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【モバマス】死の前に一寸、偶像を
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1 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:04:55.77 ID:dPFjdLmPo
塩見周子さんのお話です
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1547474695
2 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:05:23.46 ID:dPFjdLmP0
目が覚めた瞬間、違和感を覚えた。
場所は大丈夫。ここは自分の家の、自分の部屋だ。布団の感触は愛用しているものに違いないし、枕の硬さも感覚が覚えている通り。自分の部屋の匂いなどについて考えることなんてほとんどないけど、そこも別に違和感の発生源ではないだろう。
視線の先にある天井だっていつもと同じものだ。眠れない時に目を開くと、決まってなんだか木目が人の顔のように見えてしまって無性に気味が悪くなる。
いや、確かに天井は自分の部屋のもので間違いない。間違いはない……のだが、そもそもあまり朝に天井を見た覚えがない。いつも目が覚める時は、いつの間にやら横を向いている気がする。……いやいや、そりゃあいつもはそうでも、今日に限って寝相がよくったって何もおかしいことはないか。
それにしたって確かに、今日はなんだか寝相も寝覚めも素晴らしいような気がしてきた。体は完全な仰向けで、掛け布団は少しも傾かず、自分の肩より下を覆っている。ふと、両手を動かそうとすると、どうやら掛け布団の下、自分の胸の前で祈るように重なっているようだった。
よほど深い眠りに落ちていたのかもしれない。まあ、たまにはいいだろう。疲れていただけだ。昨日は何をしたんだっけ。確か……
「……っ!」
ズキン! と、鈍い痛みが頭に走った。思わず声にならない声が口から漏れ出す。
数十秒ほどで頭痛は治まったのだが、今まで感じたことのない痛みだ。体調になんらかの問題があるなら、今日は学校を休むべきかもしれない。どうせ卒業間際なのだから大したことはしないし、ここでサボったからといって卒業を取り消されるなんてこともありえないだろう。ひとまずは時間を確認することにした。
寝る時にはいつも枕元にスマートフォンを置いているから、それを見てみるのが早そうだ。昔は目覚まし時計などを使っていたこともあったが、最近ではもっぱらスマートフォンのアラーム機能に頼りきりになっている。
体を横に向け、枕の右の方をごそごそと探る。しかしなかなか目当てのものの感触はない。手の可動範囲を少しずつ広げていき、さらに探す。
「目が覚めましたか。おはようございます」
声がした。知らない男の声だ。心拍数が一気に跳ね上がる。誰? 誰? 父親の声ではない。これでも十八年はこの家にいるのだ。肉親の声と知らない人間の声を聞き間違えるはずがない。嫌な汗が吹き出す。探し物のことなんて頭の隅にも残っていない。
幸いなことに、まだ何かしらの危害を加えられたわけではない。まずは相手の姿を確認しなければ。鼓動がうるさく、半身を起こす作業に数十分も要したような錯覚を覚える。いや、錯覚ではないのかもしれない。とにかく体が重い。横になっていた時には気がつかなかったのだが。
やっとの思いで上半身を起こす。そのまま、体を、声がした方向へ向ける。ゆっくりと。体はまだ重い。
「怖がらないでください。怪しいものでは……まあ、あるかもしれませんが、あなたに何かしようという訳ではありません。もし私の体があなたに触れた時には、思い切り声をあげてもらっても構わない」
男の口調は落ち着いている。そして、目が合った。
声の割りには顔から受ける印象は若い。しかし二十代ではないだろう、三十と言われても納得できるが、声を聞くと五十手前だっておかしくはない。いや、そんなことはどうでもいい。なぜこの男は自分の部屋にいるのだろうか。目的は何だ? カネか? いやいや、一介の女子高生の部屋に入ってカネを寄越せなんてことはないだろう。資産家の御令嬢の独り暮らしならまだしも、この家はただの和菓子屋だ。
となると目当ては自分か。まあ普通に考えたら目当てはカラダとしか思えない。自賛になるが、顔は整ってる方なのではないだろうかという自覚はある。ストーカーが後ろをつけてきて、自宅を割り出し、不法侵入。まあよく聞く話だ。それにしてもおかしいのは男の服装である。男が着ているのはスーツだった。いや、違う、ネクタイが黒い。ということはあれは……喪服だろうか。外からの光はただでさえ少なく、カーテンの遮光も十分に働いているこの状況において、さすがにネクタイの色が黒なのか、それとも深い紺なのかまではわからない。それ以外の部分で判断するべきなのかもしれないが、生憎、スーツと喪服の違いなんて考えたこともない。
「だれ……?」
掠れた声がようやく喉から顔を出してくれた。もう飲み込む唾も残っていない。これで喋れなかったら、もう全てを諦めて二度寝でもしていようかというところだ。
「塩見周子さん」
ビクッと体が反応する。呼ばれたのは間違いなく自分の名前だ。この男は名前を知っている。無差別ではなく、明確に自分を狙ってここにいる。それと同時に、またしても鼓動が早くなる。何か、恐ろしいモノと対峙しているような感覚が芽生えてきた。
「あなたは、今日、死にます」
3 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:06:36.29 ID:dPFjdLmP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
たちの悪い冗談だ。いや、冗談であってくれ。という方が心情としては正確か。
知らない男が自分の部屋にいるという、それだけでもうキャパシティなどとうにオーバーしているのに。
今、何と言った? 自分が今日、死ぬ?
