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勇者「彼は正しく英雄だった」
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102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/08(火) 01:51:19.24 ID:tKLIg0wqO
受付嬢「魔法使いとの相性が良い、ですか?」
▼傭兵は説明した。
戦士は近接戦闘、魔術を使用すればやや遠隔での戦闘も可能である。
経験も豊富であり、魔法使いが多大な集中力を要する魔術を使用する際は援護も期待出来る。
歳が近いと言うのも理由の一つのようだった。
受付嬢「随分と高い評価ですね」
受付嬢「しかしながら当人は遠からず死亡すると言っていました。それについてはどうです?」
受付嬢「……そうですか」
受付嬢「もしも戦士がそうであるなら、貴男の傍に置いた方がよいのでしょうね。その時はお願い致します」
▼傭兵は悲しそうに頷いた……
受付嬢「落ち込まないで下さい。まだそうなると決まったわけではないでしょう?」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/08(火) 01:53:37.07 ID:tKLIg0wqO
▼傭兵は嘆いた。
受付嬢「……お気持ちは分かります」
受付嬢「戦士が本来歩むはずだった未来は破壊されてしまった。確かに不憫だと思いますが、どうすることも出来ません」
▼傭兵は怒りに震えている……
受付嬢「その怒りは尤もです」
受付嬢「しかし、才能溢れる若者が悪意ある大人によって消費されるのも世の常です」
▼傭兵は驚愕の表情で受付嬢を見つめた!
受付嬢「二年もあれば変わります」
受付嬢「貴男がこの街を去ってからの二年間、私はそんな人々を沢山見て来ました。貴男は私以上に見てきたはずです」
▼傭兵は何も言えない……
受付嬢「消費される若者」
受付嬢「貴男も、そうだったでしょう?」
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/08(火) 01:55:39.06 ID:tKLIg0wqO
受付嬢「だった、ではないですね。今も尚、貴男は縛られている」
▼傭兵はぐっと息を呑んだ。
受付嬢「……貴男が戦士の未来を案じるように、母も貴男の未来を案じていました」
受付嬢「自由に生きて欲しい。いつまでも鎖に繋がれたままでいて欲しくない。そう言っていました」
受付嬢「私もそう思っています」
▼傭兵は俯いた……
受付嬢「もう、よいのではないですか?」
▼傭兵の肩が僅かに揺れた。
受付嬢「一度自由に生きてみては如何です? 何ものにも囚われずに、自由に」
受付嬢「貴男になら、きっと何かを変えられます。私はそう信じています」
▼傭兵は答えない。
受付嬢「私ならもう大丈夫ですよ? 今では一人で歩くことも出来ます」
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/08(火) 01:57:16.54 ID:tKLIg0wqO
▼傭兵は答えない。
受付嬢「母もこの脚も、もう過去のことです」
▼傭兵は答えない。
受付嬢「こうして会えることは素直に喜ばしく思います。ですが、私はこんな形で貴男と繋がっていたくないのです」
▼傭兵には応えられない。
受付嬢「…………っ……ごめんなさい。今のは聞かなかったことにして下さい」
▼傭兵は頷いた……
受付嬢「ありがとうございます」
受付嬢「では、依頼は一旦区切りです。新たな情報が入るまでは待機して下さい。私からは以上です。お疲れ様でした」
▼傭兵は立ち去った……
受付嬢「……」
受付嬢「……」
受付嬢「……」
受付嬢「…………縛り続けるくらいなら、私は」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/08(火) 01:58:02.14 ID:tKLIg0wqO
第十話 束縛
終わり
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/08(火) 06:25:47.03 ID:qvoUjke8O
乙!
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/08(火) 07:26:09.86 ID:ZaCv8CPeO
乙
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 00:36:44.16 ID:Kl1kwKJDO
乙
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 00:37:15.02 ID:Kl1kwKJDO
乙
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 22:06:27.98 ID:tGuYwrdyO
第十一話
>>>>帰り道
戦士「来た時から思ってたけど、この街は広いな。店も人も多い、傭兵も」
魔法使い「確かに傭兵は多いかもね。それにこの街、今は綺麗だけど私が小さい頃は汚かったんだよ」
戦士「この街の生まれか?」
魔法使い「生まれたのはこの街だけど子供の頃に都に引っ越して、また戻って来た」
戦士「都はどうだった? 行ったことねえんだ」
魔法使い「ごちゃごちゃしてたかな。教育は進んでるんじゃない? 魔術に関しては特にね」
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 22:07:28.34 ID:tGuYwrdyO
戦士「………お前、特級だよな?」
魔法使い「そうだけど?」
戦士「ってことは、それで都に引っ越したのか?」
魔法使い「まあ、そんな感じ。学費とかも出るみたいだった。私より両親の方がやる気だったよ」
戦士「なる程なあ、娘に魔術の才能があるって分かればそうなるのも仕方ねえか」
魔法使い「かもね」
戦士「でもよ、戻ってきたってことは親御さんも一緒なんだろ? よく傭兵なんて許してくれたな」
魔法使い「喧嘩別れしちゃって一緒にはいないんだ」
戦士「そうなのか、そんなに期待してんなら連れ戻しに来そうなもんだけどな」
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 22:08:32.22 ID:tGuYwrdyO
魔法使い「……それは絶対にないよ」
視線を外して呟くように言った。
言葉通り、連れ戻しになど絶対に来られない。魔法使いの両親は既に他界している。
戦士「そんなもんかね……」
その絶対という言葉に引っ掛かったが、それ以上追及することはしなかった。
魔法使いの態度から、両親との間に何かがあったということを察したのだろう。
恵まれた才能があっても順風満帆な人生を歩めるわけではない。それは戦士もよく知っていることだった。
魔法使い「そんなもんだよ。アンタは?」
戦士「あん?」
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 22:09:38.98 ID:tGuYwrdyO
魔法使い「何で傭兵やってんのさ」
戦士「父親が傭兵だった。で、亡国の傭兵の話を聞かされて憧れた」
魔法使い「男の子って好きだよね、そういうの。英雄とか、ウソ臭い伝説とかさ」
戦士「男ってのはそういうのを聞くたびに強くなりたいって思っちまうんだ。ウソ臭くてもな」
魔法使い「信じてるの? その、オッサンの伝説ってやつ」
戦士「戦ってみて、伝説は全て本当だと思ったよ。聞いてた以上の人だった」
魔法使い「伝説の一つは確実に間違いだけどね」
戦士「は? 何がだよ?」
魔法使い「オッサンと戦った奴は死ぬって話だよ。アンタは生きてるでしょ?」
戦士「……そういや、そうだな」
魔法使い「ほらね? カビの生えた伝説なんて何の当てにもならないんだよ。オッサンは過去に生きてるわけじゃないしさ」
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 22:10:46.13 ID:tGuYwrdyO
戦士「……」
考え無しに口にしただけの言葉なのだとしても、その言葉は妙に心地良く響いた。
眠気と疲労で気怠げな魔法使いの横顔を、戦士は珍しい物でも見るような顔で見つめている。
その表情は魔法使いという人物を図りかねているようにも見えた。
才能はあるが自信過剰、あまり素直な質ではないが顔に出やすく、外見とは異なり子供っぽい女。
それが戦士の抱いていた魔法使いの第一印象だったのだが、どうやら違うらしい。
そんな視線に気付く様子はなく、魔法使いは酷く眠たそうに大きな欠伸を重ねている。
魔法使い「あ、此処みたいだね。へ〜、割かし良いとこじゃん。良かったね」
戦士「ありがとな、魔法使い」
魔法使い「受付さんは監視付けるって言ってたし妙なことしないでよ?」
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 22:12:04.42 ID:tGuYwrdyO
戦士「しねーよ」
魔法使い「なら良いけどさ。んじゃ、またね」
スタスタ
戦士「……」
通りの角を曲がるまで背中を見送ったが、魔法使いは一度も振り向くことはなかった。
その背中が先程語ったことを体現しているように思えて、戦士にはそれが眩しく見えた。
同世代の傭兵、しかも女性にこれほど強い衝撃を受けたのは初めてのことだった。
姿が見えなくなってからも呆けたように立ち尽くしていたが、ふっと笑った。
(先生には感謝しねえとな……)
闇の中で近々死ぬと告げられた時から、戦士は諦めと恐怖に囚われていた。
それは決して拭い去れるものではなく、心の奥底にしっかりと根付いている。
けれど今はただ、清々しさだけがあった。
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:12:31.36 ID:tGuYwrdyO
十一話 初めて見る景色
終わり
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:16:08.45 ID:tGuYwrdyO
第十二話
>>>>翌日昼
ガチャ パタン
魔法使い「おい〜っす」
戦士「よう、受付サン」
受付嬢「お待ちしておりました」
魔法使い(ねむ……)
戦士「呼び出すの早かったな」
受付嬢「急な呼び出しで申し訳ありません」
戦士「構わねえよ。で? 昨日の今日だけど、もう何か分かったのか?」
受付嬢「いえ、今回は調査の件で呼び出したわけではありません。調査に無関係とも言えませんが」
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:17:04.32 ID:tGuYwrdyO
魔法使い「どういうこと?」
受付嬢「特訓です。今後の戦いに備え、今の内に息を合わせておいた方が良いとのことでした」
戦士「先生が言ったのか?」
受付嬢「はい、魔法使いにとって他の傭兵と組むのはこれが初めてのことですから」
戦士「は? お前一度も組んだことねえの?」
魔法使い「別にいいじゃん……」
戦士「通りでぎこちなかったわけだ」
魔法使い「そんなこと分かるの?」
戦士「目眩ましするまで随分時間掛かってた。慣れてるなら、もっと早く使ってたはずだろ?
