他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
梨子ちゃんとマルの平穏な日々
Check
Tweet
1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/03/02(土) 05:24:13.88 ID:nZ7rv4Doo
時間を無駄にしても平気な人だけ読んでください
毒にも薬にも勉強にもならない感じです
更新は毎日か、遅くても週1 完結はします
登場人物の設定は、何準拠なのか自分でもよく分かりません
時系列はレス順通りではないです
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1551471853
2 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/02(土) 05:27:21.99 ID:nZ7rv4Do0
花丸「はぁ〜・・・・・」
梨子「あたたかいねえ・・・・・・」
朝
お日さまの暖かさが夜中の肌寒さを忘れさせてくれて
いい塩梅に心地良い時間の中
マルは梨子さんと縁側でくつろいでいます
花丸「梨子さん」
梨子「ん〜?」
花丸「マル、おばあちゃんみたいって言われることあるんだぁ〜」
梨子「ふ〜ん…私おばあちゃん好き〜」セノビ~
花丸「マルも〜」セノビ~
3 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/02(土) 05:30:04.83 ID:nZ7rv4Do0
今朝はマルの好きなお茶で梨子さんをおもてなししています
梨子「お茶うけおいしい」
花丸「お口に合ってよかったずら」
梨子「今日のおつけものはカブと大根?」
花丸「うん、今日のために用意したんだ」
梨子「花丸ちゃんが作ったの?」
花丸「浅漬けだから簡単だったよ」
梨子「水っぽくなくて食べやすくて私これ好きかも」
花丸「よかった〜梨子さんの好みに合わせたつもりだったから」
梨子「そうなんだ〜嬉しい、ありがとう♪」
花丸「えへへ」
梨子「ふふ」
4 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/02(土) 05:33:12.12 ID:nZ7rv4Do0
梨子「今度、おかえし持ってこないといけないね」
花丸「おかえしなんて大丈夫だよ、マルが好きでやってるんだし」
梨子「だから、私も好きでおかえしするんだよ♪」
花丸「ん〜…じゃあ、ありがたくちょうだいします」
梨子「なにがいいかな?甘いもの?」
花丸「なんでも嬉しいよ」
梨子「う〜ん…花丸ちゃんみかん好きだったよね」
花丸「うん、マルはみかん大好きずら」
梨子「ちょうどいただきもののみかんがあるからタルトタタンとかどうかな?」
花丸「た?たるたる?」
梨子「ふふ、とりあえず今度作って持ってくるね♪おたのしみに」
花丸「うん、たのしみにしてるね♪」
のんどりした午前
梨子さんとふたり
これから何をしようかなんて
おしゃべりをしているうちに時間は過ぎて
今日も何をするでもないままに半日が過ぎるのでした
5 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/02(土) 05:39:17.29 ID:nZ7rv4Do0
梨子「そうだ、またいっしょにお菓子作りでもしよっか?」
花丸「おお〜それは楽しみずら〜♪」
梨子「あっ、花丸ちゃん今度はお菓子の家の時みたいに出来上がる前に食べちゃダメだよ?」
花丸「それは約束はできません」
梨子「もう〜」
花丸「でも梨子さんだって途中から一緒に食べてたよ」
梨子「だ、だって目の前であんなにおいしそうに食べられたら…」
花丸「じゃあ、つまみぐいの分も考慮して材料を買うっていうことで♪」
梨子「さすが花丸ちゃん♪」
6 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/02(土) 05:44:59.43 ID:nZ7rv4Do0
花丸「甘い物もいいけど、なんかこう…変わったものも食べたいなあ」
梨子「変わったもの?例えば?」
花丸「そう…たとえば…海老とか…」
梨子「エビ…エビか〜」
花丸「ずいぶん食べてない気がするずら」
梨子「…オマールエビとか…食べたいね〜」
花丸「はあ〜おいしそうなオマール海老…オマール海老ってどんな海老だっけ?」
梨子「・・・・・・」
花丸「・・・・・・・・」
梨子「オマールの、エビ」
花丸「オマールってなに?」
梨子「フランスの…ごめん説明できないです」><
花丸「オマール…梨子さんはオマール海老って食べたことあるの?」
梨子「ないです」
花丸「マルもないです」
梨子「・・・・・・」
花丸「・・・・・・・・」
梨子「オマールエビ…」
花丸「食べてみたいな〜…」
ふたりのおなかがぐうぐうと鳴きだしたので
今日のお茶会は解散です
ワンピースの裾を抑えながら手を振り帰っていく梨子さんに
マルも手を振り返し見送ります
まあ、このあとすぐまた練習で顔を合わせるんだけどね
7 :
◆QjbAJuMwBnbV
[saga]:2019/03/02(土) 05:46:57.01 ID:nZ7rv4Do0
またあした
8 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/03(日) 00:20:22.01 ID:ihWIF6A80
2
冬の日
朝から降り始めた雪は
梨子さんとマルがこたつで幸せにひたっている間に
マルのおうちに、内浦の町に鮮やかな雪化粧を施しました
梨子「うわあ〜♪」
花丸「雪景色ずら!」
梨子「こんなに積もるとは思わなかったね〜」
花丸「ふふーん♪」
梨子「どうしたの花丸ちゃん?そんな得意そうな顔して」
花丸「こ ん な こ と も あ ろ う か と…あ、梨子さんちょっとここで待っててね」テクテク
梨子「えっ?…あ、うん」
9 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/03(日) 00:23:23.14 ID:ihWIF6A80
