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バットマン「グランド……オーダー?」レオナルド「その3だね」
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433 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/20(木) 00:29:47.50 ID:nZCc8mKv0
………………
チュン!! チュンチュン!!
エリザベート「……んんぅ、おはよう……?」ムクリ
空の寝袋「」
エリザベート「……え?」バッ
手紙「」ハラリ……
エリザベート「……これ」パシ、ペラリ
エリザベート「……」
手紙『世話になったな
デッドショット』
エリザベート「……あの、馬鹿!」ダッ
434 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2018/12/20(木) 00:30:16.02 ID:nZCc8mKv0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
435 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/20(木) 01:59:44.43 ID:Anw5OPaio
乙
やっぱエジソンは初見びっくりする系の鯖筆頭だよな…
436 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/20(木) 11:22:39.41 ID:A2C5K76j0
乙!わくわくが止まらん
437 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/20(木) 16:10:26.28 ID:jw1VRidA0
乙乙!
フィンがかっこよくて嬉しい……フリーズとのコンビもいいね!
438 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/20(木) 16:20:24.12 ID:MXsIBaW90
アルジュナ、カルナから見たらペンギンの方が若造という特大のブーメランが
異父兄並に苦労してるという授かりの英雄アルジュナ…もうやだこのバトルジャンキー
439 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:01:39.93 ID:zR/7c36Y0
クーフーリン「……」
ケルト兵「王よ、完成しました」
クーフーリン「……ようやくか。見せてみろ」
ケルト兵「はっ、こちらに……」スッ
緑の槍「」
クーフーリン「……へえ」ニヤリ
440 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:02:09.91 ID:zR/7c36Y0
メイヴ「すごい、綺麗ね。私にも持たせて頂戴?」
クーフーリン「駄目だ。……下がっていい」
ケルト兵「はっ」ササッ
クーフーリン「……これでようやく、俺が最強か」
メイヴ「……大丈夫よ、クーちゃん。最初からアナタが最強の戦士なんだから」
クーフーリン「フン……」スクッ
メイヴ「何処へ行くの?」
クーフーリン「最後の心残りを消す」スタスタ
441 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:03:08.62 ID:zR/7c36Y0
………………
緑の床「」ジリジリ……
緑の壁「」ジジジジ……
???「……ぐう、うぅ……」グッタリ
緑の扉「」ガチャリ
クーフーリン「……こいつは驚いた、まだ生きていたのか」
???「……う、う……」
クーフーリン「だがまあ、虫の息だな。もってあと三日ってところか。……このまま苦しんで死ぬのと、ひと思いに楽になるの。どっちが良い」
???「……」
クーフーリン「……楽になれるぜ、コイツを使えばな」
緑の槍「」ジジジ……
442 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:03:44.67 ID:zR/7c36Y0
???「……」ボソボソ
クーフーリン「……?」
???「……こど、もは……無事なのか……?」
クーフーリン「……ケッ、そうか。なら好きにしろ」
???「……」
クーフーリン「ひと思いに殺すのもやめだ。テメェは苦しませといてやる。余計なモンを抱え込んだまま、後悔にまみれて死ね」
???「……」
クーフーリン「……じゃあな」スタスタ、ガチャリ
緑の扉「」バタン
???「……」
443 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:04:19.41 ID:zR/7c36Y0
………………
マシュ『……ここは?』
???『マシュ。マシュ・キリエライト』
マシュ『え? あなたは……』
???『聞こえるか、マシュ・キリエライト。盾を手に戦う、誇り高き騎士』
マシュ『あなたは、一体』
???『お前はこれまで、どのような敵にも立ち向かって来た。臆しはすれど、退く事もなく。その背に大切な者を護ると誓い』
マシュ『……』
444 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:05:32.95 ID:zR/7c36Y0
???『……ゆえに、このような日が来ることは分かっていた。必ず、精神性だけで打ち勝てぬ敵というものはある』
マシュ『……デスストロークですか?』
???『それだけではない。お前の道には、未だ多くの強大な壁が待ち構える。ひとつ問いたい、マシュ・キリエライト』
マシュ『何でしょうか』
???『お前は、自分の命を犠牲にしてでも、人を護る事を選ぶか?』
マシュ『はい。私は、絶対に皆を守ります。マスターを』
???『……そうか』
445 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:06:56.78 ID:zR/7c36Y0
???『ならば、私はこの力をお前に託そう。その命を燃やし、敵と戦うが良い』
マシュ『……』
???『……だが、心せよ、マシュ。人が戦う時、最も強い原動力となるのは────……』
446 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:07:29.82 ID:zR/7c36Y0
チュン、チュンチュン……
マシュ「……」ムクリ
マシュ「……ここは?」キョロキョロ
扉「」コン、コン
ガララッ
ブルース「マシュ、起きて……いるな。おはよう」
マシュ「マスター。おはようございます」
ブルース「治ったか」
マシュ「はい、違和感はありません」
ブルース「ドクター、観測を」
ドクター『うん、大丈夫だ! 治ってるね!』
447 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:08:02.77 ID:zR/7c36Y0
ブルース「宝具が不安定になった事だが」
マシュ「大丈夫です」
ブルース「……本当に?」
マシュ「はい。……あの……それとは別にひとつだけ、お尋ねしたい事が」
ブルース「何だ?」
マシュ「人が戦う最も強い原動力とは、何でしょうか?」
ブルース「……」
448 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:08:33.00 ID:zR/7c36Y0
ブルース「……それは、私にとっては、恐怖だ」
マシュ「マスターにとっては?」
ブルース「人によって違うだろう。それに私の戦う理由も変わりつつある」
マシュ「……」
ブルース「……それをうまく言語化は出来ないが」
マシュ「……答えて頂いて、ありがとうございました」
ブルース「ああ。……私も探しておく」
マシュ「私もです」
449 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:09:02.14 ID:zR/7c36Y0
ブルース(こうして、スーツを着用する意味も。私にとっては、変わりつつあるかもしれないな)
ブルース「……」ガチャ、ガチャ。ガチリ
ブルース「……」ガキッ、ガシャリ。シュルッ
マスク「」
ブルース「……」スッ
バットマン「……行くぞマシュ、移動しながら状況と作戦を説明する」
マシュ「はい」スクッ
450 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:09:33.58 ID:zR/7c36Y0
………………
バットマン「南に行く戦力はこうだ」
ビリー「どうも」
ジェロニモ「やあ、よろしく頼むぞ」
ラーマ「うむ!」
シータ「よろしくお願いします!」フンス
マシュ「こ、こちらこそ!」ペコリ
ナイチンゲール「……ブルース、やはり私は北の主戦場へ行った方が」
バットマン「ナースはお前だけではない」
ナイチンゲール「……」ムスッ
451 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:10:03.31 ID:zR/7c36Y0
エジソン「対して、北の主戦場へ行くのは」
エレナ「まあ、こうなるわね」
キャットウーマン「よろしくお願いね?」
エレナ「うふふ、こちらこそ!」
エジソン「そしてロボット大軍団!」
ロボット達「「「……」」」ガシャン、ウィィィィ
エジソン「……ふむ」
バットマン「北には搦め手が得意なメンツを入れた。……判断は前情報でのみ行ったが」
バットマン(そして、確かめたい事もある。そのためのメンバー分けだ)
エジソン「ジェロニモ君はこちらに来ても良かったのでは?」
バットマン「砂での目くらましは接近戦に優位を与える。ロボットにはあまり好ましくない」
エジソン「ふむぅ……」
452 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:10:40.33 ID:zR/7c36Y0
エジソン「……本当にやるのか、あれを」
バットマン「それはお前に任せる」
エジソン「……うむぅ……」
バットマン「……」
エジソン「……キミはこれが最善だと?」
バットマン「ああ。私が最善だと思い、それを伝えている。……私を信用できないのも分かるが、これが私の計算の結果だ。何度やり直しても揺らがないだろう」
エジソン「……」
バットマン「……『全ての事は不可能だ、誰かがやるまでは』」
エジソン「む……」
バットマン「私に賭けろ、エジソン。お前の疑いは、行動で打ち砕く」
453 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:11:17.21 ID:zR/7c36Y0
エジソン「……ふむ。ふふ、ふふはははは……」
エジソン「成程、分かった。キミは大胆な男だ、ブルース。それほどの大言を、目の色一つ変えずに言ってのけるとは」
エジソン「乗った、キミに」
バットマン「そうか。……必ず成功させる、安心しろ」
エジソン「キミこそ安心したまえ。もし失敗した時は、私も共に地獄へ行くさ」
バットマン「そうか。では、地獄以外の何処かでまた会おう」
エジソン「ははは……はははははは!」
454 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:11:44.98 ID:zR/7c36Y0
キャットウーマン「寂しいわね、ここでお別れ?」
バットマン「ああ。そうなるな」
キャットウーマン「……もう、もうちょっと気の利いた台詞は出て来ないワケ?」
バットマン「……」
キャットウーマン「まあ良いわ、期待してなかったもの。生きてまた会いましょうね、ブルース」ヒラヒラ
バットマン「……ああ、さらばだ」
バットマン(……)
455 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:12:15.19 ID:zR/7c36Y0
マシュ「準備、できました!」
バットマン「よし。……南側人員、全員行けるか」
ビリー「オッケー!」
シータ「はいっ!」
ラーマ「うむ!」
ナイチンゲール「はい」
ジェロニモ「用意よし!」
マシュ「行けます!」
ロボット達「「「」」」ガシャ、ウィィィィィ……
バットマン「……行くぞ!」
456 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:12:47.56 ID:zR/7c36Y0
キャットウーマン「それじゃ、私達も行きましょうか」
エジソン「うむ! ……少し待ってくれ、地面の調子を確かめる……」
キャットウーマン「……地面の調子?」
エジソン「いやいや、こちらの話だ。……よしよし、ちゃんと地面をやっているな。では我々も行こう!」
キャットウーマン「???」
エレナ「あ、あはは。エジソンは時々変な事をするのよ……」
エジソン「全ロボット部隊、出撃!!」
ロボット達「「「」」」ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ
457 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:13:17.71 ID:zR/7c36Y0
………………
デッドショット「……」タタッ、ザザァ
物陰「」
デッドショット「……」チラ
ケルト兵E「……」ザシ、ザシ、ザシ……
ケルト兵F「……」ザシ、ザシ、ザシ……
デッドショット「……」フゥ
デッドショット(勢い込んで敵の本拠地手前まで来たは良いが、まさか街ごとケルト兵に乗っ取られてるとはな。障害物が多いのが救いだが、これじゃ射線も通らん)
458 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:13:46.31 ID:zR/7c36Y0
デッドショット(……)
デッドショット(……エリザベートは、幻滅しただろう。俺を追って来る事なんてないハズだ。まさか、俺が敵の本陣に突っ込んでるとも思わんだろうし)
デッドショット「……すまねえな、勝手に巻き込んで」
エリザベート「本当よ、巻き込むなら中途半端はやめてよね!」プンプン
デッドショット「はは、次に会ったらもっとマシな形で……うん?」
エリザベート「なによ」
デッドショット「……んんん?」
エリザベート「何」
デッドショット「……はあ、すまん。俺とした事が、お前が恋し過ぎて幻覚まで見るなんてな……」
エリザベート「ちょ、ちょちょ、何よ急に!? 告白!? あ、アタシそういうの慣れてないっていうかぁ!!」
デッドショット「……この馬鹿な反応、マジでお前か」
エリザベート「はああ!?」
459 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:14:36.30 ID:zR/7c36Y0
デッドショット「……手紙残してあっただろ」
エリザベート「ああ、あれね! アンタ意外と字が綺麗なのね」
デッドショット「そうじゃねえ。普通アレを見たら『ああ、縁を切るつもりなんだな』って思って追って来ねえだろ。というかどうやって追っかけてきた?」
エリザベート「あの程度で縁切りなんてできるわけないでしょ。それにアンタ、匂いが濃いのよ。イヌじゃなくても追っかけられるわ」
デッドショット「匂い?」
エリザベート「加齢臭」
デッドショット「……嘘だろ」
エリザベート「ホントよ」
デッドショット「……」クンクン
エリザベート「……嘘だってば」
デッドショット「……」
460 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:15:19.07 ID:zR/7c36Y0
デッドショット「……ここが何処か分かってんのか、敵の本陣ちょっと手前だぞ。地獄は目と鼻の先だ」
エリザベート「分かってるわよ、そのくらい。地獄でライブも楽しそうじゃない?」
デッドショット「……なんで追っかけてきたんだ、お前、放っといて適当なところで生きてりゃ良かっただろ。これは俺の自己満足だ。自己満足で死ぬんだぞ」
エリザベート「ならアタシだって自己満足よ。何処で死んでもアタシの自由でしょ」
デッドショット「そんなワケねえだろ、お前は……」ドクン
デッドショット(コイツは、何だ? 俺にとって、何なんだ?)
デッドショット(ああ、フロイド。駄目だ、お前は……お前は、よりによってコイツを)
デッドショット「……馬鹿野郎が」
エリザベート「フンだ」
デッドショット(コイツを、娘とダブらせるなんて)
461 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:15:49.77 ID:zR/7c36Y0
………………
フィン「……ここ、です」
フリーズ「ここに? だが……」
フリーズ(ここは何も無い、岩場じゃないか)
フィン「ええ、傍目には何もないように見えるでしょうが……ここに魔術的な仕掛けが施されておりまして」
フリーズ「どうやってそれを知ったんだ?」
フィン「親指の知恵に導かれたのです」
フリーズ「親指……ああ、成程」
フィン「では、取り出すとしましょう」パパッ、ガシ……
462 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:16:18.86 ID:zR/7c36Y0
フィン「……!!」ガシィ、ググググ……
フリーズ「……!」
フリーズ(虚空から、棍棒が現れた……?)
フィン「ぐう……でりゃっ!」グィィッ
ダグザの棍棒「」スポンッ
フリーズ「お、おお……それが例の?」
フィン「ええ、これが多くの者が探し求める神器。ダグザの棍棒です」
463 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:16:48.37 ID:zR/7c36Y0
フリーズ「……だが、随分あっさりと手に入れたな。手伝って欲しいと言われたからには、もう少し恐ろしいものを想像していたが……」
フィン「……いえ、これを手に入れるのは、恐ろしくありません。この先が……私にとっては、少し恐ろしい。まだ、付き合っていただけますか」
フリーズ「この先……?」
フィン「はい。どうか頼みます。私は、これをせねば……自分の過去の清算すら出来ない」プル……
フリーズ「……」
フリーズ(……)
フリーズ「……付き合うさ。さあ、次は何処へ行く」
フィン「ありがとうございます。……では、戻るとしましょう。あの廃屋へ」
464 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:17:29.80 ID:zR/7c36Y0
床「」ギシィ……ギシィ
老婆「げほっ、げほ……ごほっ……」
フリーズ「……」ガシャリ、ガシャリ……ピタッ
フィン「……」スタ……スタ、ピタッ
フリーズ「……フィン、その棍棒をどうするんだ?」
フィン「これは……これは、順手で振れば、一度に幾人もの屈強な戦士を打ち倒す神器です。ですが、これを逆手で振ると、死人が蘇ると言われている」
ダグザの棍棒「」ゴロ……
老婆「……ごほ、ごほっ……」ハァ、ハァ
フィン「ただいま、戻ったよ。グラーニア」
465 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:18:10.66 ID:zR/7c36Y0
グラーニア……それはフィンの、二人目の妻の名だ。その意味を問おうと、フリーズは隣に目をやる。そして押し黙った。
彼はその時、フィンの身体の震えが止まっていた事に気付いた。その目にはさまざまな感情が去来している事が見て取れる。元フィオナ騎士団団長は、息を大きく吸い、ダグザの棍棒を逆手に握り……そして、振った。
暫くは何も起きなかった。老婆の咳き込む音だけが響くあばら家の中、不自然なほどの静けさが場を満たしていた。だが、やがて、人の握りこぶしほどの青白い光の球が、ゆらゆらと現れた。
それを見た老婆は、咳き込むのすら忘れ、目を見開いて呟いた。
「ああ、ディルムッド」
ディルムッド……確かに、彼女はそう言った。青白い光の球は嬉しそうに震え、彼女の手に触れる。彼女も確かに両手で触れ、そして、その身体から、同じような光の球が出て行った。
二つの光球は、しばらく踊るように、フリーズとフィンの目の前で回り続けた。出会えたことを歓喜するかの如く。だが、やがてそれらも消え、静寂と仄暗さが部屋に訪れた。
老婆はピクリとも動かない。死んでいた。
466 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:18:44.46 ID:zR/7c36Y0
フィン「……」
フリーズ「……あれは」
フィン「ふふ、妙な話です。これを振れば、死人を生き返らせることができると思っていたのに。どうやら、真っ赤な嘘だったらしい」
フリーズ「……」
フィン「ありがとうございました、ヴィクター殿。これで私の後悔はもはや無い。生きようと、死のうと、どうでも良い身になれた。この恩は忘れません」
フリーズ「……」
フィン「……少し、休ませてください。疲れてしまいました」スタスタ
フリーズ「……待て、フィン」
フィン「はい?」
467 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:19:17.18 ID:zR/7c36Y0
フリーズ「お前は、アレで良かったのか。あの方法で」
フィン「……良いのです。彼女が幸せで、因縁は清算された。これ以上の事があるでしょうか」
フリーズ「……」
フィン「失礼します。……世話に、なりましたな」スタスタ
フリーズ「…………」
フリーズ(……フィン、お前は……)
468 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:19:56.84 ID:zR/7c36Y0
………………
マシュ「たあっ!!」ズドシャァ!!
ケルト兵A’’「!!」ドッシャァァ
ジェロニモ「そらっ!」ドドッ
ケルト兵B’’「!?」グシャァ
ビリー「あーもう、ホントにロボットが役に立たないなあ!?」ドォン、ドォン
ケルト兵C’’「っ……」ドシャァ
ラーマ「これは、なかなかきついな! シータ、平気か!?」ズババァッ
シータ「大丈夫です! ラーマ様こそ、ご無事ですか!?」シュパパパッ
ラーマ「ふはは、シータが居るなら負けは無い!」ダダッ
ビリー「わー愛のパワーって凄いなぁ! このまま全部やっちゃって欲しいよ!」
ナイチンゲール「退きなさい!!!」ドドドドドドドドグシャシャシャシャシャシャ……
ケルト兵達「「「」」」ドグジャシャシャシャシャシャ……
ビリー「……あそこで真っ赤な竜巻みたいになってるのって誰だっけ」
バットマン「フンッ!! ……アレはフローレンスだ」ドドッ
ケルト兵H’’「っ!?」ドシャァ
469 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:20:31.77 ID:zR/7c36Y0
ナイフ「「「」」」ヒュォォォォォンッ
ナイチンゲール「!!」パシパシパシィ!!
「快進撃も、ここまでだ」
バットマン「!! 全員戻れ、陣形を組め!」
マシュ「!!」バッ
ジェロニモ「はっ!」ダダッ
ビリー「っ」ダッ
ラーマ「シータ、後ろに!」ババッ
シータ「はいっ!!」サッ
ナイチンゲール「……貴方ですか」ジッ
デスストローク「よう、また会えたな」スタ、スタ
470 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/22(土) 23:21:25.46 ID:zR/7c36Y0
デスストローク「嬢ちゃん、あの回し蹴りは効いた。正直お前の事を嘗めていた。まさか数回打ち合っただけであそこまで成長するとはな」
マシュ「……」ジリッ
デスストローク「だがな、お前も学習したかもしれんが……俺も、学んだぞ。お前達一人一人がどういう動きをするか、どういう戦い方か、どういう人生を送って来たか……」カチャ、シュリィィィィイ……
バットマン「……」
デスストローク「俺は戦士だ。殺戮の徒だ。俺の人生には何も残らない。だからこそ、俺はもう迷わん」スッ
マシュ「……なら、私は貴方に負けません!」
デスストローク「試してやる、行くぞ!!」ダッ
471 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2018/12/22(土) 23:22:48.89 ID:zR/7c36Y0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。
472 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/23(日) 01:38:33.80 ID:H65lUk/ao
乙
やっぱり来てたか・・・
473 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:20:50.17 ID:G22OK9G00
照り付ける太陽の光を、木々のとばりが細切れにする。落ちて行く明かりの下、地面に飛び散った血液が輝く。
マシュは天才だった。ブルース・ウェインから受けた教えをこの数か月の内に全て消化し、教えられた以上の戦果を出し、並の敵ならばもはや数秒で片付けてしまうほどの実力を身に付けていた。その非凡な学習能力は、デスストロークを相手にも牙を剥き、事実、彼女は彼を超えかけていた。
だがマシュは、追い詰められた戦士の恐ろしさを知らなかった。デスストローク……スレイド・ウィルソンは、自らの負けで腐るような三下ではなかった。魂を敗北というやすりにかけ、余計なものを削ぎ、精神を鍛え直し、経験を見つめ直し、再度立ち上がった。それはまごう事なき強敵。マシュは気付くべきであった。一度破った敵が再び目の前に立ち塞がるとは、どういう意味なのか。
「俺は戦士だ」
デスストロークはもう一度、確かめるように呟いた。その目の前、脇腹を深く斬り付けられたマシュが膝をつき、額から冷たい汗を、傷口からドクドクと血を流しながら倒れまいとこらえている……
474 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:21:42.84 ID:G22OK9G00
ビリー「この前みたいにはいかないよね、流石に!!」ドォン!!
デスストローク「フン」ギャリィ
ビリー「……ねえ、本当に弾丸ってあんな感じで切れるもんなの?」カチャリ
バットマン「ナイチンゲール、ジェロニモ、マシュの回収を! ラーマ、デスストロークに攻撃を頼む! シータとビリーは奴を遠距離から牽制しろ! 全員、罠に注意するんだ!」
デスストローク「さて、総崩れまで秒読みだな」ダッ
バットマン「カバーする、ラーマ!」バッ
ラーマ「助かる!」ダダッ
475 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:22:21.03 ID:G22OK9G00
デスストローク「ははっ、貴様、人間のくせに俺に立ち向かうのか!?」ギャリィ!!
ラーマ「でぇい! 今だブルース!」ギュギィ!!
バットマン「そこだ!」ブンッ
デスストローク「下らん!」ヒュババッ
バットマン「ぐおっ!?」ドシャァ
シータ「かばーします!!!」ヒュパパパパ
ビリー「早撃ちは得意だけど狙撃はね!!」ドォンドォン!!
デスストローク「遅いわ!」ガギギィ、ババッ
ラーマ「そこ!」ズバァッ
デスストローク「食らうか!」シュッ
476 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:22:48.60 ID:G22OK9G00
ジェロニモ「目くらましをする! 今のうちだ!」ズオォォォォォ……
ナイチンゲール「……大丈夫ですか」ズルズル、ドサッ
マシュ「ぐ……少し、油断しました」プルプル
ナイチンゲール「治療を開始します。動かないで。必ず救います」カチャカチャ
マシュ「……ありがとうございます」
バットマン「シータ、ビリー、足元だ! ヤツの足元を狙え!」ムクリ
デスストローク「ははは、それで俺をどうにか出来るとでも!?」
ラーマ「嘗めるなよ、学習するのはお前達だけではない!」ガシャリッ
477 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:23:17.47 ID:G22OK9G00
ラーマが斬り掛かる。デスストロークはいつも通り柔軟に回避しようとし……目を細め、動作を中途で止めた。ラーマの太刀筋が、進化している。以前までは軽く躱せていたその剣が、食らいつくかの如く致命的な軌道を描き直す……!!
バットマンも起き上がり、実に厄介な立ち位置から掌打を繰り出そうとしている。そのスピードは速くはない。だが、厄介極まりない攻撃範囲。このままこれを食らえば少なからず隙を生み、そこにラーマがトドメを持ち込んで来る……
さらに追い打ちをかけるかの如く、銃弾と矢がデスストロークの足元へ殺到する。これでは思った通りの柔軟な回避など不可能。ではどうするか? ここから最適な回避をするには? ……たやすい。
死の傭兵はつま先の足裏だけで地面を打ち、その力だけで数メートル跳躍した。そのままスピン回転、飛来する弾丸や矢を弾き返しながら、まずは蹴りを繰り出した。バットマンはそれを手甲で防御、衝撃の8割を受け流すも、残りの2割を受けて吹き飛んだ。
次に回転の勢いを利用した斬撃を、ラーマの首へ。ギリギリで反応したラーマは剣を縦に構え、それを受ける。そして威力に耐えきれず、吹き飛ばされる……
死神が、着地した。同時にバットマンが木に背を打ち付け、吐血してうつ伏せに倒れる。ラーマはケルト兵を数人巻き込みながら吹き飛び、地面に転がった。
近接戦闘組、全滅。デスストロークは仮面の奥で笑う。
「さあ、総崩れだ」
後は作業のみ、そう考えていた彼は直後、寒気を感じて反射的に防御姿勢を取った。その瞬間、赤いつむじ風じみた存在が飛び出し、拳を叩きつけた。
「こんにちは。あなたを治療します」
ミシミシと拳をめり込ませながら、ナースの冷たい挨拶が通る。ナイチンゲールだ。その瞳に浮かぶ相変わらずの狂熱に、デスストロークは苦笑いしながら一歩退く。
ナイチンゲールは極端なまでの前傾姿勢を取り、死の傭兵へ拳を押し付け続ける。デスストロークは一瞬の隙を突き、拳をいなして回転。そして跳躍。姿勢がブレた看護師のその首を、剣が刈り取る……その一瞬前に、矢と銃弾が飛来。デスストロークの腕に命中し、跳ねのけた。
「っ」
今度はデスストロークが怯む番だった。ナイチンゲールは大きく踏み込み、敵の首を掴んで地面に叩き付ける。揺れる地面。振動は木々に伝播し、森の上から枝葉が落ちる。
「ケルト兵! この戦線は俺に任せ、敵本拠地への進軍を再開しろ!」
少なくないダメージに身をよじりながら、デスストロークは吼えた。途端、ゲリラじみて潜伏していた多数のケルト兵は、サーヴァントたちを囲むのをやめ、エジソンの拠点目掛けて進軍を開始する。
当然、動けるエジソン勢力はこれを無視するわけにはいかない。ビリー、シータは一旦援護射撃を中止し、進み始めたケルト兵を倒し始める。だが数が多すぎる。進軍が、止まらない。
マシュが治癒しきるまで魔術的防護を張ろうと残っていたジェロニモも、この看過できない事態に動く。ケルト兵を切り、大地の精霊に力を借り、狼を呼んでケルトを倒す……だが、足りない。この物量。まるで南側には、最初から戦力が居ないと知っていたかのような、この物量……
「余所見か」
ナイチンゲールはおのれの胸を貫いた冷たい感触に驚き、身体を見下ろした。剣が貫通している。デスストロークは一瞬の隙を突き、彼女の急所を攻撃した。力が入らなくなる身体を支え切れず、彼女は倒れた。
デスストロークは立ち上がり、ナイチンゲールにトドメを刺そうと剣を振り上げた。だがその一瞬前に、爆発的な存在感が蘇ったのを感じ取り、目を上げた。
脇腹を包帯でくくったマシュが目を光らせ、歩いて来る。
478 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:26:17.36 ID:G22OK9G00
「学習しました」
マシュはたった一言だけ言い放ち、重い音を立てて盾を放った。ビリー達がケルト兵と戦う音が遠くなり、二人の周囲の空間は断絶されたかの如く静まり返る。一対一。以前の焼き直しになるか? いや。デスストロークもまた、無限に学習する戦士。
「そうか。お前は強いからな」
デスストロークも剣を放り捨てた。アレは近距離戦闘では僅かに取り回しが悪い。素手で戦わねば、若干の有利を相手に与えてしまう。そして何より、マシュの前で素手で戦った事は『ない』。未だ学習されていない戦闘スタイルだ。慣れる隙も与えず、一気に圧し潰す。
風が通り抜け、葉がこすれて音を鳴らす。マシュとデスストロークは睨み合う。マシュが一歩、踏み出す。デスストロークも一歩、踏み出す。だが互いに飛び掛からない。この一歩は互いにフェイントじみた動作。カウンターを呼び、それにカウンターするための布石。だがどちらも慎重であり、そうやすやすと敵の思惑には乗らない。
さらに一歩、互いに踏み出す。互いに臆する色は瞳に無い。既に素手での攻撃範囲内。だが互いに手を出さず、相手の心を読もうと努める。さながら居合の瞬間、達人同士でどちらが速いかを極限まで計算するかの如く……一瞬を読み合う時間が続く。マシュの筋肉が動いた。デスストロークが霞んだ。
その瞬間を先んじたのは、やはりデスストロークだった。彼は余計なものを捨てており、ゆえに彼に迷いはなかった。マシュの拳に先んじて、傭兵の拳がその喉を打った。
彼女はよろめいた。勝機と見るや、彼は容赦なく飛び掛かる。拳を繰り出す。マシュは辛うじて防御。二段の蹴り上げ。マシュは辛うじて防御。ソバット。躱し切れず、頬に直撃。体勢を崩した彼女の頭部へ、更に蹴りが直撃。更に蹴りが直撃。更に蹴りが直撃。
耳鳴りが満たす思考の中、マシュは後退しながら必死に腕を上げようと試みた。デスストロークが力強く踏み込み、破滅的威力の正拳突きを彼女の鳩尾へと叩き込んだ。マシュは吐血し、心臓が止まった事を自覚した。
(嫌だ。まだ)
いかにも単純な思考で、だが強い力で、マシュは死に抗った。そしてその言葉を思い出した。
(((心せよ、マシュ。人が戦う時、最も強い原動力となるのは────……)))
マシュは命を燃やした。
479 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:27:00.13 ID:G22OK9G00
デスストロークは戦いが終わったと確信していた。彼女は死体に変貌した。これで周囲の者を片付けられる。
まず彼が感じた違和感は、手首にあった。何かに掴まれている。そして次に、マシュの息遣いを感じた。死んで、いない? 何故? デスストロークには理解できない。それを余計なものと断じ、切り捨て、省みなくなってしまった戦士には、それを理解できない。
マシュは目を鋭く光らせ、歯を食い縛り、全身に力を籠め、死の傭兵に抗った。デスストロークは腕を引き戻そうとする。できない。マシュの力が、跳ね上がっている。
「学習、しました」
デスストロークは……スレイド・ウィルソンは、この瞬間、初めて戦慄した。自分は何かを見落としたのか? それは何だ? この力は何だ?
凄まじいパワーのパンチが、デスストロークの顔面を捉え、仮面を弾き飛ばした。右目を眼帯で覆った初老の男性の顔が露になる。その顔は殆ど呆然としていた。それは自分が負ける理由を、今になってもう一度探し始めたかのようでもあった。
マシュは情け容赦のない連続パンチをスレイドの顔面に叩き込み続ける。スレイドは何とか距離を離そうともがくが、マシュは彼の腕を放さず、至近距離に置き続ける。
「貴様!!」
スレイドのフックがマシュの脇腹に突き刺さる。一瞬の力のゆるみに乗じ、体をもぎ離すと、彼は落ちていた剣を拾い上げた。格闘戦すら学習されたのならば、近距離戦にこだわる道理など無し! 少し離した間合いから徹底的に潰すのみだ!
それは事実、見事なまでに冷静と呼べる切り替えだった。スレイドは勢いを盛り返し、マシュへと飛び掛かる。中距離からでも届く蹴りの連打だ!
獰猛な蹴りの嵐の中、マシュは防御姿勢を取り、決して崩さなかった。顔中血みどろになり、鎧の節々の肌から痛々しい内出血の痕が見える。だが彼女は耐え続ける。スレイドは敵の不屈を不可解に思う。とうに限界のハズだ。頭部へのダメージは深刻なまでに蓄積され、今にも気絶するほどだろう。だというのに、これは?
「これで、どうだ!」
スレイドは美しいまでに均整の取れた姿勢で、ムチのようにしなる蹴りをマシュの頭部へと叩き込んだ。強烈な音が鳴り響き、マシュの姿勢が揺れる。勝機! その瞬間を狙い、スレイドは剣をマシュの顔に振り抜いた。一瞬後、彼女の頭部は半分に両断され、湿った音を立てて地面に落ちた。
…………そうなるハズ、だった。スレイドは軌道上で止まった剣を訝しみ、視線をやった。彼女は歯で刃を噛み締め、止めていた。
「馬鹿な」
マシュは体を捻り、回し蹴りを繰り出した。その蹴りはスレイドの首を目掛け、猛烈に加速して行く。それはデスストロークの潰れた右目側からの一撃であり、完全に死角を、虚を突いた回し蹴りだった。それは以前と同じ敗因であり、遡ればあの時点で、彼はこの戦いに負ける事が決まっていたのかもしれない。
…………遡れば? デスストロークの脳に走馬燈じみて生前の出来事が去来する。遡れば、この右目が潰れていた事が敗因であり、遡れば、自分が傭兵を始めた事が敗因であり、遡れば……
「ああ」
スレイドは自らが振りまいてきた理不尽に押しつぶされるのを感じながら、その一撃を受け入れた。
480 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:27:50.86 ID:G22OK9G00
マシュ「はあっ、はあっ……!」ドサッ
ナイチンゲール「……ぐっ……」プルプル
バットマン「マシュ、フローレンス……!」ムクリ
ビリー「駄目だ、ケルト兵を止められなかった! 連中、僕たちの拠点に行っちゃったぞ!?」
バットマン「……このふたりを回復させねば」
ジェロニモ「退いてくれ、ブルース。少しなら回復させられる」
バットマン「フローレンスは頼んだ。マシュ、『令呪を以て命ずる』。回復しろ」
マシュ「ありがとう、ございます」ジュゥゥゥゥゥゥ……
ジェロニモ「……」ポウッ
ナイチンゲール「……」ジュジュゥゥゥ……
481 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:28:22.63 ID:G22OK9G00
バットマン「動けるか、マシュ。フローレンス」
マシュ「……はい、いけます。大丈夫です」
ナイチンゲール「……まだ少し難しいかと」
バットマン「フローレンスは私が背負う。全員、このまま敵の拠点へ向かうぞ」
ジェロニモ「ま、待て待て。我々の拠点へ向かったケルト兵はどうするんだ?」
バットマン「放っておけ。聖杯が最優先だ」
ジェロニモ「そうは言ってもだな、あそこには民間人も居るんだぞ!?」
バットマン「……少々の犠牲は仕方あるまい。それよりも早く聖杯を入手すれば良い話だ」
ジェロニモ「……!!」
マシュ「ま、マスター……!」
482 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:29:02.58 ID:G22OK9G00
ジェロニモ「……キミは本当にそれで良いと思っているのか?」
バットマン「何一つ、問題はない」
ジェロニモ「……」
マシュ「マスター、なんで……」
バットマン「全員行くぞ。聖杯を取り戻す」
483 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2018/12/23(日) 22:29:49.65 ID:G22OK9G00
バットマン(……デスストロークが、南の森へ来た。何の情報もなく? それは考えられない)
バットマン(……)
バットマン(誰が信用できるか、しっかり考えなければな)
バットマン(我々の中に居る裏切り者の尻尾が、見えてきた頃だ)
484 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2018/12/23(日) 22:30:20.04 ID:G22OK9G00
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
485 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/25(火) 14:28:03.11 ID:juxc0MtEO
乙!そろそろクライマックス?
486 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:23:16.72 ID:Elqc4oHU0
………………
ケルト兵達「「「」」」ドドドドドドド……!!
