バットマン「グランド……オーダー?」レオナルド「その3だね」

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332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/03(月) 15:25:25.70 ID:Sj03Z7Cjo
医療に携わるナイチンゲールとバットマンは何気に気が合うかもしれない
父親的な意味で
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/04(火) 15:40:13.18 ID:8RemU3dA0
乙っしたー!
ラーマとシータが一緒にパーティINとか夢のようだね……アンメアみたいな二人で一騎のサーヴァントになるのかなー
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/04(火) 19:13:29.21 ID:mY4+Do8n0
クラーク・ケント君来る?
バットマンはともかくスーパーマンは知ってても違和感がないカルデアの職員の皆様
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/04(火) 21:15:04.58 ID:yAGBqKmco
クリプトナイトっていつごろ地球に降ってきたんだろう?
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 22:07:47.98 ID:onjVogIS0
>>332
融通の利かない性格は似てるけど行動理念は微妙に違うからな
共感できる部分ではがっちりハマるけど、共感できない部分は思いっきり反目するような
337 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:09:04.85 ID:S9m+e/He0



 デスストローク(死の一撃)。俺にそんな御大層な名前が付いたのはいつだっただろうか。今ではもう、周囲から呼ばれ出したのか、自分から名乗り出したのかすら思い出せない。

 俺はデスストローク。スレイド・ウィルソンという本名すら忘れるほどに人を殺して来た。かつて軍の治験で脳の使用領域を9割にまで増やされ、俺の人間としての生は終わりを告げた。身体の再生力は怪物並になり、心臓を貫かれても、トラックに突っ込まれても死ななくなった。生きる事が無味乾燥になりつつあった。

 そんな人生でも、家族だけは愛していた。馬鹿な話だろう? 既に俺は真っ当な生活なんぞ営める身体じゃなかったのに。


 普通の生活を持つ一方で、俺は自分の限界に挑戦するようになっていた。どんなに難しい依頼も進んで受け、進んで死地に入って行った。裏社会でも名が通るようになり、金もつぎつぎ入り始めた。全部順調だった。だから罰が下った。

 ある日帰ると、息子が血塗れで死んでいた。どうやら俺が暗殺した相手が不味かったらしく、復讐として子供を手に掛けたと。妻泣きながら激昂し、俺を撃った。こうなったのは俺のせいだ、そう叫びながら引き金を引いた。

 銃弾は俺の右目を潰した。痛みは感じたが、どこか他人事のような感覚だった。こうなったのは俺のせいだ……その言葉だけが、頭の中で反響していた。その残響をかき消すために、もっと激しい死地へと赴いた。いつの間にか、俺の後ろには血の道しかなくなっていた。


 だから……だから、光に焼かれ、尚も蘇った俺は、ここでダグザの棍棒の存在を知り、求めた。振ればどんな者でも生き返らせると言われている、その棍棒を。息子をもう一度、この世に呼び戻すために。


 息子に会った時、どんな言葉を掛ければ良いかも分からないのに。



338 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:09:31.89 ID:S9m+e/He0



………………


ズドンズドン!! ダダッ!!


デッドショット「はあっ、ようやく抜けられたぞ……エリザベート、無事か!」

エリザベート「ええ、アタシは大丈夫!」

デッドショット「クソ、四方八方ケルト兵まみれか! カルナは何を……」



ドドドォォォォォォ……



デッドショット「何だ!?」ゴォッ

エリザベート「きゃー! なによこの風!?」ゴォッ



339 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:10:09.90 ID:S9m+e/He0



アルジュナ「ハハハハ! やはりか! 貴様が反抗勢力に居ると聞いたからこそケルト兵に味方したのだ! その甲斐もあったというもの!」バシュシュシュシュシュ……

カルナ「相変わらずだな、アルジュナ。ここは通さない」ガギギギギィ!!

アルジュナ「相変わらず貴様は弱者を救おうとしている。笑えるな、これではまるで生前の焼き直しだ!」ギチチチィ……バギュッ!!

カルナ「オレは助けを求める者の声に応える、それだけだ。今回は神々も居ない。焼き直しにはならんぞ、アルジュナ」ブォンッ、ドッゴォォォォォォォォ……


ドガァァァァァァァァァ……ゴォォォォォオォォォッ!!




エリザベート「きゃー!!! 吹き飛んじゃう!! 妖精が出す素敵な粉ひとつまみ分の体重しかないから吹き飛んじゃう!!!」

デッドショット「援護しろ! カルナと戦ってる野郎を狙撃する!」ガチャリ

エリザベート「狙撃ィ!?」


340 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:10:44.58 ID:S9m+e/He0



エリザベート「無理に決まってんじゃない、あんなに高速で動いてんのよ!?」バシィ!! ブォンッ!!

ケルト兵A「っ」ドサァ

ケルト兵B「!?」ドシャシャァ


デッドショット「……無理……高速……本当にそうか?」キチチチ……ジッ


デッドショット(目視できないスピードではない。風……奴らの打ち合いの度に凄まじい爆風が巻き起こっている。温度、42度。湿度、殆どなし。二人の周囲を取り囲むケルト兵、数百人……)

デッドショット(重力と風、当てる場所。奴らの打ち合いのパターンの予測。当てられるか? それは可能か?)

デッドショット(……できる。弾が通る道が見えた)


(((パパ、人を撃つのはもうやめて……)))


デッドショット(……ごめんな)


ゴォォォォォッ!!


デッドショット「……」ゴォッ……


デッドショット「ここだ」カチャリ、ドォッ!!

弾丸「」ヒュォォォォォォォッ!!

341 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:11:10.91 ID:S9m+e/He0



アルジュナ「っ!?」ドシュッ

カルナ「!!」ブォンッ

アルジュナ「くぅっ!?」ガギギギ、ドシャシャシャ……

デッドショット『カルナ! 相手に構ってる暇はねえ、奴らの狙いが割れた! さっさと撤退だ!』

カルナ「オレは……」

カルナ「……オレは残る」

デッドショット『はあ!?』

カルナ「すまない、フロイド。オレは残る」

デッドショット『馬鹿野郎が! なんで……クソ、好きにしろ! 責任なんぞ取らねえぞ!』

カルナ「ああ。すまない」



342 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:11:37.55 ID:S9m+e/He0



アルジュナ「……何故トドメを刺さなかった。嘗めているのか、カルナ」ムクリ

カルナ「今の弾丸一発分を、オレに攻撃しろ。それで対等だ」

アルジュナ「……貴様」

カルナ「お前とは対等な戦いをしたい。オレの我儘だ、嫌ならば良い」

アルジュナ「……」

カルナ「……」

アルジュナ「……良いだろう」


343 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:12:03.49 ID:S9m+e/He0


デッドショット「クソ、クソ、クソ!!」ダッ

エリザベート「ちょっ、ちょっと! 何処行くのよ!! カルナは!?」タタッ

デッドショット「あいつはここに残る! 俺達は戻るんだよ、ペンギンのところにな! もしもし!」

通信機『……ザザ……ザザッ』

デッドショット「もしもし、コブルポット!? 応答しろ!!」

通信機『……ザザ……戻ってくるんじゃねえ、デッドショット』

デッドショット「何だ!? どういう事だ、説明しろ!」

通信機『敵の襲撃だ。止めきれねえ。ヴィランストリートは終わりだ、戻ってくるんじゃねえ』

デッドショット「待て、敵の襲撃だと……」


デッドショット(馬鹿な、攻撃が的確過ぎる。俺達が出払っていて守備が手薄なのを察知したのか……?)


