男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」

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504 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:39:44.97 ID:BuxzHRpr0

女「でもどういうことなの、男君」

女「ドラゴンの交渉で入ったお金があるから、それを使ってさっさと次の宝玉を探しに行った方がいいんじゃなかったの?」



男「それには前提があるだろ?」

女「前提?」

男「スパイを捜すのは俺のスキルを使っても時間がかかるから、って前提だ」

男「逆に時間がかからないならスパイを見つけた方が節約できて得だろ」



女「えっと、ということは……もしかして男君はもう既にこの騒動の犯人に検討が付いてるってこと?」

男「ああ。今まで聞いた話とさっきの話を統合して考えたら分かった」

女「だ、誰なの!? それにまだ何も調べていないのに……」

女(淡々と話す男君に、私は驚くと同時に不可解な気持ちになった)



女(私たちのアドバンテージは男君の魅了スキルを使って、女性相手に嘘を吐かせない捜査が出来るところのはずだ)

女(なのに男君は魅了スキルをまだ一度も使っていないこの段階で犯人が分かったと言っている)

女(話を聞いただけで分かるような簡単な事件なら、どうして商会は今まで犯人を捕まえることが出来なかったのか)

女(逆にどうして男君は犯人が分かったのか)



女「…………」

女(何か嫌な予感がした)

505 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:40:50.23 ID:BuxzHRpr0

商会長「すまない。待たせたな、少年」

女(そのタイミングで商会長は考えの整理が付いたようだった)



男「結論は出ましたか?」

商会長「その前にここからは建前を捨てて本音で話そう」

商会長「この場に私たちしかいないことだし、君たちが外に漏らすことはしないと信頼してのことでもある」

男「もちろんです」



商会長「確かに数年前から当商会は新参商会によるものだと思われるスパイには悩まされていたのだ」

商会長「一時期経営が傾きかけたくらいだからな」

商会長「何人かは捕まえているが、対症療法にしかなっていない」

商会長「本当に完全な解決が出来るならば、それは宝玉を譲るほどに価値のある行いだ」



男「ということは……」



商会長「条件付きで君の提案を呑もう」



506 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:41:52.62 ID:BuxzHRpr0

男「ありがとうございます。……それで条件とは何でしょうか?」

商会長「君の見解をこの場で語って欲しいということだ。あまりにも的外れな場合、調査を任せるわけには行かないからな」

男「ごもっともですね。分かりました、俺の考えを……何なら犯人の指摘までここで終わらせましょうか」

商会長「犯人が……もう分かっているというのか?」

女(先ほどの私たちの会話は聞こえてなかったようで、商会長は驚いている)



男「ええ。順を追って話しましょう」



男「今回のスパイ騒動、詳細は皆さん知っていると思うので省きます」

男「注目するべきポイントは三つ」



男「『捕まった者は自分がスパイだと認めなかったこと』『別の犯罪が同時に発覚したこと』『何度捕まえても新たにスパイが出てくること』です」



507 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:42:26.57 ID:BuxzHRpr0

女「……? 別に認めないのが普通じゃないの? それにスパイするくらいだから別の犯罪していてもおかしくないし」

男「そうだな、女。前者二つはそうおかしいことではない」

男「だから最初は『何度捕まえても新たにスパイが出てくること』これについて考えたいと思います」

商会長「続けてくれ」



男「じゃあ質問だ、女。どうして何度捕まえても新たにスパイが出てくるんだと思うか」

女「それは……新参商会の人が、スパイが捕まる度に古参商会の職員に対して寝返り工作を行うから……じゃないの?」

女(受付の人と話していた時の結論をそのまま話す)



男「考えられる可能性の一つだな。古参商会も現在この方向で調査しているんでしょう?」

商会長「外聞が悪いから世間には秘密にしてくれ」

508 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:43:06.37 ID:BuxzHRpr0

男「さて、新参商会が古参商会に対して寝返り工作を行っていると仮定して……」

男「この場合困難な問題があります。女友なら気づいているんじゃないか?」



女友「……ええ。新参商会は寝返り工作を行う対象をどのように選定しているのか、ということですよね?」

女「どういうこと?」



男「例えば女が古参商会の職員だったら、機密情報を売ってくれないかと頼まれたときどうする?」

女「そんなの『悪いことは出来ません!』って突っぱねるに決まってるよ!」



男「ああ。このように正義感や、商会に対する忠誠心の強いやつに対しての寝返り工作は失敗するってことだ」

男「そしてそんなこと頼んできたやつを逆に調査して、新参商会の手の者だったと逆に暴いてしまえばいい」

女「そっか……そんなリスクがあるんだ」

509 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:44:20.20 ID:BuxzHRpr0

男「でも現在古参商会の調査は滞っている」

男「つまり新参商会の寝返り工作らしきものを受けた職員はいないということですね?」

商会長「ああ。聞き取り調査をしたが、そのような話を受けた者はいないようだ」



女「だったら機密情報を売ってくれそうな人間に絞って寝返り工作を仕掛ければいいんじゃないの?」

女「実際、これまでに見つかったスパイって業務上の横領だったり別の犯罪をしていたような人たちなんでしょ?」



女友「それだと新参商会はどうしてスパイに寝返らせる前から、犯罪をしている職員を突き止められたのかという疑問が上がります」

女友「それだって重要な内部情報ですから」



女「あ、そっか。内部情報を売らせる前から、内部情報に精通しているってことになるんだね」



商会長「商会でもその壁にぶち当たっているところでな」

商会長「……しかし他に有力な可能性が思いつかないため、地道な調査を続けているところだ」



女「うーん……」

女(私がこのスパイ騒動の難解さをやっと認識したところで)

510 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:45:00.71 ID:BuxzHRpr0



男「卵が先か、鶏が先か……哲学の問題ですが、そのような難解な出来事が現実に起こることはそうそうありません」

男「だったら疑うべきは前提の部分」

男「そもそも新参商会は寝返り工作を仕掛けていないんじゃないでしょうか?」



女(男君が問題を一刀両断した)



女「寝返り工作していない……って、じゃあどうなるの?」

男「新参商会は古参商会の内部にスパイを潜入させているってことだ」

女「スパイの潜入……でも、これまでに何人も捕まっているよね」



男「それは全員偽物だ」

女「偽物!?」



女(話の展開が急になってきた)

511 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:46:03.89 ID:BuxzHRpr0

男「ああ。今までに捕まったのは、真のスパイによって仕立て上げられた偽のスパイだ」

女「で、でもそんな突拍子もない可能性……」



男「何言ってるんだ。証拠はあるだろ。捕まった者は自分がスパイだと認めなかった、って」

男「認めなかったんじゃなくて、本当にスパイじゃなかったんだ」



女「じゃあ嘘を吐いてたんじゃなくて、本当のことを言ってたってわけ!?」

女(スパイだから口が固いんだと思ってたのに、そんな裏があるとは)





男「全員が別の犯罪をしていたのも当然だ。真のスパイは古参商会の内部情報に精通しているはず」

男「だから犯罪をしている職員を狙って、自分の身代わりに仕立て上げたんだ」



女「他に悪いことをしている人間だから、認めないけどスパイ行為もしていたに違いない……って思わせるために?」

男「そうだろうな。そして偽のスパイが捕まる度に真のスパイは情報漏洩を止めた」

男「そいつが本当にスパイだったと思わせるための罠としてな」





女(男君によって真実が明らかになっていくことに私はドキドキする)

女(しかし、それは私だけだったようだ)

512 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:46:59.66 ID:BuxzHRpr0

商会長「すまないが、少年。君の考えには一つ抜けているところがあるぞ」

男「何ですか?」

商会長「それは真のスパイが仕掛けた偽の証拠に私たちが騙されているというところだ」

男「…………」



商会長「情報漏洩の対処には私直属の調査会が当たっている。秘書をリーダーに置いたメンバーたちの技量は疑うまでもない」

男「……」



商会長「その者たちが偽のスパイに誘導されることなどあるはずがない」

商会長「逆に仕掛けを見抜いて真のスパイに辿り着くはずだ」

商会長「つまり君の考えは間違っている」



女(商会長の指摘。秘書さんをよっぽど信頼しているのが伝わってくる)



男「女友も同じ考えなのか?」

女友「……その通りですね」



女(女友も頷く)

女(どうやら私以外の二人は、男君が語った真実をとっくに想定していて、間違っていると判断していたようだった)



女「えっと……だったら、やっぱり新参商会が寝返り工作を仕掛けていたってこと……?」

女(何が正しいのか、分からない。ぐるぐると思考が堂々巡り始めたところで)

513 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:47:39.64 ID:BuxzHRpr0





男「はぁ……だから誰も今まで解決できなかったのか」





女(男君は大きく溜め息を吐いた)



商会長「あー……少年、どういうことかね?」

女(含まれた嘲りの意図に、怒りより先に困惑した様子の商会長)



男「すいません、失礼でしたね」

男「ですが商業の世界を、情ではなく数字や策謀が支配する世界を生き抜いてきたはずの商会長ともあろう人が」

男「そこで思考停止しているとは思ってもみなくて」



女(そして男君はとんでもないことを言い出した)

514 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:48:08.94 ID:BuxzHRpr0





男「調査会なら真のスパイに騙されるはずがない?」

男「だったら真のスパイが調査会の内部にいたらどうなるんですか?」

男「騙し放題ですよね?」





商会長「な……?」

女「え?」

女友「やはり……」



女(その言葉の意味を理解しようとする私たちの前で――)

515 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:48:55.44 ID:BuxzHRpr0





男「発動、『魅了』スキル」





女(男君はその身に宿すただ一つのスキルの発動を宣告した)



女「えっ!? どうしてこのタイミングで……」

女(これで二回目となる魅了スキルの発動。ピンク色の光が部屋を埋めて対象を虜状態にする)



女(効果範囲となる5m以内にいるのは――)



女(商会長は男性のため条件に当てはまらない)

女(私は男君に特別な行為を抱いているため今回も不発)

女(女友は既に魅了スキルにかかっているため意味はない)



女(だから、最後の一人)

516 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:49:29.66 ID:BuxzHRpr0



秘書「っ……!?」



女(ここまでずっと黙って話を聞いていた秘書さん)

女(魅了スキルは成功しただろう)

女(効果範囲の周囲5m内だし、対象の『魅力的だと思う異性』も秘書さんは私から見ても綺麗な人だし当てはまるはず)



秘書「こ、これは……」



女(秘書さんが顔を横に振って何かに抗おうとしている)

女(虜になった時点で、術者の男君に好意を持つはず)

女(女友が子作り発言をしてしまったくらいだ)

女(好意から衝動的な行動に移ろうとするのを押しとどめようとしているのだろう)

517 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:50:16.82 ID:BuxzHRpr0

女(そしてもちろん魅了スキルの効果はそれだけではない)



男「秘書さん、命令です。これから質問には必ず真実で答えてください」



女(男君の目的は最初からこれだったのだろう)

女(魅了スキルによって嘘を吐けないようにして)



男「あなたが新参商会のスパイなんですよね?」



女(犯人に自白を促す)



秘書「私は……くっ!」

女(意志に反して話し出した口を手で塞ぐことで秘書さんは抵抗する)

518 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:50:53.64 ID:BuxzHRpr0



男「命令です。口から手を離してください。発言の邪魔となる行動をしないでください」

女(しかし男君は無慈悲に命令を追加して)



男「もう一回質問します。あなたが新参商会のスパイなんですよね?」



秘書「…………はい」



女(秘書さんは容疑を認めた)





商会長「ど、どういうことだ……秘書。そんな……う、嘘だよな?」

女(商会長はその光景にただただ狼狽えていた)

519 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/04(火) 22:51:37.77 ID:BuxzHRpr0
続く。

次は木曜投下予定です。
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/04(火) 23:59:01.73 ID:YsCrU/ewo
乙ー
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/05(水) 06:10:21.71 ID:IHxn8bypO
乙!
522 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/06(木) 23:33:33.43 ID:Sapf2Y8Z0
待っていた方にはすいません。
ちょっと延期します。
明日か明後日投下します。
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/07(金) 00:30:33.28 ID:oVfYTSiRo
待ってる
524 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:34:15.56 ID:6+JBI1Sn0
乙、ありがとうございます。

>>523 その一言に感謝を。

遅くなりましたが、投下します。
525 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:35:06.35 ID:6+JBI1Sn0

男「ふぅ……」

男(俺は一息つく)

男(推理の披露から犯人の指摘も終わって、探偵の役目も終わり)

男(後は犯人が勝手に自供してくれるものだと思っていたのだが)



秘書「申し訳ありません……申し訳ありません……!!」

商会長「違う! 私はそのような言葉を聞きたいのではない!!」



男(謝り倒す秘書さんに、混乱している商会長を見るにどうやらもう一働きしないといけないようだ)

526 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:35:43.27 ID:6+JBI1Sn0

男「秘書さん、命令です。あなたが新参商会のスパイであるという確固たる証拠を持ってきてください」

男(俺は魅了スキルによる命令を出す)



男(ちなみに毎回『命令です』と前置きするのには理由がある)

男(魅了スキルの命令は対象が認識する事が必要だからだ)



男(『〜〜してください』だけでは、対象が『これはお願いかな? 命令じゃないよね?』と自己の認識を操ることで命令をすり抜けられる可能性がある)

男(それを防ぐために一番いいのは命令形で強く『〜〜しろ』と言うことなのだが、目上の人にそのような口調を使うのも良くない)

男(だから『命令です』と言うことで逃れられないようにしているのだ)



秘書「分かりました」

男(命令に従い会長室を出て証拠を取りに行く秘書さんを見送る)

527 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:36:39.31 ID:6+JBI1Sn0

商会長「少年……どういうことだ? 秘書が……商会を苦しめていたスパイだったと?」

商会長「そんな……そんなことあるはずが……そうだ、何か変なスキルを使っていたな?」

商会長「それで秘書を操って、あのような発言をさせた……そうに違いないんだろう?」



男(商会長はどうしても信頼していた人に裏切られていたという事実を受け入れられないようだ)

男(仕方ないので俺はステータス画面を開いてみせる)



男「これが先ほどは見せられなかった俺のステータスです。他言無用でお願いします」

男「ご覧のように初期職の『冒険者』で戦闘力は無いですし、スキルも一つだけです」

男「しかしその『魅了』スキルがとても強力な代物で……詳細がこれです」



商会長「魅了……異性を虜にして……命令に従わせる……?」

528 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:37:15.89 ID:6+JBI1Sn0

男「これで秘書さんに真実を語らせたというわけです。命令した内容も聞こえてましたよね?」

商会長「そう……だが。なら、あの秘書は別物だ……私と共に難局を乗り越えた秘書は別にいるんだ……」

商会長「どこかで入れ替わったんだ……そうに違いない」

男(あー今度はそうやって逃避するのか。だが、それは無いと分かっている)



男「秘書さんは最初からスパイとして活動していたはずですよ」

男「秘書さんが会長の右腕に付いた10年前と新参商会の発足が10年前で一致していますから」

男「新参商会が破竹の勢いで発展したのは、秘書さんが右腕に付いたことで得た古参商会全体のノウハウを横流ししたからだと思います」



商会長「そんなはずが…………」



男(否定の言葉が弱くなったな)

男(これで秘書さんが最初から自分を騙すために近付いてきたのだと理解しただろう)

男(関係が幻想だったと分かっただろう)

529 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:38:04.75 ID:6+JBI1Sn0

男(これで商会長を救えたな)

男(俺は達成感を覚えていた)



男(女に言ったように、俺は受付の人の話を盗み聞きした時点で秘書さんがスパイだと分かっていた)

男(だが、別に暴くつもりはなかったのだ)



男(わざわざ指摘するのも面倒だったし、商会がこれからも苦しもうが俺にはどうでもいい)

男(宝玉の交渉さえ終わらせれば今後関わることの無い相手だからだ)



男(しかし、商会長と秘書さんの絆を見て気が変わった)

男(商会長が騙されているのに秘書さんを信頼している姿が……)

男(過去の俺、『あの子』に騙されているのに好きになってしまった俺に、重なって見えたのだ)



男(だから幻想から解放するために、こうして現実を見せた)

530 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:38:34.59 ID:6+JBI1Sn0

男(これで俺のように、商会長の秘書さんに対する気持ちも尽きるだろう)

男(もちろん傷は大きいはずだ)



男(俺は自己否定でそれをどうにかしたが、商会長ならいくらでも癒す手段はあるだろう)

男(その気になれば新たな相手も見つかるだろう)

男(50のおっさんでも絶大な権力に金があるのだから)



男(俺のように恋愛アンチになってしまう可能性もあるが……)

男(まあそれも仕方ないあのまま騙され続けるよりは良いはずだ)



男(さて、商会長は何を選ぶのか。俺の目に映った光景は――)





商会長「秘書……」

男(未だに騙された相手を呼ぶ姿だった)

531 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:39:02.73 ID:6+JBI1Sn0

男「あれ……?」

男(それは予想外だった)



男(……あーでも、そっか。俺の言葉だけじゃ弱かったのか)

男(俺よりも長く10年騙されていたのだ。簡単に夢からは覚めないのだろう)

男(秘書さんが戻ってきて、裏切りの証拠をきちんと突きつける必要がありそうだ)



男(仕方ない、と待つ体勢に入った俺に)





女「間違ってる……男君は、間違っているよ!!」





男(女が激昂した)

532 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:39:37.98 ID:6+JBI1Sn0

男「……俺が間違っている? いやいや、そんなことないだろ」

男「ちゃんと推理は説明した、論理に欠落はないはず」

男「いや、そこに間違いがあろうと関係ないんだ」

男「女も魅了スキルの効果は分かっているだろ」

男「虜になった秘書さんは真実を語るんだから、スパイであることに間違いは――――」



女「そんなことはどうでもいいのっ!!」

女「どうして男君は二人の様子を見ていたはずなのに秘書さんを疑ったの!?」



男(俺の答えを聞いてますますヒートアップする女。地雷を踏んでしまったか?)

男(しかし、女の言葉の意味が分からない。説明を聞けそうにもないし……こういうときは)

533 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:40:04.48 ID:6+JBI1Sn0

男「女友。女は何を言いたいんだ?」

女友「秘書さんは商会長と10年を共にした相棒です」

女友「強い絆で結ばれているのは、端から見た私たちでも分かりましたよね?」

男「そうだな」



女友「ならば普通はその人が裏切っているなんて考えない……いや、考えたくないものです」

女友「なのに平然と疑った男さんは間違っている……と女は、そして私も言いたいのです」



男「……そういうことか」

男(話は分かった。納得は一切無かった)

534 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:40:35.20 ID:6+JBI1Sn0



男「女。実際秘書さんは裏切ってたじゃないか。だったら疑って当然だろ」



女「違う! そっちが先じゃない!!」

女「秘書さんを疑う気持ちがなければ、裏切りに気づけるはずがないもん!!」



女「男君は……そもそも人を信じるつもりが無いんでしょ!!」



男「…………」



男(女の言葉はいやに刺さった)

男(あの夜、死にかけた俺は、人を信じられるようになりたい、と誓った)

男(なのに今、俺は人を信じるつもりがないと女に指摘されて……それを認めていた)

男(全く変わっていない自分のズボラさを図星で指摘された俺は……ついむきになって言い返した)

535 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:41:24.82 ID:6+JBI1Sn0

男「……だったら何だよ。俺が人を信じて、誰も疑わないで」

男「それで商会長は秘書さんに騙され続ける方が良かったっていうのかよ!!」

女「そういうこと言ってるんじゃないってば! 私は男君自身について言ってるの!」

男「ならその通りだよ! いつか裏切られるくらいなら、信じない方がマシじゃねえか!」

男「人を信じたから、二人だってこんな状況になってるんだろ!!」



男(商会長の落ち込んでいる姿で俺の正当性を証明する)

男(しかし)



女「そっか……。男君のスタンスは別にして、スパイであることを見抜いたのはすごいと思ってたけど……」

女「別に気づいたんじゃなくて、ただ否定したのが当たっただけなんだね」



男「え……?」



女「だって裏切った裏切られたしか見えていなくて、二人の本当の思いなんて全く考えてないんでしょ?」



男(そのとき、秘書さんがその手に自分がスパイである証拠を持って会長室に戻ってきた)



女「秘書さん、質問に答えてください」

男(その前に女が立つ)

536 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:42:15.27 ID:6+JBI1Sn0

女「あなたは会長を騙すことに心苦しさを感じていませんでしたか?」

秘書「……最初はありませんでした。私はそのために古参商会に潜り込んだのですから」



女「では、そのあとは?」

秘書「……一緒に働くにつれて、会長を支える日々が続くにつれて、会長の信頼を寄せられることになって、心苦しくなったのは事実です」



女「それでもやめるわけにはいけない事情があったんですよね?」

秘書「はい。新参商会の会長に私は恩義がある身で、その人に従ってずっと生きていました」

秘書「古参商会に潜入することも命令されたことです」



秘書「心苦しさを感じたある日、スパイ活動をやめたいと私は初めて反抗しました」

秘書「しかし返事は『情が移ったか。だが、今さらそんなことが出来るわけない。いいか、勝手に情報の横流しをやめてみろ。そのときはおまえがスパイだったってことをバラして、古参商会に居れなくするからな』と」



女「脅されていたんですか」

秘書「そうなったら……私はどこにも居場所が無くなります。だから私は……!」



男(自分を抱きしめて震え出す秘書さん)

男(その彼女を包み込むように背後から抱きしめる者がいた)

537 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:42:51.17 ID:6+JBI1Sn0

商会長「もう良い、秘書よ」

秘書「会長……」



商会長「私は盲目的に信頼して……おまえの苦しみに気づけていなかったのだな」

秘書「会長が悪いのではありません! 全ては私がしたことです! 今まで商会に莫大な損害を与えて……」



商会長「償えば良いだけだ、私も協力しよう。それよりもこれからについてだ」

商会長「私はおまえに秘書を続けてもらいたいと思っている」

秘書「本気ですか……?」



商会長「もちろんだ。私を支えられる者がおまえ以外におるわけ無かろう」

秘書「しかし、私はスパイで……商会を裏切っていて……」

秘書「みなさんにどう説明すればいいのか……それに新参商会の会長を…………」



商会長「大事なのはそのようなことではない。秘書、おまえの気持ちだ」

秘書「私も…………叶うことなら、これからも会長の側にいたいです……」



商会長「そうか。その言葉さえあればどうにでもなる」

秘書「会長……!」



男(秘書さんは体の向きを反転させて、商会長と正面から抱き合う)



女「うん、うん……!」

男(見守る女は涙ぐんでいて)

538 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:43:21.74 ID:6+JBI1Sn0



男「何だよ……これ……」



男(目の前で何が行われているのか。俺には理解できなかった)



男(騙しているのに思い続けて)

男(騙されていたのに思い続けて)

男(そんな光景、想像したこともなかった)



男「…………」

男(だったら俺が間違っていたっていうのかよ)

男(騙されていたからってすぐに思いを捨てたことが)

539 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:44:31.81 ID:6+JBI1Sn0

女友「男さんの負け、ですね」

男(気づくと女友が近くまで来ていた)



男「女友……勝ち負けの問題じゃないだろ」

女友「そうですか? 当の男さんが敗北感を持っていると思いますが」

男「……ふん。だったらまだ分かんねえぞ」

男「秘書さんの今の話が全部会長を欺くための嘘だったって可能性もある」



女友「それはないですね。同じく魅了スキルにかかっているから、何となく分かるんです」

女友「男さんが秘書さんへ最初にした命令『質問には必ず真実で答えてください』はおそらくまだ有効ですから」

男「…………」

女友「何なら命令すればいいじゃないですか。今の話が本当だったのか答えろって」



男「……分かったよ、俺の負けだ」

女友「ふふっ、勝ち負けの問題じゃなかったんじゃないですか?」

男(無駄な抵抗を諦めて俺が両手を上げると女友は愉快そうに微笑む)





男(こうして紆余曲折があったものの、二つ目の宝玉を手に入れるための話は幕を閉じた)

540 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/08(土) 23:46:00.83 ID:6+JBI1Sn0
続く。

次が第二章最終話です。月曜投下予定。
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/09(日) 01:29:43.50 ID:ItsSEdsX0
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/09(日) 01:33:58.77 ID:a5cak8yR0
乙!
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/09(日) 03:48:27.10 ID:hOfvduKqo
乙ー
544 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:08:16.54 ID:lKHt+drB0
乙、ありがとうございます。

投下します。
545 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:09:28.82 ID:lKHt+drB0
男(話が終わったときにはもうすっかり夜になっていた)

男(今からでは空いてる宿も見つからないだろう、ということで商会長の厚意により)

男(古参商会・本館にある客室に俺たちは一晩泊まった)

男(そして翌日の朝)



商会長「性急だな。今日にはもうここを旅立つのか」

男「宝玉が手に入った以上、長居は無用なので」



男(俺と商会長の二人は、昨日色んなドラマのあった会長室にいた)

男(女友と女の二人はドラゴンの交渉において最後の詰めをするために出ておりこの場にはいない)

男(秘書さんも仕事の準備で離れているようだ)

546 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:10:00.10 ID:lKHt+drB0

商会長「少年たち女神の遣いの使命だったな。この古参商会が全力でバックアップしよう」

男「それについては助かります」



男(話が付いた後に商会長が言い出したことだった)

男(当初の交渉通りスパイ問題について完全に解決したため宝玉を譲ってもらい)

男(しかもここ以外の宝玉の行方について古参商会が捜索を手伝うと提案したのだ)



男(教会の取り壊しはかなり昔に行われたことだ)

男(今回こそ運良く宝玉の行方がすぐに分かったが、普通はそう簡単に行かないだろう)

男(だからとてもありがたい申し出ではあるが、流石にそこまでさせるのはと思い断ろうとした)

男(しかし会長はすでに各地にある古参商会の支所へと指令を出していた。強引な人である)

547 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:10:31.29 ID:lKHt+drB0

商会長「何、世界が無くなっては商売も出来ないからな。それに恩人のために尽くすのは当然だ」

男「恩人って……俺たちのことですか」

商会長「ああ。少年たちが居なければ、今も秘書は苦しみ、私は気づけないままだっただろう。感謝している」

男「あ、また……顔を上げてください」

男(商会長と秘書さんは俺たちに恩義を感じているようで、昨日から何回も頭を下げられた)



商会長「どうしてそのように遠慮するのだ? 少年がしたことはとても大きな事だぞ」

男「結果的にそうなったとしても……子供の癇癪のようなものですから」



男(女に言われた通り、俺がやったことはトラウマを刺激されて商会長と秘書さんの関係を壊したことだけだ)

男(女が人を信じて、諦めず理想を追い求め続けて、二人の思いに気づきまた絆を結び直さなければバラバラになっていた)



商会長「難儀なのだな」

男「……そうですね、自分のことながら厄介なやつだと思います」

548 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:10:57.66 ID:lKHt+drB0

男(自分が人を信じるつもりが無いことを、何も変わってないことを痛烈に感じさせられた)



男(だが、思えば俺はそんなやつだった)

男(毎年夏休みが来る度に『今年こそは宿題を7月中に終わらせる』なんて目標を立てて、結局最終日に慌てていた)

男(人を信じられるようになる、という目標立てるだけ立てて、何の努力もしていなかったのだ)



男(だったらどうすれば人を信じられるようになるのか)

男(そのための努力って……一体何をすればいいんだろうな?)