ロボット達「「「」」」ババババババババ
エジソン「フンッ!! ……思ったより敵の攻勢が緩いな。これならば行ける!」ドグシャァ
ケルト兵A「っ」グシャァ
エレナ「油断しないでエジソン、緩いと言ってもロボット達と互角以上の勢力よ。私達が頑張らないと支えきれないわ」ギュドドッ
ケルト兵B「!?」ドシャァ
エジソン「うむ、平気だ! 私は油断していないとも! ……ところで、猫の御婦人は何処へ?」
エレナ「え? セリーナ? ……あら、何処に行ったの?」
エジソン「……まさか、はぐれた?」
エレナ「まさか……」
487 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:24:18.42 ID:Elqc4oHU0
キャットウーマン「……」タタタタ
キャットウーマン「……」タタタタ……
キャットウーマン(……許される事ではない、わよね)
キャットウーマン(……でも、それでも)
キャットウーマン「愛してるわ、ブルース」タタタ……
488 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:24:48.73 ID:Elqc4oHU0
………………
メイヴ「……あの女からの連絡だと、やっぱり南側に本命が出て来たんだって。どうする、クーちゃん?」
クーフーリン「……フン、北を囮に使ったのか。イカれたヤツが居たもんだぜ……俺が潰しに出る」
メイヴ「そう来なくっちゃ。じゃあ私も出るわね!」
クーフーリン「来ても良いが、足手まといにはなるんじゃねえ。全員、槍の準備をしろ」
ケルト兵達「「「……」」」ガシャリ
クーフーリン「……殺戮の時間だ」スク……
489 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:25:17.77 ID:Elqc4oHU0
………………
太陽「」ジリジリ……
エリザベート「……っ、奴が拠点から出て来るわよ」
デッドショット「よし、伏せろエリザベート。狙撃する」
エリザベート「本当にここから狙撃できるの? 遠いし、何より……射線が通ってないと思うけど」
デッドショット「射線を通す必要はない。跳弾角度の計算、弾速、威力と不意討ちが最高のパフォーマンスを発揮するのはこの屋上だ」カチャリ……
デッドショット(ここから撃つ。クーフーリンとかいうクソ野郎の頭に一発風穴を開いてやる……)
デッドショット(向こうからこちらは視認不可能。対してこちらは、町の中の各所に隠したミラーのおかげで全部見通せる……)
デッドショット(お前の墓場はここだぜ、クーフーリン。要人を殺したのは一度や二度じゃねえ。お前も、俺の呪われた功績に仲間入りさせてやる)
(((パパ)))
デッドショット(……黙れ、黙れ、今だけは! 俺だって黙っていられるか! 他人に理不尽を押し付けてきた事は知ってる! それでも、俺にだって意地がある……!!)カチャ……
490 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:25:48.18 ID:Elqc4oHU0
エリザベート「……ねえ」
デッドショット「何だ」
エリザベート「震えてるわよ、デッドショット」
デッドショット「……」
デッドショット(……)
デッドショット「……お前なら撃てる、そう言ってくれるか? 頼む」
エリザベート「……」
デッドショット「……」
エリザベート「……大丈夫よ、デッドショット。アンタなら撃てるわ」
デッドショット「……ありがとう。すまねえ」
デッドショット(……ごめんな)
491 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:26:16.50 ID:Elqc4oHU0
小さなミラーに、ケルト兵達を引き連れて城から現れる大男が映った。右手に持った朱色の槍、左手に持った緑の槍。それは間違いなく、ケルト兵の王、クーフーリンであった。デッドショットは瞬間的に沸騰しかけた怒りを無理に鎮め、深呼吸してスコープを覗き込む。
スコープの中、拡大された狙撃ポイントは、民家の壁にかけられた仮面だ。あれが第一跳弾ポイント。クーフーリンが狙い通りのポイントに差し掛かった瞬間、撃つ。準備は完璧。あとは自分との戦いだ。
フロイドはトリガーに指を掛け、息を殺してその瞬間を待った。ひりつくような太陽が容赦なく照りつけ、彼の思考を陽炎に変えて立ち昇らせる。集中力を高める必要がある。彼は狙撃の瞬間、心を落ち着ける記憶に浸る。娘との、ひと時の記憶に。その瞬間、彼は真に狙撃手足りうる。だからこそ、その瞬間、彼は謝罪する。
(ごめんな)
指がトリガーを引く……その時、デッドショットの目は信じられぬものを捉える。小さなミラー越しにクーフーリンが振り向き、フロイドをまっすぐ見据え……にやりと、笑ったのだ。脳からの電気信号は止まらず、指がたたまれ、サイレンサー付きの銃口から弾丸が飛び出した。
仮面に銃弾が当たり、跳弾。家屋の壁に当たり、跳弾。弾丸が標的に到達する僅かの時間に、デッドショットは自分の敗北を悟った。奴はこちらの狙撃に勘付いていた。この一撃は、防がれる……
果たしてその通り、小さなミラーの中、人外じみた柔軟性で振り返ったクーフーリンは飛び来た銃弾を槍で弾いた。そのまま周囲のどよめきを置き去りに、槍を投げる体勢に入る。
(逃げねえと)
逃げて、何処へ? 一種の自殺願望じみた思考が、デッドショットの思考を鈍らせた。ここで死ねば楽になれる。地獄のような現実ともおさらばだ。このまま、アイツが投げた槍に、胸を貫かれてしまえば……
クーフーリンは槍を投げた。それは二者の間にあった建物を次々に突き破り、あっという間にデッドショットの目の前に飛来した。デッドショットは、フロイド・ロートンは、静かに目を瞑った。これで死ねる。娘を傷付けずに済む。
だがその瞬間はいつまで経ってもやって来なかった。デッドショットは頬に散った生温かい感触に、ゆっくりと瞼を開いた。
彼の目の前、小さな背中から朱色の槍が飛び出していた。ドラゴンのような尻尾が苦しげに動く。
「エリザベート?」
死の高揚から引き戻されたデッドショットは、ひきつる喉から声を絞り出した。
492 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:26:47.62 ID:Elqc4oHU0
か細い声に、エリザベートは振り返り、笑って返そうとした。代わりに口から血が溢れ、屋上を濡らす。
「エリザベート、お前、」
「なんて顔、してんのよ」
おのれを強いて笑みを浮かべ、エリザベートはさらに咳き込み、吐血する。生々しい血の色が屋上に広がって行く。デッドショットは真っ白になった頭で、とにかく行動を起こそうとした。
「掴まれ、逃げるぞ」
「ええ、ええ……逃げて、ゴホッ」
「馬鹿言うな、お前も逃げるんだ」
自分の声が何処か遠く聞こえるのを感じながら、エリザベートを抱え上げる。フロイドはこの白昼夢のような現実感のない光景に、必死になって追い付こうとしていた。
「大丈夫、大丈夫だ」
大丈夫ではない。
「絶対に助けるぞ」
コイツはもう、助からない。
「だから、生きるんだ。分かるな」
コイツは、死ぬ。
「情け、ないわよ、デッドショット」
「そうだな、そうだ……もっと軽口を叩け、お前が治った時に倍にして返してやる」
彼は走った。ケルト兵の追撃が途中に何人か来たが、反射的に撃ち殺し、走った。そうして、彼は極力背中のエリザベートから目を逸らした。彼女が致命傷を負った事実を受け入れられなかったのかもしれない。
デッドショットは街はずれの岩陰まで走り、ようやく止まった。その時、エリザベートの鼓動はもはや、殆ど感じ取れないほどに弱まっていた。
493 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:27:23.18 ID:Elqc4oHU0
デッドショット「……エリザベート、聞こえるか。エリザベート」
エリザベート「……聞こえてるわよ」
デッドショット「……なあ、逃げ切ったぞ。悪かったな、ヘマして。次は絶対成功させる」ギュッ
エリザベート「……本当、駄目ね。アンタは、アタシが居ないと……」シュウシュウ……
デッドショット「そうだな。その通りだ。なあ、お前は良くなるからな……」ギュゥ……
エリザベート「……」シュゥゥゥゥゥ……
デッドショット「待て、エリザベート、待て……待て、待ってくれ」スカ……
光の粒「」フワァ……
デッドショット「…………頼む……」ギリィ
494 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:27:52.16 ID:Elqc4oHU0
………………
メイヴ「……どうする? 追撃、もっと出す?」
クーフーリン「フン、下らねえ。……だが危険だな。万が一あの狙撃手が戻って来て『アイツ』を解放でもしたら、俺達がこの世界を滅ぼすのはかなり難しくなる」
メイヴ「それじゃあ、どうする?」
クーフーリン「俺は戻って拠点を守る。テメェはあの女と合流して攻め込んで来る勢力を叩け」
メイヴ「分かった。気を付けてね、クーちゃん」
クーフーリン「何にだ?」
メイヴ「……ふふ、心配する必要ないわね。あのクーフーリンだもの」
クーフーリン「フン……」ザシザシ
495 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:28:20.35 ID:Elqc4oHU0
クーフーリン(……余計だ。全部余計だ)
クーフーリン(余計なモンばっかりだ。壊さねえと、邪魔で見えやしねえ)
クーフーリン(壊して、終わらせりゃあ、見えて来る)
クーフーリン(俺が誰なのか)
496 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:28:47.42 ID:Elqc4oHU0
………………
バットマン「……」ダダダダ……
マシュ「……」ダダダダダ
ビリー「……」タタタタ
ラーマ「……」タタタタ……チラッ
シータ「……」タタタタ……ハァ
ジェロニモ「……」ダダダ……
マシュ「……」ダダダダ……
マシュ(……不信感だ。皆今まで、マスターを信じてついてきたけど……ここで、信じられなくなってる)
ナイチンゲール「……ブルース」ユッサユッサ
バットマン「喋るな、フローレンス。回復に専念しろ」
ナイチンゲール「大事な話です」
バットマン「……」ピタリ
全員「「「……」」」ピタッ
497 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:29:19.68 ID:Elqc4oHU0
バットマン「……なんだ」
ナイチンゲール「今まで私は、目的のためなら命を投げ出す事もいとわない覚悟でした。この世から怪我や病気で苦しむ人を無くせるなら、この命ひとつ、惜しくなどないと」
バットマン「……」
ナイチンゲール「ですが、今、この背に命を置き去りにして……私は悩んでいます。答えて下さい、ブルース。ある目的のために命を犠牲にする事は、果たして正しいのですか?」
バットマン「……」
ナイチンゲール「……」
ビリー「……」
ラーマ「……」
シータ「……」
ジェロニモ「……」
マシュ「……」
498 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:29:48.49 ID:Elqc4oHU0
バットマン「……正しくなどない。それは自己満足だ。残された者の気持ちを考えない、最悪の手だ」
マシュ「!!」
バットマン「私にはまだ、よく分からない。だが、いかに命を犠牲にする選択肢が容易で、そして確実であったとしても……それは、取るべき行動では決してない」
ジェロニモ「……」
バットマン「……人は、本当に死ぬからだ。それも簡単に」
マシュ「……」
499 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:30:16.73 ID:Elqc4oHU0
ビリー「……うん、やっぱり」
バットマン「何だ」
ビリー「キミについてきて良かった、って思うよ」
バットマン「……?」
ラーマ「ふふ、余の人を見る目に狂いはなかったという事だ」
シータ「不器用な方なんですね」クスクス
バットマン「何の話だ?」
ジェロニモ「まあ、なんだ。今の話を聞いて思ったが、お前ほどの男が無策で敵に本陣を明け渡すハズがない。何か策を施して来たんだろう?」
バットマン「……何故分かる」
ジェロニモ「キミは、ふふっ……なんというか、鈍い男だな」
バットマン「どういう事だ……?」
500 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:30:44.75 ID:Elqc4oHU0
マシュ「……」
マシュ(……やっぱり、マスターはマスターですね)クス
ナイチンゲール「……お答えいただき有難うございました。参考にします」
バットマン「何故今その質問を?」
ナイチンゲール「さあ、自分の胸に手を当てて考えてはいかがですか?」
バットマン「……」
501 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:31:18.03 ID:Elqc4oHU0
バットマン「……時間が無いんだ。行くぞ」
マシュ「はいっ!!」
ビリー「うん!」
ラーマ「ああ!」
シータ「はい!」
ジェロニモ「おうとも!」
ナイチンゲール「よろしくお願いします」
バットマン(何故士気が高まった……?)
502 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:31:50.33 ID:Elqc4oHU0
バットマン「……見えたぞ、あれが」
マシュ「あれがケルト兵の本拠地の……町、ですか?」
ナイチンゲール「どうやら町単位で拠点にしているようですね」ヒョコ
ラーマ「うん? ……むむ、あれは、セリーナ?」ジッ
バットマン「……」
キャットウーマン「……来たのね」
メイヴ「ああ、ようやく来たの? 遅かったわね……それじゃ兵士たち、歓迎の準備をしなさい!」
ケルト兵達「「「!!」」」ザザザザザザ……
503 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:32:17.74 ID:Elqc4oHU0
バットマン「セリーナ」
キャットウーマン「こんにちは、ブルース。その顔、この展開は予想済みだったかしら?」
バットマン「我々の中に裏切り者が居る事は分かっていた。……キミだったようだな」
キャットウーマン「ふぅん、あんまり驚いてないのね」
バットマン「全員が裏切る予想は立てていた。その予想の内のひとつになっただけだ」
キャットウーマン「……相変わらずねえ」
504 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:32:46.46 ID:Elqc4oHU0
ケルト兵達「「「……」」」ザザザザザ……
マシュ「マスター、まずいです。囲まれました」ガシャリ
バットマン「……」
キャットウーマン「そう、私よ。南を少数精鋭で突破すると分かったから、ケルトにその情報を流したの。だから南にデスストロークを配置できたし、数の暴力で突破して本陣まで攻撃を及ばせる事もできた。……でも、スレイドは失敗したみたいね」
メイヴ「あら、それだけじゃないでしょ? ヴィランストリートが手薄になる時期まで知らせてくれて、ホントに助かっちゃったわ」
キャットウーマン「……」
バットマン「……」
キャットウーマン「……何か言ったら? バットマン」
505 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:33:15.35 ID:Elqc4oHU0
バットマン「……分からないのは、セリーナ。キミが何故、ケルトの側についたのか、だ」
キャットウーマン「……」
バットマン「武力の差か? ……違う。キミはそんな考えで動く女ではない。ではキミを動かした理由は、何だ。キミの行動には、いつも何かしらの善意が、ひとかけらだけでも含まれる。たとえその善意が間違いであっても」
キャットウーマン「……はあ。本当に、何でもお見通しよね」
バットマン「……付き合いが長いからな」
506 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:33:42.36 ID:Elqc4oHU0
キャットウーマン「そうね、武力の差じゃないわ。でも、お宝目当てでもない。私がこっちについたのは、私の願いのため」
バットマン「願いだと?」
キャットウーマン「……小さな願いよ。くだらない、馬鹿らしいほどの」
バットマン「……」
キャットウーマン「……あなたの両親が殺された過去を、消したいの」
バットマン「……!!」
507 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:34:09.21 ID:Elqc4oHU0
マシュ「なっ、それは……!」
キャットウーマン「自己満足? 私の我儘? そうでしょうね。分かってるわ、マシュ。でも」
キャットウーマン「……でも、惚れた男の、悲惨な幼少期を消して、幸せに過ごして欲しいなんて、そんなにおかしな願いかしら?」
マシュ「……っ」
キャットウーマン「……あなたになら分かるでしょう、マシュ? あなた、ブルースの事を心から慕ってる。『あの人』から聞いたでしょ? それとも見せられたかしら? ブルースの両親が殺されたのを」
マシュ「……」
キャットウーマン「……ねえ、こっちに来て。大丈夫、あなたのマスターは殺さないわ。今より幸せな記憶の中で、生き続けるだけ……」
バットマン「マシュ」
マシュ「っ」
バットマン「愛と哀れみを履き違えるな」
508 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:34:36.62 ID:Elqc4oHU0
キャットウーマン「……」
バットマン「セリーナ。私は確かに不幸だったかもしれない。両親を生き返らせて欲しいと願った事も、一度や二度ではない」
マシュ「……」
バットマン「……だが、私は今、この状況に感謝してすらいる。私はカルデアに来て、ドクターに、レオナルドに、所長に、職員達に、マシュに出会えた。その今を哀れむ事など、誰にも許さない」
マシュ「……マスター」
キャットウーマン「……そう」
バットマン「私は戦う事を知らない腑抜けではないぞ。……お前こそ、こちらへ戻って来い。セリーナ」
キャットウーマン「ムリよ。まだ諦めきれていないわ」
バットマン「なら、その願望ごとお前達を叩き潰す。行くぞ」
マシュ「はい!」
ビリー「よし!」
ラーマ「いくぞ!」
シータ「はいっ!」
ジェロニモ「ああ!」
ナイチンゲール「ブルース、降ります」
バットマン「まだ駄目だ」
ナイチンゲール「ブルース」
バットマン「駄目だ」
ナイチンゲール「……」グググググ……
バットマン「……駄目だ」ギギギギ……
509 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:35:09.76 ID:Elqc4oHU0
………………
デッドショット「……」
デッドショット(……いつまで座ってるつもりだ、馬鹿野郎。立て。エリザベートは死んだ。お前は生きるんだ)
デッドショット(怒り? 怒りはない。無力感だけがある。俺の自殺願望で人が死んだ。止める事もできなかった)
デッドショット(……生きる事への、最も強い原動力はなんだ? 人はどうしたら生きられる?)
デッドショット(俺の命は、何故まだ途絶えていない?)
デッドショット(俺は立てるのか?)
510 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:35:40.11 ID:Elqc4oHU0
デッドショット「……」スクッ
デッドショット(ああ、立てた。僥倖だ。なら次はもっと簡単だ。戦え)
デッドショット(怒りはない? ないだと? 大嘘だ。立てば、湧いて来る。足元がぐらつく溶岩になったみてえだ。怒りで全身が熱い。燃えるようだ)
デッドショット(自分への怒り? クソ喰らえ。今まで散々理不尽を押し付けて来て、今更殊勝に自分を省みようってのか。俺は悪党だ。デッドショットだ。フロイドじゃねえ)
デッドショット(クソッタレのケルト兵共め、目にもの見せてやる。お前らが奪ったエリザベートの命、取り戻すまで鬼になるぞ)
デッドショット「殺してやる」カチャリ
511 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:36:09.26 ID:Elqc4oHU0
………………
マシュ「はあっ、はあ……!!」ガシャリ
ラーマ「くっ、なんという……!!」ギリィ
キャットウーマン「……もう無理、ね。逃げなさい、メイヴ」シュウシュウ……
メイヴ「あら、どうも。それじゃあ失礼するわね」タタッ
キャットウーマン「……」フッ
バットマン「待て! ビリー、逃がすな!」
ビリー「よーし、狙い撃ち……」カチャリ
ケルト兵B「!!」ババッ
ビリー「ってもう、邪魔だなぁ!」ドォン!!
バットマン「くっ……」ダダッ
キャットウーマン「行かせないわよ」バッ
512 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:36:38.58 ID:Elqc4oHU0
バットマン「……」スッ
キャットウーマン「結局、人なんて何処まで行っても『自分のため』よ。本物の愛がこの世にあると思ってる?」シュウシュウ……
バットマン「問答か。似合わないな、セリーナ」ジリッ
キャットウーマン「答えて、バットマン。貴方は本気でこの世界を救うの? どうしようもないほど不平等で、汚れきっていて、救いようのない世界なのに」シュウシュウ……
バットマン「救う。私の両親が愛した世界だ」
バットマン(そして、カルデアの皆が愛した世界だ)
キャットウーマン「貴方は頑固ね。意地でも自分を見ようとしない。本当に助けが必要なのは貴方よ、それに気づかないと……」
バットマン「……その通りだ」
キャットウーマン「……え?」
513 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:37:13.32 ID:Elqc4oHU0
バットマン「私には何も分からない。暗闇の中を手探りで進んでいるような感覚だよ、セリーナ。こんな事は、初めてだ」
キャットウーマン「……」
バットマン「……いつかまた、私の『家族』は死ぬのだろう」
キャットウーマン「なら……」
バットマン「だが、それでも、私はもう躊躇いはしない。私は怪物ではない、セリーナ。人間なんだ」
キャットウーマン「……」
バットマン「……必ず、世界を、救う」
キャットウーマン「……ふふっ」シュウシュウ……
514 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:37:41.73 ID:Elqc4oHU0
キャットウーマン「……なら、お行きなさいな。頑固なのは変わらないんだから」
バットマン「……」
キャットウーマン「……そこの女の子、マシュって言ったかしら?」シュウシュウ……
マシュ「え? は、はいっ!」
キャットウーマン「よろしく頼むわね」シュゥゥゥゥゥ……
マシュ「……はい!」
515 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:38:09.82 ID:Elqc4oHU0
………………
デッドショット「……」ダダダ……
デッドショット(? なんだ、あの集団は)
盾の少女「」シュバッシィィィ!!
赤い服の看護師「」ゴォォォォッ
赤髪の少年「」ズバァッ!!
赤髪で目がハートの少女「」シュババババ……
デッドショット「……」
デッドショット(笑ってくれ、エリザベート。お前が死んだショックで妙な幻覚が見え始めた)
516 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:38:37.60 ID:Elqc4oHU0
バットマン「? あれは……」ピタッ
デッドショット「……」
バットマン「……フロイド?」
マシュ「すみませんマスター、今は戦っているので集中を!」
バットマン「あ、ああ、すまない……」バシィ!!
ケルト兵F「!?」ドシャァッ
バットマン(まさかマシュに集中を指摘されるとは……気が逸れた。疲れているのか? まさかな……)
デッドショット(ああ、バットマンの幻覚まで見えやがる。クソッ、俺はとことんショックを受けたらしいぜ、エリザベート……お前の声が恋しいよ)
517 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:39:05.86 ID:Elqc4oHU0
デッドショット(けど、こんなところで止まってる時間はねえ。奴らの根城の裏口から突破して、クーフーリンを暗殺する。お前の無念晴らしてみせるぞ、エリザベート)
デッドショット(全部終わったら俺も自殺する。地獄に落ちる。……それで許してくれとは言わねえよ。けど、俺は満足だ)
デッドショット(まあ、自殺なんざするまでもなく、死ねそうだけどな……)タタッ
バットマン(……行ってしまった。まさか私は、連日荒野を歩き続けて、暑さで脳がやられたのか……?)
バットマン(ああ、駄目だ。自己不審に陥るのは良くない。だがまさか、デッドショットの幻覚とは……)
バットマン(……)
バットマン「マシュ、お前はそこに居るな?」
マシュ「え? は、はい……え?」
ナイチンゲール「治療ですか?」
バットマン「いや……うむ……」
518 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/01/16(水) 01:39:44.21 ID:Elqc4oHU0
ラーマ「ブルース、ボケている場合ではないぞ! そろそろ敵の本拠地が近い!」ズバァッ
ケルト兵H「っ」ドグシャァ
シータ「そうです! しゃんとしないと駄目ですよ!!」
バットマン「あ、ああ……そうだな、その通りだ。全員陣形を組み直せ!」
ジェロニモ「ブルース、敵陣の中には三騎のサーヴァントを感知したぞ! 恐らく敵の幹部級だ!」
ドクター『おまけに聖杯反応! 大詰めだ、気張ってくれ!』
バットマン「よし……では、」
ナイチンゲール「行きましょう」スタスタ
バットマン「待て、息をそろえて……」
………………
519 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/01/16(水) 01:40:17.67 ID:Elqc4oHU0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。あけましておめでとうございます。
520 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/17(木) 01:28:58.44 ID:5FgaZb8G0
乙。
バットマンが人間に戻っていくのが、妙に不穏なフラグに見えてしまうのは何故なのだろうか。
521 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/17(木) 15:22:15.20 ID:BTy6tK6A0
あけおめ乙!
デッドショットとエリちゃんの雰囲気好きだなぁ……
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/21(月) 01:01:27.74 ID:StVkCVbco
良かった…家でひとりで夕食をレンジでチンするブルースさまはもういないんだね…
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/25(金) 01:56:09.40 ID:prKtt5iio
乙
一応聞くけどキャットウーマン戦はスキップでいいのよね?
何度か戦闘無しで消滅シーンのみかと思ったら投稿忘れてた云々があるから判断に困る
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/20(水) 18:05:51.51 ID:A+yvLRSPo
やっとおいついた…とてもおもしろい
ズーインアーとか出たりするかな?
525 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/04/25(木) 02:08:58.72 ID:YcegZolL0
目覚めた時、俺は既に「王」として決定づけられていた。朱色の槍を与えられ、歪んだ意志を授けられ、そして「クー・フーリン」としてある事を求められた。
世界は歪んでいた。俺の持つ力も歪んでいた。だが何より歪んでいたのは、常に俺の隣に居る女だった。
「クーちゃんは王になるの。貴方はこの世界に突き立つ一本の槍になる」
奴はそう言っていた。彼女が聖杯にそう願い、俺は創られた。
人の願いだ。そこには不純物が混じる。奴は俺を「王」として召喚したが、そこに邪悪さを、そして愛をつけ足してしまった。おかげで俺は兵器足りえず、余計な思考を持ってしまった。
勝手な女だ。そう思った。だが、俺はそれ以上を考える事は無い。何故なら俺は王であり、常に奴の隣に存在する邪悪であり、……そして、それだけだからだ。
……だが、俺の意志から遠い場所で、誰かが常に叫んでいた。俺は誰なのか、と。
526 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/04/25(木) 02:09:25.79 ID:YcegZolL0
………………
ラーマ「それで、どうする。まさか真正面から突っ込むのか?」
マシュ「マスター、どうしましょう」
ナイチンゲール「なぜここで立ち止まるのです?」グググ……
バットマン「当然、作戦はある。ナイチンゲール、お前は止まれ」グググ……
ビリー「力すごく強いんだけど……!」グググ……ズリズリ……
シータ「ナイチンゲール様、どうか……!」グググ……
ナイチンゲール「……」グググ……
527 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:09:51.82 ID:YcegZolL0
…………
バットマン「……つまり、裏口や奇をてらった突入はしない。堂々と、真正面から突っ込む」
ビリー「キミ、暑さで正気失った? 敵の本拠地に、真正面から突っ込むだって?」
バットマン「私は極めて正気だ。まず、敵は私達の奇策を一度目の当たりにしている」
ジェロニモ「北の主戦場を避け、少数精鋭で南を通り抜けた事か?」
バットマン「そうだ。奴らは恐らく警戒している。私達は奇策を使い、裏口や、その他の予想だにしない場所から攻めて来るだろう、と。
だからこそ、予想の中心を攻める」
マシュ「灯台もと暗しという奴ですね!」
バットマン「その通りだ」
ラーマ「……むむ、少し待て。今の流れで思い出したが、我々の拠点は今頃どうなっているのだ?」
バットマン「それは……」
528 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:10:18.44 ID:YcegZolL0
………………
ケルト兵達「「「」」」ザン、ザン、ザン……
エジソンの拠点「」シィィ……ン
ケルト兵A「内部を徹底的に調べろ」スタスタ
ケルト兵達「「「ハッ」」」ザン、ザン、ザン
ケルト兵A「もしもし、こちら南部本隊。エジソンの拠点に到着しましたが、人の気配がありません……」スタスタ
廊下「」……ッ、ピッ……
ケルト兵A「……? いえ、少々お待ちを。何か、物音が……」
廊下「」……ピッ、ピッ、ピッ
ケルト兵A「何でしょうか……赤い発光体じみたものが……」
爆弾「「「」」」ピッ、ピッ、ピピピピピピ……
チュドドドドドドドドォォォォォ!!!!
529 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:10:46.43 ID:YcegZolL0
………………
エジソン「フンッ!」シュドッ!!
エレナ「無茶しないでエジソン! ……ブルース達からなかなか連絡が来ないのが気がかりね、今頃南側はどうなって……」
チュドォォォォォ……
エレナ「……ああ……」
エジソン「む……罠が発動したか」
エレナ「拠点を囮にしたの? 驚いたわ。よく同意したわね」
エジソン「私とて本意ではなかったが、ここで一気に勝負を付けるためには致し方なし! 責任は全て私が背負おう!!」
エレナ「なら、私達もここが正念場ってわけね!」
エジソン「勿論だとも!! ……キミ達に賭けたぞ、ブルース!!」ガオオッ
530 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:11:12.21 ID:YcegZolL0
チュドォォォォ……
バットマン「……罠が発動した」
爆煙「」モク……
ジェロニモ「なんという破滅的な策に出たものだ……一つ訊くが、拠点で働いていた民衆は無事なのか?」
バットマン「全員事前に脱出させた。ある種賭けだったが、うまく行ったようだ」
マシュ「突入タイミング、今が最高と思われます」
ナイチンゲール「……」グググ……
シータ「うううう……」グググ……
ラーマ「……落ち着け……!」グググ……
バットマン「シータ、ラーマ、離してやれ。突入するぞ」
531 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:11:38.80 ID:YcegZolL0
………………
デッドショット「クッ……」ダダダ!! ダダダダダダダッ!!
ケルト兵達「「「」」」ザン、ザン、ザン
デッドショット「チクショウめ、撃っても撃っても湧いてきやがる! 一人特攻は無謀だったか!?」ガシャリ
デッドショット(どうなってやがる、わざわざ手の薄そうな裏口から入って来たのに……むしろ正面より警備が厳重だぞ)
デッドショット「舐めるなよ、雑魚が何匹群がっても的が増えただけだ!」ダダダダダダダ!!
532 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:12:05.64 ID:YcegZolL0
………………
バットマン「マシュ!」
マシュ「はいっ!!」ブォンッ
ケルト兵D「!?」ゴッシャァ
ビリー「よっと!」タァン、タァン!!
ケルト兵E「っ……」ドシャァ
バットマン「全員隊列を崩すな! このまま廊下を突き進み、玉座に突入を……」
ラーマ「!! 止まれブルース!!」ガシッ
バットマン「!?」
ムチ「」ヒュパンッ!!
ラーマ「ぐっ……」グラ……
バットマン「ラーマ!?」
「……ふーん、やっぱりここまで来ちゃうんだ。面倒な奴らね」
バットマン「お前は……」
メイヴ「まさかデスストロークをあっさり退けるなんてね。アイツも所詮そこまでの奴だったって事かしら」
533 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:12:32.01 ID:YcegZolL0
マシュ「敵の女王です! メイヴ!」
バットマン「女王メイヴ。お前は終生クー・フーリンとは相容れず、敵同士だったハズだ。何故お前達が行動を共にしている」
メイヴ「あ、そういう無粋な事訊いちゃうの? セリーナが惚れてるっていうから、どんな男かと思ってたら……こんなつまらない奴だったなんてね」
ビリー「あはは、質問に対する答えになってないなぁ」カチャリ
メイヴ「ふふ、目の前にある事象を事実として受け入れるのよ。いちいち『これはこうだ』『あれはああだ』なんて、理解してたらつまらないでしょ?」
バットマン「……」
ラーマ「ブルース、どうするのだ」
バットマン「構えろ。奴を叩き潰す」
534 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:12:58.32 ID:YcegZolL0
メイヴ「叩き潰すですって? 生憎だけど、潰されるのはアナタ達の方よ。ノコノコ敵の本陣まで踏み入っちゃって、蟻より軽い命になっちゃったわね」
ナイチンゲール「命の重みは平等です」
メイヴ「ああもう、初めて会った時からアナタの事が嫌いだったわ。邪魔よ。戦争の邪魔なのよ。全部奪って私のモノにするハズだったのに、アナタ達は本当に……!」
ケルト兵達「「「」」」ザザザザ……
ジェロニモ「……ブルース、囲まれたぞ」
バットマン「全員、背中合わせだ。マシュ、ラーマ、シータ、ナイチンゲール。お前達はメイヴを。ジェロニモ、ビリー、ケルト兵をやるぞ」
ビリー「りょうかいっと」
マシュ「はい!」
ラーマ「任せろ!」
メイヴ「今度は抵抗なんてさせないわ。王の元になんて行かせない。私の戦争にケチはつけさせない。奪って、殺して、愛すのは私。命は私が愛でるのよ」
ナイチンゲール「命は救うものです」ジリッ
メイヴ「ほざいていればいいわ!!」バッ
535 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:13:24.75 ID:YcegZolL0
………………
デッドショット「はあ、はあ……」
死体「「「」」」ゴロ……
デッドショット「ふう……」
デッドショット(あらかた片付けたか。しかし戦ってるうちに、随分奥の方まで来ちまったな……)
緑の扉「」ジリジリ……
デッドショット(……おいおい、あれは何だ……)
536 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:13:51.18 ID:YcegZolL0
緑の扉「」ギゴゴ……
緑の天井「」ジリジリ……
緑の壁「」ジリジリ……
緑の床「」ジリジリ……
デッドショット(なんてこった、緑一色の部屋だ……こんなところ、一日だって居たら気が触れちまう)
???「……」グッタリ
デッドショット(……誰か倒れてやがる)
デッドショット「おい、アンタ。大丈夫か」ガシッ
謎の男「……」ゴロリ
デッドショット(胸にSのマーク……? 青いコスチュームじみた服、赤いケープのマント……おい、おいおい、おい)
デッドショット「アンタ、まさか……」
537 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:14:33.76 ID:YcegZolL0
………………
マシュ「たああっ!!」ヒュゴッ
メイヴ「くっ……!!」ズシャァァ
ナイチンゲール「そこ!」シュバッ
メイヴ「遅いわよ!」ガギィィィィ!!
バットマン「フンッ! ビリー!」ガッシィ!
ケルト兵W「!?」ジタバタ
ビリー「オッケー!」バァン!!
ケルト兵W「っ」ドシャァ
ジェロニモ「ブルース!」ブンッ
バットマン「よし!」ガシッ、ドゴォ!!
ケルト兵X「!?」ドッサァァァン
バットマン「ビリー、ジェロニモ、このラインを死守するぞ! メイヴのところに増援を辿り着かせるな!」
ビリー「了解!」
ジェロニモ「任せろ!」
538 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:15:40.51 ID:YcegZolL0
ラーマ「シータ!」ヒュンッ
シータ「はい!」シュパパッ
矢「「「」」」ヒュォォォォッ
メイヴ「うっ……!」ドシュゥッ
マシュ「そこ!」ダンッ、シュバッ
メイヴ「この……!」ズササァ、タタッ
ナイチンゲール「甘い!」ヒュババッ
メイヴ「うっ、とうしい!!」ガシィ!!
539 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:16:08.31 ID:YcegZolL0
ナイチンゲール「……!!!」ググググ……
メイヴ「……本当に邪魔ね、アンタ……!」ググググ……
ナイチンゲール「貴女の行為は既に無益なモノになっています。投降しなさい」ググググ……
メイヴ「お断りよ。戦争は終わらない。終わらせない」
ナイチンゲール「もはや取る国すら失ったというのに、貴女の戦争にいかほどの意味があるのですか。死者と痛みばかり生み出す地獄に何の価値があるのですか」ギリィ
メイヴ「国が無くなったのなら、次は世界よ。跪かせて、私に服従させる。従わせてみせるわ」ググ……
ナイチンゲール「貴女は破綻しています。根底が病んでいる。世界を消してまで、自分が愛されているという確証が欲しいのですか!」
メイヴ「人は愛を求める生き物よ。私は世界を愛してる。だから奪うのよ!!」
ナイチンゲール「ならば、私は貴女を治療しましょう……! たとえ貴女を殺してでも!」
540 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:16:36.14 ID:YcegZolL0
マシュ「やあっ!!」ブォンッ
メイヴ「あぐっ……!」ゴッ、ズシャシャァ
ラーマ「そこだ!」シュバッ
メイヴ「ちっ、この」バッ
シータ「とどめ!」シュバッ
矢「「「」」」ヒュオォォッ
メイヴ「しまっ……」ドシュシュッ
ナイチンゲール(心臓を矢が貫通。死は免れず……)
メイヴ「か、はっ」ビチャッ
ナイチンゲール(……いや)
ナイチンゲール「マシュ! 避けなさい!」
マシュ「!!」バッ
ムチ「」ヒュパンッ!!
メイヴ「こ、の……!!」ギリィ
541 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:17:04.01 ID:YcegZolL0
ナイチンゲール「心臓部へのダメージは壊滅的なハズです。動けば苦しみが長引きますよ」ジリッ
メイヴ「諦めて、死ねっていうの? ありえない。ありえないわ。クーちゃんを残して、死ねない」シュウシュウシュウ……
ナイチンゲール「貴女の苦しさは分かります。その症例は何度も診て来ました。地獄のような痛みと苦しみのハズです」
メイヴ「だから……だから、どうしたってのよ!!」
542 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:17:42.86 ID:YcegZolL0
メイヴ「こんな痛み! 世界に焦がれる、あの人に焦がれる痛みに比べれば小さいものよ!」ザシィ
メイヴ「いつだってそう! 何処までだってそうだった! 『持てるモノに満足しなさい、人を羨むのはやめなさい!』 下らない教えのせいで、世界は色あせていた!!」
メイヴ「私は違う! 私は手に入れる! 想い人を、世界を! 後悔なんてするもんですか! 進んだ果てが破滅でも、たとえ他に正しい道があっても! 私の王道を邪魔するのは、許さない!!」
マシュ「っ……!」
メイヴ「ひれ伏しなさい! コノートの女王の前に!!」ダッ
543 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:18:11.38 ID:YcegZolL0
マシュ「くっ、」
ラーマ「危ない!」バッ、ガギィィィ!!
シータ「なんて生命力……!」シュパパ
矢「「「」」」ヒュオッ
メイヴ「ぐっ……」ドシュシュシュ……
シータ「とうに致命傷のハズ!」
ラーマ「油断するな、シータ!」ギリギリギリ……!!
メイヴ「邪魔……邪魔よ! 邪魔、邪魔、邪魔なのよ!!」ギリギリギリ……バッ、ギャギャァン!!
ラーマ「うおっ!?」ズシャァッ!!
マシュ「なんて執念……! これはまるで、バーサーカーか、アヴェンジャーじみて……霊基が、変質している……!?」ジリッ
ナイチンゲール「……」ジッ
544 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:18:39.28 ID:YcegZolL0
ナイチンゲール「……成程。献身こそ全てと思っていた私には、理解のできない話ではありますが……それでも、納得はできます」
メイヴ「邪魔! 邪魔! 全部よ! 全部が!!」ダッ、ブンッ
ナイチンゲール「貴女はやはり病気です。必ず救います」ガシィ!!
メイヴ「ああああああああああ!!」ギチギチギチ
ナイチンゲール「苦しいものだったでしょう。形は違えど、貴女も決して叶わぬ愛を追った身」
メイヴ「黙れ! 黙れ!! 知ったような口を利くな!!」シュウシュウシュウ……
ナイチンゲール「人は満たされれば、必ず乾きを知ります。私が治療した兵士たちの多くは、また前線に赴き、死んで行った。救えない命の多さは、届かない希望の辛さは、よく分かります」
メイヴ「私は……!」
ナイチンゲール「だからこそ、貴女を救ってみせる。女王メイヴ。地獄はもう作らせない。それが私です」
545 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:19:06.99 ID:YcegZolL0
マシュ「たあっ!!」シュンッ
メイヴ「!!」ゴシャァ、ゴロゴロッ
ナイチンゲール「フンッ!!」ガシッ、グイッ
メイヴ「ぐうっ」ブラァ……
ナイチンゲール「……終わりです!!!」ドゴッシャァァァァァ!!
