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男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」
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1 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:41:56.91 ID:DHQvvpBJo
男(中学入学当時、席が隣だったことから交流が始まったクラスメイトの女子がいた)
『あ、ごめん! 消しゴム貸してくれる?』
『ちょっと、それ面白すぎ!』
『あー、そうだそうだ。一緒に帰ろーよ!』
男(忘れ物を貸しあったり、ちょっとした冗談で笑いあったり、タイミングがあえば一緒に帰り道を歩いたり……)
男(俺はそんな彼女に次第に引かれていった)
男「好きです! 付き合ってください!!」
男(ある日の体育館裏、俺は呼び出したその子に対して右手を突き出しながら頭を下げた)
男(告白するのは初めてだった)
男(断られるとは思っていなかった)
男(どっちから告白するかだけが問題で、ここは男である俺からだろうと一念発起して行動した結果だった)
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1541083316
2 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:43:12.15 ID:DHQvvpBJ0
『……あー、勘違いしちゃったか。女慣れしてなくてからかうの面白かったよ、おもちゃ君』
男(俺は男として、いや人間として見られていなかった)
男(両思いだと思っていたのは……幻想で)
男(自分の都合の良いように思いこんでいたのだ)
男(このときから俺はその失敗を否定するように――恋愛アンチになった)
3 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:43:38.78 ID:DHQvvpBJ0
男「…………っ!!」
男(またあの夢か……)
男(あれから三年経ち、遠くの高校に進学して中学のメンツとは顔を合わすこともなくなった)
男(それなのに今でも夢に見るトラウマ。朝から嫌な物を思い出してしまった)
男「ていうかいつの間に寝てしまったんだ?」
男(登校した俺は教室の自分の席で机に突っ伏し寝たフリを始めたはずだった)
男(なのに寝オチしたのか……? 確かに昨日は夜遅かったが……)
男(少しの混乱と共に地に伏していた体を起こす)
男(そして周囲の状況を確認したところで――それ以上の混乱に陥った)
4 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:44:24.99 ID:DHQvvpBJ0
男「ここは……どこだ?」
男(目の前にあったはずのカバンや机、それどころか教室すら無くなっている)
男(現在地は屋外。中央に身長ほどの高さのある石碑が鎮座している広場。どうやらそこに寝ていたようだ)
クラスメイト1「何が起きたんだよ?」
クラスメイト2「え、私たち教室にいたはずだよね?」
クラスメイト3「集団誘拐……いや、でも……」
男(クラスメイトたちも同様に困惑している)
5 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:45:31.30 ID:DHQvvpBJ0
男(何が起きたのか、俺は少し記憶を振り返る)
男「………………」
男(そういえばいつも通り寝たフリをしていて……でも、ある時ピタリと教室中の話し声が止まったんだったっけ?)
男(珍しくはあるが、不思議ではない。俗に天使が通ったとか言われる現象だ)
男(問題はその後だ。クラスメイトたちが理解できないといった様子で)
クラスメイトA『何……この模様?』
クラスメイトB『これってアニメとかである魔法陣……?』
クラスメイトC『つうか何か光ってるぞ……!?』
男(そんなことを口にして、俺も異様な雰囲気に目を開けようとして……その後の記憶は途絶えている)
6 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:46:03.81 ID:DHQvvpBJ0
男「魔法陣か……見てはいないけど、超常的な現象に巻き込まれたってところか?」
男(自分でも荒唐無稽なことを言っているとは思うが、現状を見るに認めざるを得ない)
男(広場の外は森に囲まれている。学校の近くにこのような場所は無かったはずだ)
男(俺たちクラスメイト28人全員に気づかせないまま学校から遠くまで運び出すといった芸当が常識的に出来るとは思えない)
男(だとしたら……俺たち全員を一瞬で別の場所に転移させるような、魔法が発動されたのだと考えるしかない)
男「いや魔法と決めつけるのは早すぎるか……? 全員を催眠ガスのようなもので眠らせてから運べば……でもその場合流石に他のクラスや先生たちが気づいて警察に連絡するはずだし……」
女「みんな見て!! この石碑なんだけど……」
男(そのときクラスの委員長、女がみんなに呼びかけた)
男(その声に従って石碑の前に集まると、そこにはこのような文章が書かれていた)
7 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:46:31.34 ID:DHQvvpBJ0
異世界の子らよ、まずは謝らなければならないでしょう。
申し訳ありません。
この世界に突然呼び出したことを。
混乱しているであろう、あなたたちに使命を課すことを。
無礼は承知…す。
で…がこの手段しか無かっ…のです。
この世…に散っ…宝玉を集め…くだ…い。
そ…がこの世界…救い、…なた…ちを元…世界に戻す…しょう。
為すた…の力は…なた…ちに分…与えま…た。
武運…祈っ…いま――――――――
8 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:47:02.36 ID:DHQvvpBJ0
男(途中から記述が霞んできて最後の方に至っては途切れている。これが限界だったという事だろうか?)
男(必死さは伝わってくるが、それを汲んでやるには現状がキツすぎた)
クラスメイト1「異世界の子……って、ここ違う世界なのか?」
クラスメイト2「勝手に呼び出しておいて、使命って何なのよ!?」
クラスメイト3「つうかさっさと元の世界に返してくれよ!!」
男(石碑に罵声を浴びせ始めるクラスメイトたち)
男(当然ながら返事はない)
男(だが、その行為を一向に止めようとしない)
男(こんな事態に巻き込まれて参っていたんだろうな)
男(今までは不平・不満をどこにぶつけていいのか分からなかったが、こうして主犯らしい者が残したメッセージが見つかった)
男(感情を爆発させてしまうのは仕方ないことだ)
9 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:47:30.84 ID:DHQvvpBJ0
クラスメイトA「早く出てこい!!」
クラスメイトB「ドッキリなんだろ!! どこかにカメラでもあるんだろ!!」
クラスメイトC「お母さん……っ」
男(しかし、ヒートアップしすぎているな)
男(このままでは集団パニックに陥る。それはマズい……と思ったそのとき)
女「みんな落ち着いて!」
男(毅然とした声を上げたのは先ほど石碑を見るように呼びかけた委員長の女だった)
男(女さんは整った顔立ちに手入れの届いた黒髪。学業優秀で容姿端麗ながらも、お高く止まらず気さくに接してくれることで、男女問わずに慕われている。クラス内のカーストの頂点に位置する人物だ)
10 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:47:58.64 ID:DHQvvpBJ0
クラスメイト1「落ち着いてって……でもどうすればいいの、女」
男(異世界でも変わらない調子の女に、突然の事態で憔悴したクラスメイトたちは縋る)
女「まずは現状を認識しないと。どうやら私たちは違う世界ってのに呼びだされたみたい」
クラスメイト2「だからその違う世界ってどういうことだよ!? この世界は何なんだ!? どうして俺たちが呼び出されたんだ!?」
女「それは……私にも分からない。でも元の世界に帰る方法はそこの石碑に書かれている」
クラスメイト3「宝玉……っていうのを集めるんだよね?」
女「そうみたいだね」
クラスメイト4「そんなの集められるのかよ!? そもそもそれはどこにあるんだ!?」
女「分からない、でも――」
男(女に文句を言っても仕方が無いのに、女は嫌な顔をせず一人一人の不安を解きほぐすように答えた後、宣言した)
11 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:48:36.54 ID:DHQvvpBJ0
女「絶対にみんなで元の世界に戻ろう!! 私たちクラスメイト28人が団結すれば、不可能な事なんて無いはずだよ!」
男(女は根拠など無いはずなのに力強く断言した)
クラスメイトA「……そうだな、現状を嘆いたところで何が始まるわけでもないし」
クラスメイトB「私たちなら出来る……うん、そうだよ」
クラスメイトC「訳わかんねー事態だけど……頑張ってみるか」
男(するとそれに触発されるように、ポツポツと前向きな言葉が口をつき始めた)
男「一応収まりはしたか……」
男(毅然とした態度で応えることでみんなの不安を和らげて、元の世界に戻ると目標を掲げることで現状の不満から目を逸らさせる)
男(誤魔化しな面もあるが、パニックを防ぐのには十分だ)
女「ほっ……」
男(女がみんなの注目を外れた場所で胸をなで下ろしている)
男(それだけ緊張していたという事だろう。確かに簡単なことではない。女が少しでも不安を見せれば、たちまちこの場が崩壊していた可能性だってある)
男(しかしそれでも成し遂げた)
男(俺にはそこまでの度胸はないし、もしやれたとしてもクラスでの影響力皆無な俺では意味がない)
男(女の胆力とカリスマが為した結果だ)
12 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:49:09.49 ID:DHQvvpBJ0
男「そういや石碑に気になることが書いていたな」
男(注目したのは『為すた…の力は…なた…ちに分…与えま…た。』という部分だ)
男(かすれているが『為すための力はあなたたちに分け与えました。』といったところか?)
