【ミリマス】秋雨とハーモニカ

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1 : ◆U2JymQTKKg [sage saga]:2018/08/18(土) 00:59:01.42 ID:YVpnMpH9O
ちょっとだけ季節は早いけど。可奈と秋雨とハーモニカの短いお話です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1534521541
2 : ◆U2JymQTKKg [sage]:2018/08/18(土) 01:03:29.80 ID:YVpnMpH9O
「はぁ……止まないなぁ」

 雨宿りしたお店の軒先からはひっきりなしに雨粒が垂れてくる。

 私はシャッターにぴったりとくっついて誰も通らない道を眺めていた。

 かなり時間が経ったように感じるけど、腕時計の針は数字一つ分しか進んでいない。

「折り畳み傘、ちゃんと入れてたはずなんだけどなぁ」

 また一つため息が増えた。

「ううん、ダメダメ。こういう時こそ元気出そ!雨ぽつぽ〜つ♪傘はない〜♪濡れたくない〜♪」

 右手をマイクにして即興で歌を作る。そう、こうやって歌っていればどんな時だって……。

「きゃあっ!」

 目の前を走っていったバイクが私に水しぶきを飛ばした。
3 : ◆U2JymQTKKg [sage]:2018/08/18(土) 01:04:30.10 ID:YVpnMpH9O
「あ、危なかった〜。ギリギリセーフ〜♪でも〜♪足がひんやり〜♪」

 カバンからハンカチを取り出して足を拭く。幸いにも濡れたのは膝のあたりだけ。靴下までは濡れていない。ハンカチをカバンに戻そうとすると、奥のほうで何か硬いものが指先に触れた。

「あ、返しそびれちゃってる……」

 見つけたのはハーモニカ。銀色の磨かれた表面は街灯を反射し鈍く光っている。

ぷ〜♪

 口に当てて息を吸うと気の抜けた音がする。

ぷ〜ぴ〜ぴぴ〜ぷ〜♪
 
 でも、その音色が私の心を少し明るくしてくれた。
4 : ◆U2JymQTKKg [sage]:2018/08/18(土) 01:06:09.82 ID:YVpnMpH9O
 顔を上げる。雨はまだシトシトと降り続いている。

 ぶるりと身体が震えた。同じ雨の日なのに梅雨の雨とどうしてこんなに違うんだろう。

 梅雨はもっと生暖かくて、ジメッとしてて、なんだかカタツムリになった気持ちになる。

 でも、秋の雨は空気がひんやりして、さらさらしていて、まるで冷蔵庫の中にいるみたいだ。

「プリンにケーキにチョコレート〜♪ゼリーにヨーグルトにシュークリーム〜♪」

ぷ〜ぷ〜ぴぴ〜♪

 路上でハーモニカ片手に歌っていると、ストリートミュージシャンになったみたいだ。

「えへへ、ジュリアさんもこんな感じで歌っているのかなぁ?」

ぷ〜ぷぷぴ〜♪

「でも……ジュリアさんだったらお客さんがいて、独りじゃないんだろうなぁ」
5 : ◆U2JymQTKKg [sage]:2018/08/18(土) 01:07:23.34 ID:YVpnMpH9O
ぷひゅ……

 ハーモニカをくわえたまましゃがみこんだ。誰にも踏まれることのない水たまりが目に映る。

ぷ〜ぴぴ〜ぷ〜……

ぷひゅ……

ぴぴ〜ぷ〜ぷ〜……

ぷひゅ……

 口元のハーモニカから冷たさが入り込んでくる。気付けば私は、ギュッと両腕を抱え込んで俯いていた。
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