メイヴ「っぐは……」グシャァァ
バットマン「……!!」
ケルト兵達「「「!」」」ヨロッ
ビリー「終わった!?」
ジェロニモ「そのようだ!」
546 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:19:42.99 ID:YcegZolL0
メイヴ「なんで……これで、終わり……?」
ナイチンゲール「終わりです。貴女の夢も、ここで潰えた」パッ
メイヴ「……あぁ、終わっちゃったんだ……」シュウシュウシュウ……
ナイチンゲール「……人は必ず、叶わない夢を見ます。貴女のこれは夢だった。ですが、貴女は夢に命を懸けた。敬意を表します」
メイヴ「……ふふ、あぁ、終わっちゃったんだ……ごめんね、クーちゃん……」シュウウゥゥゥゥ……
ナイチンゲール「さよなら、女王メイヴ」
547 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:20:26.57 ID:YcegZolL0
マシュ「戦闘、終了。……ケルト兵達も、消えて行く……?」
ケルト兵達「「「」」」シュウゥゥゥゥゥ……
バットマン「終わったか」
ラーマ「ああ、恐ろしい相手だった」ハァ、ハァ……
ナイチンゲール「ええ。後は玉座の間に居る『王』だけですね」
ジェロニモ「しかし、何故ケルト兵達も連動して消えるんだ?」
バットマン「ドクター、何か仮説は?」
ドクター『えっと、多分だけど、そのケルト兵達自体がメイヴの存在に引っ張られて召喚された……とか? だから、消える時は連動して消えるって感じ……かなあ?』
バットマン「成程」
シータ「という事は、北の戦線に居るケルト兵達も?」
バットマン「どうだろうな。聖杯から生じたケルト兵と、メイヴに付属するケルト兵では性質が違うかもしれない。何にせよ、早急な決着が望まれる」
マシュ「行きましょう! 玉座の間は目と鼻の先です!」
バットマン「ああ。全員、気を引き締めろ。大詰めだ」
548 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:20:55.25 ID:YcegZolL0
………………
???「……」ピクッ
???「……」ノソリ、スクッ
扉「」ギギギギギ……
バットマン「……ラーマ、マシュ、先頭を。ビリー、シータ、ジェロニモ、ナイチンゲール。後方支援を徹底しろ」
マシュ「はい。……暗いですね」ジリ、ジリ
ラーマ「……注意しろ、皆。前方に何か居る」
松明「」ボッ
バットマン「!!」
松明「「「」」」ボボボボボ……
「……お前らが此処に居るって事は、メイヴはやられたか」スタ、スタ
バットマン「……お前は」
クー・フーリン「フン。アイツが引き際を見誤るとはな」スタ……
549 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:21:22.55 ID:YcegZolL0
クー・フーリン「……ったく、勝手に俺を王に祭り上げといて、挙句に勝手に死んだか」
ナイチンゲール「誇り高い最期でした。夢に殉じた、女傑と呼ぶにふさわしい執念だった」
クー・フーリン「どう呼ぼうがテメェらの勝手だ。だが、そうか……アイツはそこまで熱中して消えて行ったんだな」
ナイチンゲール「……」
クー・フーリン「……フン、俺も所詮奴に喚ばれた存在だ。どうせもう、長くはもたねえ。願いの大元が消えた以上、王である意味も無くなったしな」シュウシュウシュウ……
バットマン「ならば、大人しく聖杯を渡せ。クー・フーリン」
クー・フーリン「うるせえぞ。テメェら、誰に喧嘩を売ったのか忘れてねえだろうな」ガシャリ
マシュ「!!」ガシャッ
クー・フーリン「俺はアルスターのクー・フーリン。クランの猟犬。何より鋭い一本の槍だ。たとえ王でなくなっても、俺は戦士だ。戦いの果てに何も残らねえとしても、俺はお前達を叩き潰す」
ラーマ「……ブルース!」
バットマン「全員構えろ! 奴から目を離すな! ビリー!! 牽制だ! マシュ! 突撃を!」
ビリー「了解!」タァン!!
マシュ「はい!!」ダダッ
550 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:21:56.86 ID:YcegZolL0
クー・フーリン最大の武器はその「投擲術」である。槍を投げ、敵の心臓を貫き、然して殺す。百発百中の殺技であり、当然バットマンはこれを警戒した。ゆえに、牽制としてビリーに先手を打たせ、マシュの近接格闘戦に持ち込もうとした。
だが、クー・フーリンはこれを無視した。他の全てを無視し、うずくまるように屈み込み、地面に両手をついた。それはまるで、エモノに飛び掛かる直前の肉食獣じみていた。
自らの経験に無い敵の動きに、マシュは思わず立ち止まる。狙いを外した弾丸が壁に当たり、火花を散らす。一瞬の静寂。ブルースでさえ、敵の次の動きを予測しかねた。
まず聞こえたのは、くぐもった、不快な音であった。バットマンは気付く。それは、肉と骨が軋む音である。マシュは見る。クー・フーリンの背中から真っ赤な棘が生え、骨格が歪み、筋肉が醜く膨れるその様を。
「……」
その怪物は、巨躯を有していた。顎は頭ほど肥大化し、片目は顔に埋もれ、反対の目は大きく突出していた。突出した目の中には七つの瞳が現れ、全身は赤黒く染まり……
彼の者は、蒸気じみた息を大きく吐きながら、その顔を上げた。あまりの殺気に、空気がビリビリと震えた。ラーマは思わず息を飲み、シータは震える手で弓を握り締めた。
怪物が消えた。マシュは反射的に盾を持ち上げた。そして、殆ど不可視じみたスピードの一撃を受け止めた。
火花が大きく散り、甲高い音が鳴る。マシュはたった一撃で弾き飛ばされ、吹き飛ばされて壁にめり込む。怪物は歪んだ笑みを浮かべる。
皆の心に絶望が生じかけたその時、怪物へと進んでいく赤い存在があった。彼女は、一人の看護師は、重圧をものともせず、怒りにも似た執念と共に突き進んで行く。
その姿に、皆が鼓舞された。ジェロニモが戦士を称える古い詩を叫び、ビリーが弾丸を込め直し、ラーマが剣を構え、シータはラーマと並び立ち、マシュは瓦礫をふるい落とし、戦闘が始まった。
551 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:22:25.37 ID:YcegZolL0
………………
廊下「」ゴゴゴォ、パラパラ……
???「……っ」ビクリ、ガバッ
デッドショット「ようやくお目覚めか。世話が焼けるぜ、正義の味方サンよ」
???「ここは……キミは? 僕は、確か……子供達を助けようと……」フラ……
デッドショット「アンタは奴らに負けて、クリプトナイトで出来た部屋に閉じ込められてたんだ。覚えてるか?」
???「……クリプトナイト……そうだ。キミが助けてくれたのか? 確か、名前は……フロイド・ロートン」
デッドショット「……いちいち小悪党の名前を覚えてるんじゃねえってんだよ。スーパーマン様ともあろうものが」
スーパーマン「……ありがとう。これでまた、戦える」ヨロ、ヨロ
デッドショット「何? 馬鹿言うな、さっきまで死にかけだったんだぞ。休んで行かねえと」
ゴゴォ、パラパラ……
デッドショット「……畜生、なんだってんだ。さっきから城が揺れっぱなしだ」
スーパーマン「行かなければ。奴らは危険だ、僕が止めるしかない」
デッドショット「無理するな。誰かは知らねえが、この城じゃ俺達以外にも戦ってる奴が居るらしい。休む時間くらいはある」
スーパーマン「……しかし、僕は……」
デッドショット「今のお前じゃ足手まといだ。……俺が代わりに行く。動くんじゃねえぞ」タタッ
スーパーマン「なっ、待て……」フラリ、ドサァッ
デッドショット「そのまま寝てろ! お前の出番は無えさ!」タッタッ
552 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:22:58.31 ID:YcegZolL0
………………
マシュ「たあああっ!!」ヒュンッ
クー・フーリン「ガアアァッ!!」ガギィィィ、シュババッ
マシュ「くっ、ダメです! 敵のスピードが速い!」ズバァ、ドシャシャ
ナイチンゲール「下がりなさい! 貴女のダメージは深刻です!」ダッ
マシュ「フローレンスさんこそ!」ムクリ
ジェロニモ「精霊たちが怯えている……! 何て強大な敵だ!」
ビリー「ああもう、的の動きが速すぎる……!」
シータ「あれではまるで、魔王(ラーヴァナ)……」
ラーマ「マシュ! フローレンス! 数の利点を活かすのだ! 囲い込むぞ!」ダダッ
マシュ「はい!」タッ
ナイチンゲール「分かりました!」ザザァ
バットマン「駄目だ! 屈め、ラーマ!」
ラーマ「何っ!?」
クー・フーリン「ゴガァァァァ!!」ブォンッ
ラーマ「っぐわ……!?」グサァ、ブシャァァァ……
553 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:23:40.17 ID:YcegZolL0
シータ「ラーマ様!?」
バットマン「ビリー! ジェロニモ! ラーマを援護だ! シータ、矢の射出を止めるな! 少しでもクー・フーリンの動きを制限しろ! マシュ! 予測だ! 敵の筋肉の動きを見るんだ!」
バットマン(囲い込めば、それだけ敵も攻撃機会が増える。自分達より数段速く強い相手に、それは悪手……!)
バットマン(だが、クー・フーリンも消滅が始まっているハズだ! だというのに、ここまで戦えるものなのか!?)
ナイチンゲール「治療を!」ガシッ、ズルズル
ラーマ「ぐ、ぶっ、あ……!」ブシッ、ブシィ
ビリー「ジェロニモ! 何かないの!? こう、一発逆転できる精霊とかさぁ!」タァン、タァン!!
ジェロニモ「あったら使ってるさ! 神話は万能じゃないんだ!」ダッ
ビリー「駄目かぁ! やっぱり銃で解決するしかないよね!」
クー・フーリン「ググググ……グラァッ!」ダンッ
ビリー「消えた!?」
マシュ「ビリーさんっ、後ろです!」
ビリー「なに……」
クー・フーリン「ガァァァッ!!」ズバァッ
ビリー「ぐあ……!?」ドシャァッ
ジェロニモ「ビリー!?」ジリッ
クー・フーリン「ツギハ、オマエダ……」ドシ、ドシ
ジェロニモ「くっ……」
554 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:24:09.05 ID:YcegZolL0
マシュ「そうは、させません!」バッ
クー・フーリン「グロォ……」
マシュ(仲間は全滅寸前。敵は強大。今こそ、命を燃やす時……!)スーッ、ハーッ
マシュ「マシュ・キリエライト、交戦します……!」ジリィ
555 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:25:28.79 ID:YcegZolL0
怪物を前に、マシュは半身になった。はちきれんばかりの緊張感の中、殺気と覚悟がぶつかり合う。
クー・フーリンが床を蹴った。遅れて床が爆ぜ、破片を撒き散らす。そのスピードはこの場の誰にも見えぬほどであり、バットマンには疾風じみた影しか見えない。
が、マシュはそれを予測していた。構えた盾と醜い爪がぶつかり合い、火花を散らす。マシュの筋肉が軋み、クー・フーリンは歪んだ笑みを浮かべる。
次の瞬間、台風のようなやり取りが始まった。爪が盾を掠り、槍を拳が捉え、尻尾がマシュの脇腹を打ち、頬を拳が打ち抜く。
風が吹き荒れ、瓦礫が吹き飛んで行く。マシュの瞳の輝きが増し、クー・フーリンの全身から禍々しいオーラが噴出する。
ここへ更に、凄まじいスピードで参戦する影があった。ジェロニモ。精霊の力を借り、風のように素早く、山のように力強く、火のように荒々しく踏み込む。
三人はもはや常人の目には見えず、食らい合うような攻撃で身を削りながら戦い続ける。
シータも覚悟を決め、矢筒から矢を引き抜く。そして、もはや霞む色としか思えない乱戦の中に目を凝らす。
(神々よ。そしてラーマ様。どうかご加護を。私にこの一矢を撃つ勇気を)
シータは目を開き、しっかりとその乱戦を見据えた。マシュが槍を受け止め、生じた隙にジェロニモがナイフを振り抜く。クー・フーリンは爪で受け止め、尻尾を振り抜こうと地面を踏みしめる。
そして、矢が放たれた。空気を裂き、その一矢はクー・フーリンの首を目掛けた。怪物は意外そうに目を開き、その一撃を見ていた。
矢が、彼の喉を穿った。クー・フーリンは血液を口から漏らす。致命傷だ。もはや勝負あった。マシュは動きを止める。
だが、直後に尻尾がマシュの頬を打ち据え、弾き飛ばした。ジェロニモが飛び退いたコンマ1秒後、それまで彼が立っていた場所に槍が突き刺さった。
クー・フーリンはもはや己の命にすら頓着せず、血を撒き散らしながら吼えた。彼は血走った目を開き、ジェロニモへと向かって駆けて行く。
不死身じみた怪物の暴動。しかし終わりは見えていた。クー・フーリンの背中から立ち昇る光の粒が、加速度的に増えて行く。それは消滅へのカウントダウンだ。
556 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:26:00.62 ID:YcegZolL0
(ようやく見えた。ようやく見えたんだ。命が終わろうとしてやがる。俺は終わりだ。余計なモンが全部消えて行く)
クー・フーリンは歓喜しながら、爪を振るう。下手にガードしたジェロニモは吹き飛び、壁に突っ込んで粉塵を撒き散らす。
(終わりだ。だが、終わらせるのも俺だ)
クー・フーリンは、次いでバットマンに目を移す。殺気に打たれ、片膝をついていたバットマンは立ち上がる。だが、彼が立った時には既に、怪物はバットマンの目の前で爪を振り上げていた。
そこへ、マシュが飛び込み、盾で爪を受け止めた。バットマンはマシュの頭上を跳び越え、怪物の顎へと蹴りを繰り出す。
怪物は無造作にその蹴りを掴む。一動作。マシュはその隙を突き、正拳突きでクー・フーリンの鳩尾を抉る。こらえきれず、吐血が散る。
バットマンは素早く蹴り足を戻し、空中で回転しながら怪物の喉に突き刺さった矢へと拳を繰り出した。更に深々と突き刺さり、クー・フーリンはよろめく。
バットマンは着地し、マシュがそれを庇うように立つ。万全のコンビネーションであり、これを破るのは難しいだろう。
そして、死が近い。怪物は今や全身を赤く染め、立っているのもやっとな状態である。魔力はとうに枯渇し、消滅の光粉は止まらない。だが、それでも、怪物は立ち続ける。
「俺はクー・フーリンだ。俺は。クー・フーリンだ」
下らねえ。ヘドが出る。自分の言葉に笑いながら、それでも怪物はうわ言じみて呟き続ける。お前がそう願ったなら、俺はそうあろう。王であり、槍であり、一人の男であろう。たとえ歪んでいたとしても。
ラーマが起き上がり、剣を構えた。ジェロニモも壁から抜け出し、シータは弓に矢をつがえる。ビリーも床に手をつき、ナイチンゲールは怒りと共に怪物へ向き直る。
誰かが吼える。静寂を破り、またしても全員が動き出す。
557 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:26:39.93 ID:YcegZolL0
クー・フーリンはシータへと飛び掛かった。が、ラーマがそれを庇い、袈裟懸けに切り裂かれた。
ラーマは膝をつくかに思われた。だが、開いた傷は煙を噴き上げ、音を立ててふさがっていった。
クー・フーリンはその原因に目をやる。戦場の中心、燃える瞳で自分を睨む赤い看護師へと。
「貴方はもう、何者をも害する事は無い。戦の禍よ。これが終わりです」
「終わりだと。終わりだと!!」
怪物が吼える。槍が輝く。ナイチンゲールは決してひるまず、歩いて距離を詰めて行く。
「貴方は病気です。私は救ってみせる。全ての命を」
「終わりだと!! これが!!」
「私は天使ではない。女神でもない。それでも私は、全ての毒あるもの、害あるものを絶ち、人々の幸福を導きましょう」
宝具だ。怪物は気付く。看護師の宝具が、周囲の者を癒している。傷を癒している。地獄を癒している。
ラーマが斬りかかる。ビリーが撃ち込む。クー・フーリンは片手でそれを払いのけ、今や一人の看護師とまっこう向かい合う。
ジェロニモが飛び掛かる。シータが射る。マシュが殴りかかる。怪物は三人分の圧力と組み合い、なおも看護師を睨む。
「もう、傷付けさせない。私が居る限り!」
「黙れ! 終わるか! 俺は、まだ!!」
不意に、銃撃音が響いた。クー・フーリンは自分の身体を見下ろした。そうして、胸に空いた穴を見た。遅れて穴から血が噴き出し、床を染めていった。
怪物は、未だ理解が及ばないといった体で、後ろを振り向いた。そこには、いつぞやの狙撃手が立っていた。
「仇は取ったぞ、エリザベート」
狙撃手は独りごちた。怪物は崩れ落ちた。
558 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:29:20.09 ID:YcegZolL0
クー・フーリン「……ちっ、終わりか……」シュウシュウシュウ……
クー・フーリン(メイヴ、お前はどんな気持ちだった。俺と同じ気持ちか?)シュウシュウシュウ……
クー・フーリン「……」フッ
シュゥゥゥゥゥ……
聖杯「」カラン……
559 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:29:49.23 ID:YcegZolL0
バットマン「……フロイド?」
デッドショット「動くな。テメェら、全員だ」カチャリ
ビリー「ちょっちょっちょ、待ってよ。味方なの? 敵なの?」カチャリ
シータ「ラーマ様!」バッ
ラーマ「こやつ、相当できる……あの距離から、心臓を撃ち抜くとは」ガシャリ
マシュ「マスター、指示を!」
バットマン「待て、全員止まれ! フロイド、何故ここに居る!?」
デッドショット「そいつはこっちの台詞だ、コウモリ野郎め。忌々しいぜ、こんなところでも因縁が付いてきやがる」
560 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:30:17.34 ID:YcegZolL0
バットマン「……事情は分からないが、今までのお前の動きを見る限り、敵とは思えない」
デッドショット「どうかな? 聖杯ってのは万能の願望器なんだろ? なら、俺の家族とエリザベートを呼び戻す事も出来るって訳だ」
マシュ「……! それは……」
デッドショット「世界を救う? クソ喰らえだ。俺は自分の願いを優先させるぜ。お前らみたいな聖人君子ってワケじゃねえからな」
バットマン「この人数差だ。やれると思うのか、フロイド」
デッドショット「やれねえと思うのか、バットマン。俺は切羽詰まってるぞ」カチャリ……
561 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:30:49.28 ID:YcegZolL0
ナイチンゲール「……家族、ですか。戦争に巻き込まれ、殺されでもしましたか」
デッドショット「黙れ」
ナイチンゲール「では貴方は、他の皆に地獄を押し付け、自分一人が楽となる事を良しとするのですか」
デッドショット「黙れ。俺は慣れてるぞ」
ナイチンゲール「貴方の家族はどうです? エリザベートとやらは、他人に理不尽を押し付けるのを良しとしますか?」
デッドショット「……黙れ! お前の眉間から撃ち抜いてやろうか!?」チャキ
ナイチンゲール「それは貴方の願いです。目を逸らしてはいけません。少なくとも、ここの王も、女王も、自分の願いを誤魔化しはしなかった」
デッドショット「……!!」
マシュ「ま、待ってください! 皆さん、聖杯を……!」
562 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:32:52.75 ID:YcegZolL0
聖杯「」コロコロ……
???「ふむ、参ったものだ。まさか、五つ目の特異点まで攻略されてしまうとはな」コツ、コツ
バットマン「お前は……!!」
レフ「くくく、久しいな。黒衣の騎士に、マシュ・キリエライト。健闘してるようだ」
マシュ「レフ・ライノール!? 第二特異点で、アルテラに両断されたハズじゃ……」
レフ「ははは、主のおわす『玉座』に接続し直せば、このような身体はいくらでも作り直せる」
バットマン「……ゲーティアか」
レフ「ああ、お前達はもうあの方の言葉を聞いたのだったな。あの提案を蹴るとは、愚かしさも極まったものだ」
563 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:33:24.50 ID:YcegZolL0
ナイチンゲール「ブルース、彼は」
バットマン「人理の病気の原因だ。しつこい奴だよ」
デッドショット「何者だ。その杯から手を放せ」カチャ
レフ「ククク、人間程度がこの私に指図かね。面白い、実に面白い。この聖杯の真なる使い方も分からん猿が」
バットマン「また聖杯を取り込んだ肉の柱と戦わされるという事か? 芸がないな、レフ・ライノール」
レフ「あぁ〜、それも良いが……今回は少し趣向を変えるとしよう。諸君らも気付いているだろうが、今回の特異点は神話絡みが多かっただろう?」
バットマン「……」
レフ「ククク、因果律というものがあってな。意図せずとも、関連性のあるものが引きずり出されるという事はままある」
バットマン「何が言いたい」
レフ「おや、では要点を言うとしよう。全ての世界の終わりとは、神話の終わりとは、どのような日になる?」
564 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:34:04.91 ID:YcegZolL0
ラーマ「……? どういう事だ?」
バットマン「……! まさか、貴様……!」
レフ「そう、審判の日(ドゥームズ・デイ)だ。キミが居てくれてよかったよ、バットマン。そして、意図せず召喚された、神の如き『彼』もまた……十分な因果を作ってくれた事だろう」
バットマン「全員、奴の聖杯を全力で奪取しろ! マシュ、令呪を以て……!」
レフ「もはや遅い!! 来たれ、全ての終焉よ! 星の終わりよ! そして、神々の絶望よ!!」
聖杯「」ギュオォォォオォォォオオォォ!!!
マシュ「この、魔力反応は……!!」
ドクター『!! 観測機器が故障したのか!? なんだコレ!?』
レフ「では、さらばだ。また会えると良いな、バットマン」シュンッ
バットマン「待て……!」
聖杯「」カッッッッ!!!!
565 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/04/25(木) 02:34:43.23 ID:YcegZolL0
シュゥゥゥゥゥ……
バットマン「げほっ、ごほっ……」
マシュ「マスター、無事ですか。召喚の衝撃波が、今までとは比べ物にならないくらい……」
バットマン「……」
マシュ「……マスター?」
バットマン「……マシュ、構えろ……」
???「……」ムクリ
マシュ「……!? マスター、あれは、一体……この魔力は!? こんな、滅茶苦茶な……まるで、世界そのもののような……」
バットマン「マシュ! 構えろ! 集中するんだ!」
バットマン(不味い。アレは、この世界にあってはならないものだ……!)
バットマン(ドゥームズデイ……!!!)
ドゥームズデイ「……」ユラリ……ドシ、ドシ
566 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/04/25(木) 02:36:06.45 ID:YcegZolL0
間が開いて申し訳ない、今回の更新はここで終わりです。
キャット戦はスキップです。度重なるミスのせいで疑心暗鬼にさせて申し訳ありません。
567 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/04/25(木) 02:42:30.10 ID:YcegZolL0
ドゥームズデイ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%87%E3%82%A4_(DC%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9)
https://warnerbros.co.jp/franchise/dccomics/characters/doomsday.html
今回の悪役の参考資料です
568 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/04/25(木) 02:58:10.94 ID:YcegZolL0
スーパーマン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3
https://warnerbros.co.jp/franchise/dccomics/characters/superman.html
すみません、ヒーローの参考資料を忘れていました
569 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/25(木) 11:12:35.93 ID:YCgYOrAOo
おつおつ
こうやってちゃんと投下しに来てくれるんだから
待ってたかいがあるもんだ
570 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/25(木) 13:50:39.03 ID:LIJkG9tkO
更新きたか!
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/25(木) 15:34:22.38 ID:MZueujoWo
おつ!
スーパーマンはやっぱ安心感半端ないな
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/26(金) 19:38:47.06 ID:qbiKSO4A0
乙乙!
婦長がかっこよくてよかったです(コナミ
あとデッドショットがほんとすき……
これからもやりやすいペースでいいのよ、俺らは待ってるからさ
573 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:15:01.93 ID:69VCOY9o0
………………
その異様な気配を感じ取り、『彼』は目を覚ました。彼はまず、空気の匂いを嗅いだ。朝の匂いだ。彼はその中に、無意識にナパーム弾の匂いを嗅ぎ取ろうとしている自分に気付き、止まった。
彼は森の中、横たわったままで暫く動けず、何故自分がこのように……無様に、地面に転がっているのかを思い出そうとしていた。
燃え上がるような闘志の少女との激突。二度にわたる敗北。迫る回し蹴り。因果応報などという、陳腐な言葉。彼は吹き飛ばされた仮面を遠くの地面に見つけ、己の顔に手を当てた。指に触れる眼帯の感触に、初老の男性は苦笑いを浮かべる。
ならば、己は敗北したのだろう。デスストロークは地面に手を突き、苦労して体を起こす。そうして、棍を杖じみてつき、仮面を取って顔に付けた。
異様な気配の出どころは、自分達の本拠地である。クー・フーリンの気配は既にない。つまり、自分達は敗北したという事だ。世界ごと滅ぼす策など、破れかぶれも良いところなのだから。
(では、俺はどうする。因果の裁きすら受け、周りに何もなくなり、戦士としての拘泥すらなく、スレイドとして行動する時、俺はどうなる)
スレイド・ウィルソンは溜息を吐き、上を見上げた。そして身体を奮い立たせると、戦場で培ったカンを活かし、素早く駆け出した。
574 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:15:35.88 ID:69VCOY9o0
………………
フリーズ「!!」ビリビリビリッ
フリーズ(なんだこの……嫌な感覚は!? 何が起きている!?)
フリーズ(方角は、あちらか? フィンを連れて行かねば……いや、だが、しかし、フィンは……)
フリーズ(どうすればいい? どうすれば……)
………………
ペンギン「よし、それじゃあ第二ラウンドは俺が審判だ。良いか、お互いに……!?」ビリビリビリッ
カルナ「!?」ビリビリビリッ
アルジュナ「っ、なんだコレは!?」ゾワァ
ペンギン「お、おぉ、なんだ……!?」ヨロ
カルナ「嫌な、感じだ。向こうの方角から」ジッ
アルジュナ「カルナ、貴様らの陣営か!?」
カルナ「馬鹿を言うな。俺達は知らない」
ペンギン「何が起きてる!? おいっ、神通力か何かで分からんのか!」
アルジュナ「……ともかく、行くしかないだろうな。どうだカルナ」
カルナ「異論はない」
575 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:16:02.65 ID:69VCOY9o0
………………
ケルト兵達「「「」」」シュウシュウシュウ……
エジソン「……? ケルト兵が、消えて行く? いったい、何が起きて……」
エレナ「あ、ああぁ、あぁ……ダメよ、そんな、ダメ……」ガクガク
エジソン「エレナ女史? どうしたと……!?」ビリビリビリッ
エレナ「見えたわ。見えたの。だって、あんな大きな存在、見えない訳がない……マハトマも、ハイアラキも、皆消されてしまう……」ブルブル
エジソン「ど、どういう事だ?! 何が見えたというのだ!? こ、この嫌な感覚は!?」
エレナ「来る……アレが、来る……!」
576 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:16:35.88 ID:69VCOY9o0
………………
『それ』が召喚された瞬間……否、正しくは召喚の手順を踏んでいる間も、絶え間なく見えない力は働いていた。地球を守らんとする力、人類を守らんとする力である。それらは普段、我々には見えず、大いなる力で我々を守る……と、されていた。
だが、その大いなる力は、純粋にもっと巨大な力でねじ伏せられた。存在格が、違い過ぎるのだ。『それ』が地に足をついた時、大いなる力は、まるで敗北を受け入れたかのように静まった。
おおよそ人とは思えぬ巨躯。体毛一本すら無い、筋骨隆々の身体。殺意と憎悪に燃える瞳。全身でもって、生命への敵対を表す究極の悪。
新約聖書には、明確に人々の『最後の日』が定められている。その日、人類は天使と悪魔の最終戦争で引き起こされる災厄によって、殆どが息絶える事となる。
ドゥームズ・デイ。人々はもはや、逃げまどう他に無い。
577 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:17:05.05 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……」ドシ、ドシ
デッドショット「……なんだ、コイツは……」
マシュ「敵、接近してきます! マスター!?」
バットマン「マシュ! 盾を構え、決して崩すな! ビリー、ラーマ、シータ、ジェロニモ、ナイチンゲール!!」
ラーマ「あ……あ、あ……」
シータ「ラーマ様! ラーマ様、お気をしっかり!」
ビリー「これ、は、ちょっと、ムリかもね……」プルプル
ジェロニモ「馬鹿な……こいつは、一体……」
バットマン「全員! 聞け! このままでは人理救済が不可能になる! ビリー! 牽制射撃だ!」
ビリー「あ、お、おうとも!」タァンタァン!!
弾丸「「」」ヒュォォォォォオッ
ドゥームズデイ「……」キキィン……
ビリー「……あの、目に当たったと思うんだけど……」
バットマン「……!! 全員、退避だ! 退避しろ!! マシュ、ナイチンゲールを抱えて逃げるぞ!」
ナイチンゲール「いいえ、逃げません!!」
マシュ「フローレンスさん!!」
ナイチンゲール「私は置いて行きなさい!」
バットマン「くっ……フロイド! 行くぞ!」
デッドショット「ち、くしょうめ!」ダッ
ドゥームズデイ「……」ググッ、ダンッ
デッドショット「う、ごっ!?」バギャァッ、ドシャシャシャシャァ……
バットマン「フロイド!?」
578 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:17:32.38 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……」スタッ、ググッ
バットマン「!!! 次が来るぞ! シータ、矢を……」
壁「」ドガァァァァァァ!!!
???「うおおおおおぉおぉぉぉおぉお!!!」ヒュォォォォオォォッ、ドガァァァァァ!!!
ドゥームズデイ「!?」ドッシャアアアアゴシャシャシャシャ……
バットマン「な……」
ドクター『ブルースくん、その敵の解析結果が出た! そいつは超高密度の……ま、待った、その人は!?』
バットマン「クラーク!?」
スーパーマン「まだまだ……!!」ググッ
ドゥームズデイ「……!!」ブォンッ
スーパーマン「ぐわっ!?」ドシャァァァァァ……
579 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:18:06.70 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……グルォォ……」ググ、ダァン!!!
ドガァァァァァ!!
バットマン「くっ……ドクター、敵が天井を突き破って跳躍した! 何処へ向かっているのか解析してくれ!」
ドクター『ま、待ってくれよ、えーと……なんてこった、この大陸の中心地へ向かってるぞ。恐らくだが、奴は特異点ごと我々を消滅させる気だ!』
バットマン「予測される敵着地地点を仮想マップ上に表してくれ!」ピ、ピ、ピ
ドクター『オーケー! これだと……多分、北の主戦場だった地点に着陸する! そこでどでかい何かを一発ぶち上げるつもりだろう! そうなると、こちらのリミットが破壊される恐れも出て来る!』
バットマン「リミット!?」
ドクター『シバの観測できるエネルギー量には限りがあるんだ。あまりに強大なエネルギーが発生すると、レンズが割れて特異点の観測そのものが不可能になる。つまり、人理消滅だ! 早く敵を止めなければ!』
バットマン「……了解した」ピピッ
580 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:18:37.61 ID:69VCOY9o0
ナイチンゲール「無事ですか。起きられますか」
デッドショット「……」グタッ
ナイチンゲール「……気絶しているようです」
バットマン(命に別状は、無いか。……だが、しかし、これは……)
バットマン「……クラーク。起きられるか」スッ
スーパーマン「あぁ、有難う……キミは、ブルース? 何故ここに?」パシ、ムクリ
バットマン「こちらの台詞だ。何故……ドゥームズデイが現れた時に、キミが……」
スーパーマン「何にせよ、助かった。キミが居るなら百人力だ。一緒に来てくれ、あの怪物を止めなければ」
ドクター『待った、待った! キミってスーパーマンだよね!? あの、伝説の!』
スーパーマン「? 伝説? いつから僕たちは伝説になったんだ、ブルース?」
バットマン「……キミだけだ。私を一緒にするのはやめてくれ」
職員A『え!? スーパーマンがそこに!?』
職員B『ほほほ、ホントに!? 本物のスーパーマンですか!?』
職員C『うわ、マジかよ! 子供がアンタ……じゃなくて、貴方の大ファンで……!』
バットマン「……」
581 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:19:05.96 ID:69VCOY9o0
マシュ「……聖杯反応、あの敵性体の内部からです。やはり、アレを止めないと」
ラーマ「すくんでしまった自分が情けない……」
シータ「仕方ありません。あれほどの存在を目にすれば、たとえ神々と言えど……」
マシュ「追いますか、マスター」
バットマン「ああ。……しかし、追いついたところで、対抗できるか……」
スーパーマン「僕とキミが居る。急ごうブルース、僕たちなら止められる」
バットマン「……しかし、クラーク。ずいぶんと、調子が悪そうに見えるが」
スーパーマン「少し、クリプトナイトの部屋に閉じ込められていたんだ。だが大丈夫、少しずつ調子は戻って来てる」
バットマン「成程な……では、行こう」
ナイチンゲール「待ってください。狙撃手の彼は?」
バットマン「フロイドは、目覚めても我々と行動を共にするとは考えにくい。今は一刻を争う。……回復するのなら、置いて行くぞ」ダダッ
582 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:19:33.17 ID:69VCOY9o0
………………
フリーズ「……」ガシャ、ガシャ、ガシャ……
フィン「……今のは」
フリーズ「分からない。だが私は行く。止めねば」ガシャ、ガシャ、ガシャ……
フィン「……」
フリーズ「……短い間だったが、お前と行動を共に出来て良かった。お前の行動は、私に影響を与えた。確かに、その通りだよ。自分の幸せより、己の押し付けるような愛より、優先すべきものはある」
フィン「……!」ググッ
フリーズ「愛を与える時、相手を思いやれなければ、それは自己満足だ。……お前という男を、私は忘れまい」
583 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:20:02.22 ID:69VCOY9o0
フィン「……ヴィクター殿は」
フリーズ「……」
フィン「何故、行くのです。このように異常な力の波に、何故立ち向かう。親指の智慧を使うまでも無い。立ち向かえば、死ぬでしょう」
フリーズ「……」
(((……でも、約束してね、ヴィクター)))
(((もし、私を治す方法が見つからなかった時は……その時は……)))
(((最期の一瞬は、世界を感じさせて。冷たい氷の中なんて嫌。貴方と一緒に、暖かい日向を歩かせてね……)))
フリーズ「……私も、約束したんだ。きっと彼女の世界を守ると。それだけで、私の生きる理由になる。死ぬ理由になる」
584 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:20:29.15 ID:69VCOY9o0
フィン「……ああ。やはり、かなわないものだなぁ」
フリーズ「……私は行く」ガシャ
フィン「いいえ、待ってください。私も同行しましょう」スクッ
フリーズ「来るのか? 何故?」
フィン「決まっているでしょう、ヴィクター殿。仕方ないと誤魔化していたが、私もやはり、愛していたのです」スッ
フリーズ「……止まれないぞ、フィン」
フィン「止まるつもりもありませんとも! 我らの勇猛を止める者が何処にありましょうや!」
フリーズ「……」フッ
フィン「さあ、行きましょう!!」
585 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:20:56.23 ID:69VCOY9o0
………………
マシュ「……あの、スーパーマン……さんと、お知り合いだったんですか?」タッタッタッ
バットマン「ああ。そう深い仲でもなかったが」ダダダ……
スーパーマン「ジャスティスリーグという組織を結成してたんだ。ええと、ダイアナと、ハルと、アーサーが居たな……」ヒュォォォォォオォォォォォォ
バットマン「……キミ自身は、どれほど覚えているんだ。以前の事を」
スーパーマン「? 僕たちは平和を守るために、ジャスティスリーグを発足させたばかりだっただろう?」
バットマン「……」
スーパーマン「……ブルース?」
バットマン「……クラーク、キミは……」
スーパーマン「……」
マシュ・スーパーマン「「何か隠しているな?(いますね?)」」
バットマン「……」
ビリー「あはは、綺麗にハモった」
586 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:21:23.50 ID:69VCOY9o0
マシュ「だってマスター、何か隠しごとをしている時は表情が動かなくなるんですよ」
スーパーマン「心音も少し速まった。分かりやすいな、ブルース」
バットマン「……」
ナイチンゲール「……まだ隠し事は良くないと学べませんか、ブルース」
バットマン「……士気を下げると思ったんだ」
スーパーマン「構わないさ、ブルース。僕が居る」
バットマン「キミが居るからだよ、クラーク……」
マシュ「ですが、今は秘密の方が士気を下げるかと思われます、マスター……」
バットマン「……」
587 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:22:01.18 ID:69VCOY9o0
バットマン「……クラーク。ジャスティスリーグ発足直後で記憶が途切れているらしいな」
スーパーマン「ああ、その通りだよ……どうしたんだ? やけに思わせぶりじゃないか、ブルース」
バットマン「実際には、ジャスティスリーグは解散した。発足したすぐ後に、とある事件が起きたんだ」
マシュ「……とある事件?」
スーパーマン「……」
バットマン「スーパーマンとドゥームズデイが相討ちになって、死んだ」
スーパーマン「……あぁ、成程」
588 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:22:29.81 ID:69VCOY9o0
ドクター『それは、僕も聞いた事がある。LAでの死闘だ、テレビ中継もすごかった。あの戦いだけで、何十万もの人々が死んだとも聞いている』
バットマン「キミを失ったジャスティスリーグは長続きしなかった。分かるだろう、私は……あまり、人をまとめるのが上手くなかったからな」
スーパーマン「……そうか? キミほど優れたリーダーは居ないと思っていたが」
バットマン「持ち上げるな。……そういう事だ。このまま行けば、キミは死ぬかもしれない」
マシュ「……」
スーパーマン「……だが、今回はキミ達が居るだろ? 頼りにしてるさ、ブルース」
バットマン「……はぁ。キミに何を言っても止まらない事くらいは知っていた……」
589 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:22:58.49 ID:69VCOY9o0
ナイチンゲール「ジャスティスリーグ、ですか。そのような組織が現代に存在していたとは、驚きです。衛生面での保全活動はどなたかなさっているのでしょうか」
スーパーマン「うーん……皆で出来る当たり前の事をやってた、くらいのものかな。ははは、そんなに難しい話はなかったと思う」
ナイチンゲール「素晴らしい理念です。当然の事が出来ない人はあまりにも多い」
スーパーマン「そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、同時に悲しくもなる。皆がヒーローになれる訳じゃない」
マシュ「……そうですね、その通りです」
ラーマ「うむ、英雄(ヒーロー)とは難儀なものであるよな。プライベートの時間もそうそう取れる訳で無し」
シータ「それでも、私はラーマ様が居てくれるだけで……」
ラーマ「……余も、シータが傍に居てくれるから頑張れるのだ」
ビリー「あーー!! すごい砂糖!! どんな話題からでも甘い空気!!」
590 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:23:28.61 ID:69VCOY9o0
………………
エジソン「む! ロボット達の対空レーダー網に感あり! 飛来物だ!」
エレナ「エジソン、無茶よ! 逃げましょう、今なら間に合うわ!」グイグイ
エジソン「……エレナ女史、キミを巻き込むつもりはない! だが、私はきっと、どんな逆境の中でも立って戦うだろう!」バッ
エジソン「こんな言葉を知っているかね!! 『私たちの最大の弱点は、諦める事にある』と!!!」ガオオッ
エレナ「……!」
エジソン「今の人類史は!! 守るべき発明品であり、私達の宝である! そうは思わないか、エレナ女史! 先達として、世界を見守るのは私達の役割であり……!!」
エジソン「それを守る機会が我々に回って来たというのは、とてつもない名誉であると!」
591 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:24:04.07 ID:69VCOY9o0
エレナ「……言っておくけど、貴方の格言を皆が知ってると思ったらダメよ」
エジソン「うむ、それは反省しておこう!!」
エレナ「でも、名誉はそうね。マハトマに選ばれたのなら、相応の働きをしなきゃ……」
エジソン「うむ! 自分が決して曲げられぬと思うものにすがり、戦うのが一番だ! 逃げてもどうせ追いつかれるしな! 電流戦争みたいに!!」
エレナ「……はぁ。それさえなければ、あなたたちの事はもっと好きよ……」
エジソン「全ロボット、対空砲火よーーーーい!!」
ロボット達「「「」」」ガシャシャシャシャシャシャシャ……
エジソン「……放てエ!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドォォォォォ……
ドゥームズデイ「……」ギギギギギギギィン……ドッサァァァン……
エジソン「……弾丸が全部体表で弾かれたように見えたが」
エレナ「ええ、そうね」
エジソン「やはり撤退も一考して良かったやも……」
エレナ「今更何言ってるの。私はもう覚悟を決めたわよ」
エジソン「うむぅ……」
592 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:24:32.34 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……」ムクリ、ドシ、ドシ
エジソン「えーと、エレナ女史は格闘戦はイケる口……」
エレナ「ムリよ! あなたこそ、そんな良い体格なのにダメなの!?」
ドゥームズデイ「……」ググッ
エジソン「む、むむ……私は本来サポート型なのだが……ここは直流式格闘術をご覧に入れるとしよう!」スッ
ダダッ
ヒュォンッ!!!