デッドショット「何処からだ、何処から情報が漏れた!?」

通信機『ザザ……ザザザ……』

デッドショット「チクショウめ!!」


344 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:12:31.82 ID:S9m+e/He0


エリザベート「ちょ、ちょっと!? どうするのよ!?」

デッドショット「……」



デッドショット(……)



デッドショット「ヴィランストリートに戻るぞ、走って戻るしかねえ。行けるか」

エリザベート「あ、アタシは大丈夫だけど……」

デッドショット「じゃあ行くぞ! 急げ!」ダッ

エリザベート「ま、待ちなさいよ!」タタッ



345 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:13:05.59 ID:S9m+e/He0



………………


ペンギンの手下A「うぐっ!?」ドシャッ

ペンギンの手下B「ぐわあ!?」ドササッ


ケルト兵達「「「……」」」ザン、ザン、ザン……


フィン「勝ちは揺らがない、でしょうな。どうかなメイヴ殿、民の命まで取らないというのは……」ジッ

メイヴ「甘い事を言っちゃ駄目よ。完膚なきまでに叩き潰してこその侵略なんだから☆」

フィン「ふむ……」



346 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:13:34.94 ID:S9m+e/He0



メイヴ「さあ行くのよ、ケルトの勇士たち! 槍を血で染めて!!」


ケルト兵達「「「……」」」ザン、ザン、ザン……


メイヴ「……それにしても皮肉よねえ。イギリス人が元イギリス人を殺す、だなんて」

フィン「……」



ペンギンの手下C「テメェら寝てんじゃねえぞ! ボスにぶん殴られちまう、起きて戦え!」

ペンギンの手下D「スミマセン、エレナさん! ガキ共の事お願いします!」

エレナ「任せて! 皆、こっちよ! 逃げるわ!」

子供A「おじちゃん達はどうなるの!?」

子供B「おれ、ここで母ちゃんと父ちゃんを待ってないと……」

子供C「ペンギンおじさんは!?」

エレナ「……全部、あっちに着いてから説明してあげるわ! 早く逃げるのよ!」



347 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:14:01.69 ID:S9m+e/He0



メイヴ「ほら、逃がしちゃ駄目よ! やりなさい!」


ケルト兵F「!!」ダッ

子供B「え? うわあ!?!?」ビクッ

フィン「……っ!!」



ダダン!!!


ザシュッ……


フィン「……」ポタ、ポタ……

ケルト兵F「……!?」


348 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:14:31.32 ID:S9m+e/He0



メイヴ「……あ〜らら。やっぱり裏切るのね、フィン」

フィン「……私には出来ない。民草を巻き込むなど」ポタ、ポタ……

メイヴ「ふ〜ん、甘い事言っちゃって。戦いにそんな理屈持ち込んじゃう?」

フィン「ははは、冗談はよしこさん。理屈ではなく、誇りの問題ですので」



エレナ「……さあ、今のうちよ。こっちに来て」コソコソ

子供達「「「……」」」ビクビク

エレナ「早く!」



349 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:15:05.12 ID:S9m+e/He0




フィン「逃げる時間は稼ぎましょう。今のうちにどうか」

エレナ「え、えぇ。ありがとう」

フィン「なに、当然の事です」


メイヴ「ふざけてるようだけど、アンタ結構やるのよねえ。助けを呼ぶとするわ」

フィン「ははは、持ち上げてもらって嬉しいが、そうまでせずとも……」

???「呼んだかァ……」ザシ、ザシ

フィン「来るの早!」


350 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:15:50.38 ID:S9m+e/He0



メイヴ「ベオウルフ。裏切り者を狩る時間よ」

ベオウルフ「へえ、おもしれえ。……てめえだったか、フィン・マックール」ザシッ

フィン「ははは。これはどうも」

ベオウルフ「裏切るなんてどうした? 気に入らなくなっちまったのか」

フィン「前々からそうだったが、今回それが強く露呈してしまったのだ。……バーサーカーであるキミには、これは少し通じないか?」

ベオウルフ「ハハッ、まあな。殴り合えりゃ満足な俺には分からん」

フィン「そうか。良いだろう……フィオナ騎士団団長、フィン・マックール。この名が伊達ではないところを見せなければな」

ベオウルフ「ハハハハハハハ……まあ、御託を言っても始まらねえよな。結局は拳(コレ)だ、やろうぜ」


351 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:16:17.82 ID:S9m+e/He0



メイヴ「じゃあ私は侵略を続けるわね」スタスタ

フィン「!! 待ち……」

ベオウルフ「おっとぉ、何処見てやがる!!」ブォンッ

フィン「っ!」ガギィ!!

ベオウルフ「フハッ、戦いの最中に余所見かよ? 余裕のつもりか?」ギリギリギリギリ……

フィン「……王たる貴方が、民草が襲撃されるのを黙って見ているとは」ググググ……

ベオウルフ「創造の前に破壊有り。なあフィンよ、今更俺達が足掻いてどうにかなる話でもねえんだ……」グググ……

フィン「……かつては私もそう考えていた。だが、やはり、ここで戦わねば私の魂は死ぬのだ」

ベオウルフ「そうか。そんじゃあしょうがねえ、殺すとしようか」バッ

フィン「っ」



352 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:17:03.92 ID:S9m+e/He0



ベオウルフ「……」ジャキリ

フィン「……」カチャリ


フィン(二本の魔剣、『フルンディング』と『ネイリング』を抜いた。……来るか)


ベオウルフ「簡単に潰れんじゃねえぞ、その背に民を背負うと決めたんなら……」ググッ……

フィン「……」

ベオウルフ「男らしく戦わねえとなァ!!!」ダンッ!!!



353 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:17:42.67 ID:S9m+e/He0



ケルト兵達「「「……」」」ドドドド……



エレナ「皆走って! 向こうよ、早く逃げて!」

エレナ(駄目、追いつかれる……)


子供C「うわっ!?」ドサッ

エレナ「! 立って……」

ケルト兵G「……」ダッ

子供C「わああああ!?」

ケルト兵G「!」ブンッ


ドォン!!

弾丸「」ヒュォォォォォォォッ

ケルト兵G「!?」ドシュゥッ、ドサッ


ペンギン「ウチの若いモンに手を出すのは感心しねえな……」ノシノシ……


354 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:18:14.27 ID:S9m+e/He0



エレナ「アナタ……」

ペンギン「さっさと行け、無事にガキ共を連れて行くってのが約束だろうが。悪党でも約束はそうそう破らねえモンだ」

エレナ「……えぇ! 行くわよ皆!」

子供C「お、おじちゃん! ペンギンおじちゃんは!?」

ペンギン「けっ、何がおじちゃんだ。さっさと行けクソガキ、二度と俺の前に顔をみせるんじゃねえぞ」

子供C「うっ……なんで……」

ペンギン「ピーピーうるさいヤツだな。エレナ、引きずってでも連れて行け」

子供C「なんでそんな事いうんだよ!」

エレナ「いいから、行くわよ!」ガシッ、ダッ

子供C「まてよ! まだ!」ズルズル……



355 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:18:45.75 ID:S9m+e/He0



メイヴ「お優しいわね」

ペンギン「何が優しさだ、鳥肌が立つからやめろ。目の前で死なれちゃ俺が胸糞悪いだけだ、カハハ……」


ケルト兵達「「「……」」」ザン、ザン、ザン……


メイヴ「悪いけど、アンタ達はここで終わり。いい加減に反抗が目障りだったのよね」

ペンギン「俺が? 終わりだと? 良いか雌犬、本当に終わりだと思ってるなら教えといてやる」

メイヴ「……」

ペンギン「俺はな、どん底に突き落とされてからが強いんだ」ニヤリ

メイヴ「殺して」

ケルト兵達「「「!!」」」ダッ



356 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:19:13.15 ID:S9m+e/He0



………………

デスストローク「ハッ!」バッシィィィィ!!

ラーマ「ぐうっ!?」ドシャッ

キャットウーマン「きゃ!?」ドシャシャァ!!

