春香「ボーダーですよっ! ボーダーっっ!」

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35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:28:11.66 ID:8PRZhv8P0

春香「ちょっと、隊長!」

遊真「おまえ、つまんないウソつくねー」


森林「う、うそ……?」

あずさ「隊長、あんまりいたずらしちゃ、め、ですよ〜」

https://i.imgur.com/xFmMz4U.jpg

隊長「ハハハすまんすまん、昔のクセがついね。失礼した先生、なに、我々に協力してくださるかぎりあなた方の安全は保障しますよ」


修「……すいません先生、必ず助けは来ます。いまは、従ってください」

森林「あ、あぁ……」


36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:29:15.28 ID:8PRZhv8P0



美希「あーあーあー、テステステス」

 マイクらしきもので拡大された声が体育館に響く。
 視線がおのずと一点に集まる。

ナンダアノコ…

カワイイ…


美希「突然だけど、みなさんは、ミキたちの人質なの!」


ハ?

ナンダコレ…


千早「私たちは、あなた方の言うところの、近界民です」

 その言葉に、どよめきが一際大きくなる。

佐補「近界民…」

副「あんな女の子が……」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:34:12.28 ID:8PRZhv8P0

千早「ですが、私たちの国、バンナムは、あなたたちの世界を含めたすべての国との平和的関係を望んでいます。この状況では、説得力はないと思いますが…」

美希「ミキたちの言うこと聞いてくれれば、なんにもしないよ。とりあえずー、勝手にここを出たり、ケータイデンワーとかで連絡を取るのは禁止!」



バカ2「は、はぁ?」

バカ3「んだこれ……やべぇよやべぇよ」

バカ1「……知るかよ」ス


森林「何をやっとるか!!!」

 ひそかに取り出そうとした携帯を、森林が横から取り上げる。

バカ1「はっ!?」

森林「お前たちは、死にたいのか! これは普段の授業中じゃないんだぞ!!」

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:35:54.78 ID:8PRZhv8P0

森林「先生方、今は生徒たちの安全を守るために、私たちが監督せねば!」

水沼「は、はい…!」


美希「ごめんね。で、ちなみにー、今具合が悪いヒトー。それから、どうしても帰りたいヒトー」


修「え……?」

遊真「へえ」


美希「今日この後歌のケイコがー、とかって人は、今日は休んで。そのかわりミキたちがおもてなしするよ」

千早「本当に体調不良の方、親族の病気など仲間を置いてでも帰らなければならない理由のある方は手をあげてください」

春香「1……2……ちょびっとだね。いい人たちだ」


千早「三雲さん。上司の方に連絡を。体調不良などの人質との交換を、丸腰のボーダー隊員となら応じると」

修「!?」
 
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:39:34.22 ID:8PRZhv8P0


――本部


忍田「……」

根付「どういうつもりですかねぇ……」

鬼怒田「生徒も隊員も、集めてからトリオン兵でまとめて拉致する気ではないか」

城戸「あるいは、反撃の契機になるやもしれん」

忍田「しかし、潜入させる人材となると…」


嵐山『避難誘導完了しました! 忍田本部長、中の状況は……』


一同「「「………」」」


鬼怒田「経験豊富な人材」

沢村「チームワークは抜群です。通信がなくても…」

根付「人質を安心させる効果も高いでしょうなぁ」

忍田『……嵐山――』
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:48:25.26 ID:8PRZhv8P0


―――体育館


嵐山「三雲くん!」

https://imgur.com/EHSF4Bh

修「嵐山さん」

嵐山「状況は?」

三雲「それが……」;


41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:52:27.83 ID:8PRZhv8P0


雪歩「あの、お茶をどうぞ……すいません、こんなことに巻き込んじゃって……」

千佳「あ、ど、どうも………ぁ、おいしい……」ズズズ

https://i.imgur.com/i9WjupE.jpg

あずさ「ごめんなさい、すこしの間ご迷惑おかけします〜」

三好「全然オッケーです!」b

四ツ谷「おまえ…」

一之瀬「意外ね、近界民って、もっとおそろしい人たちかと思っていたけれど」

二ツ木「フツーのひとって感じだね」


42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:54:04.58 ID:8PRZhv8P0

嵐山「……とりあえず、危険はないみたいだな」ホ

木虎「私帰ってもいいかしら…」

遊真「いよぅキトラ」ジー

木虎「……なに撮ってるのよ」サ

修(髪なおした…)

遊真「バンナムの連中に記録係とやらを頼まれた」+



忍田『三雲くん、そちらに嵐山たちは到着したか?』

修『あ、ハイ。今ちょうど』

忍田『場合によって君たちのトリガーを片方ずつ臨時接続させ、戦力にしてくれ。今の状況は』

修『当面、危険はなさそうです』
 
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:54:48.12 ID:8PRZhv8P0


根付「どうやら、慰撫工作に力を入れているようですね」

鬼怒田「こすい手だわい」

城戸「今のうちに戦力を整える。展開、包囲を急げ」

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 21:59:28.78 ID:8PRZhv8P0


―――体育館


やよい「できましたーっ! 順番に並んでくださーいっ」

https://i.imgur.com/yPEq2go.jpg

時枝「おつかれ。なにあれ?」

修「時枝先輩。非常用の食糧があったんですけど、そのまま食べるのも味気ないだろうからとのことで…」

 一体どこから持ち出したのか、鉄板や鍋で非常食をアレンジして供する即席の屋台ができあがっていた。
 生徒たちは戸惑いつつも危機感は薄いらしく、一部の生徒たちが列を作っている。

 その列を無視して、屋台に近付いていく男子生徒が一人。

遊真「……む?」

やよい「あっ、あの、ごめんなさい、順番で」

モブ「ふざけるなよ!」バシッ

 やよいが持っていた食事が床に落ちた。
 どよめきとともに、体育館中の注目が集まる。

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:02:42.43 ID:8PRZhv8P0


やよい「あ、う……」

モブ「近界民のせいで、家や大事な人を亡くしたやつは大勢いる。善人のフリなんかしてんじゃねぇよ!」

水沼「モブくん!」

森林「な、なんてことを…刺激しては…」



美希「食べ物にヤツアタリするの、良くないって思うな」

 歩み出た美希は、少年に何かを投げ渡した。

モブ「?」パシ

美希「それもって、トリガーオンってやれば戦闘体になるよ」

モブ「え……」

修「な……」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:04:28.39 ID:8PRZhv8P0