ドゥームズデイ「!?」バッシィィィ、ユラッ
「フン、あのスーパーマンを殺したと聞いていたが、俺の聞き間違いだったか?」クルリ、スタッ
エジソン「なに!?」
エレナ「あ、あなた!?」
デスストローク「随分腑抜けと戦う事になっちまったもんだ」ガシャリ
593 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:25:04.37 ID:69VCOY9o0
エジソン「キミは敵だと思っていたが、仮面の紳士よ!」
デスストローク「……フン、何のために戦おうが俺の勝手だろう。しっかり役割を果たせ、サポート型共」チラ
エジソン「サポート型共ではなく、エジソンである! その辺の名前はきちっと呼んでもらいたい!」
エレナ「そうよ、人の名前を呼ばないのは失礼よミスター!」
デスストローク「ちっ、面倒な奴らだ」イライラ
ドゥームズデイ「……」ドシドシ、ダンッ
デスストローク「!!」バッ、
ドゴォッ!!
デスストローク「うっぐぉ……!?」ドシャシャシャシャ……
エジソン「!! しまった、唯一の格闘可能戦力が!」
エレナ「サポートしましょう、サポート!」
デスストローク「ええい……!」バッ、クルクル、スタッ
デスストローク(なんという怪力だ。俺が不死身でなければ死んでいたぞ)ゴキ、ゴキリ
ドゥームズデイ「……」ドシ、ドシ、ドシ
594 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:25:31.62 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……」ググッ
デスストローク(……? なんだ、上体を逸らした?)
ドゥームズデイ「……!!」ギュゴォォォォォォオォォォォォ!!!
デスストローク「!!!」ガッギャァァァァァァァドシュシュシュシュシュシュシュゥゥゥゥ!!!!
エジソン「何! 目からビーム!?」ギュオオオオオッ
エレナ「あの原理は興味深いわね、後で考察しましょう!」ギュドドドッ
光弾「「「「「」」」」ギュオオオオオッ
ドゥームズデイ「……」ドシュシュゥッ、クルリ
ビーム「」ビィィィィィィィイィィィィィ!!
ロボット達「「「」」」ドガァァァァァガッシャァァァァ!!!
エジソン「まずいっ、伏せたまえ!」ガバッ
エレナ「きゃっ!?」ドドッ
ビーム「」ビィィィィィィイィィィゴシャァァァァァァ!!!
エジソン「うむぅ、迂闊に振り向かせたのは下策だったか!」ジリジリ
エレナ「そ、そうはいっても、なんとかしないと!」
595 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:26:02.58 ID:69VCOY9o0
デスストローク(あの、野郎め。やってくれやがる……!)ジュウウウウウゥゥゥ……
デスストローク(ああ、クソ、意識が、途切れそうだ……)
(((……この子が死んだのはアンタのせいよ……)))
(((スレイド・ウィルソン。被検体番号、80218……)))
(((……畜生め、クソ喰らえ。死ぬだと、俺は、ここで……)))
デスストローク(ダメだ。起きろ、スレイド・ウィルソン、下らない感傷にはノーを突きつけろ。立つのに理由は要らん。命を燃やすのに、理由は要らん)ググッ、ムクリ
ドゥームズデイ「……?」クルリ
デスストローク「……」フラフラ、ユラリ
596 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:26:34.91 ID:69VCOY9o0
デスストローク「オレを、殺したと思ったか。スーパーマンのように?」
ドゥームズデイ「……」
デスストローク「下らんぞ。俺はデスストロークだ。最強の暗殺者だ。俺は奴のように誰かを守る事なんぞ無い。ただ……」
デスストローク「俺はただ、生きると決めた。何も残らん、空虚な生だとしても」
ドゥームズデイ「……?」
デスストローク「笑いたいか。笑うと良い。そもそも、ナパーム弾一発で何十もの命が消えるのを見て来た俺だ」
(((嫌だ! 助けてくれ!!)))
(((スレイド、頼む、俺はまだ……)))
(((お父さん、また行くの……?)))
(((アンタのせいよ!!)))
(((……何故、俺は死ねない。何故俺は死ねないんだ。命とは何だ。それは今まで、何より軽んじられてきたものだったハズだ)))
(((……ならば、)))
デスストローク(ならば、この俺に言い訳がましい死など不要! この世に永遠の命など不要!!)
597 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:27:11.72 ID:69VCOY9o0
デスストローク「生きている幸運くらい、自由に使わせてもらう」フッ
ドゥームズデイ「……」ドシ、ドシ
デスストローク「かかってこい。この世を滅ぼすだと? お前には少し荷が重いぜ、兄弟」カチャ、シュリイィィィ……
デスストローク(さあ、何秒時間稼ぎが出来るかはお前達に掛かってる。しっかりやるんだぞ、サポート型共)スッ
エジソン「ま、待て、今サポートのロボット達を呼び寄せる……」
エレナ「エジソン! 今からは間に合わないわ、援護射撃とサポートに徹して!」
エジソン「ええいっ、駄目か!!」
デスストローク「……!!」ダッ、ブォンッ
ドゥームズデイ「……」ジッ
598 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:27:43.84 ID:69VCOY9o0
デスストロークは跳びかかり、目にも止まらぬ神速の一閃を繰り出した。が、ドゥームズデイは防御すらせず、それを首で受け止める。火花が散り、甲高い音が鳴り響く。
(固い表皮。ならば)
デスストロークは剣を放り捨て、棍を構えた。怪物は身動き一つなく、目の前の羽虫じみた敵の動きを見る。
スレイドは身体を捻り、跳躍と共に棍を振り抜く。速度と威力が十分に乗った一撃がドゥームズデイの首筋を捉え……そして、鉄の棒が折れた。破片が飛び散り、スレイドは驚愕に目を見開く。
ドゥームズデイの無造作な前蹴りが、デスストロークに叩き付けられる。咄嗟にガードしたものの数メートル弾かれ、彼は歯を食いしばって威力に耐える。
(無理だ)
遠方から見ていたエジソンが不可能を悟り、助勢に駆け付けようとする。が、察したデスストロークは、それを手で制した。
「余計な、フゥー……余計な助太刀だ。俺はまだ倒れていないぞ」
冷たい声色で拒否しながら、デスストロークは拳を構える。実際、彼は今の蹴り一発で既に意識が朦朧としており、危険な状態だった。
だが、彼は他者の介入を拒んだ。おぼろげな意識の中で、スレイド・ウィルソンは仮面の奥、笑みを浮かべる。
絶望的な敵を前に、スレイドは拳を繰り出す。直撃した拳が逆に砕け、血を撒き散らす。ドゥームズデイは首を傾げ、虫けらじみた敵を見下ろす。
が、スレイドが拳を止める事はない。拳が砕けたならば逆の拳で、それも砕けたならば脚で、脚が砕けたならば再生が始まった拳で……絶え間ない激痛が彼の意識をたびたび揺り戻し、また彼岸へと押し流し、彼を死と生のはざまで行き来させる。
スレイドの視界には幻が映る。殴る先に居るのは、これまで殺した者達、大物、小物、何の罪もない市民、バットマン、盾を持った少女、そして、あの日に殺された息子。
ならばこれは罰か。スレイドはしかし、決して認めなかった。
「なにが罰だ」
仮面の奥から声が漏れる。ドゥームズデイが煩わしげに手で払うのを躱し、スレイドは両拳を敵の脇腹へと叩き込む。
ここで初めて、ドゥームズデイの姿勢が揺らいだ。効果あったか。……いや、体勢のバランスを崩したか。ならば畳みかける!
「知っているか、ドゥームズ・デイ。人はお前が手を下さずとも、死んでゆく」
デスストロークは跳躍、回転しながら蹴りをドゥームズデイの頬へ叩き込む。怪物はよろめき、崩れて膝をつく。エジソンたちのサポート効果もピークを迎えつつある。ここで決める。デスストロークは着地する。
「ジャングルで、朝早くに、丸焼きにされるヤツも居る。モルモットのように、薬の実験台になって死ぬヤツも居る」
デスストロークは踏み込み、強烈な正拳突きを繰り出す。が、ドゥームズデイはそのパンチを捉え、握り込んで潰し、離さない。
しかしデスストロークは、一切の迷いなく手首を千切って自由を取り戻すと、もう一方の腕で鋭い突きを繰り出した。ドゥームズデイは目を突かれ、苦悶の声と共に仰け反る。
「あるいは、父親の犯した愚かな罪で、復讐として殺されるヤツも居る。お前が手を下さずとも、ここは地獄だ」
ドゥームズデイは怒りを露に、デスストロークを睨み付ける。デスストロークは怯まず、真向から見返す。
「だが、天国にどんな生き甲斐がある?」
ドゥームズデイは吼え、目を発光させながらレーザーを発射した。スレイドは減衰してゆくサポートの力を感じながら、絶望的なガード姿勢を取ろうとし……
両者の間に白髪の男が割り入り、槍でレーザーを防御した。
599 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:28:10.94 ID:69VCOY9o0
白髪の男「ぐっ……アルジュナ、急げ!」ガガガガガガガガガ……
黒髪の男「フ、良い眺めだ。もっと苦しめ」
小太りの男「おいっ、夫婦漫才は後でやれ! さっさとカルナを助けろ、アルジュナ!」
アルジュナ「……フン、今回限りだぞ」シュパパパパッ
雷の矢「「「」」」バヂヂヂヂヂヂィィィィッ!!
ドゥームズデイ「……」ドシュシュシュッ、シュゥゥゥゥゥ……
カルナ「……効いていないように見えるな。鈍ったか、アルジュナ」
アルジュナ「黙れ。奴が規格外なだけだ」
デスストローク「な、貴様……」
ペンギン「カハハハハハハハ、貸しひとつだデスストローク!!」
アルジュナ「正確には、私からの貸しだ」
カルナ「……更に正確に言うと、俺が助けた」
デスストローク「なんだこいつらは……」
600 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:28:44.53 ID:69VCOY9o0
………………
デッドショット「……」ピクリ、ガバッ
デッドショット(ちくしょう、なんだ?! どうなって……置いて行かれたのか!? クソ、バットマンめ、相変わらずな野郎だ……!!)ムクリ
デッドショット「ぐ、くっ……」ヨロ
デッドショット(聖杯を……いや、聖杯がドゥームズデイになって……ああクソ、今まで分からんなりに耐えてきたが、いよいよ理解の範疇を超えそうだ……)
カタッ
デッドショット「!! 誰だ!?」カチャリ
デッドショット(誰か残ってやがったか!?)
601 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:29:13.38 ID:69VCOY9o0
ヒソヒソ……ヒソヒソ……
デッドショット「……?」カチャ、ジリジリ
(……でも、あのおじちゃん、魔王を倒したんだよ)
(馬鹿! 声を出したら気付かれるだろ、黙ってろよ!)
(ホントだよ、怖くないよ。絶対、大丈夫だから。声を掛けてみようよ)
デッドショット「……誰かいるのか、そこに」
シーン……
デッドショット(……幻聴じゃねえ。誰か居る)
602 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:29:41.32 ID:69VCOY9o0
デッドショット(……この、玉座の目の前の壁が、少し違和感があるな)コツコツ
壁「」ブワァァァァァァ……
デッドショット「!? 何、なんだこいつは……!?」
牢屋「」ズォォォォォォ……
デッドショット「馬鹿な……」
デッドショット(玉座の間のすぐ前に、牢屋だと? どんな構造をしてやがる)
デッドショット(……しかも)
子供達「「「……」」」ジッ
デッドショット「……」
デッドショット(……中に居るのは、子供達ばかり?)
603 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:30:16.95 ID:69VCOY9o0
子供A「……」
デッドショット「……おい、ここで何してやがる」
子供A「ヒッ……」ジリッ
子供B「大丈夫、大丈夫よ。怖くない。おじさん、助けに来てくれたんだよね?」
デッドショット「ここで何をやってるか教えてくれりゃあな。何をしてやがる」
子供B「何もしてないの。ホントなの。魔王がね、赤いマントのお兄さんの抵抗をやめさせるために、私達をいつでも殺せるようにしてたって……」
デッドショット「……??」
デッドショット(赤いマントのお兄さん……スーパーマン? 魔王は、つまり、クー・フーリン……って事は、コイツらは……)
デッドショット「……お前ら、人質か。だからスーパーマンは負けたんだな」
子供C「あの青いお兄さんは無事なの!? 僕らを助けてくれたのに、僕らのせいで捕まっちゃったんだ!!」
デッドショット「ああ、無事だ。ぴんぴんしてやがる、忌々しい……出ろ。さっさと親の元に帰れ」カチャカチャ、バァン
牢屋「」ギィィィィ……
604 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:30:47.04 ID:69VCOY9o0
子供A「や、やったぁ!! 帰れるんだ!!」ダダッ
子供B「ありがとうおじさん!」タタッ、ギュッ
子供C「ありがとう、おじちゃん!!」ダッ、ギュウッ
デッドショット「おい、やめろ、離せ。ガキ共……」
子供D「ぼ、僕、家が壊されちゃって……お父さんとお母さんと離れちゃったんだ。どうすればいいの?」
子供E「僕の家は焼かれちゃった……おばあちゃんが寝たきりだったのに、焼かれて……もう、知ってる人が居ないよぅ……」グスグス
デッドショット「……」
605 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:31:29.27 ID:69VCOY9o0
デッドショット「おい、坊主。泣くな。良いか、これが全部終わったら『エジソン』って野郎のところへ行け。そこに皆居る」
子供D「ほ、ほんとう?」
子供E「おばあちゃんも、そこにいるの?」グシグシ
デッドショット「……そうだ。皆居る。だから泣くな。男だろ」グシャグシャ
子供E「う、うん……泣かない」グシャグシャ
デッドショット「……」
子供B「おじさんは、どうするの?」
デッドショット「俺は……俺は、片付ける仕事がある。行かなきゃならん」
子供A「え……」
子供C「い、嫌だよ。おじちゃんまで居なくなったら、どうすればいいの……」
デッドショット「……」
(((パパ、お願い、もう行かないで……)))
デッドショット「……」
606 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:31:56.31 ID:69VCOY9o0
デッドショット「……ハートがチクチク 箱入り浪漫 それは乙女のアイアンメイデン」
子供B「……え?」
デッドショット「愛しいアナタを閉じ込めて……あー……なんとかかんとか、キスの嵐と洒落込むの……」
子供C「な、なに?」
デッドショット「元気が湧いて来る歌だろ。俺の周りで流行ってた歌だ」
子供A「……そ、そうなの?」
デッドショット「そうだ。良いか、皆で歌いながら、とにかく東を目指せ。東っていうのは、つまり、今お日様があるのと反対側だ」
子供D「で、でも」
デッドショット「いいか、この歌は特別な歌なんだ。歌っていれば、どんな困難も、どんな怪物も、怯えて寄り付かねえ。本当だ。だから、」
(((本当、駄目ね。アンタは、アタシが居ないと)))
デッドショット「……だから、とにかく走れ。大丈夫だ、俺が知る限り一番の加護が付くさ」
子供達「「「……」」」
デッドショット「……さあ、行け。立ち止まるな。大きな音がしても、振り返らずにな」
子供達「「「……」」」ゾロゾロ……
607 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:32:28.55 ID:69VCOY9o0
デッドショット「お前、待て。少し」
子供B「わ、わたし?」
デッドショット「……お前、見たところ、子供達のリーダー格だな? コイツを渡しておく」カチャ
拳銃「」ズシ……
子供B「こ、これは……?」
デッドショット「……良いか、コイツを使うのは、あまり良い事じゃねえ。使い方はこうだ。ここを引いて、この『引き金』を引く」カチャカチャ、カチッ
子供B「……こ、こう?」カチャカチャ、カチッ
デッドショット「そうだ。いいか、じゃあ……いま、安全装置を外した」カチッ
子供B「……」
デッドショット「……良いか、本当に危ない時に、本当に覚悟を持って、背負い込みすぎないように撃つんだ。敵に狙いを定めて、深呼吸して、……お前が一番守りたいと思うものを想像して撃て」
子供B「……そしたら、どうなるの?」
デッドショット「……最低な事が起きる。これは本当に最悪の手段だ。ギリギリまで使わずに居るんだぞ」
子供B「……う、うん」
デッドショット「分かったなら、良い。行け、アイツらを東に導いてやってくれ」
608 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:33:05.70 ID:69VCOY9o0
デッドショット「……フー……」
デッドショット(……今からすべき事は、バットマン達を追いかけ、ドゥームズデイとの戦いで疲弊した連中を片っ端から撃ち殺し、聖杯を手に入れ……)
デッドショット(……家族と、エリザベートを蘇らせて……)
(((ぼ、僕、家が壊されちゃって……お父さんとお母さんと離れちゃったんだ。どうすればいいの?)))
(((僕の家は焼かれちゃった……おばあちゃんが寝たきりだったのに、焼かれて……もう、知ってる人が居ないよぅ……)))
デッドショット(……ああ、クソっ!! いつからこんなに脆弱になっちまった、フロイド!)
デッドショット「どうしてこうなる!! ああ、クソッ!!」ドガッ!!
デッドショット(……)
デッドショット(……クソ、エリザベートめ。あの世で笑ってやがるだろうな)カチャリ
デッドショット「行かねえと……」スッ
ガラン……
デッドショット「……?」
緑の槍「」ジジジジジジ……
デッドショット「……クソ、エリザベートめ。お前、今頃、あの世で笑い死んでるだろ……」
609 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:33:37.29 ID:69VCOY9o0
………………
ドゥームズデイ「……」ギュゴォォォォォォオォォォォォ!!!
カルナ「ムチャクチャな」ガギィィィィィィ!!
アルジュナ「この程度で音を上げるのか? 笑えるな」シュパパパパッ
ドゥームズデイ「……」ドシュシュシュシュッ、シュゥゥゥゥゥ……
カルナ「少しは有効打を放ったらどうだ?」ギギギギギギギギギギィィィィ!!
アルジュナ「私の攻撃はひとつひとつが次への布石なのだ」
カルナ「だとしたら布石が多すぎるぞ」
ペンギン「カハハハ、ここまで滅茶苦茶だと逆にせいせいするぜ! どうだエジソン、一本吸うか!?」ボロッ
エジソン「戦場で葉巻を吸うな! どこまで豪胆なのだ!!」ボロボロ
エレナ「く、ううぅっ……ごめんなさいエジソン、そろそろ限界よ……!!」シュウシュウシュウ……
エジソン「!! エレナ女史!!」
エレナ「アナタの理念、立派だったわ。一緒に戦えて、良かった……」シュゥゥゥゥゥ……
エジソン「何たることだ! 戦場の柱が一本折れたに等しい……!」
ペンギン「ええい、俺も少々気張るしかねえか! デスストローク!」
デスストローク「……」
ペンギン「死んだふりはよせ! 不死身の癖しやがって!」
デスストローク「……いくら不死身でも、限度がある」ムクリ
ペンギン「行くぞ、隙を開いてやらにゃならん! 手間のかかる神話出身者共め!」
610 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:34:09.64 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……」ダンッ、ブォンッ
カルナ「!? ぐお……!」ゴッシャァァァァァズシャシャシャシャ……
ドゥームズデイ「……」ブオンッ
アルジュナ「うっ、ぐあ……!!」グシャァッ、ヒュオンッドガァァァァァ!!!
デスストローク「せやっ!!」ガッ、ドガガッ
ドゥームズデイ「……」ヨロ
ペンギン「食らいやがれ!!」シュドッ
ドゥームズデイ「……」ガシッ、ブオンッ
ペンギン「おおぉ!?」ドッシャァァァァン……
デスストローク「使えんテディベアだ!」ダッ
ペンギン「お前の、ゴホッ、お前の踏み込みが足りんかったんだ!」パラパラ……
ドゥームズデイ「……」グググッ
高圧水流「」ピシァァァァァアアアアア!!!
ドゥームズデイ「!!」ガガッ、ズシャシャシャ……
フィン「間に合ったか!」ザザァッ
ドゥームズデイ「……」ズシャシャシャァ……ピタッ
611 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:34:48.05 ID:69VCOY9o0
冷気「」パキ……パキパキ……
ドゥームズデイ「……」パキパキ……
フリーズ「動くな、怪物め」パキパキィ……
フィン「どうですか、奴を凍らせられそうですかな」
フリーズ「コンマ数秒ならな。たとえ全身を凍り付かせても、奴にとってはいかほどのダメージにもなるまい……」
ペンギン「こいつは驚いた! 全身冷蔵庫野郎め、まだ干からびてなかったのか!」
フリーズ「驚いたぞ、コブルポット。貴様は今頃魚の餌になっているかと」
フィン「ははは、仲良き事は美しきかな! ですがご注意を、未だ敵は健在です!」
デスストローク「……うるさいのが来たな」
612 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:35:21.72 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……」グ、グググ、パキィ、パキ……
カルナ「……アルジュナ」スッ
アルジュナ「黙れ、みなまで言うな。方法なら、私も浮かんだ」
ペンギン「なんだ、ようやく神話らしいところでも見せてくれるってのか? 待ちくたびれるぜ、下々の民はよ!!」
カルナ「時間が掛かる。コブルポット、皆を率いて少しでも時間稼ぎをしてくれ」
ペンギン「どれくらいだ?」
アルジュナ「できる限り長くだ。これは『神話』の再現であり、太陽への冒涜であり、その失墜だ。私も、カルナも、時間が掛かる」
ペンギン「カーッ、その気取った訳の分からねえ説明はどうにかならねえのか! ……良いぞ、乗ってやる!」
デスストローク「フン、力を貸してやる。これで貸し借り無しか?」
ペンギン「……働き次第で考えてやる」
613 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:35:51.55 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……」ドシ、ドシ
フィン「やはり怪物……」
フリーズ「大した化け物だ。薄皮一枚凍らせた程度ではどうにもならないという訳か」
フィン「……おかしいですな、親指を舐めても何の解決策も浮かびません」
フリーズ「時に、人は思考以上の何かを求められる。今こそその時だ」
フィン「ははは、全く怖がる隙も無い!」
フリーズ「最期まで生きるという事だ。難しい話ではないよ、フィン」
フィン「……ふ」
エジソン(……エレナ女史の犠牲は決して無駄にできん! アメリカを守り、もって世界を守る!)
エジソン「嘗めるな、怪物め! 大人しく白熱電球の光も届かぬ闇の中へ引っ込んでいるがいい!!」ガオオッ
614 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:36:30.42 ID:69VCOY9o0
エジソンも、もはや消滅の危機に瀕していた。背中から光の粒が立ち昇り、彼の身体は削られて行く。
だが、それでも、彼は集中した。愛する彼の故郷を守るため……世界を、守るため。枯渇する魔力、身を絞られるような苦痛に、彼は呻きながら抗う。天才とは、1%の閃きであり、99%の努力である。ならば戦うべし。
そうして全力で放たれたサポートの光を、デスストロークは背に受けた。彼もまた、とうに限界を迎えた身体に鞭打ち、拳を構えてドゥームズデイに向き合う。
「審判の日か。さしずめここは裁判所だな」
「笑えるジョークだ」
軽口を叩くペンギンに、デスストロークは真顔で返す。二人は互い違いにすり足で移動し、ドゥームズデイの周囲を衛星じみて回り出す。ペンギンもまた、油断ならない戦闘力の持ち主。
だが、ドゥームズデイは小癪とばかりに吼えた。空気の震えが戦士たちの肌を打ち、一瞬の怯懦を生んだ。一瞬。十分すぎる隙。
直後、ペンギンの腹部に拳がめり込んだ。何が起きたか理解する暇もなく、彼は吹き飛ばされ、地面深くへとめり込んで行った。
デスストロークは低姿勢で駆け、今しがたコブルポットを殴りつけたドゥームズデイへと拳を叩き付けようとする。だがドゥームズデイは信じがたい速度でデスストロークへと向き直り、カウンターの蹴りを……
「っぜええええい!!」
そこへ、ギリギリでフィンが割って入り、横に構えた槍で蹴りを受け止めた。衝撃が彼の全身を突き抜け、大きく弾き飛ばす。
デスストロークは瞬時に判断し、流麗な動作でフィンを回避。回し蹴りでドゥームズデイの顔を狙う。
ドゥームズデイはこれに反撃しようと、腕を持ち上げようとした。が、動かない。凍結している。コンマ数秒の遅れが生じ、ムチのような蹴りがドゥームズデイの頬を打った。
手応え、あり。デスストロークは反動に耐えながら、姿勢を戻そうとする。だが直後、隕石のような拳が彼を直撃し、スレイドの体構造を滅茶苦茶に破壊しながら振り下ろされた。
デスストロークは吐血にまみれながら、それを見る。ドゥームズデイの、怒りに見開かれた瞳を。所詮は焼け石に水だったか。
しかしそこへ、電撃じみた速度で何かが飛来。それはライオンのたてがみをたなびかせながら、ドゥームズデイへ拳を叩き込む。
エジソンである。彼は消滅しながら肉弾戦を挑んだのだ。
「う、グアァァァァァァァア!!」
苦悶の声と共に、拳が振り抜かれる。直撃した拳は砕け、儚い光粒となって消える。だが、それでも、エジソンは最期の一瞬まで、責任を放棄する事はなかった。
ドゥームズデイは反撃のビームを目から射出した。そのエネルギーの奔流はエジソンを直撃し、粉々に打ち砕いた。
光の粒の残滓が舞う中、スレイドは自らを支えていた最後の魔力が消えた事を知った。もはや彼の肉体は原動力を失い、不死性のみが残る苦痛の檻と化した。
だが、それでも、スレイドは彼が見た命の輝きに殉じると決めた。もはや人間とさほど変わらぬ肉体になり果てても、否、なり果てたからこそ、彼は起き上がる。
(見たのだ。俺は命の真実を見たのだ)
ナパーム! 生きたまま焼かれる仲間! 右目に飛来する弾丸! 血塗れの息子! 今、立ち上がる自分の怒り! それらに何の違いがあろう? 怒る権利ならば持ち得るハズだ! 怒り、命を燃やす権利ならば!!
デスストロークは地面に手を突き、叫びながら起き上がる! フィンも体勢を立て直し、ドゥームズデイへと飛び掛かる。だがもはや、残った数人だけでは何の時間稼ぎにもならない事は明白であった。
そんな中、カルナとアルジュナは、戦況が絶望的であると知りながらも集中を深めて行く。
615 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:37:00.63 ID:69VCOY9o0
カルナ「……」ゴゴゥッ、ゴゴゴゴゴゥ……
アルジュナ「……」バチチチィ……バチ、バチバチバチ……
アルジュナ「……あの日、不本意でもお前を射った」バチバチバチ……
カルナ「……」ゴゥゥゥ……ゴゴゴゴゥッ……
アルジュナ「神々がお前を弱らせていると知りながらも、それでも弓引いた。そうして、お前を殺した。カルナ」バチバチバチバチィ、バチバチバチ……
カルナ「……知っている。覚えている」
アルジュナ「私はあの日の出来事を、クリシュナ(黒)のせいにしてきた。己の中に潜む黒のせいに」
カルナ「そうか」
アルジュナ「だからこそ、私はもう一度貴様を殺す。やり直しが効かぬのは承知している。だが、それでも……それでも、私は『これ』と向き合わねばならないのだ」
カルナ「……俺としては、お前が鈍っていないのを願うばかりだ」
アルジュナ「……フン」バチチチチチチチチィ!!
ペンギン「おいっ、まだかかるのか!」ズリズリ
カルナ「……まだだ。まだ、掛かる……」ゴゴゴゥッ、ゴゴゴゴ……
アルジュナ「……」バチバチバチチチチチチチヂヂヂヂヂヂ……!!!
616 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:37:39.32 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「……」ブォンッ
デスストローク「ぐおぉぉ……っ」ゴシャシャシャシャァ……
フィン「くっ、フリーズ殿!」
フリーズ「待て、今撃つ!」ビィィィィィ……
ドゥームズデイ「……」パキィッ……バキン、ドシドシ
フィン「くっ、この怪物ももはや本気という事か……!」
フリーズ「フィン! 退け!」
フィン「まさか! 今や私がただ一人の近接戦闘役! 友を背に庇い、おめおめと逃げるワケにもいきますまい!」スッ
ドゥームズデイ「……」ドシ、ドシ
フリーズ「フィン! 本当に死ぬぞ!」
フィン「……ならば、私も所詮そこまでの……!」
???「少し落ち着いた方が良い」ポン
フィン「?? え、っと、誰でしたか……」
スーパーマン「大丈夫、間に合った。もう安心して良いよ」ニコッ
フリーズ「す……」
ペンギン「な……」
デスストローク「は……?」
カルナ「む……」
アルジュナ「なんだ、この力は……」
ドゥームズデイ「……」ジリッ
スーパーマン「安心して。世界は僕が守る」グッ
ドッッッッガァァァァァァァァァ!!!
617 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:38:09.23 ID:69VCOY9o0
「マシュッ! 宝具発動、衝撃波から全員をガードしろ!」
「はい!!」ギュォォォォォォオオッ!!!
衝撃波「「「」」」ゴォォォォオォッ!!!
マシュ「う、ううぅぅう!?」ビリビリビリビリビリッ
バットマン「エジソン! エレナ! 何処だ!!」ダダッ
ペンギン「てめえっ、バットマン!?」ビクゥッ
バットマン「コブルポット!?」
フリーズ「……お前まで来たのか、バットマン」
バットマン「ヴィクター……それに、そこに居るのは」
デスストローク「……フン、何か言いたそうだな」
バットマン「……スレイド、何故ここに」
デスストローク「下らんな。俺の願いは世界無しでは成就せん、そういう事だ」
バットマン「……」
618 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:38:35.47 ID:69VCOY9o0
スーパーマン「フンッ!」ドゴォオォ!!
ドゥームズデイ「!!」ガシィッ、ドッゴォ!!
スーパーマン「うっぐわ!?」ヒュオンッ、ゴシャァッ!!
バットマン「……詳しい話はあとだ! マシュ、ガードを解除してスーパーマンのサポートに! ビリー、ジェロニモ、ラーマ、シータ! 行けるか!」
ラーマ「ああ!」ザッ
シータ「いけます!」スッ
ビリー「オッケー!」チャキッ
ジェロニモ「行くとしよう!」ザザッ
ナイチンゲール「アナタを治療します」ガシッ
デスストローク「……恐ろしい話だな」
619 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:39:07.08 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「■■■■■■■■■■■■■■!!!」ゴォォォォォッ!!!
ビリー「ハッハー、耳元で大砲鳴らされたみたいだ! ビリビリ来るね!」
ジェロニモ「油断するなよ! ラーマ、いけるか!?」
ラーマ「無論だ! 行くぞ、クラークに後れを取るな!!」ダダッ
シータ「はいっ!!」シュパパパッ
ジェロニモ「よし! ……大地の精霊よ、この地を作りし息吹よ……!!」ググググッ
ジェロニモ(二度と誰にも汚させまい。二度と誰にも壊させまい。この地を。悠久の命根付くこの大陸を!!)
ジェロニモ「今ひと時、我に力を貸し与えたまえ!!! 『大地を創りし者』(ツァゴ・デジ・ナレヤ)!!」
ビリー「……えっと、何も起きないんだけど」
ジェロニモ「……」
―――ァァァォォォォォオオ……
ビリー「え?」
……ッ、ルドッ、ドドッ、ドドッ、ドドッ!!
大狼「グルルルァ!!」ドドッ、ドドッ、ドドッ!!
ビリー「えぇ!?」
ジェロニモ「さあ行くぞ! 恐れはいまや無用と化した!!」
ビリー「ハハ、ムチャクチャだなぁ!」
大狼「グルアァァァオオオオオオ!!!」ゴォォォオッ
620 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:39:35.76 ID:69VCOY9o0
ラーマ「せいっ!」ズバァッ
ドゥームズデイ「っ!」ヨロッ
ラーマ「やはり通用する! シータ!」
シータ「はい!」シュパパパッ
ドゥームズデイ「……!!」ドシュシュゥッ、グラリ
大狼「ガァルッ!!」ガブゥ
ドゥームズデイ「■■■■……」ガシッ、グォンッ
大狼「グラッ……」ドッシャァァァ……
ラーマ「ぬわあっ!?」ドッシャァァァ!!
シータ「ラーマ様!?」ギョッ
621 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:40:03.05 ID:69VCOY9o0
マシュ「たああっ!」ドシュゥッ
ドゥームズデイ「……」ガシィッ、ドゴォ!!
マシュ「っきゃぁ……」ドガァァァァ!!
ガシッ!!
マシュ「……って、あれ?」ピタッ
フィン「無事、でしたか?」キラリ
マシュ「あ、ど、どうも……」ペコリ
フィン「ふっ、気にする事はない。そも、花を守ろうとするのは自然な行いですから!」キラリ
マシュ「は、はあ……」
フリーズ「フィン! 悪い癖が出かかっているぞ、今は我慢するんだ!」
フィン「これは手厳しい! ではお嬢さん、後ほど!」ダッ
マシュ「は、はあ……じゃなくて、私も戦います!!」ガシャリ
622 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:40:30.06 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「■■■■■■■!!」
大狼「グルルルル……」ゴロリ、ムクッ
ラーマ「ぜえ、はあ、狼の下敷きで死ぬかと思った……」ムクリ
シータ「ご、ご無事ですか?」
ラーマ「うむ、余は平気だ!」チャキリ
ビリー「弾丸は弾かれるけど、弾丸の威力で相手の身体に圧力がかけられるね。よーし、これなら戦いようはある……!」
ジェロニモ「……よし、私も準備が整った。いざ、精霊と舞うとしようか」フーッ
地面「」ドゴォンッ
スーパーマン「おおおおおおおぉぉぉおぉぉ!!」ドッゴォォォォォォ!!!
ドゥームズデイ「■■■■■■■……!!!」ドッシャシャシャシャシャ……
623 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:41:06.57 ID:69VCOY9o0
ヒュォンッ
ドガァァァァァ!!
ドゴシャァァァァァ!!
