バットマン「グランド……オーダー?」レオナルド「その3だね」

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402 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:09:02.68 ID:nZCc8mKv0



………………


ケルト兵達「「「」」」ザン、ザン、ザン


ベオウルフ「ああ? 誰かと思えば、フェルグスか」

フェルグス「ふふ、ベオウルフか。ここに居るという事は、大方計算通りに行っているらしいな」

ベオウルフ「俺はフィンの野郎が裏切ったから狩りに来たんだが」

フェルグス「俺はヴィクターだ。お互い、嫌な役回りだな」

ベオウルフ「ははっ、奴らの裏切った理由に感化されちまってるか?」

フェルグス「まさか。戦場で余計な感傷に浸る戦士は居るまい。ただ、かつての友だったというだけだ」

ベオウルフ「……しっかしまあ、どうする。奴ら、あの廃屋に入ったっきりだ」

フェルグス「うむ、どうするという事もなく……」



冷気「」ズォォォォォォォ……



403 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:09:32.96 ID:nZCc8mKv0



ベオウルフ「……おい」

フェルグス「ああ」



ビーム「」ギュォォォォォオッ


ケルト兵G「!?」パキィ……ン


フェルグス「おお、これは……ヴィクターだな」


フリーズ「全員……」ガシャン、ガシャン、ガシャン……


フェルグス「ベオウルフ! 来るぞ!」

ベオウルフ「分かってるよ!」


フリーズ「動くな!!(Freeeeeeeeeeeeeze!!!!!)」ゴォォォォォォォォォォオォォォッ!!!


404 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:10:22.95 ID:nZCc8mKv0




ケルト兵達「「「……」」」パキィ……バキ、ボロボロ……


ベオウルフ「ぐおおおぉ……効きやがる!!」パキィ

フェルグス「なんと、あれほど用意していた兵達が半壊か。無事かベオウルフ」ザザァ

ベオウルフ「脇腹が凍り付きやがった! 甘く見てたか?」

フェルグス「なんの、まだまだこちらが有利だ!」



フリーズ「フィン、やるぞ」

フィン「よし……やってしまおうか!」


405 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:11:44.68 ID:nZCc8mKv0



………………


(((お前は最高の弟だ、フロイド)))

(((死因は一発の誤射……)))

(((お前は犯罪者だ、フロイド・ロートン。兄貴を殺した犯罪者だ)))

(((パパ、人を撃つのはもうやめて……)))

(((でも、パパにはこれしかないんだ)))

(((……ハッピーバースデー、これからお前はどんどん大きくなるだろう)))



デッドショット(……お前は大きくなると思ってた。たとえ嫌われても、父親とすら呼ばれなくなっても、健やかに成長して、まともな人間になってくれればそれで良いと思っていた)


ザアァァァァァ……ホーッ、ホーッ……


デッドショット(だが、理不尽だよな。生きていけると思ってた世界に、死ぬ事を押し付けられるなんて)


エリザベート「……」スゥ、スゥ……

デッドショット「……」



406 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:12:25.99 ID:nZCc8mKv0



デッドショット「……」


デッドショット(分かってる。分かってるさ。これは俺が振りまいてきた理不尽のツケだ。世界は見逃さなかった。俺がのうのうと幸せになるなんて、許さなかったんだ)

デッドショット(計算は得意なつもりだった。だが俺にとって唯一の誤算だったのは、人生が一度きりだった事だ)

デッドショット(……許してくれ、なんて言えねえよなあ)


デッドショット「……」ムクリ

エリザベート「……」スゥスゥ……

デッドショット「……じゃあな」ボソ


407 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:12:56.66 ID:nZCc8mKv0



………………



アルジュナ「はあーっ、はあーっ……!」バチバチ、バチィ……

カルナ「はあ、はあ……!」ゴゴゥッ、ゴゴゴ……

アルジュナ「随分、苦しげだな、カルナ……!」ゼー、ハー

カルナ「お前も、ギリギリのように見えるがな……!」ハア、ハア

アルジュナ「誰がギリギリなものか、まだやれる!」ガシャ

カルナ「ケルト兵も尽きた、あとはお前だけだ……!」ググッ


ブォンッ、ガシャァ……バキィ、ドゴォ……



408 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:13:26.87 ID:nZCc8mKv0



アルジュナ「ごふぅ……」ドシャッ

カルナ「うぐぉ……」ドサァ

アルジュナ「い、忌々しい……!」ググ、プルプルプル……

カルナ「そっくりそのまま、台詞を返す……」ムク……フラ、ドサァ

アルジュナ「貴様は昔からそうだった! 一目見た時から、こうなると分かっていたのに……ええい、あの時殺さなかった私の不覚……!」

カルナ「俺も、同じ気持ちだ……」



409 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:14:52.43 ID:nZCc8mKv0




アルジュナ「……」

カルナ「……」


梟「」ホーッ、ホーッ……


アルジュナ「……」

カルナ「……」

アルジュナ「…………」

カルナ「…………」

アルジュナ「……」ドサッ

カルナ「……」ドシャッ
410 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:16:38.91 ID:nZCc8mKv0

アルジュナ(い、忌々しい……!! もう少し、もう少しでとどめを刺せるというのに、ここで力果てるとは……!!)プル、プル……

カルナ(……)フッ


カルナ「……アルジュナ」

アルジュナ「……?」

カルナ「……生前の俺は、神々の呪いによって阻まれ、お前と全力のぶつけ合いをできずに死んだ」

アルジュナ「……」

カルナ「……これは、俺の悲願だったのかもしれない」

アルジュナ「……」

カルナ「お前はどうだ、アルジュナ。お前は生前、俺を殺した事に納得していたか?」

アルジュナ「……分かっていてそういう事を訊くんじゃない」

カルナ「……」

アルジュナ「……全く」


411 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:17:15.98 ID:nZCc8mKv0



アルジュナ「……まあ今、こうして俺の方が優れていると証明された。そういった意味では、おおむね満足だ」

カルナ「何?」

アルジュナ「こうして俺の方が優れていると……」

カルナ「異議がある」

アルジュナ「ははは、もう立てもしないヤツが何を言っている」

カルナ「立てる」ググ、プルプル……

アルジュナ「空元気を……!!」プルプルプル……



412 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:17:48.20 ID:nZCc8mKv0



???「ぺっぺっ、奴らめ、遠慮も無しに殴りやがる……撒くのにここまで時間が掛かるとは」ヨロヨロ

カルナ「む……」

アルジュナ「誰だ」

ペンギン「あ? ……何だ、カルナ。こんなところに居やがったのか」ポツン

カルナ「オズワルド……」



413 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:18:21.69 ID:nZCc8mKv0



ペンギン「なんだ、そっちの黒いのは。敵か?」

アルジュナ「……」

カルナ「……敵だ」

ペンギン「そうか……フン、随分弱ってるな。俺が殺してやろうか?」

アルジュナ「お前一人を殺す程度の力は十分残っているぞ、小男」

ペンギン「カハハハ、ボロボロですごみやがって。……だがまあ、俺も限界だ……」ドシャリ

カルナ「……何をしに来た?」

ペンギン「逃げてきたんだ、ケルト共からな。お前を見たら安心で気が抜けた」


414 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:18:55.29 ID:nZCc8mKv0



カルナ「ケルト兵が、ヴィランストリートにも……?」

ペンギン「部下が殺された。ガキ共を逃がすために俺もギリギリになっちまったが、まあ、奴らの忠誠心に救われたさ……」

アルジュナ「……」

ペンギン「カルナ、お前、今回は偵察だけだと言ったのに、こんなところで遊んでやがって」

カルナ「……乗ってしまったんだ。一騎打ちの誘いに」

アルジュナ「フン、お前から誘ってきたように思うがな」

ペンギン「どっちだって構うか、ガキみたいな押し付け合いをするんじゃねえ」



415 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:19:22.91 ID:nZCc8mKv0



ペンギン「……あぁ……あー、どっちかライターかマッチを持ってねえのか」ゴソゴソ、カポ

カルナ「……いいや」

アルジュナ「……」ポイッ

ペンギン「オッ、……こりゃどうも」パシ、シュポッ……

アルジュナ「フン、せいぜい寿命を縮めろ」

ペンギン「高い葉巻は体にいいんだ、知ってたか?」シュゥゥゥ、ホウッ……

カルナ「いい加減な事を言うな」

ペンギン「じゃあ言い換えとくか、我慢は体に毒だ……」フー……


416 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:19:51.24 ID:nZCc8mKv0



煙「」フワァ……


ペンギン「……で、どうするんだ。一騎打ちは終わったのか」

アルジュナ「……」

カルナ「……」

ペンギン「……まあ、死ぬまでやりてえならそうしろ。見たとこ、どうにも治まらねえ因縁があるんだろ。そりゃあ理解できる」

アルジュナ「……」

カルナ「……」

ペンギン「俺も昔はそういうのにこだわっててな……」

アルジュナ「フン」

ペンギン「なんだ」

アルジュナ「興が冷める」

ペンギン「若造が!」



417 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:20:18.87 ID:nZCc8mKv0




アルジュナ「……」

カルナ「……」

ペンギン「……ふー。で?」

アルジュナ「……やめだ」

カルナ「もう一度やるにせよ、仕切り直しが要るだろうな……」

ペンギン「だろうな」


418 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:20:47.58 ID:nZCc8mKv0



ペンギン「……それにしてもお前ら、負った傷に重傷もあるだろ」

カルナ「……」

アルジュナ「……」

ペンギン「誰か治療できるのか?」

カルナ・アルジュナ「無理だ」

ペンギン「……お前ら、俺が来たことに感謝するんだな。見せてみろ馬鹿共」



419 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:21:16.15 ID:nZCc8mKv0



………………


バットマン「……」

エジソン「……」

エレナ「……」

バットマン「……分かった。信じよう」

エジソン「ホッ……」

エレナ「ホッ……」


バットマン(……不審な動きがないか、監視が必要だな……)



