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魔王「もう、やめんか勇者よ……」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:11:28.05 ID:/OayQcdY0
無数の死体が散らばった戦場。勇者と魔王が対峙している。
魔王「もう、止めんか勇者よ」
勇者「ここまで来て何を言ってやがる。お前のために殺された魔族に対して悪いと思わないとか」
魔王「だからこそ、もう止めようと言っておるのだ」
勇者「何を訳の分からないことをぬかしてるんだ。俺はお前を殺す。それが、俺の使命なんだ」
魔王「使命、使命、使命。お主はいつもそうだ。自分の意思で動けぬのか」
勇者「う、うるさい!」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1541851887
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:13:53.93 ID:/OayQcdY0
魔王「勇者、我はお主と戦いとうないのだ」
勇者「黙れ黙れ! 俺は魔族に殺された民の為にも、殺してきた魔族の為にも、お前を殺すんだ」
魔王「そうか……その信念を貫き通すと言うのだな?」
勇者「あぁ、そうだ」
魔王「分かった……諦めよう」
勇者「お互いに体力も限界だ。次で決めてやる」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:16:35.52 ID:/OayQcdY0
魔王「いや、その必要はない。お主は少しでも身体を休めよ」
魔王が短剣を逆手に持つ。
勇者「な、お、おい魔王ッ!!」
魔王「さらばだ勇者よ」
魔王が自身の胸に短剣を突き刺す。
勇者「ふざけんなよ! ここまできて、何で勝手に死んでるんだ。今まで……戦ってきたのはなんだったんだよ!!」
魔王「……」
勇者「何か言えよ。おい、魔王!」
横たわっていた魔王の死体が独りでに起き上がる。
勇者「い、生きてるのか?」
魔王「イギム・デムダ」
勇者「その魔法は、転移魔法――!」
勇者の身体を光が包む。
勇者「クソ、最後の最後で。やめろ、やめろ、やめろぉ!」
魔王「……」
勇者の身体がパズルピースのように分裂し消滅する。魔王の亡骸が石化する。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:18:31.96 ID:/OayQcdY0
2
幼女「起きてください」
眠る勇者の肩を揺する幼女。
勇者「んん、疲れてるんだ。あと五分だけ」
幼女「起きてください」
勇者「……あと三分でいいから、ね?」
幼女「分かりました。三分ですよ」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:19:51.65 ID:/OayQcdY0
三分後。
幼女「三分経ちました。起きてください」
勇者「いやだ! あと五分……んん」
幼女「……ふぅ」
幼女が勇者の傷口に指をねじ込む。
勇者「いでぇぇぇ!?」
幼女「ようやく起きましたか」
勇者「え、誰?」
幼女「魔王様に勇者殿の世話役を務めるよう命を受け参じました、ルートネス・タダレネスです」
【以下、幼女=ルー】
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:21:27.19 ID:/OayQcdY0
勇者「はは、可愛いなー。でも、魔王に様とか付けない方がいいぞ」
ルー「ッム……私は二十歳で、勇者殿より三歳も歳上です!」
勇者「嘘だー。どう見ても六歳くらいじゃねーか」
ルー「人間の物差しで測らないでください。魔王様の命よりと申したでしょう。私は魔族です」
勇者「ま、魔族? こんなに容姿が人間な魔族なんて見たことがない」
ルー「それだけ、意識せずに我が同胞を殺してたんですね」
勇者「それはねーよ。俺は殺した魔族の顔は全員、覚えてる」
ルー「なら……いえ、不快です。この話はやめましょう。何はともあれ、私はあなたの世話役を任されていますので、よろしくお願いいたします」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:23:13.68 ID:/OayQcdY0
勇者「あーはいはい。その話は後で聞くから。とりあえず今は、人民の皆に魔王を倒したって報告しに行かないと」
ルー「それは叶わぬ願いですね」
勇者「え、何でだよ」
ルー「ここに、あなたを知っている方は存在してませんから。その逆も然りです」
勇者「あん? あーそう言えば、ここはどこだ?」
ルー「日本です。と言っても知らないでしょうけど」
勇者「日本? そんな村、街ってあったかな」
頭を抑えるルートネス。
ルー「覚えてませんか? 魔王様が最後に使用した魔法を」
勇者「――っあ!! そうだ、あの野郎、最後の最後で俺を飛ばしやがったんだった」
ルー「その転送先が日本です」
勇者「魔界か、人界か。どっちだ?」
ルー「広義の意味では人界ですが……狭義では魔界でも人界でもありません」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:24:42.67 ID:/OayQcdY0
勇者「どういうこと?」
ルー「日本は私たちが暮らしていた星とは別の星である、地球の大地名の一つです」
勇者「ほ……し……?」
ルー「はい、別の星です」
勇者「あの野郎、いきなり自害したかと思えば……そんなことしやがったのか!」
ルー「勘違いをしているようですが、魔王様は勇者殿を守るために自害してまで転移魔法を使ったのですよ?」
勇者「はー、さすがに苦しいって」
ルー「自害することで、体内の魔力が溢れますからね。それを利用することで別の星への転送を成功させたのです。私の場合は多くの同胞の魔力を借りましたが、勇者殿が大半の魔族を殺してしまいましたからね……」
勇者「仕方ないだろ。いや、自害した理由は分かったけど、それが何で俺のためになるんだ?」
ルー「はぁ、本当に低脳ですね」
勇者「生まれてから、学校にも通えず訓練ばっかしてたんだから仕方ねーだろ」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:26:18.10 ID:/OayQcdY0
ルー「はいはい。では、そんな脳筋の勇者殿にも分かるように教えてあげますよ」
勇者「お、おう」
ルー「良いですか。世界には魔族と人間が支配していますね」
勇者「人界と魔界だな」
ルー「そうです。土地の割合は人界と魔界で一対一です」
勇者「それくらい俺にでも分かる」
ルー「では、魔王様という統括者を失った魔族はどうなると思いますか?」
勇者「新しい魔王が誕生する……?」
