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男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」
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604 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:39:37.71 ID:fTpm7Ltg0
男(俺と女は宝飾店で宝玉を買ったのなら、対象は富裕層である可能性が高いと考えて、その周辺の高級店街を並んで歩く)
女「あの店は服屋か……」
男「しかし意外とアクセサリー身につけて出歩いているやつ多いな」
女「そういえばこの世界の流行ってどんな感じなんだろう……?」
男「気を付けて探さないと」
女「あのカップル手繋いで歩いている…………ね、ねえ私たちも……」
男「ん、あれは……」
男(向かいから歩いてくる長身の美人女性の胸元に青い宝石のネックレスを見つける)
男(すれ違い様に凝視して確認するが……いや、中に魔法陣の模様がない。ただの青い宝石か)
男(ん、あっちの女性のイヤリングは……そもそも紫の宝石だな)
男(場所柄か宝石をあしらったアクセサリーを身につけている人は多い。見落とさないように気を付けないと)
605 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:40:14.59 ID:fTpm7Ltg0
女「ねえ、男君」
男(と、そのとき隣を歩く女に服を引っ張られた)
男「……ん、どうした女?」
女「私、怒っているの。何でだか分かる?」
男(ツンとした雰囲気の女)
男(……放置していたんだがちゃんと言わないといけないか)
男「デート中に俺が他の女性に目移りしたからとでも言いたいんだろ」
女「分かっているならどうして?」
男「あのな、それはデートじゃないからに決まっているだろ」
男「俺たちは宝玉の探索のために偽装デートをしているんだ」
男「そりゃあ宝石を身につけている女性を見つけたら、宝玉じゃないか確認するために見るだろ?」
女「……。……。……そ、そうですね」
男(女は虚を突かれた表情になった後、目を逸らして同意する)
606 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:40:55.44 ID:fTpm7Ltg0
男(この反応、やっぱり探索のこと忘れていたな)
男(朝から『ごめん、遅れて』『いや、今来たところだ』のお約束のやりとりを要求されたり)
男(歩いている間もずっとはしゃいでいたり、女が浮かれていることは分かっていた)
男(もしかしたらそれら全てが楽しむフリであり、女がきちんと仕事をしている可能性も考えていたが、そんなこと無かったようだ)
男「………………」
男(だが、それもしょうがないことなのだろう)
男(魅了スキルにより現在女は俺に好意を持っている)
男(好意を持った異性とのデートが、例えフリだとしても楽しいことくらい、俺にだって分かる)
男(だからこそ俺は誤解しないように気を付けないと)
男(女のあの楽しんでいる姿は真実じゃないのだから)
男「デートのフリに意識が行き過ぎて、目的である宝玉の探索を疎かにしたら本末転倒だろ」
女「そうだね、これからは気を付ける」
男「じゃあ怪しまれないように適度にフリをしながらも、真面目に探索するぞ」
男(心を入れ替えた女と俺は探索を再開した)
607 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:41:30.04 ID:fTpm7Ltg0
男「………………」
男(高級店街を歩くこと数分後)
男(俺はその一角にある店に目が奪われていた)
男(そもそもだが俺はファッションというものに頓着がない)
男(元の世界でも最低限おかしくない服装はしていたが、着飾るようなこととは無縁だった)
男(人からの目を必要以上に気にするようならボッチになっていない)
男(そしてこの高級店街に並んでいる店は、服、カバン、靴などファッション関係がほとんどだった)
男(俺には違いがよく分からないブランドごとに店が出されている)
男(その並びに元の世界にあった駅前の巨大商業施設を思い出していた)
男(ああいうところも必要以上にファッション関係のショップが入っているとしか思えないんだよな)
男(だからなのか、その中で俺が唯一興味を引かれる店も同じだった)
男「本屋……か」
男(異世界で初めて見かけた本屋)
男(商業都市にもあったのかもしれないが、見て回ったりしなかったし)
608 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:42:04.71 ID:fTpm7Ltg0
男「…………」
男(正直中に入りたかった)
男(ボッチと本は切っても切れない関係だ)
男(教室でもとりあえず本を読んでおけば独りでいてもおかしくは思われることは少ない)
男(入学して一年ほどだったが、高校の図書室にあるほとんどの本を読んでいた)
男(そんな本の虫である俺にとってこの異世界の本屋は宝の宝庫であろう)
男(何せ、俺の知っている本は一つも存在しないだろうからだ)
男「…………いや」
男(そんな甘い誘惑を発する本屋から、俺は強靭な意志を以て視線を外した)
男(デート中ならいざ知らず、今は宝玉の探索中だ)
男(本屋の客層的に着飾るような人はいないだろう)
男(女に宝玉探索に力を入れるように説いておいて、俺が自分の興味を優先したら立場がない)
男(くっ……さらばだ、異世界の本屋よ)
609 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:42:31.37 ID:fTpm7Ltg0
男「…………」
男(………………ちらっ)
男(ふむ、巨弾ファンタジー新入荷? ファンタジー世界のファンタジーってどうなるんだ?)
男(新版魔法理論書……この世界における新書系だろう本も気になる)
男(あなたはこのトリックに必ず騙される……って、どこの世界も売り文句は一緒なんだな……)
女「男君。本屋に興味があるの?」
男「えっ!? い、いや、そんなこと……」
女「そんな否定してもさっきから本屋の前から進んでないし、横目で宣伝を追っているの丸分かりだし」
男「…………」
男(思っていたより露骨な態度になっていたようだ。強靭な意志で視線を外す、とは何だったのだろうか?)
610 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:43:08.28 ID:fTpm7Ltg0
女「気になるなら入ってみようよ」
男「っ……そ、そんなわけにはいかないだろ」
男「客層的に宝玉を身に付けている人が本屋にいるとは思えないからな。真面目に宝玉の探索を続けるぞ」
女「あー、そういうことね」
男(女が何やら勝手に納得している)
男(俺が『本屋が気になって気になってしょうがないけど、さっき真面目に捜索するように言った手前言い出せない』だろうこと分かってますよ、的な雰囲気だが、そんなことない。誤解だ)
男(何が誤解かって? ……とにかく誤解なのだ)
611 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:43:44.41 ID:fTpm7Ltg0
女「じゃあ、ほら。もしかしてってことはあると思うよ」
男「もしかして?」
女「人間なんて完全に合理的なわけじゃないんだからさ」
女「見せびらかすために宝石を身に付けるような人でも、ふらっと本屋に入る可能性も考えられるでしょ」
男「それは……」
女「うん、きっとそうだって。だからとりあえず入ってみよ」
男「あ、ちょっ……!」
男(女が俺を連れて強引に本屋に入る)
男(『とにかく本屋にさえ入れば男君も素直になるだろう、やれやれ世話が焼けるな』という思惑が見え隠れするが、そんなことない。間違っている)
男(何が間違いかって? ……とにかく間違いなのだ)
612 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:44:20.77 ID:fTpm7Ltg0
女「へえ、色んな本が置いてあるね。雰囲気も元の世界の本屋そっくり」
男「まあマンガも雑誌も無いみたいだから、どちらかというと図書館だな」
女「あ、言われてみれば。よく見てるね」
男「……宝玉を探すためだ」
男(そうだ、本屋に入ってしまった以上仕方ないからな)
男(女の言ったこの中に宝玉を身に付けた人がいる可能性も少ないとはいえ考えられる)
男(だから捜索のため、不本意だが本屋を回ることにしよう。うん)
男(絶対に本屋の魅力に負けたりしないんだからな……!)
