南光太郎vs仮面ライダークウガ

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1 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:14:39.85 ID:5HVmwGJ40
仮面ライダーBLACK×仮面ライダークウガのssになります。
よろしければどうぞお読みください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1546258479
2 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:16:16.91 ID:5HVmwGJ40


1988年9月某日―――


四国の瀬戸内海・播磨灘にある小豆島

その日、僕たちのヒーロー南光太郎はこの小豆島を訪れていた。

何故彼が遠路遥々この島を訪れたのか?それはある人物と会うためにあった。


「光太郎さん。よく来てくれたね。」


「いらっしゃい。光太郎さん。」


小豆島を訪れた光太郎をある親子が暖かく出迎えてくれた。

大門明とその息子の輝一。

父親の明は有名なオートレーサーで息子の輝一も相当な腕の持ち主だ。

そんな大門親子が何故この小豆島にいるのか?

その事情は今から一年前まで遡る。

大門明の父であり機械工学の権威でもある大門洋一博士が何者かによって殺害された。

大門博士を殺害したのは暗黒結社ゴルゴム。

博士はゴルゴムから文明破壊用バイク・ロードセクターの改造を任されていた。

だがその企みに反対した博士はロードセクターの在り処を息子の明に託して

ゴルゴムの要求には決して応じなかった。そのせいで博士はゴルゴムに殺害された。

生き残った明と輝一の親子はロードセクターを打倒ゴルゴムに燃える南光太郎に託した。

それから自分たちはゴルゴムの追っ手から身を隠すためこの小豆島に逃れていた。
3 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:17:08.20 ID:5HVmwGJ40


「大門さんご報告します。遂にゴルゴムを壊滅させることに成功しました。」


「ありがとう光太郎さん!よく父の敵を討ってくれた!」


「これで世界は平和になるんだね。」


「ああ、ゴルゴムは滅んだ。もう恐れるものは何もないんだ。」


光太郎からゴルゴム壊滅の報せを受けて明と輝一はようやく念願が叶ったと大喜びした。

肉親の敵であるゴルゴムが討ち果たせた。これであの世にいる父も安らかに眠れるだろう。

ところで光太郎だがゴルゴム壊滅の報告以外にも大門親子に用事があった。

彼はあるモノを持ってきていた。それは一台のバイク。

これまでゴルゴムとの戦いを支えてくれた頼れる仲間ロードセクターだ。


「大門さん、僕がゴルゴムに勝てたのはロードセクターのおかげです。」


「その言葉、死んだ父に聞かせてあげたいですな。きっとあの世で親父も喜んでますよ。」


「それでなんですが…このロードセクターをお返しに上がりました。」


光太郎の申し出に大門は思わず驚いてしまった。

何故ならロードセクターは並の人間に乗りこなせるマシンではない。

このマシンは元々光太郎に譲るつもりで託したものだ。それを何故…?

そんな光太郎だが俯いた表情であることを語りだした。
4 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:17:45.13 ID:5HVmwGJ40


「僕にはロードセクターの他に頼れるバトルホッパーという仲間がいた。けれど…」


ゴルゴムとの最終決戦時、バトルホッパーは傷つき倒れた。

仲間の最期を見届けた光太郎はゴルゴムを壊滅することに成功した。

だが…彼には何も残らなかった…

平和を取り戻しても…愛する人も…戦友も…誰も…

彼にとってこの勝利は虚しいものでしかなかった。


「それならせめてロードセクターだけでも…これはキミのものだ。」


「いや、ロードセクターは元々あなたから借りたモノだ。
それに僕の身近にいればロードセクターもいずれは…だから…」


光太郎の意思を大門は察した。

このまま光太郎の手元にあればいずれロードセクターもバトルホッパーの二の舞になる。

大事な戦友をこれ以上失いたくない。だから彼はロードセクターを返却すると望んでいた。
5 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:18:35.59 ID:5HVmwGJ40


「わかりました。ロードセクターは私がこの手で守ります。」


「ですが覚えていてください。」


「こいつはあなたの相棒だ。いつの日か必ずあなたの元へ還るはずだ。」


そう言うと大門は光太郎からロードセクターを預かった。

戦士にも休息の時が必要だ。彼はもう十分戦った。

今はこれでいい。こうしてロードセクターは大門明の所有するガレージに収容された。
6 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:20:25.12 ID:5HVmwGJ40


「光太郎さん!こっちだよ!」


その夜、光太郎は明と輝一に連れられてこの小豆島で行われている祭りに参加した。


「そいやっ!そいやっ!」


大門親子は先に祭りの広場にある神輿を見ようと行列を潜っていった。

まるで世界に平和が戻ったことを表すかのように祭りは活気だっていた。

街道には屋台が出店して

半被を着た若衆が神輿を担いで賑わい大人も子供も盛り上がっていた。


「これが平和なんだな。」


この様子を見て今まで暗く俯いていた光太郎の心に少しばかりの明るさが戻った。

親友秋月信彦の死を未だに受け入れずにいるがそれでも落ち込んでばかりはいられない。

この平穏な一時を自分たちも楽しもう。

光太郎もまた気持ちを切り替えて会場の中央広場と足を運ぼうとした時だ。
7 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:21:28.95 ID:5HVmwGJ40


………うわぁぁぁぁぁッ!?