シータ「ラーマ様!? セリーナさん!?」

ナイチンゲール「まだ……」ムクリ


マシュ「すみません皆さん、私に任せて下さい!」

ビリー「はあ?!」

ラーマ「何を!?」

バットマン「待て! マシュ、やれるのか!?」

マシュ「はい! 一人でやります!」

バットマン「……信じるぞ!」

マシュ「はい!」ダッ

デスストローク「血迷ったか、小娘!」ババッ



357 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:19:41.08 ID:S9m+e/He0



 激闘の中、マシュの突然の提案に驚いたものは多い。だがマシュ自身にとって、これは至極当然の作戦であった。デスストロークは目の前の小娘が、自信に満ち溢れている事を知る。

 これはブラフか? それとも本当に対等に渡り合う自信があるのか? 死の傭兵は思わず口の端を歪め、斜めに斬撃を繰り出す。マシュはそれを盾で受け止め……いや、盾を、手放した?

 マシュの大盾が地面に落ち、火花を散らす。彼女の目に焦りはない。つまり、計算通り? この行動が?

(愚かな。いや、狂ってしまったか?)

 無理からぬ事だ。この傭兵と、デミ・サーヴァントとして覚醒したてのマシュには、経験の差がありすぎる。その重みを感じれば、絶望もやむなし。半端に才能がある戦士ほど自棄に走ってしまうものだ。デスストロークは止まらず、舞うように跳躍。再度斜めに斬撃を叩き込む。

 が、マシュはそれを腕甲の鎧で受け、いなした。この瞬間、スレイド・ウィルソンという男は己の認識を改め、敵を見くびる事をやめた。それはいずれ致命傷を呼び込むからだ。マシュの目は鋭く輝いている。

 彼女がデスストロークの武に見たのは『流れ』だった。激流に下手に逆らえば、それは死を招く。流れの中に岩があれば、それは流れの変化を招く。マシュが一対一を望んだのはこれが理由だ。全ての狙いを一身に受ける事で、逆に対処を容易にしたのだ。


 両者の足運びが砂塵を巻き起こす。マシュの方へ一歩。かと思えば、デスストロークの方へ三歩。跳躍が交互に行われ、突進が時に二人の位置を入れ替える。

 デスストロークは背筋が粟立つ感覚を覚える。この小娘の成長……少し前まで、簡単なフェイントにすら引っかかる雛じみた技術しか持ち得なかった小娘が、こうまで喰らい付いて来るとは。喰らい付いて来る? いいや、今や彼女は自分を超えようとして……?


「デヤァァァァァァァッ!!」


 焦りが剣筋を僅かに粗くした。その瞬間、マシュの脇腹を捉えたかに思われたその斬撃は、中途で岩にでも阻まれたかのように止まった。マシュの両手が、刃を両側面から挟み、止めていた。白刃取りだ。


「せやぁぁっ!!」


 マシュが斜めに身体を捻じった。それはデスストロークの潰れた右目側からの一撃であり、完全に死角を、虚を突いた回し蹴りだった。躱し切れず直撃を食らい、自分の首の骨が砕ける音を聞きながら、スレイドは意識を手放した。


358 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:20:07.86 ID:S9m+e/He0



デスストローク「ぐあ……」ドッシャァァシャシャシャシャ……


マシュ「っはぁ、はあ……!!」ジリッ

ビリー「うわお……」

ラーマ「なんと……」

シータ「女傑ですか!」

ナイチンゲール「……彼女は……」

バットマン「……」グッ

マシュ「っ、見ててくれましたか、マスター!」バッ

バットマン「勿論見ていた。良い動きだったぞ、マシュ」


359 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:20:38.20 ID:S9m+e/He0



デスストローク「……」

デスストローク「……うぐ……」ムク、プルプル……

デスストローク(駄目だ。治癒に時間が掛り過ぎる……)ドサッ


ザシ、ザシ……

「なんだ、やられたのか。情けねえ野郎だ」


デスストローク「……貴様……」

クーフーリン「まだ喋れるのか、頑丈だな」


360 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:22:32.63 ID:S9m+e/He0



バットマン「何者だ。……いや、お前は……クー・フーリン?」スッ

クーフーリン「俺は王だ。この世界を統べる王だ」ガチャリ

ナイチンゲール「……王。あの槍。つまり、ケルト兵を率いているのは、貴方ですか」

クーフーリン「フン、なんだって良いだろうが。どうせ今から死ぬお前らに関係があるか?」

ナイチンゲール「……」ググッ

バットマン「待てフローレンス」

ナイチンゲール「……退いて下さい。ここでケリをつければ……」

バットマン「分からないのか。実力の差が大きすぎる……」

ナイチンゲール「ではこのまま放っておいて、更なる地獄を産み出させるのを容認しろと?」

バットマン「お前が死ねば、奴を止める事はできなくなるぞ。今は退かねば……」

ナイチンゲール「……」ギリィ


バットマン(ここで出会ってしまったのは計算外としか言いようがない……ヤツは強い。ベインにも匹敵する、この実力の充実……)



キャットウーマン「……あらら、まさかここに直接来るなんてね……」

バットマン「セリーナ、もう一度スモークとフラッシュを焚けるか?」

キャットウーマン「在庫切れね」

バットマン「……本気か」

キャットウーマン「流石にこんな時に冗談は言わないわよ……」


361 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:23:18.66 ID:S9m+e/He0



クーフーリン「……『退かねば』か。俺がお前らを退かせると思ってるのか?」ガチャリ

マシュ「マスター、敵サーヴァントの魔力増大を感知。危険です」ガシャ

バットマン「全員備えろ。来るぞ、ヤツの宝具が……」

クーフーリン「デスストロークを倒したのはテメェだな」

マシュ「え?」

クーフーリン「それじゃあ、最初はお前だ。お前を殺す」グググググッ


バットマン(いかん)


バットマン「『令呪を以て命ずる』! マシュ、宝具を解放しろ!!」


クーフーリン「抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルグ)」ブォンッ


朱槍「」ゴォォォォォォォォッ!!



362 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:23:53.07 ID:S9m+e/He0



マシュ「真名、偽装登録……行きます!!」ガシャッ

マシュ「『ロード・……』」ドクン


(((それは全ての疵、全ての怨恨を癒す、我らが故郷。私は誰だ、マシュ・キリエライト)))


マシュ「……っ!?」ドドォッ、ゴォォォォォオォォォォォォ……


バリィィィィィィィィィィィィィ……!!!

ザシュッ!!

マシュ「かはっ……!?」グシャァ……


363 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:24:42.08 ID:S9m+e/He0



バットマン「! マシュ!?」

ラーマ「何だと!?」

ビリー「なんてこった……」



バットマン(馬鹿な、あれより高出力の攻撃を何度も受け止めてきたはず……)


バットマン「大丈夫かマシュ!?」ダッ

マシュ「は、はっ、あ、ぐ……」コヒュッ、ヒュー……

ナイチンゲール「退いて下さいブルース。……心臓は僅かに逸れています。ですが、肺を片方貫通している」


クーフーリン「まずは一人。次だ」ガシャリ


バットマン「馬鹿な、連射できるのか……!?」

キャットウーマン「バットマン、伏せて!!」ガバッ



クーフーリン「抉り穿つ……」



砂塵「」ブワアァァァッ……


364 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:25:30.19 ID:S9m+e/He0



クーフーリン「……ああ?」ピタッ



砂塵「」ブワアアアア……モクモク……


「こっちだ! 大地の精霊と呼応して目くらましをしている、今しかないぞ!」


バットマン「何……」

シータ「迷っている暇はありません!」

ラーマ「うむ、一刻も早く撤退せねば! 行くぞ!」

ナイチンゲール「……ブルース、行きましょう。マシュは私が背負います」

キャットウーマン「さあ早く、逃げるわよ!」

バットマン「……すまない」


バットマン(すまない、マシュ……! お前の変化に、私が気付いてさえいれば……)


マシュ「……」グタッ



365 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:26:23.95 ID:S9m+e/He0


砂塵「」モウモウ……ザアアアッ……


クーフーリン「……逃げやがったか」ザシ……

クーフーリン「おい、デスストローク。起きろ」

デスストローク「……」

クーフーリン「……チッ」ガシ、グイッ

デスストローク「……」ブラァ

クーフーリン「……」ザシ、ザシ、ザシ


クーフーリン(『報告』が無ければ動けなかった。その他の連絡は一切なし)

クーフーリン(あの女が牢の外に出てた。それでいて、氷山が消えてねえ……つまり、フリーズの野郎も裏切ったな)

クーフーリン(裏切りは許さねえ。追手を差し向けるか)


クーフーリン「フン」ザシ、ザシ


クーフーリン(反抗勢力も、所詮は些事。全部圧し潰してやる。俺が、全部)




366 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:26:51.72 ID:S9m+e/He0



………………


デッドショット「……」タタッ、ダッ


通り「」シィ……ン


エリザベート「……酷い荒らされようね。これじゃあ、生き残ってる人なんて……」

デッドショット「……」ダダッ


スイングドア「」ギィィィィッ


デッドショット「ペンギン! 何処だ!」タッタッ


空のグラス「」カラン……

デッドショット「……」ダッ


スイングドア「」バタァン!!