数分後。
男「なるほどな……魔法やスキルが当たり前に存在すると創作にもこんな違いが……」
女「似たような本があっちに特設コーナー作られてたよ」
男「本当か!?」
女「うん。行ってみよ」
男(目を輝かせて本屋を回る俺がいた)
男(本屋の魅力には勝てなかったよ……)
613 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/27(木) 00:44:48.14 ID:fTpm7Ltg0
続く。
614 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/27(木) 01:00:29.64 ID:l6sakHzmo
乙ー
615 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/27(木) 06:56:43.08 ID:4KMxaKPVO
乙!
616 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:41:43.34 ID:hdOK/pSd0
乙、ありがとうございます。
投下します。
617 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:42:11.40 ID:hdOK/pSd0
店員「ありがとうございましたー」
男(店員に見送られて、俺と女は本屋を出る)
男「いやー、良い買い物したわ」
男(俺の手元には買い上げた本が2冊あった)
男(正直まだいくらでも買いたい本はあったのだが、この後の邪魔にならないように買い過ぎない方がいい、という女の助言で、泣く泣く厳選した2冊だった)
女「その本選ぶときの男君すごく真剣だったよね」
男「そうだったか?」
女「うん、何かに熱中している男君の姿、新鮮だったよ」
女「それだけ本が好きなんだね。今後は男君の弱点として活用させてもらおうっと」
男「何だよ、新鮮とか弱点とか……」
618 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:42:37.04 ID:hdOK/pSd0
女「あっ、そろそろランチの時間だね」
男「……もうそんな時間なのか」
女「本屋に二時間は居たし」
男「そんな長い時間付き合わせてしまっていたのか。すまん」
女「いいって、私も楽しかったし」
男(女は手を振って否定するが……本音なのか建て前なのか測りかねる)
男(本に囲まれると時間の経過を忘れてしまう。俺一人ならともかく、女が隣にいることを失念していた)
女「この辺りがレストラン街みたいだね。どこ入ろうか?」
男(俺たちは少し移動すると、辺りからおいしそうな匂いが漂う一角に辿り着く)
男(興味深い店が多いのか女は目移りしている)
男「…………」
男(そんな中俺は一つの店、汁に入った麺に野菜やチャーシューがトッピングされた料理……)
男(見た目まんまラーメンを提供する店に視線が引きつけられていた)
619 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:43:43.15 ID:hdOK/pSd0
女「そこに入ろうか、男君」
男「えっ!? い、いやそんなこと」
女「もうその反応は良いから。ラーメンも弱点なんだね」
男(俺の言葉を軽くスルーして、女は強引に入店する)
男(俺のわがままにより、デートらしさが欠片もないラーメン店に入った形になってしまう)
男(大変心苦しかったがラーメンの誘惑には勝てず、注文してやってきたものをウキウキした気持ちで食べ始めた訳だが)
男「何か違うな」
女「確かに……」
男(俺と同じものを注文した女も違和感を覚えていた)
男(目の前にあるのはラーメンに似ていて、俺の語彙力ではラーメンと表するしかないのだが……俺の知るラーメンとは明らかに違うのだ)
620 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:44:09.33 ID:hdOK/pSd0
男「麺が原因なのか?」
女「そうだね、微妙に太いし、ポソポソしているし」
男「どちらかというとうどんだな、これ。スープはしっかりラーメンなだけに違和感がすごい」
女「海が近いからか魚介系のスープだね」
男(ほどなくして、二人とも食べ終える)
男「おいしかったな。……でも、これをラーメンと呼ぶのは俺の主義に反する」
女「今まであまり感じてなかったけど、元の世界とこの異世界で文化が違って当然だもんね」
男「まあ、そういうところか」
男「……あーこのラーメンもどき食ったせいで余計ラーメン食べたくなってきた」
男「元の世界に戻るためにも、午後からは本腰入れて宝玉を探さないとな」
女「そうだね」
621 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:44:34.80 ID:hdOK/pSd0
男「よし、ここからは頑張るぞ」
男(本屋の中を探すためと言い訳したが、楽しんでしまい気分転換になったのは事実だ)
男(元の世界に戻りたい気持ちも思いがけないところから強まった)
男(これなら宝玉探しに集中できる)
男「結局午前中は本屋に入り浸りだったし、それ以外のエリアを回ることにするか」
女「…………」
男「って、女?」
男(隣の女に確認を取ったところ返事がない)
男(女は自分の手の平をじっと見つめていて俺の言葉が届いていないようだ)
男(何をしているのかと俺が見守る中、女は覚悟したように頷くと)
女「ね、ねえ。午後からは私たち手を繋いで歩かない?」
男「…………」
622 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:45:09.54 ID:hdOK/pSd0
女「いや、その、やっぱりデートっていうと手を繋いで歩くのが普通っていうか」
女「ほらあそこのカップルとか、そっちのカップルも手繋いでるし」
女「私たちもそうした方がデートっぽく見えて、宝玉探していても周りにも怪しまれないし!」
男(顔を真っ赤にした女の主張)
男(確かに午前中俺たちは隣同士とはいえ、微妙に距離を開けて歩いていた)
男「何を思い詰めているのかと心配したが……そんなことか」
女「や、やっぱりそんなこと早いよね! ご、ごめん、今の提案は忘れて――」
男「ほら、行くぞ」
男(俺は慌てだした女の手を捕まえて握る)
女「え、あ……男君の手が……」
男(女は呆けたように重なった自分の左手と俺の右手を見つめている)
623 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:45:37.53 ID:hdOK/pSd0
男「こんなの別に今さらだろ。お姫様抱っこだってされたってのに」
男(商業都市に向かう途中、女と一緒に空を飛んだのを思い出す)
女「お姫様抱っこ……あ、あれはちょっと暴走しちゃって……!」
男「その夜は酔って寝ていたから覚えてないかもしれないが、女を介抱するためにおぶったりしたしな」
女「そ、そうだけど………………って、私は寝ていたから知らないけどね!!」
男「……? まあだから手繋ぐくらい今さらだろ」
男「それに午前中は本屋に付き合ってもらったし、午後は女のしたいことに付き合うぞ」
男「まあ宝玉を探すついでにって形にはなってしまうけど」
男(本屋にいる間は宝玉の探索をすっかり忘れていたから、不公平であるという意味で付け加えた言葉だったが)
女「そ、それくらい全然構わないって!!」
男(女は全然気にしていないようだった)
624 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:46:12.54 ID:hdOK/pSd0
男(というわけで手を繋いで歩き始めた俺たちだったが)
男「…………」
女「…………」
男(開始数分でこの状況が俺の想定外であることが判明した)
男(女に語った言葉は俺の本心だ)
男(お姫様抱っこもおんぶもしたわけだし、今さら手を繋ぐくらいと思っていた)
男(だが、思えばそのどちらも一方的な行動だったのだ)
男(お姫様抱っこは女が暴走した結果で、俺の反応など気にしていなかった。おんぶのときは女が寝ていたため反応は無かった)
男(現在、女と繋ぐ手からは色々な情報が伝わってくる)
男(ちょっと体勢を崩した拍子に握る手に力がこもると、女も釣られて返してくる)
男(手を振ると一種の冗談と捉えたのか、女が大きく手を振り返す)
男(手汗をかいているのは緊張しているからだろうか。……いや、もしかしてこの手汗は俺のものなのか?)
