春香「AM@ZON」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/22(水) 15:04:15.97 ID:OPDnOM8R0
それはなんでもない平日の帰りのことでした

レッスン終了後は事務所には戻らずにそのまま直帰するように、と指示を出されていたので私の足は必然的に駅へと向かっていました

ですが、その後私が駅に着くことはありませんでした

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1534917855
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/22(水) 15:12:14.49 ID:OPDnOM8R0
「貴音さん……?」

視界の端で捉えた仲間の姿

位置的には車道4車線を挟んだ反対側の歩道に居た為、声をかけられる距離ではありません

なので普段ならそのまま素通りする所です

が、
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/22(水) 15:19:11.92 ID:OPDnOM8R0
それは普段の彼女からは想像出来ないものでした

歯を食いしばり手足をめちゃくちゃに動かしながら走る姿

よく見れば服もスカートの裾が破けています

それはまるで何かから追われているようにも見えました
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/22(水) 15:32:29.61 ID:OPDnOM8R0
そして彼女はそのまま路地裏に入り、私の視界から消えていきました

……どうしよう

あの様子では間違いなく何かトラブルに巻き込まれているに違いはありません

正直な所、あんな表情を浮かべる彼女を見たのは初めてなので少しこのあとのアクションを考えあぐねていました

プライベートでも仲の良い響ちゃんに聞けば何かを知っているかもしれません

でも、突発的なことであればプロデューサーに連絡を入れた方が……
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/22(水) 15:39:32.62 ID:OPDnOM8R0
「……よし」

気づけば体はその路地に向かって動いていました

普通に考えれば間違いなくよろしくない選択をしているのは分かっています

それでも私は小走り気味にそこへ足を進めます

確証はありませんし、どうしてそう思ったのか自分でも分かりません

ただ、私の中の何かがこれが正しい選択であると後押ししてくるのです
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 17:12:43.62 ID:wSqsr9EHO
エボリュ・エ・エボリューション!!
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 19:18:34.59 ID:qgtT/TS+O
仮面ライダーかな?
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 19:36:52.91 ID:wqHFsI800
クロスなら最初に一言書いてほしい……
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 23:11:56.62 ID:KTECmBwN0
タイトルでクロスだと思って開いたぜ
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/23(木) 00:07:12.08 ID:N1F7hsiHO
某通販サイトかと
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/23(木) 14:02:57.09 ID:tNkcuplr0
路地裏を抜けた先にあったのは廃ビルでした

余程急いでいたのか、ビルの入り口近くには彼女が履いていた靴が1足だけ落ちています

……そう言えば数日前に「ここ最近さ、近所の廃ビルで不良共が屯ってるから帰宅時は出来るだけ大通りを行ってくれ」とプロデューサーから言われていました

しかしどうしてか、私はなぜか彼女よりもその不良たちの方が心配で仕方がないのです

本来ならば仲間を心配すべきはず

ですが、その廃ビルの入り口には彼女の靴とは他に、真っ二つに引き裂かれた金属バットが沢山散らばっているんです
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/23(木) 14:14:12.58 ID:tNkcuplr0
中に入ると予感に近い心配は確証に変わります

入り口付近ではバットでしたが、中のフロアは千切れた何かの肉片が無作為に散らばっています

フロア中に広がっているせいか、1歩足を進める度に粘度の高い水溜まりを踏まなければなりません

不思議なものです

既に頭の中でこれが何であるかは理解しているのに、本来湧くべき感情が今は一切湧いてきません

それどころか、転がっているこれらを「道に転がっている残飯」という認識で見てしまっているのです

まるで私が私ではないような、そんな感覚すら感じ始めています
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/23(木) 14:22:22.33 ID:tNkcuplr0
そんな奇妙な感覚に包まれながら歩くこと数十秒、彼女がいました