男は黙っている。こちらの反応を伺っているのかもしれないが、薄暗いこの部屋で、動揺したこのアタマで、それを類推することなど、とてもじゃないが無理だ。
言葉を返すことが出来ない。何を言えばいいのかわからない。まあ、例え言うべき言葉が見つかったところで、この喉では呻き声にしかならないのだが。
「あなたは今日、午前八時二十四分、学校から百五十メートル離れた交差点で亡くなります。死因は出血性ショック死。直接の原因は、居眠り運転のトラックが歩道を歩行中のあなたに突っ込んできたことでーー」
目の前にいる男の口から、次々と言葉が浴びせられる。今の自分の脳が、それを受け止めることなど到底できない。
到底できない、はずだったのだが、なぜか自然と、男の放つ言葉が、その意味が、頭の中に入ってくる。午前八時二十四分に学校近くの交差点。自分は毎日、八時半には教室の自席に到着するようにしている。該当の場所をその時間に通過していてもおかしくはない。いや、もう少し遅いだろうか。まあ、信号にかからずに駅から歩けたのならありうる時間か。
いやいや、そんなことを確かめている場合ではない。どう考えても。
大切なのは、死ぬという事実について。自分は本当に死ぬのだろうか。それは、いくら考えても仕方のないことなのだが。死にたいか、死にたくないかと聞かれればーー
「信じることが難しいだろうということは、理解しています」
こちらの思考が一つの区切りを迎えた、その瞬間に、男が口を開いた。タイミングを伺っていたのかどうかはわからないが。
「回避するために、まず、本日の学校は欠席をお願いいたします。この事故はあなたが原因で起きるものではなく、家にいればニュースとして耳に入るでしょう。安心してください、他に巻き込まれる方はいません」
依然として声は出ない。
「それが証明となると思います。その後でまた、お話ししましょう」
男は話を切り上げようとしている。まだ聞きたいことが。
パチン、と、男が指を鳴らす。
その刹那、周子の意識は途切れ、体は再び、布団へ放り出されることとなった。
4 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:07:36.59 ID:dPFjdLmP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
枕元のスマートフォンが、けたたましい音を鳴らしている。
意識を取り戻すまでに、いつもより多くの時間を要したようだ。
頭が重い。体もやはり、思ったようには動いてくれない。
しかし、あの男と交わした会話は、いや、こちらは返事の一つもできていないのだから、会話と呼ぶべきかはわからないが、なぜか鮮明に残っている。
「夢……?」
声を出すのが、随分と久しぶりのようにすら感じられる。
あの男は、このまま学校に向かえば死ぬと言っていた。こちらとしては、言いなりになって休むのも癪だし、平然と学校に向かっても良いのだが。
「っつぅ……」
いかんせん、頭痛が止まらない。
流石にこの調子では、学校まで辿り着けるかどうかすら怪しいだろう。あの男によるものなのかどうかは判断できないけれど。
ともあれ、今日は学校を休もう。重い頭を無理やり起こすと、台所で朝食の支度をしている母親にその旨を伝える。病院へ行くことを勧められたが、適当なことを言って断ることにした。あの男の予言の真偽を確かめないことには、治るものも治らない。
再び布団に潜り込む。予告された時間にはまだ余裕があったが、かといって何かしようとも思えなかった。
意識があるのかないのか、それくらいの微睡みに身を委ね、時間を確認しては潜り込み、そのようなことを繰り返しているうちに、時間が近づいてきた。
5 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:08:37.89 ID:dPFjdLmP0
「あとちょっと……」
少しずつ、鼓動が早くなる。頭痛を忘れるほどだ。
「あと……」
普段は朝の数分など、一瞬で過ぎてしまうのに。こういう時はどうしてこんなにも進みが遅いのか。
そう考えているうちに、時計は所定の時間を指し示していた。
「……」
少し身構え、数秒、数十秒。
「何も……」
いや、この部屋にいる自分の身に何も起きないのは当然なのだが。どうしても少し警戒してしまう。
あの男の言うことが正しいのなら、今この瞬間、事故が起きたはずだ。しかし、それを確かめる手段がない。
誰も巻き込まれないとのことだから、テレビやネットニュースが速報を流すこともないだろう。
