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艦娘サンダーボルト DECEMBER SEA
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151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/12/28(金) 20:21:46.05 ID:9bq+h7BI0
長門 「よくも酒匂を!」
研究員 「お前の産んだ『エイブル』がやったことだ」
長門 「くっ、殺してやる! お前達皆殺してやる!」
研究員 「だそうだ。『エイブル』、お母さんの相手をしてあげなさい」
エイブル 「ブへへへ、さっきのに続いてこいつも上玉だぁ」
長門 「お前なんか産みたくなかったのに!」
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/12/28(金) 20:25:45.56 ID:9bq+h7BI0
長門 (また妊娠してしまうのだろうか……)
長門 (足腰が立たない……)
長門 (酒匂……酒匂……)
長門 (ビッグセブンと呼ばれた私が、今や化け物に辱めを受け、這って移動している)
長門 (酒匂……ああ……目を開けてくれ)
長門 (済まない……本当に済まない……)
長門 (お前を犯し殺した化け物は……私が産まされたんだ)
長門 (私だって産みたくなかった。許してくれ……ウウウ……)
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/12/28(金) 20:30:30.54 ID:9bq+h7BI0
長門 (その後私は、凍結されたクロスオーク計画の再開を阻止することを自らの使命とした)
長門 (それが、酒匂を死に追いやった私に科せられた十字架をどれだけ軽くしたと言うのだ?)
長門 (雷の言う通りだ。恨まれるべきは私だ。私のせいで陸奥も酒匂も暁も響も死んだ! しかも雷や電が知らないのをいいことに新型艤装の運用を提案したのは自分だと未だに明かせずにいる。ビッグセブンが聞いて呆れる。この臆病者の卑怯物め。私が死ねば良かったんだ!)
長門 (陸奥、お前ならどうする……)
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/12/28(金) 20:31:38.09 ID:9bq+h7BI0
今回はここまで。前作で何があったか少し触れました。それから一箇所訂正。
>>150
〔誤〕その時、長門は自らの忌まわしき過去を振り返っていた?
〔正〕その時、長門は自らの忌まわしき過去を振り返っていた
文末の「?」は無しです。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/28(月) 19:05:23.92 ID:uT8TwubW0
提督 「明石、新型艤装の件だが……」
明石 「はい」
提督 「お前が新型艤装の開発技術に付けた名前……確か……」
明石 「リユース・P・デバイスです」
提督 「それだ。名前が長いからつい『新型艤装』と言ってしまう。正式名称はリユース・P・デバイスでいいが、今後、コードネームを『サイコ』とする」
明石 「分かりました」
提督 「もっと早く名前を決めとけば良かった」
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/28(月) 19:13:04.14 ID:uT8TwubW0
明石 「何故、今になって名前を?」
提督 「もう少し戦果を挙げてかつデータが取れたら大本営に報告を上げる。その為のコードネームだ。暁と響を失いはしたが、これまでの戦果を考えるとサイコ艤装の有用性は明らかだ。このまま――」
バタン!
吹雪 「司令官!」
提督 「執務室だぞ、ノックくらいしろ」
吹雪 「申し訳ありません。緊急だったので」
提督 「まあいい。……何があった吹雪? 慌てるとまたコケるぞ」
吹雪 「報告します――」
提督 「……何!?」
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/28(月) 19:20:37.67 ID:uT8TwubW0
提督 「ふざけやがって!」
長門 (第六駆逐隊のことを悲しむ間も無く、深海棲艦の大部隊がこの鎮守府に侵攻して来た)
提督 「何でここに敵が集中してんだ!?」
提督 (サイコ艤装研究開発の成果で昇進するどころか、ここを落とされたら詰め腹切らされるぞ!)
長門 (新型艤装は元々深海の技術。ならば深海棲艦が、その技術が使われているこの鎮守府の占領を図るのは道理。連中は我々がこの技術をどうやって手に入れたのか知りたいのだろう)
長門 (我々に技術を流出させたのは陸奥だということは、連中に知られてないだろうか?)
長門 (陸奥ならそんなヘマをしないとは思うが……。下手に探りを入れたらかえって陸奥の立場を危うくするかもしれない)
長門 (今は妹の無事を祈るしかない……。陸奥、何が何でも隠し通せ!)
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/28(月) 19:27:12.61 ID:uT8TwubW0
明石 「しかしそれは……」
提督 「全滅の危機にある鎮守府を救う方法はこれしかない。連中の大部隊に対抗できるのはサイコ艤装だけだ」
提督 「最高練度の艦娘一隻に超大和型サイコ艤装と50口径連装砲4基を装備させて敵主力に殴り込みをかける。この鎮守府に迫る敵を撤退させるにはそれしかない」
提督 「敵を一時的に撤退させれば、近隣の鎮守府からの援軍か間に合うかもしれん」
提督 (援軍要請は忌々しいが、背に腹は代えられん)
明石 「しかしサイコ艤装は艦娘の手足を義肢化して艤装に直接接続する必要があります。四肢全てを接続となると……」
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/28(月) 19:32:15.07 ID:uT8TwubW0
提督 「清霜の両足は既にサイコ艤装仕様だったな……」
明石 「何を……言っているの?」
提督 「清霜の両手も切れ!」
明石 「!」
明石 「艦娘は! モルモットじゃないのよ!」
提督 「いい機会だ。お前達の立場を教えてやる」
提督 「そもそもサイコ艤装は非人道的だからお前達にやらせてるんだろうが」
明石 「何ですって?」
提督 「お前等はモルモットだ! そして兵器だ! 兵器の分際で私に口答えするな!」
提督 「明石! もし抗命したらお前を解体処分する!」
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/28(月) 19:38:34.77 ID:uT8TwubW0
明石 「私は提督の言いなりになってあなたの両腕を切った。自分の保身の為に」
清霜 「生き残ろう」
明石 「え?」
清霜 「生き残っていつか心から笑おう。理不尽な現実こそ清霜達を苦しめる本当の敵だよ。戦争中に生きる艦娘にはちょっぴり試練が多いし、この戦争で生き残るなんて奇跡かもしれないけど」
清霜 「それでも一つ奇跡が起きた」
清霜 「これで清霜は遂に戦艦になれるんだもん」
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/28(月) 19:40:13.10 ID:uT8TwubW0
今回はここまで。
久々の投稿再開ですが読んで下さった皆さんありがとうございました。
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/01/28(月) 23:14:20.57 ID:8+R4Lzmb0
そっちの『サイコ』なのね
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/03(日) 19:38:01.61 ID:RqvswAFp0
榛名 「流石この鎮守府の最高練度です」
金剛 「新婚さん、指輪見せて欲しいネ」
清霜 「特別だよ、ほら」
金剛 (これって……)
榛名 (義肢に指輪をはめてる……)
金剛 「Sorry……グスッ」
榛名 「……グスッ……」
清霜 「どうしたの? 二人とも紅茶飲んで泣き上戸?」
金剛 (恋愛と戦争では手段を選ばない英国生まれのミーから見ても惨い)
榛名 (練度開放と燃費低下を目的とした愛の無いケッコンカッコカリ、悲し過ぎます)