625 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:46:40.99 ID:hdOK/pSd0
男「……手汗すごいぞ、女」
女「え……ほ、本当!? って、もうその指摘デリカシーないって!!」
男(女は一旦手を離すと、服にごしごしとすり付けて手汗を拭く)
男(その隙に俺も一応手汗を拭いておく)
女「ん、もう拭いたから」
男「……ああ」
男(差し出された手を俺は再び握り返す)
男(伝わり出す情報の中には……俺への好意が含まれてることには気づいている)
626 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:47:08.74 ID:hdOK/pSd0
男「………………」
男(それはそうだ)
男(女は魅了スキルにかかっているのだから)
男(作られた偽物の好意だ)
男(分かっている)
男(また勘違いして同じ失敗するつもりはない)
男(ただ……まあ今はデートのフリをしないといけないのだ)
男(だから応えるフリくらいはしていいだろう)
男(今は騙される、裏切られるも無い)
男(全部幻想なのだから)
女「あの店入ってみようよ、男君」
男「お、いいな」
男(女と俺は楽しげに目に付いた店に入ることにした)
627 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/28(金) 21:47:52.15 ID:hdOK/pSd0
続く。
次回でデートのフリパートもラストです。
年末年始もこのペースで投下できたらと思っています。
628 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/29(土) 05:32:24.99 ID:pJBh8aTAO
乙ー
629 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/29(土) 07:11:20.41 ID:bDnZhr1w0
乙!
630 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/29(土) 20:08:59.02 ID:IaPMTIYdO
乙
631 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:08:27.49 ID:328Z5VBK0
乙、ありがとうございます。
投下します。
632 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:08:59.13 ID:328Z5VBK0
男(手を繋ぎデートのフリをしながらも、宝玉探索を忘れずに進め、高級店街のめぼしいところは見て回れた)
男(しかし)
女「見つからなかったね、宝玉」
男「そうだな」
男(まあ宝飾店で最近買った客がいるという情報しか無かったのだ)
男(元々干し草の山から針一本を見つけるような無茶だとは自覚している)
男(分かってはいるが、それでも収穫が無いとなるとドッと疲労感を覚える)
男(時間はあっという間に過ぎ去っており、夕方となって日が傾き始めた)
男「女友と宿で落ち合う約束の時間まで後少し余裕があるけどどうするか?」
女「だったらデートの締めくくりに行きたいところがあるんだけど!」
男「……じゃあ探索の締めくくりにそこに行くか」
633 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:09:28.07 ID:328Z5VBK0
男「おお、絶景だな」
男(浜辺の丘。少し高台のここからは水平線に沈みゆく夕日を眺めることが出来た)
女「きれい……」
男(女は俺と手を繋いだままその光景に見惚れている)
男(周囲には俺たちと似たような状況の人がたくさんいた)
男(つまりはカップルが多いということだ)
男(まあ俺たちはデートのフリなのだが……)
男(だからこそ今はカップルに見間違われてもしょうがないというか)
男(実際客観的に見ると俺だってそう思うだろうし……)
634 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:10:13.74 ID:328Z5VBK0
男(だから)
男「こんなデートのフリなんてことするの今日限りだからな」
男(俺は女に釘を刺しておく)
女「私は明日以降もフリをしてもいいと思ってるよ。楽しかったし」
男「そうか。でも駄目だ」
女「男君も楽しかったなら意固地にならなくてもいいのに」
女「でも、分かったよ。次はデートのフリじゃなくって、本当のデートをしてもらえるように頑張るから」
男「……はいはい」
男(女の決意を俺は受け流す)
男(魅了スキルの結果、女が重傷を患っていることは今日一日で痛いほど再確認できた)
男(だったら俺はさっさと元の世界に戻れるように頑張るだけだ。そして一人でお気に入りのラーメン屋に行こう)
635 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:10:45.98 ID:328Z5VBK0
男(と、そんなやりとりをしていると、一組のカップルが目立つ行動を始めた)
男性「俺と結婚してください!!」
男(男性がパートナーの女性に片膝付いて手を差し出す)
男(どうやらプロポーズのようだ)
男(沈みゆく夕日を背景にプロポーズ。絵になる光景ではある)
男「が、よく衆人環視の状況でやるな……」
男(周囲のカップルにも聞こえていたようで俺と同じように関心を寄せている)
女性「そ、その……」
男(いきなりのプロポーズのせいか、それとも注目が集まったせいか、相手の女性は困惑している)
636 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:11:16.55 ID:328Z5VBK0
女「す、すごい場面にあっちゃったね……」
男(当然女も気づいていて経過を見守っている)
男「…………」
男(俺はというと少し別のことを考えていた)
男(プロポーズ……つまりはこれが了承されると結婚するわけだ)
男(俺の理想……お互いに信じあえるような恋愛の究極形は結婚だと思っている)
男(お互いに愛し合い、支え合おうと思うから結婚するはずだと)
男(もちろん見合い結婚とか政略結婚とかもあることを考えると全てがそうではないのは分かっている)
男(しかし、今現在結ばれようとしている関係は見た感じ理想の方だろう)
男(正直羨ましかった)
男(だが俺には妬む資格もない)
男(今のままの俺では絶対に叶わない)
男(だから変わろうと思ったんだ)
男(あの夜立てた誓いを確認する)
637 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:11:42.29 ID:328Z5VBK0
男「俺も……誰かを信じられるようにならないとな」
男(つい呟いたその言葉は、風に紛れるはずだったその言葉は)
女「え……?」
男(隣の少女に届いてしまった)
男「あ……」
男(手を繋げるほどの至近距離に人がいることを忘れていた)
638 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:12:26.69 ID:328Z5VBK0
女「男君、今の言葉って」
男「え、俺は何も言ってないぞ。空耳じゃないか?」
女「嘘だよ! 私、聞こえたもん。『誰かを信じられるようにならないとな』って」
男「声マネ下手だな」
男(俺のマネをしたつもりのようだが、全然合ってなかった)
女「そ、それはどうでもいいの! 大事なのは言葉の中身だよ!」
男「別に……ああやって信じ合う関係を作ろうとしている二人を見てちょっと気紛れしただけだ。本気で言ったわけじゃない」
男(反射的に俺は嘘まで吐いて否定していた)
男(そうだ、分かっているのだ)
男(頑なに誰も信じない俺なんかが抱くには大それた希望だって)
男(女に馬鹿にされる前に、防衛行動として自虐する)
男(いつもやっていることだ)
男(自分を守るために自分を否定する)
男(そうやって俺はいつまでだって変わらないのだ)
男(変わろうとする自分を、自分が否定するから)
639 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:12:52.56 ID:328Z5VBK0
女「……もし、本当だったなら私は応援するよ」
男「え?」
女「誰かを信じられるようになるのは幸せへの一歩だから。一人よりも、二人の方が幸せになれるから」
男「…………」
男(自分でさえ否定した俺を……女は肯定する)
女「良かった……男君も本当は変わりたいと思ってたんだね」
男「ち、違……」
女「それくらい私でも嘘って分かるよ」
男「…………」
女「大丈夫、男君ならすぐに変われるって」
640 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:13:20.41 ID:328Z5VBK0
男(何を根拠にそんなことを言うのか)
男(……いや、そんなもの無いのだろう)
男(根拠が無くとも思う。それこそが信じるということだ)
男(女は俺を信じているのだ)
男「…………」
男(その思いに何を返していいのか分からなくなって――)
641 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:13:49.72 ID:328Z5VBK0
男性「受け取ってください」
男(そのとき、プロポーズをしていたカップルの方に動きがあった)
男(男性が指輪を取り出す)
女性「え……えっ?」
男(女性は戸惑いながらも拒むことなく左手を差し出す)
男(その薬指に男性が指輪をはめて)
男性「返事……聞かせてもらえますか?」
女性「……嬉しい」
男(女性はその感触でようやく現実だと認識できたのか、感情が溢れ出る)
642 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:14:16.96 ID:328Z5VBK0
モブ1「ヒューヒュー!」
モブ2「お幸せにな!」
モブ3「いいなあ……」
男(周囲のカップルがはやし立てたり、祝福を願ったり、羨望を向ける)
男「良かったな」
女「うんうん」
男(俺と女もつい今し方のやりとりも忘れてそちらを見ている中)
女性「嬉しい……っ!」
男(喜びが爆発したその女性は左手を掲げ上げると)
男(中に魔法陣が刻まれた青い宝石が設えられた指輪が夕日に反射してきらりと光った)
643 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:14:52.38 ID:328Z5VBK0
『中に魔法陣が刻まれた青い宝石』が設えられた指輪が夕日に反射してきらりと光った。
男「…………………………………………は?」
男(思わず間抜けな声が漏れる)
女「……ね、ねえ男君。あれって」
男(女も気づいたようだ)
男(ドラマのワンシーンのような状況に周囲が盛り上がっていく中、俺たちだけ急激に現実に引き戻される)
男(それもそのはずだ)
男(見間違えようもなく……あの婚約指輪に付けられた宝石は俺たちの求める宝玉なのだから)
644 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:15:42.79 ID:328Z5VBK0
男「…………」
男(可能性は最初からあったのだ)
女友『ブローチにネックレス、指輪やイヤリング……宝石を使ったものって色々ありますからね』
男(この一週間ほど駆けずり回って探していた対象がようやく見つかった)
男(しかし、それを素直に喜べなかった)
男(何故ならば、状況は考えられる限り最悪だったから)
男(俺たちは見つかった宝玉を金を積んで売ってもらおうと思っていた)
男(だが、どうだろう)
男(婚約指輪とはいかほどの金を積み上げれば譲ってもらえるのだろうか?)