ローカル局の報道を待つのが賢明だとは思うが、そんなに悠長に待つなんて気が狂いそうだ。
どうにか、知る方法はないだろうか。友達に電話を掛ける? いやいや、こちらは病欠の身なのに、怪しすぎるだろう。メッセージを送るにも同様だ。
「……あ」
などと、スマートフォンを転がしながら考えていると、小さな閃きが生まれた。
「確か……あった」
スマートフォンのアプリ一覧を眺めて、目当てのアイコンを探し、起動する。
それは、SNSアプリだった。入学時にインストールして、何人かと繋がったものの、日常の些事を報告するというのはどうにも性に合わずに放置していたのだ。最後に開いたのはいつだろう。パスワードなどを求められたら自信がないのだが。
そんな不安をよそに、すんなりとアプリは起動してくれた。何やらよくわからない、アップデートの表示が出てきたが、全て無視だ。
そうして、投稿を閲覧する画面に辿り着いた。
この瞬間までは、どこか他人事のような意識があったことを否定できない。事故が起きるなんて言われても、まさかそんなことはないだろうと。
なんだかんだで何も起きていなくて、やっぱり夢だったかと布団に潜ることになるんじゃないかと。
画面に映し出されたのは、一枚の画像。それは、毎日自分が通っている道のもの。この後ろに、この前に、どんな風景が続いているのかと聞かれればすぐに、その詳細を答えてみせようと言い切れるほどに、目に、身体に馴染んだ風景。
ただ一つ、違うのは、画像の中央。そこに合成写真のように存在しているトラックは、ひしゃげたガードレールをもろともせず、その前面は強い衝撃で原型を失っており。歩道を完全に塞ぎながら燃え上がっていた。
6 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:09:42.53 ID:dPFjdLmP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
少しずつ、事故の現場に近づくごとに、心臓がうるさく跳ね回るのを感じる。既に一日が経過しているから、今から何かが起きるというわけでもないのに。
何となく、起きた時間に近づくというのは嫌で、早起きをしてしまった。いつもより早く家を出て、最寄りの駅へ向かう。もちろん、何も変わったことはない。いつも通り十分弱で到着し、改札を通過、ホームへ降りる動作をこなす。残念ながら、内心は平静とはほど遠いのだが。
そのまま、登りの路線が走る一番線で電車を待つ。高校の最寄り駅までは時間にして二十分程度。いつもより早い時間だから多少、到着を待つ人は少なく感じるが、それでも街に向かう電車は込み合っていた。反対側を往く電車は空いているのだが、あちらに乗っても車窓の街並みからは建物が消えていくだけだ。最終的には海に辿り着く。
そうこうしているうちに電車が到着した。乗り込み、適当な座席の前でつり革を掴む。稀に座れることもあるが、今日はそういう日ではないようだ。
何気なく耳を澄ましてはみるが、特に事故について触れている人はいないようだった。
そのまま学校の最寄り駅で車内を後にする。この辺から、鼓動が早くなっているとの自覚も生まれてきた。
駅から事故現場は、そう遠くはない。そもそも駅から学校までだって、十分とかからないのだから。
その現場は、あのような事故が起きたにしては、日常の風景を取り戻しているように感じられた。それでも、あったはずの場所にガードレールはない。地面にはタイヤの跡が残り、よく見ればトラックの破片のような、小さな金属質のものも散乱していた。
「……」
どうやら、事故は本当に起きていたようだ。いや、昨日から今日にかけての報道で、そんなことはわかっていたのだが。どうしても自分の目で見ないことには、現実として腹落ちしてはくれなかった。
昨日、あの男の言うことを無視していたら、自分がこの事故に巻き込まれて……
タラリと、首筋を冷や汗が流れる。
首を振り、その先のイメージを頭から追い出す。無理やり足を動かして学校に向かう。立ち止まっていたのは数分だし、登校には少し早い時間だから周子を訝しむ人はいないようだった。
7 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:11:18.48 ID:dPFjdLmP0
教室の扉が近づくごとに、また少し、緊張が胸を包むようになった。もしかしたら自分は既に死んでいて、クラスメイトには見えていないのでは?