清霜 「ありがとうございます、お茶に誘ってくれて。でも、ほら、大丈夫だから。命令だし、鎮守府の皆、清霜も守りたいし、選ばれて逆に光栄っていうか」
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/03(日) 19:45:40.47 ID:RqvswAFp0
提督 「作戦を説明する」
提督 「第一艦隊は出撃後、鎮守府に向かって侵攻中の敵艦隊に対し遅滞戦術を取れ。それから間隔を空けて第ニ艦隊を出撃させる」
提督 「その後清霜は第一艦隊を離脱し、第ニ艦隊を離脱した加賀と合流して第三艦隊を組め。第三艦隊は迂回と加賀の索敵により敵との交戦を可能な限り回避して敵本隊に到達し奇襲をかけろ」
提督 「第ニ艦隊は第三艦隊が作戦を遂行する為の陽動及び第一艦隊の後詰めが任務だ」
提督 「清霜、お前を第一艦隊に加えたのはサイコ艤装の主砲に慣れさせる為だ。51cm連装砲を撃つのは初めてだろう」
清霜 「はい」
提督 「主砲の扱いにある程度慣れたら加賀と合流しろ。それからが本番だ」
清霜 「はい」
清霜 (いきなり重要任務を任された)
清霜 (これが戦艦なんだ……)
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/03(日) 19:50:28.18 ID:RqvswAFp0
清霜 「三式弾、一斉射!」
清霜 「徹甲弾、撃ええぃ!」
清霜 「すっごい……。比較になんないや」
清霜 「これが戦艦、クックックッ。おお、最高だよ! 欲しかったのはこういう力なんだ!」
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/03(日) 19:56:51.71 ID:RqvswAFp0
提督 「で、長門と武蔵で清霜を曳航してのこのこと帰って来たのか?」
長門 「そうだ……」
武蔵 「最初は元気だったんだ」
武蔵 「しばらくしたら清霜が肩で息をして、身体が非常にだるいと――」
提督 「明石、清霜の突然の体調不良の原因は何だ?」
明石 「はい、あくまで推論ですが、サイコ艤装は艦娘と艤装を艦種に縛られずに接続するだけで、接続後の適合性まではフォローしないと思われます」
明石 「これまでは両腕、もしくは両足のみの接続だったので負担が軽かったところを、今回四肢全てを接続したことで……」
明石 「戦艦の艤装を駆逐艦に装備した無理がたたったと思われます」
提督 「ハァ? 何だそれ?」
提督 「俺がアテにしたのはそんな中途半端な力だったのか?」
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/03(日) 20:03:48.75 ID:RqvswAFp0
長門 「提督、今は状況に対処する方が先だ。サイコ艤装の話は後に――」
提督 「この役立たず共が……」
天龍 「何だと……?」
提督 「役立たずと言ったんだ」
天龍 「てめぇ!」
提督 「天龍、お前がここに来た理由を教えてやる」
提督 「前にお前が所属していた鎮守府の提督から『遠征要員しか使い道が無い艦娘を引き取ってくれ』と言われたんだよ」
天龍 「!?」
雷 (酷い……!)
電 (そんな……)
提督 「こちらは第六駆逐艦に51cm連装砲を搭載した直後だったからな。六駆が遠征に不向きになった分、こちらは遠征要員が欲しかった」
提督 「戦艦水鬼狩りの際にお前に探照灯を持たせたのも最悪沈んでも惜しくないと思ったからだ」
天龍 「ふざけんな……俺は戦える……」
天龍 「だったらサイコ艤装を俺に使え!」
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/03(日) 20:12:58.98 ID:RqvswAFp0
武蔵 「待て、サイコ艤装はこの武蔵が使う」
天龍 「人様の決意に水差すなんて趣味悪いぜ」
武蔵 「駆逐艦の清霜が使うと継戦時間が短いという欠点が露呈した。軽巡の天龍が使えば少しは長く戦えるかもしれんがそれでも不安が残る」
天龍 「姉御は元から超弩級だろ。サイコ艤装に切り替えてもメリットが薄い」
武蔵 「主砲の口径が45cmから51cmになるし、装甲だって今より厚くなる」
天龍 「俺が使えば軽巡が戦艦になるんだ。そっちの方がいい」
長門 「待て」
長門 「サイコ艤装は私が使う」
長門 「私なら戦艦だから適合に問題無いし、武蔵がサイコ艤装に切り替えるよりも性能の伸びが大きい」
長門 (最初からこうしていれば……)
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/03(日) 20:15:21.51 ID:RqvswAFp0
今回はここまで。
>>162
そうです。サイコミュじゃないサイコです。
それから一箇所訂正
>>167
〔誤〕提督 「こちらは第六駆逐艦に
〔正〕提督 「こちらは第六駆逐隊に
読んで下さった皆さんありがとうございました。
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/09(土) 23:15:31.07 ID:nlqmXqzy0
武蔵 「超弩級の武蔵が使うのが一番信頼性が高い」
天龍 「姉御、頼む退いてくれ」
長門 「私が使うと言っている」
電 「あの……!」
長門、武蔵、天龍 「?」
電 「二人で一つのサイコ艤装を使う訳にはいかないんですか?」
電 「……雷ちゃん」
雷 「もう……そんな困った顔しないの」
雷 「もっと雷を頼っていいのよ」
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/09(土) 23:25:04.38 ID:nlqmXqzy0
提督 「明石、よく間に合わせた」
明石 「いえ、急造ですがこれでサイコ艤装の性能は100パーセント発揮出来ます」
提督 「うむ」
提督 「次で失敗したら、もう作戦を練り直す猶予は無い。雷、電、お前達の戦果に全てが懸かっている」
雷 「敬礼は出来ませんが了解です」
電 「はい。これで暁ちゃんと響ちゃんの仇が討てるのです」
長門 (両手足を義肢にした雷と電が左右に並んで立ち、一つの艤装を使っている)
明石 (サイコ艤装なら、改修により複数の艦娘で一つの艤装を扱える。これまでの研究で可能だとは思ってたけど、実際に運用するのはこれが初めて)
明石 (もしこの作戦が成功したら、あの私の仮説が現実の物に……)
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/09(土) 23:38:08.20 ID:nlqmXqzy0
赤城 「加賀さんは敵艦隊と交戦中なので私がエスコートしますね」
雷 「よろしくお願いします」
電 「ありがとうございます」
赤城 (皆が前線を支えている間にこの三隻で……この場合ニ隻になるのかしら?)
赤城 (索敵を怠らず、無駄な戦闘は避け、敵の主力を叩く)
赤城 「一航戦赤城、出ます!」
雷、電 「戦艦雷電、抜錨します!」
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/09(土) 23:53:11.69 ID:nlqmXqzy0
長門 「加賀、待たせた。後はこちらで引き受ける」
加賀 「お願いします。私は随伴艦と共に撤退します」
長門 (金剛、榛名、武蔵、天龍、そしてこの長門……この顔ぶれをもってしても果たして敵の大部隊相手にどれだけ持ちこたえるか……。だが弱気になるつもりは無い!)
天龍 (この中で軽巡は俺だけか。だっら魚雷使えるの俺だけじゃん。腕が鳴るぜ)
武蔵 (泣く泣く撤退を余儀なくされた清霜の無念を思うと、無様な戦いは出来ない)
榛名 (鎮守府では負傷者を入渠させて修理を終えたら出撃させてますが、もうバケツが尽きます。このままではジリ貧に……)
金剛 「榛名、そんな顔しない」
榛名 「金剛お姉様……」
金剛 「近くの鎮守府から比叡がこちらに向かってるからそれまでの辛抱。THUNDERBOLTが帰還出来るように鎮守府を守るネ」
榛名 「はい!」
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/10(日) 00:03:51.25 ID:IFKQir+60
空母ヲ級flag 「グアッ!?」ドゴオオオオオォ
戦艦レ級 「ヲ級が轟沈!? ウアァッ!」ドゴオオオオオォ
赤城 (遂に見つけた、敵の主力!)
