【艦これ】龍驤「たりないもの」外伝

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883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:03:10.92 ID:uU4AtyqVO
>>882
器になる前からあの強さ
もともと力があったけど乗っ取られて自我を失ってわんぱく武蔵に
その後元に戻る

足りなかったものその10から
>武蔵「私には記憶が無い、だが何かをしていたのは覚えている。まるで誰かに操られていたように、私は操り人形だった」
>
>
>武蔵「私には力があった。素手で海を割りこの拳は山をも砕く」ギチッ
>
>
>武蔵「だが私に自我が目覚めた時、カブトムシを食べていた。何を言っているか分からないだろうが私も分からない」
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:05:49.10 ID:uU4AtyqVO
と思ったけど>>1かな?ならその解釈が正しいのか…

このやり取りのあと大淀に海を割る〜って言われたときに否定してなかったけれども
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:10:26.86 ID:COvRpJRio
そんなに姿を表さないけど凄く強いキャラってあんまり格落ちしてほしくないんだよな…
886 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:07:25.37 ID:xN2dVukDO
>>876から
 
 
「うおおおおおぁぁぁ!!!」


全力疾走、それはもう人生の中でこんな全力で走る事なんてそう無いだろうという勢いの


私は今、おそらくこの世界でも一、二を争うくらいのヤバい存在に追われてる


―――貴女はいつも何かから逃げていますね―――


誰のせいだ誰の!


あれから数日後、早速武蔵がまた手合わせを申し込んできた、折れた腕は何故か翌日には治っていた


艤装を展開せずに受けた傷は普通に治療が必要になるはずなのにどうなっているんだ


活き活きとして手合わせをという武蔵を前に私も危機感無くそれを受けてしまってから綾波の声がした


―――あっ―――


どしたの?今度はちゃんと手加減してよね、武蔵の腕を折ったとかあの後幹部に怒られたの知ってるでしょ


―――逃げた方がいいですよ―――


「は?」


と、目の前の武蔵が言った


「今度は前の様にはいかんぞ」


その言葉の直後に私は宙を舞ったのだった

887 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:08:47.62 ID:xN2dVukDO
 
 
へっ…?



武蔵の右腕が消えたように見えたと思ったらそれに反応して私の右腕も消えた、直後に衝撃で私の身体は吹き飛ばされていた


壁に叩き付けられる、そう思ったが私の右腕がまた素早く動き右腕だけで受け身を取り着地させられる


「ななななな…」


―――最初の一撃は反らしました。早く逃げてください、とりあえず幹部さんの所か、とにかく人の居る場所へ―――


なんで!?前みたいに出来ないの!?


―――あんな奇襲じみた事は武蔵さんには二度も通じません。それに一番の問題は―――


も…問題は…?


―――武蔵さんには両手両足があって私には右腕しか無いという事です―――


「つまりどういう事でしょうか」


思わず敬語になってしまう。自分の顔から血の気が引いていくのを感じる


―――攻撃すればその隙に反撃で死にます、防御するにしても手数の差でやっぱり死にます―――


マジで


―――マジです。何で安請け合いしてるんですか―――


そりゃあ…前みたいにしてもらおうと


―――簡単に手を貸した私の落ち度ですねこれは―――

888 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:10:39.82 ID:xN2dVukDO
 
 
「どうした、来ないのか?私からばかりではなくそちらからも仕掛けてこい」


武蔵が構えて待っている、身体が十倍くらいに巨大化して見えるのは気のせいか、いわゆる小動物的視点なのか


「あーっ!あれはーっ!」


私はあさっての方向を指差して叫ぶ。これで気を反らしてその隙に…!


「……」


「あれはーっ」


おや?


ドドドドドドドドド


「お前は私を馬鹿にしているのか?」


「ひいぃっ!?」


武蔵からの圧力が一段と強くなる、若干の怒りの波動のようなものを感じてもう私は死にそう


―――本当に貴女は……しかし簡単には逃がしてくれそうにありませんね、死にたくないなら私の言う通りに動いてください―――


はい!何でも言って!