367 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:27:35.45 ID:S9m+e/He0



エリザベート「……」

デッドショット「……」ダッ、タタタ……


傘「」コロ……


デッドショット「……これは」ガシッ

エリザベート「傘?」

デッドショット「……ペンギンがいつも使っていた傘だ。……まさか、本当に……ここが陥落したのか」

エリザベート「……」

デッドショット「……」



368 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:28:03.22 ID:S9m+e/He0



デッドショット「……」

エリザベート「……ね、ねえ。こうしてても仕方ないし、ここに居ても、いつ奴らが帰って来るか分からないから危ないし……逃げて、森の中に入りましょうよ。それなら隠れられるでしょ?」クイクイ

デッドショット「……」

エリザベート「……ねえってば」

デッドショット「……ああ、そうだな。そうだな……クソ、どうしてこうなったんだ……どうして……」


369 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:28:30.34 ID:S9m+e/He0



………………


焚火「」パチパチ、パチッ……


デッドショット「……」

エリザベート「……」

デッドショット「……」

エリザベート「……あ、アタシ、狩りに行ってくるわね」ピョコン

デッドショット「俺の分は要らねえ」

エリザベート「そ、そう? アタシもお腹は減ってないから、……やっぱり行かなくていいわね」チョコン

デッドショット「……」

エリザベート「……」



370 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:29:12.08 ID:S9m+e/He0



デッドショット「……お前と一緒に行動する理由も、もう無くなった。何処でも好きに消えて良いぞ」

エリザベート「そんな……」

デッドショット「ヴィランストリートは壊滅した。寄る辺もねえ。こんな生活、いつまでも続けられる訳がねえ」



(((パパ、人を撃つのはもうやめて……)))



デッドショット(……罰が当たったんだな。後悔先に立たず、当然だ。人殺しで生きてきた連中が、何かを守れるワケがねえ)


デッドショット「終わりだよ、何もかもな」

エリザベート「……」


371 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:30:00.23 ID:S9m+e/He0



エリザベート「……アンタ、狙撃できるんだから頭良いと思ってたんだけど」

デッドショット「……」

エリザベート「アタシがそのくらいでマネージャーから離れると思ってんの? 悪評立てられたら困るのよ、ばーか」

デッドショット「……へっ、そうか……」


デッドショット(頭が良い、か……狙撃の計算は、いつもうまく行くのによ……)

デッドショット(なのに、なんで……)


(((デッドショット。お前は終わりだ)))

(((パパ……)))


372 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:30:28.99 ID:S9m+e/He0



デッドショット「悪いな、今日はまともな話ができそうにねえ。寝るよ」ゴロリ

エリザベート「……」

デッドショット「……」


焚火「」パチ……、……シュゥゥゥ……


エリザベート「……アタシも寝るわね」ゴロ

デッドショット「……ああ。おやすみ」

エリザベート「おやすみ……」



373 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/07(金) 22:31:25.79 ID:S9m+e/He0


エリザベート(…………)

エリザベート(……)


エリザベート「馬鹿ね。本当に、馬鹿なんだから」ボソッ


374 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/12/07(金) 22:32:27.17 ID:S9m+e/He0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/07(金) 22:46:51.53 ID:8WEgbtFso

デスストロークさんこんな扱い…
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/07(金) 23:07:01.27 ID:cw479ALHo

マシュの幸運がCでなければ即死だった・・・
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/08(土) 01:23:48.53 ID:6I8KcbtVo
マシュって人造人間なんだっけ?某ガンダム種でいうところのコーディネーターみたいなもん?
そうでなきゃ歴戦の傭兵相手に強すぎだよな…
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/08(土) 02:24:07.58 ID:n7qM9+G3o
>>377
某ガンダム種で例えるならラウ・ル・クルーゼ
どちらかといえばブレア・レヴェリーか
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/08(土) 17:12:19.61 ID:iF1IJ8KpO
こうしてデスストロークはマシュを弟子にしようと固執を…
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/08(土) 20:38:56.43 ID:tnhISZHzo
人造人間的なヒーローはDCはあんまりいない気がする
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/09(日) 00:08:41.84 ID:yr+eGm9/0
アメイゾとか
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/09(日) 10:45:46.89 ID:FlqMQ0SwO
>>377
人間に英霊を憑依融合させたデミ・サーヴァント
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/10(月) 12:49:37.18 ID:h5cil+73o
マシュはナイトウイングになるのかオラクルになるのか
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/10(月) 21:15:56.69 ID:iWkp3iPLO
>>383
バットガールでいいだろ
385 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/19(水) 23:59:41.45 ID:UU0zuN380


………………

梟「」ホーッ、ホーッ……

……ザワザワ……ザアアアッ……


デスストローク「……」ムクリ

デスストローク「……」


デスストローク(命拾いをしたか。忌々しい身体だ)チッ


クーフーリン「起きたかよ」ザシ、ザシ

デスストローク「ああ。俺を拾ったようだな」

クーフーリン「負け犬をな。無様な負けっぷりだったぜ」

デスストローク「フン。……無様、確かにな」


386 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:00:06.98 ID:nZCc8mKv0



デスストローク(……何かがおかしかった。あの程度の一撃、凌げない訳がない……だが、躱せなかった)

デスストローク(あの小娘の身体能力が急激に上昇したか? それとも、俺が鈍っただけか?)


クーフーリン「らしくねえな。テメェの戦闘能力を俺が買い被ってたのか?」

デスストローク「見くびるな。あの小娘の癖は見抜いた、次はない」

クーフーリン「だと良いがな」

デスストローク「……」


387 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:00:33.98 ID:nZCc8mKv0



デスストローク「……ダグザの棍棒は?」

クーフーリン「もう少しだ。所在は掴めた」

デスストローク「そうか。……報酬は、それだ。聖杯とやらにも興味はない、ダグザの棍棒だけをくれ」

クーフーリン「フン、ご執心だな。それ以上強くなりたいのか、……それとも、蘇らせたいヤツでも居るってのか」

デスストローク「……」

クーフーリン「……図星か」


388 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:01:06.64 ID:nZCc8mKv0


クーフーリン「まあ、好きにすりゃあ良い。俺には関係ねえ話だ、奴らを殲滅した後にお前が何処で野垂れ死のうが興味もねえ」

デスストローク「お前はどうするんだ、クーフーリン。この世界を滅ぼした後は?」

クーフーリン「……どうもしねえ。俺が知ったこっちゃねえ。俺は壊すだけだ。そのための王だ」

デスストローク「王か……」

クーフーリン「……」

デスストローク「……」


389 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:02:21.83 ID:nZCc8mKv0



デスストローク「……結局、俺達に何かが残る事は無いようだな」

クーフーリン「戦士ってのはそういうモンだ。壊して回って、それで終わりだ。何故それで満足できねえ?」

デスストローク「……何故、か。フフ……」


デスストローク(……今の俺は、戦士として不完全なのかもしれんな……)


