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ターニャ・フォン・デグレチャフ「座薬型、演算宝珠……?」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:02:12.10 ID:qy0gTOWh0
けいこくします。
驕らず、謙虚な気持ちで初心に立ち返り、執筆した結果、ほんの少しだけ筆が乗ってしまい、やや過激な表現が目立つ作品となりました。
もちろん、全年齢対象作品なので、性的な描写は一切含まれておりませんが、タイトル通りの展開となりますので、苦手な方はくれぐれもご注意ください。
それでは以下、本編です。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1544281331
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:05:35.14 ID:qy0gTOWh0
「久しいな、デグレチャフ少佐!」
「お久しぶりです、シューゲル主任技師」
「よく私の工廠へ来てくれた! 歓迎するぞ!」
「いえ、上からの命令ですのでおかまいなく」
第二〇三遊撃航空魔導大隊の大隊長であるターニャ・フォン・デグレチャフ少佐は、参謀本部の密命を受け、帝国軍エレニウム工廠を訪れていた。
その来訪を今か今かと待ち構えていたのは、この工廠の主任技師である、アーデルハイト・フォン・シューゲルだ。異常にテンションが高い。
元より狂人として帝国内外にMADの異名を轟かせているとはいえ、嫌な予感がプンプンする。
前線から何故わざわざ工廠へ向かわされたのか、目的は知らされていないが、きな臭い。
「相変わらずの5分前行動とは感心だな! どうやら少佐も今日という日を心待ちにしていたと見受けられる! 慧眼とはまさに貴官のつぶらな瞳のことを言い表わしているにに違いない!」
「ドクトル、世辞はそのくらいで本題を」
「まあ、そう急くな。ところで少佐、そちらの女性士官は誰かね?」
「ああ、彼女は私の副官です」
身の危険を感じていたデグレチャフ少佐は盾代わりに自身の副官であるヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉を同伴させていた。
「ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉であります! お初にお目にかかります、ドクトル・シューゲル主任技師!」
「おおっ! デグレチャフ少佐の副官とならば、優秀な魔導師に違いあるまい! 歓迎するぞ!」
「はっ! 過分なお言葉、恐縮であります!!」
副官に対しても、この高待遇。
やはり、おかしい。違和感しかない。
日頃、魔導師をモルモットとしか見ていないシューゲル主任技師のこの変質ぶりに、デグレチャフ少佐は警戒心を最大まで引き上げた。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:08:28.76 ID:qy0gTOWh0
「ちなみに別室には副長であるマテウス・ヨハン・ヴァイス中尉も待機させています」
「なんと! まさかデグレチャフ少佐は私の工廠と一戦交えるつもりで来たのかね?」
「場合によっては、その可能性もあるかと」
「わはは! そう身構えるな! 楽にしたまえ!」
このハイテンションを目の当たりにして身構えない方がどうかしている。保身が第一だ。
待機中のヴァイス中尉には、何かあったらすぐさま私と副官を救出するよう命じてある。
それでもやはりどうにも不安だったの、だが。
「来たか、デグレチャフ少佐」
「レルゲン中佐殿!」
聞き慣れた上官の声で、不安が吹き飛ぶ。
振り返ると、そこには帝国軍参謀本部に所属している参謀将校、エーリッヒ・フォン・レルゲン中佐が佇んでいた。少し痩せただろうか?
ともあれ、これで安泰だ。心配は杞憂だった。
参謀本部がMADのお目付け役としてレルゲン中佐を派遣してくれたのならば、一安心である。
彼は狂人揃いの帝国軍の中で唯一まともと呼べる良識を持った人物だった。飛びつきたい。
「中佐殿! お会い出来て嬉しいです!」
「そ、そうか。貴官の気持ちは良くわかった。だから、出会い頭に飛びつくのはやめてくれ」
「はっ! これは大変失礼しました!」
つい、中佐の胸元に飛び込んでしまった。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:11:37.10 ID:qy0gTOWh0
「ところで、デグレチャフ少佐」
「はっ」
「貴官は、不安を感じていないのか?」
「はっ。何一つとして、不安はありません」
「……やはり、そうか」
レルゲン中佐は改めて、恐ろしいと感じた。
会って早々飛びついてきたデグレチャフ少佐。
それほどまでに、嬉しいらしい。戦慄する。
恐らく、今回の密命の目的に、感づいている。
(やはり、この幼女は戦争狂だった!)