あの時は機を見計らってんのかと思ってたけど、単に何をしたら良いか分からなかったのか」
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:18:05.36 ID:tGuYwrdyO
魔法使い「……仕方ないじゃん、ああいう戦い方したことないんだから」
戦士「何ふて腐れてんだよ、別に責めてるわけじゃねえよ」
受付嬢「魔力の高さとその面倒な性格が災いして、今まで誰とも組むことがなかったのです」
魔法使い「あいつらが好き勝手言って嫉妬して嫌がらせしてくるのが悪いんだよ……」
受付嬢「始めた頃は協力を持ち掛けられた時もあったではないですか。それを断ったのは貴方ですよ」
魔法使い「だって、一人で出来るし……」
受付嬢「すぐそれですね。本当は寂しがり屋な癖に一人になろうとする。少しは素直になったらどうですか?」
魔法使い「はあ? 寂しがり屋とか受付さんに言われたくないかも。オッサンに甘えてるクセにさ」
受付嬢「甘えてなどいません、馬鹿馬鹿しい」
魔法使い「嘘だね。オッサンがいる時、表情がちょびっとだけ優しいじゃん。声も違うしさ」
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:19:10.61 ID:tGuYwrdyO
受付嬢「有り得ません」
魔法使い「そういうのは本人には分からないんだよ。って言うか昨日だって二人っきりで話してたじゃん」
受付嬢「仕事の話です。誤解を招くような言い方はしないで下さい」
魔法使い「はん、どうだか……」
受付嬢「嫉妬しているのですか?」
魔法使い「はあ?」
受付嬢「オッサンなどと言いながら彼を頼っています。父親に接する思春期の娘のようです」
魔法使い「なわけないでしょ、それこそあり得ないから」
受付嬢「そうでしょうか、私には甘えているように思えます。優しい父親を取られたのが気に障ったのではないですか?」
魔法使い「何その言い方、むかつくんだけど」
受付嬢「そうでしょうね、私も頭に来ています」
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:21:41.19 ID:tGuYwrdyO
戦士「ガキかよ」ボソッ
受付嬢「ガキ? 誰がです?」
戦士「お前等二人共ガキだって言ってんだよ。もうすぐ先生が来るんだろ? 少しは良い子にしてろよガキ共」
受付嬢「……」
戦士(こ、こえぇ……)
魔法使い「あれ、受付さん何怒ってんの? あ、そっか、受付さんはオッサンに子供扱いされたら嫌だもんね〜」
戦士「煽んなバカ!」
魔法使い「ふん」
戦士「ったく。ほら、もういいだろ。先生が来るまで黙ってろよ」
魔法使い「はいはい」
受付嬢「……」
戦士(魔法使いはまだ分かるが、受付サンまでこんなんだとは思わなかった。顔も声も冷たそうに感じたんだが、意外だな)
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:23:41.60 ID:tGuYwrdyO
受付嬢「……」ジー
魔法使い「な、なにさ、そんな目で見たって怖くないから」
受付嬢「張り込み二日目のことです」
魔法使い「は?」
受付嬢「彼と一緒に食事をして終始楽しそうに笑っていたのは十六才の女子。証言によれば随分とはしゃいでいたようです」
魔法使い「え、ちょっ何で」
受付嬢「しかし張り込み三日目、これ以上汗臭くなるのが嫌でお風呂に入りたいと我が儘を言って彼を困らせ」
魔法使い「おいやめろ」
受付嬢「張り込み四日目、少しでも彼を休ませようとしたのでしょうね。アンタ汗臭いからお風呂に入って来てと言って」
魔法使い「やめて下さいお願いします」
受付嬢「……」
魔法使い「……」
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:27:07.77 ID:tGuYwrdyO
受付嬢「……」
魔法使い「……」
受付嬢「………三日目の時点で予め購入していた替えの衣服を彼に渡し」
魔法使い「それはマジでやめろ」
受付嬢「……」
魔法使い「……」
受付嬢「…………購入する際男性用の召し物がよく分からず」
魔法使い「ちょおいっ!! おい受付っ!!」
受付嬢「はい?」
魔法使い「受付さん、それ以上はいけないよ」
受付嬢「恥ずかしがりながら店員にどれが良いか訊ねている姿が目撃され」
魔法使い「ちょっと待って聞いて?」
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:40:41.81 ID:dp1DiL4yO
受付嬢「お父様にですかと聞かれて、『あ、違います。でもその人、お父さんに似』」
魔法使い「だあああああああい!!! おいッ!! おい貴様っ!!」
受付嬢「気が触れましたか?」
魔法使い「世の中、知ってても言っちゃあならないことってのがあるよ」
受付嬢「素敵な話ではありませんか、話さずにおくのは勿体ないですよ。どうですか戦士、魔法使いはとっても優しい女の子でしょう?」
戦士「そっすね」
魔法使い「卑怯だよ、こんなの……」
受付嬢「酷いですね。私はただ、貴方が心配で監視を付けていただけです」
魔法使い「そうなんだ、それは素直にありがとう」
受付嬢「折角なので、この心温まるエピソードで貴方の評価を改めようと」
魔法使い「それが必要ないんだよ!! 得た情報を何でもかんでも話すのはやめてよ!!」
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:41:55.24 ID:dp1DiL4yO
受付嬢「何でもかんでもは話していません」
魔法使い「そういうのやめて? 腹立つから」
受付嬢「………………あっ」
魔法使い「えっ、なに、どしたの?」
受付嬢「五日目と六日目の話をしていません」
魔法使い「しなくていいんだよ!!」
受付嬢「そうですか、それは残念ですね。とても良い話なのですが……」
魔法使い「私は知ってるからいいよ……」
受付嬢「分かりました。二人だけの思い出にしておきたいのですね?」
魔法使い「言い方!! 言い方が悪意に満ちてる!!」
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:43:36.68 ID:dp1DiL4yO
受付嬢「それにしても遅いですね」
魔法使い「くっそ、覗き趣味の眼鏡女が、くっそ……」
受付嬢「口が悪いですね。お嫁に行けませんよ?」
魔法使い「性格が醜く歪んでる女よりはマシだよ」
受付嬢「五日目」
魔法使い「オッサン遅いね〜!」
受付嬢「ええ、そうですね」
戦士(先生、早く来ねえかな。つーか仲良いんだな、こいつら)
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:45:09.30 ID:dp1DiL4yO
>>>>それから数分後
▼傭兵が現れた!
戦士「先生、遅かったな。待ってたぜ」
受付嬢「……」
魔法使い「……」
戦士「いや、別になんもねーよ。で、特訓って何すんだ?」
▼傭兵は依頼書を差し出した!
