マリ「超特急デネブ?」結月「そうです」

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346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/01/31(金) 05:19:03.30 ID:oFn1AU3Bo

―― 出発1分前:デネブ


ダダダダダッ

「だから! だから!! なんでお土産屋で悩むんだよー!!?」

「レジが混んでたんだからしょうがないんだよ〜〜!!」

「〜〜っ!」



結月「急いでください! 1分切りましたよ!!」

みこと「早く……!」


日向「くぅぅ〜〜〜〜!!」

マリ「ひぃっぃぃお腹が揺れるぅぅ」

報瀬「うぅっ、気分悪くなってきたかも……!」

ダダダダダッ


栞奈「車内に居ないと思ったらまーた駆け込み乗車なのかぁ」

結月「先に乗っててよかった」

みこと「……」


日向「よし! セーフセーフ!!」

マリ「ふぅっ、はぁっ、ふぅぅぅ」

報瀬「うぅっ……ぅぅぅ」

結月「報瀬さん? 顔色が悪いですよ?」

みこと「とりあえず、乗ろう?」

栞奈「名古屋しゅっぱーつ!」

prrrrrrrr


……


347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:39:58.78 ID:l1m2r1O+o

―― 1号車

ガタン

 ゴトン

日向「次はいよいよ金沢なわけだがー」

報瀬「うぅ、気分悪い……ちょっと横になって来る」

栞奈「部屋に戻るの? 送ってくよ〜」

報瀬「うん、ありがと……うぅぅ」

スタスタ...

マリ「お大事にー」

みこと「大丈夫かな……」

マリ「後で様子見に行こう」

みこと「どうして具合が悪くなったの?」

マリ「多分、天むすも追加注文してたから食べすぎたんだよ」

日向「その後に全力疾走だからな……。それほどまでに米が食べたかったんだよ」

マリ「楽しかったねー、名古屋」

日向「いろいろ回ったからな〜。名古屋城に行けなかったのは残念だけど」

みこと「報瀬さんと行ってきたよ」

マリ「そうなの? じゃあ後で写真見せてもらおう〜、ばり楽しみやけん」

日向「それ名古屋弁じゃないだろ。それより、残り二つの駅になったんだよ」

マリ「なにが?」

日向「停車駅が。金沢と、松本」

みこと「……」

マリ「あっという間だったね。ということは、あと3日で東京なんだね」

日向「そんな先の話より明日だ明日!」

マリ「?」

みこと「なわとび大会?」

日向「そう、それ! どうするんだよ、
   一回も全員で練習してない上に大村と栞奈があんな状態だろ?」

マリ「二人がどうしたの?」

日向「なんか、雰囲気がおかしいんだよなー。まだケンカしてるっぽい」

マリ「そっかぁ、うーん……。どうしよ?」

日向「原因も分からないからな……。みこと、なんか聞いてる?」

みこと「ううん、知らない」

マリ「そっかぁ……。大会の時間って何時だっけ?」

日向「夕方までやってるみたいだけど、13時には会場に居たい」

マリ「でも私ね、兼六園に行きたいんだよ」

日向「午前中に行って来い」

みこと「能登半島は?」

マリ「あ、いいね!」

日向「あのな、昼には片町に居なきゃいけないんだぞ?」

マリ「無理かな?」

日向「詳しく調べてないから分からないけど、多分無理」
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:41:23.63 ID:l1m2r1O+o

マリ「じゃあ、大会終わってから?」

日向「デネブは丸一日金沢に停まってるから、不可能じゃないけど……けどさ」

みこと「けど?」

日向「大村、降りるだろ?」

マリ「うん……そうだね」

日向「最後にさ、どこかで打ち上げしたいなって」

マリ「うん! いいね!」

みこと「……最後…」

日向「場所とか全然考えてないけどな!」

マリ「それなら能登半島でバーべキィューは!?」

日向「いいなそれ! 夏と言ったらバーベキューだもんな! ってか、キィューってなんだよ!」

みこと「できるの?」

日向「現実的には無理。時間と金銭的問題が大きいしな。
   私ももう持ち合わせが苦しくなってる」

マリ「うぅ、現実って辛いことばっかりだよね……。楽しいこともあるけど」

日向「そうだな……いつだって非情で無常だけど愛情で感情が最上でもある」

マリ「……どういう意味?」

日向「聞くな」

マリ「でも、楽しみだね。最後の夜だから思いっきり楽しみたい!」

日向「旅も大詰めだ、全力で楽しむぞー!」

マリ日向「「 おぉーー!! 」」

みこと「そのためにも、あの二人が仲直りしないといけない?」

マリ日向「「 そうだった…… 」」

みこと「……」

日向「キマリさん、なにか案はありませんか?」

マリ「ありません」

日向「お手上げですな」

みこと「……相談してくる」スッ

マリ「ん?」

日向「相談?」


スタスタ...


マリ「誰に?」

日向「車掌さんかな?」


……


349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:42:37.81 ID:l1m2r1O+o

―― 秋槻の個室


コンコン


みこと「……」


ガチャ

秋槻「おはよう」

みこと「え? 夜だよ?」

秋槻「あぁ、ごめん。時間間隔が狂い始めてて……。どうしたの?」

みこと「相談に乗って欲しいことがあって……」

秋槻「うん、分かった。空いてる席で待ってて。顔洗って行くから」

みこと「……うん」


……




―― 車掌室


車掌「どうかなさいましたか?」

みこと「大村一輝という人を探していて……」

車掌「大村さんでしたら――」


……




―― 娯楽車


バババーン

 チュドドドドーン

バコーン

一輝「ハァ……すぐ落とされるな……」

みこと「あ、居た」

一輝「?」

みこと「ちょっと来て」

一輝「あ?」


……


350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:45:02.29 ID:l1m2r1O+o

―― 1号車


マリ「見て、これに乗ったんだよ」

結月「ジェットコースターですか」

日向「でら世界最高峰だった。あれはでらよかった」

結月「無理やり名古屋弁使ってますね」


秋槻「ふぁぁ……」


マリ「あ、お兄さん」

日向「なんか久しぶりに見た気がする」


秋槻「一日中籠ってたからね……。ここじゃないのか」


日向「髭……」

マリ「身だしなみチェック」


秋槻「あ、しまった……つい……」


結月「誰か探してるんですか?」


秋槻「うん、ちょっとね……。それじゃ」

スタスタ...


結月「どうしたんですかね?」

マリ「みこっちゃんかな?」

日向「かもな」


……




―― 4号車


一輝「なんだよ、こんなところで」

みこと「……」

一輝「無視かよ……」


秋槻「ここにいたんだ」


一輝「?」

みこと「座ってください」

秋槻「うん、失礼するよ」ストッ

一輝「???」

みこと「私じゃなくてこの人から」

秋槻「うん……?」

一輝「なんだよこれ?」

みこと「栞奈さんとケンカしてるから、仲直りしてほしいって」

秋槻「え、そうなの?」

一輝「おまっ……!」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:46:17.85 ID:l1m2r1O+o

みこと「キマリさん達が明日、なわとび大会に出て、その後打ち上げしたいって」

一輝「だからなんだよ……」

みこと「最後だから」

一輝「……!」

秋槻「…………」


みこと「……」


一輝「……っ」


秋槻「話しにくいみたいだから、俺の話からしよう」

みこと「?」

一輝「……?」

秋槻「学生の頃、君たちと同じくらい歳の頃の話なんだけどさ」

みこと「……」

秋槻「一人の女子と仲良くなってね。席が俺の前で、なにかと接点が多くなったのが理由でね。
   日直とか掃除とか、いろいろ行動を共にすることが多くて」

一輝「……」

秋槻「そんな俺たちをみたクラスメイトが、ある日、俺に聞いたんだよ。
   『お前たち付き合ってるの』って」

みこと「……」

秋槻「俺は照れくさくて、声を大きめに『付き合ってねーよ』って言ってさぁ」

一輝「……」

秋槻「それをその女子に聞かれて……。それから気まずくて、今まで通りに過ごせなくて。
   会話も当たり障りのないことばっかりで、何か失った気持ちになったな」

みこと「……」

秋槻「あの時、なにか行動を起こせていたらって思うよ。そしたら、今ここにいないかもだけどね」

一輝「後悔してますか?」

秋槻「うん、してる」

一輝「…………」

秋槻「その子のこと好きだったんだなって、後になって気付いたから」

みこと「……」

秋槻「俺の話は終わり。ごめんね、割とどうでもよかったかな。あはは」

みこと「…………」

秋槻「それじゃ、話を聞かせて?」

一輝「正直、よく分からなくて」

秋槻「分からない?」

一輝「なんであんなに嫌な気持ちになったのか――」


……


352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:47:59.63 ID:l1m2r1O+o

―― 報瀬の個室


報瀬「ふぅ……落ち着いた……」

栞奈「もう大丈夫みたいだね」

報瀬「やっぱり食べすぎだったみたい。薬、ありがとう」

栞奈「いいよ、これくらい。たまたま持ってただけだし」


ガタン

 ゴトン


報瀬「……」

栞奈「一人でゆっくりしたいよね、それじゃ私はこれで――」


報瀬「栞奈、無理してない?」

栞奈「え、え……? 無理?」


報瀬「うーん……水、もうちょっと……ちょうだい」

栞奈「あと……これくらいしかないけど……どうぞ?」

報瀬「うん、ありがとう……」

栞奈「……」

報瀬「ごく……ごく……」

栞奈「……」

報瀬「……ふぅ。……それで、無理してない?」

栞奈「どうして……いきなり?」

報瀬「誰かに似てるなって思ったら、日向だった」

栞奈「?」

報瀬「なにかあるのになんでもないって顔して、
   無理して誤魔化して何も無かったってことにしようとしてた」

栞奈「……」

報瀬「私が向き合おうとしたのに、ね」

栞奈「私と日向は違うよ」

報瀬「うん」

栞奈「無理か……、してるのかな」

報瀬「分からないの?」

栞奈「まぁね。……私さ、人に深入りしたことも、されたこともないんだよね」

報瀬「……」

栞奈「この列車に乗ってさ……あぁ、私ってこんなヤツだったのかぁって思ったりして」

報瀬「……」

栞奈「いつもと違う自分だってのは分かってはいるんだけど……無理してるのかは分からない」

報瀬「いつもの栞奈ってどんな風なの」

栞奈「どんなだと思う?」

報瀬「今の栞奈しか見てないから分からない」

栞奈「教室の隅でさ、カリカリと勉強ばっかしてる。がり勉タイプってヤツ?」

報瀬「……」
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:50:18.20 ID:l1m2r1O+o

栞奈「父さん見てるから、体力もつけなきゃって思って……スポーツも程々に出来ると思う」

報瀬「うん、細くはない」

栞奈「勉強もスポーツも出来る。優等生タイプ……だけど、致命的な欠点が一つあってさ」

報瀬「……」

栞奈「つまらない奴なんだ私って」

報瀬「どうして?」

栞奈「いや、分かるでしょ。今までの言動見てたら」

報瀬「ううん、さっぱり」

栞奈「……はは。……まぁ、そう、周りに思われててさ。
   居場所ないんだよね。学校ででもどこでも、家以外には」

報瀬「そう聞いたの? つまらないって」

栞奈「うん、言われた。飽きられた感じで」

報瀬「……」

栞奈「そういわれるの嫌だから、もっと面白いことをしようと思って……そしたらもうピエロさ」


報瀬「周りがつまらない人だらけなんじゃないの?」

栞奈「……っ」


報瀬「栞奈はつまらない人じゃない――」

栞奈「やめて……ッ」


報瀬「え……?」

栞奈「アイツと同じこと……言わないでよぉっ」


……




―― 4号車


一輝「アイツ、目標持って頑張ってるんです。つまらない人間なわけがない」

秋槻「……」

みこと「………」

一輝「俺は、アイツ……栞奈のこと人として尊敬してる部分もあって……。
   勉強できるけど、バカなところも面白いな思ったりして」

秋槻「……」

一輝「だから、俺自身が認めてる人に……おちょくられて……? コケにされるのが嫌で」

みこと「?」

一輝「その……白石結月のこと……ごにょごにょ……でしょ……とか言われて」

みこと「聞こえないよ、結月さんが何?」

一輝「くっ……」

秋槻「なるほど……」

みこと「どうして結月さんが出てきたの?」

一輝「だから……! さっき……冷やかされて? 嫌な気分になって……」

みこと「結月さんが冷やかされて……?」
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:51:55.81 ID:l1m2r1O+o

一輝「だから……俺が……あっちのことを……なんじゃないかって」

みこと「あ……え?」

一輝「……なんだよ」

みこと「それって……栞奈さんのこと――」


秋槻「あー! そうだッ!!」


一輝みこと「「 ! 」」ビクッ


秋槻「あ、急に大声出してごめん。今、いい構成が浮かんでね」

みこと「……うん」

一輝「そうですか……」

秋槻「悪いけど、仕事に戻るね」スッ

みこと「……」

一輝「……はい」

秋槻「一つ、アドバイス」

一輝「?」

秋槻「どうして嫌になったのか、考えてみて。一人で、答えを見つけるんだ」

一輝「……」

みこと「……」

秋槻「それじゃ」

スタスタ...


「あ、お兄さん」

「無精髭が通りますよ〜」

「え!?」

「あはは」


みこと「……なんか、変」

一輝「だな……」


マリ「お兄さんどうしたの?」

みこと「徹夜したんだと思う」

マリ「ずっと起きてるんだ……道理でテンション高いわけだ」

みこと「キマリさん、どこに行くの?」

マリ「食堂車行って、料理長に相談をするんだよ」

みこと「相談?」

マリ「そうそう。明日の送別か――はうぁ!?」

一輝「……は?」

マリ「えっと、明日の株価はどうなってるかな」

スタスタ...

みこと「……変」

一輝「いつもだろ」

みこと「キマリさんは変じゃない。それじゃ、一人で考えて」スッ

一輝「なんかお前、俺には冷たいな」
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:53:05.21 ID:l1m2r1O+o

みこと「好きじゃないから」

一輝「ふっ、そうかよ」

みこと「……」

スタスタ...

一輝「……」


一輝「……ハァ」


一輝「降りる準備するか……」


……




―― 報瀬の個室


栞奈「アイツと同じこと言わないで……っ」グスッ

報瀬「……」

栞奈「うぅ〜っ……。泣きそうっ……」

報瀬「泣いてるじゃない」

栞奈「泣いてないことにして」グスッ

報瀬「……」

栞奈「でも、なんかスッキリした」

報瀬「そう……」

栞奈「ありがと、報瀬」

報瀬「なにもしてないけど」

栞奈「さっきの話なんだけど」

報瀬「?」

栞奈「日向と向き合ったって話。どうやって向き合ったのかなって」

報瀬「私は向き合おうとした。
   ちゃんと自分のこと話して、その上で日向と正面から話をしようとした」

栞奈「うんうん」

報瀬「だけど、日向はそれをしようとしなかった。だから腹が立った」

栞奈「……」

報瀬「腹が立ったから、意地を貫き通した」

栞奈「意地……」

報瀬「お互い、変な意地を張ってたと思う。
   だけど……だからこそ、今の私たちがあるんだと思う」

栞奈「――……」


コンコン


報瀬「は、はい」


「報瀬さん、私だけど……」


報瀬「みこと……?」


ガチャ
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:54:37.97 ID:l1m2r1O+o

みこと「休んでるところごめんなさい。これ、キマリさんが持って行ってって」

報瀬「いいけど……。キマリが?」

みこと「スタミナドリンクって」

報瀬「何してるの、キマリは?」

みこと「食堂車で手伝いしてる。日向さんも車掌さんとお話ししてて……」

報瀬「結月は?」

みこと「撮影してるから……」

栞奈「暇なんだね、みことちゃん」

みこと「あ、栞奈さん」

報瀬「くんくん……うっ、変なにおい……っ」

栞奈「まだ体調が戻ったわけじゃないから、大人しくしてなよ」

報瀬「……うん」

みこと「お話ししてたの?」

栞奈「うん。報瀬たちの話を聞いてた」

みこと「……」

報瀬「どうしたの?」

みこと「私も聞きたい」

報瀬「……じゃあ、入る?」

みこと「……うん」

栞奈「意地を張りあった結果が今に至るってとこまで話したけどさ」

報瀬「匂い嗅いだせいでまた気分が悪くなってきた……。……けど?」

栞奈「報瀬と日向の意地の張り合いで……報瀬が意地を貫き通したと」

報瀬「うん」

みこと「……」

栞奈「報瀬が正しかったってことだよね……?」

報瀬「どうだろ。結果は結果だから、そこは問題じゃないと思う」

栞奈「過程が大事?」

報瀬「結果とか過程じゃなくて……向き合うことじゃないかな」

みこと「……」

報瀬「自分と向き合って、相手と向き合って、どうしたいか」

栞奈「…………」

報瀬「どうなりたいか、なんて……あの時は考えてなかったし」

みこと「……」

報瀬「考えられるほど、私たちは長く生きてないから」

栞奈「……そっか」

みこと「生きてない……?」

栞奈「経験、だよね」

報瀬「うん。経験があるから過程を考えて理想の結果に近づける……」

みこと「……」
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:57:40.44 ID:l1m2r1O+o

報瀬「それに私たち、人との付き合いの中で打算とか駆け引きとか出来るほど器用じゃない」

みこと「生き方が下手……」

報瀬「……うん」

栞奈「言うねぇ」

みこと「あ、そうじゃなくて……! お母さんの小説にそういう一節があって……!」

報瀬「ふふ、いいよ、気にしてない。その言葉、合ってるから」

栞奈「器用に生きられた方が楽だよね」

報瀬「楽だと思う。けど、そんな生き方してたら私が今持ってるものより、何かが足りていないと思う」

栞奈「面倒くさい自分を受け入れるか、切り捨てるか……?」

報瀬「どちらかを選択なんて、できないんじゃない?」

栞奈「どういうこと?」

報瀬「思い立ってできることなのかな、自分を捨てるとか受け入れるとか」

栞奈「できるよ……。諦めればいいだけだから。少しずつ、周りの色に染まるみたいに合わせて行けば」

報瀬「そうかも……ね。……やっぱり二人は似てる」

みこと「?」

栞奈「私と日向?」

報瀬「うん。頭の回転が速いからいろいろ考えることが出来るでしょ。
   自分のこと相手のこと、周りのこと」

栞奈「そうかな……?」

みこと「うん、私もそう思う。日向さんと栞奈さん、似てる」

栞奈「……そっか」

報瀬「それで、考えすぎて、先の先まで考えてしまう。
   そして、余計なことまで考えて動けなくなってしまうところとか」

栞奈「……」

報瀬「話を戻すと……私みたいな人は、面倒くさい側の人間。
   人は誰でも楽をしたいはずだから、それが普通だから……それが悪いことだとも思ってない」

栞奈「……」

みこと「あ、あの……報瀬さん!」

報瀬「な、なに?」

みこと「聞きたいことが……あって」

報瀬「?」

みこと「髪を切ったのは……どうして……ですか……!?」

栞奈「……」

報瀬「これは……」

みこと「……っ」

報瀬「お母さんと……じゃないか。……私自身と決別したから、かな」

みこと「決別……?」

報瀬「私のお母さん、南極で行方不明になって、帰らぬ人になって……」

みこと「え――」

栞奈「……」

報瀬「栞奈は知ってたんだ?」

栞奈「うん、まぁ……。報瀬たちに関連した記事を読んでたんだけど。
   その中に古い記事をたまたま見て……もしかして……とは思ってた」

みこと「――」
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 15:59:04.04 ID:l1m2r1O+o