こめかみから冷や汗を流しつつ、無垢な少女の笑顔という皮を被った化け物……ターニャ・フォン・デグレチャフから距離を取った。
そんな彼は、ふと視線を感じて首を傾げる。
「何か?」
「あ、いえっ!」
「たしか、貴官は……」
「はっ! デグレチャフ少佐の副官を務めさせて頂いております、ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉であります!」
「ああ、貴官のことは参謀本部でも度々話題になっている。あの戦争狂……ごほんっ。白銀のターニャの副官として、良くやっているとな」
「はっ! 身に余るお言葉、恐悦至極です!!」
ガチガチに緊張している、女性士官。
話してみた印象は、決して悪くはない。
しかし、先程までこちらに向けられていた視線が、どうにも気になった。あれは、殺意だ。
レルゲン中佐は上官に対してそのような視線を平気で向けるこの副官も要注意人物であると判断し、警戒心を最大まで引き上げた。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:12:19.32 ID:qy0gTOWh0
「ところで、デグレチャフ少佐」
「はっ」
「貴官は、不安を感じていないのか?」
「はっ。何一つとして、不安はありません」
「……やはり、そうか」
レルゲン中佐は改めて、恐ろしいと感じた。
会って早々飛びついてきたデグレチャフ少佐。
それほどまでに、嬉しいらしい。戦慄する。
恐らく、今回の密命の目的に、感づいている。
(やはり、この幼女は戦争狂だった!)
こめかみから冷や汗を流しつつ、無垢な少女の笑顔という皮を被った化け物……ターニャ・フォン・デグレチャフから距離を取った。
そんな彼は、ふと視線を感じて首を傾げる。
「何か?」
「あ、いえっ!」
「たしか、貴官は……」
「はっ! デグレチャフ少佐の副官を務めさせて頂いております、ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉であります!」
「ああ、貴官のことは参謀本部でも度々話題になっている。あの戦争狂……ごほんっ。白銀のターニャの副官として、良くやっているとな」
「はっ! 身に余るお言葉、恐悦至極です!!」
ガチガチに緊張している、女性士官。
話してみた印象は、決して悪くはない。
しかし、先程までこちらに向けられていた視線が、どうにも気になった。あれは、敵意だ。
レルゲン中佐は上官に対してそのような視線を平気で向けるこの副官も要注意人物であると判断し、警戒心を最大まで引き上げた。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:13:29.64 ID:qy0gTOWh0
誤って連投してしまい、申し訳ありません。
以下、続きです。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:15:18.80 ID:qy0gTOWh0
「デグレチャフ少佐」
「なんだ、セレブリャコーフ少尉」
「少佐殿はいつもあのようにレルゲン中佐殿と再会を喜び合っているのですか?」
「あのように、とは?」
「先程、抱擁されていたので……」
「ああ……あれはつい、感極まってしまってな」
「感極まって、抱きついたのですか……?」
「まあ、我ながら子供じみた感情表現だったと反省している。帝国軍人として、恥ずべき態度だった。忘れてくれ」
セレブリャコーフ少尉は衝撃を受けていた。
あのデグレチャフ少佐が、感極まったなんて。
きっとそれほどまでに再会が嬉しかったのだ。
もしかしたら、中佐は少佐の初恋相手かも。
そう考えると、なんだか腹わたが煮えくり返って、ついレルゲン中佐を睨みつけてしまった。
(いけない、いけない! デグレチャフ少佐の副官として、粗相がないようにしなくちゃ!!)