―――ん?今、なんて言っている場合でもありませんね、まずは―――

889 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:12:15.79 ID:xN2dVukDO
 
 
そして


「でやああああ!」


私は左腕を振りかぶって武蔵に突進する


「来るか」


武蔵は私の攻撃の動作を注視している


私の左腕の攻撃は当たり前のように防がれてしまう。あまりに弱い攻撃に武蔵は反撃も忘れて怪訝な顔になる


「なんだそのパンチは?ふざけているのか」


武蔵のプレッシャーが一層強くなる、やばい…本気で死にそう


「うあああ!」


次に蹴りを放つもそれもあっさりと防がれる、私が攻撃する度に圧力が増して行く、武蔵の顔から表情が失せていく


「私は遊びでお前に手合わせを申し込んだ訳ではない。自らを高める為にお前を見込んだからだ」


ああああああああやばいやばい本気で怒ってる死ぬ私ここで死ぬ


「だがお前はそうやって…本気でやらないのならばここで…」


―――今です、構えて―――


私は武蔵に近付く、すると右腕が動き武蔵の腹部に拳を当てた、右の拳を


「今度はなんだ、これ以上私を侮辱するなら、ここで殺す」


そう言って武蔵が動きを見せた瞬間


―――この動作が可能な範囲まで近付く為には右腕だけでは足りません、貴女の弱い攻撃は逆に効果的でしたね―――


ズ ド ン!!!

890 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:13:48.31 ID:xN2dVukDO
 
 
「ガッ!?」


武蔵の身体が後ろに下がる、だが倒れるまではいかない


―――やはり右腕だけでは充分な威力が出ませんか―――


私は更に武蔵に肉薄する。もう密着する勢いで接近するとまた右拳が武蔵に添えられる


「おのれ…何だ今のは!」


武蔵が再び私に攻撃しようという動きを見せると


ズドン!


「グッ」


ようやくこの技の正体を察したのか武蔵が大きく距離を取る


―――今です、走って―――


そこで私は踵を返し脱兎の如く走り去ったのだった


「……は?」


次の攻撃に備えていた武蔵の呆気に取られる声、そして


「ははは…あくまで私をおちょくる気か…ははは…殺す」


あのさ…最初から逃げてればまだ半殺しくらいで済んでたんじゃないかな


―――おや?―――


「お前えええええええ!!!?」


大本営に私の絶叫がこだました

891 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:15:27.53 ID:xN2dVukDO
 
 
そうして私は武蔵から全力で逃走中な訳だ


「ところであの技って何なのさ」


ひとまずトイレに逃げ込んで一息吐いた私は綾波に聞いてみた


―――あれは寸打といいます。相手の動きに合わせて全身のバネを使ってカウンターを打ち込む超近接技です―――


「全身の…」


―――ええ、ですから全く威力が出ませんでしたね。本来なら急所に打ち込めば一撃必殺なんですが―――


「必殺したら問題だよ…」


―――今は私達が必殺されそうですが―――


「誰のせいだよ!」


―――勝負を受けた貴女では―――


「ぐうぅ…!」


「何処に居る、この辺りから声がしたぞ」


「……!……!」


慌てて自分の口を塞ぐ


「ここか?」


扉を開く音が聞こえた


「こっちか?」


また扉を開く音、そして私が居る個室にだんだん近付いてくる


おいこれなんてホラーだよ!?

892 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:17:22.51 ID:xN2dVukDO
 
 
―――見上げたらそこに…となる前にここを出ましょうか、そこの窓が開いてます―――


音を立てないように、尚且つ素早く、私は窓から這い出す。そこは中庭だ


「これでひとまず安し…」


ドゴオォン!!!


安心…と言おうとした私の背後の壁が吹き飛んだ。そこは私がさっきまで居た個室の辺りだ


「見付けたぞ」


「あ…あああぁぁぁ…ぁ…」


ああ…せっかくトイレに居たんだから済ませておけばよかった…ちょっと漏れちゃった…ホントにちょっとだけだけど!


「……お前は何処かおかしいな」


「へ…?」


「普段の言動はとても演技とは思えんし、あれだけ殺気をぶつけてもただ逃げ惑うだけ、かと思えば先程のような鋭い一撃を放ったり私の腕を折ったりする」


―――ああこれは―――


やっぱり…?


「お前の中には誰が居る」


気付くよね普通…出来たらあんまり知られたくはなかったんだけどなぁ…


レ級様の所とか一部を覗いて私は誰にも正体を明かしてはいない。今の新しい大本営なら大丈夫じゃないかとも思うけどなるべくならバレないに越した事は無いのだ

893 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:19:25.18 ID:xN2dVukDO
 
 
―――仕方ありませんね、これからも挑まれるリスクを考えれば話してしまうのが一番ですか―――


そうして私は武蔵に全部ぶちまける事にした


「―――なるほどな…寄生体か、言われて見れば微弱ながら深海棲艦の気配もあるが…これは言われなければ解らんな」


ええ、ええ、あまりに雑魚過ぎて気配もしないと言いたいんでしょ!そうですよ!悪かったな!


