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神崎蘭子「堕天使は二度堕ちる」【堕天使探偵・最終幕】
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:00:18.30 ID:1p6HWAbq0
これまでの事件↓
第一幕・悪魔館殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447491615/
第二幕・魔神島殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1449306013/
第三幕・魔月学園殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453539614/
第四幕・傀魔伝説殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465030820/
第五幕・逢魔の海の殺人
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1489827604/
第六幕・死蝿の魔 殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503133224/
※神崎蘭子が主演のドラマという設定なので、当たり前のようにキャラ崩壊
※事件に巻き込まれるキャラクターは殆ど仮名を使った架空のオリジナルキャラ
※このSSを読むときは、部屋を明るくして、できるだけ離れて観てね!!探偵ランとのお約束だよ!!
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1535792418
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:04:15.20 ID:1p6HWAbq0
〜ここまでのあらすじ〜
天界でのほほんと暮らしていた大天使ラン(神崎蘭子)は
幼馴染である大天使チエリエルのプリンをこっそり食べた罪で人間界に堕とされてしまう。
ランが天界に帰るため、父である主神によって課せられた使命。
それは、人間界に蔓延る高位悪魔、七つの大罪の浄化であった。
D県警きっての名刑事(笑)である赤羽根刑事(765P)のアパートに居候する傍ら
明らかに肋骨から生まれてそうな信仰心溢れるシスターたちの支えも手伝い
大罪悪魔にとり憑かれた人間たちが仕掛ける、悪魔的殺人計画をことごとく看破していく堕天使ラン
数多の試練に打ち勝ちながら、彼女はついに六柱の大悪魔の浄化に成功した
最後に残った大悪魔は、ランと似た境遇を持つ天界から追放されし堕天使ルシファー
はたしてランは最後の悪魔を浄化することが出来るのか…!?
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:09:37.47 ID:1p6HWAbq0
数日前 夕方 D県 赤羽根のアパート 居間
赤羽根「…いたか?」
ラン「…」ふるふる
赤羽根「…ランがここまで探し回っても、未だ見つからず…か」
赤羽根「最後の奴だけあって、手強いな」
ラン「…」
赤羽根「一体何処に居やがるんだ…最後の一匹は…」
ラン「…」
赤羽根「だが、探すのを諦めるわけにはいかない。そうだろ?ラン」
赤羽根「もう一度、辺りを詳しく調べ直してみるんだぞ」
ラン「…」
赤羽根「奴は必ずどこかにいる!」
赤羽根「絶対に諦めるんじゃないぞ!ラン!」
ラン「我が相棒よ(赤羽根さん)」
赤羽根「なんだ」
ラン「漆黒の幕を下ろすには、未だこの境界は騒がしすぎるのでは(なんで最後の一匹だと思ってるんですか?)」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:11:13.57 ID:1p6HWAbq0
赤羽根「…」
赤羽根「何言ってんだ。最後に決まってるだろう」
ラン「混迷から目を背ける勇は勇に非ず、虚栄を謳う蛮勇なり(いやでも、赤羽根さん…)」
ラン「そして終の尖兵が1人でも、それが闇の軍勢を率いるわけで…(アレって、一匹見たら三十匹は居るって…)」
赤羽根「…」
ラン「…」
赤羽根「ラン」
赤羽根「俺が最後の一匹って言ったら、最後の一匹なんだ。奴は。いいか?」
赤羽根「俺はそう思いたいんだ。でないと今夜は眠れそうにないんだ。わかるな?」
ラン「…」
カサカサカサカサカサカサ…
赤羽根「いたぞおおおぉぉぉ!!!!」ブシュー!
ラン「ふりゃああああぁぁぁ!!!!」ブシュー!
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:17:27.94 ID:1p6HWAbq0
数日前 朝 D県 聖月学園 1F 東校舎 中等部教室内
クラリス「今日の数学の授業は、一昨日の復習から始めましょう」
クラリス「前回の授業は確か光の反射…入射角と反射角が等しいということを学びましたね」
クラリス「入射角というのは、鏡などの反射面に入ってくる光の道筋と反射面に対し垂直な線が作る角度のことで…」
ラン(結局一睡もできなかった…)ぼー…
響子「ランちゃん、すごく眠そう…」
小梅「ゾンビ…み、たい…だね」
メアリー「きっと宿敵との戦いが長引いているんだワ」
ラン「…」うつらうつら
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:22:26.11 ID:1p6HWAbq0
数日前 放課後 D県 聖月学園 1F 東校舎 廊下
クラリス「ランちゃん、ちょっといいでしょうか」
ラン「へ?…あ」
ラン「ま、まま待て、私は決して夢魔に惑わされたわけでは…!(ま、まさか天使と言えど授業中の居眠りは許されないとか!?)」
クラリス「いいえ、さっき生徒の子からこの手紙を渡すように頼まれたんです」
ラン「…手紙?」
クラリス「ええ。ランちゃんは(黙ってれば)ミステリアスでとても可愛らしいですから」
クラリス「ひょっとしたら『エス』の申し込みかもしれませんねー?えへへー」
ラン「…」
クラリス「ランちゃん?」
ラン「原罪と反逆の匂い…(この蛇と林檎の意匠は…まさか)」
クラリス「え…?」
パラッ…
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:23:57.80 ID:1p6HWAbq0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
〜ネレイド城ミステリーナイト参加のご案内〜
この度、ネレイド城ミステリーナイトを下記につき開催することになりました。
このミステリーナイトは世界規模で参加者を募集。
各界の著名人や権威が一同に会します。
優勝された方には、ネレイド城の所有権を進呈いたします。
記
開催期日:○月○日〜○月△日
優勝賞品:ネレイド城所有権(土地含)
ー中略ー
ミステリーナイト主催者
アルカード
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:28:46.73 ID:1p6HWAbq0
ラン「ミステリー…ナイト…?」
ラン(参加者リストに私と赤羽根さんの名前が…)
クラリス「…なんだか仰々しい…どこかの招待状みたいですが…」
ラン「閃光の伝道師よ、深淵の栞を持つ獄卒は何者?(先生、これを持ってきた生徒って誰ですか!?)」
クラリス「はい?えっと、確か上級生の制服の…あら?そういえばあの子って誰だったかしら…?」
ラン(間違いない。紙を通しても伝わるこの邪悪な気配!)
ラン(ルシファー…大罪悪魔最後の一柱が、向こうから勝負を仕掛けてきた…!)