549 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:11:40.43 ID:lKHt+drB0

男「そういえば……秘書さんの処遇はどうなったんですか?」

商会長「ああ、言ってなかったな。昨夜、内密に新参商会の会長と話して取り引きをしてきた」

商会長「秘書によるスパイ活動について不問にする代わりに、今後一切秘書に関わらないように要求した」

商会長「相手は二つ返事だったぞ、まあスパイ活動のことを公にされては新参商会も立つ瀬がないからな」



男「今まで被害を受けてたのに許したんですか」

男「……やろうと思えば、秘書さんによって新参商会に逆スパイを仕掛けて報復することも出来たでしょうに」

商会長「分かっておる。だからこれは秘書にもう手を汚して欲しくなかった私のエゴだ」

男(本当に商会長が秘書さんを思っていることが伝わってくる)



男「それでこれまでと変わらず秘書さんが秘書を続けるんですか?」

商会長「ああ。商会内部の人間にもスパイ事件の顛末は話した。秘書が犯人だったという事も含めてな」

商会長「しかし私の我が儘で秘書に秘書を続けさせて欲しいと頼んで……最初は反対されたな」

男「大丈夫だったんですか?」

商会長「ああ。反対とは言ったが一般常識の観点によるものだ」

商会長「皆秘書を慕っていたからな、最終的には満場一致で承認されたよ」

男(そういえばあの受付の人もずいぶん秘書さんを尊敬していた)

男(秘書さんはスパイで古参商会を裏切っていたわけだが、そんな中でも関係を築いていたのだろう。商会長に対してと同様に)

550 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:12:15.79 ID:lKHt+drB0

男「……ごめんなさい。秘書さんに自白をさせるためとはいえ、魅了スキルをかけてしまって」

男「命令は全部解除しましたが、魅了スキル自体は解除できないんです」

男「だから彼女は俺に好意を持ち続けることに……」

商会長「何、気にするな。恩人に好意を持つくらい普通のことだ。それくらい構わぬ」

男(本当に気にしていないという様子の商会長。何とも器の大きな人だ)



秘書「失礼します、会長。そろそろ出かけないと商談に間に合いません」

商会長「おお、そうか」



男(そのとき秘書さんが会長室に入ってきた)

男(会長と秘書さんは今日も変わらず忙しいようだ)

男(そしてそれはとても幸せなことなのだろう)

551 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:13:05.68 ID:lKHt+drB0

男「……じゃあ俺も行こうと思います。ありがとうございました」



商会長「ああそうだ、一つ聞くのを忘れておった、少年よ」

男「何ですか?」

商会長「酒場で言っただろう。今度会ったら両手の花のどちらが本命なのか教えて欲しいと」

男「……その話ですか。言いましたよね、二人は魅了スキルが暴発した結果で一緒にいるのだと」

男(魅了スキルの詳細については開示したため、ついでにその話もしていた)



商会長「そうは言っても君も男だ。一緒に旅をする内に、どちらかに引かれていたりはしないのか?」

男「ありません。今度こそ失礼します」

男(商会の長らしくない下世話な話を打ち切って俺は会長室を後にした)

552 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:13:51.72 ID:lKHt+drB0



男の去った後の会長室にて。



商会長「ふむ、そうか。少年のことだから嘘は吐いていないのだろう」

商会長「……ならばいつか気づけるといいがな。自分の寂しい生き方に本気で怒ってくれる少女の気持ちを」



秘書「私も心からそう思います。彼には彼女がピッタリでしょう」



商会長「……では私たちも行くとしよう。今日の最初の案件はどこだったか?」

秘書「それなら――」



二人はいつも通り仕事の話を始めた。



553 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:14:35.43 ID:lKHt+drB0

女(私は諸々の案件を終わらせて、男君との待ち合わせ場所である古参商会・本館に帰る途中だった)



女友「無事に終わりましたね。では今日の内に出発して、次の教会跡地に向かいましょうか」

女(隣には付き添ってくれた女友がいる)

女(商業都市は今日も盛況で、たくさんの歩行者で溢れている)

女(はぐれないように気を付けて歩きながら口を開く)



女「女友、今回の件で私分かったよ」

女友「だと思いましたよ」

女(女友は私の言いたいことなどお見通しのようだった。なので前置きなしに告げる)





女「男君は……幸せになるつもりが無いんだね」





女(私と男君が結ばれるための障害は根深いものだった)

554 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:15:15.69 ID:lKHt+drB0

女友「幸せの形は無数にあるので語弊を生まないように幸せを+の出来事、不幸を−の出来事とでも簡単に定義しておきましょうか」

女「うん」

女友「それで男さんは+を求めていません」

女友「何故なら+になってしまえば、−になってしまう危険が常に付きまといます」



女友「男さんの理想は『0』がずっと続くことです。+が無い代わりに−も無い」



女友「元々男さんにはそういう気質があったのでしょう」

女友「それが恋愛での失敗により強化され、恋愛アンチへとなったわけです」



女(欲がない若者は近年よく言われる問題だ……って高校生の私が言うのもなんだけど)

女(男君はそれが極端に現れているということなのだろう)



女(私の考えとは大きく違っている)

555 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:16:04.47 ID:lKHt+drB0

女「私ね。男君を見ていて気づいたんだ」

女「これまで意識したこと無かったんだけど自分が『人はすべからく幸せを目指して生きるべき』って思ってることに」



女友「端から見ている私は分かってましたけどね。だから男さんとは根本的にズレていると表現したわけですし」

女「だって寂しいじゃん。人生は一度きりなのにただただ生きたってだけだと」

女友「だから失敗を恐れる男さんに、失敗が起こるかもしれない理想を求める道を歩めと言うんですか?」



女「うん。だって恋愛アンチのままだと私の方を振り向いてもらえないでしょ」

女「でもそれだけじゃなくてね――」



女(男君がどんな傷を抱えているのか)

女(私は女友の勝手な予想でしか知らない)

女(おそらくもう二度と失敗したくないというほどに傷ついたのだろう)

女(その痛みを知らない私がとやかく言うのは間違っている)



女(だから男君の全てを知りたい)

女(そしてその生き方を変えて見せたい)

女(その理由は――)



女「私は男君にも幸せになって欲しいんだ」



556 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:16:48.39 ID:lKHt+drB0

女友「……傲慢ですね」

女「悪いかな?」

女友「いえ。男さんの凝り固まった思想を壊すにはそれくらいがちょうどいいですよ」

女「ありがと」

女友「これからもサポートしていきます。頑張っていきましょう!」

女「おー!!」

女(私と女友、二人で拳を突き上げる)







男「あ、二人ともちょうど良いタイミングだな。用事が終わったならさっさと行こうぜ」



女(そのとき古参商会・本館前で出迎える男君の姿が見えた)

女(決意を新たにして私たちは次の目的地を目指す)

557 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/10(月) 21:18:04.31 ID:lKHt+drB0

 2章『商業都市』編、完。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。



 3章『観光の町(仮)』編の準備のため少し休みます。

 続いて読んでもらえると幸いです。



 乙や感想などをもらえるとモチベーションが上がります。

 どうかよろしくお願いします。

なろう版 http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/11(火) 00:42:01.67 ID:ZbjhOE5AO
乙ー
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 02:16:04.73 ID:WstE8k0s0

待ってるぞ
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 05:18:31.44 ID:ONVIpWLLO
乙!
次も楽しみに待ってます。
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 12:41:22.30 ID:P4Sf1JGMO
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/11(火) 20:57:27.59 ID:RG4eM2Vbo
まだまだ続きそうだな
頑張って
563 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:22:12.98 ID:lCeMl+eh0
暖かい言葉の数々。
とてもとてもありがとうございます。

3章『観光の町』編開始します。
564 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:22:50.48 ID:lCeMl+eh0

男(古参商会本館を後にした俺たちは、ある場所に移動して座り待ちながら話を始めた)



男「しかし、この商業都市に正味三日弱しかいなかったんだな」

男(商業都市に辿り着いたその日の夜に酒場で古参会長や秘書さんと会い、宝玉の行方を知り)

男(その翌日朝の内にドラゴン討伐に向かって)

男(次の日にドラゴンをテイムして都市まで戻り交渉して、会長と再び会いスパイ問題を解決して宝玉を譲ってもらった)



女「早かったなあ。他のみんなはどんな状況だろう?」

女友「おそらく私たちが一番乗りだとは思いますけどね」



男(現在異世界に召喚された俺たちクラスメイト28人の内)

男(俺を襲撃した副委員長イケメンと連れだって逃げたギャルの2人を除いた26人は、8つのパーティーに分かれている)

男(それぞれが別の女神教の教会跡地に向かって、宝玉の行方を追っている)

男(女の言う通り他のパーティーの進捗は気になるが、女友の予想通り俺たちが一番目だろう。

565 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:24:27.66 ID:lCeMl+eh0

男「って、そういえば他のパーティーの様子ってどうやって把握するんだ?」

男(元の世界ならメッセージアプリでクラスメイト全員のグループでも作って『宝玉ゲットなう』とか書き込めば)

男(『早すぎ、やばたにえん』とか『マジ卍!』とか返ってくるのだろう)

男(……いやボッチでメッセージアプリすら入れてない俺は実際どういうノリなのかは知らないけど)

男(だがそれも元の世界の話であり、この世界ではスマホが使えないのだ)



女友「聞くところによるとこの異世界にも離れた場所でも電話のようにやりとりが出来る念話球なるものがあるらしいですが、調達できませんでしたからね」

女友「なので連絡手段は手紙です」

男「手紙」

男(これまた原始的な手段が出てきた)

566 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:24:55.13 ID:lCeMl+eh0

女友「私たちが商業都市で宝玉を手に入れて次の町に向かうことは今朝手紙に書いて送っておきました」

女友「宛先は最初にたどり着いた村の村長さんです」

女「みんな何かあったら村長さんに連絡するように決めたんだよね」

男「あーなるほど。村で情報をまとめているわけだな。他のパーティーについての情報も経由して教えてもらえるってことか」

男(村長さんを中継とした三角連絡である。そんな協力もしてもらっているとは)

男(旅の資金を援助してもらったことといい頭が上がらない)





馬<ヒヒーン!!

男(と、そのとき馬の鳴き声が聞こえてきた)



男「お、ようやく来たか」

男(俺たちは停留所のベンチから立ち上がり、やってきた馬車に乗り込む。切符はすでに購入済みだ)

567 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:25:53.78 ID:lCeMl+eh0

男(最初の村は田舎だったため商人の流通用の馬車は時々来るらしいが、一般客を乗せる馬車は通っていなかった)

男(しかしこの商業都市から次の目的地には定期的に出ているらしい。それだけ往来する人が多いそうだ)

男(待っていた客が全員乗り込むと馬車は出発した)



男「これで夜まで乗っていれば到着だから楽だな」

男(村から商業都市への移動、ドラゴンの洞窟への移動、と思えばこの三日間は足を使い駆けずりまわっていた)

男(舗装されたアスファルトを走る自動車に比べれば、整備されているとはいえ土の道を行く馬車の揺れは酷い)

男(それでもとてもありがたい)



男(つまりそれだけ遠い場所に行くということだ)

男(まあ近くの町は他のクラスメイトのパーティーが向かっているので仕方ないことだが)

568 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:26:22.36 ID:lCeMl+eh0

女友「これから行く次の女神教の教会跡地は観光が盛んな町です」

男「観光といっても色々あるよな。目玉は何なんだ?」

女友「透明度の高く遠浅の海に年中温暖な気候で絶好の海水浴スポットとなっています」



女「海ね。夏休みになったらいつも田舎のおじいちゃん家の近くの海に遊びに行ってたなあ。男君はどうだった?」

男「そう言われると生まれてこの方行ったことがないな」

男(アクティブな活動とは無縁な人生を送っている)



女友「遠路はるばる来る人もいますから、ビーチの側には観光客向けのホテルや酒場町があります」

男「夜は海に出れないから、飲めや騒げやってことか」



女友「また別荘地としても有名だそうですね」

女友「少し内陸の方に行くと別荘が建ち並び、その富裕層向けの高級店が集まるエリアもあるようです」

男「温暖な気候で海が近いとなると絶好のロケーションだな」



男(商業都市とはガラリと変わった場所になりそうだ)

569 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:27:22.14 ID:lCeMl+eh0

女友「そして目的の宝玉ですが……どこにあるかは検討も付きません」

男「古参商会の調査も昨日の今日じゃ当てに出来なさそうだしな」

男(スパイ騒動を解決した結果商会長の好意により俺たちの使命を手伝ってくれるという話なのだが)

男(今回は自分たちの手で探す必要がありそうだ)



女「商業都市のときはたまたま宝玉の行方を知っている人と早々に出会えたけど……今回もそんな偶然が起きるとは思えないよね」

女友「目星としては今回同様に行政側が教会の取り壊しを決行したはずですから」

女友「役場の資料から当時どのように工事が行われたのか調べるのがスタートになると思いますね」



女「でも商業都市では取り壊しが30年前に行われたって話だったよね」

女「観光の町でもそう変わらないだろうし……そんな昔の資料残っているかな」

女友「残っていると願うしかありませんね。自分たちの手で一から知っている人を探すとなると途方も付かないでしょうし」





男(女と女友は心配しているが……俺は正直何とかなると思っていた)

男(商業都市の時だって構えていたが、結局あっさり手に入れることが出来たんだ。今回もどうにかなるだろう)

男(そうして宝玉をがんがん手に入れて元の世界に戻ってやる!)



男(馬車での道中は特にトラブルもなく、その日の夜には観光の町にたどり着いた)

男(俺たちは宿に泊まり、翌日から宝玉の捜索に取りかかる)

570 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:27:57.15 ID:lCeMl+eh0







――そして一週間が経った。







男「………………」

男(宝玉の行方は依然として知れない)

男(現実は非情である)

571 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/18(火) 21:28:59.41 ID:lCeMl+eh0
続く。

2章はストレートだったので、今回は変化球です。
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/19(水) 01:22:49.82 ID:Y2O9ZHDJo
乙ー
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/19(水) 06:21:31.24 ID:K/j7LuxQO
乙!
574 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:05:30.69 ID:NoBGgYUc0
乙、ありがとうございます。

投下します。
575 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:06:49.85 ID:NoBGgYUc0

女(私はこの観光の町に来てからの一週間を振り返る)



女(一日目は予定通り役場に向かった)

女(受付で教会の取り壊しについて知りたいと話すと、応対してくれた若い事務員はそもそも女神教自体を知らなかった)

女(なので一番古株の人に取り次いでくれたが、その人も女神教のことは知っていてもこの町に教会があったことすら知らなかった)

女(なので役場に残っている何十年分もの資料を全て借りた)

女(公共工事についての資料だけで良かったのだが、ちゃんと整理が出来ていなかったようで)

女(議事録、連絡メモ、予算表など雑多に入り混じる資料の山から探さないといけなかった)

女(私たち三人総当たりで調べ始めたが、収穫無くその日は終わった)



女(二日目も朝から引き続き作業を続けて、夕方ごろようやく教会の取り壊した工事の資料を見つけた)

女(どうやら40年ほど前に行われたこと、そして内部から出てきた物は当時の町長が受け取ったことが判明した)

576 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:07:34.31 ID:NoBGgYUc0

女(三日目は当時町長だったという人物にアポを取り話を聞こうとした)

女(しかし、40年前で既に高齢だったため亡くなっていることが分かった)

女(そのため息子である人に話を聞くことにしたが、当事者でないためどうなったのか詳しくは知らないということだった)

女(アポを取るために使った時間もあり、その日の調査はそこで終了した)



女(四日目はその息子さんに頼んで遺留物の中に宝玉が無いかを調べた)

女(町長を務めるくらいなのでその屋敷は大きく、捜索するだけで一日が終わった。宝玉は見つからなかった)



女(五日目。捜索したのに見つからないのは変だと関係者に色々と聞き込み回った結果)

女(どうやらお金に困った屋敷の清掃係のおばさんが遺留物の中から価値のありそうな物を盗み)

女(一年ほど前に売り払ったのだと白状した)

女(私たちが息子さんに突き出すと『困っていたなら相談してくれれば良かったのに』『申し訳ありません』と何やらドラマが始まった)

女(が、私たちが関与することでもないため、どこに売り払ったのかだけを聞いて後にした)

577 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:08:07.44 ID:NoBGgYUc0

女(六日目。遺留物を買い取ったという業者に話を聞く)

女(するとその中に宝玉はあったということで、今度こそ手に入ったと思った)

女(しかし、そこは買い取った物も販売する現代で言うリサイクルショップのようなもので)

女(買い取った後、商品として出されていた宝玉は既に購入されていた)



女(購入者が誰なのかと聞くと、顧客の情報を伝えるのはちょっとと難色を示されたが)

女(女友が『間違って売ってしまったんですけど、祖父の大事な形見の品なんです! どうか教えてくれませんか!』)

女(と真に迫った演技を披露して、漏らしたことを絶対に口外しない代わりに教えてもらった)

578 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:08:35.36 ID:NoBGgYUc0

女(七日目。教えてもらった購入者、富裕層向けの高級宝飾店を訪れる。この店のオーナーが宝玉を買ったようだ)

女(店員がそのとき聞いた話によると、加工して商品として売り出すつもりとのこと)

女(なので店内を一巡するが、宝玉らしき商品は見つからない。ここでもまた誰かに買われたのだと推測した)



女(店員に買った客の話を聞いたが、店の信頼問題だからと何も教えてもらえなかった)

女(宝石店の顧客情報はそのまま泥棒の標的になる。明かせないのも分かるところだ)



女(仕方ないので出入りする客に話を聞いて回る)

女(すると、常連の一人から気になる情報が手に入った)

女(曰く、そのような青い魔法陣が浮かぶ宝石をあしらったアクセサリーがこの前まで店頭に並んでいたが、最近無くなったので誰かが買ったんじゃないかと)

女(どのような種類のアクセサリーかは覚えていなかったようだったが、特徴的な宝石だったため間違いはないと太鼓判を押された)



女(そして夜になったため調査を切り上げ宿屋に戻って……現在に至る)

579 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:09:10.58 ID:NoBGgYUc0



男「ああもう、おつかいイベントはうんざりだ!!」 



女(夕食の席で男君が心から叫ぶ)

女(ゲーム用語らしいそれを私はゲームをしないので知らなかったが)

女(この数日男君は何度も同じ事を言っているので意味は教えられていた)

女(どこどこに行ってくれ、という依頼が連続することをおつかいイベントというらしい)



女友「そうですね……流石に私もグッタリです」

女(前回の宝玉が楽に手に入っただけで、普通はこんなものですよ、と連日男君をなだめていた女友も、今日は同意していた)



女「だ、大丈夫だよ。あともう少しのはずだし……たぶん?」

女(私のみんなを奮い立たせる言葉もついに疑問形になってしまう)

580 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:09:39.66 ID:NoBGgYUc0

男「……まあ、そうだな。宝飾店に売られていた商品を買ったのは個人だろう。今度こそ他の場所に手渡っていないはず」

女友「そうですね、あと一歩のはず」

女(それでも効果があったようで男君と女友が少し前向きになったところに、私は続けて発破をかける)



女「そうだよ! だからどこの誰が買ったのか全く手がかりもないけど、頑張って探そうね!」



男「ぐはっ……!!」

女友「……」



女(男君が大ダメージを受けたような断末魔を発し、女友の目が虚ろになる)

女(どうやら二人にトドメを刺してしまったようだ)



女(……うん、言ってから私もマズいなと思った)

581 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:10:12.36 ID:NoBGgYUc0

女(しばらくしてダメージから回復した二人がポツポツ話し始める)



男「まあ現実問題あとは総当たりするしかないよな……だったら最初からそうするべきだったか?」

女友「誰かが宝玉をしまって表に出してないんじゃないかという不安を抱えながら調べるよりはマシですよ」

男「でも今回買った客がしまっている可能性とか観賞用で家に飾っているという可能性もあるぞ?」

女友「新しく買った宝石ですし、見せびらかすために身につけて出歩いているはずですよ……たぶん」

男「観光客が旅先で珍しい宝石を見つけた、と買ってもう元々住んでいた町に戻っている可能性も……」

女友「考えたくないです……」



女(男君の考えがネガティブになっている)

女(でも実際男君の言った可能性は全て考えられるものだ)

女(特に最後の可能性、もうこの町から出てしまっている場合はお手上げだろう)



男「せめて何のアクセサリーに使われていたのか分かったら助かったんだが」

男「あの店に並んでいた種類全ての可能性があるんだろ?」

女友「ブローチにネックレス、指輪やイヤリング……」

女友「宝石を使ったものって色々ありますからね。……やっぱり無理でしょうか?」

女(女友までネガティブになりかける)

582 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:10:55.18 ID:NoBGgYUc0



女「で、でも見つかりさえすればスパイ問題解決で節約したおかげでドラゴンの交渉で得たお金がたくさん残っているし、買い取ることは可能だよね!」



男「そうだな……余裕はあるし、元の二倍や三倍の値段を吹っかけてでも絶対に譲ってもらおう」

女「うん!」

男「つうかここまで来て諦めたらそれこそ今までの苦労が何だったんだって話だよな」

女「そうだよ!」

女(少しずつ男君が前向きになる)



男「よし。じゃあ後は総当たりなんだ。明日は手分けして探すことにするか?」

女「そうだね、これまでみたいに三人一緒に探す必要もないよね」



女(男君の提案に私は頷く)

女(この流れで女友も前向きにしようと、そちらを見てみると)

583 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:11:27.53 ID:NoBGgYUc0



女友「手分け……して……?」



女(雷に打たれたような衝撃を受けていた)



女「えっと……女友?」

女(一変した雰囲気の女友におそるおそる声をかけるが届いてないようだ)



女(私が見守る中、女友は考え込む様子を続けた後)



女友「ふふっ……」



女(小悪魔的な笑みを浮かべて私をチラリと見た)

女(……え、今のどういう意味?)