「あむ……っ、んぐ……」

数本の尻尾のようなものを揺らしながら、彼女は一際大きな水溜まりの中で一心不乱に食事をしていました

まあ、多分彼女です

と、言うのも見た目は完全に人のそれでありません

時折漏れる声以外は全身棘ついた浅黒い化物です

何となく、本能的に私はアレが四条貴音であると判断しているに過ぎません
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/23(木) 14:30:05.56 ID:tNkcuplr0
それにしても凄まじい食べっぷりです

普段から食欲旺盛な彼女からではありますが、ここまで本能が赴くままに食事をしている姿は初めて見ました

数日間何も食べていなかったような、そんな鬼気迫る食べ方と言えば分かりやすいでしょうか

少なくとも普段のイメージからはかなりかけ離れたものです

イメージどころか容姿もかなり違いますが
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/23(木) 14:46:18.50 ID:tNkcuplr0
私は暫くぼーっとその食事風景を眺めていました

自覚はあります

自分が変である事に

だって普通に考えたら、普通の人間の思考回路を持っていたのなら、黙ってこの場から逃げる筈なんです

入口のバットも中の光景も、どう見たって彼女がしたという事は間違えないのだから

でも、そんな正常な思考回路も内から湧いてくる別の何かに上書きさます

食事が終わったらなんと声をかけようか、そのままじゃあまり美味しくないだろうから料理してあげましょうか

そんな突拍子もないワードが頭の中を駆け巡ります
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/23(木) 15:18:56.30 ID:tNkcuplr0
ただ、勿論そんな時間も長くは続きません

ふと顔を上げた彼女?と私の視線が交差しました

その時の表情が今でも忘れられません

感情の読めない顔の造りではありますが、視線の先にいるのが私だと恐らくは把握した途端にその表情(かお)は悲痛なものに歪んだように見えました

そして次の瞬間には全身から何かを吹き出すと同時にいつもの、私がよく見なれた四条貴音さんにその姿を戻していました
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/24(金) 17:11:19.06 ID:d/+U5ynz0
「……大丈夫で「見ないで下さいっ!!」

そう言うが早いが、彼女は馬乗りの体制から尻もちを着くような形で私から距離を離すように後退ります

先ほど路上で見た時よりかは幾分か普段の彼女に近い雰囲気ではありましたが、やはりその姿は普段の彼女からは想像出来ないものです

体をぶるぶると震わせながらゆっくりと私から距離を離していきます

ですが、余程何かショックを受けているのか、ゆっくり下がっているものの水溜まりに腕を滑らせ全身を赤く濡らしてしまっています

「見なっ……、こないっ……で……!」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/24(金) 17:26:02.83 ID:d/+U5ynz0
やっぱり、自分が化物みたいな姿でいる所を見られるのはショックだったりするのでしょうか

……いや、そうじゃなくて

彼女もそうですが、私の方もさっきからかなりヤバいです

他にもっと別の感情であったりとアクションが出るはずなのに、何故かすんなりと目の前の光景を受け入れて、頭の中で整理してしまっているのです

ここに来る前では普通の感覚?を持っていた筈なのですが

これではただの不思議系サイコさんです
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/24(金) 17:35:54.13 ID:d/+U5ynz0
ですが、呑気に自分のことを考えてる場合ではありませんでした

気づけば彼女様子がまた変化していました

後退りを止めこちらをじっと見つめています

先ほどまでは怯えの感情を灯していた瞳もギラギラとした鋭い瞳にかわり、赤く染まっていた口周りもダラダラと流れ出る唾液で流し落とされています

まだ表情こそは変わってはいませんが、その眼は徐々に私を別の物として捉え始めようとしている風にも見えます

そして可愛らしいお腹の音がフロアに響きます

どうもと言うかやはりと言うか、彼女はまだお腹が空いているようです
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/25(土) 01:54:05.07 ID:SoMo43I1O
注意書きくらいしやがれゴミ
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/25(土) 03:37:21.60 ID:ndPhbYWko
タカネガオビエテルノ新鮮ですき
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 16:19:04.85 ID:p5f/HbWF0
さて、私はどうしたらいいのでしょうか