雷 (明石さんの綺麗な髪を束ねていた2本の赤いリボンが今、雷と電の右手の義肢の先にそれぞれ巻かれている)
雷 (明石さんの思いを決して無駄になんかしない)
電 「すごい、明石さん……。明石さんの造った艤装は、電の失った手足よりも自由なのです!」
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/10(日) 00:05:14.93 ID:IFKQir+60
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/15(金) 22:27:56.67 ID:Rl545InQ0
戦艦水鬼 「撤退だと……」
港湾水鬼 「そうだ。後方の艦隊との連絡が途絶した。恐らくは敵の増援」
戦艦水鬼 「クッ、ここまで来て……」
港湾水鬼 「ヲ級flagやレ級が沈んだとなると相当数の敵が背後に回り込んでいる。このままでは挟撃される」
戦艦水鬼 「そんな奴ら……私だけで蹴散らしてやる!」
港湾水鬼 「落ち着け」
戦艦水鬼 「作戦を続行しろ」
港湾水鬼 「正気か?」
戦艦水鬼 「後方の敵は私が排除する。私からの連絡が途絶したら撤退でも何でもすればいい」
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/15(金) 22:38:20.68 ID:Rl545InQ0
武蔵 「敵艦隊撤退……とはいえすぐに次が来るぞ」
天龍 「次から次へと……」
長門 (このままでは戦線を維持出来ない)
長門 (少なくともさっき撤退した加賀達が入渠を終えて再出撃出来るまでは持ち堪えないと鎮守府が落ちる)
長門 「金剛、援軍到着まで後どれだけかかる?」
金剛 「あと1時間って比叡は言ってたネ」
長門 (1時間か……)
金剛 「『もっと早く来られないか?』って言いたげネ」
長門 「……比叡達も全速力でこの海域に向かってるのは分かっている」
金剛 「他所の鎮守府に無理は言えないネ」
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/15(金) 22:47:15.20 ID:Rl545InQ0
榛名 「援軍を2艦隊も出して貰えたのは、比叡お姉様が所属先の鎮守府の提督に嘆願したからです。これ以上の無理は……」
武蔵 「今は我々だけで何とかするしかあるまい」
金剛 「ただ、比叡達と敵艦隊との会敵を早めることは出来ます」
天龍 「そんな方法があるのか!?」
金剛 「Yes! この金剛と榛名で出来るだけ多くの敵を引きつけて比叡達の元にエスコートします」
金剛 「ハーメルンの笛吹きみたいに敵を大勢引き連れて、まだ損耗の無い比叡達に始末して貰うネ」
榛名 「高速艦を囮にして防衛拠点を敵の目から逸らし、かつ敵を無傷の友軍の正面まで誘導する」
榛名 「原前提督の戦術ですね」
金剛 「流石榛名です」
金剛 「前のテートクは、見た目はアレでしたが優秀でした」
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/15(金) 23:13:23.61 ID:Rl545InQ0
天龍 「見た目はアレって……そんなに酷いのか?」
武蔵 「お世辞にも容姿に恵まれているとは言えん。それでも今の提督より余程好感が持てた」
榛名 「私達艦娘のことを大事にしてくれました。提督が殉職された時、駆逐艦の子達は泣いてましたよ」
天龍 「殉職って、戦死したのか?」
長門 「そうだ」
長門 「そして皆には悪いが、故人を偲ぶのは鎮守府に帰還してからにしてもらおう」
長門 「金剛、榛名、早速だがその作戦、遂行したい。……どうした天龍?」
天龍 「前の提督が使った作戦だろ。敵がそう何度も同じ手に引っかかるか?」
金剛 「敵が追って来なければ、金剛達と天龍達で二手に分かれての十字砲火になります。敵にすればそちらの方がイヤな筈です」
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/15(金) 23:23:01.12 ID:Rl545InQ0
赤城 「新たな艦影1を確認、……戦艦水鬼!」
雷 「赤城さん、こちらで殿をやります。撤退をお願いします」
赤城 「あなた達を残して撤退する訳にはいきません」
電 「今の電達は孤立無援なのです。撤退中に新手の敵に遭遇したら撤退も出来なくなるのです。赤城さんが航空機で索敵して敵との戦闘を避けながら撤退すれば鎮守府に帰れるのです」
雷 「赤城さんが退路を見つけてくれないと生還が難しくなります。雷達も必ず追い付きます」
雷 「今の赤城さんはかろうじて中破です。雷達はまだ小破ですから」
赤城 「分かったわ、……撤退します」
赤城 (ごめんなさい。必ず帰って来て……)
雷 (赤城さんの奮戦で雷達は小破で済みました。ありがとうございます)
電 (赤城さんごめんなさい。雷はともかく電はもう生還を考えてないのです)
戦艦水鬼 (こいつ等だけで何隻沈めたんだ!?)
戦艦水鬼 (小癪な……。私の手でお前達を沈めてやる!)
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/15(金) 23:24:05.97 ID:Rl545InQ0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/20(水) 22:19:51.61 ID:4R+buEf00
金剛 「全砲門、Fire!」ドオオオオン!
榛名 「駆逐ロ級、轟沈! 残り10隻です」
榛名 「敵艦隊、榛名達を追撃しています。金剛お姉様の作戦通りです」
金剛 「これで長門達の負担が減ったネ。先頭の艦、足の速い艦から叩くネ」
榛名 「はい!」
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/20(水) 22:41:45.46 ID:4R+buEf00
榛名 「お姉様! 6時方向、敵機多数!」
金剛 (艦載機での攻撃に切り替えたか。そんなに簡単にはいかないネ……)
金剛 「三式弾装填」
榛名 「はい」
金剛 (あと少しで比叡の艦隊と合流出来る。そうすれば私も榛名も助かる)
金剛 (所属先の鎮守府が離れてるから駆けつけられなかった霧島もきっと心配してる)
金剛 (ここを凌いで生き延びる!)
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/20(水) 22:55:07.43 ID:4R+buEf00
比叡 (艦影1……あれは……金剛型なのは分かるけどまだ遠い)
比叡 「全艦、正面の艦影は友軍です。撃たないで下さい」
比叡 (もう一隻はどこ?……金剛お姉様と榛名で来るんじゃなかったの………)
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/20(水) 23:00:39.39 ID:4R+buEf00
比叡 「榛名……」
榛名 「ウウッ……金剛お姉様が……」
比叡 「!」
比叡 (間に合わなかった……)
潮 「12時方向、艦影多数!」
榛名 「グスッ……敵機が金剛お姉様を……
」
比叡 「榛名」
榛名 「集中攻撃して……榛名は……」
比叡 「榛名ッ!」
榛名 「!?」
比叡 「作戦遂行中よ。お願いだから今は泣かないで」
比叡 「泣かれたら、つられるから……」
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/20(水) 23:17:09.96 ID:4R+buEf00
戦艦水鬼 「いい加減沈め!」
電 「電の本気を見るのです!」
雷 (こいつを倒して悪夢を終わらせるわ! そうすれば……)
雷 (電だってきっと以前の優しい電に戻ってくれる!)
戦艦水鬼 (互いに被弾している。一騎打ちでこの戦艦水鬼がここまで追い込まれるとは忌々しい……)
戦艦水鬼 (こちらも余裕が無い。ここで勝負をかける……)
戦艦水鬼 (噴進砲全弾発射!)バシュウウウウッ!