女(しかしそれも一瞬で、女友はいつもの調子で男君に話しかける)

584 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:12:15.72 ID:NoBGgYUc0

女友「そうですね、男さん。手分けして探すこと賛成です」

男「そうか。じゃあどう分かれるか?」

女友「まず前提として三手に分かれるのは無しです」

女友「男さん一人にすると身を守る手段が無いというのは以前にも言いましたよね」

女友「この町でちょっと良くない噂を聞きますし、警戒するに越したことはありません」



女(女友の言うことはもっともだけど……じゃあ何故私にあのような表情を向けたのかピンと来ない)

女(それに良くない噂って何だろう?)



男「じゃあ二手ってことになるか。戦闘力のない俺が女か女友のどちらかと組んで……」

女友「それはもちろん女です」

男「……? どういうことだ?」

585 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:12:46.08 ID:NoBGgYUc0

女友「手分けする意味を考えればってことです」

女友「同じ場所を探しても仕方ないですし、色んな可能性を想定しないといけません」

女友「ですから私は富裕層が家に飾っている可能性を想定して別荘地で聞き込みをします」

女友「あの店員の時と同じように『祖父の形見なんです!』と訴えれば話は聞いてもらえるでしょう」



男「あー、あのときの演技は凄かったな。いきなり何言ってんだってこっちが困惑するくらいだったし」

男「そして聞き込みは一人で十分だから、俺と女が組めってことか」

女友「理解が早くて助かります」



女(ニコッとする女友だが……何故かそれを見て私は鳥肌が立った)

女(一体私の親友は何を企んでいるのだろうか?)

586 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:13:22.30 ID:NoBGgYUc0

男「俺たち二人はどこを探せばいいんだ?」

女友「誰かが身につけて出歩いている可能性を考えて人の多い場所を探し回ってもらえますか?」

女友「もうこの町から出てしまった可能性は一旦置いておきましょう、キリが無くなるので」

男「人の多い場所か。観光の盛んな町だけあって候補はたくさんあるけど、そこを回っていくって事で……」



女友「あ、一つ注意事項があります」

男「……何だ?」



女友「それは露骨に宝玉を探している雰囲気を出してはいけないということです」

女友「考えても見てください。観光地で他の客が身につけているものを窺って回る人がいたらどう思いますか?」



男「引ったくりが獲物を品定めしているように思えるな。なるほど」

女友「ええ。なので他の観光客に紛れるために、楽しむことを忘れずに回ってください。そうですね――――」



女(女友は私の方を流し見ながら、その言葉を告げる)



587 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:14:08.87 ID:NoBGgYUc0





女友「ちょうど男さんと女の男女二人きりなのですから」


女友「まるでデートでもしているような雰囲気で観光地を回るとかどうでしょうか?」





女「…………」

女(デート……?)

女(デートって……男女が連れだって楽しむ……あのデート、だよね?)

女(それを……私と男君が……?)





女友「ふふっ……楽しみですね♪」

588 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/20(木) 20:14:43.14 ID:NoBGgYUc0
続く。

コメディタッチの展開が続きます。
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/20(木) 22:07:21.94 ID:mhOdmMzzo
乙ー
590 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 14:54:47.20 ID:CnsW+nv90
乙、ありがとうございます。

投下します。
591 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 14:56:05.07 ID:CnsW+nv90



女「ちょっと、女友!! 私と男君が……デ、デートってどういうこと!?」



女(男君には一足先に部屋に戻ってもらい、私は宿屋の廊下、人の迷惑にならない場所に親友を呼びだして問いつめる)



女友「どういうことと言われましても、説明した通り宝玉を探すのに必要なことで……」

女「そういう建前はいいの! あからさまな提案をして、何か意図があるんでしょ!!」



女友「それでしたらもちろん二人をくっつけるためですよ」

女「うっ……」

女(きっぱりと本音をぶつけられるとこっちがひるんでしまう)

592 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 14:56:56.92 ID:CnsW+nv90

女友「今まで失念していましたが、客観的に見ると私ってお邪魔虫ですもんね」

女友「私さえいなければ女は男さんと二人きり……良い響きです」



女「何言ってるの。女友はお邪魔虫じゃないよ。私の大切な仲間だって」

女友「女……」

女「だから明日もやっぱり三人で――」



女友「と、それはさておき明日は二人で出かけてもらいますからね」

女「ちょっとくらい流されてくれてもいいじゃん!」

593 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 14:57:28.59 ID:CnsW+nv90

女友「大体どうして渋っているんですか。別に男さんとデートするのが嫌ってことでは無いんでしょう?」

女「それは……そうだけど」

女(むしろ何回と妄想したくらいだ)



女友「だったら何が心配なんですか?」

女「その……いざ本当にデートするってなると……緊張して」

女友「…………」



女「や、やっぱり段階飛ばしすぎだって! こう、もうちょっと手頃なところから始めて……!」

女友「駄目です」

女「そんなっ!?」

594 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 14:58:15.04 ID:CnsW+nv90

女友「商業都市で三日、観光の町で七日なので、三人で一緒に旅を始めてもう十日ほど経ちましたか」

女友「私分かったんですよ。女が死ぬほど奥手だってことに」

女「うっ……」



女友「元の世界で好意をひた隠しにしていた時点で気づくべきだったんですけどね」

女友「日中は共に行動して、夜は一緒の部屋で寝泊まりしているというのに、全く関係が進展しないとは思ってもみませんでした」



女「それは……この一週間は宝玉の捜索に忙しかったからで」

女友「そうやって出来ない言い訳ばかりを積み重ねてたら、元の世界に戻るときまでこのままですよ」

女友「そして魅了スキルにかかっているフリという関係性を失って他人同士に戻ってもいいんですか?」



女「それは……嫌だよ」

女友「ですから強引に距離を縮める場を用意したというわけです」

女友「……もし本当に余計なお世話でしたら撤回しますが」



女「……ううん。ありがとう、女友」

女友「礼はいいです。結果で返してくれることを期待してますね」

女(親友がここまで私のためを思って恋の応援をしてくれているのだ。私が臆してどうする)

595 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 14:59:17.40 ID:CnsW+nv90

女「でも、実際明日はどんな感じに動けばいいのかな?」

女「こっちはデートのつもりでも、男君は宝玉を探す目的に終始するかもしれないし」

女友「デートが成立するためにはお互いの意識が大切ですからね」

女「うん」

女(私がこうして意気込んでいても、恋愛アンチの男君がいつもの調子ならデートの甘い雰囲気にはならないだろう)



女友「なのでデートのフリをするように男さんに言っておいたんですよ」

女「え? どういうこと?」

女友「宝玉を物色して引ったくりに見られるのを防ぐため、男さんにデートのフリをするようにと言ったじゃないですか」

女「あーそういえば言ってたような……デートって単語のインパクトが強くて、ちょっと記憶が曖昧で」

女友「世話が焼けますね……」



女友「男さんの返答も『デートのフリ……か。まあ必要ならやるけど』と言ってましたので大丈夫ですよ」

女「それなら心配いらないね」

596 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 15:00:01.68 ID:CnsW+nv90

女友「明日はいつもより積極的に行ってくださいね?」

女「はい!」



女友「はあ……返事だけはいいですね」

女友「魅了スキルにかかったフリに、デートのフリまで加えたんですから」

女友「恥ずかしがりの女でも上手くやれると信じてます」



女(信じるという割には懐疑的な眼差しだ)

女(今までの行いからして否定できないけど)



女「まあそのさっき言われたように結果で示すので……」

女「女友も明日は別荘地での聞き込み頑張ってね」



女友「………………え、そ、そうですね」



女(私の何気ない言葉に、女友は狼狽えながら答える)

597 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 15:01:14.98 ID:CnsW+nv90

女「何よその間……。……あ、もしかして明日私たちのデートの後を尾けようとしてるんじゃないでしょうね!?」

女友「そ、そんな考えていませんよ。……ちょっとしか」

女「考えてるんじゃない!!」



女友「いいじゃないですか! こうしてセッティングしたんですから、初々しい二人の様子を生暖かい眼差しで眺める役得くらいあっても!!」

女「駄目だって! その……恥ずかしいじゃない!! それに捜索サボるってどういうつもりよ!」

女友「正直別荘地に無いと思うのでいいんじゃないですか?」

女「あった場合どうするのよ!!」



女(私と女友の言い争いはしばらく続いた)

女(最終的に私がデートで何があったのか詳細に報告することを条件に別荘地を捜索すると話を付けた)

女(女友相手だから嘘を吐いても見破られるので誤魔化しは効かないだろう)

女(それでも直接見られるよりはマシだった)

598 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 15:01:53.49 ID:CnsW+nv90

女(翌日の朝)

女(別荘地に向かう女友と先に出る男君を見送り、十分ほど経ってから出かける)

女(男君と一緒に行動するのに遅れて出たのはあのやりとりをするためだった)



女(待ち合わせ場所に指定した公園の噴水前)

女(立ち尽くしていた男君に私は駆け寄って声をかける)



女「ごめん、遅くなって。待ったよね?」

男「いや、今来たところだ」



女(男君は呆れた表情を我慢して、何でもないように装い返事する)

599 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 15:03:07.77 ID:CnsW+nv90

女(男君が先に来ていることは当然分かっているし)

女(一緒の宿屋に泊まっていたのだから待ち合わせなどする必要もない)



女(それでも私は『デートのフリをするにはディテールに拘らないと!』と押し切ってこの茶番に付き合ってもらった)

女(そう茶番だ。分かっているのに)



女「……♪」



女(何ともデートらしいやりとりに胸の内は幸福感に溢れていた)



男「じゃあ行くぞ」

女「うん!」



女(男君と二人並んで歩き出す)

女(デートの開始だ)

600 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/24(月) 15:03:50.05 ID:CnsW+nv90
続く。
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/24(月) 16:34:52.28 ID:WcaXlfNcO
乙ー
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/25(火) 08:41:11.31 ID:Fux7gsXm0
乙!
603 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:39:02.64 ID:fTpm7Ltg0
毎度、乙ありがとうございます。
おそらく同じ人なのでしょうか?

投下します。
604 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:39:37.71 ID:fTpm7Ltg0



男(俺と女は宝飾店で宝玉を買ったのなら、対象は富裕層である可能性が高いと考えて、その周辺の高級店街を並んで歩く)



女「あの店は服屋か……」

男「しかし意外とアクセサリー身につけて出歩いているやつ多いな」



女「そういえばこの世界の流行ってどんな感じなんだろう……?」

男「気を付けて探さないと」



女「あのカップル手繋いで歩いている…………ね、ねえ私たちも……」

男「ん、あれは……」



男(向かいから歩いてくる長身の美人女性の胸元に青い宝石のネックレスを見つける)

男(すれ違い様に凝視して確認するが……いや、中に魔法陣の模様がない。ただの青い宝石か)



男(ん、あっちの女性のイヤリングは……そもそも紫の宝石だな)

男(場所柄か宝石をあしらったアクセサリーを身につけている人は多い。見落とさないように気を付けないと)

605 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:40:14.59 ID:fTpm7Ltg0

女「ねえ、男君」

男(と、そのとき隣を歩く女に服を引っ張られた)



男「……ん、どうした女?」

女「私、怒っているの。何でだか分かる?」



男(ツンとした雰囲気の女)

男(……放置していたんだがちゃんと言わないといけないか)



男「デート中に俺が他の女性に目移りしたからとでも言いたいんだろ」

女「分かっているならどうして?」



男「あのな、それはデートじゃないからに決まっているだろ」

男「俺たちは宝玉の探索のために偽装デートをしているんだ」

男「そりゃあ宝石を身につけている女性を見つけたら、宝玉じゃないか確認するために見るだろ?」



女「……。……。……そ、そうですね」

男(女は虚を突かれた表情になった後、目を逸らして同意する)

606 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:40:55.44 ID:fTpm7Ltg0

男(この反応、やっぱり探索のこと忘れていたな)

男(朝から『ごめん、遅れて』『いや、今来たところだ』のお約束のやりとりを要求されたり)

男(歩いている間もずっとはしゃいでいたり、女が浮かれていることは分かっていた)

男(もしかしたらそれら全てが楽しむフリであり、女がきちんと仕事をしている可能性も考えていたが、そんなこと無かったようだ)



男「………………」

男(だが、それもしょうがないことなのだろう)

男(魅了スキルにより現在女は俺に好意を持っている)

男(好意を持った異性とのデートが、例えフリだとしても楽しいことくらい、俺にだって分かる)



男(だからこそ俺は誤解しないように気を付けないと)

男(女のあの楽しんでいる姿は真実じゃないのだから)



男「デートのフリに意識が行き過ぎて、目的である宝玉の探索を疎かにしたら本末転倒だろ」

女「そうだね、これからは気を付ける」

男「じゃあ怪しまれないように適度にフリをしながらも、真面目に探索するぞ」

男(心を入れ替えた女と俺は探索を再開した)

607 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:41:30.04 ID:fTpm7Ltg0

男「………………」

男(高級店街を歩くこと数分後)

男(俺はその一角にある店に目が奪われていた)



男(そもそもだが俺はファッションというものに頓着がない)

男(元の世界でも最低限おかしくない服装はしていたが、着飾るようなこととは無縁だった)

男(人からの目を必要以上に気にするようならボッチになっていない)



男(そしてこの高級店街に並んでいる店は、服、カバン、靴などファッション関係がほとんどだった)

男(俺には違いがよく分からないブランドごとに店が出されている)

男(その並びに元の世界にあった駅前の巨大商業施設を思い出していた)

男(ああいうところも必要以上にファッション関係のショップが入っているとしか思えないんだよな)

男(だからなのか、その中で俺が唯一興味を引かれる店も同じだった)



男「本屋……か」

男(異世界で初めて見かけた本屋)

男(商業都市にもあったのかもしれないが、見て回ったりしなかったし)

608 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:42:04.71 ID:fTpm7Ltg0

男「…………」

男(正直中に入りたかった)

男(ボッチと本は切っても切れない関係だ)

男(教室でもとりあえず本を読んでおけば独りでいてもおかしくは思われることは少ない)

男(入学して一年ほどだったが、高校の図書室にあるほとんどの本を読んでいた)



男(そんな本の虫である俺にとってこの異世界の本屋は宝の宝庫であろう)

男(何せ、俺の知っている本は一つも存在しないだろうからだ)



男「…………いや」

男(そんな甘い誘惑を発する本屋から、俺は強靭な意志を以て視線を外した)

男(デート中ならいざ知らず、今は宝玉の探索中だ)

男(本屋の客層的に着飾るような人はいないだろう)



男(女に宝玉探索に力を入れるように説いておいて、俺が自分の興味を優先したら立場がない)

男(くっ……さらばだ、異世界の本屋よ)

609 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:42:31.37 ID:fTpm7Ltg0



男「…………」



男(………………ちらっ)


男(ふむ、巨弾ファンタジー新入荷? ファンタジー世界のファンタジーってどうなるんだ?)

男(新版魔法理論書……この世界における新書系だろう本も気になる)

男(あなたはこのトリックに必ず騙される……って、どこの世界も売り文句は一緒なんだな……)





女「男君。本屋に興味があるの?」

男「えっ!? い、いや、そんなこと……」

女「そんな否定してもさっきから本屋の前から進んでないし、横目で宣伝を追っているの丸分かりだし」



男「…………」

男(思っていたより露骨な態度になっていたようだ。強靭な意志で視線を外す、とは何だったのだろうか?)

610 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:43:08.28 ID:fTpm7Ltg0

女「気になるなら入ってみようよ」

男「っ……そ、そんなわけにはいかないだろ」

男「客層的に宝玉を身に付けている人が本屋にいるとは思えないからな。真面目に宝玉の探索を続けるぞ」



女「あー、そういうことね」

男(女が何やら勝手に納得している)



男(俺が『本屋が気になって気になってしょうがないけど、さっき真面目に捜索するように言った手前言い出せない』だろうこと分かってますよ、的な雰囲気だが、そんなことない。誤解だ)



男(何が誤解かって? ……とにかく誤解なのだ)

611 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:43:44.41 ID:fTpm7Ltg0

女「じゃあ、ほら。もしかしてってことはあると思うよ」

男「もしかして?」

女「人間なんて完全に合理的なわけじゃないんだからさ」

女「見せびらかすために宝石を身に付けるような人でも、ふらっと本屋に入る可能性も考えられるでしょ」



男「それは……」

女「うん、きっとそうだって。だからとりあえず入ってみよ」

男「あ、ちょっ……!」



男(女が俺を連れて強引に本屋に入る)



男(『とにかく本屋にさえ入れば男君も素直になるだろう、やれやれ世話が焼けるな』という思惑が見え隠れするが、そんなことない。間違っている)



男(何が間違いかって? ……とにかく間違いなのだ)

612 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:44:20.77 ID:fTpm7Ltg0

女「へえ、色んな本が置いてあるね。雰囲気も元の世界の本屋そっくり」

男「まあマンガも雑誌も無いみたいだから、どちらかというと図書館だな」

女「あ、言われてみれば。よく見てるね」

男「……宝玉を探すためだ」



男(そうだ、本屋に入ってしまった以上仕方ないからな)

男(女の言ったこの中に宝玉を身に付けた人がいる可能性も少ないとはいえ考えられる)

男(だから捜索のため、不本意だが本屋を回ることにしよう。うん)

男(絶対に本屋の魅力に負けたりしないんだからな……!)





 数分後。

男「なるほどな……魔法やスキルが当たり前に存在すると創作にもこんな違いが……」

女「似たような本があっちに特設コーナー作られてたよ」

男「本当か!?」

女「うん。行ってみよ」



男(目を輝かせて本屋を回る俺がいた)

男(本屋の魅力には勝てなかったよ……)
613 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/27(木) 00:44:48.14 ID:fTpm7Ltg0
続く。
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/27(木) 01:00:29.64 ID:l6sakHzmo
乙ー
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/27(木) 06:56:43.08 ID:4KMxaKPVO
乙!
616 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:41:43.34 ID:hdOK/pSd0
乙、ありがとうございます。

投下します。
617 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:42:11.40 ID:hdOK/pSd0



店員「ありがとうございましたー」



男(店員に見送られて、俺と女は本屋を出る)



男「いやー、良い買い物したわ」

男(俺の手元には買い上げた本が2冊あった)

男(正直まだいくらでも買いたい本はあったのだが、この後の邪魔にならないように買い過ぎない方がいい、という女の助言で、泣く泣く厳選した2冊だった)



女「その本選ぶときの男君すごく真剣だったよね」

男「そうだったか?」

女「うん、何かに熱中している男君の姿、新鮮だったよ」

女「それだけ本が好きなんだね。今後は男君の弱点として活用させてもらおうっと」

男「何だよ、新鮮とか弱点とか……」

618 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:42:37.04 ID:hdOK/pSd0

女「あっ、そろそろランチの時間だね」

男「……もうそんな時間なのか」

女「本屋に二時間は居たし」

男「そんな長い時間付き合わせてしまっていたのか。すまん」

女「いいって、私も楽しかったし」

男(女は手を振って否定するが……本音なのか建て前なのか測りかねる)

男(本に囲まれると時間の経過を忘れてしまう。俺一人ならともかく、女が隣にいることを失念していた)



女「この辺りがレストラン街みたいだね。どこ入ろうか?」

男(俺たちは少し移動すると、辺りからおいしそうな匂いが漂う一角に辿り着く)

男(興味深い店が多いのか女は目移りしている)



男「…………」

男(そんな中俺は一つの店、汁に入った麺に野菜やチャーシューがトッピングされた料理……)

男(見た目まんまラーメンを提供する店に視線が引きつけられていた)

619 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:43:43.15 ID:hdOK/pSd0

女「そこに入ろうか、男君」

男「えっ!? い、いやそんなこと」

女「もうその反応は良いから。ラーメンも弱点なんだね」



男(俺の言葉を軽くスルーして、女は強引に入店する)

男(俺のわがままにより、デートらしさが欠片もないラーメン店に入った形になってしまう)

男(大変心苦しかったがラーメンの誘惑には勝てず、注文してやってきたものをウキウキした気持ちで食べ始めた訳だが)



男「何か違うな」

女「確かに……」



男(俺と同じものを注文した女も違和感を覚えていた)

男(目の前にあるのはラーメンに似ていて、俺の語彙力ではラーメンと表するしかないのだが……俺の知るラーメンとは明らかに違うのだ)

620 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:44:09.33 ID:hdOK/pSd0

男「麺が原因なのか?」

女「そうだね、微妙に太いし、ポソポソしているし」

男「どちらかというとうどんだな、これ。スープはしっかりラーメンなだけに違和感がすごい」

女「海が近いからか魚介系のスープだね」



男(ほどなくして、二人とも食べ終える)



男「おいしかったな。……でも、これをラーメンと呼ぶのは俺の主義に反する」

女「今まであまり感じてなかったけど、元の世界とこの異世界で文化が違って当然だもんね」

男「まあ、そういうところか」



男「……あーこのラーメンもどき食ったせいで余計ラーメン食べたくなってきた」

男「元の世界に戻るためにも、午後からは本腰入れて宝玉を探さないとな」

女「そうだね」

621 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:44:34.80 ID:hdOK/pSd0

男「よし、ここからは頑張るぞ」

男(本屋の中を探すためと言い訳したが、楽しんでしまい気分転換になったのは事実だ)

男(元の世界に戻りたい気持ちも思いがけないところから強まった)

男(これなら宝玉探しに集中できる)



男「結局午前中は本屋に入り浸りだったし、それ以外のエリアを回ることにするか」

女「…………」

男「って、女?」

男(隣の女に確認を取ったところ返事がない)



男(女は自分の手の平をじっと見つめていて俺の言葉が届いていないようだ)

男(何をしているのかと俺が見守る中、女は覚悟したように頷くと)



女「ね、ねえ。午後からは私たち手を繋いで歩かない?」

男「…………」



622 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:45:09.54 ID:hdOK/pSd0



女「いや、その、やっぱりデートっていうと手を繋いで歩くのが普通っていうか」

女「ほらあそこのカップルとか、そっちのカップルも手繋いでるし」

女「私たちもそうした方がデートっぽく見えて、宝玉探していても周りにも怪しまれないし!」



男(顔を真っ赤にした女の主張)

男(確かに午前中俺たちは隣同士とはいえ、微妙に距離を開けて歩いていた)



男「何を思い詰めているのかと心配したが……そんなことか」

女「や、やっぱりそんなこと早いよね! ご、ごめん、今の提案は忘れて――」



男「ほら、行くぞ」



男(俺は慌てだした女の手を捕まえて握る)



女「え、あ……男君の手が……」



男(女は呆けたように重なった自分の左手と俺の右手を見つめている)

623 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:45:37.53 ID:hdOK/pSd0

男「こんなの別に今さらだろ。お姫様抱っこだってされたってのに」

男(商業都市に向かう途中、女と一緒に空を飛んだのを思い出す)



女「お姫様抱っこ……あ、あれはちょっと暴走しちゃって……!」

男「その夜は酔って寝ていたから覚えてないかもしれないが、女を介抱するためにおぶったりしたしな」

女「そ、そうだけど………………って、私は寝ていたから知らないけどね!!」

男「……? まあだから手繋ぐくらい今さらだろ」

男「それに午前中は本屋に付き合ってもらったし、午後は女のしたいことに付き合うぞ」

男「まあ宝玉を探すついでにって形にはなってしまうけど」

男(本屋にいる間は宝玉の探索をすっかり忘れていたから、不公平であるという意味で付け加えた言葉だったが)



女「そ、それくらい全然構わないって!!」



男(女は全然気にしていないようだった)

624 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:46:12.54 ID:hdOK/pSd0

男(というわけで手を繋いで歩き始めた俺たちだったが)



男「…………」

女「…………」



男(開始数分でこの状況が俺の想定外であることが判明した)

男(女に語った言葉は俺の本心だ)

男(お姫様抱っこもおんぶもしたわけだし、今さら手を繋ぐくらいと思っていた)



男(だが、思えばそのどちらも一方的な行動だったのだ)

男(お姫様抱っこは女が暴走した結果で、俺の反応など気にしていなかった。おんぶのときは女が寝ていたため反応は無かった)

男(現在、女と繋ぐ手からは色々な情報が伝わってくる)



男(ちょっと体勢を崩した拍子に握る手に力がこもると、女も釣られて返してくる)

男(手を振ると一種の冗談と捉えたのか、女が大きく手を振り返す)

男(手汗をかいているのは緊張しているからだろうか。……いや、もしかしてこの手汗は俺のものなのか?)