報瀬「その時からずっと、帰ってくるのを待ってるだけの自分が居たから――……って、みこと!?」


みこと「……え?」ポロポロ


報瀬「な、なんで泣いて――」


みこと「あ――……」ポロポロ


栞奈「みことちゃん……」


みこと「ぅ……うぅぅっ」ボロボロ


報瀬「……」


みこと「〜〜〜っ」ボロボロ


報瀬「お母さんが行方不明になったって報告を受けても……私、泣けなかった」


栞奈「……」


報瀬「あの時の私の代わりに泣いてくれて、ありがとう、みこと」


ぎゅううう


みこと「ち……ちがっ……わたしっ……わたしのおかあさんがっておもって……っ」


報瀬「うん……自分のお母さんがそうなったらって思ったんだよね」


みこと「かなしいって……つらいって……いたいって……っ」


報瀬「うん……」


みこと「なんで……っ……なくの……とまらない……っっ」ボロボロ


報瀬「うん……ありがとね」


ぎゅうう


みこと「ぅぅ〜〜〜ッ」ボロボロ



……


359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 16:00:16.40 ID:l1m2r1O+o

―― 寝台車


バタン


栞奈「……ッ」グスッ


日向「お、栞奈〜……報瀬の様子は……」


栞奈「あ、日向じゃん。夜更かしはお肌の大敵だぞ〜」


日向「泣いてたのか……?」


栞奈「あー……うん。ちょっとね、もらい泣きを……。あはは」


日向「……」


栞奈「報瀬、キマリ、結月ちゃん、日向……4人はいいね、
   なんか本気でぶつかってるって感じで」

日向「――……」

栞奈「……?」

日向「う、うん。そうか……はは」

栞奈「どうしたの? なに、今の間は?」

日向「まさか自分がそう言われるとは思わなかったから……」

栞奈「?」

日向「いや、こっちの話」


……




―― 秋槻の個室


秋槻「……」

カタカタカタ

秋槻「……ふむ」

ガタン

 ゴトン

秋槻「夜行列車か……乗ってみたかったなぁ……」


秋槻「海外行けば乗れるけど……ん……ん〜〜」ノビノビ


秋槻「そうだな……。売店閉まる前に何か買っておくか……」


秋槻「ふぅ〜……」


秋槻「……」


秋槻「メモ用紙が散らばってるな……戻ってから片付けよう……」


……


360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 16:01:32.38 ID:l1m2r1O+o

―― 食堂車


報瀬「キマリ、これ」

マリ「味はどうだった?」

報瀬「飲んでないから分からない」

マリ「でも空っぽだよ?」

報瀬「私は飲まずに捨てるつもりだったんだけど、
   みことが明日の為にって飲み干しちゃったから」

マリ「ひどい!? 報瀬ちゃんの為に作ったのに!」

報瀬「……」カァァ

マリ「顔赤いよ? 体の調子悪い?」

報瀬「ううん。だた……なんであんなことしたかなって……思って」

マリ「あんなこと?」

報瀬「みこと、ね……私のお母さんの話聞いて……泣いちゃって」

マリ「……」

報瀬「気が付いたら抱きしめてた……」

マリ「みこっちゃん、純粋だから全部を受け入れてしまうんだよね」

報瀬「みたいね……」

マリ「そのみこっちゃんは?」

報瀬「あのスタミナドリンク飲んで、体調悪くしてみたいだから個室に戻したよ」

マリ「……え」

報瀬「ちゃんと後で様子見に行ってよね」

マリ「大丈夫かな……?」

報瀬「大丈夫でしょ。変なの入れたわけじゃないよね?」

マリ「もちろん」

報瀬「ところで、どうして手伝いしてるの?」

マリ「明日、綾乃ちゃん大会に参加できるか確認しに来て……なんとなく手伝おうと思って〜」

報瀬「そう……。それじゃ」

マリ「もう寝ちゃう?」

報瀬「到着するの深夜だし、何もすることないから」

マリ「そっか、それじゃおやすみ〜」

報瀬「おやすみ」


……


361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 16:02:55.79 ID:l1m2r1O+o

―― 岐阜駅


プシュー


日向「ふぃ〜……」


日向「やっぱりこの時間だとホームには誰も居ないな〜」


日向「朝は清々しいのに、夜は不安になる感じ……」

テクテク


日向「ふんふんふ〜ん♪ それがいい〜♪」

テクテク


日向「あ、キマリだ。おーいキマリ〜」フリフリ


日向「というか、なんでウェイトレスの服着てるんだ?」


...テッテッテ

マリ「どうしたの、日向ちゃん?」

日向「外から見えたから、手を振っただけ〜」

マリ「そうなんだ。あぁ、岐阜に着いたんだね」

日向「そうそう。だ〜れも降りてこないからちょっと寂しい日向ちゃんでした」

マリ「私は仕事に戻るけど、乗り遅れないでよ?」

日向「お前が言うか。それよりなんで仕事してるんだ?」

マリ「一日の終わりで忙しそうだったから。お客さん少ないけどやること多いんだって」

日向「ふ〜ん」

マリ「それじゃ、また後で」

日向「他のみんなは?」

マリ「知らないけど……、報瀬ちゃんとみこっちゃんはもう寝ちゃうみたい」

日向「私もそうするかなぁ、今日も歩きっぱなしだったし。
   ゆづのとこ行ってから個室に戻ることにするよ」

マリ「そっか。それじゃ、また明日ね〜」

テッテッテ

日向「お〜」


日向「動力車まで歩いてみるか」

テクテク


日向「こうやってデネブに沿って歩くの初めてだな」

テクテク


日向「お、ゆづ発見。今は客車で撮影してるのか〜」

テクテク


日向「売店のお姉さんだ。やっほー」フリフリ

テクテク
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 16:04:26.79 ID:l1m2r1O+o

―― 報瀬の個室


報瀬「すぅ……すぅ……ん……」


報瀬「ん? ……あれ……?」


報瀬「いつの間にか……停まってる……?」


報瀬「到着…したんだ……」


報瀬「……」


報瀬「……すぅ……すぅ」



―― 岐阜駅・ホーム



日向「ふぁぁっ……眠……」

テクテク


日向「外から見るのも中々楽しいもんだ」

テクテク


「……」スッ


日向「おわっっ」

「ひゃあっ!?」

日向「って、栞奈かよ、びっくりした」

栞奈「日向……?」

日向「急に降りてきたから、驚いたんだよ」

栞奈「そうなんだ……ごめんごめん」

日向「謝ることじゃないけどさ……こんなとこ歩いてる私も悪いし」

栞奈「なにしてんの、暇なの?」

日向「暇と言ったら暇なんだけど……何かしたい! って気分でもないよ」

栞奈「それもそっか、こんな時間だもんね」

日向「で、どうなんだよ」

栞奈「なにが?」

日向「話するってさっき言ってただろ〜?」

栞奈「言ったけど……心の準備がまだ……」

日向「……」

栞奈「分かってるって……! 時間が無いってことくらい……でも……!」

日向「私は何も言ってないだろ?」

栞奈「目が言ってる、目が! はやくなんとかせんかいワレーって」

日向「もどかしいなとは思うけど、急かすようなことは思ってないって!」
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 16:06:14.79 ID:l1m2r1O+o

栞奈「ぅぅ……どうしよ、焦れば焦るほど焦ってしまう」

日向「本当に焦ってるんだな……。大村の姿は見たの?」

栞奈「ううん。……多分、個室で降りる準備してるんだと思う」

日向「私が思うにだ、栞奈」

栞奈「う、うん」

日向「あれだけお互いに言い合ってた二人なんだから、
   話をして悪い方には行かないと思う」

栞奈「……うん」

日向「私だけじゃなくて、みんな思ってることだよ。
   大村を信じて、私らも信じろって」

栞奈「…………うん」

日向「このままお別れするのは嫌だろ?」

栞奈「うん」

日向「その気持ちがあれば前に進めるよ、きっと」

栞奈「…………でもね……日向」

日向「うん?」

栞奈「私は……私自身が信じられないんだよ……」

日向「……」

栞奈「これだけ……日向が言ってくれてるのに……信じて前に進む勇気がないんだよ……」

日向「……」

栞奈「今まで楽しかった旅が……嫌な思い出で終わるのが怖い――」

日向「栞奈……それは」


「日向さん?」


日向「……!」ビクッ

結月「なにしてるんですか、こんなところで……栞奈さんも一緒だったんですね」

日向「び、びっくりした……ゆづか」

栞奈「……」

結月「日向さん、さっき外歩いてました? さくらさんが『ナニカ居る』って怯えてたんですけど」

日向「うん、たぶん私だな……」

栞奈「あはは、さくらさんが怯えるなんてね〜。お化けとか苦手なのかな?」

結月「みたいですね。腕力ではどうにもならないから嫌だって言ってます」

栞奈「物理ダメージが通る相手なら怖くないんだ! やっぱり強いな、さくらさん!」

結月「……」

栞奈「でも、その『ナニカ』を確認しに来た結月ちゃんも強いね〜憧れちゃうね!
   そんな結月ちゃんと一緒に月でも見に行きたいな〜」

結月「栞奈さん……何かありました?」

栞奈「ないよ、なにも。それより、月と星を観に行こうじゃない。
   素敵な時間を共有しようよ、お姫様」

結月「……」

日向「栞奈」

栞奈「もちろん姫の騎士である日向も――」

日向「私さ、学校行ってないんだ」

栞奈「一緒…に…………」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 16:07:55.04 ID:l1m2r1O+o

日向「人間関係で嫌なことがあってさ、無理だと思って行くの止めたんだよね」

栞奈「……」

日向「止めたって言ったら、自分の意志で決めたみたいに聞こえるけど……。
   まぁ、逃げたんだな。私は、そういう煩わしいことから」

栞奈「……」

日向「だけど、逃げた先にキマリと報瀬が居てさ。
   二人が目的を持ってたからそれに乗っかった形になるんだけど……」

栞奈「…………」

日向「キマリと報瀬だって、その煩わしいモノを持ってるんだと思う。
   それって、誰かと生きていく以上避けられないことだと思うんだよ」

結月「……」

日向「だけど、嫌じゃなかった」

栞奈「……嫌じゃ……ない?」

日向「うん。嫌じゃない。たまに腹が立つし、呆れるし、不快に感じることもある。
   けど、嫌じゃないんだ。きっと、私自身が報瀬とキマリ、ゆづにもそう感じさせてるからだと思う」

栞奈「……」

日向「えっと、何が言いたいかって言うとだ。
   私から見たら、栞奈と大村はそんな風に見えたってこと」

結月「そうですね、私もそう思います」

栞奈「……っ」

日向「だから、どうなりたいかなんて先のことを考えるより、
   栞奈がどうしたいか考えた方がいいと思うよ?」

栞奈「……報瀬と……同じこと言うんだ」

日向「報瀬……?」

栞奈「なんでもない」

結月「日向さん、逃げたって言いますけど……私はそう思わないんです」

日向「?」

結月「だって、逃げてる人が勉強できるわけないです。
   同じ年頃の人たちが出入りする場所で、コンビニでバイトなんて出来るわけないです」

日向「ゆづ〜」ダキッ

結月「きゃぁ!?」

日向「そんなこと思ってくれてたのかぁ〜」スリスリ

結月「ひ、日向さん……!?」


「結月ちゃん!?」ババッ


栞奈「あ……」


さくら「大丈夫!? 結月ちゃ……ん?」


日向「なるほど〜」スリスリ

結月「……なにがですか」

日向「キマリが言う通り、柔らかくて温かくていい匂いだなって」

結月「セクハラは同性でも適用されるんですよ」

日向「あはは、悪い悪い」

結月「……もぅ」
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/14(金) 16:08:43.75 ID:l1m2r1O+o

さくら「今の悲鳴は? 日向ちゃんが原因なの?」

日向「そうです。つい抱きしめてしまって」

さくら「あら、そう」

栞奈「いくら払えば私もそれが許されるんですか?」

日向「これくらいだ」バッ

栞奈「ぐぬぬ……いやしかし、この機を逃せば結月ちゃんを抱きしめることなんてもう叶わない。
   これから先の生活を切り詰めればなんとか」

結月「最低ですね」

日向栞奈「「 冗談だよ冗談〜 」」

prrrrrrrr

日向「あ、もう出発か」

栞奈「……」

さくら「結月ちゃん、もう少しで今日の仕事は終わりだから頑張りましょ」

結月「はい!」

さくら「あら、元気充分ね♪」」

日向「しかし、本当に最低だぞ今の」

栞奈「いやいや、金額を提示したのは日向でしょ」

結月「二人ともです!」



……


366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/29(土) 11:51:57.05 ID:VPz5jp53o

―― 食堂車


ガタン

 ゴトン


日向「……」ウトウト

栞奈「……すぅ……ふぅ」


マリ「日向ちゃん、寝ちゃった?」


日向「ん、起きてるよ?」

マリ「……寝たいなら個室に戻ったらいいのに」

日向「大丈夫だよ、眠くないって」

マリ「さっき眠いって言ってたよ」

日向「ん〜……」

栞奈「私に付き合ってくれてるから……」

マリ「……?」

栞奈「日向、私は大丈夫だから個室戻って」

日向「ん〜……?」

栞奈「ほら、立って〜、行くよ〜?」

日向「大丈夫、だいじょーぶ。一人で行けるから」

栞奈「本当に?」

日向「うん。ということで、私は寝る!」フラフラ

テクテク

マリ「おやすみ〜」


「やすみ〜」


栞奈「本当に大丈夫かね?」

マリ「あんなに眠そうなのは初めて見たけど、大丈夫だよ」

栞奈「ならいいけど」

マリ「それより、なにか注文する?」

栞奈「あ、ごめんね、何も頼まなくて……。特に注文は無いんだよね……」

マリ「そうなの?」

栞奈「うん……。今、車内に誰も居なくてさ……みんな寝る準備してるんだと思うけど……」

マリ「そうだね……金沢到着が深夜だから、明日の準備くらいしかすることないよね」

栞奈「そういうことだから、一人でいるより、キマリがいるからここにいるってだけなのだよ」

マリ「わかった。水でも持ってくる?」

栞奈「本当に気を遣わなくていいから。ただでさえ邪魔してるみたいで申し訳なくて……。
    私のことは地縛霊か何かだと思って無視して?」

マリ「畏まりました〜」

スタスタ...

栞奈「ふぅ……。あぁ、もう……決意が固まらない……っ」
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/29(土) 11:53:21.32 ID:VPz5jp53o

マリ「料理長〜、地縛霊入りました」

料理長「はぁっ!?」

明菜「きゃああ!?」


栞奈「……混乱を招いてしまったようだ」


結月「なんだか騒がしいですね」

栞奈「うーん、私のせいかな……」

結月「また、何したんですか?」

栞奈「何もしてないよ〜。やったのはキマリだから」

結月「そうですか。一緒してもいいですか?」

栞奈「いいよ〜。って、何か食べるの?」

結月「ちょっと小腹が空きまして。夕ご飯は軽めに食べたものですから」

栞奈「何食べたの?」

結月「天むすを……。キマリさーん」


「はーい。ただいま〜」


栞奈「そういえば、私は名物食べてないな……」

結月「注文します?」

栞奈「……食欲無いんだよね」

結月「そうですか……」


マリ「はい、ご注文をお伺いします」


結月「フルーツセットお願いします」


マリ「畏まりました〜」

スタスタ...


結月「キマリさんがウェイトレスしているの違和感あったんですけど、
   なんか慣れてしまいましたね」

栞奈「……そうだね」


マリ「フルーツセット入りました〜」

明菜「鳥羽さんと白石さん……?」

綾乃「地縛霊なんていないね」

料理長「今日も余った食材で作ってみる?」

マリ「え!? いいんですか!?」キラキラ


結月「お金払いますからちゃんとしたものをお願いします!!!」


マリ「え〜……?」
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/29(土) 11:55:36.20 ID:VPz5jp53o

栞奈「どういうこと?」

結月「みことに聞いたんですけど、とんでもないものを作ったとか……」

栞奈「……なるほど」

結月「その、みことの姿が見えませんね……?」

栞奈「もう寝ちゃったんだって。キマリの特製スタミナドリンクを飲んだせいで」

結月「うわ……」


マリ「結月ちゃーん、すっぽんのエキスがまだ残ってて――」


結月「フルーツセットを! ちゃんとしたもので!! アレンジ無しでお願いします!!!」


……




マリ「おまたせしました……フルーツセットです……」

結月「なんで不満そうに持ってくるんですか」

マリ「だって、結月ちゃんの疲れを癒してもらおうと思ったのにぃ」

結月「料理長が手を加えるならいいんですけど」

マリ「……」

結月「なんで黙るんですか?」

マリ「みんなひどい……」シクシク

スタスタ...


栞奈「……」ジー

結月「栞奈さんも良かったら食べます……?」

栞奈「……」ジー

結月「なんですか?」

栞奈「結月ちゃん、あの3人と話してるとき、ややツンツンしてるよね」

結月「ややツンツンとは?」

栞奈「私にはちょいツンツンしてる感じ」

結月「すいません、意味が分かりません。よかったらどうぞ」

栞奈「ありがと……」

結月「料理長のスウィーツも食べたかったんですけど、この時間ですからね」

栞奈「さすがだね、体系管理も気を遣ってるわけだ」

結月「それくらいはしますよ。年頃の女子は特に」

栞奈「まぁ、そうね」


マリ「結月ちゃん、フルーツソースをどうぞ」


結月「あの、カロリーを気にしてフルーツセットだけにしているんですけど……」

マリ「大丈夫だよ、手作りだから」

結月「いえ、あの……お気持ちだけで充分です」

マリ「美味しいと思うんだけどな……」
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/29(土) 11:58:17.81 ID:VPz5jp53o

結月「キマリさんが作ったんですか?」

マリ「ううん、料理長が作ったんだよ。カロリー気にするだろうからって、低カロリーらしいけど……
   気にしてるんならしょうがないよね」

結月「ありがとうございます、それではいただきますね」

マリ「あれ? あれれ?」

栞奈「女の子はね、美味しいものに弱いんだよ」

結月「はむっ……うぅ〜ん、甘さ控えめだけど、香りがふんわりとしてますぅ〜」

マリ「実は私が作ったんだよね」

結月「嘘ですね。はぁ〜、苺の酸味が柔らかくなって、でも甘さはそのままで美味しいです〜♪」ウットリ

栞奈「疲れ癒せてるみたいよ。やったね、キマリ」

マリ「もっと……もっとだよ」

栞奈「なにが?」

マリ「もっと私が癒して見せる……!」

テッテッテ


明菜「玉木さん、走ってはいけませんよ」ニコニコ

マリ「ご、ごめんなさい……。料理長! ムースありましたよね!?」

料理長「あるけど?」

マリ「使って良いムース全部私にください!」

料理長「駄目に決まってるだろ!」


結月「何かするつもりですよね……」

栞奈「そうだね……」

結月「もし何か持ってきたら栞奈さん、対応をお願いしますね」

栞奈「結月ちゃんのために持ってきても?」

結月「カロリーの条件を忘れてるみたいですから。一口くらいはいただきますけど」

栞奈「ふぅん……そう……」ニヤニヤ

結月「なんですか?」

栞奈「ツンツンしてるけど、嬉しそうだな〜って」

結月「このソースが美味しいですからね……。うーん、りんごも美味しいです♪」

栞奈「からかい甲斐の無いこと……。幸せそうな結月ちゃんみて私も幸せだけど」

結月「栞奈さん、大村さんと話したんですか?」

栞奈「へっ……!?」

結月「まだなんですね」

栞奈「そ、そうね……まだ……」

結月「夜の車内って静かですよね……」

栞奈「……うん」

結月「食べないんですか?」

栞奈「胃が痛くて食欲がなくなったよ……」

結月「……」
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/29(土) 12:01:15.10 ID:VPz5jp53o

マリ「煎茶でございます」


結月「ありがとうございます。これはキマリさんが?」

マリ「……明菜さんが淹れました」

結月「渋めのものが欲しかったので嬉しいですと、お伝えください」

マリ「次は私が淹れますから、乞うご期待」

結月「……期待しています」

マリ「期待してないね。いいもんいいもん」

スタスタ...