花丸「おっまたせずら〜♪」ニッコニコ
梨子「あ〜それ!」
花丸「こんなこともあろうかと♪買っておいたずら〜」
梨子「なるほどね、すごいよ花丸ちゃんこれこそまさしく…」
花丸「雪見にふさわしいアイス!ずら」テテテテーテーレーテッテレー
梨子「それじゃあこの雪景色を堪能しながら」
花丸「ふたりでアイスも堪能しよう♪」
こたつから出て、ふたり縁側に腰掛けて雪見のお茶会
おたがいなんとなく選んだお茶を傍らに
アイスをお茶菓子に
いつもより静かな気がする銀世界を眺めながらのんびり過ごします
10 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/03(日) 00:27:50.85 ID:ihWIF6A80
花丸「なぜか特売だったごぼう茶」
梨子「国木田さん家愛飲の焙じ茶」
花丸「ふあ〜…息がいつもより」
梨子「まっしろ〜い」
花丸「それにしても本当に積もったね〜」
梨子「5pくらい積もったかな?もう少しかな?手で雪のかたまりすくえそう」
花丸「・・・にんじゃ」
梨子「忍者?」
花丸「その昔忍者は冬山の任務で雪を口に含み吐く息で居場所をばれないようにしたらしいずら…」
梨子「へえ…ああ、冬に夏の時期の設定で撮影するときに役者さんが氷を口に含むようなもの?」
花丸「多分そう…マル、この情報どこで知ったのかさっぱり思い出せないずら…」
梨子「ふうん…」
花丸「・・・・・・・」
梨子「・・・・・・・・」
花丸「・・・・・・・・・・・・・」
梨子「花丸ちゃん…雪食べちゃダメだよ」
花丸「…いくらなんでも雪は食べないよ〜」
梨子「そうだよね、ごめんね?ついなんかノリで」
花丸「雪は食べないけど…」
梨子「…かき氷?」
花丸「うん」
梨子「食べたくなっちゃった?」
花丸「うん」
梨子「…こんなこともあろうかと?」
花丸「無念ずら」
梨子「さすがに用意してないか〜」
花丸「こうなったら買いに行くしか!」すくっ
びゅううう〜
梨子「・・・・・・・・」
花丸「・・・・・・・・・・・・さむっ」
花丸「マルの体はこの寒さに耐えられるようには出来てないずら…」
梨子「私も…お茶も無くなったしこたつに戻ろっか」
花丸「異論無し」
燃え上がりかけた食欲の情熱を吹き消す寒風に吹かれて
雪見のお茶会はお開き
おこたのある部屋に戻ってふたりでまどろんでいる間に
もう今日一日降り止む気の無い雪が舞いはじめたのでした
11 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/03(日) 00:30:53.68 ID:ihWIF6A80
梨子「もうやみそうにないね」
花丸「泊まっていきなよ」
梨子「いいの?」
花丸「もちろん」
梨子「じゃあお言葉に甘えて…あ、お母さんに連絡しないと」
花丸「マルもじーちゃんたちに言ってくるね」
梨子「うん、いってらっしゃい♪」
花丸「いってきます♪」
梨子「あ…着信…」
12 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/03(日) 00:32:01.28 ID:ihWIF6A80
梨子「向こうも…雪、降ったんだ…」
13 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/03(日) 00:34:46.95 ID:ihWIF6A80
花丸「ただいま〜♪お泊り問題なしだって」
梨子「おかえり」
花丸「どうかしたの?梨子さん」
梨子「ね、花丸ちゃん…写真撮ろ」
花丸「写真?どうして急に」
梨子「だってほら…こんなに綺麗な雪景色だよ」
花丸「梨子さんが写真撮ろうなんて珍しいよね」
梨子「ほらほら、こっち来て」
強引にマルの手を引いて外へ連れ出す梨子さん
花丸「うう〜、やっぱり寒いずら〜」
梨子「それじゃあ撮るよ〜♪」
肩を寄せ合って撮った写真を、梨子さんはにこにこ眺めてる
そうだ、マルも写真をもらおう と思って液晶を覗き込んだんだけど
花丸「ああっ、マル、ちゃんちゃんこ着たまんま撮っちゃったずら〜!」
梨子「ねっ、かわいいよね〜ちゃんちゃんこ♪」
花丸「も、もう一回撮るずら!もう一回!」
結局ちゃんちゃんこは脱ぎかけたけど、寒さに負けてすごすごとおうちに逃げ帰りましたとさ
14 :
◆QjbAJuMwBnbV
:2019/03/03(日) 00:36:42.47 ID:ihWIF6A80
また明日か今夜
15 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/04(月) 02:42:08.73 ID:MgfMCOlr0
3
花丸「うわあっ!?」
梨子「花丸ちゃん!?」
花丸「り、梨子さんっ!」
梨子「どうしたの?」
花丸「シャンプーの容器から水が出てきたずら!」
梨子「えっ?うそ?」
花丸「ほんとだよ、ほら」シャコシャコ
梨子「は、花丸ちゃんそんなにいっぱい出さないで。このシャンプーはこういう色なんだよ」
花丸「…あ、梨子さんの匂いがする…」
梨子「いつもそれ使ってるからね」
花丸「へえ〜…なんか面白いずら」シャコシャコ
梨子「は、花丸ちゃん…それちょっと…あんまり遊ばないで…」
16 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/04(月) 02:44:28.30 ID:MgfMCOlr0
梨子「東京にいた頃、お母さんに連れて行ってもらった美容院でね、一緒に買ってもらってからずっと同じもの使ってるんだ」
花丸「へえ〜…なんか不思議ずら」
梨子「髪の毛を伸ばしたいって言ったらね、髪の毛のケアのこととか教えてくれて、こっちに越してきてからも同じお店から取り寄せてもらってるんだ」
花丸「梨子さん綺麗な長い髪だもんね…マルも伸ばしてみようかな」
梨子「花丸ちゃんの髪の毛繊細そうだから、伸ばすなら気をつけてあげた方がいいかもね」
花丸「梨子さんみたいになれるかな」
梨子「ふふっ、花丸ちゃんの方がサラサラで綺麗だと思うよ」
17 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/04(月) 02:48:58.10 ID:MgfMCOlr0
