尋ねようとした時、彼女の胸元に丸められたロープが飛んできた。
668 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/07/11(土) 04:01:31.64 ID:qIHGvXuA0
みほ「桃ちゃんっ!!」

桃「な、なんだ!?」

みほ「早くっ!!次に回して!!」

桃「あ、ああっ!」


桃はすぐさまロープを同じく車上に出ているカエサルへと投げ渡す。

カエサルがまた次にとリレーのように回されたロープが今度はウサギさんチームの元へと届く。


みほ「梓さんっ!!」

梓「っ……なんでっ!?」


それを受け取った梓は納得できないような表情をみほへと向ける。

梓からすれば今の行動はただただ時間を無駄にするだけのものなのだから。

見捨てろと言った理由を、意味を、隊長であるみほがわからないわけないのに。

そんな梓にみほは舌打ちでもしそうな様子で顔をしかめ、怒鳴りつける。


みほ「時間が無いのッ!!早く繋いでっ!!」


梓はその剣幕にビクリと肩を震わせ、直ぐにロープを引き、そこに結ばれたワイヤーを繋ぐ。

それを見届けるとみほは車内へ戻り無線を飛ばす。


みほ「全速前進!!!ウサギさんチームを牽引します!!」


車長たちの返事と共に車列が前進を始める。

同時に、無数の轟音がW号の車内に響き渡った。


優花里「っ……砲撃ですっ!?もう来ました!!」

みほ「狙える車輌は後方の黒森峰に砲撃して!当たらなくてもいいからっ!!」


優花里の報告を聞くまでもなくといった風にみほはすぐさま次の指示へと移る。

砲撃の轟音が今度はこちらから響きだす。

残念ながら命中したという報告は無いがどのみち黒森峰の重装甲の前では当たった所で弾かれるのがオチだろう。

今はただ、相手の砲撃が命中しない事を祈るしかない。

その時緊張で張り詰めた空気の中で沙織の喜ぶような声が響いた。


沙織「みほ!ウサギさんチームの戦車エンジンかかったって!」
669 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/07/11(土) 04:02:05.80 ID:qIHGvXuA0
その朗報にみほは一瞬喜びそうになるも、すぐさま表情を引き締める。

喜ぶのは後だ、今はまだやらなきゃいけない事があるのだから。

返事をしないみほに沙織たちもまだ緊張を途切れさせてはいけないと理解したのか、車内に沈黙が戻る。

すると、ざばざばと装甲を打っていた水の音と揺れが消え、代わりに履帯が大地を掴む硬質な振動に切り替わるのを感じた。川を越えたのだ。

そしてだんだんと砲撃の音が小さくなっていき、砲撃が止んだ。

黒森峰の射程から逃れる事が出来たのだ。


沙織「……大丈夫だよね?」


沙織が恐る恐る尋ねてくる。


みほ「……はい。少なくとも向こうの砲撃はもうこちらには届きません」


そう言った途端、沙織たちが同時に溜息を吐いた。


沙織「よかったぁー……」

麻子「とりあえず一安心ってことか」

華「ええ、未だわたくしたちは一人も欠けていません。みほさん、流石です」

優花里「西住殿!見事な判断でした!」


緊張の反動か和やかな空気が広がる。

けれどもみほは浮かない表情のままだ。

それでも優花里たちの言葉に応えようと無理やり笑顔を作る。


みほ「…………うん、ありがとう」

沙織「……みほ」

みほ「……大丈夫です。私は、大丈夫だから」


沙織が心配そうにみほの名前を呼ぶ。

返ってくるのはとても大丈夫なようには聞こえない儚く、弱々しい声。

そんな様子を大丈夫だなんて思えるわけが無い。

沙織たちは再び口を閉ざす。


みほ「……ごめんなさい、エリカさん」


小さく呟いたみほの声は、履帯の音にかき消された。

670 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/07/11(土) 04:05:26.83 ID:qIHGvXuA0
久しぶりの更新です。

