【ミリマス】佐竹美奈子「真夏の夜の夢の続き」

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1 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/16(火) 23:36:56.17 ID:nBlcHegd0
※このSSは以下の内容の一部ネタバレが含まれています。まだという方は注意してください
MTG10ドラマパート
BC11.5話


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1539700615
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/16(火) 23:49:57.02 ID:2sdNTNWJo
淫夢
3 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/16(火) 23:50:07.79 ID:nBlcHegd0
「今度のドラマの台本ができたぞ」

そう言ってプロデューサーさんは、事務所に来た私たち五人にそれぞれホッチキスでまとめられた紙の冊子を手渡しました。
先日行われた私たち『閃光☆HANABI団』の海の家ライブは大成功。
海美ちゃんの女子力焼きそば事件など、いろいろトラブルはあったものの結果的にはすべてうまくいきました。
……実は海美ちゃんに先生と呼ばれるのは結構気に入っています。えへへ♪

そして、私たちの想像以上にライブの評判はよく、なんと!私たちのユニット曲『咲くは浮世の君花火』をモチーフにしたドラマも作ってもらえることになりました!
土曜日の夜9時からの1時間の枠を使ってのドラマ。主演はもちろん私たち五人、役柄も私たちをイメージしたそうです。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/16(火) 23:50:18.07 ID:eCsBSu9fo
くっさ
5 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/16(火) 23:55:56.53 ID:nBlcHegd0

「へえ〜。名前も私たちと同じなんやな」


先に台本を見ていた奈緒ちゃんがそう言いました。ドラマの大まかな内容は事前に聞かされていたのですが、細かいお話の流れや設定を見るのは今日が初めてです。

舞台は海と山と砂浜に囲まれた小さな田舎町。私たちが演じる地元の女子高校生5人がご当地アイドルユニット『閃光☆HANABI団』として中止になった花火大会が中止になった町の夏祭りを盛り上げようと奮闘するお話です。
少し厚めの受け取った台本をペラペラとめくっていきます。

ふむふむ、確かにみんなのイメージぴったりですね。
これなら役作りも簡単にできそうです。…私はアイドルが大好きでご当地アイドルをひそかに目指している高校2年生。なんでもカバンに入れちゃう癖があって、私のカバンに入っていたあるもので物語が大きく動く、かあ。
少し思うことがあるけれど、心の片隅にとどめておいて台本を読み進めていきます。
6 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/16(火) 23:59:04.05 ID:nBlcHegd0
「……」

「ねえねえ!この役、チョー女子力高くない?」

「…………」

「せやなあ。海美メッチャ乙女してるやん…?なんや美奈子、どうかしたん?」

「…っ!ううん!なんでもないよ。ちょっと台本を読むのに熱がはいっちゃった」

台本を読み進めていくとある場所でとても懐かしい気持ちになりました。
なるほど、確かに登場人物は私たちそっくりかもしれませんね。
そっくりすぎて驚いてしまいました。

私もこんな感じだったなあ。
懐かしい思いを胸に台本をどんどん読み進めていきます。

一通り台本に目を通し終わってからも、あの場面のことが一番脳にちらついてきます。
あの夏の日の情景がそのまま目の前に映し出されたかのような、そんな気分でした。
7 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/17(水) 00:15:18.05 ID:yQv61VQW0

これなら役になりきるのも少し簡単かな。
あの日の風景、あの時の気持ち、そしてそこから先の続き。
記憶をたどりながらどんな風に演技をするか、頭の中でイメージしていきます。
たとえ偶然だとしても、お芝居の中で自分を演じることになるなんて夢にも思いませんでした。
二人ともこのドラマをみたらきっとビックリするよね。

ポケットに仕舞ってあるスマホを取り出して今すぐ二人宛てにメッセージを送りたい衝動にかられましたが、すぐに思いとどまります。
さすがにクランクアップ前のドラマの内容を関係者以外に教えるのはダメですし、なによりも二人もきっとこの場面に気が付くはずだから。
二人のビックリする顔を想像すると今から楽しくなってきました。

