【艦これ】龍驤「たりないもの」外伝

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601 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/10/12(土) 01:29:39.95 ID:Oe8uISGDO
 
 
それを知った漣さんは意外にも冷静に状況を整理、拐ったのは整備士さんの所の伊400さんだろうと話す


「漣さんの事だから飛び出して行くかと思いましたが…思ったより落ち着いていますね」


新棲姫「いや…あれはかなり怒っているな…」


よく見ると目が笑っていない漣さん。あともう少しでキレそう


その後深海吹雪が現れ、今回の司令官の誘拐はその伊400さんの独断だったと説明していた


しかしその後の深海吹雪の話で一気に雲行きが怪しくなる


傀儡艦娘の爆弾の除去の為に陽炎さんと不知火さんを解剖して解析したいというのだ


新棲姫「ああ…やはりそういう事か」


「え?」


新棲姫「ワタシがあいつらに感じていた違和感、命に対する認識がワタシ達とは違うんだ」


【どうせ傀儡として復活させられるから、何をしても問題は無い…殺した事にはならない、そう考えているのね】


怒りをはらんだ口調で富士さんがそう言う


新棲姫「記憶と魂はイコールではなかった、だからワタシはここに居る。生きている者にはそれを確かめる術は無いがな」


だけどそれを知らなくとも整備士さんの要求は到底飲めるものではなかった
602 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/10/12(土) 01:32:37.73 ID:Oe8uISGDO
 
 
協力を得られないと知った深海吹雪は実力行使に出ようとするも重巡棲姫さんとレ級さんに取り押さえられる


以前見た時にはあり得ないくらい強かったが陸での戦いには慣れていないようだった


捕らえられた深海吹雪は協力を呼び掛けるがもちろん首を縦に振る者など居ない


陽炎さんを除いて


「陽炎さんには窃盗癖がある…自分でもどうにもならない程に重症の…だからといってそれは…」


新棲姫「考えてみれば少しおかしいな…大本営は自由に傀儡艦娘を造る事が出来る。しかも色々と手を加えてもいる」


【窃盗癖などという欠陥をそのままにしておくのは不自然…そういう事?】


新棲姫「ワタシが思うに故意にそういう要素を植え付けたのではないかと思う。何らかの実験の為かは知らないが」


「だとしたら酷いですね…陽炎さんは苦しんで、自らを差し出すくらいに思い詰めているというのに…」


そうして深海吹雪を助けようとする陽炎さんを駆け付けた不知火さんが殴り飛ばした。側にはリュウジョウさんも居る


「手加減無しですね」


表情は変わらないが相当怒っているようだ。そして不知火さんは陽炎さんを叱責する


欠陥無く完璧になって生まれ変わったとしてもそれはもう違う陽炎さんなのだと


一度死ねば、今の陽炎さんは二度戻りはしないのだと
603 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/10/12(土) 01:34:31.54 ID:Oe8uISGDO
 
 
新棲姫「…確かめる術は無くとも…そうか、理解しているのだな…」


「新棲姫さん…」


その後、リュウジョウさんの助け船により解剖しなくてもデータは取る事が出来るという


どうやらアケボノさんに透視能力まで備わっていたらしい。つくづく彼女達は規格外だ


そうして解析した結果判ったのは


傀儡艦娘に仕掛けられた爆弾だけを除去するのは不可能という結論だった


ちなみにその間、伊400さんはずっと正座させられていた


そして司令官はアケボノさん達の姿を見て安心したのか泣いてしまった


「なんだか憔悴していますね…よほど怖い目にでもあったのでしょうか…怪我は無いみたいですが」


新棲姫「ワタシでも用が済めばすぐに帰りたい気分だったからな…。強制的に滞在させられた提督の気持ちも解らないでもない」


その後、明確な対策は無いままその場は解散となった。最後まで深海吹雪は睨み付けていたが。なにやら禍根が残ってしまったようだった
604 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/10/12(土) 01:36:58.91 ID:Oe8uISGDO
 
 
そして鎮守府


漣さんがとうとうはっきりと認識してしまった


今の新棲姫さんと元の新棲姫さんは別なのだと


考えなかった訳ではないようだったが今回の事でこれ以上目を背ける訳にはいかなくなったのだろう


新棲姫「いつかは…こうなるとは思っていた…」


「また精神世界に閉じ籠っているようですが…」


【錯乱している訳ではないわ。一人で考え混んでいる。どう受け止めるべきか迷っている…】


悩み続ける漣さんに重巡棲姫さんがアドバイスをしている


それは日進さんにこちらの新棲姫さんを降ろしてもらい直接話せばいいという内容だった


しかしそれは…


「それをするという事は今あちらに居る新棲姫さんを蔑ろにするという事…本物として認めないと言っているのと同じ…」


それは漣さんも解っているのかすぐに首を縦に振る事はしなかった


新棲姫「なあ富士…」


【なにかしら】


新棲姫「ワタシをどうにかしてあちらに送れないか?あちらのワタシと話したい」
605 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/10/12(土) 01:39:23.14 ID:Oe8uISGDO
 
 
【…私は深海棲艦に直接干渉は出来ない、諦めて頂戴…と言いたい所だけれど…今ならひとつ方法があるわね】


新棲姫「ああ、ワタシもそれを期待していた」


【ふふ…さすがと誉めてあげるわ】


「あの…どういう事か説明してくれませんかね…置いてきぼりです私」


【もしかして…重巡棲姫が彼女を呼ぶよう奨めたのもこれを考えての事かしら?】


新棲姫「さあな…今のワタシには判らない」


「…いいですよ別に。解らない私がお馬鹿なんです」


【はいはい…膨れないの。今説明してあげるから】


話に着いていけずに膨れっ面の私の頭を撫でる富士さん


【私は直接新棲姫の魂をどうこうは出来ない、だけど今あの鎮守府にはそれが出来る存在が居る。彼女の力を借りましょう】


富士さんが言うには日進さんを介して新棲姫さんを一時的にあの場に投影するという


【魂を降ろす負担は私が肩代わりするから彼女には危険は無いわ。気付かない間に終わっているでしょう】


新棲姫「すまない…頼む」


【まあ…貴女ともそれなりに長く過ごしているのだからこれくらいは…ね】
606 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/10/12(土) 01:41:51.14 ID:Oe8uISGDO
 
 
そうして富士さんは新棲姫さんの頭に軽く手を添えて目を閉じる


富士さんの周囲に不思議な力が満ちるのを感じる。一瞬だけ富士さんの背後に巨大な何かのシルエットが見えたような気がした


新棲姫さんの身体が淡い光を帯び、それと同時にモニター向こうの新棲姫さんの前に同じ姿が現れる


最初は驚いていたあちらの新棲姫さんだったがさすがは限りなく近い魂、すぐにそれが自分だと察したようだった


新棲姫「今からこれまであった齟齬を全て埋める。今のワタシの全てを伝える。別人などと欠片も思えないように」


そして新棲姫さんは話し出す。それはもう本当に全てだった。秘密にしたいだろうと思える内容すら全て


最後には新棲姫さんは泣きながら、それでも必死に、漣さんの為に、限られた時間の中で自分の全てを伝えきった


【そろそろ…】


新棲姫「ああ…なあワタシ…漣の事…頼んだ」


もう一人のとは言わなかった


あちらの新棲姫さんが頷く前で投影された新棲姫さんの姿が消えていく。その顔には決意のようなものがあった


新棲姫「…ぅ、ぐ…」


【お疲れ様…頑張ったわね…】


まだ泣いている新棲姫さんを抱き締めて背中を擦る富士さん


これで彼女が抱えていた重荷は今やっと消えたのだろうと思う
607 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/10/12(土) 01:45:53.55 ID:Oe8uISGDO
 
 
その後、あちらの新棲姫さんは漣さんにそれを話していた


秘密にとは言ったが話しても構わない、それを決めるのもまたワタシだと新棲姫さんは言っていた


新棲姫「これから先、環境と経験でまた違いは生まれるだろう、だがそれはもう齟齬ではない。あれが漣の潜水新棲姫その人だ」


モニター向こうで泣きながら懺悔する新棲姫さんを抱き締めている漣さんにもこれまでのような迷いは無かった。ようやく吹っ切れたのだろう


新棲姫「ありがとう漣…幸せに…さようなら」


最後に一筋涙を流して、新棲姫さんは笑顔を浮かべた


ズズン…


その時


ガチャ!


それまで部屋で休んでいたはずのY子さんが青ざめた顔で飛び出して来て


『お姉ちゃん…どうしよう…失敗した…来ちゃう!』


ズズン…ドドン!ドドドドドド!


揺れがどんどん近付いてくる。そして


ドオオオオオオン!!!