男(つまりは呼び出した者が、俺たちに力を分け与えた)
男(宝玉とやらをその力を使って集めろということなのだろうが……一体何の力を与えられたんだ。
男「どうにか力を確認したいところだが」
男(その瞬間、音もなくホログラムのようなウィンドウが目の前に展開された)
男「……は?」
男(テレビの次世代技術特集で見たことがあるような光景。いや、そのための機材が見当たらないのでそれ以上だ)
男(驚きながらそのウィンドウを確認すると枠の上部に『ステータス』と書かれている)
男(これは……あれか? ゲームとかによくあるステータス画面ってやつか?)
男(だとすると力を確認したいという言葉に反応して展開されたという事だろう。どういう技術だ? いや、異世界だとしたら、超常の力が働いているとかなのか?)
13 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:49:36.22 ID:DHQvvpBJ0
男(ステータス画面枠内の一番上段には『名前(ネーム):男』と俺の名前が書いてあり、その横に『職(ジョブ):冒険者』と表示されている)
男(後の画面の残り9割はスキル欄という項目が占めていた)
男「もうちょっとレイアウトのバランス考えろよな……スキルが一つしかないからスカスカじゃねえか」
男(どうやら俺には一つだけスキルが備わっているようだ)
男(これが分け与えられた力とやらなのだろう)
男(『魅了』とだけ書かれている)
男「どんなスキルなんだ?」
男(試しにその『魅了』という表示をタッチしてみると、どうやら反応したようで詳細が展開される)
14 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:52:00.92 ID:DHQvvpBJ0
スキル『魅了』
効果範囲:術者から周囲5m
効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ
・発動すると範囲内の対象を虜にする。
・虜になった対象は術者に対して好意を持つ。
・虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う。
・元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない。
・一度かけたスキルの解除は不可能。
15 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:52:29.17 ID:DHQvvpBJ0
男「これは……」
男(思っていたより説明が長くて細かいな……)
女「ねえ、男君。それ何なの?」
男「っ……委員長!?」
男(いつの間にか近くまで来ていて声をかけられる)
男(しかしどうしてこのタイミングで声をかけられて……あ、そっか)
男(気づけばクラスメイト全員が俺の方を、正確には俺の少し前方を注目している)
男(どうやらこのステータス画面というのは俺以外にも見えているようだ)
男(異世界で未だに右も左もよく分からない中、偶然とはいえステータスを開き覗いている人間がいれば目立つ。声をかけられて当然だ)
16 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:52:59.50 ID:DHQvvpBJ0
男「えっと、これは……」
男(周囲の目を気にするのを忘れていたのは良くなかったな)
女「スキル……魅了……? 効果が…………」
男(気になるのか女の視線は俺の開きっぱなしのステータスウィンドウの文字を追っている)
男(まずはステータスを閉じるか。文字が小さいため近くにいる女にしか読まれていないようだがそれでも気になる)
男(その後偶然見つけたステータス確認方法をみんなにも教えればいい)
男(俺は判断して行動に移そうとするが、そこで一つ問題があった)
男(どうやってこのステータスを閉じればいいんだ?)
男「ステータス、閉じろ」
男(……反応ないな)
男(だったら魅了スキルの詳細を展開したように、ウィンドウにタッチすればいいのか? でもどこをタッチすれば………………)
17 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:53:26.80 ID:DHQvvpBJ0
男(――後からの結論なのだが、ステータス画面枠の右下に小さく×のマークがあり、そこにタッチすればステータスを閉じることは出来た)
男(しかし閉じるといえば右上という固定観念を持っている俺はテンパってたこともあり気づけない)
男(とりあえず画面の中央辺りをタッチすると)
『魅了スキルを使用しますか?』
男(という表示が出てくる)
男(いやいや、今は使用している場合じゃねえ! いいえだ!)
『いいえ はい』
男(俺は迷わず右をタッチして…………タッチした項目を二度見した)
男「………………」
男「………………」
男「………………」
18 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:53:52.30 ID:DHQvvpBJ0
男「……このクソUIがっ!!!」
男(思わず叫んだ俺を誰が責められるだろうか)
『魅了スキル、発動します』
男(そんな表示が出るとともに、効果範囲の周囲5m――石碑の前に集まっていたクラスメイト全てをその中に捉えてピンク色の光の柱が立ち上がった)
19 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/01(木) 23:58:58.43 ID:DHQvvpBJ0
続く。
この作品は同タイトルでなろうに投稿したものを、ss用に少々いじって投下しています。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage ]:2018/11/02(金) 00:01:30.59 ID:ffMz9y5lO
おつ なろうっぽいと思ったらなろうだった。
21 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:31:16.86 ID:dY7GkpCm0
男(暴発してしまった魅了スキルの効果と思われるピンク色の光の柱は1秒ほど光った後に消えた)
男(周囲を見回すとクラスメイトたちは何が起きたのかと一様に疑問顔を浮かべていた)
男(光に攻撃力は無かったようで誰も傷ついている様子はない)
男「………………」
男(えっとこれはどうなるんだ……?)
男(スキルの詳細画面をもう一度見る)
スキル『魅了』
効果範囲:術者から周囲5m
効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ
・発動すると範囲内の対象を虜にする。
・虜になった対象は術者に対して好意を持つ。
・虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う。
・元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない。
・一度かけたスキルの解除は不可能。
22 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:32:31.25 ID:dY7GkpCm0
男(効果範囲5m……ちょうど今、光の柱が立ち上がったのがそれくらいの範囲だった)
男(ということはクラスメイト全員に魅了スキルをかけてしまったということだ)
男(ということは……えっ、男たちにもかけてしまったのか!?)
男(クラスメイトは全員で28人。男女ともに14人ずつである)
男(俺以外の13人の男子が俺の虜になってしまうというおぞましい結果を予想するが)
クラスメイト男子1「今の光……何なんだ?」
クラスメイト男子2「特に変わりはないが」
クラスメイト男子3「えー……あー……おまえの仕業なのか?」
男(男子たちの様子は変わりない。というか最後のやつ俺の名前覚えて無かったな。まあボッチだから仕方ないが)
男(でも、これはどういうことだ? 魅了スキルが失敗した様子は無かったし…………)
男(あ、効果対象に『異性のみ』って書いてあるな。つまり対象じゃない同性、男には効果がないのか)
23 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:33:16.43 ID:dY7GkpCm0
男(ならば女子14人には全員かかったのか……と、見てみるが)
クラスメイト女子1「その変な浮かんでるやつ何なの?」
クラスメイト女子2「ステータスって……ゲームとかで見るあれ?」
クラスマイト女子3「さっさと教えなさいよ」
男(女子たちの様子も変わりがない。どころか剣呑な視線を向ける者もいる)
男(おかしいな……ウィンドウの表示からして、スキルはちゃんと発動したはずだ。それなのに虜になっていない)
男(どういうことだ……?)
