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【バンドリ安価】湊友希那「ロゼリアのレベルアップを計る」
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9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 07:09:12.98 ID:37ATnayA0
<竹細工>
燐子「え……」
あこ「竹細工?」
リサ「竹細工って、あれ? 細い竹を編んで籠とか作る……」
紗夜「……恐らくそれだと」
燐子「これに……挑戦するんですか……?」
友希那「もちろんよ。大丈夫、あなたならきっと出来るわ」
燐子「でもどうすれば……」
友希那「それを考えるのも含めて挑戦よ」
燐子「わ、分かりました……やってみます……その、出来るか分かりませんけど……」
友希那「ええ。これもロゼリアの、ひいては燐子のためだから。応援しているわ」
紗夜(……クッキーづくりにしろ竹細工にしろ、音楽とまったく関係ない気がしますが)
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 07:09:53.60 ID:37ATnayA0
友希那「さぁ、次はリサかしら、それとも紗夜?」
あこ「友希那さんは引かないんですか?」
友希那「私は最後よ。みんなが何に挑戦するのか見届ける義務があるから」
リサ「いや、先に引いたって見届けられるじゃん……」
紗夜「今井さん、どうしますか?」
リサ「あー……アタシはどっちでもいーから、紗夜に任せるよ」
紗夜「分かりました。では私が」
リサ「ん、オッケー」
友希那「分かったわ。それじゃあ、はい」
紗夜「ええ。では……」ガサゴソ
紗夜「……これにしましょう↓1」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/24(金) 07:48:19.53 ID:7nVhqmYd0
ナンパ
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 08:20:55.55 ID:37ATnayA0
<ナンパ>
紗夜「…………」
紗夜「…………」
紗夜「……は?」
あこ「ナンパ?」
燐子「ナ、ナンパって……あの……?」
リサ「多分……?」
友希那「……その、頑張って、紗夜」
紗夜「ちょ、ちょっと待ってください! これは倫理的に駄目なものではありませんか!?」
友希那「ごめんなさい。私から言えるのは……それを書いた人を恨んで、ということだけよ」
友希那「大丈夫、きっとそれも……何かしらの形で紗夜の糧になる……ハズよ?」
紗夜「どうして宇田川さんや白金さんの時と違ってそんな疑わしい口ぶりなんですか!」
リサ「ま、まぁまぁ紗夜、落ち着いて……」
燐子(良かった……先に引いておいて本当に良かった……!)
あこ(ナンパってなんだろ? あとでおねーちゃんに聞いてみよーっと)
友希那「紗夜。残念だけど……もう決まってしまったことだから」
友希那「同情はするけれど、ロゼリアの一員として、全力で取り組んで頂戴ね」
紗夜「くっ……そう言われたら……」
紗夜(こんなふざけた内容のものを書いたのは一体誰なのよ)
紗夜(……というか、コレ、よく見ると見慣れた字のような気がするわね……)
紗夜「まさか、日菜……?」
リサ「その、紗夜? 力になれるか分からないけど、手伝おうか?」
紗夜「本当ですか?」
友希那「ダメよ、リサ。これも挑戦なの。私たちが今出来るのは見守ることだけ」
リサ「うっ、やっぱダメ?」
友希那「ダメ」
紗夜「……分かりました。とても、とても不本意ではありますが、精一杯、取り組ませて頂きます」
リサ(うわー……本当に苦虫噛み潰したような顔で嫌々言ってるなぁ……)
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 08:22:38.79 ID:37ATnayA0
友希那「さぁ、それじゃあ次はリサね」
リサ「ん……紗夜の後だとちょっと怖いけど……」
友希那「どうぞ、リサ」
リサ「はーい……」ガサゴソ
紗夜「今井さんも私と同じものかそれ以上のものを引けばいいのに」ボソ
リサ「紗夜ー? 聞こえてるぞー?」
紗夜「それが今の私の偽らざる気持ちです。何か問題でも?」
リサ「ついに開き直っちゃったよ……。えーっと、アタシはコレで↓1」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/24(金) 08:24:35.47 ID:5QAkKB2qo
フルマラソン
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2018/08/24(金) 08:27:15.46 ID:ouMGJWyyO
42.195kmなら臨機応変案件か
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/24(金) 08:41:57.74 ID:JF0z0e040
これか
https://i.imgur.com/WVTm2Rc.jpg
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 08:48:07.09 ID:37ATnayA0
<フルマラソン>
リサ「え」
燐子「フルマラソン……」
リサ「え、フルマラソンって42.195km走るアレ……?」
友希那「それね」
燐子(良かった……本当に、早く引いておいて良かった……!!)
あこ「あ、そういえばはぐみが……」
北沢はぐみ『来週の日曜日、商店街主催のマラソン大会があるんだ! あこちんもどう? まだ参加者募集中だよ!』
あこ「……って言ってたよ。はぐみも参加してちゃんとフルで走るんだって」
リサ「な、なんで真夏にマラソン大会!? 流石にそれはキツイって!」
紗夜「大丈夫ですよ、今井さん」
リサ「え、さ、紗夜……?」
紗夜「サポートは任せてください。今日の帰りにでも北沢さんのところへ行って今井さんが参加する旨を伝えておきますから」
リサ「え、ちょ」
紗夜「ですから今井さんは安心してマラソン大会に備えてください。大丈夫ですよ、ちょうど1週間も期間があるんですから、きっと今井さんなら完走できますよ。ふふ、うふふふ……」
リサ「笑い方! 笑い方がなんかすごくいやらしいよ! 紗夜、そんなキャラじゃないでしょ!?」
紗夜「これが臨機応変というものです」
友希那「決まったわね。それじゃあリサはその大会に出場するということで。せっかくだから上位入賞も……」
リサ「タンマタンマ! それは絶対無理! 完走だけにさせて!」
友希那「……仕方ないわね」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 08:51:17.09 ID:37ATnayA0
紗夜「さて、それじゃあ最後は湊さんですね」
友希那「そうね」
燐子「段々と……変わったものが出てきていますね……」
紗夜「その理屈で言うと、湊さんはリーダーらしく最も大変な挑戦を強いられるということですね。……とても楽しみです」
友希那「紗夜? 何か言ったかしら?」
紗夜「いいえ、何も。さぁどうぞ、湊さん」
友希那「分かったわ。それじゃあ……これね↓1」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/24(金) 09:03:38.75 ID:k8t52nJGO
鉄骨渡り
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/24(金) 09:41:30.31 ID:m5DWlIDHO
ざわ…
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/24(金) 10:05:13.22 ID:3rFRJL8tO
ざわ…ざわ…
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 10:52:36.08 ID:37ATnayA0
<鉄骨渡り>
友希那「……? なにかしら、これ?」
リサ「さぁ……?」
紗夜「はて……?」
あこ「んー……?」
燐子「そ、それは非常に危険なので止めましょう……!」
友希那「そうなの?」
燐子「は、はい……命を落としかねないので……」
紗夜「そんなに危険なものなの?」
リサ「誰が入れたんだろ?」
燐子「多分……漫画が好きな人が……ふざけて、だと思います……」
友希那「ちなみにどんなものなの?」
燐子「え? えっと……簡単に言うと……綱渡り……です」
友希那「綱渡りって、サーカスでやるような?」
燐子「はい……簡単に言うと、そういうものです」
あこ「確かに高いところってちょっと怖いし、危ないね」
燐子(それもあるけど……もしこの鉄骨渡りがあの鉄骨渡りなら……また違った怖さが……)
友希那「けど、コレを引いた以上私も後には引けないわ。どこかに綱渡りが出来る場所がないかしら」
紗夜「流石ですね、湊さん。それでこそロゼリアのリーダーです」
燐子「えぇ……っと……」
燐子(出来る限り安全に体験する方法……そ、そういえば、弦巻さんが……)
燐子「じゃ、じゃあ、あの……弦巻さんのお家に……」
……………………
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 10:53:52.89 ID:37ATnayA0
――弦巻邸――
弦巻こころ「ようこそ、燐子!」
燐子「あの、急にロゼリアのみんなで押しかけて……ごめんなさい、弦巻さん……」
こころ「いいえ! あたしも何か楽しいことがないかしら、って思っていたからちょうど良かったわ!」
友希那「……弦巻さんのお宅、本当に大きいわね」
紗夜「ええ……」
燐子「それで、その……さっき伝えたアレは……」
こころ「ええ、あるわよ! こっちね!」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 10:55:54.79 ID:37ATnayA0
――弦巻邸 特設アスレチック――
リサ「え、なにこれ……ロッククライミングに、サーカスで見るような空中ブランコとか色々ある……」
友希那「綱渡りもちゃんとあるわね」
紗夜「ええ……それも、学校の屋上くらいの高さのものが」
あこ「わー、すっごーい! これどうしたの、こころ?」
こころ「薫が高所恐怖症だって言うから、それを楽しんで治すために作ったのよ!」
リサ「薫のためにって……」
紗夜「色々と桁違いですね……」
こころ「でも薫、空中ブランコだけでぐったりしてしまっていたわね。綱渡りなんてすっごく楽しいのに!」
こころ「それで、今日は友希那が綱渡りをしたいのよね?」
友希那「ええ。ちょっと挑戦しなければいけなくなったの」
こころ「分かったわ! ここなら好きに使って平気よ!」
友希那「ありがとう、弦巻さん」
燐子「ありがとうございます……弦巻さん……」
こころ「いいえ!」
友希那「それじゃあ早速挑戦ね」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 10:58:21.81 ID:37ATnayA0
――綱渡り スタート地点――
友希那(さて。アレを引いた手前……なんて下では言ったけど……)
――ヒュゥゥ...
友希那「昇ってみると……結構高いわね」
友希那(綱も足をキチンと乗せられるくらいに太いけど、実際に目の前にすると心もとないわ)
友希那(……キチンと命綱はある)
友希那(スタート地点とゴール地点、その屋根同士を繋ぐようにして、太いワイヤーが張ってある)
友希那(それに伸縮性のあるバンジー紐が括りつけられていた)
友希那(そしてその紐のもう片方側は、着せられたチョッキにこれでもかというほど強固に括りつけられている)
こころ「バンジージャンプも楽しめるようにしてみたの!」
友希那(と、笑顔だった弦巻さんの顔が思い起こされる)
友希那「…………」
友希那(正直に白状すると、こわい)
友希那(もしファミレスに戻れるのなら、『綱渡りくらい猫なら簡単に出来るわね』なんて呑気に考えていた自分を叱りたい)
友希那(猫の運動能力を甘く見るなと叱りたい)
あこ「友希那さーん! 頑張って下さーい!」
リサ「だ、大丈夫かな、友希那……」
紗夜「命綱もついていますし、きっと平気ですよ」
燐子「……押せ……押せっ……」
あこ「りんりん? 何か言った?」
燐子「う、ううん、なんでもないよ……?」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 10:59:28.50 ID:37ATnayA0
友希那(下からはみんなの声が聞こえる)
友希那(……あんなことを言った手前、後戻りをするという選択はない……わね)
友希那「やるしかない……」
友希那(私は覚悟を決めて、『そういえば今日、私はスカートを履いていたな』なんて今さらな現実逃避ともとれることを考えながら、綱に右足を踏み出した)
――ギシ
友希那「きゃっ……」
友希那(途端にギシリと綱が揺れる。想像以上に沈み込む)
友希那「これ絶対に無理でしょ……」
友希那(ゴール地点までは恐らく20メートルほど……だけど、無理だ)
友希那(一歩踏み出して、片足を綱に乗せるだけでも精一杯なのだ)
友希那(無理に決まってる)
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2018/08/24(金) 11:00:53.53 ID:8VtCCLkRO
鉄骨ですらあの長さならたわみ、軋むだろうに
綱でやるのは怖すぎる
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 11:02:03.08 ID:37ATnayA0
こころ「みんなあそこで止まっちゃうのよね。楽しいのにどうしてかしら?」
リサ「いや、そう思うのはこころだけじゃ……」
こころ「そうかしら? はぐみも真ん中くらいまでは『ぱーっ!』って走っていったわよ? そのあと落ちてしまったけど」
友希那「ぱーっと走る……」
友希那(弦巻さんの言葉を聞いて天啓が降りてくる)
友希那(そうだ。慎重になるからバランスを崩すのだ)
友希那(下を見るから必要以上に怖がってしまうのだ)
友希那(時には大胆に攻めることも人生に必要だわ。パッとやってパッと終わらせれば、案外簡単なことだったと後から思えるはずよ)
友希那(だから、ここは……)
友希那「思い切って……走る……!」
あこ「あ、友希那さん!」
燐子「そ、それは愚策じゃ……」
友希那(いや、何事も度胸と思い切りが肝心だ)
友希那(気合を入れて、ただ前だけを見て、私は左足を前にただ繰り出す)
友希那(ギシ、という感覚が左足にあった。それだけだ。そう思おう)
友希那(そして次は右足を前へ、右足が綱を踏めば、ただ左足を前へ)
友希那(平常心。それが大切だ)
友希那「言うなれば、今の私は猫よ……」
友希那「悠々と塀の上を走る猫!」
リサ「よ、よく分かんないけどすごい! ズンズン進んでる!」
紗夜「……走る、という割には腰も引けてますし、遅い足取りですが……」
こころ「友希那、すごいわ! だけどそれ、真ん中を過ぎると……」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 11:03:04.90 ID:37ATnayA0
友希那(いける、いける! 下を見ないように、ただ前だけを見据えて大胆に!)