クラリス「…」
クラリス「ランちゃん?」
ラン「百合園の蝶の戯れといったところね(…ただのイタズラみたいです)」
クラリス「…」
ラン「我が双翼が安息を欲しているわ。闇に飲まれよ!!(あ、今日は疲れてるので早めにお家に帰ります。ではでは)」
クラリス「行ってしまわれるのですね」
ラン「…」
クラリス「…」
ラン「…先生、シスターのみんなのこと…これからもずっと見守っていてください」
クラリス「…」
タッタッタッ…
クラリス「ランちゃ…いえ、天使様」
クラリス「…どうか、貴女の最後の旅路に神の御加護が有らんことを」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:34:49.17 ID:1p6HWAbq0
1日目 昼 古城方面山道
…ジャリジャリ
ラン「深山幽谷の霧深く…(…で、ほんとうにこっちで合ってるんですか?)」
赤羽根「少なくとも方角は合っているはずなんだが…」
ラン「彼方より混沌の淵をここまで裂き、それでも姿を現さない…(車から降りて大分歩いたのに何も見えてこないんですけど)」
ラン「我が相棒よ(というか…)」
ザザァァァァッ…
赤羽根「…」
ラン「…」
ラン「ひょっとして闇に飲まれてはいないか(赤羽根さん、迷ってません?)」
ザッ、ザッ…
赤羽根「…やっぱわかる?」
ラン「…」
赤羽根「…」
ラン「せ、生者の領域はこっちか、ああいや、瘴気の流れを読めば或いは(た、たしかこっちから私達歩いてきましたよね)」
赤羽根「ま、まてまて落ち着け、あっちだったと思うぞ」
赤羽根「あそこの木の形が…ほら、そんな感じだった気がする」
ザッ、ザッ…
ラン「私達…闇に飲まれつつあるのでわ…(…なんかどんどん薄暗くなってきてますよ)」
赤羽根「ヤバイ、本格的に遭難してないか俺たち」
ラン「わ、私を失望させるなー!!(赤羽根さぁん!!)」
赤羽根「ちくしょお!いったい何考えてこんな樹海のど真ん中に城建ててんだー!?」
???「なんでも、ここでテーマパークを建設しようとしてたらしいですよ」
赤羽根「っ!?」びくっ
ラン「!?」びくっ
ガサガサ…
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:49:30.31 ID:1p6HWAbq0
>>9
ラン「ひょっとして闇に飲まれてはいないか(赤羽根さん、迷ってません?)」×
ラン「まさかアリアドネを開放できていない…!?(赤羽根さん、迷ってません?)」〇
同一レス内で二種類のセリフにやみのまを割り振ってるのを今更発見する…
さすがに違和感あるのでなんか熊本弁っぽくないこっち側を修正させてください
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:50:35.76 ID:1p6HWAbq0
女性「東欧の街並みを再現しようとルーマニアからお城まで移築したみたいなんですけど…」
女性「道路開発の予定が流れて線路も方針転換で未成線になってしまい、なし崩し的に計画が頓挫」
女性「その結果、お城だけが残っちゃったそうです」
ラン「」ドキドキ
赤羽根「…き、きみは?」
女性「あは。驚かせちゃいました?」
女性「私、高遠遥(たかとお はるか)っていいます。以後お見知りおきを。赤羽根刑事」
ラン「!」
赤羽根「な、なんで俺の名前を…?」
高遠「その胸ポケットの紙、ミステリーナイトの招待状でしょう?」
高遠「ということは貴方は参加者のうち誰かです。そこから先は消去法」
高遠「このあたりの土地勘が薄く、かといって離れすぎているわけじゃない。現地への移動手段は車での長距離移動」
高遠「直通の私道を見落としたまま行き詰まり、歩きで移動する羽目になりそうな方角にいる参加者…」
高遠「つまり西隣の県に住む刑事、赤羽根さんしかいない、というわけです」ドヤァ…
赤羽根「…」
ラン「…」
高遠「…なんて、ほんとはこの前の新聞を見て貴方の顔を覚えてただけですけどね」
高遠「探偵の界隈では結構有名なんですよ?貴方」
赤羽根「探偵…」
赤羽根「あっ!高遠って、もしかして君があの有名な名探偵一族の!?」
ラン「真理を見出す瞳を持つ血統…(名探偵一族?)」
赤羽根「そうだ。天才女子高生探偵って大注目されている子なんだ」
高遠「このまえの土井塔邸の惨劇の解明、見事でした…貴方たちの評判はよく知っています」
高遠「証拠を見落とさない洞察力と記憶力、固定観念にとらわれない柔軟な発想」
高遠「それらの騒動で見え隠れする謎多き少女ラン」チラ
赤羽根「い、いやあそれほどでも…あははー」
ラン「成程…貴女もまた『瞳』を持つ者か…(なんだか照れちゃいますねー)」
高遠「そして、二人は数多の事件を追っていくうちに惹かれあい、いつしか愛を交わす関係となり…」
赤羽根「え?」
ラン「え?」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:54:25.91 ID:1p6HWAbq0
高遠「そんな中、二人は或る爆発事故の捜査をきっかけに帝都を震撼させる凶悪事件に巻き込まれてしまいます…!」
赤羽根「…」
ラン「…」
高遠「大規模電波ジャックによる犯人の声明と、刻一刻と迫る、都心を吹き飛ばす威力を有した爆弾のタイムリミット!」
高遠「大胆かつ巧妙に捜査の裏をかくテロリスト…そしてそれ以上の推理力で実行犯を追う二人!」
高遠「ああっ!赤を切ってはいけないっ!爆弾魔のミスリードに惑わされないでっ!!時計仕掛けの摩天…」
赤羽根「ちょ、ちょーっと待て!?」
高遠「…はっ!?」
高遠「ご、ごめんなさい!私テンションが上がっちゃうとついヘンテコな妄想を…!」
ラン「…」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 18:57:45.52 ID:1p6HWAbq0
1日目 昼 ネレイド城 跳ね橋
…
高遠「やっと着いたみたいですね」
赤羽根「ここがネレイド城…」
赤羽根「何時の間にか外国に迷い込んでしまったような妙な感覚がする」
ラン「あふれ出る魔力が私を昂ぶらせる!(かっこいい…)」
赤羽根「かっこいいか?いかにも何か出てきそうな古城じゃないか…」
高遠「吸血鬼城…」
赤羽根「え?」
高遠「ルーマニアでは、そう呼ばれていたそうです」
赤羽根「…」
高遠「かのドラクル公が作らせた城のひとつとされる、とびきりの曰く付き物件」
高遠「城壁を這う黒い影だとか、夜な夜な人間の悲鳴が聞こえてくるとか、移築されたあとも怪しい噂に事欠かなかったそうですよ」
高頭「…ともかく、さっさと跳ね橋を渡ってしまいましょうか」
ギシ…ギシ…
ラン「…」じーっ
赤羽根「ラン、あまり端に寄ると危ないぞ」
高遠「そうですよランちゃん、崖の下はかなりの急流みたいですから、落ちたらひとたまりも…」
ギシ…ギシ…
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:00:40.56 ID:1p6HWAbq0
1日目 昼 ネレイド城 正門
シーン…
高遠「すみませーん」
ラン「…」
赤羽根「…」
高遠「どなたかいらっしゃいませんかー?」
ラン「…」きょろきょろ
赤羽根「まだ誰も来ていないのか…?」
ラン「我が躰が…漆黒に侵食されていく…!?(まだお昼なのに薄暗い…)」
高遠「ろうそくの質が悪かった中世は、文字通り闇と戦う時代だったんです」
高遠「このお城なんかはまだ良い方で、ガラス窓すら使われなかった民家はもっと暗かった」
高遠「闇夜にぼんやりと浮かび上がる影が、人か獣か怪物か、本当にわからない世界だったそうですよ…」
??「お待ちしておりました」ぬっ
高遠「!!」
ラン「ひきゃ!?」びくっ
赤羽根「うおっ!?」
黒服「アルカード様から承っております、どうぞ此方へ」
ラン「」どきどき
赤羽根「びっくりした…てっきり本当に古城に潜んでた狼男か何かかと…」
高遠「あ、あはは…」
コツコツコツ…
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:04:04.80 ID:1p6HWAbq0
1日目 昼 ネレイド城 1F 大広間
高遠・赤羽根・ラン「!」
ぞろぞろ…
赤羽根「みんなここに集められていたのか」
ラン「英知を称えし威光!(あそこの大きな肖像画は?)」
高遠「あれがドラクル公…かつてのこの城の城主、ヴラド・ツェペシュですね」
ラン(吸血鬼の始祖と言われる人間…)
赤羽根「ええっと…」ごそごそ
赤羽根「参加メンバーは推理評論家の黒羽烈斗にロス市警の三澤と…」
高遠「あそこにいる猫背の女のひとは確か犯罪心理学者の醍醐瑞樹(だいご みずき)さん」
高遠「向かいにいる面長の男のひとが、確か薬物組織を壊滅させた日本人ロス市警として話題になったジン・ミサワ…」
高遠「植木の近くにいる小太りの女のひとはヌマさんの愛称で有名な、老舗探偵社長の沼田岳美(ぬまだ たけみ)」
高遠「私が顔を知っているのはこの三人だけですけど…人数は全員揃ってるみたいですね」
赤羽根「俺たちの到着が一番最後だったわけだな」
黒服「ミステリーナイトの参加者の皆様、ネレイド城にようこそいらっしゃいました」
黒服「私、皆様の御世話をさせて頂きます、目崎と申します」
黒服「まずは皆様を客室へとご案内いたしましょう」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:13:45.54 ID:1p6HWAbq0
1日目 夕方 ネレイド城 1F 大広間
黒服「まず、現在私達がいるのがこの大広間になります」スッ
黒服「客室のある区画は城の東側です」ススッ
黒服「ラン様、三澤様、高遠様、美樹本様、赤羽根様、沼田様は、1階客室のお部屋になります」
黒服「モリアーティ様、醍醐様、黒羽様、魚塚様は、こちら2階客室のお部屋になります」
1F
