武内P「おや、高垣さんがテレビに出ていらっしゃいますね」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 10:52:27.17 ID:opBiR65Lo
武内P(……あの別れの時の、彼女の笑顔)

武内P(彼女の担当を勤めた、最後の日の……彼女の笑顔)

武内P(別れ際に浮かべた、あの笑顔…)

武内P(ああ、あれは…それは…今でも私の記憶の中に、深く焼き付いている)


武内P(……)

武内P(別れ…いや)

武内P(あれは別れではなく…新たな出発だった)

武内P(私は、新規プロジェクトの担当プロデューサーとしての抜擢)

武内P(彼女は、346プロの象徴となる…看板アイドルへの抜擢)

武内P(未来に向けての、新たな出発だった)

武内P(……)

武内P(別れの悲しさは、あった)

武内P(切なさも、あった)

武内P(だがそれ以上に…清々しさがあった)

武内P(お互いが、お互いの未来に向けてエールを送り…微笑みを浮かべ、互いを称えた)

武内P(そんな、晴れやかな別れだった)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 10:53:17.07 ID:opBiR65Lo
武内P(……)

武内P(……だからこそ、引っ掛かっている)

武内P(別れ際の、彼女の微笑みを)

武内P(……)

楓『けっ…んの…定、ですか?』

楓『そ…すね…ふふっ♪』

武内P「……」

楓『今のと…ろは…り…せん』


楓『でも、お慕いしている人はいます』

武内P「……え」


楓『?…どなた、ですか?』

楓『ええ、それは…』

楓『私の、始めてのプロデューサーです』

武内P「……」

楓『おぼつかない足取りの私を、あの人は支えてくれました』

楓『始めての担当アイドルと…始めてのプロデューサー』

楓『そんな始めて同士のふたりで…アイドルとしての道を歩いていきました』

楓『あの頃の記憶は…ふふ、今も私の心の奥で、温かく光っています』

楓『そんな、一緒にふたりで歩いたあの人を…プロデューサーを』


楓『私は、愛しています』


楓『心の底から……愛しています』


武内P「……」

武内P「……」

武内P「……」

…リリッ
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 10:53:47.14 ID:opBiR65Lo

武内P「……」

ピリリッ…

武内P「……」

ピリリリリリ…

武内P「……」

ピリリリリリリリ…!

武内P「……」

リリリリリリリリ…!!

武内P(電話が、鳴っている)

武内P(音をたて、震えている)

武内P(……)

武内P(……)

武内P(……目の前の)

武内P(画面の中の彼女は……笑っている)


武内P("あの時"と同じ、微笑みで…)


武内P(……笑っている)


武内P「……」


ピリリリリリ………
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 10:54:53.75 ID:opBiR65Lo







楓「最近食べて一番美味しかった料理、ですか?」

楓「そうですね…先日頂いたフカヒレスープはとても絶品でした」

楓(……)

楓「休日、ですか?」

楓「そうですね…休日は…」

楓(……生放送で、私は今、カメラに映っている)

楓「温泉に行ったりしますね」

楓(……見ている、のでしょうか

楓(彼は今、この番組を見ているのでしょうか)

楓(……)

楓(…いえ、どちらにせよ、構わないことです)

楓(見ていようと、いまいと……)

楓(私がこれからする行動は、どのみち彼の耳に届く運命にあるのだから)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 10:55:23.57 ID:opBiR65Lo
楓「…ええ、はい…」

楓(タイミングを、計る)

楓(鼓動が…徐々に高鳴ってゆく)

楓(だけどもう…私は止めはしません)

楓(この想いを…解き放つと、決めたのだから)

楓(だからあとは…その機会を、待つだけ)

楓「お酒ですか?」

楓「ふふっ♪」

楓「そうですね…ええ、最近は山口のお酒を飲んでます」

楓「とっても美味しくて、今の私のイチオシなんです♪」

楓(……口が渇く)

楓(息がつまる)

楓(だけどもそれは、決して表情に出したりはしません)

楓(それが私が、芸能界で身につけた能力)

楓(彼と出会う前に、私が身につけた能力……)

楓(……よどみなく、アナウンサーの質問に答えてゆく)

楓(そして私は…思い出している)

楓(彼と別れた、あの時を)
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:02:22.57 ID:M/WIHRdXo
楓(……最初に、彼からその話を聞いたときは、とても驚きました)

楓(驚いて、慌てて…そして、涙を流しました)

楓(彼が、私の担当を外れると言う事実は……それだけ私の心を揺さぶったのです)

楓(……)

楓(ひとしきり、慌てた後……その事実が、じわりじわりと私の中に染み渡り…)

楓(やがて、私はその事実を受け入れました)

楓(プロデューサーとの話…いや、飲み会を重ねて…)

楓(……晴れやかな、清々しさを感じるようになれました)

楓(この担当の変更は…新たな私の出発なのだと)

楓(彼の新しい出発なのだと)

楓(そう、思えるようになりました)

楓(そうしてお互いが、お互いの未来にエールを送り、微笑み浮かべながら互いを称えて…)