友希那(考えてみれば、これも音楽に通じるものだ)
友希那(そう、これがきっと私にとって一番大切なものなんだ。自分を信じ、仲間を信じ、ただひたむきになること)
友希那(そうすれば目の前にある高い壁だって簡単に越え)
――ビュウゥゥ!
友希那「え――わっ!?」
友希那(思考が逸れた瞬間だった)
友希那(不意に右側から強い横風が吹き、私の身体を左へ流す)
友希那(あまりに突然なことだった)
友希那(気付いた時には先ほどまであった綱を踏む感覚がなく、フワリを内臓が浮くような感覚がして……)
友希那「きゃ、きゃあああぁぁぁ!!」
友希那(私は真っ逆さまにバンジージャンプを決行していたのだった)
……………………
30 :
正直カイジはそんなに知らんのです……ごめんなさい。
[sage saga]:2018/08/24(金) 11:06:17.89 ID:37ATnayA0
こころ「はぐみとおんなじ場所で落ちたわね!」
友希那「はぁ、はぁ……踏み外した瞬間、生きた心地がしなかったわ」
リサ「ちょ、大丈夫、友希那っ?」
友希那「平気よ……ちょっとさっき食べたものが返ってきそうなだけで……」
リサ「それ平気じゃないでしょ!」
あこ「友希那さん、綺麗に落ちましたね」
こころ「実はあの綱渡り、真ん中あたりに差し掛かると風が吹くようになっているの! ほら、あの柱が大きな送風機になっているのよ!」
友希那(弦巻さんが指さす方を見ると、確かにその柱の横面が開き、風を送り出す仕掛けになっているようだった)
こころ「はぐみもそのせいで落っこちちゃったのよね!」
友希那「な、何故それを最初に……言ってくれないのかしら……」
こころ「だってその方が面白いじゃない!」
友希那「私は……死ぬかと思ったわよ……」
燐子「け、怪我とかは……大丈夫ですか……?」
友希那「大丈夫よ……内臓が浮く感覚がまだ残ってるだけで……うぅ……」
こころ「怪我の心配なら平気よ! 怪我をしてしまったんじゃ笑顔になんてなれないもの!」
こころ「安全面は黒服の人たちがしっかり考えて作ってくれたってお父様が言っていたわ!」
紗夜「なら良かった。湊さん、立てますか?」
友希那「ええ……ありがとう、紗夜」
紗夜「では、もう1回コレをどうぞ」
つ【くじ引きボックス】と
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 11:09:18.11 ID:37ATnayA0
友希那「……え?」
リサ「ちょ、ちょっと、紗夜?」
紗夜「鉄骨渡り、失敗ですよね? それにすぐ終わるものは臨機応変、と言ったじゃないですか」
紗夜「でしたらもう一度引くべきでしょう」
リサ(これ、絶対挑戦内容がナンパだったの根に持ってるよ……)
友希那「ま、待って、確かにあなたの言うことも一理あると思うけど、それとこれとはちょっと違うんじゃ……」
紗夜「分かりました。ではやるかどうかは置いておいて、とりあえず引きましょうか」
友希那「い、いえ、紗夜の性格からして引いたからには必ずやるべきだと押し通すでしょう……?」
友希那「あこと燐子からも何か……」
あこ「あははは! 空中ブランコ楽しー!」
こころ「やるわね、あこ! あたしも負けないわよ!」
燐子「2人とも、あんまりはしゃぎすぎて……落ちないようにね……?」
友希那(こっちを無視して完全に遊んでる……!?)
リサ「あー、まぁ、引くだけ引いてみたら? 紗夜もそれで気が済むかもだし」
友希那「リ、リサまで……」
紗夜「流石今井さんです。話が分かりますね」
紗夜「さぁ、湊さん。早く引いてください。さぁ。さぁ……!」
友希那「う……わ、分かったわ……」
友希那(言い出したのは私だし……仕方ないわ)
友希那(ここは大人しく言うことを聞きましょう……)
友希那「それじゃあ……これで↓1」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/24(金) 11:11:22.36 ID:/uUxvLF+O
カフェで一日限定バイト
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 11:46:38.57 ID:37ATnayA0
<カフェで一日限定バイト>
友希那「……今度はまともね。でも急にバイトだなんて」
紗夜「あ、こんにちは、つぐみさん。ええ、突然すみません。実は湊さんが1日バイトをしたいと言っていまして……」
友希那「さ、紗夜!?」
リサ「行動早っ、もう電話してる!」
紗夜「いえいえ。ええ。それでは水曜日ですね。分かりました。伝えておきます。いえ。ありがとうございます。それでは……」ピッ
紗夜「では湊さん。水曜日に羽沢珈琲店でバイトを入れましたので、頑張って下さいね」
友希那「…………」
紗夜「今回のテーマは挑戦ですよね? 大丈夫ですよ、つぐみさんなら優しく手取り足取り教えてくれますから」
紗夜「それともアレですか? 水曜の1日だけじゃなく、他の日も何かしたいですか?」
友希那「……分かったわ、分かったからそのくじ引きボックスは置いて頂戴」
紗夜「湊さんならそう言ってくれると信じていました」
リサ「友希那、大丈夫?」
友希那「私が蒔いた種だもの……仕方ないわ」
友希那「やるからには迷惑をかけられないし、全力でやりきって見せるわ」
リサ(うーん……友希那が接客業って想像も出来ないけど……大丈夫かなぁ?)
……………………
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/24(金) 11:50:18.89 ID:37ATnayA0
――帰り道――
友希那「それじゃあ、今日から1週間は練習も休みにしてあるから、各自、決めたことに取り組むように」
友希那「あこはクッキーづくり」
あこ「はーい!」
友希那「燐子は竹細工」
燐子「は、はい……」
友希那「紗夜はナンパ」
紗夜「……ええ」
友希那「リサはちょうど1週間後のマラソン大会ね」
リサ「うん、まぁ……頑張るよ」
紗夜「湊さんもしっかり働いてくださいね。もしもつぐみさんを悲しませるようなことがあれば……例え湊さんが相手でも容赦はしませんから」
友希那「大丈夫よ。やるからにはしっかりやるわ。紗夜もしっかりナンパするのよ」
紗夜「ええ……分かっています」
リサ(しっかりナンパするのよ、って字面がメチャクチャだなぁ……)
あこ「えへへ、どんなクッキー作ろっかなぁー♪」
燐子「竹細工……そういう教室とかあるのかな……?」
リサ(あこと燐子はなんだかんだ楽しそうだなぁ。いいなー)
リサ「はぁ……マラソンかぁ……まぁダンスとテニスの延長だと思えば……」
リサ(いやでも素人がフルはダメでしょ……流石に花咲川の商店街主催じゃそんなに走らないだろーけどさ……)
リサ(とりあえず明日、はぐみに話を聞きに行こう……)
――――――――――――
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:08:57.59 ID:/LoRxaHr0
【月曜日】
――宇田川家 台所――
あこ「クッキーづくりかぁ。とりあえず作り方調べて見なくちゃ」
あこ「ネットで検索してみよっと」
あこ「必要なものは……バター、卵、砂糖、薄力粉に塩……え、お塩も必要なんだ!」
あこ「あーでもお塩はちょっとでいいみたいだから……よし、まずはお塩以外の材料買いに行こ!」
あこ「それとクッキー用の型抜きも買わなくちゃ。これは100均で揃いそうだなぁ」
あこ「んー……でも、お砂糖とかはちょっと嵩張っちゃうかも……」
宇田川巴「おはよー、あこ」
あこ「あ、おねーちゃん! おはよ!」
巴「どうしたんだ、朝から台所に立って?」
あこ「うん、実はね、ロゼリアの練習でクッキーづくりすることになったんだ」
巴「え、バンドの練習でクッキー?」
あこ「そうなんだ。昨日友希那さんがね、色んなことに挑戦だーって言って、くじを用意してきたの」
巴「あー……そういやアタシたちもなんか書いてくれって頼まれたなぁ」
巴「そんでクッキーづくりか」
あこ「うん! 完成したらおねーちゃんにもあげるね!」
巴「はは、そりゃ楽しみだ。アタシを看病してくれた時の料理、美味しかったしな。期待して待ってるよ」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:10:09.09 ID:/LoRxaHr0
あこ「あ、そうだ! ……あー、でも……うーん……」
巴「ん? どうしたんだ、あこ?」
あこ「うん、えっとね? クッキーづくりに必要な材料を一緒に買いに行って欲しいんだけど……」
巴「なんだ、そのくらいだったらいつだって手伝うぞ」
あこ「でもでも、今回のテーマは挑戦だから……やっぱりあこだけで準備から全部始めないとダメかなって……」
巴「あこ……」
巴(なんて立派な考えを持ってるんだ……流石アタシの妹だぜ)
巴(でもアタシもこの前のことがあるから何かしてやりたいんだよなぁ。んー……よし)
巴「あこの気持ちは分かったよ」
あこ「うん……ごめんね、おねーちゃん」
巴「いやいや。そしたらさ、あこ。クッキーづくりするところ悪いけど、アタシの買い物に付き合ってくれないか?」
あこ「え?」
巴「いやなー? ちょっとショッピングモールの本屋にさ、気になってる写真集があるから、それを見に行きたいんだよ」
巴「1人で行くのもちょっと寂しいし、あこが一緒に行ってくれるならアタシも嬉しいなー、って思ってさ」
あこ「おねーちゃん……」
巴「やっぱ、ダメか?」
あこ「ううん! そしたらおねーちゃんの買い物に付き合うよ! あこもクッキーの材料買わないといけないからちょうどいいし!」
巴「ははっ、ありがとな、あこ」
あこ「あこの方こそだよ! えへへ、おねーちゃんとお買い物〜♪」
巴「やっぱりあこは可愛いなぁ〜」
……………………
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:10:36.27 ID:/LoRxaHr0
――白金家 燐子の部屋――
燐子「竹細工……調べてみたけど……」
燐子「独学でやるのは……ちょっと大変そうだなぁ……」
燐子「やっぱり、そういう教室に通わないと……」
燐子「で、でも……知らない人ばっかりの場所に1人でって……」
燐子「うぅ……想像しただけでも……怖い……」
燐子(……だけど、変わるためには……必要なこと、なんだよね……)
燐子(竹細工の本を買って……独学でも頑張れば出来るかもしれない、けど……)
燐子(挑戦って……そういうこと、だよね……)
燐子「なら……勇気を出して……竹細工教室に行こうっ……」
燐子「そ、そうと決まれば……勇気が萎まないうちに、探さなきゃ……!」
燐子(『竹細工教室』と『花咲川』で検索してみよう……)
燐子「……あ、意外と近くにあるんだ……」
燐子「商店街の外れ……」
燐子「よ、よし……わたしも、頑張らなきゃ……!」
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:12:05.48 ID:/LoRxaHr0
――商店街の外れ――
燐子「ここ……だよね……?」
燐子(マップアプリで表示した住所と一致するし……きっとそう……だよね……)
燐子(趣き深い、っていうのか……ちょっと古い、っていうのか……絶妙に判断に迷う小さな平屋……)
燐子(でも外観は綺麗に手入れがされてるから……今も使われてそう……)
燐子(それによく見ると……横開きの玄関の扉の隅に『竹細工教室』って看板が……)
燐子「間違いない……よね……」
燐子「すー……はー……」
燐子「…………」
燐子「よ、よし……! い、行きます……!」
――コンコン、ガラガラ...