ナイチンゲール「……」カチャカチャ、クルクル
デスストローク「……」
ナイチンゲール「……心変わりをしたものですね」カチャカチャ
デスストローク「……黙って仕事をしろ。治りゃあ戦える」
ナイチンゲール「アナタの身体の治癒力はけた外れに高い。軽い処置で完治までいくでしょう」
デスストローク「なら行くぞ」ムクリ
ナイチンゲール「……ですが、アナタの根本の病気までは治せません」
デスストローク「……」ピタッ
624 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:41:34.82 ID:69VCOY9o0
ナイチンゲール「アナタは病気です。根本の部分で、生への意味を見出せていない」
デスストローク「……」
ナイチンゲール「アナタは、死にたいと思っているのですね。自分に裁きが下される事を望んでいる」
デスストローク「ハッ、治療の次はメンタリストの真似事か? 当ててやろう、看護師。お前も病気だ。不治の病だ」
ナイチンゲール「……」
デスストローク「……お互い、絶対に手に入らないものを手に入れようと必死になっているんだろう。なら、お互い口出しは無しだ」
ナイチンゲール「……良いでしょう」
デスストローク「話の分かる女だ」
ナイチンゲール「私の事を怒っている、と言いましたね」
デスストローク「……」
ナイチンゲール「自分を棚上げするのは良くない事です」
デスストローク「ハン!」
625 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:42:16.75 ID:69VCOY9o0
スーパーマン「ぐっ、ふう……」ツー……ポタ、ポタ
スーパーマン(これは、ちょっとキツイかもしれないな。ブルースが心配するわけだ)ドサリ
ガシッ
バットマン「クラーク! 無事か!」グイッ
スーパーマン「あ、あぁ、大丈夫……というか、キミはここに居ない方が良いぞ!? 戦いの衝撃波で死んでしまう!!」ギョッ
バットマン「仲間が命を懸けているんだ、クラーク。それに私はスーツで守られている、しばらくは死なずに済むさ。さあ、手を掴め」スッ
スーパーマン「な……」
スーパーマン(何処からツッコめばいいんだ!? キミってそんなキャラじゃなかったよな、とか、しばらくは死なずに済むなんて、確証の無い事を……)
スーパーマン「……ぷっ」
バットマン「……??」
スーパーマン「は、ははははは!! ははは、は、いたたたた、傷が……!」
バットマン「こ、この大事な時に何を笑って……キミを時折本当に図りかねるぞ、クラーク」ガシッ、グイッ
スーパーマン「ははははは……あぁ、すまない。ありがとう、ブルース」ムクリ
バットマン「無事か。この程度で音を上げるキミではないな?」
スーパーマン「勿論だ。キミが立つなら、僕も立つよ」
バットマン「なら、私ももう少し踏ん張るとしよう」ニヤリ
スーパーマン「ふふ、任せろ!」ニッ
626 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:42:46.31 ID:69VCOY9o0
マシュ「たああっ!!」ゴォッ!!
ラーマ「でやああっ!!」ズバァッ!!
ドゥームズデイ「……!!」ズシャシャシャァッ
シータ「そこっ!!」シュパパパパッ
ビリー「くたばれ!!」タァンタァン、タァン!!
大狼「グルォァアアウッ!!!」ドシィッ!!
ジェロニモ「せやっ!!」シュババッ!!
ドゥームズデイ「■■■■■■……!!!」ドシ、ドシィ、グラァ……
フィン「これが最後の、魔力だ……!!」ギュィィィィィィイイイッ!!
フィン「『無敗の紫靫草』(マク・ア・ルイン)!!」ズバシャァァァァァァァァ!!!
高圧水流「」ピシァァァァァアアアアア!!!
ドゥームズデイ「!!」バッ、ドシャシャシャシャ、ズシィ
627 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:43:13.06 ID:69VCOY9o0
カルナ「……いけるか」ゴゴゴゴゥ……
アルジュナ「いける」バヂヂヂヂヂヂヂィ……
カルナ「コブルポット。いけるぞ」ゴゥゥ……
ペンギン「よし、やっとだ! テメェら全員、そのデカブツの動きをできるだけ長く止めろ!! デカいのを撃つぞ!!」
フィン「フリーズ殿!!」シュウシュウシュウ……
フリーズ「フィン!!」
フィン「私の最後の魔力です! どうか有効に!!」シュゥゥゥゥゥ……
フリーズ「……!!」ガシャリ
フリーズ(フィン・マックール。愛と武勇に生きた騎士。私はお前を忘れないだろう……!)キュイィィィィィィ!!
フリーズ「怪物め……!」
フリーズ「動くなァァァ!!(Freeeeeeeeeeeeeze!)」ギュオォオォォォォオオオオオォォォ!!!
628 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:43:47.95 ID:69VCOY9o0
ドゥームズデイ「!!」バキバキバキィィィィ……ン
スーパーマン「うおおおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!!」ガシッ、グググググ……
ドゥームズデイ「……!!」グググググ……
スーパーマン「僕なら大丈夫だ! その『デカいの』を撃ってくれ! 早く!!」グググググ……
カルナ「行くぞ、アルジュナ」フワリ
アルジュナ「……ああ」スッ
629 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:44:17.08 ID:69VCOY9o0
アルジュナは弓を構え、電撃迸る矢を弦へ番えた。そうして、空中、燃える太陽じみて力を発するカルナへと狙いを定める。
アルジュナは生前、卑怯な方法でカルナの命を奪った。めぐり合わせとはいえ、神々の思し召しとはいえ、それは卑怯であり、アルジュナの心に深い傷を残した。
そして今、アルジュナはまたしてもカルナを殺そうとしている。だが、彼の矢じりが震える事は無かった。
(ならば、それが結果ならば、立ち向かうほかあるまい。それが取り返しのつかぬ一線であり、消せぬ罪であるというのなら……)
「己を受け入れろ」
アルジュナは目を見開き、空中に浮かぶカルナを見た。太陽のような存在は、燃えながら、微笑みながら、あの時のようにアルジュナを見ていた。
「己を受け入れろ。英雄よ」
「……全く、貴様は度し難いほどに憎たらしい奴だ」
アルジュナは思わず歪んだ笑みを浮かべ……そして、全身全霊を込めた一矢を、太陽を射落とす最高の一矢を放った。
それは雷めいて空を翔け、過たずカルナの胸を刺し貫いた。カルナはそれを受け入れるかのように両手を広げ……そして、燃える炎の中に飲まれて行った。
アルジュナはもはや全魔力を込めた一矢により存在を保てず、光とともに消えて行く。カルナもまた、その一撃を受け、炎の塊となりながら燃え尽きて行く。
だが空中の炎塊は消えない。それどころか、あたりに雷を撒き散らしながら、もっと大きくなってゆく。まるで本物の太陽じみて、大きく、強く、そして深く。
太陽は『射落とされた』。標的めがけ、その強大な力の塊はゆっくりと落ちて行く。ドゥームズ・デイへと。
630 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:44:43.41 ID:69VCOY9o0
「うぅぅぅぅぅぅうおおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」
スーパーマンは吼えながら、ドゥームズデイを拘束する力を強める。だがドゥームズデイも必死である。己を阻む氷塊と格闘しながら、スーパーマンを押しのけようと力を込める。
その間にも、ジリジリと太陽が迫る。ドゥームズデイはとうとう氷塊を破壊し、スーパーマンを叩き伏せようと拳を振り上げる。
だが、そこへ、宝具を解放したマシュが突っ込んだ。全身を光の防護で覆い、ドゥームズデイの片手を塞ぐべく決死の突進を行う。
ドゥームズデイは煩わしげに片手で払おうとする。そこへ、ラーマが剣を振り抜き、ジェロニモと大狼が加勢する。三人と一匹でようやく一つの腕が止まりかける。
太陽が迫り、ドゥームズデイの背中が焦げ付き始める。破滅が、近い。
「■■■■■■■!!」
しかし、ドゥームズデイは目を光らせ、全エネルギーで拘束に対抗する。マシュ達が圧され、スーパーマンですらあまりの力に目を見開く。
そこへ、ビリーが銃を連射し、ラーマの剣を、ジェロニモのナイフを、マシュの盾を後押しし始める。
「■■■■■■■……」
そんな努力をあざ笑うかのように、ドゥームズデイの両目が激しく発光を始める。だが、
「撃て! 目だ!」
バットマンの声が響くと同時に、シータの矢が、ペンギンの弾丸が、それぞれドゥームズデイの両目に命中し、閉じさせてレーザーを封じ込めた。
ドゥームズデイは今の戦況を、こうなった理由を、己の慢心を探ろうとした。だがその時すでに、彼の背中を太陽が呑み込んだ。
「やった……」
一瞬の気のゆるみ。そこを突かれ、まずラーマが弾き飛ばされた。
「ラーマさッ」
「■■■■■■■!!!」
「キャインッ!?」
そして、マシュ、ジェロニモ、大狼が吹き飛ばされる。
「なんて化け物だ……!!」
スーパーマンは肌を焼かれながら、その怪物を見上げた。背にプラズマ太陽を背負い、全身を燃やしながら、それでも敵意と憎悪を止めぬ怪物を。
「なすすべはないのか……」
バットマンですら絶望しかけた、その時。遠くで発砲音が響いた。
631 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:45:34.83 ID:69VCOY9o0
『その発砲』の直前、デッドショットは最適な着弾ポイントを探す必要があった。その一発は最高の一発でなくてはならず、そして世界を救う一発でなくてはならないからだ。
(おいおいおい、頼むぞ。悪党ですら世界を救う気になってんだ、ヒーローが負けてんじゃねえ)
刻一刻と悪化してゆく状況を俯瞰しながら、デッドショットはスナイパーライフルを組み立てる。そして、作業を終え、スコープを覗き込み、そして、……そして一瞬、祈るように目を閉じる。彼の娘を想う。
(すまねえ)
デッドショット。死の射撃。だが彼は、フロイド・ロートンでもある。だからこそその瞬間、彼は謝罪する。そうして、付け加えるように思考する。
(……おい、世界最高の暗殺者。同業者なら、ちったあ根性見せろよ……!)
直後に、『それ』は撃ちだされた。
――全員が、その発砲音を聞き、意識を一瞬そちらへ向け、何が射出されたのかを見た。
発射されたのは、緑に光る槍だった。バットマンは察する。アレはクリプトナイト製の槍であると。
戦場へと走るデスストロークは、苦笑いの後に唇を引き結ぶ。アレは『自分宛て』だ。
槍は正確にデスストロークの頭上へと飛来した。死の傭兵は走りながら跳躍し、それを掴み、破滅へと飛び掛かった。
そして、クリプトナイトの槍を、ドゥームズデイの胸へと突き刺した。
「悪党の力も必要だろう」
「……」
スーパーマンは驚きに目を開く。ドゥームズデイは吐血する。
「■■、■■■■■■■!!」
「ぐ、ううぅ!!」
ドゥームズデイが苦痛に怯む。一方、スーパーマンも無事ではない。クリプトナイトはただその存在だけで彼らに悪影響をおよぼすのだ。
両者の力が減じ、均衡は破られないかに思われた。しかし、スーパーマンの背後から、マシュが突撃した。マシュの光の防護の内側から、ジェロニモが、ビリーが、ラーマが、シータが、バットマンが突撃した。それが違いだった。
ドゥームズデイはもはや抵抗する力もなく、よろめき、プラズマ太陽の中へと後退って行く。デスストロークは緑の槍を突き刺したまま、踏ん張ってドゥームズデイを押し込んで行く。
「スレイド! 戻れ!」
「断る」
素っ気なく言い放ち、デスストロークはクリプトナイトの槍と共に太陽の中へ沈んで行く。ドゥームズデイは苦悶し、地獄から這い出ようともがく。しかし槍が、それを許さない。
「念のためだ。化け物と死ぬのは、化け物の宿命だな」
ひとりごち、デスストロークは更に踏み込む。彼は全身が焼かれるのを感じながら、一瞬だけ、家族の幻影を見た。
(これがお前の怒りか)
誰に向けた懺悔だっただろうか。スレイド・ウィルソンはようやく心からの笑みを漏らし、……直後に、太陽ごと、二人の化け物は消滅した。
632 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:46:19.32 ID:69VCOY9o0
聖杯「」カラン……
バットマン「……やっ、たのか」フー、フー
スーパーマン「ふう、ちょっと、きつい相手だったな」ドサリ
マシュ「聖杯、確認。回収します」ゼエゼエ
フリーズ「……終わったか」シュウシュウシュウ……
ペンギン「カハハ、俺のおかげだ。知ってたか?」
フリーズ「置物ペンギンめ。手柄を誇張する事にだけは長けているな」シュウシュウシュウ……
ペンギン「フン、ここにはナマイキな野郎しか居ねえな……」シュウシュウシュウ……
ペンギン「……あー、なんだ? 俺の身体はどうなってる……」シュウウウゥゥゥゥゥゥ……
フリーズ「……成程、そうなるのか」シュゥゥゥゥゥ……
633 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:46:48.51 ID:69VCOY9o0
ビリー「ふう、ようやく終わりかぁ。次はもっと気ままに遊んで襲って、って感じにやりたいなあ」シュウシュウシュウ……
ジェロニモ「私の故郷でそれは許さないぞ、ビリー」シュウシュウシュウ……
ビリー「ちぇー、冗談だよ。半分はね。……ブルース、一緒に戦えて良かった。また何処かで」シュウウウゥゥゥゥゥゥ……
バットマン「……ああ、また同じ側でな」
ジェロニモ「ふふ、私もまたキミ達と出会えるだろうかな。精霊の導きは気まぐれだ」シュウシュウシュウ……
バットマン「……旅を続けていれば、また必ず会う日が来る」
ジェロニモ「ああ、その答えは気に入った。今度使わせてもらうよ、ははは……」シュウゥゥゥゥゥ……
634 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:47:15.32 ID:69VCOY9o0
ラーマ「……ふむ」シュウシュウシュウ……
シータ「あ……」シュウシュウシュウ……
ラーマ「……そう悲しそうな顔をするな、シータ。こうして一度、我らは出会った。ならば、二度目は遠くない」
シータ「……はい……」
ラーマ「……次に会ったなら、今度はもっとゆっくりしよう。二人で茶を飲み、甘味を楽しみ、心行くまで共に語らおう。お前のために歌を作るのも良い。きっと、そうしよう」
シータ「!! ……か、必ずですよ?」シュウゥゥゥゥゥ……
ラーマ「ああ……きっとだ」シュウゥゥゥゥゥ……
635 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:47:42.04 ID:69VCOY9o0
ナイチンゲール「ご苦労さまでした」スタスタ
バットマン「世話になったな、フローレンス」シュウシュウシュウ……
マシュ「私達はあまり長く、この世界に留まれません。もう、行かねば……」シュウシュウシュウ……
ナイチンゲール「……ええ、そうなのでしょう。ですが、これだけは。まず、毎回の外出が終わり、室内へ戻った時は手洗い・うがいを忘れず。室内にこもりがちな作業の時は換気を。何かものを食べる時は、手を洗うように。殺菌に余念なく、傷口を洗うのは迅速に」
バットマン「あ、ああ、……うむ……」
マシュ「そ、そうします……」
ナイチンゲール「……それから、決して死なない事。良いですね」
バットマン「……」
ナイチンゲール「良いですね?」ガシッ
バットマン「……約束する」グッ
ナイチンゲール「ならばよいでしょう」パッ
636 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:48:11.51 ID:69VCOY9o0
スーパーマン「あはは、なんだか言いたい事はだいたい言われてしまったな……なあ、ブルース、キミはリーダーに向いてないと言ってたかな?」
バットマン「ああ」
スーパーマン「……ふふ、キミに鏡を見せてやりたいよ」
マシュ「(深い頷き)」
バットマン「……どういう、」
スーパーマン「おや! そろそろ時間切れか、全く思うようにならないな!」
バットマン「……」シュウシュウシュウ……
スーパーマン「……バットマン、正義はひとつじゃない。キミになら、出来るよ」
バットマン「……分かっている」シュウゥゥゥゥゥ……
スーパーマン「まあ、だろうね。……彼の事、よろしくたのむよ」
マシュ「あっ、は、はい! 任せて下さい!! あとよろしければ、盾の裏側にサインを……」シュウゥゥゥゥゥ……
637 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:48:39.87 ID:69VCOY9o0
スーパーマン「……やれやれ。一仕事終わったな」ググッ
ナイチンゲール「動かないでください。治療を開始します」ガシッ
スーパーマン「え、本気か? もう戦わなくて良いのに」
ナイチンゲール「平和を楽しむ体を残さず、何のために戦うのですか」カチャカチャ
スーパーマン「……確かにね」ポリポリ
638 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:49:07.61 ID:69VCOY9o0
………………
デッドショット「……」ドサッ
デッドショット(どうだよ、エリザベート。あの世で見てやがったか、これを)シュウシュウシュウ……
ハートガチクチク アイアンメイデン……
デッドショット「……」チラ
子供の集団「」キスノアラシトシャレコムノ……
デッドショット「……ハッ」シュウゥゥゥゥゥ……
デッドショット(まあ、悪くなかったと言える出来だろ?)
639 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/05(日) 03:49:51.48 ID:69VCOY9o0
第五章
北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム
生存者 ブルース・ウェイン マシュ・キリエライト
死者 無し
640 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/05(日) 03:50:25.59 ID:69VCOY9o0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。
641 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage ]:2019/05/05(日) 08:36:50.94 ID:FaWDZooU0
乙
この世界のバットマンとスーパーマンの知名度の差...
まぁ確かにブルースは目立ちたがり屋では無いけどさ...
642 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/05(日) 09:01:31.22 ID:qME01EVA0
乙、メイヴ生き残ったのか
スーパーマンとバットマンはやってることが真逆だから仕方ないよね
これの亡きF先生のパロ地味に有名だよね
643 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/05(日) 15:02:20.02 ID:J+Wglt22o
恐怖を与えるためにはバットマンは噂話というか都市伝説のような存在であるべきだからな
644 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/05(日) 15:36:46.37 ID:ZXUX/1bAO
ジャスティスリーグで勲章もらった時思い切り姿出してなかったか?
645 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:33:47.01 ID:blXc9I6X0
………………
ピピピ!! ピピピ!!
ブルース「……」ムクリ
ブルース「……」チラ
時計『06:00』ピピピ!! ピピピ!!
ブルース「……フー」ググッ、ムクリ
ドア「」コンコン
ブルース「入って良いぞ」
「失礼します」スタスタ
ドア「」ウィーン
マシュ「おはようございます、マスター」
ブルース「ああ、おはよう」スクッ
646 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:34:16.80 ID:blXc9I6X0
………………
レオナルド「……」チュィィィィィィィィ……
電灯「」チカチカ、パッ
レオナルド「……ふー。よしよし、これでC区画の電力は復旧したね」
マシュ「おはようございます、ダ・ヴィンチちゃん!」
レオナルド「おや、おはよう。二人とも朝早いね」
ブルース「ああ、おはよう。カルデアの復旧作業の進捗はどうだ?」
レオナルド「7割ってところかなぁ。ベインのヤツ、何処を破壊すれば効率的かよく把握してたらしい」
ブルース「……しかし、襲撃直後よりはかなりマシになったな。復旧、残るはあと1区画のみか」
レオナルド「もうすぐ終わるよ、大丈夫。そういえば、二人とも今日は休息日だったかな?」
マシュ「はいっ!」ニコニコ
レオナルド「ふふ、楽しむと良い。大事なのはメリハリだ、ちゃんと休んでね」
ブルース「ああ、ありがとう」
647 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:34:44.59 ID:blXc9I6X0
マシュ「どうしましょうか、マスター!」ニコニコ
ブルース「私は図書館で過ごす。ではな」スタスタ
マシュ「えっ」ガァン
ブルース「……どうした?」クル
マシュ「いっ、いっしょ……」
ブルース「……イッショ?」
ドクター「やあブルースくん、マシュ! 廊下の真ん中で向かい合ってどうしたの?」スタスタ
ブルース「……??」
マシュ「……イッショ……」
ドクター「……ホントにどうしたの?」
648 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:35:11.62 ID:blXc9I6X0
………………
職員C「それはブルースさん、気持ちを汲まなきゃダメッスよ」
職員B「そうですよー。言葉に出さなくても分からなきゃ」
職員A「それが信頼関係ってものでしょう」
ブルース「……そうなのか」
ドクター「まあ、マシュも苦労するよね……」
マシュ「……」モジモジ
ブルース「……悪かった、傷付ける意図は無かったんだ」
職員達(((だから厄介なんだよ!)))
ブルース「今日は何がしたい、マシュ。お前に付き合おう」
マシュ「え、えっと、マスターがしたい事が良いです……」モジ
ブルース「……」
ブルース(……マシュが休む事が出来て、なおかつ私のやりたい事だと……?)ジッ
ドクター「そ、そんな真剣に考えこむとこなの?」
ブルース「……ドクターならどうする」
ドクター「え? ええっと、そうだな……」
649 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:35:40.77 ID:blXc9I6X0
………………
〜レクリエーションスペース〜
テレビ「」グワハハハハ、カンネンセイ!!
マシュ「映画を観るのは初めてです!」キラキラ
ブルース「初めて?」
マシュ「はいっ、これみたいな長編の放送プログラムの事ですよね!」
ブルース「まあ……間違いではない。ポップコーンが余っているぞ、食べるといい」ガサ
マシュ「ありがとうございます!」パァァァァ
………………
テレビ「」ガッズィーラ……
マシュ「こ、怖い怪獣ですね……」ビクビク
ブルース「そうだな。放射線を浴びたからといって、イグアナがああなるとは考えられんが」
マシュ「でもこんなに強くて脚が速いんですよ!? もし本当にこんなのが出たらどうすれば……」
ブルース(……ディックと映画を観た時の事を思い出すな……)
ブルース「……確かに、対処は困難を極めるだろうな」
マシュ「ですよね!?」
650 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:36:10.31 ID:blXc9I6X0
テレビ「」バーラムユー バーラムユー
マシュ「うぅっ、子豚さんの想いが……」
ブルース「豚が喋る世界か……」
マシュ「動物さんは皆お互いに語り掛けているのかもしれませんね……人間に聞こえていないだけで」
ブルース「それは動物学上の観点から……いや、ゴホン、そうかもしれないな」
マシュ「可愛いです……」
ブルース(……明日の朝食がベーコンなのは黙っておこう)
………………
テレビ「」ヤツニハ「ミャク」ガナイトイエ!!
マシュ「スパイってかっこいいですよね……」
ブルース「スパイか……私も何度か相手にした事があるが、連中は手強いんだ」
マシュ「ああいうお洒落さには憧れます……」
ブルース「何事にもああいった余裕は必要だな」
………………
テレビ「」ヒトノホンシツハ、コウドウデキマル
マシュ「……」
ブルース「……」
マシュ「……この人、マスターに似てますよね?」
ブルース「……何の話だ」
………………
テレビ「」クルー、キットクルー
マシュ「……」ビクビク
ブルース「……マシュ、あまり腕にしがみつくのは」
テレビ「」キャァァァァァァァァ!!
マシュ「きゃあああああああ!!!」グググググググ
ブルース「マシュ、落ち着け! マシュ!!」グググググググ
ドクター「おーい、晩御飯だから呼びに……って、ちょっと!? マシュ、いくらブルースが鈍いからって殺すのは……ちょっと!!」
651 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:36:38.76 ID:blXc9I6X0
………………
〜食堂〜
所長「遅かったわね」
ブルース「すまない」
所長「別に、良いけど。休めたかしら?」
マシュ「はいっ、しっかり休みました!」
所長「なら良いわ。今日も全員揃ったわね?」
職員A「はい」
職員B「居ます」
職員C「ウッス!」
ドクター「揃いましたね」
レオナルド「居るよ〜」
所長「では、今日もご飯を食べられる事に感謝して。頂きましょう」
652 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:37:09.00 ID:blXc9I6X0
カチャカチャ、カチャカチャ
職員A「久々の牛肉ですね」
所長「ええ。味わって食べなさい」
レオナルド「うまく再現出来てるか不安だけど、どうだい?」
職員B「とっても美味しいです!」モグモグ
レオナルド「ははは、良かった!」
職員C「うめえ……うめえ」ガツガツ
ドクター「のどに詰まらせるぞぅ、水は十分かい?」
653 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:37:37.50 ID:blXc9I6X0
マシュ「美味しいですね、マスター」
ブルース「ああ、とても良い味だ。……今日はゆっくり休めたか、マシュ」
マシュ「はいっ、楽しい休日で……した……?」
ブルース「……? どうした、ま……」
マシュ「……」ドサッ
ブルース「!? マシュ!?」
ドクター「どうした!?」
レオナルド「何があった、ブルース」
ブルース「分からない……マシュ、聞こえるか!? マシュ!?」ユサユサ
マシュ「……」グタッ
所長「っ、ロマニ! 早く治療室へ! 所員達は担架を用意しなさい! 急いで!」
職員A「は、はい!」
ブルース「マシュ……マシュ! マシュ!!」
マシュ「……」
654 :
◆GmHi5G5d.E
[saga ]:2019/05/06(月) 08:38:05.37 ID:blXc9I6X0
第六章
神聖円卓領域 キャメロット
655 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/06(月) 08:39:32.32 ID:blXc9I6X0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。
メイヴは消滅させたつもりだったのですが、私の描写力不足が原因で誤解を与えているかもしれませんね……
656 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/07(火) 02:38:12.20 ID:C2GCXxpco
いや、普通判るから気にすんな
見落としにまで一々気を使ってたら精神力持たないぞ
657 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/07(火) 20:26:28.26 ID:Hk2TEWCYO
あー……そういえば6章はその前にマシュの真実が語られるシーンがあったな……
658 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/08(水) 15:28:30.92 ID:+ROhUZ4A0
おつおつ!
5章最後、敵味方入り交じっての総力戦ってやっぱりシビれる……みんなよかった(コナミ
マシュと映画見るブルースさんにほのぼのしてたら急展開に震えてるぜ
659 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/05/10(金) 20:12:36.79 ID:l64krlNl0
多分、ジョーカーにまた人間から怪物に戻されるんだろうなぁ
660 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:39:39.61 ID:RF0g7SSA0
………………
扉「」ガチャリ
ドクター「……」スタ、スタ
ブルース「……ドクター」
ドクター「ブルースくん」
ブルース「マシュは。無事なのか」
ドクター「ああ、今は安定してる。……少し、彼女の事について話そう。皆も知る必要があるから、管制室で」
ブルース「……」
661 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:40:06.64 ID:RF0g7SSA0
………………
職員A「ドクター、マシュは大丈夫なんですか?」
職員B「マシュちゃん、もう目は覚めましたか?」
職員C「アイツ、無理してたんじゃないんですか!?」
所長「落ち着きなさい、全員よ。……ロマニ、こうして集めたって事は、大事な話ね?」
ドクター「……はい、かなり大事な話です。今後のレイシフトの運用にも関わって来る」
レオナルド「なら、皆座って。落ち着かなきゃ、話も聞けないよ」
ブルース「……」
662 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:40:36.23 ID:RF0g7SSA0
ドクター「今回のマシュの急な昏倒の原因について、先程ようやく解明が済んだ」
ブルース「……」
ドクター「……彼女の魔力回路を精査した結果、マシュの肉体は『サーヴァント化』による急激な消耗の下にあったようだ。彼女、大分無理をして戦ってたみたいだ」
ブルース「……」
所長「……」
ドクター「恐らくそれは、寿命を削って戦うのと同じ意味だ。……彼女は文字通り、命を燃料のように扱って戦っていたのだと思う。今回の昏倒は、その反動だ」
レオナルド「ふぅーむ……」
ドクター「こんなところだよ。彼女には、この理由はまだ知らせていない。……そこで重要になってくるのが、」
ブルース「マシュを、次の特異点攻略に参加させるか否か。という事だな」
ドクター「……うん、そうなる」
663 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:41:03.02 ID:RF0g7SSA0
職員A「現実的ではないですね。次の特異点で昏倒が起きたなら、それは致命的な隙になる」
職員B「で、でも、マシュちゃんはずっとブルースさんの隣で戦って来て……」
職員A「感情で世界の命運を左右するわけにはいかない……お前はどう思う?」
職員C「お、俺? 俺は、その……分からない」
所長「……」
ドクター「僕も、正直、あの状態のマシュを特異点攻略に向かわせるのは賛成しかねる。彼女の身体はとうに限界と言って差し支えない」
レオナルド「しかし、今や彼女はカルデアに欠かせない戦力の一人だ。カルデアの復旧もまだ十全じゃない。新たなサーヴァント召喚も出来ないような状態で、ブルース一人を特異点に向かわせるのこそ現実的ではない」
ブルース「では、カルデアの復旧を完璧にしてから新たなサーヴァントを呼べばいい。私も、今のマシュを出撃させるのには反対だ」
所長「……けど、いつ敵の人理焼却準備が整ってしまうか分からない現状、素早い解決が求められるわ。それに、カルデアごと虚数空間を漂ってるこの状態も、正直言って望ましくない。長期の漂流が、人体にいかなる影響を及ぼすかも分からないのに」
664 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:41:29.53 ID:RF0g7SSA0
ブルース「では、彼女が死にかけているのをおしてでも、死地に向かわせるという事か」
所長「そうは言ってないわ……」
レオナルド「ブルース、冷静になってくれ。キミはそれが得意だったハズだ」
ブルース「私は冷静だ。いいか、現実的でないというのなら、いつ倒れるか分からない仲間を柱にして戦う事ほど現実的でない策はない」
所長「でも、このままじゃどうにもならないわよ」
ブルース「必要ならば、私一人で行こう」
レオナルド「それこそ現実的ではない。やはり冷静ではないね」
ブルース「ならどうしろというんだ。マシュを無理に連れ出し、死んでゆくのを後ろから見ていろとでも……!」
扉「」ガタッ
職員達「「「!!」」」
ドクター「え!?」クルッ
ブルース「!」バッ
マシュ「……」ヨロ、ヨロ……
ブルース「……マシュ」
665 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:41:58.72 ID:RF0g7SSA0
マシュ「ます、たー……」ヨロヨロ
ブルース「マシュ、何故……」タタッ、ガシッ
マシュ「マスター……」ヒシッ
ブルース「……ドクター、これは……」
ドクター「ま、マシュ、キミは安静にしてなきゃ駄目なのに……麻酔も打ったし、眠ったとばかり……」
マシュ「マスター、私、戦えます。歩いてます、今も、歩けます」ヨロヨロ
ブルース「マシュ、しかし……」
マシュ「戦えます、大丈夫です、お願いします……置いて行かないでください、戦えます……」
ブルース「……」
レオナルド「……マシュ、とにかくキミは休まなくちゃ。不安にさせてすまないね、きっとキミの意見も反映させるよ」ポン
マシュ「……」グタッ
ブルース「……」
ドクター「……気絶、した?」
レオナルド「元々、麻酔で意識が朦朧としてるのに歩いてきたんだ。無茶をするよ……」
666 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:42:41.69 ID:RF0g7SSA0
所長「……皆、今日はあまり冷静ではないわね。時間も遅いし、休んで明日これを協議するものとします。良いわね」
職員A「……はい」
職員B「はい……」
職員C「……分かりました」
ドクター「……」
レオナルド「……」
ブルース「……」
667 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:43:09.38 ID:RF0g7SSA0
レオナルド「……マシュを運んで来るよ。今日はキミもゆっくり休んでくれ、ブルース」
ブルース「……ああ、すまない」
レオナルド「謝る事じゃないさ。……また明日にね」スタスタ
ブルース「……」
668 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:43:41.58 ID:RF0g7SSA0
………………
時計「」カチ、カチ、カチ、カチ
ブルース「……」
時計「」カチ、カチ、カチ、カチ
ブルース(……マシュをもっとよく観察していれば、気付けただろう。当然彼女が無茶をしているという事に)
ブルース(デスストローク。クー・フーリン。ドゥームズデイ。無茶をしない訳がない。分かっていたハズだ)
ブルース(……マスターだと? 笑わせる、その資格すらない……)
時計「」カチ、カチ、カチ、カチ
ブルース(結局、こうなる。ディックも、ジェイソンも、ティムも……壊れる寸前まで負担をかけて、ようやく気付くんだ。マシュも)
ブルース「……ふー……」
ブルース(言われた通り、冷静ではない。少し頭を冷やしに行こう)スクッ
669 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:44:13.31 ID:RF0g7SSA0
………………
ブルース「……」スタスタ
ブルース(……)
(((マスター、私、戦えます)))
ブルース「……」
ブルース(……信じるとは、どういう事だったか……)
670 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:44:40.75 ID:RF0g7SSA0
自動ドア「」ウィーン
ブルース「……」スタスタ
職員C「……あ」
ブルース「む」
職員C「ど、どうも」
ブルース「……すまない、邪魔だったか」
職員C「いえ、そんな事はないッス……ですよ」
ブルース「……そうか」
671 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:45:22.17 ID:RF0g7SSA0
ブルース「……」
職員C「……」
ブルース「…………」
職員C「…………」
ブルース「………………」
職員C「……ぶ、ブルースさんも、眠れなかったんスか?」
ブルース「……そうだな。キミも?」
職員C「俺、その……はい、俺もッス」
ブルース「……そうか」
職員C「……」
672 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:45:52.58 ID:RF0g7SSA0
(((お願いします……置いて行かないでください)))
職員C「……あんなの見ちゃったら、眠れないッスよ……」
ブルース「……そうだな」
職員C「……皆、自分の意見っていうか、自分の根っこを持ってるし。しっかりしてるし、俺なんかが此処に居て良いのかって、時々思っちゃいます」
ブルース「いつも助かってる。キミ達のサポート無しでは、ここまで来れていないだろう」
職員C「……そう、ッスかね」
ブルース「そうだ」
職員C「……」
673 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:46:21.35 ID:RF0g7SSA0
職員C「……俺、」
ブルース「……」
職員C「俺、実は、世界が炎に包まれた最初の頃は、諦めてたんです。もう世界は焼かれたのに、どうして一生懸命にならなきゃダメなんだ。どうせ死ぬんだから、諦めりゃあ良いのにって」
ブルース「……」
職員C「でも……アナタが来た。黒いスーツ着て、死ぬなんて恐怖、まるでないみたいにコフィンに入って行った。俺、理解出来なかったッス。今でも出来てないんスよ」
ブルース「……」
職員C「……でも、最近、ようやく分かって来たんです。マシュもブルースさんも、きっと、未来とか、相棒とかを信じてるから強いんだって」
ブルース「……どうかな」
職員C「俺はそう思います。……だから、マシュの想いの強さが、俺は怖い。死なんて怖がらないほどの強さは、きっと、諸刃の剣です」
674 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:46:55.57 ID:RF0g7SSA0
ブルース「……キミはよく見ているな」
職員C「ははは……観測してたら、自然と分かって来ます。俺、シバのレンズ係だし」
ブルース「そう、だな。マシュはきっと、死も恐れていない」
職員C「……」
ブルース「……だが、世界には、死ぬより恐ろしい事など山ほどある」
職員C「想像つかないっすよ」
ブルース「たとえばそれは、手が届かない恐怖だ。何か行動を起こせるハズの場面で、手を伸ばす事すら出来ないのは、想像を絶する苦痛だ」
ブルース(ああ、そうか。マシュ、私とお前はよく似ているな)
ブルース「……きっと、分かる時が来る」
職員C「……」
675 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:47:36.35 ID:RF0g7SSA0
職員C「時々、ブルースさんが分からなくなるッス」
ブルース「私も、自分が分からなくなる。……話し相手になってくれてありがとう、私は休むよ」
職員C「おやすみなさいッス」
ブルース「ああ、おやすみ」スタスタ
職員C「……死ぬより怖い事、か」
職員C「……」
職員C「……分かんねえよ……」
676 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:48:15.16 ID:RF0g7SSA0
ブルース「……」スタスタ
ブルース(理性は、やめた方が良いと叫んでいる。分かっている。マシュを連れて行けば、彼女への負担は計り知れない。元々短い寿命を、薪のように使っているんだ)
ブルース(……しかし、感情は彼女を連れて行くことを支持している。全く鈍ったものだ)フー……
ブルース「……これを望んだのは、お前自身だ。マシュ・キリエライト」
ブルース(やりようは、いくらでもあるさ。覚悟するんだな)
677 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:48:58.61 ID:RF0g7SSA0
………………
マシュ「……」パチリ
時計『07:00』ピピピ! ピピピ!