轟音と共に部屋の天井が跡形も無く吹き飛んだ。その先に居たのは…


今しがた部屋から飛び出して来た彼女と同じ姿、顔をした、しかし知らない…表情を浮かべた―――
608 : ◆B54oURI0sg [saga]:2019/10/12(土) 01:48:41.22 ID:Oe8uISGDO
ここまで
なかなか書く時間が取れず…
遅くなり申し訳ありません
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/12(土) 01:52:45.29 ID:qTwnhDcCo
おつ
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/12(土) 03:53:03.70 ID:f0QNaFzdo
乙です
この辺り頭の回転が速い娘・人達にとかく救われた

ここから、此方ラインは白紙に近く、それでいて収束点は決まっているので難しくなろうかと思います
ご自分のペースで無理無くお続けください
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/27(日) 21:43:42.56 ID:FiP9+fVYo
信濃はどうなったんだろう
たしか扉を開いてから一度も出てこなかった気がするけど
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 21:57:56.80 ID:uNxJvj2DO
>>607から
 
 
誰かが言った


この世に偶然は無く全ては必然


なら私がここに居るのはどんな必然だったのか
 
 
613 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 21:59:14.38 ID:uNxJvj2DO
 
 
跡形も無くなった天井から赤い空が見える。現世ではあり得ない赤い空


その天井の穴から降り立つ人物はこれまで一緒に過ごした彼女、それはY子さんと同じ姿をしていた


しかしその表情は私のよく知る彼女とは違い、蔑むような、怒っているような、少なくとも友好的とは言い難い雰囲気だった


『…ぅ…あ…』


それを見て明らかに青ざめ、怯えた様子のY子さん、これも今まで見た事の無い彼女の顔


半壊した部屋に立ち、その人物はY子さんを睨み付け口を開いた


?『ようやく会えたねぇ…随分手こずらせてくれたもんだ…この引きこもりが…』


『…う』


?『あたしを追い出して力を奪ってここに籠って…それでやり過ごせるとでも思った?』


力を…奪って…?


私が頭に疑問符を浮かべていると二人の間に富士さんが割って入る。立ち位置は…明らかにY子さんを守ろうとしている。つまり後から来たこの人は…


【残念だけれど…貴女にそれを返す訳にはいかないの】


?『ならどうするの?多少弱体化してるとはいえ力の差は解るよねぇ?』


新棲姫「何だかまずい流れだな…」


こそりと新棲姫さんが私に耳打ちしてくる

614 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:00:59.42 ID:uNxJvj2DO
 
 
新棲姫「朝潮…いつでも動けるように準備しておけ。下手をすればまた死ぬ羽目になるかもしれない」


不吉な事を言わないでほしい。…また死ぬ…この状態で死んだらどうなるのか…あまり良い結果にはならないのは何となく解るが


【朝潮…その子をお願い】


富士さんがY子さんを目で示し、身構える


?『…本気なんだね。まあたまには戦闘らしい事も悪くないか』


『お…姉ちゃん…』


二人が睨み合う中で私達はY子さんの手を引いて部屋を出てその場から離れようとする。色々聞きたい事はあるがそんな場合ではなさそうだ


次の瞬間私達の居た部屋が爆散した


振り返ると富士さんが艤装を背負っている後ろ姿。見た事もない巨大な艤装には20はあるだろうか、砲塔がそびえている


対してもう一人は特に何も装備してはいない。今の爆発は富士さんの砲撃だったのだろう。しかし全くの無傷のようだった


?『やっぱり今のお姉ちゃんではその程度か』


と、彼女は腕を振るうと不可視の衝撃が富士さんを弾き飛ばした


【…くっ!】


離れた私達の方へと富士さんが飛んでくる。どうにか受け身を取って着地する富士さん


「富士さん!」

615 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:02:38.31 ID:uNxJvj2DO
 
 
?『言っとくけど逃がさないよ。また探すの面倒だしねぇ』


その人物は悠々とした足取りで歩いてくる


「貴女は一体何なんですか!どうしてこんな事を…」


?『ふん…やっぱり何にも知らないか』


「知らないって何を…」


?『全部。あたしが何なのか、アンタがどうしてここに居るのか、あたしがどうしてこんな事をするのか』


私…?


?『まず最初の質問、あたしは何なのか。まあそれはもう判明してるよね』



新棲姫「八島…か」


八島『そういう事』


「え?だってそれは…」


私は後ろに居るY子さんを見る。彼女は顔を伏せていて目を合わせようとはしない


八島『だってソイツは名前を捨てたんでしょ?自分の宿命ってヤツから逃げた負け犬』


逃げた…?


【逃げた訳じゃないわ、必要な事だったのよ】


八島『どっちでもいいよそんなの。ソイツを消して力を取り戻して全部元通り。それでおしまい、お姉ちゃんもおしまい』


【そうはさせない】

616 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:04:41.68 ID:uNxJvj2DO
 
 
『あたしは…』


そこでそれまで黙っていたY子さんが口を開いた。それを見て八島は動きを止める


『…あたしは自分の名前が嫌いだった』


そうしてY子さん…かつて「八島」という名を与えられた兵器の苦しみを私は垣間見た


『かつての世界、その先の未来において無数の命を奪った兵器に付けられた名前…』


八島『改良に改良を重ね、破壊に特化したその兵器で人類は深海棲艦との戦いに勝利した』


呼応するように同じ姿をした彼女も話し出す


『だけど用が済んだからと一度手にした強大な力を人間が手放せる筈は無かった』


八島『そうして新たに始まるのは人間同士のそれまでよりも醜い争い』


『仮にも人類の敵と戦うと手を取り合っていた時がどれだけマシだったかと思える程に』


八島『そこに艦娘という人よりも遥かに強い人間に似た精神構造を持った存在が更に拍車を掛けた』


『量産型まで開発され、それを使って戦う艦娘に対して、その相手もまた艦娘』


八島『強力な兵器を持って艦娘は敵味方に別れて戦い続ける』


『そうしていつしか艦娘達は戦う為に戦う存在に成り果てていった』


八島『それを止めようとした人間や、そして艦娘にも兵器「八島」は幾度となく使われ、犠牲者の数は敵も味方も無く膨れ上がり続けた』

617 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:06:52.69 ID:uNxJvj2DO
 
 
『最終的にあの世界がどうなったのか…あたしも知らない…けど多分…もう誰も居ないのかもしれない』


八島『そして世界が変わっても同じ名前を持った兵器はまた作られた』


『その名前は世界を滅ぼす兵器の名として世界そのものに刻まれている』


八島『名前というのはその存在を表すもの。名前の無いものに力を与え、そして縛る』


『人間がそう望み名付けた「八島」はそういう意味を持った名前になってしまった』


八島『だからあたしは世界がそう望むならその通りにする事にした』


『だからあたしはその名前を捨てる事にした』





――――――。


言葉が出なかった


いつか富士さんが言っていた自分という呪いとはこういう事だったのか


例えば私、朝潮


自分で言うのも変な話だが真面目で忠誠心が高く、多少融通が効かない所もあるが基本的に良い子だというのが一般的な朝潮という名のイメージだろう


そこからかけ離れた言動を取ればそんなのは朝潮じゃないと否定されてしまうだろう


…人を殺して自殺までした私はまだ朝潮なのだろうか?
618 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:09:26.33 ID:uNxJvj2DO
 
 
そして彼女、「八島」の名前の意味は私の比ではない。言ってみれば世界を牛耳りたい、全てを思い通りにしたいという人間の欲望を一身に受けて生み出された兵器に付けられた名前


私だったらそんな自分は耐えられない。そして彼女も―――


八島『ソイツはあたしから別れて力を奪い、あたしを現世に追い出した』


『…そうしてここに閉じ籠り壁を作ってこっちに来られないようにした』


八島『何度も障壁を破ろうとしたけど狭間の世界に留まりながら壊す作業はなかなか骨だったよ。言ってみれば断崖絶壁に掴まりながらその壁に穴を掘るみたいな』


忌々しげにそう話す彼女に私は問いかける


「…そうして力を取り戻してどうする気なんですか」


八島『あ?』


「そんな自分が嫌いなら何もその通りにしなくてもいいじゃないですか」


八島『はっ…勘違いしないでよ。嫌ってるのはソイツであたしは気に入ってるんだ。何でも思い通りにしたいという欲が形になったこの力を』


【だけど今の貴女は不完全】


八島『…そうだね。ソイツのせいで三割程度弱体化させられて文字通り何でもとはいかない状態になってる。力が完全なら毎回99だって出せるのに』


99…?よく解らない


「貴女は一体何が目的なんですか」
619 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:11:35.23 ID:uNxJvj2DO
 
 
八島『ふん…まずはそこの負け犬を消したら次はお姉ちゃんを消す』


「な…」


八島『そしたら後は面白可笑しくこの世界を弄くり回してやる。つまらない退屈な日常なんて観客が集まらないからね』


【そんな事はさせない…】


八島『あたしを生み出した元凶がよく言うよ。話は止め、そろそろ消えてもらえるかな』


ゆらりと八島は歩みを進める。まだ正直話を飲み込めないがこれを放置する訳にはいかない。二人が消される?…そんなのは嫌だ


私は艤装を展開して構える。富士さんは先程まで出していた艤装を消して何かをするつもりのようだった


八島『雑魚が二人でどうする気かなぁ?』


「…っ」


こうして相対しているだけでも解る。私の太刀打ち出来る相手じゃない。だけど引く訳にはいかない


――――と


ぉぉぉ――――っ


何かが聞こえる、背後から


振り返ろうとした私の横を凄まじい勢いで何かが


?「っそおぉぉぉいぃぃッ!!!」


ゴシャア
620 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:14:37.09 ID:uNxJvj2DO
 
 
飛んできた何者かの蹴りが完全に油断していた八島の顔面にクリーンヒット、吹き飛んでいく


そして宙返りして着地し、蹴りを放ったその人物は――――え?