男「まあ……プライスレスだよなあ……」
男(嬉し涙まで流し始めた女性を見て、俺はそう判断した)
645 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/12/30(日) 12:16:26.40 ID:328Z5VBK0
続く。
縦軸に移行します。
646 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/30(日) 14:23:01.06 ID:b+cVVxDn0
乙。
婚約指輪か!そう来たか!
647 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/12/30(日) 16:24:33.76 ID:8Jj0VZ+oO
乙ー
648 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/30(日) 18:37:22.26 ID:NgD/Eq0/0
乙!
649 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:34:05.29 ID:a/9llj9c0
乙、ありがとうございます。
>>646
嬉しい反応ありがとうございます
投下します。
650 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:35:16.80 ID:a/9llj9c0
女友「やっと帰ってきましたか。約束の時間はとうに過ぎていますよ、二人とも」
男「すまん」
女「ごめんね、女友」
男(日も沈み、辺りもすっかり暗くなったころ俺と女が宿屋に戻ると、女友に遅刻を怒られた)
女友「まあいいですけどね。それほど盛り上がったということでしょう? どのような進展があったんですか?」
男(何故かニヤニヤして聞き出す女友に俺は告げる)
男「ああ。宝玉の持ち主が見つかった。その情報を集めていて遅くなったんだ」
女友「……?」
651 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:37:35.48 ID:a/9llj9c0
女「女友。私たちはデートのためじゃなくて、宝玉を探索するために出掛けたんだよ」
女友「それは建前で…………あれ、本当に見つかったんですか?」
男「実物をこの目で見ることが出来た。が、少々厄介な状況になっていてな」
女友「はあ、そうなんですか…………なるほど……」
女「というわけで今から報告したいけど……大丈夫、女友?」
女友「……ちょっと待ってくださいね。今真面目モードに切り替えますので」
男(すう……はあ……、と女友は深呼吸を繰り返す)
男(真面目モードに切り替えるって、じゃあ今はどんなモードだったんだ?)
女友「……お待たせしました。宝玉が見つかったんですね。話を聞かせてください」
男「ああ」
男(気になったが流石の切り替えぶりに俺は混ぜ返すことなくさっさと本題を切り出した)
652 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:39:02.93 ID:a/9llj9c0
女友「なるほど。婚約指輪に取り付けられた宝玉ですか。……かなり厄介な状況ですね」
男(女友は話を聞いただけで要点を理解したようだ)
男「一応裏付けは取った。宝飾店で俺たちに『宝玉が最近売れたけど、どんなアクセサリーだったかは覚えていない』って情報を提供してくれた客がいただろ?」
男「その人に指輪だったんじゃないかって確認したところ『……そうそう! それよ! 指輪だったわ!』という反応をもらえた」
女「つまりこの町にあった宝玉で確定ってことだね」
男(これでようやく一週間話だけを頼りに追い続けた線が、実物と結ばれたわけだ)
男(それは素直に喜ばしいことである)
男(しかし、見つかりさえすれば後は楽勝という話だったのだが、残念ながらそうならなかった)
女「よりにもよって婚約指輪だよ。二人の絆の証じゃん。私だったら絶対手放さないって」
女友「そうですね……聞いた話によるとその女性も喜んでいるみたいですし……」
男(女と女友の言うとおりだ)
男(現在宝玉ゲットに立ちふさがっている問題は、プライスレスで大事なものをどのように譲ってもらうかというもの)
男(……簡単な方法が無いわけではない)
653 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:40:13.52 ID:a/9llj9c0
男「一応、俺の魅了スキルをあの女性にかけて、譲ってもらうように命令するって方法はあるぞ」
男(女性は俺から見て魅了スキルの対象『魅力的な異性』に当てはまる容姿だった)
男(つまりこの方法を取る場合の障害物は存在しない)
男(しかし、この方法における問題はもっと根本的なところにある)
女「……本気で言ってるなら怒るよ、男君」
男「冗談に決まってるだろ、だから一応って頭に付けたんだ」
男(女の怒気に俺は両手を上げて争う意思が無いことを示す)
男(つまるところ俺の提案は婚約指輪の強盗でしかないからだ)
男(婚約している二人の仲を引き裂きかねない行為)
男(女が世界を救うためなら犯罪も仕方ないとはならないことは最初の村で確認済みである)
男(それに俺だってあの幸せそうな二人を引き裂くのは心苦しい)
654 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:42:00.18 ID:a/9llj9c0
女友「そうですね、もし本気だったならどのようにおしおきするか迷うところでした」
男(女友も物騒なことを言い出す)
男「だから一応そういう手段もあるっていうだけの話だ。悪かったから聞き流してくれ」
男(俺は全面降伏する)
女友「男さんの方法はナンセンスですが……しかし、他の方法が思いつかないのも事実ですね」
女「否定するだけで代案を出さないのは良くないことだけど……私も……」
男「別の似た青い宝石を見つけて、宝玉と入れ替えるっていうのはどうだ?」
女友「宝飾店を見て回ったときに分かりましたが、あのような魔法陣の浮かんだ宝石はかなり特徴的みたいです」
女友「この異世界でも宝玉以外に存在しないみたいですし、入れ替えはバレるでしょうね」
女「大事なものだから別物になったってだけで大騒動だよ」
男「んー駄目か」
男(女友と女も否定したくてしているわけではないのだろう)
男(状況が厳しいからそうなってしまうってことは分かっている)
655 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:43:20.60 ID:a/9llj9c0
男「やっぱり宝玉が大事なもので譲れないものになっている時点で、手に入れることは不可能じゃないか?」
男(ここまで来て諦めたくはないのだが、俺に出せる案はこれ以上ない)
女「うーん……そうかも」
男(女も同意する)
女友「……結論を出すのはちょっと待ってもらえますか」
男(と、女友だけがその流れに反発する)
男「何か考えがあるのか?」
女友「いえ、具体的には」
女友「しかし私はこの事態を二人の話で聞いただけですので、総合的な判断を下すには情報が足りないのです」
656 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:44:54.33 ID:a/9llj9c0
男「つまり情報収集をしたいというわけか」
女友「はい。そもそもなのですが、その婚約した二人の素性は分かっているんですか?」
男「それなら宝玉を持っていると確認した後に調べたんだが……プロポーズした男性は分からなくてな」
男「婚約指輪をもらった女性は有名だからかすぐに分かった」
男「観光の町において一番大きな別荘を構えている家の一人娘、お嬢様だそうだ」
男(この点も宝玉を譲ってもらう一つの問題となっている)
男(もしお金に困っている人なら大金の暴力を振るうことも最悪考えられたが、相手が大富豪では無理だ)
女友「では明日その方に会いに行きましょう」
男「俺たちも本人と直接話をしたわけではないし、一回会って話すのは賛成だ」
男「だが相手は大富豪だぞ。アポ取れるのか?」
女友「取れるのかではなく、取るんですよ。一つ案があります」
男(女友は自信満々に言い切った)
657 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/01(火) 22:47:22.98 ID:a/9llj9c0
続く。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
658 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/01/01(火) 22:51:23.91 ID:fR75mwGyo
乙ー
659 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/02(水) 00:42:50.62 ID:XFibHNrRO
乙
660 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/02(水) 14:25:19.79 ID:7UJ5uOv70
乙!