それはこの会場にいる人たちの耳には誰も伝わらない叫び声。

だが南光太郎は改造人間だ。彼は通常の人間では聞き取れない音を感知することができる。

祭りの会場を抜け出した光太郎は急いで叫び声のする方へと向かった。

そこは祭りの場から近い断崖絶壁の岩ばかりが立ち並ぶ海岸。


「誰かぁぁ!助けてぇぇぇぇっ!?」


この海岸に助けを求める声が響いた。

襲われているのは大門の息子の輝一だ。どうやら父親とはぐれてしまったようだ。

そんな輝一だがなにやら誰かに襲われようとしていた。

この様子を目撃した光太郎はすぐにこの輝一の元へと駆けつけた。


「やめろ!何をしているんだ!?」


すぐに輝一を逃がした光太郎は

この正体不明の何者かに何故こんな真似をするのかと問い質した。

すると夜空に浮かぶ月明かりにより照らされこの者の正体が暴かれた。
8 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:22:23.15 ID:5HVmwGJ40


「お前は…怪人…?」


なんとそこにいたのは明らかに人間ではない異形の姿をした怪人だ。

まるでサメのごとく獰猛な魚類の姿に腰元に金属のベルトらしきモノを装着させた怪人。

この怪人を一目見て光太郎は察した。ヤツは人間を躊躇なく殺すと…


「答えろ!お前はゴルゴムの怪人か!?」


まさかゴルゴムの怪人が生き残っているのか?

いや、ありえない。ゴルゴムは創世王諸共光太郎がこの手で滅ぼしたはずだ。

だが現に怪人はこうして光太郎の目の前にいる。それではこの怪人は何者なのか…?

それでも今は怪人の所在については後回しだ。こいつが人間を襲うのは明らか。

そうなる前になんとしても倒さなければならない。

覚悟を決めた光太郎は拳を握り締め体内にある神秘の石キングストーンを発動させた。
9 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:23:13.18 ID:5HVmwGJ40


「変…んん…身っ!」


その掛け声と同時にキングストーンの力により

光太郎の身体を強化皮膚リプラスフォームが包んだ。

光太郎の姿から緑のバッタ人間へと変わりやがて黒い戦士へと変化していく。

そして変身の際に使ったエネルギーが身体の関節部から蒸気として吹き出しながら

彼は自らの名を叫んだ。


「仮面ライダ――――ッ!BLACK――――ッ!!」


仮面ライダーBLACK

かつて暗黒結社ゴルゴムは南光太郎に改造手術を施した。

光太郎は世紀王ブラックサンに改造された。

だが囚われの身となった親友の信彦を救うため

彼は人類の自由と平和を守る戦士、仮面ライダーBLACKとしてゴルゴムと戦った。
10 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:24:36.88 ID:5HVmwGJ40
そして戦いが始まった。怪人は自らの爪と牙を用いてライダーに襲いかかる。

その獰猛さはゴルゴムの怪人たちと引けを取らない強さだ。

だがライダーも負けてはいない。

これまで多くのゴルゴム怪人を倒し歴戦の勇者でもあるライダーは

得意のジャンプ力を活かして怪人の繰り出す攻撃を難なく交わしてみせた。

次第に苛立ちが募りだしたのか怪人は腹いせにこの海岸にある岩をぶち壊しこう叫んだ。


「クウガ…ギベ…クウガ!」


正直この怪人が何を言っているのかライダーには理解が出来ない。

どう聞いても日本語でもなく他国の言語ですらない。恐らくこの怪人特有の言語だろう。

唯一わかったのは自分のことを『クウガ』と呼んでいることくらいだ。

このクウガという言葉が何を指すのかはわからない。

だが怪人がクウガという言葉を忌み嫌っているのだけは理解できた。

この苛立ちで怪人に僅かな隙が生じたことによりライダーは攻撃に転じた。
11 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:25:28.46 ID:5HVmwGJ40


「ライダーチョップ!」


そして鋼鉄をも切り裂く鋭利なライダーチョップが怪人の胸元を切り裂いた。

このダメージを受けて怪人は思わず怯んでしまう。今こそ仕掛ける時だ。

仮面ライダーはベルトに埋め込まれているキングストーンの力を発動。

その力はライダーの拳に漲った。


「ライダ――――ッ!パ――――ンチッ!!」


仮面ライダーのライダーパンチが怪人に命中!

その威力は凄まじく怪人はすぐに吹っ飛ばされてしまう。

なんとか立ち上がろうにも今の一撃で怪人は身体の自由を奪われ思うように動けない。

まずい…なんとしても動かなければ…そうでないとやられる…

そんな怪人の意思とは裏腹にこのチャンスを逃すライダーではない。

すかさずトドメの一撃を与えるために大地を蹴って大ジャンプを繰り出す。

そして空中で回転すると全パワーを自らの足へと集中させ渾身の必殺技を放った!


「ライダ――――ッ!キ――――ック!!」


そして仮面ライダーBLACKの必殺技ライダーキックが決まった。

必殺の一撃を受けた怪人は断崖絶壁のこの岸から海へと吹っ飛ばされた。

12 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:26:14.39 ID:5HVmwGJ40

戦いが終わり変身を解いた光太郎は先ほど怪人が落ちた周囲を見渡した。

既に怪人の身体はどこにも見当たらない。どうやら海の底深くに落ちたのだろう。

こんな真夜中だ。これ以上の捜索は不可能。

それにライダーの必殺技を受けたからにはもう助かりはしない。

ところであの怪人は一体何者だったのか?

ゴルゴムにしてはどうも異質過ぎる。それでは別の組織の怪人か?

まさかゴルゴムの他に改造人間を作る技術のある組織がいるとは思えない。

それにこんな小島で怪人が何を企むというのか?

どう考えてもこの島で悪事を企む理由がない。

とにかくもう終わったことだ。光太郎は今もまだ賑わう祭りの会場へと戻っていった。
13 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:28:15.05 ID:5HVmwGJ40

ここは小豆島の人間でもほとんど知る者がいない海岸の洞窟にある祠。

いつ誰が作ったのか不明だがもう何千年も…

いや、ひょっとしたら何万年も前から存在している古の時代から続く秘密の祠だ。


「ア…ウゥ…」


そこへ先ほどの戦いで傷ついた怪人が命辛々帰ってきた。

ここは彼の住処。もう何万年もこの地に居続けている。

本来なら彼はこの地の住人ではなかった。

だが一族の長に逆らい故郷を追放されこの地へとたどり着いた。

彼は人を狩ることをゲームの遊びのように愉しむ残酷な一族の出身だった。

故に彼もその習性に従いこの地で人を狩ろうとしていた。

そんな時、彼はこの祠を見つけた。
14 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:29:34.88 ID:5HVmwGJ40