地の文の書き方の基本みたいなのまるで知らないのでこれでいいのか?って常に考えながら恐る恐るやってます。
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 08:31:47.99 ID:voc2Zmtv0
乙、待ってたよありがとう
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 09:39:12.30 ID:x16etePw0
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 11:25:28.31 ID:GrNMzU98O
おつおつ!待ってました!
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 12:34:51.13 ID:vg79ybHy0
乙乙
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/13(月) 23:56:11.82 ID:jdIhhYXy0
乙です
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/14(火) 22:30:19.59 ID:I2b7wZaY0
やはり見捨てられなかったか。それでこそミポリンやで。
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/16(木) 04:10:25.13 ID:lPfiE0nJ0
待っておりました。そしてこれからものんびり待っています。
みぽりんの気迫に圧倒された
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/17(金) 01:53:22.70 ID:kRayMQ1x0
>>1−シャ
好きに書け好きに 待っているよ
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/08/01(土) 16:43:36.90 ID:xBuZ3ADp0
2017年末発のssをまとめから発掘したら
まだ続いていたとは思わなかった
>>1ーシャ次いつか分からんけど楽しみにしとる
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/06(木) 00:03:26.95 ID:FwagiKE60
これだけ続きが気になるSS初めてかも
>>1−シャのんびり待ってます
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/09(日) 19:30:06.01 ID:g9R884ya0
俺も救われたかったんだ……
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/15(土) 18:03:29.66 ID:RqwvhhzP0
待っています
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/08/20(木) 00:02:46.45 ID:cR+ikSx+0
復活してたんか。待ってるよ。
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/07(月) 15:22:58.39 ID:NlWrGAsN0
頑張れみほ。応援してます。
685 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:15:47.70 ID:HiwPP3jx0




大洗の車両は車列を保ったまま目的地へと向かって行く。

後方に敵の姿は見えない。

しかし、市街地も未だ見えない。

レオポンさんチームの機転で途中にあった橋を落とした事で、ただでさえ速度に難がある黒森峰は更に遠回りをする羽目になっただろう。

こちらにやってくるにはまだ時間がかかるはずだ。

だからといって楽観出来るような状況ではない。

時間を稼いだと言っても、先ほどウサギさんチームの救出に時間を使った事で実際どれだけの猶予が残っているのかわからない。

その焦りがみほに苛立ちを起こさせる。

けれどもそれを表に出すことはせず、努めて冷静に。

隊長である自分が取り乱すのが何よりものロスなのだという事はみほが一番分かっていた。

深呼吸し、呼吸のリズムを戻す。

『常に冷静たれ』。それは指揮官に求められる必須の能力だ。

そう自分に言い聞かせ放熱をし、今一度現状把握のために地図を眺めていた時、アヒルさんチームからの無線が届いた。


典子『こちらアヒルさんチーム!流石に相手も挑発に乗らなくなってきたので戻っているところです!!そちらはどうですか!?』


無線から聞こえる典子の声に、沙織は地図を見ながら答える。


沙織「んーっと……まだ市街地にはたどり着いてないです」

典子『ええっ!?大丈夫なんですか!?』
686 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:16:38.31 ID:HiwPP3jx0
心配の声をあげる典子に沙織は曖昧な表情を浮かべ、


沙織「とりあえず今は大丈夫だけど……とにかくアヒルさんチームは早く戻ってきて」

典子『りょ、了解です!』


沙織の様子に現状は決していい方向に進んでいるわけではないと理解したのだろう。

典子はすぐさま無線を切った。

沙織は小さくため息を吐くと、キューボラから周囲を見渡すみほを見上げ、尋ねる。


沙織「みほ、もう少し速度上げる?」

みほ「……いえ、これ以上は隊列が乱れます。このままの速度で行きましょう」


みほがそう返すと沙織は小さく「わかった」と返し、そのまま地図へと視線を戻した。

その時、


優季『あ、そのぉ……あんこうチームさぁん?』


無線から甘ったるい声が流れてきた。

それがウサギさんチームの優季の声だとわかると、沙織はすぐさま応答する。


沙織「優季ちゃん?どうしたの?」

優季『えっとぉ……梓ちゃんが隊長に言いたい事があるらしいんですけどぉ』

みほ「え……どうしたの?」
687 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:17:15.70 ID:HiwPP3jx0
優季の歯切れの悪い様子にみほが問いかける。

