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【艦これSS】不器用を、あなたに。
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175 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/14(木) 01:36:20.38 ID:17oph7spO
明石は何も言えなかった。
いつもはとても話の弾む同僚との沈黙が続く。
もし自分が、悩みを綺麗に消す魔法の薬を作れたなら、などとありえもしない事を考える。
でも、そうだったら、こんな苦しさは最初から現れずに済んだのだ・・・
176 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/14(木) 01:39:07.11 ID:17oph7spO
〜
山城「(そういや明石が言ってた右の砲身を見ろ、って何かしら)」
指示通りに右の砲身を見る。
最初は砲身内部について言ってるのかと思ったが、やがて外側の付け根付近の横側に黒の細いマジックで何か記してあるのを見つけた。
「12/8に再発、軽度と推測」
山城「...」
山城「(...こじつけっぽくなるけど...言われてみればそうだったかも...)」
しばらく考えを巡らす。
そして明石の気遣いに心の中でお礼を言い、新しい主砲を手にして演習場へ向かうのだった。
177 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/14(木) 01:39:45.90 ID:17oph7spO
今回はここまでです
いつもずるずると投下時間遅らせてて本当に申し訳ない限りです
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/14(木) 10:44:18.19 ID:Lza0wqucO
乙
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/14(木) 12:35:50.62 ID:JpqHxvdAo
おうー
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/14(木) 14:27:27.83 ID:BR/4kp16O
このss凄い先が気になる
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/19(火) 02:12:17.80 ID:nxKzR0Wi0
めっちゃ気になる
楽しみに待ってます
182 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:46:13.93 ID:WzqKT6fXO
今日は電ちゃんと古鷹さんの誕生日ですね!おめでとう!
投下を開始します
183 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:46:53.86 ID:WzqKT6fXO
同日19:00 食堂への廊下
暁「今日はお夕飯何があるかな〜」
響「私はボルシチにしよう」
雷「響それ毎日言ってるじゃない...」
電「しかも出てきた事ないのです...」
響のお決まりのジョークで和みながら、暁型4人は食堂を目指していた。
少しして食堂のすぐ近くまで来ると、何やら中が騒がしいことに気づく。
184 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:48:04.81 ID:WzqKT6fXO
雷「なんかいつもよりうるさくない?」
電「叫び声が聞こえるような...」
暁「食事中はおし...おしやか...あれ?...。と、とにかくお静かにするべきだって熊野さんも言ってたわ!」
響「お淑やかって言いたかったのかい?」
暁「そう!それよ!」
電「ちょっと見てみるのです」
使いたかった言葉が分かってスッキリした暁はさておき、喧騒が気になる電は少し先行して食堂に入ろうとした。
185 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:48:33.80 ID:WzqKT6fXO
ちょうどその時、甲高くも非常に強い怒鳴り声が響き渡った。
「言いがかりはやめてくんない!?」
186 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:49:24.06 ID:WzqKT6fXO
空気が振動するようなその怒声に気圧され、暁や雷は思わず震え立ち止まってしまった。
響「満潮の声か...」
電「またなのです...」
早足で食堂に入った2人が見た光景は、山城と彼女を特に嫌う者達との喧嘩であった。
だが喧嘩というには少し深刻すぎる状態だ。
残念なことに、この鎮守府ではそれほど珍しくはないのであるが。
187 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:50:31.15 ID:WzqKT6fXO
山城「言いがかりじゃないわよ、私はもっともな事言ってるもの」
夕立「人の粗探しがもっともな事だなんて、クズは考えることが違うね」
語尾を見るに、夕立はすっかり対山城モードのようだ。
山城「あら、それなら普段私に対して舌打ちと嫌味しか言えないあんたらも同じね。クズ仲間が増えて嬉しいわ」
満潮「は?」
夕立「お前と一緒にすんな」
飄々とした山城の返答の度に、2人はますますヒートアップしていく。
188 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:52:02.64 ID:WzqKT6fXO
最上「煽りでも不幸戦艦の口から「仲間が増えて嬉しい」なんて、ボクの腹筋を破壊するつもりなのかい?」
一方でこちらはケラケラと笑いながら嫌味な皮肉で応えている。
村雨「うふふ、不幸が唯一のお友達というのはさぞかし堪えるんでしょうね」
白露型からは村雨も援護に来ていた。彼女は夕立と並んで、時雨より先に着任した白露型のたった2人のうちの1人だったりする。
時雨「そもそも舌打ちされて嫌われるのは当たり前だよね。今更何言ってるんだい?」
そして時雨もこれらに続く。
189 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:53:16.14 ID:WzqKT6fXO
山城「私はアンタらが粗探しと言って脆弱な部分から逃げようとしてることを皮肉ってるだけよ」
山城「というよりお仲間ごっこの茶番ばっか気にする使えない奴らを仲間にして何になるってのよ」
夕立「...今なんて言った」
山城「何度も言ってるじゃない、昔の艦隊だとか絆が何なの?」
山城「それが具体的にアンタらの能力を引き上げるの?」
山城「大した個人能力無いくせにそんなのを持ち上げて強くなった気でいるから仲間ごっこだって言ってるのよ」
最上「てめぇ...!」
190 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:55:29.04 ID:WzqKT6fXO
山城「特に西村艦隊なんて、苦し紛れの寄せ集めでしょ?そんなのに絆だなんて馬鹿じゃないの」
時雨「...っ!」
時雨だけでなくそこにいる全ての艦娘の顔つきに、一層の憎悪が表れた。
特に西村艦隊の面々はこの上ない怒りに支配され、顔を紅潮させている。
・・・先程から彼女らのすぐ後ろで山城を睨み付けるのみで留まっている扶桑だけが、唯一冷静な振る舞いを辛うじて保っていた。
山城「ノスタルジックにおままごとに執着するなんて...哀れね...」
満潮「ざけんなっ!クソ不幸艦っ!」
時雨「それを言うなって...言っただろっ...!」
自身の大切な艦隊の記憶を貶されて、ついに我慢ならなくなった満潮や時雨は山城に殴りかかった。