戦士「この依頼を俺と魔法使いで?」
戦士「なる程な、こういうのから馴らしていくわけか。でもよ、もう少し上位の魔物でも良いんじゃねーか?」
戦士「……いや、理屈は分かるけど優し過ぎねえかな? 幾ら魔法使いに組んだ経験がないからって、こんな下位の魔物じゃ相手にならねえよ」
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:46:00.48 ID:dp1DiL4yO
▼傭兵は思案している。
戦士「単体で中位の魔物とかはいないのか? 先生が指示を出せば良い訓練になるぜ?」
▼傭兵は数枚の依頼書を取り出した!
戦士「何でそんなに持ってんだよ……」
戦士「つーか、連携より先に懐に潜り込まれた時の対処法から教えた方が良いんじゃねーか? 俺が相手になるからよ」
▼傭兵は戦士の提案に感心している!
戦士「へへっ、じゃあ、そうしようぜ」
▼傭兵は頷いた。
戦士「魔法使い、行こうぜ。まずは入り込まれた時の距離の取り方からだ」
魔法使い「そんくらい出来るってば」
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:47:24.37 ID:dp1DiL4yO
戦士「俺が相手でもか?」
魔法使い「……だったら見せてあげるよ。怪我しても知らないからね」
戦士「決まりだな、行こうぜ」
受付嬢「依頼は受けないのですか?」
▼傭兵は説明した。
受付嬢「近距離でどこまで出来るか確かめてから、ですか。分かりました」
受付嬢「街からは出ないのですね?」
受付嬢「では傭兵訓練場に行ってみては如何ですか? 現在利用している傭兵は極僅かですから多少のことなら問題はないかと思います」
▼傭兵は頷いた。
受付嬢「では、お気を付けて。魔法使い、頑張って下さいね」
魔法使い「うん、任してよ。んじゃ、またね」
戦士(さっきのやり取りが嘘みてえだ、さっぱりしてんなあ)
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:48:27.00 ID:dp1DiL4yO
魔法使い「ほら、さっさと行くよ」
戦士「はいはい。んじゃな、受付さん」
受付嬢「はい、戦士もお気を付けて。あまり無茶はしないで下さい」
戦士「了解」
▼三人は応接室を後にした。
受付嬢「戦士、まるで以前から居たかのように馴染んでいますね。あれも才能なのかも知れませんね……」
受付嬢「……」カリカリ
受付嬢「……」ペラッ
受付嬢「……」カリカリ
受付嬢「……」ペラッ
受付嬢(戦士が羨ましい)
受付嬢「……」
受付嬢(あの輪の中に入れたなら、笑い合えたなら、どんなに幸せでしょう……?)カサッ
受付嬢(これは手紙ですね。依頼書に紛れ込んだのでしょうか? 差出人は……!?)
受付嬢(この印は、まさか……)
受付嬢(…………………………間違いない。これは、勇者の)
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:49:24.74 ID:dp1DiL4yO
>>>訓練場
戦士「塀に囲まれた刑務所みたいだな」
魔法使い「へ〜、中はこんな感じなんだね。人いないなら子供達に使わせたら良いのに」
▼傭兵は手を叩いて合図した。
戦士「うっし! じゃあ始めるか!」
魔法使い「え、もうちょっと下がってよ」
戦士「何だよ、仕方ねえな……」
魔法使い「今だ、えいっ」ボッ
戦士「あぶねっ!? バカじゃねえの!?」
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:50:20.61 ID:dp1DiL4yO
魔法使い「でも避けたじゃん」
戦士「こ、この野郎、やってやるよ……」スチャッ
▼戦士は半身を取って剣を構えた!
魔法使い「え、それ使うの狡くない?」
戦士「峰打ちだし手加減するから安心しろ」
魔法使い「ちょっ」
▼戦士は横一線に振り抜いた!
魔法使い「あぶなっ!?」
▼魔法使いは咄嗟に杖を構えて防いだ!
魔法使い(重っ!? これでも手加減してんの!?)
戦士「チッ、眼も良いのかよ。それともただの勘か? どっちにしろ才能ある奴は違うなあ!!」
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:55:44.15 ID:dp1DiL4yO
戦士「何だ!! 動かねえのか!?」
魔法使い(笑ってる、痩せた狼みたい。あ、これは褒めてないか……でも、間違いなく強い)
▼戦士は剣で杖を押し込んだまま距離を詰める!
魔法使い「……」
戦士(あれは何かあるな。でもまあ、突っ込まねえと特訓にならねえからな!!)
魔法使い(……今!!)
▼魔法使いは戦士との間に幾つもの火球を作り出した!
戦士(凄えな、飛ばさずに設置出来んのかよ。それにこの数、流石は特級……)
魔法使い「どうだ!! 避けらんないでしょ!!」
戦士「嘗めんな」
▼戦士は火球の隙間を縫うように向かって来る!
魔法使い(嘘でしょ、速度も落とさずに……っ、ダメだ、下がらな……きゃ!?)
▼戦士は剣をぐっと押し込んだ! 魔法使いは態勢を崩して倒れてしまった!
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:58:03.71 ID:dp1DiL4yO
戦士「終いだ、魔法使い」
魔法使い「ズルい、今のナシ」
戦士「魔物相手にそれは通じねえぞ」
魔法使い「……」
戦士「素早い相手に火球を当てんのは難しい。だから止めてんだろ? それは分かる。あれは確かに有効だ」
戦士「でも抜けられたら意味がねえ。抜けられると思ったら、あれ全部を俺に集めて爆発させるくらいやれよ。油断すんな、本気出せ」
魔法使い「分かったよ。見せるよ、私の本気……」スッ
▼魔法使いは倒れたままで軽く杖を振った。
戦士「寝転がって何やって……オイ!!」
▼空中で制止していた全ての火球が、戦士に向かって放たれた!
戦士「このバカ!! 今じゃねえよアホかくたばれボケ!!」
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 22:59:25.59 ID:dp1DiL4yO
魔法使い「冗談だって今止め」
▼戦士は一瞬にして前方の火球を剣で打ち払い、爆発範囲から逃れた。
魔法使い「るから……」
戦士「っぶねえ」
魔法使い「……すご」
戦士「この野郎……」
魔法使い「え、ちょっと待ってよ、ちゃんと爆発する前に消したよ!?」
戦士「才能と魔力を無駄遣いした本気の悪戯はやめろ。タチ悪りぃから」
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 23:02:15.57 ID:dp1DiL4yO
魔法使い「でも、本気でやれって……」
戦士「本気で不意を突けとは言ってねえよ!! お前はあれか、脳味噌腐ってんのか!?」
魔法使い「もうやらないから許してよ!!」
戦士「何で態度がデケえんだよ……」
魔法使い「まあまあ、お互いの実力分かったし良かったじゃん」
戦士「……はぁ。お前、見えてたのか」
魔法使い「剣?」
戦士「ああ」
魔法使い「反応出来ただけで見切ったわけじゃない。さっきのは偶々だよ。あの距離から何度も打ち込まれてたら負けてた」
戦士「偶々ってことはねえだろ」
魔法使い「一度見たからタネは分かってるし、反応するだけなら出来た。どっちから来るか分かれば、後は杖を縦にして構えればどこかに当たる。でしょ?」
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 23:02:55.83 ID:dp1DiL4yO
戦士「勘かよ。博打じゃねえんだぞ」
魔法使い「戦うってそういうもんじゃない? アンタ、火球避けた時のこと説明出来る? 一度目なら兎も角、二度目なんて口では説明出来ないでしょ?」
戦士「まあ、確かに」
魔法使い「でしょ? そんなもんだよ」
戦士(天才ってやつか? こいつに剣を持たせたら良い線行くんじゃねえか?)
魔法使い「どしたの?」
戦士「これ、ちょっと振ってみろよ」
魔法使い「え、何でさ」
戦士「いいから」
魔法使い「……分かったよ。うわ重っ」ヨタッ
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 23:04:15.57 ID:dp1DiL4yO
戦士「振ってみろ」
魔法使い「………下手でも笑わないでよ」
戦士「おう」
魔法使い「よっし……うりゃっ!!」
▼剣は魔法使いの膝下で空を切った! まるで持ち上がっていない!