「バ…ミ…ジョ…」


この祠にはあるモノが納められている。彼はそれを祭壇として称して奉っていた。

祭壇は彼がこの地を訪れるよりもさらに前の時代から存在していた。

怪人の力が備わっている彼にはこの祭壇に神秘的な力が宿っているという直感があった。

この祭壇には神が宿っている。

それまで信仰心を持たなかった彼は唯一この祭壇に宿る神の存在を信じた。

ある日、試しにこの地にいる人間を襲いその者の血肉を祭壇に宿る神へと捧げた。


『………』


すると祭壇から声が聞こえてきた。

不気味さな気配を漂わせるがそれでいてどこか神々しさを感じさせる唸り声だ。

この声を聞いて彼はこう思った。神は自分が生贄を捧げてくれたことを悦んでくれたと…

このことがきっかけで彼はこの地で生きていくことを決めた。そしてある行いを始めた。

それは彼の一族が古来から行ってきた狩りだ。

自ら掟を作りそれに従い狩りを行う。彼も一族の掟に従い狩りを行った。

彼が決めた掟とは一年に一度だけこの島で行われる祭りの時だけ人を生贄として拐うこと。

生贄を祭壇の前で殺してその血肉を供物として捧げる。

そしていつの日か祭壇に祀られている神が自分の想いに応えてくれると信じていた。

だがライダーとの戦いに敗れてその命は風前の灯…

この長い歳月を掛けて大勢の命を祭壇に捧げたというのに応えることは決してなかった。

それだけが心残りと自らの命が朽ち果てようとした時だ。
15 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:32:06.65 ID:5HVmwGJ40


『………』


声だ。どこからともなく声が聞こえてきた。

誰が発しているのかわからないが明らかに声が頭の中に響いてきた。

この声は聞き覚えがある。あの日、もうずっと昔一度だけ聞いた神の声だ。

まさか…神がようやく自分に応えてくれたのか…?

その期待に応えようと最期の力を振り絞り祭壇の前まで駆け寄った。

するとどうだろうか?祭壇の中から何かが自分の身体を包み出した。

このまとわり付くモノはなんだ?だが不思議と甘美な心地良さを感じてしまう。

怪人は思った。きっと神が自分に力を与えてくれるのだろうと…

ああ、これでゲゲルを続けられる。

古の時代、かつて自分たちグロンギと呼ばれる一族が行ってきたリントを狩るゲゲル。

かつて自分を追放した一族の長。ン・ダグバ・ゼバ

以前は一族から追放されたことを深く恨んでいた時期もあった。

だが今は一族から追放してくれたことを感謝すらしている。

そのおかげで自分は神と出会えた。そんな満足していると深い眠気に陥ろうとしていた。

どうやら強靭な身体を得るのに長い年月を費やさなければならないようだ。

いいだろう。いつまでも待ってみせる。伊達に何万年も待ち続けていたわけじゃない。

待ち続けてやる。そして神の力を得た時こそあの黒いクウガを倒す。

彼はそう心に誓いながら深い眠りについた。

それから12年の歳月が流れた。

――――――――

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――――
16 :1 [saga]:2018/12/31(月) 21:32:50.46 ID:5HVmwGJ40
とりあえずここまで
続きはぼちぼちやっていきます
それではよいお年を…
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/31(月) 22:14:22.39 ID:X0MU3t1oO
RX?
18 :1 [saga]:2019/01/03(木) 23:53:00.36 ID:HLw/mjUv0


2000年9月某日―――


ここは神戸港。四国と本土を行き来するフェリー乗り場である船が停船していた。

この船は東京都から出航して本来ならもう四国の高松市に着く予定だった。

だが航行中、思わぬエンジントラブルが発生。

そのため急遽この神戸港に停船して修理作業に取り掛かっていた。


「どうやら面倒なことになってしまったね。」


「そうみたいですね。」


「まあ仕方ないさ。こんなこともある。」


船長が乗客に停船した事情を説明している中で三人の男たちが話していた。

一人は葦原和雄。彼らの中で一番の年上で人の良さそうな温和な性格の持ち主だ。

もう一人は木野薫。職業は医者で

先ほどある少年が暴力沙汰を起こそうとした時は身体を張って止めた正義感の強い男だ。

そして最後の一人は…

19 :1 [saga]:2019/01/03(木) 23:54:01.46 ID:HLw/mjUv0


「まいったな。早く高松に行ってこの手紙の謎を解きたいのに…」


『津上翔一』と宛てられた封筒に象形文字の描かれた手紙を持って頭を悩ませる青年。

青年の名は沢木哲也。彼には雪菜という姉がいた。だが雪菜は自殺した。

姉は死ぬ直前、津上翔一なる人物に奇妙な手紙を残していた。

もしかしたら姉の死は単なる自殺ではないのだろうか?

そう疑問に思った哲也はこの津上翔一なる人物が居る四国の高松市を訪ねようとしていた。

それにしても厄介なのはこの手紙だ。

先ほど医者の木野にも見せたがこんな文字は見たこともないという。

この手紙は姉が生前遺した唯一の遺品。

なんとか手掛かりになればと思っていた時だ。

20 :1 [saga]:2019/01/03(木) 23:55:12.21 ID:HLw/mjUv0


「あの…ひょっとしてその手紙に書かれているのは…古代文字ですか…?」


そんな哲也の背後からある青年が声を掛けた。

年歳は哲也と同じくらいか少し上くらいだろうか。

ラフな格好でとてもじゃないが隣にいる木野ほど博識そうには見えない。

それにしてもこの青年はとてもいい笑顔をしていた。

唯一の肉親である姉を失った哲也にしてみればそれが少々恨めしくも思うくらいだ。

元々哲也もこの青年ほどでもないが陽気な性格の持ち主だった。

だが姉の死後、哲也から笑顔は失われた。

そのせいで他人の笑顔を拝むのがどうしても煩わしく思えてしまった。


「え〜と…この文字の内容がわかるんですか…?」


「うん、そうだね。俺はわからないけど…
知り合いに大学の考古学者がいてその人ならわかると思うんだ。」


その話を聞いて哲也は思った。

さすがに初対面の青年を頼るのはどうかと疑ってしまった。

木野のような頼もしい人ならいい。

だが見るからに軽薄そうでおまけにどんな人間かもわからない男を信用していいのか?