花丸「…少しの間だけね」
梨子「うん?」
花丸「今よりちょっとだけ長かったことがあるんだ」
梨子「そうなんだ」
花丸「でもね…」
梨子「うん」
花丸「お味噌汁とか汁物に毛先が浸かっちゃうことがあって今の長さに戻したの」
梨子「あー」
花丸「梨子さんもそういうことあったの?」
梨子「ううん、友達がね…ああ、東京の友達なんだけど、ラーメンが好きなショートカットの活発な子でね、その子と同じ部活動の先輩に綺麗な長い髪の人がいて、その人に長い髪が羨ましいって言ったんだって」
花丸「うん」
梨子「そしたらその人に、あなたも可愛い顔してるんだから、伸ばしても似合うし、とても美人さんになりますよって言われてね」
花丸「うんうん」
梨子「ウィッグっていうの…花丸ちゃん分かる?」
花丸「カツラだね」
梨子「…うん、まあ…うんそうだね。それ着けて友達やその先輩の前に出てみたんだ。…変だよ。似合ってないよ。なんて言われないかってドキドキしながらね」
花丸「うん、それで?どうなったの?」
梨子「みんなが驚いて、褒めてくれたの。とても似合ってるって」
花丸「よかったー」
梨子「でもね、次の日にはもう長い髪にはしないって言い切るようになっちゃってたの」
花丸「ええ〜?どうして?」
梨子「花丸ちゃんと一緒」
花丸「え、マルと?」
梨子「その子長い髪のウィッグをつけた姿をみんなに褒められたのがすごくすっごく嬉しくてね、そのままの格好で下校したの。それでね、普段通りに放課後を過ごしたんだけど」
花丸「うん」
梨子「その子の行きつけのラーメン屋さんでね」
花丸「!あー…」
梨子花丸『ラーメンに髪の毛が』
梨子「ラーメン食べづらいから髪は伸ばさない!って力強く宣言してね。ふふっ、花丸ちゃんの話聞いたらなんだかその子のこと思い出しちゃった」
花丸「そっか〜…ねえ、梨子さん」
梨子「なあに?」
花丸「前の学校や友達が恋しくなることって、ある?」
18 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/04(月) 02:50:53.77 ID:MgfMCOlr0
梨子「…………大丈夫だよ」
花丸「…………そっか」
梨子「そうだよ」
花丸「マルは、いつか離れ離れになった時、梨子さんに恋しがってほしいな」
梨子「…」
花丸「…」
梨子「…ずっと一緒にいたら問題ないけどね」
花丸「…あ〜…それなら、大丈夫だね」
19 :
◆QjbAJuMwBnbV
:2019/03/04(月) 02:52:24.34 ID:MgfMCOlr0
次は水曜日までに 無理だったら週末までに
20 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/06(水) 22:47:47.07 ID:c5fLfwKX0
4
朝
マルは雨傘をもって、街へのバスに乗り込みます
慣れ親しんだ道の揺れを感じながら、街の三つ手前のバス停で降りて
反対の方向にしばらく歩いていきます
通りからも、住宅地からも少し離れた場所に
山と呼ぶにはあまりにも小さな山があって
丸みを帯びた古い石の階段を十段ほど登ると
なんでこんなところに作ったのか
屋根つきのベンチが二つ並んでいます
バスの止まらないバス停みたいだと、梨子さんが言ってた通りの印象
少し感激して腰かけると、ほどなく天気予報通りの雨が降りはじめました
ぽつぽつ
ぽとぽと
ぱらぱら
と、少しずつ強くなっていく雨の音と匂いを感じながら
梨子さんの言っていた世界を思い浮かべます
雨の音
静かな世界
雨と自分以外何もなくなったような感覚
雨の音楽
いつもと違う世界
21 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/06(水) 22:49:16.75 ID:c5fLfwKX0
頭の中にたくさんの物語が浮かびました
それは、今まで読んだ本の御話の続きの空想
それは、好きな物語の登場人物が躍動する空想
それは、大切な友達に伝えたい言葉や想い
気が付けばあっという間に時間は過ぎていて
いつの間にか雨はばちばちと屋根を強く叩き
ほんの少し肌寒さも感じるようになってきました
22 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/06(水) 22:51:48.83 ID:c5fLfwKX0
用意してきた魔法瓶を取り出して、一服
梨子さんおすすめの紅茶
梨子さんの真似をしてみたら、梨子さんの気持ちが少しは分かるのかな
今度、マルも絵を描いてみようかな
なんて考えをめぐらせていると
次第に屋根上の演奏会も静まっていって
しとしと と
日暮れまで続くらしい静かな雨へと変わっていきました
持ってきた雨傘を開いて、小さな山を下ります
来た道をたどって
ちゃんとバスが止まる方のバス停へ
23 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/06(水) 22:53:49.12 ID:c5fLfwKX0
今日の予定は言っていません
途中で偶然巡り合って
運命みたい
なんて思うかもとか期待したりしていました
ほんの少しだけ
ほんとにほんの少しだけ
おうちに帰るまでまだまだ機会はあるから
どこかで会えるかもしれません
少しだけほんの少しだけ
会いたい人と出会えそうな道を歩いたり
立ち寄ったりするだけです
24 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/06(水) 22:56:55.10 ID:c5fLfwKX0
その間ずっといろんなことを考えています
次に会ったらどんな話をしようかな、とか
こういう話になったらこういうことを言おう、とか
マルは、黙ってる時とか、誰かと誰かの会話を聞いてる時になら
たくさんのことを考えられるんだけど
マル自身が誰かとお話をしてる時は、なぜだかいつもより考えがまとまらなかったり
自分が思ってることと少し違うことを口にしてたりします
だからこれは必要な準備なんです