191 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:56:35.49 ID:WzqKT6fXO
電「行ってくるのです」
少しだけ静観を決め込んでいた電であったが、これ以上は無理矢理にでも収束させるしかないと決意したのか、いつも通り仲裁をしに行く。
雷「き、気をつけなさいよ...」
その時だった。
手を出しかけた彼女達を扶桑が引き戻したのだった。
扶桑「“仲間”との団欒を邪魔しないで貰える?」
睨んだ顔ではあるが、冷静を維持していた扶桑がついに割って入った。
今しがた山城が否定したものをあえて再度使う辺りに、扶桑の内心に燃え上がる怒りが垣間見える。
192 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:58:12.01 ID:WzqKT6fXO
扶桑も山城のことを毛嫌いするが、無闇に大きなトラブルとするのを良しとしない。
それゆえ扶桑の基本姿勢とは山城をスルーすることであり、他の山城を憎む者達もある程度ではあるが、スルースキルが身についてきた。
とはいえ今のように完全に嫌味な挑発を受ける場合でも安易に乗らないのは、もしかしたら扶桑くらいかもしれない。
・・・それに扶桑とて冷静を装う程度で、挑発の度合い次第では今のように嫌味で応酬する。
いずれにせよ仲裁しに行こうとした電は、とりあえずは扶桑に事態の収拾を委ねた。
193 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 11:59:24.20 ID:WzqKT6fXO
山城「流石は姉様です。感情に振り回されてすぐ手が出るガキとは違いますね」
挑発されて、扶桑に腕を掴まれている2人はまた爆発しそうになる。
扶桑「時雨、満潮。落ち着きなさい」
満潮「なんでよっ...!」
時雨「...離してっ!」
扶桑「満潮は午後演習もやって疲れてるのに明日だって朝早く遠征があるのだから...」
満潮「それはそうだけど...」
ルームメイトがつまらぬ事でコンディションを崩したりしないように気遣う扶桑。
その落ち着いた口調が場に沈静をもたらし始める。
194 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:01:31.13 ID:WzqKT6fXO
扶桑「それにさっき夕立から聞いたけど時雨だって昨日あたりから体調悪いんでしょ?」
そう言って時雨の方を少し見る。
時雨「...それは大袈裟だよ、ちょっと寝不足だっただけなんだ」
時雨も、そして喧嘩に参戦した者達も興奮が冷めてきた。
のだが・・・
山城「寝不足でコンディション悪いなんて呆れるわね...時雨が負けるまで夜通しババ抜きでもしてたとか?」
村雨「っ!」
夕立「お前っ...!」
今度は姉妹艦への嫌味を瞬時に理解した彼女らが爆発する時だった。
195 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:03:11.22 ID:WzqKT6fXO
しかし扶桑を見習ってか、仕方なさそうに嫌々とではあるが、最上が2人を止める。
最上「ボクもあいつ殴りたいけど、ここは扶桑に従っておこうよ」
彼女らはそれでも納得がいかないという顔である。
時雨はといえば、少し山城を睨みつけ1度軽く深呼吸をして自身を落ち着かせた。
時雨「扶桑、心配しないで。一昨日は遠征帰りが夜遅かったからそれで生活リズムが崩れてね...」
そう言いながら時雨は何か思いついてにやけ顔になる。
196 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:04:30.07 ID:WzqKT6fXO
時雨「昨日も夜に“仲間を祝う”パーティーがあったから、生活リズムの乱れを今日も治せてないだけなんだ」
扶桑への事情の説明と共に、ちゃっかり先程の仕返しも含ませた時雨。
夕立「誰かさんも居なかったから素敵なパーティーだったっぽい!」
夕立もここぞとばかりに借りを返す。
時雨「それで昨日の朝にダルそうにしてた僕を夕立が心配してくれて、一応明石のとこに連れてってくれただけさ」
満潮「夕立って意外と気が利くのね」
夕立「意外とって失礼っぽい!」
軽口を言う余裕も出てきたようだ。
197 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:05:50.20 ID:WzqKT6fXO
扶桑「そうだったのね!じゃあ今日こそ早く寝て万全な状態にしなさいね」
時雨「そうするよ」
扶桑の誘導もあって、今度こそ彼女達は平静を取り戻し始めた。
激しい憎悪で剥き出しのこの場も、ひとまずは収束へと向かったようだ。
最上「じゃあボクは食事を取りに行くよ、あそこで日向達が待ってるし」
どうやら瑞雲愛好仲間と食事を約束していたらしい。
198 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:07:12.95 ID:WzqKT6fXO
夕立「夕立たちも早くご飯食べるっぽ〜い!」
白露型も最上に続く。
満潮「扶桑、私たちも席取るわよ」
扶桑「...そうそう、はっきりさせておくけれど」
しかし意外にも扶桑だけは事態の収拾に抗った。
満潮は思わず目を見開く。
皆の注目は、今、この姉妹のみに向けられた。
扶桑は山城の前に立ちはだかったまま言葉を続ける。
199 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:08:08.85 ID:WzqKT6fXO
扶桑「私は碌でもない人とは完全に縁を切る事が最善だと思ってるの」
扶桑「だからこの子達が暴走しないようにって止めてるのも、そもそも関わって欲しくないからなのよ」
山城「...理性的な考えで素晴らしいですね?」
嫌われてもなお扶桑のことを「姉様」と呼んで(勝手に)慕っている山城でさえ、その言動の意図が掴めないようである。
先程まではヒートアップしていた当事者達も、固唾を飲んで扶桑が何を言うつもりなのかを見守っていた。
200 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:09:40.58 ID:WzqKT6fXO
扶桑「単刀直入に言うわ。わざわざ相手が一番怒るようなことを引き合いに出して煽るのはやめてくれない?」
扶桑「それがお互いのためよ」
力強く、そして突き放すような冷たい口調で、扶桑は山城に要求をする。
山城「姉様、私は向こうが煽るから私も煽ってるだけですよ?」
扶桑「嫌味なんて慣れてるくせに、よく言うわ」
扶桑の表情は先刻と変わらない。
201 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:11:08.04 ID:WzqKT6fXO
扶桑「それに自身のせいで嫌われておいて、いざそれに我慢ならなくなったら相手に突っかかるだなんて、本当に救いようの無い性悪ね」
山城「それなら気に食わない考え方をするからといって集団で激しく罵倒しておいて、突っかかられるのは嫌だなんてのもおかしな話ではないですか」
扶桑「...つまりやめる気はないのね?」
扶桑が睨みつけながら問い詰める。
山城「...姉様に逆らうということだけは気が引けますが、やめる道理がありませんから」
扶桑「そう...残念だわ」
そう言って扶桑はほんの少しだけ下がった。
202 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:12:09.04 ID:WzqKT6fXO
そして次の瞬間。
食堂に響き渡る無慈悲な音と共に、山城が大きく態勢を崩した。
予想外の展開に、食堂全体の空気が凍りつく。
203 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:13:02.68 ID:WzqKT6fXO
