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【ハイスコアガール】大野真「晶の体育祭へ行くわよ!」
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45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 17:49:59.01 ID:oBHl5UyH0
宮尾「と言いますと?」
真「私、小春ちゃんには心の底から感謝してるの」
宮尾「……」
真「晶の窮地を救ってくれたんだから……」
宮尾「……」
真「もし棄権にでもなっちゃったら、クラスの中であの子の立場がどうなってたことか」
宮尾「そうですね……ただでさえ孤立してるみたいなのに」
真「だから、小春ちゃんが引き受けてくれて、出場できただけでも…」
ハルオ「お姉さん!」
真「え? 何よ」
ハルオ「お姉さんらしくねぇぜ! さっきからそんな眠たいこと言ってよォ!」
真「え……」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 17:51:24.80 ID:oBHl5UyH0
ハルオ「“出場できた”ってことは、まだスタートラインに立っただけ、ってことじゃねーか!」
真「……」
ハルオ「出場がゴールじゃねェ、勝負の決着がゴールなんだ! バトルはまだ始まっちゃいねーんだぜ!?」
真「……」
ハルオ「大野だって、日高と組もうと思ったのは勝ちてェからだ!」
真「…!」
ハルオ「大野は絶対、1着を狙ってる!」
真「そうね……分かったよハルオくん! よし、気合いと酒入れて応援するわ!」グビグビ
ハルオ「お前も声出せ宮尾! 俺たちがここからあいつらへパワーを送るんだよ!」
宮尾「分かった。強そうな競走相手ばかりだが、二人が負ける場面なんか当然、見たくない!」
ハルオ「燃えてきたぜ! 逆境に打ち勝て大野! 日高!」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 17:52:56.44 ID:oBHl5UyH0
『1コースはA組。大野晶さんと、いとこのお嬢さんの可愛らしいペアです!』
日高(矢口くんの声が、このスタート地点まで聞こえる……)
日高(また保護者席で大騒ぎしてるんだな……)
日高(お姉さんも、宮尾君も叫んでる……)
日高(矢口くん、私たちを応援してる)
日高(“私たち”を応援してる)
日高(今は大野さんだけを応援してるんじゃない)
日高(私と、大野さん。私たちを応援してるんだ)
晶「…」グッ
日高(大野さんの手に力が入った)
日高(私の腰へ回した手に…!)
日高(行くぞ…!!)
パーン
『各クラス一斉にスタート!』
『まず抜け出したのはF組、G組……そしてA組!』
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 17:54:57.78 ID:oBHl5UyH0
真「いい感じじゃん! さっきペアを組んだばっかなんて信じらんない!」
宮尾「想像以上に息が合ってますね。その調子だ! 日高! 大野さん!」
ハルオ「うらぁぁあああ!! 行けやぁぁあああ!!」
『A組出た! A組が先頭!』
『女の子同士のペアがリード!』
日高(トップに立てた。今、私たちが1位)
日高(思ったよりうまくいってる)
日高(大野さんが私へ合わせてくれてる)
日高(ほかの組は予想したより速くない)
日高(思ったよりうまくいってる)
『A組ペア、軽快な走り!』
『全ペアの中で最も二人の体格差がないのが功を奏しているか?』
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 17:56:50.95 ID:oBHl5UyH0
真「すごい! 二人の脚と手が完全に同じ動きしてる!」
宮尾「二人の脚の長さがほとんど同じで、歩幅がそろっているのは有利です!」
ハルオ「よっしゃぁあ!! そのままブッチギリだぁぁああ!!」
日高(順調…)
日高(すごく順調)
日高(逆に、ちょっと拍子抜け)
日高(スタート前の緊張は何だったんだろ)
日高(私、力が入り過ぎてた…?)
『食らい付こうとするF組、G組!』
『だがA組がリードを広げる! このまま独走か!?』
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 17:58:00.82 ID:oBHl5UyH0
日高(相手が大野さんだから…)
日高(私、力が入り過ぎてた?)
日高(緊張して損したかも)
日高(このままなら勝てる)
日高(ていうか、楽勝?)