言いたいことを言えるようになるために
もっとたくさん、大切な人と楽しくお喋りできるようになるために
だから、今日の傘は桜模様です
25 :
◆QjbAJuMwBnbV
:2019/03/06(水) 22:58:04.66 ID:c5fLfwKX0
次は土曜までに 無理なら来週火曜までに
26 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/09(土) 12:03:35.32 ID:4S5kaQrM0
5
梅雨の前、紫野菊の鮮やかさが
記憶の隅にほんのちょっぴりだけ残ってた放課後
いつもの練習の時間
同学年の二人が、家や魔界の用事で部活動をお休みした日
一番に部室に着いたマルは
椅子に腰掛けて、かばんの中の本に触れながらふと考えます
もしマルが本を読みだしたら
上級生が部室に入ってきた時に、気が付かないかもしれません
いつもなら一緒に部室に来る二人が教えてくれます
でももしマルが本を読んでて上級生の挨拶に気が付かずに無視してしまったら…?
急に怖くなって、不安でいっぱいになりました
もし、マルが一番乗りじゃなかったら
先に部室にいた相手とお話しするなりしてみんなを待てたけど
今はマルひとり
周りに気を配りながら本を読めば…そんなことはできません
本を読めば文章に集中してしまうし
周りを気にすれば文章は頭に入ってきません
27 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/09(土) 12:05:06.20 ID:4S5kaQrM0
部室を端から端まで眺めたり
床や壁をよく分かりもしないのに観察したり
かばんやかばんの中身を台の上に出したり降ろしたりして待ちました
何をすればいいのやら分からず
自分が何をしているのかもよく分からないような
謎の緊張感に苛まれながら、ただひたすら待っていると
ガラララ
と
ようやく部室の扉が開く音が
思わず、助かった〜!と思いました
だけどその助かったという思いはすぐに消え去って
今度はなんて挨拶しよう?という難題が訪れるのでした
28 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/09(土) 12:07:49.27 ID:4S5kaQrM0
こんにちは?妥当な気がするけどなにか他人行儀な気が
おはようございます?もう夕暮れ前です
こんばんは?論外ずら
おつかれさまです?こんにちはより他人行儀
待ってました?いろいろちがう
迷いに迷って混乱した頭でマルが出した結論は…
沈黙
花丸「・・・・・・」
口が半開きになっているのにも気づかず、開いた扉の方を見るとそこにいたのは
梨子「あ、花丸ちゃん。早いね…一人?」
花丸「あ…はい。ルビィちゃんと善子ちゃんはおうちの用事でお休みするって…」
梨子「そうなんだ…実は千歌ちゃんと曜ちゃんも今日は来られないんだって」
一言二言言葉を交わすうちに
それまで張りつめていた緊張感は薄れていきました
29 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/09(土) 12:09:21.12 ID:4S5kaQrM0
梨子さんと部室で二人になって少し後
マルにはルビィちゃん経由で、梨子さんには千歌さん経由で
三年生が三人とも練習に来られないとの旨の連絡が入って
梨子「こんなこともあるんだね」
苦笑いで言う梨子さんに
マルは曖昧な笑みしか返せませんでした
30 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/09(土) 12:13:47.74 ID:4S5kaQrM0
梨子さんとマル
ふたりきりの部室
今日はもう他に誰も来ない部室
上級生とふたりきり…その状況に
マルはまたじわじわと緊張し始めていました
もう練習も出来ないし、当然このまま解散で帰宅…
と思ってたマルに
梨子「ねえ花丸ちゃん…少しふたりでお話ししようか?」
梨子さんは意外な提案をしたのでした
31 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/09(土) 12:14:55.14 ID:4S5kaQrM0
梨子「花丸ちゃんすごく緊張してるでしょ?」
花丸「ええっ?そ、そんなことは…」
梨子「そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ?とって食べたりはしないから…私がドアを開けた時、花丸ちゃんすごい顔してたよ」
微笑みながらそう言って
梨子さんはマルの隣に腰掛けると
梨子「正直言うと、ちょっとショック受けちゃった」
そう言って本当に、少し悲しそうな顔をした
梨子「本当に嫌なら無理にとは言わないけど、せっかくの機会だし…ね?」
マルの顔を覗き込みながら言う梨子さんに
マルは頷くことしかできませんでした
32 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/09(土) 12:16:31.59 ID:4S5kaQrM0
実際、梨子さんとお話しするのが嫌なわけではないし
梨子さんのことを嫌ってるわけでもありません
そもそもマルはルビィちゃんと善子ちゃん以外のみんなとは
ほとんどちゃんとした会話をしたことがありません
もちろん、Aqoursの活動に必要なことについてはちゃんと話し合っています
ルビィちゃんが言うには、こういうのをびじねすらいくな関係というらしいです
びじねすらいくな関係もかっこいいかもと思うけど…
ともあれ
梨子さんとマルの関係は
この日を境にびじねすらいくな関係から卒業することになったのです
33 :
◆QjbAJuMwBnbV
[saga]:2019/03/09(土) 12:17:54.73 ID:4S5kaQrM0
次は水曜か 週末までに
34 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/16(土) 23:01:04.94 ID:EGQazRyy0
6
パキッ
この音…
あなたには何の音に聴こえましたか?