マシュ「……ここ、は……」ムクリ
扉「」コン、コン
「入っていいか」
マシュ「マスター? ど、どうぞ……」ムクリ
ガチャリ
ブルース「目覚めたか。調子はどうだ」
マシュ「だ、大丈夫です。あの、何がどうなっているのか……昨日の記憶が無くて」
ブルース「これから説明する。理解しろ」
678 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:49:42.55 ID:RF0g7SSA0
………………
ブルース「……という訳だ。今、お前を特異点に連れて行くか行かないかで意見が割れている」
マシュ「そ、そんな……私は大丈夫です!」
ブルース「だが、現実的な話、お前は無茶をしていた。それに気付けなかった私にも責任はあるし、報告を怠ったお前にも責任はある」
マシュ「……」
ブルース「……お前は、戦いたいか。マシュ」
マシュ「私……私、戦いたいです。だって、そうじゃなきゃマスターを守れない……」
ブルース「なら立て。シミュレーションルームへ行くぞ」
マシュ「えっ」
679 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:50:34.48 ID:RF0g7SSA0
ブルース「つまるところ、無理をせざるをえないお前の実力の不足が原因とも言える。まだトレーニングの期間はある」
マシュ「つ、つまり?」スクッ
ブルース「お前を鍛え上げる。無理をする余地も残らないほどに、極限の戦士になってもらう」
マシュ「きょ、極限の……」
ブルース「それはもはや膂力だけの話にはとどまらない。……お前には私を超えてもらう。そうでなければ、次の特異点攻略には連れて行けない」
マシュ「……!!」
ブルース「やるのか。やらないのか。どちらだ、マシュ・キリエライト」
マシュ「やります! やらせてください!」
ブルース「ならば、来い。泣き言は一切受け付けないぞ」
680 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:51:22.62 ID:RF0g7SSA0
………………
ブルース「……」ピッピッピッ
コンピューター『カルデアサポートシステム、起動。対象の魔力回路を確認中』シュォォォォォォォ……
ピーンポーンパーンポーン
館内放送『おぉーい、ブルースかい? ちょっと、そのサポート機能は未調整なんだけど』
ブルース「もしもし、レオナルド。シミュレータールーム内ならなんとかいけないか。マシュを鍛えたい、私もサーヴァント並の身体能力にならねば」ピッピッ
レオナルド『うーん……わかった、短波に変換してやってみよう。ダメ元だし、身体への負担は半端じゃない。もし成功しても馴染むまで苦痛だろうけど、ホントに本気?』
ブルース「私は常に本気だ」
レオナルド『まあ、知ってたよ……オッケー、調整完了。サポート魔力を回すよ』ピピピッ
シュォォォォォォォ……
ブルース「ぐっ……!!」ミキミキミキミキ……
レオナルド『キミの身体機能も観測を開始した。……うーん、結構負担かかってるな』
ブルース「……いや、この程度の痛みならばたいした事はない。このまま訓練に移行する」ミキミキミキ……
レオナルド『本気? ……まあ、こっちはデータがとれるから良いんだけど』
681 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:51:49.94 ID:RF0g7SSA0
ブルース「マシュ、構えろ。この状態の、フー、私を打ち倒してみせろ……」ミキミキミキ……
マシュ「……」ガシャリ
ブルース「良いか、手加減は無用だ。私はお前を『殺すつもり』で攻撃する。お前も、『殺すつもり』で来い」
マシュ「それは……」
ブルース「私は敵だ。使える手を全て使い、私を倒しに来い」
マシュ「……」
ブルース「……行くぞ」バッ
682 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:52:18.77 ID:RF0g7SSA0
………………
マシュ「か、はっ……」ボロッ
ブルース「立て。今すぐに」ポキポキ
マシュ「う、うぅ……!!」グググッ、スク
ブルース「来い。いいか、敵がお前を待つと思うな」
マシュ「う……」ガシャリ
ブルース「……」ゲシィッ
盾「」ガシャァァァァァ……
マシュ「あっ……!」
ブルース「甘ったれるな。お前の得意な武器をみすみす使わせると思うか」ガシッ、グイッ
監視カメラ「」ジジジジ……
683 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:53:02.69 ID:RF0g7SSA0
カメラ映像『』ジジジジ……
職員A「……やりすぎですよ、アレは」
職員B「マシュちゃんが、死んじゃう……」
職員C「……」
ドクター「……ブルースくんへのサポート魔力は安定した」ポチポチ
レオナルド「うーん……」
所長「少なくとも、今の私達には何を言う権利もないわ。実際にレイシフトを行うのは、彼ら自身よ。彼らの中で決着をつけてもらうしかない」
カメラ映像『』ジジジジ……
684 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:53:37.88 ID:RF0g7SSA0
マシュ「う、うぅっ……」フラフラ
ブルース「そんな実力で私を倒すつもりか? 笑わせる」ジリジリ
マシュ「スーッ……」ヨロ
マシュ(命を……いのちを、燃やして……でも、相手は、守るべきマスター……)
ブルース「無茶な力は使えないだろう。それも計算づくだ。お前の手の内は把握している」ガシッ、ドスッ
マシュ「がっ……」ビチャチャッ
ブルース「……素の力で、今の私を超えてみせろ。そうでなくては、任せられない」
マシュ「う、うああああ!!」ブオンッ
ブルース「それが攻撃のつもりか」パシッ
685 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:54:15.17 ID:RF0g7SSA0
ブルース「……ナイチンゲール、デスストローク、メイヴ、クー・フーリン」
マシュ「はあっ、はあっ……」ヨロッ
ブルース「何故彼らが強かったか、分かるか」
マシュ「……」ジリッ
ブルース「彼らには狂気が宿っていた。狂気的な信念があった。お前には何がある、マシュ。お前は何を柱とする」
マシュ「私は……」
ブルース「かつてお前は、私の戦う理由を聞いたな。私の目には土砂降りの路地裏が未だに焼き付いている。あの日、両親を撃ち殺した弾丸が私の原動力だ」
マシュ「私は……!!」
ブルース「お前は何故立つ。死地を前にし、命すらも省みないその力の源は何だ」
マシュ「あなたを、守りたい!!」
ブルース「なら証明してみせろ!! お前はその力を持ち、私と共に来る事が出来ると!!」
686 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:55:00.65 ID:RF0g7SSA0
ブルース(殺意をもって敵と対する。これまで教えて来なかった戦闘方法だ。私が、良しとしなかった戦闘方法だ)
ブルース(……だが、それをしなければ、もはやこの先の特異点は超えられまい。……これしかできない私を許してくれ、マシュ)
ブルース(お前に殺意を教える事を、許してくれ)
ブルース「立て。お前が遠慮するならば、私はお前を殺す」ザシ
マシュ「……!」ヒュー、フー
マシュ(マスターは本気だ。当然、いつだって本気だった)
マシュ(なら、私は? 覚悟、できてる?)
ブルース「……マシュ」
マシュ「……」
ブルース「お前を、信じているぞ」バッ
マシュ「……!!」ググッ
687 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:56:29.38 ID:RF0g7SSA0
ブルースは瞬時に身を沈め、相手の心臓目掛けて掌底を繰り出した。彼は矜持を曲げ、信念を曲げ、殺意のこもった一撃を放つ。それは一重に、相棒を信じているからである。
マシュもまた、それを汲み取る。強くならねばならない。手を伸ばさねば。デミ・サーヴァントとして生まれた意味を、守りたい人を守るという自由を……。
では、マシュの原動力とは何だ。
彼女のマスターは、それを恐怖だと語った。
かつてアメリカで共に戦った看護師は、地獄を作らないためと言った。
ロンドンで共闘した剣士は、恐怖をもひねりつぶす怒りを体現していた。
共に航海した女海賊は、エゴを謳歌し、一瞬を全力で生きる事。
とある国の皇帝は、凍てつく永遠を否定し、皇帝たる者となるため。
遠い国の聖女は、人の美しい面を肯定するために。
では、マシュの力は何だ。彼女が盾を持ったのは何ゆえだ。
マシュの全身の細胞が沸き立ち、時間が引き伸ばされる。ブルースの掌底が極度にゆっくりとマシュの心臓を目掛ける。
マシュは一瞬、恐ろしい想像に身を浸した。彼女の盾の後ろが害され、なすすべもなく蹂躙されてゆく様を思い描いた。
直後、彼女は目を見開き、決死の思いでブルースの腕を弾いた。ブルースは、身体強化の魔術をかけられてなお追い切れないマシュの動きに、目を見開いた。
マシュは身体を捻り、地面に突き刺すように足を振り下ろす。そして、腰の捻りを解放し、巨人の鉄槌じみた盾の一撃を繰り出した。
(『本物』だ)
その一撃を目前にし、ブルースはぞっと背筋を粟立たせる。彼の相棒は『殺意』を覚えた。その最初の一撃が、彼を目掛けている。
「くっ」
ブルースは両腕を開き、広い面積で衝撃を受ける。そして吹き飛ばされ、壁に叩き付けられるようにして全身で衝撃を流した。
(やはり彼女は天才だ。手加減せず、良かったと言うべきか)
ブルースは膝をつき、口の端の血を拭って目の前の少女を見る。彼女が素の力で自分を超える日は遠くない。いや、もうじき超えられる。
だが、今は。
「……やはり、詰めが甘い」
ブルースは手の中の起爆スイッチを押した。直後、マシュの盾に塗布された爆破ジェルが爆発し、彼女は弾き飛ばされた。
688 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:57:04.26 ID:RF0g7SSA0
マシュ「あぐっ」ドシャッ
ドクター『……マシュ・キリエライト、気絶』
ブルース「サポートの魔力を打ち切れ。ここまでだ」ハァ、ハァ
レオナルド『……了解』ピッピッ
ブルース「……」シュオォォォォォ……
マシュ「……」グッタリ
ブルース「……」
ブルース(……)クル、スタスタ
689 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:57:33.40 ID:RF0g7SSA0
………………
所長「……」
職員A「……」
職員B「……」
職員C「……」
レオナルド「……」
ドクター「……」
ブルース「……」
AI『特異点、特定完了。特異点、特定完了。所長、職員は結果の確認をしてください』
ブルース「……」
690 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:58:00.63 ID:RF0g7SSA0
ガガガガ……ピラッ
所長「……今回のレイシフト先を観測、シバのレンズも角度調整が完了しました。この観測結果によると、予想される脅威度はEXクラス。前回のアメリカ大陸は、AA+でした」
ブルース「……」
所長「非常に高濃度かつ多彩な性質の魔力が入り乱れており、今回もレイシフト後の環境については予断を許さないでしょう」
レオナルド「ブルースくんのスーツなら、調整すれば極限環境にも対応できるようになる。だが、問題は」
ドクター「……マシュ」
ブルース「……」
691 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:58:37.30 ID:RF0g7SSA0
ブルース「……私個人の見解を述べるとするなら」
ドクター「……」
レオナルド「……」
所長「……」
ブルース「彼女は、やはり連れて行かない方が良いだろう。今回のレイシフト先で彼女が昏倒すれば、今度こそマシュは死ぬ。実力もまだ十分とは言えない。未熟な部分がある」
職員A「……」
職員B「……」
職員C「……」
692 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:59:04.60 ID:RF0g7SSA0
ブルース「だが、戦力的な観点から言うなら、彼女を連れて行くべきだと私は思う」
所長「その理由は?」
ブルース「天秤にかけ続けてきた。彼女を連れて行くリスクと、連れて行かないリスクを。彼女はこれまで何度も死ぬような目に遭いながら、切り抜けてきている」
ブルース「……私も、戦えないワケではない。彼女が数瞬戦線を離脱したところで、それをカバーする程度の働きは出来る」
ドクター「……しかし、それは……」
レオナルド「んっん〜〜、ゴホン! ちょっとイイかな、私すっごく良い案思いついちゃったんだけど!!」
所長「あの、レオナルド……いますごく真面目な話をしてるから、そういうのは」
レオナルド「いやいやいや! なにさ、皆して辛気臭い顔してるけど、一人レイシフトできそうな人の事を忘れてませんか!?」
ドクター「?? どういう事だい?」
レオナルド「いやまあ、かくいう私もさっきまで忘れてたんだけどね!? どうよブルース、ちょっと聞いてみないか?」
ブルース「……話してみてくれ」
693 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 22:59:44.19 ID:RF0g7SSA0
………………
マシュ「……」パチリ
マシュ(ここ、は……)キョロキョロ
マシュ(ああ、私、マスターと戦って……負けたんでした……)
扉「」コン、コン
マシュ「あっ……は、はい」
「マシュ、私だ。入るぞ」
マシュ「はい、どうぞ」
ガチャ
ブルース「……おはよう。体は大丈夫か」
マシュ「はい……身体は、大丈夫です」
ブルース「……」
694 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:00:12.50 ID:RF0g7SSA0
ブルース「……見事な一撃だった」
マシュ「ですが、負けました」
ブルース「そう結論を急ぐことはない……少なくとも、今回はサポートが付いてくれる事になった」
マシュ「サポ……え? でも、召喚に必要な電力が足りないって……」
ブルース「その件は、解決した。……マシュ、恐らく私は、とても困難な道をお前に歩ませることになる」
マシュ「……」
ブルース「……私と共に来てくれるか。特異点を、ともに解決してくれるか」
マシュ「っ、はい!!!」
695 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:00:39.67 ID:RF0g7SSA0
ブルース「なら、今日はもう休んでくれ。急ぐようだが、明日にはレイシフトだ。協議も済んでいる」
マシュ「分かりました!」
ブルース「ああ。……おやすみ」スタスタ
マシュ「……あの!」
ブルース「……どうした?」クル
マシュ「……絶対に、失望させません。信頼に応えてみせます」
ブルース「……疑っていないさ、マシュ」フッ
696 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:01:23.28 ID:RF0g7SSA0
………………
ブルース「……」シュドッ、シュドドッ
サンドバッグ「」グラァ、グラグラ……
木人「」ガラララララ……
ブルース「……」シュタタタ、ドシュシュ、バシ、ドゴォッ
ブルース(マシュだけには頼れない。私が強くならねばならない)
ブルース(彼女に負担を強いて来たのは確かだ。強くあらねば)
ブルース「……」シュバッ、ゴギィ、バッシィ
ブルース(……少し前の俺なら、絶対にマシュを連れて行くことは無かっただろう。認めねばならない。俺は、揺らいでいる)
ブルース(問題は、何処までその揺らぎを認める事が出来るのか。信じるという意味と、依存するという意味は違う)
(((まともなフリをするなよ、バッツ! 俺達は化け物だ! ウフフフフッ、ゲームに他人を巻き込んで殺すのは良くない事だって習わなかったのか?)))
ブルース(……何故やつを思い出す)ドゴォッ
サンドバッグ「」バッギャァァァァ、ドシャシャシャァ……
ブルース「……」
カラン……カラン……
697 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:01:53.42 ID:RF0g7SSA0
………………
所長「今回のレイシフト先は、13世紀後半のエルサレムです」
レオナルド「うわぁ、また宗教的に面倒な時期だし、場所だし……」
ブルース(エルサレム……また、ゲーティアと縁深い場所だな)
所長「ええ、とても厄介な時期よ。恐らく、第八、第九十字軍が遠征をおこなっていた年代の周辺です。戦火には十分に注意し、できるだけ介入を避ける事」
ブルース「了解した」
マシュ「はい!」
698 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:02:21.84 ID:RF0g7SSA0
所長「レイシフト要員、分かったわね? では……」
職員C「待ってください。少し、知らせておきたい情報が」
所長「何?」
職員C「えっと、先程シバのレンズの焦点がかなり精確に絞られた時があって、少しだけ地表を見る事ができたのですが……観測結果によると、本来村や町があった場所には、大きなクレーターじみたものが出来ているようです」
ブルース「クレーター?」
職員C「はい、直径は……えっと、観測した限りでは、どれも5キロ四方ほどの」
マシュ「5キロ……」
ブルース「とてつもなく巨大な破壊エネルギーだな……」
職員C「何が待ち受けているかはまだ分かりませんが、この情報は耳に入れておくべきかと思いました。以上です」
所長「……分かりました。ブルース、マシュ、良いわね? いつでも防御に回れるよう、今回も気を付けておく事」
マシュ「はい!」
ブルース「了解した」
699 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:02:55.87 ID:RF0g7SSA0
所長「では、レイシフト班への説明を終わります。9時までにコフィンへのスタンバイを終える事、良いわね! 次、サポート班!! ……」
ブルース「……初のレイシフトか?」
レオナルド「ああ、ワクワクしちゃうね! 未知を体験するのって快感だよ!」
マシュ「今回はよろしくお願いします、ダ・ヴィンチちゃん!」
レオナルド「こちらこそ! 色々と世話になるし、世話をする事にもなるだろうね!」
ブルース「頼りにしているぞ、メカニック」
レオナルド「私にお任せさ!」ドンッ
700 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:03:23.09 ID:RF0g7SSA0
ブルース「……」ガチャガチャ、カチャリ
ブルース「……」カチャリ、ガシッ、スルッ
マスク「」
ブルース「……」スッ
バットマン「……では、あちらで会おう」
マシュ「はい。失礼しますね、マスター」ペコリ
レオナルド「うん、じゃああっちでね!」スタスタ
701 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:04:11.05 ID:RF0g7SSA0
………………
ドクター「時刻、08:55。ブルース・ウェイン、マシュ・キリエライト、レオナルド・ダ・ヴィンチの三名がコフィンにスタンバイ完了」
職員A「存在証明式、スタートしました! 肉体の証明は順調です!」
職員B「電子機器類には異常なし! 電力量もクリア、ハッキングも無し!」
職員C「シバ、時代特定良好! レンズの角度固定!」
所長「では、エルサレムへのレイシフト、カウントダウンを開始しなさい!」
職員達「「「了解、カウントダウン開始!!」」」
ドクター(……よしよしよし。マシュのバイタルは正常、ブルースもレオナルドもオッケーだ……)
ドクター(隣にレオナルドが居ないの、なんだか違和感あるなぁ……不安だ……)
ドクター(……エルサレム、かぁ……)
ドクター「……」ソワソワソワ
所長「そわそわしない!!」
ドクター「はいぃっ!!」ビクゥッ
702 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:04:43.29 ID:RF0g7SSA0
………………
バットマン「……」
ドクター『レイシフト10秒前! 9! 8! 7! 6! ……』
バットマン(……マシュは、私が守らねば)
ドクター『3! 2! 1!』
バットマン「……」グッ
『0』
703 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:05:10.54 ID:RF0g7SSA0
………………
ギュォォォォォォオオォッ
ドサササァッ!!!
マシュ「くっ……」ムクリ
レオナルド「いたたた、あんなに乱暴に落とされるとはね。これは改良の余地ありかも……落ちた先が砂漠で助かったよ」ムクッ
マシュ「段々慣れてきました……マスター? 何処ですか?」キョロキョロ
???「俺の上から退きな……おい、お嬢ちゃん」
マシュ「え? は、はわ!? ごめんなさい!?」バッ
???「ったく、いきなり上から降ってくるとはな。洒落た登場だ、ブルースを思い出すぜ」
マシュ「ごめんなさい、人が居るとは……って、え? マスターを、ご存知なんですか?」
???「あ? お前、奴を知ってんのか?」
704 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/05/10(金) 23:05:38.21 ID:RF0g7SSA0
レオナルド「おや、早速味方を発見かい? こんな時にブルースは何処へ行ったんだか」
マシュ「えっと、ブルースさんは私の……相棒というか、何と言うか」
???「……ハン、アイツはまた相棒を変えやがったのか。節操のない男だぜ」
マシュ「そ、そういうアナタは一体」
???「俺? 俺は、そうだな……」
レッドフード「ひとまずは、レッドフードとでも呼びな」
705 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/05/10(金) 23:10:30.53 ID:RF0g7SSA0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。
今回のアンチヒーローの参考資料です
レッドフード
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%89
706 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/11(土) 07:44:32.17 ID:yRVfvDI9o
バット次郎くんではないか!
707 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/11(土) 09:06:05.07 ID:4XK+QwuPO
ディックに恥ずかしい手紙送ったジェイソンじゃないか
708 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/11(土) 17:07:36.39 ID:aIjI05SA0
レッドフードいつ和解したんだっけ
709 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/11(土) 18:03:21.22 ID:36sP4kC+O
レッドフード&アウトローズの未邦訳話で和解したはず
710 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/14(火) 15:43:42.85 ID:Gk2GWiJA0
おっつ!!!
バットマンはいったいどこに……
711 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/06/24(月) 23:42:18.38 ID:VAzsXjno0
不穏だなぁ
712 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/06/26(水) 01:54:06.85 ID:mDkARzjl0
えたった?
713 :
sage
:2019/07/04(木) 23:17:21.91 ID:Ag8sWtj70
えたりましたお疲れ様でした
714 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/16(火) 02:51:28.56 ID:tq2R/duL0
おつかれっした
715 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/05(月) 10:55:07.33 ID:pqYaz+eQo
1スレ目から振り替えると、メタルが出たりホワイトナイトが出たり、いろんな事があったんだなぁ
いつかダークナイツが出てきそう
716 :
◆GmHi5G5d.E
[sage saga]:2019/08/08(木) 16:06:18.85 ID:yywmM9fPO
更新が遅れて申し訳ありません。決して忘れているというわけではなく、今更ながら「キャラクターを私物化している」という悩みにぶち当たり、どうにかして解釈の補正を行おうと四苦八苦しています。双方のファンから不快に思っているという意見が出ているのを見ましたので、どうにか直したいです。もしお待ちくださっている方が居るなら申し訳ないです。
717 :
◆GmHi5G5d.E
[sage saga]:2019/08/08(木) 16:29:38.36 ID:yywmM9fPO
すみません、気が変わりました。気にしないでいきます
718 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/08(木) 17:05:57.41 ID:mPKWwLQk0
そこは2次創作なんで好きにやってよろしいかと
719 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/08(木) 22:55:52.53 ID:XLwZRfXbo
真面目な話、既存のストーリーを元にしたオリジナル展開をやってる時点で、読者からの解釈違いを受けるのは避けようがないからね……
そこは好き勝手していいとまではいかなくとも、自分の納得出来る範囲でやればそれでいいと思う
720 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/08(木) 23:44:40.41 ID:VKDXRkAmo
あくまで二次創作な上に5chのSS板は自分の好きなものを好きなだけ書ける場所だからね
金とってるわけでも無いし嫌なら見るなで良いんですよ
721 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/08(木) 23:56:34.16 ID:tyAX0xPAo
バットマンしか知らんからfgoの元の話とどれぐらい差異があるかわかんねぇべ
722 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/09(金) 01:31:04.27 ID:9c3xRElD0
不快に思ってる人間もいるかもしれんけど
楽しみに待っている人間もいることを忘れんでくれ
723 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/11(日) 14:38:39.77 ID:Qipw4GTm0
待ってるやつはここにもいるゾ〜
俺はこのシリーズ好きだから続けてくれたら嬉しいなって
無論イッチの負担にならない範囲でね
724 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:47:33.19 ID:5un44TpH0
………………
バットマン「……っぐ、む……」ムクリ
バットマン(……ここは。マシュは? レオナルドは……?)キョロ
バットマン(……まさか、はぐれてしまったのか。マシュを必ず守ると誓っておきながら、なんとも間の悪い)
バットマン「ともかく、ドクターに連絡を……」スッ
潰れた通信端末「」バチチチィッ、キュゥーン……
バットマン「……不幸は重なるとは言うが、全く」
725 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:48:24.64 ID:5un44TpH0
バットマン(さて、困ったことになった。ここには私ひとり、他に頼れるサーヴァントはおらず、カルデア頼りだった探知器の類も使えない)
バットマン(……だが、諦めるには少し早い。周囲を観察し、状況を把握して最善の動きを取るとしよう)
バットマン「……」グルリ
荒野「」ヒュオォォォォォォオォォ……
バットマン(なんとも味気ない灰色の荒野だ。詩人がこれを見れば、『地獄』と形容するのだろう。……しかし、ここまでの荒れ地は……)
バットマン(雲の動きや温度から判断して、今は夏頃か。太陽は……南中する少し前。この風の吹き方は、近くに山でもあるな)
バットマン(……そして何より異常なのが、『アレ』だ)
726 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:49:09.32 ID:5un44TpH0
巨大な城「」ズォォォォォォォォォ……
バットマン(……距離感が狂いそうだ。あんなに巨大な城は、少し普通ではないな)
バットマン(明らかに、エルサレム史上に存在しないものだ。まさか私だけ、おかしな場所にレイシフトしたというワケでもないだろう)
バットマン「……さて、どうしたものかな」
バットマン(ここからの行動候補、その1。城へ向かう。……いや、これは却下だな。危険が大きすぎる)
バットマン(行動候補、その2。集落を探す。事情聴取が可能で、さらにはマシュたちと合流できる可能性もある。ふむ、これは考えておいて良いな)
バットマン(行動候補、その3。……ここはエルサレムに近い。なら、『例の場所』も近いということだ。少し寄ってみる、ということも可能だが……)
バットマン(……いいや、どちらにせよ『あの場所』には戦力が不十分なまま行きたくはない。ここは行動候補その2に従おう)
727 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:49:37.06 ID:5un44TpH0
バットマン「……」スタスタ
道「」
バットマン「……」スタスタ
バットマン(いかに荒野とはいえ、このように人の使っていた道の痕跡はある。辿っていれば、いつかは集落にたどり着くだろう)スタスタ
荒野「」ヒュオォォォォォォオォォォ……
バットマン「……」スタスタ……ピタッ
巨大なクレーター「」グオォォォォォォ……
バットマン「……」
728 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:50:12.01 ID:5un44TpH0
バットマン(……これはまた、巨大なクレーターだ。ちょうど集落がありそうだ、と思った箇所をえぐるようにできている)
バットマン(こうして見てみれば、この荒野にはクレーターだらけか。……どうにも、このクレーターは『集落があったであろう』場所への攻撃痕にしか見えないな)
バットマン(つまり、誰かがこの特異点の集落を破壊しているということか? 何故だ?)
バットマン(まさか、前回の特異点のような戦争狂が居るのか? ……いや、まさかな)
バットマン「……」フム
バットマン(しかし、参ったな。このままでは事情聴取もままならない)
ザシ、ザシ。ザシ、ザシ
バットマン「……誰だ」スッ
???「お待ちを。敵意はありません。ただ、話をしたいだけなのです」
バットマン「……」ジリッ
バットマン(目深にかぶったフード。ブロンドの髪。片腕は……義手か?)
バットマン「……何者だ」
???「我が名はルキウス。放浪の旅人」
バットマン(偽名だ。……だが、この男から殺気が感じられないのは事実)
729 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:50:39.17 ID:5un44TpH0
バットマン「……そうか、ルキウス。私はブルース・ウェインという」
ルキウス(?)「ブルース。質問をお許しいただけますか」
バットマン「質問はするといい。答えるとは限らないが」
ルキウス「……確かに、それもそうだ。いえ、その……この惨劇について、何かご存知ではないかと思ったのですが」チラ
クレーター「」グオォォォォォ……
バットマン「……残念だが、私も今ここに来たばかりだ。知っていることはあまりない」
ルキウス「そう、なのですね。時間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした。これで失礼を……」
ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ
鎧の騎士「」ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ
バットマン「……!!」ピリピリピリッ
バットマン(肌に感じるほどの殺気。……これは)
ルキウス「っ、ブルース、下がってください。危険です」バッ
バットマン「馬鹿を言うな、ルキウス。お前こそ下がっていろ」ババッ
730 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:51:06.05 ID:5un44TpH0
鎧の騎士A「」ガシャリ、ガシャリ……
鎧の騎士B「」ガシャ……
鎧の騎士C「」ガシャリ……
鎧の騎士D「」ガシャン、ギシィ……
バットマン「……囲まれたか」ジリッ
ルキウス「申し訳ありません、ブルース。悠長に会話していなければ、気付けたものを……」
バットマン「過去は過去だ。……ルキウス、腕に覚えはあるか」
ルキウス「多少は」
バットマン「なら、そちらの二人は頼めるな」
ルキウス「勿論。お任せを」
バットマン「では私はこちらの二人だ。いくぞ」バッ
731 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:51:35.91 ID:5un44TpH0
ルキウス「ハッ!!」シュバッ
鎧の騎士A「!」ガッギャァァァ!!
鎧の騎士B「!!」ブオンッ
ルキウス「セイッ!!」ガギャギャッ、ヒュヒュンッ
鎧の騎士B「!?」ギャリリィ、ヨロッ
ルキウス「そこ!!」バババババババッ
鎧の騎士B「」ゴシャアアアアアドシャシャシャシャ……
バットマン(見事な剣さばきだ。あれほどの使い手となると、何処かの騎士か)
鎧の騎士C「っ!!」ブウン!!
バットマン「フッ、」トトッ
鎧の騎士C「……!?」ヨロッ
バットマン「……フンッ!!」ギュゴォッ
鎧の騎士C「っ」ドゴシャァァァァ!!
鎧の騎士D「!!」ズオォッ
バットマン「遅い!!」バッ
マント「」グワアッ
鎧の騎士D「!?」グラッ
バットマン「シィッ……」シュド、ド、ド、ドドドドドドドドドドドドッ
鎧の騎士D「っ、……」ヨロ、ヨロ……
バットマン「……リアッ!」ドッゴォッ
鎧の騎士D「」ドシャァッ
732 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:52:06.29 ID:5un44TpH0
ルキウス「ふうっ」カチャリ
バットマン「……フゥー……」
ルキウス「驚きましたよ、ブルース。いえ、おこがましいと思われるかもしれませんが、まさかここまでお強いとは」
バットマン「お互い様だな。お前もすさまじい腕前じゃないか、一体どこの騎士なんだ?」
ルキウス「……それは、申し訳ありませんが、言えません」
バットマン「そうか。……なんにせよ、助かった。あの数相手に私ひとりは少しきつかっただろうからな」
ルキウス「ふふ、それは私もです。……私はもう行きますが、貴方の旅路が良いものでありますよう……」スタスタ
バットマン「……ああ。さらばだ」
バットマン(……謎多き騎士か。正体は一目瞭然のような気もするが、彼が露呈を望まないなら余計な口出しも不要だろう……)
バットマン(しかし、彼なら良い戦力になってくれると踏んだのだが。……彼には彼の目的がある以上、止めるわけにもいかないか)
733 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:52:34.24 ID:5un44TpH0
バットマン(しかし参った。集落が無いなら、私もどこか適当な場所を見繕って……)
……ぃ〜〜〜〜や〜〜〜〜……
バットマン「……」
???「いやぁぁーっ、何なのよこの化け物! だからこの国って好きじゃないのよ〜〜っ!!」タッタッタッ
目玉の化け物「」スイスイスイスイ
目玉の化け物2「」スイスイスイスイ
???「ぎもぢわるいいぃぃ……!!」タッタッタッタッ
バットマン「……」
バットマン(誰かは知らないが、助けないわけにもいかん)グッ、ダダッ
734 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:53:02.78 ID:5un44TpH0
………………
砂嵐「」ビュオォォォォォオォォォ……オォォォォ……
マシュ「な、なるほど……つまりマスターの相棒だった人なのですね?」スタスタ
レッドフード「ああ、そうさ。あっちの世界じゃ、そりゃあ仲の良い相棒だった」
レオナルド「うーん、なんだろうか。『仲の良い相棒だった』のところ、すっごい皮肉を感じたんだけど」
レッドフード「……へッ、どうだかな。アンタ、名前は?」
レオナルド「私かい? 私はレオナルド・ダ・ヴィンチ! あの天才さ、聞いたことない?」
レッドフード「まさか。聞いたことくらいあるさ、死刑囚をデッサンして有名になった趣味のいい画家崩れだろ?」
マシュ「あ、あはは……」
レオナルド「うーん、これはブルースに似た厄介コミュニケーション者と見た!」
レッドフード「悪いな、場を和ませようとした冗談ってヤツさ……」ククッ
735 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:53:30.04 ID:5un44TpH0
レッドフード「にしても、急に虚空から出てきたのには驚いたよ。あれがレイシフトってやつか?」
レオナルド「おや、詳しいね。そうとも、あれこそ我らがカルデアの誇る技術、レイシフト! 調整とかはかなり大変だけど、自分で体験してみると案外楽しいもんだね!」
マシュ「……マスターと連絡が取れないのが心配ですが、大丈夫なんでしょうか」
レッドフード「あいつは殺しても死ぬようなヤツじゃない。心配なんてするだけ無駄な男だ」
レオナルド「ふふ、その意見には同意しそうになっちゃうなあ。まあ、この砂嵐の中に出てこなかったのは逆に幸運とも言えるかも……」
砂嵐「」ビュオオォォォォォォォォォォォ……ォォォォォォオオオオオ……
レッドフード「……なあ、頼みがあるんだが。万が一連絡が取れても、俺のことはあいつに言わないでくれるか?」
マシュ「え? な、なぜでしょうか?」
レッドフード「……なあ、人には人の事情ってモンがあるんだ。あいつの相棒だったとはいえ、決して仲の良い時期ばっかりじゃなかった。……頼むよ、話すのは直接会ってからだ」
マシュ「え……えっと……」
レオナルド「まあまあマシュ、いいじゃないか。そもそも現状じゃ、ブルースと合流しなきゃ連絡の取りようもないんだし」
マシュ「……それもそうですね」コクリ
736 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:53:57.10 ID:5un44TpH0
砂嵐「」ビュオォォォォォォオオォォォ……
レオナルド「さて、しかしこの砂嵐にはまいったね。どうにかして抜けたいものだが」
レッドフード「参ってるのはこっちもさ。天才さんよ、秘密の道具でも発明してくれて構わないぜ?」
レオナルド「あはは、信頼してもらえるのは嬉しいけど、そもそも材料がないことにはね……っ、マシュ、レーダーに感あり。動体だ」
マシュ「え!? ……! き、聞こえます! 三時の方向から何か来ます!」ガシャリ
レッドフード「息をひそめろ。……おっと、こいつはさっそく狙ってたヤツが来たかもな……」カチャリ
737 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:54:26.53 ID:5un44TpH0
???「むー! むーーー!!」モゴモゴ
???2「ええい、暴れるな! 全くこの砂嵐、息が詰まるような敵意を持っている……!」タタタッ
???3「……百貌様、前方に何か!」タタッ
マシュ「ストップ! 待ってください、少し話を……」バッ
???2「!!」ババッ、シュババババッ
ナイフ「「「「」」」」ヒュオォォォォォッ
マシュ「なっ」
レッドフード「退きな」バッ、タタタタタタァン!!
ナイフ「「「「」」」」ギャリリリィ、カララララァン……
レオナルド「ワオ、銃使いだったのかキミ。いい腕してる」
レッドフード「大したモンだろ? まあバットマンは喜ばねえけどな」
マシュ「あ、ありがとうございます」
レッドフード「ひとつ貸しだ、嬢ちゃん。しゃきっと立て、殺気くらいは感じ取れるだろ」
マシュ「は、はい!」
部下「百貌様、ご無事ですか!?」
部下2「おのれ何奴!?」
百貌「……? 貴様……レッドフード?」
レッドフード「……」
738 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:55:01.61 ID:5un44TpH0
百貌「どういう事だ。ここで何をしている、レッドフード」
部下「……? れ、レッドフード様?」
部下2「なにゆえレッドフード様がここに?」
???「むー!! むーーー!!!」モゴモゴ
マシュ「え、え、えっ……ど、どういう事ですか? お知り合いですか?」
レッドフード「……あぁそう、そうだった、知り合いだ知り合い! 久しぶりだな、えぇっと……どの『ハサン』だったかな、お前は」
百貌「……いつもの冗談なのか、本気なのか、それとも……」チャキリ
レッドフード「おいおい、つれねえヤツだぜ。嬢ちゃんからも一言いってやってくれ……ああ、初対面だったか、お前ら」
マシュ「え、ええっと、……ど、どういったご関係です?」
レッドフード「仲間さ、分かるだろ。はは、城相手にレジスタンスやってたんだったか?」
レオナルド「ほう、城? というと、……なるほどね、砂嵐で視認しにくいが、向こうのアレか」
砂漠の向こうの城「」ズオォォォォォォ……
百貌「……貴様、本当にレッドフードか。だとすれば、牢の解放任務はどうした」ジリイ……
レッドフード「なんだ、知らないのか? 作戦の変更があったんだ。俺たちは今から聖都へ向かう」
百貌「何を馬鹿な……貴様、気でも狂ったのか?」
レッドフード「……ククククク、疑うのか?」カチャリ
マシュ「……?」ゾワリ
739 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:55:30.49 ID:5un44TpH0
マシュ「ま、待ってください、とにかく仲間だという事で良いのですね?」
レッドフード「そう言ってるだろ、なあ?」
百貌「……仲間ではない。単に利害の一致から行動を共にしていただけだ」
レッドフード「へッ、つれねえやつだ」
レオナルド「うーん、まあ即座に殺しあう関係ではないってだけで十分かな。色黒アサシンくん、少し質問良い?」
百貌「……待て。貴様、そこの娘」
マシュ「……え? あ、わ、私ですか!?」
百貌「その盾の紋様……貴様、さては『聖都』の」
???「ムグ……プハッ! スフィンクスよ、此処へ!」ジタバタ
部下「なっ、こ、コイツ……申し訳ありません百貌様! すぐに黙らせます!」
百貌「な、何をやっている! 愚か者、召喚を許してしまったのか!?」
???「さらにホルスの名において……むぐぅっ!?」
部下2「黙れ!」ガシッ
百貌「ちいっ、なんと面倒な……!! 全員散開! 各々目の届く距離から離れず、異変を感じたら即座に知らせろ!」
部下1〜20「「「はっ!!」」」ザザザザザァ
レッドフード「おいおい、間抜けな部下をずいぶんたくさん抱えてるな?」
百貌「黙れ貴様!」
マシュ「ど、どうしたら……」
レオナルド「マシュ、レッドフード、私のそばから離れないように。ミニレーダーを持ってきた、今はこっちのほうが視界より有能だ」スッ
740 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:55:57.49 ID:5un44TpH0
砂嵐「」ビュオォォォォォオオォォォォォオオオオオ!!!ビュゴゴゴオオオオオオオオオオオ!!!
部下4「くっ、こ、これでは視界も、聴覚も……!」ジリッ
部下5「い、いま何か動いたように……き、気のせいか」
百貌「くそっ、砂嵐がひどくなってゆく……貴様ら、これが終わったらゆっくりと話を聞かせてもらうぞ!」
レオナルド「それはどうも! 全く、こんな状況でもたくましいアサシンだね!」
レオナルド(全く状況は好ましくない。いや、最悪と言っていい。スフィンクスを、魔獣を相手にする、だって? それは幻獣の上位存在、竜種すら凌ぐ怪物だ。この人数でどうにかできるとは思えない……! 本来ならもっと装備を整えてから挑むべきなんだ)
レオナルド(……いいや、今は考えすぎるのは良くない。しっかりレーダーを確認して……)
マシュ「……!!」ピリピリピリッ
マシュ(殺気。来る)
マシュ「ダヴィンチちゃん!!!」
レオナルド「!? っ」
レーダー「」ポーン……ポーン……
レオナルド「ほんとに来た!? 二時の方向、そこのキミ気を付けて!!」
部下6「!?」バッ
741 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:56:29.02 ID:5un44TpH0
砂塵「」ドバッサァァァァァァァァァアアアア!!