結月「いい人たちですよね、ウェイトレスの二人も料理長も」

栞奈「この列車に乗ってる人はみんな、ね」

結月「そうですね」

栞奈「……ふぅ」

結月「もぐもぐ……んんっ、酸っぱいです」

栞奈「パインアップル?」

結月「そうですっ……んん〜っ」

栞奈「ふぇ〜、酸っぱさに我慢してるところかわいい〜」

結月「それで、間もなく到着ですけど、どうするんですか?」

栞奈「うぅっっ……それは……」


マリ「お茶のお代わりはいかがですか?」


結月「まだ入っているんですけど……ちょっと待ってください」

栞奈「くぅぅっ」

マリ「栞奈ちゃん、どうしたの?」

栞奈「結月ちゃんの不意打ちボディブローが効いてて……」

マリ「?」

結月「お願いします」

マリ「はい、どうぞ〜」

ジョボジョボ

結月「これは、キマリさんが?」

マリ「ううん、明菜さんが」ニコニコ

結月「……そうですか。……ずずっ」

マリ「どう? どう!?」

結月「さっきより薄い……」

マリ「……」
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/29(土) 12:02:09.23 ID:VPz5jp53o

結月「美味しいです」

マリ「よかった。ちょっとコツを掴んだから〜」

結月「明菜さんが淹れてくれたんですよね?」

マリ「……ウン」

結月「それなら美味しいですね」

マリ「ウン……ソウダネ」

スタスタ...

結月「あ、キマリさん、美味しかったですよ……!」


マリ「うん!」


栞奈「……」

結月「栞奈さん、私、これ食べ終わったら個室に戻ろうかと思うんですけど……」

栞奈「うん……」

結月「……もぐもぐ」

栞奈「最初のお茶と今のお茶、どっちが美味しいの?」

結月「どっちも美味しいですよ?」

栞奈「そう……そうだよね」

結月「?」

ガタン

 ゴトン



―― 報瀬の個室


ガタン

 ゴトン


報瀬「……ん?」


報瀬「あれ……走ってる……?」


報瀬「? ……???」


報瀬「まぁ……いいか」


報瀬「……」


報瀬「すぅ……すぅ……」
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/29(土) 12:20:53.81 ID:VPz5jp53o

―― 食堂車


結月「キマリさん、ご馳走様でした」


マリ「はーい」


綾乃「今日はもうお休みですか?」

結月「はい、明日の準備……というか、台本を読み直して寝るだけです」

綾乃「そうですか、おやすみなさい」

結月「おやすみなさい」

マリ「今日はもう寝るんだよね、おやすみ。また明日ね」

結月「はい……また、明日」

スタスタ...


マリ「あとは栞奈ちゃんだけだね」

綾乃「なにか難しい顔してる……」

明菜「いまはそっとしておきましょう」

綾乃「……はい」

明菜「玉木さんのおかげで今日は早めに片付けられそうだから、
    到着次第閉めて、明日に備えましょう、とチーフが仰っていました」

マリ「はい!」

綾乃「それじゃ、食器をしまってきます」

マリ「私は……テーブルと椅子を整理整頓して、掃除してきます」

明菜「はい、お願いします」ニコニコ



……




―― 日向の個室


ゴソゴソ


日向「明日は……何時起きだっけ……?」

ピッ

日向「五時……早いか。六時……くらいかな」

ピッ


日向「よし……!」


ゴソゴソ


日向「…………」


日向「……」


日向「すやすや」


……


373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 01:47:08.98 ID:GYsMFmGgo

―― みことの個室


みこと「すぅ……すぅ……」


ガタン

 ゴトン



……




―― 食堂車


明菜「チーフ、今日の作業一通り終えました。他にやることありますか?」

料理長「もう終わってしまったのか……。そうだなぁ……明日の準備もやったし……」

綾乃「キマリさんが手伝ってくれたから早く終わってしまいましたね」

マリ「栞奈ちゃん……」


栞奈「……すぅ……はぁ」


綾乃「あ、外がだんだん街並みの景色になってきた」

明菜「到着までもう少しね」

料理長「綾乃は明日の昼から夕方まで休みだったよな」

綾乃「はい、お願いします」

明菜「観光に行くの?」

綾乃「キマリさん達となわとび大会に出るんです」

料理長「ふぅん……」

明菜「応援に行けないけど、頑張ってね」ニコニコ

マリ「はい!」

綾乃「頑張るものなのかな……?」

料理長「それじゃ閉めるよ」

綾乃明菜「「 はい 」」

マリ「料理長!」

料理長「うん?」

マリ「さっき作ったプリン、食べてもいいですか!」

料理長「明日にしなさい」

マリ「待ちきれないです!」

綾乃「プリンおばけ……」

明菜「クスクス」

料理長「それじゃ、7日目、お疲れさま」

綾乃「お疲れさまでした」

明菜「お疲れさまでした」

マリ「お疲れさまでした!」


ガタン

 ゴトン
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 01:48:39.20 ID:GYsMFmGgo

マリ「あれ、プリンのこと流された……?」

料理長「あとは最後のチェックするだけだから、個室に戻っていいよ」

綾乃明菜「「 はーい 」」

マリ「やっぱり流されてる!」ガーン

明菜「それじゃ、また明日ね」ニコニコ

綾乃「はい、また明日」

マリ「また明日〜」


栞奈「……」


マリ「栞奈ちゃん、もうそろそろ到着するよ」

栞奈「あ、うん……」


ガタン

 ゴトン


マリ「減速したね」

栞奈「……うん」

マリ「……ね、栞奈ちゃん」

栞奈「うん?」

マリ「明日、楽しもうね」

栞奈「……」

マリ「みんなで世界記録とか目指して、いっぱい跳んで、最後まで」

栞奈「……」

マリ「絶対楽しいよ」

栞奈「うん、それは間違いなく楽しいね」

マリ「だよね!」

栞奈「……よし……!」ガタッ

マリ「おぉっ!」

栞奈「……」ストッ

マリ「なんで座りなおしたの!?」

栞奈「あはは、一応やっておこうかと」

マリ「もう〜、ちょっとカッコいいって思ったのに〜」

栞奈「ごめんごめん。それじゃ、行こうか」

マリ「うん」


……


375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 01:51:43.44 ID:GYsMFmGgo

―― 2号車


マリ「本当に誰も居ないね……」

栞奈「キマリ、ありがとね」

マリ「え……?」

栞奈「報瀬と日向に話聞いてもらって、結月ちゃんにも気にしてもらって、
    キマリに甘えて、ようやく決心がついた」

マリ「……」

栞奈「私もちゃんと相手と、自分にも向き合おうって。だって、後悔したくないから」

マリ「うん……!」

栞奈「器用に生きてきたはずなのに、なんにも手に入らなくてさ。
   不器用なのに、大切な物を持ってるキマリたち見てたら、
   もっと自然に、気楽にしてた方が楽しいんじゃないかって気が付いた」

マリ「そっか……うんうん」

栞奈「もうちょっと肩の力抜いて、……そう、今のような気持ちで」

マリ「……」

栞奈「これからもこんな気持ちでやっていけたらいいなぁ」

マリ「できるよ、栞奈ちゃんなら」

栞奈「うん、ありがと。やっぱり、あれだね。
    見聞を広げないと自分の居た場所がどういうものなのか分からないものだね」

マリ「……ウン、ソウダネ」

栞奈「うーん、生返事だ。……とにかく、一輝とちゃんと話してみる」

マリ「うん」

栞奈「正直、どうして怒らせちゃったのか分からないんだけど……」

マリ「思い当たる節は?」

栞奈「あるにはあるんだよ。やっぱり冷やかしすぎたかなぁ……?」


ガタン


 ゴトン


マリ「あ、到着した」

栞奈「ついに来たか、金沢」

マリ「そうだ、私も確認しておかないと」


……


376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 01:53:40.52 ID:GYsMFmGgo

―― 寝台車


マリ「……よし、と」ポチポチ

栞奈「誰に連絡してるの?」

マリ「明日になったら分かるよ」

栞奈「ふぅん……って、寝台車に来ちゃったか」

マリ「それじゃ、また明日〜」

スタスタ...

栞奈「うん、明日〜……って、キマリ、個室戻らないの?」


「車掌さんとこ行ってくる〜」


栞奈「どうしたんだろ? まぁいっか。私は、自分のこと考えなきゃ」


栞奈「えっと……一輝の個室は……」


栞奈「……」ゴクリ


栞奈「……」


コンコン


栞奈「一輝……話があるんだけど――」


……


377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 01:55:33.42 ID:GYsMFmGgo

―― 動力車


コンコン


マリ「……」


ガチャ

車掌「あら? どうかなさいましたか?」

マリ「忙しいところすいません……。あの、乗車証のことで聞きたいことがあって……」

車掌「はい、なんでしょうか?」

マリ「乗車証の有効期限って、東京までですよね?」

車掌「はい、玉木さんの有効期限はそうなります」

マリ「延長……というのは出来るのでしょうか?」

車掌「はい、可能ですよ。東京以降となりますと、仙台、青森、札幌……終点の稚内までになりますね」

マリ「……そうですね」

車掌「お悩みですか?」

マリ「そうなんです。どうしようかと――」


ドタドタドタ


「車掌さん!!」


車掌「あら……?」

マリ「栞奈ちゃん……?」


栞奈「車掌さん……ッ!」


車掌「鳥羽さん、夜はお静かに」

栞奈「はいっ……すいませんッ! 一輝は……!!」

マリ「?」

栞奈「一輝は……!?」

車掌「――……」

マリ「大村君がどうしたの?」

栞奈「個室に居なくて……! ドア開いてたから……中見たら空っぽで……!!」

マリ「え……?」

車掌「大村一輝さんは、降りられましたよ」

栞奈「え――?」

マリ「降りた……!?」

車掌「はい、着いてすぐに」

栞奈「う…そ……」

車掌「乗車証を返されまして、そのまま降りられました」

マリ「……栞奈ちゃん……」


栞奈「嘘……謝らせてもくれないの……?」


マリ「栞奈ちゃん、着いてすぐ降りたなら追いかければ間に合うよ!」


栞奈「…………」
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 01:57:01.17 ID:GYsMFmGgo

―― 金沢駅・前


ブオォォォオオ


...タッタッタ


マリ「ハァッ……ハァ……ッ」

栞奈「ッッ!」


マリ「ハァ……はぁ…………はぁ……」

栞奈「い……ッ……居ない……か……」


マリ「……栞奈ちゃん…」

栞奈「みんなにさ……ッ……支えてもらって……ッ」


マリ「……」

栞奈「背中押してもらって! やっと……決心がついたと思ったらこれだ!」


マリ「栞奈ちゃん……」

栞奈「なんで私いつもこうなんだろ……! あぁもう自分が嫌になる!!」


マリ「栞奈ちゃん……!」

栞奈「こんなことになるならデネブになんか乗らなければ――!!」


マリ「栞奈ちゃん!!」

栞奈「ッ!」ビクッ


マリ「まだ、終わってない」

栞奈「……」

マリ「この旅はまだ終わってない」

栞奈「……」

マリ「終わってないよ」

栞奈「……」


マリ「今日はもう寝よう。そして、明日だよ」

栞奈「なんで終わってないって言えるの? もう私の旅は終わったようなものじゃない?」

マリ「どうして終わったって言えるの?」

栞奈「結局何も変わらなかったからだよ。
   楽しい思い出を守るために行動したのに……しようとしたのに、意味が無かった」

マリ「意味が無いことなんてないよ」

栞奈「……」

マリ「車掌さん、何も聞いてないって言ってた」

栞奈「……乗車証返されたって言ってたじゃん」

マリ「それだけだよ」

栞奈「……?」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 01:58:09.40 ID:GYsMFmGgo

マリ「乗車証返されただけ。それから慌てて降りて行ったってだけ」

栞奈「何が言いたいのかよく分からない」

マリ「お礼を言われたって、車掌さん言ってない」

栞奈「だから、何が言いたいのか――」

マリ「大村君の旅もまだ終わってないんだよ」

栞奈「――……」

マリ「栞奈ちゃん、大村君は挨拶も無しに、お礼も言わずにお別れする人?」


栞奈「……」


マリ「……」


栞奈「ううん」


マリ「……」


栞奈「ぶっきらぼうで、常にイライラしてるような態度してて、口も悪いけど……」


栞奈「礼儀はちゃんとしてるから」


栞奈「この旅は悪くないって言ってたから」


栞奈「こんな終わり方はしない……と、思う」


マリ「うん」


栞奈「……」


マリ「今日はもう寝よう」


栞奈「……うん」



……


380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 01:59:33.63 ID:GYsMFmGgo

―― マリの個室


マリ「すぅ……すぅ……」


pipipipi


マリ「う……ん……」


マリ「すぅ……」


マリ「この秘密、暴いて見せようか」


マリ「すぅ……すぅ……すぃ……」


≪   ―― 昼には着くと思う。 ≫


マリ「しぃ……すぃ……すぅ……」


……


381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:02:11.74 ID:GYsMFmGgo

8月8日



―― 金沢駅



マリ「アレは、鳥居?」

報瀬「違うでしょ」

日向「あれはな、鼓門と言うんだよ。世界で最も美しい駅に選ばれたんだってさ」

マリ「最も美しいの!?」

報瀬「へぇ……」

日向「あ、いや……14つくらいに入るよ〜ってことで……」

マリ「報瀬ちゃん写真撮って!」

報瀬「はいはい……。それじゃいくよー」

マリ「この距離だと門が入らないよ?」

報瀬「……はいはい。ちょっと待ってて」

スタスタ...

日向「歩かせるのかよ」

マリ「あ、ごめんね、報瀬ちゃーん」


「いいから、ほら、撮るよー」


マリ「日向ちゃんも一緒に! はい〜、チーズ!」

日向「お前が言うのか! チーズ!」

パシャ


日向「それはそうと、ゆづ達おっそいな〜」

マリ「そろそろ来るよ。ありがと〜、報瀬ちゃん」

報瀬「どういたしまして。それで、どうするの?」

マリ「私は兼六園に行きたいんだ〜」

日向「報瀬は?」

報瀬「私は武家屋敷かな」

日向「渋いな。私は先に片町へ行ってみようかな?」

マリ「何かあるの?」

日向「漆塗りとか焼き物とかあるってさ」

報瀬「漆器と陶器ね……。どっちが渋いんだか」

マリ「器とか興味あったんだ?」

日向「まぁ、なくはないってところだ。時間はたっぷりあるし、後でどっか行くかもな」

報瀬「今はまだ7時……。時間はたっぷりある……けど」

マリ「私も兼六園行った後に輪島に行ってこようかな」

報瀬「兼六園の隣に金沢城があるから。キマリはそこで満足して、ね?」

日向「な?」

マリ「……なんか、この旅で私が時間にルーズというレッテルが貼られた気がする」
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:03:17.26 ID:GYsMFmGgo


結月「どこへ行くかって話してたんですか?」


結月「おぉ、ゆづ。そうだよ、午前中はどこ行くかって話」

マリ「おはよう〜」

報瀬「おはよう、3人とも」


みこと「おはよう……」

栞奈「……」


日向「うわ、栞奈の顔ひっどいな」

報瀬「本当だ……太陽の光が恨めしいって顔してる」

栞奈「…………うん」

みこと「眠れなかったみたい」

マリ「みこっちゃん、持ってるそれはなに?」

結月「アイマスクです。栞奈さんに、移動中寝てもらうとかなんとか」

日向「……話は聞いてるけど、かなり堪えてるみたいだな」

報瀬「うん……」

栞奈「……」

マリ「お兄さんは?」

みこと「さっき声かけてきたよ。現地集合するって」

マリ「そっか……。じゃあ、午後まで各自自由だね」

日向「そうだな! 午後は片町の会場に集合ってことでいいな、みんな!」

マリ「おー!」

報瀬「うん、分かった」

結月「はい、分かりました」

みこと「……」コクリ

栞奈「……」


……


383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:06:27.50 ID:GYsMFmGgo

―― 昼前:金沢城・公園


ミーンミンミン

 ジーワジーワ


「……暑い」

「はい……暑いですね……」

「会場、ここで合ってる?」

「……はい。片町の公園が会場ですから……」

「まぁ、スタッフや他の参加者もいるし……なにより弾幕もあるからな」

「ですよね……」

「肝心のキマリたちの姿が無いんだが……」

「ですよねぇ……」


秋槻「あれ……居ない……何で居ないんだ……?」キョロキョロ


「向こうの屋台に居るかもしれないから、見てみよう」

「そうですね。……お金持ってるのかな、お姉ちゃん…」

スタスタ...


秋槻「うーん……。高いところから見てみるか……」

スタスタ...


……


384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:12:27.45 ID:GYsMFmGgo

―― 夕方:金沢城・公園



...ダダダダッ


マリ「ひいっ、ひぃッ!」

結月「つ、着きました……!」

日向「受付ッ、受付はどこだッ!」

報瀬「結構開けた所なんだ……。あ、あっちじゃない!?」

みこと「くっ……ふっ……!」

栞奈「み、みことちゃん、呼吸整えて……」

みこと「ふぅ……ふぅぅ……はぁ」

マリ「えっと、どうしよう! 人足りてないよ!」

日向「とりあえず、順番聞いておけばいいから! 人数は後だ!」

マリ「わ、分かった」

タッタッタ

報瀬「はぁ……はぁ……もう!」

結月「だから言ったのに!」

日向「そうだぞ、栞奈!」

栞奈「違うでしょ! 日向も試食してたでしょ!?」

みこと「ぐっ……ごほっ」

「ほらよ、水。……口付けてないから」

みこと「う、うん……ゴクゴク」

「相変わらず騒がしいな、お前ら……」

報瀬「おかげで武家屋敷行けなかったじゃない!」

結月「……」

日向「私は漆塗り見れたからいいんですけどね!」

栞奈「なに満足してるの!? 私も食べ歩きしたかったのに!」

みこと「栞奈さん、煎餅と輪島サイダー飲んでた」

栞奈「美味しかったけど! 日向たちが海鮮ものを試食してたのズルい!」

結月「あの、栞奈さん」

報瀬「マグロ、解体、見た、凄い、私、感動」

栞奈「原始人みたいなしゃべり方するほど!? 見たかったなー!」

日向「いや、だから……カニとか買って料理長に渡したじゃんか」

栞奈「え、……ということは、私も食べられるの?」

日向「具材さえ買ったら料理するって言ってくれただろ」

栞奈「あれ、そういうことだったの?」

みこと「うん、料理長も一緒に居たよ」

栞奈「なんだ、そういうことは早く言ってよ」

報瀬「武家屋敷……」

「……」
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:15:18.62 ID:GYsMFmGgo

結月「あの、栞奈さん……」

栞奈「うん? どうしたの、結月ちゃん」

結月「後ろ……」

栞奈「?」クルッ

「どこ行ってたんだよ?」

栞奈「え――……、一輝……?」

一輝「なんだよ?」

栞奈「…………」

結月「輪島の朝市に行っていたんです」

一輝「輪島? 結構遠いんじゃないのか」

日向「いやぁ、朝に行動開始したんだけど……会場と目的地が一緒だからさ」

報瀬「他に行きたいところ先に行こうってなって。キマリの案に乗ったら……このありさま」

みこと「現地に居たの、30分も無かった」

一輝「それはご苦労なことだ……。あれ、どこ行った?」キョロキョロ

日向「というか、いきなり降りるなよな〜」

一輝「なにが?」

日向「誰にも言わずに降りただろ、びっくりしたんだからな」

一輝「秋槻さんにメモ渡したんだけど。急いでるから降りるって。明日の大会には行くからって」

日向「聞いてないけど?」

一輝「あ、なんであんなに離れてんだよアイツ」

報瀬「?」

一輝「おい、こっちこいって」


「……」


結月「誰ですか、あの男の子」

日向「お、可愛いな〜。女の子みたい」

みこと「うん」

栞奈「ひょっとして、妹?」

一輝「うん、俺の妹」

妹「……」

日向報瀬「「 えッ!? 」」

結月「だって、男の子の服着てますよ?」

一輝「可愛い服とか嫌がるんだよ」

妹「兄ちゃん……この人たちが旅仲間なの?」

一輝「バッ……ち、違……!」

栞奈「へぇ……」ニヤニヤ

日向「ふぅん……そう言ってたのか」ニヤニヤ

一輝「チッ……」

妹「……」
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:17:47.93 ID:GYsMFmGgo

みこと「あ……」


秋槻「あぁ、やっと来た……。来ないからどうしようかと思ったよ」

綾乃「本当に……」


結月「秋槻さんと綾乃さん、もう来ていたんですね……」

日向「二人とも待たせてごめんな〜」

秋槻「どこ行ってたの? もう大会も終わるよ?」

みこと「終わり?」

綾乃「今の人たちが最後ってさ」

日向「えーーッ!?」

報瀬「はぁ……なにそれ」


「きゅうじゅうきゅー!」

「ひゃーっく!!」


「やったー!!」

「よっしゃー!」


ワァァアアア!!!