420 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:21:48.03 ID:nZCc8mKv0



エジソン「キミ達の噂は前々から聞いていた。我らが労働者たちを氷山の牢から解放し、ケルトの侵略から街を守る英雄的ゲリラ勢力だと!」ガオォッ

バットマン「ロボットとケルトの無益な戦争も止めようとしている」

エジソン「むぐぅ」シュン

バットマン「……だが、そうだな。そちらも略奪の類は行っていないようだ、一般人の安全確保という点では、利害の一致はある」

エジソン「む、むむ??」

バットマン「『アメリカを守る』らしいな。それなら、私達が協力を断る道理はない」

エジソン「おお!! 協力締結か!」ガオォッ

バットマン「……だが、ロボットの数に任せたお粗末な攻め手は受容できない。地図を見せてくれ、少し戦術を見直す」

エジソン「(´・ω・`)」シュン



421 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:22:17.12 ID:nZCc8mKv0



地図「」バサァッ

バットマン「ドクター、この地図を読み込んでスーツのコンピューター機能で表示してくれ」ピッピッ

ドクター『はいよっと。少し待ってね……ダウンロード完了、表示するよ!』


データマップ「」ブォォォン……


バットマン「ふむ」


バットマン(この地図に……ケルト兵から得た敵拠点の、座標情報を組み合わせる)ピッピッ

バットマン(そして、こちらの拠点の座標情報も入れて)ピピ


バットマン「……正確な位置関係は、こうだ」ピッピッ、ブゥゥン

エジソン「ほう!」

エレナ「まあ、すごい技術ね!」



422 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:23:22.15 ID:nZCc8mKv0



バットマン(北は延々と続く荒野と砂漠、対して南に行くほど森がうっそうと生い茂る大陸か。こちらは東に、あちらは西に拠点を構えている。さあ、どうする)


エレナ「じゃあどうしましょうか!」

バットマン「ああ」

エレナ「?」

バットマン「……ああ」

エジソン「エレナ女史、これは……発明に熱中している時の私だ。多分何も聞こえていない」

バットマン「ああ」

エレナ「ええ……?」


バットマン(ロボットの武装を見るに、やはり南の森で戦うのは避けた方が良い。障害物が多すぎて実力を発揮しきれない……となると、主戦場は北、荒野地帯になるか)

バットマン(……)


キャットウーマン「あら、作戦会議中かしら?」

エレナ「会議というか、彼が一人で考え込んでるというか」

キャットウーマン「駄目よバットマン、いい加減人に頼る事を覚えなきゃ」シナッ

バットマン「……」

キャットウーマン「……」ペシパシ

バットマン「………………」

キャットウーマン「……ブルース」ボソッ

バットマン「……セリーナ、いつから居た」

キャットウーマン「相変わらずよね……」ハァ



423 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:24:14.11 ID:nZCc8mKv0



キャットウーマン「それで、どうするの? 戦術は?」

バットマン「北だ。障害物の少ない北を主戦場に据え、戦力を半分以上投入する。槍を持ったケルト兵達は突破力に優れるだろうが、ロボットの壁を分厚くすれば阻めるだろう」

キャットウーマン「……ふうん?」

バットマン「……と、ここまでなら敵も当然考えているだろう。その裏を掻く形で、南に少数精鋭のサーヴァント部隊を用意する。これで敵を突破、拠点へ速攻を仕掛ける」

キャットウーマン「大胆ね」

バットマン「危険は伴うが、わざわざ敵の戦力が集中すると予想できる北で真っ向勝負をするのは好ましくない。デスストロークは恐らく消えていない、戦闘が長引けばクーフーリンも出て来る。主戦場を囮に使う」

キャットウーマン「……成程。流石ね」

バットマン「ああ。……どうした?」

キャットウーマン「いいえ、何でもないわ。難しい話で知恵熱が出そう、私は夜風に当たってくるわね」コツコツ

バットマン「……」


バットマン(……)


エジソン「ふむふむ成程、良い戦術だ! それでいくとしよう!」

バットマン「……いや」

エレナ「え?」



424 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:24:43.10 ID:nZCc8mKv0



………………



フェルグス「ははは、そろそろ終わりか!」ダダッ、ガギィ!!

フリーズ「ぐぅっ……」ズッシャシャァ、ギリィ

ケルト兵K「!」ダッ

フリーズ「クソ……」ガギャァ!!


フリーズ(まだか、フィン!?)


フィン「てやぁっ!!」ガギィ!!


フィン(もう少し、もう少しで……!)ブゥンッ、ガギィ!!


ベオウルフ「ったくしゃらくせえなァ!!」ドシリ

フィン「!!」バッ

ベオウルフ「宝具でも発動したかったみてえだが、遅かったな。俺の方が温まっちまったよ……!」ドシ、ババッ!!

フィン「しまッ」



425 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:25:32.41 ID:nZCc8mKv0



 ベオウルフは大きく踏み込んだ。得物に対して、近すぎる間合いだ。その戦闘経験の豊富さから、フィンは戸惑いに囚われる。この距離で剣を振り抜いても、効果的なダメージなど……。

「源流(グレンデル)」

 その瞬間、荒々しく踏み込んだ英雄は、両手から剣を捨てた。フィンは気付く。自分は致命的なミスを犯した。目の前の豪傑が得意な戦法は、武器を持った戦いではなく……!

「闘争(バスター)!!!」

 鉄拳に頬を打ち抜かれるのを感じながら、フィンはたたらを踏む。これで到底終わりではない。ベオウルフは拳を引き戻し、更に殴りつける。鳩尾。更に殴りつける。胸。更に殴りつける。キドニー。キドニー。喉元。脇腹。脇腹。脇腹。鳩尾に強烈な一発。

「がっは……」

 血を撒き散らしながら、フィンは倒れかかった。だが倒れればすかさずトドメの一撃に持ち込まれるだろう。それだけの気迫が、ベオウルフにはある。踏ん張りながら、フィンは遠い日々を目に映す。フィオナ騎士団としての栄光の日々。めとった最初の妻。一番槍、ディルムッドとの出会い。妻の死。悲しみ。二人目の妻。二人目の妻が、ディルムッドを好いていたという事実。ディルムッドとのすれ違い……そして、彼との後悔にまみれた別れ。


 フィンは耐えた。倒れるわけにはいかない。彼は台風のようなラッシュをその身に受けながら、朦朧とする思考を回転させる。人は死の直前に走馬燈を見るという。それは何故だ。後悔なくあの世へ旅立つためか? それとも……?


「終わり、だァ!!」


 岩盤をすら砕くかのような一撃をモロに腹部へ受けながら、それでもフィンは立っていた。ベオウルフの拳が腹から引き抜かれ、フィンはもがきながら後退る。白目を剥き、口の端から血を流しながら、彼は限りなく死へ近付いた。


(死ぬのか?)


 彼は奔流じみた走馬燈の中から誇りを掴み取り、生のほとりに留まろうと足掻いた。彼にとっての誇りとは何だっただろうか。それは武勇だったかもしれない。それは名声だったかもしれない。


(((──私がお前を守ってみせるとも)))


 しかし、彼は愛を選んだ。それこそが彼の足を運ばせ、死を少しだけ遠ざけ、ひとりの騎士としての意地を思い出させた。


 技の反動に耐えながら、ベオウルフは目を瞠った。確実に殺したはずの相手が、よろめきながら、血を吐きながら、それでも歯を食い縛って立ち続けている。しかも不敵な笑みまで浮かべている。


「ようやく、宝具の分の魔力が、溜まり切った……」


 ベオウルフの宝具を受け切ったフィンは、その身に叩き込まれた魔力を利用。みずからの宝具の助けとし、震える腕で槍を構えた。


(マズい)


 フリーズを攻撃していたフェルグスがそれを見、瞬時に判断し、大技の反動で動けないベオウルフを庇いに回る。フィンの宝具は強力だが、受けきれないほどではない。このまま防御し、その後に反撃すれば良い。


「堕ちたる神霊をも屠る、魔の一撃」


 フェルグスが剣を横に構え、万全の防御姿勢を取る。フィン・マックールの真に恐るべき能力は治癒と智慧であり、その宝具ではない。ならば当然受け切れる。それまでにはベオウルフも反動から脱している事だろう。楽ないくさだ。だが、フェルグスは言葉にならない不吉な予感を禁じ得ない。


「その身で、味わえ!! 『無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)!!』」


 フィンが構えた槍から飛び出したのは、高圧水流じみた水の魔力だった。その直撃を防御しながら、フェルグスは耐える。やはり威力自体は大したものではない。横に構えた大業物『カラドボルグ』に当たった水の奔流は、砕かれ、辺り一面に撒き散らされる。

 フィンは出力を最大に保ち続ける。だがカラドボルグは砕けない。フェルグス愛用の魔剣。一振りで丘三つを斬り飛ばす逸品。どうして水の奔流で砕けるハズがある? フェルグスは笑おうとし、特大の嫌な予感に顔をしかめた。吐く息が白い?