24 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:34:16.65 ID:dY7GkpCm0
女友「えいっ♪」
男「っ……!?」
男(突然背中に衝撃を受ける。後ろから抱きつかれたようだ)
男「女友さん……何しているのでしょうか?」
男(クラスメイトなのに思わず敬語で聞いてしまう)
男(いや、スクールカースト上位の美少女に突然抱きつかれたら、誰だって面食らうだろう)
女友「駄目でしたか、男さん?」
男「え、あっ、いや……」
男(理由を聞いたのに質問が返ってきてあたふたする俺。その間も女友は俺に抱きつくのをやめない)
男(おっとりしている中にも芯のある彼女らしい行動だ)
男(どうしていきなりこんなことを……女友とは同じクラスだが、交流関係が違いすぎてほとんど話したことがない)
男(なのに今こうして抱きつかれている。その表情は無理やりや強制によるものではないとはっきり示すように、まるで彼氏彼女のような好意を俺に向けているのが見て取れた)
男(……好意? もしかして魅了スキルが関係するのか? でもどうして他の女子にかからず、女友にだけ効果が現れて……)
25 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:35:14.28 ID:dY7GkpCm0
女「お、女友っ!? 何してるの!? ちょっと離れなさいよ!」
男(委員長の女が気づいて注意する。女と女友の二人は親友だったはずだ。親友の奇行を止めたいのだろう)
男(しかし)
女友「女の言葉でもそれは聞けません」
男「は?」
女「え?」
男(きっぱりと断った女友に俺も女も間抜けな言葉を漏らす)
男(その隙に俺の腰に抱きついていた腕を首元まで回して上体を起こした女友は、しなだれかかるようにしながら俺の耳元で囁く)
26 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:36:03.59 ID:dY7GkpCm0
女友「ねえ、男さん。私、もう抑えられないんです」
男「な、何が……?」
男(呑まれっぱなしの俺はしどろもどろになっている)
男(体勢を変えたことで女友の二つの膨らみが背中で押しつぶされてその柔らかさを伝えてくる。彼女いない歴=年齢の男子高校生の俺には耐え難い刺激だ)
男(ステータスウィンドウを開いていたこと、魅了スキルを暴発したこと、そしてクラスの有名人である女友に抱きつかれていることで、ここまでクラスメイト全員の視線を俺は集めている)
男(その注目の中で女友は爆弾発言を投下した)
27 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:36:42.33 ID:dY7GkpCm0
女友「私と子作りしませんか?」
男「……、……、……。……なっ!??」
男(余りに衝撃的すぎて数瞬も脳が理解を拒んだ)
男(そしてようやく驚く反応を取れた俺と同じくして)
女「お、女友っ!? な、何を言っているの!?」
イケメン「これは……」
モブ女「そうよ、考え直しなさいよ、女友!!」
ギャル「女友ってその冴えないやつが好きだったの? 趣味悪っ」
モブ男「女友さんがぁぁぁぁぁっ!? どうしてあんなやつに!?」
男(周囲のクラスメイトも口々に叫ぶ。かなりのオーバーリアクションを取っている者もいるようだ)
男(自分よりも驚いている人間がいると逆に落ち着くことが出来るということで、俺は幾分か正気を取り戻す)
男(このままじゃまずい……何がまずいかはよく分からないが、とにかくまずい。女友から離れなければ)
28 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:37:23.08 ID:dY7GkpCm0
男「ぐっ…………って、動かねえ!?」
男(首元に回された女友の腕を力ずくで離そうと手をかけるが……ビクとも動かない)
男(どうやら力はあちらの方が上のようだ。男なのに女に力で負けて少々凹む)
女友「もう、照れ屋さんですね。でも逃がしませんよ」
男(俺の抵抗を涼しい顔で受け流した女友の言葉)
男(深呼吸をして心を落ち着けてから、俺は質問する)
男「どういうつもりだ? 何が狙いだ?」
女友「人を腹黒みたいに言って酷いですね。純粋な好意ですよ」
男「これまで特に接点が無かったのにこんなことされたら裏を警戒するもんだろ」
女友「それにつきましてはさっきの光を浴びてからどうにも男さんが愛しく思えてきて」
男「光……やっぱり魅了スキルが影響して……」
29 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:38:03.22 ID:dY7GkpCm0
男(会話している間もどうにか拘束を外そうと試みるが、まるで子供のようにいなされる。さすがにここまでの力の差はおかしいと思って気づいた)
男(そうか、俺の魅了スキルと同じように女友も異世界に来て力を授かっているはず。その影響なんだろう)
男(そしてやはり女友には魅了スキルがかかっているようだ)
『虜になった対象は術者に対して好意を持つ』
男(急に抱きついて子作りをせがむほどの好意を持ったのは魅了スキルによるものだろう)
男(どうして他の女子に変わった様子が無く、女友にだけ効果が発揮されたのかは分からないが、ならば出来ることがある)
女友「まあそんなことより子作りです。皆に見られるのが恥ずかしいなら、そこの森にでも入って……」
男「互いに愛し合っていない関係でそんなこと出来るか。――離れろ、これは命令だ」
30 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:38:50.14 ID:dY7GkpCm0
『虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う』
男(魅了スキルの効果の一つ)
男(それによってあんなにも固執していた女友が自分から抱きつくのをやめて俺と距離を置いた)
女友「……あれ?」
男(自分で自分が何をしたのか理解できないように手元を見つめている)
男(命令に身体が従うということで、心の方の理解が追いついていないのだろう。
男(異性に好意を抱かせて命令できる……ちょっと不明な部分もあるが、魅了スキル、これチート過ぎるだろ)
31 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:39:53.72 ID:dY7GkpCm0
続く。
しばらく毎日更新の予定です。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/02(金) 23:17:01.21 ID:pcvgrkbCo
乙ー
33 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:23:57.00 ID:wiS+VjWp0
男(女友の拘束から命令で開放される)
男(そのまま魅了スキルが何故女友にだけ効果が現れたのか考察したいところだったが)
クラスメイト「「「………………」」」
男(周囲を囲むクラスメイトたちのそろそろ何が起きているのか事態を説明しろという圧力をひしひしと感じる)
男(そのため俺はステータスの開き方をみんなに教えた。言葉にするだけで開けるという言葉に半信半疑の表情だったが)
クラスメイト「ステータスオープン……うおっ、何か出た!?」
男(直後ステータスウィンドウが次々に浮かぶのを見て払拭された)
34 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:24:55.95 ID:wiS+VjWp0
クラスメイト1「職は剣士……王道だな」
クラスメイト2「魔法使いって……え、魔法が使えるの? 呪文は……『ファイア』! あ、炎が出た」
クラスメイト3「『影分身』! うおっ、ニンジャ凄え!!」
男(広場に散ってそれぞれに備わった力を確認するクラスメイトたちだが……)
男(え、何その戦闘に使えそうな力?俺には何も無かったんですけど?)