ルー「その可能性は低いです。四天王などの知能指数の高い魔族は全て勇者殿に殺されていますので。残った魔族はゴブリンやオークなどの端くれでしょう」
勇者「そうか……なら数日で絶滅だろうな」
ルー「そうです。その結果、魔界は消滅し人界となります」
勇者「それがなんだよ」
ルー「人間には貴族がいますね?」
勇者「あぁ、いるけど?」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:28:07.11 ID:/OayQcdY0
ルー「貴族達は魔界の土地を自分のものにしようとします」
勇者「有り得るけど、王がそうはさせないだろ」
ルー「王も貴族の一人です。世界の半分という宝を目の前にした貴族は欲に飢えます」
勇者「確かに貴族は土地だの宝石だのに異様にうるさいけど……」
ルー「そうして、貴族同士での土地争いが勃発するのです」
勇者「そ、それは……」
ルー「荒れ果てた人間達は戦争が起きた元凶を探し始めます。その結果、吊るし上げられるのが勇者殿です」
勇者「な、何でだよ!」
ルー「勇者殿が魔王を倒さなければ、戦争は起きなかったからです。まあ、ただの罪の擦り付けですけどね」
勇者「そんなに人間はバカじゃない!」
ルー「では、聞きます。なぜ、勇者殿は魔族を襲うのですか?」
勇者「俺が魔族を襲うって……お前らが人間を襲うからだろ」
ルー「おかしいですね。魔族たちは一度も自ら人間を襲ったことはありません」
勇者「嘘つけ!」
ルー「嘘ではありません。魔王様が、絶対に私欲で人間を襲わないように命じていましたから」
勇者「じゃあ、何で……」
ルー「魔族が人間を襲っていたのではありません。貴族が土地や宝の私欲に歪み、魔族を襲うが故に防衛に出ていたのです」
勇者「じゃあ俺は――」
ルー「使命、使命と使命に支配され良いように利用されていただけですね」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:29:08.55 ID:/OayQcdY0
勇者「嘘だろ……」
ルー「嘘ではありません。話が少し脱線しましたね。戻しましょう。つまり、魔王様は人間から勇者殿を守るべく自害して日本に転送させたのです」
勇者「なんで、そこまでして俺を」
ルー「魔王様は勇者殿を愛していました。いつか、人間と魔族が分かり合える世界を求めていました。私たちも、そんな魔王様の夢を見守っていましたよ」
勇者「俺はアイツが女だったことも知らなかった」
ルー「魔王様は勇者殿の顔を見ると赤くなるとかと言って、常に全身を覆っていましたからね」
勇者「もっと早くに言ってくれれば……」
ルー「言っていたと思いますよ?」
勇者「ぐっ……」
ルー「分かりましたか? 自分が転送された理由を」
勇者「でも、俺は人間を見殺しにはできない。少なくとも平民に罪はないだろ」
ルー「私は人間の事情など知りません」
勇者「魔王には悪いけど、俺は元の世界に戻る」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:30:12.74 ID:/OayQcdY0
ルー「……そんなことが可能なんですか?」
勇者「ああ。勇者の力の源、聖力を補充する方法は感謝されることだ。多くの人に感謝されればされるほど、聖力が補充される」
ルー「つまり、聖力さえあれば転移も可能だと?」
勇者「理論上はな」
ルー「しかし、魔王様の天命に匹敵する量となると、膨大な時間が必要になるかと思いますが。」
勇者「領土戦争が勃発するまで、どれくらい時間がある?」
ルー「まず、魔族の生き残りを滅ぼす必要がありますからね。勇者殿という最大戦力を失った以上……そうですね、三年ほどかと」
勇者「十分だ。それまでに魔王戦で枯渇した聖力を貯めに貯めてやる」
ルー「――ッ。そうですね、協力しましょう。魔王様と勇者殿の意思を尊重して欲しいでしょうし」
勇者「助かる、この日本だっけ? よく知らないからな」
ルー「慣れるまでは大変ですが、慣れれば豊かな生活が出来ますよ」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:31:34.07 ID:/OayQcdY0
勇者「あのさ、さっきから気になってたんだけど」
ルー「なんです?」
勇者「この天井で輝いてるやつはなんだ?」
ルー「電球です」
勇者「雷の魔法か何かか?」
ルー「いえ、魔法ではなく科学です」
勇者「カガク……?」
ルー「まあ、そうなりますよね。私も最初はそうでした。理屈はイマイチ分かりませんが、一ヶ月もここで暮らせばだいたいは理解できるはずです」
勇者「一ヶ月……まあ仕方がないか」
ルー「私もサポートしますので。とりあえずこれが身分証です」
勇者「ギルドカード的なやつか」
ルー「そういうことになります。これからはユーシャと名乗ってください」
勇者「ユーシャ? なんだ変な発音だな」
ルー「元の世界で“勇者”の意味です。名前を考えるのも面倒なんで、とりあえず問題ないでしょう」
勇者「ユーシャ、ユーシャだな。了解」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:32:48.92 ID:/OayQcdY0
ルー「あと、一ヶ月の間は単独行動を禁止します」
勇者「な、なんでだ?」
ルー「勇者殿が独りで行動すると、すぐに問題を起こしそうですからね」
勇者「はは、そんなガキじゃあるまいし」
ルー「いえ、今の勇者殿はクソガキ以下です。前の世界での常識は一切通じませんので」
勇者「わ、分かった」
ルー「万が一、独りで行動してしまい、青い服を来た者に捕まったときは、この数字を伝えてください」
勇者「080××××○○○○?」
ルー「それを伝えれば、あとは私が対処しますので」
勇者「んー、とりあえず分かった」
ルー「それでは、よろしくお願いします」
勇者「あ、うん。こちらこそ」
握手を交わす二人。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:33:52.57 ID:/OayQcdY0
3
勇者が日本に転送されてから一ヶ月が経過。
勇者「おーいルートネス、風呂入ったぞ」
ルー「では、お先に」
勇者「なあなあ、俺もその風呂ってのに浸かってみたいんだけど。今日はお湯を流さないでくれ」
ルー「拒否します」
勇者「でも、湯に浸かるのって気持ちいいんだろ? 何で俺はシャワーだけなんだよ。」
ルー「私の浸かったお湯を利用されるなど、考えるだけでも嘔気がこみ上がって来ます」
勇者「? じゃあ、俺が先に浸かったら良いじゃん」
ルー「勇者殿の煮汁など浸かりたくないです」
勇者「むー、じゃあさもう一回風呂を沸かしても良いかな?」
ルー「節約してください」
勇者「はぁ……分かったよ」
ルー「では、お先に失礼しますね」
風呂場に行くルートネス。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:34:57.56 ID:/OayQcdY0