燐子「こ、こんにちは……! あの、わた、わたし……っ!?」
「…………」
燐子(扉を開けると、目の前には畳張りの広間がありました)
燐子(広さは12畳ほどでしょうか。入り口から見て右の奥に、竹細工の材料となる竹ひごや竹そのものが種々様々な太さや長さで束になって置かれていました)
燐子(左手側の奥には1メートル幅ほどの飾り棚があって、そこに竹で編まれたダルマさんや色んな動物が鎮座されています)
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:13:37.30 ID:/LoRxaHr0
燐子「…………」
燐子(それはいいのです。ここは竹細工教室なのですから。問題があるのは、その広間の真ん中で竹籠を手にしている方です)
燐子(陽に少し焼けた浅黒い健康的な肌。切れ長の瞳。短く刈り上げられた黒髪の頭部には商店街のロゴが入った手ぬぐいが巻いてあります。それらはそこまでは気になりません)
燐子(ただ、着用されていらっしゃる作務衣がはち切れんばかりの筋骨隆々で壮年なマッチョさんなのだけはどうしても気になってしまいます)
燐子(わたしは何をされてしまうのでしょうか。そんな変な思考が脳裏に巡ります)
燐子(あられもない想像が言葉の奔流となってとめどなく頭を巡ります)
燐子(NFOをプレイしている時以外でこんなにも饒舌な思考を持つことがあるんなんて思いもよりませんでした)
燐子「…………」
マッチョさん「…………」
燐子「あ、あの、えっと……」
「おや、あなたは……」
燐子「きゃぁっ!」
燐子(急に後ろから声をかけられてわたしは素っ頓狂な声を上げてしまいました)
燐子(びっくりして声の方へ振り返ると、そこには見知った顔がありました)
若宮イヴ「あ、やっぱりリンコさんです!」
燐子「え、え……!? わ、若宮さん……!?」
イヴ「はい! どうもこんにちは!」
燐子「あ、は、はい……こんにちは……」
……………………
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:14:48.67 ID:/LoRxaHr0
――氷川家 紗夜の部屋――
紗夜「…………」
紗夜「うーん……」
紗夜「……うーん……」
――コンコンガチャ
氷川日菜「おねーちゃーん! おっはよー!」
紗夜「……ええ、おはよう日菜」
日菜「あれ、なんかテンション低いね? どうしたの?」
紗夜「……色々あるのよ」
日菜「ふーん? あ、その<ナンパ>って書いてある紙……」
紗夜「あ、これは……」
日菜「友希那ちゃんに頼まれてあたしが書いたやつだ! えへへ、おねーちゃんがそれ引いたんだ!」
紗夜「…………」
日菜「ん、どしたのおねーちゃん? なんかこう、視線の温度が大分下がったよ? そんな目で見られたらゾクゾクしちゃうよー?」
紗夜「日菜、ちょっとこっちへいらっしゃい」
日菜「うん、いいよ。なーに、おねーちゃ」
紗夜「喰らいなさい」
日菜「え、痛っ、痛たたた! なんであたし急にグリグリ攻撃されてるの!?」
紗夜「私の精神的な苦痛はこれの比ではないわ」グリグリ
日菜「ちょ、待って待って本当に痛いってばおねーちゃーん!」
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:16:05.52 ID:/LoRxaHr0
―しばらくして―
紗夜「ふぅ、今日のところはこれくらいにしておきましょう」
日菜「うえーん……おねーちゃんが無理矢理痛いことしてきたぁ……」
紗夜「語弊がある言い方はやめなさい」
日菜「でもなんだか途中からキモチよくなって……」
紗夜「やめなさい」
日菜「はーい。じゃあ、おねーちゃんってばナンパしなきゃいけなくなっちゃったんだね」
紗夜「ええ。あなたのせいでね」
日菜「あたしのせいじゃないよ〜。まさかそれをおねーちゃんが引くだなんてちょっとしか思ってなかったもん」
紗夜「ちょっとは思っていたのね」
日菜「うん! きっと面白いことになるな〜って!」
紗夜「どうやらお仕置きが足りていないようね」
日菜「わ、ごめんごめん、冗談だって!」
紗夜「まったく……あなたのせいでどれだけ私は悩んでいると……」
日菜「あ、それじゃあさ? お詫びって言ったらなんだけど、おねーちゃんのナンパ手伝ってあげるよ!」
紗夜「それは今回の趣旨に……」
日菜「そんなこと言っちゃって〜、おねーちゃん1人じゃ絶対にナンパなんて無理だよ〜」
紗夜「……まぁ、確かにそうね」
日菜「でしょー? だからさ、あたしが薫くんに『ナンパの仕方を教えて』って頼んであげるよ!」
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:17:22.95 ID:/LoRxaHr0
紗夜「瀬田さんに?」
日菜「うん! 薫くん、すごいんだよ〜。学校で声かけられたら面白いことばっか言ってさ、みーんなにキャーキャー言わせちゃうんだもん」
紗夜「……けど、それは女性向けのものじゃない。男性にかけるものではないでしょう」
日菜「え? ナンパって可愛い女の子に『お茶しな〜い?』って声かけるものでしょ?」
紗夜「え?」
日菜「あれ〜? 千聖ちゃんはそう言ってたけどなぁー」
紗夜「…………」
紗夜(日菜ったら、ナンパという言葉そのものを勘違いしていたのね……)
紗夜(まぁ……その方が私としてもありがたいわ)
紗夜「いいえ。白鷺さんの言う通りよ」
紗夜「日菜、悪いけれど、瀬田さんにナンパについてご教授頂けないか、聞いてもらってもいいかしら」
日菜「うん、いーよ!」
紗夜「ありがとう。助かるわ」
日菜「えへへ、じゃあお詫びに今度デートしよーよ、デート!」
紗夜「気が向いたらね」
日菜「もー、おねーちゃんのいけず〜。……まぁいいや、あとで脅せば」
紗夜「日菜? 何か言ったかしら?」
日菜「ううん! それじゃあちょっと聞いてみるね!」
紗夜「ええ」
……………………
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:18:46.62 ID:/LoRxaHr0
――商店街 北沢精肉店――
リサ「さってと……アポなしで来ちゃったけど、はぐみはいるかなぁ?」
はぐみ「いらっしゃいいらっしゃい! 今日は豚肉が安いよー!」
リサ「おっ、いたいた。良かったぁ〜」
はぐみ「あ、リサさん! いらっしゃいませ!」
リサ「こんにちは、はぐみ。今日はお店番なの?」
はぐみ「うん! 夕方前くらいまでだけどね! リサさんはお昼ご飯の材料買いに来たの? それなら豚さんがおすすめだよ!」
リサ「あー、ごめんね。買い物じゃないんだ。ちょっとマラソン大会について聞きたくてさ」
はぐみ「マラソン大会? もしかしてリサさんも出たいの?」
リサ「うん、まぁ……そんな感じ?」
はぐみ「ホント!? やったー!」
リサ「ちょ、そんなに喜ぶこと?」
はぐみ「うん! だって、みーんな参加してくれないんだもん。こころんは乗り気だったけど、お家の都合でその日は忙しいみたいだし……」
はぐみ「えへへ、でもリサさんが一緒なら楽しそうだね!」
リサ「そっかそっか、それならよかったよ。あ、それでその大会のことを聞きたいんだけど……後にした方がいいかな?」
はぐみ「ううん、多分ヘーキ! とーちゃーん! ちょっと店番変わってー!」
はぐみ父「おーぅ、すぐ行くからちょいと待ってなー!」
はぐみ「うん、ヘーキみたいだね!」
リサ「なんかごめんね、急かしちゃって」
はぐみ「ううん! もう少し待っててね!」
リサ「あ、それじゃあコロッケ1つ貰おうかな? はぐみん家の、すっごく美味しいし」
はぐみ「はーい、毎度あり!」
……………………
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:20:25.97 ID:/LoRxaHr0
――北沢家 はぐみの部屋――
リサ「それでさ、マラソン大会のことなんだけどさ」
はぐみ「うん」
リサ「距離ってどれくらい走るの?」
はぐみ「フルだよ!」
リサ「……フルって、もしかして42.195キロ……?」
はぐみ「そうだよ!」
リサ「……マジ?」
はぐみ「マジマジ! えっとね、商店街からぐる〜って街を回っていくと、大体10kmちょっとになるんだ! だから、それを4周!」
リサ「……マジかぁ」
はぐみ「うん!」
リサ「あのさ、初心者がフルマラソンって……完走できると思う?」
はぐみ「え、うーん……半年くらい練習したり、普段部活でずっと身体を動かしてれば……多分?」
リサ「……オッケー、まず無理だってことが分かったよ。……どーしよ」
はぐみ「あ、でも大丈夫だよ、リサさん!」
リサ「え?」
はぐみ「はぐみはフルで走るけどね、慣れてない人の為に半分だけ走るハーフマラソンっていうのもあるんだ!」
リサ「半分だけってことは……街を2周するってこと?」
はぐみ「うん! それにね、普通はマラソン大会ってね、フルマラソンとハーフマラソンで制限時間が違うんだ」
リサ「うん」
はぐみ「だけど花咲川のマラソン大会は、フルマラソンもハーフマラソンも制限時間が一緒なんだ! だからハーフでも5時間以内にゴールすれば完走なんだよ!」
リサ「へぇ、そうなんだ」
はぐみ「そうなんだ! だからね、マラソンが初めてならハーフマラソンの方にエントリーすればいいんだよ!」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:21:12.10 ID:/LoRxaHr0
リサ「そっかー、それならアタシでも……あーでも、それでいいのかなぁ……?」
はぐみ「はぐみはいいと思うよ! 無理して完走できないより、しっかりコツコツと頑張れることを頑張る方が楽しいもん!」
はぐみ「それに怪我しちゃったら大変だもんね!」
リサ「……確かにそうかもしれないね」
はぐみ「でしょでしょ!」
リサ「うん、それじゃあアタシ、今回はハーフマラソンの方に挑戦してみるよ」
リサ「参加の手続きとかってどうすればいいのかな?」
はぐみ「はぐみが父ちゃんに言っておくからヘーキだよ!」
リサ「そっか。それじゃあ、悪いけどお願いしちゃうね」
はぐみ「うん!」
リサ「よっし、そうと決まれば、アタシもちゃんと身体動かしとかないと……」
はぐみ「リサさん、普段は運動とかってしてるの?」
リサ「一応ダンス部とテニス部やってるよ〜。……とは言っても、最近はロゼリア優先だからほぼ幽霊部員だけど」
はぐみ「んー、それじゃあはぐみと一緒に練習しない?」
リサ「え、いいの? 初心者のアタシとじゃはぐみの練習にならないんじゃない?」
はぐみ「大丈夫だよ! はぐみ、ソフトボールでもたっくさん走ってるもん!」
はぐみ「それにリサさんと一緒の方がずっと楽しいもんね!」
リサ「ふふ、そっか。それじゃあお言葉に甘えちゃおうかな?」
はぐみ「うん! ドーンと任せてね!」
リサ「ありがとね、はぐみ」
はぐみ「どういたしまして!」
……………………
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/25(土) 12:34:23.96 ID:/LoRxaHr0
ハッピーバースデーリサ姉
去年の限定水着リサ姉が欲しいです
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/25(土) 15:01:16.04 ID:/64BrRgO0
乙! そういえば復刻今日からか……
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/25(土) 15:29:28.80 ID:QHVA/jMPo
星3しか引けなかった
まだ続くよな
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/25(土) 20:17:26.28 ID:PjBQBQno0
面白い
前バンドリのss書いてた?
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:17:51.00 ID:9C+yLBRQ0
>>49
ありがとうございます
ちょこちょこバンドリSSは書いてますよ
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:19:24.31 ID:9C+yLBRQ0
――湊家 友希那の部屋――
友希那「さて……カフェでのバイト、ね」
友希那「そんなに難しいことをやるとは思わないけれど、やるからには何事にも全力を注ぐのが私たちのやり方」
友希那「それに羽沢さんに迷惑をかける訳にはいかないし、そんなことになったら紗夜に何をされるか分かったものじゃないわ」
友希那「……ここは多少なりとも、カフェのアルバイトについて調べておく必要があるわね」
友希那「こんな時のためのスマートフォンだもの」
友希那「早速……カフェ、それから……うん?」
友希那「…………」
友希那「猫カフェ、ね」
友希那(検索候補に出てきてしまったから目に付いたけど、正直猫カフェってどうなのかしら)
友希那(猫というのは孤高の野良の気高さこそが至高)
友希那(カフェという空間で世界が完結している猫たちは何かが違うと思って今まで見てこなかったけれど……)
友希那「まぁ、これも挑戦かしらね。アルバイトのことが何か分かるかもしれないし」
友希那「猫カフェで検索、っと」
友希那「……ふむ」
友希那「……ふむふむ」
友希那「…………」
友希那「ふふ……可愛いわね」
友希那「へぇ、長毛種ばかりのお店もあるのね」
友希那「メインクーン、ラグドール、アメリカンカール、クリリアンボブテイルまでいるの……?」
友希那「随分と高級そうなお店ね。他には……えっ、ニャバクラの動画……?」
友希那「…………」
友希那「……けしからないわね。こんな高級な猫ちゃんが、帰ろうとすると足元にまとわりついて帰らせてくれないなんて」
友希那「これは深く調べていく必要があるわ」
……………………
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:21:44.95 ID:9C+yLBRQ0
――竹細工教室――
燐子「そ、それじゃあ……この方がここの先生で……」
イヴ「はい! お師匠です!」
マッチョさん改めお師匠「…………」ペコリ
燐子「あ、ど、どうも……」
イヴ「お師匠はカモクな職人さんです! 言葉ではなくワザで語る、これぞ職人芸ですね!」
お師匠「…………」ポリポリ
燐子(居心地悪そうに頬を掻いてる……)
燐子(多分、だけど……この人……わたしと同じ性格なのかな……?)
燐子「それで、その……若宮さんはどうしてここへ……?」
イヴ「日本の文化を学ぼうと思っていたら、偶然ここを見つけたんです!」
イヴ「竹細工、とてもセンサイで美しいです! 私もやってみたいと思って、この前お師匠に弟子入りしたんですよ!」
燐子「な、なるほど……」
イヴ「リンコさんもですか?」
燐子「え、えと……わたしは……その……」
お師匠「…………」ジー
燐子(お、お師匠さんがすごくこっちを見てる……!)
燐子(悪い人じゃないのは……なんとなく分かるけど……でも睨まれてるみたいでやっぱり怖い……)
イヴ「どうかしましたか?」
燐子「え、えっと、お師匠さん? がすごくこっちを見てて……」
イヴ「あ、お師匠、緊張されてるんですか?」
お師匠「…………」フイッ
イヴ「これが日本のオクユカシサ、というものですね!」
燐子(筋骨隆々の男の人に……そこまで奥ゆかしさは感じないよ……?)
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:22:22.44 ID:9C+yLBRQ0
イヴ「リンコさんが理由を仰らないのもそういうことですね?」
燐子「え、えっと……」
イヴ「大丈夫です! 私は理解しました! さぁさぁリンコさん、一緒に頑張っていきましょう!」
燐子「……は、はい……」
イヴ「ブシドー!」
お師匠「……ブシドー」
燐子(あ、今日初めて喋った……すごいバリトンボイスで……ブシドー、って……)
燐子(やっぱり悪い人じゃない、よね……?)