「島風…?」


島風「朝潮!やっぱり朝潮だ!」


と、私に抱き付いて来た


「どうしてここに…」


島風「何だか気付いたらここに居てしばらく歩き回ってたんだけど、すごい爆発が見えたから来てみたら朝潮がいかにも危なそうだったから…あれって敵…だよね?」


「…確認もしないで飛び蹴りはさすがにどうかと思います」


やはり彼女もここに来ていた


島風「私だけじゃないよ、途中で知ってる人に会えたのは運が良かったみたい」


振り返ると遠くから誰かが走ってくる。あれは…


新棲姫「呂500か…」


呂500「ま、待って〜島風ちゃん…いきなり走り出してどうし…え?」


私達の姿を見て彼女は固まる。状況が飲み込めずフリーズしているようだ


島風「実はもう一人居るんだけど…あれ?あの子は?」


呂500「え?あれ?そういえば居ないですって…」
621 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:17:39.69 ID:uNxJvj2DO
 
 
【朝潮…今のうちにこれを】


どう説明したものかと悩む私に富士さんが何かを手渡してくる。これは…


【今の私達にあの子は倒せない…貴女に頼むわね】


そうだ…今は戦闘の最中だ、悠長に説明してる場合じゃない。しかもあんな…


「皆!気を付けて!今は戦闘中だから!」


ドドドドドドドドド!


八島『やってくれるねぇ…駆逐艦ごときが』


例によって全くの無傷ではあるが顔面を蹴られるというのは当然ながら屈辱には変わりないようだった


呂500「ひっ…!あの人は…?」


島風「だいぶ勢い付けたのに効いてないんだ…」


「新棲姫さん!呂500さんを!島風は…」


島風「解ってる。やっぱりあいつは敵だね。よくない感じがビンビンするよ」


【…少し、下がっていてもらえるかしら…】


と、富士さんが前に出る。これまで感じた事が無い力の高まりがオーラとなって現れている


島風「この人は味方?…それにそっちに居る…でも雰囲気が全然違うね」


「ええ…私達は彼女を守らないとならないんです、説明は後でするから力を貸して」
622 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:20:36.32 ID:uNxJvj2DO
 
 
島風「朝潮の頼みなら…私も言いたい事が一杯あるし」


「謝罪ならお腹一杯なんですけどね…でもちゃんと聞きましょう。ここを切り抜けられたら」


八島『雑魚が何人増えた所で…』


【それはどうかしら?】


富士さんの背後、何かが…現れる。さっきの巨大な艤装…?


違う…これは…


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


…そこに現れたのはもはや艤装とは呼べない、それは要塞、無数の大砲やミサイルポッド、よく解らない兵器が満載された移動要塞


それはまさに山のようなという形容がぴったりだった


多数の火砲やミサイルランチャー、機関砲、飛行甲板まである。そして一際巨大な主砲らしきものが幾つか


それらを搭載した移動要塞を従えた富士さんはしかしそれでも硬い表情のままだった


八島『へぇ…いつの間にかそこまで力を取り戻してたんだ』


そしてそんな圧倒的な要塞を前にしても余裕の表情を崩さない八島も同様に


【この世界は魂の世界。艦種も、ましてや種族すら関係が無い、意志の力が全てを決める】


八島『残念ながら今の現世の技術力ではそれを作れる人間は居ないしねぇ』
623 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:22:40.77 ID:uNxJvj2DO
 
 
【だけどここでなら】


八島『そう…こんな風に』


と、八島が軽く腕を振ると彼女の背後の空に何かが―――


新棲姫「なんだ…あれは…」


空に…変わった形状の、あり得ない程に巨大なそれは浮かんでいた

富士さんの移動要塞に勝るとも劣らない程に巨大な空中要塞


至る所に無数の砲やミサイルポッド、そして形状の異なる幾つもの砲身。あれは…


「荷電粒子砲…ひとつやふたつじゃない…そんな…」


八島『時代遅れの実弾オンリーのお姉ちゃんに勝てるかなあ?』


【…やってみなければ解らないわ】


そうして富士さんは腕を差し伸ばし


【―――――――てっ!】


移動要塞に搭載されたあらゆる火砲が火を吹いた


呂500「きゃあああ!」


島風「ちょ…」


新棲姫「…衝撃も音も無いな」


よく見ると私達の回りに防壁のように薄い膜がかかっていた。巻き込まれて被害を受けないようにとの富士さんの配慮だろうか


その富士さんは腕を伸ばした姿勢のまま微動だにしない。普通ならあの攻撃を受けて無事で済むどころか跡形も無いだろう
624 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:24:45.68 ID:uNxJvj2DO
 
 
そう、普通の相手なら


八島『次は私の番だねぇ』


【…!皆私の後ろに!早く!】


爆煙の中から聞こえてきた声に富士さんが素早く反応、移動要塞の至る所に楯のようなものが展開される


【防御形態…どこまで耐えられるか…いいえ、耐えて見せる…!】


そして煙の向こうから飛来する数えられない程のミサイルや、あれはレーザー?


ドドドドドドドドド!!!


雨あられと降り注いだそれらは富士さんの要塞に着弾、激しい爆発を引き起こす


【ぐぅッ…!】


「富士さん!」


【まだよ…!】


膝を突きかけた富士さんが踏み止まりまた腕を振るった、それに呼応して要塞の火器が次々と火を吹いた


ドォン!ドンドンドン!


八島『あっははは!無駄だよ!』


八島の空中要塞から光が発せられる、まるでバリアのように富士さんの攻撃を掻き消してしまう


「最初の攻撃もあれで…あれじゃあ勝てない…」


【…てっ!】


それには構わず富士さんはひたすらに攻撃を続ける、しかし全てバリアに防がれている
625 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:26:40.17 ID:uNxJvj2DO
 
 
八島『…無駄だって言ってるのが解んないかなぁ!』


苛ついた様子で空中要塞から更なる攻撃が加えられる、しかし富士さんは一歩も引かない。これはもう殴り合いだ


しかし…明らかに二人の火力には差がある、このまま続けていては先に倒れるのは富士さんだ


しかも私達を守りながら戦う富士さんの負担はどれ程なのか想像もつかない


八島『しぶといな、だったら…』


痺れを切らしたように八島が言う。そして空中要塞にある荷電粒子砲の砲身が一斉にこちらを向く


新棲姫「まずいぞ…!あんな数を食らったら…!」


「跡形どころかこの辺り一帯消えて無くなりますね…」


島風「だったら私が…!」


呂500「ひえぇ…!」


荷電粒子砲が充填を始める、すぐには撃てないようだ。しかしこちらの攻撃が効かないのではそれを止める事すら出来ない


八島『1分…ってところかな。1分後にはあんた等はこの世界から消えて無くなる。念仏でも唱えたら?成仏なんて出来ないけどねぇ!』


勝ち誇ったように笑う八島に富士さんは


【1分もあれば充分ね】


八島『は?』


富士さんが手を掲げ、それに呼応して要塞の一部が展開する。そこに変わった形の砲がひとつ。それを見た八島の顔色が変わった
626 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:29:49.65 ID:uNxJvj2DO
 
 
八島『それは…まさか…』


【こちらは既に装填は済んでいるわ】


八島『霊砲…だと!?』


およそ砲弾を撃ち出すような形状ではないそれには魔方陣のような紋様が縦横無尽に走っている。そしてその紋様が光を湛え脈動していた


【現世でなら貴女の荷電粒子砲に勝てはしないでしょうが…だけどここでは違う。むしろ霊砲は実体の無い者にこそ最大級の威力が出せる】


八島『燃料なんてここには無いはずだ!撃てやしない!』


【あら?ここにあるわよ?】


と、富士さんは自分自身を指し示した


「え…?」


【特殊な艦娘を燃料とする霊砲…それはつまりその魂を削ってエネルギーとする兵器…それなら】


その霊砲の中心に光が収束していく


【私自身の魂をその燃料にする事も出来る】


―――――。


「駄目ッ!!!」


私は考える間も無く富士さんに飛び付いた


【ちょ…朝潮!やめなさい!】


「駄目です!そんなの駄目!」
627 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:31:54.38 ID:uNxJvj2DO
 
 
【別に消えたりしないわ!というかまだ私にはやる事があるんだからそこまでの無茶はしないわ!】


「だからって魂を削るなんて駄目です!」


私は必死に富士さんを押さえる


「富士さんがあれを撃つならさっきのあれを私は捨てます!」


【朝潮…】


困り果てる富士さん。そうこうしている間に状況は悪い方向へ転んでしまう


八島『あはは…ははは!もう1分経ったねぇ!』


【…!しまった!】


充填が完了した荷電粒子砲が私達に向けられる


八島『食らえ』


【くっ…霊砲…!】


「駄目!」


新棲姫「終わったな…すまない漣…」


島風「ろーちゃん!」


呂500「島風ちゃん!?」


島風が呂500さんを庇うように抱き着き。新棲姫さんは諦めたように目を閉じる


私…は…間違った…?でも…だからって…だけどじゃあどうしたらよかったの…?
628 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:34:37.71 ID:uNxJvj2DO
 
 
――――え?