1号室:ラン
2号室:三澤
3号室:高遠
4号室:美樹本
5号室:赤羽根
6号室:沼田
2F
7号室:魚塚
8号室:醍醐
9号室:黒羽
10号室:モリアーティ
黒服「それでは、私についてきてください」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:19:17.15 ID:1p6HWAbq0
1日目 夕方 ネレイド城 1F 客室前廊下
コツコツコツ…
赤羽根「まだ日が落ちきってないのに夜中みたいだ…本当に吸血鬼が出てきそうだな…」
ラン「あ、あやつる言霊に気を払うのだっ(脅かさないでくださいよっ)」
黒服「皆様のお部屋はこちらになります」
魚塚「…ちょっと待って何よこのドア…鍵穴が何処にもないじゃない!」
黒服「御安心を。お部屋の中に衣装と『ブレードキー』が用意してありますので、まずはそれらをご着用ください」
赤羽根「ブレードキー…?」
黒服「ブレードキーとは、この城における『鍵』の役割を果たす剣のことです」スッ
ジャキッ
ラン「!」
美樹本「剣…!?」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:23:27.61 ID:1p6HWAbq0
黒服「刃引きされていますが、本物の剣を改造して作られたものなので、くれぐれも扱いにはご注意を」
ラン「!!」
魚塚「だから、鍵の形なんてどうでもいいのよ。鍵を差す穴がないって言ってるの。どうやって開け閉めするの?」
黒服「『刺す』必要はございません。まず、ブレードキーの柄の部分にあるこの引き金を引きますと…」ピー…
ラン「!!!」
美樹本「…これは、レーザー光?」
黒服「はい。刀身から照射されたこの光を扉に当てることで、施錠・開錠を行うことが出来るのです」
三澤「だから『鍵の剣(ブレードキー)』…ということか」
醍醐「でも、この剣一本で全部の扉が開いちゃうんだったら、逆に危険なんじゃ…」
黒服「それも心配御無用です。照射されているこの光…形状をよく御覧ください」ピー
黒羽「…アルファベットのM?」
黒服「はい。厳密に言うならば、これはローマ数字の1000を表す記号なのですが…これは管理人室の鍵になります」
黒服「各部屋の扉は、その部屋番号に対応したブレードキーの光でなければ開けられない仕組みになっているのです」
高遠「なるほど…」
ラン「…」キラキラ
黒服「ただし、注意点がひとつ」
黒服「何らかの事情で破損し、正常に照射できなくなってしまったブレードキーでは施錠も開錠もできなくなってしまいます」
黒服「例えば施錠された客室の中で誤ってキーを損傷してしまえば、その客室に閉じ込められてしまうことになるでしょう」
黒服「城内にスペアキーやマスターキーはございません。ブレードキーは剣ではなく、あくまで鍵。むやみやたらに振り回さず、施錠・開錠時以外は鞘に納めておくことをお勧めします」
赤羽根「あはは、大丈夫ですよ目崎さん。そんな子供みたいな事…」
ラン「…」キラキラキラキラ
赤羽根(しそうだコイツ…)
黒服「では、今夜20時よりパーティを開催致します」
黒服「時間になりましたら、大食堂にお集まりください」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:28:37.67 ID:1p6HWAbq0
1日目 夕方 ネレイド城 1F 5号室(赤羽根)
赤羽根(玄関を開けたらまた廊下…まるまる部屋になってるわけじゃないのか)
赤羽根(大きな半円形の中庭を囲むようにして6等分…部屋にするには広すぎるとは思ったけど、こういうことか)
赤羽根(…突き当りの左右にドアがある。右が居間で…左が寝室だな)ガチャ
赤羽根(廊下の窓からは中庭が一望できるようになっている…が、もう天窓から光が入ってこないのか、やっぱり真っ暗だ…)
…
赤羽根「うへーっ!こんなモン着んのかよ!」
赤羽根「まるで仮装パーティだ。ブレードキーは…っと、これか」チャッ
赤羽根「重いな。刃渡り30…35ってとこか?目崎さんは本物の剣の改造だと言ってたけど」
…
赤羽根「…」ピー
ガチャ
赤羽根(さっきの説明のとおり、この部屋のブレードキーの光は『X』の形をしている)
赤羽根(これを扉に当てるとロックされる仕組みだ。逆もまた然りか)
赤羽根「…」ピー
ガチャ
赤羽根(鍵を開けたり閉めたりする度にいちいち扉の意匠が緑色に光るのが無駄にカッコイイ)
赤羽根(それに扉のどの部分に光を当ててもだいたい認識する…どんな仕組みになってるんだ…?)
赤羽根「…」
ガチャガチャ
赤羽根(鍵の外見上の違いは柄の部分に小さく掘られた刻印くらいだ。ぱっと見黒服の持っていたものと変わらない)
赤羽根(ま、元が本物の短剣なんだから当然か…)
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:32:56.15 ID:1p6HWAbq0
1日目 夜 ネレイド城 1F 1号室(ラン)
ラン「♪」うきうき
ラン「ふふーん♪」
ジャカッ
ラン「我が剣の閃光を受けよっ!!」シュバッ!!
ピー…カチャ
ラン「くぅ〜っ!!」わなわな
ラン「凄い!このお城ほしい!もって帰りたい!!」
パサッ…
ラン「ほえ?」
ラン(何かおちた…?)
1日目 夜 ネレイド城 1F 3号室(高遠)
高遠「…」
高遠「古城で繰り広げられる血塗られた惨劇…」
高遠「フフ…最初の火蓋を切って落とすのは…誰かしら?」
1日目 夜 ネレイド城 2F 7号室(魚塚)
魚塚「なんとか、全員入り込めたみたいね」
??「しかし一体どうなってんだこの城は?前はただの廃城だったはずだが」
??「とにかく、この四人の中の誰かが優勝すれば全ては丸く収まる…」
??「何を人ごとの様に、元はと言えばあんたが変な事業に手を出すから此処を手放す羽目に…」
??「やめとけ。今は取り戻すことだけ考えればいい」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:35:27.23 ID:1p6HWAbq0
1日目 夜 ネレイド城 1F 1号室(ラン)
コンコン
赤羽根『俺だー』
ラン「!」ピー
ガチャ
ラン「よくぞ来た!!我が相棒よ!!」
赤羽根「テンション高いなー…」
ラン「なっ…我が相棒も魂魄の更なる解放を求めるのだ!!(えーっ!?ワクワクしないんですか赤羽根さん!?)」
ラン「之ぞまさに我が神器に相応しき代物なるぞ!(本物の剣ですよ!?)」
赤羽根「…そりゃちょっとは、したけど」
赤羽根「カッコイイ以上になんか不便さの方が気になって、いまいち乗れないというか…」
赤羽根「ほら、コレ元が本物だから結構重いし、オートロックじゃないから出入りでいちいち抜刀しなきゃいけないし」
ラン「抜刀!抜刀っ♪」うきうき
赤羽根「…ラン、ここに来た趣旨忘れてないか?」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:39:34.47 ID:1p6HWAbq0
1日目 夜 ネレイド城 1F 大食堂
カチャカチャ…
赤羽根「…」チラッ
ラン「んくんく…」ゴクゴク
赤羽根「…」
ラン「ぱくぱく…」もきゅもきゅ
赤羽根「…」
ラン「未だ魔城のオラクルに慣れていないようね…(どうかしたんですか?)」
赤羽根「丈の長いマントと貴族階級っぽい服…」
赤羽根「俺だけ吸血鬼みたいな恰好をさせられているのかと思ったら…全員なんだな」
ラン「フフ…敢えて堕天使の幕間劇に乗ってやるのも一興(カッコイイんだからいいじゃないですか)」
赤羽根「…天使に言うのは失礼かもしれんがお前ものすごく似合ってる」
高遠「嗚呼」
赤羽根「…」
高遠「今宵は…こんなにも月が紅い…」
高遠「いつも私を凍て付かせた月の光、まさかそれを暖かいと思う時が来るなんて…」
赤羽根(暴想しとる…)
ラン「フフッ…その双瞳と共に月光に身を任せ踊り狂うも悪くないわね」
赤羽根(共鳴しとる…)
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:40:13.46 ID:1p6HWAbq0
醍醐「ねぇ」
美樹本「ん?」
醍醐「差出人のアルカードとやらはいつ来るのかしらね?」
醍醐「全然姿を現さないけど」
美樹本「ああ、言われてみれば…」
黒服「…」
醍醐「あの執事も何も言わないし、本当にここでミステリーナイトが始まるの…?」
???『ミステリーナイト参加者の諸君!ようこそ、我がネレイド城へ!』
???『私の名は、アルカード!』
一同「!?」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:42:19.12 ID:1p6HWAbq0
1日目 夜 ネレイド城 1F 大食堂
三澤「な、なんだ!?」
沼田「どこかのスピーカーから流れてるみたいだけど…」
アルカード『有名推理評論家、黒羽 烈斗(くろば れっと)』
アルカード『未だ方々で快進撃を続ける探偵社社長、沼田 岳美(ぬまだ たけみ)』
アルカード『世界各国の猟奇的犯罪をカメラに収めた犯罪ジャーナリスト、美樹本 洋太(みきもと ようた)』
アルカード『古今東西の謎を解きほぐす知恵の母、犯罪心理学者、醍醐 瑞紀(だいご みずき)』
アルカード『日本人でありながらロス市警として活躍する、捜査官のエース、三澤 陣(みさわ じん)』
アルカード『かの鮫島事件での法廷で真犯人を暴き、逆転無罪を勝ち取った敏腕弁護士、魚塚 三津子(うおづか みつこ)』
アルカード『イギリス警察監察医、ジェーン・S・モリアーティ』
アルカード『日本が誇る名探偵を祖父に持つ私立探偵、高遠 遥(たかとお はるか)』
アルカード『D県警きっての名刑事、赤羽根刑事とその従妹、ラン』
赤羽根「…」
ラン「…」
アーカード『只今より、このネレイド城所有権を賭け、世界中の応募者の中から選ばれた10名によるミステリーナイトを開始する』