雷 (対空兵器の噴進砲を対艦で使った!?)
電 (回避です!)
ボン! ボン! ボボボン! ボン、ボボン!
雷 (数が多い!)
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/20(水) 23:24:05.72 ID:4R+buEf00
戦艦水鬼 (噴進砲をバラ撒いたのはお前達の動きを制限する為)
戦艦水鬼 (回避先を限定させてから主砲で仕留める!)
電 (はわわっ、主砲を撃つ気です!?)
雷 (避けられない、せめて相打ちに!)
戦艦水鬼 (これで死ね!)ドオオオオオン!
雷 (当たれぇ!)ドオオオオオン!
電 (撃つのです!)ドオオオオオン!
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/02/20(水) 23:25:03.76 ID:4R+buEf00
今回はここまで。
戦艦水鬼が噴進砲を装備しているというのは、あくまでこのSSでの独自設定です。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/03(日) 13:49:37.37 ID:n5/QcWe70
戦艦水鬼 (ハァ、ハァ、ハァ……)
戦艦水鬼 (さっきの相打ちで艤装が駄目になったか……。だが敵も深手)
戦艦水鬼 「艤装を外せばまだいける」
戦艦水鬼 (こうやって……主砲を一基外して、手持ち武器にしてから……)ガコンッ!
戦艦水鬼 (艤装を破棄)
パシュッ……ゴポ、ゴポゴポゴポ
戦艦水鬼 (私の艤装が沈んでゆく……ここまで良く頑張ってくれた)
戦艦水鬼 (艤装に装備して撃つのとは訳が違う。この大口径の主砲を手持ちで撃てば反動が大きい。それでも……)
戦艦水鬼 (接射すれば関係無い!)
戦艦水鬼 「ケリをつけてやる。殺す」
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/03(日) 14:05:37.25 ID:n5/QcWe70
電 「雷ちゃん……」
電 「雷ちゃん……気絶してるの?」
電 「お願い、起きて……」
♪沈め 沈め 沈め 深く 深く 深く
電 (この曲は……居た!)
戦艦水鬼 (この歌が聞こえた時がお前達の最期だ……)
電 (まだ倒せてなかったなんて……こっちに来る)
電 (主砲!……撃てない!?)
電 (はわわ……全部損傷してるのです)
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/03(日) 14:13:46.91 ID:n5/QcWe70
電 「雷ちゃん、雷ちゃん、起きるのです! まだ終わってない!」
雷 「雷ちゃん! 雷ちゃんの装備が頼りなのです! いつまで寝てる気なの!?」
雷 「目を覚ましてええッ!」
バチッ!
電、雷 「痛ッ!」
電 (そうか……)
電 (今は12月。真冬だから、顔を近づけた時に静電気が発生したのです)
雷 「……唇が痛いんだけど」
電 「それは電も同じなのです。それより敵が向こうから来てくれたのです」
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/03(日) 14:39:41.12 ID:n5/QcWe70
戦艦水鬼 「これがお前等の最後だ! 戦艦モドキが!」
電 「主砲は撃てないのです。今こそあれを使うのです!」
雷 (分かったわ電!)
雷 「雷撃ね!」バシュウウッ!
戦艦水鬼 「ハッ!?」
戦艦水鬼 (戦艦が雷撃だと!? もう撃つしかない!)ドオオオオオン!
雷 「グハッ!」ドゴオオオオッ!
雷 (食らった……)
電 「雷ちゃん!」
戦艦水鬼 (主砲を辛うじて撃てたが敵魚雷の回避か間に合わ――)
戦艦水鬼 「ウガアアアアッ!」ドゴオオオオッ!
戦艦水鬼 「何故だ? 何故奴等に勝てない!?」
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/03(日) 14:49:31.03 ID:n5/QcWe70
戦艦水鬼 (潜行する……)ゴポン、ゴポゴポゴポ……
戦艦水鬼 (危なかった……。あと一撃で沈むところだった)
戦艦水鬼 (敵は戦艦。潜りさえすれば敵はこちらへの攻撃手段を持たない。艦種問わず潜行可能なのが、元々深海を住処とする我等の強み)
戦艦水鬼 (このまま撤退――)
ドポン……ドポン……ドポン……
戦艦水鬼 (この着水音……まさか!?)
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/03(日) 14:58:54.11 ID:n5/QcWe70
戦艦水鬼 「爆雷!」
ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン!
戦艦水鬼 「ウガアアアアッ!」
戦艦水鬼 (何故……戦艦が……魚雷はおろか爆雷まで……?)
電 (明石さんがサイコ艤装を改修した際に、二人で一つの艤装を運用する分余裕が出来たからと言って……)
電 (雷ちゃんに魚雷、電には爆雷を装備してくれた。これは明石さんが起こした奇跡なのです)
戦艦水鬼 (身体が……潜るのでなく、沈んで行く……)
戦艦水鬼 (私は……こんな奴等に……負けたのか……)
ゴポゴポゴポゴポ……
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/03(日) 15:00:54.54 ID:n5/QcWe70
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 22:21:45.17 ID:fYwxjPgO0
長門 (突破された!)
武蔵 (低速艦が我等の足止めをして、高速艦は我等に目もくれず鎮守府侵攻か)
長門 「天龍、防衛線を突破した敵の軽巡を追撃しろ!」
天龍 「ここの守りはどうすんだよ!」
長門 「私と武蔵でやる! お前の足でないと追い付けない!」
天龍 「分かった!」
天龍 (俺が戻るまで持ち堪えろよ)
長門 (この戦況、沈没も覚悟するか……)
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 22:28:29.53 ID:fYwxjPgO0
天龍 (このままじゃ鎮守府がやられる! 追い付けぇ!)
バシュウウウ!
天龍 (後方から魚雷! 危ねえッ!)
駆逐ニ級 「……」
天龍 (敵の駆逐か。回避したが、前を行く敵との距離が開いちまった)
天龍 (俺様が防衛線から離れたせいか敵が次々に突破しやがる)
天龍 (後から突破した敵に背後を取られるのは癪だが、最初に突破した敵をサッサと片付けねえと)
天龍 (……暁、響、意外と早くお前等に会えるかもな)
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 22:34:43.82 ID:fYwxjPgO0
バシュウウウ!
天龍 「え?」
軽巡ホ級「ギイィッ!」ドゴオオオオッ!
天龍 (前方のホ級が沈んだ!?)
清霜 「魚雷命中、ホ級轟沈を確認」
天龍 「清霜、お前その身体……」
清霜 「話は後ですよ、天龍さん」
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 22:40:34.07 ID:fYwxjPgO0
長門 (流石にキツイな……)
長門 (金剛、榛名……お前等のおかげで戦線を維持出来たが、それももう……)
長門 (……)
長門 (何を弱気になってる!)
長門 (金剛と榛名が囮になってくれたというのに! 赤城や雷や電は敵の懐に飛び込んだというのに!)
長門 (艦娘になる前、只の艦だった頃、私は大した活躍も出来ないまま終戦を迎えた)
長門 (今は違う! 護るべき場所の為に、守りたい者の為に私は戦っている!)
長門 (それに、私が沈んだらクロスオーク計画の再開を防ぐ役目は誰が負うというのだ!)
長門 (私はまだ沈む訳にはいかない。闘って、足掻いて、一分一秒でも長く海上に留まり、敵を退ける!)
武蔵 「有難い! 友軍の艦載機だ!」
長門 (艦載機!? ……加賀か!?)