司会「おめでとうございます! 100回達成しました!」


結月「盛り上がっていますね」

一輝「100回達成したの今のチームだけだからな」

妹「兄ちゃん、お腹空いたぁ」

一輝「お前、さっき何もいらないって言ってただろ」

妹「そうだけどぉ」

一輝「しょうがねぇな……」

報瀬「妹には優しいんだ」

一輝「別に……優しいとかじゃないですけど……」

日向「キマリは何してるんだ?」

みこと「まだ戻ってきてない」

秋槻「あっちの店のケバブが美味しかったよ」

妹「食べたい!」

一輝「分かったから。じゃ、ちょっと俺たち行って――」


マリ「みんな、みんなー!」

「……」

「……」

387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:20:29.66 ID:GYsMFmGgo

結月「戻ってきましたね」

報瀬「慌てて、どうしたんだろう?」

日向「……あれ、後ろに居るのって」

結月「リンと……?」

報瀬「――……」

みこと「……?」

栞奈「誰かな?」


マリ「良かった! 大村君とお兄さんもちゃんといる!!」


一輝「……」

秋槻「せっかく集まったけど、もう時間が無いんじゃないかな」

綾乃「うん、一人足りないし」

マリ「大丈夫! すぐに向こうに行って跳ぶよ!」


一同「「「 えっ!? 」」」


マリ「みんな、移動移動〜! 急いで〜!!」


……




司会「さぁ、大遅刻の『チーム・デネブ』のみなさん、準備はよろしいでしょうか」


マリ「はい、バッチリです」

日向「待て待て待て待て! ちょっと待てキマリ!」

マリ「?」

結月「すいません、あと少しだけ待っていただけますか?


司会「はい、分かりました」



マリ「どうしたの?」

日向「どうしたの、じゃない。
    いきなり集めて、さぁ跳ぶよじゃ上手くいくものも上手くいかないだろ」

報瀬「……」

みこと「キマリさん、紹介して……?」

「……」


マリ「あぁ、そうだね。えっと、向こうに居るのが、私の妹のリンだよ。
   それで、こっちが私の幼馴染で『親友』の――」

「高橋めぐみ、です」ペコリ

マリ「めぐっちゃん!」


報瀬「…………」


栞奈「……あの、さ」

一輝「なんだよ?」
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:21:54.51 ID:GYsMFmGgo

栞奈「報瀬、変じゃない?」

一輝「変……?」

栞奈「なんかね、表情が険しいって言うかね」

みこと「……うん」

栞奈「みことちゃんもそう思う?」

みこと「なんだか、怖い」

一輝「……確かに」


報瀬「…………」


マリ「で、めぐっちゃん。旅の途中で出会った、秋槻さんに、大村君、栞奈ちゃん、みこっちゃん!」

めぐみ「どうも。キマリがお世話になっています」ペコリ

秋槻「いえいえ」ペコリ

一輝「……ども」

栞奈「本当に、お世話しています」ペコリ

みこと「……」ペコリ

マリ「食堂車でバイトしている、綾乃ちゃん」

綾乃「よろしくお願いします」ペコリ

めぐみ「うん、よろしく」


マリ「よし、それじゃ――」

日向「次は作戦だ。私が順番を決めるぞ」

マリ「順番?」

日向「並びだな。適当に配置してもよくないだろ」

結月「意味あるんですかね」

日向「もちろんある。先頭は――キマリ!」

マリ「うん!」

日向「次は――ゆづ!」

結月「はい」

日向「その次が私で――順に、

   綾乃、

   栞奈、

   大村、

   秋槻さん、

   みこと、

   めぐみちゃん

   報瀬、で行くぞ!」   

マリ「オッケー! じゃ並んで並んで」

栞奈「一輝、変なとこ触らないでよ」

一輝「うるせえ」
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:23:36.13 ID:GYsMFmGgo

秋槻「……マズい」

みこと「どうしたの?」

秋槻「いや、なんでもない」

みこと「……?」

めぐみ「……」

報瀬「……」


マリ「そういう作戦なんだ……。ありがとう日向ちゃん」

結月「報瀬さんを最後尾にしたのには、なにか意味があるんですか?」

日向「私もあの二人の話は聞いてるから」

結月「あの二人になにかあったんですね……」

マリ「まぁ、うん。めぐっちゃん、謝ったんだけどね……」

日向「そこは二人の問題だな。よし、それじゃ報瀬!」


報瀬「……?」


日向「始まる前に、一言頼んだ!」


報瀬「えっ!? 私が!?」


綾乃「?」

栞奈「なぜ?」

一輝「……?」

秋槻「……目が……乾いてきた」

みこと「報瀬さん……?」

めぐみ「……」


報瀬「わ、私たち出会って一週間しか経ってないけど!
   過ごしてきた時間はそれ以上だから! それ以上ないほど跳べる!!」


綾乃「どういう意味〜?」

栞奈「クックック、良いこと言うじゃん報瀬〜」

一輝「マジか……」

栞奈「足引っ張らないでよ、一輝」

一輝「お前もな」

秋槻「……ふぅ」

みこと「……っ」

秋槻「大丈夫、楽しめばいいんだよ」

みこと「う、うん」

秋槻「回数指定してないし――」


マリ「めぐっちゃん、目標は!?」


めぐみ「――に、にひゃく!!」


綾乃「……!?」
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:25:26.41 ID:GYsMFmGgo

栞奈「プッ、アハハハ! さすが幼馴染!」

一輝「マジか!」


日向「よく言った、めぐみちゃん!」


秋槻「……やってやろうじゃないか」

みこと「……ふふ」

秋槻「?」

みこと「――楽しい」


司会「準備はよろしいでしょうか!」


マリ「はい!」


司会「今話題の超特急列車に乗車している、チーム・デネブのみなさんです!」


結月「なんだかドキドキしますね」

マリ「うん! みんなとどこまで行けるんだろうってワクワクする!」

結月「ですね!」


日向「みんなー! 行くぞーー!!」


マリ結月「「 おぉーー!! 」」

綾乃栞奈「「 オー―!! 」」

一輝「よし、来い……!」

秋槻「……ふぅぅ」

みこと「オー……!」


めぐみ「……私は乗客じゃないんだけど」

報瀬「200回越えたら、許す」

めぐみ「分かった」

報瀬「……」フンス!


司会「最後なので制限は付けません、存分に跳んでください!!」


「がんばれー!!」

「目指せ新記録!」


結月「応援してくれてますね」

マリ「ニヒヒ」


司会「それでは回してください!!」


係員「行きます!」


マリ結月日向「「「 せーーっっの!! 」」
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:27:18.82 ID:GYsMFmGgo

綾乃栞奈一輝「「「 せーーっっの!! 」」

秋槻「……!」フラッ

みことめぐみ報瀬「「「 せーーっっの!! 」」」


ぶんっ


マリ結月日向「「「 イーーチ!! 」」


パシッ


秋槻「――!?」

みこと「いーち……?」


綾乃栞奈一輝「「「 にーぃ……? 」」」

めぐみ「……ん?」

報瀬「え……」


司会「おや? 止まってしまいました……」


マリ「え?」

結月「?」

日向「ストーップ!! みんな動くなよー!!」


綾乃「えっと……?」

栞奈「どうしたの?」

一輝「……誰だ、跳べなかったのは?」

秋槻「……」サッ

みこと「――!」

めぐみ「……」


日向「縄を越えていないのは誰だー!?」


報瀬「違う!!」


日向「報瀬!! おまえかー!!」


報瀬「違うってば!!」


マリ「えぇ……」

結月「報瀬さんが……?」

綾乃「ウソぉ……」

栞奈「あれだけ士気を上げてたのに……」

一輝「マジか……」
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:29:27.91 ID:GYsMFmGgo

秋槻「…………」

みこと「……」クイッ

秋槻「……はい」

みこと「……」


日向「お前だけ縄越えてないじゃないか!」

報瀬「だ、だからそれは! ジャンプした後に戻ってきて!」

日向「そんな都合よく行くか〜?」

報瀬「本当なんだって!」


秋槻「はい……」スッ


マリ「ん?」

結月「日向さん!」


日向「信頼に傷をつけるようなこと――……どした、ゆづ?」

報瀬「私じゃない!」


結月「秋槻さんが手を挙げてます」


日向「?」


秋槻「はい……跳べなかったのは私です」


日向「はい?」


一輝「でも、縄を越えてますけど……?」


秋槻「移動して縄を越えたように見せました。つまり、隠蔽しました」


日向「マジか、みこと」


みこと「うん……っ」

めぐみ「縄が戻ってきたのは本当」


報瀬「……」


日向「あ、秋槻悟さん〜〜!! あなたって人は〜〜!」アセアセ


報瀬「日向……」ゴゴゴ


日向「すいませんでしたー!」ペコリ


報瀬「信頼がどうとか言ってたよね」ゴゴゴ

日向「いや、あはは〜、誰だって間違えることってあるよな〜」アハハ

報瀬「それで言い逃れできると思ってるの?」ゴゴゴ

日向「ハイ、ゴメンナサイ」
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:31:37.76 ID:GYsMFmGgo

秋槻「はは……面目ない……」


みこと「ぷふっ……」


結月「みこと……?」


みこと「ふふふっ、大人ってズルい」


秋槻「つい、罪から逃れようとしてしまいました……」


みこと「ふふっ、ふふふ」


めぐみ「キマリ、1回も跳べなかったという結果なんだが」

マリ「そう……だね」

結月「フフッ、私たち、1回も跳べませんでしたね」

綾乃「ね〜。10回は跳べると思ってたのに」

栞奈「アハハハ、私たち1回も跳べてないよ一輝!」

バシバシ

一輝「痛いから叩くな! でも、笑うしかないなこれ」


報瀬「私は跳んだけどね」フフン

日向「ソウデスネ」


秋槻「……ハハ」

みこと「ふふ、あはは」

めぐみ「ふふ、群馬から来て結果がこれなんて」

マリ「私も予想外だったよ、あははは」


「ワハハハ!」

 「ハハハハ!」



男「……」

パシャ



司会「もう一度挑戦できますよ?」


マリ「いえ、私たちの結果は0回で!」


……




秋槻「……」フラフラ

みこと「あっちにベンチがあるよ」

秋槻「うん……」フラフラ

みこと「……」
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:33:58.84 ID:GYsMFmGgo


秋槻「ふぅ〜……」ストッ

みこと「眠たいの?」

秋槻「んー……さすがに二徹はね……」

みこと「……徹夜二回?」

秋槻「……仮眠……くらい……ね」

みこと「……」ストッ

秋槻「……すぅ」

みこと「……?」

秋槻「すぅ……すぅ……くぅ……」

みこと「……寝ちゃった」


男「こんなとこに居たのか……」


みこと「?」


男「あーぁ、だらしない顔しちゃって……」スッ


みこと「あなたは?」


男「そこでアホ面で寝てる男の友人」


秋槻「すぅ……す…ぅ」

みこと「……」


男「君は写らないようにするから安心して」


みこと「……」

秋槻「くぅ……かぁ……」


男「……当の本人が安心しきってるのがなんともまぁ…」


日向「なんだなんだ?」

マリ「写真かな?」

報瀬「記念撮影?」

結月「寝てる人をですか?」


男「あぁ、君たちは同じ列車に乗ってるんだったね」


栞奈「そーなんですよ」

一輝「あなたは誰なんです?」


男「悟の友人」


綾乃「悟?」

めぐみ「?」

リン「誰、お姉ちゃん?」

マリ「秋槻さんのことだよ、リン」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:36:45.47 ID:GYsMFmGgo

リン「だから、誰なの?」

めぐみ「名前を言われても分からないな?」

妹「?」

報瀬「そこで寝てる人」


秋槻「すぅ……くぅ……」

みこと「……」


日向「よし、みんな入れ入れ」

結月「邪魔じゃないですか?」


男「クカカ、いいよ、入って入って」


報瀬「変な笑い方してるけど大丈夫なのこの人?」ヒソヒソ

栞奈「大丈夫じゃない? みことちゃんも警戒してないし」

一輝「どんな基準だよ」

妹「……」

マリ「めぐっちゃんもリンも入って入って〜」

めぐみ「いいのか?」

リン「私たち乗客じゃないよ?」

マリ「いいって、ほら早く〜。みこっちゃん、隣座るね〜」

みこと「うん」

秋槻「すぅぁ……んん……」

日向「みんな、ベンチを囲め囲め」

報瀬「はいはい」

結月「いいんですかね、一人だけ爆睡してるのに」


男「じゃ、撮るよ。ハイ――」


マリ「金沢城!」


パシャ


男「写真は後でソイツに渡しておくから。それじゃ」

スタスタ...


みこと「……」

秋槻「くぅ……すぅ……」

マリ「行ってしまったね」

報瀬「それで、これからどうするの?」

日向「閉園まで出店やってるみたいだから見てみよう」

栞奈「賛成〜、私お腹すいちゃって」

一輝「輪島で食べなかったのか?」

栞奈「まぁ、うん」
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:38:24.61 ID:GYsMFmGgo

妹「兄ちゃん〜」

一輝「分かってるよ、ケバブだろ?」

妹「うん!」

栞奈「一輝、食べたことあるの?」

一輝「いや、無いけど……」

栞奈「フッ、時代に取り残されてるね、あんた」

一輝「ファーストフード食べたことなかったお前に言われたくないけどな!」

妹「……」

栞奈「あります〜、ハンバーガーくらいあります〜」

一輝「おとといの話だろうが」

スタスタ...


「おいしかったね、京都のハンバーガー」

「観光地で全国チェーンの店入るとか信じられねーよ」


妹「……兄ちゃん!」

日向「あー、妹ちゃん、私たちと行こう」

妹「……」

マリ「綿あめ買ってあげるよ! たこ焼きもあるよ! 焼きそばも可!」

リン「お姉ちゃん……渡したお小遣い全部使っちゃいそう……」

めぐみ「ありえるな……」

結月「あれ、報瀬さんは?」

綾乃「武家屋敷行くってさ。私もデネブに戻るから、また後でね」

結月「また単独行動ですか……。はい、また後で」


みこと「……」

秋槻「くぅ……くぅ……すぅ」


マリ「みこっちゃん、どうする?」


みこと「此処に居る」


マリ「うん、分かった。お兄さんが起きたらおいでね〜」

妹「もう、兄ちゃんってば……!」

日向「まぁまぁ、あの二人は大事な話があるから、二人だけにしておこう」

スタスタ...


みこと「……」

秋槻「すぅ……ん…ん……――りさ―」

みこと「……?」

秋槻「……ん……ん?」

みこと「起きた?」

秋槻「あ……うん、……寝てたのか、俺……」

みこと「10分くらい……?」

秋槻「そっか……、ふぁぁ……!」ノビノビ
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:40:26.07 ID:GYsMFmGgo

みこと「どんな夢を見てたの?」

秋槻「ん……懐かしい……夢……だったな……?」

みこと「ありさ、さん?」

秋槻「……どうしてその名前を……って、電話に出たんだっけ……?」

みこと「うん……。それに、寝言……言ってた」

秋槻「……マジか。……懐かしい夢見てたせいだな……格好悪い……ふぁぁああ」

みこと「……高校の時の人?」

秋槻「ん……まぁ……」

みこと「好きだった人って……」

秋槻「まぁね。それより、みんなどこ行ったの?」

みこと「屋台見て回るって……」

秋槻「それじゃ、俺たちも行こうか」スッ

みこと「……今でも……その人のこと……好きなの?」

秋槻「いや、そんなことないよ。なんであんな夢を見たのか分からないけど」

みこと「……」

秋槻「それに彼女――……ありさは結婚するから」

みこと「え――」

秋槻「先日の連絡はその報告だったんだよ。披露宴に出席するのかって」

みこと「……」

秋槻「ほら、行こう。お腹減ってしまったよ」

みこと「……うん」


……


398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:57:58.13 ID:GYsMFmGgo

―― 夜・デネブ・展望車


日向「えー、乾杯の前に、みんな、スポンサーにお礼を言うようにー」


一同「「「 ありがとうございました! 」」」


秋槻「はは……いいよ、これくらいでお詫びが出来るなら安いもんだから」

結月「食べ物や飲み物以外にも……料理代金まで払ってもらって……申し訳ないです」

秋槻「いや……本当にね、気にしないで欲しいんだ。
    俺のせいで遠路はるばる来てもらったのに」

めぐみ「というより、私たちも此処に居ていいのか……?」

リン「うん……いいの? おねえちゃん……?」

マリ「大丈夫。車掌さんに話したら『今回だけですよ、ウィンク』ってオッケーもらったから」

報瀬「ウィンクを口にしたらダメでしょ」

栞奈「屋台で食べきらないで良かった……! 良かったよぉ!」

みこと「……」

一輝「俺たちも後でお礼言わないとな」

妹「うん……」

日向「どこかお店を借りてって案もあったんだけど、
    せっかく料理長が調理してくれたんだからさ、ここで食べたいだろ?」

マリ「うん!」

秋槻「本当に、これくらいなら安いもんだから」

結月「……ですね」


日向「それでーはー、改めまして。なわとび大会は惜しくも入賞には至りませんでしたが、
   私たちらしい、いい結果になったと思います」


一輝「本当にそう思ってるのか」

栞奈「艱難辛苦を乗り越え辿り着いた奇跡としか言えない数字、それはゼロ。
    無限を現す数字、それはゼロ。故に、満願成就に至る訳よ」

一輝「適当言うな」


日向「大村もここまで栞奈役お疲れ〜」


一輝「お、おう……」

妹「カンナ役?」

報瀬「あのお姉ちゃんの相手してくれたんだよ」

妹「兄ちゃんが? どうして?」

報瀬「ウマが合うってこと」


日向「この旅も終わりが近づいているので、今日は存分に楽しもう! 
    ってことで、カンパーイ!」


「「「 カンパーイ! 」」」
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 02:59:52.01 ID:GYsMFmGgo