アルカード『名探偵諸君の健闘を祈る』
ゴゴゴゴ…
黒羽「今度は何だ!?」
醍醐「みんな見て!跳ね橋が…!」
黒服「参加者の皆様、現時刻よりミステリーナイト終了まで、外部との接触を禁止させていただきます」
黒服「それに伴い入城の際にお預かりした貴重品、携帯電話の類も優勝者決定までお返しすることが出来ません」
ラン「我が神器がぁ!?(えぇっ!?)」
魚塚「ちょっと、なにもそこまですることないでしょ!?」
黒服「皆様の持つ純粋な推理力のみで対峙して頂くためですので、あしからず」
一同「…」
黒服「パーティーを再開いたしましょう」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:45:11.99 ID:1p6HWAbq0
1日目 夜 ネレイド城 1F 遊技室
パチーン…カカカッ…ゴトッ…
醍醐「はい、いただき」
黒羽「おおービリヤード上手いねアンタ」
三澤「まさか城内にこれだけ広い遊技場があるとはな」
沼田「あら、向こうの棚に置いてあるのワインじゃない?」
沼田「丁度良かった、このゲームが終わったら誰か一緒に付き合わない?」
美樹本「お、いいねぇ。他の人も一緒にどうだい?」
魚塚「やめとくわ。私全然呑めないから」
美樹本「…だろうな、モリアーティさんは?」
モリアーティ「私もお断りします。判断力が落ちてしまいますから」
沼田「そりゃ残念。わたしは酒入ってないと逆に推理ノらないんだけどな」
魚塚「推理…夜もだいぶ更けてくるけど、ミステリーナイトとやらは本当にいつ始まるのかしら」
黒服「…」
高遠「…あれ?赤羽根さん、ランちゃんは?」
赤羽根「ランなら力が暴走しそうだとか訳の分からん事いって部屋に引っ込んだよ」
赤羽根「…なにか用事だったかい?」
高遠「嗚呼」
赤羽根「…」
高遠「ランちゃん…この城のただならぬ妖気にあてられてしまったようですね…」
赤羽根「…」
赤羽根(何だろう…だんだんこの娘の頬をつねりたくなってきた…)
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 19:48:37.44 ID:1p6HWAbq0
深夜
部屋で休む参加者をよそに、怪しく蠢く影がひとつ。
ぴくりとも動かぬ『それ』を引きずり遊戯室に向かっていた。
影は遊戯室の前までたどり着くと、腰に提げたブレードキーを扉の前で構え光を当てる。
ピー…
遊戯室や物置など、ネレイド城にある客室以外の扉もブレードキーで施錠・開錠を行える扉が備え付けられているところがある。
全てのブレードキーを認識すること以外は客室のものと仕組みは同じである。
カチリ
扉の意匠が緑色に発光し、前に立つその影をフワリと照らす。
闇に浮かび上がったそれは…一柱の堕天使の形をしていた。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:08:50.60 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 1F 1号室(ラン)前
コンコン
赤羽根「ラン、もう寝てるのか…?」
コンコン
赤羽根「…」
赤羽根「思い返せばランのやつ、やけに様子がおかしかったな…」
赤羽根「遊戯室でゲームとか、今までそういう系のイベントは毎回しれっと参加してたのに…」
赤羽根「…」
赤羽根「まさか…部屋に戻るフリして一人でルシファーを探しに…?」
<きゃああああああーっ!!
赤羽根「っ!?」
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:10:46.83 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 1F 遊技場
??「」
モリアーティ「あ…ああ…」
黒服「あ、あれは…!?」
醍醐「人…!?」
赤羽根「どうしたんだっ!?…って、あれ?誰か電気をつけてくれ!」
パチ
赤羽根「これは…」
醍醐「なんだ、よく見たら人形じゃないの」
醍醐「びっくりさせないでよ…もお」
黒羽「…こんなのいったい何処にあったんだ?まったく」
美樹本「わざわざ血のりまで用意しやがって、誰だ!こんな悪ふざけをする奴はっ!!」
沼田「幾らなんでも悪趣味すぎるんじゃない!?」
ラン「騒がしく蝙蝠の啼く夜ね…(あれれ?なんですかこれ?)」ひょこ
赤羽根「ラン…今まで何処に…?」
ラン「?」
アルカード『名探偵諸君、さぞ驚かれたことだろう』
一同「!」
アルカード『さて、ここからがミステリーナイトの問題だ』
アルカード『このネレイド城で早くも悲劇が起こってしまったようだ』
アルカード『現場の刺殺死体を見分し、殺人犯を割り出してほしい。健闘を祈る』
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:12:51.29 ID:1p6HWAbq0
高遠「…」
高遠「つまり、犯人はこの中にいるってことですか…!?」
美樹本「ご丁寧に人形の顔まで血のりだらけだよ…っと、額に名前が彫ってあるな…『魚塚三津子』?」
美樹本「被害者役も俺たちの中から選ばれてるってわけか」
ラン「…」
沼田「銀の短剣で一突き…まぁ、人間なら即死でしょうね」
三澤「事件のヒントになるものは無いのか?血まみれの人形だけでどうやって推理しろというんだ」
黒羽「フッ…俺にはわかったぜ」
三澤「?」
黒羽「この人形をよく見てくれ。所々衣服が乱れているだろう?」
黒羽「犯人は被害者ともみ合った末に心臓を刺した。つまり相当な返り血を浴びている」
黒羽「よって、夕食の時と今とで別の衣装を着ているやつが犯人だ」
美樹本「やっぱりな!俺も丁度そう思ってたところだ!」
モリアーティ「でもこの時間、客室で体を洗って着替えてる人が殆どですよ…?」
黒羽「それは…」
醍醐「はん、いかにも三流ミステリー的な推理ね」
黒羽「なんだと!?」
醍醐「もし私が犯人なら、返り血を浴びることも計算に入れて殺すわ」
醍醐「この人形の衣服の乱れ…これはもみ合った跡ではなく、本当は着替えさせた跡なのよ」
美樹本「き、奇遇だな…俺もちょうどその考えに至ったところだ」
醍醐「返り血を浴びたまま着替えに戻るなんてハイリスク。犯罪心理学上、そういう問題は現場で処理する事を考えて犯行に及ぶ」
醍醐「犯人は被害者の上着を避けて短剣を突き立てている。これは、返り血を浴びた自分の衣服と交換するためにわざとやったのね」
醍醐「つまり現在、丈の違う衣装を着ている人間が犯人よ!」
モリアーティ「でもそれも全員着替えてたら分からないですよね…」
沼田「どっちみち衣服から犯人を割り出すのは無理なんじゃないの?」
高遠「むむむぅ…ダイイングメッセージ系なら得意なんですけど…」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:16:40.78 ID:1p6HWAbq0
赤羽根「一体誰なんだろうな…ラン、なにか気が付くところは無いか?」
ラン「す、すひ〜、すひ〜」
赤羽根「…なぜ鳴らない口笛を吹いてるんだ」
黒服「…」
三澤「目崎さん、その包帯…怪我でもしたんですか?」
黒服「腕を角にぶつけてしまいまして…大したことではありません」
三澤「…」
三澤「まてよ」
醍醐「…三澤さん?」
三澤「成程、そういうことか」
三澤「分かったぞ、犯人が」
一同「!?」
三澤「この人形の口元、よく調べてくれ」
醍醐「口元?何も変わったところなんてないけど」
美樹本「ちょっと待て、人形の口に付いてるの血のりじゃないぞ…もしかして酒か?」
沼田「…ブラッディ・マリーだわ」
黒服「ブラッディ・マリーというと、トマトジュースとウォッカを混ぜた赤色のカクテルでございますね」
ラン「デュオニューソスの芳香が狩人の匂いをかき消したと言うの?(ここでお酒を呑んでいたところを襲われた…?)」
美樹本「でもそれっておかしくないか?確か彼女は酒が飲めなかったはずじゃ…」
三澤「その通りだ。つまりこれは殺された後、犯人によって口に流し込まれたものだ」
沼田「犯人が流し込んだ?なんだってそんなことするのよ?」
三澤「黒羽君の推理通り、犯人は被害者ともみ合った末に被害者を殺害したとみて間違いない」
三澤「…犯人は恐らくその際に被害者にどこかを強く噛みつかれていたのではないだろうか?」
一同「!」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:20:32.10 ID:1p6HWAbq0
三澤「被害者に傷をつけられた犯人は、疑われないためにその事実を隠さなければならなくなった」
三澤「歯形は包帯か何かで隠せばいいが、被害者の歯についた自分の血はそうはいかない」
三澤「苦肉の策で犯人が思いついたのが、遺体の口に血に似た色をした液体を流しこむことだった」
美樹本「つまり、犯人は体のどこかに怪我をしている…?」
黒服「…」
沼田「あ、黒服の!目崎さんが犯人って事!?」
三澤「いや、犯人が目に見えるところに包帯を巻いているとは限らない」
三澤「それにもし彼が犯人だったとして、俺達に明らかに隠ぺいだとバレるようなブラッディ・マリーを選ぶだろうか?」
三澤「トマトジュースやケチャップ、まだ被害者が死ぬ前に口にしていたと考えられるものを使う筈」
黒羽「じゃあ、犯人はいったい何故ブラッディ・マリーを使ったんだ?」
三澤「簡単な事だ。『犯人が知らなかった』…つまり犯人の条件は2つ」
三澤「どこかの部位を負傷している人物。だが先程も言ったように、見えているところに怪我をしているとは限らない」
三澤「一番重要なのが二つ目の条件。魚塚君が下戸であると打ち明けた時その場にいなかった人物であることだ」
美樹本「ち、ちょっと待て!俺ももう少しでわかりそうなんだ!!」
三澤「該当するのはラン君、ひとりだけだ!」ビシィッ!!