男(どうやら職の力によるものらしい。改めて自分のステータスを確認すると職には『冒険者』とある。タッチしてみると詳細が出た)
『職:冒険者』
『誰もが最初に通る職。経験を積んで力を身につけよう』
『使える職スキル:無し』
男(どうやら俺だけ初期の何も力を持たない初期職のようだ)
男「えー……何この不公平さ……」
男(俺だって剣を使って戦ったり、ド派手な魔法をかましてみたかったのに)
35 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:25:28.41 ID:wiS+VjWp0
女「女友の『魔導士』ってすごいね。たくさん魔法が使えるみたいだし」
女友「女の『竜闘士』程じゃありませんよ。それにスキルもたくさん持っているみたいですし」
男(委員長の女と俺に抱きついてきた女友の二人が互いのステータスを確認している。二人とも親友とは聞いていたが、ずいぶん仲がいいようだ)
男(にしてもステータスウィンドウの9割を占めてレイアウトを考えろと思っていたスキル欄も、それぞれたくさんのスキルに溢れているようで結果的にバランスが良くなっている)
男(俺のようにスキルが『魅了』一つだけといったものは誰もいない)
男「もしかして……俺、外れを引かされたのか?」
男(初期の職にスキルも一つだけ。つまりは戦闘力は0ということで随分と格差を感じるが……)
男(その一つのスキル『魅了』がチートなためバランスが取れているという事だろうか? 実際他のクラスメイトに『魅了』スキルを持っている人はいない)
36 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:25:59.64 ID:wiS+VjWp0
男(クラスメイトたちは一通り力を確認したところで、みんな石碑の前に戻ってきた。もう一つの疑問を解消するためだ)
イケメン「ステータスウィンドウについては理解したよ。これがあの石碑にかかれていた力ということだね」
イケメン「でも女友が君に抱きついたり、子作りをせがんだりした理由はまだ不明だな。僕が知らないだけで、君たちそのような仲だったのかな?」
男(副委員長のイケメンがみんなの疑問を代弁する。爽やか系のイケメンでトップグループの一人だ。女友もそのグループの一人のためこのような物言いになったのだろう)
男(ここで「実は隠れて付き合っていたんですよ、HAHAHA」と言っても信じてもらえないだろう。おそらく冗談とも認識されないかもしれない)
男(手の内を明かすのは嫌だったが、このままだと納得してもらえなさそうだったため、俺は魅了スキルの詳細について開示する)
スキル『魅了』
効果範囲:術者から周囲5m
効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ
・発動すると範囲内の対象を虜にする。
・虜になった対象は術者に対して好意を持つ。
・虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う。
・元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない。
・一度かけたスキルの解除は不可能。
37 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:26:28.47 ID:wiS+VjWp0
男(スキルの詳細を見たクラスメイトの反応はというと)
クラスメイト男子1「……はぁっ!? 何だよこれ!? 男の夢みたいなスキルじゃねえか!! 俺の『剣士』の職スキルと取り替えっこしてくれよ!!」
クラスメイト男子2「ハーレム作り放題じゃねえか!! くっそリア充爆発しろ!!」
クラスメイト男子3「おう、俺爆発魔法使えるけど、手伝おうか?」
クラスメイト女子1「……汚らわしい」
クラスメイト女子2「それで女友さんをあんな目に合わせたってことね」
クラスメイト女子3「外道め」
男(男子からは羨望の声が飛び。女子からは罵声が飛ぶ)
男(見事に分かれたなー……まあ当然の反応か)
38 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:26:54.98 ID:wiS+VjWp0
女友「ということは私はその魅了スキルにかかったから男さんに好意を持ったということですね?」
男「その……女友さん。ごめんなさい。こんなことになってしまって」
女友「女友、でいいですよ。それに元々男さんには興味を持っていましたし」
男「興味?」
女友「……あ、でも悪いと思っているならば、お詫びに抱きついてもいいでしょうか? 抱き心地も素晴らしかったですし」
男「それは駄目だ。……ったく」
男(異性に対する免疫の足りない俺は、蠱惑的な態度の女友の対応に苦労する)
39 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:27:35.00 ID:wiS+VjWp0
イケメン「女友の件は分かった。さっきの光の柱が魅了スキルだったということか」
イケメン「対象は異性のみということで男子たちはかからなかったようだが、そうなると他の女子が魅了スキルにかかっていないのが気になるな」
男(イケメンが次の疑問点を提示すると、声を上げた女子が一人いた)
ギャル「もう、イケメン! 自分の彼女があんな冴えないやつを好きになって良いっていうの!?」
イケメン「そんなことないさ、愛しているってギャル。だけどギャルだってあの光には飲み込まれたはずだろ? 不思議じゃないのか?」
ギャル「そう? かかってないんだからどうでもいーじゃん」
男(ギャルっぽい見た目そのままの中身のギャル。トップカーストの一人で、イケメンと付き合っている)
男(俺のことを冴えないやつとさりげなくディスってくることから分かるようにプライドや攻撃性が高い)
男(俺の苦手なタイプで――だからこそ魅了スキルがかからなかったのかもしれない)
男(そう、俺は魅了スキルの説明を改めて見たことでギャルやクラスの女子たちが魅了スキルにかからなかった理由に気づいた)
男(だが、それを口走ると余計な争いを招くので黙ったままに――)
40 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:28:10.42 ID:wiS+VjWp0
女友「ひょっとして魅了スキルの『効果対象 魅力的だと思う異性のみ』が原因じゃないでしょうか?」
女友「男さんがギャルさんを魅力的に思っていないから、魅了スキルがかからなかったと」
男「あっ、バカっ!」
男(余計な言葉を投げた女友に、俺は思わず言葉が口を突いて出る)
男(さっきまで見落としていたが魅了スキルの対象は正確にいうと『効果対象 魅力的だと思う異性のみ』である)
男(これはつまりブスに魅了スキルを間違ってかけてしまい迫られたりしないというわけだ。都合のいいスキルだ)
男(だが、問題はこの『魅力的だと思う』という表記だ)
男(……正直に言うとギャルの容姿だけなら整っている方だと俺も思う。だが、高圧的な態度に苦手意識を感じていた)
男(魅了スキルはどうやらそこらへんの事情も組んで、やつを魅力的ではないと判断したらしい)
男(つまり魅力的かどうかは基準は個人の主観によるものということだ。例えばブス専であるなら、ブスにも魅了スキルをかけることも出来るということだろう)
41 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:28:50.76 ID:wiS+VjWp0
男(それはいいが……不名誉なことを指摘されたギャルはというと)
ギャル「……はぁ? 何それ? 私に魅力が無いっていうの?」
ギャル「別にイケメンの彼女だからそいつに好かれる必要なんてないけど……何かムカつく」
男(予想通りの反応。自尊心が高く自分の容姿に自信を持っているギャルに、魅力が無いなんて言えばどうなるか火を見るよりも明らかだ。)
女友「少なくとも男さんの中ではギャルさんより私の方が魅力的だったということです」
男(その反応に面白くなったのか、女友は新たな爆弾を投下する)
男「女友、ちょっと黙ってろ!!」
ギャル「……絶対に潰す」
男(あわてて命令するも時すでに遅し。ドスの利いた恐ろしい言葉が聞こえた気がする)
42 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:29:29.84 ID:wiS+VjWp0
イケメン「もう、そんなに怒ったら愛らしい顔が台無しだよ、ギャル」
ギャル「……でも、イケメン。あいつが」
イケメン「大丈夫だって、俺の中ではギャルが一番だから」
ギャル「イケメン……っ!」
男(ギャルのご機嫌を取る彼氏のイケメン。これで一件落着――)
ギャル「(キッ……!)」
男(とは行かないようだな。イケメンに抱きつきながらも、こっちを睨んでいる)
男(怖くなってきたためそちらから視線を外すが、その移動先であるクラスメイトの女子たちにも敵意を向けられていた)
クラスメイト女子1「女友さんに勝っていると自惚れるつもりはないけど……こうも魅力がないと思われると癪だわ」
クラスメイト女子2「ボッチのくせに生意気」
クラスメイト女子3「あんたの方が魅力無いわよ」
男(ギャルと同じように他の大多数の女子を俺は魅力的だと思われなかったわけで、その扱いに腹を立てられている)
男(とはいっても仕方ないだろう。教室というのはその人の素が出るものだ。一目惚れという言葉があるように内面を知らない方が夢を見れる)
男(つまり内面を知ってまで魅力的と思えたクラスメイトは女友だけということに…………いや)
43 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:30:05.61 ID:wiS+VjWp0
女友「ですがそうなりますと、女も魅了スキルにかかっていないのは彼女を魅力的に思っていないからということになりますが……どうなのでしょうか、男さん?」
男「ほんとおまえも懲りないよな。それにちょっと黙ってろと命令したよな……魅了スキルで虜になってるから命令に従うはずだが……」
女友「ですからちょっと黙ってましたよ」
男(微笑を浮かべる女友。どうやら命令内容の曖昧な部分は受け手側が解釈出来るようだ。一時間は黙っていろと命令するべきだったか)
男「うーん……でも、それは俺も分からないんだよな……」
男(ギャルや他の女子が魅了スキルにかからなかった理由は分かったが、委員長の女が魅了スキルにかからなかった理由が分からない)
男(容姿や性格、異世界に来てすぐみんなをまとめた度胸、全部評価しているし特に悪い印象は持っていない)
女友「親友の私が言うのも難ですが、非の打ち所が無い美少女ですし、性格も文句無いですよ」
男「……まあ、その、俺もそう思う……って何言わせてるんだ」
女友「ノリツッコミですか、面白い人ですね」