イヴ「ではお師匠、本日もよろしくお願いします!」
お師匠「よろしく……お願いします」
燐子「あ、えと……よろしくお願いします……?」
……………………
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:24:17.41 ID:9C+yLBRQ0
――氷川家 リビング――
日菜「あ、薫くんからメッセージ来たよ」
紗夜「瀬田さんはなんて?」
日菜「んっと……今日は先約があるから出来ないけど、明日なら大丈夫……だって!」
紗夜「そう。では明日、瀬田さんに教えてもらうことにしましょう」
日菜「うん! それじゃあそういう風にメッセージ送っとくね!」
紗夜「……というか、もう私から瀬田さんに連絡をすればいいんじゃないかしら」
紗夜「最初は普段面識のある日菜からの方がいいと思ったけど、もうあなたを介する必要はないわよね」
日菜「そ、そんな……おねーちゃん、ヒドイ……! あれだけ痛いことしておいて、用済みになったらすぐに捨てちゃうなんて……!」
日菜「おねーちゃんのために痛いのすっごく我慢して、おねーちゃんの望み通りにしてあげたのに……ぐすん」
紗夜「だからあなたは言葉をちゃんと選びなさい……」
日菜「あーあ、このままだとあたし……リサちーとか友希那ちゃんにぃ? 学校でうっかりこのこと話しちゃうかもなぁ……」
紗夜「……分かったわよ。ありがとう、日菜。あなたのおかげでスムーズに挑戦が達成できそうよ」
日菜「えへへ〜。でももう一声欲しいなぁ〜? じゃないと今度はあこちゃんに言っちゃうかも……」
紗夜「やめなさい……純粋な宇田川さんに余計なことを言うのだけはやめなさい……」
日菜「んー、どうしよっかなぁ〜?」
紗夜「分かった、分かったから……今日はあなたのワガママに付き合ってあげるから」
日菜「わーい、おねーちゃん大好き〜!」
紗夜「はぁ……まぁ、手伝って貰ったことは確かだものね……仕方ないわ」
日菜「じゃあじゃあ、まずはお買い物行こっ! それから外で一緒にランチして、それからそれから……」
紗夜「はいはい。逃げたりしないから、もう少し落ち着きなさい」
――――――――――――
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:28:03.16 ID:9C+yLBRQ0
【火曜日】
――宇田川家――
あこ「昨日はつい1日中おねーちゃんとお出かけしちゃった……」
あこ「でもちゃんと材料は買えたから、今日から本格的にクッキー作らなくっちゃ!」
あこ「えっと、バターは室温になってるよね。目安は……指がスッと埋まるくらい?」
あこ「どれどれ……」
バター<グニャア...
あこ「わー、なんか変な感覚。もっかいやってみよ」
バター<グニャアッ...!
あこ「……ちょっと癖になりそう」
バター<グニャア〜...!
あこ「っとと、遊んでちゃダメだよね」
あこ「えーっと、昨日読んだ記事だと事前の準備が大事って書いてあったよね」
あこ「材料の確認……お砂糖よし、お塩よし、卵は溶いてある、薄力粉もふるいにかけてある……」
あこ「うん、オッケーだね!」
あこ「そしたらこのバターをボウルに入れて……ホイッパー? ああ、あのリサ姉がエプロン着けながら持ってそうなやつ!」
あこ「えーっと……あったあった! これでバターをぐちゃぐちゃってやってクリーム状にする、っと。その途中に2回に分けてお砂糖を投入……」
あこ「よーし、えいや!」グチョ
あこ「そいや!」グチャグチャ
あこ「…………」グリグリ
あこ「……ぐーっちゃぐーちゃぐーちゃぐ〜っちゃ〜♪」グリグリグリグリ
あこ「あ、そろそろお砂糖入れた方がいいかな」サーッ
……………………
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:30:17.89 ID:9C+yLBRQ0
――竹細工教室――
燐子「な、なるほど……じゃあこの竹細工教室はほとんど趣味みたいなもので……」
イヴ「はい! お師匠の本職は竹取さんらしいです!」
燐子「だから参加費も安いんですね……」
イヴ「ですが、しっかりと教えてくれますよ!」
燐子「そう、ですね……昨日もとても丁寧に、竹の種類や……編み方の基本を教えてくれました……」
燐子(ただ……わたしと同じかそれ以上に……口数は少なかったな……)
イヴ「えへへ……」
燐子「……? 若宮さん、どうかしたんですか……?」
イヴ「あ、はい。ちょっと部活見学の時を思い出していました」
燐子「部活見学……氷川さんと一緒に回った……?」
イヴ「はい! またこうしてリンコさんと一緒に何かに打ち込める、と思うと、嬉しいんです」
イヴ「私がこの教室を見つけてからまだちょっとしか経っていませんけど、ずっと私とお師匠以外の人は来ませんでしたし……」
燐子「そ、そうなんですか?」
イヴ「ええ、そうなんです。だからちょっとだけ寂しかったんです」
イヴ「でも今日からはリンコさんが一緒ですから! イッキトウセンのリンコさんがいれば百人力です!」
燐子「い、一騎当千……わ、わたしはそんな大層な人間じゃ……」
イヴ「ご謙遜なさらないでください! えへへ、今日もよろしくお願いしますね」
燐子「は、はい……よろしくお願いします……」
燐子(でも……わたしも若宮さんが一緒にいてくれると心強くて……なんだかちょっと楽しいな……)
――ガラ
お師匠「……おはようございます」ペコリ
イヴ「あ、お師匠! おはようございます!」
燐子「お、おはようございますっ……」
燐子(……まだお師匠さんはちょっと怖いけど……)
……………………
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:31:48.89 ID:9C+yLBRQ0
――商店街――
紗夜「……そろそろ約束の時間ね」
瀬田薫「やぁ、紗夜ちゃん」
紗夜「あ、どうも。こんにちは、瀬田さん」
薫「こんにちは。すまない、待たせてしまったようだね」
紗夜「いえ。お願いをする立場で瀬田さんを待たせる訳にはいきませんから、少し早く来ていたんです。気にしないで下さい」
薫「ふふ、それだけ私との逢瀬を待ちわびていた、ということかな? ああ、私はなんて罪な人間なんだ……」
紗夜「…………」
紗夜(分かってはいたけれど、やっぱり瀬田さんは独特な感性を持っているのね)
薫「それで、今日は……可愛い子猫ちゃんをお茶に誘う練習、だったね」
紗夜「ええ。休日に申し訳ありませんが、ご教授をお願いします」
薫「いいや、謝る必要なんてないさ。私を求めるお姫様の声があれば、例え私は世界の果てにだって行くのだから……」
紗夜「は、はぁ……」
薫「それに紗夜ちゃんとこうして何かをするのは、大型会場でライブをやった時以来じゃないか」
※もっと!ガルパライフ 第61話「ギター組in東京」
薫「ふふ……子猫ちゃんとの逢瀬を待ちわびていたのは、むしろ私の方だったかもしれないね」
紗夜「……なるほど」
紗夜(次から次へと歯の浮くようなセリフの数々を恥ずかしげもなく決め顔で喋る……)
紗夜(これがプロのナンパ師というものなのね)
薫「紗夜ちゃんも思い出してくれたかい、あの儚い時間を……」
紗夜「いえ、特には」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:33:24.93 ID:9C+yLBRQ0
紗夜「それよりもお誘いの手ほどきをお願いします」
薫「釣れないお姫様だね。だがそれもいいさ」
紗夜「はぁ」
薫「では……おや、ちょうど知った顔があそこにいるね」
紗夜「あれは……牛込さんですか」
薫「ああ、りみちゃんだ。彼女をお茶に誘ってみよう。さぁ、紗夜ちゃんもついてきてくれ」
紗夜「分かりました」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:35:18.65 ID:9C+yLBRQ0
牛込りみ「うぅ、あっつい〜……。どこか涼しいところで休憩したいなぁ……」
薫「やぁ、りみちゃん」
りみ「あ、薫さん。こんにちは」
薫「ああ、こんにちは」
紗夜「こんにちは、牛込さん」
りみ「こんにちは。紗夜先輩も一緒なんですね」
紗夜「ええ、まぁ」
薫「りみちゃんはどうしたんだい?」
りみ「私はちょっと、お母さんにおつかいを頼まれたんです」
薫「それでこの炎天下の中を歩いて来たんだね。大丈夫かい? さっきから少し俯きがちだったけれど……」
りみ「えと、大丈夫です。ちょっと暑いなって思ってただけで……」
薫「本当かい? ちょっと顔を見せてごらん、りみちゃん……」ズイッ
りみ「えっ、えっ!?」
紗夜(相手の顔に自分の顔を近づけて囁く……なるほど)
薫「自分では気付かないうちに体力がなくなっていることもあるからね……私が見てあげるよ」
りみ「か、薫さん……その、近い、です……」
薫「目を逸らさないで。大丈夫。ほら……私に子猫ちゃんの可愛い顔を見せてごらん……?」
りみ「う、うぅ……」
紗夜(行動はやや強引に、けれど言葉は相手を気遣うように優しく……なるほど)
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:36:01.57 ID:9C+yLBRQ0
薫「やっぱり顔が赤いね。このまま歩いていては倒れてしまうんじゃないかい?」
りみ「それは……薫さんが近くて……」
薫「おっと、失礼したね。りみちゃんがあまりに可憐だから吸い寄せられてしまったよ」
りみ「そ、そんなこと……」
薫「君のような可憐なお姫様がもし倒れでもしたら……そう思うだけで私は心苦しいんだ」
薫「それにもしりみちゃんの調子が悪くなったら、お母様もきっと悲しむだろう?」
りみ「お母さんが……」
紗夜(時に優しく、時に両親を盾にして良心を呵責……なるほど)
薫「だから、急ぎの用じゃなければ、私をりみちゃんの休憩の話し相手にさせてくれないかい?」
薫「ほら、あそこの喫茶店。あそこの珈琲と紅茶はとても美味しいと千聖が言っていたんだ。あそこならきっと涼しいよ」
薫「1人で入るには勇気がいるだろうし……どうだろう。一緒に少し涼んでいかないかい?」
りみ「え、えっと……それじゃあ少しだけ……」
薫「ありがとう、りみちゃん」
紗夜(あとは勢いで丸め込む……と)
紗夜「……見事なナンパね」
紗夜(けど、私にこれは絶対無理だわ)
……………………
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:38:15.57 ID:9C+yLBRQ0
――公園――
リサ「おーい、はぐみー!」
はぐみ「あ、リサさん! おはよー!」
リサ「うん、おはよっ。ごめんね、少し遅れちゃって」
はぐみ「ううん! はぐみも今来たとこだよ!」
リサ「そっかそっか。なら良かったよ」
はぐみ「あ、リサさん、そのシューズ……」
リサ「うん。昨日はぐみに言われた通り、スポーツショップに行って買ってきたんだ」
リサ「いやー、すごいね。靴変えるだけですっごく歩きやすくなったよ」
はぐみ「でしょー! ちゃんと店員さんに話して、しっかり自分に合ったシューズを履くのがマラソンの第一歩なんだよ!」
はぐみ「それに、ちゃんと自分に合ったやつじゃないと怪我しやすくなっちゃうからね!」
リサ「だね〜。早速アドバイスしてくれてありがと、はぐみ」
はぐみ「ううん!」
リサ「それじゃあ今日はよろしくね」
はぐみ「うん!」
リサ「そしたらまず何をやればいい?」
はぐみ「まずはね、準備体操! スポーツは準備体操に始まり整理運動に終わるんだよ!」
リサ「整理運動……あ、運動後のストレッチみたいな?」
はぐみ「そう、それ!」
リサ「ん、りょーかい。それじゃあまずは準備体操だね」
はぐみ「うん! しっかりやらないと、身体がキチンと動いてくれないからね」
リサ「オッケー。よーし、頑張るぞー」
はぐみ「おー!」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:40:00.42 ID:9C+yLBRQ0
―しばらくして―
はぐみ「最後はゆっくり深呼吸して……」
リサ「すー……はー……」
はぐみ「スー……ハァー……」
はぐみ「……はい、準備体操おしまい!」
リサ「やー、こんなにしっかり準備体操したのって小学校以来かも」
リサ「なんだか身体がちょい軽くなったような気がするよ」
はぐみ「ダンスとかテニスする時はしないの?」
リサ「んー、一応するはするんだけど……流れ作業っていうか、バッチリやるってことがないんだよね……」
リサ「でもキチンとやればちゃんと効果があるんだし、これからはしっかりやらなくっちゃね」
はぐみ「うん!」
リサ「次はどうすればいいかな?」
はぐみ「準備体操のあとはウォーキング!」
はぐみ「ソフトボールでもね、いきなり思いっきりボールを投げると、肩と肘がすごく痛くなっちゃうんだ」
はぐみ「だからキャッチボールも近い距離からやって、ちょっとずつ距離を離していくんだよ」
リサ「へぇ〜」
はぐみ「マラソンもいきなり思いっきり走っちゃったら怪我しちゃうから、最初は歩くところから始めるんだ!」
リサ「なるほどね」
はぐみ「それじゃあ行こっか、リサさん!」
リサ「はーい。よろしくね、はぐみ先生っ」
……………………
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/26(日) 12:42:54.91 ID:9C+yLBRQ0
――都内某所 猫カフェ前――
友希那「……ついに来てしまったわ」
友希那(猫カフェについて調べていたら、とうとう興味が抑えきれなくなってしまった)
友希那(そもそも猫カフェは私の持つ美学に反すると思って避けていたのだけれど……)
友希那(いや、でも何事も食わず嫌いはよくないわ。何かを評価するのであれば、実際にそれに触れてみなければ正当な判断は下せないハズよ)
友希那(それにこれは……言ってみれば職場体験)
友希那(ネットで調べるよりも、実際にカフェで店員さんの動きを見て学ぶ方がずっと身になるわ)
友希那(だから、決して、カフェのアルバイトについて知ろうとしていたことをうっかり忘れていた訳ではない)
友希那(昨日終日猫カフェの動画巡りをしていたのもそういうことだから)
友希那(その辺りは勘違いしないで欲しい)
友希那「よし」
友希那(誰にするでもない言い訳を心の中で唱えたあと、私は猫カフェの扉を開く)
友希那「……あら、お出迎えかしら」
友希那(そして一番に目に付いたのは受付カウンターの上に大人しくお座りしている猫ちゃん)
友希那(私が声をかけると、やや気だるそうな声で鳴き返してくれた)
スタッフ「いらっしゃいませー」
友希那(それからすぐに、人間のスタッフさんが声をかけてきた)
友希那「すみません、初めてなんですけど」
スタッフ「あ、はい。ご来店ありがとうございます。猫カフェのルールなどは……」
友希那「その辺りについては昨日調べてきたので……まずは手の消毒ですよね」
スタッフ「ええ、ありがとうございます。当店の料金は退店時の清算ですので……」
友希那(スタッフさんと話をしている間も、カウンターに座る猫ちゃんはあくびをしては私を見たり、スタッフさんを見たり、何もない空間をぼんやりと見つめていた)
友希那(なるほど……これが接客というものなのね)
……………………
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/27(月) 12:10:56.15 ID:npNa0ncm0
――宇田川家――
あこ「んっと、バターにお砂糖と卵と薄力粉、それにお塩をひとつまみ入れたクッキー生地……」
あこ「冷蔵庫で30分くらい寝かせるって書いてあったけど、そろそろいいかな?」ガチャ
あこ「わー、ひんやりしてる……これがあのクッキーになるんだ」
あこ「次の工程は……めん棒で生地を叩いて柔らかくして、薄く伸ばす、っと」
あこ「えっと、めん棒めん棒……あれ、無い?」
あこ「お鍋の棚……にも無い」
あこ「うーん……どうしよう……」
あこ「何かめん棒の代わりになるもの……あっ」
あこ「ドラムスティック……細いけどいけるかな?」
あこ「代わりになりそうなのって他に無いし……確かまだ使ってない新品のが部屋にあったはず……」
あこ「……でもドラムスティックをお料理に使っちゃっていいのかな……。友希那さんと紗夜さんに見られたらすごく怒られそうな気がするけど……」
あこ「うーん、でも他に代わりになるものが……」
あこ「…………」
あこ「……よし、とりあえず使ってみよう!」
あこ「さあやちゃんも『めん棒をスティックに持ち替えて……』って言ってたし、きっと平気だよね!」
あこ「そうと決まればスティック持ってこよっと!」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/27(月) 12:11:49.80 ID:npNa0ncm0
―スティック回収後―
あこ「よーし、これで生地を叩いて柔らかくしよう!」
あこ「せーの、」
あこ「はいっ、はいっ、はいっ!」タンタンタタタン
あこ「そりゃっ、うりゃー!」タタタタタタタン
あこ「……なんだか楽しくなってきちゃった!」タンタンタンタン
あこ「ふふふ……我の闇の剣はクッキーに飢えておる……」タンタンタタタン
あこ「今宵の生贄は……貴様だぁ〜!」タタタタタンタンタタタンタン
巴「あこ? 何してんだ?」
あこ「クッキーづくり!」タンタンタタタンタンタタタン
巴「ん、そっか。そういやそうだったなぁ」
巴(……でもクッキーってあんな風に作るもんだっけ?)