みこと「……」

マリ「カンパ……! あれ、みこっちゃんどうしたの?」

みこと「え? あ……!」

結月「乗り遅れてしまいましたね。日向さん」


日向「はいよ。じゃ、もう一回、カンパーイ!」


「「「 カンパーイ!! 」」」

みこと「か、乾杯……!」

マリ「イェーイ!」

栞奈「一輝は始発から乗ってたんだっけ?」

一輝「いや、福岡から。ほら、美味しいから食べてみろって」

妹「貝……嫌い……」

一輝「じゃあ俺が食べるな。もぐもぐ……うん、美味しい」

妹「……」

マリ「調理した人が一流だからね!」エッヘン

リン「お姉ちゃん……」

めぐみ「なんでキマリがしたり顔なんだ?」

日向「良く知る人だからな。金沢までなんの用だったんだ?」

一輝「まぁ、ただの旅行だ。特に理由は無かったんだよな」

秋槻「もぐもぐ……。当てのない旅ね」

みこと「……」

一輝「旅って言えるほどじゃないですけどね。ほら、もう無くなっちゃうぞ」

妹「……食べる」

栞奈「うへへ、お嬢ちゃんカワイイね、歳いくつ?」

一輝「危ない人に見えるから止めろ!」

妹「10歳……」モグモグ

栞奈「そっかぁ、4年生かぁ……うちの弟と同じくらいだねぇ。これも美味しいからお食べ〜」

一輝「弟、中学生って言ってなかったか?」

栞奈「同じくらい、って言ったでしょ」

一輝「くらいの範囲が広すぎるんだよ」

栞奈「この魚ね、出世したら鰤になるんだよ」

妹「もぐもぐ……」ジー

一輝「? なんだよ?」

妹「別に……」

日向報瀬「「 兄妹だ! 間違いなく兄妹だ! 」」

一輝「そんなハモらなくても……」


結月「なんだか柔らかくなりましたね、大村さん。妹さんが居るからでしょうか」

マリ「旅の終わりだからじゃないかな?」

結月「あぁ、そうかもしれませんね。なんとなく分かります」

みこと「……」
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:00:58.35 ID:GYsMFmGgo

マリ「みこっちゃん、さっきから元気ないね? 美味しいからちゃんと食べないと」

みこと「うん……」

報瀬「どうしたの?」

みこと「……ううん、なんでもない」

結月「ほら、言って?」

みこと「…………」

結月「思ってること、言ってみる。それが、色んな事に繋がるから」

みこと「――……」

秋槻「……」モグモグ


みこと「結月さん、東京まで……?」


結月「うん、撮影もそこで終わりだから。次の仕事もあるし」


みこと「報瀬さん、日向さんは……明後日……?」


日向「そうだな……。高崎で終わり」

報瀬「松本の次になる」


みこと「キマリさんは?」


マリ「私は――……ちょっと悩み中……あはは」


一輝「お前どうすんだよ」

栞奈「私も……最後まで行こうかなって」

一輝「……」


みこと「ずっと……続けばいいのにって……思って」


結月「……」

報瀬「……」

日向「……」


マリ「すごいよね、旅って」


みこと「え?」


マリ「めぐっちゃん、リンも……二人が此処に居ることがすごい」


めぐみ「……?」

リン「どういうこと?」


マリ「だって、数日前……、ううん、数時間前までは、ここで、こんな人たちが居るって知らなかったでしょ?」


めぐみ「まぁ、うん」

リン「……」コクリ
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:03:12.72 ID:GYsMFmGgo

マリ「私も、デネブちゃんに乗る前は知らなかった。
   みこっちゃんが居ること、秋槻さんが居ること、大村君が居ること、栞奈ちゃんが居ること」


みこと「……」

秋槻「……」

一輝「……」

栞奈「もぐもぐ」


マリ「たった数日だけど、友達が出来た」


みこと「友達?」


マリ「ひぐっ」グスッ


日向「だから、泣くな」


みこと「旅仲間……じゃないの?」


報瀬「たった数日でも、友達になれる」

結月「同じものを見て、同じものを食べて、同じ時間を過ごして、同じ気持ちになれば」


マリ「きっと、良いところを見せる必要ないから。
   ありのままの自分を見せても、問題ないから」


栞奈「……」


マリ「そんな人たちと出会えるから。旅って――……すごいんだ……!」


みこと「……うん!」


一輝「始まりがあれば終わりはある。出会えば必ず、別れは来る」

妹「お母さん言ってたよね」

一輝「……うん」


みこと「……」


一輝「忘れなきゃいいんだよ。こんな濃い毎日なんてそうそうないからな」

妹「兄ちゃん、忘れない?」

一輝「忘れたくても忘れられないだろ。こんな連中のこと」

栞奈「かぁー、素直じゃないねぇ」

一輝「誰だよお前は」


マリ「だから、怖くない。むしろ、嬉しいことだよ」

みこと「うん……!」

秋槻「人は生まれながらにして旅人」

報瀬「え?」

秋槻「あ、いや……昔の曲で、そういうフレーズがあってね」
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:05:49.82 ID:GYsMFmGgo

日向「人は生まれながらにして旅人である! ――三宅日向!!」


結月「自分が言ったことにするんですか!」

日向「あはは、ダメですかね?」

秋槻「オッケーだよ」

日向「よっしゃ!」

報瀬「著作権に触れてない?」

日向「真面目か!」

みこと「ふふっ、ふふふ」

日向「あははっ」

一輝「ふっ、ははっ」

栞奈「くっくっく、あははっ」

報瀬「フフッ、あはは」

結月「ふふふっ、バカなやりとりなのに、笑ってしまいますねっ」

めぐみ「これは、一体……?」

リン「みなさんにしか分からない雰囲気ですね」


マリ「思ったんだけど、またキャンプしたいよね!?」

結月「あ、いいですね! キマリさんだけ別のテントであれば!」

日向「いいな! 焚火囲んでマシュマロ! キマリは別テントで!」

報瀬「いいかも。キマリは別で」

マリ「 ひどい!! 」

みこと「? どうしてキマリさんだけ?」

めぐみ「寝相悪いからな……」

リン「うん……部屋、別になったのそれが理由だから」

マリ「え!? そうだったの!? 意外な真実!?」

一輝「意外か?」

マリ「意外だよ! 知らなかったよ!!」

栞奈「妹ちゃんはお兄ちゃんと一緒の部屋?」

妹「うん」

栞奈「マジ?」

報瀬「兄妹仲良くてイイネ」

一輝「そのリアクションで決めました。帰ったら別な」

妹「えー!? なんで兄ちゃん〜!!」

一輝「前々から考えてたことだ、諦めろ」

妹「嫌だ」

一輝「分かったよ、テレビとかはやるから。好きなもん持ってけばいい」

妹「んー……!」

マリ「このやり取り、なにかことわざであったよね」

めぐみ「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」

マリ「それそれ」
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:07:30.86 ID:GYsMFmGgo

結月「なんだかあっさり決めましたね」

報瀬「なんで急に?」

一輝「きっかけが欲しかったんですよ。
   うちの両親が忙しくて面倒見切れるのが俺しかいなかったから」

報瀬「ふぅん……。そういえば、みことにも世話焼いてるというか、
   気にしてた感じだったから、放っておけないってことだったんだね」

一輝「……まぁ……そう……なんですかね」

マリ「そういえば、なんで報瀬ちゃんだけ敬語?」

結月「敬語というか、怯えてる風ですけど」

妹「じー……」

報瀬「……?」

妹「この人、マネさんに似てる」

一輝「バッ、指さすな!」

日向「ビビりすぎだろ〜」

マリ結月「「 似てるだけで? 」」

栞奈「ねぇ、妹ちゃん、この美人なお姉ちゃんとマネージャーさん、どう似てるの?」

妹「目と髪の毛」

報瀬「……」

一輝「……」

栞奈「それだけ?」

妹「うん」

秋槻「その共通点だけで思い出してしまうなんて、相当厳しいんだろうね……。
   というか、何部なの?」

一輝「野球部です」

秋槻「おぉ、野球かぁ」

栞奈「一輝、レギュラーじゃないのに厳しくされてるの?」

一輝「そうだよ、レギュラーじゃないのに厳しいんだよ。
   だから、レギュラーはもっと厳しいんだ」

マリ「どういう人なんだろ? 会ってみたいね」

日向「確かに。報瀬に似てるおっかない人か……」

報瀬「……」

秋槻「女子野球で話題になった高校があったよね」

一輝「あ、知ってるんですか? 部を作って1年で春大会優勝したっていう」

秋槻「そう、そこ。選手もレベルが高いって話で」

一輝「マネージャーがその学校行きたかったって毎日ボヤいてるんですよね。
   ショートとサードが滅茶苦茶上手いらしくて」


日向「野球談議始まっちゃったな」

みこと「男の人って好きだよね……」

結月「なんか、みことが大人な感じが……!」

みこと「お父さんがテレビで観てて」

結月「そうよね……」

みこと「?」

結月「なんでもない」
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:09:17.46 ID:GYsMFmGgo


さくら「その高校にね、子役時代に会ったことある子がいるのよ〜」

秋槻「子役時代……? といったら……5、6年くらいですかね」

さくら「そのくらいになるわね〜。おでこなんて出しちゃって可愛くなってたわ〜」

一輝「なんか目立ちたがり屋がいるって聞いたことあります。
   口だけじゃなくて打率も凄いって言ってて……」

さくら「あら、あんな細腕で凄いじゃない〜♪」

栞奈「……」


日向「いつの間にかさくらちゃんも交じってるな」

マリ「それより、そろそろ来るんじゃない? カニ!」

めぐみ「カニなんてあるのか?」

マリ「うん、輪島で買ってきた食材を〜、料理長にお願いしたんだよ〜」

リン「他に何買ったの?」

マリ「日向ちゃんが魚買ってたよね」

日向「アジだよ、鯵」

マリ「アジ? ……えっと、アジのアジってどんなアジだっけ」

報瀬「アジはアジでしょ」

マリ「サンマ系?」

報瀬「だから、アジ」

マリ「それが分かんないんだよ!」

結月「何の話してるんですか?」

日向「さぁな。お、来たみたいだ」


綾乃「お待たせしました〜」


マリ「来た! カニ!!」


妹「……?」

一輝「カニだってさ。気になるなら行ってこい」

妹「いい」

一輝「いいなら、別にいいけど」

妹「……」

栞奈「まったく、優しくないね〜。ほら、行こうか、妹ちゃん」

妹「……うん」


日向「で、どうやって食べるんだこれ」

報瀬「知らない」

めぐみ「中身を取り出す……のでは?」

マリ「茹でガニはあまり縁が無いから食べ方分からないね。料理長に聞いてこようか」

栞奈「まったく、しょうがないな〜。私が御指南して差し上げましょう」

結月「分かるんですか?」

栞奈「モチのツモよ」

妹「つも……?」
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:11:04.60 ID:GYsMFmGgo

報瀬「自力で上がること」

みこと「あがる……?」

報瀬「モチのロンを捩ったんだけど、ロンっていうのが、他家の牌で上がることで」

妹みこと「「 ??? 」」

栞奈「説明されると恥ずかしいわけですけど」

マリ「カニの食べ方なんてわかるの?」

栞奈「身の取り出し方なんて簡単簡単〜。まずは脚からね〜、ここを折って〜」

日向「手慣れてるな。どこで覚えたんだ?」

栞奈「小さい頃から食べてるからね。カニのカンナと呼ばれてるくらいだよ」

マリ「カニ缶だね」

リン「ぷふっ」

みこと「……ふふ」

栞奈「フッフッフ」

結月「してやったりって 顔ですね」

栞奈「はい、出来た。どうぞ」

妹「いいの?」

マリ「どうぞどうぞ」

妹「ぱくっ」

日向「お、出来た。テレビで見るような形になったぞ、栞奈!」

栞奈「やるじゃん、日向」

妹「もぐもぐ……?」

めぐみ「あまり味が分からないみたいだな……」

マリ「うっま! うまいよこれ! カニだよ!!」

報瀬「見ればわかるから」

みこと「子供のころから食べてたの?」

栞奈「うん。地元が稚内だからカニは意外と身近にあるんだよね〜」

日向マリ報瀬「「「 えっ! そうなの!? 」」」

結月「北海道生まれだったんですか!?」

栞奈「そうだよん」

リン「どうしてそんなに驚いてるの?」

マリ「だって! だって……! あれ、なんで?」

日向「広島から乗ってきて、松本で降りるって言うからさ……」

マリ「そうそう。意外過ぎてびっくりだよ」

栞奈「カニ鍋もサイコーなんだけどなぁ。みんなで食べたいね。炬燵で囲んでさぁ」

結月「あ、いいですね♪」

報瀬「疑問なんだけど、広島から乗って松本で降りる理由って?」

日向「そうだよ、最終駅の……稚内まで行けばいいだろ? お金もその方が安上がりだし」

栞奈「その通りなんだよ。うん、やっぱり最後まで行っちゃおうかな〜」
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:13:01.21 ID:GYsMFmGgo


一輝「……」

秋槻「本当だ、美味しいですねこのカニ……。部活は何されてたんですか?」

さくら「小中は空手部なの〜。高校入ってレスリング部に入って……というか、入らされて」

秋槻「随分と険しい道を歩いてきてるんですね」

さくら「でも、この道の中であなたという運命に出会えたのよね」ポッ

pipipipi

秋槻「あ、電話……ちょっと席を外します」スッ

さくら「はいは〜い」

一輝「……さくらさんはどこまで乗車するんですか?」

さくら「私? 私は結月ちゃんと一緒に降りるわよ。東京までね」

一輝「…………そうですか。仕事だから当然と言えば当然ですよね」

さくら「なによ〜、もの言いたげね〜」

一輝「将来と今って、どっちが大切ですか?」

さくら「ふぅむ……難しい質問ね」

一輝「将来の為に努力してた人が、この旅の中でターニングポイントになって……
   将来がぼやけてしまいそうになってる」

さくら「誰の話?」

一輝「……アイツです。他人の為にカニをむいてるけど、自分は食べてないヤツのことです」

さくら「栞奈ちゃんが悩んでるのね」

一輝「悩みというか……どうするんだろって思って」

さくら「さっきの質問の返しは、両方よね」

一輝「……」

さくら「今、努力していない人が将来を語ってもしょうがないし」

一輝「……ですね」

さくら「でも、努力するのは将来のためだし。ということで両方ね」

一輝「……」

さくら「でもね、私は思うんだけど、結局人それぞれなのよね」

一輝「どういうことですか……?」

さくら「私は小さい頃から親父……パパに言われて空手をやらされてたんだけど」

一輝「……」

さくら「そうやって精神や体を鍛えていても、私はこうやって芸能関係で働いてる訳でしょ?」

一輝「えっと……失礼な言い方ですけど……無駄だったってことですか?」

さくら「ううん、そうじゃないわ。
    例え、私がピアノを習ってたとしても、結局はこの仕事をやってるんだと思うのよ」

一輝「……」

さくら「私がやりたかったことは決まってたからね」

一輝「――……」


みこと「あれ?」

マリ「どうしたの?」

みこと「秋槻さんが居ない」

マリ「あ、本当だ」

結月「さっき外へ出て行きましたよ。電話じゃないですかね」
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:14:19.42 ID:GYsMFmGgo

報瀬「あれ?」

日向「どした?」

報瀬「カニが居ない」

栞奈「さっきみんなの口へ吸い込まれていったよ。完食ですね〜」

報瀬「は?」

妹「……っ!」ビクッ

報瀬「まだ食べてないんだけど!? 日向!」

日向「ん! んんん!!」パクッ

報瀬「それ2本目でしょ!?」

日向「ん、んーん」フルフル

報瀬「嘘つかないで!」

日向「もぐもぐ……ごくん。……3本目だ!」

報瀬「く……!」

日向「はぁ〜、美味しかった〜」

報瀬「し、信じられない……」ワナワナ

妹「ど、どうぞ」

栞奈「食べかけじゃないの。そこまで気を遣わなくてもいいよ〜?」

妹「で、でも……」

栞奈「大丈夫大丈夫。あのお姉ちゃんは我慢できる人だから」

報瀬「フー」

結月「狩る者の目ですね……。報瀬さん、私のどうぞ」

報瀬「いいの?」

結月「私もカニは身近にある方なので」

報瀬「ありがとう! ありがとう!!」

結月「いえいえ」

マリ「マヨネーズつけると美味しいらしいよ」

報瀬「外道ね」

マリ「ひぃぃっ!」

報瀬「あ、そうじゃなくて。高級食材を無駄にする食べ方が良くないって意味で、
   そんな食べ方をする人が信じられないってことだから」

マリ「ごめんなさいぃぃぃ」シクシク

日向「そうなんじゃないか」

栞奈「あはは」

みこと「……戻ってきた」

結月「?」


秋槻「なんか空気がギスギスしてるような?」

みこと「どこ行ってたの……?」

秋槻「友達に呼び出されてね。これなんだけど」

ペラッ

日向「んー? あ、これ!」
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:17:05.59 ID:GYsMFmGgo

秋槻「いつ撮ったの?」

みこと「秋槻さんが寝てる間に……」

秋槻「うん、まぁそうだよね……」

マリ「あはは、お兄さん変な顔〜」

結月「プリントまでしてくれたんですね」

栞奈「おぉー、集合写真だ! いいねいいね」

みこと「撮った人、秋槻さんの友達?」

秋槻「うん、わざわざ東京から出てきて、こんな写真撮ってるんだよ」


報瀬「もぐもぐ、もぐもぐ」

日向「おい、食い意地張ってないで輪に入れよ〜」


めぐみ「……ふぅ」

リン「なんだか、空気に入れませんね」

めぐみ「そうだな……」

リン「お姉ちゃんたち、楽しそう」

めぐみ「……うん」


さくら「お二人さん、こっちへいらっしゃい〜♪」


めぐみ「え?」


さくら「おいでおいで〜♪」


リン「……」


さくら「私は結月ちゃんがこの列車に乗車した企画のスタイリストを任されてるの」

めぐみ「……そうですか」

リン「初めまして……」

一輝「……」


秋槻「それから、これ」

日向「なに?」

マリ「こ、この形の箱……もしかして!」

秋槻「ケーキだって。友達から差し入れ」

妹「ケーキ? それも?」

秋槻「うん、人数が分からないから二つ用意したって」

マリ「開け……! 開けてもよろしいですか!?」

秋槻「どうぞ。みんなで食べて」

報瀬「私、苺が乗ってるやつで」

日向「まだ開けてないだろ! どこまで食い意地張ってるんだよ!」

マリ「ジャーン! おぉー! イチゴショートケーキ、定番であり王道!!」

結月「ホールケーキ……。高そうですね」
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:18:41.77 ID:GYsMFmGgo

マリ「こっちは!? おぉー!」

日向「リアクションが同じになるくらいの感動だな!」

妹「チョコだ……」

栞奈「妹ちゃん、チョコが好きなんだ?」

妹「う、うん」

日向「あ……」ピコーン

報瀬「どうしたの?」

日向「いいこと思いついた。キマリ、食堂車行って切ってこよう」

マリ「うん! ケーキだ!」

日向「落ち着け! 落とすなよ!?」

結月「私も行きますよ」

日向「いいからいいから、私たちに任せとけって〜」

結月「? お願いしますね」

マリ「あれ、何人分切ればいいの?」

日向「人数は私に任せろ。キマリは安全に運ぶことだけ考えるんだ」

マリ「なんかひどい!?」

スタスタ...