男(ああもう余計なことを口走ってしまった。女友が相手だと調子が狂う)
44 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:31:14.29 ID:wiS+VjWp0
女「も、もうそんなに誉めても何も出ないって!」
男(女にも聞こえていたらしい。恥ずかしいやつだな俺)
女「でも……このままだと………………なら」
男「……?」
男(ぼそぼそと何やらつぶやいた女は何やら決心をした顔で告白した)
女「私も男君の魅了スキル……かかっているかもしれない」
45 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:32:29.79 ID:wiS+VjWp0
続く。
なろうテンプレの設定や展開使ってますが、ssにすると唐突感がすごいですね。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/03(土) 23:44:53.16 ID:1EH77ZNdo
乙ー
47 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:10:05.12 ID:CNVzLp6E0
男「……え?」
男(女の言葉に驚く俺だが……論理的に考えてその可能性は高いと思っていた)
男(魅了スキルの効果範囲にいて、対象の『魅力的だと思う異性のみ』にも当てはまっている。失敗する理由が思い当たらない)
男(だが、ネックとなっていたのは)
男「だったらどうして女友と反応が違うんだ?」
男(魅了スキルによる好意から抱きついてきた女友と違って、女の俺に対する反応は今までと変わりが無い)
女「そ、それは私に聞かれても困るけど……」
女友「……なるほどそういうことですか」
男(しどろもどろになる委員長の女に対して、女友が謎が解けたという顔をしている)
48 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:10:57.35 ID:CNVzLp6E0
女友「そういえば女は先ほど確認したステータスでスキルに『状態異常耐性』を持っていましたね」
女友「それのせいで魅了スキルのかかりが中途半端なのでは」
女「そう、それ! そういうことだよ! ほら見て!!」
男(女友の言葉に女は身を乗り出して同意するとステータスウィンドウを開いて見せる。スキルの中に『状態異常耐性』という表示があった)
男「これで魅了スキルがかからなかったってことか」
女友「いえ。耐性であって無効ではありません。魅了スキルはかかってはいるはずです」
女友「女もあの光を浴びてから男さんにそれなりの好意を持ったんじゃありませんか?」
女「え、えっと……言われてみればそうかも」
男「つまり中途半端に魅了スキルにかかったってわけか」
男(好意が女友ほど上がらなかったから突然抱きついたりしなかったってことだろう)
49 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:11:31.36 ID:CNVzLp6E0
女友「ですから、男さん。女に命令を出してみたらいかがですか?」
女友「中途半端とはいえかかっているなら、命令にも従う可能性もあります。そうなればあんなことや、こんなことをさせることも……」
女「ちょ、な、何を言っているの女友!?」
男「衆人環視な状況でそんなことをするかっての」
男(そもそもそんなことをしたら、今も嫉妬の眼差しで俺を射殺さんばかりに睨んでいるクラスメイトの男子たちに本当に殺されるかもしれない)
クラスメイト男子1「女友さんに飽きたらず……女さんまで!?」
クラスメイト男子2「やっぱり爆発だな。頼めるか?」
クラスメイト男子3「スタンバーイ、オッケー」
男(ほらな)
50 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:12:01.35 ID:CNVzLp6E0
男「………………」
男(まあでもどういう状況なのかは気になる)
男(好意に関しては中途半端だっただけで命令には完全に従う、とかだとしたらちょっとした言葉尻を命令と受け取って暴走する可能性もあるわけで面倒だ)
男「すまん、確認のために命令するけど、委員長はいいか?」
女「へ、変な命令は駄目なんだからね! 絶対駄目だからね!!」
男(顔を真っ赤にして念押しされる)
男(……何だろうか。押すなよ、押すなよ言っているようでお約束を守りたくてムズムズするが、しかし命がかかっているので我慢する)
51 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:12:50.17 ID:CNVzLp6E0
男「よし、命令だ――右手を挙げろ」
女「え……はい」
男「左手を挙げろ」
女「えっと……こう?」
男「右手を下げるな」
女「……おっと」
男「左手を下げるな」
女「……っ、よしっ」
男(右手も左手も挙げて、バンザイした状況の女)
男「ん、どうやら命令は聞くよう――」
女友「駄目です、男さん」
52 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:13:22.21 ID:CNVzLp6E0
男「どうした?」
女友「こんな脳トレで何が分かるって言うんですか?」
男「いや、でも命令に従ってはいるだろ」
女友「こんなのフリでも従えます」
男「いや、女がそんなフリする意味がないだろ?」
女友「とにかく。本当にどこまで魅了スキルにかかっているか確認するには、やはり本人がやりたがらないことを命令するべきです」
男「いや、でも……おまえこの状況分かっているのか?」
男(周囲の嫉妬の眼差しを向けている男子を指さす)
女友「分かってますとも。ですから……ちょっと耳を貸してください」
男(女友は耳打ちで女に出すべき命令を伝える。そして最後にフッと息を吹きかけられた)
男「っ!? く、くすぐったいだろうが!!」
女友「ふふっ、ちょっとした悪戯心です」
男(クスクスと笑みを浮かべて離れる女友。くそぅ、翻弄されているな)
53 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:13:57.91 ID:CNVzLp6E0
女「ねえ、何の話? そろそろ両手下げていい?」
男「ああいいぞ……ってずっと挙げてたのか。いやこれも命令の効力か?」
男(下げないと言った命令をずっと下げてはいけないと受け取ったのだろうか)
男(俺としてはその瞬間だけのつもりだったが、曖昧な命令は受け手側で解釈できるのはすでに分かっている)
男(つまり女が律儀な性格だということだろう)
男(この件からしてもう女に命令できると確信してもいい気がするが…………女友に言われた命令を最終試験にするか)
男「じゃあ最後に委員長に命令だ」
女「何かな?」
男(安心している表情の女。変なことを命令されるという不安から、脳トレが始まったのですっかり俺が次も普通の命令を出すと信じているのだろう)
男(……まあ、それは裏切られるのだが)
54 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:14:40.52 ID:CNVzLp6E0
男「委員長の……ス、スリーサイズを教えろ」
女「………………へ?」
男(間の抜けた表情を見せる女はそのままフリーズする)
男(さっきとは違ってすぐには命令に従わないようだが……これも耐性で魅了スキルのかかりが悪いからだろうか)
女「………………」
男(黙ったまま見る見る内に顔が赤くなっていく女)
男(口を開かないということは命令が効いていない……これは耐性のせいか……)
男(いや、そもそも魅了スキルが失敗していたという可能性もある。優しい性格の彼女だから、クラスメイトには一定の好意を持っているのだろう。それを魅了スキルによる好意だと思ってしまった。脳トレには反射的に対応してしまったというところだろう)
男(でも、だとしたらどうして魅了スキルが失敗したのか……そんな可能性があるのか……?)
女「84・60・80……です」
男(ボソっと答えた声に、思考から現実に引き戻される)
男(女は命令を順守した。どうやら失敗したという危惧は無駄だったようだ)
55 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:15:10.80 ID:CNVzLp6E0
女「…………」
男「そ、そうか……悪い……」
男(顔を真っ赤にして羞恥に震えている女を見て、罪悪感を覚える俺に対して)
女友「え、何て言いましたか? 男さん、もう少し大きな声で言うように命令してください」
男(まさに死人に鞭を打つ女友)
男「鬼だな、あんた」
女友「本当に命令できるかの確認ですよ、ほら男さん」
男「……もう少し大きな声で言え、女」
男(やけっぱちで命令を追加する)
女「だ、だから……84・60・80よ!! 悪いっ!?」
男(女に涙目で睨まれた)
男「す、すまん」
女友「ふふっ……そういうことですか」
男(どうして俺が……いや女友に従って命令を出した以上俺が悪いのだが)
56 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:15:41.55 ID:CNVzLp6E0
クラスメイト男子1「……おいおい、聞いたかよ」
クラスメイト男子2「ああ、バッチリだ」
クラスメイト男子3「ふう……まあ爆発させるのは止めておくか」
男(周囲の男子が、女のスリーサイズを聞き出した俺を英雄視する。みんなが得する命令ならば嫉妬されない。女友の提案は流石だったが……)
クラスメイト女子1「サイテー」
クラスメイト女子2「卑劣」
クラスメイト女子3「死ね」
男(直球の罵倒が女子から浴びせられる。……これは甘んじて受けるしかないか)
57 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:16:19.46 ID:CNVzLp6E0
女「……どうよ!! これで分かったでしょ!! 私にもちゃんと魅了スキルがかかっているって!!」
男「分かった、分かった。疑って悪かった、委員長」
女「女。女友も名前で呼んでるんだから私も名前で呼んでよ」
男「え、えっと……ごめん、女」
女「ふん……」
男(まだ少し涙目が残っている女が仁王立ちで訴えると、俺は両手を挙げて降参を示す。勢いで名前呼びも要求された)
男(疑惑は晴れて女に魅了スキルがかかっていて、命令も効くようだと判明した)
男(それはいいのだが……少し違和感を覚える)
男(それは女の態度についてだ)
男(どうして女は自分が魅了スキルにかかっていると主張してきたんだろうか? 分かったところで、俺なんかに命令されるリスクを負うだけだというのに)
男(律儀な性格だから曖昧にしたくなかった……ということなのだろうか?)