その時、勝ち誇る八島の背後にいつの間にか人影が立っていた。八島は全く気付いていない


?「―――――鷹捲」


ズン


その影が八島に何かを仕掛けた


八島『な…!?がはっ!』


完全に不意を討たれまともに食らった八島は血を吐いて倒れる。そこに立っていたのは―――


早霜「勝ちを確信した時こそ一番の隙が出来る…何処かで聞いた通りね」


「早霜…?」


早霜「話は後にして。この程度で倒せる相手じゃないわよ」


八島『がああっ!』


早霜「ぐっ!」


空中要塞が一斉に早霜向かって攻撃を加える。充填が完了した荷電粒子砲の数基が早霜に照準を合わせた


八島『消えろぉッ!』


「逃げてぇ!」


【くっ…】


しかし早霜は逃げるどころかその場に留まり構えを取る


早霜「ずっと…見ていた…ここは魂の世界。なら!私は!」


荷電粒子砲の束が早霜に向かって放たれる。それに対し早霜は真っ向から迎え撃つ
629 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:37:22.19 ID:uNxJvj2DO
 
 
【何を…!?】


早霜「梟挫ぁ!!!」


早霜が光に呑まれ、その姿が見えなくなる


八島『雑魚が…あたしに手を出したらどうなるか思いし…!?』


その光が渦を巻くように変形していく。そしてその光の渦は湾曲して八島へとその標的を変えた


八島『なっ!?』


カッ!!!


八島と空中要塞へと跳ね返された荷電粒子砲が着弾。凄まじい爆発が起こった


早霜「あ…あは…。やって…やったわ…ぐっ…」


早霜は無事…ではなかった。両腕が…二の腕辺りから…無くなっていた


早霜「本来は…接近戦の技…だけど…実弾でなければ…応用も…出来るのね…ぅ…」


「早霜!なんて無茶を…!」


倒れ込む早霜に駆け寄り抱き起こす。まずい…身体が消えかけている。このままじゃ…


【本当…無茶をしたものね…即消滅してもおかしくなかったのに―――霊砲】


と、富士さんが手を早霜に向けて軽く振ると充填された光の一部が早霜へと撃ち出された


「何を!?」


撃ち出された光は早霜に着弾し、その光は早霜と同化していく。すると消えかけていた早霜の身体が存在を取り戻し、その腕も再生していく
630 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:40:44.42 ID:uNxJvj2DO
 
 
【霊なるものへと分け与える事も出来るのよ。そう私が仕様を変えた。もう破壊するだけの兵器ではないの】


八島『よくも…よくもやってくれたなぁ…!』


今度はさすがに無傷とはいかなかったようだ。エネルギーを荷電粒子砲に回していたせいであのバリアも張れなかったのだろうか。そもそも完全に油断していて防御する暇も無かったのか


そして発射直前の臨界状態の所にまともに食らってしまえばどうなるか


空中要塞は健在ではあったがかなりの損害を受けていた。見た所大破寄りの中破といった感じだ


今なら…!


私は富士さんに渡されていたある物を自分の砲へと装填する。それは一発の砲弾。もちろん只の砲弾ではない


密かに富士さんは私にこう言っていた。隙を見極めこの砲弾を八島へと撃ち込めと、その隙は私が作ると


それがあの霊砲というものなのだろう。しかし早霜の捨て身のおかげでその魂を削る兵器を使わずに済んだようだった


早霜に分け与えた分というのはあるが全力砲撃に比べたら微々たるものだろう


「これで…!」


八島『クソがあああ!』


ドドドドドドドドド!


荷電粒子砲は諦めたのかまだ無事なその他の兵器を乱射し始める。普通なら苦し紛れの無意味な攻撃だがその規模が違いすぎる。それだけで私達を消し炭にするには充分過ぎる破壊力だ
631 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:43:38.32 ID:uNxJvj2DO
 
 
【下がって!】


富士さんが私達の前に移動要塞を立ち塞がらせる。八島の二の舞を避ける為に霊砲は収納され再び防御形態を取る


ガガガァァァン!ドドドドドド!

【ぐぅ…!がは…!これは…ちょっとまずいわね…】


やけくそのような八島の攻撃は止まる気配が無く延々と続いていく。私達を守る為に防御を選んだのは失策だった


相討ちでも同時に攻撃を仕掛けていれば今度はダメージの大きい八島が先にダウンしていたはずだった


島風「なら私達でやろうよ!」


新棲姫「ワタシ達の力では例え満身創痍の八島でもダメージは入らないだろうな。そもそもワタシに武装は無い。そして呂500は潜水艦…地上では無力だ」


おそらく私達の中で一番強い早霜は身体こそ再生したが意識を失っていた。仮に起きても先程のような奇襲は通用しないだろう。そもそももう接近出来る状況じゃない


八島の激しい攻撃は止む気配が無い。必死に耐える富士さんの要塞はその大半の武装を破壊されていた。もはや反撃が出来る状態ではなかった。そして残る武装は…


【ぐっ…万事休すというやつなのかしらね…こうなったら…】


「富士さん!そんな…駄目ぇ!」


この攻撃の最中に霊砲を展開させようとしているようだった。こんな状況で展開させてもそこに攻撃を受けたら…富士さんもやぶれかぶれの様子だった
632 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/11/10(日) 22:46:15.66 ID:uNxJvj2DO
 
 
私が渡された砲弾も今撃っても撃ち落とされてしまうだろう。とにかくどうにかしてあの攻撃を止ませないと…でもどうしたら…


――――と


そんな絶望的な状況の中でおかしなものが見えた


呂500「あれ?何だろ…」


新棲姫「八島の向こうに…なんだあれは…」


他の人達にも見えているようだ。私の幻覚ではなさそうで少し安心した


地平線一杯に―――それは私達にとっては背景のようになってしまっていた普段の光景の―――


しかしこれまでではあり得ない程の死者の群


それが津波のように押し寄せて来ている光景だった
633 : ◆B54oURI0sg [saga]:2019/11/10(日) 22:50:32.02 ID:uNxJvj2DO
ひとまず
色々こねくり回していたらこんな事になりました
イメージはアームズフォート
スピリットオブマザーウィル対アンサラー
巨大兵器はロマン
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 22:51:40.51 ID:XlNztUvvO
おつ
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 22:56:24.88 ID:Dm4gOlrbo
おつおつでした
熱いの上手いなー
やの字、そこで「99」って言っちゃう所が慢心/敗因だったな
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/16(土) 20:37:49.42 ID:doTrlaF/0
少し、書き込みます


ーーbar海底


「すいませんやってますか?」

  
伊58「…どうぞでち」


呂500「お酒飲みますかって!」


「じゃあ何か…アルコールの強いものをお願いします」


伊58「歩いて帰るならそこまで強いのは出せないでち」


「お願いします、酔いたい気分なんです」


伊58「…わかったでち」


呂500「お客さん!これお通しですって!」スッ


「バーなのにお通し…?」


伊58「ここは昼間はランチをやってるでち。それで余った食材で作ったやつでち」


呂500「サービスですから気にしないで下さいって!」


「…ありがとうございます、それでは遠慮なく頂きます」
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 20:40:29.29 ID:doTrlaF/0
「……」グイッ


伊58「……」


呂500「そんなに急に飲んだら気分が悪くなりますって」


「すいません…」


伊58「……」カチャカチャ


呂500「何か忘れたいことでもあるんですか?」


「忘れたい……そうですね、それに近いことはあります」


呂500「よかったらお話し聞きます!ねぇでっち!」


伊58「…話すの邪魔しないでちよ」


「なら…少し話させてもらいます」
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 20:42:36.25 ID:doTrlaF/0
「私は趣味で物語を書いているんです」


呂500「まさか小説家さんですか!?」


「そんな良いものじゃありません。書いているのはただの時間潰しなようなものですから」


伊58「……」カチャカチャ


「そうです…最初は時間潰しのつもりだったんです。ですが続けていく内に止められなくなったんです」


「そして最近になって続けて書いていたものが終わったんです。達成感のような…不思議な気持ちが湧きました」


呂500「ふんふん」


「…問題はその後です。そこからおかしな事が起こり始めたんです」
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 20:44:18.61 ID:doTrlaF/0
「最初は小さな違和感でした。視線を感じるとか、一人で住んでいたらよくあることです」


伊58「……」


「でもその違和感が段々大きくなっていったんです。そして今では誰かに後をつけられているような…そんな感覚がするんです」


呂500「ストーカーですか?」


「むしろそっちの方が嬉しいですね…」


伊58「…ストーカーじゃない心当たりがあるんでちか」


「はい……」


呂500「どういうことですか?」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 20:46:47.46 ID:doTrlaF/0
「自分が趣味で書いていたその物語にはあるキャラクターが登場します。そのキャラはラスボスというか…とにかくそんな感じの存在なんです」


「紆余曲折あってそのキャラクターは倒されるんですが…」


呂500「何か問題があるんですかって」


「そのキャラの種類はメタキャラといって、作られた物語の中で現実世界の事に触れたりするんです」


呂500「…?」


伊58「ろーの読んでる漫画にも出てくるでち。メタっていうのは漫画の中のキャラがあと何ページしか無いから急ぐぞ、とか言うやつでちよ」


呂500「あぁ!それなら見たことありますって!」


「それだけで済むような可愛いものなら良かったんですが…そのキャラクターはそれ以上の事をしてしまったんです」
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 20:48:40.20 ID:doTrlaF/0
「現実世界…こちら側を認識して干渉しようとした。事実あと一歩でそうなる所だったんです」