それに返事は返ってこなかった。

聞こえなかったのかと思いみほがもう一度問いかけようとした時、震えるような声が無線から聞こえてきた。


梓『なんで……なんで助けたんですか』


それは、梓の声だった。

その声には、所々泣いているかのような小さな嗚咽が混じっている。


梓『私たち助けたせいでせっかくのショートカットが無意味になったじゃないですかっ……時間が無いのになに私たちに余計な時間使ってるんですかっ!?』


梓が叫ぶ。

みほはどうすればいいのかわからず、ただその怒声を受け止めるばかりになる。


梓『何なんですかあなたはっ!?私の事騙してたくせに、裏切った癖にっ……良い人ぶらないでよっ!?』

あや『ちょっと梓今そんな事で喧嘩してる場合じゃ……』


泣き叫ぶようにまくし立てる梓をあやが宥める声が聞こえてくる。


優季『あ……』


その時、優季が何かに気づいたかのような声を漏らした。


優季『ごめーん間違えてたぁ。これ、あんこうチームだけじゃなくて全車に繋がってるぅ』

あや『うっそ不味くない?』
688 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:18:18.53 ID:HiwPP3jx0
優季とあやのやり取りを聞いた沙織は、小さく「うわほんとだ」と呟く。

無線が全車両に繋がってると言う事は、先ほどからの梓の激昂も伝わっているという事で、

他の車両からの通信が無いのは恐らく彼女たちは唖然としているからであって、

その事に気づいていないのであろう梓は、みほへその怒りをぶちまけ続けている。


梓『同情なんてされたくなかったっ!!足手まといになるぐらいだったら見捨てて欲しかったッ!!それで勝てるのならッそれが一番だったッ!!なのにッ!!』

「………………ッチ」


小さく、舌を弾く音が聞こえた。

沙織たちは最初、誰が舌打ちをしたのかわからなかった。

いや、優花里はわかってはいた。

今、目の前でみほが忌々し気に舌を打ったのを見ていたのだから。

しかし、みほが舌打ちをしたのだと理解するのに間が開いてしまった。

そうこうしているうちにみほがブツブツと何かを言い出した。


みほ「……るっさい」

優花里「西住殿?」


かつて、誰かはみほの事をこう評した『臆病』、『傲慢』、『他人の顔色を窺ってばかり』、『変なところで我を通してくる』。

それらを総合して――――『めんどくさい子』だと。

幼い頃のみほは感情に素直な子供だった。

良く笑い、良く泣き、良く怒る。その旺盛な感情は今もみほの中に残っている。ただ、その発露を極めて小さくするようになったが。

笑う事も泣くことも、何よりも怒る事を、出来るだけ内に溜め込もうとしてきた。

それはつまりストレスをため込みやすいという事で、プラウダ戦以降みほはひたすらそれをため込み続けていて、

先ほどの川での一件は過去のフラッシュバックと現在の決断を伴うとてもストレスフルな状況で、
689 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:18:56.32 ID:HiwPP3jx0
みほ「……なのさ、どいつもこいつも」

華「みほさん?」


それらをなんとか乗り越えて先へ行こうとしたところで投げつけられた梓の怒りに、諭す言葉を考える余裕すら無くなっていて、


みほ「私が、私がいったいどんな思いでっ……」

麻子「西住さん?」


元をたどれば全部自分が悪いとかそういう自罰的な思考で無理やり抑え込んでいたあれこれにもついに限界が来て、


みほ「そんなの、そんなのっ……」

沙織「……みほ?」


つまるところ、


みほ「あああああああああああああもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!うるさいんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


みほはキレた。

690 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:19:24.12 ID:HiwPP3jx0
みほ「何が見捨てて欲しかっただよ何が裏切った癖にだよ何がそれが勝利のためだっただよっ!?」


突然の隊長の狂乱に驚いたのは梓だけではない。

無線は全車輌に繋がっている。

なので、大洗の全員がみほの変貌に声を失った。


みほ「私だって見捨てたかったよ!?何が悲しくて迫りくるパンターや重戦車たちを前にM3リー助けるのに時間かけなきゃいけないの!?こっちは一分一秒ですら惜しいのに!!」