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 22:47:24.31 ID:fYwxjPgO0
長門 「助かった、礼を言う」
加賀 「いえ、二人ともよく支えてくれました」
長門 (加賀と清霜が駆けつけてくれたおかげで鎮守府に迫る敵を辛うじて撃退した)
武蔵 「二人ではない」
天龍 「俺を忘れんなよ」
加賀 「そうでしたね」
清霜 「武蔵さん、長門さん」
武蔵 「清霜、その身体……」
長門 (清霜の身体が元に戻ってる)
加賀 「提督は残り2つだった虎の子の高速修復剤を私と清霜に使ったんです」
清霜 「明石さんが清霜の義手と義足を外してから高速修復剤を使ってくれたんです。だから……」
清霜 「清霜は元の駆逐艦に戻っちゃった」
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 22:55:02.88 ID:fYwxjPgO0
清霜 「でも諦めてません」
清霜 「サイコ艤装には頼らないけど清霜はいつか戦艦になってみせるから」
武蔵 「その意気だ」
天龍 「……敵が来ないな。次が第何波かもう分かんなくなった……」
加賀 「彩雲で偵察しました……敵艦隊、撤退を始めています」
加賀 「赤城さん達の作戦が成功したようです」
長門 (赤城、雷、電……皆無事なのか?)
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 22:57:52.50 ID:fYwxjPgO0
今回はここまで。
200レス突破しました。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/10(日) 19:49:07.57 ID:sZvlpJCw0
電 「雷ちゃん、ソナーから敵の反応が消えたのです……。電達は遂に戦艦水鬼を倒したのです……」
電 「電は戦艦水鬼を沈めたかったけど、暁ちゃんと響ちゃんの無念を晴らしたかったけど……」
電 「それを雷ちゃんの命と引き換えにしてまで手に入れるつもりは無かったのです!」
電 「だから……お願い……目を開けて……」
雷 「で……ん……」
電 「雷ちゃん!?」
雷 「てき……は……」
電 「やっつけたのです」
雷 「そう……」
雷 「電……あんたは無事……?」
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/10(日) 19:59:00.06 ID:sZvlpJCw0
電 「電は大丈夫なのです」
電 (雷ちゃん、こんな時まで自分のことより電の心配を……)
電 「任務達成したから帰投するのです。帰ったら明石さんに修理して貰って――」
雷 「電……」
電 「ん?」
雷 「笑いたい……心から……」
雷 「」
電 (雷ちゃん……)
電 (少しの間お別れなのです。電もすぐ逝くのです)
電 (向こうでは神様だって、きっと電達を元の身体に戻してくれるのです)
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/10(日) 20:08:45.07 ID:sZvlpJCw0
赤城 「雷ちゃん、電ちゃん、聞こえてるなら応答して!」
赤城 「これ以上は退路を確保出来ない!」
電 (赤城さんからの通信……)
電 「赤城さん」
赤城 「良かった、状況は?」
電 「作戦は成功したのです。戦艦水鬼も沈めたのです」
赤城 「凄いじゃない! よく頑張ったわ……貴女達が今日のMVP間違い無しよ」
赤城 「もう十分よ、こちらに合流しなさい」
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/10(日) 20:18:14.34 ID:sZvlpJCw0
電 「赤城さん、電はもう合流出来ないのです」
赤城 「敵の増援に包囲されたの? 援護します」
電 「たとえ援護して貰っても長くは動けないのです」
赤城 「雷ちゃん、電ちゃんを説得……」
赤城 (さっきから雷ちゃんが一言も話してない。まさか!)
電 「雷ちゃんはもう死んだのです」
電 「雷電の艤装は二人で動かすことが前提だから、電一人ではまともな速力も出ないし回避も出来ないのです」
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/10(日) 20:27:05.64 ID:sZvlpJCw0
赤城 「落ち着いて、諦めないで」
電 「電は冷静なのです」
電 「この戦いで深海棲艦を全滅させた訳ではありません。鎮守府を守り抜く為に、生還可能な艦は帰投すべきです」
電 「赤城さんが電に付き合うことは無いのです」
赤城 「私にあなたを見捨てろというの?」
加賀 「赤城さん、電の言っていることは正しいわ」
赤城 「加賀さん!?」
加賀 「私と清霜が電の救出に向かっています。赤城さんは帰投して下さい」
赤城 「たった2隻で!?」
加賀 「比叡さんが旗艦の友軍も間もなく到着します。戦力的に問題ありません」
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/10(日) 20:46:26.35 ID:sZvlpJCw0
赤城 「加賀さん、今どこに居るの?」
加賀 「電の作戦ポイントまであと20分の地点です」
赤城 「電ちゃん、それまで頑張れる?」
電 「……頑張るのです」
加賀 「これ以上は通信を傍受される恐れがあります。通信を切ります」
赤城 「待って!」
赤城 (『言っていることは正しい』……か)
赤城 (大破寸前のこの身体では助けにいっても私の方が足手まといになりかねない)
赤城 (……)
赤城 (ごめんなさい)
赤城 「分かりました。一航戦赤城、単艦にて現海域を離脱、鎮守府に帰投します」
電 (20分……)
電 (雷ちゃんが生きてたら悪あがきしたけど、もう……)
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/10(日) 20:47:46.04 ID:sZvlpJCw0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/17(日) 20:18:00.05 ID:eRUuK09M0
天龍 「とても20分じゃ着かねえだろ……」
加賀 「正直に話せば電は生還を諦めたでしょう。嘘も方便です」
加賀 「時間が無いので私達はもう行きます。清霜」
清霜 「はい」
天龍 「ではもう一仕事しますか」
加賀 「何を言っているのですか? あなたは帰投でしょう」
天龍 「電が頑張ってるのにこのまま帰れるかよ」
加賀 「大破した艦を護衛しながら――」
天龍 「自分の身は自分で守る」
加賀 「今のあなたは足手まといと言っているのです」
天龍 「提督といい、加賀といい、俺を馬鹿にしやがって!」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/17(日) 20:31:11.78 ID:eRUuK09M0
武蔵 「もう止せ」
天龍 「!?」
武蔵 「我達は帰投、入渠する。加賀、清霜、後を頼む」
武蔵 「だな、秘書艦」
長門 「ああ」
天龍 「何でだよ……」
武蔵 「今の損耗した我等では被害担当艦の役割も碌に果たせぬだろう。そもそも長門や私では空母や駆逐の足に追い付けない」
天龍 「俺は追い付ける!」
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/17(日) 20:45:59.74 ID:eRUuK09M0
武蔵 「もう少し味方を信用しろ。一航戦の加賀と、ここの鎮守府の最高練度清霜が救援に向かうと言っている」
武蔵 「清霜はこの武蔵が鍛えた。それでも信用出来ないか?」
天龍 「それは……」
長門 「天龍」
長門 「電が帰って来た時にお前がいないと電が悲しむ」
長門 「電に十字架を背負わせたくなければ自重しろ」
長門 「帰るぞ」
天龍 「……仕方ねぇなぁ、一緒に帰ってやるよ。仕方ねぇな!」
長門 (電、頼む。お前も帰って来てくれ)
長門 (私はお前に謝りたい)
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/17(日) 20:51:09.04 ID:eRUuK09M0
電 (雷ちゃんはよく頑張ったのです)
電 (向こうでは暁ちゃんと響ちゃんも居るからきっと寂しくないのです)
電 (……あの世で4人一緒になって、また一緒に歌うのです)
電 (でもその前に……)
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/17(日) 20:54:55.96 ID:eRUuK09M0
電 (一隻でも多く、深海棲艦を道連れにする!)