もし机の上に花でも置いてあろうものなら卒倒してしまう。いや、今朝は母親と会話をしたし、電車でも他人と何度か接触している。心配することは何もない。
扉に手をかけ、開く、この時間でも、教室には数名の姿が見えた。
「あ、おはよー」
入ると、扉の近くで話をしていた数名の女子が声をかけてきた。
「ん……おはよ」
どうやら、自分のことは見えているようだ。少し安堵する。声が出るか不安だったが、こちらの返答にも特に問題はなかっただろう。もともと、声を張り上げて挨拶するような人間でもない。
そのまま、自席へ移動する。最も廊下側の列、その、前から4番目の座席だ。机の中に置き去りの教科書には、ちゃんと自分の名前が書いてあった。
とりあえず、始業の時間までは何をしていようか。気になるのはもちろん事故のことだが、あまり積極的に情報を集めるのも不自然極まりない。「昨日休んでたから気になって」とか「運転手が実は親の知り合いで」とか、いくらでも言い訳は浮かぶが、あまりウソをつくことはしたくない。
まずは、聞き耳を立てることにしよう。スマートフォンでもいじるふりをして、気になる会話があったら、場合によっては混ぜてもらうのもいいかもしれない。
段々と教室には人が増えていく。その中で耳を澄ませるものの、特に有力な情報は得られない。いや、有力とは何だろう。解き明かしたい謎があるわけでもないのに。ともあれ、気になることは気になるのだ。仕方がない。
「昨日の見たかよ。あのハット!」
「いやいや、あの二点目はオフサイドだったろ?」
「そういうの含めてエースなんだっての」
向こうの男子は昨日のスポーツの話題だろうか。
「あ、おはよー、ずいぶんギリだね」
「おはよ……電車、昨日も遅延してたのに」
あちらの息を切らした女子は、電車に文句を言っている。
「さっき通ったけどさ、ガードレールなくなってたな」
「いや、マジでヤバかったぜ? 燃えててさ、迂回しなきゃ学校行けなかったし!」
「俺も朝練に顔出してなかったらそんくらいに通ってたかもな……あー怖っ」
思わず、顔をそちらに向けそうになる。昨日の事故の話をしているようだ。
そのまま、悟られないように耳を傾ける。
「ま、誰も巻き込まれてないみたいだからよかったけどさ」
「居眠りだってな。運転手も死ななくてよかったじゃん」
「しっかし一日であんなに綺麗になるもんなんだな」
「ちょっと、学校休みになんないかなーって思ってたんだけど」
「めっちゃわかるわ。どうせこの時期なんてやることないし」
「な。あ、今日の帰りさーー」
特に、目新しい情報は得られなかった。誰も巻き込まれておらず、原因は居眠り。報道とも、あの男の予言とも食い違っていない。
どうやら、認めざるを得ないようだ。あの事故は本当に発生していて、自分はそれに巻き込まれるはずだった。しかし、あの男の助言によってそれを回避した。
そのまま、ホームルームが始まった。先生の話など、全くといっていいほど耳には入ってこないのだが。この時期だから、授業もほとんど自習のようなもの。もちろん、勉強などとてもじゃないがやる気にはならない。適当にペンを握りながら、昨日のことを思い出していた。
8 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:12:14.50 ID:dPFjdLmP0
SNSで事故を認識した後、何もする気力が起きず、夜まで意識を落としていた。目を覚ましていると、色々、考えてしまいそうだったから。
夕食を済ませた周子が自室へ戻ると、図ったようなタイミングでスマートフォンが着信を告げた。表示されている番号に見覚えはなく、登録されているものでもない。
しかし、直感的に理解していた。あの男からの連絡であると。
ひとつ、ふたつと呼吸を整え、着信を受け取る。耳に当てるのと、相手の声が響くのは、ほぼ同時であった。
「こんばんは。今、お時間よろしいですか?」
「……うん」
結論だけ掻い摘んで言えば、自分はこの男に命を救われたことになる。それに、ただでさえ底の知れない相手だ、話を聞かないことには始まらない。
「ご理解していただけましたか?」
「……イヤでもね」
「”なぜ助けたのか”と、疑問に感じていらっしゃるかと思います」
まさに。話が早い。
「そのことも含めまして、一度、お会いして話をさせてください」
「……わかった」
断っても仕方がない。その場合は、またしても不法侵入を許すことになりかねない。
「では明日、学校の帰りにこちらの事務所までお願いします。場所はーー」
9 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:13:46.64 ID:dPFjdLmP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