あんまりにも無体な事を怒りのままに吐き捨てる。


みほ「パンターの一両、いやシャーマンでもいいからあったら見捨ててさっさと行ってたよ!?」


あの決断が間違いだったとかそういう事ではなく、出来なかったんだからしょうがないだろと、みほは頭の中に渦巻く感情のまま怒声を吐き出していく。

文字通り噴火した怒りの方向性など定まっているわけがなく、みほの矛先はふらふらと次の標的へと向く。


みほ「だいたいっ!!生徒会がもうちょっと頑張ってたらこんな苦労しなくて良かったんだよっ!!なんで一回戦の車両数制限にすら届いてない状況で決勝になんか出てるの!?意味わかんないっ!!」

杏『うぇぇ今そこ責めるぅ……?』


突然の流れ弾に杏がひきつった声をだすもみほはそんな事気にするかと言葉の砲弾を撃ち込み続ける。


みほ「なんなの!?戦車道やるってのにまともに動く戦車すらなかったのホントなんなのっ!?思い付きで物事進めんのもいい加減にしてよバカっ!!」

691 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:19:51.09 ID:HiwPP3jx0

思えば最初からダメだったのだ。

どの時点で廃校が決まっていたかは知らないしいつ戦車道でそれを阻止しようと決めたかも知らないが、あんな強引な勧誘するよりもまともな戦車の一両、

いや二両でも見せてくれれば少しは快く頷いたかもしれないのに。

あの時のみほからすれば戦車道を再開できるのは渡りに船だったのにただただ『お前の態度が気に食わない』の一点で一回断ったのだから。

それでも色んなものを飲み込んで生徒会の要望を受けてみればあったのはボロボロの戦車のみで、次の日までに他の戦車探せなんて言われたのだから。あの時ばかりはみほはみほの意志でキレていた。

そうやって思い返せば出てくる出てくる燻っていた怒りの火種が。


みほ「ここまでこれたのは運が良かっただけなんだよ相手が油断してくれたからなんだよみんなみんな私たちが勝てるような相手じゃなかったんだよっ!!?」

桃『お、おい西住ちょっと落ち着いて……』

みほ「桃ちゃんは黙っててバカっ!!次余計な口挟んだらバカちゃんって呼ぶからっ!!梓さんっ!!」

梓『はいっ!?』


突然話から外れ、また突然戻ってきたからか、梓は驚いた声を上げる。


みほ「私があなた達が可哀想だから助けた?『同情なんてしないで』!?何言ってるの自惚れないでよ!?私たちそんな仲良くないでしょ!?だって私はついこの間まであなた達を騙してたんだから!!」
692 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:20:21.10 ID:HiwPP3jx0
そう、騙してた。

人一人の人生をそっくり奪って、騙って、それに憧れた人を裏切ったのだ。

そんな冷血で残酷で、最低な人間が。騙した人間に同情なんてするわけない。

そんな情があるのならばそもそもあんなことしないのだから。


みほ「あなたの事なんて何も知らない!!好きな食べ物なんてしらないし趣味も何もしらないよっ!!誕生日ぐらいは知ってるけどさっ!!」

梓『逆になんでそれ知ってるんですか』

みほ「うるさいっ!!とにかくっ!!あなたに同情してあげる理由なんてこれっぽっっっちもないんだよっ!!バーカ!バーカ!!」


みほを見て冷静さを取り戻した梓のツッコミにみほは逆ギレで返す。

ちなみに理由は生徒会から渡された履修者名簿を暗記しているからである。

こうなるともう怒りの矛先とかそんな話ではなく、全方位への砲撃が開始される。


みほ「ああもうっ!この際だから言っちゃうけどねっ!?ここにいるみんなは戦車道初めてまだ半年にも満たなくてっ!!練習だって初心者に合わせた軽めのものでっ!!

   廃校がかかってようやく勝利への執念だけはそれなりのものを手に入れてっ!!