58 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:17:59.19 ID:CNVzLp6E0
女友「これで一件落着ですね」
女「女友? あんたも許してないんだからね」
男「きゃー怖いですっ! 男さん、助けてください」
男(俺の身体を盾にする女友。いや、どうしろと)
男(というか女さんも俺が庇っているように見ないでください。何なら熨斗を付けて差し出してもいいんで)
男(しばらく怒りの表情が収まらなかった女だが、首を振って切り替えると)
女「全く、色々あったけど……よろしくね、男君。頑張って元の世界に戻ろうね!」
男(俺に右手を差し出してきた)
男「……」
男(本当にすごいスキルだ)
男(女友もそうだったが、女だって元の世界ではほとんど話したことがない)
男(それなのにこんな俺によろしくなんて言葉を投げかけるほどには好意を持ってしまっている)
59 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:18:42.85 ID:CNVzLp6E0
男(向けられた好意にトラウマがフラッシュバックする)
『……あー、勘違いしちゃったか。女慣れしてなくてからかうの面白かったよ、おもちゃ君』
男(彼女たちが俺に向けている好意は……トラウマのあの子と同じで本物ではない)
男(魅了スキルによって作られた偽物の好意だ)
男「……こんな俺でもいいならよろしく頼む、女」
女「うん!」
男(おそるおそる握り返した俺に、女は朗らかな笑顔を浮かべる)
男(……大丈夫だ、今度こそ俺は間違わない)
男(揺れ動く心を落ち着けるため、もう一度自戒の言葉を胸中でつぶやいた)
60 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:22:13.16 ID:CNVzLp6E0
続く。
毎回乙の反応ありがとうございます。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/04(日) 16:35:19.43 ID:Owg0dQQw0
乙!
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/04(日) 17:03:07.09 ID:5ijSNgdTo
乙ー
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/04(日) 17:12:49.51 ID:0c+xL9X70
乙
64 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:07:54.87 ID:zgd3yvvu0
女「よし、状況も確認できたし、次は周囲の探索をするよ!」
男(魅了スキルの確認作業から立ち直った女が全体に方針を伝える)
男(みんながそれを当然の風景として受け取っていることが、彼女のリーダーシップの高さを表している)
男「探索か……まあ妥当な判断だな」
男(俺たちが召喚されたこの広場は、どうやら一通り拠点として機能するようだ)
男(メッセージが記されていた石碑しか気にしていなかったが、広場の隅には倉があり中には一通りの得物や生活道具が置いてあった)
男(田舎の公民館のような広いだけで中に何もない建物があり、そこにはみんなが寝るだけのスペースもある)
男(しかし生活するために足りないものが一つだけあった)
女「とりあえず今日は食料を探すよ! 人里の探索はまた明日からね!」
男(女が目標として告げたように、この拠点には食料が無かった)
男(おそらく俺たちを異世界に召喚した何かがこの地に拠点を築いたのだろうが、ここまで準備してくれたなら缶詰めの一つくらい置いてくれれば良かったのに)
65 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:08:51.33 ID:zgd3yvvu0
男(というわけで食料調達は急務だ。拠点は360°森に囲まれているため、そこで見つけなければならない)
男(となると、現代の高校生が森の中で食べ物を見つけられるのか、見つけたとして食べられるのか毒があるのか、調理法が分かるのか、など疑問に思うだろうが……ここは異世界だ)
女「可食かどうかは『鑑定』スキル持ちが確認するから、食べられそうなものがあっても勝手に判断しないで回してね!」
女「倉に調理道具があったし、『調理師』スキルを持っている人もいるからちゃんとした食事にあり付けることは私が保証するから!!」
男(『鑑定』は発動することで触れた物がどういうものなのか調べることが出来るスキル)
男(『調理師』は未知の食材であろうと調理方法が分かるスキルだ)
男(どちらもクラスで四、五人ほど使い手がいるようだ)
男「使い勝手が良さそうなスキルだなー」
男(もちろんそのどちらも俺は所持していない。俺のスキルは『魅了』一つのみだ)
女「よし、というわけでみんな行くよ!」
男(女のかけ声に、クラスメイト総勢28名は森に足を踏み入れるのだった)
66 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:09:44.13 ID:zgd3yvvu0
男(それから数分後。一同はすっかりピクニック気分だった)
クラスメイト1「このキノコ食えるかな?」
クラスメイト2「……その毒々しい紫色無理だろ。早く捨ててこい。それよりこのシイタケに似たやつ食えるんじゃね?」
クラスメイト3「いやそっちの紫は可食で、しいたけっぽいのは猛毒持ちだ。鑑定して驚いたが」
クラスメイト1&2「「マジかよ!?」」
男(クラスメイトたちの和気藹々とした雰囲気の中)
男「くっそ……俺はインドア派なんだっつうの……」
男(俺は既に疲労困憊だった)
男(体育会系の多いウチのクラスがずんずんと進んでいくのに着いていくだけで精一杯だ)
男(それにみんな異世界でもらった職のおかげで体力面も補強されている)
男(つまり特に力を持たない初期職『冒険者』の俺は二重に遅れを取っている)
67 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:10:36.83 ID:zgd3yvvu0
クラスメイト「女さん、このキノコは食べられるでしょうか」
女「ちょっと待ってね……『鑑定』発動! ん、食べられるみたいだよ」
クラスメイト「では同じものを集めるように言っておきますね」
女「うん、お願い。あ、でも取ったキノコは全部鑑定するように言ってね」
女「元の世界でも食べられるキノコとよく似た毒キノコを食べて病院に搬送されたなんてニュースを聞いたことがあるし、見た目が似ているからって全部食べられるって判断するのは危ないから」
クラスメイト「……流石女さん、的確なアドバイスです! 分かりました!」
男(集団の先頭で女が女子のクラスメイトの信用をさらに上げている)
男(職『竜闘士』とスキルを複数持つ女だが、どうやらその中に『鑑定』スキルもあるいるようだった。加えて『調理師』スキルも持っているという話で、どちらも持っているのは女だけらしい)
男(……やっぱり元の世界と同じように、この異世界でも天は才あるものに二物も三物も与えるようだ)
男「にしても魅了スキルがかかっているってのに、あんまり様子が変わらないな」
男(クラスメイトと談笑する女の姿は、元の世界と変わりないように見える)
男(魅了スキルのような人を強制的に虜にする力の出てくる創作物では、かかった相手が術者に病的なまでに心酔する様子がよく描かれるが、俺の魅了スキルはそこまで強力なものではないようだ)
男(いや、それとも……)
68 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:11:17.52 ID:zgd3yvvu0
女友「どうしたんですか、男さん。そんなに考え込んで……いや、これは隙有りと見るべきでしょうか。ならば……」
男「女友、俺に近づくな、命令だ」
女友「ああもう、早すぎます」
男(両手をワキワキさせている女友に、先手を打って命令する)
男「全く、油断も隙もないな」
女友「少しくらい抱きつかせてもらってもいいじゃないですか。男さんの恥ずかしがり屋!」
男(ぶうたれる女友だが、そんなことを許しては嫉妬された他の男子に何をされる分からないので、警戒するに越したことはない)
男「しかし、女はいつもと変わらない感じなのに、女友は結構ぐいぐい来るよな。何が違うんだ?」
女友「魅了スキルのかかり方の違いでしょう。状態異常耐性のせいで、女はそこまで好意が上がっていないということになっています」
男「なっていますというか、その通りなんだが……にしては振れ幅が大きいような……」
男(色々あって流されたが、最初女友は子作りをせがんでくるほどだったのだ。それはもう結婚相手に感じるほどの好意であろう。耐性があるとはいえ、女の態度と落差が大きい)
69 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:12:19.74 ID:zgd3yvvu0
女友「なるほど……それは私の価値観のせいでしょう」
男「……え?」
女友「このような性格なので意外でしょうが、私はずいぶんと古めかしい家柄の出身で。幼いころから男女交際は生涯を共にする伴侶とのみするべきだという価値観を植え付けられているのです」
男「そうか……」
男(思いもよらなかった言葉だが、聞いてみれば腑に落ちた)
男(好意を持った相手にどのような反応するかは人によって違う。照れて否定すればツンデレだし、相手を独占したいと思えばヤンデレだ)
男(女友は好意を持った相手とは、結婚まで行くべきという価値観だった。だから子作りをせがんだと)
男「一言でまとめると古きよき大和撫子ってことか? 全然そう見えないけど」
女友「酷いです。私はこんなに一途じゃないですか」
男「俺的には抱きついて子作りをせがむやつはビッチだ」
女友「あれはいきなり魅了スキルにかかったからですよ。突然好意が沸き上がるなんて初めてで、どう対応すれば分からなくて衝動的に迫ってしまったんです」
女友「でもほら、あれから子作りはせがんでいないでしょう?」
男(言われてみれば俺もアニメで好きになったキャラのグッズを衝動的に買い集めたことがある。あれの人間版と考えると女友の行動も理解できる……のか?)