日高(楽…)
グラッ
日高「あッ!?」
ドサッ
『転倒!!』
『何と転倒!!』
『トップを走るA組、まさかの転倒です!!』
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:00:53.03 ID:oBHl5UyH0
真「きゃああっ!?」
宮尾「日高!! 大野さん!!」
ハルオ「だあああッ!! 何やってんだあの馬鹿ども!!」
『A組、起き上がって走り始めた』
『しかし転倒の間に全ペアがその脇を通過』
『A組ペア、トップから最下位へまさかの後退です!』
真「二人ともケガしてないみたい。良かった……」
宮尾「取りあえず、大野さんが日高を引きずって走るという地獄絵図にはならずに済みました」
真「でも最下位……」
宮尾「いや、お姉さん。勝負はまだ終わってません!」
真「そうね……決着はまだついてない!」
ハルオ「そっから全員抜けぇぇええ!! 諦めんなオラァアア!!」
『代わって先頭になったのはF組! それをG組が追う!』
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:03:31.43 ID:oBHl5UyH0
日高(油断した…!)
日高(私のミスだ…!)
日高(それに今、大野さん…)
日高(私の下敷きに…!)
日高(私がケガしないように…!!)
『G組やや遅れた! 400メートルという長丁場で疲れたか?』
『トップのF組が快調にゴールを目指す!』
日高「大野さん!!」
晶「…」
日高「飛ばして!! 私ついてくから!!」
晶「…」コク
『あっ、最下位のA組が…』
『A組が爆発的に加速!』
『これは……何という速さでしょう!!』
『二人三脚とは思えないスピード!!』
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:04:48.16 ID:oBHl5UyH0
真「きたああああ!! 晶!! 小春ちゃん!!」
宮尾「大野さんのペース! それへ日高が懸命に合わせてます!」
ハルオ「行っけぇぇええ!! とっとと全員ブッコ抜けやぁぁああ!!」
『A組ペア、驚異的な走り!』
『最後尾から各ペアを次々と抜き去って、2番手のG組に迫る勢い!』
『抜いた! G組を抜いた!』
『残るは先頭のF組!』
『しかしゴールが近づいている! F組がラストスパート!』
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:05:47.09 ID:oBHl5UyH0
真「こうなったら絶対に1着よ!! 絶対に1着ッ!!」
宮尾「あの二人ならやってくれます!!」
ハルオ「うぉりゃぁああ勝負だ!! 駆け抜けろ!! 大野ぉぉおお!! 日高ぁぁああ!!」
『もうゴールラインは目前!』
『F組が逃げる! A組が追う!』
『並んだ!! ゴール手前で両者ついに並んだ!!』
『1着はどちらのペアか!?』
『A組か!? F組か!?』
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:07:40.52 ID:oBHl5UyH0
――大野家観覧席
宮尾「あ、日高が戻って来た」
日高「エヘヘー! 勝ったどー!なーんてね♪」
真「小春ちゃんすご〜い!! ありがとね〜!!」ギュッ
日高「ちょ、お姉さん抱き付かないでください…嬉しいけど」
真「大好き〜!! ほっぺスリスリしちゃう〜!!」
日高「もう、くすぐったいですよぉ。ていうかお酒臭っ!」
宮尾「お疲れさん日高! すごかったな!」
ハルオ「よくやった、日高!」
日高「うん!」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:08:59.38 ID:oBHl5UyH0
真「さ、小春ちゃん座って」
日高「はい!」
真「何か飲む? お昼とおやつの時のがまだあるわよ」
日高「じゃあお水ください、ガス入りの!」
宮尾「ほう、憶えたな日高」
日高「今ってガス入りの飲物をゴクゴク、プハー!ってやりたい気分!」
ハルオ「あんな大逆転バトルをやったんだからな、喉も乾くだろうぜ」
日高「お仕事終わった後にビールで乾杯する人たちの気持ちが分かる気がする!」
真「それならお嬢さん、一丁いきますか?」
日高「はい!」
真「あソレ♪」
真・ハルオ・宮尾「イッキ♪ イッキ♪ イッキ♪」
日高「…」ゴクゴクゴク
日高「…」プハー!