思わず疑いの目を向けてしまった。
21 :1 [saga]:2019/01/03(木) 23:56:24.89 ID:HLw/mjUv0


「大丈夫、彼は信じられるよ。」


そこへもう一人の青年が現れた。

こちらはキチンとしたスーツに身だしなみを整えた如何にもお硬そうな仕事人間。

一見何の繋がりも見受けられない二人の男たちはどういう関係なのか?


「あの…まだお名前を聞いてないんですけど…?」


「ああ、失礼した。警視庁の一条薫といいます。」


一条と名乗った男は哲也に警察手帳を見せて自らが警察官であることを示した。

それでは隣にいる青年も警察官なのか?明らかに警官には見えないが…

そんな青年だが哲也に対してある名刺を手渡した。


[夢を追う男 2000の技を持つ男 五代雄介]


見るからに胡散臭い名刺だ。今時詐欺師だってこんなモノは使わない。

やはりこんな男に手紙を読ませるべきではない。そう思って封筒にしまおうとした時だ。

22 :1 [saga]:2019/01/03(木) 23:58:15.70 ID:HLw/mjUv0


「大事な手紙なんだよね。」


「え…まあそうですね…姉が最期に残したものですから…」


「俺もさ、子供の頃に父親がいなくなったんだ。」


五代は初対面の哲也に自らの生い立ちを語った。

子供の頃、五代の父は亡くなってしまった。当時まだ幼い五代には余りにもつらい現実だ。

そんな時に彼は恩師にこんなことを言われた。

23 :1 [saga]:2019/01/03(木) 23:58:52.92 ID:HLw/mjUv0


『お父さんが亡くなって、確かに悲しいだろう。』


『だがそんな時こそ、お母さんや、妹の笑顔のために頑張れる男になれ。』


『いつでも誰かの笑顔のために頑張れるって、すごく素敵な事だと思わないか。』


誰かの笑顔…そう言われて哲也は姉が自殺する直前のことを思い出した。

あの頃、姉は何か思いつめていた。普段は優しい姉から笑顔は消えていた。

何故姉は笑顔を失ったのだろうか?その答えは今も謎のままだ。

だが五代の話を聞いてこうも思った。ひょっとしたら守れたのかもしれない。

もっと自分が姉に対して親身になっていれば姉の笑顔は守れたのではないか。

そう思うと後悔せずにはいられなかった。


「どうしてそんな話を…俺に…」


「ごめんね。お姉さんのことは哀しい。けどキミが笑顔を失うのは間違っていると思う。
俺は思うんだ。今は無理かもしれないけどいずれキミも誰かの笑顔を守る時が来る。
その時のためにキミ自身も笑顔でいてほしい。」


五代はとても優しい笑顔でそう言ってくれた。いつか誰かのために…

今の哲也にとってそんな相手はいない。それでも…

24 :1 [saga]:2019/01/03(木) 23:59:32.44 ID:HLw/mjUv0


「ところで警視庁の刑事さんがフェリーに乗るなんてもしかして未確認生命体が絡んでいるんですか?」


そんな哲也と五代の会話を遮るように木野が思わずそんな質問をした。

その質問を聞いて乗客たちが思わずどよめいた。


――――未確認生命体


長野県九郎ヶ岳から出現した謎の生命体。

その出自は未だ不明で各地に出没する怪人集団のことだ。

ヤツらはまるでゲームのように人間を殺戮する危険な存在。

最近では都内に出没するようでこんな四国の高松市までは未確認など現れない。

だからこのフェリーの乗船客も安心して旅行していた。

だがあの未確認生命体が現れるとなれば話は別だ。

このことから乗客たちは動揺を顕にしていた。


「いえ、そんなことはありません。何かあれば我々警察が動きますから安心してください。」


とりあえず船の中でパニックを起こすのはまずい。

一条はなんでもないと乗客たちを落ち着かせてひとまずその場は静まった。

そんな時、一条の携帯に連絡が入った。どうやら上層部からの指示が出たようだ。
25 :1 [saga]:2019/01/04(金) 00:01:48.73 ID:+PVxP4ki0


「五代、この船を降りるぞ。」


「え?けど船で四国まで向かうんじゃなかったんですか?」


「その予定だったが修理に時間が掛かりすぎる。俺たちはヘリで向かうことになった。」


こうして警察上層部の指示で五代と一条はこの神戸港であかつき号から降りた。

どうやら彼らは急用らしくこのまま船の修理を待つ余裕はないらしい。

急いでこの神戸港にあるヘリポートに向かおうとした時だ。


「あの、手紙。これ書き写したヤツです。よかったら調べてもらえますか。」


そこへ哲也が駆け足でたった今書き写した手紙を持ってきた。

ぜえぜえと全速力で息を切らせながら走って五代に駆け寄りながら彼はこう言った。


「この手紙は姉が遺したモノです…俺…まだ姉さんの死に納得してない…」


「せめて…どうしてそんな真似に及んだのか知りたい…」


「初対面の人にこんなこと言うのは変かもしれないけど…」


「俺もせめて姉さんのことを笑顔で見送りたんです。」


「だからどうかお願いします。」


今の自分が出来ること。それは姉を笑顔で見送りたい。

哲也の意志を知った五代は彼から託された手紙を大切に預かった。

去り際、五代は親指を立ててサムズアップで応えた。

この手紙に書かれた意味を解き明かしてみると哲也に誓ってみせた。
26 :1 [saga]:2019/01/04(金) 00:03:32.13 ID:+PVxP4ki0