「よくやってくれた、フィン」


 ボロボロになった極低体温スーツの中、フリーズが呟いた。フリーズ・ガンの銃口がこちらへ向いているのを見たフェルグスは、敗北の闇が足元にぽっかりと口を開いたのを感じ、半ば呆けたように表情を弛緩させた。ベオウルフは苦笑しながらフィンを見つめていた。


 十分な水気を含んだ空気は、ケルト兵達、ベオウルフ、フェルグスを巻き込み、一瞬で凍り付いた。



426 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:26:00.54 ID:nZCc8mKv0



フリーズ「や、ったか……?」ガシャリ

フィン「それは、世間一般で言うフラグですので、言わない方が良いかと」ゼエ、ゼエ

フリーズ「……」


氷塊「」パキィ、パキ……


フリーズ「……やったんだな」

フィン「どうやら」

フリーズ「信じられん……」

フィン「私もです、ゴホッ」



427 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:26:29.25 ID:nZCc8mKv0



………………

床「」ギシ、ギシ、ギシィ……


古びた椅子「」ギィィ……



フリーズ「……よし、これで大方処置は完了した。ずいぶんと手ひどくやられたな」

フィン「ぐっ……なかなか、痛いものですな」

フリーズ「これで一旦は、落ち着けるか。我々を裏切り者として狩る者も居なくなった」

フィン「ええ、まあ、そうでしょうな……」

フリーズ「……浮かない顔だな」

フィン「……」


老婆「……げほっ、ごほっ……」



428 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:26:57.50 ID:nZCc8mKv0



フィン「……実を言えば、私にとっては、生きるも死ぬも大した問題ではないのです」

フリーズ「……どういう事だ」

フィン「ひとつ、大きな心残りがあり……それを解決したいのですが、ひとりでは恐ろしい。付き合っていただけませんか」

フリーズ「……?」

フィン「それは、『ダグザの棍棒』と呼ばれています」



429 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:27:29.07 ID:nZCc8mKv0



………………


ビリー「……」イライライライラ


シータ「〜♪」ギュッ

ラーマ「……///」カァ

ビリー「……あー砂糖吐きそう。すっごい今、砂糖吐きそう」

ナイチンゲール「……ブルースは何処へ?」

ジェロニモ「エジソンに呼ばれて指令室だ」

ナイチンゲール「……」スクッ

ジェロニモ「むっ、何処へ?」

ナイチンゲール「彼は一人だと必ず無茶をします。マシュが居ない今、私が傍に付かなければ」スタスタ

ジェロニモ「む、無茶とは……ここでどう無茶を」


指令室「」ドンガラガッシャーン!!


ジェロニモ「え?」

ナイチンゲール「……」ダッ



430 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:28:02.82 ID:nZCc8mKv0



………………


エジソン「キミは! 本気で! 言っているのか!?」フーッ、フーッ

エレナ「え、エジソン、少し落ち着いて……」

バットマン「私はいつでも本気だ」

エジソン「そんな策が通るとでも……」

バットマン「だが、通してもらう。このままではいずれケルト兵の無限の物量に、こちらの生産力は追いつかなくなる。ならこうするしかない」

エジソン「もし万が一我々が負けた時、どうなるか分からんワケではあるまい! 破滅だ! 皆が死ぬ! それはアメリカの死だ!」ガオォッ

バットマン「なら失敗しなければ良い。このままこうして居ても、破滅は向こうからやってくるぞ。逃げてはならない。立ち向かわねば、エジソン」

エジソン「貴様は……!!」


ガララッ


ナイチンゲール「ブルース、どうしました」

ジェロニモ「どうした、エジソン!?」


431 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:28:31.85 ID:nZCc8mKv0



バットマン「……いいや、何でもない」

エジソン「……」フーッ……フーッ……

ナイチンゲール「……何でもない、と?」

エジソン「……ああ、うむ。何でもない。すまない、取り乱した」フーッ……

ガラッ

キャットウーマン「どうしたの!?」

バットマン「……」

エレナ「なんでもないの、なんでも……大丈夫よ」

キャットウーマン「……なら良いけど」


432 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:29:00.51 ID:nZCc8mKv0



エジソン「……ここまでにしよう、会議は。キミの策はあまりにも非現実的すぎる。この拠点は命なのだ」

バットマン「……お前の使命は理解している、エジソン。だが一度考えてみてくれ。失敗を産み出す方法はどちらなのか」コツ、コツ

扉「」ガララッ……



エジソン「……」

ジェロニモ「……どうしたと言うんだ」

エジソン「……少し、考えさせてほしい」

エレナ「……」

ナイチンゲール「……」

キャットウーマン「……?」


433 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:29:47.50 ID:nZCc8mKv0



………………


チュン!! チュンチュン!!


エリザベート「……んんぅ、おはよう……?」ムクリ


空の寝袋「」


エリザベート「……え?」バッ

手紙「」ハラリ……

エリザベート「……これ」パシ、ペラリ

エリザベート「……」

手紙『世話になったな

    デッドショット』

エリザベート「……あの、馬鹿!」ダッ




434 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/12/20(木) 00:30:16.02 ID:nZCc8mKv0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/20(木) 01:59:44.43 ID:Anw5OPaio

やっぱエジソンは初見びっくりする系の鯖筆頭だよな…
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/20(木) 11:22:39.41 ID:A2C5K76j0
乙!わくわくが止まらん
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/20(木) 16:10:26.28 ID:jw1VRidA0
乙乙!
フィンがかっこよくて嬉しい……フリーズとのコンビもいいね!
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/20(木) 16:20:24.12 ID:MXsIBaW90
アルジュナ、カルナから見たらペンギンの方が若造という特大のブーメランが
異父兄並に苦労してるという授かりの英雄アルジュナ…もうやだこのバトルジャンキー
439 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:01:39.93 ID:zR/7c36Y0