潜水ソ級 「コノテキ バクライヲ トウカ スルノカ!?」
電 (六駆を全滅させた仕返しなのです!)
戦艦タ級 「ジンケイヲ イジシロ!」
電 (それが六駆で最後に沈む電の役目!)
重巡リ級 「テキハ アトスコシデ シズム」
電 「姉妹を皆殺しにされた電の苦しみを思い知るのです!」
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/17(日) 21:06:29.68 ID:eRUuK09M0
電 「暁の水平線の向こうに勝――」
北方棲鬼 「マッテ!」
北方棲鬼 「モウ、ヤメヨウ。アナタ イッパイ キズツイテル」
電 「……止めないのです」
電 「……電は機械の手足になってたから、義手を艤装に差し込んで使うようになってたから……」
電 「目の前で死んでゆく雷ちゃんを抱きしめることすら出来なかった!」
北方棲鬼 「ソレハ ホッポモ オナジダヨ。ソノクルシミハ ホッポモ ジュウブンニ ウケタヨ」
北方棲鬼 「アナタハ ホッポト オナジ、ホラ」
キュ、キュ、キュ、カポッ
電 (外した!? あの手、手袋やグローブじゃなくて義手なの!?)
港湾水鬼 「……」
グググ……カポッ
電 (鉤爪のある手が外れた!? ……外したあとの手の先が電と同じなのです)
空母ヲ級 「ヲッ」
スポッ!
電 (ヲ級の頭のクラゲみたいな部分が取れた!)
北方棲鬼 「ヲ級flagハ アナタガ シズメタ。 ソレデモ ヲ級ハ アナタヲ ナカマトシテ ウケイレルト イッテル」
電 (まさかサイコ艤装の技術って……)
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/17(日) 21:11:09.52 ID:eRUuK09M0
今回はここまで。
今月中の完結を目指します。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/21(木) 18:45:18.51 ID:4XQS4R7z0
天龍 「フウーッ……ここの鎮守府はドックが6つあって助かったぜ」
吹雪 「前の司令官がドックを拡張させたんです。……惜しい人を亡くしました」
天龍 「早く治んねえかなぁ。電が帰って来る前にドックを空けねえと」
伊58 「先に入渠してるゴーヤが最初に治るでち。その心配は無用でち」
島風 「あれ? 長門さんも帰投されたんですよね」
武蔵 「長門は明石に捕まってる」
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/21(木) 18:51:35.49 ID:4XQS4R7z0
明石 「長門さんもご覧になったと思いますが、清霜ちゃんを元の身体に戻しました」
長門 「ああ、正直ホッとした」
明石 「電ちゃんもこれで元に戻れます。元に戻す方法はこちらの資料にまとめました」
長門 「何故私に渡す?」
明石 「私が非番の時に『明石が居ないから元に戻せない』何てことにならない様にです。やり方は工作艦でなくても出来ます」
長門 「資料の内容が難しくないことを祈ろう」
明石 「大丈夫ですって」
明石 「……」
長門 「どうした、明石?」
明石 「長門さん……私達艦娘って何なんでしょうね」
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/21(木) 18:58:02.33 ID:4XQS4R7z0
明石 「私達は、いえ私は……」
明石 「艦娘を人間に近しい存在と考え、そのことに疑問すら持ちませんでした」
明石 「それはかつてこの鎮守府に赴任した原提督が私達に対し、人に接するのと同様に接したからです」
明石 「いえ、人同士でもここまでの信頼関係は簡単に築けなかったでしょう」
明石 「提督自身は早朝から深夜まで働き詰めでしたが、私達には出来る限り無理をさせませんでした。私達を気遣い、フレンドリーに接しつつも公私をわきまえ、戦果を挙げれば感謝の言葉をかけてくれました。時には自腹でプレゼントを用意してくれました」
明石 「日々の演習内容や実戦において立案する作戦からは、提督が私達の誰一人沈めないように務めていることが伺えました。そして私達もまた提督を信じて任務を全うしてきました」
明石 「容姿では大分見劣りするのに、今の提督より余程艦娘達に慕われていました」
明石 「今の提督になって分かりました。中には艦娘を兵器としか思っていない人間だっていると」
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/21(木) 19:05:36.10 ID:4XQS4R7z0
長門 「真実を知った後はお前だって前の提督を嫌悪していたのではないか?」
長門 「前の提督が言ってたぞ。明石が急に余所余所しくなったと」
明石 「私が原提督を避けていたのは長門さんの話を聞いてから提督を見るのが辛かったからです」
明石 「尊敬出来る方なのに、艦娘にとっては忌み子とも言える存在……」
明石 「しかし、あの人自身に罪は無かった筈です!」
長門 「あいつは産まれて来たこと自体が罪だ! この世界に存在してはいけなかった!」
長門 「産んだ私自身が断言する」
明石 「それでは今の提督と同じじゃないですか」
長門 「何?」
明石 「出自だけで原提督を排除した私達は、艦娘というだけで私達を兵器扱いした今の提督と何ら変わりありません」
明石 「違いますか、長門さん?」
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/21(木) 19:11:06.84 ID:4XQS4R7z0
長門 「明石は原益三を葬ったことを後悔しているのか?」
明石 「クロスオーク計画の再開を阻止する、それ自体は崇高な使命です」
明石 「ただ、事情を話して原提督を仲間に――」
長門 「オークの血を引くケダモノと手を組めというのか?」
明石 「何も知らない原提督に対して私達はあまりに惨いことをしました」
明石 「かつて陸奥さんが沈んだことをあれだけ悔やんでいた原提督が、陸奥さんの砲撃で殺されたのですよ」
明石 「オーキシジェンデストロイヤー搭載弾頭で生きたまま身体を溶かされながら」
長門 「済まなかったな、明石」
長門 「明石がそんな風に考えていたとは気付かなかった」
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/21(木) 19:18:14.21 ID:4XQS4R7z0
明石 「長門さん?」
長門 「嫌なことに巻き込んでしまった」
明石 「長門さん、私は決して――」
長門 「勝手な依頼ばかりして、対オーク兵器『オーキシジェンデストロイヤー』まで開発して貰って」
長門 「事が露呈したら解体処分どころでは済まない程の危ない橋を渡らせてしまった」
長門 「それどころかサイコ艤装の設計図を明石に見せたことで、結果明石に辛い思いをさせた」
長門 「明石でなくても後悔する」
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/21(木) 19:24:58.89 ID:4XQS4R7z0
明石 「長門さん、私怒りますよ」
明石 「オーキシジェンデストロイヤーにしても、サイコ艤装にしても、私は長門さんから話を打ち明けられた時、工作艦として出来ることをしたいと思ったんです」
明石 「陸奥さんが沈んだのも、六駆が電ちゃんだけになったことも、私の力が及ばなかったから。そのことは悔やんでも悔やみきれません。清霜ちゃんの手足を切った後も涙が止まりませんでした」
明石 「それでも、長門さんの話を聞いて行動を起こした……」
明石 「そのこと自体に対して後悔はありません! これは私に対する侮辱です」
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/21(木) 19:26:15.57 ID:4XQS4R7z0
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/22(金) 22:32:10.14 ID:lNFiz4cP0
明石 (あの後長門さんは『頭を冷やしてくる』と言って入渠に行って、結局大事な話が出来なかった)
明石 (打ち明けたら長門さんは止めようとするか、あるいは……)
明石 (長門さん、もしかしたらさっきのがあなたとの最後の会話になるかもしれません)
明石 (ただ、サイコ艤装に対する私なりの決着はつけるつもりです)
明石 (清霜ちゃんのおかげで、サイコ艤装艦娘を元に戻す方法は確立した。大分荒っぽいけど工作艦の私が居なくても可能な方法で。後は電ちゃんが生還してくれるのを祈りましょう)
提督 「明石、そこに居たか」
明石 「提督」
提督 「『提督』じゃねえよ。誰が清霜の身体を元に戻せと言った?」
明石 「サイコ艤装は雷ちゃんと電ちゃんが装備して出撃中です。清霜ちゃんを出撃させる為には、彼女を通常の艤装が使える状態に戻す必要がありました」
提督 「だとしても俺に相談くらいしろ」
明石 「はい。ところで早速ご相談なのですが……」
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/22(金) 22:45:14.59 ID:lNFiz4cP0
天龍 「連れて帰って来るんじゃなかったのかよ!」
赤城 「……」
加賀 「……ごめんなさい」
天龍 「頼む……連れて帰って来たと言ってくれ……ウウウ……」
長門 (電、帰って来れなかったのか……)
長門 (入渠を終えてドックから出て来たらいきなり突きつけられた現実)
長門 (第六駆逐隊は全滅したのだ)
天龍 「……」
ツカツカツカツカ
長門 (天龍の奴、明石のところに行く気か!?)