指定された住所は、学校の最寄り駅からさらに三駅ほど進んだ場所にあった。つまり、学校帰りに家とは逆の方面に乗り込んだことになる。親には帰宅が遅れる旨を連絡済みだ。
大通りから路地をひとつ入り、目的のビルを見つけた。事務所は三階のようだ。
ドアの隣のインターホンを押して反応を待つ。多少の不安と緊張はあるが、吹っ切れた思いもある。
しばらくして、開いたドアの向こうに、あの男の姿を捉えた。
「お久しぶりです」
男は深々と頭を下げる。
「応接室へどうぞ」
こちらの返事は待たずに、近くの部屋のドアを開け、入るように促してきた。
その部屋には小さな机が一つと、それを挟み、向かい合うような形でソファが二つ置いてあるだけのシンプルな部屋だった。
周子が片方のソファに座ると、向かい側の男も腰を下ろした。
「本題から入ります」
男は、真剣な眼差しでこちらの目を見つめてきた。冗談は通じなそうだという印象だ。その口から、どのような内容が飛び出すのか。少しの恐怖心も生まれようとしていたが。
「アイドルに、なりませんか?」
「……は?」
冗談だろうか。
「冗談ではありません」
「……心読むのやめてくれない?」
「すみません。皆さん、そう仰られるので」
「そりゃ……」
まあ、そうだろう。意味がわからない。
「嫌だって言ったら?」
「その場合は、仕方がありません」
「あれ、断れるんだ」
「はい、その場合は……死んでいただきます」
「死ん……え?」
言葉の意味を飲み込むのに、少し、時間を要した。
10 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:14:28.92 ID:dPFjdLmP0
「申し訳ありません、言葉足らずですね。正確には、記憶を戻して、死ぬはずだった日の朝へ戻っていただきます」
「戻るって……」
”アイドル”という、思いの外ファンシーな言葉で解かれた緊張は、”死”という、最もファンシーとは程遠い概念によって呼び戻されていた。
死ぬはずだった日の朝に。ということはつまり。
事故の現場を思い出し、両手が鳥肌に覆われる。
「我々の仕事は、『不慮の死を遂げてしまった女性に、その死を回避する代わりにアイドルとして活動してもらう』というものです。アイドルになって頂けないのであれば、助けたという事実も無くさなければいけません」
「……それ、脅迫ってやつじゃないの?」
「いいえ、脅迫ではなく、取引です」
「……アイドルの理由は?」
「私がアイドル部門の人間だから。と、それ以上の理由はありません。活躍の道は様々ですが、周子さんにはアイドルが向いているという判断です」
男が名刺を取り出し、こちらへ手渡してきた。そこには確かに『プロデューサー』という肩書きが付随している。
「……アイドルになれば、死なないで済むんだ」
「はい……いえ、正確には、なれれば、ですが」
「……なれれば?」
「この話を受けていただける場合、まずはこちらの契約書にサインをしていただきます」
男が書類を取り出し、机の上に展開する。
「サインをいただくと、周子さんは研修生としてこの事務所に籍を置くことになります」
「研修生……?」
「はい。研修の期間は一年間。そして一年後に、アイドルになれるか否かの判断が行われます」
「判断……基準は?」
「ありません」
「……ないの?」
「”コーヒー1杯100円”」
「……は?」
「高いと思いますか?」
「いきなり何……? 安いと思うけど」
「では、今が戦後なら?」
「戦後?」
「はい。戦後のコーヒーはおおよそ5〜10円です。その当時なら100円のコーヒーは異様に高価です」
「……何が言いたいん」
要領を得ない話は得意ではない。
「正確には、基準がないわけではありません。”アイドルになるにふさわしい実績を残したか”というものはありますが。それは時代によって、その瞬間によって変化します。同じ時期に有力なライバルがいるだけで、仕事の量は減ってしまいます。その辺りの外的要因も含め、総合的に判断させていただきます」
「……なるほどね。それじゃあ、一年間こき使った後に『あなたはダメでした』って放り出すこともできる」
「……我々は、皆さんの努力と、結果に対して、真摯に向き合うことを徹底しています。そのように捉えられてしまうのなら、残念ではありますが」
「途中で辞めたり、基準に到達しなかった場合は……」
「想定したい事態ではありませんが、その場合にも、死ぬはずだった日の朝へ戻っていただくことになります」
「……やっぱ脅迫だね」