山城「っ...」
山城は左側の頬を抑えている。
・・・あの扶桑が、容赦なく山城の頬を叩いたのであった。
満潮「...ざまぁみろ」
時雨を始めとした強く山城を憎む者達はその扶桑の制裁に強く同調し、溜飲が下がる思いだったようだ。
食堂に居るその他大勢の艦娘とて、その程度に差はあれど、ほとんどが彼女達と思いを共有していた。
204 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:14:41.41 ID:WzqKT6fXO
電「...やっぱり行ってくるのです」
一方で電はといえば、やはり彼女の方針に基づき、山城を助けに行くのである。
その言葉に、一緒に序盤から騒動を見てきた響、とっくに追いついて再び合流していた暁と雷はコクンと頷くしかなかった。
電「先に席を取っておいて欲しいのです。それと電が遅くなるようだったら気にせず食べ始めちゃていいのです」
雷「わたしは全然待つわ。いいわよね?」
暁と響も同意する。
205 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:15:20.40 ID:WzqKT6fXO
電「ありがとう、なのです。...それと、どうか今朝暁ちゃんが言ってくれたことを思い出して欲しいのです...」
電はそう小声で言い残して騒動の渦中へと向かった。
響「...みんなが喧嘩に注目してる隙に席取っちゃおうか」
暁「そうね...」
こうして3人は逆に、電の言う通り席を確保すべく渦中から遠ざかるのであった。
206 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:16:36.16 ID:WzqKT6fXO
そんな暁型の行動に並行して、凍りつく空気を融解させるべく、扶桑が口を開く。
扶桑「もっと殴ってもいいのだけど、悔しいことに私達より遥かに強くて貴重な戦力であることは間違いないもの...」
大きなトラブルにしたくないという彼女の基本姿勢も、山城の戦力としての存在自体は有益と判断するからこそなのだろう。
扶桑「でも個人的な事を言えば、顔すら見たくないわ。そういうことだからさっさとこの場から失せなさい」
山城からは明らかに余裕が消えていた。それだけ動揺しているのであろうか。
207 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:17:41.18 ID:WzqKT6fXO
時雨「たしかに扶桑の言う通りだね」
まだそう遠くない位置にいた時雨が山城の近くに再び戻っていた。
時雨「でもみんなが限界まで強くなってお前が用済みになったら、その時はこの鎮守府から消えることになるだろうね」
時雨がそう言うと、山城は痛みに引き攣りながらも挑発的な表情を何とか作ってこう言ったのだった。
208 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:18:33.08 ID:WzqKT6fXO
山城「そんな日が来ることを楽しみにしてるわ」
今度は山城の煽りには反応せず、彼女達は各自の仲間達の所へ向かうのであった。
それに伴いギャラリーも解散し、既に卓に付いていた者達も食事を再開させたのだった。
209 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:19:29.68 ID:WzqKT6fXO
電「山城さん...!大丈夫...なのですか?」
群衆から駆け寄って来た電に目をやると、面倒そうにこう答える。
山城「別にどうってことないわよ...」
電「でも...口が切れてるのです...」
山城「はぁ...部屋に戻るから気にしないで。夕飯も食べたから」
電「嘘なのです」
山城「...もう勝手にしなさい」
そう言って山城は食堂から出ていった。
210 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:20:26.26 ID:WzqKT6fXO
それを見届けると、電は厨房カウンターの所へ向かった。
途中で席を確保した姉妹艦の卓を見つけ寄り道してこれからする事を説明しようとした。
だが彼女達は電の言動をある程度理解しているためその必要は無く、「待ってるから」とだけ言われた。
電が厨房カウンターに着くと、何も言わずとも風呂敷に包まれたものを渡された。
電「鳳翔さん...すみません...」
鳳翔「...電ちゃんが謝ることじゃないでしょう」
電はペコリと可愛らしい一礼をしてそれを受け取り、食堂を出ようとした。
211 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:22:53.13 ID:WzqKT6fXO
深雪「電、またなのか?」
話しかけてきたのは、この鎮守府ではかなり古くからいる吹雪型駆逐艦だった。
電「深雪ちゃん...」
深雪「いつも言ってるけどよぉ、電がそこまでしてやる必要ないじゃねぇーか」
深雪「古鷹さんもだけどなぁ」
付け加えるように言った。
深雪「優しい電は好きだけどさー、お人好し過ぎるのも良くないってもんだぜー?」
電「...」
電はつい俯いてしまう。
212 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:24:16.37 ID:WzqKT6fXO
深雪「...まぁ優しすぎる電も好きなんだけどな〜!」
少し気まずくなったのか深雪が電に抱きついて髪をわしゃわしゃする。
電「はわわ!深雪ちゃん、やめるのです〜!」
深雪「あっ、そうだ!今度非番が被った日に久々にどこか外行こうぜ!」
深雪「どこでもいいけど、エスコートは深雪様に任せな!」
急に話題が変わった。深雪は鎮守府でも有数の元気っ子である。
それはもう、このように突然の思いつきやテンションで人を振り回すという事が多々ある程だ。
213 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:25:31.10 ID:WzqKT6fXO
だが気まずい空気がすぐ消え去ってくれることはありがたかった。
それどころか、深雪の提案は電にとっても純粋に嬉しい限りなのである。
電「電も最近被らなくてそんなこと思ってたのです!どこか行きたいのです!」
深雪「へへっ!じゃあ約束だからな!」
そう言って深雪は嵐のように去っていく。
電は風呂敷を持って今度こそ食堂を出る。
その足取りは先程よりほんの少しだけ軽やかなものであった。
214 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/25(月) 12:28:29.22 ID:WzqKT6fXO
今回はここまでです
古鷹さんも登場させるので、書き始めの漠然とした予定では今日辺りに作中で2人を祝えたら...って思ってたんですが遅筆すぎて時間が進まなくて無理でした。
せめて古鷹出てくるシーンを今夜・・・
・・・無理ですね。
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/25(月) 12:31:33.70 ID:1yvlsddRo
おつおつ
自分のペースでいいのよ
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/25(月) 16:37:50.08 ID:6+Xjd3bhO
乙
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/25(月) 18:36:02.98 ID:zK4r/oWhO
いつまでも待つぞ
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/26(火) 17:11:03.54 ID:oyHcMHeXO
乙
219 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:17:48.28 ID:J91t5PLpO