美希「近界民に怒ってるんでしょ? ミキたちトリオン体だから、トリガーでないと、叩くあなたのが痛いよ」

 手渡された武器に戸惑い、彼は疑問の視線を少女の仲間へと移す。


千早「あなたの怒りは、理解できるつもりです。私たちも……戦争で多くを失いました」

やよい「あの……私たちは、いいんです。受け止めなきゃいけないことだと思うから…。でも
――」


 床に落ち無残に凹んだ食糧に沈んだ視線が向かい、思わず彼がその視線を追う。
 その視界に不意に、掌が映る。


唐沢「失礼」

ヒョイ

ジュゥゥゥゥ

パク

唐沢「加熱すれば大丈夫だよ」ムグムグ

やよい「……あ……はいっ!」パァ
 
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:05:16.67 ID:8PRZhv8P0

モブ「………」

 少年はそんなやり取りに眉根を歪め、しばしの沈黙ののちに静かに口を開いた。

モブ「近界民の仕業っつっても…あんたらがやったワケじゃ……ない、んだよな」

美希「……うん、違うよ」

モブ「……………………近界民は、嫌いだ。けど………」

モブ「今のは…俺が、馬鹿だった。返すよ。これ」

美希「…ん、いいの?」

モブ「ああ」

春香「あの………代わりと言ってはなんですが……」

モブ「?」



48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:06:58.46 ID:8PRZhv8P0



モブ『おれは絶対ボーダーに入って、三門市を近界民から守ってみせる!!』


おお?

なんだありゃ


 何かを渡され説明を受けていた少年が、思いをぶちまける。
 その声は大きく、しかし不思議と喧しくはなくあたりに響き渡った。

修「マイク…みたいだな、学校のじゃないみたいだけど」

遊真「あれ……多分、トリガーだ」

出穂「え、武器ッスか?」

千佳「トリガー技術って、近界だと、武器以外にもいろんなことに使われてるんだって」迅さんが言ってたって烏丸先輩が言ってたってオサムくんが言ってた

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:10:39.45 ID:8PRZhv8P0

モブ「おお……たしかになんか、すっきりしたよ」

春香「えへへ、ためこんじゃうのは良くないですからっ」

嵐山「……君の熱い思い! たしかに伝わったぞ!」

モブ「あ、あんたテレビとかに出てるボーダーの…」

カリテイイ?

ドウゾ-



嵐山『みんな、ボーダーの嵐山だ! 我々の力が足りないばかりに、不自由をさせてすまない』



三好「嵐山准だ! ヤベー!!」

一之瀬「……!この前の時三雲くんと話してたあの…」

木虎「な、何をやって…」;

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:13:37.20 ID:8PRZhv8P0


嵐山『不安だろうけれど、パニックは起こさないでほしい。おれの目が黒いうちは、かならずみんなを守ってみせる!!』


おお…?

特に副と佐保だろー!


副「が、学校中に知れ渡ってる……」

佐補「恥ずかしい……」

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:20:27.39 ID:8PRZhv8P0


出穂「ヤバイっすメガネ先輩。緊張感さん息してないです」

 嵐山からさらにマイクは移動していき、今はバスケ部の主将がこんな時だからこそと来年度インハイ出場を決意表明していた。

修「うん……なんか未成年の主張が始まってるし……」;


バカジャネー,エイダダー

モットヒトガキマスヨーニ!

ワートリサイカイバンザーイ


遊真「おれたちもなんか宣言しとく?」+



美希「あ、ねぇねぇそこのメガネくん。ちょっと手伝って?」

修「え、はぁ…」

出穂(いきなりメガネくん呼ばわりされていいんだ)

千佳(それは出穂ちゃんも…)

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:21:35.28 ID:8PRZhv8P0


――校庭


隊長「よっと…おお、スマンね。こいつを中へ頼むよ」

修「はい…お、大きいな……なんですかこれ?」

隊長「音響設備だ。丁重に扱ってくれたまえよ」

雪歩「あ……すいませんっ、私も持ちますぅ」

修「どうも…」


雪歩「………」ンショ

修「……あの」


雪歩「ひゃうっ!」

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:23:08.34 ID:8PRZhv8P0

修「え。ぼく、何か……」

雪歩「すっ、すいません……私、男の人が苦手で…」

修「はぁ……そういえば、ほとんど女性ばかりですね」

雪歩「は、はい……私たちの国には、男の人があんまりいないんです……」

修「え…」

雪歩「私たちの国は……プロデューサー…あ、Pさん、です。プロデューサーが来てくれるまでは、すごく弱くて…。男の人は、戦争でほとんどさらわれたり、亡くなってしまって…」

修「……」


修(……他人事じゃない。三門市だって、旧ボーダーがいなかったら…)

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:24:47.97 ID:8PRZhv8P0

修「その、Pって人は、ここには来ていなんですか?」

雪歩「っ………ぅぅ、プロデューサー…」

修「まさか…」;

雪歩「生きてます! プロデューサーは、絶対、無事でいますぅっ!!」


春香「雪歩、かわるよ」

雪歩「春香ちゃん…」


春香「ごめんなさい……前にいた国で、トラブルに巻き込まれてしまって……私たち、プロデューサーさんと、離れ離れになっちゃったんです」

修「……すいません、悪いことを聞いてしまったみたいで」

春香「いっ、いえ! あなたが謝ることじゃ……それに、私たち、プロデューサーさんが生きてるって信じてますから!」

修「……わかります。ぼくも、そう信じてる人がいる」

春香「…!」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:25:46.05 ID:8PRZhv8P0