戦士「……」
魔法使い「はぁ〜、もう無理疲れた。はい、返す。これ以上は筋肉痛になりそうな気がする」スッ
戦士「お、おう……」
魔法使い「何? 言いたいことあるなら言ってよ。振らせたのアンタでしょ?」
戦士「なんつーか、お前に不得手なものがあって安心した……」
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 23:05:56.59 ID:dp1DiL4yO
魔法使い「は? 何それ?」
戦士「いや、もしかしたら何でも出来るんじゃねーかと思ってな」
魔法使い「はあ? なわけないじゃん。こんな腕でどうやって振るのさ」
戦士「それでも振れちまうのかなと思ったんだよ。変なこと言って悪かったな」
魔法使い「別に良いけどさ……」
戦士(魔術特化型の天才、だから先生は俺を引き取ったのか。愛されてんなあ、こいつ)
魔法使い「……あ、お腹空いた」
戦士(本人が気付いてねえってのがな……でもまあ、こういう奴は分かりやすくて好感持てる)
魔法使い「センセー、お腹空いた〜。何か食べよ〜」
戦士(いや、感覚的に分かってんのか? だから懐いてるのかも知れねーな。明らかに態度が違う)
魔法使い「何してんのさ、ご飯食べに行くよ。あ、戦士は何か食べたい物ある?」
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 23:07:19.81 ID:dp1DiL4yO
戦士「食べたい物? ん〜、肉」
魔法使い「いいね!! よしっ、お肉食べよう。センセ、戦士、早く行こ!!」
戦士(はしゃいじまって、これが素ってわけか。親とも何かあったみてーだし、受付サンの言う通り甘えてんのかもな)
▼傭兵も穏やかな表情で微笑んでいる……
戦士(……これがアンタの救いなのか?)
▼傭兵は魔法使いと共に歩き出した。
魔法使い「明日から依頼受けるよ。え? 大丈夫だよ、戦士だっているし一人じゃない」
魔法使い「戦士とならやってけるよ。さっきの見たでしょ? アイツ、私の火球避けたんだから」
▼傭兵は黙って話を聞いている。
戦士(いや、あれは違うな)
戦士(あれは救いを求めてるっつーより単なる親の顔だ。年も年だし、そうとしか見えねえ)
▼傭兵は振り向き、戦士に手招きした!
戦士(俺のこともガキ扱いかよ、嬉しそうな顔しやがって……まあ、付き合うさ)
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 23:08:33.32 ID:dp1DiL4yO
十二話 戯れの期限
終わり
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/09(水) 23:30:33.21 ID:TmLG9tlSO
今日はここまでです。
これで半分くらい終わったのでそんなに長くならないと思います。
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/10(木) 00:00:00.15 ID:gtJCi53DO
乙
無理に早く終わらせようとしなくても良いんだぜ?
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/10(木) 06:16:55.45 ID:7ztgfcCbO
乙!
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:38:35.51 ID:h08jzXpsO
第十三話
訓練場での手合わせから十日、新たな情報が入ることはなく調査は停滞していた。
この間、魔法使いと戦士の二人は傭兵による特訓を受けていた。
特訓内容は、傭兵が選んだ依頼を二人で達成するというものだ。
依頼は全て魔物討伐。傭兵も同行したが馬車の運転が主で、依頼は二人に任せている。
日に複数の依頼をこなし、馬車での移動範囲は街周辺の農村から都近辺までと広範囲に及んだ。
このような過密日程のため、傭兵は二人から不平不満が出ることを覚悟していたのだが、意外なことに魔法使いですら不満を漏らすことはなかった。
魔法使いにとって各地を巡る旅は非常に新鮮で、あまり苦にはならなかったのだ。
野宿することになった際は憤慨したものの、傭兵と戦士の二人が作った手料理には大層満足したらしく、すぐに笑顔を見せた。
傭兵と戦士はその笑顔にほっと胸を撫で下ろしたが、笑顔を見せた理由は手料理以外にあった。
それはとても単純なもの。
魔法使いは、三人での旅が楽しかった。
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:40:28.55 ID:h08jzXpsO
こうして瞬く間に十日が経った。
この特訓での魔法使いの成長は目覚ましく、魔術の幅も広がりを見せ始めた。
危険な場面は幾度もあったものの、それら全ては戦士の援護によって事なきを得ている。
その献身的とも言える戦いぶりによって、戦士は早期から魔法使いの信頼を得るに至った。
近距離、遠距離共に優れた力を発揮する戦士の存在は非常に頼もしく、魔法使いは安心して戦うという感覚を初めて体験する。
信頼出来る存在を得たことにより攻撃一辺倒だった魔法使いの思考も変化し始め、徐々に献身的な行動を取るようになった。
傭兵はこの変化に確かな手応えを感じ、以前より危険度の高い依頼に切り替える決断を下す。
それによって魔法使いに更なる変化を促すと同時に、広い視野を身に付けさせる狙いもあった。
その後も精力的に依頼を受け続けて更に数日が経った頃、二人は前衛後衛に囚われない柔軟な戦法を見せ始めた。
それこそが傭兵の二人に求めた理想であり、その形は出来上がりつつある。
この先も特訓は続き、先生と生徒二人の関係は長らく続くものと思われた矢先、傭兵は忽然と姿を消した。
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:42:09.17 ID:h08jzXpsO
>>>>
魔法使い「センセはどこ」
受付嬢「お答えすることは出来ません」
魔法使い「何で」
受付嬢「お答えすることは出来ません」
魔法使い「ふっざけんなっ!!」
戦士「落ち着け、話にならねえぞ」
魔法使い「だって!!」
戦士「怒鳴ったところで何も変わらねえんだ」
魔法使い「……っ……分かってるよ、うるさいな」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:45:01.57 ID:h08jzXpsO
受付嬢「魔法使い」
魔法使い「なにさ」
受付嬢「この街にいる間、私にも調査を手伝わせて欲しい。貴方はそう言ったはずです」
魔法使い「それは……」
受付嬢「彼が街を離れた以上、その約束は適応されません。違いますか」
魔法使い「聞きたいのはそういうことじゃない!!」
受付嬢「何も言わずに行ったのは、何も言えないということ。分からないはずはないでしょう」
魔法使い「知らないよっ!! 分かんないよそんなのっ!!」
受付嬢「……」
魔法使い「…………っ……ごめん、ちょっと出て来る」
ガチャ パタン
受付嬢(魔法使い……)
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:47:39.01 ID:h08jzXpsO
受付嬢「……」
戦士「急にいなくなっちまったのが寂しいんだ、分かってやってくれ」
受付嬢「分かっています」
戦士「あんたはどうなんだ。どんな関係か知らねえが先生とは長いんだろ? 寂しくねえのか?」
受付嬢「慣れていますから……」
戦士「……そうか」
受付嬢「戦士」
戦士「あん?」
受付嬢「これを受け取って下さい」
戦士「手紙?」
受付嬢「彼からです。貴方になら、ここに書かれている意味が分かるはずです」
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:49:59.25 ID:h08jzXpsO
戦士「先生から……」
受付嬢「彼は貴方達の成長を楽しそうに語っていました。彼にとっても特別な日々であったことは間違いありません」
戦士「……」カサッ
受付嬢「それから、貴方に伝言が」
戦士「伝言? 何だ?」
受付嬢「貴方は大丈夫だそうです。何の心配もない、安心してよいと、そう言っていました」
戦士「大丈夫ってどういう意味だよ……つーか、先生は俺が何をされたのか分かってんのか?」
受付嬢「そうかもしれませんね。私には分かりませんが」
戦士「何者なんだよ……」
受付嬢「傭兵ですよ。それも、私や貴方が生まれる前から……」
戦士「それは分かってる。つーか、確実なことはそれしか知らねえ」
受付嬢「私もです。さあ、そろそろ迎えに行って下さい。一人では寂しいでしょうから」
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:51:19.34 ID:h08jzXpsO
戦士「だな。行ってくる」