最後の更新からもうこんなに日が・・・
計画が・・・
続きを投下します
220 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:19:10.96 ID:J91t5PLpO
電が鳳翔から風呂敷を受け取っているのを横目に見ながら、残された暁型の3人は密かに話し合う。
暁「電に何も言わず協力してくれるなんて、鳳翔さんも何か知ってるのかしらね」
雷「しかもすぐにお弁当渡したってことは準備してたってことよね」
暁「鳳翔さんの立場的に...電の言う2人のうちの1人が、ってこともあるんじゃないかしら」
響「それは単純に前回の事があったからだと思うよ」
響「電が食堂に来たのを見てて、どうせ電は今回もそうするだろうと予想して喧嘩の最中に用意してくれたんだろう」
雷「それもそうね」
221 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:20:32.99 ID:J91t5PLpO
電を見れば今度は深雪に絡まれている。
表情から察するに、おそらくは軽く山城擁護について小言を言われているのであろう。
深雪については電の姉妹艦である彼女達も好意的に思っている。
その理由はもちろんその持ち前の快活さで場を明るくしてくれる点も一つであるが、とりわけ重要なことは、艦時代の衝突事故の件を気にすることなく電にも活発に話かける点であった。
そのおかげで控えめな性格である電でも、萎縮せずに深雪と付き合えているようである。
それどころか電は深雪に振り回される時は決まって、困惑の表情を浮かべると同時に、また心からの嬉しさにも満ち溢れてさえいる。
222 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:21:41.76 ID:J91t5PLpO
こうした背景から電の姉妹達−特に深雪より少し先に着任した最古参勢の響は−電の表情に明るさがもたらされていく過程を見てきただけあって、その最大の貢献者ともいえる深雪を信頼している。
・・・だからこそ3人とも本音を言えば、ほとんどの艦娘と同じように山城批判派側に立つ深雪と対立してまで、山城擁護の余地を探す事には気が進まなかった。
しかし電の気持ちをなるべく尊重してやりたいと思うのは姉妹艦として自然である。
また暁が今朝未明に経験して姉妹に共有したことは、信じ難くも同時に決して無視してはならない真実に思えた。
こうして3人は示し合わさずとも、先入観を捨て山城の言動を解明しようと努めだした。
223 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:22:36.32 ID:J91t5PLpO
雷「でもまたこれで山城さんがますます酷い人って感じになっちゃったわね...」
暁「うん......でも...きっと何か理由があるのよ...!」
その言葉はつい今日の未明に垣間見た山城の隠された裏側の一部を、もういちど反芻して自身に言い聞かせるためのようだった。
響「ただやっぱり動機が気になるね。あれを見ただけじゃ悪意を持って傷つけようとしてるだけにしか見えない」
雷「電が言うにはあれにも意味があるってことらしいけど...」
暁「でもそこからは電は教えてくれないし...私達で考えるしかないわね」
雷「そうね。そもそも今回はどうして喧嘩が起こったのかしら?」
224 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:23:40.54 ID:J91t5PLpO
電はといえば深雪と別れ食堂を出るところである。
もう先程の騒動の空気感はどこかへ行ってしまったようで、周囲はごく日常的で平和な喧騒で包まれている。
その時、3人の所にとある艦娘が話しかけてきた。
青葉「どーも恐縮です!お三方、ちょっとインタビュー宜しいですか?」
暁「インタビュー?」
その艦娘とは、いつもカメラを首にぶら下げ鎮守府内の様々なことを取材しては自作の新聞記事にして話題を提供している、重巡洋艦の青葉であった。
225 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:24:44.81 ID:J91t5PLpO
雷「電と深雪はまだそういう関係じゃないわよ?」
いわゆる大衆雑誌のような内容を取材する事がほとんどな青葉。
それを踏まえて雷は、この3人のみがいる状況で尋ねてきたという事実から、おそらくは電に関するスクープ狙いと推測して先に断りを入れたのだった。
青葉「たしかに仲の良いお二人の関係性も気になるんですけどね!今回はちょっと真面目な取材でして...」
響「スクープ記事目当てじゃないなんて珍しいね」
そうですかね、と苦笑した青葉は腰を屈めて3人と目線を合わせる。
そして顔少し近づけて周りに目立たない声で話し始める。
226 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:25:34.63 ID:J91t5PLpO
青葉「その、先程もそうでしたが、電さんが何故あそこまで山城さんを助けるのか気になりまして」
響「...!」
青葉「姉妹艦の皆さんなら何か知ってるんじゃないかと思ったんです」
雷「...電は優しいから...」
雷がありきたりの言葉を呟く。
このような質問には、まずそれで反応を見ることがこの3人の中でのマニュアルになっている。
227 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:27:00.05 ID:J91t5PLpO
青葉「...私は電さんが何か事情を知ってるからだと思います」
青葉「その事情のためにいつも山城さんを助けるのでは、と。」
少し小声で発声された青葉のその言葉を聞いた瞬間、3人が閉ざしていた門は開かれたのだ。
暁「偶然ね!ちょうど私達でその話をしようとしてたわ!」
響「(でも...青葉さんは時雨と同じタイミングで着任したはず...それもあってか仲良さそうだし...)」
雷「詳しい事は分からないんだけどね、電は...」
228 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:28:40.55 ID:J91t5PLpO
響「残念ながら私達が知ってることは何も無いんだ」
暁や雷が躊躇いなく話そうとするところに、響が被せるように言った。
何となく響から警戒心を読み取った暁と雷は驚きと不安を隠せぬまま黙って響を見つめた。
一方の響は動じずクールな表情を保っている。
響「だけど“お人好し”なのだって、私達の妹の大事な長所だからね」
響「だから私達は、たとえ電が必要無いまでの優しさを振り撒いていても、それを見守るだけなのさ」
響は終始落ち着いていた。
それに今言ったこと自体は彼女の本心でもあった。
青葉のインタビューを回避しようとする意図以外は、まさに嘘偽りのない返答なのだ。
それゆえに響の落ち着きは暁や雷の動揺を打ち消すほどの自然さをもたらしたのである。
しかし・・・
229 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:29:54.50 ID:J91t5PLpO
青葉「...やはり警戒しますか」
青葉も伊達に“取材”を続けてきたわけではないのだろう、その経験を活かしてか普段そこまで接点が多いわけでもない艦娘の心理を見事に読んでみせたのだ。
青葉「ですがこれは決して記事にするとかではなく、私個人のために内密に調べてることなんです」
青葉「どうか、些細なことでも、電さんについて知ってることを教えてくれないでしょうか」
青葉「きっと姉妹艦にだけなら、ってふと零した重要な言葉があるんじゃないかって思うんです」
どうやら青葉が本気で電の山城擁護について調べている事は間違いないようである。