11 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:16:13.71 ID:dPFjdLmP0
「サインは、今この場でなくても構いません。大まかに、一週間くらいはお待ちいたしますので」
「ってか、この事務所、けっこう寂れてるけど、大丈夫なの?」
「その点については問題ありません。ここは全国各地にある、契約や面談のためにのみ用いる場所です。東京の方には本社があり、主な拠点はそちらになります。規模もそれなりと思っていただいて構いません。寮で暮らすことになりますので、上京という形にはなりますが」
「ふぅん……」
軽くため息をつきながら目を閉じる。一旦、思考を整理する必要があった。
その間、男は口を開かない。命を天秤にかけさせているという意識があるのだろうか。『真摯に向き合う』というのもあながちウソではないのかもしれない。
「……おっけ」
「難しいようでしたら、一度お持ち帰りいただいても」
「ううん」
男のセリフを遮るように、書類と、ペンに手を伸ばす。その勢いでブランクを埋め、書類を男に向けた。
「……はい、これでいい?」
「……」
男は少し、面食らっているようだった。思えば、この男の顔におおよそ、表情と呼べるようなものが浮かんだのは初めてかもしれない。それだけでも、即断の価値はありそうだ。
「差し出がましい問いにはなりますが……」
「親の同意とか?」
「……はい」
「へーきへーき。どうせ卒業したらどうするんだって言われてたし? 実家でゆっくりしようって思ってたけど、いつ追い出されるかもわかんないもん。そう考えるとこれ、渡りに船、みたいな?」
けらけらと笑い声が漏れる。まあ、本当のことなのだから仕方がない。『東京のでっかいとこのプロデューサーにスカウトされた』と説明すれば、多少は親の溜飲も下がるだろう。何の目的もなくバイト生活を送りますだなんて言うよりは数百倍マシだ。
「……」
「どうかした?」
「いいえ、特には」
「あ、やっぱ、みんな即決なんてしない感じ?」
「……そうですね。一旦は皆さん、落ち着くために持ち帰る方が多いので」
だから驚いていたのだろうか。いや、普通に考えたらそれが当然なのだが。
「あたしの予想、言っていい?」
「……予想……ですか?」
「『殆どは持ち帰るけど、結局ほぼ全員がOKする』でしょ?」
「……その通りです」
「やっぱりね。これが水商売とかならまだしもね。一年の猶予が貰えるならって、そりゃそうなるでしょ。持ち帰るだけ時間の無駄だと思うよ?」
「話が早くて、非常に助かります」
「あ、でも、アイドルとしての才能とか、期待しちゃダメだよ? シューコちゃん、その辺よくわかんないし、飽きっぽいし?」
「いえ、心配はありません」
「ん……?」
随分とはっきりと言い切るものだ。よほどプロデュースに自信があるのだろうか。
「ま、いいけど……」
「それでは、今後の動きについて説明いたしましょう。周子さんは卒業を控えていると思いますので、上京はその後になります。それまでに、別途、必要書類にーー」
12 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:17:45.01 ID:dPFjdLmP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
予想通り……と言うのはいささか悲しいやら寂しいやら、なのだが、親から反対意見が出ることはなかった。事務所の規模も、自分が知らなかっただけでかなり大きそうだ。
学校は無事に卒業できたが、周囲からの「進路はどうするの?」という質問には、特に答えなかった。親にも口止めをしてある。だって、恥ずかしいし。アイドルになるために上京しますなんて。売れないで地元に戻った日には、それはもう居場所がなくて悲惨な……いや、そのパターンは考えなくていいんだった。幸運にも。違う、不幸にも、か。
大き目のキャリーバッグに荷物を詰め込む。親が海外のどこかに旅行した時に使ったものらしく、餞別代わりにくれるとのこと。ま、売れっ子になって全国を飛び回るようになったら改めて、感謝の言葉でも送ろうか。
新幹線を最後に使ったのは……そうだ、修学旅行。あの時は周りに友達がいて、行先も、予定も、帰りの時間まで、全てが決まっていた。しかし今回はその対極だ。自分一人で、この先どうなるかもわからず、持っているのは片道切符。
不安な思いもなくはないのだが、まだ抱くには早すぎるだろう。マイナスの感情には無視を決め込み、新幹線の旅路を進んでいった。
「お疲れさまです」
改札を出ると、人がとにかく多い。いや、こちらの出発地だって西の大都市だ。きっと、見慣れない風景のせいで映る人々が多く見えるだけだ。