一同「!!」
赤羽根「ら、ランが犯人だって!?」
ラン「…」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:24:53.91 ID:1p6HWAbq0
ラン「フッフッフ…」
ラン「フゥーッハッハッハッハッハ!!!」
ラン「よくぞこの智の迷宮をくぐり抜けた!瞳を持つ者、確と見よ!まさしく我こそが煉獄の支配者っ!!」
ラン「ハァーッハッハッハッハ…ッハ…っは…は…」
一同「…」
ラン「…」
高遠「出たな…吸血貴婦人エリザヴェートッ!!」ビシィッ
赤羽根「…」ほっぺぐにゅー
高遠「い、いひゃいひゃい!?な、なにするんですかぁ!?」
赤羽根「い、いや、なんとなく」
赤羽根「おい、ラン…」くるり
ラン「うぅむ…見様見真似の幻術、やはりすぐに消滅したか(はぁ…やっぱりこんなのすぐばれちゃうと思ったんですよねぇ)」
赤羽根「どーいうつもりなんだっ!?」
ラン「わ、我が相棒もなかなか侮れぬ霊格を持っているわね(こ、怖いですよぉ…赤羽根さん)」
ラン「何を隠そう我が身は虜。ノブル・レッドの指揮の侭に、身を踊らせたる道化なり(どうもこうも、私の部屋にこんな手紙があって、その指示通りに動いただけです)」
ピラッ…
一同「…」
ラン「宴を背に、惨劇を肴に、千鳥に狂えとタクトは示した(パーティを途中で抜けたのも、倉庫から人形を運んで、お酒をかけたのも)」
ラン「まぁ、幾許か舞台の羊共を欺く程度に振る舞いはしたものの…(あ、包帯はバレにくいようにしていいらしかったので、ふとももに巻いて…)」
…
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:28:26.81 ID:1p6HWAbq0
沼田「ということは、優勝は三澤さんになるわけ?」
三澤「フッ…なんのことはない」
美樹本「だったら何か?これでミステリーナイト終わりだってことか!?冗談じゃねぇぞ!」
美樹本「こんなくだらないクイズで終わりなんて!おい!主催者呼んで来い!」ガタッ
醍醐「そんなセリフ敗者が言っても何の意味も無いんじゃない?」
美樹本「うるさい!大体なんだ!携帯は取り上げられる、変な服は着せられる」
美樹本「挙句にゲームが始まればこんなチンケな人形遊び!」ガッ!
ガシャンッ…
カラカラ…
美樹本「納得できっかよ!一体なん…」
美樹本「…」
美樹本「…?」
高遠「美樹本さん?」
黒羽「どうしたんだ…?」
美樹本「これ…血か?」
沼田「えっ…?」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:29:59.18 ID:1p6HWAbq0
三澤「血って、血のりのことか?」
美樹本「いや、この短剣にこびりついてるの…血のりでも酒でもないぞ、これは本物の血だ」
醍醐「…なんでイミテーションの小道具に本物の血がついてるの?」
美樹本「俺が知るかって。少なくともこの短剣に誰かの血がベットリ付いてるのだけは確かなんだよ」
モリアーティ「…もしかしてそれはブレードキーではないですか?よく見たら引き金があります」
美樹本「…」カチ
ピー
醍醐「7号室…」
高遠「魚塚さんの部屋の鍵…ですね。彼女のブレードキーが何故ここに…?」
沼田「ちょっとどういうことなの?魚塚さ…ん?」きょろきょろ
…
三澤「そういえばここに駆け付けてから顔を見ていないな」
一同「…」
三澤「さっきの悲鳴は聞こえていた筈だが…」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:36:10.81 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 2F 7号室(醍醐)前廊下
コンコン
高遠「魚塚さん?魚塚さーん?」
ラン「…」
沼田「もう入っちゃいましょうよ。鍵は持ってるんだし…」
高遠「いえ…」
高遠「開けるまでもないみたいです」
ギイィ…
三澤「なっ…!?」
一同「!?」
まるで舞台劇の一幕のような光景だった
燭台をあしらった常夜灯の淡い光に照らされ、ぼんやりと浮かんだその姿は
心臓を深々と木杭で貫かれた、さながら人間に討たれた吸血鬼…
魚塚「」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:37:52.70 ID:1p6HWAbq0
主演:神崎蘭子・赤羽根P(765プロ)
堕天使探偵ラン 『堕天使は二度堕ちる』
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:40:33.90 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 25:21時点
A 赤羽根刑事(5号室)
B ラン(1号室)
C 黒羽 烈斗(推理評論家・9号室)
D 高遠 遙(私立探偵・3号室)
E 魚塚 三津子(弁護士・7号室)←DEAD
F ジェーン・S・モリアーティ(イギリス警察監察医・10号室)
G 醍醐 瑞紀(犯罪心理学者・8号室)
H 沼田 岳美(探偵社社長・6号室)
I 三澤 陣(ロス市警・2号室)
J 美樹本 洋太(犯罪ジャーナリスト・4号室)
K 黒服 目崎
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:46:14.52 ID:1p6HWAbq0
黒羽「おいおい…!?」
沼田「魚塚さん…!!」
醍醐「ほ、本物よ…本物の魚塚さんが!」
美樹本「きゅ、救急車!呼べ!…い、いや警察か!?おい警察!」
三澤「馬鹿、押すんじゃない!」
モリアーティ「っ」ダダッ
モリアーティ「…」
モリアーティ「死因は心臓からの出血によるショック死…」
モリアーティ「体温の変化も、硬直も殆どないですが…おおよそ死後二時間ほど経過していると思います」
赤羽根「死亡推定時刻は11半…」
高遠「ランちゃん、貴女があの人形を遊戯室に運んだ時間は?」
ラン「高貴なる紅は、深まり始める闇を好んでいたわ(12時半です。アルカードにそう指示されていました)」
高遠「ということは、倉庫から人形が運ばれるより前に魚塚さんは殺されていた…」
沼田「ちょっと、そんなこと考えるよりやることがあるでしょ!」
沼田「ミステリーナイトは中止して、早く警察に連絡するのよ!」
黒服「…それは不可能です」
黒服「この城には電話や通信機の類は一切置いていないのです」
一同「!?」
美樹本「どういうことだよそりゃあ!?」
美樹本「だったらアンタが俺達から没収した携帯、さっさと出せ!」
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:51:21.70 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 2F 管理人室
一同「…」
黒服「確かにここに保管しておいた筈なのですが…」
美樹本「なくなっちまってるのかよ!?」
黒服「それに、操作盤の鍵までなくなっています」
黒服「あれを刺した状態でなければ、跳ね橋の操作は不可能です…」
沼田「橋を下ろせなくなってるってこと!?」
醍醐「じゃあ私達、閉じ込められたの!?」
赤羽根(この操作盤…)
ラン「?」
黒羽「橋以外に出入り口は無いのか!?」
三澤「皆で手分けして探すんだ!」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:54:29.25 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 エントランスホール
美樹本「開かないぞ!?」
沼田「なんでなのよ!?」
アルカード『フハハハハハハハハ!』
アルカード『何処に行くつもりなのかな?名探偵諸君』
アルカード『君達は私の行う、吸血鬼狩りという名のミステリーナイトに参加したのではなかったのかね?』
一同「!?」
アルカード『私はこれから一匹ずつ、君達を殺していくつもりだ。ゲームとして…』
高遠「私達が…吸血鬼…?」
美樹本「ヤロー、舐めやがって!出てきやがれ!」
三澤「放っとけ!出口を探すのが先だ!」ダッ
…
1日目 深夜 ネレイド城 廊下
アルカード『殺されたくなければ、私の正体を暴くことだ』
アルカード『それ以外に助かる道は無い』
アルカード『さぁ、ミステリーナイトを一緒に楽しもうじゃないか…』
沼田「ここからじゃ出られそうにないわね…醍醐さん、そっちは!?」
醍醐「駄目…やっぱり跳ね橋が唯一の出入り口なのかも…」
アルカード『ハァーッハッハッハッ!!!』
赤羽根「完全に閉じ込められた…」
ラン「く…」
黒羽「おい、ここから地下に続いてるみたいだぞ!」
…
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 20:58:53.75 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 B1F ?