修「ちなみに、バンナムには、日本から来た、なんて人はけっこういるんですか?」

春香「あ、いえ……私たちの国は、あまり他国の人はいません。ついこの間まで負け続けだったりで……」

修「そうか…」

春香「ごめんなさい、力になれなくて」

修「あ、いえ。こちらこそ」



美希「おつかれー、それはこっち側だって」

春香「分かった、美希、そっち持ってくれる?」

美希「はいなの。会場、だんだんあったまってきてるよー」

春香「そっか、良かった」

修「?」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:26:48.34 ID:8PRZhv8P0

遊真「……あんたたち、これからどうするつもり? 多分今ごろ、外は囲まれてるよ?」

千早「そうでしょうね。ただいずれにせよ、私たちは船が回復するまで動けない」

遊真「そのためのトリオン集めでこんな人集めてんの?」

千早「それもあります。私たちの船は、人が無意識に漏らしているトリオンを集める機能が付いている」

遊真「どんくらいかかるの?」

千早「……さぁ……」

遊真「=ε=;」

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:46:39.22 ID:8PRZhv8P0

やよい「あっ! 機材、運んでくれたんですね! ありがとうございますっ!」がるーん

https://i.imgur.com/qwKtWL0.jpg

あずさ「ちょうどいいタイミングね〜」

修「ちょうどいいタイミング…?」

出穂「あっメガネ先輩! いやもうワケわかんないっすわ。おれの歌をきけーーって合唱部がアカペラ始めました」

千佳「すごいよ修くん。なんだかお祭りみたい」

遊真「ほほぅ、これがニホンのお祭りですか」+

修「まぁ…文化祭とかは……」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:47:45.11 ID:8PRZhv8P0


 遊びたい盛りの中学生たち。緊張が薄れるとともに非日常への高翌揚が増しているようだった。
 合唱部の声が笑い声にフェードアウトしたところで、バンナムの面々が壇上に上がった。



美希「みんなー、盛り上がってるー?」


いえー!!


あずさ「私たちは近界民です。けれど、みなさんと同じように、楽しいときは笑って、悲しいときは、泣いちゃうんですよ〜」

雪歩「私たちの国は、歌や踊りが自慢だったんですぅ」

千早「みなさんがよろしければ、私たちの国の歌を、ここで披露させていただきたいのですが……」

いえー!!



木虎「バカバカしい……なんなのよ、これ」

時枝「…こういう戦いかたも、あるんだね」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:52:57.88 ID:8PRZhv8P0


春香「もっと遠く どこまでも伸びる♪」

千早「追いかけてく 飛行機雲を まっすぐ♪」

美希「今日はまだね 届かないけれど♪」

あずさ「明日はたぶん 追いつけるかな? そう思うよ♪」

 
60 :※参考 :2018/11/21(水) 22:53:59.01 ID:8PRZhv8P0

https://www.youtube.com/watch?v=HY6bauem8lw&t=31s
https://www.youtube.com/watch?v=bmUnxuNt14k
本当はこの曲Fullverがオススメ
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:56:29.26 ID:8PRZhv8P0
まだ そこに 壁は あるけど
もう 平気 飛び越える

あの空に向かって・・・


鬼怒田「なんと、呑気なもんだわい」

根付「……実際心根は、無邪気な女学生と変わらないのかもしれませんねぇ」

沢村「学生時代を思い出しますねー」


城戸「…すぐに通信を切れ」

沢村「は、はい…」

忍田「……城戸さん?」
 
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 22:58:27.95 ID:8PRZhv8P0
 
城戸「……トリオン感知を最低レベルまで下げ、第三中学を精査せよ」

沢村「了解。……これは? 体育館ほぼ全域に弱いトリオン反応が……」


城戸「……」



城戸『三輪、聞こえるか』

三輪『司令…? こちら三輪、聞こえます』

城戸『敵のトリガーは――』

 
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:00:27.94 ID:8PRZhv8P0


――その頃


―――玉狛支部

https://www.youtube.com/watch?v=NkhnMi-ID74


アイドルs「「「「全弾発射!!」」」」



林藤・小南・宇佐美「「「いえー!!!」」」

 

陽太郎「ぜんだんはっしゃ! 全武装とどっちがつよいかな?」

レイジ「いや……俺の全武装は、壊すしかできないからな。あっちのほうが……強い」

烏丸「レイジさん作るのも得意じゃないすか」トンカツ,トカ

烏丸「俺にはこういうの縁がないと思ってたけど……けっこう、悪くないっすね」

貴音「ふふ……少し、気恥ずかしいですね…」



林藤「ん……向こうは……そうか」

林藤「……さて、どうしたもんかねぇ」
 
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:02:50.55 ID:8PRZhv8P0


 その頃学校から少し離れた各地点に、続々部隊が集結しつつあった。

加古『加古隊、現着したわ』

東『こちら東。B級合同狙撃部隊配置完了』

三輪『三輪隊、いつでも動けます』

冬島『こちら冬島ほか一名。設置開始しますよ、と』
 
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:07:37.02 ID:8PRZhv8P0

忍田『狙撃班は体育館周辺の動きを警戒。B級近接部隊およびA級部隊は不測の事態に備えて待機』

根付「しかし、どうするんです?」

鬼怒田「うむ。人質がある以上、うかつには動かせん」

城戸「……確認した敵の数は、8だったな」


鬼怒田「武装はなかったらしいが、ステルスに使うトリオンも考えれば人数的にほぼ限界だろう」

城戸「狙撃部隊の視認できる人数は」


東『現在2名。常時、2〜3名が外部を哨戒しているようです』


城戸「……哨戒の兵は狙撃が可能、か。ブラックトリガーの本数にもよるが……空閑遊真が戦力に数えられるのであれば、敵を抑えつつ人質を救出することも不可能ではない数だな」

忍田「……城戸さん」

城戸「無論、現時点でこちらから攻めるのはリスクが大きすぎる」


城戸「……何かあれば。いつでも動けるようにしておけ」
 
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:09:45.55 ID:8PRZhv8P0


―――体育館


巡り会いたい 手を繋ぎたい♪

抱きしめあいたい 今すぐ♪


アイドルs「「「「Vault that borderline!」」」」


わああああああ!!



67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:10:20.97 ID:8PRZhv8P0


木虎「まったく……なんなのよ、これは」

出穂「なんか、フシギですね。相手近界民なのに、いっしょになってめっちゃ楽しんじゃってるじゃないすか」

木虎「…騒げればなんでもいいんでしょ。どうせ」

あずさ「あら〜…お気にめしませんでしたか…」ヒョコ

木虎「!」

修「い、いつのまに……」

あずさ「時間があれば、ほかの歌や踊りもお見せできるんですけど……きっと、気に入るものもあると思うのだけど〜」

修「いや、でも、すごかったです」


修(体の奥にひびく音……スポットライトのなかでおどる姿……)

修(しばらくの間、自分がボーダーだとか、彼女たちが近界民だとか、頭からふきとんでしまった……)

