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魔王「もう、やめんか勇者よ……」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:11:28.05 ID:/OayQcdY0
無数の死体が散らばった戦場。勇者と魔王が対峙している。
魔王「もう、止めんか勇者よ」
勇者「ここまで来て何を言ってやがる。お前のために殺された魔族に対して悪いと思わないとか」
魔王「だからこそ、もう止めようと言っておるのだ」
勇者「何を訳の分からないことをぬかしてるんだ。俺はお前を殺す。それが、俺の使命なんだ」
魔王「使命、使命、使命。お主はいつもそうだ。自分の意思で動けぬのか」
勇者「う、うるさい!」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1541851887
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:13:53.93 ID:/OayQcdY0
魔王「勇者、我はお主と戦いとうないのだ」
勇者「黙れ黙れ! 俺は魔族に殺された民の為にも、殺してきた魔族の為にも、お前を殺すんだ」
魔王「そうか……その信念を貫き通すと言うのだな?」
勇者「あぁ、そうだ」
魔王「分かった……諦めよう」
勇者「お互いに体力も限界だ。次で決めてやる」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:16:35.52 ID:/OayQcdY0
魔王「いや、その必要はない。お主は少しでも身体を休めよ」
魔王が短剣を逆手に持つ。
勇者「な、お、おい魔王ッ!!」
魔王「さらばだ勇者よ」
魔王が自身の胸に短剣を突き刺す。
勇者「ふざけんなよ! ここまできて、何で勝手に死んでるんだ。今まで……戦ってきたのはなんだったんだよ!!」
魔王「……」
勇者「何か言えよ。おい、魔王!」
横たわっていた魔王の死体が独りでに起き上がる。
勇者「い、生きてるのか?」
魔王「イギム・デムダ」
勇者「その魔法は、転移魔法――!」
勇者の身体を光が包む。
勇者「クソ、最後の最後で。やめろ、やめろ、やめろぉ!」
魔王「……」
勇者の身体がパズルピースのように分裂し消滅する。魔王の亡骸が石化する。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:18:31.96 ID:/OayQcdY0
2
幼女「起きてください」
眠る勇者の肩を揺する幼女。
勇者「んん、疲れてるんだ。あと五分だけ」
幼女「起きてください」
勇者「……あと三分でいいから、ね?」
幼女「分かりました。三分ですよ」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:19:51.65 ID:/OayQcdY0
三分後。
幼女「三分経ちました。起きてください」
勇者「いやだ! あと五分……んん」
幼女「……ふぅ」
幼女が勇者の傷口に指をねじ込む。
勇者「いでぇぇぇ!?」
幼女「ようやく起きましたか」
勇者「え、誰?」
幼女「魔王様に勇者殿の世話役を務めるよう命を受け参じました、ルートネス・タダレネスです」
【以下、幼女=ルー】
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:21:27.19 ID:/OayQcdY0
勇者「はは、可愛いなー。でも、魔王に様とか付けない方がいいぞ」
ルー「ッム……私は二十歳で、勇者殿より三歳も歳上です!」
勇者「嘘だー。どう見ても六歳くらいじゃねーか」
ルー「人間の物差しで測らないでください。魔王様の命よりと申したでしょう。私は魔族です」
勇者「ま、魔族? こんなに容姿が人間な魔族なんて見たことがない」
ルー「それだけ、意識せずに我が同胞を殺してたんですね」
勇者「それはねーよ。俺は殺した魔族の顔は全員、覚えてる」
ルー「なら……いえ、不快です。この話はやめましょう。何はともあれ、私はあなたの世話役を任されていますので、よろしくお願いいたします」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:23:13.68 ID:/OayQcdY0
