西住みほ 「 暗い凱旋門、ですか? 」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:28:35.58 ID:1GTbjVIF0

みほ(大学選抜との試合も終わって、数週間後)

みほ(あの試合では、色々な人にお世話になった、感謝してもしきれない、沢山の恩がある)

みほ(すぐには返せない、でも、絶対にお礼は伝えたくて)

みほ(裏で廃校を免れるために奔走してくれたお母さん、一緒に戦ってくれた黒森峰のみんな)

みほ(まずは、地元のみんなにお礼を伝えよう、伝えきれなかったことも、全部全部)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1534570115
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:30:55.51 ID:1GTbjVIF0

みほ「ただいま」

みほ(フェリーから降りて、地元に繋がる電車に乗る、見知った風景、流れる雲)

みほ(3連休とあって車内はちょっとだけ人が多い、知らない人もいる、知ってる人も、いる)

みほ(でも、話しかけられない、顔を上げられない、だって)

乗客「見ろよあいつ、ほら、大洗の西住の妹、あいつのせいで、黒森峰は...」

みほ(だって、ここには、黒森峰があるから)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:33:10.46 ID:1GTbjVIF0

乗客「そう言うなよ、前の試合の活躍凄かったじゃん、おらが町のヒーローだよ」

乗客「だとしても、去年の失態は見過ごせねーよ、それに、その後黒森峰を」

みほ「...っ」

みほ(次の言葉を聞きたくなくて、停車した駅で降りる、いつかと同じ、逃げるように)

みほ(地元の駅まで数駅くらい、歩けない距離じゃない、けど)
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:34:00.16 ID:1GTbjVIF0

みほ「あ...」

みほ(閑静な住宅街、駅のすぐ外には黒森峰の幟が立っていて)

みほ(黒森峰時代の友人も住んでる住宅街、家へ帰るには、ここを通らないといけない)

みほ(どうしたらいいんだろう、俯いて、前を向いたら、そしたら)

後輩「みほ、先輩...?」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:36:11.34 ID:1GTbjVIF0

みほ「あ、久し、ぶり...」

みほ(私を見つめる視線、もちろん覚えてる、戦車道で一緒だった虎弐先輩の、妹さん)

みほ(先輩は、お姉さんは、2つ上の実力者だった、優しくしてくれた先輩だった)

みほ(何度か、この子とも話したこともある、お姉さんに憧れています、って)

みほ(いやだ、思い出したくない、だって、そのお姉さんの、先輩の最後の言葉は)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:37:15.82 ID:1GTbjVIF0

『勝ちたかった、勝ちた、かった、よぉ...っ』

みほ(泣き崩れる先輩、違う、先輩『達』、私のわがままで夢を掴めなかった先輩達)

みほ(私が大洗で見つけた戦車道の代償は、先輩方の涙だと、そんなの、そんなの)

後輩「みほ先輩、どうしたんですか?」

みほ「あ、ごめんね、えっと、元気にしてるかな」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:38:37.00 ID:1GTbjVIF0

後輩「はい、元気にしてますよ」

みほ「そう、なんだ、今は黒森峰の戦車道チームにいるの?」

後輩「...そうだったら、良かったんですけど」

みほ「...?」

みほ(俯く妹さん、あれ、この子って、こんなに暗い人だっけ)
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:41:03.32 ID:1GTbjVIF0

後輩「姉が、何をしてるか知っていますか」

みほ「...ごめん、分からない」

後輩「ですよね、みほ先輩が、知ってるわけありませんよね」

みほ(表情は見えない、でも、チラッと見えたその目元)

後輩「だって、逃げましたもんね」

みほ(その眼は、私を睨んでいて)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:42:07.07 ID:1GTbjVIF0

みほ「ひっ」

後輩「姉は、大学でも戦車道をしています、でも、特待じゃないんです、優勝出来なかったから」

後輩「特待じゃない戦車道ってね、お金がかさむんですよ、私が、戦車道を断念したくらいに」

みほ「っ、ぁ、ご、めん」

後輩「先輩、みほ先輩、私が戦車道を断念した時に、あなたは何をしてたんですか」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:43:16.47 ID:1GTbjVIF0

みほ「っ!」ダッ

みほ(それ以上聞きたくなくて、その場を離れる、家へ、家へと、走って、走って)

みほ(走り疲れて、立ち止まる、でも、止まったら周りの人がこちらを見てる、ような気がして)

みほ「ごめ、ん、でも、ちがうの、ちがう...っ!」

みほ(耳を塞いで、無我夢中で走って、家に辿り着いた時には夕日が田んぼを赤く染めていた)
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:44:40.66 ID:1GTbjVIF0