ガチャ
受付嬢「戦士」
戦士「あん?」
受付嬢「貴方はどうなのです。貴方は寂しさを感じるのですか」
戦士「手の掛かるガキがいるから寂しがってちゃいられねえんだ。きっとこういう役割を期待されてんだよ、俺は」
受付嬢「兄のような役割を、ですか」
戦士「……実際はどうなんだろうな、父親役に聞かなきゃ分からねえよ」
受付嬢「この二週間、私には本物の家族のように見えましたよ」
戦士「気持ち悪ぃこと言うなよ。魔法使いにはそれが必要だった、だからそうしただけだ」
受付嬢「貴方がそうでも、魔法使いは違った感情を抱いていると思います」
戦士「だからガキなんだよ、あいつは……」
バタンッ
受付嬢「……幾ら大人ぶってみても子供ですよ。貴方も、そして私も」
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:52:25.09 ID:h08jzXpsO
>>>>訓練場
魔法使い「……」
戦士「此処にいたのかよ、捜したぞ」
魔法使い「ごめん……」
戦士「ほら、行くぞ。受付サンも心配してる」
魔法使い「今はちょっと無理かも」
戦士「……」
魔法使い「……」
戦士「あの人はお前の父親じゃないし、俺達は捨てられたわけでもない。あの人は傭兵で、どっかの依頼を受けただけだ」
魔法使い「……言われなくたって分かってるよ、そんなこと」
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:53:51.71 ID:h08jzXpsO
戦士「はぁ、ほら、これ読め」
魔法使い「手紙?」
戦士「先生からだ。先に言っとくけど居場所については何も書いてないからな」
魔法使い「……」カサッ
戦士「……」
魔法使い「…………故郷を守って欲しい。これだけ?」
戦士「それだけだ。でも、そこに込められた想いは途轍もなく大きくて強い」
魔法使い「そんなこと言われても私には分かんないよ。私、オッサンのこと何も知らないし……」
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:55:43.35 ID:h08jzXpsO
戦士「かつての戦乱、国家統一戦争」
魔法使い「?」
戦士「この最後の国家間戦争の最中、一人の傭兵が伝説となった」
戦士「彼は人並外れた身体能力と卓越した戦闘技術によって数多くの戦果を上げ、自国防衛に幾度も貢献した」
戦士「その戦果を聞いた誰もが歴戦の傭兵と信じて疑わなかったが、実際は十代そこそこの少年だったと言う」
戦士「脚色されたとしか考えられない華々しい活躍は民衆を奮い立たせ、希望を与えた」
戦士「一方、敵は彼を怖れた。異常なまでにな。敵国の王さえも彼一人を怖れた」
戦士「しかし、奮闘も虚しく彼は国を喪った。現国王によって国は統一され、幾つもの国が国ではなくなった」
戦士「だが、故郷は残った」
戦士「この街が彼の故郷であること知った現国王が敢えて滅ぼさなかったんだ。ここで、彼の戦いは終わった」
戦士「現国王は故郷の安全を約束し、彼に服従を誓わせた。彼は自国を滅ぼした連中に従わざるを得なかったんだ。故郷を守るためにな」
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:57:31.62 ID:h08jzXpsO
魔法使い「それ本当なの?」
戦士「だから、亡国の傭兵なんだ」
魔法使い「……」
戦士「先生が俺達に故郷を守ってくれと言っている。それだけ大切なものを俺達に託したんだ」
魔法使い「正直、ぴんと来ない……」
戦士「あのなあ、そこは大人しく感銘を受けろよ馬鹿者」
魔法使い「そう言われても私にはただのオッサンだし、優しいセンセなんだよ……」
戦士「そのオッサンの故郷を守るんだ。国は手出ししないってだけで守ってくれるわけじゃない。
この先どんなに魔物が出ても助けちゃくれない、この街を守れるのは傭兵しかいないんだ」
魔法使い「……」
戦士「やらねーなら、俺一人でやる」
魔法使い「何でそこまでするのさ、憧れてるから?」
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/11(金) 23:59:17.32 ID:h08jzXpsO
戦士「理屈じゃねえだろ、こういうのは」
魔法使い「……確かに。でもさ、守って欲しいとか言われてもどうしたら良いのかな?」
戦士「分かんねー。出来ることなんて魔物討伐くらいだろ。調査は先生ありきだしな」
魔法使い「じゃあ、今まで通り?」
戦士「まあ、そうなるだろうな……」
魔法使い「何それ、悩んで損した」
戦士「はぁ。ほら、もう行こうぜ? 飯でも食おう」
魔法使い「……ねえ」
戦士「あん?」
魔法使い「この先も私と組んでくれるの? もうセンセはいないんだよ?」
戦士「……理由なんて、何だっていいだろ」
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/12(土) 00:01:58.89 ID:DDkwfYUyO
魔法使い「ありがと……」
戦士「……おう」
テクテク
魔法使い「センセはさ、私達のことどう思ってたのかな」
戦士「さあな、今後会ったら聞いてみろよ」
魔法使い「会えるかな?」
戦士「会いたいと思ってれば会えるだろ」
魔法使い「うわキモい」
戦士「うるせ」
魔法使い「……あのさ」
戦士「何だよ」
魔法使い「楽しかったよね? 三人でいるの」
戦士「……」
魔法使い「戦士?」
戦士「……そうだな。ああいうのも、悪くなかったな」
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/12(土) 00:04:59.05 ID:DDkwfYUyO
>>>>
カランカラン
老人「おお、あんたか、随分久し振りだな」
老人「あんたが都に来るのは何ヵ月振りだったかなあ。また、あの小僧にでも呼ばれたのか?」
老人「本当なら都になんて来たくないだろうに……で、今度は何だい? また剣術の稽古でも頼まれたのかい?」
老人「……」
老人「そうかい、今回は依頼か……」
老人「まあ、勇者なんて言われているが王子だからなあ。断るわけにもいかないわな」
老人「さ、座りな。飲み物くらいは出すよ。小僧が来るまでゆっくりするといい。近頃は抜け出すのも一苦労だろうからな」
老人「何だい? ああ、これか?」
老人「近頃話題の傭兵の記事だとさ、前に来た客が置いてったんだ。欲しけりゃやるよ?」
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/12(土) 00:07:00.87 ID:DDkwfYUyO
業界に新星!
今回紹介するのは何と、伝説の傭兵に育てられたと噂の二人だ!
一人目、魔法使いは若干十六歳の美少女、炎の魔術に特化した超攻撃型の魔術師。
威力、精度、持続力、そのどれもが一級品。集中力には難ありと言われているがご愛嬌。
普段は後衛、支援に徹しており、相棒の戦士が魔物を引き付けている間にも火球を放つ。
火球の精度は百発百中、近頃は追尾させる術を身に付けたらしく、その才能は留まることを知らない。
これだけ見ると優れた魔術師だが、相棒が危険と見るや恐れず前に出る勇気も持ち合わせている。
凡百の魔術師にはない大胆さ、気の強さ、相棒の戦士も彼女のそこに惹かれたのだろう。
前衛の際は広範囲に高威力の炎を放ち、一瞬で火の海にしてしまうという。
どんな魔物だろうと、彼女に掛かればあっという間に火達磨に違いない。
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/12(土) 00:12:17.42 ID:DDkwfYUyO
続いて二人目!
相棒の戦士は十八歳の野性味溢れる男子、魔術と剣術を融合させた新時代の使い手だ。
普段は前衛で魔物を引き付けながら、刃を自在に伸縮させて魔物を翻弄する。
ただ、上記のような様子見も兼ねた戦術は中級以上の魔物に限り、それ以外ならば様子見などせずに一瞬で切り刻んでしまう。
後方から刃を伸ばす一撃は目にも止まらぬ早業、遠距離からでも切り刻んでしまうというから驚きだ。
視野も広く、魔法使いに危機が迫った時は迷わず飛び込み身を挺して守る。
顔からは想像も付かない献身的な戦いぶりが、魔法使いの心を射抜いたに違いない。
こんなに頼れる相棒がいるからこそ、魔法使いも安心して魔術を使うことが出来るのだ。精度の高さも頷ける。
戦士は攻守優れた実力を持ち、遠近自在、正に万能型の傭兵であると言える。
※二人は交際を否定したが、筆者は引き続き見守っていこうと思う。乞うご期待!
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/12(土) 00:13:32.16 ID:DDkwfYUyO
老人「さっきから何をニヤニヤしてんだい?」
老人「なんでもないことはないだろ、そんなに面白い記事なら儂にも見せてくれ」
サッ!