長門 「天龍? ……天龍、どこへ行く?」
天龍 「え?」
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/22(金) 22:52:29.64 ID:lNFiz4cP0
長門 「落ち着け、明石だって好き好んでしたことではない。任務だったんだ」
天龍 「はぁ?」
長門 「お前が六駆を大事に思ってきたのは分かる。しかし明石に怒りをぶつけるのは間違っている」
天龍 「何言ってんだよ?」
吹雪 「長門さん、ひょっとしてご存知ないのですか?」
長門 「何をだ?」
天龍 「……ああ、そういうことか」
天龍 「安心しな。俺はしばらく独りになりたかっただけだ。そもそもただの人間相手にケンカなんてしねえよ」
長門 (ただの人間?)
吹雪 「実は長門さんの入渠中に……」
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/22(金) 23:02:06.36 ID:lNFiz4cP0
ベッドの上で私は目を覚ました。
誰かが私の顔を覗き込んでいた。
天井の照明が逆光になって顔はよく分からなかったが、頭から角が伸びていた。まるで鬼のようだった。
その直後、私は息を呑んだ。一つは鬼が女性だったこと。それは長い黒髪と声色で分かった。そしてもう一つは鬼が泣いていたこと。鬼は私の手を取り、涙声で「済まない明石、許してくれ」と言った。
明石って……誰?
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/22(金) 23:10:40.99 ID:lNFiz4cP0
提督 「長門、相変わらず長風呂だったな。それはさておき朗報だ」
提督 「俺達は鎮守府を守り抜いたぞ。敵は撤退した。これで取り敢えずは一安心だ」
提督 「一時はどうなることかと思ったがこれで俺の首も――」
長門 「提督、聞きたいことがある」
提督 「何だ?」
長門 「何故明石を解体した?」
提督 「それで執務室に飛び込んで来たのか。明石にはサイコ艤装の研究開発に失敗した責任を取らせた」
長門 「その為に……」
長門 「だったら私を解体すべきだ! サイコ艤装の運用を提案したのは私だ」
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/22(金) 23:13:15.43 ID:lNFiz4cP0
今回はここまで。
そろそろラストが見えて来ました。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:27:30.85 ID:JzocI3J20
@提督 「流石に2名も解体するのはな」
長門 「私一人解体すれば良かったろうに」
提督 「お前は栄えあるビッグセブンだ。解体すれば上から睨まれる。それに戦力の問題もある」
提督 「ただでさえ金剛が沈み、第六駆逐隊が全滅した今、これ以上の戦力の喪失は避けねばならん」
長門 「だから工作艦の明石を解体し、戦艦の私を残した」
提督 「そうだ。残してやったことを感謝しろよ」
長門 「違うな」
提督 「何?」
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:30:29.13 ID:JzocI3J20
失礼。
書き溜め時に入れた通し番号の"@"が入ってしまった。
上げ直します。
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:31:06.99 ID:JzocI3J20
提督 「流石に2名も解体するのはな」
長門 「私一人解体すれば良かったろうに」
提督 「お前は栄えあるビッグセブンだ。解体すれば上から睨まれる。それに戦力の問題もある」
提督 「ただでさえ金剛が沈み、第六駆逐隊が全滅した今、これ以上の戦力の喪失は避けねばならん」
長門 「だから工作艦の明石を解体し、戦艦の私を残した」
提督 「そうだ。残してやったことを感謝しろよ」
長門 「違うな」
提督 「何?」
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:38:34.49 ID:JzocI3J20
長門 「サイコ艤装の研究開発は大本営に報告を上げていない。報告書をまとめようとした時に深海棲艦の大侵攻を受けたからだ。だから大本営はサイコ艤装のことを知らない」
長門 「つまり提督の言うサイコ艤装の失敗に対する引責とは、大本営への示しなどではない。では何故明石を解体した?」
長門 「他の艦娘達、特にサイコ艤装運用艦となった第六駆逐隊と清霜への示しか? それともサイコ艤装が期待外れだったことに対して、提督は個人的に明石を恨んだのか?」
提督 「随分と俺に対して失礼な物言いだな」
提督 「確かにサイコ艤装の研究開発で資材は大分溶けたが、明石を解体したところで元は取れんし、俺の気分も晴れん」
長門 「ならば目的はサイコ艤装の封印か?」
長門 「艦娘は解体されると、艦娘としての能力とそれまでの記憶を失い只の人間になる」
提督 「副産物として資材を出してな」
長門 「サイコ艤装の設計図は工作艦の明石しか内容を理解出来ない。つまり明石さえ解体すればサイコ艤装の技術を封印出来る」
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:45:58.49 ID:JzocI3J20
提督 「それがご名答か否かをいちいちお前に明かす義務が俺にあるか?」
長門 「義務はない。だが私は真実を知りたい」
提督 「長門よぉ、お前達艦娘を増やす、もしくは性能を向上させるのに、人間様はそれはそれは苦労してきたんだ」
長門 「それは知っているつもりだ」
提督 「そうだったな。お前は知ってるよな」
長門 「どういう意味だ?」
長門 (何なのだ、この提督の下卑た笑みは?)