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:10:52.27 ID:8PRZhv8P0

修「その、彼女はテレビとかにもよく出ているのできっと慣れて」

木虎「んん」ゴホン

修「?」

木虎「その……悪くは、なかったです」///

修「えっ」

木虎「何」

修「あ、いや…」

あずさ「わ〜いっ、ありがとう〜」ナデナデ

木虎「なっ、なでないでくださいっ」

あずさ「ふふ……これでもうあとは、つかまってしまってもいいかしら〜」

修「えっ」

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:11:46.86 ID:8PRZhv8P0

遊真「ふむ。そういや、ライブをしに来たんだっけ」

修「い、いや、平和条約はどうなったんですか。まだ何もしてないじゃないですか…」

あずさ「……なーんちゃって」

修「……」;



あずさ「けれど……私たちの国は、昔はほかの国と交流するのも数十年に一度。こちらの世界のことなんて、おとぎ話にしか出てこないくらいだったんです」

あずさ「それを考えれば、今この時を過ごせただけでも……すごく、すごーく、ありがたいなって……そう思うんです」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:14:14.40 ID:8PRZhv8P0

千佳「………」


千佳「あの、嵐山さん……」

嵐山「ん?」

千佳「あの人たちが帰るまで、このままっていうわけにはいかないんでしょうか」

嵐山「……それは」

木虎「ムリよ」

千佳「!」

木虎「人質がいるから無闇には攻撃できない。けれど、放置は有り得ない。最悪を想定すれば、ここにゲートを開かれたらまとめてさらわれるわ」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:15:26.67 ID:8PRZhv8P0

千佳「でも、あの人たちが、みんなに危害を加えるとはとても思えないんです」

時枝「なんでだろうね。オレも、そう思うよ」

千佳「時枝先輩」

時枝「でもそれは、接してるオレたちだから分かることだと思う」

時枝「それに、彼女たちにそのつもりがなくてもそういう作戦が進行しているっていう可能性もないとは言い切れない」


千佳「……じゃあ、戦いに……」

嵐山「今、中の状況は落ち着いている。すぐにということは、ないと思うが……」

 
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:17:09.58 ID:8PRZhv8P0


―――玉狛支部


宇佐美「ホントはどうするつもりだったんです?」

律子「ステルス船で僻地から忍び込み、情報収集をしながら交渉相手を探す、というのが基本ですね」

小南「なによ、スパイ?」

伊織「密使って言ってくれるかしら」

烏丸「正面から交渉しちゃダメなんすか?」

律子「……うちの国は、ついこの前までトリガー技術は音響、映像関係特化。戦いは負け続けの奪われ続けでした」

林藤「つまり、差し出せるモノが弱い、と」

律子「はい。今は、技術レベルも上がり他国の人も増えました。けど、目を引くような新技術なんかはほとんどないんですよ」

小南「そんなんじゃ、忍び込んでも交渉できないんじゃないの」

貴音「相手の求めているものが見えれば、交渉の余地も生じます」

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:19:28.67 ID:8PRZhv8P0

律子「船さえ無事なら、最悪でも逃げることができますからね。今回は、その船が侵入と同時に見つかってしまったわけですが」

木崎「ゲート誘導装置、か」

律子「ええ。一応、対策は施していたはずなんですが。一年もすれば通じなくなっているだろうと……それにしても、いきなりの砲撃は、予想外でした」

響「っていうか、前の国から出る時イッパイイッパイで、どこへ向かってるのかも分からなかったし」

小南「ふぅん……ついてないわねー」

貴音「いえ……悪いことばかりではありません」


貴音「あなたがたにお会いすることが、できましたから」


小南「………」

烏丸「………」

レイジ「………」


陽太郎「そ、そんなバカな〜っさっきはじめてやったゲームで…」

真美「甘いよよーたろっ」

亜美「亜美たちの成長力はもうよーたろのパワーを圧倒的に上回っているッ!!」


宇佐美「ひゃー照れちゃうねー」

小南「ちょ、ちょっ、なによっ!? とりまるあんたまたなんか騙した!?」

烏丸「いやなんでですか…」

小南「恥ずかしいセリフ禁止いっ!」///

レイジ「落ち着け小南」

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:20:55.89 ID:8PRZhv8P0
あ、レイジさんの表記がいきなり木崎になってるのはただのミスです
多分たまにこういうのある
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:24:04.21 ID:8PRZhv8P0


林藤「……ま、それはそれとしてなんか手ある?」

律子「向こうの艦は動けません。艦を捨てれば、私たちはもう、帰ることもプロデューサーを探すこともできなくなる」

林藤「運良く……こっちがなんかする前に直ってくれればラッキー、か」

律子「はい。一隻動けなくなってしまった時点で、私たちには取れる手がほとんどなくなりました」

林藤「……」

林藤(……直るまで待つってことはつまり、最悪連れ去られるまで待つのと同じ意味だ。それまであの城戸さんが手をこまねいて待ってくれるか?)

林藤(しかも、敵が人質を取ってるって状況は、ほとんどのヤツが未経験のものだ。この状況……何が起きてもおかしくない)


林藤『どうするよ……迅?』
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:25:12.68 ID:8PRZhv8P0


――学校周辺



米屋「しかし秀次、オレらいつまで待てばいいんかね?」

三輪「……少なくとも、冬島たち特殊工作(トラッパー)隊の設置前にこちらからは動かないだろう」

米屋「逃げられないようにしてから?」

三輪「ああ。哨戒をB級狙撃班が排除し、俺たちが突入する流れだろう」

米屋「古寺たちは?」

三輪「A級スナイパーは突入支援だ。外ならばともかく、あの人質もいる中で戦闘となれば相当腕がなければ支援射撃はできまい」

米屋「なるほどねー」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:38:34.83 ID:8PRZhv8P0

――狙撃部隊


荒船『……こっちの狙撃を警戒してる様子はない、か?』

東『全員、油断するなよ。敵はバッグワームを看破するレーダーを持っている可能性もある』

半崎『それにしちゃ、警戒してなさすぎじゃないすか?』

太一『み、見通しのいいとこにいますもんね。あの金髪の子……』

穂刈『見えないな。一人しか……』

茜『うぅ―…緊張で手が震える…わたし冷静に打てるかなー…』

モブスナ『………』

https://i.imgur.com/6f2eIi8.jpg


 狙撃手たちはいつでも撃てるよう狙いを定める。
 
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:39:11.86 ID:8PRZhv8P0

荒船(見たとこ隙だらけだ。いつでも撃てる…)

穂刈(すぐに撃てるな……合図があれば……)