あこ「漆黒の聖堕天使が纏いしこの闇の力で……えっと、シュババーン! ってなるがいい!」タタタンタンタタタンタンタタンタンタタタン
巴「まぁ、あこが楽しそうだし……いっか」
……………………
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/27(月) 12:13:46.55 ID:npNa0ncm0
――羽沢珈琲店――
薫「――という風に、こころが美咲をベッドへと押し倒すことになったのさ」
りみ「へぇ……美咲ちゃん、大変そうだなぁ……」
紗夜「個室に2人っきりでいて押し倒す……瀬田さんの話を聞かずにその場面を目撃したら、私なら風紀の乱れだと注意していますね」
薫「ふふ……シェイクスピアもこう言っている。『恋は盲目で、恋人たちは恋人が犯す小さな失敗が見えなくなる』と。つまりそういうことさ」
りみ「薫さんって博識ですよね。こういう時にパッと格言が出るのってすごいなぁ」
紗夜「言葉を覚えているだけ、というような気もしますが……」
薫「は、はは……なに、想像の翼はみんなが自由に広げられるんだ。私に対する印象は子猫ちゃん1人1人のものなのさ……」
りみ「あっ、もうこんな時間……そろそろおつかいに行かなくちゃ」
薫「おや、気が付いたら随分と時が過ぎていたね。ふふ、りみちゃんと一緒だったからかな……楽しい時間というものは早く過ぎ去ってしまうものだ」
りみ「そ、そんなことないですよ……えへへ」
紗夜(……別れ際まで気障なことを言うんですね。牛込さんもいつの間にか満更じゃなさそうな表情をしているわ)
紗夜(これがプロの女たらし……)
りみ「えっと、お茶に誘ってくれてありがとうございました。実は私、さっきまで暑くてフラフラしてたから……やっぱり休んでよかったかもしれないです」
薫「いいや、こちらこそ。楽しい時間をありがとう。りみちゃんを手伝えないのが残念だけど……」
りみ「い、いえいえ! それじゃあ私は行きますね。さようなら、薫さん、紗夜先輩」
紗夜「はい。気を付けてくださいね?」
薫「もし辛くなったらいつでも連絡をして欲しい。何をおいてもりみちゃんの元へ駆けつけるよ」
りみ「はい、ありがとうございます。それじゃあ……」
紗夜「ええ、また」
薫「一刻の別れだ……また会おう、りみちゃん」
りみ「はい」
――カランコロン...
薫「…………」
紗夜「……行ってしまいましたね」
薫「ああ。ふふ、りみちゃんはいつでも可憐な子猫ちゃんだね」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/27(月) 12:15:54.23 ID:npNa0ncm0
薫「さて、参考になったかい? お姫様をお茶に誘うというのを私なりに実演して見せたが」
紗夜「一言で言えば、見事なお手前だったと思います」
薫「そうかい?」
紗夜「はい。もしも瀬田さんが男性であれば、女性の敵だとしてしょっぴいていたと思います」
薫「ふふ……それだけ私の美しさが罪という訳だね。ああ、儚い……」
紗夜「しかし、参考になったかと言えば微妙ですね」
薫「おや、そうなのかい?」
紗夜「はい。瀬田さんなら息をするように気障な言葉を吐いたって様になりますが、私がそんなことをしてもただ滑稽なだけでしょう」
紗夜「そういったお誘いの仕方は私には似合わないわ」
紗夜(まぁ、そもそもナンパなんていう行動自体が私にそぐわないんだけど)
薫「なるほど。確かに行動だけを見ればそうかもしれないね。だけど、紗夜ちゃん」
紗夜「はい?」
薫「一番大切なのは言葉や行動じゃない。気持ちだよ」
紗夜「気持ち、ですか」
薫「そう。私が一番に思っているのは、目の前の子猫ちゃんを楽しませること」
薫「もしもある少女が悩みを抱えて憂鬱な気分でいたとしても、私と話しているひと時だけはそのことを忘れられるように……いつでもそう願って振舞っているのさ」
薫「一番大切なのは、そういった気持ちだ」
紗夜「…………」
薫「例えば、今日みたいにりみちゃんが辛そうな顔をしていたとしたら」
薫「それをどうしてあげれば笑顔に変えられるだろうか、朗らかな顔になってくれるだろうか……私はそれを考えて行動していたに過ぎないよ」
紗夜「……なるほど」
薫「それに、私は私であり、紗夜ちゃんは紗夜ちゃんだ」
薫「君にしかない良いところがたくさんあるじゃないか」
薫「今日だって陽射しのあたる暑い席には率先して自分が座って、りみちゃんを出来るだけ涼しい席へ座らせてあげていた」
薫「私にはそこまでの気遣いが出来ていなかったよ」
紗夜「……よく見ていますね。ですが、それはただの偶然ですよ」
薫「ふふ、ではそういうことにしておこうか」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/27(月) 12:17:18.40 ID:npNa0ncm0
紗夜「ええ。私はそんなに出来た人間ではありませんので」
薫「そうか。だけど紗夜ちゃんがそう言うのなら、私はこう言おう。『君は素晴らしい人間だ』と」
紗夜「そんなことはありませんよ」
薫「一言では君にそう思わせるのは無理かもしれないね」
薫「それだったら何万文字、何十万行を用いて私は『君は素晴らしい人間だ』と言おう」
薫「1日、2日で分かってもらえないのなら、10年かけて君を説き伏せよう」
紗夜「意外としつこいですね、瀬田さんは。……ですが、そうまでされたら流石に私もその言葉を信じるかもしれません」
薫「これは全くの例え話だけど、私がやっていることはつまりそういうことさ」
紗夜「なんとなくですが、瀬田さんの伝えたいことが分かったような気がします」
薫「それなら何よりだ。では、私からの最後のアドバイスは……そうだね、紗夜ちゃんは世界に1人しかいない、ということだ」
紗夜「はぁ……?」
薫「紗夜ちゃんは紗夜ちゃんだけの心を持って、独自のフィロソフィーに基づいて行動している」
薫「紗夜ちゃんは誰かのコピーでもないし、誰かをコピーしなければいけないということもない」
薫「私には私なりの行動があるように……君は君の、君だからこその行動をすればいいのさ」
紗夜「……そうですね。確かにその通りです」
薫「少し口うるさくなってしまったね。すまない」
紗夜「いいえ。おかげでいい方向に進めそうです」
紗夜(確かに瀬田さんの言う通りだ。私は私が出来ることをやればいいんだ)
紗夜(まぁ、今回やることはナンパなんだけど……でも、これも力加減というものを深く知るためには大切なことなのかもしれない)
紗夜(そう思うと、無理難題を突き付けられた時から肩に圧しかかっていたものが少しだけ軽くなったような気がするわ)
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/27(月) 12:18:05.98 ID:npNa0ncm0
薫「……やっと明るい顔になってくれたね、紗夜ちゃん」
紗夜「え?」
薫「ふふ、待ち合わせ場所で落ち合った時から、ほとんどずっと眉間に皺が寄っていたよ」
薫「そんな君が、私の言葉で少しでも和やかな表情をしてくれた」
薫「それだけで今日という日が訪れたことに大きな意味があったよ」
紗夜「どこまでも気障なんですね、あなたは」
薫「これも罪な美しさを持って生まれた者の宿命……私はこの罪と一生寄り添って生きていくのさ……ふふ、儚い……」
紗夜(そういうところがなければ最後まで決まるのに……)
紗夜「……まぁそれが瀬田さんらしさ、というものなのかしらね」
薫「何か言ったかい?」
紗夜「いえ、なんでもありません。そろそろ私たちも出ましょうか」
薫「そうだね。ではお会計は……」
紗夜「済ませてあります」
薫「え?」
紗夜「では、いきましょうか」
薫「あ、ああ……しかし、紗夜ちゃん」
紗夜「なにか?」
薫「……いや、なんでもないよ。ありがとう。ごちそうになったよ」
紗夜「いえ」
薫「今度は私がごちそうしよう」
紗夜「いいえ、結構です。ここは今日のお礼ですから」
薫「そ、そうかい……」
紗夜「ええ。お気になさらずに」
薫(義理堅いというのか、なんというのか……)
薫(しかしなんだろう、この胸に生まれた感情は)
薫(どちらかというと私はいつもする側だから、何だか胸がくすぐったいというか……不思議な気持ちだよ、紗夜ちゃん……)
……………………
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/27(月) 12:19:34.39 ID:npNa0ncm0
――宇田川家――
あこ「叩いて柔らかくしたクッキー生地を平たく伸ばして、型抜きで抜いたやつをオーブンに入れて、大体10分ちょっと……」
あこ「もうそろそろ焼けたかなぁ?」
あこ「んーしょっと……おお!」
あこ「わー、ちゃんとクッキーになってる!」
あこ「すごいなぁ、本当にバターとお砂糖からよく見るクッキーになるんだ」
あこ「なんかお菓子作りって結構楽しいかも。リサ姉と紗夜さんがたくさん作って来てくれるのもちょっと分かるなぁ〜」
あこ「それじゃあ早速味見……したいけど、まだ熱いよね。キチンと冷まさないと」
巴「お、いい匂いがするな。クッキー出来たのか、あこ?」
あこ「あ、おねーちゃん! うん、焼きたてだよ!」
巴「そっかそっか。どれどれ……おお、すごいな。お店で並んでる物とほとんど一緒だ」
あこ「えへへ、ありがと。でもちゃんと美味しく出来てるかちょっと不安だなぁ……」
巴「大丈夫だよ、あこが作ったんならマズいものなんて出来っこないって!」
あこ「うーん、だといいんだけど」
巴「よーし、そしたらおねーちゃんが味見して……」
あこ「あ、おねーちゃんっ! まだ冷まさないと――」
巴「あっつ!! うわ、めっちゃくちゃ熱いなこれ!?」
あこ「もー、あこが注意する前に食べようとして……ちゃんと人の話聞かないとダメだよー?」
巴「あ、あはは……わりぃわりぃ……」
あこ「完成したらおねーちゃんの部屋に持ってくから、大人しく待っててね?」
巴「はいよー」
あこ「まったく……」
巴「いや、反省してるって。そんなジトーって見つめてこないでくれよ」
あこ「……なんだか今日はあこがおねーちゃんみたいだね」
巴「確かに……そうだな。うーん、あこも本当に立派になったよなぁ」
あこ「あ、今のおねーちゃん、親戚のおばさんみたい」
巴「な、なにおぅ、アタシはそこまで老けてねーぞ! そんなことを言うのはこの口か〜!」
あこ「あはは! ごめんって、冗談だよ〜!」
……………………
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/27(月) 12:21:10.17 ID:npNa0ncm0
――猫カフェ――
友希那「にゃーんちゃん、ほらほら」ナデナデ
猫<ニャー、ゴロゴロ...