「なんや、美奈子楽しそうやな」

「そうだね、えへへ」

「ねね。このあと美奈子の家行っていい?みんなでドラマの打ちあわせしようよ。ご飯食べながらさ!」

「わっほ〜い!それじゃあ、たっくさん用意するね!」



夢が続く前、夢が夢のままだった時。
その夢の続きを見ようとしたあの夏。

これは39プロジェクトが始まって1年と少し、そこからもう少しとさらにもうちょっと少し、つまり私が、私『たち』が39プロジェクトのオーディションを受けた、とある夏の日のお話です。
8 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/17(水) 00:17:38.51 ID:yQv61VQW0
とりあえずここまで。
三回か四回くらいに分けて投稿するつもりです。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 01:30:28.35 ID:3BWCx89p0
もしも淫夢じゃなくてシェイクスピアの方を意識してるなら「真夏の夜」じゃなくて「夏の夜」だからね
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 05:00:41.34 ID:uztTlXebO
松任谷由実かもしれないだろ!
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 13:14:57.66 ID:DSf8w9OMo
翻訳によっては真夏の夜だから間違ってはいないぞ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 00:57:39.57 ID:q9kg/2330
間違ってはいないが残念ながら真夏の夜=淫夢という認識の方が支配的であるのがネット界隈の現実

あ、SSは続き期待してます
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 10:58:06.26 ID:67/KUlZxO
ってか盆踊り(MTGカップリング曲)の最後の歌詞でしょ……?
14 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/19(金) 00:31:06.08 ID:pF6Vokbd0
―教室


だんだんと暑さが増してくる初夏の昼下がり、私たち3人はいつも通り、教室でお弁当を食べながら駄弁ってお昼休みを過ごしていました。

中身はあまりない、他愛もない話。
例えば今日の授業のここがわからなかったとか、あのテストが危なそうとか、今度の休日どこに遊びに行くかとか、時折誰と誰が付き合い始めたとか、そんな他愛もない話。

もっとも、そのなかでもいちばん話題に上がるのが―。

「そういえば昨日の生っすか!?見た?」

「見た見た!」

そう。私たち三人にはアイドルが好きという共通点があります。
いちばん話題にあがるのは前日のテレビにでていたアイドルについて。

私がアイドルに魅了されたのは、以前にアイドルのライブを見に行った時でした。
見ているだけでワクワクしてきて、心の底から元気が湧いてくる。
それが本当に衝撃的でした。
15 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/19(金) 00:39:39.41 ID:pF6Vokbd0

私の家が中華料理屋なんですけど、昔からお父さんに「料理は愛情だ」、「おいしいご飯を食べれば元気になれる」と教えられて育ってきました。
小さいころからそういう風に育てられて、だからかよく世話焼きだって言われるんですけど、それでみんなが笑顔で元気になってくれるなら私は嬉しいんです!
だから会場いっぱいの人を一瞬のうちに元気にしてしまったアイドルという存在は幼かった私には魔法使いみたいでした。そうして、私の憧れとなったのです。
私たち三人は高校に入学した時からその話題で打ち解け、今では学校のなかでもちょっと有名な仲良し三人組になっています。

「あ?私たちもアイドルになれないかなあ」。

「ムリムリ、テレビの前で輝けるのなんてほんの一握りだけだって」

「でもさでもさ!やっぱり憧れるじゃん?ほら、私たち3人でアイドルユニットとか!」

「そりゃあね〜。ま、アイドルになりたいのは私たちもいっしょか。ね、美奈子」

「そうだね?」
そうなんです、私たち三人全員ひそかにアイドル好きが転じて、いつかアイドルになれないかなという淡いあこがれを持っているんです。
もっともそれがどんなに難しいことかもわかっているので、結局ただの夢でしかないんですけどね。
でも私たち3人のアイドルユニットかあ。確かに面白そうだなあ。
自分のお弁当箱からおかずを一つつかみ、口に入れながら二人の会話を聞きます。

「あ!美奈子のお弁当おいしそう!一個もーらいっ!」

「あっ!ちょっと!」
16 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/19(金) 00:41:45.60 ID:pF6Vokbd0

なんて思ってると横からお弁当のおかずを一つ取られちゃいました。ぐぬぬ……
彼女の箸でつままれた、本来私のお弁当箱の中にあったおかずはあっという間に彼女の口の中へ。

「やっぱり美奈子のお弁当おいしー!これ自分で作ってるんだよね」

「そうだよ。毎日厨房に立つからそのついでに作ってるんだ」

家の手伝いでお客さんに料理をだすことも結構あるので料理には結構自信があるんですよ♪
伊達に中華料理屋の看板娘をやってません!