真・ハルオ・宮尾「おお〜!」パチパチパチ
日高「イェーイ♪」
ハルオ「何やってんだ俺ら」ボソ
宮尾「水なんだからいいだろ。急に一人だけ冷静になるなよ」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:12:54.81 ID:oBHl5UyH0
真「晶は?」
日高「クラスの席の方へ行きました。まだ出場する種目があるみたいです」
宮尾「それにしても、一時はどうなることかと思ったぜ。まさか転倒するとは」
日高「あれは、私が悪いの」
ハルオ「日高が? 何かあったんか」
日高「私たち、途中までとっても順調に走ってたでしょ?」
真「組んだばっかのペアなのにすごく息が合ってる、ってみんなで話してたわ」
日高「それで私が、油断しちゃって…」
真「……」
日高「これなら楽勝かも、って思っちゃって。その時に走りのリズムが崩れたんです」
宮尾「邪念……」
日高「うん。集中が途切れた。それで大野さんとのリズムが狂って、バランスが取れなくなったの」
真「何もかもうまくいってて、このまま独走って感じだったけどねぇ」
日高「うまくいったことで油断しちゃったんです。スタート前に緊張してたから、尚更……」
宮尾「ハルオが、コケたら大野さんは日高を引きずってでも走る、なんて言ったからじゃないのか」
ハルオ「俺のせいにすんなや。あり得る事態を忠告して何が悪りぃんだよ」
日高「3人ともごめんなさい。転んだことで心配させちゃって……」
真「謝らないで。私は逆に、いくら小春ちゃんへお礼を言っても足りないくらい」
日高「いいえ、お姉さん。お礼を言うのは私の方なんです」
真「どうして小春ちゃんが?」
日高「転んだ時…いえ、転ぶ時に、大野さんが私を助けてくれたんです」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:15:01.61 ID:oBHl5UyH0
ハルオ「転ぶ時に助けた? 意味分かんねぇ」
日高「私たちが倒れる瞬間、見てなかった?」
宮尾「二人でグラウンドへ折り重なったのは見たが…」
日高「その時、上の人の下敷きになったのはどっちだった?」
真「……思い出した。晶ね」
日高「はい。大野さんが体を投げ出してくれて、その上へ私が倒れたんです」
ハルオ「……」
日高「私たちの服は二人とも上が半袖だけど、下は私がミニスカートで、大野さんがジャージ」
真「じゃあ晶は、小春ちゃんがケガしないように…」
日高「そのとおりです。ジャージの自分の方がケガする確率が少ないからって、守ってくれたんだと思います」
宮尾「だがそれを、転倒する瞬間に判断し、同時に行動へ移した……?」
日高「バランスを崩したのは私なのに、大野さんは何が起きたか一瞬で分かって、先に倒れてくれたの」
真「晶にケガは?」
日高「もちろん、ありません」
宮尾「日高を守っただけじゃない。自分自身もケガしないよう、うまい転び方をしたのか……」
ハルオ「やっぱ、あいつの反射神経と身体能力はバケモノだぜ」
日高「でも大野さんは、走って勢いがついてる最中に転んで、しかも人の下敷きになった」
ハルオ「……」
日高「とっても痛かったはず」
ハルオ「……」
日高「私はミスで大野さんをそんな目に遭わせた。だから、絶対に何とかしなくちゃって思った」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:16:40.07 ID:oBHl5UyH0
宮尾「それが、最後のあの走りにつながるのか」
日高「転ぶ前はずっと、私のペースで走ってた。大野さんがそれに合わせてくれてた」
宮尾「ああ」
日高「ほかのペアは思ったより速くなかった。私たちが先頭になった」
ハルオ「だが、そこで転倒か」
日高「一気に最下位になった。私は、絶対に何とかしなくちゃって思った」
宮尾「再び走り出してからは、より速い大野さんのペースに切り換えたんだな」
日高「私から言ったの。それ以外考え付かなかった」
ハルオ「あいつのハンパねぇスピードへついていこうとするなんて、無茶しやがるぜ」
日高「でもあの時、自分の中で何かを突き破った気が……脚も、体も、自分の物じゃないみたいだった」
宮尾「普段の運動能力以上のものが出たのか」
日高「私があんな速さで走れるなんて思わなかった」
ハルオ「限界を突破した、ってことだな」
日高「本当に速い人だけが見ることのできる景色。それを見た気がする」
真「体へすっごい負担だったんじゃない? 今は何ともないの?」
日高「実はまだ、脚がちょっとガクガクしてます。でも大丈夫です」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:20:01.60 ID:oBHl5UyH0
宮尾「順位の発表まで少し時間が掛かったが、あれはどうしてなんだ?」
日高「ビデオ判定をしたんだって」
ハルオ「ビデオ判定!? 高校の体育祭で!?」
真「専用の機械があるわけじゃないらしいけどね。微妙なゴールシーンは必ず検証するの」