クーフーリン「……感傷か。それに飲まれてりゃ、負けるだろうな。小娘相手に」

デスストローク「感傷? ……そうかもしれんな」



390 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:02:50.25 ID:nZCc8mKv0



クーフーリン「……とにかく、テメェはここに残れ。俺は城に戻って、ここにケルト兵共を派遣させる」

デスストローク「ケルト兵を?」

クーフーリン「気絶してて見てなかったかもしれねえが、あのナイチンゲールの野郎共とエジソン陣営が合流しやがった。すぐに全面戦争になる」

デスストローク「そうか……分かった」

クーフーリン「じゃあな」ザシ、ザシ

デスストローク「クーフーリン」

クーフーリン「ああ?」

デスストローク「……さらばだ」

クーフーリン「……ケッ」ザシ、ザシ


391 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:03:32.26 ID:nZCc8mKv0



デスストローク(感傷が戦士になる妨げとなるならば、俺はそれを切り捨てよう)

デスストローク(切り捨て、今度こそ、あの小娘に打ち勝とう。次の敗北は、絶対に無い)

デスストローク(全て殺す。殺し、そして……そして、息子を生き返らせる。そして、その時……その時こそ……)


(((この子が死んだのはアンタのせいよ!!!)))


デスストローク(……お前も俺を撃つか?)


392 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:04:01.86 ID:nZCc8mKv0



………………


バットマン「……」ジッ……

シータ「……」ソワソワ、キョロキョロ

ラーマ「……」スタスタ、クルッ、スタスタ

ビリー「……」ハァ……

バットマン「……」


カチャ……


ナイチンゲール「……」スタスタ


シータ「!! ナイチンゲール様!」

ラーマ「ま、マシュの容態は!?」

ナイチンゲール「大丈夫です。この拠点の設備が整っていた事もあり、ぶじ安定しました。……ブルース、傍に居てあげて下さい」

バットマン「……ああ、ありがとう。すまない」スタスタ


393 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:04:30.23 ID:nZCc8mKv0



マシュ「……」スウ、スウ……

バットマン「……」スタ……

バットマン「……」


通信機「」チカチカ……

バットマン「……もしもし、ドクターか?」ピッピッ

ドクター『もしもし、ブルースくん? マシュは僕とナイチンゲールで出来る限り手を尽くした。潰された彼女の臓器も、明日には元通りになるハズだよ』

バットマン「そうか。ありがとう」

ドクター『いや、良いのさ。……それで、今回の負傷が起こったそもそもの原因だけどね』


394 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:05:02.20 ID:nZCc8mKv0




………………


バットマン「……マシュの中に眠っていたサーヴァントが、起きたと?」

ドクター『宝具発動前に何度か、彼女の魔力が爆発的に高まったんだ。デスストロークと戦ってる時、クーフーリンの宝具を受け止める時に……それで不安定になって、貫通されたんじゃないのか』

バットマン「だが、何故今になって?」

ドクター『うん、多分彼女の身体が鍛えられるにつれ、徐々に強靭になって行き……サーヴァントとしての運用にも耐えられるようになって行ったんだと思う。その瞬間、恐らくマシュは「デミ・サーヴァント」から、限りなく「サーヴァント」としての性能に近付いたんだ』

バットマン「……」

ドクター『……っていうのが、今持ってるデータから立てられる最も有力な仮説かな。詳しい事は、マシュが起きてから聞いてみないと分からないけど』

バットマン「それが今後、また起きるかもしれないのか」

ドクター『うーん……こればっかりはなんとも言えない。マシュがもし、何らかの制御のコツでも掴んでいれば、不安定になる事はないと思うけど……』

バットマン「……」

レオナルド『そうだな、やっぱりここで結論は出せないね。今はともかくマシュが一刻も早く回復する事を祈っててくれ』

バットマン「……了解した」


395 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:05:33.88 ID:nZCc8mKv0



???「彼女は平気か?」スタスタ

バットマン「ああ。……窮地を助けてもらった事に感謝する、ジェロニモ」

ジェロニモ「なに、大した事じゃない。キミ達が無事で良かった……ところで、団体の総司令官はキミかな?」

バットマン「まあ、間違いは無い」

ジェロニモ「来てくれ。エジソンが話をしたいと言っている」

バットマン「……分かった。向かう。少し待っていてくれ」スクッ


396 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:06:04.45 ID:nZCc8mKv0




………………


エジソン「やあ、キミが噂の全身真っ黒人間だね!」

バットマン「……」


バットマン(なんだこの……頭がライオンなのか……?)


エジソン「私の名はエジソン!」ガオォッ

バットマン(馬鹿な……)

エジソン「そう、電球を発明したあのエジソンである!」

バットマン(エジソンがライオンだった……? いや、コイツは狂っているのか? そうだ、狂っているに違いない)ジリッ



バットマン「……」スッ

エジソン「……エレナ女史、説得を頼めないか」シュン

エレナ「えぇ、はい。まあ、貴方の見た目で初対面の人を信用させるのは無理よね……」ハァ


397 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:06:33.76 ID:nZCc8mKv0




………………


フリーズ「くっ……ぐっ……」ガシャンガシャン、ガシャンガシャン


フリーズ(このままでは奴を撒く事など出来ない……)


???「ははは!! そろそろ止まったらどうだヴィクター、まだ足掻くか!?」ダダダッ

フリーズ「くっ……」ガシャンガシャンガシャン

???「ふむ……追いかけっこにも飽いてきたのだがな!!」ダダダダ



フリーズ(この土地と私との相性が悪すぎる……常に熱帯びて乾燥した空気。フリーズ・ガンでの射撃が、いつもの半分も威力を発揮しない)ガシャンガシャンガシャン

フリーズ(ともかく、逃げねば。幸い敵はこちらを追跡し続けているが、捕捉されるほど私もノロマではないようだ……)ガシャンガシャンガシャン


廃屋「」


フリーズ(……あそこに、突っ込む!)ガシャンガシャンガシャン!!!

398 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:07:04.37 ID:nZCc8mKv0




ドア「」ドッシャァァァァァァァァアア……


フリーズ「はあ、はあ……」ガシャ、ガシャリ……


フリーズ(水の一杯でも飲まなければ。このままでは体温を氷点下に保てず、死んでしまう)ガシャ、ガシャ


ハァ、ハァ……

フリーズ「……?」


フリーズ(この気配……先客でも居たか?)ガシャ……


399 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:07:35.65 ID:nZCc8mKv0



フリーズ「……」ガシャ……ガシャリ、ガシャリ


壊れかけのベッド「」ギシィ……

老婆「はぁ……はぁ、はぁ……」


フリーズ「……?」


フリーズ(老婆? こんなところに、一人で? ……病床か?)




古びた椅子「」キィ……

フリーズ「!!」ガシャ


ギシ……ギシ……


フリーズ「誰だ。誰かそこに居るのか?」ガシャ

「待て、落ち着いてくれ。敵ではない」スタスタ

フリーズ「……お前は」

フィン「落ち着いて話を……なんと、ヴィクター。きみもここへ?」

フリーズ「フィン」



400 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:08:06.18 ID:nZCc8mKv0



フリーズ「……私は裏切ったのだ、ケルトを」

フィン「それは、奇遇だ。私も裏切り者として狩猟されている最中でね」

フリーズ「なんだと……という事は、私はここまで上手く逃げてきたつもりだったのに、実際は一か所に追いつめられていたのか?」

フィン「……ふふ、我々の事をよほど周到に狩るつもりなのだろう。警戒されているのは、嬉しいやら、哀しいやら」

フリーズ「……ここが、終わりか」ガシャリ

フィン「そう悲観する事もない。……いや、悲観すべきだったかな?」



401 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:08:34.15 ID:nZCc8mKv0



老婆「ごほっ、ごほ……」


フリーズ「……そのご婦人は?」

フィン「彼女は……私の、心の支えだったのですが。いやはや、巻き込むわけにもいかん。外へ討って出るとするかな」

フリーズ「その前に水を一杯飲みたいんだが」

フィン「それならば、ここにフィン特製の『川から直接手ですくった水』が」スッ

フリーズ「頂こう」パシ

フィン「ふふ、癒しの効果付きだ。存分に飲んで、疲れを取ってください」

フリーズ「……」ゴク、ゴク……


フリーズ(……!)