勇者「あーはいはい。その話は後で聞くから。とりあえず今は、人民の皆に魔王を倒したって報告しに行かないと」
ルー「それは叶わぬ願いですね」
勇者「え、何でだよ」
ルー「ここに、あなたを知っている方は存在してませんから。その逆も然りです」
勇者「あん? あーそう言えば、ここはどこだ?」
ルー「日本です。と言っても知らないでしょうけど」
勇者「日本? そんな村、街ってあったかな」
頭を抑えるルートネス。
ルー「覚えてませんか? 魔王様が最後に使用した魔法を」
勇者「――っあ!! そうだ、あの野郎、最後の最後で俺を飛ばしやがったんだった」
ルー「その転送先が日本です」
勇者「魔界か、人界か。どっちだ?」
ルー「広義の意味では人界ですが……狭義では魔界でも人界でもありません」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:24:42.67 ID:/OayQcdY0
勇者「どういうこと?」
ルー「日本は私たちが暮らしていた星とは別の星である、地球の大地名の一つです」
勇者「ほ……し……?」
ルー「はい、別の星です」
勇者「あの野郎、いきなり自害したかと思えば……そんなことしやがったのか!」
ルー「勘違いをしているようですが、魔王様は勇者殿を守るために自害してまで転移魔法を使ったのですよ?」
勇者「はー、さすがに苦しいって」
ルー「自害することで、体内の魔力が溢れますからね。それを利用することで別の星への転送を成功させたのです。私の場合は多くの同胞の魔力を借りましたが、勇者殿が大半の魔族を殺してしまいましたからね……」
勇者「仕方ないだろ。いや、自害した理由は分かったけど、それが何で俺のためになるんだ?」
ルー「はぁ、本当に低脳ですね」
勇者「生まれてから、学校にも通えず訓練ばっかしてたんだから仕方ねーだろ」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:26:18.10 ID:/OayQcdY0
ルー「はいはい。では、そんな脳筋の勇者殿にも分かるように教えてあげますよ」
勇者「お、おう」
ルー「良いですか。世界には魔族と人間が支配していますね」
勇者「人界と魔界だな」
ルー「そうです。土地の割合は人界と魔界で一対一です」
勇者「それくらい俺にでも分かる」
ルー「では、魔王様という統括者を失った魔族はどうなると思いますか?」
勇者「新しい魔王が誕生する……?」
ルー「その可能性は低いです。四天王などの知能指数の高い魔族は全て勇者殿に殺されていますので。残った魔族はゴブリンやオークなどの端くれでしょう」
勇者「そうか……なら数日で絶滅だろうな」
ルー「そうです。その結果、魔界は消滅し人界となります」
勇者「それがなんだよ」
ルー「人間には貴族がいますね?」
勇者「あぁ、いるけど?」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:28:07.11 ID:/OayQcdY0
ルー「貴族達は魔界の土地を自分のものにしようとします」
勇者「有り得るけど、王がそうはさせないだろ」
ルー「王も貴族の一人です。世界の半分という宝を目の前にした貴族は欲に飢えます」
勇者「確かに貴族は土地だの宝石だのに異様にうるさいけど……」
ルー「そうして、貴族同士での土地争いが勃発するのです」
勇者「そ、それは……」
ルー「荒れ果てた人間達は戦争が起きた元凶を探し始めます。その結果、吊るし上げられるのが勇者殿です」
勇者「な、何でだよ!」
ルー「勇者殿が魔王を倒さなければ、戦争は起きなかったからです。まあ、ただの罪の擦り付けですけどね」
勇者「そんなに人間はバカじゃない!」
ルー「では、聞きます。なぜ、勇者殿は魔族を襲うのですか?」
勇者「俺が魔族を襲うって……お前らが人間を襲うからだろ」
ルー「おかしいですね。魔族たちは一度も自ら人間を襲ったことはありません」
勇者「嘘つけ!」
ルー「嘘ではありません。魔王様が、絶対に私欲で人間を襲わないように命じていましたから」
勇者「じゃあ、何で……」
ルー「魔族が人間を襲っていたのではありません。貴族が土地や宝の私欲に歪み、魔族を襲うが故に防衛に出ていたのです」
勇者「じゃあ俺は――」
ルー「使命、使命と使命に支配され良いように利用されていただけですね」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:29:08.55 ID:/OayQcdY0