楓(そんなすこやかな気持ちを、彼との別れまでの、短い暮らしのなかで私は育むことができたのです)
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:03:24.22 ID:M/WIHRdXo
楓(この晴れやかな気持ちを抱きながら…私たちは別れ…いえ、新しい道を、進むことができる)

楓(……そう思っていました)


楓(……けれど)


楓(そんな晴れやかな気持ちを貫けるほど、私の心は強くなかった)


楓(あの日の、前日の夜)

楓(眠りにつく、その布団の中で私は震えた)

楓(ああ、彼とのあの日々がもう終わるのか、と)

楓(私が笑って、彼が困る)

楓(そんなやりとりが…もう出来なくなるのか、と)

楓(……)

楓(……彼の)

楓(彼のかすかな微笑みを…あの笑顔を、すぐそばで見ることが…出来なくなるのか、と)

楓(ううん、笑顔だけじゃない)

楓(色々な彼の表情を、色々な彼の顔を見つけながら、互いに肩をならべて歩くことが出来なくなるのか、と)

楓(……)

楓(……そんな事実が…布団にくるまり震える、私を押し潰そうとした)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 11:05:01.16 ID:RaEKm/2Bo
いきなり転載かよ、NaNッパリ(NaNじぇい民野郎)らしいな
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:06:11.39 ID:M/WIHRdXo
楓(……)

楓(……そして、思った)

楓(私のこの気持ちを…この想いを伝えれば、彼は気持ちを変えてくれるのかもしれない、と)

楓(……)

楓(……けれど)

楓(そんなふとした考えは……即座に)

楓(心の中の、冷静な私が切り捨てた)

楓(心の中の、大人な私が切り捨てた)


楓(言ったところで、この物事はいい方向に転びやしない、と)


楓(……)

楓(心の中の冷静な私は…落ち着いて彼について考えていた)

楓(心の中の恋する私は、私の告白を受け入れた彼との、幸せなひとときを想っていたけれども……)

楓(心の中の大人な私は、決してそんなことを考えたりはしませんでした)


楓(……)


楓(……彼が私の想いを、受け入れるはずがない、と)


楓(……)

楓(…ああ、そうでしょう)

楓(彼が、私のこの想いを、この恋を受け入れるはずがない)

楓(きっと…いや、間違いなく言うはずです)


楓(私はプロデューサーで、貴方はアイドルだ、と)

楓(そう、言うはずです)
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:12:33.73 ID:M/WIHRdXo

楓(そんなことは……彼との今までの日々のお陰で、しっかりとわかっています)

楓(彼との別れが、とうとう明日へと迫っている今)

楓(私のこの想いを口にしたところで、意味はないのです)

楓(いや、意味がないどころか……言ってしまえば、彼と私の関係は砕けてしまうでしょう)

楓(砕けてしまえば……)

楓(ああ……)

楓(……)

楓(……だから)

楓(私は、明日と言う日を大人しく迎えるしかない)

楓(打ち明けてしまえば、砕け散る)

楓(打ち明けずに、別れを迎えれば…)

楓(……ええ、そうです)

楓(別れを迎えたとしても…私と彼の縁は、途切れることはないのです)

楓(担当でなくとも……同じ会社の同僚なのだから)

楓(彼と話すことが、できるでしょう)

楓(飲み会にさそったりできるでしょう)

楓(私のだじゃれに、あきれながら答えてくれることでしょう)

楓(……そう、縁が途切れるということは、ないのです)

楓(そう思って……)

楓(私は明日を迎えるしかないのです)

楓(……)

楓(……そんな風にして)

楓(私は、私を納得させようとした)
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:13:49.63 ID:M/WIHRdXo
楓(納得、させようとした)

楓(……だけど)

楓(だけどその時……)

楓(私の中の、大人な私が)

楓(暗がりの中から…ささやいた)

楓(私の恋をプロデューサーに伝えても…彼はきっと、この声に答えはしない)

楓(プロデューサーは…)

楓(アイドルだと、プロデューサーだと)

楓(そんな単語を並べて…私の気持ちから…)

楓(……いや)

楓(自分自身の気持ちから…逃げるのだ、と)

楓(そんな言葉を、ささやいた)

楓(……)

楓(……そうだ)

楓(もし私がアイドルじゃなくて)

楓(プロデューサーも、プロデューサーじゃなかったら……)

楓(彼は、私の気持ちに答えてくれただろうか)

楓("私はプロデューサーで、貴方はアイドルだ"と、そんな簡単に想像できる答えに逃げずに…私の気持ちに、答えてくれただろうか)
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:17:20.94 ID:M/WIHRdXo

楓(……)

楓(……逃げる、か)

楓(……)

楓(……)

楓(……そして)

楓(そして私は、閃いた)

楓(それがあるのなら……)

楓(逃げ場があるのなら…)





武内P『……それでは、高垣さん』

楓『…はい』

武内P『本当に…本当に』

武内P『短い間でしたが…本当に、ありがとうございました』

楓『…はい』
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:24:51.20 ID:M/WIHRdXo
武内P『……』

