ミナミの帝王 棋士の魂

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21 :T氏の隣人 ◆ypkhdBq3X0pa :2018/08/06(月) 18:04:03.49 ID:Qubew/PA0
〜〜
その夜。萬田・米川二人きり
「萬田クン。今日はいきなり泊めさせて悪いね」

「いえ、こちらこそ良い経験させていただきました」

「ところでだ、ボクはねガンを患って、治療したりはしたが多分10年は厳しい。
次の会長、せめて外部理事を萬田クンやってくれないかな」

「なんぼ会長はんでも無理な相談でんなあ」

「そうだろうな。萬田クンは根っからの金融屋だ。けど、影から助けてくれないかな?ボクは連盟のためと色々した。個人としても色々した。し過ぎるくらいでね、死んだら地獄行きの人間で、ボクを知る人間の七割は喜ぶだろう。死んでからじゃ何も出来ない。けど、色々心配でね。まあ老婆心で外れれば良いんだが…

ああ、新浦。あれは良い男だろ」

「そうでんな。中々いない好人物ですわ」

「口下手で人間付き合いは上手くない。だから心配なんだ。」

「確かに、世渡りは上手そうには見えまへんな」

「けどね。将棋の情熱だけは天下一品だよ。将棋は才能も確かに必要だ。新浦には才能がある。それ以上に努力が出来る男だ。ボクはね、カレを尊敬してるんだよ」

「よう分かりまっせ」

「今日、もう1人居た亘辺虎王を呼ばなかった理由は分かるかい?カレはね、まだ挫折して考えるには少し若い。キミと会わせて学ばせるには、少し若いんだ。キミに会わせて大丈夫になるまでボクが生きていれば良いんだがなあ……」

「会長はん。病は気からだす。強気を無くしたらあきません。いつも強気に前へが米川哲学の1つちゃいまっか?」

「そうだよね。ただ不安なんだ。萬田クンの心に止めといてくれないかな?」

「分かりました。恩義ある会長はんのお願いだす。この萬田、いざとなったらやらせていただきます」

「頼んだよ……
ああ、あと新浦クンってあんな感じだけど実はねゴニョゴニョゴニョゴニョ」

「凄い人でんな」

「そうなんだよね」
22 :T氏の隣人 ◆ypkhdBq3X0pa :2018/08/06(月) 18:14:39.35 ID:Qubew/PA0
〜〜帰りの新幹線〜〜
「なんか、どえらい出会いでしたな」

「まあ竜一も良い経験やろ」

「プロ棋士に勝ちましたからな。にしても、あの新浦はん活躍してはるんでっか?」

「お前、知らんのやな。あの人は羽流先生に名人戦に挑戦したり、羽流先生の順位戦連勝止めたりしとるんや……一番大きいのは羽流先生がタイトル独占した時に、その牙城を破ったんや…結局、タイトルはその1つだけやが、その後も安定してトップで活躍しとるで」

「あ!思い出しました。アポ無しでいくテレビの【電化少年】で女性タレントが求婚しとった相手が新浦はんでしたわ」

「そうや」

「凄い人でんな。そんな人でもタイトル一回だけでっか」

「半分以上はタイトルに挑戦も出来へんのや。タイトル一回でも超一流や…それに」

「それに?」

「いややめとこ」

「なんや兄貴疲れとりますな?」

「久々の東京さかいな」

会長はん。心配が心配のままで終わればええんどすけどなあ…なんかワシにも引っ掛かりが出来ましたわ。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/07(火) 07:38:07.85 ID:pFFFeQjA0
>>20
就任激減→収入激減
24 :T氏の隣人 ◆ypkhdBq3X0pa :2018/08/07(火) 16:10:08.28 ID:pFFFeQjA0
〜〜数年後晩秋〜〜
萬田に電話
「はいどうも萬田だす」

『萬田クン、元気かい?米川だよ』

「お世話になっとります。今日はどんな用件でっか?」

『悪いけど、出来るだけ近い内にこちらに来られないかな?日時が分かると良いんだが』

「4日後の午後2時頃でしたら行けますが」

『悪いね、ボクさ入院になるんだ。今度ばかりは駄目そうだ』

「そんなに悪いでっか」

『ガンがね、再発してね』

「下手な慰めは要らん様ですな」

『覚悟はとうに、済んでるよ。本当は自宅か愛人の家で死にたいが、警察やらなんやら面倒だし迷惑かけるからね。
最期の入院だよ』

「分かりました」

『入院は4日後に性炉華病院にするから来てよ。[米川に会いに来た萬田や!]って言えば入れる様にしとくから。そうだ舎弟クンも連れてきてくれないかな?』

「分かりました」

『あとね萬田クン1つ真剣なお願いして良いかな?』

「なんなりと」

『どうせみんな良いもんをお見舞いに持ってくるんだよ。
高いだけの不味い果物より、百円もしない桃の缶詰を頼めないかな?あと、こっちでは手に入りにくいんだが、おむすびせんべえと塩っぱを頼むよ』