   でも全然足りないのっ!!技術も戦車も何もかもっ!!それで優勝したいとか戦車道舐めるなっ!!?」


みほは怒りのまま上半身を車外に出し、バンバンと車体を叩きながら叫び倒す。
693 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:21:06.95 ID:HiwPP3jx0
みほ「私だってっ!?一年近いブランクがあって、感覚だって今でも取り戻せただなんて言えなくて!!怖いんだよっ!!自信なんてないよ!?勝てるなんて言えないよっ!!?」


あの事故以来大洗に転校するまでずっとみほは引きこもりのような生活を送り、運動はもちろんまともに食事すら摂らないような生活が数か月に渡った。

そんな生活の果てにやつれ切った体をなんとか健康一歩、いや二歩手前程度にまで戻すことは出来たものの、

戦車道の方は聖グロを始めとした強敵たちとの実戦を経てもまだ戻ったとはいえず、それは全国大会当初からのみほの懸念であった。


みほ「なのに好き勝手言ってええええええええええええええええ!!人の気持ちも知らないでえええええええええええええええええええっ!!」


全ては自分のためだった。

大洗を利用して、無為な行いで自分の心を守ろうとしただけだった。

それはそれとして戦力としては未熟な大洗を勝たせるために苦悩したのも事実だった。


みほ「戦車道はお金がかかるのっ!!黒森峰だってそのあたり苦労してたのにっ!!大洗の人たちも廃校かかってんのに決勝に行ってようやく義援金出してきてさあああああああああああああああ!!

   もっと早く出してよ!?学園長もさらっと車買い替えてるしみんなバーカっ!!」

梓『っ……もうっさっきから何なんですか!?何が言いたいんですかっ!?』


西住みほの独演会にいい加減しびれを切らした梓が再び声を荒げる。

しかし、それを上からねじ伏せるようにみほの絶叫が響き渡った。


みほ「私が、善意で行動したとでも思ってるのっ!?同情したから助けたと思ってるの!?そんなわけないでしょ!?だって、だって私は――――それで大事な人を失ったんだよッ!!?」
694 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:21:46.14 ID:HiwPP3jx0
脳裏をよぎるのはあの瞬間。

繋いだ手をいともたやすく振りほどかれた時。

記憶に焼き付いた、彼女の笑顔。


みほ「私はッ!?助けたかったッ!!勝利なんか要らなかったッ!!」


彼女を助けられればそれで良かった。

敗北の屈辱も、戦犯の汚名も全て笑って受け入れられた。


みほ「あの時、あの濁流の中で私は選んだッ!!勝利なんかよりも、大事なものを選ぶってッ!!」


勝利よりも大切なものがあったから。

たとえ、彼女の意志に背くとしても、彼女を助けたかった。


みほ「そのためなら命だって失ってよかったッ!?なのに、なのにっ……私は勝利も、大切な人の命も失ったッ……!!」


伸ばした手は何も掴めず、掌に残ったのは虚ろだけで。


みほ「あの人を救えればそれで良かったのに。あの人を救うためなら死んだって良かったのにッ……」


沢山の人の努力を否定して、大切な人の想いを無視して、


みほ「なのにッ……私は、エリカさんを救えなかったッ……あの人が望んだ、勝利さえ捨てたのにッ……!」


残ったのは全てを失った自分だけで、叶うならばそれさえも捨て去りたいのに、


みほ「なのにッ……私は今も、のうのうと生きているっ……」
695 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:22:19.35 ID:HiwPP3jx0
無様を晒し、沢山の人を裏切り、それでも生きている。

それらは全て、彼女が最期に望んだからで。

だけど、『西住みほ』である事に耐えられなくて、

『逸見エリカ』を騙る事でようやく生きてきた。


みほ「エリカさんは、私の全てだった!!あの人がいたから、私は生まれて来て良かったって思えたっ!!なのに、出会ったばかりのあなた達に同情なんてするわけないでしょっ!?」