勇者「ちぇ、厳しいな」
ルー「ふふん♪ふんふん♪」
勇者「ムスッと顔のルートネスが鼻歌を歌うくらいご機嫌になる風呂って、どんだけ極楽なんだよ……うー、やっぱり体験してみてー!」
辛抱ならず、脱衣所に向かう勇者。
勇者「なあ、今日だけは頼むからお湯を流さないでくれよ」
ルー「は、はぁぁ!? な、なに入って来てるんですか? 馬鹿ですか、死んでください!」
勇者「別に裸を見てるわけじゃないだろ。なあー頼むよ」
ルー「ふざけないでください。今すぐ出ていってください。さもなくば殺しますよ」
勇者「俺のお願いを聞いてくれないと嫌だ」
ルー「何を子供みたいなことを……本当に殺しますよ」
勇者「お前がそんなこと出来るわけないのは知ってる」
ルー「ぐ、ぬぬ……あーもう分かりました。今日だけですよ。後でもう一度、お湯を炊くことを許可します」
勇者「やった! サンキュー」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:35:49.85 ID:/OayQcdY0
脱衣所を出ていこうする勇者。
床に脱ぎ散らかしていた、靴下を踏みバランスを崩す。
勇者「おわっ――!!」
浴室へと繋がるドアのドアノブに手をかける。
そのまま、浴室へと突っ込む。
勇者「え、えへへ……わりぃ」
ルー「ふふ」
勇者「大丈夫、見てないぞ。ほら、ルートネスは貧乳だし、湯気でどこが胸なのかも判別できないから、な?」
ルー「殺します♪」
勇者「ですよねー」
勇者の身体を黒い壁がドーム状に覆う。
勇者「これは、幻術魔法か。困ったな、今は聖力がないから最悪、精神が崩壊するぞ」
ルー「心配は無用です。寸前で止めますので」
勇者「お気遣いありがとうございます」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:36:49.20 ID:/OayQcdY0
ルー「さあ、十回死にましょう」
勇者「おー、ギロチンが見える」
勇者の首が跳ね飛び、再生する。
勇者「幻って分かってても、やっぱ辛いなこれ……」
ルー「あと、九回です。耐えてくださいね」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:37:57.03 ID:/OayQcdY0
4
勇者が青ざめた顔で首を両手で抑えている
勇者「うぉぇ……うぇ。あー、生きた心地しねー」
ルー「自業自得ですよ」
ルートネスが勇者にコーヒーを差し出す。
勇者「ふぅ……落ち着く。まあ、そんなに怒らなくてもいいだろー」
ルー「裸を見られたくらいなら、あそこまで怒りませんよ」
勇者「ん? じゃあ何で、あんなに不機嫌だったんだ」
ルー「その話はさておき、本日で一ヶ月が経ちました。どうです、こちらでの生活に慣れましたか?」
勇者「え、あーうん。凄いよな、この世界って」
ルー「この快適さを知れば、元の世界に戻る気が失せますね」
勇者「そうだな。でも、俺は戻らないと」
ルー「そう言うと思っていました。ですので、明日から勇者殿には、ここに通ってもらいます」
ルートネスが勇者にパンフレットを手渡す。
勇者「なになに。私立友英学園高等学校?」
ルー「はい、学校です。手続きは私が手を回しておきましたので問題ありません」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:39:29.20 ID:/OayQcdY0
勇者「とは言っても、何で学校なんだよ」
ルー「聖力を集めるには、交流が必要ですからね。かと言って、日本では、誰これ構わず話しかけると不審者扱いされますので」
勇者「そこらへんは面倒な星だよな、ホント」
ルー「ですが、学校内なら特に問題はないでしょう。進んで人助けに励んでください」
勇者「まー、学校には一回通ってみたかったんだ。サンキュー!」
ルー「いえいえ、くれぐれも陰キャにはならないで下さいね」
勇者「インキャ? なんだよそれ」
ルー「学校で唯一、不審者扱いされる輩ですね。陰キャになれば全てが終わりだと思ってください」
勇者「インキャだな? よし、分かった」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:41:58.97 ID:/OayQcdY0
疲れたから休憩する
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:23:51.29 ID:/OayQcdY0
5
ルー「では、これに着替えてください」
勇者「えーなんだよこれ。カチカチで着心地悪い」
ルー「新品ですからね。何度も着ているうちに柔らかくなります」
勇者「うぇ……脇が気持ち悪い」
ルー「うるさいですね、我慢してください」
勇者「これでいいのか?」
ルー「ええ、問題ありません。それは制服と言います。友英高校に通う生徒は皆、同じ服を着ています」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:24:27.41 ID:/OayQcdY0
勇者「なんか怪しい宗教みたいだな」
ルー「あながち間違いではないですね。学校は子供を洗脳する場ですので」
勇者「ヴェッ!?」
ルー「冗談です」
勇者「本当だろうな?」
ルー「知りませんよ。私だって学校に通ったことがないのですから」
勇者「あれ、魔族にも教育機関があるだろ?」
ルー「あるにはありますけど、私は通ってません」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:25:25.53 ID:/OayQcdY0
勇者「お前も俺と同じで使命とかで……」
ルー「脳筋と一緒にしないでもらえます? 私は優秀ですので、通う必要がなかっただけです」
勇者「そ、そうか」
ルー「話を戻しましょう。学校に着いたら、まずは職員室に行ってください。その後、担当の教師が教室に案内してくれるはずです」
勇者「職員室、担当の教師だな」
ルー「はい。その後、教室で自己紹介をするはずですので、この通りに行ってください」
勇者「なになに? えと、真尾野ユーシャです。ロシア人の父と日本人の母の間に生まれました。日本にはまだ慣れてませんがよろしくお願いします――か」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:26:15.75 ID:/OayQcdY0
ルー「これで、ひとまずは陰キャにはならないはずです。日本人はハーフが好きですから」
勇者「ふーん。ハーフってのが何かよく分かんねーけど。まあいいや」
ルー「あなたの外見は日本人離れしていますからね。くれぐれもハーフとの設定を忘れないでください」
勇者「前に、服を買いに行った時もめちゃくちゃ見られたよな」
ルー「赤髪、白い肌、高い鼻ですから当たり前です」
勇者「確かに顔つきが違うけど、赤髪は珍しくないだろ。デパートにもいっぱい居たじゃん」