結月「日向さん、なにか企んでません?」

報瀬「……そうかも。でも、大したことじゃないでしょ」

結月「ですね。日向さんですから」

栞奈「……なにする気なの」ヒソヒソ

報瀬「分からないけど、多分、結月に関すること」ヒソヒソ

栞奈「ふぅん……それは楽しみだ」


みこと「どうしてケーキを?」

秋槻「俺が列車の旅行してるの知って、様子を見に来たらしい」

みこと「……?」

秋槻「まぁ、理解できないよね。前に電話に出たでしょ?」

みこと「えっと……ありさ、さん?」

秋槻「そうそう」

さくら「女の影……!?」

一輝「写真撮ったの男の人ですよね? どういう繋がりなんですか?」

秋槻「二人が今度結婚するんだよ。古い付き合いだからね」

一輝「へぇ……」

さくら「あらぁ、めでたいじゃない〜♪」

めぐみ「テンションが上がった……?」

みこと「……」

秋槻「君が電話に出たから、不審に思われてさ……はは」

リン「……」
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:21:17.87 ID:GYsMFmGgo

秋槻「はは……本当に、何もないんだけどね……はは……」

リン「……」

結月「リン、大丈夫だから……秋槻さんは大丈夫だから」

報瀬「警戒しなくてもいいから、ね」

リン「……はい」

栞奈「ぷっ……くくっ」

秋槻「……は……はは」


みこと「秋槻さん、平気?」


秋槻「……うん」


結月「?」

報瀬「?」

栞奈「なに、が……?」

みこと「……」

秋槻「あぁもう……恥の上塗りになるけども……旅の恥はかき捨てだから言うよ」


めぐみ「?」

リン「?」

さくら「一世一代の告白みたい……!」


秋槻「その、ありさって人は……高校時代に、好きになった人なんだ」


一輝「!」

栞奈「おぉ、それはそれは」

結月「複雑な感じですね……。だからみことが聞いたわけですか」

報瀬「……」


秋槻「前にも言ったけど、もうそんな気持ちは無いから、平気だよ」

みこと「……うん」


めぐみ「様子を見に来るくらいに、深い付き合い……ということですね」

秋槻「どうかな……? 疎遠になりがちだったけど……
    結婚の話で連絡が来るようになっただけだから」

一輝「…………後悔してるって」

秋槻「行動を起こせなかったことに、ね。彼女と今も一緒に居たいっていう後悔じゃないよ」

一輝「……」

栞奈「甘酸っぱいですねぇ。ケーキに乗った苺のように」

報瀬「……?」

結月「……」

みこと「……」

めぐみ「……」

リン「……」

栞奈「あれ、君たちリアクションが薄いね」

さくら「あら? みんな、もしかして、恋はまだ……?」
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:22:48.27 ID:GYsMFmGgo

パチッ


結月「あ、あれ? 明かりが消えましたけど……」

秋槻「停電……じゃないね。なんだろ?」

リン「向こうが明るいですよ」

報瀬「あ……それがやりたかったのね、日向」

栞奈「ワクワク」

一輝「なんだ、居ないと思ったら一緒に行ってたのか」


ウィーン


マリ「ハッピバースデートゥーユー」

日向「ハッピバースデェトゥーュゥ」


めぐみ「蝋燭まで点けてる……」

結月「誰の誕生日なんですかね?」

みこと「だれ?」

秋槻「さぁ?」

リン「……?」


マリ日向「「 ハッピィバァスデェディァ 」」


マリ「結月ちゃん〜♪」

日向「ゆ〜づ〜♪」


結月「はい?」


一輝「ふぅん、そうなんだ?」

栞奈「ううん、結月ちゃんの誕生日は12月10日生まれの射手座。
   身長152cm。血液型はA型。好きなものはケーキと暖かい場所だから……違う」

一輝「なんか怖いわお前」


マリ「はい、火を吹き消して!」

日向「しかもふたぁつ!!」


結月「なんですかこれ?」


マリ「日向ちゃんがバースデーケーキにしようっていうもんだから」

日向「サプライズなのだよ」

結月「誕生日近いの日向さんですよね?」

日向「私はさ……もう……過ぎ去った日々のことは忘れたいんだよ」

結月「そんな重い話してないと思うんですけど!
   それだったら、私より早い報瀬さんじゃないんですか?」

報瀬「私は……まだ……この歳で……居たいから……あと少しだけでも」

結月「変にドラマ仕立てにしないでくれませんか!」


妹「ロウソク買ってきたの私なんだよ?」

一輝「そうか、偉いな」ナデナデ

妹「えへへー」
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:29:09.46 ID:GYsMFmGgo


結月「って、なんでカメラ回してるんですか!」

日向「えーい、ごちゃごちゃとウルサイ!
   早く食べたいんだからさっさと消せー!」

結月「……分かりましたよ」

マリ「えっへへー」

結月「なんですか?」

マリ「結月ちゃん凄いね。去年は南極で……今年はデネブちゃんで誕生日!」

報瀬「確かに……。滅多に出来ない経験ね」

栞奈「はい、じゃあみなさん、もう一度!」


「「「 ハッピバースデートゥーユー♪ 」」」

「「「 ハッピバースデートゥーユ〜〜♪ 」」」


「「「「 ハッピバースデーディア 」」」


「結月ちゃん〜」

「ゆづ〜」

「結月〜」

「白石結月〜」

「結月お姉ちゃん〜」

「鳥羽結月〜」


結月「名字を変えないでください栞奈さん」


栞奈「おぉ、聖徳太子」


「「「 ハッピバースデ〜〜トゥ〜〜〜ユ〜〜♪ 」」」


結月「ふ、ふぅ〜〜」


マリ「わー!」パチパチ


パチパチ
 パチパチ


結月「あ、えっと……みなさん、ありがとうございます……?」

日向「なんで疑問形?」

結月「誕生日じゃないからです。誕生月ですらないですから!」

報瀬「まぁそうなるよね」

マリ「よーし、食べよう食べよう〜」

栞奈「まだ切られてないけど、包丁持ってきたの?」

マリ「ううん、もう一度食堂車もっていかないといけないの」

栞奈「あ、そうだね……包丁持って歩けないからね」

日向「二度手間だけどしょうがないな。それじゃ、切ってくるよ」

さくら「あ、ちょっと待って」

マリ日向「「 ? 」」
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:31:02.81 ID:GYsMFmGgo

さくら「結月ちゃん、写真撮りましょう」

結月「え、でも……」

さくら「仕事じゃなくて、プライベートの写真よ」

結月「は、はい……みなさん、いいですか?」

栞奈「もっちろぉん!!」

一輝「うわ、キモイ声……」

栞奈「結月ちゃんが可愛すぎてテンション上がりすぎた結果なんだよ」

一輝「そうか、ごめんなキモイとか言って……そのままでいいと思うぞ」

栞奈「こっちこそごめん……。自分を抑えることにするよ……」

妹「……」


さくら「それじゃ撮るわよ〜、ハイ!」


マリ「チーズケーキ!」

報瀬「ショートケーキでしょ?」

妹「チョコケーキだよ」

日向「真面目かお前らー! チーズケーキ!!」


パシャッ


さくら「はい、オッケー♪」


マリ「じゃ、切って来るね〜」

スタスタ...


結月「……」

報瀬「嬉しい企みだったね」

結月「……ですね」

栞奈「また火を点けて入ってきたら面白いよね」

結月報瀬「「 ………… 」」

一輝「おまえ、つまらないこと言って余韻を壊すなよ、こっち来い」

栞奈「えー、でも本当に面白くない?」

一輝「早くケーキ食べさせろって空気が出るから、紙一重で面白くない」

栞奈「フッ、時代が栞奈ちゃんのセンスについてこれないんだね」

一輝「お前は常に先にいるからな」

栞奈「お、分かってるじゃん!」

一輝「その先端から落ちてる」

栞奈「なんだとこの!」ドスッ

一輝「殴るなって」

妹「……」


……


414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:37:20.87 ID:GYsMFmGgo

リン「さっきも言ったけど、明日の朝に帰るよ」

マリ「ふーん、そうなんだぁ。どこに泊まるの?」

リン「めぐみさんと、近くのビジネスホテルに。二人の方が安いからって」

マリ「同じ方向に向かうのに別々で移動するって変な感じだね」

リン「しょうがないよ。私はもっと早い時間に出発するんだけど」

マリ「そっかぁ……」

めぐみ「北か南か……どっちにしよう……?」

妹「ふぁぁ……」

日向「もういい時間だな。そろそろお開きにしますかね」

報瀬「そうね。片付け始めましょ」

結月「日向さん、締めをお願いします」

日向「はーい、みなさーん、よろしいですかー?」


秋槻「書いてるのは宇宙が舞台なんだよ」

みこと「言っていいの?」

秋槻「これくらいなら平気。それに、まだ商品にもならないレベルだから」

栞奈「宇宙と言ったら冒険と旅がメインになりますね?」

秋槻「そうそう。そんな感じのものを書いてるよ」

あくら「あら、素敵☆」

一輝「宇宙人とか出てくるんですか?」

秋槻「いや、出てこないよ。ヒューマンドラマにするから」

栞奈「最近見た映画で最高傑作を観たんですよ」

秋槻「へぇ、どんな?」

栞奈「衰退する地球から離れて、別の惑星へ移住しなきゃいけないんだけど、
   人類に適した惑星を発見しても、技術が足りなくて移住できないって話」

秋槻「子どもの好奇心と大人の知識でメッセージを解いて物語が始まるんだよね」

栞奈「あ、やっぱり知ってました!?」


日向「盛り上がってるところ悪いんだけどぉ、いいかな?」


栞奈「え、あぁ、ごめんごめん」

一輝「知ってるか?」

みこと「ううん、知らない」

さくら「どうしたの、日向ちゃん?」


日向「お開きにしたいと思いまして。片付いたら残るのも自由ってことで」


……


415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:41:11.30 ID:GYsMFmGgo

―― 金沢駅・ホーム


妹「んん……」ウトウト

栞奈「ほら、お兄ちゃんにしっかり掴まって」

妹「うん〜……」ウトウト

一輝「悪いな、後片付け手伝わなくて」

マリ「いいよいいよ、みんなでやればあっという間だよ」

一輝「ありがと」

マリ「うん、みんなに伝えておくよ」

一輝「明日、見送りに行くからさ」

栞奈「一旦帰るの?」

一輝「いや、近くにあるホテルで。親が用意してくれてさ」

マリ「優しいご両親だね〜」

一輝「……まぁ、そんなとこ」

妹「すぅ……」

一輝「おい、立ったまま寝るな。……それじゃ」

栞奈「またね〜」

マリ「ばいばーい」


「もうちょっとだけ頑張って起きるんだ」

「うん〜……ん〜……」

スタスタ...


マリ「それじゃ、ちゃっちゃと片付けちゃおうか」

栞奈「……」

マリ「どしたの?」

栞奈「ずっとああやって妹ちゃんの面倒を見てたんだろうね」

マリ「……うん」

栞奈「両親が忙しいって言ってたから、家で独りにさせたくないんだと思う」

マリ「……」

栞奈「私のとこも似たようなもんだから分かるんだよね……」

マリ「そっか……だからあんなに懐いてたんだね」

栞奈「うん」


「おーい、キマリ〜!」


マリ「あ、日向ちゃんが呼んでる」

栞奈「そうだ、二人に言っておきたいことがあった」

マリ「ん?」


「なにやってるんだよー? 栞奈も片付け手伝え〜!」


栞奈「日向、ちょっと来てー!」
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:42:56.93 ID:GYsMFmGgo

...タッタッタ


日向「どうした? なにかあったの?」


栞奈「話したよ、一輝と」


マリ「……」

日向「……」


栞奈「ごめん、って謝ったらさ。『こっちこそ、怒鳴って悪かった。ごめん。ふふん』って」

日向「それ、大村のマネか?」

マリ「あはは」

栞奈「ちゃんと仲直り出来た。あんな気持ちで旅が終わらなくて本当に良かった」

日向「そっか……良かったな」

マリ「よかったね」

栞奈「いろいろと行き違いはあったけど、解消できてよかった。二人のおかげ、ありがとう」

日向「なにもしてないけどな」

マリ「そうそう、なにもしてない」

栞奈「それでも、助かったし……救われた。みんなに背中押してもらわなかったら、
   きっと、私から謝ることなんて出来なかったから」

日向「……」

マリ「……」

栞奈「以上です。さ、片付け片付け」

日向「……え?」

マリ「もうちょっとみんなで話してたいよね〜」

栞奈「したいよね〜、ってか、しよう!」

日向「ちょっと待って、終わり?」

マリ「?」

栞奈「終わり……って?」

日向「いや、二人が仲直り出来た。それはよかった……で、次は?」

マリ「次?」

栞奈「???」

日向「あれ、……いや……もっとこう……なにかあると思ったんだけど」

マリ「なにが?}

栞奈「何言ってるの?」

日向「いや……うん、ごめん。なんでもない」

マリ「なにか心残りでもある?」

栞奈「お土産買い忘れたとか?」

マリ「明日の朝にでも買いに行こうよ」

日向「それはダメだ! 絶対にデネブから離れるなよキマリ!!」

栞奈「うむ、そうだぞ!」

マリ「えぇ〜……」


……


417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 03:44:54.11 ID:GYsMFmGgo

―― デネブ・展望車


マリ「食器の片づけ終わったよ〜」

日向「こっちはどうだ〜?」


報瀬「こっちももう終わり」

結月「秋槻さんがゴミを捨てに行ってくれてます」

みこと「キマリさん、それは?」

マリ「トロピカルレインボースペシャルミックススーパーデラックスドリンク
   みんなの分あるよ!」

報瀬結月「「 え 」」

日向「安心しろ、私が監修した」

報瀬結月「「 ホッ 」」

マリ「なんで!?」

リン「どうして安心してるのかな?」

めぐみ「キマリが独特な味を創ったんだろう……」

リン「あ……」

マリ「あって、なに!?」

めぐみ「それじゃ、私たちは行くな、キマリ」

マリ「行くって?」

めぐみ「ホテルに戻るんだよ」

リン「お姉ちゃん、朝ごはんはこっちでいいの? ホテルで朝食抜きにしたんだけど」

マリ「うん、食堂車で一緒に食べよ。美味しいから」

めぐみ「分かった。出発前だな」

マリ「うん!」

リン「それではみなさん、おやすみなさい」ペコリ

めぐみ「それじゃ」

日向「お〜、それじゃ〜な〜」フリフリ

結月「はい、それでは」

報瀬「……おやすみ」

マリ「また、明日ね〜……って!
   トロピカルレインボースペシャルミックススーパーデラックスベントウ無視!?」

日向「弁当って言っちゃったよ」

みこと「……」

マリ「なんか、変な気持ち」

報瀬「変って?」

マリ「いままでずっと一緒にいためぐっちゃんとリンと、
   見知らぬ土地でまた明日ってお別れしてることが」

みこと「ずっと?」

マリ「めぐっちゃんは小さい頃から一緒。リンは家でも一緒だから余計に変な感じ」

みこと「……」

報瀬「あれ、栞奈は?」

日向「車掌さんと話してるよ」

418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:16:19.74 ID:GYsMFmGgo

秋槻「もう片付いたんだ。お疲れ様」


マリ「いえいえ、ってソレは!?」

秋槻「さっき自販機で見つけてね……つい」

マリ「おぉ〜、お兄さんはもうプリンシェイクの虜……!」

秋槻「飲んだことないんだけどね」

マリ「え? 前に渡したのは?」

秋槻「あー……えっと……車掌さんに飲んでもらって」

マリ「……そうなんだ」

結月「わざわざプリンを飲み物にしなくてもいいのに、って思いますけどね」

マリ「プリンは飲み物だよ?」

日向「そう思ってるのはお前とプリン好きな人たちだけだ。
   少なくとも此処に居る連中はそう思ってない」

マリ「またまた〜そんなこといって〜」

日向「照れ隠しで言ったわけじゃないからな!」


報瀬「日向、そっちの飲み物取って」

日向「いいけど……って、みことが寝てるのか?」

みこと「……すぅ……すぅ」

報瀬「うん、起きそうにないから動けなくて」

結月「こっちでいいですか?」

報瀬「うん」

マリ「作ってきたドリンクは? なんで飲んでくれないの?」

日向「前科があるからだよ」

秋槻「思ったより薄いねこれ……もっと甘いものかと思ってたんだけど」

マリ「振りすぎたからだよ、お兄さん。普通は2回シェイクだからね」

秋槻「5回振るって書いてあるから振ったけど……それでも飲みにくかったよ?」

マリ「それがいいんだよ〜」

日向「特製スペシャルドリンク、意外と美味しいからみんな飲んでみろって〜」

結月「では……試しに」

みこと「……すぅ」

報瀬「朝、早かったからね……」

秋槻「それじゃ、俺も個室に戻るよ」

結月「人工的な味がしないのがいいですね……。お仕事が残っているんですか?」

秋槻「いや、ひと段落ついたから、今日はもう寝るよ。あとは明日からだね」

マリ「はい、どうぞスペシャルナントカドリンクです」

秋槻「ありがと。コップは食堂車に返せばいいのかな?」

マリ「ういうい」

秋槻「それじゃ、また明日」

スタスタ...