ついつい寄りがちになってしまう眉根を揉んでほぐしつつ、務めて笑顔を意識して、印象を良くしようと試みるセレブリャコーフ少尉だったが、この場面で作り物めいた微笑を浮かべる副官に対して、レルゲン中佐はより一層警戒心を強めることとなった。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:18:31.86 ID:qy0gTOWh0
「さて、デグレチャフ少佐」
「ようやく本題ですか、シューゲル主任技師」
「左様。本題に移るとしよう」
副官のお披露目も終わり、いよいよ本題だ。
「今日、少佐にわざわざ足を運んで貰ったのは、他でもない。新型演算宝珠の起動実験の為だ。再び、私に貴官の力を貸してくれたまえ」
「お断りします。帰るぞ、副官」
「はっ……えっ?」
「待て! デグレチャフ少佐!」
案の定だ。こんなことだろうと思った。
「ドクトル、演算宝珠はもう間に合ってます」
「今回のはひと味もふた味も違うのだ!」
「戦場に珍味は必要ありません」
「いいや! この先、間違いなく必要となる!」
「では安全な缶詰にしてから送ってください」
「その為に実験が必要不可欠なのだっ!!」
その度に毒味させられるなど、御免だった。
「レルゲン中佐殿、助けてください」
「すまんが、今回の起動実験は参謀本部の指示だ。私は実験結果を見届ける為にここへ来た」
「そんなぁ……」
要するに、傍観者というわけか。使えない。
こんな時こそ、良識人ぷりを発揮して欲しいのに……まあ、参謀本部の指示ならば仕方ないか。
「了解です。せいぜい足掻いてみせましょう」
失望を隠すことなくたっぷりのため息を吐いて、デグレチャフ少佐は任務を拝領した。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:19:18.24 ID:qy0gTOWh0
「さて、デグレチャフ少佐」
「ようやく本題ですか、シューゲル主任技師」
「左様。本題に移るとしよう」
副官のお披露目も終わり、いよいよ本題だ。
「今日、少佐にわざわざ足を運んで貰ったのは、他でもない。新型演算宝珠の起動実験の為だ。再び、私に貴官の力を貸してくれたまえ」
「お断りします。帰るぞ、副官」
「はっ……えっ?」
「待て! デグレチャフ少佐!」
案の定だ。こんなことだろうと思った。
「ドクトル、演算宝珠はもう間に合ってます」
「今回のはひと味もふた味も違うのだ!」
「戦場に珍味は必要ありません」
「いいや! この先、間違いなく必要となる!」
「では安全な缶詰にしてから送ってください」
「その為に実験が必要不可欠なのだっ!!」
その度に毒味させられるなど、御免だった。
「レルゲン中佐殿、助けてください」
「すまんが、今回の起動実験は参謀本部の指示だ。私は実験結果を見届ける為にここへ来た」
「そんなぁ……」
要するに、傍観者というわけか。使えない。
こんな時こそ、良識人ぷりを発揮して欲しいのに……まあ、参謀本部の指示ならば仕方ないか。
「了解です。せいぜい足掻いてみせましょう」
失望を隠すことなくたっぷりのため息を吐いて、デグレチャフ少佐は任務を拝領した。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:21:14.09 ID:qy0gTOWh0
再び連投してしまい、申し訳ありません。
以下、続きです。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/09(日) 00:22:48.63 ID:qy0gTOWh0
「それで今回はどのようなゲテモノですか?」
「これだ!」
「これが、演算宝珠……?」
自信満々で眼前に突き出されたのは、小指の先ほどの物体だった。形状は雫の形をしている。
それを見て、セレブリャコーフ少尉が呟く。
「まるで耳飾りのようですね」
「ほう? 近頃の若い娘には、このような形の耳飾りが流行っているのか?」
「幼年学校の時に、これと同じようなものを耳に付けた学友を何度か見かけました。もちろん、校外でのことですが」
そう語る副官の目には憧憬が浮かんでいた。
装飾品を身に付けることはおろか、化粧すら出来ない戦場で、日夜命をすり減らしているセレブリャコーフ少尉にとって、耳飾りは憧れの品らしい。
(今度、機会があればプレゼントしてやるか)
指輪一つ身に付けていない副官を不憫に思ったデグレチャフ少佐がそう決意を固めていると、シューゲル主任技師が割って入ってきた。
「違う違う! これは耳飾りなどではない!」
「耳飾り型の演算宝珠ではないのですか?」
「神聖な演算宝珠を装飾品にするなど主に対する冒涜だ! 私は断じてそんなことはしない!」
どうやら、信仰心は持ち続けているらしい。
「では、この形状は一体何なのですか?」
「それはお尻に優しい座薬型演算宝珠だ!」
「は? ドクトル、今なんと仰いましたか?」
「お尻に優しい座薬型演算宝珠だ!」
「……は?」
どうやらこのMADは、ついにイかれたらしい。
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