625 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:46:40.99 ID:hdOK/pSd0

男「……手汗すごいぞ、女」

女「え……ほ、本当!? って、もうその指摘デリカシーないって!!」



男(女は一旦手を離すと、服にごしごしとすり付けて手汗を拭く)

男(その隙に俺も一応手汗を拭いておく)



女「ん、もう拭いたから」

男「……ああ」



男(差し出された手を俺は再び握り返す)

男(伝わり出す情報の中には……俺への好意が含まれてることには気づいている)

626 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:47:08.74 ID:hdOK/pSd0



男「………………」



男(それはそうだ)

男(女は魅了スキルにかかっているのだから)

男(作られた偽物の好意だ)



男(分かっている)

男(また勘違いして同じ失敗するつもりはない)



男(ただ……まあ今はデートのフリをしないといけないのだ)



男(だから応えるフリくらいはしていいだろう)

男(今は騙される、裏切られるも無い)

男(全部幻想なのだから)



女「あの店入ってみようよ、男君」

男「お、いいな」



男(女と俺は楽しげに目に付いた店に入ることにした)

627 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/28(金) 21:47:52.15 ID:hdOK/pSd0
続く。

次回でデートのフリパートもラストです。
年末年始もこのペースで投下できたらと思っています。
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/29(土) 05:32:24.99 ID:pJBh8aTAO
乙ー
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 07:11:20.41 ID:bDnZhr1w0
乙!
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 20:08:59.02 ID:IaPMTIYdO
631 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:08:27.49 ID:328Z5VBK0
乙、ありがとうございます。
投下します。
632 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:08:59.13 ID:328Z5VBK0

男(手を繋ぎデートのフリをしながらも、宝玉探索を忘れずに進め、高級店街のめぼしいところは見て回れた)

男(しかし)



女「見つからなかったね、宝玉」

男「そうだな」



男(まあ宝飾店で最近買った客がいるという情報しか無かったのだ)

男(元々干し草の山から針一本を見つけるような無茶だとは自覚している)

男(分かってはいるが、それでも収穫が無いとなるとドッと疲労感を覚える)



男(時間はあっという間に過ぎ去っており、夕方となって日が傾き始めた)



男「女友と宿で落ち合う約束の時間まで後少し余裕があるけどどうするか?」

女「だったらデートの締めくくりに行きたいところがあるんだけど!」

男「……じゃあ探索の締めくくりにそこに行くか」

633 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:09:28.07 ID:328Z5VBK0

男「おお、絶景だな」

男(浜辺の丘。少し高台のここからは水平線に沈みゆく夕日を眺めることが出来た)



女「きれい……」

男(女は俺と手を繋いだままその光景に見惚れている)



男(周囲には俺たちと似たような状況の人がたくさんいた)

男(つまりはカップルが多いということだ)



男(まあ俺たちはデートのフリなのだが……)

男(だからこそ今はカップルに見間違われてもしょうがないというか)

男(実際客観的に見ると俺だってそう思うだろうし……)

634 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:10:13.74 ID:328Z5VBK0

男(だから)



男「こんなデートのフリなんてことするの今日限りだからな」



男(俺は女に釘を刺しておく)



女「私は明日以降もフリをしてもいいと思ってるよ。楽しかったし」

男「そうか。でも駄目だ」

女「男君も楽しかったなら意固地にならなくてもいいのに」

女「でも、分かったよ。次はデートのフリじゃなくって、本当のデートをしてもらえるように頑張るから」

男「……はいはい」



男(女の決意を俺は受け流す)

男(魅了スキルの結果、女が重傷を患っていることは今日一日で痛いほど再確認できた)

男(だったら俺はさっさと元の世界に戻れるように頑張るだけだ。そして一人でお気に入りのラーメン屋に行こう)

635 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:10:45.98 ID:328Z5VBK0

男(と、そんなやりとりをしていると、一組のカップルが目立つ行動を始めた)



男性「俺と結婚してください!!」



男(男性がパートナーの女性に片膝付いて手を差し出す)

男(どうやらプロポーズのようだ)



男(沈みゆく夕日を背景にプロポーズ。絵になる光景ではある)

男「が、よく衆人環視の状況でやるな……」

男(周囲のカップルにも聞こえていたようで俺と同じように関心を寄せている)



女性「そ、その……」

男(いきなりのプロポーズのせいか、それとも注目が集まったせいか、相手の女性は困惑している)

636 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:11:16.55 ID:328Z5VBK0

女「す、すごい場面にあっちゃったね……」

男(当然女も気づいていて経過を見守っている)



男「…………」

男(俺はというと少し別のことを考えていた)



男(プロポーズ……つまりはこれが了承されると結婚するわけだ)

男(俺の理想……お互いに信じあえるような恋愛の究極形は結婚だと思っている)

男(お互いに愛し合い、支え合おうと思うから結婚するはずだと)



男(もちろん見合い結婚とか政略結婚とかもあることを考えると全てがそうではないのは分かっている)

男(しかし、今現在結ばれようとしている関係は見た感じ理想の方だろう)



男(正直羨ましかった)

男(だが俺には妬む資格もない)



男(今のままの俺では絶対に叶わない)

男(だから変わろうと思ったんだ)

男(あの夜立てた誓いを確認する)

637 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:11:42.29 ID:328Z5VBK0



男「俺も……誰かを信じられるようにならないとな」



男(つい呟いたその言葉は、風に紛れるはずだったその言葉は)



女「え……?」



男(隣の少女に届いてしまった)



男「あ……」

男(手を繋げるほどの至近距離に人がいることを忘れていた)

638 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:12:26.69 ID:328Z5VBK0

女「男君、今の言葉って」

男「え、俺は何も言ってないぞ。空耳じゃないか?」

女「嘘だよ! 私、聞こえたもん。『誰かを信じられるようにならないとな』って」

男「声マネ下手だな」

男(俺のマネをしたつもりのようだが、全然合ってなかった)



女「そ、それはどうでもいいの! 大事なのは言葉の中身だよ!」

男「別に……ああやって信じ合う関係を作ろうとしている二人を見てちょっと気紛れしただけだ。本気で言ったわけじゃない」



男(反射的に俺は嘘まで吐いて否定していた)

男(そうだ、分かっているのだ)

男(頑なに誰も信じない俺なんかが抱くには大それた希望だって)



男(女に馬鹿にされる前に、防衛行動として自虐する)

男(いつもやっていることだ)

男(自分を守るために自分を否定する)



男(そうやって俺はいつまでだって変わらないのだ)

男(変わろうとする自分を、自分が否定するから)

639 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:12:52.56 ID:328Z5VBK0



女「……もし、本当だったなら私は応援するよ」



男「え?」

女「誰かを信じられるようになるのは幸せへの一歩だから。一人よりも、二人の方が幸せになれるから」

男「…………」



男(自分でさえ否定した俺を……女は肯定する)



女「良かった……男君も本当は変わりたいと思ってたんだね」

男「ち、違……」

女「それくらい私でも嘘って分かるよ」

男「…………」

女「大丈夫、男君ならすぐに変われるって」

640 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:13:20.41 ID:328Z5VBK0

男(何を根拠にそんなことを言うのか)

男(……いや、そんなもの無いのだろう)



男(根拠が無くとも思う。それこそが信じるということだ)



男(女は俺を信じているのだ)



男「…………」



男(その思いに何を返していいのか分からなくなって――)



641 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:13:49.72 ID:328Z5VBK0

男性「受け取ってください」

男(そのとき、プロポーズをしていたカップルの方に動きがあった)

男(男性が指輪を取り出す)



女性「え……えっ?」

男(女性は戸惑いながらも拒むことなく左手を差し出す)

男(その薬指に男性が指輪をはめて)



男性「返事……聞かせてもらえますか?」

女性「……嬉しい」



男(女性はその感触でようやく現実だと認識できたのか、感情が溢れ出る)

642 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:14:16.96 ID:328Z5VBK0

モブ1「ヒューヒュー!」

モブ2「お幸せにな!」

モブ3「いいなあ……」



男(周囲のカップルがはやし立てたり、祝福を願ったり、羨望を向ける)



男「良かったな」

女「うんうん」

男(俺と女もつい今し方のやりとりも忘れてそちらを見ている中)



女性「嬉しい……っ!」



男(喜びが爆発したその女性は左手を掲げ上げると)

男(中に魔法陣が刻まれた青い宝石が設えられた指輪が夕日に反射してきらりと光った)

643 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:14:52.38 ID:328Z5VBK0





『中に魔法陣が刻まれた青い宝石』が設えられた指輪が夕日に反射してきらりと光った。





男「…………………………………………は?」

男(思わず間抜けな声が漏れる)



女「……ね、ねえ男君。あれって」

男(女も気づいたようだ)



男(ドラマのワンシーンのような状況に周囲が盛り上がっていく中、俺たちだけ急激に現実に引き戻される)



男(それもそのはずだ)

男(見間違えようもなく……あの婚約指輪に付けられた宝石は俺たちの求める宝玉なのだから)

644 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:15:42.79 ID:328Z5VBK0

男「…………」

男(可能性は最初からあったのだ)



女友『ブローチにネックレス、指輪やイヤリング……宝石を使ったものって色々ありますからね』



男(この一週間ほど駆けずり回って探していた対象がようやく見つかった)

男(しかし、それを素直に喜べなかった)

男(何故ならば、状況は考えられる限り最悪だったから)



男(俺たちは見つかった宝玉を金を積んで売ってもらおうと思っていた)

男(だが、どうだろう)





男(婚約指輪とはいかほどの金を積み上げれば譲ってもらえるのだろうか?)





男「まあ……プライスレスだよなあ……」

男(嬉し涙まで流し始めた女性を見て、俺はそう判断した)

645 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2018/12/30(日) 12:16:26.40 ID:328Z5VBK0
続く。

縦軸に移行します。
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 14:23:01.06 ID:b+cVVxDn0
乙。

婚約指輪か!そう来たか!
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/30(日) 16:24:33.76 ID:8Jj0VZ+oO
乙ー
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 18:37:22.26 ID:NgD/Eq0/0
乙!
649 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:34:05.29 ID:a/9llj9c0
乙、ありがとうございます。
>>646 嬉しい反応ありがとうございます

投下します。
650 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:35:16.80 ID:a/9llj9c0

女友「やっと帰ってきましたか。約束の時間はとうに過ぎていますよ、二人とも」 

男「すまん」

女「ごめんね、女友」

男(日も沈み、辺りもすっかり暗くなったころ俺と女が宿屋に戻ると、女友に遅刻を怒られた)



女友「まあいいですけどね。それほど盛り上がったということでしょう? どのような進展があったんですか?」

男(何故かニヤニヤして聞き出す女友に俺は告げる)



男「ああ。宝玉の持ち主が見つかった。その情報を集めていて遅くなったんだ」

女友「……?」

651 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:37:35.48 ID:a/9llj9c0

女「女友。私たちはデートのためじゃなくて、宝玉を探索するために出掛けたんだよ」

女友「それは建前で…………あれ、本当に見つかったんですか?」

男「実物をこの目で見ることが出来た。が、少々厄介な状況になっていてな」

女友「はあ、そうなんですか…………なるほど……」

女「というわけで今から報告したいけど……大丈夫、女友?」

女友「……ちょっと待ってくださいね。今真面目モードに切り替えますので」



男(すう……はあ……、と女友は深呼吸を繰り返す)

男(真面目モードに切り替えるって、じゃあ今はどんなモードだったんだ?)



女友「……お待たせしました。宝玉が見つかったんですね。話を聞かせてください」



男「ああ」

男(気になったが流石の切り替えぶりに俺は混ぜ返すことなくさっさと本題を切り出した)

652 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:39:02.93 ID:a/9llj9c0

女友「なるほど。婚約指輪に取り付けられた宝玉ですか。……かなり厄介な状況ですね」

男(女友は話を聞いただけで要点を理解したようだ)



男「一応裏付けは取った。宝飾店で俺たちに『宝玉が最近売れたけど、どんなアクセサリーだったかは覚えていない』って情報を提供してくれた客がいただろ?」

男「その人に指輪だったんじゃないかって確認したところ『……そうそう! それよ! 指輪だったわ!』という反応をもらえた」



女「つまりこの町にあった宝玉で確定ってことだね」

男(これでようやく一週間話だけを頼りに追い続けた線が、実物と結ばれたわけだ)

男(それは素直に喜ばしいことである)

男(しかし、見つかりさえすれば後は楽勝という話だったのだが、残念ながらそうならなかった)



女「よりにもよって婚約指輪だよ。二人の絆の証じゃん。私だったら絶対手放さないって」

女友「そうですね……聞いた話によるとその女性も喜んでいるみたいですし……」



男(女と女友の言うとおりだ)

男(現在宝玉ゲットに立ちふさがっている問題は、プライスレスで大事なものをどのように譲ってもらうかというもの)



男(……簡単な方法が無いわけではない)

653 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:40:13.52 ID:a/9llj9c0



男「一応、俺の魅了スキルをあの女性にかけて、譲ってもらうように命令するって方法はあるぞ」



男(女性は俺から見て魅了スキルの対象『魅力的な異性』に当てはまる容姿だった)

男(つまりこの方法を取る場合の障害物は存在しない)



男(しかし、この方法における問題はもっと根本的なところにある)



女「……本気で言ってるなら怒るよ、男君」

男「冗談に決まってるだろ、だから一応って頭に付けたんだ」

男(女の怒気に俺は両手を上げて争う意思が無いことを示す)



男(つまるところ俺の提案は婚約指輪の強盗でしかないからだ)

男(婚約している二人の仲を引き裂きかねない行為)

男(女が世界を救うためなら犯罪も仕方ないとはならないことは最初の村で確認済みである)

男(それに俺だってあの幸せそうな二人を引き裂くのは心苦しい)
654 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:42:00.18 ID:a/9llj9c0

女友「そうですね、もし本気だったならどのようにおしおきするか迷うところでした」

男(女友も物騒なことを言い出す)

男「だから一応そういう手段もあるっていうだけの話だ。悪かったから聞き流してくれ」

男(俺は全面降伏する)



女友「男さんの方法はナンセンスですが……しかし、他の方法が思いつかないのも事実ですね」

女「否定するだけで代案を出さないのは良くないことだけど……私も……」

男「別の似た青い宝石を見つけて、宝玉と入れ替えるっていうのはどうだ?」



女友「宝飾店を見て回ったときに分かりましたが、あのような魔法陣の浮かんだ宝石はかなり特徴的みたいです」

女友「この異世界でも宝玉以外に存在しないみたいですし、入れ替えはバレるでしょうね」

女「大事なものだから別物になったってだけで大騒動だよ」



男「んー駄目か」

男(女友と女も否定したくてしているわけではないのだろう)

男(状況が厳しいからそうなってしまうってことは分かっている)

655 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:43:20.60 ID:a/9llj9c0

男「やっぱり宝玉が大事なもので譲れないものになっている時点で、手に入れることは不可能じゃないか?」

男(ここまで来て諦めたくはないのだが、俺に出せる案はこれ以上ない)



女「うーん……そうかも」

男(女も同意する)



女友「……結論を出すのはちょっと待ってもらえますか」

男(と、女友だけがその流れに反発する)



男「何か考えがあるのか?」



女友「いえ、具体的には」

女友「しかし私はこの事態を二人の話で聞いただけですので、総合的な判断を下すには情報が足りないのです」

656 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:44:54.33 ID:a/9llj9c0

男「つまり情報収集をしたいというわけか」

女友「はい。そもそもなのですが、その婚約した二人の素性は分かっているんですか?」



男「それなら宝玉を持っていると確認した後に調べたんだが……プロポーズした男性は分からなくてな」

男「婚約指輪をもらった女性は有名だからかすぐに分かった」

男「観光の町において一番大きな別荘を構えている家の一人娘、お嬢様だそうだ」



男(この点も宝玉を譲ってもらう一つの問題となっている)

男(もしお金に困っている人なら大金の暴力を振るうことも最悪考えられたが、相手が大富豪では無理だ)



女友「では明日その方に会いに行きましょう」

男「俺たちも本人と直接話をしたわけではないし、一回会って話すのは賛成だ」

男「だが相手は大富豪だぞ。アポ取れるのか?」

女友「取れるのかではなく、取るんですよ。一つ案があります」



男(女友は自信満々に言い切った)

657 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/01(火) 22:47:22.98 ID:a/9llj9c0
続く。

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/01(火) 22:51:23.91 ID:fR75mwGyo
乙ー
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 00:42:50.62 ID:XFibHNrRO
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 14:25:19.79 ID:7UJ5uOv70
乙!
明けましておめでとうございます。
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 20:44:14.81 ID:Rh13+q0H0
あけおめ乙!
662 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:17:14.43 ID:o33qOcuu0
乙にあけおめ返信ありがとうございます。

投下します。
663 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:17:44.88 ID:o33qOcuu0

女(翌朝)

女(私たち四人は大富豪の別荘敷地内の庭を歩いていた)



男「古参商会の伝手を使うか……なるほど、考えたな」

女友「すごいのは大富豪のお得意さんになっていた商会の方ですよ」

女(女友が四人目に話を振る)



商会員「会長の命令なので許可しますが、悪い印象を与えないように気を付けてください」

女(ともに歩く古参商会の商会員の人に注意を受けた)

664 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:18:51.01 ID:o33qOcuu0

女(商業都市で私たちがスパイ活動を解決した古参商会)

女(商会長はその際恩義を感じていたようで、宝玉集めに全面的な協力する事を約束してくれた)



女(そこで女友はこの観光の町にある古参商会の支店を朝から訪問)

女(婚約指輪に設えられた宝玉の持ち主、お嬢様さんにパイプが無いか聞いたところ)

女(ちょうど御用聞きに伺う予定があったということで、それに付いていってるわけだった)



男「ていうか今さらだが御用聞き、って何だ?」

女友「簡単に言えば店の方から出向いて、お金持ちなどのお得意様に注文を聞くってことですよ」

男「客が店に行くんじゃなくて、店の方から客に行くのか」

女友「そこまでするほど大金を使ってくれる上客だからですよ」

女友「日本でも百貨店などが現在もやっているところがあります。私の家にも来ていましたね」

665 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:19:34.77 ID:o33qOcuu0

男「とんと縁が無い話だな……って、そういえば女友の家は金持ちだったか」

女友「ええ、もうお金だけは腐るほどある家ですよ。それに釣られたのか色々腐っている家です」

男「えっと……」



女友「愚痴っぽくなりましたね」

女友「大丈夫ですよ、今はお金よりも大事なもの……愛に気づきましたから♪」

男「……っ! って、抱きつくな、女友! ああもう、この感じ久しぶりだな!!?」



女(女友がふざけた感じで男君に抱きつく)

女(思わず発してしまった暗い言葉を誤魔化すためであることは端から見ていた私にも分かった)



女「二人とも離れないと。そろそろお屋敷に付くよ」

男「ほら、女も言ってるじゃねえか!」

女友「もう……仕方ないですね」

女(私の注意に二人が離れると)



執事「お待ちしておりました、古参商会の方ですね。ご足労ありがとうございます」

女(ちょうど屋敷から出てきた執事に私たちは迎え入れられた)

666 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:20:22.34 ID:o33qOcuu0

女(私たち四人は執事に連れられて、執務室へと案内される)

女(男君、私、女友は元々御用聞きに行くつもりだった商会員に付き従う見習いという設定だ)

女(本来の仕事をその商会員の人がこなしていく)



女(すると目的の人がやってきた)



お嬢様「爺、頼みたいことが……って、この人たちは」

執事「お嬢様、古参商会の人です」

お嬢様「あら、もう来てたのね! 色々欲しいものがあったところですの!」



女(婚約指輪の持ち主、この別荘の主の一人娘、お嬢様さんだ)

女(毎回御用聞きに窺う度に、色々と注文してもらうと聞いていたので、この展開は想定済みだった)

667 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:21:01.52 ID:o33qOcuu0

お嬢様「指輪に合う新しいドレスやアクセサリーでしょ。それに調度品一式。あとあの人も好きな花束ね。他には……」

女(お嬢様さんからマシンガンのように告げられる要望を商会員の人はメモしていく)



お嬢様「……と、まあそんなところね! 細かい調整は任せたわよ!」

執事「了解しました、お嬢様」

女(執事が頷くと、商会員と話し合いに入る)

女(商会員が要望にあった品物を提示して、執事がそれでいいのか確認するという作業のようだ)



女友「お嬢様」

女(そのタイミングで女友が話しかける)



お嬢様「……ん、そういえばあなたたち誰?」

女(どうやら私たちは認識されていなかったようだ)



女友「古参商会に務める見習いです。毎度贔屓にしてもらいありがとうございます」

お嬢様「へえ……」

女(あまり興味なさげな様子だ)

668 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:21:39.41 ID:o33qOcuu0

女友「ところでお嬢様。今日はご機嫌良いみたいですか、何かあったのでしょうか?」

女(女友が餌を撒く。もちろん昨日のプロポーズによると知っていて、そんな聞き方をしているのだ)



お嬢様「あ、やっぱり分かる? ワタクシ、昨日プロポーズされたのよ!」

女(ウキウキで左手にはめられた指輪を見せるお嬢様さん。宝玉もそれに付いている)



女友「まあっ! それはそれは。おめでとうございます」

お嬢様「ふふん、いいってことよ」

女(女友のリアクションに気を良くするお嬢様さん。それを見て会話を誘導していく)



女友「相手はお嬢様お嬢様のお眼鏡に叶ったと考えると、素敵な方なんですか?」



お嬢様「そうよ。最初会ったときも下賤な輩に絡まれていたところを颯爽と助けてくださってね」

お嬢様「最初はどうでも良かったんですけど、その後も行く先々でバッタリと会って」

お嬢様「困っているところを助けてもらったり、ワタクシのお願いを二つ返事で答えてくれたり……」

お嬢様「次第に良い関係になって、それで昨日はあんなロマンチックなプロポーズをしてくれた」

お嬢様「あの人はワタクシの王子様なのよ!」



女(王子様……確かに昨日のプロポーズの雰囲気は最高だったなあ)

女(私も男君に夕日をバックにプロポーズをされてみたい)