「オォーッ!ヘリコプターだ!」


「落ち着け。別に乗るのは初めてじゃないだろ。長野で乗っていたじゃないか。」


「あの時は怪人と飛び移って戦ってたから満喫してる状況じゃなかったですからね。」


待機していたヘリコプターに乗り込むと

五代と一条は四国の瀬戸内海を渡りある場所を目指した。

この瀬戸内海に位置する小豆島。

数日前に警視庁未確認生命体対策班にある目撃情報が寄せられた。

海岸にある文字が刻まれていた。その文字は未確認生命体が扱うグロンギ文字。

五代の友人で城南大学の考古学研究者佐渡桜子が解読したが

それは挑戦状とも取れる意味が記された文字でどうやら小豆島で戦いを望んでいるようだ。

未確認生命体の存在が確認された以上、グズグズしているわけにはいかない。

さっそく一条は協力者の五代雄介を連れて小豆島へと向かった。

27 :1 [saga]:2019/01/04(金) 00:06:01.99 ID:+PVxP4ki0


「けど一条さん。都内に居る未確認を放っておいて大丈夫なんですか?」


「まあ心配だが本部には杉田さんや桜井さんがいる。
それに第41号を倒してまだ間もない。ヤツらもそうすぐには動かないだろう。」


今なら遠出も可能で未確認生命体を叩くことが出来る。

とにかく小豆島にいる人たちを守らなくてはならない。

五代は拳を握り締めて改めて決意を固めた。


「小豆島か。懐かしいな…」


するとヘリのパイロットがぼそっとそんなことを呟いた。

ちなみに今回だが急な要請だったため警察のヘリは間に合わなかった。

そのため偶然神戸港に居合わせた民間のヘリをチャーターすることになった。

28 :1 [saga]:2019/01/04(金) 00:09:38.70 ID:+PVxP4ki0


「改めまして、佐原航空の南光太郎です。以後よろしくお願いします!」


このヘリを操縦するのは12年の歳月を経てヘリのパイロットとなった光太郎だ。

ゴルゴムとの戦いの後、光太郎は親戚の叔父の元に身を寄せていた。

あれから光太郎は様々な敵と戦い勝利を収めてきた。

長い戦いを終わらせた光太郎は再びヘリのパイロットとして平和を満喫していた。


「初めまして、俺は五代雄介です。それで…南さんは…」


「ああ、俺のことは光太郎でいいよ。
俺も昔小豆島に行ったことがあってね。そういえば今の時期は祭りがあったな。」


「この時期に祭りですか?」


「ええ、12年前に一度だけ参加したけど賑やかな祭りでしたよ。」


光太郎は五代と一条と会話を交わしながら一路小豆島を目指した。

これより戦いの舞台となる小豆島。そこで彼らは大いなる存在と対峙することになる。

29 :1 [saga]:2019/01/04(金) 00:16:22.82 ID:+PVxP4ki0
ここまで
戦士たちの邂逅でした
ちなみに光太郎さんはクライシスとの戦いが終わっていて
クウガ側は41号=ゴ・バダー・バを倒した直後になります
本編でも空白の期間がその辺になるんでそんな都合です
30 :1 [saga]:2019/01/13(日) 21:37:21.57 ID:aHunILIO0


〜PM12:00〜


「お待ちしていました。警視庁の一条警部補ですね。自分は香川県警の氷川誠です!」


光太郎の操縦するヘリが

小豆島のヘリポートに着陸するとそこには若い制服警官が待機していた。

彼の名は氷川誠。今年香川県警に配属された新米の警察官だ。


「上司からの命令で自分が一条刑事の案内役になります。どうぞよろしくお願いします。」


彼は礼儀正しく一条に敬礼すると同時にあるモノを用意した。

それは一条が前もって香川県警に要請したモノだ。

TRCS2000A。警察が新しく配備した新型の白バイだ。
31 :1 [saga]:2019/01/13(日) 21:39:46.36 ID:aHunILIO0


「一条さんこれってトライチェイサーじゃないですか!」


「ああ、TRCS2000の量産タイプだ。現地ではこれを使ってくれ。」


未確認生命体と戦う五代雄介はこれまで警察の次世代バイクTRCS2000で戦ってきた。

だが未確認生命体との度重なる激戦と

先日の41号との死闘でTRCS2000は金属疲労を起こしてしまう。

そして新たに得た力、ビートチェイサー2000で41号を追い詰めた。

だが今回は本土を跨いで移動したためにバイクの輸送は出来なかった。

そこで一条は代用品として量産タイプのTRCS2000Aを用意しておいた。

ちなみにこのTRCS2000Aは

経費削減のため五代が使っていた試作品のトライチェイサーよりも性能は落ちている。

それでも何もないよりはマシだ。

五代はさっそくエンジンキーになるトライアクセラーを装着して試乗してみた。


「悪くありません。これなら行けそうです。」


「すまない。本当ならBTCS2000があれば心強いはずなのに…」


「そんな、謝らないでください。このバイクでも十分戦えますよ。」


五代は明るい笑顔を絶やさず一条を励ましてくれた。だが一方で一条の心境は複雑だ。

未確認生命体との戦いは常に命の危険が伴う。

それなのに満足な装備を用意させられないまま五代を死地に赴かせることは

一条にとってみれば心を痛めることでしかない。それに心配事はそれだけではなかった。
32 :1 [saga]:2019/01/13(日) 21:41:04.45 ID:aHunILIO0