ルー「いえ、日本人に赤髪なんて存在しません。あれは染めているのです」
勇者「染める……髪を?」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:27:27.50 ID:/OayQcdY0
ルー「そうです。この世界の人間は頻繁に髪を染めます」
勇者「何でそんな面倒なことを」
ルー「少しでも目立ちたいと言う自己顕示欲の現れですね。特に赤髪、緑髪等にに染める者はそういう印象があります」
勇者「お、おい……じゃあ、俺の髪の色ってまずいんじゃ」
ルー「心配ご無用。勇者殿には赤髪が似合っていますので」
勇者「まあ、地毛だしな」
ルー「日本人で赤髪や青髪に染める者に限って、全く似合ってませんからね」
勇者「確かに、デパートで見たやつもゴブリンみたいだったな」
ルー「魔族で例えないでください。まあ、言いたいことは分かりますけど」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:28:11.19 ID:/OayQcdY0
今日はここまで。
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/10(土) 22:45:12.60 ID:/VdjiLK90
キャラ名があると叩かれるぞ
そういうのやりたいならなろうでやったほうが落ち着けるぞ
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/11/10(土) 22:59:05.28 ID:/OayQcdY0
>>28
マジかよ。でも投稿しちゃったし、一応最後まで書くことにする。
忠告ありがとう
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 01:35:54.90 ID:DeIid54ho
おつ
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 05:03:36.78 ID:FC7BTfsRo
キャラ名あると叩かれるってマジ?
聞いたことないぞ遭遇しないだけか
続き期待おつおつ
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage ]:2018/11/11(日) 06:57:30.14 ID:mLJb4F3P0
乙
キャラ名あると少々覚えにくいってのはあるけど(一部の基地外を除いて)叩かれる事は基本無いぞ
それにしても例えがゴブリンwwwwww
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 08:36:20.57 ID:mk9u+C2P0
大丈夫そうでよかった。少しだけ続き書いてく。
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:36:56.68 ID:mk9u+C2P0
勇者「赤髪でも大丈夫ってことだな?」
ルー「ええ、勇者殿なら問題ないでしょう。逆に人気になると思いますよ」
勇者「よかった、よかった」
ルー「むっ、時間ですね。では、最後に……」
勇者の身体が三回、淡く点滅する。
勇者「ん、なんだこれ魔法か?」
ルー「言語翻訳の魔法です。まだ勇者殿は日本語が話せませんからね」
勇者「アホで悪かったな」
ルー「自覚があるだけマシですよ」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:38:01.91 ID:mk9u+C2P0
6
勇者(おぉ、これが友英高校か)
モブ「何あの子、外国人かな?」
モブ「なあ、アイツ。今日来るっていう転校生じゃね? 話しかけて来いよ」
モブ「いやいや無理無理! お前が行けって」
モブ「外国人に話す勇気はねーな」
勇者(うぇ、やっぱ俺の容姿って目立つんだな……早いとこ職員室に行くか)
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:39:12.03 ID:mk9u+C2P0
少女「どうかなさいました?」
勇者「あ、えと……今日、転校したんですけど」
少女「あらあら〜転校生さんですか」
勇者「あーはい。あの職員室ってどこにありますか?」
少女「私も先生に用事かありますので、一緒に行きましょうか」
勇者「助かります」
勇者(なんだこの人!! 姫様より姫様じゃねーか)
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:40:12.80 ID:mk9u+C2P0
少女「ここが職員室です。先生を呼んで来ますので、しばらくお待ちください」
勇者「は、はい!」
少女「ふふ、今からそんなに緊張していたら、最後までもちませんよ」
少女が教師を呼んでくる。
担任「あー君が転校生ね。ロシア人とのハーフだっけ?」
勇者「はい。父が日本人で……あれ、父がロシア人だっけ」
少女「ふふ、ユーモア溢れる方ですね。お名前を伺ってもよろしいですか?」
勇者「真尾野ユーシャです」
少女「ユーシャ君ですね。私は友英高校生徒会長の具源(ぐげん)と言います。よろしくお願いしますね」
以下、少女=具源
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:40:59.72 ID:mk9u+C2P0
勇者「こちらこそ、よろしくお願いします」
チャイムがなる。
担任「あ、予鈴だ。ユーシャ君、早速だけど教室に行こうか」
勇者「は、はい」
具源「自己紹介、頑張ってくださいね。応援しています」
具源が勇者の背中を押す。
勇者(えと、真尾野ユーシャです。ロシア人の父と日本人の母の間に生まれました。日本にはまだ慣れてませんがよろしくお願いします。よし覚えてるな)
担任が教室から勇者を手招きする。
勇者が緊張した様子で教室に入る。
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:41:40.68 ID:mk9u+C2P0
モブ「○○×▽×○△×」
モブ「▽○□○×△?」
勇者(やべぇ……緊張で周りが何を言ってるのか分かんねー。とりあえず、これに名前を書くんだよな)
勇者がミミズのような字で黒板に真尾野ユーシャと書く。
勇者「えと……えと、真尾野ユーシャです。……ロシア人の父と日本人の母の間に生まれました! 日本にはまだ慣れてませんがよろしくお願いします!!」
モブ「?」
モブ「??」
担任「○×○×△△」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:42:38.86 ID:mk9u+C2P0
勇者「え、何て言いました?」
担任「○×○△!」
勇者(あれれ……これってもしや――翻訳魔法切れてる?)