友希那「そう。あなたはここを撫でられるのが好きなのね」
猫<フニャー
友希那「ふふ……サービス精神旺盛な甘えんぼさんに、ツンツンしてる俺様系、ずっと眠りこけているのんびり屋さん……それぞれがそれぞれ好きなように過ごしている」
友希那「私は猫カフェというものを勘違いしていたわ」
友希那「ここでも猫は猫らしく、それぞれの猫の哲学に沿って猫であり続けているのね」
友希那「やっぱり食わず嫌いは良くないわ。どこにいようと猫ちゃんは猫ちゃん」
友希那「幸せそうに、自由気ままでいるのなら場所なんて関係ないのね」
友希那「いい勉強になったわ。ここへやってきて良かった」
猫<ナゥー
友希那「あら、ごめんなさい。手が止まっていたわね。ほら……」ワシワシ
猫<ニャーン...ゴロゴロゴロ...
友希那「ふふふ……可愛いわね……」
――――――――――――
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/27(月) 12:39:02.47 ID:Z2T8ZyB8o
可愛いのはお前じゃい
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/27(月) 21:11:11.57 ID:Xbfqb+npO
猫30匹くらい放った部屋に友希那一人いれてその映像をリサ姉と一緒にモニタリングしたい。
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/27(月) 23:35:18.07 ID:FIh0egXmo
1人だけレベルアップしそうにないですね...
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:02:20.06 ID:4s9GDU010
【水曜日】
――羽沢珈琲店――
羽沢つぐみ「今日はよろしくお願いします、友希那先輩」
友希那「ええ、こちらこそ。それと、急なお願いになってしまってごめんなさい」
つぐみ「いえいえ。ちょうど他のアルバイトの人が夏季休暇だったのでこっちも助かります」
友希那「そう。それならよかった」
つぐみ「友希那先輩はこういうところでバイトしたことはありますか?」
友希那「いいえ。こういうところとかそういう以前に、バイトをすること自体が初めてね」
つぐみ「分かりました。分からないことがあったらなんでも聞いてくださいね」
友希那「ええ、ありがとう。一応だけど、私も個人的に喫茶店の仕事について調べてきたわ。髪の毛もこうやって結ばないといけないのよね?」
つぐみ「あ、はい。そのポニーテールなら大丈夫です」
友希那「よかった。なるべく迷惑をかけないように頑張るわね」
つぐみ「はい。じゃあまず、やってもらうことを簡単に説明しますね?」
友希那「分かったわ」
つぐみ「最初はまずお皿洗いですね。お客さんが使った食器や、調理に使ったものを洗ってもらいます」
友希那「あら、そうなの?」
つぐみ「はい。流石にいきなりオーダーを取ったりレジを打ったりって言うのは難しいと思いますから」
つぐみ「喫茶店の雰囲気に慣れてきたら、注文された料理や飲み物を配膳してもらうと思いますけど、やるのはそれくらいまでになると思います」
友希那「了解したわ。まずはお皿洗いね」
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:04:06.88 ID:4s9GDU010
つぐみ「お皿洗いはお家でもしたことありますよね?」
友希那「ええ。リサがあまり包丁を握らせてくれないから、あの子がご飯を作りに来てくれた時は大抵私が後片付けをしているわ」
つぐみ「へー、リサ先輩って友希那先輩のお家にご飯作りに行くんですね」
友希那「家が隣同士の幼馴染だもの。とは言っても週に1回くらいだから、そんなに回数は多くないんだけれど」
つぐみ(……十分多いような気がするけどなぁ)
友希那「羽沢さんはそういったことはないの?」
つぐみ「うーん、みんなウチのお店に来てくれることはありますけど……手料理を振舞いに行くっていうのはあんまり、ですね」
友希那「そうなのね。羽沢さんはお菓子作りも上手だと聞いたから、日頃からアフターグロウの子たちに振舞っているのかと思っていたわ」
つぐみ「いえいえ、そんな……私なんて全然ですよ」
友希那「謙遜する必要はないわよ。あなたの武勇伝は紗夜から耳にタコが出来るほど聞いているもの」
つぐみ「ぶ、武勇伝……?」
友希那「ええ」
つぐみ(紗夜さん……普段ロゼリアのみなさんに私のことをなんて言ってるんだろ……)
友希那「気になるかしら?」
つぐみ「え、えーっと、気にならないと言ったら嘘になりますけど……でも、ここで勝手に聞いちゃうのもちょっと悪い気がするので……」
友希那「…………」
つぐみ「あれ、どうしたんですか、友希那先輩?」
友希那「紗夜の言った通り、すごく周りを気遣うのね。なるほど、じゃああの嘘だと思ったアレやコレも実話なのかしら……末恐ろしいわね、羽沢さん……」
友希那「『つぐみさんはとんでもないものを盗んでいきました』なんて言ってたけど……なるほど……」
つぐみ「え、えっ……!?」
友希那「そろそろオープンの時間ね。それじゃあ私は厨房の方へ行けばいいかしら」
つぐみ「あ、は、はい、お願いします」
……………………
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:06:01.98 ID:4s9GDU010
友希那(羽沢珈琲店がオープンしてから、羽沢さんのお母さんに指示された通りに食器を洗い続けている)カチャカチャ
友希那(単調かつ簡単な作業であるけれど、気は抜けない)
友希那(うっかり手が滑ってお皿を割ってしまうのはもってのほかだし、洗い残しのある食器をお客さんに出す訳にもいかないだろう)ジャー
友希那(『労働とはお金を対価に責任を全うすることだ』と、いつか見た経済ドキュメンタリー番組の中で、どこかの社長さんが言っていた)
友希那(つまり猫カフェの猫ちゃんと同じだろう)キュッ、キュッ
友希那(あの子たちも悠々自適な生活の対価として、それぞれがそれぞれの猫の哲学を貫いているのだ)
友希那(時に甘えたり、時に釣れない態度で焦らしてきたり、そもそも私の存在など意に介さず眠っていたりして……カフェに売っているおやつを手にしたら鮮やかな変わり身を見せてすり寄ってくる)カチャカチャカチャ
友希那(そんな姿でお客さんを癒し、元気を与えてくれるのがあの子たちの責任だ)ゴシゴシ
友希那(ふふ……思い出すだけで笑ってしまいそうになる――)ツルッ
友希那「っ!? っ、っ……ふぅ、危ないところだったわね……」
友希那(頬が緩むのと同時に気持ちまで緩んでしまったみたいね。危うく高そうなコーヒーカップを落とすところだったわ)
友希那(額ににわかに冷や汗が滲む)
友希那(いけない。こんなことでは、身を持って働くということを私に教えてくれたあの猫ちゃんたちに顔向けできないわ)
友希那(そして羽沢さんにも迷惑をかけることになるし、紗夜に想像も出来ない何かをされてしまう。落ち着きましょう。一度深呼吸ね)
友希那「すー、はー……」
友希那(気合を入れなおさないと。今の私はあそこで働いていた猫ちゃんと同じ……)
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:08:23.53 ID:4s9GDU010
友希那「……そう、今の私はいわば猫そのもの。薫り高く、未来永劫咲き誇るのよ」
つぐみ「友希那先輩、いま平気ですか?」
友希那「あら羽沢さん。大丈夫よ。別にコーヒーカップを落としそうになんてなってないわよ。平気よ。なんて言ったって猫だもの」
つぐみ「え?」
友希那「……なんでもないわ。どうかしたかしら?」
つぐみ「あ、はい。ちょうど今の時間帯はお客さんも少ないので、そろそろ配膳してみませんか?」
友希那(言われてチラリと時計を見ると、10時を半ばほど回っていた。集中していたからか、思ったよりも時間が過ぎているわね)
友希那「ええ、やってみるわ」
つぐみ「はい。それじゃあこの紅茶とクッキーのセットを5番のテーブルに……あ、5番テーブルって分かります?」
友希那「大丈夫、何回か来ているから分かっているわ。5、と書かれた札のある席よね?」
つぐみ「そうです。そのテーブルにこちらをお願いします」
友希那「分かったわ」
友希那(頷いて、手をしっかり洗って消毒してから、厨房のテーブルに置かれた紅茶のカップとクッキーが盛りつけられたお皿を手にする)
友希那(そこでふと、いつかに紗夜とした一連のやり取りを思い出す)
紗夜『つぐみさんは珈琲を配膳する時、必ずカップの持ち手側とスプーンの柄を右にして出すんです。それが一般的なマナーですからね、流石つぐみさんです。ですが、私の時には持ち手を左側にするんですよ。どうしてか分かりますか? そもそも珈琲というのはまずブラックで飲むのが正しい飲み方であって(中略)私はそう飲みますからね。つまりそれだけつぐみさんが私に対して深い理解を示していてくれているということであって、まさに(以下略)』
友希那(……詳しくは分からないけれど、紅茶も同じよね。その辺りを意識してお客さんに出しましょう)
友希那(そう思い、厨房からフロアに足を運ぶ)
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:10:55.86 ID:4s9GDU010
友希那(5番テーブル。確か入り口からすぐの場所だったような記憶がある)
友希那(それを頼りに足を動かすと、やはりその記憶は正しかったようだ)
友希那(不慣れではあるけれど丁寧さを意識して、私は声を出す)
友希那「お待たせしました。紅茶とクッキーのセッ……ト……」
あこ「あ、こんにちは、友希那さん!」
友希那「……誰かと思ったらあこじゃない。どうしたの?」
あこ「えへへ、クッキーづくりの参考にって思って、ここのクッキーを食べに来たんですよ!」
友希那「そう。しっかり挑戦してくれているみたいで安心したわ」
友希那(言いつつ、手に持ったままだったカップとクッキーをテーブルに置く。……意外とソーサーごとだと置きにくいのね)
あこ「友希那さんはどうですか?」
友希那「私は見ての通りよ。とても貴重な体験をさせてもらっているわ」
あこ「あー確かに! 友希那さんのエプロン姿ってなんだか新鮮ですね!」
友希那「……まず目に付くのがそこなの?」
友希那(でも確かに……私が真っ白なエプロンをつけるだなんて、普段のイメージとは離れているわね)
友希那(……今更だけど、どこかおかしかったりしないかしら)
あこ「はい! とっても似合ってますよ!」
友希那「そう……ありがとう」
友希那(あこは無垢な笑顔でそう言ってくれる。この子がそう言ってくれるなら……いや、でももしかしたらいつものよく分からない呪文のようなイメージなのかもしれないわね……)
あこ「友希那さんは何時までバイトなんですか?」
友希那「予定では午後4時までね」
あこ「そうなんですね。頑張って下さい!」
友希那「ありがとう。あこもしっかりね」
あこ「分かりました! リサ姉や紗夜さんに負けないクッキーを作るため、ここでしっかり研究します!」
友希那「ええ。では、どうぞごゆっくり」
あこ「はーい!」
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:13:04.51 ID:4s9GDU010
友希那(あこの元気な返事を聞いて厨房へと引き返す)
つぐみ「あ、おかえりなさい。どうでしたか?」
友希那(すると、少し心配そうな顔をしていた羽沢さんがすぐに目についた)
友希那「ええ、無事にこなせたわ。羽沢さん、あこからの注文だって分かって私に行かせてくれたのね。気を遣ってくれてありがとう」
つぐみ「いえいえ……」
つぐみ「でも、最初だと緊張するかなって思ったんですけど、やっぱり友希那先輩はすごいですね。堂々としてたので、私、余計なお節介しちゃったかなって思っちゃいました」
友希那「そんなことないわ。あなたが紗夜に接客をしてくれたからこそ、私は落ち着いて配膳出来たのよ」
つぐみ「え、どうしてここで紗夜さんの名前が……?」
友希那「ところで羽沢さん」
つぐみ「は、はい」
友希那「このエプロン、私がつけててもおかしくないわよね?」
つぐみ「え? えっと、とっても可愛いなって私は思いますけど。ポニーテールもエプロンによく合ってますし」
友希那「……そう。ありがとう」
友希那(可愛い。とっても可愛い。それは私の普段のイメージと大分違う気がするけど……)
友希那「まぁ、いいのかしら?」
つぐみ「えっと、はい、多分……?」
……………………
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:15:01.49 ID:4s9GDU010
つぐみ「それじゃあ友希那先輩、次はこれを8番にお願いします」
友希那「ええ、分かったわ」
友希那(あこに配膳をしてから約30分)
友希那(その間に6組のお客さんへの配膳を任されて、段々と食器の置き方や持ったまま歩くことのコツが分かってきたような気がするわ)
友希那(だけどこういう時こそ気を引き締めなければならない)
友希那(さっきみたいについうっかりコーヒーカップを……なんてお客さんの前でやったら大惨事ね)
友希那(何があっても動じないようにしなければ。例えるなら……そう、猫カフェでカウンターに鎮座していたあの子みたいに)
友希那(……ふふ、お行儀よくお座りしている姿……とても愛らしかったわね)
友希那「っと、いけない。また思考がそれかけたわ」
つぐみ「友希那先輩? どうかしましたか?」
友希那「いいえ、なんでもないわ。8番テーブルよね? すぐに持っていくわ」
友希那(羽沢さんにそう返して、厨房を出る)
友希那(今回は珈琲だけ。これくらいなら今の私にはなんてことないわ……と思うと危ないのよね)
友希那(丁寧に持っていきましょう。8番は……あそこね)
友希那「お待たせしました。珈琲をお持ち……」
燐子「あ……友希那さん……ど、どうも、こんにちは……」
友希那「……こんにちは。今度は燐子が来たのね」
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:17:41.75 ID:4s9GDU010
燐子「今度は……?」
友希那「さっきまであこがいたのよ。クッキーの研究がしたいから、ここのものを食べに来ていたの」
燐子「そうだったんですね……」
友希那「燐子はどうしたの?」
燐子「わたしは……この本を読みに……」
友希那「『できる 竹細工入門』……なるほど、燐子らしいわね」
燐子「はい……お師匠さんに勧められたので……」
友希那「お師匠さん?」
燐子「えっと……わたし、今、竹細工の教室に通っていて……」
燐子「そこの先生のことを……若宮さんが『お師匠』と呼んでいるので……わたしもそう呼んでいるんです」
友希那「そうなの。若宮さんが一緒みたいだけど、燐子が自分からそういうところに通うなんて珍しいわね」
燐子「その、これも挑戦……だと思ったので……勇気を出しました」
友希那「それはいいことね。今日はその教室には行かないの?」
燐子「水曜日はお休みなんです……。それで、せっかくなら友希那さんがバイトをしているここで……本を読もうかな、って……」
友希那「なるほど。……あら、ごめんなさい。すっかり話し込んでしまったわ」
燐子「いえ……」
友希那「珈琲、ここに置いておくわ。どうぞごゆっくり」
燐子「はい……友希那さんも……頑張って下さいね……」
友希那「ええ、ありがとう」
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:18:44.92 ID:4s9GDU010
友希那(燐子に小さく礼をして、私は厨房へ引き返す。するとあこの時と同じように羽沢さんがすぐに目についた)
つぐみ「今日は知り合いの方がたくさん来ますね」
友希那「いつもはこんなに来ないのかしら?」
つぐみ「はい、そこまでは。ふふ、この分だと紗夜さんとリサ先輩も来そうですね」
友希那「まぁ、そうね。紗夜は分からないけど、リサはほぼ確実に来るわね」
つぐみ「あ……そう、なんですね」
友希那(……? 私、何か変なことを言ったかしら?)