230 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:30:51.45 ID:J91t5PLpO
響「...青葉さんが本気なのは分かったよ」
ひとまず青葉の意図を信頼し、警戒姿勢を緩める響。
響「ただ警戒したメインの理由はそこじゃないんだ」
青葉「他に何かあるんですか...?」
響「電が山城さんの味方をする理由を見つけるには、きっと、今ある山城さんの人物像を一度忘れる必要がある」
暁「先入観?を捨てるってやつね」
響「その通り。それはこの場合、鎮守府のほとんどの艦娘の考え方を否定することを意味する」
この言葉に、自らの試みの大変さを改めて確認して青葉達は沈黙してしまう。
231 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:31:58.28 ID:J91t5PLpO
雷「まぁ...この鎮守府で進んでやることじゃないわよね...」
響「特に青葉さんは時雨と同時着任で仲も良いじゃないか」
響「それでも本当にそんな調査をしたいと思えるのかい?」
響が危惧していたのはまさにその点であった。
ほぼ全員から良く思われていない者について、1度先入観を捨て去って再評価しようとするにはかなりの勇気が必要である。
そんなことをすれば鎮守府で浮いてしまうわけであるし、そもそもあれほど暴言を吐いてきた人に擁護の余地を見出そうとする事自体が、直感的にナンセンスなのだ。
232 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:33:29.74 ID:J91t5PLpO
もちろん鎮守府の雰囲気に流されずに中立や擁護すら見せる艦娘達も数人はいる。そして彼女らがその立場を理由に飛び火して嫌われるという事態は一切起きていない。
しかし彼女達はほとんどが古参の面々で、戦力的にも精神的にも鎮守府に大きく貢献している者達であることも同時に忘れてはならない。
つまりそれだけの存在だからこそ周囲の行き過ぎた山城嫌いを抑制できるのであって、これを他の者が安易に真似る事は得策ではない。
・・・それでも電の言動の意図を解き明かしたいのであれば、この道は避けられないかもしれないが。
233 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:35:25.65 ID:J91t5PLpO
青葉「...覚悟は決めてあります」
響の言葉で空気が重く沈んだが、やがて青葉が口を開いた。
青葉「もちろん私は時雨さんとは仲が良いです」
青葉「そして今までずっと山城さんのことを憎むべき人だと信じて疑いませんでした」
振り返れば青葉も山城への嫌悪は隠さないタイプであったように思う。
青葉「ですが冷静に考え直そうとしてみたら、それは思い込みなんじゃないかとすら思えてきたんです」
雷「それは随分と大きな心変わりね」
そこでちょうど今日未明の出来事が想起される。
234 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:36:41.42 ID:J91t5PLpO
暁「そう思うきっかけがあったのかしら?」
暁がそう尋ねると、青葉は意を決したように言葉を続けた。
青葉「ええ、数日前に古鷹さんがふと零した言葉が忘れられなくて...」
古鷹さん、という言葉に反応して暁型の3人はある気づきを得た。
しかし、誰から目配せをしたわけでもないが、ひとまずは青葉の話を中断せずに聞くことにした。
青葉「私がいつも通り山城さんを批判した時、古鷹さんは悲しそうな顔をしてこう呟いたんです」
青葉「山城さんは私よりよっぽど強くて優しいのに、って」
古鷹が言ったというその言葉の意味を3人も考える。
235 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:38:25.74 ID:J91t5PLpO
青葉「それは、喧嘩を仲裁する時みたいな普段の山城さん擁護とはちょっと違いました」
青葉「わざわざ古鷹さん自身を比較対象に出すくらい、本心から絞り出た古鷹さんの思いだった気がするんです」
青葉は困ったような顔をしている。
青葉「だから、もう私は分からなくて...古鷹さんは誰にでも優しすぎるから、って勝手に納得してただけなのかもしれないって」
青葉「古鷹さんの言葉を前提にしてみたら、きっと山城さんは今と全く別の人物になるんじゃないかって」
青葉「だからあの言葉の意味が知りたくて...でも古鷹さんは...」
236 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:40:25.59 ID:J91t5PLpO
青葉が次の言葉を口にしようとする時、またもや響が食い気味で被せてきた。
響「詳しいことを教えてくれなかったんだね?」
しかし今度の意図は話を回避するためではなく、むしろその真逆である。
まさに言おうとしたことを言い当てられて青葉は少し驚きを隠せずにいた。
雷「これって、古鷹さんが残り2人のうちの1人ってことよね」
暁「そうとしか思えないわね」
青葉「もしかして...やはり何か知ってたり...?」
237 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:43:33.13 ID:J91t5PLpO
響「うん。実をいえば私達もちょうど青葉さんと同じだからね」
雷「古鷹さんみたいな妹がいるもの」
青葉「やはり...!」
青葉「私も、古鷹さんが何か山城さんに肩入れする事情があるのだとしたら、古鷹さんと同じような立場を取る電さんもきっと同じはずだと思ってたんです」
青葉は自身の推測が正しかった事に興奮を覚えながら、それでも周りに聞かれぬようにある程度抑えた声量で話を続ける。
青葉「ですが仮にそんな事情があるとして、みなさんに仲良くして欲しい古鷹さんがそれを黙ってる理由は無いはずじゃないですか」
青葉「だから私の推測が合ってたとしても、電さん本人からも同じようにそれ以上の事は聞けないと思ったんです」
238 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:44:50.42 ID:J91t5PLpO
響「なるほど、それで私達が3人になった時にインタビューしに来たんだね」
青葉「そういうことです」
暁型の3人も、青葉と同じ発想を古鷹に対して適用しなかったわけではなかった。
何せ青葉は自覚があるかは分からないが古鷹にべったりであり、古鷹も青葉を特に大事にしている様子である。
青葉の妹である衣笠曰く、ヘタレな青葉が行動しないだけで実際は“事実上の恋人同士”らしい。
今では青葉に色恋沙汰を取材されたら「古鷹とはどうなのか?」と言い返せば青葉を退けられるとまで言われるほどである。
239 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:47:33.68 ID:J91t5PLpO
それほどまでに深い情で結ばれているのならば、自分達と同じように何か古鷹から打ち明けられたり相談されていそうなものだ、というのがこの3人の思考であった。
しかし電が自分達に一部を打ち明けてくれた一方で、依然として山城を嫌い続けていた青葉の様子を考えれば、古鷹は電と同様ではないと思えてしまったのだ。
それこそが、暁型が逆に青葉に尋ねることをしなかった理由であったのだ。
240 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:48:49.43 ID:J91t5PLpO
響「実はさっき暁と雷が話していたことが私達が持ってる唯一のヒントみたいなんだ」
青葉「2人のうちの1人...でしたか?」
雷「そうなの。以前電が教えてくれたのよ、事情を知ってるのは電を除いて3人らしいの」
雷「私達はその時に1人については教えてもらってて、その人は古鷹さんじゃなかったわ」
青葉「つまりそれは古鷹さん以外に事情を知ってる人が2人いるって事ですか?」