明けましておめでとうございます。
661 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/03(木) 20:44:14.81 ID:Rh13+q0H0
あけおめ乙!
662 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:17:14.43 ID:o33qOcuu0
乙にあけおめ返信ありがとうございます。
投下します。
663 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:17:44.88 ID:o33qOcuu0
女(翌朝)
女(私たち四人は大富豪の別荘敷地内の庭を歩いていた)
男「古参商会の伝手を使うか……なるほど、考えたな」
女友「すごいのは大富豪のお得意さんになっていた商会の方ですよ」
女(女友が四人目に話を振る)
商会員「会長の命令なので許可しますが、悪い印象を与えないように気を付けてください」
女(ともに歩く古参商会の商会員の人に注意を受けた)
664 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:18:51.01 ID:o33qOcuu0
女(商業都市で私たちがスパイ活動を解決した古参商会)
女(商会長はその際恩義を感じていたようで、宝玉集めに全面的な協力する事を約束してくれた)
女(そこで女友はこの観光の町にある古参商会の支店を朝から訪問)
女(婚約指輪に設えられた宝玉の持ち主、お嬢様さんにパイプが無いか聞いたところ)
女(ちょうど御用聞きに伺う予定があったということで、それに付いていってるわけだった)
男「ていうか今さらだが御用聞き、って何だ?」
女友「簡単に言えば店の方から出向いて、お金持ちなどのお得意様に注文を聞くってことですよ」
男「客が店に行くんじゃなくて、店の方から客に行くのか」
女友「そこまでするほど大金を使ってくれる上客だからですよ」
女友「日本でも百貨店などが現在もやっているところがあります。私の家にも来ていましたね」
665 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:19:34.77 ID:o33qOcuu0
男「とんと縁が無い話だな……って、そういえば女友の家は金持ちだったか」
女友「ええ、もうお金だけは腐るほどある家ですよ。それに釣られたのか色々腐っている家です」
男「えっと……」
女友「愚痴っぽくなりましたね」
女友「大丈夫ですよ、今はお金よりも大事なもの……愛に気づきましたから♪」
男「……っ! って、抱きつくな、女友! ああもう、この感じ久しぶりだな!!?」
女(女友がふざけた感じで男君に抱きつく)
女(思わず発してしまった暗い言葉を誤魔化すためであることは端から見ていた私にも分かった)
女「二人とも離れないと。そろそろお屋敷に付くよ」
男「ほら、女も言ってるじゃねえか!」
女友「もう……仕方ないですね」
女(私の注意に二人が離れると)
執事「お待ちしておりました、古参商会の方ですね。ご足労ありがとうございます」
女(ちょうど屋敷から出てきた執事に私たちは迎え入れられた)
666 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:20:22.34 ID:o33qOcuu0
女(私たち四人は執事に連れられて、執務室へと案内される)
女(男君、私、女友は元々御用聞きに行くつもりだった商会員に付き従う見習いという設定だ)
女(本来の仕事をその商会員の人がこなしていく)
女(すると目的の人がやってきた)
お嬢様「爺、頼みたいことが……って、この人たちは」
執事「お嬢様、古参商会の人です」
お嬢様「あら、もう来てたのね! 色々欲しいものがあったところですの!」
女(婚約指輪の持ち主、この別荘の主の一人娘、お嬢様さんだ)
女(毎回御用聞きに窺う度に、色々と注文してもらうと聞いていたので、この展開は想定済みだった)
667 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:21:01.52 ID:o33qOcuu0
お嬢様「指輪に合う新しいドレスやアクセサリーでしょ。それに調度品一式。あとあの人も好きな花束ね。他には……」
女(お嬢様さんからマシンガンのように告げられる要望を商会員の人はメモしていく)
お嬢様「……と、まあそんなところね! 細かい調整は任せたわよ!」
執事「了解しました、お嬢様」
女(執事が頷くと、商会員と話し合いに入る)
女(商会員が要望にあった品物を提示して、執事がそれでいいのか確認するという作業のようだ)
女友「お嬢様」
女(そのタイミングで女友が話しかける)
お嬢様「……ん、そういえばあなたたち誰?」
女(どうやら私たちは認識されていなかったようだ)
女友「古参商会に務める見習いです。毎度贔屓にしてもらいありがとうございます」
お嬢様「へえ……」
女(あまり興味なさげな様子だ)
668 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:21:39.41 ID:o33qOcuu0
女友「ところでお嬢様。今日はご機嫌良いみたいですか、何かあったのでしょうか?」
女(女友が餌を撒く。もちろん昨日のプロポーズによると知っていて、そんな聞き方をしているのだ)
お嬢様「あ、やっぱり分かる? ワタクシ、昨日プロポーズされたのよ!」
女(ウキウキで左手にはめられた指輪を見せるお嬢様さん。宝玉もそれに付いている)
女友「まあっ! それはそれは。おめでとうございます」
お嬢様「ふふん、いいってことよ」
女(女友のリアクションに気を良くするお嬢様さん。それを見て会話を誘導していく)
女友「相手はお嬢様お嬢様のお眼鏡に叶ったと考えると、素敵な方なんですか?」
お嬢様「そうよ。最初会ったときも下賤な輩に絡まれていたところを颯爽と助けてくださってね」
お嬢様「最初はどうでも良かったんですけど、その後も行く先々でバッタリと会って」
お嬢様「困っているところを助けてもらったり、ワタクシのお願いを二つ返事で答えてくれたり……」
お嬢様「次第に良い関係になって、それで昨日はあんなロマンチックなプロポーズをしてくれた」
お嬢様「あの人はワタクシの王子様なのよ!」
女(王子様……確かに昨日のプロポーズの雰囲気は最高だったなあ)
女(私も男君に夕日をバックにプロポーズをされてみたい)
669 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:22:56.18 ID:o33qOcuu0
執事「お嬢様、確認終わりました。それで本来は何か用があってこの執務室に来たのでは?」
お嬢様「あ、そうそう。お願いしようと思ってきたのよ」
お嬢様「ワタクシの隣部屋に客室があるでしょ。あそこをあの人の部屋にするから今日頼んだもので飾り付けといて」
執事「分かりました」
お嬢様「じゃあそういうことだから」
女(お嬢様さんは執事にさらっと重いお願いすると、その場を去っていく)
女(残った執事さんが私たちに声をかける)
執事「すいません、お三方。お嬢様に何かワガママを言われませんでしたか」
女友「いえ、楽しくおしゃべりしていただけですよ」
執事「そうですか……ならば良かったです」
女(女友の返事に、ハンカチを取り出して汗を額の汗を拭く執事さん)
670 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:23:37.88 ID:o33qOcuu0
女友「言いにくいことでしょうが……お嬢様は常日頃からワガママを言うお方なんですか?」
執事「……ええ。やれ気に入らないと使用人に文句を言うのは毎日」
執事「肉を提供する店を選び入ったのに、注文の品が出てきたところで『やっぱり今日は魚の気分』なんて言い出すこともありました」
執事「部屋の飾り付けくらいは朝飯前の要望ですな」
女友「そうですか……ではそんなお嬢様にプロポーズするお方が現れて一安心というところですか?」
執事「それはその通りでございます」