……………………
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 12:21:07.00 ID:4s9GDU010
――商店街――
紗夜(さて……昨日の瀬田さんのアドバイスを元に、私もしっかり自分のやるべきことをやらなければいけないわね)
紗夜「とりあえず商店街に来たものの……どうしましょうか」
紗夜(流石にいきなり知らない人に、というのは無理ね。それはハードルが高すぎるわ)
紗夜(誰か知り合いが偶然通りかかってくれればいいのだけど……)
紗夜「……あら、あれは……↓1」
(※ロゼリア、薫、りみ、つぐみ、はぐみ、日菜以外の誰かでお願いします)
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2018/08/28(火) 12:41:05.84 ID:bpQu0uyxO
ミッシェル(クマ状態)
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/28(火) 13:01:53.47 ID:Ab/zoW2ho
えぇ…
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2018/08/28(火) 19:06:07.37 ID:BTHV4khkO
なるほど……
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/29(水) 02:16:20.65 ID:OVpAt4AU0
なんで紗夜→つぐみの時だけつぐみさん呼びなんだろ
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:29:54.31 ID:umO2zs3q0
>>88
自分の場合は妄想が捗るからです
アプリだとつぐみさん呼びは商店街でのエリア会話で1度だけですから、恐らく羽沢さん呼びが正式なんだと思います
でも妄想が捗るので自分の場合は概ねつぐみさん呼びです。ごめんなさい(´・ω・)
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:33:10.23 ID:umO2zs3q0
ミッシェル「…………」
紗夜「……ミッシェル、ね。ということは奥沢さんかしら……」
紗夜(なにかフラフラしながら歩いているけれど……大丈夫かしら。ちょっと声をかけてみましょう)
紗夜「あの……」
ミッシェル「あ、はい……」
紗夜「ええと、ミッシェル……奥沢さん、ですか?」
ミッシェル「そうですよー……。どうも、氷川先輩」
紗夜「ええ、こんにちは。どうしたんですか、キグルミで商店街に来るなんて?」
ミッシェル「あー、なんて言いますか……新しいミッシェルの実験? に付き合わされているって感じですね……」
紗夜「実験?」
ミッシェル「ええ。ミッシェルはこころのお付きの人たち……あたしたちは黒服って呼んでるんですけど、その人たちがですね……」
黒服『奥沢様。新しいミッシェルを開発しましたので、試着をお願いします。今回のテーマはドラマ性です。この格好で街を少し歩いてみてください』
ミッシェル「……とだけ言って、あたしにこれを着せてきたんです」
紗夜「ドラマ性……私はあまり近くで見る機会がありませんが、特にいつものミッシェルと変わりないような気がしますね……」
ミッシェル「ですよね、あたしもそう思ってたんですけど……」
紗夜「けど?」
ミッシェル「これ、なんか知らないんですけど脱げないんです……」
紗夜「え?」
ミッシェル「脱げないんですよ、どうやっても……。だからかれこれ1時間くらいずっとこのままなんです……」
ミッシェル「こころの家に行こうにも今日は家族と一緒に出かけちゃってるみたいで……それでこの格好で入れる場所なんてそうそうないですし……」
紗夜「1時間もその格好で外に? 大丈夫なんですか、奥沢さん」
ミッシェル「正直かなりキツいです……とにかく暑いですし……なんだか頭もちょっとボーっとしてて……」
紗夜(本当に辛そうな声ね……私のことは置いておいて、どうにかしなくては……)
紗夜「とりあえず涼しい場所へ行きましょう。……けれど、ミッシェルのまま室内に入れる場所は……CiRCLEなら、まりなさんに話を通せば平気かしらね」
ミッシェル「あー、確かに……なんで思いつかなかったんだろ……」
紗夜「奥沢さん、私の肩を貸します。ゆっくりでいいので行きましょう」
ミッシェル「ありがとうございます……氷川先輩が見つけてくれて良かったぁ……」
……………………
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:36:12.66 ID:umO2zs3q0
――CiRCLE スタジオ――
紗夜(まりなさんに事情を話すと、すぐにミッシェルを室内に入れてくれた)
紗夜(ただ、今日はグリッターグリーンのライブがあって人が多いから、ラウンジにミッシェルは居られないようだった)
紗夜(なので、まりなさんは空いているスタジオに私とミッシェルを案内してくれた)
紗夜「大丈夫ですか、奥沢さん」
ミッシェル「ええ、はい……ちょっとマシになりました」
紗夜「ラウンジでスポーツドリンクを買ってきましたけど……それを脱がないと飲めませんよね」
ミッシェル「ですね……」
紗夜「どうすれば脱げるのかしら……」
ミッシェル「多分力づくじゃ無理なんだと思います……。あたしもミッシェルになってからかなり力持ちになりましたけど、ほんと、ビクともしなかったんで」
紗夜「……ということは、何か脱がすための手順があるはずね」
ミッシェル「ええ、恐らくは」
紗夜「キグルミのどこかに仕掛けでもあるのかしら」
紗夜(呟きつつ、壁にもたれて座っているミッシェルをくまなく観察する)
ミッシェル「氷川先輩って、優しいですね」
紗夜「え?」
ミッシェル「ああいえ、なんというか……学校やロゼリアだとすごく厳しい人だって印象があったので」
紗夜「それは時と場合によります。学校の風紀を乱すことは許しませんし、音楽に対して生半可な気持ちになるのも許されませんから」
紗夜(……まぁ、その音楽のためにナンパなんかする羽目になっているのだけど……)
紗夜「ですが、困っている人がいるのなら……ましてやそれが後輩とあれば、放っておけません。それを助けようと思うのは当たり前のことです」
ミッシェル「ありがとうございます……氷川先輩が偶然商店街にいてくれて助かりました……。もうホント、なんてお礼をすればいいのか……」
紗夜「気にしないで。疲れているでしょう、休むことに専念していてください」
ミッシェル「はい……」
紗夜(私の言葉を聞いて、ミッシェルはさらに深く壁にもたれる)
紗夜(相当体力を消耗しているみたいね……早くなんとかしてあげないと)
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:37:51.24 ID:umO2zs3q0
紗夜「……それにしても、意外と手触りがいいのね」
紗夜「体毛もこんなにモフモフしていて……着ている洋服も上等な生地で出来ているわ。流石、弦巻財閥ね……」
紗夜「……あら?」
紗夜(と、ミッシェルの背中に何かの文字が縫い込まれているのが目に付いた。壁にもたれているからよく見えないけど、何かの英文……かしら)
紗夜「奥沢さん、お疲れのところすみませんが、少し体を起こして貰えますか?」
ミッシェル「あ、はい。よっこらせ……っと」
紗夜(ミッシェルが壁から離れる。それで縫い込まれた文字の全文が見えた)
紗夜(“La Belle et la Bete”)
紗夜(それからその隣に“Snow White and the Seven Dwarfs”)
紗夜「フランス語と英語、かしら」
紗夜(両方ともどこかで見た覚えがある。確か……片方は映画の原題で、もう片方はある話の原題だ)
紗夜「ドラマ性って……そういうことなのかしら……」
ミッシェル「あの、氷川先輩? 何かあったんですか?」
紗夜「ええ、まぁ……恐らくコレを脱ぐための答えが」
ミッシェル「本当ですか? よかったぁ、やっとミッシェルが脱げる……」
紗夜(奥沢さんは心の底から安心したような声を出す。それを聞いてしまうと、やはり、私がどうにかしてあげないと……という気持ちが胸中に浮かぶ)
紗夜「けど……」
紗夜(2つの話の結末を思い浮かべる。本来の姿に戻るために話の中の登場人物がとった行動は……愛の言葉を伝えることと口づけだった)
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:38:41.45 ID:umO2zs3q0
紗夜「…………」
ミッシェル「それで、氷川先輩。どうすればいいんですか?」
紗夜「そう……ね」
紗夜(……色々と思うところはある)
紗夜(けれど、これは後輩のためだ。言ってしまえば不可抗力であり、奥沢さんを助けるためには仕方のないことだ)
紗夜(それに考えてみればこれもナンパの一環だと言えなくはないだろうか。いや言えるはずだ。大丈夫、きっと大丈夫のはず)
紗夜(加えて相手は決して奥沢さんではない。ミッシェルだ。フワフワの毛並みを身にまとった商店街のマスコットだ。大丈夫。それに人命救助だ。これはノーカン……ノーカウントだ。誰がなんといおうがセーフなのだ)
紗夜「……よし」
紗夜(理論武装は万全。あとは私が踏ん切りをつけるだけだ)
紗夜「奥沢さん」
ミッシェル「はい?」
紗夜「奥沢さんの顔って、ミッシェルのどの辺にありますか?」
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:39:56.94 ID:umO2zs3q0
☆
ミッシェル「え、あたしの顔ですか……」
ミッシェル(いきなりどうしたんだろう、氷川先輩)
ミッシェル(……まぁ、氷川先輩に限って無駄なことなんてするはずないし、これもミッシェルを脱ぐのに必要なのかな?)
