男「もうそういうのいいから」許嫁「え?」

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1 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 02:32:18.71 ID:Ssq0Iq7VO
日曜、朝

男父「もうすぐ着くって連絡きたぞー」

男母「ほんと?急がないと」

男「ふぁ〜……ねむ」

男母「あんた今起きたの? 早く顔洗って着替えてきなさい」

男「はーい」トコトコ

男(なんで縁談なんか……いつの時代だよ)パシャパシャ

男(だいたい、まだ結婚できる年齢じゃないじゃないか)フキフキ

男(まあいいか……このままだと結婚することもなかっただろうしなあ)ヌギヌギ

男(俺の結婚くらいで守られるものがあるんなら別にいいか)ガバッピシッ

男父「駅まで迎えに行って来るわ」

男母「え、もうそんな近くに? おとこー?」

男「はいはい、ちょうど終わりました」

男母「髪ぼさぼさじゃない、それに服もよれよれだし……制服にしときなさい。髪は……もうしょうがないわ」

男「りょーかい」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1547573538
2 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 02:37:41.86 ID:1UKtzxtK0
15分ほど後

ピンポ-ン

男母「おとこー」

男「はーい」ガチャガチャ

許嫁父「こんにちは、今日はよろしくね」

男「あっ、はい」

許嫁「よろしくお願いします」ペコ

男「あっ、はい。よろしくお願いしま……」

男「…………」

男「……っ」

許嫁「どうされました?」

男「いやっ……あ…………」

男父「ははっ、許嫁さんに見惚れてしまったのでしょうな!」

男「…………」ギロッ

男父「っていうのは置いといて、さあ上がってください」

許嫁父「そうしようかね」

許嫁母「お邪魔しまーす」

許嫁「お、お邪魔します」
3 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 02:39:30.81 ID:1UKtzxtK0
許嫁父「失礼します」ガラッ

許嫁母、許嫁「失礼します」

男母「いらっしゃい。さあ、座って座って」

男「ちょっと親父、許嫁が来るなんて聞いてないんだけど」コソッ

男父「あ?名前なんて言っても分からないだろ……ってあれ?なんでお前名前知ってるんだ?」コソコソ

男「あ、いやっ……あー、なんでもない。とにかくこの事は黙っておいてくれ」コソッ

男父「ああ?うんわかった」
4 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 02:48:16.14 ID:1UKtzxtK0
許嫁「初めまして。**高校2年の許嫁です」

男「初めまして。××高校2年の男です」

男父「ん、はじめまして?……イテッ」

男「…………」ギロ

許嫁父「どうされました?」

男父「い、いえ。許嫁さん、許嫁母さん初めまして、男の父です」

許嫁父「許嫁の父のーーー

男(それからは当たり障りのない話をして30分程が経った)

男(趣味とか、部活をしてるかとか、休日はどう過ごすかだとか当たり障りのない話だ)

男(二人の相性を探るためなのだろう)

男母「いやー、こんな可愛い子くて礼儀正しい子と息子が結婚するなんて」

男父「男には勿体ないくらいだな」

許嫁「いえそんなことないです。男さんこそ私には勿体ないくらい素敵だと……」カアァァァ

男「…………」

男母「ほら、男もなんか言いなさいよ」

男「え、ああ……許嫁さんは素敵です」

許嫁「…………」

男(まあ驚いたことは、もう将来的に結婚することがほぼ確定していることだ)

男(この顔合わせが意味があったのかと思うくらい、俺とそして許嫁の意思とかは関係ないみたいだ)

男(まあ、俺はどうでもいいんだが、許嫁には少しかわいそうだ)

許嫁母「じゃあ、そろそろ」

男父「そうですね」

男母「後は若い二人で」

許嫁父「話して来なさいな」

男「…………」

許嫁「…………」

男母「ほらっ」

男「あ、じゃあ俺の部屋に来ます?」

許嫁「…………」チラッ

許嫁父「そうだな。昼食にする頃に呼びに行くよ」

許嫁「……いっ、行きたい……です」

男「じゃあ、付いてきてー」

許嫁「はい」トコトコ
5 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 02:54:20.86 ID:1UKtzxtK0
男の部屋

許嫁「しつれいしまーす」

男「どーぞ」

許嫁「綺麗ですね」キョロキョロ

男「うん、まあ」

男(このために片付けたし)