フリーズ「……そういえば、お前の宝具は」



402 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:09:02.68 ID:nZCc8mKv0



………………


ケルト兵達「「「」」」ザン、ザン、ザン


ベオウルフ「ああ? 誰かと思えば、フェルグスか」

フェルグス「ふふ、ベオウルフか。ここに居るという事は、大方計算通りに行っているらしいな」

ベオウルフ「俺はフィンの野郎が裏切ったから狩りに来たんだが」

フェルグス「俺はヴィクターだ。お互い、嫌な役回りだな」

ベオウルフ「ははっ、奴らの裏切った理由に感化されちまってるか?」

フェルグス「まさか。戦場で余計な感傷に浸る戦士は居るまい。ただ、かつての友だったというだけだ」

ベオウルフ「……しっかしまあ、どうする。奴ら、あの廃屋に入ったっきりだ」

フェルグス「うむ、どうするという事もなく……」



冷気「」ズォォォォォォォ……



403 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:09:32.96 ID:nZCc8mKv0



ベオウルフ「……おい」

フェルグス「ああ」



ビーム「」ギュォォォォォオッ


ケルト兵G「!?」パキィ……ン


フェルグス「おお、これは……ヴィクターだな」


フリーズ「全員……」ガシャン、ガシャン、ガシャン……


フェルグス「ベオウルフ! 来るぞ!」

ベオウルフ「分かってるよ!」


フリーズ「動くな!!(Freeeeeeeeeeeeeze!!!!!)」ゴォォォォォォォォォォオォォォッ!!!


404 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:10:22.95 ID:nZCc8mKv0




ケルト兵達「「「……」」」パキィ……バキ、ボロボロ……


ベオウルフ「ぐおおおぉ……効きやがる!!」パキィ

フェルグス「なんと、あれほど用意していた兵達が半壊か。無事かベオウルフ」ザザァ

ベオウルフ「脇腹が凍り付きやがった! 甘く見てたか?」

フェルグス「なんの、まだまだこちらが有利だ!」



フリーズ「フィン、やるぞ」

フィン「よし……やってしまおうか!」


405 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:11:44.68 ID:nZCc8mKv0



………………


(((お前は最高の弟だ、フロイド)))

(((死因は一発の誤射……)))

(((お前は犯罪者だ、フロイド・ロートン。兄貴を殺した犯罪者だ)))

(((パパ、人を撃つのはもうやめて……)))

(((でも、パパにはこれしかないんだ)))

(((……ハッピーバースデー、これからお前はどんどん大きくなるだろう)))



デッドショット(……お前は大きくなると思ってた。たとえ嫌われても、父親とすら呼ばれなくなっても、健やかに成長して、まともな人間になってくれればそれで良いと思っていた)


ザアァァァァァ……ホーッ、ホーッ……


デッドショット(だが、理不尽だよな。生きていけると思ってた世界に、死ぬ事を押し付けられるなんて)


エリザベート「……」スゥ、スゥ……

デッドショット「……」



406 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:12:25.99 ID:nZCc8mKv0



デッドショット「……」


デッドショット(分かってる。分かってるさ。これは俺が振りまいてきた理不尽のツケだ。世界は見逃さなかった。俺がのうのうと幸せになるなんて、許さなかったんだ)

デッドショット(計算は得意なつもりだった。だが俺にとって唯一の誤算だったのは、人生が一度きりだった事だ)

デッドショット(……許してくれ、なんて言えねえよなあ)


デッドショット「……」ムクリ

エリザベート「……」スゥスゥ……

デッドショット「……じゃあな」ボソ


407 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:12:56.66 ID:nZCc8mKv0



………………



アルジュナ「はあーっ、はあーっ……!」バチバチ、バチィ……

カルナ「はあ、はあ……!」ゴゴゥッ、ゴゴゴ……

アルジュナ「随分、苦しげだな、カルナ……!」ゼー、ハー

カルナ「お前も、ギリギリのように見えるがな……!」ハア、ハア

アルジュナ「誰がギリギリなものか、まだやれる!」ガシャ

カルナ「ケルト兵も尽きた、あとはお前だけだ……!」ググッ


ブォンッ、ガシャァ……バキィ、ドゴォ……



408 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:13:26.87 ID:nZCc8mKv0



アルジュナ「ごふぅ……」ドシャッ

カルナ「うぐぉ……」ドサァ

アルジュナ「い、忌々しい……!」ググ、プルプルプル……

カルナ「そっくりそのまま、台詞を返す……」ムク……フラ、ドサァ

アルジュナ「貴様は昔からそうだった! 一目見た時から、こうなると分かっていたのに……ええい、あの時殺さなかった私の不覚……!」

カルナ「俺も、同じ気持ちだ……」



409 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:14:52.43 ID:nZCc8mKv0




アルジュナ「……」

カルナ「……」


梟「」ホーッ、ホーッ……


アルジュナ「……」

カルナ「……」

アルジュナ「…………」

カルナ「…………」

アルジュナ「……」ドサッ

カルナ「……」ドシャッ
410 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:16:38.91 ID:nZCc8mKv0