日向「それじゃ私らはどうする?」

結月「特にすることもないですよね」

報瀬「うん……」
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:21:42.83 ID:GYsMFmGgo

マリ「でも、なんか……まだ終わって欲しくないね」

みこと「……すぅ……すぅ」

日向「だな。今日がまだ終わって欲しくないな」

報瀬「まぁね」

結月「ですね」


栞奈「おい〜っす〜。おや、人が減っちゃったね〜」


マリ「もう少しだけ話してようか」

日向「そうするかぁ」

報瀬「うん」

結月「そうですね。まだ日付が変わるまで時間ありますから」

栞奈「あれ、ケーキ片付けちゃったかい?」

マリ「余ったのは綾乃ちゃんたちに食べてもらったよ」

日向「喜んでたな」

報瀬「まだ食べたかったの?」

栞奈「まだっていうか、私はひとっつも食べてないですけどね!」

結月「あ、そうだったんですか……」

栞奈「いいけどね〜。代わりといてはなんだけど、南極の話を聞かせてくれないかい?」

日向「なにが聞きたいんだ?」

栞奈「なんでもいいよ」

報瀬「じゃあ、ペンギンの話でも」

栞奈「ペンギンなんて水族館にいるからなぁ……できればシャチの話でもしてくれない?」

結月「それも水族館にいるじゃないですか」

栞奈「ペンギンなんてよちよち歩いてるだけじゃん」

マリ「あんなこと言ってますぜ、親びん」

報瀬「はぁ……本物のペンギンを見たことないなんて……可哀想」

日向「まったくだ、好奇心旺盛なあの生き物を知らないってことか」

栞奈「好奇心は子猫をも……って言うじゃない? 天敵が多いらしいじゃないか?」

報瀬「残酷な話やめて」

みこと「……ッ!?」ビクッ

結月「ど、どうしたの、みこと……?」
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:28:35.53 ID:GYsMFmGgo

みこと「あ……あれ……?」

日向「怖い夢でもみたか〜?」

みこと「うん……」ブルブル

マリ「もう大丈夫だよ〜。怖くない、怖くない〜」

スリスリ

 ナデナデ

みこと「……ふ…ぁ…」

栞奈「どんな夢みたの? 話したら意外と大したことなくて恐怖が消えていくかもよ〜」

みこと「……うん。ペンギンが……シャチに食べられて――」

報瀬「わー! わー!! わぁー!! 聞こえない聞こえない!!」

日向「本格的に怖い話だったな」

結月「あんな話するからですよ」

栞奈「くくっ、あはははっ」


……





―― 深夜:マリの個室


マリ「すぅ……すぃ……すぴぃ」


pipipipi


『南に行ってみる』


マリ「涙の数だけ雨が降るんだよ」


マリ「くぅ……すふぅ……」

421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:30:39.45 ID:GYsMFmGgo


―― 8月9日



女の子「れっしゃ、れっしゃだ〜♪」

テッテッテ


ドテッ

女の子「ふぎゅっ」


報瀬「あっ!」

みこと「どうしたの?」

報瀬「女の子が転んだ……!」

テッテッテ


女の子「ふぇ……っ」


報瀬「大丈夫? 大丈夫!?」


女の子「ふぇぇっ」


報瀬「痛くない? 痛くない!?」


女の子「ふぇぇぇ!!」


報瀬「あぁぁっ、大丈夫だから!」

日向「あやし方下手だな報瀬……」


栞奈「ちょっとごめんね、おじょうちゃん〜」


女の子「びぇぇえええ!!」


栞奈「……うん、怪我はないね。びっくりしたよね」


女の子「うええぇぇえん!! おがぁぁさぁああん」


栞奈「よーし、お姉ちゃんが魔法をかけてあげよう〜」


女の子「ひぐっ……まほう……?」


栞奈「そう。痛みが無くなる魔法。いくよ〜?」


女の子「ぐすっ……うぅぅ」


栞奈「痛いの痛いの〜〜、あのお兄ちゃんに飛んでいけ〜〜!!」


一輝「えっ!?」


女の子「グスッ……?」


一輝「くっ……ぐぁぁあっ……痛いッ」
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:32:15.53 ID:GYsMFmGgo

女の子「……ぐすっ……お兄ちゃん……だいじょうぶ?」


一輝「あ、あぁ、大丈夫……優しい子だな、君は」


母「ユミ? どうしたの?」

女の子「お母さん!!」


栞奈「この子、転んじゃって。
   怪我はないみたいですけど、一応気にかけてあげてください」

母「あらら……。迷惑をかけてしまったみたいで、すいません」

栞奈「いえいえ、特に何もしてませんから〜。ね、一輝」

一輝「……まぁ、はい」

女の子「……」

母「ほら、ちゃんとお礼言って」

女の子「ありが……とう。お姉ちゃん、お兄ちゃん」

栞奈「こんなとこ走ったら危ないから、気を付けるんだよ〜?」

一輝「気をつけてな」

女の子「うん……」

母「電車来ちゃったから行きましょ。それでは」ペコリ

栞奈「バイバーイ」フリフリ

一輝「……」


「ばいば〜い」


栞奈「かわいいね〜。って、妹ちゃんは?」

一輝「あっちで親に電話してる」

栞奈「離れちゃ危ないでしょ。近くに居なきゃ」

一輝「おまえが無茶ぶりしたせいだろ。ってか、やらせんなよ」

栞奈「まぁまぁ。あの子も泣き止んで良かったじゃん?」

一輝「まぁ、いいけど」


日向「くっ……ぐぁぁあっ……痛いッ」

結月「……」

報瀬「ふふっ」


一輝「やっぱり良くないわ」

栞奈「あははは! お腹痛い! 傑作だったよあの演技! あっはっは!!」


マリ「えぇぇぇえええ!?」


一輝「なんだ、どうしたんだ?」

栞奈「くふっ……さぁ?」


マリ「いつも逆の方向に行くんだからー! もぉー!」

栞奈「どうしたの?」

日向「幼馴染が『富士山見てくる』って伝言残して出発したんだってさ」

栞奈「ふぅん……」
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:34:07.78 ID:GYsMFmGgo

リン「お姉ちゃんにメッセージ送ったって言ってたよ?」

マリ「気付いてたけど、南に行ってくるって意味が分からなかったんだよ……。
   それを聞こうと思ってたのに……」

リン「あ、私もう時間だから行くね」

マリ「見送るよ」

リン「いいよ、ここで。それでは、みなさん。とても短い間でしたが楽しかったです」

報瀬「こちらこそ。気を付けて帰ってね」

結月「また連絡するからね」

リン「はい。いつもありがとうございます。姉をよろしくお願いします」ペコリ

日向「おー、またね〜」

栞奈「まーたね〜」

マリ「見送って来るね」

リン「だから、いいって言ってるのに。どうせ明日の夜にはお家で会うんだから」

マリ「いいからいいから」

リン「地元に帰るだけなのに……」

スタスタ...

みこと「……」

結月「私も見送ってきますね」

日向「寄り道しないでまっすぐデネブに戻ってくるようにな」

結月「大丈夫ですよ、時間もありますから」

日向「よく思い出せ、ゆづ。そう言って結局走ることになった今までを……」

結月「……ですね。分かりました」

テッテッテ...

報瀬「明日か……」


妹「じー……」


報瀬「……?」


妹「似てる……やっぱりマネさんに似てる」


報瀬「……」


一輝「だから、失礼なことするなってっ」

報瀬「されてないけど?」

一輝「……はい」


栞奈「ぷっ、くふふっ」

日向「どんな人なんだろうな……」


秋槻「おはよう」


一輝「おはようございます」


秋槻「長いとまでは言えないけど、短くもない時間だったね」

一輝「そうですね、福岡からだから……まぁ、それくらいには」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:35:58.66 ID:GYsMFmGgo

秋槻「楽しかったよ、ありがとう」

一輝「俺も、楽しかったです。秋槻さんが居なかったらどうなってたか」

秋槻「それは俺も同じかなぁ。同性として助かった部分はたくさんあったよ」

一輝「仕事、応援してますから」

秋槻「うん、ありがとう。どこかで名前を見られるように頑張るよ」

一輝「なんなら自慢できるくらいには」

秋槻「あはは、そうだね。知り合いなんだって言われるくらいになりたいね」

一輝「お元気で」

秋槻「うん、君も、元気でね」

一輝「はい」


日向「……終わりかっ!」


秋槻「男同士はこんなものだよ」

一輝「うん」

秋槻「ちょっとコンビニ行ってくるよ」

みこと「遅れないで……?」

秋槻「分かってる。すぐ戻るよ」

スタスタ...


報瀬「元気でね」

一輝「はい」


報瀬「……」

一輝「……」


日向「男同士より短いな!?」


栞奈「うぅ、ぐすっ……一輝ぃ、寂しいよぉ〜」シクシク

一輝「ウソ泣き止めろ」

栞奈「ちょっと、感動の別れを壊さないでよ!」

一輝「壊してるのお前だろ! 過剰演出してないで普通にしてくれ」

栞奈「じゃあ思い出話でも……。一輝が女装して駅前で踊ったのは笑ったな〜」

一輝「そっちは明日降りるんだっけ? 群馬だったか」

日向「そうだけどさ……」

妹「兄ちゃん……」

一輝「距離で考えたら結構あるんだけど、時間で考えたらあっという間なんだよな」

日向「妹にはリアクションしてやれっての……。時間と距離か……そんなものなのか?」

一輝「まぁ、移動中に色んな事あったから、短く感じただけなのかもな」

みこと「相対性理論?」

一輝「難しいことは知らんけど」

日向「大村はなんか変わったな。最初は仏頂面してたのに」

一輝「コンビニで3人でカップ麺食べてるの見て、変な奴らって思ったからな」

日向「あはは、あったな〜」
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:38:18.75 ID:GYsMFmGgo

栞奈「料理長とリンゴの皮むき勝負は意外な結末だったよ〜」

一輝「まぁ、元気で。楽しかったよ」

日向「お、おう。大村がそんなこというなんて、驚いた」

一輝「最後だからな」

妹「どうなったの、兄ちゃん?」

一輝「そんな勝負は無かったんだよ。この人間が言うことは6割がた嘘だからな?」

栞奈「私の打率はそんなものだからね」

一輝「化け物かお前は」

栞奈「それじゃあさ、一輝」

一輝「?」

栞奈「野球、始めなよ」

一輝「――!」

栞奈「いつもイライラして、仏頂面してるのは我慢してるからじゃない?」

一輝「……」

栞奈「我慢を止めて、走り出したらどうなるか私は知りたい」

一輝「……」

栞奈「一輝が球場で活躍してたら、私は間違いなく感動するよ」

一輝「……ハァ、お前は赤の他人じゃないだろうが」

栞奈「あー……それもそうだね」


報瀬「?」

日向「何の話だ?」

みこと「赤の他人が実際にあった話に感動できるのかどうかって話……」

報瀬「当事者以外は感動できないってこと?」

みこと「うん……栞奈さんが言ってた」


一輝「ふぅぅ……はぁ……そうだな」

妹「……兄ちゃん?」

一輝「あのな、藍……俺……部活で遅くなると思うんだけど、いいか?」

妹「……」

一輝「これから本気で始めるから、毎日だな」

妹「……」

一輝「今までの時間を取り戻すにはそうでもしないと絶対に足りないから――」

妹「うん」

一輝「……いいのか?」

妹「うん、いいよ」

一輝「一人でいる時間が多くなるし――……いや、うん、ありがとう、藍」

妹「毎日応援しに行くから寂しくないよ!」

一輝「家から高校までそんなに近くないだろ……。でも、ありがとな」ワシワシ

妹「えへへー」
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:39:28.62 ID:GYsMFmGgo


栞奈「ぐすっ……甲子園優勝するなんて……すごい約束しちゃったね……」

一輝「してない」

栞奈「してないね」

一輝「……けど、それくらいの気持ちでやらないとな」

栞奈「あ……うん」

一輝「ありがと、栞奈」

栞奈「う、うん……」

一輝「……なんだよ、どうした?」

栞奈「な、なんか……照れちゃって……いきなり礼なんて言わないでよね、バカ」

一輝「……なんなんだよ、お前は…」


日向「にひ……」ニヤニヤ

報瀬「どうしたの、日向? 気持ち悪い笑い方して?」

日向「気持ち悪い言うな!」

みこと「……」


マリ「ただいま〜……あれ?」

結月「どうしたんですか、二人とも?」


一輝栞奈「「 別に…… 」」


一輝「真似すんなよ」

栞奈「あははっ、言うと思ったんだよね!」


妹「じー……」


秋槻「よかった、まだ間に合った」

みこと「?」

秋槻「これを、渡したかったんだ」


一輝「俺に……?」

栞奈「なんですか?」


秋槻「ネットの記事。昨日のなわとび大会のことが書かれてるよ。君たちのことがね」


日向「え、どれどれ!?」

報瀬「見せて!」

一輝「ち、近いですから!」

栞奈「ちょっと、動かさないで一輝!」

秋槻「はい、もう一つ」

マリ「ふむふむ、コラム?」
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:44:07.61 ID:GYsMFmGgo

結月「なんて書かれているんですか?」

みこと「『満足の0回』」

マリ「『夏の夕暮れ。少しずつ寂しさを感じさせる焼けた空に笑い声が響いて行く――』」

『 先日、金沢城公園にてなわとび大会が開催された。
  数年前に旅行者が子供たちと仲良くなわとびをしていたことからこの大会が開催されるようになった。
  今年も近所の児童会を中心とした大会の参加者達が思い思いに縄を飛び越えて行った 』

『 今年の最後の挑戦者チームは、玉木マリさん率いる超特急デネブの乗客たち10名。 』 


日向報瀬結月「「「 ん? 」」」

栞奈「引っかかるのは分かるけど、先を読もうよ?」


『 ギネス記録を目指すと全員が気合を入れて、掛け声とともに縄が回り始める。
  しかし、次に縄が回ることは無かった。
  脚に引っかかり失敗してしまったのだ。記録は0。
  司会者がもう一度挑戦することを促す。会場に居た誰もがそうすると思っただろう。
  玉木マリさんは言う。 』

マリ「『きっと、世界記録を出しても、誰か偉い人に賞状を渡されても、
    こんな気持ちにはなれないんです。
    だからこれでいいんです。みんなで一つになった今のままでいいんです。
    私たちの記録は0回です!』」

『 と、笑顔を残したまま会場を後にした。
  夕暮れに秋の気配を感じたが、今年の夏はまだまだ終わらなさそうだ。 』
    

栞奈「ほぉ……」

一輝「こんなこと言ったのか……」


マリ「……?」


日向「『言ったっけ?』って顔してるけど、どうなんだ?」


マリ「言った……ね、うん。言ったよね……?」

報瀬「いや、私はそのとき近くに居なかったから」

結月「あ、でも……誰かと話をしてたのは覚えてます」

マリ「じゃあ言ったんだよ」

日向「じゃあってなんだよ。自信無いんか」

みこと「……みんな、笑ってる」

妹「兄ちゃんも笑ってるね」

一輝「うん……」

秋槻「俺は苦笑いだけどね……。それだけじゃないよ、後ろにいる人たちも笑ってるでしょ」

結月「あ、本当ですね」

日向「応援してくれた人たちも」

報瀬「みんな笑顔……」

みこと「キマリさんの言葉、この写真を見たら納得できるよ」

マリ「……うん!」

428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:46:08.84 ID:GYsMFmGgo

一輝「……そろそろ、時間だな」

妹「……」


報瀬「……」

結月「……」

日向「じゃあ乗るか」

栞奈「じゃあね、一輝。走って追いかけたりしないでよ、危ないから」


一輝「誰がするか」


報瀬「元気で。楽しかった」


一輝「……はい。それでは」


みこと「楽しかった……です。ありがとう……ございました」ペコリ


一輝「これから先、気をつけてな」


マリ「それじゃ、元気でね。また、どこかで逢えたらいいね」


一輝「……うん。……みんなのおかげで楽しかった。元気でいてくれ」


日向「じゃ、な」スッ


一輝「……」スッ


ギュッ


日向「おぉ、意外と大きい手だな」


一輝「一応、野球やってるから」


日向「ははっ、そうだったな。じゃあな〜♪」


一輝「じゃあ、な」


結月「えっと、色々とありがとうございました」


一輝「なにもしてないけど。……――あのさ」


結月「……はい?」



日向「ひぃ、痛たた……アイツ、ちょっと力込めやがって〜」

マリ「男の子だからね」

報瀬「キマリがちゃんと乗り込んでると感動するかも」

みこと「うん」

マリ「うんって、みこっちゃん!」

栞奈「……ん?」

日向「どうした?」

栞奈「なにか、渡してる?」

みこと「結月さんに……?」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:47:41.09 ID:GYsMFmGgo


結月「……ふぅ」

マリ「結月ちゃん、顔真っ赤だけど、どうしたの?」

結月「え、いえ……なんでも?」

栞奈「……」

報瀬「なにか渡されたの?」

結月「い、いえ……なんでもないですって」

日向「ふぅん……?」

栞奈「…………」



秋槻「――……それは賭け?」

一輝「賭けというか、そうなるだろうなっていう、確信みたいなものですね」

秋槻「今渡さないのはどうして?」

一輝「アイツの足を引っ張りたくないので……」

秋槻「そっか、そっかぁ。
    うん、見届けられないのは残念だけど、二人の未来を俺も信じるよ」

一輝「そ、そんなじゃないですけど」

妹「兄ちゃん、顔真っ赤〜」

一輝「うるさい。それじゃ、秋槻さん、さっきも言いましたけど、お元気で」スッ

秋槻「うん、お互いこれからも頑張ろう」スッ


ギュッ

一輝「さようなら、ですね」

秋槻「うん、さようなら」


prrrrrrrrrr



妹「またね、じゃないの?」

一輝「秋槻さんとは、もう逢えない気がする」

妹「なんで?」

一輝「大人だから、かな。進む方向が別々だから、な」

妹「みんなは?」

一輝「逢えそうな気がする」

妹「なんで? 子どもだから?」

一輝「分からん。どこかで逢えるといいなって思ってるからかな」



プシュー


ガタン

 ゴトン
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:50:44.05 ID:GYsMFmGgo

―― デネブ


ガタン

 ゴトン


秋槻「どうしてかな……さようならって言葉がしっくりきたんだよ」

みこと「どうして?」

秋槻「もう逢えないって、思ったのかも……」

みこと「……」

秋槻「お互い、そう感じたのかもね」

マリ「何があるか分からないから人生。だから面白い」

日向「だそうですよ」

秋槻「あはは、そうだね。さて、俺も準備するかな。じゃあね」

スタスタ...

報瀬「……最後、か」

結月「――……」

栞奈「……」

日向「さぁって、私らはどうする?」

マリ「次、どこだっけ? 松本だ!!」

日向「疑問から回答まで一瞬だったな! そうだ松本だ!」

報瀬「……松本城」

日向「なんで城がまっさきに来るんだよ!」

マリ「城マニアだったんだ」

みこと「今まで一番だった城は?」

報瀬「首里城?」

マリ「沖縄行ったことあるの?」

日向「え、いつだよ? 飛行機乗ったのアレが初めてだったんだろ?」

報瀬「テレビで……観たけど?」

日向「直で見たかのように言うから……」

報瀬「首里城? って疑問形で言ったでしょ」

日向「そういえばそうだったな。……なぁ、このやり取り意味あるのか?」

みこと「無いと思う」

マリ「私もテレビで観たけど、首里城って城って感じじゃないよね」

日向「もう城の話はいいから行くぞ〜」
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:53:12.14 ID:GYsMFmGgo


栞奈「……」


みこと「あの、栞奈さん……」

報瀬「行こう、みこと」

みこと「う、うん……」

日向「相棒が降りたんだ、色々と思うところもあるだろう」


結月「…………」


マリ「そうだね。……結月ちゃんも行くよ〜?」

結月「は、はい」



……




―― 展望車


マリ「あ、そろそろ富山駅だよ」

報瀬「なにかあるの?」

マリ「リンが乗った列車を追い越すんだよね。見つけられるかな?」

日向「無理だな」

結月「次、糸魚川でしたっけ?」

報瀬「うん。30分停止」

みこと「松本は、キマリさん達の地元?」

報瀬日向「「 違う 」」

みこと「?」

マリ「みこっちゃん、大きく括ったでしょ?」

みこと「うん……? 群馬がどこにあるのかも分からない?」

報瀬「待って、実際に地図見た方が早い」ポチポチ

マリ「松本は長野だから」

報瀬「ここ、ここが群馬だから」

みこと「……うん」

日向「ちゃんと覚えるように。テストに出るからな」

結月「なにをそこまで熱くさせるんでしょうか」

マリ「北海道はいいよね、絶対に間違えられることないもんね」

結月「なんか……すいません……」

日向「謝ることじゃない。別に怒ってる訳じゃないからな。
    ただ、影が薄いからと覚えてもらえないのは憤りを覚えますな」

報瀬「それはあるかも」

マリ「うむうむ、覚えますね」

結月「怒ってるじゃないですか」
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:56:25.65 ID:GYsMFmGgo

みこと「鳥取と島根と同じくらい難しい」

日向「しまね、か……」

報瀬「とっとり……ね」

マリ「……えっと?」

結月「3人とも鳥取と島根の人に怒られてください」

日向「なんだよ、ゆづは知ってるのか!? 地図を指してみろ!」

結月「ここですよ、鳥取! その隣が島根です!」

マリ「本当かなぁ? それでは、県名表示オープン!」

報瀬「はい」ポチ

みこと「……当たってる」

日向「ところで、さっきアイツからなにを受け取ったんだ?」

結月「誤魔化さないでくれませんか」ズイ

日向「ハイ、スイマセン」

結月「……なんていうか、どう判断したらいいのか分からないんですよね」

報瀬「うん?」

マリ「どういうこと?」

結月「明日の――」


ウィーン


栞奈「やぁやぁ、みんな。朝日を浴びて走る列車のなんと美しいことか」

日向「適当なこと言ってるな……。ゆづ、それで?」

結月「いえ、そういうことです」

報瀬「え?」

マリ「???」

みこと「……?」

栞奈「おや、話し中だったかい?」

結月「ちょうど終わったところですよ」

日向「……」

栞奈「あり、お邪魔だった?」

結月「いえいえ、気にしないでください。観光地を考えてただけなので」

マリ「え、でも――」

日向「みんなに言っておきたいことがあるんだ」

報瀬「どうしたの、いきなり?」

日向「私、もう金欠で動きが制限されてしまうんだよぉ!」

マリ「それは大変だ!」

報瀬「まぁ、それは私もだけど」


タタン 
 タタン


みこと「…………」
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 17:58:16.24 ID:GYsMFmGgo

結月「リーズナブルなお店でも探しましょうか」

マリ「ご飯もいいけど、観光地も考えないとね。みんなどこ行きたい?」

報瀬「松本城の近くに旧開智学校校舎がある」

日向「昔の学校か、いいねぇ」

栞奈「歴史的好奇心旺盛でいいんじゃないかな」

日向「なんだその言葉」


みこと「キマリさん」


マリ「うん? どうしたのみこっちゃん、行きたい場所ある?」

みこと「……富山駅過ぎたよ?」

マリ「ええぇぇええええ!?」

栞奈「富山駅になにがあったの?」

マリ「リンが居たんだよ……! みこっちゃん、早く言ってくれないと!」

みこと「ごめんなさい……?」


「結月ちゃ〜ん」


結月「さくらさんが呼んでるから行きますね、それでは」スッ

スタスタ...