モブ「○○××?」
担任「△××○○」
騒がしくなる教室。
勇者は周りが何を言っているのか分からず、顔面蒼白。
勇者(これって、インキャってやつ……?)
女子「……ッ」
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:43:28.36 ID:mk9u+C2P0
7
勇者「おいおいおいおい!! どういうことだよ!」
ルー「帰ってきたと思ったら、いきなりうるさいですね」
勇者「翻訳魔法が途中で切れたぞ!」
ルー「そんなわけないでしょう。あれは永続的に効果が持続します」
勇者「本当だって!」
ルー「おかしいですね。確かに魔法が解除されています」
勇者「だから言ってんだろ」
ルー「無意識に魔法を解いたんじゃないんですか?」
勇者「今の俺は聖力が枯渇してるから無理だな」
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/11/11(日) 08:45:27.33 ID:mk9u+C2P0
ルー「む……とりあえず掛け直しますか」
ルートネスが勇者に言語翻訳の魔法をかける。
勇者「これで大丈夫なんだよな?」
ルー「ええ、おそらくは」
勇者「はぁ……」
ルー「その様子だと散々だったようですね」
勇者「最初はクラスメイトが周りに集まって話しかけて来たけど、何言ってんのか分からないからな。笑顔を返してたら誰も話しかけてこなくなった」
ルー「うわぁ……陰キャですね」
勇者「やっぱり!?」
ルー「はい、笑顔で返すのは陰キャです。そこは、言葉が分からずとも身体を動かしたりしてノリの良さをアピールしなくては」
勇者「その手があったか」
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:46:06.54 ID:mk9u+C2P0
ルー「でも、初日ですし大丈夫でしょう。昨日は緊張しちゃってなどと嘘をついて誤魔化してください」
勇者「明日が本番ってことだな……」
ルー「そうですね。ただし、翻訳魔法を解除しないでくださいよ」
勇者「それは俺のせいじゃないッ」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:47:00.75 ID:mk9u+C2P0
8
翌日。
友英高校――昼休み。
勇者は教室で自分の席に座りながら頭を抱えている。
勇者(やべー、昨日が昨日だけにクラスの輪に溶け込めねーよ。あんなに仲良く話してる奴らの間に割って入るとか、もう魔族の四天王倒すレベルで困難だぞ……ええ?)
少女「ねぇ、アンタさ」
勇者(いや、でもインキャになるのは問題だし……あーどうしたら良いんだ!!)
少女「ねえってば!」
ドンッ!
少女が机を叩く。
勇者「え、な、何だよ?」
少女「何よ。あんた、日本語喋れるじゃない」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:48:54.31 ID:mk9u+C2P0
勇者「昨日は緊張しちゃって……」
少女「ふん、小心者ね」
勇者「悪かったな。で、誰だよお前」
少女「ク、クラスメイトの顔くらい覚えときなさいよ! ウレイよ雨零!」
以下、少女=雨零
勇者「ウレイだな。俺はトレニ……じゃなくてユーシャ」
雨零「知ってる。そんなことより、付き合いなさい」
勇者「え、良いのか!」
雨零「ひゃ!? 突然、立ち上がらないでよ」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:49:40.57 ID:mk9u+C2P0
勇者「悪い、悪い。で、何に付き合えば良いんだ?」
雨零「あたしに焼きそばパンを買って来なさい。焼きそばパンよ、良いわね?」
勇者「焼きそばパン……なんだそれ?」
雨零「はぁ? あんた、焼きそばパンも知らないの」
勇者「まだ、日本に慣れてなくてな」
雨零「焼きそばを挟んだパンのことよ。少し考えたら分かるでしょ」
勇者「焼きそばってなんだ?」
雨零「あぁ〰〰!! これ、これのこと!」
雨零がスマホで焼きそばパンの写真を勇者に見せる。
勇者「これが焼きそばパンか。で、どこに売ってるんだ?」
雨零「購買に決まってるでしょ……え、まさか」
勇者「購買って何だ?」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:50:38.74 ID:mk9u+C2P0
雨零「はぁ、ロシアには購買がないわけ? もう、一階に降りて、昇降口の隣にある売店が購買」
勇者「あーあれを購買って言うのか」
雨零「いい、そこで焼きそばパンを三つ買って来なさい」
勇者「なんで、俺が?」
雨零「そ、それが日本の常識なのよ」
勇者「そーなのか? よし分かった。買って――あぁ!」
雨零「な、何よ。いきなり叫んで」
勇者「ルートネスに金を無駄な物に使うなって言われてるんだった」
雨零「誰だか知らないけど、焼きそばパンは無駄じゃないわよ」
勇者「……本当にか?」
雨零「な、何よ。あたしが嘘を言ってると思うわけ!!」
勇者「俺はな、嘘を見抜くのが得意なんだ」
雨零「ふ、ふん。だから何よ」
勇者「だから分かる。お前は嘘をついてない。よし、早速買ってくる」
雨零「いったい何なのよ……み、三つだからね!」
勇者「おーけー」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:51:45.03 ID:mk9u+C2P0
購買に行く勇者。
ザワザワザワザワ
モブ「おばちゃん、メロンパン一つ!」
店員「あたしゃ、まだそんな歳じゃない!」
モブ「えぇ……」
勇者「すげー人溜まりだな。とりあえず、あのバーさんから焼きそばパンを三つ買えば良いのか」
モブ「お姉さん、唐揚げ弁当一つください」
店員「あんたみたいなブスにお姉さんなんて言われても嬉しくないわい!」
モブ「えぇ……」
勇者「そこのバーさん、焼きそばパン三つください」
店員「はぁ、あんたねぇ。一人一つまでだ――ッ」キュンキュン
勇者「ダメなんですか?」
店員「なーんて冗談です。うふふ」
店員が勇者に焼きそばパンを三つ渡す。
勇者「はい、これお金」
店員「こ、これ……オマケです」
店員が勇者にメロンパンと唐揚げ弁当を渡す。
勇者「おー、ありがとう!」
店員「ささ、あんた達は帰った帰った」
モブ「えぇ……」
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 08:53:04.60 ID:mk9u+C2P0
つづく。少し休憩する
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 13:08:43.01 ID:9UgaiT9L0
あれ?これは勇者パシリにされてね?