と、自分に言い聞かせていると、声を掛けられた。
「よく見つけられるね」
「そういう、職業ですので」
「ふうん?」
まあ、見つからなければ電話を掛けるだけだ。
「まずは、寮へ案内します。着いてきてください。ICカードはこちらを」
準備が良い。軽く頭を下げながら受け取る
「寮から事務所への定期券は既に入っています。今後はご自身で更新とチャージをお願いします」
「おっけー」
研修生の立場でも賃金が発生することは既に確認済みだ。思えば、随分破格の待遇だとも感じるが。
「あ、ひとついい?」
「はい、どうしましたか」
「これからよろしくね。プロデューサー」
「……はい、よろしくお願いいたします」
そう言うと、男は……いや、プロデューサーは顔を背け、歩を進めていった。照れてるのなら、少しは可愛げがあるとからかうのも悪くないが。
「まあ、まだそこまでの距離感じゃないね」
呟きながら、背中を追うことにした。
新幹線の到着駅からいくつかの電車を乗り継ぎ、寮の最寄り駅へ辿り着いた。正直に言うが、乗り換えは全くもって頭に入らなかった。これが首都の鉄道ネットワークか。到着駅で路線図を眺めながら首を傾げる。
「何か問題がありましたか」
「ううん、おのぼりさんはつらいなあ。ってね」
「……京都がその括りに入るのかどうかは難しいところだと思いますが」
「東京だって田舎はあるでしょ? おんなじだよ。さ、いこっか」
13 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:18:31.07 ID:dPFjdLmP0
そうして辿り着いた寮は、一見、ただのマンションと見間違える建物であった。
「はい、寮として、事務所が一棟、借り受けていますので」
なるほど、それなら納得だ。
「エントランスはオートロックになっています。こちらがその鍵で、もう一本がお部屋の……」
二本の鍵をこちらに手渡しながら説明をしていたプロデューサーだったが、エントランスから人の気配を感じると、一旦口を閉じた。
自動の扉は、内側からなら鍵を使わずとも開く。いや、当然のことかもしれないが。
「あら、お疲れ様」
出てきた人物の顔を見て、周子はただ単純に、驚いていた。美人だ。それ以外に感想がない。
寮から出てきたということは、アイドルだろう。流石にあの顔で事務員だとしたら、この事務所の連中の目はは節穴だ。
「お疲れさまです。本日は……」
「ええ、オフだけど、自主レッスンに」
「わかりました。くれぐれも、遅くなる前には」
「もちろん。わかっているわ」
年齢は、周子と同じくらいだろうか。いや、年上に見える。髪は周子と同じくらいの長さで、軽く青みがかっている。中央で二つに分かれた前髪が印象的だ。
「……あら」
その女性がこちらに気が付く。軽く会釈をされたので、こちらも会釈を返す。顔を上げた時には、向こうの目線はプロデューサーに戻っていた。
「そっちは……」
「はい、新しい方です」
「そう。二人目ね」
「そうなります」
「よろしく」
「えっ、あ、よろしゅう……です……」
急に声を出したので、素が出てしまった。特に笑われる様子がないのが幸いだ。
「それじゃあ」
「はい」
彼女はそう言うと、軽い足取りで寮を後にした。
「……あの人もアイドル?」
「いえ、周子さんと同じ、研修生になります」
「あ、そうなんだ」
「ちなみに、周子さんの一つ下になります」
「……ぇ年下!?」
……この叫びが聞こえていないことを祈ろう。
14 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:19:09.16 ID:dPFjdLmP0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
人間というのは、褒められることに弱い。それは、誰しも持っている願望だ。努力したらその分だけ褒められたい。努力をしていなくても、自分は努力抜きにこんなにもできるのだと、褒められたい。そういうものだ。
なぜこんな話を急にするのか? それはもちろん。
「素晴らしい成績ですね。ダンスは言われたことをすぐに吸収できていますし、歌唱力も申し分ありません。何か経験が?」
「い、いやあ、別にないけど……」
現在、絶賛褒められ中だからに他ならない。
プロデューサーは手元の資料に目を落としつつ、こちらに言葉を投げかけている。大方、トレーナーさんからの報告書とか、その辺りだろう。
思えば、これは作戦なのかもしれない。歌もダンスも経験のない自分が、恐らく数多くのアイドルを見てきたであろうプロデューサーの目から見て、そんな上等な成果を残せているとは思えない。しかし、しかしだ。もしかしたら本当に。自分には才能があるのかもしれない。昔から器用な方だと思っていたし、友人と通ったカラオケの点数も悪くなかったし。いやいや、カラオケなんかとプロの歌唱を一緒にしては……。