「一条刑事、これはどういうことですか。」


「氷川くんか。どういうこととは…質問の意図がわからないが…?」


「惚けないでください!何故警察の装備を一般人に託すんですか!?」


一条は何故氷川が不機嫌なのかようやく理解できた。

事情を知らない氷川にしてみれば一条の行いは警察官としては逸脱している。

それにTRCS2000Aはまだ警察に配備されたばかりの新装備だ。

そんな貴重な装備を民間人の五代に惜しげもなく貸し出している。

それを思うと氷川が自分を追求するのも仕方ないのだろう。
33 :1 [saga]:2019/01/13(日) 21:43:17.35 ID:aHunILIO0


「ここにいる五代雄介は警察の協力者だ。
このことは警視庁の未確認対策班も了承している。香川県警にも伝えていると思うが…」


「ですが…民間人に警察の車輌を貸し出すなんて問題行動ですよ。」


「構わない。何かあったら俺が責任を取る。それでいいな。」


「了解しました。けど僕は…納得できません。」


一条がどんなに説得に努めようと氷川は納得した様子を見せなかった。

まだ新米の氷川にとっては警察の規律こそが第一だ。

それは規律を重んじる警察官としては正しい姿勢であり

そんな氷川の言動を一条が注意すること自体が間違っている。

今でこそ五代は一条の所属する警視庁の未確認生命体対策班の刑事たちと

良好な関係を築けているがそれ以前は彼も未確認と同等の危険な存在として扱われていた。

それを思うと五代の素性を知らない氷川が自分を批難する気持ちもわからなくもない。

だが今は非常時だ。警察官としての規律など重んじている場合ではない。

34 :1 [saga]:2019/01/13(日) 21:43:59.23 ID:aHunILIO0


「氷川さん大丈夫ですよ!俺もしっかりやりますからお互い頑張りましょう!」


そんな氷川も最後はマイペースな五代に押し切られてしまった。

とにかくこんなところでグダグダしても始まらない。

一条は氷川と共にパトカーに乗り込み、五代もTRCS2000Aに乗ると出発していった。

35 :1 [saga]:2019/01/13(日) 21:44:29.09 ID:aHunILIO0
ここまで
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/14(月) 19:58:57.23 ID:2yLksLvhO
クウガもRXもどっちも好きだから楽しみ
37 :1 [saga]:2019/01/15(火) 00:45:07.75 ID:vKiL9NoP0

光太郎はそんな彼らの出発を見送ると徒歩である場所へと向かった。

自分もこの島を探索するためにも乗り物が必要だ。

そのためバイクを調達するために近隣のバイク屋を訪れた。


「光太郎さん久しぶりですね。」


「ええ、ご無沙汰しています。大門さん。」


彼が訪ねたのはかつてゴルゴムとの戦いを支援してくれた大門明が営むバイク屋だ。

大門はゴルゴム壊滅後もこの地に留まりバイク屋を営んでいた。

光太郎は大門に事情を説明して手頃なバイクをレンタルすることにした。

そこで大門は店の奥にいる若いスタッフに声を掛けた。
38 :1 [saga]:2019/01/15(火) 00:46:07.83 ID:vKiL9NoP0


「なあ、何か使えるマシンはないか?」


「使えるマシン?それならHONDAのXR250がありますよ。」


「オフロード系か。光太郎さんそれでも構わないか。」


「ええ、むしろこうした島ならオフロードの方が扱いやすいですからね。」


光太郎が普段乗るバイクは主にスピードの出るフルカウル系のマシンだ。

だが今回に限ればオフロードのマシンでもちょうどいいのかもしれない。

あの二人、五代雄介と一条薫。

詳しい事情はわからないがどうやら彼らは

この島にいると思われる未確認生命体について捜索しに来たと言っていた。

未確認生命体については光太郎も新聞やTVのニュースで連中の存在を把握しているが

今年に掛けてから謎の怪人が各地に出没して一般人を殺害しているとのこと。

まさにかつてのゴルゴムの怪人そのものだ。

光太郎が仮面ライダーとして最後の戦いを終えてからかなりの年月が過ぎた。

その間に世界は平和を取り戻したはずなのに、今またそれを乱す者たちが現れた。

これを座視することは出来ない。

光太郎も彼らに協力してこの地に潜伏している未確認生命体を倒すつもりだ。
39 :1 [saga]:2019/01/15(火) 00:58:37.33 ID:vKiL9NoP0


「オーナー持ってきました。こいつでいいですか。」


そこへこの店のスタッフが、光太郎が乗るマシンを持ってきてくれた。

ちなみにマシンを持ってきてくれたスタッフだが…

茶髪のロン毛とまさに今風の若者だ。

よく見るとかなり若い。まだ十代の少年で恐らくは高校生くらいの年齢だろうか。

こんな少年がバイク屋で働いているとはどういう経緯なのか?


「紹介します。こいつは乾巧。先月からうちで働いてもらっているんですよ。」


「どうも、乾です。」


「俺は南光太郎だ。よろしくな。」


光太郎は握手しようと手を差し出すが巧はそんなことは無視して店の奥へと戻っていった。

先ほどの明るい五代と比較すると素っ気ない態度で影のある少年だ。

まるで他人と触れ合うことを避けているようなそんな印象すら感じた。

40 :1 [saga]:2019/01/15(火) 01:01:52.19 ID:vKiL9NoP0


「大門さん、彼はどうしてあの歳で働いているんですか?」


「さあね。年齢はうちの輝一よりもちょっと下の16歳くらいだそうです。
本当なら高校に通っている歳なんですが自分探しってヤツなんですかね。
これまでずっとバイクで一人旅をしていたらしいですよ。」


大門は学校にも行かずフラフラしている巧のことをあまりよく思ってはいない。

こんなところにいないでちゃんと学校に行って将来について真面目に考えるべきだ。

そう何度か説得を試みたが何故か聞く耳持ってくれなかったそうだ。

別に十代で自分探しとは珍しいことじゃない。

だが光太郎は巧からそれ以外の何かを感じ取った。

あれは自分探しなんて類ではない。他人との触れ合いを極端に避けている節がある。

初対面だというのに何故かそんな気がしてならなかった。

41 :1 [saga]:2019/01/15(火) 01:04:54.49 ID:vKiL9NoP0
ここまで
>>36
ありがとうございます。頑張って完結させます。
42 :1 [sage]:2019/03/28(木) 22:09:39.75 ID:j1v9eGQH0