勇者「嘘だろ……」
ルー「嘘ではありません。話が少し脱線しましたね。戻しましょう。つまり、魔王様は人間から勇者殿を守るべく自害して日本に転送させたのです」
勇者「なんで、そこまでして俺を」
ルー「魔王様は勇者殿を愛していました。いつか、人間と魔族が分かり合える世界を求めていました。私たちも、そんな魔王様の夢を見守っていましたよ」
勇者「俺はアイツが女だったことも知らなかった」
ルー「魔王様は勇者殿の顔を見ると赤くなるとかと言って、常に全身を覆っていましたからね」
勇者「もっと早くに言ってくれれば……」
ルー「言っていたと思いますよ?」
勇者「ぐっ……」
ルー「分かりましたか? 自分が転送された理由を」
勇者「でも、俺は人間を見殺しにはできない。少なくとも平民に罪はないだろ」
ルー「私は人間の事情など知りません」
勇者「魔王には悪いけど、俺は元の世界に戻る」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:30:12.74 ID:/OayQcdY0
ルー「……そんなことが可能なんですか?」
勇者「ああ。勇者の力の源、聖力を補充する方法は感謝されることだ。多くの人に感謝されればされるほど、聖力が補充される」
ルー「つまり、聖力さえあれば転移も可能だと?」
勇者「理論上はな」
ルー「しかし、魔王様の天命に匹敵する量となると、膨大な時間が必要になるかと思いますが。」
勇者「領土戦争が勃発するまで、どれくらい時間がある?」
ルー「まず、魔族の生き残りを滅ぼす必要がありますからね。勇者殿という最大戦力を失った以上……そうですね、三年ほどかと」
勇者「十分だ。それまでに魔王戦で枯渇した聖力を貯めに貯めてやる」
ルー「――ッ。そうですね、協力しましょう。魔王様と勇者殿の意思を尊重して欲しいでしょうし」
勇者「助かる、この日本だっけ? よく知らないからな」
ルー「慣れるまでは大変ですが、慣れれば豊かな生活が出来ますよ」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:31:34.07 ID:/OayQcdY0
勇者「あのさ、さっきから気になってたんだけど」
ルー「なんです?」
勇者「この天井で輝いてるやつはなんだ?」
ルー「電球です」
勇者「雷の魔法か何かか?」
ルー「いえ、魔法ではなく科学です」
勇者「カガク……?」
ルー「まあ、そうなりますよね。私も最初はそうでした。理屈はイマイチ分かりませんが、一ヶ月もここで暮らせばだいたいは理解できるはずです」
勇者「一ヶ月……まあ仕方がないか」
ルー「私もサポートしますので。とりあえずこれが身分証です」
勇者「ギルドカード的なやつか」
ルー「そういうことになります。これからはユーシャと名乗ってください」
勇者「ユーシャ? なんだ変な発音だな」
ルー「元の世界で“勇者”の意味です。名前を考えるのも面倒なんで、とりあえず問題ないでしょう」
勇者「ユーシャ、ユーシャだな。了解」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:32:48.92 ID:/OayQcdY0
ルー「あと、一ヶ月の間は単独行動を禁止します」
勇者「な、なんでだ?」
ルー「勇者殿が独りで行動すると、すぐに問題を起こしそうですからね」
勇者「はは、そんなガキじゃあるまいし」
ルー「いえ、今の勇者殿はクソガキ以下です。前の世界での常識は一切通じませんので」
勇者「わ、分かった」
ルー「万が一、独りで行動してしまい、青い服を来た者に捕まったときは、この数字を伝えてください」
勇者「080××××○○○○?」
ルー「それを伝えれば、あとは私が対処しますので」
勇者「んー、とりあえず分かった」
ルー「それでは、よろしくお願いします」
勇者「あ、うん。こちらこそ」
握手を交わす二人。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:33:52.57 ID:/OayQcdY0
3
勇者が日本に転送されてから一ヶ月が経過。
勇者「おーいルートネス、風呂入ったぞ」
ルー「では、お先に」
勇者「なあなあ、俺もその風呂ってのに浸かってみたいんだけど。今日はお湯を流さないでくれ」
ルー「拒否します」
勇者「でも、湯に浸かるのって気持ちいいんだろ? 何で俺はシャワーだけなんだよ。」