70 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:13:19.58 ID:zgd3yvvu0
女友「もうこの状況にも慣れてきたのでいつも通り好意をコントロール出来ると思います」
女友「今後子作りをせがむような酷い暴走はしないと誓いましょう」
男「……そうか」
男(さらっと言われたが好意のコントロールか)
男(おそらくだけど嫌っている相手にも好意的に対応しないといけなかったり)
男(逆に好意的な相手にも他の人と同じように接しないとといけない立場だったが故に身につけたのだろう)
男(好意を一律でシャットアウトしている俺より、よほど苦労している)
女友「それより一般的にみれば男さんの行動の方がおかしいですよ。こんな美少女に好意を持たれて、どんな命令でも出来る立場を得たのに、何もしないんですから」
男「自分で美少女っていうか、普通?」
男(軽口で返すが言われたことには分かるところがあった。女性にどんな命令も出来るなんてR18展開に移ってもおかしくない)
男(それでも俺は命令して欲望を満たすつもりはなかった)
男(いや……俺の欲望を満たすことが出来ないと言った方が正しいだろう)
男(心まで操ることが出来ないこのスキルではどこまでいっても人形遊びにしかならないからだ)
男(女と同じく、目の前の女友も過去と重なる)
男(こうして俺に対して好意的に接している彼女……本当は俺のことをどう思っているのだろうか、と)
71 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:13:54.60 ID:zgd3yvvu0
男「………………」
男(ズン、と落ち込む俺に対して、女友は気づいているのかいないのか、調子を変えずに聞いてくる)
女友「そういえば、そろそろいいでしょうか?」
男「いいって何が?」
女友「忘れていますね……ならば、いいでしょう。えいっ!」
男「っ!? だから、抱きつくなって!? くそっ、さっき近づくなって命令したはずだろ!?」
女友「ええ、ですがその命令も忘れていそうなのでいいかと思って」
男「良いわけあるか! つうかこれも暴走じゃねえのか!?」
女友「こんなのただのスキンシップの範疇ですよ」
男「ああもう、おまえの価値観は分からん!! もう一回離れろ、命令だ!!」
72 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:15:09.15 ID:zgd3yvvu0
そうやって男と女友がどたばた騒ぎしているのを嫉妬の籠もった眼差しで見ている男子たちとは別に、神妙な面持ちで見ている者たちがいた。
イケメン「男……か。女友が魅了スキルのせいで好意を持ってしまった相手は。女も同じものにかかっているが、大丈夫か?」
女「大丈夫だって、イケメン君。そんなに心配しなくても」
イケメン「……少し警戒が薄いぞ。男は今、女にどんな命令でも出来る。何をされるか分かったものじゃない」
女「男君はそんなことしないよ。……ス、スリーサイズの件は、女友がけしかけたみたいだし」
イケメン「そうか……これが魅了スキル……。どうして…………」
女「……? それより女友もあんなに男君に抱きついて…………私も……いやでも……」
異世界の森の中であることも忘れて、元の世界の教室のようなやりとりが続く……そんな気の抜けたタイミングでそれは起きた。
73 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:15:54.15 ID:zgd3yvvu0
クラスメイト「っ……おいっ、何か現れたぞ!?」
男(一人のクラスメイトが指をさして声を上げる)
男(全員がその方向を見ると、森の奥から自分たちの腰の高さくらいあるイノシシに似た生物が三匹がそこにはいた)
男「これが魔物か……」
男(広場にあった倉にはこの世界における常識について書かれた書物があった。探索に出る前にクラス全員で共有したその中の一つを思い出す)
男(どうやらこの異世界には魔物という、人間に害を為す生物があちこちに生息しているらしい)
男(一般人にとってかなり驚異で、魔物に襲われて死亡するという事故はこの世界ではよくある話のようだ)
女「っ、みんな魔物から離れて! 後衛職は遠距離から魔物を攻撃! 前衛は襲って来たらガード出来るようにして!」
男(なので女は最大限に警戒するように全体に指示を出すと、それが伝わったのかさっきまでの和やかなムードも一変して無言で動く)
男(配置に付いた俺たち異世界召喚者と魔物との初めての戦いが幕を開けて)
74 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:16:33.86 ID:zgd3yvvu0
女「先手必勝! 『竜の拳(ドラゴンナックル)』!!」
男(――次の瞬間には終わった)
女「……あれ?」
男(『竜闘士』の女が出した拳の余波によって三体のイノシシは一撃で倒された)
女「牽制のつもりだったのに……」
男(思ったよりの手応えの無さに、倒した女が一番驚いている)
クラスメイト1「な、なんだ……びびったけど、弱っちいじゃねえか!!」
クラスメイト2「おいっ、『鑑定』したらこいつらの肉食えるみたいだぞ!」
クラスメイト3「おおっ、肉! キノコだけじゃ物足りないと思ってたんだ!」
クラスメイト4「あっちにもいるぞ! 倒しに行こうぜ!!」
男(調子に乗ったクラスメイトたちが、近くにいた別のイノシシに似た魔物に突撃。それを一撃で屠った)
75 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:17:09.97 ID:zgd3yvvu0
女「ふう、驚異じゃなかったのは良かったけど……あんまり離れすぎないでね!! はぐれたら探すのも大変なんだから!!」
男(女は緊張を解くと、今度は注意を飛ばす)
男「危険といっても……それは一般人に限った話で、力を授かったやつらにとっては敵じゃないのか」
男(どうやら俺たちが授かった力は、この世界基準でかなり強い方らしい)
男(そうして人数分の食料を手に入れた辺りで、その日の探索は終了。拠点に戻って『調理師』のスキルを持つ者たちが、キノコとイノシシ肉のソテーを作って振る舞った)
男(調味料は探索中に見つけた岩塩のみだったが、朝から異世界に召喚されて、昼の探索で腹ペコになった高校生にとってはごちそうであった)
76 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:19:28.66 ID:zgd3yvvu0
続く。
三つも乙の反応ありがとうございます。
前作、夢野ニューゲームのときの癖で淡々と投稿してましたが、これからはなるべくレスに反応するようにしたいです。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/06(火) 00:47:55.43 ID:ZThEoX2xo
乙ー
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/06(火) 01:18:29.41 ID:ueTkUF+M0
28人いるとそのうちに誰か脱落しそうだな
まだ、みんな落ち着いているけど、そのうちに不満やホームシックにかられる奴はいそう
あと調子に乗ったバカ
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/06(火) 06:29:31.43 ID:WLExCqIgO
乙!