このままいくとスクールカースト最下層にまっしぐらやね?
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/11(日) 14:56:37.61 ID:HF6n808lO
名前は登場人物が増えれば増えるほど誰だか分かんなくなって混乱することあるけど
なんでバカの一つ覚え見たいにキモオタって特有の変な名字にするんだろう
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:05:00.99 ID:mk9u+C2P0
勇者が教室に戻る。
勇者「はい、焼きそばパン三つ」
雨零「は……え?」
勇者「ん、これであってるだろ?」
雨零「そ、そうだけど。よく、あのオバサンから焼きそばパンを三つも買えたわね……」
勇者「オマケもくれたぞ」
雨零「えええッ!!」
勇者「またオレ何かやっちゃいました?」
雨零「そのノリ、なんかウザイから止めてくれない?」
勇者「言ってて俺もそう思った」
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:06:04.75 ID:mk9u+C2P0
雨零「ま、まあ。良くやったわね」
勇者「よく分からないけど。それで焼きそばパンをどうするんだ?」
雨零「食べるに決まってるでしょ?」
勇者「まあ、そうだよな。はいよ」
雨零「ちょっと、何で二つだけなのよ」
勇者「一つは俺のだろ?」
雨零「あんたのはないわよ」
雨零が勇者の手から焼きそばパンを奪い取る。
勇者「なんで、俺のがないんだよ!!」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:07:09.81 ID:mk9u+C2P0
雨零「あ、あんたね……唐揚げ弁当とメロンパンもあるでしょ? そんなに食べたら太るわよ」
勇者「むー、それもそうか」
雨零「ま、まったく。こっちが気をつかって上げたら調子に乗るんだから」
勇者「ごめんごめん。それに、ルートネスの弁当もあるんだった。確かにそんなに食えねーな」
雨零「じゃ、ご苦労さま」
勇者「おう! って一緒に食べないのか?」
雨零「なんであたしがあんたと食べないといけないのよ!」
勇者「だ、だって……周りは机とか合わせて食べてるじゃん」
雨零「それはね、仲の良い者同士の特権なの」
勇者「俺たち、もう仲良くなったじゃん」
雨零「な、なってない! じゃーね、あんたは独りで食べなさい」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:09:09.43 ID:mk9u+C2P0
モブA「えー、ユーシャ君も一緒に食べても良いじゃん」
雨零「え、で、でも」
モブB「うんうん。二人のやり取り見てたらユーシャ君のこともっと知りたくなっちゃったしー」
勇者「一緒に食べても良いのか!!」
モブA「もちろん! 良いよねー、雨零? ね、ねね?」
雨零「もちろん、私はいいけど」
モブB「じゃー決まり。ささ、ユーシャ君。一緒に食べようじゃないか」
勇者「お言葉に甘えて」
勇者、雨零、モブABが机を合わせる。
モブA「勇者君さ、日本語上手なのに、昨日は何で変な言葉で話してたのー?」
勇者「いやー緊張しちゃって」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:11:08.28 ID:mk9u+C2P0
モブB「あれってさ、ロシア語だよね! 英語でもなかったしさ」
勇者「いや、あれは©©©語」
モブA「え、なんて?」
勇者「――じゃなくてロシア語だった」
モブA「もー、ユーシャ君って変なのー」
勇者「やっぱ、日本とは感性が違うのかもな」
モブB「しっかしま、この立派な赤髪は地毛なのかね?」
勇者「おん。勇者の一族はみんな赤髪なんだ」
モブA「へー、じゃあユーシャ君のお母さんもお爺ちゃんも赤髪なんだ」
勇者「まあ、俺が一番赤いけどな」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:12:17.83 ID:mk9u+C2P0
モブA「触ってもいい?」
勇者「別にいいけど、なんで?」
モブB「いやー地毛の赤髪なんて初めて見たからさ、記念にってね」
勇者「そういうことなら存分に触ってくれ」
モブA「じゃ、じゃー私もー」
さわさわ
勇者(こう言うのも悪くないな。もう、これでインキャにはならなくてすむだろ!)
モブA「ふー堪能した。あ、雨零! 焼きそばパンちょうだい」
モブB「そうだ、忘れてた。あたしゃお腹が空いたよー」
雨零「はい、これ」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:13:44.16 ID:mk9u+C2P0
モブA「ありがとー、ユーシャ君!」
モブB「がとねー、ユーシャ君」
勇者「それって、美味しいのか?」
モブB「そりゃまーね。いつもすぐに売り切れになるくらい」
勇者「へー、そんなに人気なのか」
モブA「人気すぎて、店員のオバサンが売るのを渋るくらいね」
モブB「なに、なにー。食べたいの?」
勇者「まあ、気になるって言うか」
モブA「関節キスしちゃう? ユーシャ君みたいなイケメンなら良いよ」
勇者「関節キスって何だ?」
モブA「へ、えと……それは」
モブB「なにテレてんのさ。関節キスってのはねー、他人が食べたとこを、食べることだよー」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:15:31.99 ID:mk9u+C2P0
勇者「なんだ、それを関節キスって言うのか」
モブA「あれ、慣れてるの?」
勇者「よく、仲間と一緒にしてたよ」
勇者(みんな死んだけど)
モブA「へ、へー大人なんだね」
勇者「まだ十七歳だから子供だ」
モブB「そりゃ、まーね」
モブA「で、どうする。私と関節キスしちゃう?」
勇者「いや、悪いしいいよ」
モブA「でも、ユーシャ君が買ってきたんだし。ユーシャ君には食べる権利があるよね?」
モブB「うんうん、そうそう」
モブA「どうする?」
雨零「あ、あたしのあげる」
勇者「ん、良いのか? じゃあ、いただく」
雨零「あ……ちょっと! どこ食べてんのよ」
モブA「ひゃー、関節キスじゃん!」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:16:42.02 ID:mk9u+C2P0
モブB「はは、雨零、顔真っ赤じゃん」
雨零「も、もう!」
勇者「確かに美味いな。やっぱり日本食は美味しい」
雨零「少しはテレなさいよ!」
勇者「何をテレることがあるんだ?」
モブA「そうそう、お似合いよお二人さん」
モブB「もう付き合っちゃえば?」
雨零「い、嫌よ!」
勇者「?」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 15:17:32.68 ID:mk9u+C2P0
9
自宅。
勇者とルートネスがリビングでくつろいでいる。
ルー「なるほど、それで関節キスをしたら騒がれたと」
勇者「回し食いって、日本じゃそんなに珍しいことなのか?」
ルー「まあ、異性の間での回し食いは問題行為ですね」
勇者「え、なんで」
ルー「異性との間接キスは求婚を意味しているのです」
勇者「きゅ、求婚!?」
ルー「はい、この女子高生の間で流行っている雑誌によりますとそう言うことらしいです」
勇者「じゃ、じゃあ……俺は雨零に――」
ルー「結婚を申し込んだようですね」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 15:18:26.74 ID:mk9u+C2P0
つづく。休憩する
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage ]:2018/11/11(日) 21:04:58.14 ID:mLJb4F3P0
乙
意図してるのかはわからんが関節キスじゃなくて間接キスジャマイカ?