ルー「私の浸かったお湯を利用されるなど、考えるだけでも嘔気がこみ上がって来ます」
勇者「? じゃあ、俺が先に浸かったら良いじゃん」
ルー「勇者殿の煮汁など浸かりたくないです」
勇者「むー、じゃあさもう一回風呂を沸かしても良いかな?」
ルー「節約してください」
勇者「はぁ……分かったよ」
ルー「では、お先に失礼しますね」
風呂場に行くルートネス。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:34:57.56 ID:/OayQcdY0
勇者「ちぇ、厳しいな」
ルー「ふふん♪ふんふん♪」
勇者「ムスッと顔のルートネスが鼻歌を歌うくらいご機嫌になる風呂って、どんだけ極楽なんだよ……うー、やっぱり体験してみてー!」
辛抱ならず、脱衣所に向かう勇者。
勇者「なあ、今日だけは頼むからお湯を流さないでくれよ」
ルー「は、はぁぁ!? な、なに入って来てるんですか? 馬鹿ですか、死んでください!」
勇者「別に裸を見てるわけじゃないだろ。なあー頼むよ」
ルー「ふざけないでください。今すぐ出ていってください。さもなくば殺しますよ」
勇者「俺のお願いを聞いてくれないと嫌だ」
ルー「何を子供みたいなことを……本当に殺しますよ」
勇者「お前がそんなこと出来るわけないのは知ってる」
ルー「ぐ、ぬぬ……あーもう分かりました。今日だけですよ。後でもう一度、お湯を炊くことを許可します」
勇者「やった! サンキュー」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:35:49.85 ID:/OayQcdY0
脱衣所を出ていこうする勇者。
床に脱ぎ散らかしていた、靴下を踏みバランスを崩す。
勇者「おわっ――!!」
浴室へと繋がるドアのドアノブに手をかける。
そのまま、浴室へと突っ込む。
勇者「え、えへへ……わりぃ」
ルー「ふふ」
勇者「大丈夫、見てないぞ。ほら、ルートネスは貧乳だし、湯気でどこが胸なのかも判別できないから、な?」
ルー「殺します♪」
勇者「ですよねー」
勇者の身体を黒い壁がドーム状に覆う。
勇者「これは、幻術魔法か。困ったな、今は聖力がないから最悪、精神が崩壊するぞ」
ルー「心配は無用です。寸前で止めますので」
勇者「お気遣いありがとうございます」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:36:49.20 ID:/OayQcdY0
ルー「さあ、十回死にましょう」
勇者「おー、ギロチンが見える」
勇者の首が跳ね飛び、再生する。
勇者「幻って分かってても、やっぱ辛いなこれ……」
ルー「あと、九回です。耐えてくださいね」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:37:57.03 ID:/OayQcdY0
4
勇者が青ざめた顔で首を両手で抑えている
勇者「うぉぇ……うぇ。あー、生きた心地しねー」
ルー「自業自得ですよ」
ルートネスが勇者にコーヒーを差し出す。
勇者「ふぅ……落ち着く。まあ、そんなに怒らなくてもいいだろー」
ルー「裸を見られたくらいなら、あそこまで怒りませんよ」
勇者「ん? じゃあ何で、あんなに不機嫌だったんだ」
ルー「その話はさておき、本日で一ヶ月が経ちました。どうです、こちらでの生活に慣れましたか?」
勇者「え、あーうん。凄いよな、この世界って」
ルー「この快適さを知れば、元の世界に戻る気が失せますね」
勇者「そうだな。でも、俺は戻らないと」
ルー「そう言うと思っていました。ですので、明日から勇者殿には、ここに通ってもらいます」
ルートネスが勇者にパンフレットを手渡す。
勇者「なになに。私立友英学園高等学校?」
ルー「はい、学校です。手続きは私が手を回しておきましたので問題ありません」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:39:29.20 ID:/OayQcdY0
勇者「とは言っても、何で学校なんだよ」
ルー「聖力を集めるには、交流が必要ですからね。かと言って、日本では、誰これ構わず話しかけると不審者扱いされますので」
勇者「そこらへんは面倒な星だよな、ホント」
ルー「ですが、学校内なら特に問題はないでしょう。進んで人助けに励んでください」