距離的にはまだ充分逃げられる余裕があります

「……げっ、…………くっ…………に……っ!!」

まだ彼女が『四条貴音』である内に

もう彼女の様子からしても、人間としての自我が保てる時間はそう長くはなさそうです

それを過ぎしてしまえば恐らく私は、そこら中にぷかぷかと浮いている残飯と同じモノになってしまうでしょう

ならば取るべき動きはただ一つです
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 16:23:47.83 ID:p5f/HbWF0
カツン、

一歩前進

彼女が下がるスピードよりも早く

更に1歩足を進めて

「……っ!………………!!」

叫び声など気にも止めません

ただ、自分の本能が赴くままに

私が思う正しい選択を
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 16:43:05.04 ID:p5f/HbWF0
距離が近づくに連れ、彼女も徐々に抗え無くなってきたのか徐々に体の1部が人のそれではなくなってきていました

悲痛に叫ぶ声とは真逆に歪むように釣り上がる口角

後退はしているものの先ほどとは違い、寝転がる様な姿勢から上半身はしっかり上げられ、いつでも動けるような体制に変わっています

でも構いません

私は迷わず歩を進めます

少女に迫る怪人のように
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 16:52:03.75 ID:p5f/HbWF0
迫りくる私から逃れようと彼女も必死に後ろへ下がりますが……、

そこまで広くないフロアです

気付けば彼女は一番奥の壁に背をぶつけていました

もう逃げ場はありません

更に歩幅を大きくし距離を詰めます

間はおよそ1m
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 17:22:59.77 ID:p5f/HbWF0
手に持っていたハンドバック放り捨て、少し両腕を広げ、

「もう逃げなくていいですよ」

徐々に白い美しい肌を艶のある黒い皮膚へと変化させる彼女に歩み寄ります

既に背中にはさっきみた尻尾も生えています

「!!!!!」

言葉にならない声を上げ、泣きながら私を拒むように腕を突き出してきました

それと同時に私の体に衝撃が走り、フロア中に炸裂音が響きます

そして、一息後に後ろからボチャリと水溜まりに何かが落ちる音
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 17:36:04.85 ID:p5f/HbWF0
「っと」

思わず転びそうになりますが何とか踏ん張ります

よし、まだ動けます

アドレナリンがドバドバです

目の前の彼女は突き出された自分の腕と、それと同時に飛び出した尻尾を見たまま固まっていました

様子からして反射的に出てしまったのでしょう

ですが、それを見逃しません

彼女がショックで固まっている隙に、半ば飛びかかるような形で私は彼女の体に自分の体を重ねます
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 17:58:32.82 ID:p5f/HbWF0
しかし、日頃から転び癖のある私が果たして片腕のない状態でバランスが取れる筈もなく

「うわっと!?」

重ねようとした直前に足を滑らせ、左腕で彼女を引っ張りながら体を倒してしまいました

……どうしよう

本来ならそのまま抱きしめようと思っていたのに

痛みこそありませんが、もう体を持ち上げる元気はもうありません

仕方がないので位置的な関係もありましたが、体を仰向けにして自分のお腹に彼女の頭を抱えるような体制をとります

その直後気がついたのか、彼女は体をビクンとさせてた後にぶるぶると震え出しました
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 18:10:23.31 ID:p5f/HbWF0
「なぜ……、逃げないのです、か」

「私がこうしたいからです」

「……どうなるか、分かる……、はず、なのに」

「だからですよ」

「……どうして」

「……怖がらなくていいんですよ。私はただ、困っている仲間を助けたいですから。私がしたいがままに動いてるだけですから」

「それ、は」

「もう、我慢しなくていいんですよ」

「いけ、ません……」

「私にはこういう事しかしてあげられませんし、こうする事が1番良いと思ってますから」

「それ以上は……!」

「貴音さん」

「あ」
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