「分かりました。持っていかせてもらいます」

〜〜
「おい竜一。これから買い物行くさかい留守番頼むで」

「兄貴、買い物ならワシがいきまっせ」

「いや、これはワシが自分で買わなアカン買い物や。そん代わりに明後日東京行くさかい準備しといてくれ」

「東京でトラブルでっか?」

「いや、米川会長がな相当悪いそうや」

「あのジイサンが……
分かりました」
25 :T氏の隣人 ◆ypkhdBq3X0pa :2018/08/07(火) 16:12:21.06 ID:pFFFeQjA0
〜〜性炉華病院〜〜
受付
「すんません萬田と言いますが、米川会長に呼ばれて来ました」

「米川さんに頼まれております。萬田様ですね、四階特別室となっております」

「どうもありがとうございます」
〜〜特別室〜〜
コンコン
「どうも萬田です」

「きたきた、入って入って」

「失礼します…あ、先客おられましたんか…それじゃ少し待ちましょか?」

「いや構わんよ今日の目的なんだから入って入って」

「それでは、御言葉に甘えまして……」

竜一「あ!渓海浩二や」

「あれ?舎弟クンはカレを知ってるんだ。ボクは知らなかったのに」

「そりゃ会長はん、関西で将棋言うたら渓海さんですわ。ワシらガキん頃からの大スターでっせ」

(渓海ペコリ・萬田ペコリ)

「初めまして、ワタクシ将棋協会理事をしております渓海浩二と言います」

「初めましてワテは大阪で、しがない金融屋をしとります萬田です」

「はて……萬田…?」

「渓海クン。カレは金融屋だって言ったけど、ボクのね理事補佐をしてもらってたのさ。凄腕経営コンサルタントだからね。協会の定款に理事は個人で補佐を持てるだろ?」

「ああ、ありましたね。この方が会長の補佐ですか」

「そう
……さて、この凄腕補佐だが月いくらだか分かるかい?」

「想像つきませんね」

「なんと月・1500だよ。正確には10日に一回会って飛車落ちを指しつつ相談してもらって500だ」

「高いですね?」

「渓海クンでも高いかい?」

「ええ。月1500万は高いですよ」

「違う違う1500円。毎回500円玉一枚だよ」

「え、そうなんですか」

「そう。で、渓海クンにはね、引き継いで欲しいんだよ。今後カレに頼る時が来るんだ。ボクが死んだら」

「会長。まだまだ元気で無いと…」

「いや、いいんだ。ボクはじきに死ぬ。年内かな?多分持たない。そうしたら、協会会長はキミだ。だけど何かしらトラブルは起こるから、その時は萬田クンを相談相手に選んでくれないかね?
出来れば次の会長…多分…佐渡康己クンだろうが、カレまでは引き継いでやって欲しい。そこまではボクには死んでも責任があるから」

「分かりました。会長の頼みですから」

「あ、萬田クン。もしかしてその袋は?」

「会長はんの頼まれたモノだす」

「開けてくれんかね?」
26 :T氏の隣人 ◆ypkhdBq3X0pa :2018/08/07(火) 16:13:43.82 ID:pFFFeQjA0
「おむすびせんべえに塩っぱに桃缶って兄貴?」

「桃缶はともかく、あとの2つは懐かしいだろ渓海クン?ボクもね関西で対局した時に、塩っぱとかおむすびせんべえ出されてね。なんだか美味しいんだよ。関東だと探すのも大変だ。キミが持ってきた果物のセットは有難いけど、良いもんばかりじゃ飽きるからね。
今、1つ袋開けちゃおう。ほらみんな食べて渓海クンも舎弟クンも」

モグモグパクパク
「ああ、これですね。懐かしい。久しぶりに食べました。会長、萬田さん有難うございます」

「いやあ上手いね
話し変わるけどね、葬式だけど前からいってるけどあの世からインタビューとか出来ないかなあ…もしくは、1人千円で墓の文字か塔婆彫らせたり、会費制にして今から席次を決めとくとか。萬田クンを各銀行頭取と同じ席にするとかさ」