半崎(バレてんなら……向こうから撃ってくるかもしれないんだよな)

太一(撃たれるかも…? 一体いつまで待つんだろう……)


スコープ越し。敵は目の前に見える。

街を壊し大切な人たちを奪った近界民。

戦いが始まればいつでも撃てる。

いつでも撃てる。


いつでも撃てる――


79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:39:48.27 ID:8PRZhv8P0
というところで今夜はここまで。戦闘までいけなかった(
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/21(水) 23:40:32.38 ID:8PRZhv8P0
次回は多分明後日の夜

意見感想要望等あらばくれたら次回以降で反映されるかもです
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 20:39:27.67 ID:zFn7rIdb0
ちょっと忙しくなったので次回は火曜夜に
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/27(火) 05:11:51.28 ID:zHN1sxHlo
雪を滑る方かと思った
83 :ぱくり屋 ◆zfDCN0YmXY :2018/11/28(水) 22:47:02.19 ID:QsUAHMuA0
>>82
それもありかもしれない
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 22:47:33.89 ID:QsUAHMuA0

―――体育館



千佳「……修くん。なんだか、嫌な感じがする……」

修「……嫌な感じ?」

嵐山「中はみんな、元気そうだが――」

ボッ!

何の前触れもなく。体育館の端の壁が小さく破れ、床に穴が空いた。

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 22:49:19.99 ID:QsUAHMuA0

 静まり返る体育館。

 誰もケガはない。追撃もない。

 それでもこれは――


修「今の……は……」

嵐山「バカな!」


 開戦の狼煙に相違ない――


86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 22:51:39.18 ID:QsUAHMuA0


――本部


根付「発砲!?」

忍田「バカな!!」

東『なんてことを…!なぜ撃った!!!』

モブ『ご、誤射です…! すっ、スイマセンッ…!』

 放たれた一発の弾丸。震えのためか、誰を狙うでもなく放たれたそれはただ体育館の端に吸い込まれた。

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 22:58:50.49 ID:QsUAHMuA0
 
城戸「………不本意だが」

忍田「!」

城戸「こちらから手を出してしまった以上報復の可能性がある」

忍田「っ城戸さん………まさか……!」

城戸「ただちに突入の必要があると認められるがどうか? 本部長が必要ないというのであれば、その判断は尊重するが」

忍田「く……!」

忍田(……いや、今は詮議している時間はない)

忍田「…やむをえまい」
 
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:02:02.88 ID:QsUAHMuA0


――学校周辺



東『本部から命令が下った。3カウントで一斉に撃つぞ』


2…

1…

美希「アステロイド!」

 美希の掌に浮かんだトリオンキューブが、無数に分かれ四方に放たれる。

太一「な……!」

 今まさに撃とうと美希を見ていた太一の目に、迫るアステロイドが見え――

ドンッ

太一「がっ」

 逃げ出す間もなく、光弾は容赦なく頭部へと突き刺さった。
 
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:05:09.21 ID:QsUAHMuA0

 彼だけではない。

 学校の周囲のあちこちで破裂音がなり、次々とボーダー本部に隊員たちが強制脱出させられていく。
 弾速を優先したアステロイドは、今まさに撃とうとした彼らに防御する暇さえ与えなかった。



荒船『穂刈、半崎、無事か!』

 元アタッカーである荒船は、瞬時の判断で撃つのをやめ、なんとか攻撃をかわしていた。


半崎『無事……じゃないすね。利き腕もってかれました』

穂刈『やられた。足だ……』

 先だっての大規模侵攻において、荒船隊は同じような状況を経験していた。その経験がとっさに回避を選ばせ、かろうじて直撃は免れたのだ。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:08:06.12 ID:QsUAHMuA0

穂刈『あるいは、動けないが……向こうが仕留めたと思っていれば』

 直後、荒船と半崎の耳に破壊音が届く。
 必死に逃げだしていた半崎は、苛立ちのままに片腕で銃を構え直した。

半崎「クソッ、やってやる!」

 戦闘体の指が引き金を引く前に、追撃が彼を葬り去った。


沢村『なんてこと……』

 狙撃手たちの混乱は相当だが、俯瞰で見られる本部といえど落ち着いてはいられなかった。

城戸「……やってくれる」

 分裂したアステロイドの一つ一つが、狙いを定めたハンターたちを的確に捉えていた。
 初撃で約三分の一が緊急脱出し、生き残っていた者に順に追撃が放たれていく。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:14:06.60 ID:QsUAHMuA0
 
東『荒船! 太一! ……く…』

 生き残っていた者のなかに、彼もいた。
 彼の場合、撃つ寸前、経験から感じた嫌な予感に救われていた。

モブ『東さん、動いても動いても、敵は、わああああああ!!』

 スナイパーの先達である彼を頼るB級の悲鳴が響く。

東『各員、目の前で敵が撃ってきていると思って動け!』

 言いつつ、眉根に皺が寄る。

東(そんな簡単じゃないか……)

 本来スナイパーは、隠れ潜んでいてこそだ。
 トリガーも、有効射程が長い代わりに重さもあり取り回しは悪い。

 まして、現状は目の前で撃ってきているどころかこちらが向こうを捕捉した時にはもうこちらが撃たれているといった状況なのだ。

東(一か八か)

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:18:07.06 ID:QsUAHMuA0

 不規則な軌道を取りながら、東は建物の外へ、見通しの良い校庭へと飛び込んだ。


美希「あは、こんにちは」

荒船「よう、東さん」

 一足先に、荒船が美希と対峙していた。

荒船「狙撃手は相手に見つかったまま戦ってはいけないんじゃなかったっけ?」

 軽口をたたく荒船は弧月を構えている。既にスナイパーとしての戦いは諦めたらしい。

東「……場合によるさ」

荒船「構えるハシから撃たれるくらい見つかりっぱなしじゃあな」

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:20:38.34 ID:QsUAHMuA0
 
美希「スナイパーさん相手にちょっとずるいけど、二人とも強そうだし、ごめんね」

キィン

人見『東さん』

加賀美『荒船くん!』


人見・加賀美『『伏せて!!』』

 とっさに身を伏せた東の、荒船の頭上を越えて、やや遠距離から弾丸が無数に飛び込む。

美希「やん」トッ

 美希は下がり気味にそれをかわした。
 

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:25:46.45 ID:QsUAHMuA0

https://imgur.com/37YYcYZ
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:43:10.13 ID:QsUAHMuA0