山中の夜、暗闇で暖をとっている時の
焚き火の音?
敵から身を隠した忍びの者が
気配を消しながらも踏み折ってしまった枯れ枝の音?
正解は…
35 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/16(土) 23:04:02.84 ID:EGQazRyy0
花丸「…」
梨子「…」
梨子さんがおうちに遊びに来るようになって少し経ったある日
縁側でくつろいでたマルが、ふと立ち上がろうとした時
関節が鳴りました
花丸「……」
そのままやり過ごしたらよかったんだと思うんだけど
その時のマルはなぜか
関節が鳴った瞬間に、凍りついたように動きを止めてしまって
梨子「……」
恐る恐る梨子さんの顔を見ると
軽く眉毛をハの字に曲げて、少し困ったような表情で…
少しだけ開いた唇は、マルにかける言葉を探してるようにも見えました
花丸「ちょ…っとお茶でも、入れてくるね」
梨子「あっ、うん。ありがとう」
マルは逃げるように台所へ歩き去りました
36 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/16(土) 23:05:16.58 ID:EGQazRyy0
いただきものの上等なお茶を淹れて縁側に戻り
漂う香りで気を持ち直して梨子さんの隣へ座りなおす
花丸「おまたせずら」
梨子「ありがとう。わあ〜いい香り〜♪」
花丸「じーちゃんの知り合いの人が毎年新茶を送ってくれてね、すごく香りのいいお茶なんだ〜」
梨子「優しくて柔らかくて落ち着く…あ、なんか曲が作れそう…」
花丸「お茶の香りにそんな効果が!?」
梨子「♪〜♪…ん〜…没」
花丸「なかったずら」
37 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/16(土) 23:07:20.96 ID:EGQazRyy0
花丸「ところで、曲ってどうやったらできるものなの?」
梨子「え?うーん…なにをすれば曲ができるのかは分からないけど、何をしてたら曲ができたのかは分かるの…ふふっ、ごめん。ちょっと分かりにくいよね」
花丸「ううん、梨子さんの言ってることちゃんと分かるから大丈夫だよ」
梨子「たった今このお茶のいい香りで閃きそうになったみたいに、音はふとしたきっかけで生まれてくるんだ」
花丸「どんな時でも突然閃いちゃうの?」
梨子「そうだねー…例えば…」
そう言って梨子さんは携帯端末を取り出しAqoursの曲の一覧表を指さしながら
梨子「これは肉じゃがを作ってる時にできた曲で、この曲は玉ねぎのみじん切りの歌で…これがすごく眠かった朝の歯磨きの歌。…あ、これは靴下を履く時に引っ掛けて転んだ拍子に生まれたフレーズだよ♪」
花丸「も、もういいずら…イメージが…」
梨子「そう?」
そう言った梨子さんは少し残念そうな顔をしていました
38 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/16(土) 23:10:00.98 ID:EGQazRyy0
梨子「ところでさっき花丸ちゃん関節鳴ったよね」
花丸「ごほっ!ごほっ!けほっ…」
梨子「だ…大丈夫花丸ちゃん?」
花丸「大丈夫ずら…でも正直恥ずかしいからその話は見逃して欲しかったずら…///」
梨子「ご、ごめんね。でも花丸ちゃんの関節が鳴って、目が合った時にね、その…」
花丸「…まさか…」
梨子「できちゃったんだ…新しいフレーズが…」
花丸「そんなことが…」
梨子「それが今作ってる新曲にぴったりな感じだから、ぜひ組み込みたいんだけど」
花丸「や…やめてほしいずら…///」
あとで聴かせてもらったそのフレーズはおどろくほど素敵で…
誰にも出来たいきさつを教えない という約束で
マルの関節の音から生まれたフレーズが新曲に組み込まれることになったのでした…
39 :
◆QjbAJuMwBnbV
[saga]:2019/03/16(土) 23:11:02.32 ID:EGQazRyy0
次も水曜か 週末までに
40 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 20:54:27.23 ID:YHbU4A+s0
7
梨子「サプライズって、あるよね」
花丸「うん」
梨子「びっくりするよね」
花丸「そうだね」
梨子「小さい頃はね、よくびっくりさせられて泣いちゃったりしてたんだ」
花丸「そうなんだ。どんなどっきりで泣いちゃったの?」
梨子「小学1年生の時のことなんだけど、おうちに帰ったらね」
花丸「うん」
梨子「まだお昼の12時なのにお仕事に行ったはずのお父さんがいたの。いつもは夜にならないと帰ってこないのに」
花丸「ふむふむ」
梨子「その時の私はそんな疑問なんか持たないでただお父さんがいることが嬉しくって喜んだの。それで、お父さんに手を引かれて居間に入ったら…」
花丸「入ったら?」ドキドキ
梨子「学校のお友達がいてね、お誕生日会を開いてくれたの。もうびっくりして泣いちゃって…」