80 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:22:22.96 ID:xS52Z/Jn0
>>77
>>79
乙ありがとうございます。読者がいると分かることがとてもありがたいです。
>>79
デスゲームものが捗る設定ですよねー
投下します。
81 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:23:03.20 ID:xS52Z/Jn0
男(異世界召喚されてから三日が経った)
男(その間俺たちは召喚された広場を拠点として、周囲の森の探索を続けていた)
男(目標は二つ。食料の調達と人里への到達である)
男(食料については一日目から継続してである。食べ盛りの高校生が28人もいる以上、いくら取ってきてもその日の内に消費してしまうためだ)
男(森にいる魔物が驚異でないと分かった二日目からは探索の効率を上げるために、女の提案の元四つの隊に分けて行っている。というのも、二つ目の目標である人里の到達を早めに為したいからだ)
男(未だ俺たち以外の人間に会ったことがないので実感が沸かないが、どうやらこの世界にも文明はあるらしい)
男(そもそも俺たちの最終的な目的は元の世界に戻るために宝玉とやらを集めることだ)
男(宝玉について石碑に書いている情報はなく、どんな見た目なのか、集めろということは複数存在するはずだがそれが何個あるのか、そして一体どこにあるのかと分からないことばかりだ)
男(この拠点に止まっていても進まない)
男(といっても宛もなく探しても見つからないだろうので、人里で情報収集するべきというのが俺たちの共通見解だった。もしかしたらこの世界の人たちなら宝玉について知っているかもしれないという期待もある)
82 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:23:32.29 ID:xS52Z/Jn0
男「疲れた……ようやく拠点に戻って来れたな」
男(拠点の北側を探索する女をリーダーとする隊に入れられた俺は、今日の探索で食料こそ手に入れたものの、人里の痕跡はなく空振りだった)
男(夕方になり拠点に戻ってきたが、どうやら四つの隊で一番の到着のようだ)
男(早速『調理師』のスキルも持つ女が、今日の獲物で夕食を作り始める。厨房はスキル『調理師』を持つ者の独壇場であり、俺のやることはない)
男(手持ちぶさたにしていると南の探索に向かった隊が帰ってきて、そのメンバーである女友が俺を見つけて近寄ってきた)
女友「お疲れさまです、男さん」
男「女友か。そっちの探索はどうだったか?」
女友「残念ながら人里の手がかりは何も。西に行った一行に期待ですね」
男「だな。昨日人の痕跡を見つけたらしいしな。今日で何か掴めていてもおかしくない」
男(そのときちょうど俺の言葉を裏付けるように)
クラスメイト「やったぞ!! ようやく人里を見つけた!!」
男(西に向かった隊が帰ってきて、その成果を報告するのだった)
83 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:24:01.41 ID:xS52Z/Jn0
男(その後、調理を終えたようで夕食が振る舞われた)
男「ふぅ食った食った。しかしそろそろ違うものも食べたいよな……」
男(三日連続でイノシシ肉とキノコのソテーだ。それ以外に食料が見つからないため仕方がないのだが、こうも続くと飽きる。生活が安定しているからこその贅沢な悩みだ)
クラスメイト1「今日は祭りだぁぁっ!!」
クラスメイト2「ウェェェェイ!!」
クラスメイト3「ひゃっほぉぉっ!!」
男(もうみんな食べ終えたようだが、新たな発見に沸いたクラスメイトたちはテンション高く騒いでいる)
男(どうやら今日の調査で森を抜けて、整備された道路を発見。それを辿ることで人里、規模からして村を見つけたらしい)
男(というわけで明日はその村に行くつもりのようだ。そして自分たちを受け入れてもらえるようなら、この広場から生活拠点をそちらに移すとのこと)
男(まあこの広場は生活できるというだけで、居心地はどちらかというと良くない方だったので村に移れるならありがたいことだ)
84 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:25:11.39 ID:xS52Z/Jn0
女「人里も見つけたし、これからどうするか、だよね」
男(騒ぎに巻き込まれないように避難していた俺のところに、女がやってくる)
男「委員長様、あの騒ぎを収めないでいいのか?」
女「あはは、私でも無理だよ。まあ時間が経てば収まると思うから」
男「女でも無理となると相当だな。……ああ、そうだ。夕食おいしかったぞ」
女「ん、ありがと。隣、座るね」
男(俺が座っていたベンチの空いたスペースに女も腰掛ける)
男「それでどうするかって言ってたが、何か考えでもあるのか?」
女「うん。私たちの目的である宝玉だけど、集めろって言葉から複数存在するはずでしょ?」
女「それなのにどこにあるのかすら分からないわけだし……クラスでまとまって探していたら途方も暮れるような時間がかかると思って」
男「つまりクラスを分散して、手分けして各地に探索に向かわせるってことか?」
女「とりあえず今日見つかったっていう村にはみんなで行くけどその後はってこと。その方が探索の効率は上がるから……どうかな、男君」
男「へいへい、委員長様の指示に従いますよ」
85 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:25:57.25 ID:xS52Z/Jn0
男(冗談めいた雰囲気で肯定するが、女の顔は晴れない)
女「そうじゃなくて……ねえ、男君の考えを聞かせて?」
男「いや、だから委員長様の――って、あ……」
男(女がこちらを真剣な目つきで見ていることに気づいた。膝に置かれた手は微かに震えている)
男「………………」
男(そうだな、教室にいたときと同じように、この異世界でもリーダーシップを取っていた女)
男(それはいつもと変わらない光景のようで……その実、大きな負担を女に強いていたのだろう)
男(突然の異世界召喚で混乱しないはずがないのに、頼れる大人はおらず、縋ってくるクラスメイトしかいない)
男(クラスメイトたちにとって、自分が最後の拠り所なのだと分かっていた。だから毅然とした態度を取るしかなかった)
男(だから気づけなかった。そうやってみんなを支えるために頑張っていた女を……支えてあげる人が誰もいなかったということに)
86 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:26:32.42 ID:xS52Z/Jn0
男「……そうだな、探索効率を上げるために分散することに賛成だ。そのおかげで人里も素早く見つけることが出来たんだしな」
男「そもそも宝玉がどこにあって、どれだけ集めないといけないのか分からないし。ちんたらやって元の世界に戻れたのがやっと老人になったころなんて、浦島太郎も笑えない話は勘弁だ」
男「どうやらそこらの魔物も俺たちにとっては敵じゃないって事が分かったし、分散しても十分な戦力は維持できると思う」
男(誠意を持って、女の判断を尊重する意見を出す)
女「そう……かな。そこまで言ってもらえると助かるよ。ありがとね、男君」
男「どういたしまして」
男(女の声のトーンが少し上がったことにホッとする)
女「学校でも……こっちの世界でも……男君には助かってるよ」
男「それは買いかぶりだと思うが……って、学校?」
男(女とは元の世界ではほとんど接点がなかったはずだが……女の勘違いか?)
87 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:27:05.13 ID:xS52Z/Jn0
男「………………」
女「………………」
男(それからしばらく二人の間に会話は無かった。単に俺は話すことが無いだけなのだが、女は何かを切り出そうとして躊躇しているのが見て取れた)
男(だが、それを聞き出せるほど俺のコミュニケーションスキルは高くないので居心地悪いながらも待つしかない)
男(また数分が経って、いきなり女が口を開いた)
女「それで……宝玉の探索だけど、効率を上げるためとはいえ流石に28人全員がバラバラになるのは良くないと思うの」
男「え……ああ、そうだな」
男(まさかそれを言うためだけにこんな時間をと思った俺だが、どうやら前置きだったようだ)
女「だから3人から4人くらいかな。前衛後衛支援職のバランスを考えながらも、気の合う人たちでパーティーを組むように言おうと思ってるんだけど……」
女「その私のパーティーに……男君も加わってくれない?」
88 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:27:32.39 ID:xS52Z/Jn0
男「…………」
男(なるほど、女が言い渋っていた理由が分かった)
男(宝玉探索には時間がかかる。それは俺も言ったことだ。つまりパーティーを組めば、その長い探索の間ずっと一緒にいることになる)
男(そのパーティー分け……修学旅行の班決めより荒れるだろうな……。余り物グループに入ったので俺は関わらなかったが、喧々囂々していた教室を思い出す)
男(そして女が俺をパーティーに誘った……と)
男(女子には慕われ、男子には想いを寄せられる女)
男(そんな高嶺の花に求められる、誰もが羨むようなシチュエーションに)
男(しかし、俺は渋面を作って答えた)
89 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:28:19.79 ID:xS52Z/Jn0
男「……どうして俺なんだ? 魅了スキルなんてものしか持ってない役立たずだぞ」
女「役立たずと組みたいって思ったら駄目なの?」
男「ああ、駄目だな。その分宝玉を集めるのが遅れて、元の世界に戻るのが遅くなる。女の職『竜闘士』は優秀なんだから、優秀なスキルを持ったメンバーと組んで宝玉をガンガン集めてもらわないと」
女「でも、スキルだけじゃその人の優劣は決まらないよ。さっきだって私の考えに、ちゃんと自分の意見を伝えてくれた。そうやってこれからも支えて欲しいの」
男「そんなの誰だって出来ると思うぞ。おまえの親友の女友とかまさに適任だ」
女「どうして……そんな否定ばっかりするの?」
男「事実だからだ。……もういいか?」
男(半ば強引に会話を打ち切り、立ち上がって逃げようとするが)
女「じゃあ最後に一つだけ。私が男君とパーティーを組みたいのは、この異世界でも一緒にいたかったから。それだけの理由じゃ駄目かな?」
男(俺のにべもない態度にも食い下がる女)
男(どうやら言葉はそれが最後のようで、口を閉じて俺の返事を待つ)
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