美希「一時退却!」


 砲火の撃ち手は、控えていた部隊の銃手、射手たち。

忍田『全員突入! 人質の安全を最優先に行動せよ!』




三輪「近界民……排除する」

米屋「ひゅーこういうシチュ初めてだな」


来馬「鈴鳴第一、いきます」

加古「ほら双葉、出るわよ」

柿崎「柿崎隊、行くぞ!」

https://imgur.com/OsdctmS
https://imgur.com/u3uOFMV
https://imgur.com/tLNPYIm

 突入に装甲車など要らない。彼らは戦闘体。

 彼らは、ボーダーだ。




96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:47:42.89 ID:QsUAHMuA0

 突入していく仲間たちを遠目に見守る影。

奈良坂『B級スナイパーはほとんど全滅か……』

古寺『やっぱり、距離ですかね?』


 奈良坂と古寺は、そもそも攻撃すらされていない。
 学校全域をカバーするように合同部隊として配備されたB級のスナイパーたちとは異なり、A級の彼らは自部隊の掩護に徹するべく自由に動くことができた。
 ゆえに、狙撃への自信と巻き添え被弾を避けるためB級より離れた位置に待機している。

奈良坂『おそらくな。レーダーかサイドエフェクトか』

古寺『それにしても、かなり広範囲、しかも正確。厄介ですね』

 
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:50:30.52 ID:QsUAHMuA0


―――体育館


 和やかな雰囲気は完全に消え、不安と戸惑いがうずまいている。

小鳥『来るわよ! みんな急いで』

 時間はない。もう間もなく戦いになるだろう。


修「本部! 応答してください本部!!」

春香「あっ、ごめんなさい、通信は妨害させてもらっちゃってます」

木虎「そんなことが…」

春香「ここのそばだけですけど、音や映像の技術は私たちの得意分野なので……」

千早「この期に及んでは、説得も難しいでしょう」

修「……っ、それは……」

春香「やよい、あとはお願いね」

やよい「はいっ!」
 
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/28(水) 23:53:10.59 ID:QsUAHMuA0

やよい「みなさん! できるだけ真ん中に集まってください! おっきいシールドを張りますけど、広がると弱くなっちゃうので」

千早「春香、南側を」

春香「オッケー!」

修「な、中に残るのは一人だけですか…!? ぼくらへの警戒は……」

千早「…私たちに余分な戦力は、ありませんから」



副「なあ、どういうこと…?」

佐補「ボーダーが、人質がいるのに攻撃してきたの…?」

嵐山「……副、佐補…………」

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:00:24.36 ID:ixIfeSxV0

空閑「どうする、修」

空閑「フツーに考えたら、おれたちもあいつらと戦わなきゃだな」

出穂「そんな!? だってこんなん、どうしたってうちらが悪者じゃないすか」

千佳「修くん」

嵐山「………」


修「ぼくは……」


修(ここで城戸指令を敵に回すようなことをすれば……遠征部隊に選ばれる可能性が、下がるかもしれない)

修(麟児さんのことや、さらわれたC級隊員たちを取り戻す。そのためには)
 
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:03:35.92 ID:ixIfeSxV0


修「彼女たちとは戦わない。人質を守る。そのためなら、戦闘をやめないボーダー隊員とでも……!」

やよい「え……」


出穂「メガネ先輩! 意外と大胆ですね」ニシ

遊真「ムチャがうちの隊長の売りだからな」+


修(ぼくがここで自分を曲げてしまえば、ぼくの行動が一因でさらわれたC級隊員たちに……)

修(それ以前に。一度でもそうしてしまったら、弱いぼくはきっとそこまでたどりつけない)

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:07:34.31 ID:ixIfeSxV0

千佳「嵐山さんたちは……」

修「…嵐山さん」

 緊張の面持ちの修らに、嵐山は頬を緩めた。

嵐山「通信ができないんだろう? 俺たちは、本部長の最後の命令に従うだけさ」


嵐山「人質の安全を最優先! 中は守るぞ充、木虎」

木虎「……ま、見捨てられたのかはともかく。こんな雑なやり方、見過ごせないわね」

時枝「三雲くん、トリガー、借りられるかな?」


美希「ヤマアラシー、はいっ」

 体育館に駆け込んできた美希が、嵐山に何かを投げた。

嵐山「これは……!」パシ

やよい「美希さん」

美希「いったん下がりついでに隊長から予備のトリガー預かって来たよ」

嵐山「……いいのかい? そんな簡単に信用して」

あずさ「うふふ、おたがいさまですよ〜」

美希「美希たち外で止めるから、もし入られちゃったらよろしくねー」
 
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:09:39.48 ID:ixIfeSxV0

 
 その頃玉狛支部にも、交戦開始の報が届いていた。
 慌ただしく集合したバンナムのメンバーが、支部を出て行こうとしている


林藤「出られると、見つかった場合うちも追って交戦しなきゃならないんだけど」

律子「ごめんなさい……それでも」

伊織「私たちは数では勝てない。人質無視で来られたら、時間の問題よ」

響「自分たちが外から攻撃したら、まだ敵がたくさんいるかもって思うかもでしょ?」

貴音「キザキ殿……プロデューサーのお話し、ありがとうございました」

レイジ「……」


亜美「じゃーねん、よーたろっ」

真美「生きてたらまた会おうぜっ」

陽太郎「なっ、なっ、死ぬなんて、許さないからな!」

 
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:14:44.42 ID:ixIfeSxV0


 学校では、先頭の部隊が無人の校庭を駆け抜けようとしていた

 しかし――

巴「うわ!」ザン

 地面に隠されたトリオンブレードが柿崎隊を足止めする。

柿崎「トラップか!」

照屋「このくらい…」

 そこへ体育館から、雪歩が姿を現した。

雪歩「さ、さがってください〜〜〜〜」ガシャン

巴「げ」

ドドドドドドドド

 強化アステロイドを射出する回転式機関砲型のトリガーが校庭を掘り起こす。

 
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:18:25.60 ID:ixIfeSxV0

柿崎「下がっ――かたまれ!!」

巴・照屋「「シールド!」」

 とっさに身を寄せ合いシールドを張るも、瞬く間にひび割れていく。

柿崎「間に合え…!」

ボン!