梓『なら……なんで、何で私たちを助けたんですかっ!?』


当然の疑問。

そこまで言うのならば、なぜみほは自分たちを助けたのか。


みほ「そんなのッ!!」


それを、愚問と吐き捨てるようにみほは答える。


みほ「あなた達を勝たせたいからに決まってるでしょッ!?」


涙交じりの声が、履帯の音に吸い込まれていく。

それでも、みほの声は確かに皆へと届いていた。


みほ「あなた達は、私を受け入れてくれたからッ!!」


それは、ずっと伝えたかった言葉。

みほが、自分を受け入れてくれた皆に伝えたかった想い。

荒々しくて、乱雑で、とてもそうは聞こえないだろうが、

その言葉に込められた意味は、感謝だった。


みほ「出会ったばかりなのに、嘘つきでどうしようもなくて救えない私に、それでも賭けてくれたからッ!!だからッ―――私も、あなた達に賭けたッ!!」

696 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:22:56.46 ID:HiwPP3jx0
大洗の皆のために勝ちたい。

救えない自分を救おうと手を伸ばしてくれた。

その手を取る事は出来なかったけど、それでも嬉しかった。

空っぽの自分がその恩義に報いるには、勝つしかないと思った。

たとえ、彼女たちを切り捨てる事になっても。

だけど、


みほ「どっちでも良かったッ!!あなた達を見捨てたって、助けたってどっちにしてもマイナスだったッ!!それでもッ、私はあなた達を選んじゃったんだよッ!!」


可能性が同じなら、50:50なら、信じたい人たちを信じたかった。


みほ「あなた達を見捨てて勝つ可能性よりも、助けて勝つ可能性に賭けたくなったんだよッ!!」


もしかしたらそれは早計だったのかもしれない。

もっといい選択肢があったのかもしれない。

でも、時は巻き戻せない。失ったものは取り戻せない。それは、みほが一番よく知っている。

選んだ選択肢を今更放り投げるなんて真似、出来ない。

だから、


みほ「必要なんだよあなた達がっ!!私はもう選んだんだよッ!!どんなに弱くたって、未熟だって、ムカついたって、あなた達がいないともう勝てないのっ!!

   私が、みんなを勝たせるためにはっ!!あなた達が必要なのっ!!」

697 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:23:40.10 ID:HiwPP3jx0
選んだのだ。

選ばれたのだ。

それならもう、やるしかないのだ。


みほ「助けられた事が悔しいのなら、納得できないのなら、自分たちで納得できるよう頑張ってよ!?私に、あなた達を助けて良かったって思わせてよ!?」


逆切れだろうがなんだろうが、もう、尽くすしか無いのだから。

みほも、梓も、皆も。

勝ちたいのは皆同じなのだから。


みほ「文句があるなら行動で示してっ!!以上っ!!バーカッ!!」


そう吐き捨て、仕舞いの合図とばかりに力強く装甲に拳を打ち付けると、みほは一方的に無線を切った。
698 : ◆H9H0Q4zLDSTW [saga]:2020/09/19(土) 02:25:38.74 ID:HiwPP3jx0
お久しぶりですねごめんなさい……

ようやっと3話の公開時期が決まったようなのでだいぶテンションが上がっています。

あとパンツァーコンサートのジャケット絵のエリカさんが聖母の微笑みすぎてこれだけで短編一本書けそうですね。

次回は出来るだけ早めに出せるよう頑張るので……

ていうか3話が公開されるまでにはこっちを完結させたい……
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 07:24:36.24 ID:fscyRhxn0
お待ちしてました。乙です。残り楽しみにしてます
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 07:26:42.21 ID:oc52N0ZD0
最終章が終わるまでに完結させてくれればそれでいいよ
というかエリカ短編めちゃくちゃ読みたいから、こっち一旦休憩してくれても…
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 19:57:35.82 ID:F544j6cr0
乙です。
1年半おきの最終章を待てるガルパンおじさん達の忍耐力ならいくらでも待てる。
そもそもテレビシリーズでも3ヵ月空いてたしな
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/19(土) 22:15:21.53 ID:HRK0EymR0
待ってましたぁ!お疲れ様です。みほの咆哮に心揺さぶられた
最終章完結は早くても4年後くらい…かなぁ…
のんびりと続きを待ってます
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