呂500「んん?あなたが物語を書いてますよね?」


「そうなんです!でも…あいつは……自分の意思で………!」


伊58「ならその物語を削除すれば良いんでち」


「それができるならそうしてます!ですが自分の意思じゃ無理なんです…!」


呂500「でっち、この人疲れてますかって」ヒソヒソ


伊58「多分そうでち。仮想と現実の区別が付かなくなってるんでち」ヒソヒソ


呂500「そうですか…」


伊58「こういうタイプは好きなだけ語らせてやれば満足するやるでちね」


呂500「ならゆーちゃんが話を聞いてあげますって!」
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 20:50:41.16 ID:doTrlaF/0
呂500「…あなたもお仕事大変なんですって」


「それどころじゃないんです!今にも復讐されるかもしれないんです!」


呂500「うんうん、とっても怖いですって」


伊58「……」カチャカチャ


「殺してしまったから…あいつは自分を恨んでいる……自分さえ居なければあいつは自由になれる…」


伊58「…できたでち」スッ


呂500「アルコールが強いカクテルだからゆっくり飲んで下さいって」


「……」グイィ


呂500「あぁ…一気に飲んじゃったですって…」


伊58「……」
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 20:55:38.63 ID:doTrlaF/0
「来る……あいつが自分の所に…」


呂500「お客さんべろべろですって」


伊58「これじゃ歩いて帰れそうに無いでち。タクシー呼んであげるでち」


呂500「分かりました!いつもの所に電話しますって!」



「来る……来てしまう………」


伊58「…お客さんもう閉店でち。お代を払ってくだち」


「…………はい…」ゴソゴソ


伊58「ちょうど頂いたでち」


「……」


伊58「お客さんは思い込みが激しいんでち。凹んだ時はこうやってお酒に頼るのも悪くないでちよ」


「……」


伊58「冷静に考えれば分かるでち、創作したキャラクターが現実に出てくるなんてあり得ないでち」


「そう…ですよね……」


伊58「ゴーヤ達でよければいつでも話を聞いてやるでち、また来るといいでちよ」


「ありがとうございます…」


伊58「…そういえばアイツとしか言ってなかったでちがそのキャラに名前ってあるでちか?」


「はい…」


伊58「ちょっと気になったから教えてくだち、なんていう名前でち?」


「やし…






きひ
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 21:00:37.45 ID:doTrlaF/0


伊58「……ぅ…」


呂500「ん……んん……」


伊58「あれ…何が起こった……でち…」


呂500「でっち……?」


伊58「お客さんは……帰った…でち……?」


呂500「タクシー…まだ来てないです……」


伊58「まさか…薬とか飲まされて…ゴーヤ達が何かされた……?」


呂500「でも服は…乱れてません…って……」


伊58「……お金!飲み逃げでち!」


呂500「うぅん…ちゃんとレジにお金あります…」ガチャガチャ


伊58「……」


呂500「でっち…どうしますか……?」


伊58「…考えても無駄でち。気にするのは止めるでち」


呂500「分かりましたって…」


伊58(一瞬気を失う前に見たあの光景はなんだったんでち。お客さんが何かの名前を口にした瞬間……全てを包む闇のような…)


伊58(……)ブルッ


伊58(あれは触れてはいけないものでち。あの名前を口にすればゴーヤ達も……)


呂500「でっち…閉店準備しましょうって…」


伊58「…わかったでち」




きひ、きひひひ……
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/16(土) 21:02:12.09 ID:doTrlaF/0
Yに殺される夢を見たのを元に書きました。転んでもただでは起きないということで


それでは失礼します
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/16(土) 21:11:08.43 ID:N1O9MwsDO
おつです
ホラーテイストの展開好き
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/16(土) 21:22:22.02 ID:YTlxfBPko
乙おつ
Y子さんもそういう所あったし最大限好意的に捉えるとコイツもネタを提供しに来てくれた……?
ご自愛下さい
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/16(土) 21:32:15.64 ID:U1uB5/hpo
Y will return.
649 : ◆I4lwDj9Dk4S2 [saga]:2019/12/24(火) 23:44:51.59 ID:5HseLczs0
清しもの夜

ーー某所


清霜(今日のデート凄く楽しかったなぁ。何処に行ってどんなことをするのか、入念に下調べしてくれたんだね)


飛鷹「ふー…ふー…」


清霜(レストランは1ヶ月前から予約してたらしいし、プレゼントは3ヶ月前から用意してたって…気合い入れ過ぎだよ飛鷹さん)


飛鷹「ふー…んふー…!」


清霜(でも…それだけ大切に思ってくれてるってことだよね。そういう意味じゃ嬉しいな)


飛鷹「き……清…霜……あのね…」


清霜(龍驤さん達が悪いとは言わないけど、どこでもエッチしたりとかそういうのは私は嫌だなぁ)


飛鷹「こ、こここの後…行きたい所が…」


清霜(清く正しい付き合い。それが飛鷹さんと付き合う時に決めたこと。約束を破ったら知らないからねって飛鷹さんと約束したんだよね)


飛鷹「ふー…ふー……!」


清霜(はぁ……これが無かったら大人のお姉さんって感じで素敵なのに)


飛鷹「ほほ、ほ、ホテル……!」


清霜(本当にもう……仕方ないなぁ)
650 : ◆I4lwDj9Dk4S2 [saga]:2019/12/24(火) 23:50:56.88 ID:5HseLczs0
清霜「…いいよ、飛鷹さん」


飛鷹「へ?」


清霜「ホテル行こうよ」


飛鷹「ふぁっ!?」 


清霜「…なに?飛鷹さんから言い出したんでしょ?」


飛鷹「ほ、本当に?本当にいいの!?」


清霜「今日の為にお店も予約してくれて、プレゼントまで用意してくれたよね」


飛鷹「清霜の為なら当然よ!」


清霜「清霜ね…お返しのプレゼント買って無いんだ」 


飛鷹「お返しが欲しかったからじゃないの、清霜に喜んで欲しかったから用意したのよ!」


清霜「でもこのままじゃ嫌なの。だから……お返しに…」スッ


飛鷹「!?」


清霜「清霜のこと…好きにしていいよ」ボソボソ


飛鷹「オ"ッ…!!」ガクン


清霜「もう…ホテルに着く前にそんなので大丈夫?」


飛鷹「だ…だいひょうぶ……!」ボタボタ


清霜「興奮して鼻血出しちゃってるし…もう、しっかりしてよ?」


飛鷹「うぅん……!」


清霜(完璧な飛鷹さんより私はこっちの方が好きなんだろうな。あ、でも…できればエッチなのは控えて欲しいかな)


ーー
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/24(火) 23:51:50.47 ID:5HseLczs0
短いですがここまで

メリークリスマス
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/24(火) 23:53:52.02 ID:jPUc153Ao
メリクリ〜
こういう日常もっと見たい見たい
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/25(水) 00:10:53.56 ID:wFoKPxy2o
プレゼントありがとうございます!
ちょっと清霜小悪魔……?
やっぱり夕雲型なんですね〜
654 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:30:36.14 ID:fQH11UZDO
>>632から
 
 
バンバンバン!


狭い通路に銃声が鳴り響く


通路の奥にひしめく亡者の群の幾つかが銃弾を受けて倒れ、その後ろから更に別の亡者が押し寄せて来ていた


【こっちよ】


先導する富士さんを先頭にY子さん、新棲姫さん、呂500さん、島風、私こと朝潮、最後尾に早霜と隊列を組んでいた


艦娘の砲撃はこんな時には威力が高過ぎて使いづらいと富士さんが銃火器を用意してくれていた


私が撃ち漏らした亡者を早霜が叩き伏せる


【あの先に隔壁を閉じるポイントがあるわ。走って】


そう言って富士さんが立ち止まり入れ替わりに私達は駆け抜ける。その富士さんに亡者の群が掴みかかろうとする


【ふっ!】


富士さんが手刀を振り抜くと亡者達は弾き飛ばされ大きく後退させられる。その間に富士さんは私達追い付き隔壁を閉じた


新棲姫「はぁ…はぁ…」


「大丈夫ですか?」


新棲姫「何とかな…こんなに走ったのは久しぶりだ…」


早霜「とりあえずは一息吐けそうね…」


私達は今富士さんの移動要塞の内部に居る
655 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:32:18.60 ID:fQH11UZDO
 
 
突然押し寄せた死者の群に私達は逃げるしかなかった


要塞内に入る直前に私達が見たのは亡者が連なり八島の空中要塞に群がる光景だった


しばらくはそれを蹴散らす爆音が聞こえていたが今はその音も聞こえない


いったい何が起きているのか外がどうなっているのか、解らない事だらけだ


ひとまず休憩を取る私はまず早霜に声をかけた


「そういえば早霜は…ええと…味方、でいいんですよね?」


あそこまで体を張った姿を見ておいて何だが確認はしておかなければ


早霜「…そうね…貴女達がそう思ってくれるのなら」


「でも私は前に…」


そうだ。私は早霜が奈落へと墜ちていく姿をはっきりと見ている。戻って来れるとは到底思えない


『あたし達は…早霜を複数見ているよね』


相変わらず元気の無いY子さんだったが疑問には答えてくれるようだった


『朝ちゃんが前に見た早霜は一番最初に死んだ早霜…あの人間に捕まった時の』


「あ…」


そうか…。整備士さんは早霜を捕らえて解剖していた。その時に既に…


『今ここに居るのは2回目の…菊月に仇討ちされて強い未練のままに死んだ早霜』
656 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:35:21.72 ID:fQH11UZDO
 