 メテオラで背後に穴を開け、そこに隊員ともども飛び込んだ。

柿崎「く……そ、無事か?」シュゥゥ…

照屋「無傷ではないですね」シュー…

巴「そう簡単にはすすめなさそうです…」

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:25:05.85 ID:ixIfeSxV0

荒船「うおおおお!」

美希「おっと!」ギィン

荒船「っ」

 柿崎隊が引きつけた隙に雪歩に向かって飛び込んだ荒船。駆けこんだ美希が弾き飛ばす。

雪歩「ごめんなさい…!」

荒船「くっ」バッ

 前は間に合わない。

 とっさに背をむけ逃げ出すが――

荒船(逃げ込む先がねえ――)


┣¨┣¨┣¨┣¨ドド

荒船「くるまっ」バキン

ドン!

 ついに荒船のシールドは壊れ、戦闘体もそれに続いた。

 
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:31:40.21 ID:ixIfeSxV0
 
当真『ち』
 
 先程から彼方から隙をうかがっていたスナイパーランク一位、当真勇。
 しかし、雪歩の攻撃が起こす土煙で視界は埋まっていた。狙撃は困難だ。


 別の地点では、奈良坂と古寺も同じく歯噛みしていた。


春香「いきますっ」ポン

ドン!

米屋「あぶねっ!」

 ロケットランチャー型のトリガーから打ち出されるのは強化炸裂弾。
 三輪隊を狙って放たれたそれは余波だけでB級を一人強制脱出させた。

 更にこちらも土煙が大きく上がる。

奈良坂『さすがに……馬鹿じゃないな』

古寺『遮蔽物のない戦場も、これを計算してのことみたいですね…』

 グラウンドという遮蔽物の少ない戦場で、狙撃を警戒するのは当然と言えよう。

 
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:35:14.75 ID:ixIfeSxV0


 那須隊の前には、あずさが立ち塞がった。

あずさ「いかせませんよ〜」

那須「そうもいかないわ……」

 互いに数十のアステロイドを浮かべる。

あずさ・那須「「アステロイド!!」」

ビュオオ

月見『陽介くん! 流れ弾いくかも!』

米屋「うわっち、マジか!」

 とっさに跳んだ米屋の足元をが光弾が抜けていく。

 砂煙が、連携や流れ弾の確認を困難にしていた。

 
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/29(木) 00:41:05.54 ID:ixIfeSxV0
中途半端だけど…まぁこの辺まででいいか。次は明日の夜か土曜
誰も見てなくとも書ききるは書ききる
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/29(木) 01:02:46.43 ID:lJjmWmiio
urlは拡張子つけてくれ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/29(木) 08:27:49.54 ID:JWzTqK9qo
基本的に高校生までの年長者に対しては先輩呼び大学生以上はさん付け
それがワートリの基本だぜ
そこら辺がちょっと惜しいな
もちろん例外も多数ある
例 修は風間に対して先輩呼び(高校生だと誤認していると作者示唆されている)
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/29(木) 14:15:16.64 ID:jqmrJFO3O
あれ、どっかミスってました?
ワールドトリガーは俺/おれの使い分けとか呼称にこだわりある感じだから自分で呼称表作ったりある程度気を使ってたんだけどな

単純なミスなら自サイトにあげるとき修正するんで指摘もらえると嬉しいです
112 :ぱくり屋 ◆zfDCN0YmXY [sage]:2018/11/30(金) 20:20:57.32 ID:E+EL8HOw0
>>109
指摘感謝ー
今更意味ないかもだけど一応各リンク張っときます
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:22:10.06 ID:E+EL8HOw0
>>1
https://i.imgur.com/OmDaCfF.jpg

>>8
https://i.imgur.com/GNsYabu.png

>>10
https://i.imgur.com/oeRiOlh.jpg

>>17
https://i.imgur.com/k1GJXd6.jpg

>>24

https://i.imgur.com/kokfUPL.jpg

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:22:36.35 ID:E+EL8HOw0
>>25
上二つ
https://i.imgur.com/51m6ppw.jpg
https://i.imgur.com/0wU4Nu8.jpg

>>34
https://i.imgur.com/7qSavrA.jpg

>>40
https://i.imgur.com/EHSF4Bh.jpg

>>94
https://i.imgur.com/37YYcYZ.jpg

>>95
https://i.imgur.com/OsdctmS.jpg
https://i.imgur.com/u3uOFMV.jpg
https://i.imgur.com/tLNPYIm.jpg
115 :ついでに【続き】投稿 :2018/11/30(金) 20:33:25.01 ID:E+EL8HOw0


那須(敵も同じようなトリガーだと……ランク戦みたい。変な気分ね)

那須「メテオラ」

あずさ「あらあら〜」ヒュパ

あずさの姿が掻き消える。

那須(テレポーター…!? でも――)

那須は焦らなかった。
この開けた戦場、那須ほどの射手ならば出現先へ向けてなぞる攻撃ができる。


那須(視線の先……数十メートル!)
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:34:41.80 ID:E+EL8HOw0

那須「バイパー!」

 市街地を破壊しないよう地面に向けて曲げつつ放たれたバイパーは、しかし空を切った。

那須(いない!?)

熊谷「玲!」

ドドッ

那須「っシールド!」

バキャン

あずさ「あらあら〜」

 視線の先から外れた斜め上の中空から飛来したあずさの攻撃を、かろうじて防ぐ那須。
 
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:36:06.15 ID:E+EL8HOw0

那須「ずれた位置に現れられるように設定してあるのかな…? ボーダーとは別経路で開発されたものかも…」

あずさ「うふふ、どうでしょう〜」


熊谷「このっ!」

あずさ「ひゃっ」ヒュパ



小荒井「えっ」ポムン

あずさ「まあ」

 突然目の前に現れたあずさ。小荒井は訳も分からず戸惑ううちに――

東「小荒井!」

あずさ「あすてろいど〜」

 至近距離から多数のアステロイドで蜂の巣にされた

ドン!
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:37:50.90 ID:E+EL8HOw0


那須「あなたの相手はっ」

ドドドッ

那須「東さん、下がって!」


那須「バイパー!」

奥寺「わっ」

 乱戦に交じる奥寺を取り囲むように迂回しバイパーがあずさへ向かう。あずさはまたしても姿を消した。
 
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:38:41.87 ID:E+EL8HOw0


熊谷「玲、あたしが目になる!」

 那須の背中に、熊谷の背が重なる。

那須「くまちゃん……! おねがい…」

 
熊谷(これで360度……どっから攻撃が来ても見逃さない)

那須(どこ……!?)