スフィンクス「ゴグガアアアアアアアアアア!!!」ルドッ、ドゴォッ
部下6「うわああ!?」ドシャッ
マシュ「ッ退いて!!!」バッ、ガギャアアアアアア!!!
スフィンクス「グググググググ……!!」ギャリギャリギャリギャリ……
マシュ「うぐぐぐうううううう!!!!!」グググググググ……
部下6「な、な、貴様……」ワタワタ
レッドフード「ほお! 助けるのか!!」
レオナルド「感心してる場合じゃないよ、加勢加勢!!」
レッドフード「あ? ああ、もちろんだ。人助けはイイことだしな」カチャ、ダタタタタタタタタ……
スフィンクス「ゴグッ、ガァァァアアアアア!」ドシュシュシュシュシュッ、ヨロォ
マシュ「ったああああああ!!」グイッ、シュドッ
スフィンクス「ッギ……!!」ヨロッ、ジリィ……
マシュ「お、重い……!?」ビリビリ
スフィンクス「グガアアアッ!!!」ガオオッ
マシュ「きゃっ!?」バッ
レオナルド「おっとぉ!」ガギイィィィィィ!!!
742 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:56:57.78 ID:5un44TpH0
マシュ「あ、ありがとうございます、ダヴィンチちゃん!」
レオナルド「キミのサポートに入ったんだ、私だって戦えるさ! この万能の籠手でねっ!!」カチャッ、ブシューッ!!
籠手「」ガチャガチャァッ、ブシューゥゥゥゥ……!!!
スフィンクス「!? ッギアアァ!?」ジリィッ
マシュ「おお、かっこいい……!!」キラキラ
レッドフード「ほらよ!」タァン!!
スフィンクス「ギッ、ギアオオオオオオオ!!!」ダンッ!!
レッドフード「おっと、こりゃまずい」タタンッ、スルッ
マシュ「っ」
マシュ(レッドフードさん、かなり強い……! 通常時のジョーク多めの言動からは想像もできなかったけど、あの身のこなしは尋常じゃない!)
743 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:57:26.99 ID:5un44TpH0
百貌「そらっ!!」ヒュオンッ
ナイフ「「「「」」」」ヒュオオオオオッ
スフィンクス「っ……」グササササッ
百貌「何をぼさっとしている! 動け貴様ら!!」
部下3「あ、は、はい!!」チャキリ
部下2「無論!」チャキッ
スフィンクス「グギギ、ギ、ギギギィ……」グググググ……ダンッ
部下4「っぐっ」ドサッ
部下2「えっ?」
744 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:57:55.62 ID:5un44TpH0
マシュ「っ」
影「」ヒュンッ
部下7「ぐげっ」ドシャッ
部下8「あが……」ドッシャァ
百貌「! 全員下がれ、固まれ!! くそ、ここまで……っぐ!?」バッシィィィ、ズシャシャシャシャァ
部下9「百貌さm……うが!?」ドゴシャァ
マシュ「……!!」
マシュ(敵の動きがわかる。気が他に逸れたり、次にとびかかりやすかったりする対象を選別して、一番狩りやすい人から倒してるんだ)
レッドフード「おっと、コイツは面倒だな」チャキッ
レオナルド「いよいよスフィンクスも本気ってところか! 油断しないようにね!」ジリッ
???「……」モゴモゴ……ドヤァ
百貌「貴様、拘束されているくせにその得意満面の顔はなんだ!!」
レオナルド「ちょっと、漫才はあと!!」
マシュ「……」ジッ
マシュ(次はどう来る? 敵の考え。筋肉の動き。アレは疾風じゃない、スフィンクスだ。では次に来る場所は? ……違う、考えるべきなのはスフィンクスじゃない。視点を変えなきゃ)キョロッ
マシュ(味方を見なきゃ。あの人は注意散漫。だけどスフィンクスからは遠い)キョロッ
マシュ(あの人は警戒できてる。けど、砂嵐で視界が塞がれがち)キョロッ
マシュ(あの人は視野が狭まってる。肩に力が入りすぎなんだ)キョロッ
マシュ(考えて、マシュ。いま、一番狙われるのは誰?)キョロッ。キョロッ。キョロッ。キョロッ
マシュ(いま、一番、殺しやすいのは誰?)
レオナルド「まsy……!?」ゾワリ
百貌「……っ」ゾワアッ
レッドフード「……!!」ゾクゾク
745 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:58:25.03 ID:5un44TpH0
影「」ヒュンッ
部下18「えっ……」
マシュ「ったああああああああああああああああ!!!!」ババッ、ガッギャァアアアアァァァアアア!!!
スフィンクス「ゴアアアアアアアアオオオオオオオオ!!!」ギャリリリリリリリィ!!!
マシュ「捉、えた……」グググググッ
レオナルド「うっそ、はや……」
レッドフード「……イイじゃねえか」
百貌「なんたる……」
マシュ「ぐぅぅぅぅうう!!!!」
マシュ(一撃を。この重い魔獣にも通用するような、強い一撃を!!)ググゥッ!!
ドクンッ!!
マシュ「っそこ!!!」ギュドドドォッ!!!
スフィンクス「……、……、……」ヨロ、ヨロロッ
マシュ「ッハアーッ、ッハアーッ……」ジリ、ジリィ
マシュ(……だめ、また一瞬だけ命を使ってブーストしてしまった。こんなのじゃ、だめなのに……)ヨロ
スフィンクス「グル、ロアァ……」ヨロ、ドシャアッ
百貌「……修羅か……」ジリッ
???「……!」モゴモゴ……ピタァッ
746 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:58:53.63 ID:5un44TpH0
マシュ「はあっ……」スッ
レオナルド「す、すごいじゃないか、マシュ……」
レーダー「」ピピー!! ピピー!!
レオナルド「!? おっと、えっと、この反応は何だったかな……!?」
ドクター『もしもしレオナルド、聞こえるかい!? 聖杯反応がゆっくりとだが接近中だ、気を付けてくれ!』
レオナルド「おおっとマジ!? マシュ、レッドフードくん、百貌くん! ちょっと今いいかな……っていうか、この魔力反応ヤバいな……!! ちょちょ、その、説明の時間がないんだけど!」
マシュ「どうしたんですか、ダヴィンチちゃん!?」
レオナルド「聖杯持ちのサーヴァントだ! それも、素の魔力が規格外の怪物だよ!!」
レーダー「」ピピピピピピピ!! ピピピピピピピ!!
747 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:59:27.14 ID:5un44TpH0
レッドフード「へえ、そいつは……ああー、不味いか?」
レオナルド「不味いね! 正直言って魔獣なんてメじゃないよ!」
マシュ「どどど、どどっ、どうしましょうか」フラ
レオナルド「……! 百貌くん、部下を下がらせて! 撤退の準備を!」
百貌「ちっ……! 全員、この場から退くぞ!」
部下1「し、しかし、負傷者たちが……!」
百貌「速度は下がっても構わん、互いにカバーして退却するのだ!」
マシュ「どうしましょうか!?」
レオナルド「彼らが仲間なら致し方ない。砂嵐がひどいが、我々がしんがりを努めつつ、極力聖杯持ちとの接触を避けて……」
ザシ、ザシ。ザシ、ザシ。
砂嵐「」ビュオオオォォォォォォオオオォォォ……ピタッ
レッドフード「……おっ、砂嵐がやんでくれたぜ。ジャストタイミングだな」
レオナルド「……あ、あー、……」
マシュ「……う……」ゴクリ
レッドフード「……ああ、まあ、そんな都合の良い話はないだろうよ……」
夕陽「」ジリジリジリィ……
ザシ、ザシィ。ザシ、ザシィ。
「まさかファラオを出向かせるとはな。暗殺者風情が、誇ると良い」ザシ、ザシ。ザシ、ザシ
百貌「……オジマンディアス……!!」
オジマンディアス「身構えるな。余は戦いに来たのではない。ただ、我がピラミッドの内にあるべきものを、取り戻しに来ただけのこと」ザシィ……
748 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 01:59:59.01 ID:5un44TpH0
???「……」モゴモゴ……
オジマンディアス「そこに居たか、ニトクリスよ。いまその戒めを解いてやろう」スッ
百貌「させるな! 全員警戒を……」
???「ぷはあっ!!」ハラリ
百貌「な……」
オジマンディアス「『させるな』? 余になにをさせぬというのだ、影に生きる者よ。余は太陽だ。太陽の行いは当然、民を照らすかの如く絶対である」
百貌「くっ、て、撤退だ……!! ニトクリスは捨て置け! 全員撤退しろ!!」
部下1〜20「「「「はっ!!」」」」ザザザァッ
ニトクリス「も、申し訳ありません、ファラオ・オジマンディアス……」
オジマンディアス「頭を下げるな、ニトクリス。そも、このような事態は未然に防ぐのが余の役目。起きてしまったこと自体が不足なのだ」
マシュ「……」
レッドフード「ははは、こいつはまともじゃねえな。さっさと逃げるか?」
レオナルド「あ、ああ、何にせよ敵意はないようだ! 今の内!!」
マシュ「……はい!」ダッ
749 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:00:28.01 ID:5un44TpH0
百貌「くっ、貴様らが現れてから歯車が狂ったのだぞ! きちんと説明しろ!! なぜここに居る、レッドフード!?」ダダダダダ
レッドフード「おいおい、俺は知らねえよ。けど、『山の』から直接命令が下ったらしいぜ?」タタタタッ
百貌「な、しょ、初代様からの……!?」
マシュ「え、えっと、全然話が把握できないのですが!」タタタタタ
レオナルド「うーん、察するに……キミたちはあのファラオたちと敵対してるのかな?」
百貌「……ファラオだけではないがな。とにかく、レッドフード、詳しく聞かせろ。作戦は?」
750 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:00:56.29 ID:5un44TpH0
………………
オジマンディアス「……ふむ、しかし手ひどくやられたな。まさか我がスフィンクスがこうも痛めつけられるとは」
スフィンクス「……」ピクピク
ニトクリス「はい……恐ろしいほどの腕前でした。確かあの娘は、マシュと呼ばれていたようです」
オジマンディアス「ほう、マシュか! その名は知っている。ふむ、しかし……この弾丸は、なんだ?」
弾丸「「「」」」ポロポロ……ドロォ……
ニトクリス「……なんでしょうか。泥のように見えますが」
オジマンディアス「……まあ良い。玉座の間に戻るぞ、ニトクリス。そろそろ『首』も限界だ」ザッ、ザッ
ニトクリス「は、はっ! 重ね重ね、申し訳なく……」テテテッ
オジマンディアス「やめよ。ファラオは太陽の如く堂々としておればよいのだ。……無論、本当の太陽は余であるが」
オジマンディアス(……マシュか。その身にとりつく虫、厄介なものだ)
オジマンディアス(しかし、奴らがカルデアからの勢力なら……それなら、もう一人の黒猫の男はどこに居る?)
751 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:01:24.15 ID:5un44TpH0
………………
バットマン「……さて」
目玉の化け物「」チーン
目玉の化け物2「」ピクピク
袈裟の女性「はあ〜、助かっちゃった……こう、目はイイんだけど、このにょろにょろがダメなのよね。あ、助けてくれてありがと! 命の恩人だわっ!」
バットマン「いや、大したことではない。……それよりも、こんな場所でひとり、何をしている」
袈裟の女性「あ、そ、それはその……えっと、ほんとは一人じゃなくて、弟子が居たんだけど。話すと長くなるんだけど、いい?」
バットマン「……聞こう」
752 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:02:06.72 ID:5un44TpH0
………………
バットマン「……つまり、今の話を要約すると……お前は、あの『城』で賓客としてもてなされていた。それも約二か月」
女性「はい」
バットマン「だが、拘束された生活が嫌になったのと、この特異点の実態を探るために半ば無理やり抜け出してきた。これが一週間ほど前」
女性「その通りです」
バットマン「……その一週間の間に、放浪していたと。道中で弟子を取っていたものの、砂漠の砂嵐の中で怪物たちに襲われ、すぐに弟子ともはぐれた。そういう事か?」
女性「ぎゃてえ……だって、あんなにすごい砂嵐見たことなかったんだもの! 黄風大王だってあんなにひどい砂嵐を巻き起こさなかったし!」
バットマン「責めているわけではない……名前は?」
女性「あ、私? 私はね、玄奘三蔵っていうの! 今は仏典のオリジナルを持ち帰ろうと……」
バットマン「……玄奘三蔵? 『西遊記』の、三蔵法師か?」
三蔵「? ええ、そうよ? まあ、自分で『法師』なんて名乗っちゃうのはちょっとむずがゆいけど」
バットマン「……サーヴァントなのか?」
三蔵「……あぁ、そのこと。ええ、はい、確かに私は『召喚』されました。この地獄のような世界で目覚めたのは、半年ほど前よ」
バットマン「半年だと」
バットマン(半年も前だと……この特異点は、一体どこまで『進んで』しまっているんだ……)
753 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:02:38.24 ID:5un44TpH0
三蔵「アナタは? なんだか、その、個性的な恰好だけど」
バットマン「私はブルース。ブルース・ウェインだ」
三蔵「へえ、ブルース・ウェイン! 変な名前……あ、ごめんなさい! 別に馬鹿にするつもりじゃなくて……」
バットマン「分かっている。この辺りではなじみのない名前だろう」
三蔵「うんうん、そうそう、それだけだから! うんうん、アナタっていい人ね!」
バットマン「……それは分からないな」
三蔵「分かります。これでもそこそこ長く御仏に仕えてきた身なんだから、言葉を交わした人間の人となりなんて見えてきちゃうものなの」
バットマン「それは……厄介だな。生きにくい」
三蔵「だから宣言します! アナタを私の一番弟子に……あれ? 二番弟子? まあいいわ、弟子にしてあげる!」
バットマン「……」
バットマン(正直に言って、このパターンは全く予測していなかった)
754 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:03:06.09 ID:5un44TpH0
バットマン「そうか、法師の弟子にしてもらえるのは光栄だ」
三蔵「あ、はぐれた弟子も同じことを言ってたわ! そういえば、恰好もアナタとちょっと似てたかも……えっと、なんて名前だったかしら……」
バットマン「……私に似ていた?」
三蔵「そうそう、すっごく似てた。えっと、顔っていうか、雰囲気っていうか……なんだか物悲しげで、赤い兜みたいなのをかぶってて……そう、銃っていうのかしら! そうよ、銃を使ってたわ! 御仏的にすっごくNGだから叱ったんだけど、ぜんぜん聞いてくれなくて……」
バットマン「……」
バットマン(……いや、まさかな。まさか……)
755 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:03:37.74 ID:5un44TpH0
三蔵「……〜〜だったんだけど、もう雰囲気がそっくり! まるで親子みたいね、アナタたち」
バットマン「そうか……他人の空似というヤツだろうが、そこまで似ているというのは面白い。ところで、先ほど助けた貸しを返してもらっても良いか」
三蔵「え? えぇ、構わないけど……何かしてほしいの?」
バットマン「ここからそう遠くない場所に、とある施設がある。そこへ共に来てほしい」
三蔵「しせつ? どんな?」
バットマン「『アトラス院』と呼ばれる……っ!?」ピリピリピリッ
バットマン(殺気……!?)バッ
スタ、スタ、スタ……
「……こんなところにいたのか。探したぜ、法師サマよお」スタ、スタ
三蔵「え? ……あ、あなた……」
バットマン「……三蔵、下がれ。危険だ」
三蔵「えぇっと、多分いまはサーヴァントじゃないキミの方が下がるべきだよね?」
「ああ? なんだてめぇ、余計なヤツまでついてやがるな……まあいいか、揃って首を取りゃいい話だ」スタ、シュリィィィィ……
バットマン「……変わらんな。なぜここに居る、モードレッド」
モードレッド「……なんだと?」チャキッ
756 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:04:16.49 ID:5un44TpH0
………………
月「」シィィィ……ン
ザシ、ザシ。ザシ、ザシ
百貌「つまり、我々が門の前で騒ぎを起こしている間に、初代様が来て聖都に侵入してくださると?」ザシ、ザシ。ザシ
レッドフード「そういう事だ。要約が上手いな、さすがアサシン……いや、それは関係ないか」ザシザシ
百貌「無駄口が多いヤツだ。ともかく、そういう話なら最初から言え。……フン、私も前々からあそこのやり方は気に食わなかったんだ。民を避難させるついでになって良い」
マシュ「え、ええっと……つまり、どういう事です?」
レッドフード「あそこの城が見えるだろ、嬢ちゃん」
巨大な城「」ズオォォォォォォオオォォォ……
マシュ「は、はい。砂漠に居たときから大きかったですが、荒野に入ってからは見え方が大きすぎて距離感が狂いそうになります……」
レッドフード「あそこの城主様がそれはもう悪いヤツなんだ。人を殺してなんとも思わないサイコパスの集団がいる……おっと、悪いな。お前らのことじゃないぜ」
百貌「……分かっている」
レオナルド「うーん、対象物との距離……は、およそ5キロくらいかな? それでももうすぐ到着するよ、門があるならそろそろだ」
レッドフード「……まあ、実態は自分の目で確かめてくれ。かなり酷いからな……」プルプル
マシュ「……」
757 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:04:43.49 ID:5un44TpH0
百貌「しかし、今日は『聖抜』の日なのか?」
レッドフード「おいおい、俺を誰だと思ってやがる。情報収集は抜かりなく、ブルースから学んだことさ」
マシュ「あの、すみません。その『聖抜』とは?」
百貌「……ああ。まず説明せねばならないのは、あの『城』の周囲には都が広がってるという事だな。それは『聖都』と呼ばれる街なのだが」
レオナルド「ほうほう、城下町ってところか。あれだけ立派なお城の周りの街なんだ、立派な都なんだろうね」
レッドフード「噂じゃ『理想郷』って言われるほどらしい。無いものが無いとか……へッ、誰が流した噂だろうな」
百貌「当然だが……いや、少し待て。到着したぞ」
758 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:05:10.57 ID:5un44TpH0
人々「「「」」」ワイワイ……ガヤガヤ……
レオナルド「……ワオ。予想はしてたけど、やっぱり多いね。すごいな、まるでこの辺りに住んでた人々が皆ここに集まったみたいだ」
マシュ「うわわ、夜なのにすごい活気ですね……テントを張ってキャンプしてる人もいます」
レッドフード「ここも完全に安全ってわけじゃねえ。うろつく怪物に襲われることだってあるだろうに、もうここしかねえのさ。酷い話だろ」
百貌「全員、そのままでは目立つ。この外套をまとえ」スッ
マシュ「あ、ありがとうございます!」
レオナルド「おお、これはまたそれらしい服装だ」
759 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:05:45.82 ID:5un44TpH0
マシュ「……そ、それにしても、こんなに人が居るなんて……」
レッドフード「大した話じゃない。生きる希望がここしかないのさ。砂漠の砂嵐はきついし、かといって荒野にとどまっていればいつかは干からびて死んじまう。狂ってるぜ、この世界も」
マシュ「……ひどい」
レオナルド「うーん、荒野にいくつかクレーターが開いているのを見たけど、アレは一体?」
レッドフード「……ああ、アレは『流れ星』さ」
レオナルド「流れ……?」
門「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
レッドフード「おっと」
難民A「おお……おお、聖抜が始まる……!!」
難民B「ありがたや、どうか『獅子王』のめぐみを、どうか……!!」
難民C「どけ! 俺が一番前に出るんだ!!」
百貌「……当然だが、その都に入れる者はそう多くない。あそこに入れる機会といえば、騎士共が『聖抜』と呼ぶ見定めを行う、このタイミングに限られる」スッ
レッドフード「飛び出すタイミングは?」
百貌「……どうかな。誰が出てくるかによる」
マシュ「え……?」
レオナルド「おっと、レーダーに反応あり。魔力を持った存在が出てくるぞ」
レーダー「」ポーン……ポーン……
760 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:06:13.33 ID:5un44TpH0
太陽「」パアァァァ……
マシュ「っ、ダヴィンチちゃん、私の記憶では先ほどまで夜だったと思いますが」
レオナルド「うーんちょっとタンマ。……ああ、これは厄介な反応だな。『場』に影響を及ぼす魔力を帯びてる。強力だ」
レッドフード「ふーむ……ってことは」
百貌「ああ、ヤツだ。全員、待機しろ」
部下1〜20「「「はっ」」」ゾロゾロ
難民D「ど、どうなってるんだ? さっきまで夜だったのに……」
人々「「「」」」ザワザワ……
騎士A「」ガシャリ、ガシャン
騎士B「」ガシャン、ガシャン、ガシャン
「落ち着きなさい。これは、獅子王がもたらす奇蹟」スタ、スタ
「常に太陽の祝福あれ、と。我が王が、私に与えたもうた祝福(ギフト)なのです」
レッドフード「やっぱりアイツだ」
百貌「ガウェイン……!!!」
レオナルド「ガウェイン? それってあの『円卓の騎士』のガウェインで合ってるかな?」
百貌「ああ、そうだ。太陽が出ている間はまさに無敵じみて強い男……それを『獅子王』め、ギフトでヤツの周囲に常に陽の光を呼び出すようにしたのか……!」
マシュ「……??」ドクン
マシュ(なに、この、感覚……)ドクン、ドクン
761 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:06:43.56 ID:5un44TpH0
難民E「よ、よかった、円卓の騎士、ガウェイン卿!」
難民F「やった! 聖抜が始まるんだ! 聖都に入れるんだ、俺たち!!」
マシュ「……っ」ピリピリピリッ
マシュ(殺気!? なんで!? どうして、何か、おかしい、私)ドクン、ドクン
レッドフード「いつ出る」
百貌「待て、もう少し……! 隙をさらした直後でなければ」
レオナルド「……っ、ああ、そうか。聖抜というのは、そういう事か……!!」
ガウェイン「皆さん。自ら聖都に集まっていただいた事、感謝します」
ガウェイン「人間の時代は滅び、また、この小さな世界も滅びようとしています。
主の審判は下りました。もはや地上のいかなる土地にも、人の住まう余地はありません」
ガウェイン「……そう。この聖都キャメロットを除いて、どこにも」
マシュ「……」ドクン、ドクン、ドクン
マシュ(ああ、だめ。そんな、それではダメだ。ガウェイン卿、そんなやり方をしては)ググッ
762 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:07:12.93 ID:5un44TpH0
レッドフード「おい、まだか」
百貌「まだだ! 我慢しろ、もう少し隙を伺うんだ!」
レオナルド「……! マシュ?」
マシュ「……」ブツブツ……
レオナルド「……マシュ、どうしたんだ」
ガウェイン「我らが聖都は完全、完璧なる純白の千年王国。この正門を抜けた先には理想の世界が待っています」
難民G「噂は本当だったんだ……!!」
難民H「円卓の騎士……なんと神々しい……異郷の騎士だとしても、あの輝きは本物だ……」
ガウェイン「……ありがとうございます。ですが、あなた方を受け入れる前に……」
難民I「……なんだ? 門の上に、誰か立っているぞ……?」
ガウェイン「……我が王からの、見定めを受けてください」
門「」ズゥゥゥゥゥゥゥゥ……ン……
???「……」ジッ
763 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:07:52.46 ID:5un44TpH0
???「……最果てに導かれる者は、限られている。
人の根は、腐り落ちるもの。
ゆえに、私は選び取る。決して穢れない魂。あらゆる悪にも乱れぬ魂。
……生まれながらにして不変の、永劫無垢なる人間を」
ガウェイン「……」
人々「「「……」」」
マシュ「……」ゾワァ
レオナルド「あ、アレ、は、ヤバい、レーダーが振り切れちゃってる」
百貌「馬鹿、黙っていろ……!」ダラダラ
レッドフード「……いつ見ても壮観だな、王サマってのは……」
???「……」ブゥン……
???「……残念だ、今回は一人たりとも居ない。ガウェイン卿」クルリ
ガウェイン「……は」
難民A「……え? あ、あの王様、何処行ったんだ……?」
騎士D「」ガシャリガシャリ、カチャ……
難民A「……え?」
騎士D「」ズバァッ
難民A「うぎっ」ドシャァ
764 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:08:48.95 ID:5un44TpH0
難民B「う、嘘だろ!? 嘘、嘘だ!?」
難民C「う、うわああああああああ!! こ、殺しやがった、殺したんだ! ちくしょう、なんで!?」
難民D「理想郷じゃないの!? なんで、どうして……うッ」ドシャッ
騎士E「」ズバァッ、ズバン
騎士F「」ガシャリ、ガシャリ、ズバァ
人々「「「」」」キャアアアア!! タスケテクレ!! ダレカァ!!
レオナルド「やっぱりか! 奴らめ、『聖抜』で選ばれなかった人々をあんな風に……!!」
レッドフード「まだか」
百貌「まだだ! まだだ、ガウェインが隙を見せない……!」
レオナルド「……っ、マシュ!? マシュ、何処だい!?」
百貌「なに、あの小娘はこんな時に何処へ……!?」
765 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:09:35.88 ID:5un44TpH0
ガウェイン「……」ピクリ、バッ
ガッギャァァアアアアァァァァァァアア!!
マシュ「……!!!」ギリギリギリギリギリ……!!
ガウェイン「……おや、貴女は」グググググ……
マシュ「サー・ガウェイン。今すぐにこれを止めてください」グググググッ
ガウェイン「……ほう」
タァン!!
ガウェイン「っ」ババッ、ガギャギャギャァ!!
弾丸「「」」ポロポロッ
レッドフード「お前なら飛び出すって思ってたぜ、嬢ちゃん」カチャリ
百貌「全く、なんという事をしてくれたのだ貴様……! 目先の犠牲を止める事だけにとらわれたか!? コイツがどれだけの強敵か分かって……」
レオナルド「はいはい、責任探しはあとだ! 今はどうにかこの虐殺を止める!」
百貌「言われなくともわかっている! お前たち!」
部下1〜20「「「はっ!!」」」ゾロゾロッ
百貌「民たちを山へ誘導しろ! 一人でも多く逃がすのだ!」
766 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:10:05.34 ID:5un44TpH0
ガウェイン「……なるほど、では貴方たちが噂に聞いていた『レジスタンス』の者ですか」
百貌「残念だがここまでだ、騎士よ。初代様が来る」
レッドフード「フン、まあ年貢の納め時って事だ」
ガウェイン「……? 失礼、貴方はどこかで?」
レッドフード「……ククッ、どうかな?」
ガウェイン「……」
マシュ「サー・ガウェイン。なぜこのような事をしているのです」
ガウェイン「それが我が王の望みなれば。そこに疑問をさしはさむ余地はない」
マシュ「民を守ってこその騎士だったはずです!」
ガウェイン「もはや死んだ人理の中、人を守る方法はこれしかない」
マシュ「……どういう事ですか」
ガウェイン「さて、貴女が知る事ができるでしょうか……」ガチャ、チャキリ
767 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2019/08/12(月) 02:10:33.18 ID:5un44TpH0
レオナルド「マシュ。何があったのかは分からないが、アレは敵だ。警戒するんだ」
マシュ「……はい」ガシャリ
ガウェイン「私の前に出たからには、相応の覚悟を示していただきましょう。どうか剣の一振りで倒れる事のなきよう」ジリッ
レッドフード「賭けるか? 俺は5回耐えられると思うぜ、30ドルだ」
百貌「黙って警戒しろ! アイツの実力は本物だ!」
ガウェイン「では、行きましょうか」ダッ
768 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2019/08/12(月) 02:11:54.15 ID:5un44TpH0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。
また、読んでくださっている方にこのような情けない愚痴を吐いて申し訳ありませんでした。今後は無いように努めます。
769 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/12(月) 12:30:36.85 ID:KN0p6jFpo
乙
これからも楽しみに読ませてもらうわ
770 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/13(火) 15:10:32.59 ID:PyyDZ7fUo
乙
アメコミ勢から誰が出てくるのかとてもとても楽しみにしながら読んでおります
771 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/13(火) 19:59:11.14 ID:pox4kIwZ0
おつおつ!
レッドフードさんが何だか不穏な感じ?
レイシフト開始から別行動って何が起こるかわかんなくてわくわくするな〜これからも楽しみに待ってます!
772 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/15(木) 10:39:17.78 ID:JyMV3ApO0
このジェイソンのりのりだな
773 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/15(火) 23:36:57.81 ID:TCef99+ro
やっぱFateのマスターは少しぐらい頭おかしい方が面白いな
774 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/10/30(水) 21:36:17.89 ID:xM/yOAD00
待ってる
775 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/17(月) 18:45:44.90 ID:tOfrfu1uo
CIA職員「んほぉ〜〜この娘を持って心が和らぎ始めたバッツたまんねぇ〜」
776 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/23(土) 22:01:42.27 ID:m+I2YS33O
待ってます
777 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 15:59:48.33 ID:LW5FqCKG0
………………
ピッピッピッ……クオォォォォォォオン……
所長「……」
ドクター「……」ソワソワ……
職員A「……」ハァ
職員B「……」キョロキョロ、ソワソワ
職員C「……」イライライライラ
所長「それで、ブルースの位置は。特定できたの」
778 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:00:19.56 ID:LW5FqCKG0
職員C「いえ、その……いまシバのレンズを最大限に活用していますが、しかしそもそも特異点をそのまま映すというのは非常に負担が大きく……」カチャカチャカチャ、タン
所長「そう」
職員C「……えと、その……できうる限りの努力はしていますが、この特異点は大気中の魔力の濃度が高く、これ以上焦点を合わせてしまうとレンズが耐え切れず割れる危険性があり……その、今のところ、全く成果が無いというのが現状です」
所長「ふむ……」
ドクター「……ブルースくんのスーツから送られてくるバイタルサインに問題はない。生きているようだ。……だが、先ほどから何度か交戦を示すシグナルが送られてきている。マシュとはぐれて、一人で戦っているのかもしれない」
所長「……」
所長(ムードメーカーであるレオナルドが居ない今、私がシャキッとするしかないのよね。……いえ、そもそもこれは所長である私の役目だわ)
779 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:00:48.01 ID:LW5FqCKG0
所長「……全員、聞いて」
職員A「……?」
職員B「は、はい」ソワソワ、クルリ
職員C「……」イライライラ
ドクター「……」
所長「ブルースが心配なのは分かります。けど、お通夜みたいな雰囲気になるのは良くないわ。気を引き締め直して。我々のサポート如何で、彼らの生死が決まるのよ」
職員A「……」
職員B「……すみません」
職員C「で、でも……」
所長「自分のチームを信頼しなさい。ブルースやマシュ、レオナルドはこんな事では絶対に負けないわ」
職員C「……」
780 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:01:17.22 ID:LW5FqCKG0
職員A「……なあ、大丈夫か」
職員B「え、ブルースさん? 大丈夫でしょ、あの人が参ってるところなんて想像できないし……」ソワソワ
職員A「違う、お前だよ。さっきから、何度も爪を噛んでる。冷静じゃないんだろ」
職員B「……だって、心配だし……」
職員C「……」
職員A「……なあ、お前も。大丈夫か?」
職員C「え? ああ、大丈夫。俺は平気だから……」
職員A「……」
781 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:01:43.78 ID:LW5FqCKG0
職員C(……最初はイカれ野郎だと思ってた。猫の仮装して世界を救う? よっぽどの狂人か、あるいは誇大妄想にとらわれた馬鹿野郎だ)
職員C(……でも、だんだんと、あの人の事がわかっていった。わかってしまったんだ。ブルースさんはいつだって本気で、俺たちの事をずっと見てて、冗談が下手で、心配性の男なんだ)
職員C(くそ、なんでこうなった。諦めて、死にゆく世界で、気楽に最期を迎えられたらってずっと思ってたのに。焼かれた世界で、人の心配をするなんて)
職員C「……無事で居てください、ブルースさん……」カタカタ、カタカタ、タンッ
782 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:02:14.25 ID:LW5FqCKG0
………………
バットマン「……私の事を覚えていないのか、モードレッド」
モードレッド「はあ? 何言ってやがる、初対面だろうが。覚えてるもクソもあるか」
三蔵「ブルース、下がって。あの子、すっごい魔力を秘めてる」
モードレッド「へッ、城に居る時は気に食わなかったが、なかなかどうして……こうして殺す気で向かい合ってそのツラ見ると、悪くねえ顔してるじゃねえか。覚悟ができてやがる」
バットマン「なぜだ。なぜ殺す。誰に命令された」
モードレッド「てめぇは正反対だな! 何かを殺す覚悟もねえツラしてやがる! ムカつくぜ、前に会った時も……ぐうっ!?」ズキン
バットマン「……『前に会った時』?」
モードレッド「う、うぐ、頭、が……畜生てめえ、何しやがった……!?」ヨロッ
バットマン「……???」
783 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:02:41.28 ID:LW5FqCKG0
(((行け。世界を救ってこい)))
(((……私も、お前達と共に戦えるのは光栄だ)))
(((恐怖に飲まれるな)))
モードレッド「……くうっ、誰だ……てめえ……誰だ、てめえは!!?」ヨロヨロッ
バットマン「……」
バットマン(何が起きているかは全くの不明。だが、チャンスに違いない)
バットマン「三蔵、こっちだ」
三蔵「えっ?」
バットマン「逃げるぞ」ダッ
三蔵「え、え、ちょっちょっと!?」ダダッ
モードレッド「……! てめ、待て!!!」ダンッ
784 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:03:08.08 ID:LW5FqCKG0
バットマン(ルート取り。山の方角、星座の位置から判断して、西南西へ向かうこのルートが最も『近い』)
三蔵「どこに向かってるの〜!?」タッタッタッタッ
バットマン「アトラス院。迷宮だ、ヤツを撒くにはちょうど良い」タタタタタ
バットマン(しかし、砂で足が取られる……)
モードレッド「この野郎、逃げるなんてそれでも男かてめえ!! 真っ向から向かってきやがれ!!」ダダダダダッ
バットマン(無茶を言うところも全く変わっていない。アレは間違いなくモードレッドだ)
785 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:03:44.62 ID:LW5FqCKG0
バットマン「フッ!」シュパパパッ
バットラング「「「」」」ヒュオオオォォォオッ!!!
モードレッド「こんなもんっ……!?」ガギギギィッ、プシューーウゥゥゥゥゥ……
煙幕「」モクモク……
モードレッド「な、なんだ!? 煙!? げほっ、くそっ、なんだコレ!?」
三蔵「ええ、何あれ何あれ! 面白い事になってるじゃない!?」
バットマン「バットラングにスモークペレットを混ぜて投げた。剣に貼り付いて、しばらくは視界を曇らせる……それより走れ」ダッ
三蔵「あ、ちょっと待ってって!」タタッ
786 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:04:12.25 ID:LW5FqCKG0
モードレッド「げほっ、くそっ、きたねえ搦め手使いやがって……!」ズキン
モードレッド(クソっ、なんなんだ! 頭がいてえ……!! 何か、思い出しそうな、気がする……)
(((お前の行動が士気を乱すものになると言っている)))
(((私が気に食わないだけか?)))
(((何か異論があるなら聞くが)))
モードレッド(……なんだか無性に腹が立ってきやがった。あいつ、さては相当なクソ野郎だな……??)
モードレッド「……ぶっ殺してやる!!」ダダンッ、ダダダダダダ
787 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:04:48.30 ID:LW5FqCKG0
三蔵「ねえねえ、他には!? なんだか神器みたいで貴方の道具がすっごく気になるんだけど!」タタタタッ
バットマン「神器ではない。これはユーティリティベルトと言って、私の活動を補助してくれる道具が多く納められており、」ダダダダダ……
三蔵「うーん? 難しいのね? あ、この玉は!?」スッ、カチャ
バットマン「!! 何を、今すぐ投げろ! 危険だ!」
三蔵「えっえっ、ええぇ!? えいっ!」ポイッ
球体「」ヒュゥゥゥゥウ……ドッガァァァァァァアアアアアァァァァン……
モードレッド「ぐわああっ!?」ゴオオッ
三蔵「えええ!? なにあれ、すっごい爆発!?」
バットマン「……アレはスーツ越しでも自決できるようにしていた爆弾だ……!!」
バットマン(なんという事だ、もしもの事態に備えてカルデアに秘密で少しずつ作成していたというのに……!)
三蔵「自決!? いけません、自殺なんて御仏的にNGもいいところよ!!」
バットマン「ああ、そうかもしれんな……」
バットマン(……これで情報を引き出されそうになった場合の最終防衛手段は無くなったか。自分を信じるしかないのは、少し心細いものだ。いや、心細すぎる)
三蔵「……なんだか貴方って、結構捻じれてる?」
バットマン「法師のカウンセリングか? またあとにしてくれ」ダダダダダッ
モードレッド「野ッ郎、爆弾やら煙幕やら卑怯くせえ!!!」ブチィッ
三蔵「うわあああああん、ごめんなさーい!? わざとじゃなかったのよ!!」タタタタタタ
788 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:05:25.40 ID:LW5FqCKG0
モードレッド「逃がすか、この野郎……!! 『是こそは、我が父を滅ぼせし邪剣』……」シュゴォォォォォォォォォオォォォ……
バットマン(いかん!!)
バットマン「三蔵、掴んで引けっ!!」バッ、シュポッガシッ
三蔵「え!? え、は、はいっ!!」ガシッ
モードレッド「ッ『我が麗しき父への叛逆』(クラレント・ブラッドアーサー)!!!」ゴゴゴゴオオオオオォォォォォォォォォッ!!!
バットマン(ここだ!)グィィィッ
ゴオオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!