クーフーリン「……」

ケルト兵「王よ、完成しました」

クーフーリン「……ようやくか。見せてみろ」

ケルト兵「はっ、こちらに……」スッ


緑の槍「」


クーフーリン「……へえ」ニヤリ


440 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:02:09.91 ID:zR/7c36Y0


メイヴ「すごい、綺麗ね。私にも持たせて頂戴?」

クーフーリン「駄目だ。……下がっていい」

ケルト兵「はっ」ササッ

クーフーリン「……これでようやく、俺が最強か」

メイヴ「……大丈夫よ、クーちゃん。最初からアナタが最強の戦士なんだから」

クーフーリン「フン……」スクッ

メイヴ「何処へ行くの?」

クーフーリン「最後の心残りを消す」スタスタ



441 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:03:08.62 ID:zR/7c36Y0


………………

緑の床「」ジリジリ……

緑の壁「」ジジジジ……


???「……ぐう、うぅ……」グッタリ


緑の扉「」ガチャリ


クーフーリン「……こいつは驚いた、まだ生きていたのか」

???「……う、う……」

クーフーリン「だがまあ、虫の息だな。もってあと三日ってところか。……このまま苦しんで死ぬのと、ひと思いに楽になるの。どっちが良い」

???「……」

クーフーリン「……楽になれるぜ、コイツを使えばな」

緑の槍「」ジジジ……


442 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:03:44.67 ID:zR/7c36Y0


???「……」ボソボソ

クーフーリン「……?」

???「……こど、もは……無事なのか……?」

クーフーリン「……ケッ、そうか。なら好きにしろ」

???「……」

クーフーリン「ひと思いに殺すのもやめだ。テメェは苦しませといてやる。余計なモンを抱え込んだまま、後悔にまみれて死ね」

???「……」

クーフーリン「……じゃあな」スタスタ、ガチャリ


緑の扉「」バタン


???「……」



443 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:04:19.41 ID:zR/7c36Y0



………………

マシュ『……ここは?』

???『マシュ。マシュ・キリエライト』

マシュ『え? あなたは……』

???『聞こえるか、マシュ・キリエライト。盾を手に戦う、誇り高き騎士』

マシュ『あなたは、一体』

???『お前はこれまで、どのような敵にも立ち向かって来た。臆しはすれど、退く事もなく。その背に大切な者を護ると誓い』

マシュ『……』


444 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:05:32.95 ID:zR/7c36Y0



???『……ゆえに、このような日が来ることは分かっていた。必ず、精神性だけで打ち勝てぬ敵というものはある』

マシュ『……デスストロークですか?』

???『それだけではない。お前の道には、未だ多くの強大な壁が待ち構える。ひとつ問いたい、マシュ・キリエライト』

マシュ『何でしょうか』

???『お前は、自分の命を犠牲にしてでも、人を護る事を選ぶか?』

マシュ『はい。私は、絶対に皆を守ります。マスターを』

???『……そうか』



445 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:06:56.78 ID:zR/7c36Y0



???『ならば、私はこの力をお前に託そう。その命を燃やし、敵と戦うが良い』

マシュ『……』

???『……だが、心せよ、マシュ。人が戦う時、最も強い原動力となるのは────……』



446 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:07:29.82 ID:zR/7c36Y0



チュン、チュンチュン……


マシュ「……」ムクリ

マシュ「……ここは?」キョロキョロ


扉「」コン、コン

ガララッ


ブルース「マシュ、起きて……いるな。おはよう」

マシュ「マスター。おはようございます」

ブルース「治ったか」

マシュ「はい、違和感はありません」

ブルース「ドクター、観測を」

ドクター『うん、大丈夫だ! 治ってるね!』



447 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:08:02.77 ID:zR/7c36Y0



ブルース「宝具が不安定になった事だが」

マシュ「大丈夫です」

ブルース「……本当に?」

マシュ「はい。……あの……それとは別にひとつだけ、お尋ねしたい事が」

ブルース「何だ?」

マシュ「人が戦う最も強い原動力とは、何でしょうか?」

ブルース「……」



448 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:08:33.00 ID:zR/7c36Y0




ブルース「……それは、私にとっては、恐怖だ」

マシュ「マスターにとっては?」

ブルース「人によって違うだろう。それに私の戦う理由も変わりつつある」

マシュ「……」

ブルース「……それをうまく言語化は出来ないが」

マシュ「……答えて頂いて、ありがとうございました」

ブルース「ああ。……私も探しておく」

マシュ「私もです」


449 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:09:02.14 ID:zR/7c36Y0



ブルース(こうして、スーツを着用する意味も。私にとっては、変わりつつあるかもしれないな)


ブルース「……」ガチャ、ガチャ。ガチリ

ブルース「……」ガキッ、ガシャリ。シュルッ

マスク「」

ブルース「……」スッ


バットマン「……行くぞマシュ、移動しながら状況と作戦を説明する」

マシュ「はい」スクッ



450 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:09:33.58 ID:zR/7c36Y0



………………


バットマン「南に行く戦力はこうだ」

ビリー「どうも」

ジェロニモ「やあ、よろしく頼むぞ」

ラーマ「うむ!」

シータ「よろしくお願いします!」フンス

マシュ「こ、こちらこそ!」ペコリ

ナイチンゲール「……ブルース、やはり私は北の主戦場へ行った方が」

バットマン「ナースはお前だけではない」

ナイチンゲール「……」ムスッ



451 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:10:03.31 ID:zR/7c36Y0



エジソン「対して、北の主戦場へ行くのは」

エレナ「まあ、こうなるわね」

キャットウーマン「よろしくお願いね?」

エレナ「うふふ、こちらこそ!」

エジソン「そしてロボット大軍団!」


ロボット達「「「……」」」ガシャン、ウィィィィ



エジソン「……ふむ」

バットマン「北には搦め手が得意なメンツを入れた。……判断は前情報でのみ行ったが」


バットマン(そして、確かめたい事もある。そのためのメンバー分けだ)


エジソン「ジェロニモ君はこちらに来ても良かったのでは?」

バットマン「砂での目くらましは接近戦に優位を与える。ロボットにはあまり好ましくない」

エジソン「ふむぅ……」



452 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:10:40.33 ID:zR/7c36Y0



エジソン「……本当にやるのか、あれを」

バットマン「それはお前に任せる」

エジソン「……うむぅ……」

バットマン「……」

エジソン「……キミはこれが最善だと?」

バットマン「ああ。私が最善だと思い、それを伝えている。……私を信用できないのも分かるが、これが私の計算の結果だ。何度やり直しても揺らがないだろう」

エジソン「……」

バットマン「……『全ての事は不可能だ、誰かがやるまでは』」

エジソン「む……」

バットマン「私に賭けろ、エジソン。お前の疑いは、行動で打ち砕く」



453 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:11:17.21 ID:zR/7c36Y0



エジソン「……ふむ。ふふ、ふふはははは……」

エジソン「成程、分かった。キミは大胆な男だ、ブルース。それほどの大言を、目の色一つ変えずに言ってのけるとは」

エジソン「乗った、キミに」

バットマン「そうか。……必ず成功させる、安心しろ」

エジソン「キミこそ安心したまえ。もし失敗した時は、私も共に地獄へ行くさ」

バットマン「そうか。では、地獄以外の何処かでまた会おう」

エジソン「ははは……はははははは!」


454 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:11:44.98 ID:zR/7c36Y0




キャットウーマン「寂しいわね、ここでお別れ?」

バットマン「ああ。そうなるな」

キャットウーマン「……もう、もうちょっと気の利いた台詞は出て来ないワケ?」

バットマン「……」

キャットウーマン「まあ良いわ、期待してなかったもの。生きてまた会いましょうね、ブルース」ヒラヒラ

バットマン「……ああ、さらばだ」


バットマン(……)



455 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:12:15.19 ID:zR/7c36Y0



マシュ「準備、できました!」

バットマン「よし。……南側人員、全員行けるか」

ビリー「オッケー!」

シータ「はいっ!」

ラーマ「うむ!」

ナイチンゲール「はい」

ジェロニモ「用意よし!」

マシュ「行けます!」

ロボット達「「「」」」ガシャ、ウィィィィィ……


バットマン「……行くぞ!」



456 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:12:47.56 ID:zR/7c36Y0



キャットウーマン「それじゃ、私達も行きましょうか」

エジソン「うむ! ……少し待ってくれ、地面の調子を確かめる……」

キャットウーマン「……地面の調子?」

エジソン「いやいや、こちらの話だ。……よしよし、ちゃんと地面をやっているな。では我々も行こう!」

キャットウーマン「???」

エレナ「あ、あはは。エジソンは時々変な事をするのよ……」

エジソン「全ロボット部隊、出撃!!」


ロボット達「「「」」」ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ



457 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:13:17.71 ID:zR/7c36Y0



………………


デッドショット「……」タタッ、ザザァ

物陰「」

デッドショット「……」チラ


ケルト兵E「……」ザシ、ザシ、ザシ……

ケルト兵F「……」ザシ、ザシ、ザシ……


デッドショット「……」フゥ



デッドショット(勢い込んで敵の本拠地手前まで来たは良いが、まさか街ごとケルト兵に乗っ取られてるとはな。障害物が多いのが救いだが、これじゃ射線も通らん)



458 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:13:46.31 ID:zR/7c36Y0



デッドショット(……)

デッドショット(……エリザベートは、幻滅しただろう。俺を追って来る事なんてないハズだ。まさか、俺が敵の本陣に突っ込んでるとも思わんだろうし)

デッドショット「……すまねえな、勝手に巻き込んで」

エリザベート「本当よ、巻き込むなら中途半端はやめてよね!」プンプン

デッドショット「はは、次に会ったらもっとマシな形で……うん?」

エリザベート「なによ」

デッドショット「……んんん?」

エリザベート「何」

デッドショット「……はあ、すまん。俺とした事が、お前が恋し過ぎて幻覚まで見るなんてな……」

エリザベート「ちょ、ちょちょ、何よ急に!? 告白!? あ、アタシそういうの慣れてないっていうかぁ!!」

デッドショット「……この馬鹿な反応、マジでお前か」

エリザベート「はああ!?」


459 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:14:36.30 ID:zR/7c36Y0


デッドショット「……手紙残してあっただろ」

エリザベート「ああ、あれね! アンタ意外と字が綺麗なのね」

デッドショット「そうじゃねえ。普通アレを見たら『ああ、縁を切るつもりなんだな』って思って追って来ねえだろ。というかどうやって追っかけてきた?」

エリザベート「あの程度で縁切りなんてできるわけないでしょ。それにアンタ、匂いが濃いのよ。イヌじゃなくても追っかけられるわ」

デッドショット「匂い?」

エリザベート「加齢臭」

デッドショット「……嘘だろ」

エリザベート「ホントよ」

デッドショット「……」クンクン

エリザベート「……嘘だってば」

デッドショット「……」



460 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:15:19.07 ID:zR/7c36Y0



デッドショット「……ここが何処か分かってんのか、敵の本陣ちょっと手前だぞ。地獄は目と鼻の先だ」

エリザベート「分かってるわよ、そのくらい。地獄でライブも楽しそうじゃない?」

デッドショット「……なんで追っかけてきたんだ、お前、放っといて適当なところで生きてりゃ良かっただろ。これは俺の自己満足だ。自己満足で死ぬんだぞ」

エリザベート「ならアタシだって自己満足よ。何処で死んでもアタシの自由でしょ」

デッドショット「そんなワケねえだろ、お前は……」ドクン


デッドショット(コイツは、何だ? 俺にとって、何なんだ?)