響「そうなるね」
241 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:49:46.83 ID:J91t5PLpO
青葉「それなら1人は昨日私も知ったんですよ」
その言葉にちょっとした緊張が走る。
青葉が知ったという人次第では、この鎮守府で山城についての何かしらの事情を知っている人を全員把握したことになるからだ。
青葉「私が知った人と言うのは川内さんの事なんですが...」
だがその希望は残念ながら通らなかった。
暁「私達と同じね...」
青葉「そうでしたか...」
新しい情報が得られず青葉も少し落胆をした。
しかしここで諦めず、少しでもヒントを得ようとインタビューを続行する。
242 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:51:42.49 ID:J91t5PLpO
青葉「ちなみにみなさんは電さんからどのように聞いたんですか?」
響「あれは暁が着任してすぐの時だね」
青葉「とすると8月半ばくらいですか」
雷「そのくらいだったわ」
青葉はいつの間にかメモ帳とペンを手元に用意していた。
流石は自ら記者を名乗るだけある。
響「山城さんが異常なまでに嫌われてることに気づいて、その理由を私達に聞いてきたんだ」
暁「山城さんに対してだけはみんな嫌な対応してたから、事情を知らない私はただただ怖かったもの」
243 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:52:57.30 ID:J91t5PLpO
響「そういうわけで暁には着任のほんの数日前に起こった出来事を説明したんだけど」
響「その時も電はやっぱり山城さんを擁護しようとしてたんだ」
雷「何か事情があったと思うし聞いたままの話だけを信じないで欲しい、って一生懸命フォローしてたのよ」
雷「でも私と響はそれにちょっと反対するような事言って、電は困った顔して黙っちゃってね...」
響「そこで暁が思い切って電にストレートに聞いてくれたんだよ」
響「「どうして電はそんな酷いことした山城さんの味方をしたいの?」ってね」
244 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:54:53.76 ID:J91t5PLpO
青葉「その時に事情を知ってるってことを?」
響「いや、実はこの時点ではまだ打ち明けてもらえなかったんだ」
響「だけどこの時私が、電は優しすぎるんだって言ったら、電が何か匂わせるような返答をしてね」
青葉「何て言ったんですか?」
暁「例えば川内さんとかも近いうちに山城さんの味方をするようになると思う。ほとんどの艦娘の敵対感情に配慮して堂々と仲良くは出来ないだろうけど、って」
青葉の質問には暁が答えた。
青葉「...その時点で川内さんの名前を持ち出してきたわけですか」
青葉は少し考えを巡らせているようだ。
245 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:56:47.74 ID:J91t5PLpO
暁「そうなの。それで電の言いたい事が分からなくてとりあえず「何でそう思うの?」って聞いたのよ」
暁「そしたら、山城さんと川内さんは仲良くなったから、って答えたわ」
青葉「仲良く...ですか...」
雷「それで、電もそれと同じようなもので、だから山城さんの味方をするのは別に電が優しくしたいからではない、ってことを強調してきたのよ」
一応電の言うことは筋は通っていた。
周りからは“優しすぎる”から味方をしていると言われる事に対し、“仲良くなった”から味方をするだけだ、と反駁したということである。
もっとも、それは苦し紛れの説明であることは今の3人には判明してしまっているが。
246 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:58:13.96 ID:J91t5PLpO
響「この事はまだ他の人には言わないで欲しいとも頼まれたよ」
響「そして青葉さんならその頃から既に居たし知ってると思うけど、実際に電の言った通りになったんだ」
雷「まさか夜戦練習に付き合ってもらうほどの関係になってたなんてね」
暁「今じゃ那珂ちゃんさんも巻き込んで完全な味方よね」
青葉「では電さんは川内さんも事情を知っていることを、その時点で把握していたってことですね」
青葉はメモにまた何かを書き込む。
雷「そういうことになるわ」
雷「今思えばわざわざ川内さんの話を持ち出したこと自体が電なりのヒントだったのかも...」
247 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 01:59:24.17 ID:J91t5PLpO
響「私はその時はまだ、電が水雷戦隊に大きな影響を持つ川内さんを説得して、なんとかあの事件を収束させようとしたんだと思ってたよ」
暁「私なんか以前の様子を知らなかったから、てっきり山城さんと川内さんはもともと仲良しで、電が間に入って2人の関係を元に戻したって事なのかと思ってたわ」
間違った解釈を誘発したあたりに、電が意図的に話をぼかした事が窺えるであろう。
響「それから1ヶ月くらいして、ようやく電が事情があって擁護しているということを打ち明けてくれたんだ」
248 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:01:31.24 ID:J91t5PLpO
青葉「そうなるとそれは9月の半ば頃ということですか」
青葉はメモを見ながら時系列を確認する。
暁「多分合ってるわ」
暁が確認に応える。
響「それで、もちろん詳しい事情を知りたかったから聞いたんだけど、ついに「事情がある」って事しか教えてくれなかったんだ」
響「だからさっき警戒して青葉さんに言ったことも間違ってないかもしれないね」
響は結局は大事な点を「何も知らない」ことを自嘲気味に語った。
249 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:03:25.47 ID:J91t5PLpO
雷「その時何とか聞き出せた唯一の事が、今さっき話した事情を知ってる人の数とそのうちの一人が川内さんって事なの」
雷「それを聞いて初めて、電が最初にぼかしを入れて話してたことの意味が理解できたの」
青葉「つまり電さんは“事情を知る”を“仲良くなる”に強引に置き換えて話していたわけですか」
暁「あとはこの事は基本的に他の人に言っちゃダメって、言われたわ」
暁「だけど、山城さんの事をちゃんと知ろうとする意志が見られたなら喋っていいとも言われたの」
青葉「それでこうやって話してくれたんですね」
暁が頷く。
250 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:05:58.31 ID:J91t5PLpO
青葉「ところで電さんがそれ以上話せない事やみなさんへの口止めは山城さんの指示ですか?」
雷「それもあるみたいだけど...その事情を伝える権利が電には無い、って電自身は言ってたわ」
その言葉を聞いて、青葉は「やっぱり...!」と微かな声で呟いた。
そして動かしていたペンの動きを止めた。
青葉「新情報はあまり得られませんでしたが、情報の整理は出来ました」
青葉はメモから顔を上げ、食堂の入口に目を向ける。
まだ電は帰ってきていない。
青葉「では今度は青葉が知ったことを教えますね」
251 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:09:24.43 ID:J91t5PLpO
暁型は青葉の情報に身構えた。
青葉「まず私が川内さんが事情を把握してることを知ったのは、昨日那珂さんに聞いたからなんです」
雷「あー、それでなのね」
青葉「私は何も知らない状態で調査を開始したので、とにかく山城さんに友好的な人から当たろうと思いまして」