ガラッ

しほ「みほ、お帰りなさい、遅れるなら連絡してくれないと...みほ?」

みほ「おかあ、さん...」

しほ「みほ、どうしたんですか、そんなに息を切らし、て」ダキッ

みほ「おかあさん、わたしの戦車道、まち、まちがって、るの...?」ポロポロ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:46:26.77 ID:1GTbjVIF0

しほ「...どうしたの、帰ってくるなりそう言われても、何も分からないわ」

みほ「ごめ、んねっ、でも、わたしも、何も、分からないのっ、分からない、分からない、でも...っ」

しほ「...そういう時もあるわ、でも、何も分からない時は、本当に分からないの、だから」スッ

しほ「まほが帰ってくるまでよ、ほら」ヨシヨシ

みほ「あぅ、っ、ぅぅぅ、うあぁぁ、お母さん、お母さん...っ!」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:55:23.12 ID:1GTbjVIF0

まほ「ただいま、お母様、みほが帰ってきてるとお聞きして」チラ

まほ「...みほも、そんなに甘えることがあるんですね」

みほ「...んぅ」スゥスゥ

しほ「まほ、そんな喜ばしいことではないわ」

しほ「この子、泣きながら帰ってきたの、あなた何か知ってる?」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:56:54.92 ID:1GTbjVIF0

まほ「みほが泣きながら、ですか、そうすると十中八九、黒森峰時代のことじゃないでしょうか」

しほ「私の戦車道が間違ってるのか、と言いながら泣いてたわ」

まほ「やはり黒森峰での、最後の試合のことで何か言われたんでしょうね」

しほ「誰の目から見ても正しいとは言わないわ、でも、あれも立派な戦車道よ」

しほ「...何があったか、聞くしかないようね」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:58:13.04 ID:1GTbjVIF0

みほ「...ん、おかあ、さん」

しほ「おはよう、みほ、まほも帰ってきてるわ」

みほ「うん、ありがとう...」

しほ「みほ、何があったの」

みほ「...」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 14:59:51.81 ID:1GTbjVIF0

まほ「みほ、辛いかもしれないが、教えてほしい」

みほ「おねえ、ちゃん...」

まほ「話は聞いてる、自分の戦車道が正しいかどうか、分からなくなったらしいな」

まほ「戦車道に普遍的な正しさはない、それは、人それぞれ決めるものだ」

まほ「でも、自分が正しいと思った道は、決して疑っちゃいけない」

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 15:00:55.83 ID:1GTbjVIF0

まほ「それを私が学んだのが、みほの戦車道からだ、それほどみほの戦車道は芯が強固だと思う」

まほ「そんな戦車道を、他の誰でもないみほ自身が悲観する姿を私は見たくない」

まほ「力になりたいんだ、みほ、一人の戦車道競技者として、姉として、それに、ファンとして」

まほ「だから、教えてほしい、みほ」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 15:02:28.61 ID:1GTbjVIF0

みほ「...私、知らなかったの、戦車道にあれだけ、お金がいるって」

まほ「黒森峰は、確かに年間の会費も大きな額だから、余計に必要だろう」

みほ「私は、出来て当たり前の環境だった、から...」

しほ「今までプロリーグがなかった要因の一つでもあるわね、特待じゃなければ、誰でもは出来ないわ」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 15:04:22.15 ID:1GTbjVIF0

まほ「誰に、言われたんだ」

みほ「今、黒森峰の子、二つ上の先輩の、妹さん」

まほ「その子は知らないが、だいたい誰の妹か予想はつく」

まほ「戦車道を部活レベルでしている大学は私立が多い、親の負担も大きい」

まほ「でも、黒森峰はそういう高校だ、特待生として戦車道を行える子は、ほんの一握りしかいない」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 15:05:48.22 ID:1GTbjVIF0

しほ「...折角のゆったりとした帰省だから、みほには気楽に過ごしてほしい、けど」

まほ「9月末だからな、もしかしたら、大学が休みの先輩方もいらっしゃるかもしれない」

まほ「私も、留学の手続きで忙しい、お母様も然りだ」

まほ「一人で出掛けると、辛い思いをするかもしれない」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 15:07:05.85 ID:1GTbjVIF0

みほ「...でも、私、みんなにありがとうって伝えないといけないから」

みほ「お母さんにも、お姉ちゃんにも、それに、黒森峰のみんなにも、」

まほ「黒森峰に行く時くらい、私が隣にいようか?」

みほ「ううん、お姉ちゃんも忙しいだろうから、私1人で大丈夫だよ」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/18(土) 15:08:43.23 ID:1GTbjVIF0

まほ「何かあったら、いつでも力になるからね」

みほ「うん、ありがとう、お姉ちゃん、それにお母さんも」

みほ「何かあれば、連絡するね、それじゃあ、おやすみなさい」
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