アルジュナ(い、忌々しい……!! もう少し、もう少しでとどめを刺せるというのに、ここで力果てるとは……!!)プル、プル……

カルナ(……)フッ


カルナ「……アルジュナ」

アルジュナ「……?」

カルナ「……生前の俺は、神々の呪いによって阻まれ、お前と全力のぶつけ合いをできずに死んだ」

アルジュナ「……」

カルナ「……これは、俺の悲願だったのかもしれない」

アルジュナ「……」

カルナ「お前はどうだ、アルジュナ。お前は生前、俺を殺した事に納得していたか?」

アルジュナ「……分かっていてそういう事を訊くんじゃない」

カルナ「……」

アルジュナ「……全く」


411 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:17:15.98 ID:nZCc8mKv0



アルジュナ「……まあ今、こうして俺の方が優れていると証明された。そういった意味では、おおむね満足だ」

カルナ「何?」

アルジュナ「こうして俺の方が優れていると……」

カルナ「異議がある」

アルジュナ「ははは、もう立てもしないヤツが何を言っている」

カルナ「立てる」ググ、プルプル……

アルジュナ「空元気を……!!」プルプルプル……



412 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:17:48.20 ID:nZCc8mKv0



???「ぺっぺっ、奴らめ、遠慮も無しに殴りやがる……撒くのにここまで時間が掛かるとは」ヨロヨロ

カルナ「む……」

アルジュナ「誰だ」

ペンギン「あ? ……何だ、カルナ。こんなところに居やがったのか」ポツン

カルナ「オズワルド……」



413 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:18:21.69 ID:nZCc8mKv0



ペンギン「なんだ、そっちの黒いのは。敵か?」

アルジュナ「……」

カルナ「……敵だ」

ペンギン「そうか……フン、随分弱ってるな。俺が殺してやろうか?」

アルジュナ「お前一人を殺す程度の力は十分残っているぞ、小男」

ペンギン「カハハハ、ボロボロですごみやがって。……だがまあ、俺も限界だ……」ドシャリ

カルナ「……何をしに来た?」

ペンギン「逃げてきたんだ、ケルト共からな。お前を見たら安心で気が抜けた」


414 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:18:55.29 ID:nZCc8mKv0



カルナ「ケルト兵が、ヴィランストリートにも……?」

ペンギン「部下が殺された。ガキ共を逃がすために俺もギリギリになっちまったが、まあ、奴らの忠誠心に救われたさ……」

アルジュナ「……」

ペンギン「カルナ、お前、今回は偵察だけだと言ったのに、こんなところで遊んでやがって」

カルナ「……乗ってしまったんだ。一騎打ちの誘いに」

アルジュナ「フン、お前から誘ってきたように思うがな」

ペンギン「どっちだって構うか、ガキみたいな押し付け合いをするんじゃねえ」



415 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:19:22.91 ID:nZCc8mKv0



ペンギン「……あぁ……あー、どっちかライターかマッチを持ってねえのか」ゴソゴソ、カポ

カルナ「……いいや」

アルジュナ「……」ポイッ

ペンギン「オッ、……こりゃどうも」パシ、シュポッ……

アルジュナ「フン、せいぜい寿命を縮めろ」

ペンギン「高い葉巻は体にいいんだ、知ってたか?」シュゥゥゥ、ホウッ……

カルナ「いい加減な事を言うな」

ペンギン「じゃあ言い換えとくか、我慢は体に毒だ……」フー……


416 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:19:51.24 ID:nZCc8mKv0



煙「」フワァ……


ペンギン「……で、どうするんだ。一騎打ちは終わったのか」

アルジュナ「……」

カルナ「……」

ペンギン「……まあ、死ぬまでやりてえならそうしろ。見たとこ、どうにも治まらねえ因縁があるんだろ。そりゃあ理解できる」

アルジュナ「……」

カルナ「……」

ペンギン「俺も昔はそういうのにこだわっててな……」

アルジュナ「フン」

ペンギン「なんだ」

アルジュナ「興が冷める」

ペンギン「若造が!」



417 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:20:18.87 ID:nZCc8mKv0




アルジュナ「……」

カルナ「……」

ペンギン「……ふー。で?」

アルジュナ「……やめだ」

カルナ「もう一度やるにせよ、仕切り直しが要るだろうな……」

ペンギン「だろうな」


418 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:20:47.58 ID:nZCc8mKv0



ペンギン「……それにしてもお前ら、負った傷に重傷もあるだろ」

カルナ「……」

アルジュナ「……」

ペンギン「誰か治療できるのか?」

カルナ・アルジュナ「無理だ」

ペンギン「……お前ら、俺が来たことに感謝するんだな。見せてみろ馬鹿共」



419 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:21:16.15 ID:nZCc8mKv0



………………


バットマン「……」

エジソン「……」

エレナ「……」

バットマン「……分かった。信じよう」

エジソン「ホッ……」

エレナ「ホッ……」


バットマン(……不審な動きがないか、監視が必要だな……)



420 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:21:48.03 ID:nZCc8mKv0



エジソン「キミ達の噂は前々から聞いていた。我らが労働者たちを氷山の牢から解放し、ケルトの侵略から街を守る英雄的ゲリラ勢力だと!」ガオォッ

バットマン「ロボットとケルトの無益な戦争も止めようとしている」

エジソン「むぐぅ」シュン

バットマン「……だが、そうだな。そちらも略奪の類は行っていないようだ、一般人の安全確保という点では、利害の一致はある」

エジソン「む、むむ??」

バットマン「『アメリカを守る』らしいな。それなら、私達が協力を断る道理はない」

エジソン「おお!! 協力締結か!」ガオォッ

バットマン「……だが、ロボットの数に任せたお粗末な攻め手は受容できない。地図を見せてくれ、少し戦術を見直す」

エジソン「(´・ω・`)」シュン



421 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:22:17.12 ID:nZCc8mKv0



地図「」バサァッ

バットマン「ドクター、この地図を読み込んでスーツのコンピューター機能で表示してくれ」ピッピッ

ドクター『はいよっと。少し待ってね……ダウンロード完了、表示するよ!』


データマップ「」ブォォォン……


バットマン「ふむ」


バットマン(この地図に……ケルト兵から得た敵拠点の、座標情報を組み合わせる)ピッピッ

バットマン(そして、こちらの拠点の座標情報も入れて)ピピ


バットマン「……正確な位置関係は、こうだ」ピッピッ、ブゥゥン

エジソン「ほう!」

エレナ「まあ、すごい技術ね!」



422 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:23:22.15 ID:nZCc8mKv0



バットマン(北は延々と続く荒野と砂漠、対して南に行くほど森がうっそうと生い茂る大陸か。こちらは東に、あちらは西に拠点を構えている。さあ、どうする)


エレナ「じゃあどうしましょうか!」

バットマン「ああ」

エレナ「?」

バットマン「……ああ」

エジソン「エレナ女史、これは……発明に熱中している時の私だ。多分何も聞こえていない」

バットマン「ああ」

エレナ「ええ……?」


バットマン(ロボットの武装を見るに、やはり南の森で戦うのは避けた方が良い。障害物が多すぎて実力を発揮しきれない……となると、主戦場は北、荒野地帯になるか)

バットマン(……)


キャットウーマン「あら、作戦会議中かしら?」

エレナ「会議というか、彼が一人で考え込んでるというか」

キャットウーマン「駄目よバットマン、いい加減人に頼る事を覚えなきゃ」シナッ

バットマン「……」

キャットウーマン「……」ペシパシ

バットマン「………………」

キャットウーマン「……ブルース」ボソッ

バットマン「……セリーナ、いつから居た」

キャットウーマン「相変わらずよね……」ハァ



423 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:24:14.11 ID:nZCc8mKv0



キャットウーマン「それで、どうするの? 戦術は?」

バットマン「北だ。障害物の少ない北を主戦場に据え、戦力を半分以上投入する。槍を持ったケルト兵達は突破力に優れるだろうが、ロボットの壁を分厚くすれば阻めるだろう」

キャットウーマン「……ふうん?」

バットマン「……と、ここまでなら敵も当然考えているだろう。その裏を掻く形で、南に少数精鋭のサーヴァント部隊を用意する。これで敵を突破、拠点へ速攻を仕掛ける」

キャットウーマン「大胆ね」

バットマン「危険は伴うが、わざわざ敵の戦力が集中すると予想できる北で真っ向勝負をするのは好ましくない。デスストロークは恐らく消えていない、戦闘が長引けばクーフーリンも出て来る。主戦場を囮に使う」

キャットウーマン「……成程。流石ね」

バットマン「ああ。……どうした?」

キャットウーマン「いいえ、何でもないわ。難しい話で知恵熱が出そう、私は夜風に当たってくるわね」コツコツ

バットマン「……」


バットマン(……)


エジソン「ふむふむ成程、良い戦術だ! それでいくとしよう!」

バットマン「……いや」

エレナ「え?」



424 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:24:43.10 ID:nZCc8mKv0



………………



フェルグス「ははは、そろそろ終わりか!」ダダッ、ガギィ!!

フリーズ「ぐぅっ……」ズッシャシャァ、ギリィ

ケルト兵K「!」ダッ

フリーズ「クソ……」ガギャァ!!


フリーズ(まだか、フィン!?)


フィン「てやぁっ!!」ガギィ!!


フィン(もう少し、もう少しで……!)ブゥンッ、ガギィ!!


ベオウルフ「ったくしゃらくせえなァ!!」ドシリ

フィン「!!」バッ

ベオウルフ「宝具でも発動したかったみてえだが、遅かったな。俺の方が温まっちまったよ……!」ドシ、ババッ!!

フィン「しまッ」



425 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:25:32.41 ID:nZCc8mKv0



 ベオウルフは大きく踏み込んだ。得物に対して、近すぎる間合いだ。その戦闘経験の豊富さから、フィンは戸惑いに囚われる。この距離で剣を振り抜いても、効果的なダメージなど……。

「源流(グレンデル)」

 その瞬間、荒々しく踏み込んだ英雄は、両手から剣を捨てた。フィンは気付く。自分は致命的なミスを犯した。目の前の豪傑が得意な戦法は、武器を持った戦いではなく……!