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 21:53:43.80 ID:mk9u+C2P0
>>63
普通に誤字っちゃった。
少しだけ書く
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 21:54:24.69 ID:mk9u+C2P0
勇者「まずくね……?」
ルー「はい。そして、それ以上にまずいのは……」
勇者「まずいのは?」
ルー「日本では結婚後、男が女の尻に敷かれるのが常となっているようです」
勇者「それなら、姫様を守ってたのと同じ感じだろ?」
ルー「い、いえ……ここでは奴隷と同格ですね」
勇者「そ、そんな!! じゃあ俺は」
ルー「その雨零と言う方の性処理道具になってしまいます」
勇者「そんなことになったら……もう、元の世界に戻るなんて――」
ルー「絶望的ですね」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 21:55:27.03 ID:mk9u+C2P0
勇者「やばいやばいやばいやばい!!」
ルー「安心してください。まだ、求婚の段階です。相手方が了承しない限り問題ありません」
勇者「じゃあ、俺は雨零に嫌われれば良いのか!」
ルー「そうです。とことん嫌われてしまえば大丈夫でしょう」
勇者「ほっ……良かった良かった」
ルー「まったく、気をつけてくださいね。今日からこの雑誌を呼んで勉強してください。これには、日本人の問題行動が尽く記されておりますので、タメになるかと思います」
勇者「週刊文春か。分かった、サンキュー」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 21:56:20.97 ID:mk9u+C2P0
9
友英高校。
昼休み。
勇者(あれ……どうやって話しかければ良いんだ。魔族と戦うか、貴族に呼ばれるかばかりで一回も自分から話しかけたことがないから分かんねー!!)
雨零「メロンパン二つ買って来なさい」
勇者「――っお! ってお前か……」
雨零「露骨にウンザリしないでよ!」
勇者(嫌われないと……どうやったら良いんだ?)
雨零「ちょっと、聞いてんの?」
勇者(とりあえず怒鳴っとくか)
勇者「うるせー!」
雨零「っひ!? な、なによ!」
勇者「お、お前なんか嫌いだ。お、俺に話しかけるな!」
勇者(理不尽に怒鳴ってたら嫌われるだろ)
雨零「バ、バカ!! もういいわよ」
勇者から離れていく雨零。
勇者(ホッ……良かった。これで嫌われただろ)
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 21:57:18.72 ID:mk9u+C2P0
モブA「ユーシャ君! 今日もあたし達と食べない?」
勇者「い、良いのか!! あ、でも」
モブB「どしたの。お弁当忘れた?」
勇者「い、いや。雨零とはあんまり関わりたくなくて」
モブA「えーなんで? あ、間接キスのせいでしょ」
勇者「ま、まーな」
モブB「気にしなくて良いって。あんなの意識するだけ無駄無駄」
勇者「で、でもなー」
勇者(奴隷になるのだけは何としても避けたい)
モブA「んーじゃあ、あたしらだけで食べる?」
モブB「うんうん、それなら問題ないない。屋上行こー」
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 21:58:12.17 ID:mk9u+C2P0
勇者「え、でも良いのか?」
モブA「何が?」
勇者「雨零を独りにして」
モブB「連絡しとくから問題ないって。ほら行こ!」
勇者「それならいいか」
教室を離れる一同。
モブA「屋上はね、ほんとは鍵がかかってて行けないんだ。でもでも〜」
モブB「ここに、鍵が落ちてるから行けるのです! ずっと前に警備員のお爺さんが落としたままなんだよね」
勇者「不用心だな……」
モブA「めったに屋上なんて使わないから。誰も鍵がないってことに気づかないみたい」
勇者「おお、涼しい」
モブA「ひゃー、今日は一段と風強いね」
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 21:58:54.04 ID:mk9u+C2P0
モブB「ぱんつ見ちゃダメだよ!」
勇者「なんでだ?」
モブA「な、なんでって……ロシアでは下着見られても平気だったの?」
勇者「下着くらいは問題ないだろ? 別に裸を見られるわけじゃないし」
モブA「だ、だから……ロシア人ってあんなにエッチな格好してるんだ」
勇者(あ、なんか変な誤解されたかも。まーいいか)
モブB「ほらほら、二人とも早く食べよー。あたしゃもう腹がペコペコだ」
勇者「そうだな、食べよう」
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 21:59:40.89 ID:mk9u+C2P0
モブA「……昨日も思ったんだけどさ」
勇者「ん?」
モブA「ユーシャ君のお弁当って冷凍食品しかないよね。お米は違うかもだけど」
モブB「それって自分で作ってるの?」
勇者「いや、ルートネスっていうやつが作ってる。なかなか、上手いんだ。これで店が開けると思う」
モブA「い、いや……それは作ってるとは言わないんじゃないかな?」
勇者「朝に温めたりして作ってるけど」
モブB「ま、まあ冷凍食品だからね」
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 22:00:20.86 ID:mk9u+C2P0
勇者「よく分からないけど、美味しいからいいや。そういや二人も今日は弁当なんだな」
モブA「いつも、お弁当だよ。昨日は例外」
モブB「ね、まさか本当に焼きそばパンを買ってくるなんて思わなかったから」
勇者「そんなに買うの難しいもんなのか?」