提督 「オークにチ○ポ突っ込まれた挙げ句失敗作ばかり産み落としてたお前ならなぁ!」
長門 「!?」
長門 「……」
長門 「貴様アッ!」
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:51:32.30 ID:JzocI3J20
提督 「止め……苦し……」
長門 「死にたくなければ、全部話せ……」
提督 「話……す……」
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:54:32.56 ID:JzocI3J20
提督 「ゲホゲホッ! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
提督 「締め殺されるかと思った……」
長門 「話して貰うぞ」
提督 「明石を解体した理由か?」
長門 「その前に聞きたいことがある」
長門 「私の過去をどうやって知った?」
提督 「大本営の極秘資料を無許可で覗いた。提督の俺でも本来閲覧が許されないレベルの機密だ。将官でも知っている者は殆ど居るまい。おそらくここの前任者の原も知らなかったろう」
提督 「軍の暗部そのものだからな」
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 23:08:54.59 ID:JzocI3J20
長門 「『無許可で覗いた』だと? 何故そんなマネをした?」
提督 「お前もよく知る男のせいだ」
提督 「原益三、俺はあいつが大嫌いだったんだよ」
提督 「原は士官学校の同期で、俺は常にあいつの後塵を拝していた。俺だってこの年で提督になったから出世は早いが、それでもあいつが妬ましかった。ブサイクの癖に優秀で上からも下からも好かれ、実際俺の同期で初めて鎮守府提督になったのは原だった」
提督 「だから原がくたばったと聞いた時は内心『ざまぁ』って思ったもんよ」
提督 「それから俺は原の後釜でここに着任した。上からは『志半ばにして英霊となった原の遺志を継ぐ者として、同期の君を抜擢した』と言われた。初めて提督になれたのは原のおかげかと思うと心中複雑でな」
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 23:16:01.66 ID:JzocI3J20
提督 「それでもって鎮守府に着任したら、お前達艦娘共から聞こえるのは原の死を惜しむ声ばかりだ。死んだあいつのせいで今だに劣等感に苛まされるのかと思うと情けなかった。だからお前達には辛く当たった」
提督 「見返してやりたい相手はとっくに海の底に沈んでいて、奴に俺の姿を見せて悔しい思いをさせることは出来ない」
提督 「原の生い立ちを知りたくなった。容姿以外であいつを見下せるものを見つけたかった。そしたら『クロスオーク』計画に辿り着いたんだよ。愕然としたぜ。笑っちまうよな」
提督 「俺は豚と艦娘の血が入ったバケモノに嫉妬してたのかってな!」
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 23:18:29.61 ID:JzocI3J20
今回はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
あと2回、3/28(木)夜と3/29(金)夜の投下で完結の予定です。
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/28(木) 23:55:00.26 ID:R59cxf/50
提督 「これで分かったろう。何故俺がお前を厚遇していたか、秘書艦として傍に置いたか」
提督 「お前はここの艦娘で唯一、原の死を悲しんでないように見えた」
提督 「母親なのにな」
長門 「あの男を我が子だと思ったことはない」
長門 「次の質問だ」
提督 「明石を解体した理由だな。いいだろう、話してやる」
提督 「結論から言うと人類を守る為だ」
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 00:03:02.63 ID:LIXiSMwA0
長門 (人類を……守る?)
提督 「長門の言う通り、明石の解体はサイコ艤装開発技術の封印が目的だ。それが人類を守ることになる理由だが……」
提督 「明石の奴、とんでもないこと抜かしやがった」
提督 「理論上はサイコ艤装の技術が人間にも転用出来るんだってよ!」
長門 「!?」
提督 「人間には艤装が扱えんが、なら人間に艤装を扱う適性がゼロかというとそういう訳では無い」
提督 「人間にも艤装を扱う為の適性が多少なりともあることはこれまでの研究で明らかになっている。ただ、問題が2つあった」
提督 「一つは人間と艤装を接続させる技術が無かったこと」
提督 「そしてもう一つは、仮に接続させたところで人間の適性では起動に必要な最低限のラインに届かないこと」
提督 「だがな、サイコ艤装でこの両方がいっぺんに解決するんだよ!」
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 00:20:41.75 ID:LIXiSMwA0
提督 「特筆すべきは適性の問題だ」
提督 「清霜一人では継戦時間が短かった超大和型サイコ艤装を、雷と電の二人を接続させることで長時間の作戦行動が可能となった。適性の低さは人数でカバー可能という訳だ」
提督 「明石が言うには、これが艦娘でなくて人間でも可能なんだとよ。一つの艤装に何人もの人間を接続すれば人間でも艤装を扱える。これの意味は大きいぞ」
提督 「深海棲艦が厄介なのは、通常兵器が通用せず、艦娘の艤装しか有効な兵器が存在しないからだ」
提督 「そして艤装を扱える唯一の存在である艦娘の増産が容易ではないことが、人類と深海棲艦との戦いを膠着状態にしている」
提督 「だがサイコ艤装の技術を人間に使えば、人類は文字通り人海戦術で深海棲艦を滅ぼせる」
提督 「深海棲艦との戦いで多少数が減ったとはいえ人間なんて何十億人も居るからな」
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 00:29:11.73 ID:LIXiSMwA0
長門 「サイコ艤装で人類は深海棲艦に勝てる。ならばその技術を封印する理由は何だ?」
提督 「問題は深海棲艦に勝った後よ」
提督 「断言する」
提督 「深海棲艦を滅ぼしたら、人類は人同士の戦争やテロでサイコ艤装を使う!」
提督 「自爆テロよりマシだとサイコ艤装を装備する人間」
提督 「拐われたり家族や恋人を人質に取られたりしてサイコ艤装を強制的に付けられる人間」
提督 「手足を切り落とされて艤装の部品にさせられた人間が殺し合う。そんな狂った世界が今後の人類の歴史でそれこそ文明が滅ぶまで続く」
提督 「アインシュタインの言葉にあるだろ。第三次世界大戦後の後、人は石と棍棒で戦うようになるって。少なくともそうなるまではサイコ艤装が人間同士の戦いで使われ続ける」
提督 「それならいっそ深海棲艦とパワーバランスが拮抗して一進一退してる今の方がマシだ」
提督 「俺はサイコ艤装の狂気から人類を守ったんだよ」
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 00:31:02.82 ID:LIXiSMwA0
今回はここまで。
次回、3/29夜の投下で遂に完結です。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/29(金) 23:06:48.17 ID:ZokhzJ7G0
ラストをどうするか決めかねてます。
最終投下を明日正午に延期します。それまでにラストまで書き上げます。
申し訳ありません。
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 12:00:08.66 ID:5F3CVNws0
昨晩は失礼しました。
これより最終投下です。
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 12:08:04.41 ID:5F3CVNws0
長門 「人には優しいのだな」
提督 「人を護るのが仕事だからな」
長門 「その優しさの半分でも我々に向けてくれれば」
提督 「さっきも言った通り、お前達がいつまでも原のことを吹っ切れんからだ」
長門 「だからと言って、人間が手足を切り落とされるのには反対しても、艦娘が手足を切り落とされるのはいいのか?」
提督 「お前達は人ではない」
長門 「それでも意思や感情はある!」
提督 「それに人間は清霜みたいに元に戻らん。一度手足が無くなれば終わりだ」
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 12:16:40.35 ID:5F3CVNws0
長門 「今の歪んだ世界が続くか、サイコ艤装がもたらす狂った世界になるか、果たしてどちらにより救いがあるか判断が難しいが……」
長門 「提督なりに、人間目線でよりマシな方を選択したのは理解した」
長門 「だが明石を解体したことは償って貰う」
提督 「償い?」
長門 (サイコ艤装の情報は私が明石にもたらした。私が明石を巻き込んだ。それでも……)
長門 (提督、私はあなたを許さない)
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 12:25:39.82 ID:5F3CVNws0
提督 「お前の自己満足に何故俺が付き合わされる?」
提督 「そもそも明石だってホッとしていたぞ」
提督 「あいつは最後にこう言ったんだ。『これでもう仲間の手足を切り落とさずに済みます』ってな」
長門 「……他に明石は何と?」
提督 「『こんなことになる位ならもっと早く提督の命に背くべきでした。今更解体されても六駆や清霜に顔向け出来ない』とか言ってたっけな……」
提督 「……何だその顔は……。おい、何か言え」
提督 「知っていることは話した!」
提督 「落ち着け、長門」
提督 「反逆や抗命は重罪だぞ!」
長門 「問題無い」
長門 「私が提督を殺すのは今回が初めてではない」
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