許嫁「…………」

男「…………」

許嫁「…………」

男「…………」

許嫁「あっ、あの」

男「ん?」

許嫁「男さんは、この話……結婚相手が決まったって聞いた時どう思いましたか?」

男「うーん、俺は『そうなんだあ』って思っただけだな。親父のためになるならまあいいかな、と」

許嫁「…………」

男「相手の人が気になったし、その人には気の毒だろうなと思ったけど」

許嫁「ほんとですよっ!」ボソッ

男「ん?何か言った?」

許嫁「私だって……私だって恋の一つや二つしてみたかったんですよ。それなのに……それなのになんでこんな冴えない男の子と結婚しなきゃいけないんですか!どうせ勝手に結婚させられるならもっとイケメンで優しくて背が高い人が良かった!って言ったんです」

許嫁「勘違いしないでくださいね。両親を困らせたくないだけですから。あなたもそうでしょう?」

許嫁「だから二人きりの時に変なこととかしないでくださいね!てか話しかけないでください」

男(うっ…………あぁ……まずい…………)

男「…………」クラ

許嫁「あっ、ごめん。話しかけないでは言い過ぎた」

男「…………」

許嫁「男さんは悪くないのに、八つ当たりしちゃって…………」

許嫁「うん、みんな悪くないんだ。悪いのはわがままな私」

男(悪いのは巻き込んだ大人たちだがな)

許嫁「ごめんなさい、男さん」チラッ

男「…………っ…………ああ、うん」

男(はぁ……俺にもまだこんな気持ち残ってたんだな)
6 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 02:59:01.94 ID:1UKtzxtK0
男「幸いにも、たまの休日に会うくらいだからな。数年もしないうちに今の状況が変わるということもあるわけだし」

許嫁「そ、そうですね」

男「親たちにさえばれなきゃいいんだからな。別に恋人くらい作ってもいいぞ」

許嫁「男さんはそれでもいいんですか?このままいくこともあるでしょうし、そうすると浮気に……」

男「結婚することになったらその時考えるべ」

男「それまでは付き合ってるわけでもなんでもない。だから浮気じゃない。オーケー?」

許嫁「おーけー」

男「じゃあ気にせずくつろいでくれ。恋人同士でないにせよ、許嫁同士ではある。仲が悪くなるのはあまり良くないからな」

許嫁「ふふっ、そうですね。あなたが許嫁で良かったかもしれません」

男「ああ、でも許嫁が居ないのが一番ベストだがな?」
7 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 03:00:57.91 ID:1UKtzxtK0
許嫁「…………」ペラ

男「…………」ペラペラ

男(普段はあまり本を読まないが、こうして積んであった本を消化するのもいいな)

許嫁「…………」ペラ

男「…………」ペラペラ

男母「おとこー!そろそろ」

男「はーい」

男「行くか」

許嫁「うん」
8 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 07:25:19.23 ID:1UKtzxtK0


男「…………」ガチャ

男「寝るか」ボフッ

男「でもまさかな……あいつが許嫁とはな」

男「はぁ……まあいいや、寝よ寝よ」
9 : ◆QvmnfoCmUs [saga]:2019/01/16(水) 07:28:14.95 ID:1UKtzxtK0
HRが終わると俺はすぐに教室を飛び出し、階段を駆け上がった。

先に着いておきたかったからだ。

4階から屋上へと続く階段を上がり、屋上へ入ることのできる扉の前まで来る。

いつも通りその扉は閉まっているわけだが、今日は屋上に用があるわけではない。

行き止まりで誰もよりつかない場所というのを求めていた。

案の定、彼女はまだきていなかった。

ふぅ、と大きく息を吐いて呼吸を整える。

俺が着いてから彼女が来るまでは10分程だったろうか。

しかし、まるで1時間くらい待っていたかのように感じられた。

ここに来た直後の熱は冷め、冷静さを取り戻していた。

コツコツ、という音がだんだん大きく聞こえてくる。

その軽やかなリズムに耳を澄ましていると、ひょこっと踊り場に顔を出した彼女が見えた。

黒く綺麗に光ったローファーからすらりとした足が伸び、深い紺色のスカートは膝上ほどまでかかっているだろうか。

踊り場の窓から傾いた太陽の光が差し込み、彼女の表情はよく見えないが、髪に透けて金色に輝いていた。

「突然呼び出してごめんなさい」

思いの外冷静だった。
10 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 07:29:26.07 ID:1UKtzxtK0
トリップミスりました