〜PM13:00〜


五代と一条、それに付き添いの氷川は

先ほどヘリで光太郎から聞かされたこの小豆島で行われている祭りの広場へと訪れていた。

未確認生命体が人を襲うのなら賑わっているこの広場で行うはずだ。

既に会場は警備のために20人近くの香川県警の警察官が配備されている。

例年通りの祭りならこの人数でも問題ない。だが未確認が襲撃するとなれば話は別だ。

恐らく警官が100人配備されても連中には太刀打ち出来ないだろう。


「一条刑事、本当に未確認生命体がこの広場に現れるんですか?」


「可能性は高い。
これまでの事件からしてヤツらは殺戮を楽しんでいる節がある。
それに現れるとしても一体だけではないかもしれない。」


「それは…どういう意味ですか…?」


一条はある写真を氷川に見せた。この島に設置されている防犯カメラに写っていた写真だ。

そこには奇妙な装いをした十数人ほどの若い男女たちが撮られていた。

このような辺鄙な島において明らかに場違いな格好だ。

43 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:12:23.16 ID:j1v9eGQH0


「この小豆島に来る前に取り寄せてもらったが島の防犯カメラに撮られていた。
恐らくこの連中は未確認生命体。
ここからは俺の推測だが連中はここで大規模な狩りを行うはずだと思う。」


一条の推測を聞いて氷川に緊張感が走った。

氷川も新米とはいえ警察官。未確認生命体の危険性は十分聞いている。

連中は一体だけでも機動隊すら難なく蹴散らす圧倒的強さを誇っている。

そんな危険な存在が十体以上もこの島に潜伏しているとなれば…


「まさか…この広場にも未確認が紛れ込んでいるのでは…」


氷川は思わず携帯している拳銃に手を触れようとした。

この場で一般市民を相手に銃を翳すわけにはいかない。

そんなことは十分わかっている。だが一条の推測が当たっていれば事態は深刻だ。

その焦りと緊張感からどうしても動揺せずにはいられなかった。

44 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:13:39.16 ID:j1v9eGQH0


「氷川さ〜ん!一条さ〜ん!差し入れ持ってきました〜!」


そんな氷川の元へ五代が駆け寄ってきた。

見ると五代は屋台で売られているかき氷や焼きそばを食べながら祭りを満喫していた。

この状況で呑気にはしゃぐ五代を見て先程までの緊張感が解かれてしまった。


「五代さん!この非常時に不謹慎な行動は謹んでください!」


「まあまあ、張り詰めたって仕方ないですよ。今はリラックスしましょう。」


「五代の言う通りだな。
俺たちが動揺してしまえば敵の思うツボだ。下手に焦ればミスを犯すこともある。」


憤りを感じる氷川とは対照的に

五代の行動に慣れた一条も差し入れを食べて気を落ち着かせていた。

一条の言うように自分一人動揺しても始まらない。

とにかく今はこの島の人々を守ることに全力を尽くそう。そう決意したところに…
45 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:14:51.91 ID:j1v9eGQH0


「やあ五代くん。それに一条さんに氷川くんも一緒か。」


「あっ!光太郎さんも祭りに来たんですか!」


「まあね、二人は俺のお客さんだから俺だけ先に帰るわけにはいかないだろ。」


祭りの広場で五代たち一行と合流する光太郎。そんな光太郎だが連れを伴っていた。


「まったく…何で俺が…」


一人は先ほど大門のバイク屋で知り合った巧。もう一人は…


「ほら、弦太郎くん。みんなに挨拶してくれ。」


「よぅっ!おれ弦太郎!よろしくな!」


光太郎と巧に連れられた5歳くらいの幼い元気で活発な男の子。

この子の名前は弦太郎。

実は大門は知り合いの子供である弦太郎を預かっていた。

だがこんな島で子供の遊ぶ場所などほとんどないので

光太郎に伴われて巧と共にこうして祭りの広場にやってきた。
46 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:16:22.77 ID:j1v9eGQH0


「なあ巧!祭りっておもしれーな!」


「…うるせえ。それよりはぐれるなよ。迷子になったら俺が怒られるからな。」


ぶっきらぼうな態度だが幼い弦太郎が迷子にならないように手をギュッと握る巧。

そんな巧を見て光太郎も彼は決して悪い人間ではない。

恐らく不器用な性格が災いしているだけだろう。

それが人見知りになっているのではないかと思った。


「そっか、弦太郎くんか。俺は五代雄介。よろしくね。」


「オーッ!おれたちダチだな!」


「ダチ?ああ、友達のことだね。うん!俺たち友達だよ。それに一条さんや氷川さんもだ。」


弦太郎は友達になった証に五代たちと拳を交わして友情の印を交わした。

これでずっと友達だ。そう笑顔で自慢する弦太郎にこの場に漂う緊張感が少しだけ解れた。


「まったくお前はさっきからそればっかりだな。」


「こうするとみんなとダチになれるんだ!巧もやろうぜ!」


「やなこった。面倒臭い。」


そんな弦太郎を鬱陶しがる巧。

これだけ積極的な弦太郎からの申し出すら拒むとは相当な筋金だと察する光太郎。

ところで巧だがこの祭りの会場である変化に気づいた。
47 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:18:13.53 ID:j1v9eGQH0


「なあ、なんか妙な連中が紛れてないか。」


その言葉に光太郎に五代、それに一条と氷川も周囲を見渡した。

なにやら正面からぞろぞろと奇妙な服装をした集団が姿を現した。

雰囲気からして明らかにこの祭りを楽しもうとする感じではない。

それに氷川は気づいたがあれは先ほど一条が見せてくれたこの島に現れた不審人物たちだ。

さらに驚くべきはその人数だ。


「嘘だ…百人も…いるなんて…」


氷川の額に一筋の冷や汗が垂れた。

たった一体だけでも一度暴れたら数十人の被害者を出す未確認生命体。

それがこんな小島に百体も出没したとなれば大事態だ。

先ほど一条から見せてもらった防犯カメラの映像よりも人数が増えてるなんて予想外だ。

しかもこの事実を知るのはここにいる自分たちだけ。

他はまだ誰も知らない。

この祭りの会場には何も知らず笑顔で祭りを楽しむ人たちが大勢いる。

そんな人々をこの未確認生命体たちから守り抜けるのか。

氷川の緊張感はまさに頂点に達していた。
48 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:20:34.27 ID:j1v9eGQH0