モブB「店員のオバサンがきついからねー。ブサイクな男にはなかなか売らないし、可愛い子には余り物しか売らないんだもん」
モブA「あの店員、ほんとブスだよね。性格も、見た目もブスとか終わってる」
モブB「ほんとほんと。そんな店員がオマケまでくれたのはユーシャ君がイケメンだからだよ、きっと」
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 22:01:17.88 ID:mk9u+C2P0
勇者「まあ、勇者一族は全員、美男美女だからな」
モブA「うわー、自分で言っちゃう! まあ、イケメンだけど」
モブB「ねー勇者は誰かと付き合いたいとか思わないの?」
勇者「ど、奴隷になるのは嫌だからな!」
モブA「ぷっ奴隷って。そんな大袈裟なー」
勇者「でも、日本じゃ男は結婚すると女の奴隷になるのが常識なんだろ?」
モブA「まー、そんなところもあるけど。だいたいは普通だよ」
勇者「え? 女の性処理をしないといけないんじゃ?」
モブB「ユーシャ君は日本を誤解しすぎ! そんなことないない」
勇者「なーんだ、誤解か。良かった」
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 22:02:02.66 ID:mk9u+C2P0
モブA「ほんと、ユーシャ君って面白いね。最初に見たときは変な奴って思ったけど」
勇者「や、やっぱり?」
モブB「そりゃね。内股になって、モジモジとしながら、唇を突きだして、目を泳がせてる上に、何を言ってるのか分からないんだもん。正直、あれはキモかった」
モブA「あは、言いすぎ。まあ確かにキモかった」
勇者「……マジか」
モブA「ま、今は違うよ。普通に日本語も話せるし、ノリも良くて、顔もめちゃイケメン。世間知らずなところを除けば理想の男子って感じ」
勇者「じゃ、じゃあ……俺はインキャじゃない?」
モブB「インキャって。あんな、汚物にはまず話しかけないかけない」
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 22:02:51.48 ID:mk9u+C2P0
モブA「今日見た? オタクのやつ、ラノベに流行りの文学小説のカバーつけて読んでたよ」
モブB「うわ……キモオタが何をしてんのかね。あの容姿で文学読んでてもモテるわけないじゃん。堂々としてる方がマシマシ」
モブA「まあ……」
モブA・B「どっちにしろキモイけど! あはははは」
勇者(ラノベとか純文学とか言っている意味がよく分からんねーけど、とりあえず笑っとくか)
勇者「あはは」
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 22:03:34.31 ID:mk9u+C2P0
10
勇者「ふふんッ」
ルー「今日は一段とキモイですね」
勇者「何とでも言いたまえ。俺はインキャにならずにすんだのだ!」
ルー「ほう、それは良かったですね。雨零殿の方はどうですか?」
勇者「あー! そうそう、嘘ついただろ」
ルー「私がですか?」
勇者「そうだ。結婚したら男は女の奴隷になるとか」
ルー「その通りです」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 22:04:24.09 ID:mk9u+C2P0
勇者「違うんだって。クラスの女子に聞いたんだけど、普通に温かい家庭らしいぞ」
ルー「いけませんね。こっちでの倫理観ではの話でしょうに」
勇者「いや、違う違う。そう思ったから、どんな感じなのか聞いたらさ。本当に普通の家庭だったんだ」
ルー「そんなはずはありません。この雑誌には男は女の尻に敷かれると明記されています」
勇者「はは、甘いなルートネス」
ルー「な、何がです」
勇者「それはなファッション誌って言うやつなんだ」
ルー「ええ、知っていますが」
勇者「その雑誌に書かれていることはな、だいたいデマだ!」
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 22:05:19.34 ID:mk9u+C2P0
ルー「さすがにそれでは商売にならないでしょう」
勇者「これがなるんだ。この雑誌には女にとって有利なことしか書いてないからな、女性は嘘と分かっててもついつい買ってしまうらしい」
ルー(確かに……私も気づけば習慣になっていました)
勇者「ファッション誌に書いてある情報はデマなんだ! つまり、雨零に嫌われる必要はない!!」
ルー「まあ、解決したったことですね」
勇者「うん。そう言うこと。ていうか、そのファッション誌なんて読むの止めろよ」
ルー「面白いんで良いんです」
勇者「読んでみても良いか?」
ルー「ええ、どうぞ」
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/11(日) 22:06:16.90 ID:mk9u+C2P0
勇者「厚化粧な女が色んな服を着てるだけじゃん。こんなのが面白いのか?」
ルー「面白いのではなく、タメになると言った感じですかね」
勇者「お、記事もあるのか。なになに、他校の文化祭で彼氏をつくる方法?」
ルー「男の心理が詳細に書かれた名記事です」
勇者「文化祭とかよく分かんねーけど内容が支離滅裂じゃねーか!」
ルー「違うのですか?」
勇者「俺はこんなので他人を好きにならないな」
ルー「勇者殿は簡単に惚れそうですけどね」
勇者「俺はハニートラップにかからないように鍛錬を重ねているから大丈夫だ」
ルー「高校に気になる女性などはいないのですか?」
勇者「い、いないな」
ルー「その反応……いますね」
勇者「まあ、凄い美女がいただけだ。生徒会長の具源さんって言うんだけど恋愛感情は抱いてない」
ルー「そうだと良いですけどね。勇者殿が好意を抱いて良いのは魔王様だけですから」
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