「そして右腕だけは自由になる綾波か…さっきの技も綾波のものか」


「そうですよ、よく知りませんけど」


「その綾波とは話せるのか?」


「ええっと…」


――――――


「あれ?綾波?」


「どうした?」


「返事しなくなっちゃいました…」


「ふむ…他人とはあまり話したくないのかもな。綾波…近接戦闘を行う綾波か…」


武蔵が何か考え込んでいる姿を横目に…うぅ…何だか眠い…さっきまで死に物狂いで逃げ回ってたツケかなぁ…


「おい、大丈夫か?」


私を殺すとか言っていたのはあくまで本気を出させる為だったらしいが…ふぁぁ…そんな武蔵の心配する声が遠くに聞こえ…


そして私の意識は暗闇へと落ちていった

894 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:21:30.28 ID:xN2dVukDO
 
 
夢を視た


私が知らない誰かを抱き締めて愛を囁いている


そしてその口でその相手に噛み付いた


ぶちぶちぶち


鮮血が溢れだす。そして夢の中の私はそのまま相手を…喰らっていた


その相手も食べられながらも愛を囁き、そして同じように私に噛み付く。夢だからなのか痛みは感じない。そしてその顔は幸せそうな笑顔で


これは私の夢?……違う…これは…


その相手が私を見た。夢の中の私ではなくこの夢を視ている私を


「人の営みをあんまり見るもんじゃないよ、恥ずかしいじゃんか」


軽い口調で、しかし有無を言わせぬ迫力でそう言った


「という訳で、そろそろ起きなよ」


お前は…


夢から覚めていく感覚、その姿が消えていく


そして目覚めた場所は自室のベッドだった

895 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:23:46.26 ID:xN2dVukDO
 
 
「なんつー夢だよ…私にそんな趣味無いっての」


―――見ました?―――


まぁ…よく解んないけどずいぶん幸せそうだったよ


―――ええ、もちろんです―――


何となくだがこの綾波がどういう奴だか少しだけ解った気がする。そして私が寄生する前に何があったのかも


「愛の形は様々ってか…」


どうやら急に眠りに落ちた私を部屋まで送り届けたのは武蔵らしいと後から聞いた


それからというもの執拗に手合わせを申し込んでくる事は無くなったがよく見られているような気がする


今の所は私の正体は広まってはいない。武蔵も秘密は守ってくれているようでひとまずは安心してもいいのかもしれない


―――もしバレたらどうしますか?―――


「どうかな…こんな寄生体に行く所なんてあるかな…」


―――あの鎮守府は?―――


「わかんない…でもレ級様怖いしちょっと遠慮したいかな…」


―――もし…もしも何処にも居場所が無くなったら…私達と…―――


「え?」


―――いえ、何でもありません―――


「まっ、いざとなれば何処でだって生き抜いて見せるよ。今までだってそうしてきたんだ」

896 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:26:05.22 ID:xN2dVukDO
 
 
―――逞しいですね、その強さは素敵だと思いますよ―――


図太く、図々しく、私は生きてやるんだ。かつての同胞達のように使い潰されて沈んでいくのは御免だ


艦娘になった今もその可能性はあったけど私にとっての幸運は綾波が一緒だという事かな


「これからも頼りにしてるからねっと」


―――はいはい―――


そうして私、深海綾波の日々は過ぎていく


未だ平和な世の中は来ない、それでも私は絶対に最後まで生きてやると改めて誓うのだった
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/06(土) 05:30:21.45 ID:xN2dVukDO
誤解が生じてしまったようなので急ピッチですみませんでした

あくまで強いのは右腕のみで深海綾波自身はそうではないという解釈です
武蔵は今もちゃんと強いと思います
強者は基本攻撃を避けない
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 08:00:36.09 ID:1NgUuJsmO
おつ

この綾波って何者だっけ……?
不知火に傀儡モードで廃人にされたやつ?
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 08:26:46.95 ID:dNmHgdEvO
その綾波とは別
瀕死の綾波に規制した木っ端深海棲艦
なんやかんやあって深海棒で大本営の特務艦達をメロメロにして味方につけた地味な功労者
一昔前の映画で言うなら陽気な黒人枠

本体の綾波について詳しく語られたことはなくて右手は本体の綾波が自由に動かせるくらいしか背景の情報はなかった…はず
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 11:15:44.40 ID:eRCsX9ado
おつー
陽気な黒人枠は言い得て妙
寄生が成る深海棲艦は何処か特殊なんだなあやっぱし
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