ミッシェル「えっと、覗き穴が口の横のあたりにあるので……大体ミッシェルの顎のあたり、ですかね」
紗夜「そう。そこにあるのね」
ミッシェル「はい。でもそれがどう――」ドン
ミッシェル(言いかけたところで、氷川先輩の顔がグッと近くに来る。そしてあたしの逃げ場をなくすように、先輩の両手があたしを挟んで壁につけられる)
ミッシェル「え、ひ、氷川先輩……?」
紗夜「…………」
ミッシェル(戸惑いながら呼びかけるも、氷川先輩はただ無言でジッとあたしを見つめるだけだった)
ミッシェル(そう、どうしてか、あたしの顔の位置を正確に把握しているかのように、バッチリと目が合っている)
ミッシェル(整った顔立ち。いつも凛々しい目元。それが少しだけ、まるであたしを安心させるかのように優しく綻ぶ)
紗夜「大丈夫です。これはミッシェルにすることですから……奥沢さんは気にしないでくださいね……?」
ミッシェル「あの……」
ミッシェル(紡がれた言葉はいつも学校やライブハウスで聞くものよりずっと温かな響きをもっていた。それにまた戸惑ってしまう。氷川先輩はどうするつもりなんだろう。あたしは何をされてしまうんだろう)
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2018/08/29(水) 15:41:42.62 ID:R4LzBUk2O
本人たちは真剣である。笑ってはいけない
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:43:48.25 ID:umO2zs3q0
紗夜「ミッシェル……私はあなたを、愛しています」
ミッシェル「え――」
紗夜「ん……」
ミッシェル(唐突な甘い言葉。それがスルリと耳から入り込んで、茹だった脳をくすぐる。そして何かを言おうとしたあたしの口へ……ミッシェルを挟んで、氷川先輩の唇が重なる)
ミッシェル(『カチッ』と、首元で何かが外れる音がした)
ミッシェル(それから氷川先輩の顔が離れる)
ミッシェル(何が起こったのか理解できない。ただ、あたしの熱を持った頭は寝ぼけたことだけを反芻する)
ミッシェル(瞳を閉じた氷川先輩の顔がとても綺麗だったこととか、長い睫毛が微かに震えていたこと、ミッシェル越しに合わさった先輩の唇の柔らかさだとか……)
ミッシェル(それらが頭の中を何周も巡りに巡り、あたしの顔が今日一番の熱を帯びたところで、そっとミッシェルの頭を氷川先輩が持ち上げた)
奥沢美咲「…………」
紗夜「おはようございます、奥沢さん」
美咲(そして氷川先輩はそう言って、優しくあたしに微笑みかけるのだった)
☆
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:45:51.69 ID:umO2zs3q0
美咲「…………」
紗夜(……反応がない上に、顔がかなり赤くなっているわね……)
紗夜(大丈夫かしら。熱中症になっていなければいいんだけど)
美咲「…………」
紗夜「奥沢さん? 大丈夫ですか?」
美咲「へっ!? あ、あああ、はい、だい、大丈夫です、よ……」
紗夜「そう。けど、かなり顔が赤くなっているわね」
美咲「そ、それは暑さのせいっていうか、その、氷川先輩が……」
紗夜「……?」
美咲「え、ええっと、なんでも……ないです……」
紗夜「そう。では、コレをどうぞ。汗をたくさんかいたでしょう。水分補給をしてください」
美咲「あ、はい……」
紗夜(奥沢さんは頷いて、おっかなびっくり私の手からスポーツドリンクを受け取る)
紗夜(……どうしたのかしら。さっきと大分様子が違うみたいだけど)
美咲「…………」チラ
紗夜(どうしてかこちらの様子をチラチラうかがっているし……まぁ、暑さで少し朦朧としているのかもしれないわね)
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:48:32.36 ID:umO2zs3q0
紗夜(それよりこれね。ミッシェルの頭部……)
紗夜「……やっぱり、この中にスイッチのようなものがありそうね」
紗夜(傍らに置いたミッシェルヘッドを手に取り、先ほど口づけたあたりをまさぐってみると、掌に柔らかい弾力を感じる)
紗夜(内側も同じように手で触ってみると、そちらにも同じような感触を見つけた)
美咲「あ、あわわ……キスしたところを手で……」
紗夜(恐らくだけど……愛の言葉をマイクか何かで拾って、このスイッチに両側から衝撃が加わるとロックが外れる……というような仕組みになっているのね)
紗夜(ドラマ性……美女と野獣に白雪姫……誰も背中の文字に気付かなかったらどうするつもりだったのかしら)
紗夜(というか、こういう仕組みなら口づけじゃなくて手で押すだけでもよかったわね……)
美咲「あ、あのっ、氷川先輩っ?」
紗夜「はい、なんでしょうか」
美咲「えっと、その、さっきのアレは……」
紗夜「……アレはミッシェル相手のものです」
美咲「え?」
紗夜「ミッシェルにしたものです。なのでノーカウントです」
美咲「え、え?」
紗夜「それより、これを見てください。このスイッチが……」
美咲「…………」
紗夜「……という仕組みになっているようですね。どうして弦巻財閥はこんなものを作ったのかしら」
美咲「そ、それじゃあアレはあたしを助けるためだってことで……」
紗夜「はい。それ以上でも以下でもありませんので、奥沢さんも気にしないでください」
美咲「えっと……はい……夢に見そうですけど……はい……」
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:53:46.30 ID:umO2zs3q0
紗夜「けど、奥沢さんも大変ですね。弦巻さんに押し倒されたり、こんなものを被らされたり」
美咲「えっ!? な、なんでこころに押し倒されたこと……!?」
紗夜「先日、瀬田さんから話を伺いました。そのことに関して私からはとやかく言いません」
美咲「ち、違います! アレは不可抗力だったんですって! ああしないと部屋から出られなくて……」
紗夜「大丈夫です。その辺りの話も瀬田さんが教えてくれました」
美咲「ほ、本当に違うんですよ……? その、変な勘違いはしないでくださいね……?」
紗夜「まぁ……そうですね。今回のこれも不可抗力でしたし、それと同じことかもしれないわね」
美咲「あ……そっか……」
美咲「…………」
美咲「え、なんであたし、今ちょっとがっかりしたの……?」
紗夜「奥沢さん?」
美咲「なっ、なんでもないです! その、氷川先輩……ありがとうございました」
紗夜「いいえ。困っている人を助けるのは当然のことですからね」
紗夜「それより、身体の方は大丈夫ですか?」
美咲「えーっと……まだ少し変な熱が残ってるというか、なんというか……」
紗夜「そう……仕方ないわね。奥沢さんが良くなるまで付き添いましょう」
美咲「で、でもそれはちょっと悪いですよ……」
紗夜「乗りかかった舟です。最後まで付き合いますよ。それに、1人でミッシェルを返しに行くのも大変でしょう?」
紗夜(本当は湊さんのところへ冷やかしにいこうと思っていたけれど……流石に今の奥沢さんを放っておくわけにもいかないわ)
美咲「…………」
美咲「そう、ですね。それじゃあ申し訳ないんですけど……もう少しだけ、その、傍にいてくれますか……?」
紗夜「ええ」
美咲「……本当は黒服の人がミッシェルの回収に来てくれるけど」
紗夜「なにか言いましたか?」
美咲「いえ……なんでもないです」
紗夜「そうですか。それでは、下も脱いでしまいましょう」
美咲「っ!? あ、ああ……ミッシェルのことですよね……はは……」
紗夜(……奥沢さん、やっぱりまだ様子がおかしいわね。意識がはっきりするまで看ていましょう)
……………………
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:55:36.65 ID:umO2zs3q0
――羽沢珈琲店――
友希那(配膳、食器洗い、それからお客さんが帰ったあとの後片付けもするようになって、集中して働いていたらもう15時を回っていた)
友希那(お昼ご飯に賄いを貰ったのがついさっきのように思えるくらい、時間が早く流れていた)
友希那(今日のバイトもあと1時間。ここまで大きな失敗もなくやってこれたし、残りもしっかりやりましょう)
つぐみ「友希那先輩、アイスティーのセットを10番にお願いします」
友希那「了解よ」
友希那(羽沢さんの言葉に頷く。もう慣れたものだ。アイスティーの入ったグラスとチーズケーキの乗ったお皿を手に、指定された席へ向かう)
友希那「……あら、リサ」
リサ「やっほー友希那〜」
友希那「やっぱり来たわね」
友希那(午前中は席に座る人の顔を見る余裕もなかったけど、今となっては通りすがる席のお客さんの表情まで確認できる余裕があった)
友希那(少しだけ呆れたような口調でそう言って、グラスとお皿をテーブルに置く)
リサ「しっかり働けてるみたいで安心したよ〜」
友希那「それはどういう意味かしら?」
リサ「あはは、ごめんごめん、気にしないで」
友希那「まったく……私だってやれば出来るのよ」
リサ「そうだね。それにそのエプロンと髪型……新鮮だけどすごく似合ってるよ、友希那」
友希那「そう。ありがとう。羽沢さんとあこにも同じことを言われたわ」
リサ「今度のライブ、そういうのでやってみる?」
友希那「遠慮しておくわ。あまりにもロゼリアのイメージとかけ離れているもの」
リサ「そっか、残念だなぁ」
友希那(さして残念と思っていなさそうな口ぶりでそう言って、リサはアイスティーに口をつけ、一息に3分の1ほどを飲み干した)
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:56:33.80 ID:umO2zs3q0
友希那「……そんなに喉が渇いていたの?」
リサ「ん? あー、ほら、アタシの挑戦ってマラソンじゃん?」
友希那「そうね」
リサ「んでさ、はぐみのとこにマラソン大会の出場申し込みいったらね、はぐみが練習に付き合ってくれるって言ってくれてね」
友希那「へぇ、北沢さんが。確かにあの子、走るのが好きそうね」
リサ「そうそう、そのイメージ通りだったよ。それで今日もはぐみと一緒に練習してきたんだ〜。だから、ちょっとね」
友希那「そうなのね」
リサ「うん。あ、それでさ……アタシの挑戦、フルマラソンだったじゃん?」
友希那「ええ」
リサ「あれさ、フルマラソンは初心者じゃ半年くらい練習しないとって言われちゃって……ハーフマラソンにしちゃったんだけど、ヘーキかな?」
友希那「…………」
友希那(リサは申し訳なさそうに、上目遣いでこちらを窺う。それに少しだけ考えたあと、私は口を開く)
友希那「いいと思うわよ」
リサ「ほんと!? よかったぁ、ダメだって言われたらどうしようかと思ったよ〜」
友希那「まぁ……無理をしてロゼリアの活動に支障が出てしまっては、元も子もないもの」
リサ「そっか。ありがと、友希那」
友希那「いいえ。まぁ紗夜がなんて言うかは分からないけれど」
リサ「あー確かに……『ハーフマラソン? 結構。それでは上位入賞くらいはして当然ですよね?』とか言われるかな……」
友希那「……くじを引いた時の様子を考えると、恐らく言うわね」
リサ「だよねぇ……でも、あは。なんかその姿がすっごく簡単に想像できておかしいなぁ」
友希那「ふふ、そうね」
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:58:10.81 ID:umO2zs3q0
リサ「友希那はどう? バイト、もうすぐ終わりでしょ?」
友希那「私は……ええ、得るものは確実にあったわね」
友希那(猫に対する理解と、猫カフェに対する理解と、働くということを猫を通して学んだことと、あとは何でもない日常の1コマからも学ぶことがあるのではないか、ということ)
友希那(この前のプールと同じね。ここへお客さんとしてやってきたあこと燐子の横顔を見ることで、あの子たちの普段の様子を垣間見れたような気がするわ)
友希那(ロゼリアの仲間としての顔ではなく、従業員とお客さんという中での表情)
友希那(何が得られたか、とはしっかりとした言葉で残せないかもしれないけど、それでも何かしらの糧として、それを私の中に残せたような気がしている)
リサ「そっかそっか。みんなも苦労してるのかなぁ」
友希那「どうかしらね。あこはいつも通り楽しそうだったし、燐子も若宮さんと一緒に竹細工教室に通っているみたいで、それもいい経験になっていると思うわ」
友希那「紗夜はここへは来なかったから分からないけれど、あの子のことだもの。きっと真面目に取り組んでいるに違いないわ」
リサ「へぇ……よっし、アタシも頑張んなきゃね」
友希那「ええ。日曜日、応援に行くわ」
リサ「ありがと。友希那にカッコ悪いとこ見せない様にしっかり練習するよ」
リサ「……あっと、つい話し込んじゃったね。バイト中にごめん」
友希那「いいえ。今の時間帯はそんなに忙しくないみたいだから平気よ」
リサ「ん、そっか。友希那、4時までだったよね?」
友希那「ええそうよ」
リサ「それじゃあここで待ってるから、終わったら一緒に帰ろーよ」
友希那「了解よ。それじゃあ、どうぞごゆっくり」
リサ「うん!」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/29(水) 15:59:57.93 ID:umO2zs3q0
友希那(リサに一礼してから厨房へ引き返す。すると、羽沢さんと羽沢さんのお父さんが何かを話しているようだった)
つぐみ「……うーん、どうしよう……」
友希那「羽沢さん? 何かあったのかしら?」
つぐみ「あ、友希那先輩。いえ、そんなに大したことじゃなくて、ちょっと明日のシフトがですね……」
友希那「……なるほど、他のアルバイトの方が風邪を引いて欠員が出た、と」
つぐみ「そうなんですよ。だから友希那先輩は気にしないでくださいね」
友希那「……それって、私が入ればどうにかなるかしら?」
つぐみ「え?」
友希那「アルバイトの欠員が出たのよね? それなら、そこへ私が入れば解決できるんじゃないかしら」
つぐみ「そうですね……そうすれば全然問題なくなるんですけど……でも」
友希那「それなら、もう1日だけアルバイトをさせてくれないかしら。迷惑なようならいいんだけど……」
つぐみ「い、いえいえ、迷惑だなんて! むしろ助かっちゃうんですけど、友希那先輩は平気なんですか?」
友希那「大丈夫よ。今週は日曜日以外に特に用事はないもの」
つぐみ「それじゃあ……お願いしちゃってもいいですか?」
友希那「ええ、任せて頂戴」
つぐみ「ありがとうございます、友希那先輩」
友希那(私の言葉に羽沢さんは笑顔でお礼をする)
友希那(……私自身としても、自分からこんな提案をすることが少し意外だった)
友希那(けれどまぁ、こういう経験も決して悪くはないものだというのはもう分かっている。こういう時くらいはいいだろう)
友希那(羽沢さんには紗夜もお世話になっているみたいだし、たまには私だって後輩にいい顔をしてみせたいし、猫カフェを巡るためにはそれなりの資金が必要な訳だし)
友希那(ふふ……今度はどんなカフェに行ってみようかしらね)
友希那(そんなことを思いながら、私は残りの1時間を過ごすのだった)
――――――――――――
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/29(水) 19:15:13.96 ID:w/le2L60o
みささよ...イケるな
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2018/08/29(水) 19:18:53.37 ID:5udmdgHr0
ナイスミッシェルであった
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/29(水) 20:42:12.03 ID:rltcIrQD0
ラルゴの時からみささよに目覚めていた自分にとっては最高だよ…
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/30(木) 23:59:48.99 ID:AoeoeoUx0
>>89
なるほどいいですね
因みに細かいようですが美咲は紗夜先輩呼びですね
何故か日菜は日菜さん呼びだけど
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/31(金) 12:03:01.20 ID:atTWqqDZ0
>>107
oh...
申し訳ないです、ご指摘ありがとうございます
ちょっと吊ってきます(;´・ω・)
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