789 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:05:54.78 ID:LW5FqCKG0
パラパラパラパラ……
モードレッド「……いってえ……!!」ギチギチギチギチ
ロープ「」ビイィィィィィィィィィ……ン
バットマン「……!!!」ギチギチギチギチギチ
モードレッド(くそったれが、放出の寸前に肩に何か撃ってきやがった……!?)ギチギチギチギチ
バットマン(どんな大砲も、発射前に砲の向きを変えれば無力。グラップネルガンは改良してある、ロープもそうそう千切れはしない……!)ギチギチギチギチ
バットマン「三蔵、タイミングを合わせるんだ。激突から5秒後で良い、地面を叩け!!」ギチギチギチ、グイィィィッ
三蔵「なんだか分からないけど、了解ッ!!」グイィィィンッ
モードレッド「っちくしょ……!?」ヨロォッ
バットマン「フッ」ダンッ、フワアッ
790 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:06:59.58 ID:LW5FqCKG0
バットマン「……シィッ」バサササッ、シュバッ
モードレッド「ちっ」ババッ、ズササァ
バットマン「逃がさん」ダダン、ズシャシャ、バッ
モードレッド「、しつけえ、野郎だ!」ババッ、ズバァッ
バットマン「ふっ……相変わらず直線的な剣の軌道だ、モードレッド」ババッ、ヒュンッ
モードレッド「余裕のつもりか、むかつく野郎だな!」シュバババババババッ
バットマン「っ、直線的で力強い。やはりお前は世界を救った騎士だ」ギャリリリリィ、ズササシャシャシャ、ババッ
モードレッド「ワケわかんねーなお前! 貶してんのか褒めてんのかどっちなんだ!」ダンッ
バットマン「分析している。お前の剣を」ダダッ
モードレッド(くそっ、コイツ、やりづれえ。懐かしい感じもするし、けど、俺は覚えてねえし……!! ダメだ、内心で迷いが生まれる!!)
バットマン(三蔵の膂力で肩を負傷させているのは大きい。宝具の連発は不可能だろう。ならばここで畳みかけ、撃退もしくは打倒する)
791 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:07:38.04 ID:LW5FqCKG0
バットマン「フッ!」ガッギャアアア!!
モードレッド「ゼェアッ!!」ガギギィィィィ!!
バットマン「グッ……今回は……誰に仕えている、モードレッド」ドシャァッ、ギリギリギリギリ
モードレッド「ああ? 父上以外の誰に仕えるんだ、俺が」
バットマン「…………なんだと。父上とは、つまり、アーサー王か?」
モードレッド「おう、そうだ。あのアルトリアだ。悪いか、陰気顔」ギリギリギリィ……
バットマン「……意外だな。叛逆はしないのか」
モードレッド「……てめえ……はは、殺したくなってきたぜ」ギュギュウウゥゥゥ、ギュウォォォォオオオオオオ!!!
バットマン「! なにっ」
バットマン(モードレッドの剣が輝きを増して……まさか、宝具は供給源がなくともノータイムで連発可能なものだったのか!?)
792 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:08:08.54 ID:LW5FqCKG0
三蔵「ブルース!! 行くわよ!!!」ギュオオオオオオオオオッ
モードレッド「あぁ!?」
バットマン「ああ! やれ、三蔵!!」ギャリリィ!!
三蔵「どっせい!!」ビュゴッ!!
モードレッド(なんだ!? 地面に攻撃……いや違う!)
バットマン「相変わらず、搦め手への意識が低いようだな。サー・モードレッド」バッ
モードレッド「テメッ……」
バットマン「さらばだ」
地面「」ビキィ、ビキビキビキビキ……ガラガラガラガラッ
793 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:08:49.14 ID:LW5FqCKG0
モードレッド「崩落!? これを狙ってやがったのか!?」グラグラ
バットマン「三蔵! 掴まれ!!」バッ
三蔵「わわわわわ、どうなってんのよぉ!」ガシッ
モードレッド「……!! てめえ、勝ったと思うな……!!」
バットマン「お前は」バサッ
モードレッド「っ」
バットマン「負けてからが強い。油断しないようにしよう」バササササササ……
ヒュオォォォォォォォォォォォ……
794 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:09:21.18 ID:LW5FqCKG0
モードレッド「……落ちていきやがった……」
(相変わらず、搦め手への意識が低いようだな。サー・モードレッド)
モードレッド「……!!」
(お前は負けてからが強い。油断しないようにしよう)
モードレッド「……るっせーバーカ!!! バーカ!! なんでテメーにそんなこと言われなきゃならねえんだ!! そもそも負けてねえよ!!」
砂漠「」シーン……
モードレッド「……クソが! 絶対逃がしてたまるか!」ザッ
795 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:09:52.67 ID:LW5FqCKG0
………………
ガウェイン「……さて」ガシャリ
マシュ「……っ、は、っ……」プルプル
百貌「……、……」ピクッ、ピクッ……
レオナルド「……ここまで、とは……」ボロッ
レッドフード「あーあー、参ったなこりゃ」トットッ
796 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:10:19.82 ID:LW5FqCKG0
ガウェイン「我が部下である粛清騎士が全滅。それは賞賛に値するでしょう。私と戦いながら、素晴らしい動きだったと言える」
太陽「」ジリジリジリ……
ガウェイン「だが、場所が悪い。条件が悪い。実力もまだまだ甘い。そこの赤い兜の方以外は、ここに来るべきではなかったでしょう」ジャキッ
レッドフード「褒められるってのは悪くない気分だが、俺はお前と真っ向勝負なんてのはごめん被るぜ」ジリ、ジリ
ガウェイン「さて、どうでしょうか。私は未だに貴方の実力を測りかねています」ジリ
レッドフード「ははは、ずいぶん買われたな。俺はそんなに大したモンじゃないさ。何処まで行っても、アイツの『裏』の存在でしかない」ジリジリ、ジリィ
ガウェイン「……アイツ?」ジリッ、ズサッ
レッドフード「知らねえか? 知らねえか。オイ、そろそろ良いだろ。位置も完璧だぜ」
ガウェイン「? !!」
マシュ「たああっ!!!」バッ
ガウェイン「ちぃッ」ガッギャア!!!
797 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:11:03.61 ID:LW5FqCKG0
ガウェイン(しまった……! 奴との対話に夢中になるあまり、立ち位置を調整されて、)
レオナルド「そこだねっ!!」プシューーーーーー!!!
ガウェイン「ち、ぃっ……!?」パキパキィ、パキ……ン
ガウェイン(凍結? 相手にするまでもない!)
ガウェイン「舐めないでいただきたいッ!」バキィ、ブゥンッ
マシュ「せあっ!!」ガッギャアアアア!!!
ガウェイン「……!!」ギリギリギリ
マシュ「ぐうううううううう!!!!」ギャギャギャギャギャ
798 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:11:34.91 ID:LW5FqCKG0
マシュ(ここだっ、この力を利用して!)グッ
マシュ「っ」シュッ
ガウェイン「なに」グラッ
マシュ「せええいっ!!」ド、ドドドッ、シュドゴォ!!!
レオナルド「よし完璧に入った!! 相手の霊子解析も89%!」ダダッ、ピッピッ
マシュ「……!!」ググッ
マシュ(ダメだ。やっぱり、完璧に入ったのに)
ガウェイン「良い動きです。そこまでの武を持ちうるとは、よほど鍛えたと見える」シュゥゥゥゥゥゥ……
マシュ(まるで無敵じみた防御力。こちらが打ち込んだ数十発を、何もなかったかのように耐えてる)
ガウェイン「……ですが、やはり、陽光の元で私を相手取るというのは、そちらにとっていささか分が悪いようですね」グググ、グググググ……
799 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:12:30.13 ID:LW5FqCKG0
百貌「ぜえいっ!」シュパパッ
ガウェイン「もはや、底は知れた」ガギィ……ン
百貌「なっ、見もせずに……」
ガウェイン「鍛錬とは、仰ぎ見る山頂へ登ろうとする行為に他ならない。登り切ったと思えば、またそこに登る余地は生まれてくる」グググググググ……シュゴウッ、ゴゴゴゴ
マシュ「くっ……!」ガシャリ
ガウェイン「そして貴女は今、きっと私よりよほど大きな頂を見ているのだろう。危険な存在だ。貴女ほどの存在を生かしておけば、必ずや我が王の妨げとなる」
マシュ「王は、こんな虐殺を望むはずが……!!」ドクンッ
マシュ(王とは、何……!? 私は、彼らの言う『王』なんて、知らないはず……)ドク、ドクン、ドクン……
(マシュ。我が名は■■■■■■)
(我が名を呼べ。力を貸せよう)
(ながらく眠っていたが、それでも)
(騎士として)
(負けるわけには、いかないのだ)
(マシュ。我が名を呼べ)
800 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:13:08.41 ID:LW5FqCKG0
マシュ「ウ、ア、アァ……ぐっ……!?」ジリ、ジリ、ドシャリ
ガウェイン「……?」
レオナルド「ま、マシュ!? どうし……」
レーダー「」ピピー!! ピピー!! ピピピピビビビビビビビビビbbbbbb
レオナルド「……!! こ、この反応……まさか、『発作』!?」
レオナルド(にしたって、こんな魔力反応は尋常じゃない……! マシュの意識が耐え切れない、潰されてしまう!!)
百貌「クソッ、撤退を……!」
難民X「ひ、ひぃ……!」
難民Y「あの子が居ないんです、あの子がどこかへ消えてしまったんです!! お願いします、助けてください……!」
難民Z「おかあさん!! おかあさーん!!」
百貌の部下A「こちらへ、ともかくこっちへ! 多すぎる、手が回らない!!」
百貌「……まだかかるか……!!」
801 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:13:43.39 ID:LW5FqCKG0
ガウェイン「……ふむ。なんにせよ、こちらにとっての『チャンス』でしょうね」ガシャリ
百貌「……山の……初代様のご到着には、まだかかるか……」ジリッ
レッドフード「……」カチャリ
ガウェイン「何を期待しているのかは知りませんが、あなた方の敗因は『それ』だ」
百貌「……」
ガウェイン「おのれの実力を信じず、他の要素にすがり、共に戦う仲間にすら、背中を預けられない状態で来てしまった」
マシュ「……!!」プルプル
マシュ(起き上がれない……!! マスターが……マスターが居たら、こんな状況には……)
ガウェイン「これにて幕引きとしましょう。『この剣は太陽の……』」
「ちょっと待ったぁあああああ!!」
ガウェイン「……?」
レオナルド「なんだか勝敗が決したみたいなセリフだけど、それはちょっと気が早いんじゃないかな!? ホラこれを見なよ!」ポイッ
黒い塊「」ヒュンッ
ガウェイン「なんです、それは……」
ガウェイン(……否。不味い、コレは……)
スタングレネード「」カッ
802 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:14:10.83 ID:LW5FqCKG0
ガウェイン(いかん、目をやられ……)ヨロッ
ヒュンッ
ガウェイン「ッ」ババッ、ガガァン!!
ヒュヒュヒュンッ
ガウェイン「チッ……」ガッギッギギギギィ、ギギィン!!!
レオナルド「……いや、目をつむった状態で弾きすぎじゃないかなキミ」
ガウェイン「五感を駆使して戦う。風切り音でどこへの攻撃かは分かります……」スッ
レオナルド「成程ね、やっぱり武人タイプってどうも苦手だ。ところでそろそろ目は治ったかな?」
ガウェイン「ご心配どうも。おかげさまでよく見えますよ」
レオナルド「ならキミ、自分の剣を見てみる事をオススメするよ。……まあ、もう遅いけど」
ガウェイン「……?」
吸着型爆弾「」ピッ、ピッ、ピッ……ピピピピピピピピピ
ガウェイン「……!!」バッ
ドッガガガガガガガァ……!!
803 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:14:53.57 ID:LW5FqCKG0
レオナルド「今しかない! 撤退だ、マシュ、歩けるかい!?」
レッドフード「あの爆弾はクールだな、いいアイデアしてるぜ」
レオナルド「これでも生前は兵器の開発案とかも出してたんだ、多少はやれなくちゃね。さあ走ろう!!」
マシュ「くっ、ぐぅっ……!!」フラフラ
レオナルド「……さあ、掴まって! 走るよ!!」ガシッ
レッドフード「ああ、OK」
804 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:15:21.39 ID:LW5FqCKG0
百貌「……先に行け!!」
レオナルド「へっ?」
百貌「山に行けば『ハサン達』が出迎えてくれる! さっさと行け!!」
レオナルド「き、キミは!? キミはどうするのさ!?」
百貌「……ッ……」チラッ
難民たち「「「……! ……!!」」」ザワザワ、ゾロゾロ
百貌「……まだ、避難が済んでいない……! まだここから退くわけにはいかん!」
805 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:16:01.26 ID:LW5FqCKG0
レオナルド「……くっ、すぐに逃げないと……すまないが、こちらは離脱させてもらうよ!」
百貌「元よりそう言っているだろうが! さっさと行け!!」
マシュ「……っ、……」プルプル
レオナルド「……悪いけど、マシュ、ここは我慢してもらう。世界を救うには、私たちが生き残らないとダメなんだ。行くよ」ダッ
マシュ「…………」ズルズル……
爆煙「」モクモク……
部下A「ひゃ、百貌様……」
百貌「……行け。後は任せたぞ」
部下B「……はっ。お任せ下さい」ダダッ
部下C「おさらば……」ダッ
806 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:16:41.16 ID:LW5FqCKG0
レッドフード「……チッ」ピタリ
レオナルド「っ、レッドフードくん!?」
レッドフード「悪いな、先に行っててくれ。俺は残る」クルリ
レオナルド「……それは……」
レッドフード「ブルースには俺の事は伝えないでおいてくれよ? 露骨に落ち込みやがるからな」
レオナルド「……分かった」
レッドフード「くくッ、ちなみに今のはジョークだ。じゃあな」ザッ
807 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:17:08.85 ID:LW5FqCKG0
部下E「こっちだ! 全員行くぞ!!」
難民たち「「「……」」」ゾロゾロ……
部下F「その盾の少女は!? 負傷したのか!?」
レオナルド「いや、発作だ。復帰すれば戦力になるんだが、今は無理そう」
部下F「……こちらで抱える、お前は民衆を守る位置についてくれ!」
レオナルド「成程、それは助かるね……」
マシュ「……っ」ギリィ……
マシュ(……盾に、なるって、誓ったのに……! 今度こそ、守るべきものを……)
レオナルド「……行こう。託されたものを無駄には出来ない」
808 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:18:11.74 ID:LW5FqCKG0
百貌「……」
レッドフード「よう。雨に降られた犬みたいな顔してるぜ」
百貌「黙れ。腹の立つヤツだ」キッ
レッドフード「そっちの方がいい顔だ。どうだ、勝算があって残ったのか?」
百貌「あると思うのか。さっさと逃げれば良かったものを、貴様まで何故残った?」
レッドフード「1人より2人の方が、時間稼ぎも捗ると思ってね……」
百貌「……」
809 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:19:00.03 ID:LW5FqCKG0
百貌「……貴様が『初代様』の名を出した時」
レッドフード「……」
百貌「正直言って、安堵してしまった。ようやくこの戦も終わる、そう思ってしまった」
レッドフード「……」
百貌「だが、やはり、恥だな。私は自分の力不足を暗に認めてしまっていたのだ。『初代様』の力を借りねば倒せない相手だと、情けなくもそう思っていた」
レッドフード「……そうか」
百貌「今回、初代様が来られなかったのも……きっと私達を試しての事だろう。我ながら愚かな事だが、それでも」
百貌「それでも、あの盾の少女の真っすぐな瞳を見ていて、思い出したよ。私も、負けるわけにはいかない」
810 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:20:14.61 ID:LW5FqCKG0
爆煙「」モクモク……ザアアアッ
スタ、スタ、スタ
ガウェイン「……どうやら、まんまと逃げられたようですね。正直に言って、侮りがあった事を認めざるをえません」
レッドフード「あっちは元気が余ってそうだぜ」
百貌「まだまだ。ここから時間稼ぎに付き合ってもらうとしよう」
ガウェイン「……彼らにはすぐに追手が出るでしょう。無駄な事は、おやめになるよう」ガシャリ
811 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:20:43.14 ID:LW5FqCKG0
………………
バットマン「……」バサササササ……スタ
三蔵「ほわぁ……すごいのね。ていうか、ここ何処?」スタ
バットマン「アトラス院と呼ばれる施設の入り口だ。落とし穴から入ってきたが」スクッ
三蔵「なんていうか、妙な感じ……なんだかムズムズして……」
バットマン「……乱暴な入場になった。何かトラップが発動してもおかしくない、注意しろ……」
812 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:21:10.60 ID:LW5FqCKG0
砂「」サラサラ……パラパラパラ……
洞穴「」シィ……ン
三蔵「……静かね」
バットマン「……静かだな」
三蔵「ねえ。気付いてる?」
バットマン「まあ、気付いていないと言ったら嘘になる」
三蔵「どうする?」
バットマン「つまり……そうだな。右を頼む」スッ
三蔵「じゃ、左は任せるわね」バッ
813 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:22:21.40 ID:LW5FqCKG0
ブルースは……つまり、推測を重ねていた。アトラス院とは魔術のるつぼ。このように乱暴な入場を果たした存在に対し、罠が発動しないというのは通常、考えられない事だ。
ということは、罠が解除されている可能性が高い。解除されているという事はつまり、先客が居る。
そして、暗闇の中から息遣いが聞こえていた。複数。三蔵は躊躇の無い動きで闇へ向かっていく。複数の気配が身じろぎする。
バットマンはマントを翻し、手元を隠しながらバットラングを投擲した。目にも止まらぬ飛来物は、しかし、闇の中から伸びる刃によってすべて千々に切り裂かれ、地に落ちた。
三蔵の向かいの闇から、影が飛び出した。口元をマスクで覆ったその人物は、空中で回転すると、法師の首めがけて刀を振るう。
「ほっ」
三蔵は錫杖でこの斬撃をいなし、相手のみぞおち目がけて反撃の一撃を突き込む。空中で衝撃を食らったその人影は、柔軟に体を曲げると、素晴らしい身体制御能力で着地し、後転で距離を取った。
バットマンの向かいの闇からも一体、同じような人影が現れ、バク転で跳びすさる。そして法師と向かい合う影に並び立ち、刀を構えた。
その立ち振る舞いを見たバットマンは、眉をひそめる。彼にとって覚えのある集団の構えだ。
「……リーグ・オブ・アサシン?」
ピクリ。その名を聞き、2名の暗殺者たちはかすかに震える。三蔵は油断なく錫杖を構え、敵の実力を見極めようとしている。
「ここで何をしている。ラーズ・アル・グールの指示か」
「……民草ごときが、あのお方の名を口にするな」
ミシリ。刀の柄が握り締められ、軋む。
「奴は何を企んでいる」
「お前が知る事はない。死ね」
次の瞬間、2人の暗殺者は一斉に膂力を解放し、完璧な対の角度で刀を打ち込んだ。
814 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:23:01.19 ID:LW5FqCKG0
破裂するような甲高い音の直後、二刀を受け止めた錫杖から火花が散った。三蔵法師だ。バットマンを庇うように割り込み、瞬時に二刀と拮抗状態を作る。
そして既にバットマンは斬撃の軌道上には居ない。彼は三蔵を跳び越え、2人の頭へとバットラングを投げつける。
暗殺者たちは同時に頭を傾けて躱し、似通った体捌きでするりと適切な距離へ逃れる。三蔵が一方を追い、黒い騎士は万全の構えでもう一方と向かい合う。
「……」
「……」
ジリリ。暗殺者が重心を落とし、バットマンは僅かに構えを変化させる。暗殺者のこめかみを脂汗が伝う。
「……私達を待ち伏せていた訳ではないな? 目的は何だ」
「……ッ」
一瞬の後、暗殺者が打ち込んだ。だが蝙蝠はこの一撃を完全に見切っており、手甲で刀を叩き下げると、逆の手で掌打を繰り出す。
暗殺者はこれを躱す……否。バットマンの手のひらから何かしらのスプレーが散布され、暗殺者の腹部へ付着した。
「ちっ……」
バックステップで距離を取ろうとしたその瞬間、暗殺者の腹部に付着したジェル状の『何か』は爆発。空気が歪むほどの衝撃でもって片割れを吹き飛ばし、壁に叩きつけた。
(やはり)
一方、バットマン。彼は超スピードの思考の中で、相手に打ち込んだ際の微かな違和感を反芻していた。
それはすなわち、『敵は魔力を帯びた存在ではない』という事だ。暗殺者たちの身のこなしは驚異的だが、しかしそれは人間にも可能な動きばかり。
証拠に、三蔵と戦っている1人は既に追い詰められ、壁を背に戦っている。もう5秒もあれば決着がつくだろう。
「……お前達は、この時代の人間だな」
「……」
「ラーズ・アル・グールは召喚された存在ではない。お前達も、元々ここに居たんだな?」
「……答える必要はない!」
語気も激しく言い返したアサシンはしかし、冷静だった。彼女らは同時に足元に煙玉を叩きつけると、一瞬の視界混濁に乗じて撤退を開始する。
「ブルース、見えてるけど追う?」
「……いいや、追うな」
煙が晴れる中で、バットマンと三蔵法師はアサシンが逃げて行った方を見つめ、しばらく構えて立っていた。が、彼女らが逃げ、戻らない事を悟ると、やがてその構えを解いた。
815 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:23:53.03 ID:LW5FqCKG0
三蔵「なんだったのかしら、ホント! あれがもしかして忍者ってやつ?」
バットマン「あれは……まぁ、説明すると長くなるが……ともかく、殺人集団だ。今回は何のために動いているか知らんが、警戒するに越したことはない」
三蔵「因縁浅からぬ仲ってやつ? 大変ね〜」
バットマン「私にとっては見慣れた集団だ……連中にとっては、どうやら私は新顔のようだが」
三蔵「……んん〜? まあいっか。貴方がもっとあたしを信頼してくれた時にでも、分かりやすく話して!」
バットマン「……分かった」
816 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:24:31.69 ID:LW5FqCKG0
三蔵「にしても、真っ暗ね〜。人間のあなたは結構進みづらいんじゃない?」
バットマン「平気だ」スタスタ
三蔵「そう?」スタスタ
バットマン「……」スタスタ
三蔵「……」スタスタ
バットマン「…………」スタスタ
三蔵「…………」スタスタ
バットマン「……音と足裏の……いや……夜目が利くんだ、私は」
三蔵「そうなんだ! 凄い事じゃない、闇も見通せるって便利ね」
バットマン「ああ。……お気遣いありがとう」
三蔵「どういたしまして。フフ」
817 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:25:08.03 ID:LW5FqCKG0
三蔵「んん〜? ……なんか、水の音が聞こえるような……川でも流れてるのかしら?」
バットマン「水? ……地下湖でもあるのか……」
三蔵「ううん、違うの。なんか、そうじゃなくて…………ええっと、なんて言えばいいんだろ。もっと、ドロッとしてる何かって言うか……粘液? みたいなのが、流れてる音が聞こえる」
バットマン「粘液?」
三蔵「……ドロドロで、ブクブク泡が立ってて……なんだか、嫌な感じの音」
バットマン「……」
バットマン(通信機が健在なら、間違いなくドクターに解析を頼んだだろうが……一体、この地下には何がある?)
818 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:25:36.45 ID:LW5FqCKG0
三蔵「変な遺跡ね。振り返れば、それまでに見えなかった大量の通路が見える」
バットマン「フェイクのチューブが、本筋に次々に合流する仕組みなのだろう。行きは楽で、帰りが難しい仕組みになっている」
三蔵「これ、大丈夫? 帰れるかしら?」
バットマン「安心しろ。スーツのコンピューターが常にマッピングを行っている」
ブルース(それに、私も記憶している……滞りなく地下へ数十メートル進めているはずだが、まだ底が見えないな)
三蔵「もしその鎧が壊れちゃったら、この錫杖を立てて、倒れた方向に進みましょ!」
バットマン「……まぁ、考えておこう」
三蔵「あ! その顔、あたしの運の良さを信じてないわね? ふふん、貴方もその時になったら御仏の導きを信じるようになっちゃうんだから!」
バットマン「……」
ブルース(まったく宗教的に込み入った特異点だ……)
819 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:26:08.14 ID:LW5FqCKG0
バットマン「ひとつ訊いておくことがある、三蔵」
三蔵「ん? なぁに? 答えられる事ならなんでも答えちゃうわよー!」
バットマン「城に居る時だが……『ラーズ・アル・グール』という名前を聞いたことはなかったか?」
三蔵「ラーズ……レイシュの事かしら?」
バットマン「レイシュ? ……居るのか、その男が」
三蔵「ええ。城の中でも、かなりの上位に位置してて……見てた感じ、城主である『獅子王』、その補佐官である『アグラヴェイン』と同等くらいの力を持っていたと思うわ」
820 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:26:42.40 ID:LW5FqCKG0
三蔵「普通に話している時でも、ちょっと怖いくらい目つきが鋭かったのを覚えてる。あ、そういう所は貴方に似てるかも」
バットマン「……私に似ている者が多いな……」
三蔵「ホントにそうね! でも、なんだか、ちょっと違ったと思う。……なんて言うのかしら。ぱっと感じるフィーリング?」
バットマン「……そうか。レイシュは、何か言っていたか」
三蔵「うぅん、城の騎士たちと同じよ。『人類を守る』って」
バットマン「……」
821 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:27:19.08 ID:LW5FqCKG0
バットマン「……人類を守るのが目的なら、お前も残れたんじゃないか?」
三蔵「うーん……なんていうか、自分の居場所じゃないって感じがしたの」
バットマン「居場所じゃない?」
三蔵「うん。皆笑顔で、のびのびしてて、悪い人なんてひとりも居なかったんだけど……騎士さんに何か尋ねても『知らなくていい』『くつろいでいるだけでいい』って言われるばっかりだったから」
バットマン「……」
三蔵「くつろいでるの、嫌いじゃないけど……でもあたし、何かムズムズしちゃうのよ。だって、荒野が外に広がってるなら、その荒野にもくつろぎを届けたーい! って思っちゃうじゃない?」
バットマン「……まあ、分からない事もない」
三蔵「そういうコト! だってあたしはいずれ仏様まで成り上がる玄奘三蔵ですもの! ドーンと掌で人を救っちゃわなきゃね!」
バットマン「……フ」
ブルース(別のお人好しを思い出すものだな)
822 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:28:27.05 ID:LW5FqCKG0
バットマン(それにしても、ラーズ・アル・グールがこの時代に居るとは……いや、不思議はないか。ヤツは不老不死だ。この時代も、ヤツにとっては通過した過去だろう)
バットマン(きっと我々と接触した事は報告が行く。その時、連中がどう動くか……。現代と変わっていないのなら、『デーモン』は未だ危険なテロ集団のハズだ)
バットマン(気を引き締めていかねばなるまい。そして、そんな組織と動きを同じくしている『城』の騎士たちも……やはり、危険と考えて相違ないだろう)
バットマン(……敵は多い。マシュも居ない今、どう動くのが最善だ……)
823 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:28:54.42 ID:LW5FqCKG0
…………
「……、……」
「…………!! ……!! ……」
「………………!!!」
「……」
マシュ「……うぅっ……」ぴくり
824 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:29:26.59 ID:LW5FqCKG0
レオナルド「!! マシュ、起きたかい!?」ダダダダ
マシュ「……ダヴィンチちゃん、ここは……」
レオナルド「起きたばかりで悪いが、撤退戦だ! 聖都から追手が来てる、しつこいったら……!」
マシュ「!! 追手……くっ、お、起きます!!」ヨロッ、グラァ……
825 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:29:54.99 ID:LW5FqCKG0
騎士A「逃がすな!! 追え!!」ダカダッ、ダカダッ
騎士B「囲い込め!! 1人残らず殺すのだ!」ダダッダダッダダッ
難民A「ひ、ヒィィィッ」
難民B「お助けください!! 聖都にはもう関わりません!! どうか!!」
レオナルド「馬と人じゃ流石に機動力が違いすぎる……このままじゃ共倒れだ」ガシャリ
マシュ「ですが難民の方を見捨てるわけにはいきません! 私が出ま……!?」ヨロヨロ、ズシャァッ
マシュ(ど、どうして……意識があるのに、体が、動かない……?)
826 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:30:25.60 ID:LW5FqCKG0
レオナルド「マシュ!? ……くっ、ガウェインとの戦いが負担だったのか……下がって! 全員下がるんだ!! 私がやる!!」
百貌の部下A「いや、我々もやれる!!」ジャキリ
百貌の部下B「百貌様がおられずとも、私達が……!!」カチャ
レオナルド「いいから下がるんだ!!! 騎士たちの中に強烈な反応がある、これは……ガウェインに、似て……」ポーン……ポーン……
ズバァッ
百貌の部下A「ぐっ……」ドシャリ
827 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:31:13.87 ID:LW5FqCKG0
レオナルド「!? 何処から……」
ポロン♪ ポロンポロン♪
ズバァッ!
難民A「……え……」グシャリ
難民B「う、うわあああああああぐッ」ドシャ
レオナルド「……!!!」
「……トリスタン卿、貴公は右を。私は左を担当しよう」
「実に悲しい……彼らにとって、この死の音満ちる荒野が最後に見る光景とは。せめて、痛みは与えぬよう殺しましょう」
828 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:31:56.47 ID:LW5FqCKG0
レオナルド(ここに、2人……サーヴァント! よほど我々の事を逃がしたくないらしいな、聖都の連中……!)
トリスタン「ランスロット。今回は、手を抜かないでいただきたい」
ランスロット「……何の話か分からないな、トリスタン。それよりも集中すべきだ。あのご婦人は、やるぞ」
レオナルド「くっ」ジャキリ
トリスタン「ふむ……呼吸の音、心拍、そして何よりもその怒り……危険な存在ですね、貴女は」
ランスロット「……」ガシャリ
レオナルド「……見逃してくれたりしないかな……って言っても無駄だよね、勿論」
829 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:32:41.91 ID:LW5FqCKG0
レオナルド(トリスタン、ランスロット、ガウェイン……ここまでの敵は、どれも知っている。アーサー王率いる『円卓の騎士』のメンバーたちだ)
レオナルド(そして今、立ち塞がっているのは『ランスロット』『トリスタン』……ランスロットは円卓の中でも最も武勇に優れた者とうたわれる騎士。第1特異点でブルースが遭遇したものとは違い、理性があるようだ……厄介だな)
レオナルド(もう一方、トリスタンは……ハッキリとは分からないが、あの竪琴から危険な気配がする。先ほども、竪琴の音色と共に斬撃が発生していた……ように見えた。つまり、アレは……)
通信機「」ピピピピピ!!
ドクター『レオナルド、解析結果を伝える。ランスロット、トリスタン、どちらも霊基に異常が見受けられる』
レオナルド「異常?」
ドクター『どう形容していいのか……ランスロットも、トリスタンも、通常のサーヴァント以上の性能を持っている事は間違いない。そのうえで、ランスロットは霊基が拡張されている……セイバーというよりは、まるでルーラーだ』
レオナルド「成程……」
ドクター『トリスタンは……アーチャーだったのは分かるんだが、これも奇妙だ。霊基が……反転している、と言えばいいのか……ともかく、そこに居る騎士たちが、「通常の思考」を持っていると考えない方がいい。歪まされた存在だ』
レオナルド「了解。……まぁ、難民を襲う時点で普通の交渉は期待していなかったさ」
830 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:33:34.35 ID:LW5FqCKG0
マシュ「……ぐ……うぅ……!!」プルプル
レオナルド「マシュ、今キミが復帰してもフラフラだろう。足手まといになりたくなかったら、そこでじっとしていること」
マシュ「……!!」
レオナルド「どーんと任せとくんだ! なんたって、私は天才なんだからね!!」ニッ
トリスタン「話は終わりましたか」
レオナルド「待っててくれてありがとう。……そうだね、そろそろやろうか」
ランスロット「……」ザシ、ジリジリ
百貌の部下B「……」ジリ
百貌の部下C「……」ジリィッ
831 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:34:05.70 ID:LW5FqCKG0
レオナルド(カッコいいことは言ったけど、これじゃ勝負にもならないのが正直なところだな……霊基が拡張、反転してるだって? 敵の正体が分からないんじゃ、どうしようもない)
レオナルド(囲まれてる。……詰みか? ……ブルース、キミならどうした?)
トリスタン「……」ス……
レオナルド「!!」ガシャリ
レオナルド(竪琴を構えた! 来る!!)
832 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:34:54.57 ID:LW5FqCKG0
ドガッシャァァァァァァァァ!!!! ゴシャシャシャシャシャシャァ!!!
レオナルド「!!!?」ビクゥッ
トリスタン「!!!」バッ
ランスロット「!?」ザザァッ
巨大な拳の痕が付いた鎧騎士「ぐ……」ゴシャシャシャシャ……ズシャ……
ランスロット「何者だ!?」
レオナルド「な……」
探知機「」ピピーッ!!ピピーッ!!ピピピピピピビビビビビビbbbbb
833 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:35:39.55 ID:LW5FqCKG0
ドシリ、ドシリ。ドシリ、ドシリ。
834 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:36:14.06 ID:LW5FqCKG0
ドシリ、ドシリ。ドシリ、ドシリ……
「フフフ……臆病者の匂いがするぞ、ここは……いずれ来る『破滅』に、抗いもせず引きこもる腰抜け共の匂いだ」
レオナルド「き……キミは……!」
マシュ「……!!!」
「それが自然の摂理とはいえ、悲しいものだな。騎士も、恐怖には抗えないらしい……」ドシリ、ドシリ。ドシリ、ドシリ……
ランスロット「……」ガシャリ
トリスタン「……」スッ
「安心しろ。俺は『やつ』のように残酷ではない……貴様らには、優しくしてやろう」
ドシリ!!!
ベイン「……さぁ、どちらから殺してほしいんだ?」
835 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:37:16.74 ID:LW5FqCKG0
………………
ガウェイン「……貴方は、一体」ガシャ
百貌「き、さま……違う……違う……!! レッドフードでは、ない……!?」ドロォ
レッドフード?「……クックッ、ようやく隙を見せたなァ。ほんの少し弱らせたトコに、ほんのチョッピリ優しい言葉をかけられたくらいで、お前らは……」
泥「」グジュ……グジュル、グジュジュ
百貌「あが……ぐ……、こ、この、おぞましい……気配……貴様……違う、サーヴァントですらない……!?」ドロ、ドロォ
レッドフード?「へへ、苦しいかい? 分かるよ、キツイよなァ。最初だけさ、すぐに良くなる……俺から目を逸らすな……ウフフ、ここからがイイところだ……」
百貌「……!!」
百貌(ここまでか……この泥が、体を溶かす感覚……徐々に、心地よく感じ始めてしまった。浸食されている……)
百貌(……申し訳ありません、初代様。すまない、呪腕、静謐の……レッドフード、気付けなかった……これが、『お前ではない』という事に……)
百貌(……百の貌を持つ、私ですら……)ドロォ
ベチャッ
836 :
◆GmHi5G5d.E
[saga]:2022/03/12(土) 16:38:32.52 ID:LW5FqCKG0
レッドフード?「……フゥ! コイツを片せたら後は怖いモノ無しだぜ」
ガウェイン「……」ガシャリ
レッドフード?「あン? ……へっへ、厄介な敵を倒してやったんだ、コイツの首を手土産に聖都に入れてもらえねえモンかね?」
ガウェイン「戯れを。王の選定なくとも、気配だけで伝わってきます。貴方は『純粋なる悪』そのもの……ここで滅すべき『敵』です」
レッドフード?「ひ、ヒヒヒヒハハハハハハ! そうだよなァ、バレるよなぁ。……しっかし酷えと思わねえか? 『レッドフード』は俺が先に名乗ってたんだ。パクり疑惑なんてのは、コメディアンにとっちゃ致命傷だぜ」
ガウェイン「……」
レッドフード?「……けどま、許してやるさ。他にもウケるネタは沢山抱えてる……そうだ、一つとっておきのジョークを教えてやろうか?」ガシィ、ズルリ
赤いヘルメット「」ドシャァッ
ガウェイン「結構です。貴方とは笑いのセンスが違いそうだ……!」ダッ
ジョーカー「ハッハハハハハハハハハ!!! 騎士サマってのはどいつもこいつもおカタいねェ!」ジャキリ
837 :
◆GmHi5G5d.E
[saga sage]:2022/03/12(土) 16:40:03.40 ID:LW5FqCKG0
今回の更新はここまでです。お付き合い有難うございました。
あけましておめでとうございます(震え声)
838 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/12(土) 18:46:18.68 ID:yNEfTzxCo
夜空に浮かぶシグナルは合図じゃない
>>1
乙だ
839 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/16(水) 22:02:10.37 ID:SZLjXS/U0
提督「嫌われスイッチ?」明石「はいっ」
http://hayabusa3.open2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1427368381/
提督「嫌われスイッチだと?」夕張「そうです!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428849410/
魔剣転生というスレの作者ですが、断筆する事に致しました。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1602503948/
外野の反応に負けてエタった先人たち
彼らの冥福を祈りつつ我々は二の舞を演じない様に注意しよう
840 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/04/06(水) 11:16:03.28 ID:548vUPYH0
乙、やっと追いついたわ
エタった作品かと思ってたが、(3年ぶりとはいえ)最終更新は最近で良かった
面白いから最後まで書ききってくれることを祈る
841 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/06/26(日) 21:33:30.55 ID:AskqzvRg0
おー久しぶりに来てみたら!!
帰ってきてくれて嬉しいよ、のんびりでいいからまた書いてほしいな! 乙でした!!
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