宮尾「遺恨を残さないようにするためですか。そういうところも気合いが入ってますね」
真「各クラス、プライド懸けてるから。学校側も対応しなくちゃならないから大変よ」
ハルオ「やっぱスゲェな上蘭……」
真「でもビデオ判定の必要なんかなかったわね。ゴールシーンを見れば結果は明らか」
宮尾「そうですね」
日高「えっ…?」
ハルオ「そうだっけ?」
宮尾「ハルオは分からなかったか? お姉さんの言うとおり一目瞭然だったぞ」
日高「でもゴールはほとんど同時で、実際、ビデオ判定へ持ち込まれて…」
真「小春ちゃん」
日高「はい」
真「自分がゴールした時のこと憶えてる?」
日高「はい。一応…」
真「その時、自分がどんな姿勢をとったか憶えてる?」
日高「あの時は胸をこう、ぐっと突き出して……陸上選手のやり方です」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:22:14.14 ID:oBHl5UyH0
真「だから勝てたのよ」
日高「?」
真「分からない? 小春ちゃんのぐっと突き出したソレが、ゴールラインを一番早く通過したのよ」
日高「!!」
真「こんなに立派なモノ持ってんだからね、そりゃ勝てるわ」
日高「///」
真「晶じゃ無理だった。あの子が小春ちゃんを組む相手に選んだのは、コレを使う作戦だったのかも」
日高「///」
宮尾「“鼻の差”ならぬ“胸の差”。日高のゴールシーンを見れば勝利は一目瞭然だったぜ」
日高「///」
ハルオ「ふーん、そうだったんか。こいつのこんなトコでも役に立つことが…」
バシィ
ハルオ「痛でェ!? なっ何しやがる日高!」
日高「うるさい! セクハラ男! エッチ! 最低!!」
ハルオ「な、何で俺だけ…」
日高「///」
ハルオ「ほかの二人も言ってたじゃねェか!」
日高「うるさいこのハレンチ男! 変態! シコリヌス三世!!」
ハルオ「だから何なんだよ、そのシコなんとかって……」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:25:02.82 ID:oBHl5UyH0
――大野晶専用車車内
ブロロロロ…
真「いやー今日は楽しかったねー」
宮尾「はい。すごく楽しい一日でした」
日高「私もです」
真「そう。喜んでもらえて何よりだわ」
日高「それに、大野さんのクラスが学年優勝できて良かったですね」
真「小春ちゃんのお陰よ。二人三脚で1着になったんだから」
日高「私なんて何も……それより、最後の男女混合リレーの結果が大きかったんじゃないですか?」
宮尾「あれはすごかったな。また大野さんが、それも今日のラストを飾る種目で大活躍だ」
日高「アンカーの大野さん、何人も抜いて1着でゴールした」
宮尾「二人三脚の時みたいに最下位からじゃなかったが、それまでの劣勢を一気に覆したな」
真「あれは体育祭フィナーレの、一番ポイントの高い種目だったからね。まぁ貢献はしたわね」
日高「大野さんがいなかったら、クラスは優勝してなかったと思います。間違いなく」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:26:29.91 ID:oBHl5UyH0
真「晶もすごく楽しそうだった。あんなに楽しそうなあの子を見たのは久しぶり」
宮尾「表情とかは、ずっと変わらないように見えましたが……」
真「私はあの子の姉だもん。私には分かるの」
日高「……」
真「この体育祭はとってもいい思い出になったんじゃないかな。みんな、今日はありがとね」
宮尾「お姉さんがお礼を言う必要なんてありません。そうしなくちゃいけないのは僕たちです」
日高「うん。そのとおり」
宮尾「ハルオも……あ」
真「ん? どしたの?」
宮尾「こいつ、眠っちまってます」
真「あら。ハルオくんがずっと黙ってて不気味だなーって思ってたけど、そういうわけね」
日高「今日は一日、大騒ぎしてましたから。矢口くん」
宮尾「さすがに疲れたか」
日高「お姉さん」
真「何?」
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:28:02.73 ID:oBHl5UyH0
日高「お姉さん、今日は本当にありがとうございました」
真「……」
日高「今日は私、体育祭に誘ってもらって、いろいろなことをしてもらって……」
真「……」
日高「大野さんと走るっていう、考えてもみなかったこともして……」
真「……」
日高「大野さんだけじゃなく私にも、いい思い出になりました」
真「……」
日高「全部、お姉さんのお陰…」
じいや「お嬢様」
日高「……」
じいや「お嬢様」
日高「え…? 私ですか?」
じいや「はい」
日高「何ですか?」
じいや「真お嬢様も、お眠りになりました」
日高「あ……」
じいや「真様もお疲れだったのでしょう。お酒をたくさん召し上がったようでもいらっしゃいますし」
日高「あ。こっちも…」
じいや「はい?」
日高「宮尾君もいつの間にか眠っちゃってます」
じいや「おや。さようでございますか」