老人「確かにくれてやるとは言ったが、そこまでするかね……しかし、そこまでされると気になるな」
老人「え〜っと、それ何て雑誌だい?」
スッ
老人「月間傭兵特集?」
老人「そんなもの聞いたことないぞ。三流紙か? 次から買ってみるとしよう……」
カランカラン
老人「おお、どうやら来たようだな」
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/12(土) 00:17:36.54 ID:DDkwfYUyO
第十三話 旅立ち
終わり
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/12(土) 00:19:56.36 ID:DDkwfYUyO
今日はここまでです。ありがとうございます。
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/12(土) 01:21:54.65 ID:prtSyZVA0
乙
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/12(土) 01:27:49.23 ID:paGEDCSDO
乙乙
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:22:56.74 ID:RyAmNbjwO
第十四話
女騎士「お待たせした」
老人「おや? 騎士さん、あんた一人なのかい? 小僧はどうした?」
女騎士「訳あって、勇者様は此処に来ることが出来ない。その説明も含めて貴公に話がある」
▼女騎士は席に着いた。
女騎士「挨拶が遅れたな」
女騎士「私は魔術騎士団所属の騎士だ。此処へは勇者様の代わりに来た。宜しく頼む」
▼傭兵は神妙な顔で頷いた。
女騎士「簡潔に言うと、国王陛下は件の失踪事件の黒幕であると思われる魔術結社の捜査を打ち切った」
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:24:44.25 ID:RyAmNbjwO
▼傭兵は驚愕の表情を浮かべた!
女騎士「勇者様が来られないのはその件についての抗議だ。捜査継続を求めて訴えている」
女騎士「次に、貴公への依頼の件だ。勇者様は貴公と共に調査することを強く望んでいた」
女騎士「しかしこうなった以上、勇者様に捜査は不可能。加えて捜査打ち切りによる新たな問題が起きた。その対処に協力して欲しいと言うのが勇者様の依頼だ」
女騎士「依頼とは教会の警護。捜査打ち切りによって軍による警護は解かれ、現在は無防備な状態だ」
▼傭兵は疑問に思った。
女騎士「確かに魔術騎士団は軍ではない。我々は勇者様の発案で新たに組織された、軍には属さない部隊だ」
女騎士「勇者様の部隊といっても過言ではないだろう。軍に代わって我々が警護することも可能だ」
女騎士「そこで勇者様は魔術騎士団に警護を命じたのだが、軍からの圧力が掛かった」
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:26:00.34 ID:RyAmNbjwO
▼傭兵は不審に思っている。
女騎士「だからこそ勇者様は国王陛下のご判断を疑問視し、抗議しているのだ」
女騎士「私はあくまで個人的に勇者様に従っている。今の私は、魔術騎士団に所属していた騎士と言っていい」
女騎士「しかし騎士を志した者として、教会にいる子供達を危険に晒すわけにはいかない」
女騎士「勇者様は貴公を強く信頼しておられた。どうか、協力して欲しい」
▼傭兵は頷いた。
女騎士「有難い……」
女騎士「勇者様から貴公の話は聞いている。様々な意味で師であると、そう仰っていた」
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:27:15.84 ID:RyAmNbjwO
▼傭兵は困ったように頬を掻いた。
老人「騎士さん、一息吐いたらどうだい?」コトッ
女騎士「お茶? すまないな……」
ゴクッ
女騎士「美味しい……」
老人「それは良かった。で、あんたは大丈夫なのかい?」
女騎士「分からない。勢いで出て来たようなものだからな。しかし後悔はない。正しい決断だと信じている」
老人「随分と信頼しているんだな」
女騎士「女だからと入隊を拒否されたところを勇者様に拾われてな。いつも気さくに接して下さった。十分過ぎる程に与えられた」
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:28:09.96 ID:RyAmNbjwO
老人「あの小僧がなあ……」
女騎士「ご老人、貴方の話も聞いている。素性を知っても小僧として接してくれる数少ない人物、理解者だと」
老人「本当か? 口うるさいクソ爺とは言ってなかったか?」
女騎士「ハハハ、そんなことは言っていない。今日会えないことを残念だと言っていた」
老人「落ち着いたら来ればいい」
女騎士「私も早くそうなることを願っている。さて、そろそろ行こう。教会に案内する。お代は」
老人「今日は要らないよ。また今度、あんたが騎士に戻った時で良い」
女騎士「お気遣い感謝する……では、行こう」
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:29:06.67 ID:RyAmNbjwO
▼傭兵は頷いた。
老人「あんたのお代も今度でいい。また顔を見せに来てくれ、傭兵」
▼傭兵は深く頭を下げた……
老人「二人共、気を付けろよ。何だか最近は都の空気もおかしいからな」
▼二人は店から立ち去った。
老人(しかし、突然の調査打ち切りとは確かに妙だな。あの王が敵を見逃すとは思えない……)
老人(むう、何ともないと良いが嫌な予感がしてならない。何かが起きる、そんな気がする)
老人「……」
老人「……」
老人「……店、早めに閉めるか」
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:30:00.83 ID:RyAmNbjwO
>>>>教会へ
女騎士「言い忘れていたが、教会を警護する理由は他にもある」
女騎士「僧侶と呼ばれる人物だ。稀有な魔術を扱うらしい。その人物を守るのも依頼の一つだ」
女騎士「いや、彼女の魔術について詳しくは分からない。勇者様も説明が難しいと仰っていた。友人とだけ聞いている」
▼傭兵は質問した。
女騎士「私? 私は勇者様の友人とは言えないよ」
女騎士「勇者様は王子であるし、私のような者が友人と呼んで良い方ではない」
女騎士「いつも気に掛けて下さるけれども、私にはどうしたらよいのか分からない。決して迷惑なわけではなく嬉しいのだが……」
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:31:03.45 ID:RyAmNbjwO
▼傭兵は微笑みながら言った。
女騎士「対等に? いいや、私には無理だよ」
女騎士「どうしても身分を意識してしまうし、同世代だからこそ尚更緊張すると言うのもある」
女騎士「正直、何を話したらよいのか分からない。きっと私の話など退屈なただけだよ」
▼傭兵は首を横に振った。
女騎士「……」
▼傭兵は女騎士の言葉を待っている。
女騎士「いや、済まない」
女騎士「傭兵であると聞いていたから荒々しい人物かと思っていたんだ。それがこんなにも心穏やかな人物で今更ながら驚いている」
女騎士「団には年配の騎士の方々もおられるが、貴公からは彼等とはまた違う印象を受けるよ」
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:31:59.83 ID:RyAmNbjwO
▼傭兵は質問した。
女騎士「ああ、世間一般では今でも傭兵は荒くれ者という印象が強いんだ」
女騎士「だがそれは傭兵に限ったことではない。魔術師にとっても同じことだ。一度根付いたものは中々消えない」
女騎士「たった一人の魔術師がしでかしたことが魔術師の印象を決定付け、それが今でも消えずにあるのだからな」
▼傭兵は顎を摩っている。
女騎士「確かに……魔術が進歩した今、いつまでも過去に囚われていては先へ進まないだろう」
女騎士「現に魔術師の数は増加しているのに、活躍出来る場は限られている」
女騎士「だからこそ勇者様は魔術騎士団を創設したわけだが、未だ理解は得られていない。魔術師に平和は守れないなどと言われる始末だ」
女騎士「……」
女騎士「ところで質問があるのだが、傭兵にも女性はいるのだろう?」
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:33:00.18 ID:RyAmNbjwO
▼傭兵は頷いた。
女騎士「ふむ、貴公の言葉だと、こちらより女性が受け入れられているように思えるな」
女騎士「自主性の強い女性が多いようにも思える。いつかは会ってみたいものだ」
▼傭兵は魔法使いのことを話した。
女騎士「十六? 随分若いのだな。驚いたよ。十六か、私の六つ七つ下だ……」
女騎士「しかし残念だな、そのような女性にこそ魔術騎士団に入って欲しかった」
女騎士「傭兵の低年齢化は社会問題になりつつあるし、軍でも世代交代を計らなければならない頃合だろう」
女騎士「ふむぅ……」
女騎士「す、済まないな。聞かれてもいないことを長々と語ってしまった……」
▼傭兵は首を振った。
女騎士「ためになる? そ、そうか? こういう話しか出来ないのだ。済まない……?」
女騎士「ああ、あれが教会だ」