デッドショット(ああ、フロイド。駄目だ、お前は……お前は、よりによってコイツを)


デッドショット「……馬鹿野郎が」

エリザベート「フンだ」



デッドショット(コイツを、娘とダブらせるなんて)




461 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:15:49.77 ID:zR/7c36Y0


………………


フィン「……ここ、です」

フリーズ「ここに? だが……」


フリーズ(ここは何も無い、岩場じゃないか)


フィン「ええ、傍目には何もないように見えるでしょうが……ここに魔術的な仕掛けが施されておりまして」

フリーズ「どうやってそれを知ったんだ?」

フィン「親指の知恵に導かれたのです」

フリーズ「親指……ああ、成程」

フィン「では、取り出すとしましょう」パパッ、ガシ……



462 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:16:18.86 ID:zR/7c36Y0



フィン「……!!」ガシィ、ググググ……

フリーズ「……!」


フリーズ(虚空から、棍棒が現れた……?)


フィン「ぐう……でりゃっ!」グィィッ

ダグザの棍棒「」スポンッ

フリーズ「お、おお……それが例の?」

フィン「ええ、これが多くの者が探し求める神器。ダグザの棍棒です」



463 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:16:48.37 ID:zR/7c36Y0



フリーズ「……だが、随分あっさりと手に入れたな。手伝って欲しいと言われたからには、もう少し恐ろしいものを想像していたが……」

フィン「……いえ、これを手に入れるのは、恐ろしくありません。この先が……私にとっては、少し恐ろしい。まだ、付き合っていただけますか」

フリーズ「この先……?」

フィン「はい。どうか頼みます。私は、これをせねば……自分の過去の清算すら出来ない」プル……

フリーズ「……」


フリーズ(……)


フリーズ「……付き合うさ。さあ、次は何処へ行く」

フィン「ありがとうございます。……では、戻るとしましょう。あの廃屋へ」



464 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:17:29.80 ID:zR/7c36Y0



床「」ギシィ……ギシィ


老婆「げほっ、げほ……ごほっ……」

フリーズ「……」ガシャリ、ガシャリ……ピタッ

フィン「……」スタ……スタ、ピタッ

フリーズ「……フィン、その棍棒をどうするんだ?」

フィン「これは……これは、順手で振れば、一度に幾人もの屈強な戦士を打ち倒す神器です。ですが、これを逆手で振ると、死人が蘇ると言われている」

ダグザの棍棒「」ゴロ……


老婆「……ごほ、ごほっ……」ハァ、ハァ


フィン「ただいま、戻ったよ。グラーニア」



465 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:18:10.66 ID:zR/7c36Y0



 グラーニア……それはフィンの、二人目の妻の名だ。その意味を問おうと、フリーズは隣に目をやる。そして押し黙った。

 彼はその時、フィンの身体の震えが止まっていた事に気付いた。その目にはさまざまな感情が去来している事が見て取れる。元フィオナ騎士団団長は、息を大きく吸い、ダグザの棍棒を逆手に握り……そして、振った。

 暫くは何も起きなかった。老婆の咳き込む音だけが響くあばら家の中、不自然なほどの静けさが場を満たしていた。だが、やがて、人の握りこぶしほどの青白い光の球が、ゆらゆらと現れた。

 それを見た老婆は、咳き込むのすら忘れ、目を見開いて呟いた。

「ああ、ディルムッド」

 ディルムッド……確かに、彼女はそう言った。青白い光の球は嬉しそうに震え、彼女の手に触れる。彼女も確かに両手で触れ、そして、その身体から、同じような光の球が出て行った。

 二つの光球は、しばらく踊るように、フリーズとフィンの目の前で回り続けた。出会えたことを歓喜するかの如く。だが、やがてそれらも消え、静寂と仄暗さが部屋に訪れた。



 老婆はピクリとも動かない。死んでいた。



466 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:18:44.46 ID:zR/7c36Y0



フィン「……」

フリーズ「……あれは」

フィン「ふふ、妙な話です。これを振れば、死人を生き返らせることができると思っていたのに。どうやら、真っ赤な嘘だったらしい」

フリーズ「……」

フィン「ありがとうございました、ヴィクター殿。これで私の後悔はもはや無い。生きようと、死のうと、どうでも良い身になれた。この恩は忘れません」

フリーズ「……」

フィン「……少し、休ませてください。疲れてしまいました」スタスタ

フリーズ「……待て、フィン」

フィン「はい?」


467 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:19:17.18 ID:zR/7c36Y0



フリーズ「お前は、アレで良かったのか。あの方法で」

フィン「……良いのです。彼女が幸せで、因縁は清算された。これ以上の事があるでしょうか」

フリーズ「……」

フィン「失礼します。……世話に、なりましたな」スタスタ

フリーズ「…………」


フリーズ(……フィン、お前は……)



468 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:19:56.84 ID:zR/7c36Y0



………………


マシュ「たあっ!!」ズドシャァ!!

ケルト兵A’’「!!」ドッシャァァ

ジェロニモ「そらっ!」ドドッ

ケルト兵B’’「!?」グシャァ

ビリー「あーもう、ホントにロボットが役に立たないなあ!?」ドォン、ドォン

ケルト兵C’’「っ……」ドシャァ

ラーマ「これは、なかなかきついな! シータ、平気か!?」ズババァッ

シータ「大丈夫です! ラーマ様こそ、ご無事ですか!?」シュパパパッ

ラーマ「ふはは、シータが居るなら負けは無い!」ダダッ

ビリー「わー愛のパワーって凄いなぁ! このまま全部やっちゃって欲しいよ!」



ナイチンゲール「退きなさい!!!」ドドドドドドドドグシャシャシャシャシャシャ……

ケルト兵達「「「」」」ドグジャシャシャシャシャシャ……


ビリー「……あそこで真っ赤な竜巻みたいになってるのって誰だっけ」

バットマン「フンッ!! ……アレはフローレンスだ」ドドッ

ケルト兵H’’「っ!?」ドシャァ



469 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:20:31.77 ID:zR/7c36Y0



ナイフ「「「」」」ヒュォォォォォンッ


ナイチンゲール「!!」パシパシパシィ!!


「快進撃も、ここまでだ」


バットマン「!! 全員戻れ、陣形を組め!」


マシュ「!!」バッ

ジェロニモ「はっ!」ダダッ

ビリー「っ」ダッ

ラーマ「シータ、後ろに!」ババッ

シータ「はいっ!!」サッ

ナイチンゲール「……貴方ですか」ジッ



デスストローク「よう、また会えたな」スタ、スタ



470 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/22(土) 23:21:25.46 ID:zR/7c36Y0



デスストローク「嬢ちゃん、あの回し蹴りは効いた。正直お前の事を嘗めていた。まさか数回打ち合っただけであそこまで成長するとはな」

マシュ「……」ジリッ

デスストローク「だがな、お前も学習したかもしれんが……俺も、学んだぞ。お前達一人一人がどういう動きをするか、どういう戦い方か、どういう人生を送って来たか……」カチャ、シュリィィィィイ……

バットマン「……」

デスストローク「俺は戦士だ。殺戮の徒だ。俺の人生には何も残らない。だからこそ、俺はもう迷わん」スッ

マシュ「……なら、私は貴方に負けません!」

デスストローク「試してやる、行くぞ!!」ダッ



471 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/12/22(土) 23:22:48.89 ID:zR/7c36Y0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/23(日) 01:38:33.80 ID:H65lUk/ao

やっぱり来てたか・・・
473 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:20:50.17 ID:G22OK9G00



 照り付ける太陽の光を、木々のとばりが細切れにする。落ちて行く明かりの下、地面に飛び散った血液が輝く。


 マシュは天才だった。ブルース・ウェインから受けた教えをこの数か月の内に全て消化し、教えられた以上の戦果を出し、並の敵ならばもはや数秒で片付けてしまうほどの実力を身に付けていた。その非凡な学習能力は、デスストロークを相手にも牙を剥き、事実、彼女は彼を超えかけていた。


 だがマシュは、追い詰められた戦士の恐ろしさを知らなかった。デスストローク……スレイド・ウィルソンは、自らの負けで腐るような三下ではなかった。魂を敗北というやすりにかけ、余計なものを削ぎ、精神を鍛え直し、経験を見つめ直し、再度立ち上がった。それはまごう事なき強敵。マシュは気付くべきであった。一度破った敵が再び目の前に立ち塞がるとは、どういう意味なのか。


「俺は戦士だ」

 デスストロークはもう一度、確かめるように呟いた。その目の前、脇腹を深く斬り付けられたマシュが膝をつき、額から冷たい汗を、傷口からドクドクと血を流しながら倒れまいとこらえている……



474 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:21:42.84 ID:G22OK9G00



ビリー「この前みたいにはいかないよね、流石に!!」ドォン!!