青葉「昨日は神通さんの誕生日会もありましたから、そこで川内さんと那珂さんに詳しく聞こうと思ったんです」
青葉「何となく事件後着任の那珂さんの方が話しやすいと思ったので彼女に聞くことにしたんですが...ラッキーでした」
暁「ラッキー?」
252 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:10:57.17 ID:J91t5PLpO
響「川内さんに聞いちゃってたら警戒されて、「事情があった」以上の事実を知るのが余計難しくなるからだね」
青葉「ええ、何せ姉妹艦にすら教えない事なんですから余計な警戒は受けないようにしたいところです」
青葉「それともう一つラッキーな点は那珂さんもこっち側に引き込めたんです」
雷「引き込むって...青葉さんと一緒に調査してるってこと?」
青葉「はい、そうです」
響「それは大きい収穫だね」
青葉「そこで少し話は脱線しますが...もしよろしければお三方もご協力して頂けませんか?」
青葉「みんなで力を合わせれば、きっと私達の姉妹艦が話せない真実を知れると思うんです」
253 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:12:22.45 ID:J91t5PLpO
青葉のお願いに近い提案を受け、顔を見合わせる3人。
しかし彼女らも今の青葉と同じ気持ちを抱いてきたのである。
それゆえに結論はすぐに出た。
響「私も気になる、是非参加させてもらうよ」
暁「もちろん私もよ!」
雷「青葉さんがいれば何か分かりそうだものね!」
青葉「みなさん、ありがとうございます...!」
こうして賑わう食堂の一角で、ひっそりと探偵団が生まれたのだった。
しかし、電が戻ってくる時間を考えるとその結成を祝っている暇はない。
青葉はメモ帳を見ながら急いで話を続ける。
254 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:14:57.56 ID:J91t5PLpO
青葉「それで那珂さんから聞いた事は暁型での事例とほとんど同じでした」
青葉のまとめによれば、川内は事情を知って1ヵ月後くらいに神通と那珂に一部のみを打ち明けたそうだ。
その内容はやはり「事情があった」というものであるが、どうやら山城は川内型を気遣うような言動もしていたらしい。
那珂はその点に山城の良心の存在を見出し、結局詳しい事情を知らないままでも山城を擁護する側に立つと決めたのだという。
また山城から口止めを受けている点も暁型のケースと同様である。
255 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:17:34.38 ID:J91t5PLpO
青葉「ここで電さんと川内さんの動きを時系列で見ると、偶然にもかなり一致してるみたいです」
響「どういうことだい?」
青葉「どうやら川内さんが事情を山城さんから聞いたのが、ちょうど電さんがぼかしながら響さん達に伝えた頃になるみたいです」
雷「てことは電は川内さんが事情を知った事を把握した直後に、私達にあれを話したのね」
青葉「そして2回目の話をした9月半ば頃も、やはり那珂さんが川内さんから打ち明けられた頃に一致するようです」
青葉「那珂さんによれば川内さんからの打ち明けは口を滑らせたことから始まったらしいですから...」
青葉「おそらく電さんは川内さんの動向に添って、自身も姉妹艦に打ち明けたりしているのでしょう」
暁「そうだったんだ...」
256 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:19:46.47 ID:J91t5PLpO
青葉「それと川内さんも電さんもあれ以上を語らない理由を「権利がないから」としている点も重要そうです」
響「川内さんもそう言ったのか」
青葉「ええ。ひょっとすると川内さんに電さん、そしてもしかしたら古鷹さんもが、それを周りに言うのが躊躇われるような事情を持ってるという事なのかもしれません」
雷「そこは鍵になりそうね」
青葉「私が知ったことはこれくらいですし後は事情を知っている残り1人は誰かという話ですが...」
257 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:21:57.76 ID:J91t5PLpO
青葉「これは宿題になっちゃいますね...」
青葉は食堂の入口を見ていた。
そちらを見てみれば電がこちらに早足で向かってくるところであった。
青葉「では今度は那珂さんも呼んで集まりましょう」
青葉はそそくさと立ち去ろうとしたがそれを止めるように響が質問をする。
響「最後に一つだけ。今日の喧嘩の発端は何だったか見てたりしたかい?」
258 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:23:09.22 ID:J91t5PLpO
青葉「あー、それは今日の午後演習で山城さんが満潮さんを完膚なきまでに叩きのめしたらしくて...」
青葉「それでただでさえイラついてる満潮さんに「こんな雑魚が姉様に付きっきりなんてそりゃ不幸になるわね」って煽ったらしくて...」
響「なるほどね...」
電がちょうどやって来た。
青葉「では電さんも帰って来たことですし、青葉はこれにて!」
青葉「六駆の良い子達は宿題にちゃんと取り組むんですよ!」
そう言って青葉は去っていった。
259 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:24:47.35 ID:J91t5PLpO
電「すごい遅くなってごめんなさい、なのです...」
暁「気にしなくていいのよ、青葉さんが話し相手になってくれたし」
電「それは良かったのです...。どんなこと話してたのです?」
響「電が深雪とラブラブだって話しさ」
響がしれっと事実と違う返答をする。
電「はわわ〜!?///」
電「からかわないで欲しいのです〜〜〜!!!」
雷「電は本当可愛いわねぇ」
目の前に居るあどけない純粋な少女。
この子がほんの少数の者達と共に隠し続ける真実は一体どんなものなのだろうか。
3人にはまだ全く見当も付かないのであった。
260 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/09(土) 02:26:37.99 ID:J91t5PLpO
今回はここまでです
出来れば今日か明日にもう1回投下したいですが・・・
なるべく早く投下できるようになりたいです
261 :
◆oVd3xukI6g
[sage]:2019/03/09(土) 05:35:01.18 ID:5ovO5T000
乙です
楽しみにしてます
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/09(土) 11:23:51.40 ID:lA+yVjpYO
まさか推理要素が出るとは。
続き楽しみにしてます
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/12(火) 15:12:50.30 ID:08CiIAJjO
いいね
続きが楽しみだ
264 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/16(土) 09:44:29.21 ID:K4iN0JfmO
今日の夕方頃に続きを投下しようと思ってます
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/16(土) 09:51:14.17 ID:b/w0V1i8o
うい
266 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:23:33.72 ID:ipNkQLlXO
どうしてこんなに宣言を守れないんでしょうか...