楓『……プロデューサー』

武内P『…え?』

楓『私、プロデューサーに見つけてもらって……本当に幸せです』

楓『本当に、本当に…今までありがとうございました』

武内P『…!』

楓『この思い出を…この宝物を胸にしまって、私、これからも頑張っていきます』

武内P『っ、たかがき、さん…』

楓『それでは…』

楓『おつかれさまですっ♪』

武内P『っ!』

武内P『っ、はいっ…!』

武内P『おつかれ、さまですっ…』

楓『……』

楓『……』ニコッ


楓(……逃げ場を、無くしてしまえばいい)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:25:31.07 ID:M/WIHRdXo
武内P『…?』

楓『……』

楓(貴方と私の交際がバレて、私の人気が落ちることが心配なら…)

楓(交際程度のことで人気が落ちないぐらい、有名になってみせます)

楓(スキャンダルと呼ばれない程、私は有名になってみせます)

楓(そんなアイドルの、頂点になってみせます)

楓(…幸い前例はありますし……それに)

楓(もしも私が未成年だとしたら…)

楓(交際というものは、さらにとてつもないスキャンダルになっていたことでしょう)

楓(けれど私の年齢は?)

楓(そう、25歳です)

楓(これぐらいの年齢なら……)

楓(きっと、熱愛報道ということで片付くでしょう)

楓(…ふふん)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:26:44.76 ID:M/WIHRdXo
楓(……)

楓(…さぁこれで、ひとつの逃げ道をふさぎました)

楓(……)

楓(…次の、逃げ道)

楓("言葉をはぐらかす"という逃げ道を…塞ぐ必要がありますね)

楓(その方法の一案は……既に、私の頭の中にあります)

楓(日々のアイドル活動の中で思い付いた……とっておきの方法です♪)





楓(……その方法を、私は実行しようとしている)

楓(……)

楓(そして今まさに、その時がやって来た)

楓「結婚の予定、ですか?」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 11:27:54.06 ID:M/WIHRdXo
楓「そうですね…ふふっ♪」

楓「今のところはありませんっ」

楓「でも…」

楓(でも…)

楓(でもでもでもでもっ♪)

楓(……)

楓(…そう、思わせ振りな台詞を続けて、この質問はこれでおしまい)

楓(ミステリアスな高垣楓の、ちょっとしたおちゃめな回答)

楓(そんな感じの、段取りだった)

楓(……)

楓(……でも)


楓「お慕いしている人はいます」

楓「?…どなた、ですか?」

楓(段取りと違う回答に、アナウンサの方が一瞬うろたえ……そして尋ねくる)

楓(気になることは、聞く)

楓(それがこの人達の、性なのでしょう)

楓(その"さが"を私は利用し……そして)

楓(そして、私の想いを…自分の愛を……)


楓(……ぶちまける)


楓「ええ、それは…」

楓「私の、始めてのプロデューサーです」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 11:59:23.76 ID:mrtk33LoO
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あやめ速報の誠意ある対応を待っております
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 12:09:44.94 ID:opBiR65Lo
楓「おぼつかない足取りの私を、あの人は支えてくれました」

楓「始めての担当アイドルと…始めてのプロデューサー」

楓「そんな始めて同士のふたりで…アイドルとしての道を歩いていきました」

楓「あの頃の記憶は…ふふ、今も私の心の奥で、温かく光っています」

楓「そんな、一緒にふたりで歩いたあの人を…プロデューサーを」


楓「私は、愛しています」


楓「心の底から……愛しています」


楓「……」

楓「……」

楓(……本当は)

楓(本当は、直接この言葉を伝えたかった)

楓(ブラウン…いや、液晶越しではなく、直接伝えたかった)

楓(けれどもう、気にしたって意味はない)

楓(私のこの想いは……この言葉は)

楓(世間の荒波を通して、彼の耳に届くでしょう)

楓(かならず、届くことでしょう)

楓(……そして)

楓(その世間の荒波は……彼の逃げ道を、塞ぐことでしょう)

楓「……ふふっ」ニコッ



楓(…ああ今あなたは、何をしているんでしょうか)

楓(担当を外れた私にはもう、わかりません)

楓(……けれども、想像はつきます)

楓(今あなたには……途方もない量のメールや電話が、届いてることでしょう)

楓(私自身、"それ"を狙って、こんなことをしたものですから)

楓(……)

楓(……ふふ)

楓(……私のこの言葉への、お返事)


楓(ゆっくりと、お待ちしています♪)
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 19:29:13.09 ID:7UCK8Nyxo
はいルール違反ですね
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 20:24:28.27 ID:VlGgaobT0
余計引き離されるだろこれ
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/31(火) 00:16:19.80 ID:tinDs1r40
だいぶ病んでるな楓さん……
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 22:52:47.16 ID:9qDmu+WkO
病み楓もええじゃないか
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/01(水) 06:51:05.73 ID:3B7ojlBTO
もし蒼い人ならテレビから這い出てきてた
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/18(土) 06:07:40.85 ID:m+/ExP8L0
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