三澤「なん…だこの部屋は…?」
美樹本「気色悪りい…」
沼田「部屋中、串刺しにされた人形だらけね…」
高遠「物置にあったという人形も、ここから運ばれてきたものなんでしょうか…?」
ラン「偽りの屍が語りし粛清の記録…或いはカタストロフの爪痕か?(…いったい何のためにこんなものが?)」
黒服「拷問展示室です」
一同「!?」
黒服「この城のかつての城主ドラクル公ブラド・ツェペシュは罪人を粛正する際、串刺し刑を好んで使われたそうです」
黒服「串刺し公の異名を持つほどの彼の苛烈な性格にちなみ、こうして地下に作られたのです」
三澤「…わからんな。ここを作った奴は何がしたかったんだ?」
三澤「見世物のように作られている割には、ああして入口の扉を大鏡で塞いでいたわけだろう?」
赤羽根「資料展示にしても悪趣味すぎるしなぁ…」
黒羽「ビビらせるために作ったんじゃないか?」
醍醐「え?」
モリアーティ「どういうことですか?」
黒羽「施設内全体に聞かせる放送スピーカー…照明が少ない城内…いかにもゲーム的な施錠システム…そして大鏡をどかした先に隠し部屋ときた」
黒羽「全部テーマパーク用の改造の名残なんじゃないか?お化け屋敷か脱出ゲームのアトラクションにでもするつもりだったんだろうよ、どうせ」
沼田「ここから出られそうかと思ったけど…行き止まりか」
美樹本「くそ…なんだってこんな気味の悪い城に閉じ込められちまったんだ…!」
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:06:26.52 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 1F 大食堂
モリアーティ「…1943、『夜の悪魔』」
高遠「え…?」
モリアーティ「どこかで聞いたことがあると思ったら…思い出しました」
モリアーティ「1943年に公開された、夜の悪魔というホラー映画にアルカードという名前が登場するんです」
カリッ…
モリアーティ「スペルはこう…ALUCARD」
モリアーティ「これは、隠された正体を逆に綴った名前で…」カキカキ…
ラン「!」
三澤「DRACULA…ドラキュラか!?」
モリアーティ「その通り。吸血鬼を示す暗号なんです」
赤羽根「犯人は自らをも吸血鬼と自称している…?」
美樹本「ふざけやがって!」
美樹本「おい、黒服の!奴の居場所を教えろ!お前はアルカードと顔を合わせてるだろう!」
黒服「…不可能です」
美樹本「なに?」
黒服「私も、何も知らされていないのです。アルカード様の正体も所在も」
美樹本「そんなふざけた話があるか!」
黒服「…事実です」
黒服「二か月前のことでした。私の所属する秘書派遣会社に突然小包が贈られてきました」
黒服「その小包の中の手紙には私を名指しで、このミステリーナイトを仕切ってくれと書いてありました」
黒服「私はそれを引き受けただけです」
赤羽根「だったら、目崎さんはアルカードに会ったことも…」
黒服「一度もありません」
ラン「…」
美樹本「なんてこった…」
三澤「俺達は、まんまとネズミ捕りの罠に飛び込んじまったようだな」
三澤「アルカードの仕掛けた殺人ゲームの罠のなかに…!」
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:12:46.78 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 2F 7号室(魚塚)前
ピー…
黒服「おや…?」
ラン「?」
黒服「いえ…現場保存の為にと部屋の施錠を頼まれたのですが…」
ラン「黙する番兵は何を思う…(反応しないんですか?)」
ラン「いや、まさか…封印そのものが幻だというのか!?(それとも鍵が偽物に?)」
黒服「いえ、偽物ではないと思いますが…何故でしょうか?」
ピー…
ラン「…あれ?」
黒服「?」
ラン「我が聖剣の陽光を見よ(ちょっと私のと見比べてください)」
ピー…
黒服「…レーザー光が所々掠れていますね。つまり、故障…?」
ラン「仕手と共に滅する剣…これは何を符合するものなのか…?(…でも、なんで壊れちゃったんだろう?)」
黒服「凶器に使われたから…では?」
ラン「え?」
黒服「先程のモリアーティ様の検死によれば、直接的な凶器はこの鍵であった可能性が高いそうです」
ラン(これが凶器に…?)
黒服「魚塚様をこれで貫いた際に刀身が油巻きになってしまったのか、それとも歪んだのかは定かではありませんが…」
黒服「ともかく、ブレードキーは凶器として使うには少々脆すぎるのでしょう」
ラン「…」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:16:51.31 ID:1p6HWAbq0
ラン「漆黒の従者よ、貴方はこの仄暗き魔城を何処まで征伐したの?(目崎さんはこのお城の事、どのくらい知っているんですか?)」
黒服「…皆様と殆ど変わりませんよ。着いたのが皆様より一日早いだけでして」
黒服「この城について私が知っていることは全て皆様にもお話しています」
ラン「貴方は高貴なる紅の影を捉えていない…(アルカードを知らないという話でしたけど…)」
ラン「ならば或いは、嘶きに耳を傾ける事すら無かったということ?(例えばその最初の日に声を聴いたり、遠目で姿を見たりなんてことは…?)」
黒服「ございませんね…お役に立てず申し訳ありません」
ラン「…」
黒服「夜も遅いですし、立ち話もこのくらいにしましょうか」
黒服「私は部屋に戻りますので、これで」
コツコツコツ…
ラン「…」
モリアーティ「…あのぉ」
ラン「きゅっ!?」びくっ
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:21:42.90 ID:1p6HWAbq0
1日目 深夜 ネレイド城 1F 1号室(ラン)
モリアーティ「ゴメンナサイ…こんな無理を言ってしまって…」
モリアーティ「まっくらな部屋で独りぼっちになると眠れないんです…私…」
ラン「フッ、我が漆黒の両翼で覆って欲しくば供物を捧げるが良い!(い、いえいえ!丁度私も貴女に聞きたいことがあったので!)」
モリアーティ「はい?」
ラン「我が頭脳は兆候を欲す!硝子を裂く断末魔!咎に縛られし人形!一つ残らず捧げよっ!(直接の凶器がブレードキーだったというのは間違いないんですか?)」
モリアーティ「ええ。傷口は胸にある一か所のみだったのですが、生活痕のある部分と無い部分が混在していました」
モリアーティ「これはつまり、最初に細い何かで胸を刺されて死に、その後傷口を拡げるようにして木杭が打たれたことを表します」
ラン「既に魂は砕け散っていた…滅却が為されたのは終の幕…(その細い何かが…ブレードキー?)」
モリアーティ「ブレードキーに付着している血痕から見ても明らかです」
ラン「弔う意思など思慮の外…とはいえ咎なるアニマの内にある物とも思えぬ…(犯人はなんでわざわざそんなことを…?)」
モリアーティ「…吸血鬼に見立てるためではないでしょうか?」
モリアーティ「木杭で心臓を貫くというのは代表的な吸血鬼退治の方法です」
モリアーティ「たしか犯人も、この殺人ゲームの事を『吸血鬼狩り』と呼んでいました」
ラン「名を冠する幻視の種は、芽吹く前に砕かねばならないが…(それも考えられますけど…)」
モリアーティ「?」
ラン「…時に、ノブル・レッドの肢体を識るのもアスクレピオスの極致に至る選択なのね?(…そういえばモリアーティさん、吸血鬼に詳しいですね)」
モリアーティ「オカルトじみた事件は祖国イギリスでもしょっちゅうですから」
モリアーティ「ただ…それでもオバケは怖いんですけどね…」
ラン「…」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:25:38.63 ID:1p6HWAbq0
2日目 朝 ネレイド城 1F 1号室(ラン)
ラン「…」
モリアーティ「zZZ…」
ラン(吸血鬼に見立てる…か…)
アルカード『おはよう、吸血鬼城の名探偵諸君』
ラン「っ!?」ガバッ
モリアーティ「ふにゃ?」
アルカード『次なる惨劇は生まれているというのに』
アルカード『のんびりしていて良いのかね?』
アルカード『さあ、次の吸血鬼は憐れにも朝陽に焼かれてしまったようだぞ』
ラン(朝陽…?)
モリアーティ「…きゃあぁあっ!?」
ラン「!?」びくっ
モリアーティ「ランちゃ…あ、あそこに…!」
2日目 朝 ネレイド城 1F 客室前廊下
ピー…ガシャッ
三澤「見たか?中庭の…」
高遠「誰かの死体が!」
ラン「次なる煉獄の扉が開いてしまったというのかっ!(とにかくあの場所に急ぎましょう!!)」
ダダダッ…
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:33:46.06 ID:1p6HWAbq0
2日目 朝 ネレイド城 1F 中庭
黒羽「」
一同「…」
三澤「大胆な奴だ。広場のど真ん中に磔かよ」
美樹本「誰か見てねぇのかよ!?犯人をよ!!」
美樹本「中庭なんてどの部屋からも丸見えじゃねーかよ!」
沼津「アンタ窓覗いたことないの?」
沼津「夜になると城内の廊下もここも真っ暗になって何も見えやしないのよ。無茶言わないで」
高遠「朝陽に焼かれ…というのは」
高遠「中庭の天窓から射す光の事を表しているんでしょうか?」
黒服「…」
モリアーティ「死後4時間か、5時間…」
モリアーティ「犯行の手口は魚塚さんの時と一緒のようです」
モリアーティ「遺体の胸に刺さっているこれは、はやり黒羽さんのブレードキー…」
ラン(…ん?)