入寮を済ませてから、おおよそ一か月が経過したこの日まで、周子は基礎的なレッスンをこなす日々を送っていた。
もちろん、楽なものではない。これから自分は、この仕事で生活をしていかなければならないのだから。
それでも、「こんなものか」と、思わないこともなかった。案外、適応できているのではないだろうか。いや、まだ仕事をしていないから結論など出ないのだが。
「技術的には、このまま順調にレッスンを積んでいけば、一年後には間違いなく、求められる基準に達するでしょう」
「……」
「どうかしましたか?」
「……いや、そんなこと言っちゃっていいの? あたし、調子乗ってサボるかもよ? レッスン」
「例えサボろうとも、基準に達すれば、問題はありません」
「そんなん……」
「ですが」
「え?」
「そうですね。確かに、周子さんの歌も、ダンスも、このままで十分な技術には達しますが……アイドルに必要なのは技術だけではありません」
「……どういうこと?」
「世の中には、今の周子さんよりも歌が下手で、今の周子さんよりダンスも劣っているのに、それでも、大きく活躍しているアイドルがたくさんいます」
「何で?」
別に反発しているわけでも、怒っているわけでもない。単純に、興味があった。
「わかりません」
プロデューサーは言い切る。悪びれる様子もないのだから、本心なのだろう。
「わかんないって……」
「反対に言えば、それがわかるのならプログラムに織り込みます。ヒトの目線を、興味を、関心を惹くものはいったい何なのか。これは永遠の課題です」
「……そういうもんなんだ」
「はい。……それでは、話を戻します。技術以外の部分を補うための、周子さんの今後の方針について」
「……」
流石に、このままずっとレッスンだけしていればいいなんて、そんな都合の良いことはないようだ。どんな難題を課されるのか? こちらは「歌もダンスも上手い」とおだてられたばかりだ。変に心を砕くのはやめてほしいのだが。
15 :
◆5AkoLefT7E
[saga]:2019/01/14(月) 23:20:14.98 ID:dPFjdLmP0
「現在、この事務所には、周子さんを入れて三人の研修生がいます。その内の一人が、もう二か月と少しで判断の時を迎えます」
「それって……この前の?」
「ああ、そうですね。あの時にすれ違った方です。あれから顔を合わせたことは」
「ううん、ない」
同じ寮に住んでいるとは言っても、つまり向こうは既に半年以上も活動をしてきた、アイドル直前の存在だったわけだ。ひと月くらい行動時間が合わなくてもおかしなことはない。
「周子さんは夕方から夜にかけてのレッスンが多いですから」
「……へ? それ関係ある?」
「ああ、いいえ」
「?」
「あの方の名前は、速水奏さんといいます」
「速水……」
そういえば、寮の郵便受けにそのような表記があった気もする。
「彼女の最終判断は、再来月のライブで行おうと考えています」
「ふぅん……」
「そのライブの、サポートメンバーとして準備と活動をお願いいたします」
「サポートって……何をすればいいん?」
「バックダンサーとしての出演と、場合によってはデュエットで歌っていただく可能性もあります」
「デュエット……いやいや、二か月で? 無理無理!」
「いえ、周子さんなら可能です」
「んな、何を根拠に……だって、判断ってことは、あっちだって、それ、ダメなら……」
「……そうなります」
「……」
「もちろん、周子さんの完成度は確認してからGOサインを出します。いずれにせよ、バックダンサーとしては出ていただきますが」
「……わかった」
「心配ありません。奏さんも、非常に才能に溢れた方です。ほぼ間違いなく、アイドルになれる実力があるでしょう」
「……それならサポートとか、いらなくない?」
「はい」
即答だ。しかし、大抵その後には「ですが」と続く。
「ですが」
やっぱり。
「奏さんのパフォーマンスを見ることは、周子さんにとって、必ず、プラスになります」
「……そうなんだ」
プロデューサーが言うからには、そうなのだろう。まだ信頼しているというわけではないが、いちいち疑ってかかるのもカロリーが高い。そのような生き方は好きではない人間だ。
「ひとまずは、おふたりでのレッスンを組みます。息を合わせることを目標に、お願いいたします」
「……荷が重いね」
「重要なことです。……奏さんにとっても、きっと」
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