11 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 07:34:48.32 ID:1UKtzxtK0
「あなたのことがずっと前から好きだったんです。付き合ってください!」

淀みなく口から出たことに一先ず安堵していた。

ぎゅっと目を瞑り、顔を伏せたが、階段の下にいる彼女には俺の表情が丸見えだったかもしれない。

俺が彼女の返答を期待して顔を上げると、彼女は笑みを見せる。

「お気持ちありがとうございます。嬉しいです」

「でも、ごめんなさい。私はまだ誰と付き合うこともできないの」

「だってこと恋がどういうものかまだ分かってないから」

その時、俺には何の感情も湧かなかった。

ただただ綺麗に告白して、綺麗にふられたな、と。

清々しかったのかもしれない。

自然と涙が溢れた。

しかし、何故だか分からない。

この結果が俺にとって最良かのように俺には感じられた。

「あ、あの。これ良かったら」

彼女は桜の刺繍が入ったハンカチを差し出した。

彼女の手に触れて、胸が高鳴る自分にまた悲しくなった。

だか、すべすべとしたハンカチの感触に落ち着きを取り戻した。

「じゃあ、これで。それはいつ返してもらってもいいですし、なんなら貰っていただいてもいいので」

俺は小走りで帰っていく彼女の姿をただただ無言で見送った。

たった数十秒間の出来事であったが俺はこの不思議な感覚にずっと浸っていたいような気分だった。

少し寂しいけど、心の中では晴れやかな。

悲しい小説を読んだ後のような気分。
12 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 07:36:42.42 ID:1UKtzxtK0
男「…………はぁ」パチッ

男「あさ、か」

男(昔の夢を見てしまった。思い出してしまった。許嫁と会った時に頭をよぎったことではあったが)
13 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 07:55:22.90 ID:1UKtzxtK0
登校中

「2番線、ドアが閉まります。ご注意ください」

プシュ----ウゥゥゥ

ティロンティロンティロン

「うおああああ!」

「ふぅ、間に合った」

「おっ、よう男」

男「…………」

「おっ、おい?」

周りの人「…………」ジロ

車掌「えー、駆け込み乗車は危ないですからお止めください」

「…………」ペコペコ

「悪かった、悪かったから男」

男「……おう、なんだ友」

友「さすがに今のはまずかった。お前と一緒に登校したいばかりに」

友「お前に早く会いたかったんだ……」

周りの人「…………」ヒソヒソ

男「…………」

友「…………」

男「…………」

友「こめん。ごめんって」

男(電車から降りたら口をきいてやった)
14 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 07:57:37.77 ID:1UKtzxtK0
友「にしてもお前に許嫁が出来るとはなあ。どんな奴だったんだ?」

男「うーん」

友「お前のこともやっぱし気になってたしな。結婚するかは別にしてもちょっくら付き合ってみるぐらい面白いんじゃね?」

男「俺もな、どうせこのままだったら結婚相手が決まってるのも悪くないと思っていたよ」

友「思っていた……?」

男「ああ」

友「もしかして、そんなやばい奴だったの?」

男「いや、いい子だとは思う」

友「じゃあ……」

男「友もそのうち分かると思う」

友「なんだよそれ」

男「あっ、おーいクラスメイトA!」

A「おう、おはよ」

男「昨日テレビ何見た?」タッタッ

友「おっ、おい」

友(お前テレビ見ねーだろーよ)

友「ちょ、待てよー!」

友(まあいいか。そのうちで)
15 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:00:43.49 ID:1UKtzxtK0
男(そして、日曜日になった。学校でも特に大したことも起きなかった。いつも通りの平日というわけだ)

男(日曜日ということは、あれだ。許嫁と会わなくてはいけない日だ)