勇者「まー、学校には一回通ってみたかったんだ。サンキュー!」
ルー「いえいえ、くれぐれも陰キャにはならないで下さいね」
勇者「インキャ? なんだよそれ」
ルー「学校で唯一、不審者扱いされる輩ですね。陰キャになれば全てが終わりだと思ってください」
勇者「インキャだな? よし、分かった」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 21:41:58.97 ID:/OayQcdY0
疲れたから休憩する
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:23:51.29 ID:/OayQcdY0
5
ルー「では、これに着替えてください」
勇者「えーなんだよこれ。カチカチで着心地悪い」
ルー「新品ですからね。何度も着ているうちに柔らかくなります」
勇者「うぇ……脇が気持ち悪い」
ルー「うるさいですね、我慢してください」
勇者「これでいいのか?」
ルー「ええ、問題ありません。それは制服と言います。友英高校に通う生徒は皆、同じ服を着ています」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:24:27.41 ID:/OayQcdY0
勇者「なんか怪しい宗教みたいだな」
ルー「あながち間違いではないですね。学校は子供を洗脳する場ですので」
勇者「ヴェッ!?」
ルー「冗談です」
勇者「本当だろうな?」
ルー「知りませんよ。私だって学校に通ったことがないのですから」
勇者「あれ、魔族にも教育機関があるだろ?」
ルー「あるにはありますけど、私は通ってません」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:25:25.53 ID:/OayQcdY0
勇者「お前も俺と同じで使命とかで……」
ルー「脳筋と一緒にしないでもらえます? 私は優秀ですので、通う必要がなかっただけです」
勇者「そ、そうか」
ルー「話を戻しましょう。学校に着いたら、まずは職員室に行ってください。その後、担当の教師が教室に案内してくれるはずです」
勇者「職員室、担当の教師だな」
ルー「はい。その後、教室で自己紹介をするはずですので、この通りに行ってください」
勇者「なになに? えと、真尾野ユーシャです。ロシア人の父と日本人の母の間に生まれました。日本にはまだ慣れてませんがよろしくお願いします――か」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:26:15.75 ID:/OayQcdY0
ルー「これで、ひとまずは陰キャにはならないはずです。日本人はハーフが好きですから」
勇者「ふーん。ハーフってのが何かよく分かんねーけど。まあいいや」
ルー「あなたの外見は日本人離れしていますからね。くれぐれもハーフとの設定を忘れないでください」
勇者「前に、服を買いに行った時もめちゃくちゃ見られたよな」
ルー「赤髪、白い肌、高い鼻ですから当たり前です」
勇者「確かに顔つきが違うけど、赤髪は珍しくないだろ。デパートにもいっぱい居たじゃん」
ルー「いえ、日本人に赤髪なんて存在しません。あれは染めているのです」
勇者「染める……髪を?」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:27:27.50 ID:/OayQcdY0
ルー「そうです。この世界の人間は頻繁に髪を染めます」
勇者「何でそんな面倒なことを」
ルー「少しでも目立ちたいと言う自己顕示欲の現れですね。特に赤髪、緑髪等にに染める者はそういう印象があります」
勇者「お、おい……じゃあ、俺の髪の色ってまずいんじゃ」
ルー「心配ご無用。勇者殿には赤髪が似合っていますので」
勇者「まあ、地毛だしな」
ルー「日本人で赤髪や青髪に染める者に限って、全く似合ってませんからね」
勇者「確かに、デパートで見たやつもゴブリンみたいだったな」
ルー「魔族で例えないでください。まあ、言いたいことは分かりますけど」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/10(土) 22:28:11.19 ID:/OayQcdY0
今日はここまで。
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