高遠「…それって…ちょっと変じゃないですか?」
沼田「どうして?」
高遠「…みなさん、このまま黒羽さんの部屋までついて来てください」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:35:50.01 ID:1p6HWAbq0
1日目 朝 07:52時点
A 赤羽根刑事(5号室)
B ラン(1号室)
C 黒羽 烈斗(推理評論家・9号室)←DEAD
D 高遠 遙(私立探偵・3号室)
E 魚塚 三津子(弁護士・7号室)←DEAD
F ジェーン・S・モリアーティ(イギリス警察監察医・10号室)
G 醍醐 瑞紀(犯罪心理学者・8号室)
H 沼田 岳美(探偵社社長・6号室)
I 三澤 陣(ロス市警・2号室)
J 美樹本 洋太(ルポライター・4号室)
K 黒服 目崎
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:44:01.31 ID:1p6HWAbq0
2日目 朝 ネレイド城 2F 9号室(黒羽)
赤羽根「うお…」
三澤「ベッドが真っ赤だ…」
モリアーティ「被害者はここで眠っているところを襲われたということでしょうか?」
モリアーティ「確かにあそこで殺されたにしては流れている血の量は少なかった」
モリアーティ「その後中庭へ運ばれたんだとしたら…」
ラン「只ならぬ歪みを感じる(…奇妙ですね)」
高遠「やっぱり…ランちゃんもそう思いますか?」
赤羽根「奇妙?」
高遠「…現場がこの部屋だったとしたら、犯人はどうやって部屋に入ったんだと思います?」
沼田「どう…って、えっと、黒羽君が施錠したまま寝ていたんじゃ入れないから…」
沼田「例えば犯人は事前に彼と会う約束をしていて、部屋に入れてもらったあとで、不意を衝いて…とか」
高遠「どうやって不意を?」
沼田「え…?」
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:46:35.97 ID:1p6HWAbq0
ガチャ
黒服「高遠様、やはり駄目でした。この鍵も壊れてしまっています」
高遠「どうもありがとうございます」
三澤「?」
高遠「どうやらこのブレードキー、人を刺してしまうともう使えないみたいなんです」
高遠「今沼田さんが言った手口で犯行に及んだとした場合、犯人は殺した後の事も考えなければならなかった」
高遠「なぜって、施錠された部屋の中で彼を刺してしまったら閉じ込められてしまうわけですから」
赤羽根「確かにそうだな」
赤羽根「…ん?まてよ?」
高遠「誰かを部屋に招き入れている時でも、普通はしっかりと戸締りをします。状況が状況ですから猶更します」
高遠「だから、犯人はブレードキーで黒羽さんを殺す前に、一旦それで部屋の鍵を開けに戻らないといけない」
高遠「でもそんな不審な行動を見せた相手を、黒羽さんが警戒しないわけがない」
赤羽根「ううむ…」
三澤「だが、それ以外にこの状況をどう説明するというんだ?」
高遠「一つしかないでしょう」
高遠「犯人はこの鍵のかかった部屋に入る方法をもう一つ持っていたんです」
一同「!?」
高遠「それもそのはず、犯人はブレードキーを使わずに密室に出入りすることが出来た…」
高遠「『物質透過能力者』だったということですッ!!!」
一同「…」
むにゅー
高遠「はにゃにゃにゃにゃ!?」
赤羽根「んなわけあるか!」
高遠「ほ、本気なんですけど私!?」
美樹本「ああ、ミステリ界の暴走特急だったっけか、あの子の異名」
醍醐「良く悪くも異名通りなのね…」
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:50:58.88 ID:1p6HWAbq0
2日目 朝 ネレイド城 2F 9号室(黒羽)前
…
沼田「でも、これでますます無差別殺人の線が濃くなってきたわね」
沼田「弁護士と推理評論家…殺しの動機に共通点があるようには見えないし」
ラン「いいえ、それこそが人を幻惑すノブル・レッドの本領…(それはどうでしょうか?)」
醍醐「?」
ラン「原初の惨劇と断末魔の段(昨夜の遊技場での推理合戦のことを思い出してください)」
ラン「我が躰は猟犬の鼻を欺くために、酒を滴らすクラウンを宿したわ(私は犯人の指令で、魚塚さんが下戸であることを利用した犯人当てのクイズを作っていたわけですけど…)」
ラン「しかし、その惨劇の予兆はもっと早く…役者が舞台に出揃う遥か前(あの指示を受け取ったのは、ミステリーナイト開始前…みんながそれぞれの部屋に案内されたときのことなんです)」
ラン「ともすれば、ノブル・レッドは贄共を誘い込んだ上で幕を上げたのではないか?(つまり、少なくとも犯人は魚塚さんの趣味趣向を事前に調べ、ターゲットにすると決めていたことになる)」
ラン「この惨劇は…獣の凶刃では無く、獄卒の処刑具によって形作られしものなのかも知れない…(だったら黒羽さんも同様に、あらかじめターゲットとして殺害する計画を立てていたと考えられます)」
醍醐「アルカードには何らかの目的があって、二人を殺したってこと?」
ラン「真理を掴み取るまでは、妄信は破滅を誘う引鉄(その可能性も十分あり得るということです)」
美樹本「それにしてもいったい何者なんだアルカードは…コソコソしてねーで出てきやがれ!!」
ラン「鮮血の君は、既に煉獄の渦中にいるわ(もう、出てきているんじゃないでしょうか)」
美樹本「え?」
ラン「全ての事象は、彼奴が我らの影に溶けている事を示す…(これまでの状況から考えて、この城に私たち以外の誰かがいるとは思えません)」
赤羽根「ラン、まさか…!」
ラン「ノブル・レッドはこの中にいるっ!(アルカードは、もうこのなかに紛れ込んでいるんです!)」
一同「!?」
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 21:55:57.25 ID:1p6HWAbq0
2日目 昼 ネレイド城 2F 9号室(黒羽)前
醍醐「この中に…」
沼田「アルカードが…!?」
一同「…」
三澤「す、少し軽率だぞラン君。お互い疑心暗鬼になってたら奴の思うツボだ」
赤羽根(らしくないな…一体どうしたんだ?やけに焦ってるみたいだが…)
ラン(これ以上犯人に…ルシファーに好き勝手させるわけにはいかない…)
三澤「基本に則り、事件の手がかりを見つけてくまなく検証していけば自ずと犯人に辿り着く筈だ」
美樹本「なら、この密室の謎を考えようぜ」
美樹本「さっきの高遠の推理には面食らったが、部屋に入る別の方法があったかもってのはイイトコついてると思う」
美樹本「こういう場合、どこかに秘密の抜け道があった…なんつーのが現実的だろ」
赤羽根「…改めて全員で隠し通路が無いか調べてまわった方が良いかもしれないな」
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 22:00:48.36 ID:1p6HWAbq0
2日目 昼 ネレイド城 2F 8号室(醍醐)
沼田「…無さそうね」
沼田「もしこの部屋で隣へ抜ける穴が見つかれば一発だったのに」
醍醐「…ふん」
2日目 昼 ネレイド城 2F 5号室(赤羽根)
三澤「どの客室の窓もはめ込み式の一枚硝子か…進入口には使えそうにない」
モリアーティ「では、扉を細工された可能性はどうでしょうか?」
三澤「可能性が無いわけではないが…それもあまり現実的ではないな」
三澤「そもそも俺たちですらこの扉の仕組みを完全に理解していない。少なくとも物理的に解決できる類のものではなさそうだが…」
三澤「…」
三澤「いや、まてよ…まさかそういうことなのか?」
モリアーティ「?」
2日目 昼 ネレイド城 2F 2号室(三澤)
美樹本「なあ」
沼田「え?」
美樹本「…まずくないか?」
沼田「…」
沼田「ま、まさか…偶然、でしょ」
2日目 昼 ネレイド城 2F 空き部屋前
高遠「どの部屋も怪しいところは何もなかったですね…」
ラン「外なる虚空の領域…?(あれ?ここは?)」
黒服「ここは空き部屋ですが、どうかなさいましたか…?」
ラン(空き部屋…)
ガチャ
高遠「ダメですね…この部屋も変わったところなしです」
ラン「…」
美樹本「おい、みんな集まってくれ、三澤が推理を始めたぞ!」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 22:06:11.31 ID:1p6HWAbq0
おそめのばんごはんをたべてきます
30ぷんか40ぷんくらいでもどってくるよていです
m(_ _)m
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2018/09/01(土) 22:42:33.86 ID:ct9q4m6/O
たん乙
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 23:19:17.19 ID:1p6HWAbq0