「闘争(バスター)!!!」

 鉄拳に頬を打ち抜かれるのを感じながら、フィンはたたらを踏む。これで到底終わりではない。ベオウルフは拳を引き戻し、更に殴りつける。鳩尾。更に殴りつける。胸。更に殴りつける。キドニー。キドニー。喉元。脇腹。脇腹。脇腹。鳩尾に強烈な一発。

「がっは……」

 血を撒き散らしながら、フィンは倒れかかった。だが倒れればすかさずトドメの一撃に持ち込まれるだろう。それだけの気迫が、ベオウルフにはある。踏ん張りながら、フィンは遠い日々を目に映す。フィオナ騎士団としての栄光の日々。めとった最初の妻。一番槍、ディルムッドとの出会い。妻の死。悲しみ。二人目の妻。二人目の妻が、ディルムッドを好いていたという事実。ディルムッドとのすれ違い……そして、彼との後悔にまみれた別れ。


 フィンは耐えた。倒れるわけにはいかない。彼は台風のようなラッシュをその身に受けながら、朦朧とする思考を回転させる。人は死の直前に走馬燈を見るという。それは何故だ。後悔なくあの世へ旅立つためか? それとも……?


「終わり、だァ!!」


 岩盤をすら砕くかのような一撃をモロに腹部へ受けながら、それでもフィンは立っていた。ベオウルフの拳が腹から引き抜かれ、フィンはもがきながら後退る。白目を剥き、口の端から血を流しながら、彼は限りなく死へ近付いた。


(死ぬのか?)


 彼は奔流じみた走馬燈の中から誇りを掴み取り、生のほとりに留まろうと足掻いた。彼にとっての誇りとは何だっただろうか。それは武勇だったかもしれない。それは名声だったかもしれない。


(((──私がお前を守ってみせるとも)))


 しかし、彼は愛を選んだ。それこそが彼の足を運ばせ、死を少しだけ遠ざけ、ひとりの騎士としての意地を思い出させた。


 技の反動に耐えながら、ベオウルフは目を瞠った。確実に殺したはずの相手が、よろめきながら、血を吐きながら、それでも歯を食い縛って立ち続けている。しかも不敵な笑みまで浮かべている。


「ようやく、宝具の分の魔力が、溜まり切った……」


 ベオウルフの宝具を受け切ったフィンは、その身に叩き込まれた魔力を利用。みずからの宝具の助けとし、震える腕で槍を構えた。


(マズい)


 フリーズを攻撃していたフェルグスがそれを見、瞬時に判断し、大技の反動で動けないベオウルフを庇いに回る。フィンの宝具は強力だが、受けきれないほどではない。このまま防御し、その後に反撃すれば良い。


「堕ちたる神霊をも屠る、魔の一撃」


 フェルグスが剣を横に構え、万全の防御姿勢を取る。フィン・マックールの真に恐るべき能力は治癒と智慧であり、その宝具ではない。ならば当然受け切れる。それまでにはベオウルフも反動から脱している事だろう。楽ないくさだ。だが、フェルグスは言葉にならない不吉な予感を禁じ得ない。


「その身で、味わえ!! 『無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)!!』」


 フィンが構えた槍から飛び出したのは、高圧水流じみた水の魔力だった。その直撃を防御しながら、フェルグスは耐える。やはり威力自体は大したものではない。横に構えた大業物『カラドボルグ』に当たった水の奔流は、砕かれ、辺り一面に撒き散らされる。

 フィンは出力を最大に保ち続ける。だがカラドボルグは砕けない。フェルグス愛用の魔剣。一振りで丘三つを斬り飛ばす逸品。どうして水の奔流で砕けるハズがある? フェルグスは笑おうとし、特大の嫌な予感に顔をしかめた。吐く息が白い?


「よくやってくれた、フィン」


 ボロボロになった極低体温スーツの中、フリーズが呟いた。フリーズ・ガンの銃口がこちらへ向いているのを見たフェルグスは、敗北の闇が足元にぽっかりと口を開いたのを感じ、半ば呆けたように表情を弛緩させた。ベオウルフは苦笑しながらフィンを見つめていた。


 十分な水気を含んだ空気は、ケルト兵達、ベオウルフ、フェルグスを巻き込み、一瞬で凍り付いた。



426 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:26:00.54 ID:nZCc8mKv0



フリーズ「や、ったか……?」ガシャリ

フィン「それは、世間一般で言うフラグですので、言わない方が良いかと」ゼエ、ゼエ

フリーズ「……」


氷塊「」パキィ、パキ……


フリーズ「……やったんだな」

フィン「どうやら」

フリーズ「信じられん……」

フィン「私もです、ゴホッ」



427 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:26:29.25 ID:nZCc8mKv0



………………

床「」ギシ、ギシ、ギシィ……


古びた椅子「」ギィィ……



フリーズ「……よし、これで大方処置は完了した。ずいぶんと手ひどくやられたな」

フィン「ぐっ……なかなか、痛いものですな」

フリーズ「これで一旦は、落ち着けるか。我々を裏切り者として狩る者も居なくなった」

フィン「ええ、まあ、そうでしょうな……」

フリーズ「……浮かない顔だな」

フィン「……」


老婆「……げほっ、ごほっ……」



428 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:26:57.50 ID:nZCc8mKv0



フィン「……実を言えば、私にとっては、生きるも死ぬも大した問題ではないのです」

フリーズ「……どういう事だ」

フィン「ひとつ、大きな心残りがあり……それを解決したいのですが、ひとりでは恐ろしい。付き合っていただけませんか」

フリーズ「……?」

フィン「それは、『ダグザの棍棒』と呼ばれています」



429 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:27:29.07 ID:nZCc8mKv0



………………


ビリー「……」イライライライラ


シータ「〜♪」ギュッ

ラーマ「……///」カァ

ビリー「……あー砂糖吐きそう。すっごい今、砂糖吐きそう」

ナイチンゲール「……ブルースは何処へ?」

ジェロニモ「エジソンに呼ばれて指令室だ」

ナイチンゲール「……」スクッ

ジェロニモ「むっ、何処へ?」

ナイチンゲール「彼は一人だと必ず無茶をします。マシュが居ない今、私が傍に付かなければ」スタスタ

ジェロニモ「む、無茶とは……ここでどう無茶を」


指令室「」ドンガラガッシャーン!!


ジェロニモ「え?」

ナイチンゲール「……」ダッ



430 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:28:02.82 ID:nZCc8mKv0



………………


エジソン「キミは! 本気で! 言っているのか!?」フーッ、フーッ

エレナ「え、エジソン、少し落ち着いて……」

バットマン「私はいつでも本気だ」

エジソン「そんな策が通るとでも……」

バットマン「だが、通してもらう。このままではいずれケルト兵の無限の物量に、こちらの生産力は追いつかなくなる。ならこうするしかない」

エジソン「もし万が一我々が負けた時、どうなるか分からんワケではあるまい! 破滅だ! 皆が死ぬ! それはアメリカの死だ!」ガオォッ

バットマン「なら失敗しなければ良い。このままこうして居ても、破滅は向こうからやってくるぞ。逃げてはならない。立ち向かわねば、エジソン」

エジソン「貴様は……!!」


ガララッ


ナイチンゲール「ブルース、どうしました」

ジェロニモ「どうした、エジソン!?」


431 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/12/20(木) 00:28:31.85 ID:nZCc8mKv0



バットマン「……いいや、何でもない」

エジソン「……」フーッ……フーッ……

ナイチンゲール「……何でもない、と?」

エジソン「……ああ、うむ。何でもない。すまない、取り乱した」フーッ……

ガラッ

キャットウーマン「どうしたの!?」

バットマン「……」

エレナ「なんでもないの、なんでも……大丈夫よ」

キャットウーマン「……なら良いけど」


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