デスストローク「フン」ギャリィ

ビリー「……ねえ、本当に弾丸ってあんな感じで切れるもんなの?」カチャリ

バットマン「ナイチンゲール、ジェロニモ、マシュの回収を! ラーマ、デスストロークに攻撃を頼む! シータとビリーは奴を遠距離から牽制しろ! 全員、罠に注意するんだ!」

デスストローク「さて、総崩れまで秒読みだな」ダッ

バットマン「カバーする、ラーマ!」バッ

ラーマ「助かる!」ダダッ


475 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:22:21.03 ID:G22OK9G00



デスストローク「ははっ、貴様、人間のくせに俺に立ち向かうのか!?」ギャリィ!!

ラーマ「でぇい! 今だブルース!」ギュギィ!!

バットマン「そこだ!」ブンッ

デスストローク「下らん!」ヒュババッ

バットマン「ぐおっ!?」ドシャァ


シータ「かばーします!!!」ヒュパパパパ

ビリー「早撃ちは得意だけど狙撃はね!!」ドォンドォン!!


デスストローク「遅いわ!」ガギギィ、ババッ


ラーマ「そこ!」ズバァッ

デスストローク「食らうか!」シュッ



476 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:22:48.60 ID:G22OK9G00



ジェロニモ「目くらましをする! 今のうちだ!」ズオォォォォォ……

ナイチンゲール「……大丈夫ですか」ズルズル、ドサッ

マシュ「ぐ……少し、油断しました」プルプル

ナイチンゲール「治療を開始します。動かないで。必ず救います」カチャカチャ

マシュ「……ありがとうございます」




バットマン「シータ、ビリー、足元だ! ヤツの足元を狙え!」ムクリ

デスストローク「ははは、それで俺をどうにか出来るとでも!?」

ラーマ「嘗めるなよ、学習するのはお前達だけではない!」ガシャリッ



477 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:23:17.47 ID:G22OK9G00



 ラーマが斬り掛かる。デスストロークはいつも通り柔軟に回避しようとし……目を細め、動作を中途で止めた。ラーマの太刀筋が、進化している。以前までは軽く躱せていたその剣が、食らいつくかの如く致命的な軌道を描き直す……!!

 バットマンも起き上がり、実に厄介な立ち位置から掌打を繰り出そうとしている。そのスピードは速くはない。だが、厄介極まりない攻撃範囲。このままこれを食らえば少なからず隙を生み、そこにラーマがトドメを持ち込んで来る……


 さらに追い打ちをかけるかの如く、銃弾と矢がデスストロークの足元へ殺到する。これでは思った通りの柔軟な回避など不可能。ではどうするか? ここから最適な回避をするには? ……たやすい。


 死の傭兵はつま先の足裏だけで地面を打ち、その力だけで数メートル跳躍した。そのままスピン回転、飛来する弾丸や矢を弾き返しながら、まずは蹴りを繰り出した。バットマンはそれを手甲で防御、衝撃の8割を受け流すも、残りの2割を受けて吹き飛んだ。

 次に回転の勢いを利用した斬撃を、ラーマの首へ。ギリギリで反応したラーマは剣を縦に構え、それを受ける。そして威力に耐えきれず、吹き飛ばされる……


 死神が、着地した。同時にバットマンが木に背を打ち付け、吐血してうつ伏せに倒れる。ラーマはケルト兵を数人巻き込みながら吹き飛び、地面に転がった。

 近接戦闘組、全滅。デスストロークは仮面の奥で笑う。

「さあ、総崩れだ」


 後は作業のみ、そう考えていた彼は直後、寒気を感じて反射的に防御姿勢を取った。その瞬間、赤いつむじ風じみた存在が飛び出し、拳を叩きつけた。

「こんにちは。あなたを治療します」

 ミシミシと拳をめり込ませながら、ナースの冷たい挨拶が通る。ナイチンゲールだ。その瞳に浮かぶ相変わらずの狂熱に、デスストロークは苦笑いしながら一歩退く。

 ナイチンゲールは極端なまでの前傾姿勢を取り、死の傭兵へ拳を押し付け続ける。デスストロークは一瞬の隙を突き、拳をいなして回転。そして跳躍。姿勢がブレた看護師のその首を、剣が刈り取る……その一瞬前に、矢と銃弾が飛来。デスストロークの腕に命中し、跳ねのけた。


「っ」


 今度はデスストロークが怯む番だった。ナイチンゲールは大きく踏み込み、敵の首を掴んで地面に叩き付ける。揺れる地面。振動は木々に伝播し、森の上から枝葉が落ちる。

「ケルト兵! この戦線は俺に任せ、敵本拠地への進軍を再開しろ!」

 少なくないダメージに身をよじりながら、デスストロークは吼えた。途端、ゲリラじみて潜伏していた多数のケルト兵は、サーヴァントたちを囲むのをやめ、エジソンの拠点目掛けて進軍を開始する。

 当然、動けるエジソン勢力はこれを無視するわけにはいかない。ビリー、シータは一旦援護射撃を中止し、進み始めたケルト兵を倒し始める。だが数が多すぎる。進軍が、止まらない。

 マシュが治癒しきるまで魔術的防護を張ろうと残っていたジェロニモも、この看過できない事態に動く。ケルト兵を切り、大地の精霊に力を借り、狼を呼んでケルトを倒す……だが、足りない。この物量。まるで南側には、最初から戦力が居ないと知っていたかのような、この物量……


「余所見か」

 ナイチンゲールはおのれの胸を貫いた冷たい感触に驚き、身体を見下ろした。剣が貫通している。デスストロークは一瞬の隙を突き、彼女の急所を攻撃した。力が入らなくなる身体を支え切れず、彼女は倒れた。


 デスストロークは立ち上がり、ナイチンゲールにトドメを刺そうと剣を振り上げた。だがその一瞬前に、爆発的な存在感が蘇ったのを感じ取り、目を上げた。

 脇腹を包帯でくくったマシュが目を光らせ、歩いて来る。



478 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:26:17.36 ID:G22OK9G00



「学習しました」


 マシュはたった一言だけ言い放ち、重い音を立てて盾を放った。ビリー達がケルト兵と戦う音が遠くなり、二人の周囲の空間は断絶されたかの如く静まり返る。一対一。以前の焼き直しになるか? いや。デスストロークもまた、無限に学習する戦士。


「そうか。お前は強いからな」


 デスストロークも剣を放り捨てた。アレは近距離戦闘では僅かに取り回しが悪い。素手で戦わねば、若干の有利を相手に与えてしまう。そして何より、マシュの前で素手で戦った事は『ない』。未だ学習されていない戦闘スタイルだ。慣れる隙も与えず、一気に圧し潰す。


 風が通り抜け、葉がこすれて音を鳴らす。マシュとデスストロークは睨み合う。マシュが一歩、踏み出す。デスストロークも一歩、踏み出す。だが互いに飛び掛からない。この一歩は互いにフェイントじみた動作。カウンターを呼び、それにカウンターするための布石。だがどちらも慎重であり、そうやすやすと敵の思惑には乗らない。

 さらに一歩、互いに踏み出す。互いに臆する色は瞳に無い。既に素手での攻撃範囲内。だが互いに手を出さず、相手の心を読もうと努める。さながら居合の瞬間、達人同士でどちらが速いかを極限まで計算するかの如く……一瞬を読み合う時間が続く。マシュの筋肉が動いた。デスストロークが霞んだ。


 その瞬間を先んじたのは、やはりデスストロークだった。彼は余計なものを捨てており、ゆえに彼に迷いはなかった。マシュの拳に先んじて、傭兵の拳がその喉を打った。

 彼女はよろめいた。勝機と見るや、彼は容赦なく飛び掛かる。拳を繰り出す。マシュは辛うじて防御。二段の蹴り上げ。マシュは辛うじて防御。ソバット。躱し切れず、頬に直撃。体勢を崩した彼女の頭部へ、更に蹴りが直撃。更に蹴りが直撃。更に蹴りが直撃。

 耳鳴りが満たす思考の中、マシュは後退しながら必死に腕を上げようと試みた。デスストロークが力強く踏み込み、破滅的威力の正拳突きを彼女の鳩尾へと叩き込んだ。マシュは吐血し、心臓が止まった事を自覚した。


(嫌だ。まだ)


 いかにも単純な思考で、だが強い力で、マシュは死に抗った。そしてその言葉を思い出した。


(((心せよ、マシュ。人が戦う時、最も強い原動力となるのは────……)))


 マシュは命を燃やした。


479 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:27:00.13 ID:G22OK9G00


 デスストロークは戦いが終わったと確信していた。彼女は死体に変貌した。これで周囲の者を片付けられる。


 まず彼が感じた違和感は、手首にあった。何かに掴まれている。そして次に、マシュの息遣いを感じた。死んで、いない? 何故? デスストロークには理解できない。それを余計なものと断じ、切り捨て、省みなくなってしまった戦士には、それを理解できない。


 マシュは目を鋭く光らせ、歯を食い縛り、全身に力を籠め、死の傭兵に抗った。デスストロークは腕を引き戻そうとする。できない。マシュの力が、跳ね上がっている。


「学習、しました」


 デスストロークは……スレイド・ウィルソンは、この瞬間、初めて戦慄した。自分は何かを見落としたのか? それは何だ? この力は何だ?