執事「旦那様が娘のためにと選んだ方と見合いを何回かしたのですが、お相手に文句ばかりで今まで成立しませんでしたので」
執事「聞けばお相手はお嬢様のワガママにも嫌な顔一つせず聞いてくださる、聖人のような方だと聞いております」
執事「旦那様に顔見せもまだですし、私もまだ会ったことは無いですが、お嬢様が気に入った方となれば大丈夫でしょう」
執事「近いうちに盛大な結婚式が行うときはまた古参商会にお世話になるかもしれません」
執事「……いやはや幼い頃から世話をさせてもらった身としては感慨深いですな」
671 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:24:13.64 ID:o33qOcuu0
女(ではここらへんで、と去っていく執事を見送る私たち)
女(本来の目的、御用聞きも終わったということで、情報収集もここまでだろう)
女(私はお嬢様さん、執事さん、二人が話したことをまとめる)
女(婚約指輪の宝玉の持ち主であるお嬢様さんは、大富豪のワガママばかりな一人娘)
女(そんな彼女に現れた運命の相手)
女(お嬢様さんの困ったところに颯爽と現れ、またワガママにも嫌な顔せず答える、まるで少女マンガに出てくるヒーローのような人)
女(その方からプロポーズを受けて、お嬢様さんも幸せの絶頂と)
女(つまりこの婚約は皆から祝福されていて……その証である婚約指輪の大切さがよく分かった)
女(どうにか譲ってもらう方法を考えるために情報収集に来たのに、逆の結果となってしまった)
女(これではどうにもならない)
女(二人も同じ考えだろうと見てみると――)
672 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:24:56.85 ID:o33qOcuu0
女友「……男さんはどう思いました、話を聞いていて」
男「そうだな、次は事業って感じじゃないか?」
女友「ふふっ、それでは50点です。『夢』の方がこの場合は合っていますよ」
男「なるほど……そっちの方がロマンチックだな」
女(何やら謎な会話が交わされていた)
女「えっと……どういうこと、二人とも?」
女(私の質問には男君が答えた)
男「分かりやすく言うと、宝玉をゲットするための道筋が立ってしまったってことだ」
男「本当残念なことにな」
女「……え!?」
女(昨日とは真逆のことを言われる)
女(つまり今日の情報によって反転したのだろう)
女(でも何が原因でそうなったのか私には分からなかったし……)
女(それに宝玉をゲットできるなら良いことのはずなのに、残念と言う男君の表情は暗かった)
673 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/03(木) 23:26:19.11 ID:o33qOcuu0
続く。
まあピンとくる方は来てると思います。次回答え合わせ。
674 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/04(金) 00:25:25.51 ID:/9vrqsxH0
乙!
675 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/01/04(金) 01:11:52.15 ID:JIcgrqsNO
乙ー
676 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 06:31:44.95 ID:4Tk4/d1r0
乙
女は割とスペック高いかと思ってたらある部分ポンコツだな
677 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 19:19:54.21 ID:3uBhknL70
乙
678 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:41:41.01 ID:FqZsGw7m0
乙、ありがとうございます。
>>676
ポンコツっ子かわいい。
投下します。
679 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:42:27.25 ID:FqZsGw7m0
男(その夜、俺たちは酒場にやってきていた)
男(昼間は海で遊んでいた観光客が、夜はこの場所に移り飲めや騒げやとしている場所である)
男(現在の俺たちの目的はお嬢様さんにプロポーズした男性の情報だった)
男(人が集まるこの場所で聞き込みを行う)
男(しかし)
女「依然として掴めないね……」
男「まあ期待はしてなかったけどな」
女友「予想通りですね」
男(女は落ち込むが、俺と女友にとっては想定の範囲内であった)
男(そうだ、おそらくプロポーズした男性の素性は……)
680 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:42:54.64 ID:FqZsGw7m0
女「でも、ゲットできればお手柄なんだよね?」
男「そうだが……望みは薄いぞ」
女「0じゃないだけマシだよ! よし、私もう一回聞き込みに行ってくるね!」
男(めげずに頑張ろうとする女)
男「…………」
男(昼間別荘でお嬢様さんと執事さんに話を聞いて、浮かび上がった可能性)
男(宝玉をゲットできるかもしれないその可能性について、女には未だ詳しく話していなかった)
男(話せない理由をまだ憶測でしかないからと言い訳したが……)
男(本当は懲りずにこんなことを思いつく自分が嫌になったからだ)
男(しかし、女はそんな俺のあやふやな言葉を信じて情報収集を頑張っている)
男(逆の立場だったら、思わせぶりにしていないでさっさと話せと詰め寄っているだろう)
男(なのに何も聞かないのは……女が俺のことを信じているからだ)
681 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:43:35.45 ID:FqZsGw7m0
男「ちょっと待て、女」
女「ん、何?」
男「女友、任せて悪いが全部話しておいてくれないか?」
男(女友も俺と同じことを思いついているようだ。話し手は務まるだろう)
女友「私に丸投げですか? 酷いですね」
男「すまん……ちょっとそれとは別のことを考えたくてな、一人にさせてくれ。この酒場からは出ないつもりだから」
女友「はあ……分かりました。大体いざとなれば魅了スキルの命令で男さんの言うことには逆らえませんし」
男「恩に着る。それともう一つ悪いが、聴覚を強化する魔法ってのがあったらかけてもらえないか?」
女友「ありますけど…………男さん自身でオンオフハイロウの調整は出来ないので、あまり大きな音を聞かないように注意してくださいね」
女友「というわけで……発動、『犬の耳(ドッグイヤー)』」
男「助かる」
男(女友は詳しいことを聞かずに魔法を使ってくれる。手元から発された光を浴びた後、俺は二人の側を離れた)
682 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:44:11.76 ID:FqZsGw7m0
男(この酒場の広いフロアには席が無く、客たちが自由に立ち飲みしている)
男(中央は一段盛り上がったステージのようになっていて、そこで客や酒場専属のダンサーが踊ったりして注目を集めている)
男(落ち着きたい人は壁際のカウンターバーで飲むことが出来る。美人のバーテンダーがカクテルを客に振る舞う姿が見えた)
男(と、そのように客が自由に行き交う店のため、俺が部屋の隅に膝を抱えて座り込んでいても目立つことは無かった)
男「………………」
男(考えるのは昨日、デートのフリ終わり際にあった俺の失言から始まった一幕だ)
男『誰かを信じられるようにならないとな』
女『大丈夫、男君ならすぐに変われるって』
男(変わりたいと思った自分を自分で否定した俺に、女は変われると俺を肯定した)
男(女が俺のことを信じているからの言葉だろう)
男(女の気持ちに何を返していいのか分からなくなって、直後宝玉が見つかったことによりうやむやになっていたが、ずっと考えていた)
男(女は俺のことを信じている)
男(だったら、俺は女のことをどう思ってるのか?)