 周囲にあずさの姿はない。土煙の中から攻撃が来ることもない。
 だが――
 
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:39:19.20 ID:E+EL8HOw0

ドオッ!

熊谷「なっ…!」

 足元から飛来した巨大な光弾が熊谷の体を大きく砕いた。

玲(地面のなかから……!?)


『トリオン体活動限界。強制脱出』

ドン!

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:40:19.48 ID:E+EL8HOw0
 
 できあがったトンネルから、あずさがゆっくり歩み出る。

あずさ「ごめんなさい〜、私もこんなところに出ちゃうなんて、思わなくて」ケホッ


美希「あずさは厄介なの。キラキラがふわふわでどこに行くか分かんないの」

小鳥『大丈夫ですよあずささん。ちゃんとマークしてますから』b


 迷子の常習犯、三浦あずさ。移り気な空間認識のずれが、彼女を極めてトリッキーなテレポーターにしていた。

 どこへ飛ぶか分からないテレポート。

 分からないと分かっているからこそあずさは出た先で対処するのみ。
 考えて戦うタイプとの初戦には、滅法強いのだった。
 
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:42:33.85 ID:E+EL8HOw0

 雪歩の機銃掃射が制する戦場では、変化が起きていた。

雪歩「あっ、当たらない……!」

ドドドドド

村上「スラスター、スラスター、スラスター」

 断続的なスラスターの使用による変則軌道で、村上は雪歩のガトリングガンをたくみにかわす。

来馬「っ、とと」

村上「来馬先輩、ムリしないでください。オレが道を拓きます」

来馬「鋼、気をつけて!」
 
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:43:01.15 ID:E+EL8HOw0

村上「スラスター」ボッ

雪歩「ひゃっ」

 大型火器は火力の分取り回しは近接武器に劣る。
 対処が間に合わない――

千早「危ない!」

村上「!」

ギン!

 
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:43:27.10 ID:E+EL8HOw0

 村上の弧月の一撃を、千早の弧月が止める。

来馬「二対一にはさせない…!」ドン!

雪歩「ひうっ」

来馬「東さんお願いします!」


東『位置情報確認。そっちだな』

ドン!

 東の放ったアイビスを避け、来馬と雪歩、千早と村上で別れる。
 
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:44:22.72 ID:E+EL8HOw0

村上「オレは……オレの仕事を……!」

ギン!

千早(強い……!)

 流れるような弧月とレイガストの連撃を、千早はかろうじて弧月でいなす。


村上「使いこなしてるな…」

千早「くぅっ」

 
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:45:24.60 ID:E+EL8HOw0

 弧月の強烈な横なぎを刃で滑らせながら受ける。

 千早はそのまま村上へ向かって飛び込んだ。村上は交差気味に前に出る。


 二人の位置が入れ替わる。素早いターンで村上の背に斬りかかった千早の刀を、村上は振り返らず背に弧月を回し受けた。

千早(不安定な姿勢……押し込める!)

 村上の弧月がぶれる。下がる刃は村上が屈むと地面に突き刺さり――
 
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:46:02.85 ID:E+EL8HOw0
村上「スラスター、ON!」

千早「なっ」


 己の弧月と敵を置き去りに体育館へ向かう。勝つことよりも道を拓くことを優先した判断

 外壁にぶつかる寸前盾モードのレイガストで地面を掘り強引に減速。そのまま盾の横薙ぎで壁を取り除いた。
 守り切れるかという戦いにおいて、軍配は村上に上がった。


来馬「よし、鋼が突破口を開いた!」
 
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:46:56.84 ID:E+EL8HOw0

村上「……!」

 様子をうかがえなかった体育館内部。そこにあったものは――

村上(近界民が、住民を守って、いる)

ピッ

千早「ごめんなさい」

村上「…戦場で迷うとは」
 
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:48:09.51 ID:E+EL8HOw0

ズル

村/上「やっぱり……まだまだ……」

 千早が追いつくのは分かっていた。ただ戦場では一瞬の迷いがすべてを分けることもある。

『トリオン漏出過多、強制脱出』


 村上の体は鈴鳴支部のベッドに沈み込んだ。
 
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:49:20.12 ID:E+EL8HOw0

来馬『鋼!』

村上『……すいません来馬先輩。偉そうに言っておいて…オレ――』

 迷ってしまった。

 自分のせいで仲間を失う羽目になっていてもおかしくはない。

村上『敵は……』

 村上は言いよどんだ。なんと伝えるべきか。
 下手にありのままに伝えれば来馬を迷わせることになるかもしれない。
 
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:50:01.70 ID:E+EL8HOw0

 自分が結果的に、味方より敵を優先してしまったことを伝えるのが怖くもある。
 しかし、口に出す前に来馬が続けた。

来馬『無事ならいいよ。大丈夫?』

村上『え』

 ――ああそうだ。

 きっとこの隊長は迷ってしまったことを話しても責めない。
 それどころか、迷わないほうがおかしいと、笑うだろう。

 そういう人だ。
 
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:50:29.31 ID:E+EL8HOw0

村上『……オレは大丈夫です。気を付けてください。中を見たら、多分、驚きます』

鋼『? ……分かった、後は任せて』

村上『はい。隊長』

 次があればまた迷おう。
 迷いながら守れるようになろう。

 誓いを確かなものにするため、村上は眠りに落ちた。

 
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:53:22.55 ID:E+EL8HOw0
 

 その頃、避難によってできた無人地帯の最外部でも硝煙が立ち上った。


出水「おっと、唯我がやられた」

太刀川「いやー油断しすぎだろー」

https://i.imgur.com/1fBgMO2.jpg


沢村『太刀川隊が近界民の別隊と遭遇! 交戦開始しました!』

忍田『哨戒中のA級部隊、および付近のB級部隊は急行。その他のB級部隊は引き続き担当地区を警戒するように』
 
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 20:54:49.60 ID:E+EL8HOw0


真「やあっ!」

太刀川「おっと」キン

 真と太刀川、二本の弧月が激しく火花を散らす。

 太刀川の上段。弧月で受けた真がひざをつく。追撃の左袈裟懸けを手元近くへの刺突で止める。手を返し切り上げ。太刀川は一歩飛び退いた。


太刀川「へー…なかなか使いこなしてんなぁ」

真(このひと……強い……!)

太刀川「ん」

真「?」
 
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