そんなこんなでワイワイしながらいつも通りのお昼休みを過ごします。

「あー!どっかの町中でスカウトとかされてみたいなー!」

「また言ってる……」

「ほら!町中で3人で遊んでたら『君たち、アイドルに興味はないかい?』とかさ」

「そんな偶然があるならとっくに起きてるって……ま、確かに憧れるけどね」

「そうだよねえ〜」

町中で偶然スカウトされてってシチュエーションは確かに憧れますね。
ただそんな偶然でアイドルになれるのは本当に一握り、それこそ選ばれた人といった感じですよね。
そこからトップに上り詰めた人となるとさらに限られます。
例えるなら765プロの美希ちゃんのような。

……まあ、アイドルになるには何もスカウトしか方法がないってわけじゃないですけどね。
それはそれで現実的ではありませんけど。
こんなの二人に言っても笑われそうだし黙っておこう。
17 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/19(金) 00:49:56.83 ID:pF6Vokbd0

「んー!。美奈子のお弁当おいしーい!もう一個もーらいっ」

「あ!また!?…ってちょっと!どれだけ食べてるの!?」

気がつくと、私のお弁当の半分くらいが消えていました。
もちろんお弁当の中身の行き先は彼女のお腹の中。
おいしいおいしいと体で表現するかのように彼女のツインテールがぴょこぴょこと揺れています。
まあ私のつくった料理をおいしいと言ってくれるのはうれしいですけど。

「ってそれとこれとは別!これ以上はダメ!」

さすがに自分のお弁当がなくなるのは看過できません。
それに私まだ全然食べてないし。
お弁当箱を彼女から遠ざけるように持ちます。

「ええ〜。もうちょっとちょうだい!」

だけど彼女も私のお弁当箱からおかずを奪い取るように自分のお箸をヒョイヒョイと私に向けてきます。
応戦して私も彼女が向けてくるお箸と反対方向にお弁当箱を逃げるように持ち上げます。

「もうダメだってば〜」

「ちょっとだけ頂戴頂戴〜」

「私の分がなくなっちゃうよ〜今度うちでたっぷり作ってあげるから〜」

「いやそれはちょっと…」

見守っていたほうの友人の、眼鏡の奥の瞳が少し細くなり、若干表情が引きつってるように見えます。
なんででしょう、お弁当箱に入れれる量には限りがありますし、家で食べてもらったほうがたくさん作れるのになあ。
18 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/19(金) 00:51:35.32 ID:pF6Vokbd0
「これが最後だからさ……痛っ!」


お弁当箱をもってあっちへこっちへ、それを追って彼女もあっちへこっちへ。

身を乗り出して追いかけていたために、机の角に体をぶつけてしまったその時――



―ガサッ!


19 : ◆OtiAGlay2E [sage]:2018/10/19(金) 00:52:36.93 ID:pF6Vokbd0

ぶつかった時の衝撃で、机の横にひっかけていた私のカバンが落ちてしまいました。
落ちた衝撃で、チャックを開けたままだったカバンの中身は少し飛び出してしまっています。

「だ、大丈夫?」

「いたたた……あ、美奈子のカバンって結構いろいろ入ってるんだね」

「あちょ、ちょっと勝手に見ないでよ〜」

「えっとなになに、教科書…はいいとして…あ、このマスコットかわいい!」

「ほんとだ。どこで買ったの?」

「えーっと、それは仕入先のお店がある商店街に行った時に…っても〜かえして〜」

女の子のカバンの中身はプライバシーの塊です。
たとえそれが友達であろうと、秘密なものは秘密です!
しかし私の制止を無視して彼女たちは私のカバン漁りをやめてくれません。

「本当にいろいろはいってるね…ん?この雑誌は…」

マズイ!それは本当にダメなやつ!

「そ、それは絶対にダメ〜!―ああっ!」

無情にもカバンの中から取り出された一冊の雑誌。
表紙には『大人気!765プロ特集!』と書かれた文字とフルーツをモチーフにした衣装に身を包んだ13人のアイドルの写真。
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