「大丈夫。きっとなんとかなるから。」


そんな氷川を落ち着かせるかのように五代が笑顔で応えてみせた。

だがこの状況でどうやって…


「全員配置についてくれ。今からこれを起動させる。」


そんな時、一条はこの島に持ち込んできたある装置を起動させた。

警視庁が開発した超音波発生装置。

この装置は元々未確認生命体3号(ズ・ゴオマ・グ)の対策に作られた装置。

同じく未確認生命体に使用すれば攪乱に使用出来ると判断して用意していた。


「グ…ウガァァァ…」


一条が装置を起動させたと同時にこの超音波に先ほどの集団が突如として苦しみだした。

今がチャンスだ。一条はこの隙に氷川と現場にいる警官に祭りの参加者の避難を徹底した。

一条の指示を受けてすぐさま行動に出る氷川たち香川県警だが…


「リント………ガァァァァァッ!!」


だが獲物を目の前にしてみすみす取り逃がす未確認生命体ではない。

彼らは身体を変化させて怪人の姿へと変貌させた。

この事態を目撃した参加者たちは大パニックを起こした。

未確認生命体が目の前に出現したのだから当然だ。

なんとか警官たちが宥めているがそれにも限界がある。

このままでは殺される。なんとかしてくれとそう訴えた。
49 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:22:54.05 ID:j1v9eGQH0


「どうしたら…このままじゃ…」


この事態に氷川は思わず不安に陥った。

これでは市民に被害が及ぶ。どうしたらいいのかと…


「任せて!俺がいます!」


そんな時、五代が怪人たちの前に乗り出した。


「何を考えているんですか!危険だから下がって!」


一体何を考えているのかとすぐに呼び止めようとするが…


「大丈夫、だって俺…クウガだから!」


その五代だが怪人たちの前に飛び出すとポーズを取った。

すると彼の腹部から奇妙なベルトが出現。

光り輝くそのベルトは神秘の霊石アマダム。そして五代は構えながらこう叫んだ。
50 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:23:25.84 ID:j1v9eGQH0


「変身ッ!」


すると彼の全身は赤い甲冑に覆われた。

次の瞬間、そこには燃え盛る炎を纏った真っ赤な戦士が現れた。

その姿を目撃した氷川は思わずこう呟いた。


「あれは…四号…未確認生命体…第四号…」


未確認生命体第四号―――

人々を惨殺する未確認生命体の中で唯一人だけ人間の味方をする謎の戦士。

当初、未確認生命体はすべて抹殺対象だった警察も

何故か四号だけは味方であるかのような対応を取っていた。

この対応に何故なのかと氷川も疑問を抱いたこともあった。

だが今の光景を見てすべて納得した。

五代雄介、彼こそが四号であり人々の味方なのだと…
51 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:25:22.18 ID:j1v9eGQH0


「ヒィィィッ…クウガ…クウガ…!?」


五代雄介の変身するクウガの出現にグロンギたちは思わず怯みだした。

まさかこんなところにクウガが現れるとは予想していなかったようだ。


「オリャァァァッ!」


みんなを守るために拳を握り締め立ち向かうクウガ。

赤い姿が特徴のクウガ・マイティフォーム。

その五体を駆使した徒手空拳でグロンギの怪人たちを次々となぎ払った。

そんなクウガの活躍にグロンギの怪人たちは戸惑うばかり。

これではせっかくのゲゲルが台無しだ。

とにかくゲゲルを完遂させるためにも人間たちを襲わなくてはならなかった。

52 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:26:21.89 ID:j1v9eGQH0


「そうか。五代くんが新たな仮面ライダーだったのか。」


そんな五代の変身した姿を見て

光太郎は思わず新たな仮面ライダーの出現を目の当たりにしていた。

出会った当初から何かを感じさせる青年だとは思っていたが…

巷で噂になっている第四号が新たな仮面ライダーだとは予想外だった。

だが喜んでばかりもいられない。

未確認生命体の出現に辺りは大パニックを起こしていた。

このままでは人々が怪人たちの餌食にされてしまう。


「光太郎さん!どうすんだよ!」


そんな光太郎に思わず詰め寄る巧。

彼の手は幼い弦太郎を離すまいとギュッと握り締めていた。

そうだった。とにかく今は怪人たちをなんとかしなくてはならない。


「わかった。悪いが巧とそれに弦太郎にも協力してもらうぞ。」


いきなり名前で呼ばれて戸惑う巧と弦太郎を連れて光太郎は急いである場所へと向かった。

53 :1 [saga]:2019/03/28(木) 22:28:55.72 ID:j1v9eGQH0


「ハァァァッ!」


一方クウガはトライチェイサーを駆使してグロンギの怪人たちを翻弄させていた。

いくら量産型とはいえ優れた性能を持つトライチェイサーだ。

その特性を活かした突進攻撃での打撃に怪人たちは太刀打ち出来ずにいた。


「よし、今のうちだ!応戦しろ!」


一条も香川県警の警官たちと共に銃で怪人たちの動きを牽制していた。

警官の銃では強固な外皮に覆われたグロンギにダメージを負わすことは出来ない。

それでもクウガのサポートに徹することは可能だ。

それに超音波発生装置のおかげで怪人たちの動きはかなり限定されている。

さらにグロンギの苦手なガス弾を用いて怪人たちを徹底的に追い詰めた。


「みなさん落ち着いて避難してください!大丈夫、慌てないで!」


氷川もこの間に市民の避難誘導に回っていた。

本来なら氷川も一条たちと共に戦闘に加わりたかった。

だがまだ新米の自分にはそれだけの力は備わってはいない。足でまといになるのがオチだ。

それでも戦闘に参加しなくても人々を守ることは出来る。

この場にいる誰もが人々を守る。唯そのために行動を起こしていた。

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