669 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:22:56.18 ID:o33qOcuu0

執事「お嬢様、確認終わりました。それで本来は何か用があってこの執務室に来たのでは?」

お嬢様「あ、そうそう。お願いしようと思ってきたのよ」

お嬢様「ワタクシの隣部屋に客室があるでしょ。あそこをあの人の部屋にするから今日頼んだもので飾り付けといて」

執事「分かりました」

お嬢様「じゃあそういうことだから」



女(お嬢様さんは執事にさらっと重いお願いすると、その場を去っていく)

女(残った執事さんが私たちに声をかける)



執事「すいません、お三方。お嬢様に何かワガママを言われませんでしたか」

女友「いえ、楽しくおしゃべりしていただけですよ」

執事「そうですか……ならば良かったです」



女(女友の返事に、ハンカチを取り出して汗を額の汗を拭く執事さん)

670 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:23:37.88 ID:o33qOcuu0

女友「言いにくいことでしょうが……お嬢様は常日頃からワガママを言うお方なんですか?」

執事「……ええ。やれ気に入らないと使用人に文句を言うのは毎日」

執事「肉を提供する店を選び入ったのに、注文の品が出てきたところで『やっぱり今日は魚の気分』なんて言い出すこともありました」

執事「部屋の飾り付けくらいは朝飯前の要望ですな」

女友「そうですか……ではそんなお嬢様にプロポーズするお方が現れて一安心というところですか?」



執事「それはその通りでございます」

執事「旦那様が娘のためにと選んだ方と見合いを何回かしたのですが、お相手に文句ばかりで今まで成立しませんでしたので」

執事「聞けばお相手はお嬢様のワガママにも嫌な顔一つせず聞いてくださる、聖人のような方だと聞いております」



執事「旦那様に顔見せもまだですし、私もまだ会ったことは無いですが、お嬢様が気に入った方となれば大丈夫でしょう」

執事「近いうちに盛大な結婚式が行うときはまた古参商会にお世話になるかもしれません」

執事「……いやはや幼い頃から世話をさせてもらった身としては感慨深いですな」

671 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:24:13.64 ID:o33qOcuu0

女(ではここらへんで、と去っていく執事を見送る私たち)

女(本来の目的、御用聞きも終わったということで、情報収集もここまでだろう)

女(私はお嬢様さん、執事さん、二人が話したことをまとめる)



女(婚約指輪の宝玉の持ち主であるお嬢様さんは、大富豪のワガママばかりな一人娘)

女(そんな彼女に現れた運命の相手)

女(お嬢様さんの困ったところに颯爽と現れ、またワガママにも嫌な顔せず答える、まるで少女マンガに出てくるヒーローのような人)

女(その方からプロポーズを受けて、お嬢様さんも幸せの絶頂と)



女(つまりこの婚約は皆から祝福されていて……その証である婚約指輪の大切さがよく分かった)

女(どうにか譲ってもらう方法を考えるために情報収集に来たのに、逆の結果となってしまった)

女(これではどうにもならない)



女(二人も同じ考えだろうと見てみると――)

672 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:24:56.85 ID:o33qOcuu0



女友「……男さんはどう思いました、話を聞いていて」

男「そうだな、次は事業って感じじゃないか?」

女友「ふふっ、それでは50点です。『夢』の方がこの場合は合っていますよ」

男「なるほど……そっちの方がロマンチックだな」



女(何やら謎な会話が交わされていた)



女「えっと……どういうこと、二人とも?」

女(私の質問には男君が答えた)



男「分かりやすく言うと、宝玉をゲットするための道筋が立ってしまったってことだ」

男「本当残念なことにな」

女「……え!?」



女(昨日とは真逆のことを言われる)

女(つまり今日の情報によって反転したのだろう)



女(でも何が原因でそうなったのか私には分からなかったし……)

女(それに宝玉をゲットできるなら良いことのはずなのに、残念と言う男君の表情は暗かった)
673 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/03(木) 23:26:19.11 ID:o33qOcuu0
続く。

まあピンとくる方は来てると思います。次回答え合わせ。
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/04(金) 00:25:25.51 ID:/9vrqsxH0
乙!
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/04(金) 01:11:52.15 ID:JIcgrqsNO
乙ー
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 06:31:44.95 ID:4Tk4/d1r0

女は割とスペック高いかと思ってたらある部分ポンコツだな
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 19:19:54.21 ID:3uBhknL70
678 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:41:41.01 ID:FqZsGw7m0
乙、ありがとうございます。

>>676 ポンコツっ子かわいい。

投下します。
679 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:42:27.25 ID:FqZsGw7m0

男(その夜、俺たちは酒場にやってきていた)

男(昼間は海で遊んでいた観光客が、夜はこの場所に移り飲めや騒げやとしている場所である)



男(現在の俺たちの目的はお嬢様さんにプロポーズした男性の情報だった)

男(人が集まるこの場所で聞き込みを行う)

男(しかし)



女「依然として掴めないね……」



男「まあ期待はしてなかったけどな」

女友「予想通りですね」



男(女は落ち込むが、俺と女友にとっては想定の範囲内であった)

男(そうだ、おそらくプロポーズした男性の素性は……)

680 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:42:54.64 ID:FqZsGw7m0

女「でも、ゲットできればお手柄なんだよね?」

男「そうだが……望みは薄いぞ」

女「0じゃないだけマシだよ! よし、私もう一回聞き込みに行ってくるね!」

男(めげずに頑張ろうとする女)



男「…………」

男(昼間別荘でお嬢様さんと執事さんに話を聞いて、浮かび上がった可能性)

男(宝玉をゲットできるかもしれないその可能性について、女には未だ詳しく話していなかった)



男(話せない理由をまだ憶測でしかないからと言い訳したが……)

男(本当は懲りずにこんなことを思いつく自分が嫌になったからだ)



男(しかし、女はそんな俺のあやふやな言葉を信じて情報収集を頑張っている)

男(逆の立場だったら、思わせぶりにしていないでさっさと話せと詰め寄っているだろう)

男(なのに何も聞かないのは……女が俺のことを信じているからだ)

681 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:43:35.45 ID:FqZsGw7m0

男「ちょっと待て、女」

女「ん、何?」

男「女友、任せて悪いが全部話しておいてくれないか?」

男(女友も俺と同じことを思いついているようだ。話し手は務まるだろう)



女友「私に丸投げですか? 酷いですね」

男「すまん……ちょっとそれとは別のことを考えたくてな、一人にさせてくれ。この酒場からは出ないつもりだから」

女友「はあ……分かりました。大体いざとなれば魅了スキルの命令で男さんの言うことには逆らえませんし」



男「恩に着る。それともう一つ悪いが、聴覚を強化する魔法ってのがあったらかけてもらえないか?」

女友「ありますけど…………男さん自身でオンオフハイロウの調整は出来ないので、あまり大きな音を聞かないように注意してくださいね」

女友「というわけで……発動、『犬の耳(ドッグイヤー)』」

男「助かる」



男(女友は詳しいことを聞かずに魔法を使ってくれる。手元から発された光を浴びた後、俺は二人の側を離れた)

682 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:44:11.76 ID:FqZsGw7m0

男(この酒場の広いフロアには席が無く、客たちが自由に立ち飲みしている)

男(中央は一段盛り上がったステージのようになっていて、そこで客や酒場専属のダンサーが踊ったりして注目を集めている)

男(落ち着きたい人は壁際のカウンターバーで飲むことが出来る。美人のバーテンダーがカクテルを客に振る舞う姿が見えた)

男(と、そのように客が自由に行き交う店のため、俺が部屋の隅に膝を抱えて座り込んでいても目立つことは無かった)





男「………………」

男(考えるのは昨日、デートのフリ終わり際にあった俺の失言から始まった一幕だ)





男『誰かを信じられるようにならないとな』

女『大丈夫、男君ならすぐに変われるって』



男(変わりたいと思った自分を自分で否定した俺に、女は変われると俺を肯定した)

男(女が俺のことを信じているからの言葉だろう)

男(女の気持ちに何を返していいのか分からなくなって、直後宝玉が見つかったことによりうやむやになっていたが、ずっと考えていた)



男(女は俺のことを信じている)

男(だったら、俺は女のことをどう思ってるのか?)

683 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:44:55.24 ID:FqZsGw7m0

男(パーティーを組んだ経緯を思い出す)

男(イケメンの襲撃により命の危機に陥った俺は、戦闘力0である弱点を補うために女と組んだ)



男(暴発により魅了スキルをかけてしまったことや)

男(竜闘士というクラスメイトの中でも最強の力というものに引かれた部分が大きかったが)

男(それ以外にも要因はあった)



男(あのとき女には魅了スキルによる『俺のことを追うな』という命令がかかっていた)

男(それにより俺を助けに来ることが出来なかったはずなのに助けに来た)

男(つまり魅了スキルの外で女が俺を守ろうと思ったのだ)



男(それがクラス委員長による義務感なのか、もしかしたら他の理由によるものなのかは分からない)

男(それでもこの一例により、女は俺に少なくとも危害を加えることはないと『信用』している)

684 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:45:25.83 ID:FqZsGw7m0



男(だが、俺は女を『信頼』することが出来ないでいる)

男(ここまで一緒に旅をして、商業都市ではあそこまで人を信じる姿を見て、こんな俺でも変われると言ってくれた彼女を……)

男(信頼出来ないどころか、疑っているのだ)



男(どうして俺なんかが変われると言うのか?)

男(何か裏があるのではないのか?)

男(本当は馬鹿にしているのではないか?



男(そんな思いが昨日からずっと止まらない)

男(馬鹿らしいことは分かっている)

男(今までの女の様子を見るにそんなことはないと思う自分もいる)



男(だが、女の輝かしいばかりの信じる心に照らされるようにして、俺の影のように暗い猜疑心が浮かび上がるのだ)



685 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:46:04.65 ID:FqZsGw7m0

男「ははっ……やっぱり俺は変われねえよ……」

男(信じてくれた人間にさえこんな仕打ちをするやつなんだ)

男(これでは昨日のプロポーズにより婚約した二人のような、信じ合う関係は作れないだろう)



男(しかし開き直りだがそんな関係、簡単に作れるものではないと思うのだ)



男(昨日、俺の恋愛観における理想だとした結婚)

男(だが、日本での離婚率は30%ほどあった。夫婦が三組いれば一組は離婚する)

男(やむを得ない事情によるものもあるだろう)

男(しかし、大部分が信じ合うと決めたはずの二人のどちらかが裏切ったことによるはずだ)



男(つまり裏切りなんてありふれているわけだ)

男(だったら信じるより最初から疑っていた方が効率がいいではないか)



男(そんな俺の考えを証明するように――――話し声が聞こえ始める)



686 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:46:46.08 ID:FqZsGw7m0

男(酒場の隅に座り込んでいる俺だが、それには一つ狙いがあった)

男(というのもこの酒場の建物の構造を最初から怪しいと睨んでいたのだ)

男(外から見た大きさと、内部の広さが一致していない)



男(つまり隠し部屋なるものが存在すると踏んでいた)

男(用途は広さからしておそらくVIPルームだろう)

男(一般客が入るこのホールとは出入り口を別にするその部屋は……どのような存在が利用するのだろうか?)



男(建物の老朽化により壁に入ったひび割れ)

男(そこから壁の向こうの話し声を、女友の魔法によって強化された聴覚が捉える)




男(駄目で元々だったのだが……どうやら大当たりを引いたようだった)
687 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:47:29.53 ID:FqZsGw7m0

部下「それにしても兄貴があのワガママ娘、お嬢様と結婚っすか」

男性「ああ、俺がピンチを救うナイトを演出するために絡むチンピラ役ご苦労だったな」



部下「もう慣れた役割っす。しかしプロポーズにあんな高い指輪を送って、無駄な出費じゃないっすか?」

男性「おまえは女心が分かってないな。相手は大富豪の娘だ」

男性「あれほどのものを送らないとこっちが本気だと思ってくれないだろうよ。それにどうせ使った分は回収するしな」



部下「じゃあ計画も次で最終段階っすか」

男性「ああ。『すまない……夢が叶うチャンスが回ってきたんだ。そのためには金が必要で……いや、君に迷惑をかけるつもりはない。ただしばらく身を粉にして働く必要があるから、結婚は少し待ってくれ』とか言えば、あっちから金を出すだろうよ!」



男性→詐欺師「それで存分にふんだくってからトンズラだ!」



部下「毎回毎回、ワルっすね」

詐欺師「荷担するおまえらも一緒だろうよ。つうわけで今日は計画成功の前祝いだ。おまえらじゃんじゃん頼んでいいぜ!」



部下たち「「「おおおーーっ!!」」」



688 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:48:20.80 ID:FqZsGw7m0



男「………………」



男(この世はこんなもんだ)



男(だから人なんて信じられないんだ)



689 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/05(土) 22:50:21.67 ID:FqZsGw7m0
続く。
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 23:25:28.46 ID:+7LyyGr/o
乙です
男の考えが確信に変わっても苦い結果になりそうだなぁ
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 23:33:04.87 ID:/SIaK3yM0
乙!
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/06(日) 00:22:06.48 ID:By9XnqOUO
乙ー
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/06(日) 12:54:27.44 ID:3tozwfbg0
694 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:30:07.39 ID:d3hCy8e20
乙、ありがとうございます。

>>690 どうなるのでしょうか(まだ何となくしか考えていない)

投下します。
695 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:30:55.94 ID:d3hCy8e20

女「結婚詐欺!?」

女友「しっ! 誰が聞いているか分からないんですから、あまり大きな声を出さないでください」



女(私たちはプロポーズした男性の情報を収集していた)

女(この酒場でも空振りだったが、さらに頑張ろうとしたところ)

女(男君がずっと黙っていた宝玉をゲットするための方法を女友から私に話すように頼んだ)



女(そして話された内容が……お嬢様が結婚詐欺にかかっているのではないか、というものだった)



女「ご、ごめん……でもどういうこと?」

女友「都合が良すぎるんですよ。お嬢様がピンチに陥ったところを助けに入り」

女友「その後も行くところに現れて、どんなワガママも許すなんて男性」



女「でも少女マンガとかだと良くある話じゃん」

女友「だからですよ。創作にしか存在しないような男性が、現実にいるはずないでしょう?」



女「それは偏見だと思うけど……」

女(まあ女友が疑う気持ちは分かった)

696 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:32:41.73 ID:d3hCy8e20

女友「だったらその男性は何が目的なのか……お嬢様は大富豪の娘です」

女友「そのお金を狙っているのではないかと私と男さんも読んだわけです」

女「えっと……でも、証拠はないんだよね?」



女友「はい。だから女に話すのは躊躇っていたのです」

女友「男性の素性がクロかったり、最悪お嬢様が結婚する前にお金を要求されたりしたら、そのときに話そうとは思っていたのですが」



女「なるほど……でも、それでどうして宝玉が手に入るの?」

女友「もし結婚詐欺が真実だとしたら、それを暴くことで婚約は破談になるでしょう?」

女友「そしたら婚約指輪は大事なものじゃなくなります」

女友「お嬢様の性格的にこんなものいらないって投げ捨てるでしょうから、それをキャッチすれば手に入ると」

697 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:33:11.10 ID:d3hCy8e20

女「それって二人の仲を引き裂いて宝玉を手に入れようってことでしょ? そういうの感心しないな」

女友「ですがもし結婚詐欺が本当だとしたら、二人の仲はそもそも偽りであったということでしょう?」

女友「騙されているお嬢様を助けるということになりませんか?」



女「……女友の言いたいことは分かったよ。でも私は二人の仲が本物だと信じているから」

女(あの夕日を背景にしたプロポーズが嘘だったなんて……思いたくない)



女友「その気持ちは否定しません。ただ証拠が出てきたときは折れてもらえると助かります」

女「……分かった」

女(女友は最大限私の思いを尊重してくれた)

698 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:33:40.07 ID:d3hCy8e20

女「男君が私にこの考えを話したがらなかった理由が分かったよ」

女「商業都市の時と同じなんだね、信じ合っている二人を疑いの目を向けるって」

女(古参会長と秘書さん、信じ合っている二人に疑いの眼差しを向けたのは男君だけだった)

女(私はそれを人を信じるつもりが無いと非難したから言い出しにくかったのだろう)

女(でも……あれ、そういえば)



女友「気づきましたか……」

女「うん。商業都市の時は男君だけが疑っていた」

女「でも今回は女友も結婚詐欺の可能性について疑っているんだよね? どうして?」

女(女友だって信じ合っている二人を疑いたくないと、私と同じ立場だったはずなのに)



女友「二つ理由があります。一つは今回私はプロポーズの現場をその目で見ておらず、二人が信頼し合っている場面を見ていないため実感に乏しいこと」

女「百聞は一見に如かずって言うもんね。もう一つは?」

女友「教育によるものです。金に引き寄せられた人物か否かの見極めは、最重要課題でしたから」

女「……そっか」

女(女友とお嬢様はどちらも大富豪の娘で境遇が似ているのだろう)

699 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:34:15.47 ID:d3hCy8e20



女友「あの人は私のIfです。親から教育ではなく愛情を注がれて育ち、女という私自身を見てくれる人間と出会わなかった私です」



女「えっと……どういう反応をすればいいの?」

女友「照れてください。のろけてるのに困惑されるとこっちが恥ずかしくなります」

女「ごめん……私のこと大事に思ってくれてありがとうね」

女友「さ、さらに恥ずかしくなったじゃないですかぁ!」



女(女友が顔を真っ赤にしている。珍しい一幕だ)

女(珍しく攻勢に入れそうだったので、このままいじり倒そうと私は考えるが)



女友「そういう女は昨日のデートのフリどうだったんですか!」

女「あぅ……」

女(カウンターが思いっきり急所に入る)



女友「少しは進展があったんですよね?」

女「そ、それは……」

女友「終わったら話す約束でしたよね? あーあ私は一人寂しく別荘地で無駄骨な聞き込みをしたっていうのに……」

女「わ、分かったから! 話すから!」

女(泣きマネまで始めた女友に私は昨日のデートのフリについて詳細に話す)

700 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:34:44.67 ID:d3hCy8e20



女「――――――ということで宝玉が見つかって甘い雰囲気は終了したんだけどね」

女「でも男君と手を繋いで楽しんだり、十分に進展したでしょ!」

女(最初こそ話すことを恥ずかしがっていたが、途中から調子が乗ってきて意気揚々と話した私を)



女友「最低限、といったところでしょうか」

女「ぐっ……」

女(女友はバッサリと切り落とした)



女友「手を繋いだくらいで、誇らしげにならないでください。小学生レベルですか」

女「えっ、今どきの小学生ってそんなに進んでるの!?」

女友「さあ、知りませんけど。ですが一緒に旅をして酒を飲むほどなんですから、せめてハグだったりキスくらい行くものだと思ってました」



女「ハグ……っ!? キス……っ!? そ、そんなの早すぎるって!!」

女友「日本では今や高校生女子の40%がキスを経験しているって調査結果を聞いたことがあります」

女友「ましてや15で成人と扱われる異世界ですし、むしろ遅すぎるくらいです」



女(もっと先にあると思ったものを身近に言われて私は混乱する)

701 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:35:17.90 ID:d3hCy8e20

女「で、でも……相手は男君だし……」

女友「……まあ、そうですね。男性側からのリードが望めないと考えると頑張った方ですか」

女「で、でしょ!」

女友「それに興味深い話も聞けたようですしね」

女「うん。男君も本当は人を信じられるようになりたいんだよ」

女(ポロっとこぼれた言葉、だからこそ本音だと思われるその言葉)



女友「考えてみれば男さんもこの異世界で人を信じないことで痛い目にあっていますしね」

女友「トラウマを克服したいと考えてしかるべきでした」



女「これって一つの進歩だよね!」

女「男君が人間不信を克服すれば、それを元にする恋愛アンチも解消される」

女「男君自身が直したいと思っているならすぐだよね!」



女(そうなれば……フリとはいえ、昨日のデートあんなに楽しめたのだ)

女(私と男君、相性は悪くないはず。付き合うことも可能になるはずだと――)

702 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:36:12.02 ID:d3hCy8e20



女友「早考は控えておいてください」

女(しかし、明るい展望に女友が水を差す)



女「え……どうして?」

女友「本人が直したいと思っている、なのに直っていない。そのことが男さんのトラウマの根の深さを表しているからです」

女「それは……」

女友「まあ全く直す気がないよりはマシであることは確かなのですが……今回の出来事が影響しないといいですね……」

女「今回の出来事?」

女(首をひねる私に、女友が例え話を繰り出す)



女友「例えば女が新たな豊胸マッサージの話を聞いて頑張ろうとしますが」

女友「先にそれを体験した人がいて『このマッサージ全然効果が無かった!』なんて訴えてたらやる気が無くなるでしょう?」



女「例えが酷くない?」

女(私にいじられたことをまだ根に持っているのだろうか)

703 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:36:48.57 ID:d3hCy8e20



女友「人を信じようとする男さんが、プロポーズするお嬢様と男性から『自分もこのように信じ合いたいな』と思っていたとして」

女友「その絆が偽りだったと判明したら……やっぱり人を信じるなんて馬鹿がすることだと……」

女友「そう思ってしまうことが心配なんです」



女「それは……」

女(女友が暗い可能性を指摘したそのとき)





男「すまんな、二人とも」

女(一人この場を離れていた男君が帰ってきた)



女「あ、男君」

男「女は女友から話を聞いたか?」

女「えっと……二人の婚約が結婚詐欺かもしれないって話?」



男「ああ、それだ。そして……どうやらそれは真実のようだ」



女「…………」

女(男君の思い詰めた顔を見て、どうやら恐れが現実になったことを感じ取った)

704 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/07(月) 15:40:20.81 ID:d3hCy8e20
続く。

ちなみに性交渉は約20%だそうです……え、それ本当に現実?
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 17:48:45.16 ID:WreaMhRqO
乙!
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 23:02:43.93 ID:QChbayi00

…に、20%だとっ!?
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/07(月) 23:59:14.36 ID:LP1VWOIsO
乙ー
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 06:29:11.67 ID:xxVMa1xK0

逆に考えるんだ
俺たちは残りの平凡な80%の中の1人だと
709 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:48:21.89 ID:/xRtS9Ep0
乙、ありがとうございます。

>>706 リアクションありがとうございます。

>>708 そうだ、そうだ。

投下します。
710 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:49:12.74 ID:/xRtS9Ep0

男(酒場から宿屋に帰ってきた俺たちはもう夜も遅かったためその日は寝て)

男(翌朝俺が聞いた話を二人に伝えた)



女友「盗み聞いたのがちょうど求めていた話とは、男さんも豪運ですね」

男「一応怪しそうな酒場を選んで入ったとはいえ、俺もここまで上手く行くとは思ってなかった」

男「これで婚約破棄から宝玉を手に入れるルートが確立されたな」

女友「では具体的にどうするか詰めていきましょうか」



男「あーそうしたいんだが……」

男(俺は発言が無いもう一人の方を見る)

711 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:50:32.62 ID:/xRtS9Ep0

女「…………」

男「女、まだ納得できないのか?」

女「あ……ご、ごめん」

男(話を聞いている間も仏頂面だった女。このわだかまりを解くのが先のようだ)



男「気になっているのはあの二人の関係が偽りだったことか?」

女「……うん。やっぱりどうしても……」

女友「言いたいことがあるなら言った方がいいですよ」



女「じゃあその……今の話が男君の聞き間違いだったってことはないかな? やっぱり信じられなくて」

男「……まあ根拠は俺の盗み聞きだけだし、別に信じられなくても仕方ないがな」



女「そ、そんな……私は男君を疑っているわけじゃなくて……!」

男(女が慌てて否定する。今の言い方は俺が悪かったか)

712 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:51:00.53 ID:/xRtS9Ep0

男「落ち着け。女を否定しているわけじゃない」

男「俺だって逆の立場だったら、たまたま行った酒場で盗み聞いた話がちょうど求めていたものだった、なんて胡散臭すぎて信じられないしな」

男「内容もあんなプロポーズをしたカップルが結婚詐欺だったなんて思いたくないものでもあるし」



女「それでも……私が男君のことを信じられなかったのは事実で……」

男(フォローの甲斐無く、女が落ち込む)