 
早霜「…ええ、姉さんの暗示…そして私の仕掛けを解きたかったと…ずっとそれだけを考えていたわ…」


早霜はそう言って項垂れてしまった。髪の長さや雰囲気が幽霊のようだと思ったがまさに幽霊そのものな私達だったと思い直す


早霜「あれから…どうなったのかしら…時間の感覚も曖昧で、あの仕掛けは発動してしまったのかしら…ああ…朝霜姉さん…」


「大丈夫ですよ!」


早霜「…え?」


「貴女が決着を着けたんです、今の朝霜さんはすっかり元気ですよ」


そうして私はこれまであった朝霜さんに纏わる事を説明した


呪縛は完全に解けたと聞いた早霜は脱力したように呆けた後、静かに涙を流した


早霜「良かった…これでもう…未練は無いわ」


そして朝霜さんが司令官と龍驤さんの娘のような位置に収まっているという話になり


早霜「やっぱり…彼に任せて正解だった…」


と、安心したように微笑んだ


「早霜…いえ、早霜さん。未練は無いと言っても今は私達に力を貸してはくれませんか?」


早霜「…そうね、あんな存在が居たなんてまるで知らなかった、放っておいたらきっと姉さん達も危険…」


新棲姫「で、だ。そろそろ説明してくれるんだろうな。あの亡者達は何なんだ。前触れも無く現れた。…あんな大群が接近していたのに全く気付かなかった」


呂500「…突然現れたんですって」
657 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:38:34.58 ID:fQH11UZDO
 
 
『…あたしが話すよ』


Y子さんが一歩前に出て私達に向き直る


『あれは今まで見てきた普通の死者の魂とは違うもの。あれも兵器「八島」の一部』


「それって…」


『「八島」という名前は何も強い力だけをもたらす訳じゃない。あの兵器が大勢殺したという事実も必ず付いて回る…それが形になったのがあの死者達。現象にまでなってしまった怨念』


新棲姫「八島はそれを解っていてあれを出したのか?」


『どうかな…多分大丈夫と高を括ってたんだと思う。亡者なんてどれだけ現れようが関係無いって』


しかし実際は倒しても倒しても湧いてくる亡者の群。どれだけ単体として強かったとしてもあの数はどうしようもないと思えてしまう


島風「これからどうするの?」


【そうね…朝潮、あの弾はまだ持っているわね】


「ええ」


『撃ち込もうにも射程内に近付けないよね…』


【まずは移動しましょうか、艦橋へ行くわ】


私達は通路を進み階段を上る。所々先の八島との戦闘で破壊され通れない道もありその都度迂回せざるを得なかった
658 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:40:14.09 ID:fQH11UZDO
 
 
島風「そぉぉぉい!」


早霜「…鷹捲」


「伏せてください!」


ドゴォ!ズン!バンバンバン!


破壊された壁の隙間から亡者達が体を捩じ込んで侵入している区画があった


【引き返すしかないわね…ここの隔壁も閉じるわ】


群がる亡者をどうにか押し返し隔壁を閉じる富士さんだったが突然膝を着いてしまう


「富士さん!?」


【大丈夫…よ。今私が倒れる訳にはいかない…要塞が消えてしまう…】


そう言った富士さんの言葉に合わせて要塞内部が一瞬薄れかけて見えた


先の戦いのダメージはまだ癒えていないようだった。もし富士さんが倒れ要塞が消えれば私達は亡者の真っ只中に放り出されてしまう。その後にどうなるか…想像したくもない


私達は別の道から階段を上り要塞上部を目指す。途中にも亡者が侵入している区画がありその度に回り道を余儀無くされる


時に戦い、時に逃げ回り、ようやく艦橋に辿り着いた頃には全員疲労困憊だった


島風「ぜぇ…ぜぇ…みんな大丈夫?」


呂500「もう…歩けません…です…って」


新棲姫「ここが…ゴール…なのか?」
659 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:42:47.47 ID:fQH11UZDO
 
 
【ひとまずは…戦えない子はここに居て頂戴。あとは無事な砲台まで行かないと…】


「砲台までって…つまり外へ出ないと駄目なんじゃ…」


早霜「今外に出たらあいつらに呑み込まれてしまうわよ…」


【…要塞に群がっている死者達を薙ぎ払うわ】


『そのダメージがトドメにならないといいんだけどね…』


【こ…根性で何とか】


『解ってるでしょ?お姉ちゃんはこれ以上のダメージには耐えられないって。立ってるのも辛い癖に…』


【じゃあどうしろっていうのよ…】


『あたしが引き付ける』


【な…何を言い出すのよ!】


『死者達は「八島」の力に引き寄せられてる…そしてあたしも同じ力を持ってる、あっちに比べては弱いけどね』


Y子さんが外への扉に手を掛ける


『死者達が離れたらあとは任せるからねー』


【呑み込まれたら貴女も取り込まれてしまうわ!】


『だからあたしが捕まる前によろしくー』


ガチャン


軽く手を振りながらそう言い残してY子さんは外に出て行ってしまった
660 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:44:38.81 ID:fQH11UZDO
 
 
【あのお馬鹿!】


富士さんが珍しく罵倒の言葉を発する。後を追おうとするもふらついて壁に手を付いてしまう


「富士さん!そんな状態じゃ無理です!」


【せっかく…生まれたあの子が…こんな事は二度とあり得ないのに…】


オオオ…オオオオオオ!


死者達の声が聞こえ、そしてその群が移動を始める。Y子さんが自らを囮としてここから引き剥がしている。しかし…


早霜「まだ一部残っているわね…」


新棲姫「八島に近い位置に居るのはさすがに剥がせないか…より強い磁石のように」


「だけど行くしかありませんね」


【朝潮…?】


「もう一刻を争います。Y子さんが捕まる前に決着をつけないと」


島風「私も行くよ」


早霜「露払いは任せて頂戴」


「富士さんは二人をお願いします」


【え…?】


Y子さんの言った通り富士さんはもう限界だ。これまでずっと富士さんに守られていた私達はほぼ無傷、一時は消滅しかけた早霜さんも富士さんに力を分け与えられ調子が戻っている
661 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:47:02.16 ID:fQH11UZDO
 
 
新棲姫「妥当な判断だな。足手まといのワタシが言うのも何だが」


呂500「ごめんなさいです…って」


【…私は、貴女達を守らなければならないのに…】


「たまには…私達が守ってもいいじゃないですか。ね?お母さん?」


【あ…】


島風「へ?この人朝潮のお母さんなの!?」


早霜「朝潮の、というよりは艦娘全ての…ね。でも私は違うのかしら…」


ボソリと早霜さんが呟く。傀儡から作られた艦娘やドロップ艦娘にはが無い。だとしても富士さんはそんな区別はしないように思う


「さあ!駆逐艦、朝潮、出撃します!」


【解ったわ…でも出来るだけサポートはする。これを】


そう言って富士さんは小型通信機を渡してくれる。そして島風、早霜さん、私の三人は移動要塞の外部へと出た


あれだけ群がっていた死者は今はまばらで要塞の後方、だいぶ遠くに大群を見付ける


島風「もうあんな遠くに…速いね」


Y子さんの姿は見えないがあの群の只中に居るのだろう。早くしなければ…


「そういえば八島は…う…」
662 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:50:22.76 ID:fQH11UZDO
 
 
視線を巡らせるとそこにあったのは八島の空中要塞らしき何か


完全に死者の群に包まれて巨大な球体のようになっていた


早霜「…鉄の海域にあるアレを数倍醜悪にしたようなものね…まるで」


島風「あいつもあの中に居るのかな」


「いますね…何となく判ります」


そうして私達は目的の砲台へと急ぐ。途中死者に襲われるも数はまばらであっさり早霜さんと島風が蹴散らしてしまう


砲台に辿り着いた私達に富士さんから通信が入る


≪朝潮?聞こえる?≫


「はい、砲台に着きました。これからどうしたら…」


≪砲台側面のスロットにその砲弾を装填して頂戴≫


「ええと…これですね。………」


≪どうしたの?早く≫


ガシャ、ガキン


「…装填完了しました」


早霜「あの死者の壁はどうするのかしら…」


≪問題無いわ、それはこちらで排除するから≫


「富士さんまた何か無理を…」


≪無理はしないわ。…無茶はするけれど。それより早く射手席に≫
663 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:53:51.37 ID:fQH11UZDO
 
 
「まったくもう…」


実際言い合いをしている時間は無い。私は渋々射手席に着いて照準を覗く。死者の壁がアップになって思わず吐き気を催すがそれを無視。吐こうがどうしようが目を離す訳にはいかない


≪…撃つわ≫


ガコン…ドォォォン!ドゴォン!