 凄まじいパワーのパンチが、デスストロークの顔面を捉え、仮面を弾き飛ばした。右目を眼帯で覆った初老の男性の顔が露になる。その顔は殆ど呆然としていた。それは自分が負ける理由を、今になってもう一度探し始めたかのようでもあった。

 マシュは情け容赦のない連続パンチをスレイドの顔面に叩き込み続ける。スレイドは何とか距離を離そうともがくが、マシュは彼の腕を放さず、至近距離に置き続ける。


「貴様!!」


 スレイドのフックがマシュの脇腹に突き刺さる。一瞬の力のゆるみに乗じ、体をもぎ離すと、彼は落ちていた剣を拾い上げた。格闘戦すら学習されたのならば、近距離戦にこだわる道理など無し! 少し離した間合いから徹底的に潰すのみだ!


 それは事実、見事なまでに冷静と呼べる切り替えだった。スレイドは勢いを盛り返し、マシュへと飛び掛かる。中距離からでも届く蹴りの連打だ! 

 獰猛な蹴りの嵐の中、マシュは防御姿勢を取り、決して崩さなかった。顔中血みどろになり、鎧の節々の肌から痛々しい内出血の痕が見える。だが彼女は耐え続ける。スレイドは敵の不屈を不可解に思う。とうに限界のハズだ。頭部へのダメージは深刻なまでに蓄積され、今にも気絶するほどだろう。だというのに、これは?


「これで、どうだ!」


 スレイドは美しいまでに均整の取れた姿勢で、ムチのようにしなる蹴りをマシュの頭部へと叩き込んだ。強烈な音が鳴り響き、マシュの姿勢が揺れる。勝機! その瞬間を狙い、スレイドは剣をマシュの顔に振り抜いた。一瞬後、彼女の頭部は半分に両断され、湿った音を立てて地面に落ちた。


 …………そうなるハズ、だった。スレイドは軌道上で止まった剣を訝しみ、視線をやった。彼女は歯で刃を噛み締め、止めていた。


「馬鹿な」


 マシュは体を捻り、回し蹴りを繰り出した。その蹴りはスレイドの首を目掛け、猛烈に加速して行く。それはデスストロークの潰れた右目側からの一撃であり、完全に死角を、虚を突いた回し蹴りだった。それは以前と同じ敗因であり、遡ればあの時点で、彼はこの戦いに負ける事が決まっていたのかもしれない。


 …………遡れば? デスストロークの脳に走馬燈じみて生前の出来事が去来する。遡れば、この右目が潰れていた事が敗因であり、遡れば、自分が傭兵を始めた事が敗因であり、遡れば……


「ああ」


 スレイドは自らが振りまいてきた理不尽に押しつぶされるのを感じながら、その一撃を受け入れた。



480 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:27:50.86 ID:G22OK9G00



マシュ「はあっ、はあっ……!」ドサッ

ナイチンゲール「……ぐっ……」プルプル


バットマン「マシュ、フローレンス……!」ムクリ


ビリー「駄目だ、ケルト兵を止められなかった! 連中、僕たちの拠点に行っちゃったぞ!?」

バットマン「……このふたりを回復させねば」

ジェロニモ「退いてくれ、ブルース。少しなら回復させられる」

バットマン「フローレンスは頼んだ。マシュ、『令呪を以て命ずる』。回復しろ」

マシュ「ありがとう、ございます」ジュゥゥゥゥゥゥ……


ジェロニモ「……」ポウッ

ナイチンゲール「……」ジュジュゥゥゥ……


481 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:28:22.63 ID:G22OK9G00


バットマン「動けるか、マシュ。フローレンス」

マシュ「……はい、いけます。大丈夫です」

ナイチンゲール「……まだ少し難しいかと」

バットマン「フローレンスは私が背負う。全員、このまま敵の拠点へ向かうぞ」

ジェロニモ「ま、待て待て。我々の拠点へ向かったケルト兵はどうするんだ?」

バットマン「放っておけ。聖杯が最優先だ」

ジェロニモ「そうは言ってもだな、あそこには民間人も居るんだぞ!?」

バットマン「……少々の犠牲は仕方あるまい。それよりも早く聖杯を入手すれば良い話だ」

ジェロニモ「……!!」

マシュ「ま、マスター……!」



482 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:29:02.58 ID:G22OK9G00



ジェロニモ「……キミは本当にそれで良いと思っているのか?」

バットマン「何一つ、問題はない」

ジェロニモ「……」

マシュ「マスター、なんで……」

バットマン「全員行くぞ。聖杯を取り戻す」


483 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/23(日) 22:29:49.65 ID:G22OK9G00



バットマン(……デスストロークが、南の森へ来た。何の情報もなく? それは考えられない)

バットマン(……)

バットマン(誰が信用できるか、しっかり考えなければな)

バットマン(我々の中に居る裏切り者の尻尾が、見えてきた頃だ)



484 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/12/23(日) 22:30:20.04 ID:G22OK9G00
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/25(火) 14:28:03.11 ID:juxc0MtEO
乙!そろそろクライマックス?
486 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:23:16.72 ID:Elqc4oHU0



………………


ケルト兵達「「「」」」ドドドドドドド……!!

ロボット達「「「」」」ババババババババ



エジソン「フンッ!! ……思ったより敵の攻勢が緩いな。これならば行ける!」ドグシャァ

ケルト兵A「っ」グシャァ

エレナ「油断しないでエジソン、緩いと言ってもロボット達と互角以上の勢力よ。私達が頑張らないと支えきれないわ」ギュドドッ

ケルト兵B「!?」ドシャァ

エジソン「うむ、平気だ! 私は油断していないとも! ……ところで、猫の御婦人は何処へ?」

エレナ「え? セリーナ? ……あら、何処に行ったの?」

エジソン「……まさか、はぐれた?」

エレナ「まさか……」


487 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:24:18.42 ID:Elqc4oHU0


キャットウーマン「……」タタタタ

キャットウーマン「……」タタタタ……


キャットウーマン(……許される事ではない、わよね)

キャットウーマン(……でも、それでも)


キャットウーマン「愛してるわ、ブルース」タタタ……


488 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:24:48.73 ID:Elqc4oHU0



………………


メイヴ「……あの女からの連絡だと、やっぱり南側に本命が出て来たんだって。どうする、クーちゃん?」

クーフーリン「……フン、北を囮に使ったのか。イカれたヤツが居たもんだぜ……俺が潰しに出る」

メイヴ「そう来なくっちゃ。じゃあ私も出るわね!」

クーフーリン「来ても良いが、足手まといにはなるんじゃねえ。全員、槍の準備をしろ」

ケルト兵達「「「……」」」ガシャリ

クーフーリン「……殺戮の時間だ」スク……



489 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:25:17.77 ID:Elqc4oHU0



………………

太陽「」ジリジリ……


エリザベート「……っ、奴が拠点から出て来るわよ」

デッドショット「よし、伏せろエリザベート。狙撃する」

エリザベート「本当にここから狙撃できるの? 遠いし、何より……射線が通ってないと思うけど」

デッドショット「射線を通す必要はない。跳弾角度の計算、弾速、威力と不意討ちが最高のパフォーマンスを発揮するのはこの屋上だ」カチャリ……


デッドショット(ここから撃つ。クーフーリンとかいうクソ野郎の頭に一発風穴を開いてやる……)

デッドショット(向こうからこちらは視認不可能。対してこちらは、町の中の各所に隠したミラーのおかげで全部見通せる……)

デッドショット(お前の墓場はここだぜ、クーフーリン。要人を殺したのは一度や二度じゃねえ。お前も、俺の呪われた功績に仲間入りさせてやる)


(((パパ)))


デッドショット(……黙れ、黙れ、今だけは! 俺だって黙っていられるか! 他人に理不尽を押し付けてきた事は知ってる! それでも、俺にだって意地がある……!!)カチャ……


490 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:25:48.18 ID:Elqc4oHU0



エリザベート「……ねえ」

デッドショット「何だ」

エリザベート「震えてるわよ、デッドショット」

デッドショット「……」


デッドショット(……)


デッドショット「……お前なら撃てる、そう言ってくれるか? 頼む」

エリザベート「……」

デッドショット「……」

エリザベート「……大丈夫よ、デッドショット。アンタなら撃てるわ」

デッドショット「……ありがとう。すまねえ」


デッドショット(……ごめんな)



491 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:26:16.50 ID:Elqc4oHU0



 小さなミラーに、ケルト兵達を引き連れて城から現れる大男が映った。右手に持った朱色の槍、左手に持った緑の槍。それは間違いなく、ケルト兵の王、クーフーリンであった。デッドショットは瞬間的に沸騰しかけた怒りを無理に鎮め、深呼吸してスコープを覗き込む。