だいぶおくれもうしたm(_ _)m
さいかいしまむら
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 23:21:16.78 ID:1p6HWAbq0
2日目 昼 ネレイド城 1F 遊戯室
三澤「よくよく考えてみれば、この城には奇妙な仕掛けが多い」
三澤「殺された黒羽君も言っていたな。『この城は元々アトラクションとして改築された建物ではないか』と」
美樹本「それがどうした?」
三澤「密室殺人のヒントもそこに在ると思わないか?」
三澤「少なくとも俺は、犯人が何かしらのシステムの裏を突いて9号室に入ったと考えた」
沼田「裏…?」
醍醐「いったい何を言いたいのかサッパリなんだけど…」
三澤「…論より証拠だ。ついてきてくれ」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 23:26:04.90 ID:1p6HWAbq0
2日目 昼 ネレイド城 1F 3号室(高遠)前
コツ コツ コツ…
高遠「私の部屋…?」
三澤「さて、俺の推理はとある一つの事実の上に組み立てられる」
三澤「すなわち、我々の客室の扉は何を以て鍵を判別しているのか」
三澤「よくよく考えてみれば、鍵を開けるために扉に光を当てる必要があるという仕掛けはいかにも不自然だ」
三澤「普通は車のキーのように電波式か、ホテルのカードキーのような磁気認証にしたほうが楽だろう?」
美樹本「それが何だっていうんだ?」
美樹本「磁気だろうと光だろうと厳重なセキュリティって点では一緒じゃねぇか」
三澤「いや、そうとも限らないさ」
三澤「話を進めよう。ラン君、きみのブレードキーを貸してくれないか」
ラン「…」スッ
三澤「さて、今俺の手に在るのは2号室と1号室のブレードキー。これを同時に扉に当ててみるとどうなるか…」
ピー…
カチリ
一同「!?」
美樹本「あ…開いた…!?」
高遠「そんな…!?」
沼田「え!?なに!?どうなってんの!?」
三澤「簡単な話さ。ローマ数字のTとUをそのまま横付けして、Vの形を作ったんだ」
三澤「要するにこの扉はブレードキーそのものではなく、レーザー光の形状を識別しているに過ぎないってことだ」
三澤「その形さえ合っていれば、扉は『鍵』として認識してしまう」
三澤「…つまりこの扉、『ピッキング』が出来てしまうということだ」
沼田「まさかそんな抜け穴が…」
醍醐「8号室の私は…高遠さんと赤羽根さんに結託されたらどうしようもないって事?」
美樹本「ち、ちょっと待て!俺なんかTとXだぞ!」
美樹本「お前ら思いっきり連れ同士じゃねーか!く、来るんじゃねーよ!」
赤羽根「お、おいおい」
ラン「…」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 23:31:56.63 ID:1p6HWAbq0
三澤「まぁ落ち着け、まだ推理の途中だ。犯人は別にいる」
三澤「ピッキングの可能性は今話した通りだが、当然ながらあの9号室の扉もその範疇ということになる」
三澤「そして9(\)号室の施錠に必要なブレードキーの組み合わせは1(T)号室と10(])号室…」
ラン「!」
モリアーティ「!」
醍醐「…ということは」
三澤「モリアーティ君、きみは何故昨晩ラン君の部屋で寝泊まりを?」
モリアーティ「そ、それは…私はただ暗いところに独りきりだと不安で…」
三澤「本当にそうか?1号室のブレードキーが入用だったからではないのか?」
三澤「君ならば、ラン君が眠ったところで彼女のブレードキーを持ち出し、あの密室を構築することができた」
モリアーティ「そんな!私じゃありませんっ!」
美樹本「…」
沼田「…」
モリアーティ「っ…」
ラン「ふん、愚かな。双剣の解放を以て咎を定めるとするのなら…(待ってください、鍵を作ることが出来るというのなら…)」
ラン「我が明鏡止水の一太刀で看破する咎を定めようぞ!!(わざわざそんな小細工をしなくても、密室を作ることも破ることも出来ますよ)」
三澤「なに…?」
一同「!?」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 23:34:43.46 ID:1p6HWAbq0
ラン「黒き従者に問う(目崎さん)」
黒服「はい?」
ラン「ノブル・レッドが命ず、虚なる領域の支配は何処まで広がっている?(2階にふたつ空き部屋がありましたよね?あそこはアルカードにどう指示されていましたか?)」
黒服「…特には何も…もし参加者が10名以上いた場合は、あの客室も準備する予定でございましたが…」
ラン「領域に刻まれし名は、宝瓶と双魚…(部屋番号は11号室と12号室…ですよね?)」
黒服「…そうですが?」
一同「…」
三澤「11号室…?」
高遠「あ!Ⅺ…!!」
ラン「人馬と宝瓶はこの魔城に於いては対の形態…(9『\』と11『Ⅺ』は、ひっくり返っているだけで2つとも同じ形なんです)」
ラン「虚ろなる領域を侵すことの出来る者ならば、誰しもが高貴なる紅に成り得るのよ!(つまり空き部屋から11号室の鍵を持ち出せる人間ならば誰でも犯行は可能だったということになります)」
一同「…」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 23:39:47.27 ID:1p6HWAbq0
2日目 昼 ネレイド城 1F 大食堂
赤羽根「犯人が絞れないんじゃ、捜査は結局振出しか…」
ラン「…」
赤羽根「まだ何か気になることがあるのか?」
ラン「古城の吸血鬼は…矢鱈と解呪の具に拘っているようね(何故、凶器がブレードキーなんでしょう?)」
赤羽根「え?」
ラン「奴ならば、地の獄より幾らでも処刑具を召喚することが出来よう(地下の串刺しの部屋には、模造刀がいくつも置いてありました)」
ラン「で、ないにしろ、この地には迷える贄を晩餐に卸す獣がこんなにも犇めいているというのに…(この大食堂にも、あちこち並んでる甲冑が携えてるのはやっぱり同じ模造刀です)」
ラン「解呪の具…彼の剣には、咎人を惹く何かが…?(お城の中、これだけ凶器に適してそうなもので溢れているのに、なんでわざわざ鍵を壊す真似を…)」
赤羽根「まぁ、言われてみれば確かに…」
赤羽根「犯人の言う吸血鬼狩りとやらの放送も、日光とか杭とかに拘ってるだけだしな」
赤羽根「わざわざアレで殺す必要は無い…か」
ラン「唄聲(…放送)」
赤羽根「ん?」
ラン(そういえばあの放送…何処から流してるんだろう?)
ピシャーン!!
ラン「!」ビクッ
赤羽根「!」ビクッ
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 23:47:08.43 ID:1p6HWAbq0
2日目 昼 ネレイド城 1F 大食堂
ピシャーン!!
ゴロゴロゴロ…
ザアアアァァァッ…
ラン(雨…)
赤羽根「え、えらい激しく降ってきたな…目崎さん、この辺土砂崩れとか大丈夫なんですか?」
醍醐「…土砂崩れよりも、もしかして雷で停電とか起きたりしない?」
醍醐「客室のドアって言ってみれば電磁ロックなんだし、停電したらヤバいんじゃないの?」
黒服「その点はご安心ください」
黒服「資料によると、電源は地下深くのケーブルを通っているようですので」
黒服「万一の時でも自家発電に切り替わるようになっていると書かれておりました」
醍醐「…ならいいんだけど」
赤羽根「…地下?」
ドシャ―ン!!
ラン「ひえっ!?」
モリアーティ「きゃっ!?」
三澤「…今のはかなり近かったな」
黒服「城の何処かに当たったようですな」
赤羽根「…」
赤羽根「そうだ地下だ…その手があった…!」
ラン「…?」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/09/01(土) 23:53:26.04 ID:1p6HWAbq0
2日目 昼 ネレイド城 1F 大食堂
ピシャーン!!
ゴロゴロゴロ…
ザアアアァァァッ…
ラン(雨…)
赤羽根「え、えらい激しく降ってきたな…目崎さん、この辺土砂崩れとか大丈夫なのか?」
醍醐「…土砂崩れよりも、もしかして雷で停電とか起きたりしない?」
醍醐「客室のドアって言ってみれば電磁ロックなんだし、停電したらヤバいんじゃないの?」
黒服「その点はご安心ください」
黒服「資料によると、電源は地下深くのケーブルを通っているようですので」
黒服「万一の時でも自家発電に切り替わるようになっていると書かれておりました」
醍醐「…ならいいんだけど」
赤羽根「…地下?」
ドシャ―ン!!
ラン「ひえっ!?」
モリアーティ「きゃっ!?」
三澤「…今のはかなり近かったな」
黒服「城の何処かに当たったようですな」
赤羽根「…」
赤羽根「そうだ地下だ…その手があった…!」
ラン「…?」
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