ようやく投下開始です
267 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:28:03.80 ID:ipNkQLlXO
12月11日 朝
目を開けば薄明るい光が自身に降り注いでいる。
窓から見える空模様は快晴。
カーテンは既に開いていた。
昨夜見た天気予報によれば、ここしばらく続いた冷え込みも今日は和らぐようである。
それと連動するかのように青葉の目覚めもここ数日と違ってすこぶる良いものであった。
青葉「〜〜〜っっくぁ!」
青葉はベッドで起き上がると、まずは緩んだ変な声を出しながら伸びをした。
268 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:30:47.10 ID:ipNkQLlXO
古鷹「おはよう、青葉!」
青葉「おはようございます、古鷹さん...」
青葉がまだ完全には醒めない眠気を取り払おうとしていると、ルームメイトである古鷹が元気に声をかけてきた。
古鷹もまだ可愛らしいパジャマ姿であることから、そこまで自分より早起きしたわけではないことが窺えた。
それでも彼女は既に眠気とは無縁な状態になっており、早くも1日のスタートを切ろうとしているようだ。
青葉「今日は秘書艦なので古鷹さんより早く起きるつもりだったんですが...逆になってしまいましたね」
古鷹「でもぐっすり眠れたみたいだし、良かったじゃない!」
青葉「それもそうですね」
269 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:34:21.50 ID:ipNkQLlXO
にこやかに笑う古鷹を見て、青葉も微笑み返す。
本当に古鷹には笑顔が似合う。
だから古鷹にはいつも笑顔で居てもらいたい。
そんなことを青葉はよく考えるのであった。
青葉「それじゃあ身支度して、いつもより早いですが朝食に行く準備しちゃいましょうか」
古鷹「加古達も起こしてくる?」
青葉「どうせ加古さんは今日もギリギリまで布団で粘るんでしょうし...ガサに丸投げしちゃいましょう」
古鷹「まったく、加古ったら...」
古鷹の妹にあたる加古は寝坊助で有名である。
というより、いつでも隙を見つけては寝ようとするのだ。
そんな彼女をどうにかする役目は、第六戦隊の世話焼きな方の2人、すなわち古鷹か衣笠なのである。
270 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:37:21.34 ID:ipNkQLlXO
青葉「まぁまぁ。昨日2人には、明日先に古鷹さんと朝食を取っちゃうかもしれない、って言ってありますし」
青葉「それにガサも加古さんの世話焼くの大好きみたいですから」
古鷹「たしかになぁ。じゃあ、2人のことは信じて私達だけで行っちゃおう!」
青葉「では私は顔洗ってきますね」
こうして2人は食堂に向かう準備をするのであった。
271 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:39:40.81 ID:ipNkQLlXO
〜
食堂には青葉と古鷹以外はまだ誰も食事を取りに来ていなかった。
始業時間を考えると朝食を取るには早すぎであり、大抵の艦娘はこの時間はギリギリまだ寝ている。
また空母勢は朝早くから鍛錬をしている様であるが、彼女達が弓道場からやって来るのもやはりもう少し後になってからである。
ただ、日替わりの秘書艦に任命された艦娘は始業に備えた準備をしておかなくてはならない。
そのため基本的にその日の秘書艦は早めの朝食を取って、ゆとりを持って執務室で始業時間を迎えるようにする事が奨励されている。
・・・もちろんマイペースな艦娘はここでも時間にルーズだったりするのだが。
そんな事情があるからこそ、今青葉に朝食を渡す鳳翔もこの時間から既に準備を整えているのである。
272 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:41:14.48 ID:ipNkQLlXO
鳳翔「今日は青葉さんが秘書艦でしたか。頑張って下さいね」
青葉「恐縮です!こんな早くから朝食の準備、いつもありがとうございます!」
鳳翔「ふふっ、いいんですよ。これが着任時からの私の仕事ですから」
古鷹とはまた違った落ち着きと安心感をもたらしてくれる笑顔で鳳翔は青葉に食事を渡した。
厨房内の奥側では、日中は甘味処を運営する間宮や伊良湖、そして他の有志で手伝いをする艦娘が忙しなく準備に追われているのが見えた。
食事受け渡しのカウンター付近には、青葉と鳳翔しか居ない。
273 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:42:53.01 ID:ipNkQLlXO
青葉「(そういえば鳳翔さんも...可能性は低いと思いますが...)」
青葉「(せっかくの絶好のチャンスですし)」
青葉は食事を受け取ると、少し小声で鳳翔に話しかけた。
青葉「あの、いきなりで申し訳ないのですが...」
青葉「鳳翔さんは何か山城さんについて知ってたりするんですか?」
その問いに鳳翔は驚いた顔をする。
その表情は隠し事がバレたから、というようなものではなく単に唐突の質問に困惑しただけのようである。
そこで少し補足をすることにした。
274 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/03/17(日) 00:44:32.54 ID:ipNkQLlXO
青葉「味方をしてあげたり、あまり敵意を持ってない人はほとんどが古参の方ですから...」
この説明で鳳翔は青葉の言いたい事を理解したようだ。
そして彼女の目線が一瞬青葉のさらに後ろを捉えた気がする。
どうやら青葉がなぜそれを聞きたかったのかの意図まで汲み取られてしまった。
流石は鎮守府の母親的存在といったところか。
鳳翔「たしかにそうみたいですが...私は何も聞いてなくて...」
ごめんなさいね、と言わんばかりの残念そうな表情を見せる。
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