花丸「へえ〜・・・・・・いいお話だね」
梨子「あ、ごめんねなんか、オチが無くて」
花丸「う、ううん。ある意味予想外でびっくり、した…ような」
41 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 20:56:38.91 ID:YHbU4A+s0
花丸「だけど、泣いちゃうくらいびっくりしたんだね」
梨子「うん、小学校1年生の時で、お友達は出来たんだけどお誕生日に家に呼ぶ勇気は無くてね、それまでも毎年お父さんが帰って来てから家族だけでお祝いしてて…とにかく、想像もしてなくてびっくりしちゃってね、嬉しいのとかいろいろごちゃごちゃになって泣いちゃったんだと思う」
花丸「マルも、ルビィちゃんと仲良くなるまではお誕生日は家族とお祝いしてたよ」
梨子「そうなんだ?もしかしたら私たちって似てるのかもしれないね」
花丸「う〜ん…マルは梨子さんみたいにしっかりはしてないし、どうかなあ」
梨子「あはは、私はしっかりなんてしてないよ。今日だって靴下左右で違うの履いて来ちゃったし」
花丸「そうなの?」
花丸「…紺色で…同じものに見えるけど」
梨子「色はね、だけどよ〜く見てみて…」
花丸「ふ〜む・・・・・・あっ、縦の線の幅が違うずら!」
梨子「正解!あと実はしっかり伸ばすと長さも違うの」
花丸「へえ〜…どうしてそんな似た靴下持ってるの?」
梨子「同じものを買ったつもりだったけど今日間違えて履いて来て初めて気が付いたの」
花丸「でも本当によく見ないと見分けがつかないし、問題無いんじゃないかな」
梨子「そうだね、でも気が付いた時はすごく焦ったんだよ。みんな実は気が付いてるけど気を遣って黙っててくれてるのかもとか変に考えちゃって、急にものすごく恥ずかしくなって、そのせいか今もまだテンションが変に高くていっぱい喋っちゃうの」
花丸「そういえば梨子さんいつもより饒舌ずら」
42 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 20:58:26.13 ID:YHbU4A+s0
花丸「でも梨子さんってクールなイメージだからなんだか意外かも」
梨子「えっ?…そうなの?」
花丸「みんなそう言ってるよ」
梨子「そっか〜…ねえ、例えばどんな感じでクールなの?」
花丸「えーと、なんか、なんでもそつなくこなす感じがするとか…かな」
梨子「私ってそんな感じする?」
花丸「うん」
梨子「だけど私特に目立つところもないし、どちらかというと…地味っていうか…」
花丸「そんなことないずら!地味じゃないよ。こう…すごい東京オーラが出てるずら」
梨子「と、東京オーラ?」
花丸「梨子さんが練習中歌やダンスを間違えてるとこ見たこと無いし」
梨子「ああ、それは作曲の時点で歌詞を何度も読むし、ダンスも振り付け考えてる所から見てるから」
花丸「なるほど…でもギルティキスでも堂々としてるし」
梨子「それは完全にあの二人に引っ張られてるというか…ユニットに関しては他の皆も十分堂々としてるし」
花丸「確かに改めて考えてみるとそうずら…やっぱり東京オーラが」
梨子「だからなんなの東京オーラって〜」><
43 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 21:02:47.28 ID:YHbU4A+s0
梨子「さっき…ちょっとだけね」
花丸「?」
梨子「クールなイメージのままにしててもいいかなって、考えたの」
花丸「そうなの?どうして?」
梨子「なんだろう…見栄っていうのかな?良く見られたいって思ってるんだと、思う」
花丸「見栄…?」
梨子「例えば、ポトフが好きでよく作るのに、ポトフはシンプルすぎてお料理って言うの恥ずかしいかも?とか、本当に言いたいことと少しずれて喋っちゃう時があるの」
花丸「ああ、名著の引用合戦で無理に意味を通しちゃう時みたいな?」
梨子「ごめんそれ分からない」
花丸「><」
梨子「まあ、つまりはね…」
花丸「?」
梨子「私は花丸ちゃんに良く見られたいし、良く思われたい…ってことなんだと思うの」
花丸「・・・・・・そっかあ・・・」
梨子「それでね、クールなイメージのままにしておこうかなとも少し考えたんだけど」
花丸「うん」
梨子「それじゃあ私が花丸ちゃんのこと良く知れないでしょ?」
花丸「マルのこと?」
梨子「うん。せっかくこうして一緒にいられるんだし、お話しする機会ができて、花丸ちゃんを通して自分の事が見えたりして…そういうのって特別っていうか、なんだか素敵なことだと思わない?」
花丸「…そうかも」
梨子「花丸ちゃんも…」
花丸「マルも、梨子さんのこともっと知りたいずら♪」
梨子「そっか…ふふっ、よかった」
44 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 21:04:40.29 ID:YHbU4A+s0
梨子「よく知りたいと言えば」
花丸「ん?」
梨子「このあいだ、新聞部の人達からインタビュー受けたよね」
花丸「えっ!?あ…あぁ〜あったねえ、ずいぶん急だったからびっくりしたずら」