 スコープの中、拡大された狙撃ポイントは、民家の壁にかけられた仮面だ。あれが第一跳弾ポイント。クーフーリンが狙い通りのポイントに差し掛かった瞬間、撃つ。準備は完璧。あとは自分との戦いだ。


 フロイドはトリガーに指を掛け、息を殺してその瞬間を待った。ひりつくような太陽が容赦なく照りつけ、彼の思考を陽炎に変えて立ち昇らせる。集中力を高める必要がある。彼は狙撃の瞬間、心を落ち着ける記憶に浸る。娘との、ひと時の記憶に。その瞬間、彼は真に狙撃手足りうる。だからこそ、その瞬間、彼は謝罪する。


(ごめんな)


 指がトリガーを引く……その時、デッドショットの目は信じられぬものを捉える。小さなミラー越しにクーフーリンが振り向き、フロイドをまっすぐ見据え……にやりと、笑ったのだ。脳からの電気信号は止まらず、指がたたまれ、サイレンサー付きの銃口から弾丸が飛び出した。


 仮面に銃弾が当たり、跳弾。家屋の壁に当たり、跳弾。弾丸が標的に到達する僅かの時間に、デッドショットは自分の敗北を悟った。奴はこちらの狙撃に勘付いていた。この一撃は、防がれる……


 果たしてその通り、小さなミラーの中、人外じみた柔軟性で振り返ったクーフーリンは飛び来た銃弾を槍で弾いた。そのまま周囲のどよめきを置き去りに、槍を投げる体勢に入る。


(逃げねえと)


 逃げて、何処へ? 一種の自殺願望じみた思考が、デッドショットの思考を鈍らせた。ここで死ねば楽になれる。地獄のような現実ともおさらばだ。このまま、アイツが投げた槍に、胸を貫かれてしまえば……


 クーフーリンは槍を投げた。それは二者の間にあった建物を次々に突き破り、あっという間にデッドショットの目の前に飛来した。デッドショットは、フロイド・ロートンは、静かに目を瞑った。これで死ねる。娘を傷付けずに済む。


 だがその瞬間はいつまで経ってもやって来なかった。デッドショットは頬に散った生温かい感触に、ゆっくりと瞼を開いた。


 彼の目の前、小さな背中から朱色の槍が飛び出していた。ドラゴンのような尻尾が苦しげに動く。

「エリザベート?」


 死の高揚から引き戻されたデッドショットは、ひきつる喉から声を絞り出した。


492 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:26:47.62 ID:Elqc4oHU0




 か細い声に、エリザベートは振り返り、笑って返そうとした。代わりに口から血が溢れ、屋上を濡らす。


「エリザベート、お前、」
「なんて顔、してんのよ」


 おのれを強いて笑みを浮かべ、エリザベートはさらに咳き込み、吐血する。生々しい血の色が屋上に広がって行く。デッドショットは真っ白になった頭で、とにかく行動を起こそうとした。

「掴まれ、逃げるぞ」
「ええ、ええ……逃げて、ゴホッ」
「馬鹿言うな、お前も逃げるんだ」

 自分の声が何処か遠く聞こえるのを感じながら、エリザベートを抱え上げる。フロイドはこの白昼夢のような現実感のない光景に、必死になって追い付こうとしていた。

「大丈夫、大丈夫だ」

 大丈夫ではない。

「絶対に助けるぞ」

 コイツはもう、助からない。

「だから、生きるんだ。分かるな」

 コイツは、死ぬ。


「情け、ないわよ、デッドショット」
「そうだな、そうだ……もっと軽口を叩け、お前が治った時に倍にして返してやる」


 彼は走った。ケルト兵の追撃が途中に何人か来たが、反射的に撃ち殺し、走った。そうして、彼は極力背中のエリザベートから目を逸らした。彼女が致命傷を負った事実を受け入れられなかったのかもしれない。


 デッドショットは街はずれの岩陰まで走り、ようやく止まった。その時、エリザベートの鼓動はもはや、殆ど感じ取れないほどに弱まっていた。



493 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:27:23.18 ID:Elqc4oHU0



デッドショット「……エリザベート、聞こえるか。エリザベート」

エリザベート「……聞こえてるわよ」

デッドショット「……なあ、逃げ切ったぞ。悪かったな、ヘマして。次は絶対成功させる」ギュッ

エリザベート「……本当、駄目ね。アンタは、アタシが居ないと……」シュウシュウ……

デッドショット「そうだな。その通りだ。なあ、お前は良くなるからな……」ギュゥ……

エリザベート「……」シュゥゥゥゥゥ……

デッドショット「待て、エリザベート、待て……待て、待ってくれ」スカ……

光の粒「」フワァ……

デッドショット「…………頼む……」ギリィ



494 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:27:52.16 ID:Elqc4oHU0



………………


メイヴ「……どうする? 追撃、もっと出す?」

クーフーリン「フン、下らねえ。……だが危険だな。万が一あの狙撃手が戻って来て『アイツ』を解放でもしたら、俺達がこの世界を滅ぼすのはかなり難しくなる」

メイヴ「それじゃあ、どうする?」

クーフーリン「俺は戻って拠点を守る。テメェはあの女と合流して攻め込んで来る勢力を叩け」

メイヴ「分かった。気を付けてね、クーちゃん」

クーフーリン「何にだ?」

メイヴ「……ふふ、心配する必要ないわね。あのクーフーリンだもの」

クーフーリン「フン……」ザシザシ


495 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:28:20.35 ID:Elqc4oHU0



クーフーリン(……余計だ。全部余計だ)

クーフーリン(余計なモンばっかりだ。壊さねえと、邪魔で見えやしねえ)

クーフーリン(壊して、終わらせりゃあ、見えて来る)

クーフーリン(俺が誰なのか)


496 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:28:47.42 ID:Elqc4oHU0



………………


バットマン「……」ダダダダ……

マシュ「……」ダダダダダ

ビリー「……」タタタタ

ラーマ「……」タタタタ……チラッ

シータ「……」タタタタ……ハァ

ジェロニモ「……」ダダダ……

マシュ「……」ダダダダ……



マシュ(……不信感だ。皆今まで、マスターを信じてついてきたけど……ここで、信じられなくなってる)




ナイチンゲール「……ブルース」ユッサユッサ

バットマン「喋るな、フローレンス。回復に専念しろ」

ナイチンゲール「大事な話です」

バットマン「……」ピタリ


全員「「「……」」」ピタッ



497 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:29:19.68 ID:Elqc4oHU0



バットマン「……なんだ」

ナイチンゲール「今まで私は、目的のためなら命を投げ出す事もいとわない覚悟でした。この世から怪我や病気で苦しむ人を無くせるなら、この命ひとつ、惜しくなどないと」

バットマン「……」

ナイチンゲール「ですが、今、この背に命を置き去りにして……私は悩んでいます。答えて下さい、ブルース。ある目的のために命を犠牲にする事は、果たして正しいのですか?」

バットマン「……」

ナイチンゲール「……」

ビリー「……」

ラーマ「……」

シータ「……」

ジェロニモ「……」

マシュ「……」



498 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:29:48.49 ID:Elqc4oHU0



バットマン「……正しくなどない。それは自己満足だ。残された者の気持ちを考えない、最悪の手だ」

マシュ「!!」

バットマン「私にはまだ、よく分からない。だが、いかに命を犠牲にする選択肢が容易で、そして確実であったとしても……それは、取るべき行動では決してない」

ジェロニモ「……」

バットマン「……人は、本当に死ぬからだ。それも簡単に」

マシュ「……」



499 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:30:16.73 ID:Elqc4oHU0



ビリー「……うん、やっぱり」

バットマン「何だ」

ビリー「キミについてきて良かった、って思うよ」

バットマン「……?」

ラーマ「ふふ、余の人を見る目に狂いはなかったという事だ」

シータ「不器用な方なんですね」クスクス

バットマン「何の話だ?」

ジェロニモ「まあ、なんだ。今の話を聞いて思ったが、お前ほどの男が無策で敵に本陣を明け渡すハズがない。何か策を施して来たんだろう?」

バットマン「……何故分かる」

ジェロニモ「キミは、ふふっ……なんというか、鈍い男だな」

バットマン「どういう事だ……?」


500 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:30:44.75 ID:Elqc4oHU0



マシュ「……」


マシュ(……やっぱり、マスターはマスターですね)クス


ナイチンゲール「……お答えいただき有難うございました。参考にします」

バットマン「何故今その質問を?」

ナイチンゲール「さあ、自分の胸に手を当てて考えてはいかがですか?」

バットマン「……」



501 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2019/01/16(水) 01:31:18.03 ID:Elqc4oHU0



バットマン「……時間が無いんだ。行くぞ」

マシュ「はいっ!!」

ビリー「うん!」

ラーマ「ああ!」

シータ「はい!」

ジェロニモ「おうとも!」

ナイチンゲール「よろしくお願いします」


バットマン(何故士気が高まった……?)


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