半壊した別の砲台が無理矢理砲撃を敢行、直後に爆発し完全に吹き飛んでしまう


それを富士さんは次々と行い、死者の壁を削っていく


≪ぐっ!…まだよ…≫


「富士さん…」


照準を覗き、トリガーに指を掛けひたすらに待つ。徐々に死者の壁が剥がれて内部に居た八島の姿が見え始める。どうやら防壁を張って死者に呑まれるのを防いでいたようだ


「防壁が…あれじゃあ…」


≪大丈夫よ。防がれても当たりさえすればいい≫


照準越しに八島の姿が露出していく。そしてその顔が見える程になってきた時―――


目が、合った
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/31(火) 08:59:12.72 ID:fQH11UZDO
ここまで
気付けば一ヶ月以上も開いてしまい申し訳ありません
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/31(火) 14:08:02.85 ID:r/vHarnZo
おつです
いよいよ正念場
本年度中は大変お世話になりました
良いお年を
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:26:27.71 ID:RUmfBvhW0
ーー

漣「ご主人、初詣でも一緒にどうですか?」


提督「いや遠慮しておこう」


漣「あら?そんなに仕事溜まってましたっけ?」


提督「人が多い時期は避けた方が良いかと思ってな」


漣「あ…龍驤さんが…」


提督「俺が背負って移動するにしても人混みは良くない。行くにしても人が少ない時を選ぶな」


漣「あーすいません…ほんと漣ってアレですよね…」


提督「もう慣れたさ、気にしていない」


漣「ほぉ…ご主人様も言うようになりましたな」


提督「漣のせいで危険な目に遭ったり、事態がややこしくなったりしたことは一度や二度じゃないからな」


漣「いやぁほんと、普通なら追い出されて終わりですよ。それがこうやってご主人様の隣に普通に居れるのがおかしいんですって」


提督「俺が誰かを追い出したりすると思っているのか?」


漣「思いません、ご主人様は甘ちゃんの塊ですもん。龍驤さんを殺そうとまでしたこの漣を許すんですよ?」


提督「……ふっ」


漣「ふふふ。こんなご主人様だから皆ついて来てくれるんですよね」
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:29:15.81 ID:RUmfBvhW0
提督「俺は正しく無いし平気で間違える。それを正してくれる仲間がここには居るんだ」


漣「…素敵ですご主人様。やっぱり大好きです」


潜水新棲姫「漣ぃ〜〜〜新年早々浮気なのかぁ〜〜…」キィィ


漣「ぬぁーに言ってんすかぁ、お前が一番に決まってんでしょうが」ダキッ


潜水新棲姫「んふ…っ」


提督「俺達のことは気にしなくていい。二人で遊んで来ればいい」


漣「ではお言葉に甘えてそうしてきます!おらおら!お前には着物きせて可愛いくしてやりますからね!」


潜水新棲姫「富士がやってくれると聞いてる」


漣「勿論漣も着付けしてもらいますよ!ご主人様、後で漣と嫁の写真送っときます!」


提督「あぁ」


漣「それじゃあ行きますよぉー!」


潜水新棲姫「おー」ガチャ


提督「…漣も色々と乗り越えてくれたようだな。最近まで俺が許したと言っても自分では納得している様子が無かった」


提督「漣の嫁…潜水新棲姫がうまくやってくれたのか。それに関しても色々あったようだが最終的にはなんとかなったのか」


提督「龍驤と出会わなければ俺は漣と…いや、もしもの話はするべきでは無い」


提督「漣も俺も幸せだ。それだけで十分じゃないか、これ以上なにもない」
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:31:46.55 ID:RUmfBvhW0
提督「…さて、一段落したら龍驤の様子を……」


ピコン


提督「漣から連絡?着付けはそんな短時間で終わるのか?」スッ


漣『飛鷹さんが廊下で正座なう』


提督「……」


漣『どうやら清霜さんに姫初めを迫った飛鷹さんが反省してる模様』


提督「……」


提督『飛鷹には誰の迷惑にならないように反省するように伝えてくれ』


漣『ガッテンです。あと暁氏とレ級氏の姫初めの声が部屋の外までだだ漏れなのでそれとなく注意しておきますね』


提督『…頼んだ』


漣『あと加賀さんと瑞鶴さんが盛り上がってて、ダブル朝潮さんが喧嘩しながら走ってご主人様の所に向かいました』


提督『とめてくれ』
提督『たのむ』


漣『善処します』


提督「……」


提督「…………」

ダダダダダッ

司令官ーー!

司令官、ネコミミ着けてきました!私と初詣に行きましょう!!


提督「……」


提督「漣…………」
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:34:19.19 ID:RUmfBvhW0
富士「…なんだか執務室の方が騒がしいわね」


漣「あー多分ダブル朝潮さんが騒いでますな」


潜水新棲姫「あいつらか」


富士「漣は知ってて止めなかったの?」


漣「だってあの二人の相手面倒臭いんですもん。目的がご主人様なので、全部任せておけばいいんですよ」


富士「貴女ねぇ…」


潜水新棲姫「漣がこういう性格なのは分かりきってるだろう?」


富士「それは知りすぎてるくらいだけど、少しは改善する気はないの?」


漣「ありませんね」


潜水新棲姫「言い切るのも漣らしいな」


漣「漣が今考えてるのは嫁との初詣だけです。それが邪魔されるのは許されません」


富士「貴女…いつか仕返しされるわよ」


漣「それはその時考えれば良いんですよ〜〜」


ーー
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:35:21.41 ID:RUmfBvhW0
中途半端に長くなってしまいました。ネタはいくらでもあるんてすが、短編となると難しいですね

それではまた
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/03(金) 23:37:10.76 ID:JZwxxsfpO
乙です
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/04(土) 00:36:33.42 ID:pa8qmPSYo
善処(丸投げ)
飛鷹さん……
あけましておめでとうございます
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:10:51.15 ID:Afarbvso0
あらすじ
ツクオリがスポンサーをやっているテレビ番組にゲスト出演することになった白鶴。ライは白鶴のマネージャーとして収録に参加することとなった。
白鶴が出演するバラエティー番組で特技を披露する流れに。ホームレス時代に身に付けた人間ポンプをやろうとする白鶴だったが…



「ほんで何か特技があるんやって?」


白鶴「は、はい!私は人間ポンプができます!」


「なんやねんそれ!芸人でもやるの躊躇するで!」


白鶴「人間ポンプはラジオだと伝わらないんです。せっかくテレビという機会なので披露してみようかなと…」


「なんでもええけど特技やっていうならやってみいな」


白鶴「はい、それでは失礼して…」ゴソゴソ


ライ「頑張って白鶴さん…!」
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:12:41.08 ID:Afarbvso0
白鶴「今からこのビー玉を飲み込みます。そして全部このお皿に吐き出します」


「ほんまにできんの?失敗したらエライ事になるで」


白鶴「練習では上手くいったのでだ、大丈夫です」


「めっちゃ緊張してるやん!」


「ごっつ心配やわぁ…」


白鶴「それでは…いきます」ゴクッ


「コイツほんまに飲み込みよったで」


ライ「緊張しなくても大丈夫、いつも通りやれば失敗しないわ」


白鶴「……」プルプル


「なんやえらい震えとるけど…」


「これ失敗するん違うやろな!?」
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:14:13.76 ID:Afarbvso0
ライ「どうしたの白鶴さん?まさか調子が悪いのかしら…」


「あのーすいません。白鶴さんのマネージャーさんですよね?」


ライ「そうよ、何かあったの?」


「白鶴さんの楽屋に置いてあったお弁当が無くなっていたんです。確か持ち帰るからって言ってましたよね?」


ライ「私は食べてないわよ?」


「おかしいですね…」


白鶴「……」プルプルプルプル


「これほんまにいけるんか!?」


「皿やなくてバケツ用意しとけって!」


ライ「まさか白鶴さん…人間ポンプのこと忘れてお弁当食べちゃったの……?」
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:16:25.37 ID:Afarbvso0
ライ「私が先にスタジオに来ちゃったから…ちゃんと確認してないけど……」


白鶴「……げろっ」


「うわ!!この女吐きよった!!」


「収録止めろって!こんなん放送できるかぁ!!」


ライ「あぁぁ…白鶴さん……」


白鶴「ぉえっ、げっ……」


「お前なんやねん!何しに来てん!!」


コロンッ
白鶴「で…出ました……ビー玉…」スッ


「こいつ体張り過ぎやろ!」


「ここまで来たら引くって…」


ライ「あぁぁ…せっかくのテレビだったのに…これじゃ放送されないじゃない……」


白鶴が吐く場面にキラキラ加工が施され、まさかのノーカットで放送された。
『地上波デビューで吐く女』後に芸能界という荒波を制した白鶴の伝説はここから始まった
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:16:56.06 ID:Afarbvso0
思い付いた所だけを書きました。それでは失礼します
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/30(木) 20:25:46.68 ID:f7tBtJ3sO
ええやん
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/30(木) 20:25:56.11 ID:JcQV7hzEo
芸人超え過ぎィ!
おつおつ
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/30(木) 21:11:57.27 ID:z7BeGTj3o
もっと平和なやさしい世界みたいみたい
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/30(木) 21:33:03.79 ID:dRivNYDmo
いきなりヨゴレとは…
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:00:49.11 ID:I10vUzVr0
思い付いたので少し


龍驤「突然集められたと思ったら何よ?」


潜水新棲姫「ワタシと龍驤はいいとして、富士まで呼ぶとはな」


富士「一体なにが始まるの?」


漣「動画サイトで見た面白そうな企画があったんですけど、それを漣達でやったらどうなるかって試してみたくなったんですよ」


Y子「ここで反応良かったら人数増やして本編でもやるかもってさ」


龍驤「本編?」


Y子「そっちは干渉できない話だから気にしないで〜」


富士「……」
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:04:22.57 ID:I10vUzVr0
漣「ええっと…Y子さんも参加ということでよろしいですか?」