許嫁「お邪魔します」ガラッ

男母「あらー、許嫁ちゃんいらっしゃい」

男父「おはようっ!」

許嫁「おはようこざいます」

男「おはよー」スタスタ

男母「あら、あんたがそんな格好してるなんて珍しいじゃない」

男「じゃあ、行くか」

男母「あらー、あらあら?」ニヤニヤ

男父「あれもう行くのかい?もう少し居てくれても」

男母「お と う さ ん ?」

男父「ああ、いやなんでもないんだ。はははっ、行ってらっしゃい」フリフリ

男「ああ、行ってきます」

許嫁「お邪魔しました」

男(そんな簡単じゃないんだよ。ちょっと一緒に居たくらいで好きになるほど簡単じゃないんだよ、母さん)
16 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:02:55.68 ID:1UKtzxtK0
男「…………」スタスタ

許嫁「…………」トコトコ

男「…………」スタスタ

許嫁「…………」トコトコ

男「…………」スタスタ

許嫁「……ぁ……あの……」

男「…………」スタスタ

許嫁「…………」タッタッタッ

男「あれ、どうかしたか?」

許嫁「ううん、なんでもないです」

男「そうか」

許嫁「…………」
17 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:06:29.03 ID:1UKtzxtK0
男「着いたぞ。ここだ」

許嫁「おお……」

男「ここは広いし蔵書の数も多い。しかしそれだけじゃないぞ。市外の人でも利用しやすいんだ」

許嫁「こんなところがあったなんて」

男「それにむこうの図書館だと……」

許嫁「お父様たちにばれてしまうかもしれませんしね」

男「ああ、ばれても何も言われないとは思うが」

許嫁「若い二人がこんなところで何してるんだって話しですね」クスクス

男「そうだな……」
18 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:07:47.19 ID:1UKtzxtK0
許嫁「すごっ。すごいよここ」コソコソ

男「ふふっ。そうだろうそうだろう」

男(この図書館がすごいだけなのに、まるで自分が褒められているようだ)

男(なんか嬉しいぞ)

男「じゃあ12時にここで待ち合わせしよう」

許嫁「はい」

男「よし、じゃあ」

許嫁「うん、また」
19 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:10:41.39 ID:1UKtzxtK0
男「さてと……」

男(俺は専ら小説しか読まんのだよなあ)

男(本棚にもそれしかないし)

男(先週は何も言わず黙々と読んでいたから、図書館っていうのも気をつかわずいいと思ったんだが)

男(許嫁はどう思ってるのだろうか)

男「ふう……こんなものでいいか」

男「やっぱり30pくらいずつの短編集が手軽に読めていいよなあ」

男(普段は本は借りないのだが)

男(返すのめんどいし、買って読んだ本が溜まっていくほうが達成感があるからな)

男(許嫁と関わるかぎり、ここにもまたきそうだしなあ。借りていくか)
20 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:13:14.59 ID:1UKtzxtK0
男「よう」フリフリ

許嫁「あ、借りてきたんですね」

男「ああ、許嫁さんは?」

許嫁「私は借り方がよく分からなくて……」

男「あ、そうか。じゃあ飯食ったらまた来るか?」

許嫁「うん」コクッ
21 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:17:25.46 ID:1UKtzxtK0
カフェ 絆の窓

許嫁「ここって?」

男「ああ、図書館の施設内にありながら、安価でコーヒーなどを飲み一息つける。しかも、ナポリタンやサンドイッチなどで手軽に食事も出来るという万能施設だ」

許嫁「安い、コーヒーが100円!」

許嫁「ナポリタンが300円!」

男「ああ、安価だからな」

男(その訳はハンディキャップのある人が働いているからだ。図書館で一息つきたい人のためにも、彼らの雇用のためにも役立つ。ふふっ、素晴らしい施設だな)

許嫁「ああじゃあ私はこれ>>23を」

男「ああ、安価だからな」

男「じゃあ俺はこれ>>24を」

複数可、口に入るもののみ
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/16(水) 08:21:25.80 ID:90qUlAHB0
スレタイに安価って入れとけよカス
23 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:24:26.65 ID:1UKtzxtK0
くそ、安価ミスった。

>>23>>24

分かると思うけど

安価はほとんど使わないと思います。
24 : ◆Dt4E8frZ9k [saga]:2019/01/16(水) 08:26:58.78 ID:1UKtzxtK0
あー、ごめん。>>25>>26
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/16(水) 11:18:05.43 ID:V+pGRPts0
ナポリタン
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/16(水) 11:37:35.05 ID:v1COrdby0
いなごの佃煮
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