男(本当に疑われても仕方ないって思っているのに……どうしてこうなるんだ)





女友「そこまで!」

男(パン、と手を叩き女友が話に割り込んだ)



女友「話が逸れてますよ。宝玉を手に入れるための話し合いをしたいんですが」

男「すまん」

女「ごめん、女友」

713 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:51:27.09 ID:/xRtS9Ep0

女友「事の真相は全て暴けば分かることです。答え合わせはそのときにでもしてください」

女友「ただ今は男さんの話が真実だと仮定して動きます」

女友「結婚詐欺が真実ならば早めに動いて潰した方がいいですし、もし間違いだったとすればそれはそれで結果オーライです」

女友「私たちが疑ってしまった罪悪感を抱えるだけで済むなら安いものでしょう」



男「ああ、そうだな」

女「分かった」

男(女友が強引に話を進める)

男(確かにやつらは計画が最終段階に入ったと言っていた。動くなら早めがいい)

714 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:52:02.55 ID:/xRtS9Ep0

女「じゃあ早速だけど私たちがしないといけないのは、詐欺師って人の身柄を押さえること……でいいのかな?」

男「いや、それだけだとやつが『結婚詐欺をしようとしていたなんて言いがかりだろ!』って認めない可能性がある」

男「俺が話を盗み聞きしていたってだけじゃ根拠が薄いしな」

女「そっか。じゃあ必要なのは結婚詐欺をしようとしていた物的証拠ってことでいいかな?」

男「ああ、それでいいだろう」



男(前回のスパイ騒動で騙していたのが女性の秘書さんであったのと違って、今回の結婚詐欺で騙しているのは男性の方だ)

男(身柄を押さえて魅了スキルを使い即自白とは出来ないのである)



男(これが昨夜酒場で何もせずに帰ってきた理由でもある)

男(対象人物の確保だけでいいなら、VIPルームとはいえ壁一枚隔てたところに目的の人物がいると分かっていた昨夜は絶好のチャンスだった)

715 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:52:30.46 ID:/xRtS9Ep0

女「でも物的証拠ってどうやって手に入れるの?」

男「やつの拠点になら何らかの証拠はあるだろう。だからそれを突き止めるのが先なんだが……」

女「何か気になることがあるの?」

男「ああ。言ったかもしれないが、やつには数人の部下がいるみたいだった」

男(自作自演の救出劇のためだったり、他にも色々お嬢様を落とすのに協力したと見ていいだろう)



女友「組織だった犯行ということですか……となると犯罪者グループが絡んでいるのかもしれませんね」



男「犯罪者グループ?」



女友「ええ。最近この観光の町に巣くっているそうです」

女友「役所で資料探ししているときにそのような話をしているのを聞きました」

女友「どうやらこのころ万引き、ひったくり、強盗、その他色々な犯罪件数が増加しているようで」

女友「捜査したところ集団的な動きが背景にあると判明したそうです」

女友「宝玉を探索する際に、私は男さん一人で動かない方がいいと言いましたよね? それもこの輩に巻き込まれるのを恐れてです」

716 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:52:57.33 ID:/xRtS9Ep0

男「なるほどな……じゃあひったくりに見られないようデートのフリをするように言ったのも、今思えばおおげさだと思っていたが、その辺りと繋がるのか」

女友「ええ。観光で成り立っているこの町ですから、治安の悪化は死活問題です」

女友「観光客に物々しい印象を与えないため目立たないようにですが、かなり警備が強化されているみたいです」

男「それは気づかなかったな」



男「じゃあ詐欺師とその部下たちは、犯罪者グループに所属している結婚詐欺部門のチームだと考えていいのか?」

女友「その可能性は高そうですね」

女「そして物的証拠は拠点にあるかもしれないって話だから……」

女「私たちはその犯罪者グループのアジトを見つけないといけないってこと?」



男「うわぁ……面倒くさいな……」

男(思わず俺は顔をしかめる)

717 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:53:25.69 ID:/xRtS9Ep0

女友「犯罪者グループですから、荒事に通じている人間もそのアジトに何人かいるでしょう」

女友「しかし、私と女の敵ではないはずです」

女「流石にドラゴンより強い人なんてそういないだろうし」



女友「つまりアジトに乗り込みさえすれば勝ちなのですが、その場所が分かりません」

女友「おそらくこの町の治安維持を務めている側も掴んでないでしょう。分かっていたら乗り込んでいるでしょうし」



女「だったらその場所を地道に探さないといけないってわけ?」

女友「まあ……そうなりますね」

男(女と女友の言葉からは勘弁してくれというニュアンスが感じ取られる)



男(それもそのはずだ)

男(つまり新たなおつかいイベント、犯罪者グループのアジトを探せ、が発令されたという事なのだから)

718 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:53:51.40 ID:/xRtS9Ep0

男(この町を駆けずり回って、犯罪被害や犯罪者目撃の証言を集めて、怪しいところを訪れて)

男(その途中で治安維持側にこそこそ嗅ぎ回る俺たちが犯罪者グループの仲間でないかと間違って疑われ争い)

男(結局和解したところで新たな情報を聞くことが出来て)

男(それと俺たちが持っていた情報を組み合わせて判明したアジトに突入する…………)





男「ああもう、やってられるか!!」





男(そんな面倒な手間はもうごめんだった)

719 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:54:17.81 ID:/xRtS9Ep0

女「男君、気持ちは分かるけど抑えて……」

男「いいや、もう抑えねえ。犯罪者グループ、すなわち悪だろ? だったらこっちも手段を選ぶ必要はないよな?」

女「手段……って、もしかして……」





男「魅了スキルを使う。それでアジトの場所を暴いてやる」

男(この世界でも埒外の力を使ってショートカットしよう)





女友「そうですね、お嬢様のことを考えると早めに解決するのがいいのも確かですが……」

女友「スキルを使うにしても、当てはあるのですか?」

720 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:54:54.06 ID:/xRtS9Ep0

男「ああ。昨夜の酒場だ」

男「あそこは詐欺師たちがVIPルームを使えるくらい、犯罪者グループと通じているってことだろ?」

男「だったらアジトの場所を知っているやつがいてもおかしくない」

男「もちろん犯罪者が御用達にしているくらいだから口は固いだろうが、魅了スキルを使えばそんなの関係ないしな」

男(そして事情に通じていそうな人物の目星も付いている)



男「バーテンダーだ。あの人に魅了スキルをかける」



男(人の都合に振り回されるのはここまでだ)

男(ここからはこっちから動いてやる)

721 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/09(水) 21:55:37.53 ID:/xRtS9Ep0
続く。

主人公の見せ場到来。
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/09(水) 22:34:34.60 ID:a/In8ByIO
乙ー
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 06:09:15.52 ID:7ztgfcCbO
乙!
724 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:37:10.53 ID:O4Qw7sdy0
乙、ありがとうございます。

投下します。
725 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:37:42.28 ID:O4Qw7sdy0

女(夜になって私たちは昨日と同じ酒場を再び訪れていた)

女(今回の目的は魅了スキルを使って犯罪者グループのアジトの場所を聞き出すこと)

女(虜にする対象はバーテンダーだ)



女「って、よく見るとすごく綺麗な人だよね……」

女(シェイカーを振るバーテンダーを私は観察する)

女(中性的な顔立ちで背は高めの女性だ)

女(首元にはスカーフを巻いて、手には白いロンググローブもしている)

女(観光の町は温暖な気候なのに暑そうだ)

女(よほど首元や手を隠したいのかな?)



女(その前にある席に男君は座っている)

女(まだ魅了スキルは使っていない。虜にした後、自然とアジトの場所を聞き出すためにあのように近づいているのだ)

726 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:39:41.18 ID:O4Qw7sdy0

バーテンダー「……どうぞ」

男「ありがとうございます」



女(バーテンダーが小さな声と共に差し出したカクテルを男君は受け取る)

女(観察していて分かったことだが、あのバーテンダーは基本は声を出さない)

女(無口でお客の話には頷いたり微笑んだりというリアクションを返している)

女(必要なときだけあのように小さく言葉を発するようだ)

女(その振る舞いや雰囲気からミステリアスさが出ている)



女「…………」

女(魅了スキルの対象は『魅力的な異性』)

女(つまりあの人に魅了スキルをかけられると思ったって事は、男君は魅力的に思っている)

女(私とは対照的なタイプだけど……もしかしてああいう女性の方が好きなのかな)

女(私もあんな風にふるまったら……)



女『男君……行きましょ?』

女『私……頑張る』

女『……好き』



女(うーん……何か違う気がする)

727 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:40:08.41 ID:O4Qw7sdy0

女友「何ぼーっとしているんですか」

女「わっ、ビックリした」



女友「私たちの役割を忘れたんですか」

女友「今までの順番からして次の曲のタイミングで作戦決行出来ると思います」

女友「幸いなことに現在席に座っている女性はいませんが、男さんの5m以内に立ち止まっている女性が二人居ます」

女友「なので女はあちらの女性を遠ざけてください、私はこっちに行くので」



女「うん、分かった」

728 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:40:40.26 ID:O4Qw7sdy0

女(これは事前に決めておいたとおりだった)

女(人の多い場所で魅了スキルを発動する際に気をつけないといけない点が二つ存在する)

女(それが効果範囲とピンク色の発光である)



女(魅了スキルは効果範囲の5m以内にいる対象に無差別にかけてしまう)

女(特定の対象だけを選んでということが出来ない)

女(そのせいで暴発した際に女友や私に魅了スキルがかかってしまったわけだし)



女(今回の狙いはバーテンダー一人だけだ)

女(その他の対象にかけて面倒ごとになるのは避けたいので)

女(私と女友で男君の周囲5mにいる女性がバーテンダー一人だけになるように誘導する)

729 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:41:07.25 ID:O4Qw7sdy0

女(もう一つの注意点がピンク色の発光)

女(魅了スキルを発動の際に起きるこれが結構目立つ)

女(他の人に何をしているんだと不審がられるかもしれないし)

女(注目が集まった中で虜になったバーテンダーからアジトを聞き出しにくい)

女(これの対策についてはちょうどこの酒場という場所が解決してくれた)



ダンサー「次の曲、行きまーす!」



女(酒場の中央のステージ。専属のダンサーの合図で曲が流れ始めた)

女(ポップ調の曲に合わせて踊るダンサーに見入る観客)

女(そしてサビに入ると同時に、天井の照明が曲に合わせたピンク色の光でステージを染め上げて)



男「魅了、発動」



女(瞬間、壁際にあるカウンターバーの辺りでもピンク色の光が発せられた)

730 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:41:36.08 ID:O4Qw7sdy0

女「……ん、大丈夫みたいだね」

女(そのことに気づいた客は私たち以外にいないようだ)

女(上手く魅了スキルの発光を紛らわせることが出来た)



女友「作戦成功ですね」

女(別の女性客を誘導していた女友が役割も終わったということで、私のところにやってくる)



女「うん、良かったよ」

女友「三人で話を聞くのも目立ちますし、後は男さんに任せて私たちは待ちましょう」



女(見ると男君はバーテンダーに話しかけている)

女(私たちが少し離れているのと、酒場全体が盛り上がって騒がしいから内容は聞こえないけど)

731 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:42:03.25 ID:O4Qw7sdy0

女「そうだね、後は男君を信じて……」

女友「女……?」

女「……私、どうして今朝男君のことを信じられなかったんだろう」



女(ふいに思い出してしまう)

女(男君が盗み聞きした結婚詐欺の話について、私は信じることが出来なかった)

女(男君に『別に信じられなくても仕方ないがな』なんて、悲しいこと言わせちゃったし……)



女友「それですか。言っておきますけど、今回悪いのは女ですよ」

女「……うん、そうだよね」



女友「ああもう、誤解してますね」

女友「男さんの言った通り、根拠が薄い話ですから信じられなくて当然という事です」

女友「それなのに信じられなかったと後悔している女が間違っています」



女「……? どういうこと?」

女友「今の女は男君に少しでも良く思われるために、嫌われることを極端に避けようとしているんじゃないですか?」

女「っ……それは……」
732 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:42:44.75 ID:O4Qw7sdy0

女友「はあ……。相手のことを何もかも肯定すればいいという訳じゃないです」

女友「今の女のような人が、彼氏にDVされたときに『彼が暴力を振るうのには理由があるの。彼は悪くない。私が悪いだけ』なんて思いこむ駄目女になるんですよ」



女「お、男君は暴力を振るう人じゃないよ!」

女友「そんなこと言ってません。ていうか告白もしてないのに彼女面してどうするんですか」

女友「デートのフリのせいで勘違いしているんですか?」



女「彼女面……しているつもりはないけど。男君のこと全部理解しないとって思うようになってたかも」

女「だってあのときは本当に楽しくて、心から通じ合っていると……錯覚したから。それを壊さないようにって」



女友「良くない傾向です。商業都市で真っ向から男さんを否定したときの気持ちを思い返してください」

女友「間違っていることは間違っていると、信じられないことは信じられないと、思っていることはちゃんと言いましょう」

733 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:43:14.05 ID:O4Qw7sdy0

女「でも……そんなことしたらケンカになることもあるよね。男君が私のことを嫌いになるかもしれないよね」



女友「カップルになったらケンカなんて付き物ですよ」

女友「逆にケンカが無い状況は大抵どちらかが我慢している場合です」

女友「そういう関係は、その不満が爆発して破綻すると相場が決まっています」



女「……」

女友「大体商業都市であれだけケンカしたのに、今もこうして一緒に行動しているじゃないですか。二人なら大丈夫ですよ」



女(女友の言う通りだ)

女(今の私は男君の器が小さいと……侮っているのと同じだ)

女(そんな人じゃないことは男君に恋する私が一番知っている)

734 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:43:47.81 ID:O4Qw7sdy0

男「遅くなったな」

女「……っ!? お、男君!?」

女(そのとき男君が私たちのところまで戻ってきた)



女(現在の状況を思い出す。おそらくバーテンダーの人から情報を聞き出し終わったのだろう)

女(気持ちを切り替える)

女(宝玉ゲットのため、もし結婚詐欺が本当ならお嬢様を救うため、集中しないと)



女友「首尾はどうでしたか?」



女(女友の質問に男君は――)

735 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:44:16.53 ID:O4Qw7sdy0



男「作戦失敗だ」



女(苦々しい顔つきでそのように答えた)



女「作戦失敗って……あ、もしかしてバーテンダーさんがアジトの場所を知らなかったとか?」

女(バーテンダーなら事情に通じているだろうというのは、私たちの勝手な推測だ。間違っていてもおかしくはない)



女友「その失敗なら分かりますが、それでも事情を知っていそうな他の人物や何か小さな手がかりでもいいから聞き出すって話でしたよね」

女友「嘘を吐けないので何らかの収穫は得られる物だと思っていたんですが、そちらはどうだったんですか?」



女(本命のアジトの場所が分からなくても、少しでもヒントを掴む)

女(そういう副案だったのだが――男君の答えは私たちも予想していないものだった)

736 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:44:43.63 ID:O4Qw7sdy0





男「いや、問題はそれ以前のものだ。バーテンダーが虜状態にならなかった」





女「え……?」

女友「なっ……!?」





男「魅了スキルが……失敗したんだ」





737 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/11(金) 19:45:29.30 ID:O4Qw7sdy0
続く。

見せ場、どこ……?
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/11(金) 21:17:02.21 ID:lVF8Ai5CO
乙ー
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/11(金) 23:38:27.62 ID:ub/NQfHy0
指と喉仏隠してるのか
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/12(土) 14:17:07.57 ID:uf89VoZ70
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/12(土) 21:11:03.35 ID:oRMm2M570
乙!
742 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:16:03.08 ID:RrpwwqvB0
乙、ありがとうございます。

投下します。
743 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:21:08.61 ID:RrpwwqvB0

男(魅了スキルが失敗した)

男(俺の言葉に驚く女と女友だったが……一番驚いているのは俺自身だった)

男(魅了スキルの力は絶対の物だと思っていたが……本当はそうでは無かったのか?)



女「どういうことなの……?」

男「正直俺も訳が分からなくて……いや、スキル使った本人が何言ってんだって話だけど……」



女友「こういうときは初心に戻ってみませんか? 何が原因だったか一から検討しましょう」

男「俺もそうしようと思っていたところだ。付き合ってもらえるとありがたい」

女「私も参加するよ!」

男(ということで三人で魅了スキルが失敗した原因を話し合うことにする)



女友「とりあえず魅了スキルの詳細を呼び出してもらえませんか? 何か見落としている事項があるかもしれません」

男「ああ、そうだな」

男(女友に言われて俺は久しぶりにステータス画面を開き、魅了スキルの詳細を表示した)

744 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:22:12.39 ID:RrpwwqvB0

 スキル『魅了』

 効果範囲:術者から周囲5m

 効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ



・発動すると範囲内の対象を虜にする。

・虜になった対象は術者に対して好意を持つ。

・虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う。

・元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない。

・一度かけたスキルの解除は不可能。

745 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:22:43.36 ID:RrpwwqvB0

男「まず魅了スキルの発動自体はしたはずだ。謎の感覚でそれは自覚している」

女友「ピンクの発光は私たちも見ました」



男「効果範囲の5m以内にバーテンダーはいたよな」

女「うん。男君の周囲5mでカウンターバー全体捉えていたはずだし」



男「効果対象の魅力的な異性にも当てはまる容姿だ」

女友「あのような女性もタイプだったんですね」

男「ええい、茶化すな」



男「発動すると範囲内の対象を虜にするわけだが……どうも虜になった様子はなかった」

女「男君に対する好意的な素振りを見せなかったの?」

男「かける前と後で同じ対応だったな」



女友「命令はしたんですか?」

男「冗談めかした感じの命令をしてみたんだが、従う様子はなかった」



女「じゃあ次の記述は……っ!?」

男(何故か女が息を呑む。次の行に何か気になることが書いてあったか?)

746 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:23:32.30 ID:RrpwwqvB0

男「えっと『元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない』」

男「……こんな記述あったのか。今まで見落としてたな」

男「これに当てはまっていたなら理解できるんだが、でもただの客である俺に特別な好意を持つはずないし違うだろ」

男「つうか俺が魅了スキル無しに好かれるなんてことないし、今後も無意味な記述だな」



女友「……いえ、そんなこと無いですよ。現に身近なところに特別な好意をもがっ!?」

女「本当女友は面白いこと言うね!!!」



男(女友が何か言い掛けて、女に口を塞がれる)

男(ちょうど酒場の客が叫び声上げて聞き取れなかったんだが、何て言ったんだ?)

男(聞き直せる雰囲気ではないので諦めるが、女友が本気で苦しげにタップしているのは見過ごせない事態だ。



男「おい、女。じゃれつくのはそのへんにしておけ」

女友「……ぷはっ、はぁっ、はぁっ。竜闘士の本気で締め上げないでください!」

女友「ちょっとした冗談じゃないですか! 危うく窒息するところでしたよ!」

女「冗談になってないってば!!」



男(それからしばらく女友と女が言い争う)

男(本当女友は何を言おうとしたのだろうか?)

747 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:24:11.87 ID:RrpwwqvB0

男「二人とも落ち着いたか?」

女友「はい……」

女「ごめんね、男君……」

男(他の客も注目するほどの騒ぎになったところで、二人はようやく落ち着きを取り戻した)



男「詳しいことは聞かない。解決したってことで、話を再開するぞ」

女「ありがとう……でも、魅了スキルの詳細に書いてあるのはあと『一度かけたスキルの解除は不可能』だけで、これも関係ないよね」



男「そうだな。スキルの内容について見落としていることは無さそうだが……」

男「まだ考えられる可能性としては、女への魅了スキルが中途半端になっている原因『状態異常耐性』のスキルとかもあるな」



男(すっかり忘れそうになるが、女は完全に魅了スキルにかかっているわけではない)

男(俺への好意的な様子からして効果は出ているのだが、付いてくるなという命令を破った実績がある)

748 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:24:46.68 ID:RrpwwqvB0



女友「中途半端……? あ、そんな設定ありましたね。もちろん嘘でもがっ!?」

女「女友? 何か言った?」



男(また女友が女に取り押さえられている)

男(しかし、この酒場本当騒がしいな。また聞き取れなかった)



男「えっと……立て込んでるなら話し合い中断しても良いぞ?」

女「ご、ごめん、男君。もう大丈夫だから。ね、女友」

女友「ええ……流石に懲りましたよ」

男(ぐったりした様子の女友。命の危機になってでも言いたかったことなのだろうか)



男「それで『状態異常耐性』だが、竜闘士の女でも魅了スキルを完全に防ぐことは出来なかったんだ」

男「あのバーテンダーがそれ以上の使い手だとは思えないし、この可能性も無いだろう」



女友「ええ、そうですね」

女「うん、そうに決まってるよ!」

749 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:25:29.24 ID:RrpwwqvB0

女「となると失敗した原因分からないね。もう思いつく可能性は当たったよね?」

女友「私もお手上げです」

男(話が振り出しに戻り、首をひねる女と女友)



男「………………」

男(俺は考えながらふらっと歩いて二人の側を離れる)

男(何も分からないのは俺も一緒で…………いや)



男(実はあと一つだけ考えられる可能性が俺の中にあった)



男(だったらそれを話せばいいだけなのだが……その内容が正直馬鹿げているものなのだ)

男(消去法から導き出した可能性だけを論ずるならあり得るというもので、二人に話しても信じられないと一蹴されるだろう)

750 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:26:09.73 ID:RrpwwqvB0

女友「上の空で歩いてますけど、どうしたんですか?」

男「え……?」

男(女友が女から離れて、俺の元までやってくる)



女友「男さん自身が一番気になってそうな魅了スキル失敗の原因を考えているのにその様子ということは」

女友「もしかしてまだ何か考えがあるといったところでしょうか?」

男「それは……」



女友「もう、何ですか。もったいぶって私たちを焦らそうと……しているわけではなさそうですね」

男「……ちょっとな」

女友「つまりは何らかの言いたくない事情があると」

男「……」

女友「はぁ……。本当そっくりですね。似たもの夫婦なんですか?」

男「え? どういう意味だ?」



女友「先日のデートのフリについて。何があったのか女から全部聞きました」



男(女友は質問には答えず、とんでもないことを暴露した)

751 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:26:57.06 ID:RrpwwqvB0

男「なっ! 女のやつ、話したのかよ!」

女友「ふふっ、最初から約束していたので。どうやらとても楽しそうに過ごしたみたいですね」

男「くっ……」

男(ニヤニヤとした笑みを隠さない女友。一番知られたくない人に知られたようだ)



女友「締めくくりに行った夕日の見える浜辺の丘では、ふと漏らした言葉を聞かれてしまって」

女友「それを受けて女が男さんも人を信じられるようになれるって言ったんですよね」

男「そこまで詳細に語ったのか」



女友「それで男さんのことですから……」

女友「どうして俺が変われるって思うのか、何か裏があるんじゃないか、本当は騙しているんじゃないかと」

女友「そんなこと思っているんじゃないですか?」



男「……ああ、その通りだ」

男(ここまで当てられると開き直って肯定するしかなくなる)

752 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:27:48.64 ID:RrpwwqvB0

女友「まあ気持ちは分かります」

女友「女を見ていると、どうしてそこまで人を信じられるのかと、疑いたくなりますし」

女友「一足跳びに信じられるようになれると言われても、今まで疑って生きてきた男さんが受け入れられないのは当然です」



男「……なあ、どうして女は俺に対してあんなことを言ったんだ? 女友なら分かるんじゃないか?」

女友「ええ、何となくですが分かります。しかし、教えてあげません」

男「なっ……」



女友「女本人に聞けばいいじゃないですか」

女友「『正直おまえの言葉を疑っていて……理由を教えて欲しいんだけど』って」

女友「大丈夫です、それくらいで怒るような人ではありませんよ。親友の私が保証します」



男「……」



女友「言葉をため込まないでください」

女友「間違っていることは間違っていると、信じられないことは信じられないと、思っていることはちゃんと言いましょう」

女友「………………って、これ今日二回目ですね」



男(そこで女友は言いたいことは終わったとばかりに、女の元に戻っていく)

753 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:28:26.40 ID:RrpwwqvB0

男「…………」

男(分からないことがあれば聞けばいい。とても単純な理屈だ)

男(なのにそれを出来なかったのは何故なのか?)