栞奈「結月ちゃんの車掌服姿、明日までだもんね。私も付いて行こう〜♪」

テッテッテ


報瀬「栞奈って、次で降りるんだよね?」

日向「うん、確かにそう言ってたよな……」

マリ「結月ちゃん、なにを言おうとしてたんだろう?」

日向「栞奈のことだろ。どういうことなのか、大体察しは付いたけど」

みこと「うん」

報瀬マリ「「 ? 」」


……


434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:00:16.74 ID:GYsMFmGgo

―― 売店車


店員「いらっしゃいませ〜」


マリ「松本の観光ガイドください!」

店員「はい、どうぞ〜」

マリ「ありがとうございます!」

みこと「……」

マリ「どこ行こうか? 温泉もあるんだって」

みこと「次で、最後なんだよね」

マリ「うん、そうだね〜。だから、思い出深い場所にしたいよね」

みこと「キマリさん、どうして東京まで行くの?」

マリ「結月ちゃんの付き添い、かな? 結月ちゃんの最初から最後まで一緒に居たいからね」

みこと「……それなら、その次、は?」

マリ「次?」

みこと「仙台……まで」

マリ「うーん……。仙台……行ってみたいけど……。みこっちゃんも東京まででしょ?」

みこと「うん……」

マリ「もしかして、旅を続けたくなった?」

みこと「うん……終わりたくないなって」

マリ「そっかぁ……」

みこと「キマリさんが行くなら……私も……」

マリ「うーん……そうだなぁ……」


日向「どうした、難しい顔して?」


みこと「部屋の片付け、終わったの?」

日向「終わった終わった〜。というより、あまり散らかってないからな、キマリと違って」

マリ「そんなことないよ!」

日向「それじゃ、個室を拝見してもよろしいですか?」

マリ「え〜っと、一時間待ってくれる?」

日向「そんなことあるんだよな」

みこと「ふふ」

マリ「あ、笑った。みこっちゃんひどい〜!」

報瀬「何やってるの、こんなところで?」

日向「いや、別に」

報瀬「観光ガイド買ったんだ? 見せて」

マリ「はいよ」

日向「食べ物だけじゃなくて、いい景色が見たいな〜」

報瀬「此処に居ると邪魔になるから移動しましょ」


……


435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:01:46.26 ID:GYsMFmGgo

―― 4号車


マリ「こっちで撮影してたんだね、結月ちゃん達」

報瀬「栞奈、変な顔してる」

みこと「ボーっとしてるのかな」

日向「しょうがないな……。おーい、栞奈〜」


栞奈「……?」


日向「ちょっと話あるからこっち来てくれ〜」


栞奈「なになに、どうしたの?」

報瀬「なにかあったの、ボーっとしてたけど?」

栞奈「ううん、なにも〜?」

マリ「栞奈ちゃん、次で降りるんだよね?」

栞奈「そのつもりだったけど、最後まで行こうと思ってね〜♪」

みこと「稚内まで?」

栞奈「その通り〜」

日向「気になってたんだけど、地元が稚内なのになんで松本で降りる予定だったんだ?」

栞奈「試験があってさ〜、それに受けるつもりだったんだよね〜」

報瀬「……ということは、受けないってこと?」

栞奈「ま、そういうこと。後で挽回すればいいから問題無いさ」

マリ「うん、そうだよね。後で頑張ればいいもんね!」

日向「普段から勉強してる人が言える台詞だからな、キマリ」

マリ「うっ……」

みこと「……最後まで…」

マリ「……」

栞奈「よかったらみんなも行こうよ〜」

日向「私は出来ないんだよ。予定入ってるし、バイトもあるからな」

報瀬「私も、おばあちゃんが心配するし」

栞奈「え〜、一生に一度の経験だよ、冒険だよ?」

日向「それはそうなんだけどさ」

マリ「あっ、見て外」

みこと「どうしたの?」

報瀬「海……。日本海だ……」

日向「おー……いいねぇ」

みこと「太平洋と違って、なんだか寒いイメージがある」

マリ「あ、分かる分かる」


栞奈「……みんなと一緒なら……絶対に楽しいんだけどな」


報瀬「栞奈……」

日向「……」

マリ「…………」

みこと「……うん」
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:03:32.15 ID:GYsMFmGgo

栞奈「あっ、今の無し! なんだからしくないとこ言っちゃったよ! あははっ」


報瀬「……」

日向「……」

マリ「……」

みこと「……」

栞奈「ごめーん、変な空気にしちゃって」

報瀬「きっと、他の人が乗って来るよ」

日向「うん、そうだな。まだ見ぬ誰かと楽しめればいいじゃん?」

マリ「……」

みこと「……代わりは居ないよ」

マリ「みこっちゃん……」

栞奈「そうなのだ。君たちの代わりは存在しない! なーんて。
   前に観た映画の台詞を言ってみたりして」

報瀬「……」

日向「……」

栞奈「うーん……なんか変だね、私。……ちょっと向こうに行ってくるよ」

スタスタ...


報瀬「無理してるみたい」

日向「頭の中がごちゃごちゃしてるんじゃないかな。
   なにか抱えてるみたいだけど、私たちには何も言ってないからな」

マリ「私たちには?」

日向「相棒には話してたんじゃないか? 想像だけどさ」

マリ「あぁ……うん、そうだね、きっと」

みこと「話、聞く?」

報瀬「ううん、私たちからは聞かないでおこう」

日向「そうだな。今まで話さなかったのは自分の問題だって思ってるからだろう」

マリ「待っていよう」

みこと「……うん」

ガタン

 ゴトン


日向「お、減速したみたい。そろそろ着くかな?」

マリ「リンは半日かけて地元に帰るって言ってたけど……デネブちゃんならあっという間だね」

報瀬「半日もかかるの?」

マリ「みたいだよ〜?」

みこと「糸魚川って海が近くにあるんだよね……?」

報瀬「そうみたいだけど?」

マリ「もしかして、行ってみたいの?」

みこと「……」コクリ

日向「いやいや、無理だって……停車時間30分しかないんだから」


……


437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:04:35.48 ID:GYsMFmGgo

―― 糸魚川駅


プシュー


マリ「ハッ!」

シュタッ


マリ「糸魚川、降臨!」

結月「遊んでる場合じゃないですよ、キマリさん!」


日向「スタァァアアアット!!!」


栞奈「よっしゃああ!!!」ダッ

みこと「……ッ!」ダッ

報瀬「……フッ!」ダッ

タッタッタ


マリ「あぁっ、待って!」


栞奈「報瀬っ、出口はどこ!?」

報瀬「日本海口があるからっ、そこっ!」

結月「あっ、ありました! あっちですよ!」

みこと「……っっ」

タッタッタ


日向「キマリー! ちゃんと付いてきてるか〜!?」


マリ「うん〜! 大丈夫〜!!」


駅員「……?」


報瀬「はいっ、乗車証です!」


駅員「はい、どうぞ」


栞奈「どうも〜!」


結月「失礼します!」


駅員「ん? 車掌服……?」


日向「通りまーす!」


みこと「ふぅっ、ふぅ」


マリ「よし、私で最後だね! レッツゴー!!」


駅員「……デネブの乗客……だよな?」
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:06:24.71 ID:GYsMFmGgo

―― ヒスイロード


タッタッタ


報瀬「こっちであってるんだよね!?」

栞奈「うん! 標識にも日本海ってあったから大丈夫!!」

結月「はぁっ、はぁっ」

栞奈「結月ちゃん、そんな格好で走るなんてダイタ〜ン♪」

結月「いいじゃないですか、着替えてる暇なかったんですから!」

栞奈「悪いなんて言ってないよ、むしろ――」

報瀬「いいからっ、喋ってないで走って!」

タッタッタ


日向「みこと〜、大丈夫か〜!?」


みこと「はふっ、はうっ」

マリ「大丈夫だよみこっちゃんっ、歩いて5分の距離だからね!」


日向「キマリは自分のペース守っててくれ、みことは私が見てるから!」


マリ「イエスマム!」


みこと「ふぅっ、はぁっ」


日向「よしよし、みことも走ることに集中するんだ」


タッタッタ


マリ「日向ちゃん、カメラ持つよ!」

日向「そうだな、任せた!」

マリ「よーし、前を走る3人を追いかけ――……って、速いっ!?」

タッタッタ


―― 日本海


報瀬「ふぅ……意外と……近かった」

栞奈「はぁふぅ……全力で走ったからね」

結月「はぁはぁ……ふぅ……」

報瀬「日本海……」

栞奈「この海に……あの美味しい魚たちが泳いでいるんだ……」

結月「ロマンの欠片もないですね」


マリ「防波堤に立つ3人……絵になるなぁ」ジー

439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:07:40.84 ID:GYsMFmGgo

結月「よいしょっ」ピョン

シュタッ


栞奈「あれ、もう見ないの?」


結月「人の目がありますから」


栞奈「旅の恥はかき捨てだよ」


結月「私はそうもいかないんです。どうぞ、捨て続けてください」


報瀬「……」


マリ「よいしょっ……おぉ、これが日本海!」


栞奈「後の二人は?」

マリ「もうすぐ来るよ」

報瀬「ゆっくりもしてられないんだけど……」


結月「あ、来ましたね」


日向「車来ないな、今がチャンスだ、渡るぞみこと!」

みこと「う、うんっ」

タッタッタ


日向「よいしょ、っと」

報瀬「みこと、手」

みこと「う、うん」

報瀬「……」グイッ


日向「日本海、到着!」

マリ「これが海です」ジー

栞奈「いいねぇ、みんなと並んで海を見る。青春だね!」

みこと「日本海……」

報瀬「どう?」

みこと「列車の中から見るのとは違う……」

結月「匂いと風……五感で海を感じているみたい」

栞奈「恥を捨てに来たのかい?」

結月「私だけ下に居るのは嫌でしたから」

栞奈「素直でかわいい〜」

結月「…………時間ですよ?」

マリ「もう!?」

報瀬「それじゃ、行こう。出発に遅れたら洒落にならない」

日向「日本海、出発!」
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:09:22.86 ID:GYsMFmGgo

―― ヒスイロード


みこと「みんなっ……さきに……行ってていいのに……っ」

報瀬「大丈夫、時間に余裕はあるから」

日向「歩いても間に合うけど、一応走ってるわけだから平気〜」

結月「うん……心配しないでいいから」

タッタッタ


マリ「友情です」


報瀬「なんで撮ってるの?」


マリ「これを撮らずになにを撮るのか、と日向ちゃんが」


栞奈「なんか、あの曲が流れそうな雰囲気だね」

日向「どの曲だよ。キマリ、カメラ交代するから、貸して」

マリ「はいよ」

タッタッタ


結月「時間はまだ余裕ですね」

報瀬「なにがあるか分からないから出来るだけ急ごう」

栞奈「そうだね……。あ、駅が見えてきた」

みこと「はぁっ……はぁっ」

マリ「日本海、見られて良かったね〜」

みこと「うんっ……良かったっ」

日向「感想は後だ。呼吸乱すと走りにくくなるぞ」

タッタッタ

栞奈「大丈夫だって、もうすぐそこなんだから」

マリ「そうだよ、日向ちゃん〜」

タッタッタ

報瀬「……キマリに付いて行って大丈夫なの?」

結月「私も今、ふと疑問に思ったんですよ」

日向「なぁ、キマリ……」

マリ「うん?」

タッタッタ

日向「なんか、違うとこ走ってないか?」

マリ「なんで?」

みこと「はあっ、はぁっ」

日向「行きと帰りの時間感覚がおかしい気がするんだけど?」

マリ「そうかな?」

栞奈「あれ、駅の横回り込んでない?」

マリ「……?」

報瀬「うわっ、駐車場じゃないここ!」

日向「戻れ戻れ!!」
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:11:11.22 ID:GYsMFmGgo

結月「な、な……!?」

みこと「えっ?」

栞奈「私たち入り口から逆に向かって走ってたんだよ!」

みこと「う、うそ……!」

マリ「…………」

タッタッタ

報瀬「なんで誰も気づかないで左に曲がったんだろう……!」

タッタッタ

結月「キ、キマリさんが自然に先を行くので安心してました……!」

タッタッタ

日向「どれだけロスしたんだ……!?」

タッタッタ

栞奈「うーん……2.3分だけど……」

タッタッタ

報瀬「それなら平気でしょ」

タッタッタ

日向「呑気に言ってくれるな……!」

みこと「はっ、ふっ、はっ」

日向「とにかくペースを崩さず走り続けるんだぞ、みこと……!」

みこと「う、うんっ」

マリ「……」

タッタッタ


―― 糸魚川駅


報瀬「着いた!」

栞奈「階段だ、昇れ昇れ〜!」

結月「うぇ……!」

マリ「……」

報瀬「さっきからキマリが静かなんだけど……」

日向「みことっ、辛いときほど前を向け!」

みこと「は、はいっ」

報瀬「なんか、部活やってるみたい」

栞奈「最後の奴はグラウンド10周追加!!」

マリ「……!」

ダダダダッ

結月「あ、本気出しましたよ……!」

報瀬「キマリにだけは負けないッ!」

ダダダダッ

栞奈「階段踏み外さないように気を付けてよー!?」

日向「ほんと、怪我だけはするなよ〜?」

みこと「ふっ、はっ」

タッタッタ
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:13:23.44 ID:GYsMFmGgo

―― デネブ


キマリ「ぜぇぜぇ……っ」

報瀬「ふぅ……間に合った……」

結月「はぁ……大変でしたね……」

栞奈「でも楽しかった。誘ってくれてサンキュッ」

キマリ「ぜぇはぁぜぇはぁ」

報瀬「みんなで行った方が楽しいからね、って言ってる」

結月「本当にそう言ってるんですか?」

キマリ「ぜぃぜぇはぁはぁ」コクコク

栞奈「お、みことちゃんと日向も到着だ」


日向「おーし、着いたぞみこと! よく頑張ったな!」

みこと「ぜぇはぁぜぇはぁ」

栞奈「え? ジャンボパフェが食べたいって?」

みこと「ぜぃぜぇはぁはぁ」フルフル

栞奈「じゃあ、行こうか」

結月「首振ってましたよ」


prrrrrrrrrr


報瀬「……結構ギリギリだったのね」

日向「キマリが間違えなければ余裕だったんだけどな……って、本人どこ行った?」

みこと「中に……はぁ……入って行ったよ……ふぅ」

報瀬「逃げ足は速いんだから……」

結月「汗拭かないと風邪ひきますね」

栞奈「冷房効いてるから気を付けてね、みんな」


……


443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:14:21.44 ID:GYsMFmGgo


―― 娯楽車


ガタン

 ゴトン


キマリ「ぐぬぬぬ……よしっ!」

バババババーン


キマリ「ボス倒したー! やったー!」


みこと「キマリさん」


キマリ「みこっちゃん? どうしたの?」

みこと「秋槻さん……見なかった?」

キマリ「さっき食堂車で料理長と話してたよ。なんで?」

みこと「見かけないなと思って……用事は無いんだけど」

キマリ「ふぅん……。よぉし、残機はまだ余裕、このステージもクリアしちゃうもんね」

みこと「……」


……



―― 2号車


みこと「報瀬さん」


報瀬「あ、みこと」

みこと「秋槻さん、見た?」

報瀬「さっきまで1号車で栞奈と話してたよ。『どこまで行くのか』って。
   邪魔したら悪いと思って声かけなかったけど」

みこと「……そうなんだ」

報瀬「話でもあった?」

みこと「ううん、そういうわけじゃないよ」

報瀬「ふぅん……」


……


444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:17:09.28 ID:GYsMFmGgo

―― 展望車


みこと「……」


結月「みこと……? どうしたの?」


みこと「仕事中?」

結月「ううん、終わったところ。今日はあと、観光地で撮るだけ」

みこと「……そうなんだ」

結月「なにか用事あった?」

みこと「秋槻さん見たかなって」

結月「さっきまでさくらさんと話してたけど……いつの間にか居なくなってた」

みこと「……」

結月「さくらさん、驚いてたような気がするけど……何の話だったんだろうね」

みこと「そうなんだ……」

結月「糸魚川出発してから、山と山の間をゆっくり走ってていいよね」

みこと「こういうところがいいの?」

結月「というか、珍しいのかも。さっき放送で車掌さんが湖の話してたの聞いた?」

みこと「うん。キマリさんと窓から見たよ」

結月「水上スキーって言うの? 楽しんでいる人がいたよね」

みこと「キマリさんがやってみたいって言ってた」

結月「……みことは?」

みこと「……私?」

結月「みことはやってみたいって思わない?」

みこと「うん……」

結月「水上をボートに引っ張られていくの、楽しそうじゃない?」

みこと「結月さんはやってみたいの?」

結月「私は……そうでもないけど……みんなで一緒にやってみたいって思う」

みこと「みんなとなら、私も……」


結月「……」

みこと「……?」


結月「みことは、あの時――
    食堂車でインタビューを受けた時、どんな気持ちで答えていたの?」

みこと「……え?」

結月「秋槻さんとディナーを楽しんでいるとき、私たちが邪魔したでしょ?」

みこと「……」

結月「言ってみて? どんな気持ちだったのか」

みこと「どうして?」

結月「みことは、人と自分の気持ちを重ねることが出来る、いい子だって思う」

みこと「……」

結月「でも、自分の気持ちを出せたら、もっと――……何て言うんだろう……」

みこと「……」
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/03/04(水) 18:18:52.19 ID:GYsMFmGgo

結月「もっと――世界が広がるんじゃないかって思ったから」

みこと「世界……」

結月「だから、聞かせて?」

みこと「あの時――……あの時は……」


みこと「秋槻さんが、お母さんの本の話をしてくれて……その本の主人公の気持ちを言ったんだと思う」


結月「……」


みこと「私も、その主人公と気持ちが重なったから」


結月「そっか……そうなんだ……」

みこと「うん」

結月「教えてくれてありがとう。それじゃ、私は着替えてくるから」

みこと「……うん」


……




―― 動力車


日向「よぉ、みこと〜」


みこと「……」


日向「どした?」

みこと「車掌さん……」

日向「車掌さんなら中にいるよ。用があるなら後にした方がいいな。
   仕事で忙しいみたいだから」

みこと「……うん」

日向「相談か?」

みこと「ううん。聞きたいことがあっただけ……」

日向「そうか〜。なら私に聞いてみ? 解決できるかは分からんけどな!」

みこと「世界が広がるってどういうこと?」

日向「ん、んん? 意外と哲学的だな?」
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