「流石にワシも困りまんなあ」

「内都のジイサンと有由のジイサンと嘉藤のジイサンを同席させてね。
式中に喧嘩始めたりしたら伝説の葬式の完全だ」

「流石にそれは無いかと。各先生方も落ち着かれましたし」

「嘉藤のヒーさんは喧嘩はしないだろうけど、全く落ち着いてないよ」

「それが、嘉藤先生の良いところですから」

「まあ、葬式のお願いはこれくらいにして、さてと渓海クン申し訳ないが今日は帰ってもらえるかな?」

「分かりました」

「すまないね、これから最期の悪巧みだから」

「会長、無理なさらず。萬田さんと…
ええ…」

「カレは舎弟クンで良いよ」

「…舎弟さんですか、私はこれで、失礼します」

ガチャ
27 :T氏の隣人 ◆ypkhdBq3X0pa :2018/08/11(土) 18:54:47.91 ID:D0Ej9oEA0
〜〜
「萬田クンお土産、ワガママ言って悪いね」

「かまいまへん。考える手間が省けましたわ」

「さてと、萬田クン。萬田クンから見て渓海はどうだい?」

「初めてお会いしたから分かりませんが、誠実そうとちゃいまっか」

「ボクとキミだ。忌憚なく言ってくれたまえ」

「なら
まあ、善人かもしれまへんが、同時にボンボンでんな」

「そうなんだ。人は悪くない。人望もある、西の人間には影響が強い。けどね、組織で腹を括るタイプでなく、判断をしたり修羅場をくぐれるタイプじゃない。危機意識を常に持ち対処するのは難しいだろうね。平坦な時に、なだらかに行くならカレだ。だがなあ…」

「まあ誰も完璧ではおまへんからな」

「カレにさ、1つ協会トラブルの解決を頼んだのさ。
経験だと思ってね。けど、やることなすこと、てんで駄目。
善人はね悪人に対処出来ないし悪人のふりが出来ないんだ。
ボクなんかは悪人のふりが得意だけど…ふふふ…
一生懸命、渓海を育てたがあんまりだったなあ…けど、次は渓海か…」

「次におりませんか
適任が」

「相撲と一緒で強くないと尊敬されないの。
棚中は実績は無いわけじゃない。理事もしたし腹黒く色々出来るが息子を溺愛しててね。その辺りから人望は無い。
赤野は実績不足。能力はあるかなあ、少し素直過ぎるというかな。若い頃に周囲に虐められて少し偏屈だ、それに思い込みで走り過ぎる。バランスを取ってくれる人が横にいつつの参謀タイプだ。
志摩は兄貴肌なところもあるし働き者だが、幅広く目を広げて多角的に判断するところが無い。上に立ったら気付かない内に寵愛をして組織が駄目になる。
その同期達も政治に無関心かなあ…長村治クンは悪くないが、権力と距離を置いて堂々と渡り歩く、ちゃんとした野党タイプだ。
佐渡康己クンはまだ若い。あと15年くらいして羽流世代が着いたらなあ…」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/11(土) 18:59:48.91 ID:D0Ej9oEA0
「でも渓海はんでっか?」

「痛し痒しだねえ
この際、舎弟クン外部理事をやってくれないか?会長でもかまわんよ」

「無茶言わんで下さいよ」

「萬田クンはやってくれないだろ?」

「残念ですが、やりまへん」

「ああ、さっきの理事補佐はやってくれないかな?渓海と次の会長くらいまで。その次の会長はもうボクの手の及ぶ人間じゃないから頼むよ」

「会長はん。会長はんのお願いなら聞ける範囲は聞きますわ」

「ワガママついでだ、もし見切るなら、見切る時はスパッと将棋界を潰してくれんかな?」

「ええんでっか?ワシに潰せ言うたら徹底的でっせ」

「徹底的で良いよ。頼むよ萬田クン、舎弟クン

……
あと五年生きたいなあ。あと五年。五年後には同じこと言うだろうけどね…あははは」

これが半ば遺言になるとは思いませんでしたわ。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/11(土) 21:51:44.34 ID:zt+8s1rA0
こっからどんなゲス野郎が出てくるのやら…
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 18:53:01.30 ID:3pkufVcDO
ごめんやっしゃー
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/24(金) 17:32:19.78 ID:L79SQ7CA0
イッキに書き上げますわ
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 14:13:02.29 ID:MraTD7jA0
忘れてたわ
仕上げる
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