Y子「あたしはお姉ちゃんの影みたいなものだから、居ないものとして考えていいよ」


漣「分かりました。それでは今からお題を出します。それに最も合うであろう言葉を紙に書いて下さい」


潜水新棲姫「言葉というだけでは定義が曖昧だと思うぞ」


龍驤「固有名詞は有りなんか?」


漣「それは龍驤さん達に任せます。それじゃあ一回戦、始めますよ!」


富士「なんで私がこんな事を…」


Y子「頑張れお姉ちゃ〜ん」
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:07:39.57 ID:I10vUzVr0
「あ」から始まる高いもの


龍驤「なんやえらい簡単やね」


潜水新棲姫「ふむ…」


漣「高いといっても色々ありますぜ。そこをどう解釈するかが楽しいんですよ!」


富士「……これよね?」カキカキ


Y子「あたしは何も知らないな〜」


富士「少しくらい助けてくれてもいいのよ…?」
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:11:49.16 ID:I10vUzVr0
漣「全員書けましたね。それではまずは龍驤さんから!」


龍驤「高い…これしか無いんと違う?」
『アルプス山脈』


富士「あっ…表現は少し違うけど私も同じよ」
『アルプス』


漣「なるほど、純粋に高いものを書いたと。漣が書いたのはこれです!」
『アマゾ◯』


龍驤「通販サイトの何が高いんよ?」


漣「送料高くないですか?」


潜水新棲姫「確かにそういう高さもあるな」
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:14:45.26 ID:I10vUzVr0
漣「嫁は何を書いてんです?」


潜水新棲姫「高い言葉を書いた」
『above』


龍驤「…はぁ」


富士「あ、あぼ…」


Y子「アバーブね。英語の前置詞で意味は〜より高くとかそんな感じ」


潜水新棲姫「これより高いものはない。aboveアルプス山脈でワタシの勝ちだ」


漣「それって有りなんですか?」


潜水新棲姫「漣が司会なんだから決めてくれ」


漣「うーん多数決が基本なんですけどねぇ…」


龍驤「一回目やし多数決にしとくか?」


漣「…分かりました、それではアルプス山脈で!」


Y子「お姉ちゃん英語苦手だもんね」


富士「…うるさいわね」
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:17:43.65 ID:I10vUzVr0
「か」から始まる強い生き物


漣「これもどういう強さを表現するかですね〜」


龍驤「あかん…何も出てけぇへん…」


潜水新棲姫「こいつは見た目よりも強い」カキカキ


富士「……」カキカキ


Y子「ぶっ…!」


富士「…私の答えを見て笑うのはやめて欲しいのだけど」


Y子「ごめんってお姉ちゃん」


龍驤「もう…無理やな……」
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:20:29.95 ID:I10vUzVr0
漣「龍驤さんが苦戦してたので漣からいきます!」
『カブトムシ』


潜水新棲姫「昆虫の中では強いということか」


漣「昆虫というより甲虫ですね。コイツは強いですよ!」


潜水新棲姫「ならワタシはこれだ」
『カバ』


Y子「あ〜確かカバってワニとか襲うんだってね」


潜水新棲姫「間違いなく強いだろう」
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:24:04.44 ID:I10vUzVr0
Y子「二人が実在する生き物を書いてる中お姉ちゃんは〜?」


富士「……」
『怪獣』


漣「あぁ〜…はい…」


潜水新棲姫「せめて何か固有名が欲しかったな」


富士「何も思い付かなかったのよ…」


漣「さて龍驤さん、顔色が良くありませんがそろそろ出しましょうか?」


龍驤「…ごめん」
『かなり強いライオン』


漣「いやいやいやいや」


潜水新棲姫「かなり強いがつけば何でもいいじゃないか」
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:26:45.83 ID:I10vUzVr0
龍驤「ほんまにゴメンって…何も出てけぇへんねんって…」


Y子「お姉ちゃんより酷い答えでよかったね」


富士「……」


漣「龍驤さんは話にならないのと、富士さんも具体的な名前が無いので…ここはカバですか」


潜水新棲姫「カブトムシくらいカバなら一捻りだからな」


龍驤「カバ、カブトムシ…それくらい出てきて普通やんな…」


漣「そんなに落ち込まないで下さい。さぁ次にいきますよ」
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:30:04.05 ID:I10vUzVr0
「さ」から始まるお洒落な趣味


漣「あ、やべぇ…今度は漣が何も出てこない…」


龍驤「これは出てきた!これしかない!」カキカキ


潜水新棲姫「うーむ…これがお洒落か?」カキカキ


富士「……」カキカキ


Y子「ふぅ〜ん」


富士「何よ」


Y子「べっつに〜書いてるな〜って見てるだけだから」


富士「私はこういうの苦手なのよ…!」
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:34:00.17 ID:I10vUzVr0
龍驤「自信あるからウチからいくで!」
『サーフィン』


漣「あぁぁぁぁ…それだ…」


潜水新棲姫「ワタシは龍驤に負けたな」
『サッカー』


龍驤「よし!これでさっきの汚名返上や!」


Y子「次はお姉ちゃん出しといたら?別に変じゃないから」


富士「……」
『裁縫』


龍驤「これが趣味やと確かにお洒落やね」


潜水新棲姫「だがお洒落というより女子力が高いというイメージだ」
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:37:12.64 ID:I10vUzVr0
漣「漣の答え…先に謝っておきますので…」
『皿に絵を描く』


Y子「んひひひひっ!」


龍驤「あのなぁ…」


漣「分かってますって!でも何も出てこないんだから仕方ないじゃないですか!」


潜水新棲姫「せめて単語を書いて欲しかった所だ」


富士「……!」プルプル


漣「笑いを堪えられるのが一番キツイんで笑って下せぇ…」


潜水新棲姫「これは龍驤のサーフィンが答えで良いだろうな」
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:40:39.50 ID:I10vUzVr0
「た」から始まる持ち歩くもの


漣「…これですね」カキカキ


龍驤「これと違うんかなぁ」カキカキ


潜水新棲姫「これしか浮かばない」カキカキ


富士「これ…かしらね…」カキカキ


Y子「んぐっ!」


富士「…もう相手にしないわよ」


Y子「ぐ…ぐふふ…!」


漣「なんか富士さん辺りが騒がしいですな…」
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:44:12.96 ID:I10vUzVr0
漣「じゃあ漣からいきますよ」
『タブレット』


龍驤「よっしゃ同じや!」
『タブレット』


潜水新棲姫「ほぼ同じだが少し違うな」
『端末』


漣「意味は同じようなもので、こっちと同じと思っていいですね」


富士「……」


Y子「皆がそれっぽいことを書いてる中、お姉ちゃんは何を書いたのかな〜?」


富士「……」
『たまごっち』
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:49:05.95 ID:I10vUzVr0
漣「古っ!」


龍驤「世代が…年代が…」


潜水新棲姫「これじゃあ漣がよく言ってるロリババアじゃないか」


富士「漣っ!!」


漣「ちょ、何暴露してんすか!」


Y子「ふじさんじゅうさんさい」


富士「貴女ねぇ!!」


Y子「だって仮にも始まりの艦娘でしょ?その経歴で十代はキツイって」


富士「貴女も漣も覚えてなさいよ…!」


漣「とばっちりぃ!」


龍驤「とばっちりも何も裏で色々言うてる漣が悪いんやろ」


潜水新棲姫「とりあえず正解はタブレットだな」
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:53:34.97 ID:I10vUzVr0
「な」から始まるされて嬉しいこと


漣「命の危険を感じるのでこれが最後のお題です…」


龍驤「…書いてええか分からんけど、これしか思い付かん」


潜水新棲姫「ワタシもこれしか無い」


Y子「お姉ちゃん白紙はダメだよ〜」


富士「うるさいわね…!だったら適当に書いてさっさと終わらせるわよ!」


Y子「お〜怖い怖い」


漣「プレッシャーが凄まじくて頭が回らない…」
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:56:43.55 ID:I10vUzVr0
漣「何も思い付かなかったので…これで勘弁して下せぇ」
『ナイスって言われる』


富士「私はこれよ!」
『ナポリタン』


Y子「お姉ちゃん適当過ぎ」


富士「早く終わらせるのが目的だから中身は関係ないのよ!」


漣「マジ怖ぇ…」
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 21:02:42.27 ID:I10vUzVr0
龍驤「あのな…そっちの答えチラッと見えたから一緒に出そ」


潜水新棲姫「同時にか。よし分かった」
『中◯し』
『中に出される』


Y子「うわ…」


龍驤「最低なのは分かってるよ…うん…」


潜水新棲姫「お題が悪いぞ漣」


Y子「あ〜それがさ、二人が答え出したと同時に漣が逃げて、それをお姉ちゃんが追いかけてってよ」


潜水新棲姫「なら答えが出せないな」


龍驤「答えなんか出さんでええって…ウチってほんまこれの事しか考えられへんのかな…」


Y子「仕方ないって、次があるならその時改善すれば良いんだしさ」


龍驤「次があってもウチは呼ばんといて…」
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 21:03:14.68 ID:I10vUzVr0
少し長くなってしまいました

また何か思い付けば書き込みます
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