683 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:44:55.24 ID:FqZsGw7m0
男(パーティーを組んだ経緯を思い出す)
男(イケメンの襲撃により命の危機に陥った俺は、戦闘力0である弱点を補うために女と組んだ)
男(暴発により魅了スキルをかけてしまったことや)
男(竜闘士というクラスメイトの中でも最強の力というものに引かれた部分が大きかったが)
男(それ以外にも要因はあった)
男(あのとき女には魅了スキルによる『俺のことを追うな』という命令がかかっていた)
男(それにより俺を助けに来ることが出来なかったはずなのに助けに来た)
男(つまり魅了スキルの外で女が俺を守ろうと思ったのだ)
男(それがクラス委員長による義務感なのか、もしかしたら他の理由によるものなのかは分からない)
男(それでもこの一例により、女は俺に少なくとも危害を加えることはないと『信用』している)
684 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:45:25.83 ID:FqZsGw7m0
男(だが、俺は女を『信頼』することが出来ないでいる)
男(ここまで一緒に旅をして、商業都市ではあそこまで人を信じる姿を見て、こんな俺でも変われると言ってくれた彼女を……)
男(信頼出来ないどころか、疑っているのだ)
男(どうして俺なんかが変われると言うのか?)
男(何か裏があるのではないのか?)
男(本当は馬鹿にしているのではないか?
男(そんな思いが昨日からずっと止まらない)
男(馬鹿らしいことは分かっている)
男(今までの女の様子を見るにそんなことはないと思う自分もいる)
男(だが、女の輝かしいばかりの信じる心に照らされるようにして、俺の影のように暗い猜疑心が浮かび上がるのだ)
685 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:46:04.65 ID:FqZsGw7m0
男「ははっ……やっぱり俺は変われねえよ……」
男(信じてくれた人間にさえこんな仕打ちをするやつなんだ)
男(これでは昨日のプロポーズにより婚約した二人のような、信じ合う関係は作れないだろう)
男(しかし開き直りだがそんな関係、簡単に作れるものではないと思うのだ)
男(昨日、俺の恋愛観における理想だとした結婚)
男(だが、日本での離婚率は30%ほどあった。夫婦が三組いれば一組は離婚する)
男(やむを得ない事情によるものもあるだろう)
男(しかし、大部分が信じ合うと決めたはずの二人のどちらかが裏切ったことによるはずだ)
男(つまり裏切りなんてありふれているわけだ)
男(だったら信じるより最初から疑っていた方が効率がいいではないか)
男(そんな俺の考えを証明するように――――話し声が聞こえ始める)
686 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:46:46.08 ID:FqZsGw7m0
男(酒場の隅に座り込んでいる俺だが、それには一つ狙いがあった)
男(というのもこの酒場の建物の構造を最初から怪しいと睨んでいたのだ)
男(外から見た大きさと、内部の広さが一致していない)
男(つまり隠し部屋なるものが存在すると踏んでいた)
男(用途は広さからしておそらくVIPルームだろう)
男(一般客が入るこのホールとは出入り口を別にするその部屋は……どのような存在が利用するのだろうか?)
男(建物の老朽化により壁に入ったひび割れ)
男(そこから壁の向こうの話し声を、女友の魔法によって強化された聴覚が捉える)
男(駄目で元々だったのだが……どうやら大当たりを引いたようだった)
687 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:47:29.53 ID:FqZsGw7m0
部下「それにしても兄貴があのワガママ娘、お嬢様と結婚っすか」
男性「ああ、俺がピンチを救うナイトを演出するために絡むチンピラ役ご苦労だったな」
部下「もう慣れた役割っす。しかしプロポーズにあんな高い指輪を送って、無駄な出費じゃないっすか?」
男性「おまえは女心が分かってないな。相手は大富豪の娘だ」
男性「あれほどのものを送らないとこっちが本気だと思ってくれないだろうよ。それにどうせ使った分は回収するしな」
部下「じゃあ計画も次で最終段階っすか」
男性「ああ。『すまない……夢が叶うチャンスが回ってきたんだ。そのためには金が必要で……いや、君に迷惑をかけるつもりはない。ただしばらく身を粉にして働く必要があるから、結婚は少し待ってくれ』とか言えば、あっちから金を出すだろうよ!」
男性→詐欺師「それで存分にふんだくってからトンズラだ!」
部下「毎回毎回、ワルっすね」
詐欺師「荷担するおまえらも一緒だろうよ。つうわけで今日は計画成功の前祝いだ。おまえらじゃんじゃん頼んでいいぜ!」
部下たち「「「おおおーーっ!!」」」
688 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:48:20.80 ID:FqZsGw7m0
男「………………」
男(この世はこんなもんだ)
男(だから人なんて信じられないんだ)
689 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/05(土) 22:50:21.67 ID:FqZsGw7m0
続く。
690 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 23:25:28.46 ID:+7LyyGr/o
乙です
男の考えが確信に変わっても苦い結果になりそうだなぁ
691 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 23:33:04.87 ID:/SIaK3yM0
乙!