男(いつもの俺なら遠慮無く聞いたはずだ)

男(商業都市の時なんか、今思い返しても商会長相手によくあそこまで遠慮無く交渉できたものだと感心する)



男(そうやって気を使わないのは、相手のことをどうでもいいと思っているからだ)

男(全てを疑うとは、信じられるのは自分自身だけであり、他の人間は全てどうでもいいと思っているからだ)





男(そんな俺が女には遠慮した)

男(疑っていると明かして、相手が気を悪くすることを避けた)





男(その理由は……)

754 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:28:56.57 ID:RrpwwqvB0



男「……何、気の迷いだ。あのときはちょうどデートのフリをしていたしな」



男(俺は思考を打ち切る)



男(そうだ、今重要なのは魅了スキルが失敗した原因だ)

男(遠慮する必要はない、別に二人に信じられなくても構わないだろ)

男(俺が俺自身を信じられればいい)



女「あ、男君戻ってきた」

女友「調子はどうですか?」



男(俺は二人の元に戻ると前置き無しにその可能性について語る)

755 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:29:27.43 ID:RrpwwqvB0





男「なあ、バーテンダーは効果対象の『魅力的な異性』じゃなかった」

男「だから魅了スキルは失敗した……って考えられないか?」





女「いきなりだね。でも、魅力的な異性じゃないって……?」

女友「えっと……どういうことですか?」



男「そのままの意味だ」



女「そのままって……もしかして男君ああいう人タイプじゃないの?」

女友「どんな特殊性癖なんですか……ロリコン、熟女好き、B専……」

女「え、それって…………」



男(二人にすごい疑いの眼差しを向けられる。何とも不名誉なことだ)

756 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:29:58.16 ID:RrpwwqvB0

男「いやいや、おかしいだろ!」

男「そもそも二人に魅了スキルをかけることが出来たんだぞ」

男「それだと自分が特殊な容姿だと言っているようなものじゃねえか」



女「あ、そうだった……」

女友「だったらどういう意味ですか? 『魅力的な異性』ではないとは……」

男(もったいぶった言い方をした俺が良くなかったようだ。俺の考えの根本を示す)



男「『魅力的な異性』って言葉は二つの要素で出来ているだろ。『魅力的』と『異性』だ」



女「それは分かっているけど……」

女友「……っ! まさか……!」



男(女と違って女友はピンと来たようだ)

男(そのまま俺は……正直馬鹿げた可能性を話す)

757 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:30:23.92 ID:RrpwwqvB0





男「あのバーテンダーは俺にとって『魅力的』であっても『異性』ではないんじゃないか?」





男(つまりは……女装した男性という可能性だ)



758 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/13(日) 21:32:20.62 ID:RrpwwqvB0
続く。

説明は次回しますが>>739で正解です。
お見事!
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/13(日) 22:08:30.69 ID:Z/QZqJXvO
乙ー
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/14(月) 07:08:54.93 ID:lBbgR1vu0
乙!
761 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:18:36.09 ID:ei+ZrJM+0
乙、ありがとうございます。

投下します。
762 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:19:16.77 ID:ei+ZrJM+0



女「バーテンダーが……男性!? そんなことあるはずないって!! だってあんなに綺麗な人なんだよ!!」

女(私は、男君の言葉に思わず叫ぶ)



男「まあ、そうだろうな。だが俺も荒唐無稽なことを言ってるんじゃない、最初からヒントはあったんだ」

女「……え?」

男「あの人の格好を見てみろ。男性であることを隠す工夫があるだろ?」

女(男君は少し離れたカウンターバーで今も働いているバーテンダーを指さす)



女「格好というと……スカーフしてるのは特徴的だよね」

女「だって温暖な観光の町だし暑そうじゃん。なんかおしゃれのこだわりなのかな?」

男「おしゃれかどうかはセンスの無い俺には分からないが、女装を見破られるのを防ぐ重要なアイテムであると推測できる」



女「スカーフで男だって見破られるのを防げるの?」

男「ああ。何故なら男には喉仏があるからな。ふとしたときに見えて男だとバレてしまうから、首もとを隠すのは理に叶っている」

女「へえ、知らなかった」

763 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:19:54.70 ID:ei+ZrJM+0

男「そして手袋しているのも女装バレを防ぐためだろう」

男「男の手は武骨になったり、血管浮きやすかったりと女の手と差が出やすいからな。隠しておいた方が無難だ」

女「…………」



男「最後に声だ。姿を女性らしくしても、声まで女性に真似るのは難しい」

男「だから極力しゃべらないように、しゃべるときでも小さな声にしているんだろう」

女「…………」



男「……って、どうしたんだ、女? 反応がないけど」

女(途中から黙ってしまった私を心配する男君だけど……)



女「いや、そのね……。真面目な話の時に悪いなあとは思うんだけど……男君女装について詳しくない?」

男「はぁっ!?」

女「だからその男君女装が趣味なのかなって……あっ、いや、趣味は人それぞれだから別に気にしてないけどね!!」

男「変な気遣いやめろ!! それに趣味じゃねえ! 昔読んだ本に出てきた登場人物が話してたのを覚えていただけだ!」



女(男君の弁明によると推理小説の登場人物だったらしい)

女(主人公の探偵に女装とは何たるかを4ページほど使って説いたそのインパクトは強くて)

女(だからこそ殺されたときは『キャラ強かったしな』と妙に納得したと)

764 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:20:35.70 ID:ei+ZrJM+0

女友「まあ、男さんの女装趣味疑惑については置いといて」

男「置いとくな。断じて違うぞ」

女友「私も同じ話を聞いたことがあるので、あのバーテンダーが女装バレを意識していると見ることには賛成です」

男「おまえだって女装趣味認定してやるぞ」

女友「女性が女装してどうするんですか。普通ですよ」

女(男君も結構テンパっているようだ)



男「ああもう。さっきの特殊性癖扱いといい、不当な目で見られることが多い日だな」

男「女友はともかく女にそんな疑われるとは思わなかったぞ」



女「こんな私は嫌かな?」

男「……まあ今朝みたいにウジウジされるよりはマシだが」

女(そっか……だったら女友のアドバイスは的を射ていたようだ)

765 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:21:03.54 ID:ei+ZrJM+0

女「それにしてもバーテンダーが女装……ね」

男「ここまで言っておいてなんだが、もちろん証拠はない」

男「疑わしい状況が散見しているだけだ。だが俺はこれしかないと思っている」



女「私も男君の考えを信じるよ」

男「……そうか」

女「あ、理由はあるんだよ。検証した通り、魅了スキル側に失敗する原因は見当たらないし」

女「だからもうあの人が男性だってくらいしか思い当たらないもんね」

男「ああ……そういうことだ」



女「どうして最初からこの可能性を言わなかったの? 今さっき思いついたとか?」

男「いや、失敗した時点で疑ってはいたんだが……正直考えにくいだろ」

男「見た目は完璧女性だしな。でも、思っていることは遠慮せず言ってみろ……って女友に諭されてな」

女「そっか」



女(そういえば魅了スキルが失敗した理由を考えてたときに、ふらっと離れた男君の元に女友が行ってたけど……そのときかな?)

766 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:21:33.18 ID:ei+ZrJM+0



男「だからついでに言ってみるが……なあ、あのデートのフリの最後で、どうして俺なら変われる、信じられるようになるって言ったんだ?」

男「だって疑ってばかりの俺だぞ。正直何か裏があるんじゃないかと……女を疑っているんだ」

男「いや、そんなこと無いとは思う自分もいるんだが……」

男「お嬢様と詐欺師のように永遠を誓い合ったように見えた二人が騙していることもある世の中なんだ」

男「どうしても否定しきれなくてな……」



女(男君が自身の思いを吐露する)

女(私に打ち明けてくれたことはとても嬉しかった。でも……)



女(ズキッ、と心が痛む)

女(あの日告げた言葉に嘘はない)

女(けどそれより前に、私が男君を騙しているのは本当だから)

767 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:22:00.34 ID:ei+ZrJM+0

女「疑うって……もう酷いなあ。裏も何もないよ」

女(それでも男君が思い詰めないように、努めて明るい雰囲気で言う)



男「だったら何でなんだ?」

女「何でって言われると……男君を信じてるから、かな」

男「じゃあどうして俺を信じられるんだ」



女「信じるのに理由はいらないけど……強いて言うなら――――」

男「言うなら……?」



女(男君のことが魅了スキルなんて関係無しに好きだから)



女「……だって私には魅了スキルがかかってるんだよ? 好意を持った人を信じて当然じゃん」

男「あ……。そっか、なるほどな」

768 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:22:28.21 ID:ei+ZrJM+0

女「……」

女(本当の私の思いを打ち明ける勇気が出ない。嘘を重ねてしまった私が嫌になる)

女(デートのフリをしている間、ずっとこの関係が本物になって欲しいと思っていた)



女(でも、私が吐いた嘘の責任がこの期に及んで重くのしかかる)



女(もしなけなしの勇気を振り絞って本当は魅了スキルがかかってないと告白しても)

女(男君は私に騙されていたのだと分かって傷付くだろう)



女(私の弱さから吐いた嘘は既に男君の中に定着してしまっている)

女(今さら嘘だったと明かすことは、私が楽になるだけ)

女(女友の言うとおりだった。嘘だったと明かすなら、すぐにするべきだった)

769 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:22:53.71 ID:ei+ZrJM+0

女「……」

女(でもこの嘘が無ければ、今の関係はなかった)

女(人からの好意を疑っている男君が、私の好意を弾かないのは魅了スキルによるものだと思っているからだ)

女(自分が暴発させたのが原因で、理屈あるもので、裏がないものだと思っているからだ)

女(この嘘がなければフリとはいえ、デートすらしてくれなかっただろう)



女(騙している罪悪感は私が抱えないといけない)

女(その上で、私がするべきことは簡単だ)

女(嘘を嘘と暴かないままに関係を進展させればいい)



女(魅了スキルによる好意だと分かっているけど……それでも女の好意が嬉しくて、俺も応えたいと男君に思わせる)



女(つまりやることに代わりはない。ただ、退路が断たれたことだけは自覚する)

770 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:23:19.09 ID:ei+ZrJM+0

女「ふふっ、でも男君らしくないね。いつもならその場で疑っているとか言いそうなのに」

女(そんな決意を悟らせないようにいつも通りの一念で勝手に出た軽口に)



男「……」

女(男君は何故か黙った)



女「……あれ、何か私おかしなこと言った?」

男「いや……おかしくはないが」



女「じゃあどうしてなの?」

女(言ってみてその通りだと思った。男君なら遠慮無く言いそうなのに)

771 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:23:49.86 ID:ei+ZrJM+0



男「あー、そのだな……たぶん雰囲気を壊したくなかったんだろう」

男「あのときはフリとはいえデートをしていたわけだしな」



女(そっぽを向き、頬をかきながら、恥ずかしそうに言う男君)



女(男君のその様子は……フリではあるけど、フリではないと少しでも思ってくれた証で)



女「じゃあ今度もう一回しようよ?」

男「ああもう言っただろ! 今後デートのフリはしないって!」



女(私は胸の内が多幸感で溢れるのを自覚した)

772 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:24:15.84 ID:ei+ZrJM+0





女友「完全に二人きりの世界ですね……はいはい、私はお邪魔虫ですよーっと」

女(私たちがいじける女友に気づくのはもう少し後のことである)





773 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/15(火) 20:25:06.54 ID:ei+ZrJM+0
続く。

3章『観光の町』編も大詰めに入っています。
あと二話で終わる予定です。
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/15(火) 20:39:19.30 ID:wD01KcipO
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/15(火) 21:02:53.88 ID:bOlnFZqMO
乙ー
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/16(水) 07:19:47.28 ID:p2nk/oa9O
乙!
777 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:22:45.05 ID:AIwwANCX0
乙、ありがとうございます。

投下します。
778 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:23:32.13 ID:AIwwANCX0

女友「さて二人っきりの話から真面目なところに話を戻しますよ!」

女「ごめんなさい……」

男「一人だけ蚊帳の外に置いてすまん」

男(トゲたっぷりの女友の言葉に女と俺は平謝りする)

男(完全に女友のことを忘れて、女と話し込んでいた)







女友「話がどこまで進んだかというとバーテンダー相手に魅了スキルが失敗した原因が分かったということですね」

女友「しかし、分かっただけです。状況は一歩も進んでいません」



男「そうだな……」

男(女友の言うとおりだ)

男(結婚詐欺の証拠を手に入れるため、犯罪者グループのアジトを掴み突入する)

男(そのためにバーテンダーから魅了スキルを使って聞き出そうとしていたのだが、その魅了スキルが失敗したわけだ)



男(原因が分かったことで成功するようになるわけでもなく)

男(それどころか絶対に魅了スキルがかからないことが判明したわけである)

779 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:24:03.00 ID:AIwwANCX0

女「だったら他の人に魅了スキルをかけて聞き出すとか?」

女友「それもいいですが……あとこの酒場で働いている女性はホールスタッフやダンサーなどで、情報を知ってそうな人物が少ないんですよね……」



男(偉くなればなるほど、様々な事情を知っているはずだ)

男(バーテンダーは女性でありながらカウンターバーを一手に任されているようで)

男(この酒場のスタッフでも上の方の地位にいると判断して俺は魅了スキルをかけようと考えたのだ)

男(だが、やつが男性だったことで計画は崩れて……)



女「どうしたの、男君?」

男「うーん……本当に男性なんだよな?」

女「あ、バーテンダーのこと? 見ていると疑わしくなるよね」

男(今も客にカクテルを振る舞い、話に合わせてミステリアスな笑みを浮かべる様子はとても男性に見えない)

男(魅了スキルを失敗していなければ、男性だと言われても鼻で笑い飛ばしていただろう)
780 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:24:55.49 ID:AIwwANCX0

男「……あ、いや。元の世界の常識で考えちゃ駄目なのか?」

男「変身スキルとかいうのがあって、それで女性のような見た目になっているとも考えられるよな?」

男(そうだ、この異世界にはスキルや魔法があるのだ)

男(別に地道に努力をしなくても、女性のような見た目になるのは可能で……)



女友「いえ、それはあり得ません。あの人はスキルも魔法も使ってないでしょう」



男「どういうことだ?」

女友「男さんの言うとおり、変身魔法やスキルといったものはこの世界に存在します」

女友「ですがそのようなスキル頼りの偽装は簡単に見破ることが出来るんですよ」

女友「私の判別魔法『真実の眼(トゥルーアイ)』で」

男(ピースサインを当てて目を強調する女友。そのポーズかっけえな)

781 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:25:39.27 ID:AIwwANCX0

男「あーそんなのあったか。商業都市で秘書さんの『認識阻害(ジャミング)』を見破った魔法だよな」

男「けど『真実の眼(トゥルーアイ)』でも見破れない可能性ってのもあるんじゃないのか?」



女友「基本的にはないですね」

女友「偽装系と判別系の魔法やスキルががぶつかった際にはよりレベルの高い方が通るのですが」

女友「私の『真実の眼(トゥルーアイ)』は判別魔法の中でも最上位ですので、私の目を欺くのはほぼ不可能でしょう」



男(改めてチートな性能が語られる)

男(戦闘力だけで言えば女の方が強いのだろうが、女友の魔導士はこうして色んな方面に強い)



男「それで『真実の眼(トゥルーアイ)』でバーテンダーを見たからスキルを使ってないって分かったのか。いつの間に見たんだ?」

女友「最初です。魅了スキルをかけるために男さんが接近しないといけませんでしたから」

女友「何らかのスキルを隠し持っていた場合危険ですのでチェックしておきました」

男「そんな確認までしてたのか。サンキューな」

782 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:26:06.41 ID:AIwwANCX0

女友「男さんの言うとおりスキルを使えば簡単に姿を変えることが出来ます」

女友「しかし、当然ですが私以外にもこの異世界には判別魔法やそれに類するスキルを使える人はいます」

女友「そういう人に見抜かれないように、あのバーテンダーはスキル無しで相当努力したんでしょうね」



男「なるほどな……」

男(それなのに俺の魅了スキルのせいで見抜かれて……悪いことを………………ことを……)







男「じゃあそこまで努力した女装のことをバラすって脅せば、あのバーテンダーからアジトの情報を聞けるんじゃないか?」







女「……」

女友「……」

男(女と女友から本日三度目の冷ややかな眼差しを頂戴する)

783 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:26:44.52 ID:AIwwANCX0

女「それは流石に悪いでしょ」

男「そうか? 相手が善人なら俺だって良心の呵責を感じただろうが、犯罪者グループに荷担している悪人のはずだしな」

女友「そもそも酒場側はバーテンダーが男性であるってことを知っているんじゃないですか?」

男「いや、人の口には戸を立てられない。本人以外が知っていれば、絶対に噂が広まっているだろう」

男「それにあれを見る感じ無いな」

男(俺はカウンターバーを指さす)



男(ちょうど従業員の男性が何かの用があったのかバーテンダーに話しかけていて……)

男(その去り際の表情、完全に鼻の下が長くなっている。相手が男性であるとは1ミリも疑っていないだろう)



男「というわけだ」

男「もちろん脅迫以外の選択肢もあるが、その場合はまた一から聞き込みだったり面倒な手間を挟む必要があるだろう」

男「二人がそれでもいいなら俺もそうするが?」



女「……」

女友「……」

784 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:27:12.43 ID:AIwwANCX0



男(そして)

男(俺たちは酒場の営業時間終了まで張り込み、バーテンダーが帰宅するところを捕まえる)

男(女装ではないかとちらつかせると否定、罵倒、青ざめ、媚び売りと変化していき)

男(バラさない代わりに犯罪者グループのアジトを教えろと要求すると、飛びつくように従った)



785 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:27:42.46 ID:AIwwANCX0



男(その翌日、俺たちは別荘地の外れにある、今は誰も住んでいない廃墟を訪れていた。話によるとそこが犯罪者グループのアジトらしい)



男(俺たちは正面から突入した。突然の侵入者に驚きながらも対応する犯罪者たちだが、竜闘士の女と魔導士の女友の前に為すすべはない)



男(特に予想外のことも無く、順当に女と女友は犯罪者全員を投降させた。観光の町の治安維持隊に引き渡して後の処理は任せる)



男(全員の罪が暴かれて、償うように取りはからわれるだろう)



男(その中には予想通り詐欺師もいて……その一報はお嬢様にも届いたようだ)



786 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:28:14.07 ID:AIwwANCX0





お嬢様「あなたどうして捕まって……それに結婚詐欺って…………ど、どういうこと?」



詐欺師「……はんっ、本当に気づいてなかったのかよ。世間知らずのお嬢さんだな! おまえは騙されてたんだよ!」






男(ちょうど面会に立ち会うことが出来た俺たちは顔を真っ青にしたお嬢様さんと、開き直った詐欺師を見て)



男「これで完了……だが」

女「後味悪いね……」



男(正しいことをしたはずだ)

男(あのまま気づかれず金を騙し取られるのが良かったはずがない)

男(しかしお嬢様さんのことを見ていられず……)

787 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:28:55.41 ID:AIwwANCX0

女「ねえ。男君の魅了スキルで『今回のことは気にせず生きろ』って命令したりとか………………」

女「いや、でもそういうの良くないよね」



男「気持ちは分かるが、だからといってそれは俺たちが落ち込む姿を見たくないってだけの傲慢な考えだろ」

男「そもそもお嬢様に魅了スキルがかかるかも怪しい」



女「え……あ、もしかしてお嬢様さんが対象の『魅力的な異性』じゃないってこと?」

女「でも、最初は魅了スキルかけて婚約指輪を奪うって選択肢を上げてたし、魅力的だと思ったんじゃないの?」

男「それは容姿しか見えてなかったからだな。お嬢様さんの素の様子、人の迷惑を省みずワガママ放題な様を俺は知ってしまった」

男「正直ああいうタイプ苦手でな……魅力的に見れるか怪しい」

男(魅了スキルが暴発した際にクラスの女子の大半がかからなかったのも素の様子を知っていたからだった)

男(人間というのは原理的に一目惚れの方がしやすいのである)





女友「だったら、そうですね……宝玉の回収ついでに、私がアフターケアといきましょう」

男(そんな俺たちを慮ってか、女友が私に任せてくださいと胸をたたいた)

788 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/17(木) 20:29:31.55 ID:AIwwANCX0
続く。

次が3章最終話です。
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/17(木) 20:40:09.92 ID:yVW8h/tiO
乙ー
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/17(木) 22:38:30.12 ID:05nQiUzlo
乙!
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/18(金) 07:52:14.00 ID:Xpwf+G4fO
乙!
792 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:23:13.96 ID:nxHoX85d0
乙、ありがとうございます。

少し遅くなりました。
3章最終話投下します。
793 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:23:44.50 ID:nxHoX85d0

男(翌日)

男(俺たちは先日の御用聞きと同じく、古参商会の商会員と共にお嬢様の住む別荘を訪れていた)



執事「ご足労ありがとうございます。用件というのが二件ありまして」

商会員「ええ、お聞きします」

執事「ではまず前回の注文に関してなのですが、キャンセルしたい件を……」



男(執事に出迎えられて、商会員の人が話を聞いている)

男(前回の注文のキャンセル……察するにお嬢様が詐欺師のために頼んでいたものだろう)

男(結婚詐欺が暴かれたため、この別荘で一緒に住む予定が無くなったと)



商会員「……はい。……はい」

男(商会員は執事の言葉を聞いてメモを取っている)

男(かなりの注文がキャンセルとなり、大打撃のはずがどこか落ち着いているように見える)

794 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:24:10.46 ID:nxHoX85d0

女友「私があらかじめ結婚詐欺の可能性について古参商会には連絡しておいたんです」

男「なるほど……想定済みだったってわけか」

女友「はい。そうでなくても、お嬢様はワガママ放題で、このような予定変更は日常茶飯事らしいですね」

女友「それを差し引いても大量に買ってくれるので上客らしいですが」

男(文句は多いがお得意さまというわけか……応対するの大変そうだな)



男(そうしている内に注文キャンセルの件が終わったようだ)



執事「二つ目の案件ですが……古参商会の方でこちらの指輪を引き取ってもらうことは可能でしょうか?」

男(言いながら執事が出したものはお嬢様の婚約指輪)

男(すなわち宝玉の設えられたものである)



男「……っ」

男(目的の物が目の前に出てきて俺は息を飲む)

795 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:24:39.55 ID:nxHoX85d0

商会員「それは可能ですが……どうなさったんですか?」

執事「古参商会ともなれば巷間の噂はご存じでしょう」

執事「そうでなくとも今回の注文キャンセルから分かると思いますが……お嬢様の婚約が破談となりまして」

執事「昨日帰ってきた際に、お嬢様がその指輪を私に投げ付け『それ、もう見たくないの! 処分しといて!』と申されまして」

執事「気持ちは分かりますが、しかし指輪自体に罪はありませぬ」

執事「捨てるのは制作者がかわいそうだということで、お嬢様の意にはそぐいますが引き取りをお願いしたく……」



商会員「そういうことでしたら預からせてもらいます……じゃあ、君」

男(商会員は俺たちに指輪を受け取るよう指示する。俺たちはこの人の見習いという設定だ)

男(というわけで恐縮した様子の執事から、女が指輪を受け取って)



男「(これで宝玉三個目ゲット……だな)」



男(場の雰囲気から声には出さないが、女と女友も同じように一段落付いたということでホッとしたのが見て取れた)



男(ようやくこの町の宝玉を手に入れることが出来た)

男(つまりこの町での用は済んだということだが、しかし傷ついたお嬢様を見過ごすのもいかんしがたい)