日高「みんな、楽しく騒いで……はしゃぎ疲れたんですね」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:29:23.11 ID:oBHl5UyH0
じいや「お嬢様もお眠りになってください。おうちへ着きましたら起こして差し上げますので」
日高「はい。ありがとうございます」
じいや「……」
日高「あ、あの……」
じいや「何でしょう、お嬢様」
日高「あの……今日はありがとうございました」
じいや「はて? 私はお礼を言っていただくようなことを、何もしておりませんが」
日高「……」
じいや「私の務めは送り迎えだけ。そして私は、その務めを果たしているだけでございます」
日高「でも…」
じいや「晶お嬢様を、お乗せして走る」
日高「……」
じいや「皆様を、お乗せして走る」
日高「……」
じいや「私は、この務めを果たしているだけでございます……」
日高「……あ、あの、でも……」
じいや「……」
日高「今日は、ありがとうございました……」
じいや「お眠りください、お嬢様……」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:30:34.27 ID:oBHl5UyH0
日高(……)
日高(今日……)
日高(まさか、私と大野さんが……)
日高(一緒に走るなんて……)
日高(考えてもみなかった……)
日高(私たちが……)
日高(協力して、一緒に何かをするなんて……)
日高(……)
日高(大野さん……)
日高(もし……)
日高(もし、矢口くんのことが、なかったら……)
日高(私たち、友達になれたかな……?)
日高(仲良しの友達に、なれたかな……?)
日高(もし、友達になったら……)
日高(大野さんの家へ、遊びに行って……)
日高(別世界の、大野さんの家のことをいろいろ教えてもらって……)
日高(外国のお話を、たくさん聞かせてもらって……)
日高(そういう仲良しの友達に、なれたかな……?)
日高(……)
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:31:51.00 ID:oBHl5UyH0
日高(ううん……違う)
日高(やっぱり、違う……)
日高(こんな“もし”に、意味なんてない……)
日高(あり得ない“もし”のことを考えても、意味なんてない……)
日高(だって、私たちは……)
日高(矢口くんのことがあったから、知り合った……)
日高(矢口くんのことがなければ、知り合ってなかった……)
日高(だから私たちの間には、いつも、矢口くんがいる……)
日高(いつか……)
日高(いつか必ず、私たちには白黒つける時が来る……)
日高(矢口くんのことを……)
日高(そして、ゲームを……)
日高(いつか……)
日高(いつ……か……)
日高(……)
日高(……)スー
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/16(金) 18:34:22.46 ID:oBHl5UyH0
じいや(お嬢様も、お眠りになりましたか)
じいや(皆様が目をお覚ましにならないよう、より静かな運転を心掛けねばなりませんな)
じいや(皆様を、お乗せして走る……)
じいや(皆様それぞれの青春を、お乗せして走る……)
じいや(皆様、私は…)
じいや(この務めを果たすことに、強い誇りと…)
じいや(深い喜びを、感じております……)
ブロロロロ…
終
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/17(土) 14:23:06.13 ID:SJSvIK86o
乙
素晴らしいSSでした
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/19(月) 05:49:29.88 ID:9atU+jfq0
>>1
です。
2か所、訂正があります。
>>4
において、
じいや「朝早くにお送りしました。生徒さんたちには様々な準備あるそうで」を、
じいや「朝早くにお送りしました。生徒さんたちには様々な準備があるそうで」に訂正します。
また、
>>44
において、
宮尾「女子のペアは日高と大野さんだけです。ほかは全て、保護者役が大人の男性」を、
宮尾「女子同士のペアは日高と大野さんだけです。ほかは全て、保護者役が大人の男性」に訂正します。
何回も見直してはいるのですが、お恥ずかしい限りです。
おかしな箇所はまだあるかもしれないものの、私にはこれ以上見付けられませんでした。
やっぱり、自分が書いたものを自分で校正するのは限界がありますね。
最後に、レスしてくださったかた、このSSを読んでくださった全てのかたがたへお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/19(月) 11:36:45.45 ID:yj7fdR1qo
乙
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