梨子「確かに急な申し出だったよね。取材の前後もみんなソワソワしてたし」
花丸「そ…そんなにソワソワしてたかな」
梨子「してたよ〜私も…ううん私が一番落ち着き無かったとは思うけど、やっぱり緊張するっていうか不安っていうか…取材中もそうだけど取材が終わったあとも…今もちょっと落ち着かない気分かも」
花丸「…そうだねえ…なんだか気が気じゃないというか」
梨子「インタビューで新聞部の人に色んなこと聞かれて色んなこと答えたけど」
花丸「うん」
梨子「あのインタビューがそのまま記事になったらすごく恥ずかしいなあ…って」
花丸「あ〜…わかるずら…それは本当に、とってもわかるずら…」
45 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 21:05:39.72 ID:YHbU4A+s0
梨子「雑誌とかでインタビュー記事ってあるよね」
花丸「うん」
梨子「みんな質問に的確に答えてて、面白く話を膨らませたりしててすごいよねえ」
花丸「そうだよねえ」
梨子「私、最初の質問で5分くらい関係ない話に脱線したままだったんだあ…」
花丸「あー…」
梨子「どういう風に書かれるのかすごく怖い…」
花丸「マルもね…」
梨子「うん」
花丸「ほとんどの質問への最終的な答えが元の質問と関係ないようなことになってた気がする…」
梨子「あー…」
花丸「自分のことって改めて聞かれると…」
梨子「よく分からないというかはっきりと明言できないよねえ…」
花丸梨子『はぁ〜…』
46 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 21:06:59.17 ID:YHbU4A+s0
花丸「自己紹介とかもね、苦手なんだあ」
梨子「うんうん、私も」
花丸「一応前もって考えておいたりするんだけど」
梨子「うん」
花丸「自分の番が近づいてくると、用意してた自己紹介がおかしな内容なんじゃないかなって不安になって来て」
梨子「すごく分かるよ花丸ちゃん」
花丸「最終的に、趣味は読書です。で終わっちゃうんだ…」
梨子「なんなんだろうね?あの不安感」
花丸「なんかこう、首筋がざわざわってして顔が熱くなっちゃうよね」
梨子「自分の声と胸のドキドキがすごく反響して聞こえるよね」
花丸「それで自分の時だけその場が静まりかえってるように感じちゃって…」
梨子「早く終わらせなきゃって思っちゃう」
花丸「…想像してたらなんだかしんどくなってきたずら…」
梨子「うん…何か楽しいこと考えよう…」
花丸「そもそも人がたくさんいるところで話すのが苦手ずら」
梨子「楽しいこと考えるんじゃなかったの?」
花丸「道半ばで引き返すのもなんだかもやもやするし…」
梨子「今ならまだ間に合うってこともあるかもしれないよ」
花丸「…一理ある気もするずら」
47 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 21:14:53.31 ID:YHbU4A+s0
梨子「楽しいこと…あっそうそう、この前教えてもらった本、面白かったよ」
花丸「ほんと?気に入ってもらえてよかった〜」
梨子「故郷を離れた主人公が新しい土地でたくさんの人と出会って成長していく過程がとっても優しく描かれていて心が温かくなったよ」
花丸「ちょっと狙いすぎてて気を悪くしないかなとも思ったけど、梨子さんに読んでほしいと思ったんだ」
梨子「大丈夫。花丸ちゃんの気持ち、とっても嬉しかったよ」
花丸「えへへ…」
梨子「うふふっ」
花丸「な、なんか、こういうのって照れるね///」
梨子「そうだね。でも、いやじゃない」
梨子「…そうそうあの本の中で特に感動した場面がね」
花丸「主人公が自分の過去を無理に忘れ去ろうとしてたのに気が付いた友人が、主人公の色んな気持ちを全部受け入れた上で背中を押す場面?」
梨子「それも良い場面だったよね〜…新しい土地で出会った綺麗な夜の海を背景に、主人公が友達や今の居場所をより大事に思うようになって…でも、そこじゃなくてね」
花丸「ん〜…じゃあ、新しい土地で知り合った友人たちと一度別れて主人公が一人故郷に戻った時の話?」
梨子「あぁ、そこも良かったよね。故郷で過去の自分と向き合いながら、離れた友達との心のつながりを感じて前に進めるようになる場面。でもそこでもないんだ」
花丸「むむむ……降参ずら。梨子さんはどこが一番のお気に入りだったの?」
梨子「主人公が新しい土地に移ってすぐ、慣れない土地での決まり事や風習に戸惑っているのを見て不憫に思った地元紙の記者さんが、町内報で主人公を取り上げて記事にする場面」
花丸「!…あ、ああー、あの場面…ね」
梨子「あの記事の後、周りに知り合いも無くて、聞くに聞けない状況で四苦八苦していた主人公にみんなが手を差し伸べてくれるようになって…っていう展開が、内浦に越してきた自分に優しく接してくれたみんなと重なってじーんとしちゃった」
花丸「そ、そっかー…喜んでもらえてなによりずら〜…」
梨子「…どうしたの花丸ちゃん?なんだか反応が…」