796 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:25:08.73 ID:nxHoX85d0

女友「お嬢様は今日どうされていますか?」

男(ということで商会員の人が用具の確認のため席を外したタイミングで、女友が口を開いた)



執事「……お嬢様は昨日別荘に帰ってきて、一通り当たり散らした後自分の部屋からずっと出ておりません」

男(昨日……というと、俺たちも立ち会うことが出来た詐欺師との面会の後ということだろう)

男(あの暴言を食らって八つ当たりした後、部屋に引きこもっていると)



女友「食事はどうされているんですか?」

執事「部屋の前に置いたものが気付くと無くなっているので、食べていると思います」

女友「そうですか、食事を出来るくらい元気なら大丈夫ですね」

執事「ええ。時間はかかるでしょうが、また元気な姿を見せてくれると信じています」



男(執事がお嬢様を思いやっていることが伝わる)

男(この前来たときに婚約を心の底から喜んでいたし、おそらく仕事だけではない関係なのだろう)

男(いい人だな、と頷いていると)

797 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:25:36.02 ID:nxHoX85d0



女友「なるほど。とても大事に扱われていて…………」

女友「では、どうしてお嬢様はずっと別荘暮らしをしているのでしょうか?」



男(女友が奇妙な質問を投げていた)

男(どういう意味か考える俺に対して、直接質問をぶつけられた執事はというと)



執事「それは……」

男(何故か狼狽えている)

798 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:26:15.24 ID:nxHoX85d0

男「どういうことだ、女友?」

女友「簡単なことですよ。別荘っていうからには、本宅が無いと成立しないんです」

男「本宅……?」

女友「そちらにお嬢様の両親はいられるのでしょう」

男「…………」

男(両親と別に暮らしているというのは……)



女友「愛情という名の下に全てを与えて育てた結果、ワガママ放題に育ったお嬢様を」

女友「両親が大きくなったのだからそろそろしっかりしなさいと当然のように方針変更したのでしょうね」

女友「しかし、お嬢様はいつまでも親の庇護下に居れると勘違いしていたためそれに付いていけず」

女友「呆れ見捨てられ……この別荘に隔離されたのではないでしょうか?」



男「隔離って……」

女友「ああ、もちろん名目は違いますよ。金持ちは体面を気にしますからね」

女友「おそらくはありもしない病気の療養だとか、静養のためだとかでお嬢様は望んでこの別荘にいることになっているのでしょう」

女友「ここにいる使用人たちはその監視兼世話係ですね」

女友「家の評判に関わるほどのことをされても、一人で放置して死なれても困りますし」
799 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:26:44.43 ID:nxHoX85d0

男「無茶苦茶言っているが……本当なのか?」

女友「金持ちの考えくらい簡単に推理できます」



男「いやだが、そもそもお嬢様は大事に扱われて……」

女友「しかし、そこに愛情は無かったということです」

女友「愛に飢えていたからこそ、あんな低俗な結婚詐欺に引っかかったんですよ」

女友「本来ならば金持ちの宿命として、金だけを目当てに近づく人間など分かるはずです」



男(女友は俺の質問に答える形で話しているが、当然他の人にも聞こえている)

男(外れていればとんでもない侮辱にしかならない女友の話に)



執事「……」

男(執事は何も答えられないでいた)

800 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:27:12.31 ID:nxHoX85d0

女友「旦那様……お嬢様の父にはここの状況を報告しているんですよね」

女友「お嬢様の結婚が決まったとき、そして結婚詐欺だと分かったときどのような反応だったんですか?」



執事「……どちらも『そうか』と一言だけ返されました」



男(そういえば前回訪れたときに、旦那様がお嬢様に何度も見合いをセッティングしたという話を聞いた)

男(結婚することが、一人前の人間として当然という考え方の人間はいる)

男(だからしっかりしなさいという意味で見合いをさせたのに、その全ての話をお嬢様は蹴った)

男(そのこともあって、他にも積み上げられたものがあって、お嬢様は呆れられた)

男(だから今回結婚するとなっても、そして破談になっても『そうか』と興味なさげに……)



男「…………」

男(何を持って幸せと定義するのかはその人次第だ)

男(このお嬢様の話を聞いても、ワガママが許される金や環境があって、愛まで求めるなんて傲慢だと思う人もいるかもしれない)

男(逆にいくら金があっても、誰からも愛されていないなんてかわいそうと同情する人もいるかもしれない)

801 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:27:38.56 ID:nxHoX85d0



女友「しかし、本当にお嬢様も傲慢ですよね」



男(だから俺は女友のその言葉も仕方ないだろうと考えて)



女友「だって、こんなに思われていることに気付いていないのですから」

男「……え、どういうことだ?」

男(次の意味が取れなかった)



女友「誰からも愛されていないという破滅的な状況に酔ってしまう気持ちも分かりますが……」

女友「少なくともここに一人お嬢様のことを思っている人がいるじゃないですか?」



男(女友の言葉の宛先は……執事だ)

男(そうだ、俺も先ほど感じたじゃないか。仕事だけではない関係だと)

802 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:28:37.36 ID:nxHoX85d0

執事「私は……」

女友「長年世話をしていたということはおそらく本宅にいるときから世話していたんですよね」

女友「立場上あまり感情を出すべきでないことも分かります。旦那様とお嬢様の間で板挟みになっているところもあるのでしょう」

女友「しかしお嬢様はとても傷ついていました。せめて今日だけは素直な気持ちで慰めてもいいと私は思います」

女友「こんなにもあなたのことを思っている人がいると、気付かせる意味でも」



執事「……失礼」

男(女友の言葉に、執事はハンカチを取り出して額に当てながらうつむき一つ息を吐く)

男(そして顔を上げると)



執事「申し訳ありません、用事を思い出しました。お見送り出来なくて失礼ですが……」

女友「いいですよ、これ以上用事はありませんですし、私たちは勝手に帰ります。それより早く行ってください」

執事「……ありがとうございます。この感謝は忘れません。それでは」



男(執事は一礼するとその場を去る。向かう先は……お嬢様の部屋だろう)

803 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:29:03.60 ID:nxHoX85d0

女友「……と、これが私のアフターケアの限界です。後は任せるしかないのと、結果が分からないことが少々歯がゆいですが」

男「まあ大丈夫だろ」

女「うん、そうだよ」

男(そもそも俺たちは部外者に近い。きっかけを与えて、あとは長年の絆に任せるのが正解だろう)



商会員「終わったか」

男(と、そのタイミングで古参商会の商会員が帰ってきた)



男「あ、すいません。用事終わったんですか?」

商会員「元々そんなものはない」

男「え……?」

女友「協力ありがとうございました」

男(女友が頭を下げる。一体どういうことなのか?)

804 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:29:33.36 ID:nxHoX85d0

女友「私の指示です。先ほどの一連の流れ、何とか美談で終わってくれましたが、当然ですが怒られる可能性も十分にありました」

女友「そうなっては古参商会の評判に関わります。いざとなれば見習いの部下である私の暴走ということで済ませられるように席を外してもらったんです」



男「綱渡りだとは思っていたが……そんな配慮をしていたのか。つうか推理間違っていたら即アウトだっただろ?」

女友「何、言ってるんですか。推理なはず無いでしょう」

女友「お嬢様の家に関わる事情は全て古参商会受け売りの情報です。そこまで分の悪い賭けをするはずないですよ」

男(いけしゃあしゃあと答える女友。同じ金持ちだから推理できるとか、全部嘘だったのかよ)



男「恐ろしいな……」

女「女友は本当平気で嘘吐くから注意しないとだよ、男君」

男「ああ、みたいだな」



女友「何かさんざんな評価ですね」

男(女友が不服な扱いだと抗議するが、当然だと思う)

805 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:30:04.16 ID:nxHoX85d0

商会員「古参商会でも正直なことを言うとお嬢様のワガママには辟易していた」

商会員「今回も予測はしていたとはいえ注文キャンセルでそれなりに損害は出ている」

商会員「これを期にワガママが少しでも治る可能性があるなら、賭ける価値はあった」

男(商会員が内情を説明する。そういうことで女友に協力してくれたのか)



商会員「後は手配のものを用意しておいた。昼過ぎには出るらしいから、急いだ方が良いぞ」

女友「最後までありがとうございます」

男(商会員が差し出したものを女友は受け取る。えっと……何かのチケットか?)



女友「次の町に向かう馬車のチケットです。この町での用事も全て終わりましたし、さっさと向かいましょう」

男(女友がひらひらとチケットを振って見せる)



男「なるほど……手際が良いな」

女「んーもうちょっとゆっくり、何なら男君ともう一回夕日見たかったけど……仕方ないね」

男「だからデートのフリはもうしないって言っただろうが」

男(女の申し出をシャットアウトする)

806 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:30:39.84 ID:nxHoX85d0

男「しかし、次の町っていうことはまた宝玉の行方を探すところから始まりか」

男「今度は苦労しないで見つかるといいんだが……」

男(この観光の町で一週間駆けずり回った記憶が蘇る。見つかった後も手に入れるためにかなり苦労したし)



女友「それなら心配ありませんよ」

男「え?」

女友「次の町の宝玉がどこにあるかは分かっています。古参商会の調査によって」

男「調査……あ、そっか。俺たちの使命を助けてくれるっていう」

男「なるほどな、もう一週間以上調査しているし、見つかった場所があるのも当然か」



男(今回は商業都市で協力を取り付けたその翌日にこの町に乗り込んだため、調査が進んでおらず俺たち自身で探す必要があった)

男(しかし俺たちがこうして観光の町で苦労している間に、他の場所での調査が進んだということだろう)

807 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:31:13.14 ID:nxHoX85d0



男「それで次の宝玉はどこにあるんだ? 魅了スキル使う必要があるのか?」

女友「いえ。次の町において、男さんは全く以て役立たずでしょう」



男「って、おいっ!?」

女友「ふふっ、いい反応ですね」



男(酷い暴言を吐かれる。もしかしてさっきの嘘吐き扱いしたことの意趣返しだろうか?)



女「女友どういうことなの?」



女友「以前、商業都市に向かう道中のことだったでしょうか?」

女友「宝玉を手に入れるのに交渉しないといけない場合は男さんの魅了スキルが役立ちますが」

女友「女の力じゃないといけないパターンもあるはずって話をしましたでしょう?」

女友「まさにそれなんです」



男「……? どういうことだ?」

女友「こうして急いで次の町を目指す理由でもあるのですが――」

808 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:31:46.49 ID:nxHoX85d0





女友「次の町にて五日後に開かれる『武闘大会』。宝玉はその優勝商品となっているそうです」





男「……なるほどな。確かに竜闘士の女の独壇場だ」

女「分かった、頑張るよ!」







男(そうして三つ目の宝玉を手に入れた俺たちは観光の町を去る)



男(次の町にて再会が待つこと)

男(そして俺たちの使命が持つ本当の意味を知ることになるのだが、このときは当然知る由もないのであった)

809 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/01/22(火) 18:34:02.00 ID:nxHoX85d0

3章『観光の町』編、完。

ここまで読んでいただきありがとうございました。



4章『武闘大会』編の準備のため1〜2週間休みます。

続けて読んでもらえれば幸いです。





章の途中でスレが変わるの嫌なので、新スレ建てるかもしれません。

そのときは案内します。





乙や感想などもらえるとモチベーションが上がります。

どうかよろしくお願いします。

なろう版 http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 18:51:04.06 ID:w20X+wfLO
乙!
次の章も楽しみに待ってます!
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 23:04:21.50 ID:p359iv5H0
乙乙
待ってる
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/22(火) 23:47:35.96 ID:H29e+LtWO
乙ー
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/23(水) 03:01:59.57 ID:N9HiaeRV0
乙!
なんなの?ねえなんなの?女友いい女すぎるわ
まじいいキャラしてるわ、一番人気出そう
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 17:39:54.04 ID:wl9D4z8n0
野々山紘美
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 17:40:53.35 ID:wl9D4z8n0
イハラ@出番16東1ウ05b
@yadotekili_anak
絵と漫画と同人誌。瀬呂右ド固定の瀬呂範太推し。メインCPは障子×瀬呂。障瀬。他は上セロ・B組・宍鱗など。エロ垢は
@nakarahai
フォロー前にプロフ必読→ (link: http://privatter.net/p/1805176) privatter.net/p/1805176 瀬呂受アンソロ→
@cellouke
瀬呂くんの肘のお口pixiv.net/member.php?id=…
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 17:41:19.25 ID:wl9D4z8n0
アカ統合すずめ*
@chun_MHA
@chuncup
まで 鉄切鉄と下ネタが好きなR18読める年齢 切島受けプチ:
@otokogi_800
ダダ被り誕:
@dadakaburi1016
支部:(link: https://pixiv.me/suzume-t) pixiv.me/suzume-t BOOTH:(link: https://chuncup.booth.pm/) chuncup.booth.pm
フォースカインド事務所twpf.jp/chun_MHA
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/02(土) 17:44:44.16 ID:gkQA9BchO
下げ
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 18:18:51.77 ID:wl9D4z8n0
浅見ルナ
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 19:04:08.25 ID:wl9D4z8n0
担当教官・坂ノ下愛鈴(さかのした・あいりん)
29歳 159cm/48kg

まったりというか今時というか…語尾が伸びる口調。
声は結構高い感じ。
細かいところは話の中で出てくるので書きません。

 

軍人・野田浩毅(のだ・ひろき)
34歳 176cm/68kg

見ての通り、話の中の通り、無愛想で冷徹。
低い声でボソボソ喋るので、結構聞き取りにくいかも。
ワリと筋肉質。 元・野球少年。
好きな食べ物は実は甘いもの。
表には出さないが、可愛いものも好き(出してますね、少し/汗)

 

軍人・木下亨(きのした・とおる)
28歳 172cm/63kg

真面目に責務をこなす人。
仕事中は声を作っているが、普段はやんわりとした声。
いつも冷静で、常に周りを見ることができる。
趣味の読書が祟って(?)、やや近眼、コンタクトは目に合わないのでできない。
こう見えても軍人、運動能力は高い。

 

軍人・渡部響也(わたなべ・きょうや)
27歳 180cm/73kg

大阪生まれの大阪育ち、高校を卒業して関東に出てきた。
明朗活発で、精神年齢は恐らく中学生と大差ない。
あまり低くない声だが、いつもテンションが高いので高く聞こえる。
野田は大の苦手、木下は良い友人。
最も体格がいい、元ラグビー部。
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 19:05:15.85 ID:wl9D4z8n0
女子12番・中田智江子(なかだ・ちえこ)

ゲーム部。ゲーム組。
卑屈な性格で、いつも人の悪口を言っている。
3度の飯よりゲームが好きなほどのゲームオタク。

身長/152cm
愛称/智江ちゃん

能力値

知力:

体力:

精神力:

敏捷性:

攻撃性:

決断力:

★☆☆☆☆

★★☆☆☆

★★★☆☆

★★☆☆☆

★★★★☆

★★☆☆☆
 

以下ネタバレです。白黒反転させると読めます。

支給武器:

小刀
kill:

なし
killed:

上田昌美(女子2番)
死亡話数:

12話
凶器:

小刀
 

G=04エリアで潜伏。優勝しようと企み、遭遇した昌美を盾にしようとするが、企みがばれて小刀で刺殺される。<第12話>

 

悪口っ子登場です。
改稿前から思っていましたが、この子書きにくい!!
悪口いっぱい言わせるのは難しいです(>_<)
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/02(土) 20:01:03.66 ID:gkQA9BchO
下げ
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 20:45:33.24 ID:wl9D4z8n0
女子1番・今岡梢(いまおか・こずえ)

バレー部。女子運動部グループ。体育委員。
女子の中では最も背が高い。運動神経抜群。
伊達功一(男子12番)の元彼女。

能力値

知力:

体力:

精神力:

敏捷性:

攻撃性:

決断力:

★★★☆☆

★★★★★

★★★★☆

★★★★★

★★★☆☆

★★★☆☆
 

以下ネタバレです。白黒反転させると読めます。

支給武器:

フライパン
kill:

なし
killed:

坂本陽子(女子7番)
死亡話数:

35話
凶器:

ナタ
 

功一と別れた原因は功一の浮気。

G=10エリアで陽子を発見。軽い気持ちで声を掛けたが、陽子は狂っていた。説得も空しく首にナタが刺さり死亡。

 

運動神経をほとんど発揮できなかったのが心残りです。
彼女の本当の気持ちは彼女しか知らないですが、もしかしたらまだ功一が好きだったのかも・・・?
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 20:46:49.65 ID:wl9D4z8n0
女子四番/総合七番 川西亜由子(かわにし・あゆこ)



身長 159cm
体重 47kg
誕生日 10月9日
血液型 B
部活動 軽音楽部
友人 北修司・東海林至
江南佳菜彩
(NEWS)
愛称 亜由子・アユ・ニシ
能力値
知力:

体力:

精神力:

敏捷性:

攻撃性:

決断力:

★★★★☆

★★★★☆

★★★☆☆

★★★★☆

★★★☆☆

★★★☆☆
常に冷静で、周りを見て動くことができる、グループのまとめ役。。
表情が乏しく、いつも怒っているような顔をしている。無口で、自分の意見を言うことは少ない。
軽音楽部内バンド“NEWS”のギタリストで、退廃音楽に傾倒している。
 

以下ネタバレです。白黒反転すると読めます。

支給武器:

コルト・ロウマン
kill:

なし
killed:

北修司(男子四番)
死亡話数:

第76話
凶器:

毒薬
 

教室内で、プログラムに対して東海林至(男子十番)が反論。芝崎務(担任)が銃を取り出し危険に晒されるが、道下未来(男子十七番)に守られ事なきを得た。<11話>

城龍慶(男子九番)につっかかる北修司(男子四番)を止める。“NEWS”のメンバーと行動を共にする。<17話>

G=04エリアの民家に篭城。至と揉めた修司を宥めた。修司に恋心を抱いているが、修司の気持ちも知っている。<31話>

民家を訪れた篠宮未琴(特別参加者)を招き入れることに反対したが、至・佳菜彩に押されて招き入れる。未琴を警戒している模様。<58話>

うろつく未琴を牽制、居間から出ることを禁止する。<64話>

自分たちの情報を持っている未琴を訝しむ。何者かが訪ねてきて、無警戒に招き入れようとする至を牽制するも、受け入れられなかった。結果、二階堂哉多(男子十三番)・二階堂悠(女子十三番)の襲撃を受けるが、未琴に救われる。僅かに警戒を解いた模様<70・71話>

気分転換と空腹を満たすために料理をする。接していくうちに未琴への警戒心を解いていく。料理を食べた直後苦しみ始め、吐血して息絶えた。修司が未琴を殺害するために毒を盛った料理を手違いで食べていた。<76話>



冷静だったので、NEWS内では1番書きやすかったです。
この子がいなかったら、NEWSはもっと早くに崩壊していたかもしれません。
NEWS内の1番の功労者はアユでしょう。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 20:48:10.72 ID:wl9D4z8n0
女子21番・淀野亜美加(よどの・あみか)

陸上部マネージャー。女子主流派グループ。
おっとりしているが、自分の意志を通す強さを持つ。
色素が薄く、茶髪は地毛。

身長/154cm
愛称/亜美加、亜美加ちゃん
特記/二松千彰(男子15番)とは恋仲

能力値

知力:

体力:

精神力:

敏捷性:

攻撃性:

決断力:

★★★★☆

★★★☆☆

★★★☆☆

★★☆☆☆

★☆☆☆☆

★★★☆☆
 

以下ネタバレです。白黒反転させると読めます。

支給武器:ロープ
kill:

なし
killed:なし(自殺)
死亡話数:14話
凶器:首輪
 

E=02エリアにて千彰と一緒にいた。争いを好まない性格ゆえに自[ピーーー]る道を選ぶ。禁止エリアで千彰と共に最期を迎える。<第14話>

 

ほのぼのカップルでした。
改稿前よりも幸せに書けたかな、と思います。
それにしてもあれですね、一人称が「亜美加」だと鬱陶しい(をい)
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 20:57:22.04 ID:wl9D4z8n0
さとう
@ayaka_2_5
牙崎のPでS.E.Mのファン(特に山下)765は真 えすりは七尾 アカ分けしてません
日本誕生日: 7月28日
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/02(土) 20:58:45.98 ID:juDPjERF0
これは荒らし?誤爆?
827 : ◆YySYGxxFkU [saga sage]:2019/02/02(土) 22:33:38.28 ID:eAg+4cOD0
たぶん荒らしですね。
前に投稿していたssでも同じようなことがあったので。
読者の皆さんには迷惑かけますがスルーでお願いします。

ついでに告知。
4章も2〜3日以内に投下する予定です。よろしくお願いします。
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/02(土) 22:55:15.23 ID:wl9D4z8n0
男子1番・青山豪(あおやま・ごう)

サッカー部FW。男子運動部グループ。
いつでも努力を怠らない。
笠井咲也(男子5番)・工藤久尚(男子6番)と特に仲がいい。

能力値

知力:

体力:

精神力:

敏捷性:

攻撃性:

決断力:

★★☆☆☆

★★★★☆

★★★★☆

★★★★☆

★★★☆☆

★★★☆☆
 

以下ネタバレです。白黒反転させると読めます。

支給武器:

Cz75
kill:

なし
killed:

結城緋鶴(女子19番)
死亡話数:

14話
凶器:

アイスピック
 

咲也・久尚・設楽海斗(男子10番)に嫉妬心を感じていた。

サッカー選手になるために優勝する事を決意するが、突然緋鶴に首を刺され死亡。

 

努力家、無念の退場でした。。
やろうとした事はともかく、1つの事に全てを捧げられる人ってかっこいいですよね。
彼のイメージ、『ホイッスル!』の主人公が元だったりします。
829 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/02/05(火) 20:47:44.34 ID:QOwpiBXn0
二スレ目建てました。
四章はあちらで投下します。よろしくお願いします。

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1549367188/
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/10(日) 20:08:22.41 ID:MwXXZ1j30
男子

1番 岩田良介
2番 宇佐見隼人
3番 梅村慎吾
4番 榎本悠
5番 加賀雄大
6番 加藤尚幸
7番 川崎大和
8番 岸辺京介
9番 櫻井健司
10番 笹月将也
11番 春原旭
12番 春原孝平
13番 瀬名昭人
14番 谷祐樹
15番 戸松渡
16番 西村修平
17番 橋本瑛ニ
18番 広瀬一輝
19番 堀野勝文
20番 和久井陵雅

女子

1番 足立絵里菜
2番 入江咲子
3番 鵜飼花菜
4番 緒方藍
5番 小野貴音
6番 梶浦志保
7番 神崎真美
8番 来海渚
9番 斉藤美紀
10番 高山奈月
11番 高山美月
12番 津川響子
13番 寺山里佳
14番 七姫透
15番 日比野紗矢
16番 船橋薫
17番 真部歩美
18番 溝口華花
19番 吉川由利
20番 渡辺明日香
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/10(日) 20:09:52.46 ID:MwXXZ1j30
男子

1番 岩田良介
2番 宇佐見隼人
3番 梅村慎吾
4番 榎本悠
5番 加賀雄大
6番 加藤尚幸
7番 川崎大和
8番 岸辺京介
9番 櫻井健司
10番 笹月将也
11番 春原旭
12番 春原孝平
13番 瀬名昭人
14番 谷祐樹
15番 戸松渡
16番 西村修平
17番 橋本瑛ニ
18番 広瀬一輝
19番 堀野勝文
20番 和久井陵雅

女子

1番 足立絵里菜
2番 入江咲子
3番 鵜飼花菜
4番 緒方藍子
5番 小野貴音
6番 梶浦志保子
7番 神崎真美子
8番 来海渚
9番 斉藤美紀子
10番 高山奈月
11番 高山美月
12番 津川響子
13番 寺山里佳子
14番 七姫透
15番 日比野紗矢子
16番 船橋薫子
17番 真部歩美
18番 溝口華花
19番 吉川由利子
20番 渡辺明日香
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