女騎士「そうだな、勇者様の説得が終わるまでは二人だけでの警護となる。一刻も早く軍の警護が戻ることを祈ろう」
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:33:41.63 ID:RyAmNbjwO
第十四話 待ち人
終わり
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:34:22.81 ID:RyAmNbjwO
第十五話
勇者「父上、答えて下さい」
国王「いずれ調査は再開する。今は干渉しないというだけだ」
勇者「俺はその理由を聞いているんです!!」
国王「声を荒げるな。お前にも分かるだろう、あの技術には目を見張るものがある」
勇者「父上!!」
国王「案ずるな、目星は付いている。絞首台に送るのが少しばかり遅れるだけのことだ」
勇者「ならば、その人物の居場所を教えて下さい」
国王「息子よ、あまり困らせないでくれ……」
勇者「それは俺の台詞です。父上の考えが正常だとは到底思えない」
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:35:24.81 ID:RyAmNbjwO
国王「よく考えろ、肉体の強化と言うのは医療の進展に多いに役立つ。失うには惜しい」
勇者「犠牲がなければ俺も喜んで賛成してる。何が大切なのかよく考えて下さい」
国王「お前は頭が固い。敵を滅ぼすだけでは何も生まないのだ。利用することを覚えろ」
勇者「今はそうすべきではないと言っているんです。民に被害が出ているなら戦うべきだ」
国王「一時のものだ。技術が確立されれば多くの者達を救うことが出来る」
勇者「未来を語るのは狂人のすることです」
国王「私はいつでもそうしてきた。そして語った通りの未来を手に入れた。今の私を見れば分かるだろう? 私を信じろ」
勇者「父上、お願いです。俺の言葉を聞いて下さい……」
国王「……」
勇者「今は戦時ではない。王には民を守り平和を維持する責任がある。父上、貴方は王でしょう?」
国王「王の責任は果たす。いずれ調査は再開すると言ったはずだ。お前は何をそこまで怖れている?」
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:36:15.19 ID:RyAmNbjwO
勇者「父上、何故分かってくれないのですか……」
国王「心配はない。私は今まで敵と見做した者を見逃したことはない。一度もな」
勇者「……」
国王「まだ不安か?」
勇者「……俺には、今の父上が分かりません」
国王「……」カツン
勇者「父上、あまり無理は」
国王「よい、一人で歩ける。息子よ、よく聞いて欲しい」
勇者「…………はい」
国王「お前が抱く思いはよく分かる。危険な集団である以上、速やかに排除すべきだ」
国王「以前の私ならそうしただろう。しかし、私はこの通り老いた。自分の体でさえ自由に出来ん」
国王「若いお前には分からんだろう。緩やかに朽ちていくような、死を待つ感覚など……」
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:37:05.28 ID:RyAmNbjwO
国王「私は、希望が欲しいのだ」
勇者「その希望がまやかしであるとは、何故考えないのです……」
国王「分かってくれ、息子よ」
勇者「……」
国王「すぐに終わる。ほんの少しの間だ」
勇者「……申し訳ありません、失礼します」
国王「そうか、残念だ……」
勇者(父上は何かに囚われている。でなければ、子供を攫う連中を野放しにするはずがない。
教会に行こう。師なら、きっとよい知恵を授けてくれる)
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:38:01.73 ID:RyAmNbjwO
国王「息子よ」
勇者「……何です」
国王「教会には行かぬ方が良い」
勇者「父上、貴方は何を……まさか……」
国王「いつもそうだった。新しい時代には、それが必要なのだ」
勇者「っ!!」
ガチャバタンッ
勇者(父上、何故……)
勇者(考えるのは後だ。教会に急がなければ……)
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:42:47.13 ID:RyAmNbjwO
第十五話 錯綜
終わり
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:44:08.96 ID:RyAmNbjwO
第十六話
女騎士「……うっ」
目覚めると、そこには誰もいなかった。
傭兵と僧侶の姿もなく、子供達の姿もない。教会の中は静寂に満たされている。
女騎士はよろよろと起き上がり、辺りを見渡す。
その足取りはふらふらと覚束ない。
壁に肩を預けながら何とか歩みを進めるものの、一歩進むごとに痛みに喘いでいる。
「これは……」
大きく抉れた床、紙きれのように千切られた椅子、壁には大きな爪痕が残っている。
「何が、起きた……」
女騎士は膝を突き、壁を背に蹲った。額から流れた血が頬を伝っている。
頭を抑え、朦朧とする意識の中、女騎士は懸命に記憶を探った。
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:44:51.28 ID:RyAmNbjwO
▼ぼやけていた記憶が、徐々に鮮明になる。
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:46:02.13 ID:RyAmNbjwO
>>>>数時間前
僧侶「そうですか、勇者君が……」
女騎士「今頃は国王陛下を説得している最中だろう。警護が戻るまでは私と彼が警護を担当する」
僧侶「でも、そう上手く行くでしょうか?」
女騎士「どういう意味だ」
僧侶「だって警護を外したのは此処だけですよ? 王には何か企みがあってそうしたと思います」
女騎士「企みとは?」
僧侶「そうですねえ、国王陛下が失踪事件の黒幕と繋がっているとか」
女騎士「何を……」
僧侶「だって、そう考えるのが普通じゃないです? 私には教会を差し出したように思えますけどね」
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:46:53.00 ID:RyAmNbjwO
女騎士「大胆な発想をする方なのだな……」
僧侶「勇者君の話では魔術結社は進んだ技術を持っているようです。王はそれに目が眩んだんじゃないですかね?」
女騎士(有り得ないとは言い切れない……陛下は望んだものを全て手に入れた御方だ)
僧侶「数ある国をまとめ上げたようですが、私からすれば単に欲深い人間ですよ。いつか必ず罰が当たります」
女騎士「……」
僧侶「何です?」
女騎士「いや、言葉が出ないだけだ。それは明らかに王家に対する侮辱では?」
僧侶「侮辱? 貴方は面白い人ですね。王は神ではない。あれはただの人間です。幾ら文句を言っても罰は当たりませんよ」
▼傭兵は声を出して笑った!
僧侶「あれ、笑われるようなこと言いました?」
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:47:45.26 ID:RyAmNbjwO
女騎士「それは極めて危険な思想だ」
僧侶「そうですか? 私、間違ったことは何一つ言ってないと思いますけど」
女騎士「貴方個人が何を思おうと勝手だが、口にするのは止めた方が良い」
僧侶「勇者君はその通りだって笑ってましたよ? 貴方もそうだと思ってました」
女騎士「勇者様は変わっているからな……」
僧侶「貴方だって本当はそう思ってるんでしょ? 悪人を野放しにするなんて、もっと悪い人のすることですよ。そう思いません?」
女騎士「……」
僧侶「素直じゃないですね」
女騎士「私は貴方のように強くないんだ。そのような批判は口に出来ない。まして王家になど」
僧侶「身分なんて人間が作り出したまやかしに過ぎない。まやかしは、いずれは消え去ります」
女騎士「また大胆な……」
僧侶「この世界には男と女しかない。違いなんてそれだけです。王だって一人の男に過ぎない、素っ裸になれば同じですよ。女もそうです」
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:49:19.62 ID:RyAmNbjwO
女騎士「……」
僧侶「身分になんて囚われず、好きなように生きた方がいいです。一度きりの人生ですから」
女騎士「私には悪魔の囁きに聞こえるよ」
僧侶「天使も悪魔も必要だから存在しています」
女騎士「貴方の思想は危険過ぎる……」
僧侶「危険だと思うのは、私の言葉が魅力的に感じるからでしょう?」
女騎士「……否定はしない」
僧侶「だったら素直になればいいのに」
女騎士「もうやめてくれないか、貴方と話していると大事な何かが壊されそうだ……」
僧侶「あはは、騎士さんは可愛いですね。貴方みたいな人は大好きですよ?」
女騎士「……勇者様が貴方を友人と呼ぶのが分かる気がするよ」
ギィィ
▼教会の扉が開いた。一人の男が立っている。
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:51:05.22 ID:RyAmNbjwO
武闘家「情報通りみたいね」
女騎士「何だ、貴様は……」
武闘家(まずは僧侶からだったわね。で、あれが亡国の傭兵かしら? 錬金術師も無茶言ってくれるわね)
▼武闘家は姿を消した!