692 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/01/06(日) 00:22:06.48 ID:By9XnqOUO
乙ー
693 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/06(日) 12:54:27.44 ID:3tozwfbg0
乙
694 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:30:07.39 ID:d3hCy8e20
乙、ありがとうございます。
>>690
どうなるのでしょうか(まだ何となくしか考えていない)
投下します。
695 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:30:55.94 ID:d3hCy8e20
女「結婚詐欺!?」
女友「しっ! 誰が聞いているか分からないんですから、あまり大きな声を出さないでください」
女(私たちはプロポーズした男性の情報を収集していた)
女(この酒場でも空振りだったが、さらに頑張ろうとしたところ)
女(男君がずっと黙っていた宝玉をゲットするための方法を女友から私に話すように頼んだ)
女(そして話された内容が……お嬢様が結婚詐欺にかかっているのではないか、というものだった)
女「ご、ごめん……でもどういうこと?」
女友「都合が良すぎるんですよ。お嬢様がピンチに陥ったところを助けに入り」
女友「その後も行くところに現れて、どんなワガママも許すなんて男性」
女「でも少女マンガとかだと良くある話じゃん」
女友「だからですよ。創作にしか存在しないような男性が、現実にいるはずないでしょう?」
女「それは偏見だと思うけど……」
女(まあ女友が疑う気持ちは分かった)
696 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:32:41.73 ID:d3hCy8e20
女友「だったらその男性は何が目的なのか……お嬢様は大富豪の娘です」
女友「そのお金を狙っているのではないかと私と男さんも読んだわけです」
女「えっと……でも、証拠はないんだよね?」
女友「はい。だから女に話すのは躊躇っていたのです」
女友「男性の素性がクロかったり、最悪お嬢様が結婚する前にお金を要求されたりしたら、そのときに話そうとは思っていたのですが」
女「なるほど……でも、それでどうして宝玉が手に入るの?」
女友「もし結婚詐欺が真実だとしたら、それを暴くことで婚約は破談になるでしょう?」
女友「そしたら婚約指輪は大事なものじゃなくなります」
女友「お嬢様の性格的にこんなものいらないって投げ捨てるでしょうから、それをキャッチすれば手に入ると」
697 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:33:11.10 ID:d3hCy8e20
女「それって二人の仲を引き裂いて宝玉を手に入れようってことでしょ? そういうの感心しないな」
女友「ですがもし結婚詐欺が本当だとしたら、二人の仲はそもそも偽りであったということでしょう?」
女友「騙されているお嬢様を助けるということになりませんか?」
女「……女友の言いたいことは分かったよ。でも私は二人の仲が本物だと信じているから」
女(あの夕日を背景にしたプロポーズが嘘だったなんて……思いたくない)
女友「その気持ちは否定しません。ただ証拠が出てきたときは折れてもらえると助かります」
女「……分かった」
女(女友は最大限私の思いを尊重してくれた)
698 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:33:40.07 ID:d3hCy8e20
女「男君が私にこの考えを話したがらなかった理由が分かったよ」
女「商業都市の時と同じなんだね、信じ合っている二人を疑いの目を向けるって」
女(古参会長と秘書さん、信じ合っている二人に疑いの眼差しを向けたのは男君だけだった)
女(私はそれを人を信じるつもりが無いと非難したから言い出しにくかったのだろう)
女(でも……あれ、そういえば)
女友「気づきましたか……」
女「うん。商業都市の時は男君だけが疑っていた」
女「でも今回は女友も結婚詐欺の可能性について疑っているんだよね? どうして?」
女(女友だって信じ合っている二人を疑いたくないと、私と同じ立場だったはずなのに)
女友「二つ理由があります。一つは今回私はプロポーズの現場をその目で見ておらず、二人が信頼し合っている場面を見ていないため実感に乏しいこと」
女「百聞は一見に如かずって言うもんね。もう一つは?」
女友「教育によるものです。金に引き寄せられた人物か否かの見極めは、最重要課題でしたから」
女「……そっか」
女(女友とお嬢様はどちらも大富豪の娘で境遇が似ているのだろう)
699 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:34:15.47 ID:d3hCy8e20
女友「あの人は私のIfです。親から教育ではなく愛情を注がれて育ち、女という私自身を見てくれる人間と出会わなかった私です」
女「えっと……どういう反応をすればいいの?」
女友「照れてください。のろけてるのに困惑されるとこっちが恥ずかしくなります」
女「ごめん……私のこと大事に思ってくれてありがとうね」
女友「さ、さらに恥ずかしくなったじゃないですかぁ!」
女(女友が顔を真っ赤にしている。珍しい一幕だ)
女(珍しく攻勢に入れそうだったので、このままいじり倒そうと私は考えるが)
女友「そういう女は昨日のデートのフリどうだったんですか!」
女「あぅ……」
女(カウンターが思いっきり急所に入る)
女友「少しは進展があったんですよね?」
女「そ、それは……」
女友「終わったら話す約束でしたよね? あーあ私は一人寂しく別荘地で無駄骨な聞き込みをしたっていうのに……」
女「わ、分かったから! 話すから!」
女(泣きマネまで始めた女友に私は昨日のデートのフリについて詳細に話す)
700 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:34:44.67 ID:d3hCy8e20
女「――――――ということで宝玉が見つかって甘い雰囲気は終了したんだけどね」
女「でも男君と手を繋いで楽しんだり、十分に進展したでしょ!」
女(最初こそ話すことを恥ずかしがっていたが、途中から調子が乗ってきて意気揚々と話した私を)
女友「最低限、といったところでしょうか」
女「ぐっ……」
女(女友はバッサリと切り落とした)
女友「手を繋いだくらいで、誇らしげにならないでください。小学生レベルですか」
女「えっ、今どきの小学生ってそんなに進んでるの!?」
女友「さあ、知りませんけど。ですが一緒に旅をして酒を飲むほどなんですから、せめてハグだったりキスくらい行くものだと思ってました」
女「ハグ……っ!? キス……っ!? そ、そんなの早すぎるって!!」
女友「日本では今や高校生女子の40%がキスを経験しているって調査結果を聞いたことがあります」
女友「ましてや15で成人と扱われる異世界ですし、むしろ遅すぎるくらいです」
女(もっと先にあると思ったものを身近に言われて私は混乱する)
701 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:35:17.90 ID:d3hCy8e20
女「で、でも……相手は男君だし……」
女友「……まあ、そうですね。男性側からのリードが望めないと考えると頑張った方ですか」
女「で、でしょ!」
女友「それに興味深い話も聞けたようですしね」
女「うん。男君も本当は人を信じられるようになりたいんだよ」
女(ポロっとこぼれた言葉、だからこそ本音だと思われるその言葉)
女友「考えてみれば男さんもこの異世界で人を信じないことで痛い目にあっていますしね」
女友「トラウマを克服したいと考えてしかるべきでした」
女「これって一つの進歩だよね!」
女「男君が人間不信を克服すれば、それを元にする恋愛アンチも解消される」
女「男君自身が直したいと思っているならすぐだよね!」
女(そうなれば……フリとはいえ、昨日のデートあんなに楽しめたのだ)
女(私と男君、相性は悪くないはず。付き合うことも可能になるはずだと――)
702 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:36:12.02 ID:d3hCy8e20
女友「早考は控えておいてください」
女(しかし、明るい展望に女友が水を差す)
女「え……どうして?」
女友「本人が直したいと思っている、なのに直っていない。そのことが男さんのトラウマの根の深さを表しているからです」
女「それは……」
女友「まあ全く直す気がないよりはマシであることは確かなのですが……今回の出来事が影響しないといいですね……」
女「今回の出来事?」
女(首をひねる私に、女友が例え話を繰り出す)
女友「例えば女が新たな豊胸マッサージの話を聞いて頑張ろうとしますが」
女友「先にそれを体験した人がいて『このマッサージ全然効果が無かった!』なんて訴えてたらやる気が無くなるでしょう?」
女「例えが酷くない?」
女(私にいじられたことをまだ根に持っているのだろうか)
703 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/01/07(月) 15:36:48.57 ID:d3hCy8e20
女友「人を信じようとする男さんが、プロポーズするお嬢様と男性から『自分もこのように信じ合いたいな』と思っていたとして」
女友「その絆が偽りだったと判明したら……やっぱり人を信じるなんて馬鹿がすることだと……」
女友「そう思ってしまうことが心配なんです」
女「それは……」
女(女友が暗い可能性を指摘したそのとき)
男「すまんな、二人とも」
女(一人この場を離れていた男君が帰ってきた)
女「あ、男君」
男「女は女友から話を聞いたか?」
女「えっと……二人の婚約が結婚詐欺かもしれないって話?」
男「ああ、それだ。そして……どうやらそれは真実のようだ」
女「…………」
女(男君の思い詰めた顔を見て、どうやら恐れが現実になったことを感じ取った)
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