花丸「ど、どうもしてないずら。大丈夫普通だよ平気平気」
梨子「そう?もしかしたら私の感想が地味で退屈しちゃったのかと思っちゃった」
花丸「とんでもない。梨子さんの感想を聞けて、マルは楽しいよ」
梨子「本当?なら良かった」
花丸「…ちょっとドッキリしただけずら」ボソッ
梨子「えっ?なあに?」
花丸「い、いやあ、なんでもない!なんでもないずら」
梨子「ふうん…あ、ところで花丸ちゃん。物語の本筋とは関わらない部分ですごく気になってるところがあるんだけど…」
花丸「気になるところ?」
梨子「うん。主人公と旅行者の会話の場面で、赤い洗面器を…」
しばらくその本の話で盛り上がった後
話題は元に戻って
48 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/23(土) 21:18:43.88 ID:YHbU4A+s0
梨子「そういえばあのインタビューで花丸ちゃんはどんなことを聞かれたの?」
花丸「え!?えーっと、曲のこととか衣装のこととか…あと、Aqoursの…みんな…の、印象とか…」
梨子「そっかあ〜一緒だね〜…って、Aqoursの紹介記事だし当たり前か」
花丸「そ、そうだね。記事楽しみだね」
梨子「あれ?記事の内容不安だねっていう話じゃなかった?」
花丸「えっ?ああ…えっと、梨子さんとお話ししてる内にだんだん楽しみになってきたというか…」
梨子「ああ〜…それ分かるかも」
花丸「え?」
梨子「ちょっとしたことだけど、不安な気持ちとかを共感できたりして気が楽になったし…今は、花丸ちゃんのインタビューを読むの楽しみかも」
花丸「マルの…うん。ちょっと恥ずかしいけど、梨子さんに読んでもらいたいずら」
後日、新聞部の発行した校内新聞は
『噂の転校生桜内梨子ちゃん特集記事』として
Aqoursを紹介しつつ
Aqoursのみんなの梨子さんに関するメッセージを中心にした構成の
梨子さんに対するサプライズイベントとして発表されました
奇しくも、マルが梨子さんに紹介した本の内容と重なるようなサプライズが企画されて
マルのせいで台無しにしてしまわないかと内心ずっと焦っていたんだけど
校内新聞のサプライズに梨子さんは見事に驚いてくれて
小学生の頃のお話のように泣いてしまっていました
泣いている梨子さんを心配して駆け寄る企画立案者の3年生組
嬉し泣きだと察して笑顔で冷やかしたりしている2年生組
普段のイメージと違う梨子さんにオロオロするルビィちゃんと善子ちゃん
そんな中で、ふと交わる視線で通じ合うように
マルと梨子さんは一瞬だけ 笑いあいました
49 :
◆QjbAJuMwBnbV
[saga]:2019/03/23(土) 21:20:04.70 ID:YHbU4A+s0
次は週末までに
50 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/30(土) 23:58:20.86 ID:8+tFe4FV0
8
花丸「梨子さんってピアノ弾きながらよく鼻唄歌ってるよね」
梨子「ええっ!?」ガタッ
花丸「うわぁっ!?」ビクッ
梨子「…ご、ごめんね大声出しちゃって…なんでそのこと知ってるの?」
花丸「実は音楽室の扉の前でたまに聴いてたり…」
梨子「こ、声かけてくれればいいのに…恥ずかしい…///」
花丸「恥ずかしがること無いずら。梨子さんの歌声は優しくて綺麗だし」
梨子「そ、そうかな?…花丸ちゃんに歌声褒められるとすごく嬉しい♪」
花丸「それにとっても楽しそうに歌ってる姿もかわいかったずら」
梨子「そ、そんなとこまで見てたの?///」
花丸「えへへ…ついつい見入っちゃって…ごめんね?」
梨子「ううん。いいんだけど…やっぱり恥ずかしいな///」
花丸「本当にかわいかったから恥ずかしがること無いのに」
梨子「もうやめて〜///」
51 :
◆QjbAJuMwBnbV
[saga]:2019/03/30(土) 23:59:06.71 ID:8+tFe4FV0
つぎはあす
52 :
◆QjbAJuMwBnbV
[sage saga]:2019/03/31(日) 00:02:39.28 ID:3+CSf/WK0
9
カラオケにて
花丸「〜♪」
梨子「ふふっ♪花丸ちゃんほんとに楽しそうに歌うんだね」
花丸「梨子さんもカラオケ楽しめてるみたいでよかったよ♪」
梨子「はじめは少し恥ずかしかったけどね…花丸ちゃんとルビィちゃんのおかげですっかり慣れちゃった」
花丸「慣れたどころか今は梨子さんの方が楽しんでるような気がするけど?」
梨子「ん〜…そうかも?ふふっ…だけどやっぱり花丸ちゃんの方が楽しんで歌ってると思うけどなあ〜」
花丸「まあたしかにそれは否定できないずら♪」
梨子「で、次はなに歌う?前に来た時にも歌ったこれとか…あ、でもこっちも歌いたいし…」
花丸「やっぱり梨子さんの方が楽しんでると思うずら」
176.61 KB
Speed:0
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)