女騎士「何だ、今の気色悪い男は……」
僧侶「きゃっ!?」
女騎士「何!?」
▼僧侶は武闘家に拘束されてしまった!
女騎士「彼女を離せ!!」
武闘家「はいはい、面倒だから動かないで頂戴、まずは剣を床に……あら?」
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:53:11.59 ID:RyAmNbjwO
▼武闘家の右腕がするりと床に落ちた!
傭兵はいつの間にか剣を構えている!
女騎士(擦れ違い様に斬ったのか……)
武闘家「やるじゃない……」
▼武闘家は左腕で僧侶を掴むと、飛び退いて距離をとった!
女騎士「出入口は此方にある。貴様に逃げ場はない、彼女を解放して降伏しろ」
武闘家「それは無理よ。さあ僧侶、私の腕を治しなさい」
僧侶「嫌です、腕毛がチクチクして痛いので離して下さい」
武闘家「言っておくけど来たのは私一人じゃない。仲間がいるのよ。彼は今頃子供達のところにいるわ。隠したみたいだけど無駄。それから腕毛のことは言うな」
僧侶「!!」
武闘家「何をすべきか分かるわよね」
僧侶「……」
▼僧侶は武闘家の右腕に手をかざした。
武闘家の右腕がみるみるうちに再生していく!
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:54:11.46 ID:RyAmNbjwO
女騎士「馬鹿な……」
武闘家「これが彼女の力よ。さあて、ちょっとごめんなさいね?」
僧侶「うっ……」
▼武闘家は僧侶を気絶させた!
武闘家「亡国の傭兵、次は貴方よ」
女騎士(想定通りと言った風だ。我々が此処へ来ることを予め知っていたのか)
武闘家「亡国の傭兵、武器を捨てて此方に来なさい」
女騎士「何を馬鹿な、自分の置かれた状況が分からないのか」
武闘家「あのね、その男を相手に何の策もなく来ると思う? 貴方は知らないでしょうけど、彼はと〜っても危険な男なのよ?」
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:55:40.08 ID:RyAmNbjwO
▼武闘家は懐から何かを取り出した!
女騎士「……眼鏡?」
武闘家「気になるなら確かめたら?」
▼武闘家は銀縁の眼鏡を傭兵に投げ渡した。
武闘家「どうかしら? 貴方になら、それが誰の物か分かるはずよ」
女騎士「貴公、それは一体……」
武闘家「僅かに動揺したわね。と言うことは当たり。なのね?」
▼傭兵は凄まじい速度で武闘家に斬り掛かった!
武闘家はひらりと身を躱した!
女騎士(あれを避けただと? 傭兵殿は勿論、あの気色悪い男も次元が違う)
武闘家「貴方にも可愛いところがあるのね。でも、私は何をされても喋らない。と言うより、居場所は知らされていない」
武闘家「良い? 貴方の帰る場所は私達の手中にある。失いたくなければ従いなさい。従わなければ殺すわ。言っておくけど、私達は本気よ」
▼傭兵は剣を納めたが、怒りに震えている……
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:57:10.58 ID:RyAmNbjwO
女騎士「傭兵殿……」
武闘家「私は反対したんだけどね。やるからには何でもやるって聞かなかったのよ……」
女騎士「貴様等の目的は何だ、傭兵殿に何をした……」
武闘家「すぐに分かるわ。近々、時代は動く。今は眠りなさい」
▼武闘家は下から抉るように拳を振り上げた!
切り裂くような暴風が教会内に吹き荒れる!
女騎士「この程度で……」
▼女騎士は正面に手をかざした!
その周囲だけが穏やかに凪いでいる。
武闘家「あら上手、貴方も風を使うのね」
女騎士「何が起きたのか、何をしたのか、貴様を拘束した後で聞かせてもらう」
武闘家「ごめんなさい、もう時間みたい」
▼女騎士の背後、入口から年老いた男が現れた。
傭兵は年老いた男の顔を見て固まっている。
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:58:21.77 ID:RyAmNbjwO
錬金術師「首尾はどうだ、武闘家」
武闘家「彼は従うわ」
錬金術師「そうか。では傭兵、早速で悪いが私と共に来て欲しい。済ませたい用事がある」
女騎士(仲間か。何が起きているのか分からないが、せめて彼女だけは……)
錬金術師「申し訳ないが部外者は消えてくれないか? これは君のためでもある」
▼錬金術師は杖を振るった!
巨大なツタのような植物が床から突き出し暴れ回る!
女騎士「うぐっ……」
▼女騎士は吹き飛ばされ、壁に頭を打ち付けて気を失ってしまった!
錬金術師「んん、頭がくらくらする……」
武闘家「魔術なんて使うからよ。大丈夫なの?」
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 22:59:18.22 ID:RyAmNbjwO
錬金術師「少々気分が悪いようだ……」
武闘家「呆れた。子供達は無事なのよね?」
錬金術師「いや、もう送った」
武闘家「話が違うわ!! もう止めるって言ったじゃない!!」
錬金術師「これで最後だ。次はない。約束する」
武闘家「……信じて良いのね」
錬金術師「勿論だ。さて、君は僧侶を連れて先に帰れ。私は彼と用事を済ませる」
武闘家「……」
錬金術師「どうした、早く行かないか」
武闘家「無事かどうかくらい教えてあげなさいよ。彼が可哀想だわ」
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 23:00:11.94 ID:RyAmNbjwO
錬金術師「彼は口で言っても信用しない」
▼傭兵は堅く目を閉じている。
武闘家「大丈夫、貴方の帰る場所は無事よ。手出しはしないわ」
▼傭兵は堅く目を閉じている。
武闘家「……」
錬金術師「そろそろ勇者が来る頃だな。我々は彼と入れ代わりで城に入る」
▼傭兵は倒れた女騎士の下へ行き、懐に何かを入れた。
武闘家「……」
錬金術師「……行くぞ」
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 23:02:44.79 ID:RyAmNbjwO
第十六話 略奪
終わり
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 23:03:59.77 ID:RyAmNbjwO
第十七話
>>>>現在
女騎士(城へ急がなければ)
女騎士(頭が痛い、私はどれ程の時間気を失っていたのだ? 勇者様が教会に来るより早く……)
▼教会の扉が開き、足音が鳴り響いた。
女騎士(あぁ、来てしまわれた……)
勇者「女騎士!!」
女騎士「勇者様、今すぐ城へお戻り下さい」
勇者「何?」
女騎士「僧侶様は武闘家という男に連れ去られ、その仲間であると思われる年老いた魔術師は、傭兵殿を連れて城へ向かいました」
勇者「師が? 何故?」
女騎士「脅されていたように思います。銀縁の眼鏡を差し出され、酷く動揺しておられました」
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 23:06:34.29 ID:RyAmNbjwO
勇者「眼鏡……」
女騎士「今は老いた魔術師を追って下さい」
女騎士「おそらく軍も魔術騎士団も手出しはしないでしょう。頼りになる者は城内に残っていないと思われます」
女騎士「状況を変えられるのは勇者様だけです。この機に捕らえてしまえば、まだ目はあります。逃してはなりません」
勇者「……医者を寄越す。信頼出来る者に預けるように言うから、そこで待っていてくれ」
女騎士「奴等は勇者様の動きを把握していました。全てが仕組まれていたように思えてなりません……」
勇者「分かってる……」
女騎士「勇者様、お気を付けて」
勇者「ああ」
▼勇者は走り去った。
女騎士(もし彼女の言った通りなら、国王陛下は最初からあの連中と? 民を売ってまで、何を欲すると言うのだ)
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/15(火) 23:08:18.41 ID:RyAmNbjwO
>>>>
国王「随分早かったな」
錬金術師「急いでいるのでな」
錬金術師の傍には傭兵がおり、その周囲を軍の兵士達がぐるりと囲んでいる。
国王「ところで、何故その男が此処にいる?」
錬金術師「貴方が最も恐れ、最も信頼する傭兵だ。何の不都合もあるまい。さて、取引に入ろう。これが貴方の希望だ」
▼錬金術師は輝く液体の入った瓶を取り出した。
国王「それは?」
錬金術師「今に分かる。さあ、飲め。陛下に効果の程を見せるのだ」
▼傭兵は渡された瓶の蓋を開くと、輝く液体の半分を飲んだ。
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